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特許7189596段差乗り上げ用リフタおよびそれを備える輸送機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】段差乗り上げ用リフタおよびそれを備える輸送機器
(51)【国際特許分類】
   B62B 5/02 20060101AFI20221207BHJP
   A61G 5/06 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
B62B5/02 Z
A61G5/06
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018158750
(22)【出願日】2018-08-27
(65)【公開番号】P2020032766
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】591141784
【氏名又は名称】学校法人大阪産業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100098305
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 祥人
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】杉山 幸三
【審査官】金田 直之
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-257063(JP,A)
【文献】特開2016-022836(JP,A)
【文献】実開平06-018144(JP,U)
【文献】特開2007-029189(JP,A)
【文献】特開2001-334857(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 5/02
A61G 5/10
A61G 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
輸送機器に段差を乗り上げさせるために、てこの原理を用いて前記輸送機器を昇降させる段差乗り上げ用リフタであって、
屈曲した側面形状を有するジャッキレバーと、
前記ジャッキレバーの中間部に設定された接地部と、
前記接地部に配置された接地車輪と、
前記ジャッキレバーに設定された昇降操作部と、
前記ジャッキレバーと前記輸送機器とを連結させかつ前記ジャッキレバーが鉛直面内で回転可能に設定された第1の連結部と、
一端部および他端部を有する弾性体を含む付勢装置と、
前記輸送機器における予め定められた第1の部分と前記付勢装置の前記一端部とを連結させかつ前記ジャッキレバーにおける予め定められた第2の部分と前記付勢装置の前記他端部とを連結させる第2の連結部とを備え、
前記ジャッキレバーは、軸部を有し、前記接地車輪が接地した状態で前記昇降操作部が押し下げられることにより前記輸送機器が持ち上げられるように構成され、
前記第1の連結部は、
前記輸送機器に固定されかつ前記軸部が嵌合可能な嵌合部を有する固定部材と、
前記嵌合部に嵌合された前記軸部を保持する保持状態と、前記嵌合部から前記軸部を解放する解放状態とに切替可能に構成された可動部材と、
前記可動部材を前記保持状態と前記解放状態との間で切り替えるために使用者により操作される切替操作部とを含み、
前記ジャッキレバーを前記輸送機器に着脱可能に構成され、
前記第2の連結部は、
前記輸送機器の第1の部分と前記ジャッキレバーの前記第2の部分との間で、前記付勢装置を前記輸送機器および前記ジャッキレバーに着脱可能に構成された、段差乗り上げ用リフタ。
【請求項2】
前記可動部材を予め定められた第1の方向に予め定められた付勢力で付勢することにより前記可動部材を前記保持状態に維持する保持状態維持部材をさらに備え、
前記切替操作部は、前記保持状態維持部材の付勢力に抗して前記可動部材を前記第1の方向とは逆の第2の方向に移動させることにより、前記可動部材を前記保持状態から前記解放状態に切り替えることが可能となるように構成された、請求項1記載の段差乗り上げ用リフタ。
【請求項3】
請求項1または2記載の段差乗り上げ用リフタを備える、輸送機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸送機器に段差を乗り上げさせるための段差乗り上げ用リフタおよびそれを備える輸送機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、段差を乗り上がることが可能な種々の手押し車が提案されている。例えば特許文献1に記載された手押し車においては、前輪および後輪によって支持される車体の下面にジャッキレバーが設けられている。ジャッキレバーは、前後方向における中間部分が屈曲した側面形状を有し、車体の下面に設定された取付部に垂直面内で回転可能に取り付けられている。ジャッキレバーは取付部から後方に延び、その中間屈曲部は接地部として設定されている。ジャッキレバーの先端部に操作部(ペダル)が設定されている。接地部には、接地車輪が取り付けられている。
【0003】
特許文献1に記載された手押し車の使用者は、車体の上面後部に設けられたハンドル部を把持し、例えば段差を構成する下段面から上段面へ移動するように手押し車を移動させる。ここで、段差において下段面と上段面とをつなぐ面を段差面と呼ぶ。この場合、使用者は、前輪が段差面に当たって手押し車が止まったときに、ジャッキレバーの操作部を踏み込む。それにより、ジャッキレバーが取付部で回転し、接地車輪が下段面に接触する。さらに、使用者は、操作部に体重をかける。それにより、接地車輪が下段面上を転動し、接地部が取付部の下へと進み、ジャッキレバーが車体の奥の方まで押し込まれる。このとき、接地車輪および接地部の前進に伴って車体の前部が持ち上がり、前輪が下段面から浮上する。この状態で、使用者は、手押し車を前方に押すことにより、浮上した前輪を上段面に乗り上がらせることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-22836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の手押し車に設けられるジャッキレバーは、車体を安定して持ち上げるために高い剛性を有する必要がある。また、そのジャッキレバーは、使用者の操作に適したサイズを有することが望まれる。そのため、ジャッキレバーの軽量化および小型化には限界がある。また、ジャッキレバーが設けられる手押し車は、左右にコンパクトに折り畳むことが難しい。このように、段差を乗り上げる必要がない場合には、使用者にとって手押し車の取り扱いが面倒になる。
【0006】
本発明の目的は、輸送機器の取り扱いを容易にするとともに利便性の高い段差乗り上げ用リフタおよびそれを備える輸送機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)第1の発明に係る段差乗り上げ用リフタは、輸送機器に段差を乗り上げさせるために、てこの原理を用いて輸送機器を昇降させる段差乗り上げ用リフタであって、屈曲した側面形状を有するジャッキレバーと、ジャッキレバーの中間部に設定された接地部と、接地部に配置された接地車輪と、ジャッキレバーに設定された昇降操作部と、ジャッキレバーと輸送機器とを連結させかつジャッキレバーが鉛直面内で回転可能に設定された第1の連結部と、一端部および他端部を有する弾性体を含む付勢装置と、輸送機器における予め定められた第1の部分と付勢装置の一端部とを連結させかつジャッキレバーにおける予め定められた第2の部分と付勢装置の他端部とを連結させる第2の連結部とを備え、ジャッキレバーは、軸部を有し、接地車輪が接地した状態で昇降操作部が押し下げられることにより輸送機器が持ち上げられるように構成され、第1の連結部は、輸送機器に固定されかつ軸部が嵌合可能な嵌合部を有する固定部材と、嵌合部に嵌合された軸部を保持する保持状態と、嵌合部から軸部を解放する解放状態とに切替可能に構成された可動部材と、可動部材を保持状態と解放状態との間で切り替えるために使用者により操作される切替操作部とを含み、ジャッキレバーを輸送機器に着脱可能に構成され、第2の連結部は、輸送機器の第1の部分とジャッキレバーの第2の部分との間で、付勢装置を輸送機器およびジャッキレバーに着脱可能に構成された。
【0008】
上記の段差乗り上げ用リフタによれば、使用者は、第1の連結部によりジャッキレバーが輸送機器に連結された状態で、接地車輪を接地させつつジャッキレバーの昇降操作部を押し下げることができる。この場合、接地部が支点として働き、連結部が作用点として働くことにより、輸送機器が持ち上げられる。この状態で、使用者が輸送機器を押すことにより、接地車輪が回転し、輸送機器が移動する。それにより、使用者は、輸送機器に段差を容易に乗り上げさせることができる。
【0009】
第1の連結部は、ジャッキレバーを輸送機器に着脱可能に構成されている。それにより、使用者は、必要に応じて輸送機器からジャッキレバーを取り外すことができる。したがって、輸送機器に段差を乗り上げさせる必要がない場合に、輸送機器からジャッキレバーを取り外すことにより輸送機器の取り扱いが容易になる。また、複数の輸送機器に1つのジャッキレバーを共通に用いることができる。これらの結果、利便性の高い段差乗り上げ用リフタが実現される。
【0011】
また、使用者は、切替操作部を操作することにより、ジャッキレバーを輸送機器に連結する作業および輸送機器からジャッキレバーを取り外す作業を容易に行うことができる。
(2)段差乗り上げ用リフタは、可動部材を予め定められた第1の方向に予め定められた付勢力で付勢することにより可動部材を保持状態に維持する保持状態維持部材をさらに備え、切替操作部は、保持状態維持部材の付勢力に抗して可動部材を第1の方向とは逆の第2の方向に移動させることにより、可動部材を保持状態から解放状態に切り替えることが可能となるように構成されてもよい。
【0012】
(3)第2の発明に係る輸送機器は、上記の段差乗り上げ用リフタを備える。
【0013】
その輸送機器は、上記の段差乗り上げ用リフタを備える。したがって、輸送機器が段差を乗り上がる必要がない場合に、当該輸送機器からジャッキレバーを取り外すことにより輸送機器の取り扱いが容易になる。また、連結部を備える複数の輸送機器に1つのジャッキレバーを共通に用いることができる。したがって、輸送機器の利便性が向上する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、輸送機器の取り扱いが容易になるとともに利便性の高い段差乗り上げ用リフタが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一形態に係る車椅子の模式的側面図および模式的平面図である。
図2図1の車椅子の一部の模式的斜視図である。
図3】車体が床面から持ち上げられた状態を示す車椅子の模式的側面図である。
図4】車椅子におけるジャッキレバーおよび付勢装置の着脱を説明するための車椅子の側面図である。
図5図1の連結具の具体的な構成の一例を示す側面図である。
図6図1の連結具の具体的な構成の一例を示す側面図である。
図7】他の実施の形態に係る車椅子の模式的側面図である。
図8図7の車椅子の一部の模式的斜視図である。
図9図7の段差乗り上げ用リフタに設けられる連結部の他の構成例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施の形態に係る段差乗り上げ用リフタおよびそれを備える輸送機器について図面を参照しつつ説明する。以下の説明においては、輸送機器の一例として車椅子を説明する。
【0017】
(1)実施の形態に係る車椅子
図1(a),(b)は本発明の一形態に係る車椅子の模式的側面図および模式的平面図である。図2(a),(b)は図1の車椅子の一部の模式的斜視図である。図3は車体が床面から持ち上げられた状態を示す車椅子の模式的側面図である。
【0018】
図1(a),(b)に示すように、車椅子1の車体2の前端下部に左右一対の前輪3が設けられ、車体2の後端下部に左右一対の後輪4が設けられる。本実施の形態では、前輪3はキャスターからなる。車体2の後端上部には、左右一対のハンドル部5が設けられる。使用者は、ハンドル部5を把持して車体2を押しまたは操舵することができる。
【0019】
本実施の形態に係る車椅子1は、段差乗り上げ用リフタ100を備える。段差乗り上げ用リフタ100は、ジャッキレバー10、左右一対の接地車輪20、昇降操作部40および左右一対の連結具50を含む。
【0020】
車体2の右側部および左側部に、左右一対の連結具50がそれぞれ設けられている。ジャッキレバー10は、一対の連結具50に連結されている。ジャッキレバー10は、中間部が屈曲した側面形状を有し、側面視で一対の連結具50から後方に延びている。なお、本例のジャッキレバー10は直線的に折れ曲がるように屈曲しているが、ジャッキレバー10は曲線的に屈曲した側面形状を有してもよい。
【0021】
ジャッキレバー10は、主として図1(b)に示す左右一対のレバー部材10a,10bおよび連結軸210により構成される。一対のレバー部材10a,10bは、連結軸210により互いに連結されている。レバー部材10a,10bおよび連結軸210は、高い剛性を有する金属または強化樹脂により形成される。
【0022】
左のレバー部材10aの前端部には、当該前端部から左方へ水平に延びるように軸部30が設けられている。左の軸部30の左端部は、車椅子1の前後方向に平行な鉛直面内でその軸心を中心として回転可能に左の連結具50に連結されている。右のレバー部材10bの前端部には、当該前端部から右方へ水平に延びるように軸部30が設けられている。右の軸部30の右端部は、車椅子1の前後方向に平行な鉛直面内でその軸心を中心として回転可能に右の連結具50に連結されている。
【0023】
ジャッキレバー10の左右の軸部30は、各軸部30の軸心が共通の直線上に位置するように車椅子1の左右方向に並ぶ。それにより、ジャッキレバー10は、左右の連結具50を結ぶ直線を基準として鉛直面内で回転可能となっている。
【0024】
図1(a)に示すように、ジャッキレバー10の屈曲する中間部に接地部11が設定されている。ジャッキレバー10の接地部11には、左右一対の接地車輪20が取り付けられている。左右の接地車輪20は、ジャッキレバー10の接地部11を挟み込むように左右対称に設けられる。
【0025】
図2(a),(b)に太い二点鎖線で示すように、ジャッキレバー10の後端部に昇降操作部40が設定されている。昇降操作部40は、ペダルとして構成され、成人男性の靴幅よりも大きい横幅を有する。
【0026】
図1(a),(b)に示すように、車椅子1は、上記の構成に加えて、付勢装置200、連結軸220および2つの取付具211,221をさらに備える。連結軸220は、車体2の下部において、一対の連結具50よりも前方の位置で左右方向に延びるように設けられている。2つの取付具211,221のうち一方の取付具211はジャッキレバー10の連結軸210の中央部に設けられ、他方の取付具221は連結軸220の中央部に設けられる。
【0027】
付勢装置200は、例えば引張コイルばねで構成され、一端部および他端部を有する。取付具211,221は、付勢装置200の一端部および他端部を着脱可能に構成されている。付勢装置200の一端部および他端部がそれぞれ取付具211,221に取り付けられることにより、2つの連結軸210,220が付勢装置200を介して接続される。この状態で、付勢装置200は、連結軸210,220間に引張力を発生させる。これにより、一対の連結具50を結ぶ直線を中心とする回転力がジャッキレバー10に与えられる。
【0028】
ここで、付勢装置200の一端部と取付具211との間の容易な着脱、および付勢装置200の他端部と取付具221との間の容易な着脱を実現するために、例えばスナップフィット機構が用いられる。スナップフィット機構とは、係止部および被係止部をそれぞれ有する2つの部材を用いた連結機構であり、被係止部および係止部のうち少なくとも一方の部材の弾性変形を利用して2つの部材を固定する機構である。スナップフィット機構として、例えば樹脂製のサイドリリースバックルまたはフロントリリースバックル等を用いることができる。なお、付勢装置200と取付具211,221との間の着脱機構として、スナップフィット機構に代えて、フック等の金具が用いられてもよい。
【0029】
接地部11が一対の連結具50よりも高い位置にある場合には、図2(a)に矢印aで示すように、付勢装置200の引張力によりジャッキレバー10に接地部11を浮上させる回転力が与えられる。それにより、接地車輪20および昇降操作部40が車体2の後方のスペースに収納される。
【0030】
使用者は、図2(a)に白抜きの矢印cで示すように、昇降操作部40を押し下げることができる。接地部11が一対の連結具50よりも低い位置にある場合には、図2(b)に矢印bで示すように、付勢装置200の引張力によりジャッキレバー10に下方への回転力が与えられる。
【0031】
ジャッキレバー10の一対のレバー部材10a,10bの前端部から接地部11までの長さは、床面から連結具50までの高さよりも大きく設定されている。それにより、昇降操作部40が押し下げられると接地車輪20が接地する。この状態で、使用者は、図2(b)に示すように、接地車輪20の後方に位置する昇降操作部40に片足LEをかけ、昇降操作部40を踏み込むことができる。この場合、ジャッキレバー10の接地部11が接地車輪20により床面上に支持され、支点として働く。また、連結具50が作用点として働く。その結果、図3に示すように、車体2が床面から持ち上げられ、前輪3および後輪4が浮上する。
【0032】
このとき、付勢装置200がジャッキレバー10に下方へ向かう回転力を与えるので、車体2を持ち上げるために使用者が昇降操作部40に加えるべき荷重が低減される。それにより、使用者は昇降操作部40を軽く踏み込むことにより車体2を床面から持ち上げることができる。
【0033】
したがって、使用者は、例えば段差の下段面から上段面へ移動するように手押し車を移動させる場合に、前輪3が段差面(下段面と上段面とをつなぐ面)に当たった状態で、ジャッキレバー10の昇降操作部40を踏み込む。それにより、車椅子1が床面から持ち上げられた状態で、使用者はさらに車椅子1を前方に押すことにより、車椅子1に段差を乗り上げさせることができる。
【0034】
(2)車椅子1におけるジャッキレバー10および付勢装置200の着脱
図4は、車椅子1におけるジャッキレバー10および付勢装置200の着脱を説明するための車椅子1の側面図である。
【0035】
上記のように、ジャッキレバー10の連結軸210および車椅子1の連結軸220にそれぞれ設けられた取付具211,221は、付勢装置200の一端部および他端部を着脱可能に構成されている。それにより、図4に白抜きの矢印Pで示すように、付勢装置200は、車椅子1の車体2から容易に取り外すことが可能である。
【0036】
また、本実施の形態に係る車椅子1においては、車体2に設けられる左右一対の連結具50は、本発明の第1の連結部の一例であり、ジャッキレバー10の左右の軸部30を車体2に着脱可能に構成されている。それにより、図4に白抜きの矢印Qで示すように、段差乗り上げ用リフタ100のうち一対の連結具50を除く部分100pは、車椅子1の車体2から容易に取り外すことが可能である。
【0037】
上記のように、ジャッキレバー10が取り外された状態で、本例の車椅子1は左右方向に折り畳み可能に構成されている。したがって、使用者は、ジャッキレバー10および付勢装置200を取り外して車椅子1を左右方向に折り畳むことにより、車椅子1、ジャッキレバー10および付勢装置200をコンパクトにまとめることができる。
【0038】
(3)連結具50の具体的な構成の一例
図1の一対の連結具50は互いに同じ構成を有する。そこで、一対の連結具50のうち一方の連結具50の具体的な構成について説明する。
【0039】
図5および図6は、図1の連結具50の具体的な構成の一例を示す側面図である。図5に示すように、連結具50は、主として固定部材51および可動部材52から構成される。固定部材51は車体2に固定される。より具体的には、固定部材51は、車体2を構成するフレーム等にねじを用いて固定される。あるいは、固定部材51は、車体2を構成するフレーム等に溶接により固定される。
【0040】
本例の固定部材51は、側面視で略矩形状を有する。固定部材51の略中央部には、下端部から上方に向かって所定の深さを有する嵌合部51fが形成されている。嵌合部51fは、ジャッキレバー10の軸部30を下方から嵌合可能に形成されている。嵌合部51fの近傍に、左右方向に水平に延びる回転軸53が設けられている。
【0041】
可動部材52は、回転支持部52aおよび開閉部52bを有する。回転支持部52aは、一方向に延びるように形成されている。開閉部52bは、回転支持部52aの略中央部から回転支持部52aの側方へ延びるように形成されている。
【0042】
回転支持部52aの一端部k1が回転軸53に回転可能に連結されている。固定部材51には、さらに回転付勢部材54が取り付けられている。回転付勢部材54は、開閉部52bが固定部材51の嵌合部51fを下方から閉塞するように、可動部材52に回転軸53を中心とする回転力を与える。図5では、回転付勢部材54から可動部材52に与えられる回転力の方向が太い点線の矢印rで示される。回転付勢部材54としては、例えばトーションばねが用いられる。
【0043】
上記の構成を有する連結具50においては、使用者が回転支持部52aの他端部k2に触れないことにより、嵌合部51fが開閉部52bにより下方から閉塞される。この場合、嵌合部51fに嵌合された軸部30が可動部材52により保持される。このときの可動部材52の状態を保持状態と呼ぶ。
【0044】
一方、図6に白抜きの矢印sで示すように、回転付勢部材54から可動部材52に作用する回転力に抗して使用者が回転支持部52aの他端部k2を回転させると、他端部k2とともに開閉部52bが回転することにより嵌合部51fが下方に開放される。この場合、図6に太い実線の矢印tで示すように、嵌合部51fに嵌合された軸部30が嵌合部51fから解放される。このときの可動部材52の状態を解放状態と呼ぶ。
【0045】
このように、使用者は、可動部材52を保持状態と解放状態との間で切り替えるために、回転支持部52aの他端部k2を切替操作部として容易に操作することができる。したがって、使用者は、車椅子1へジャッキレバー10を連結する作業および車椅子1からジャッキレバー10を取り外す作業を容易に行うことができる。
【0046】
(4)効果
本実施の形態に係る段差乗り上げ用リフタ100によれば、使用者は、車椅子1に段差を乗り上げさせる必要がない場合に、ジャッキレバー10を取り外すことができる。それにより、車椅子1の取り扱いが容易になる。また、複数の車椅子1に、1つのジャッキレバー10を共通に用いることができる。これらの結果、利便性の高い段差乗り上げ用リフタ100および車椅子1が実現される。
【0047】
(5)他の実施の形態
(a)図7は他の実施の形態に係る車椅子1の模式的側面図であり、図8図7の車椅子1の一部の模式的斜視図である。図7および図8に示すように、本例の車椅子1においては、ジャッキレバー10が、側面視で2箇所が屈曲した側面形状を有する。また、本例では、左右一対の連結具50を連結軸220よりも下方に配置するために、車体2の下部に連結具50を固定するための左右一対のフレーム2xが設けられている。
【0048】
さらに、本例のジャッキレバー10においては、レバー部材10a,10bの前端部に、左右方向に延びるように1本の連結軸30xが接合されている。連結軸30xの左右両端部は、上記の左右の軸部30として機能する。これにより、一対のレバー部材10a,10bの前端部が軸部30により連結されるので、ジャッキレバー10の前端部の剛性が確保される。
【0049】
また、本例のジャッキレバー10は、側面視で前端部から後方かつ上方に延び、後方かつ下方に向かって屈曲し、さらに後方かつ上方に向かって屈曲している。連結軸210は前方の屈曲部に設けられている。接地部11は後方の屈曲部に設けられている。このような構成により、連結軸220とジャッキレバー10の連結軸210との間に付勢装置200が設けられた状態で、付勢装置200と連結軸30xとが干渉することが防止されている。
【0050】
さらに、本例の車椅子1においては、ジャッキレバー10の接地部11に回転部材17が鉛直面内で回転可能に取り付けられ、回転部材17に3対の接地車輪20が回転可能に取り付けられている。3対の接地車輪20は、回転部材17の回転中心に関して回転対称に配置されている。ジャッキレバー10の昇降操作部40が押し下げられたときに、回転部材17が接地部11に対して回転することにより、任意の2対の接地車輪20が前後方向に並んで接地する。それにより、車体2が複数の接地車輪20により円滑かつ安定に支持される。
【0051】
(b)図1および図7の車椅子1においては、本発明の第1の連結部として連結具50が用いられるが、本発明の第1の連結部の構成は連結具50の例に限定されない。図9は、図7の段差乗り上げ用リフタ100に設けられる第1の連結部の他の構成例を説明するための図である。図9では、図7の車椅子1のうち車体2の下部に設けられる左右一対のフレーム2xの平面図と、ジャッキレバー10の一部の平面図とが示される。
【0052】
図9(a)に示すように、本例の車椅子1においては、左右一対のフレーム2xに一対の挿入孔310がそれぞれ形成されている。車椅子1の左右方向において、一対の挿入孔310は互いに対向する。
【0053】
本例のジャッキレバー10に設けられる連結軸30xは、伸縮可能に構成された軸部材である。具体的には、本例の連結軸30xは、軸本体部321および移動軸322を含む。軸本体部321は、中空の軸部材により構成される。移動軸322は、その一部が軸本体部321の右端部から突出するように軸本体部321内に設けられている。軸本体部321の内部には、移動軸322の一部が軸本体部321の右端部から右方に突出するように、移動軸322を右方向に付勢する図示しない付勢部材が設けられている。
【0054】
連結軸30xには、さらに、付勢部材の付勢力に抗して、移動軸322の全体を軸本体部321内に収容させるために使用者により操作される伸縮操作部330が設けられている。
【0055】
本例のジャッキレバー10を車椅子1に連結する際には、使用者は、図9に太い矢印v1で示すように、軸本体部321の左端部を左の挿入孔310に挿入する。また、使用者は、伸縮操作部330を操作することにより移動軸322を軸本体部321内に収容させつつ、軸本体部321の右端部を右の挿入孔310に対向するように位置決めする。その後、使用者は伸縮操作部330から手を放す。これにより、移動軸322が軸本体部321の右端部から突出し、図9に太い矢印v2で示すように、移動軸322の右端部が右の挿入孔310に挿入され、車椅子1へのジャッキレバー10の連結が完了する。
【0056】
一方、ジャッキレバー10を車椅子1から取り外す際には、使用者は、伸縮操作部330を操作することにより、移動軸322を右のフレーム2xに形成された挿入孔310から引き抜く。それにより、ジャッキレバー10の取り外しが完了する。
【0057】
このように、本例では、ジャッキレバー10に設けられる連結軸30xおよび伸縮操作部330と、一対のフレーム2xにそれぞれ形成された一対の挿入孔310とにより、第1の連結部が構成される。
【0058】
この場合、フレーム2xの一部が第1の連結部として機能するので、車椅子1へのジャッキレバー10の連結時にその連結状態が安定する。
【0059】
(c)上記の図1図7および図9の例の他、第1の連結部は例えばジャッキレバー10のみに一体的に固定された構成を有してもよい。例えば、第1の連結部は、車椅子1の車体2の一部が嵌合可能に構成された嵌合部材と、当該嵌合部材をヒンジを介して回転可能に支持する支持部材とを備えてもよい。この場合、支持部材は例えばジャッキレバー10の先端部に固定される。
【0060】
使用者は、車体2の一部を嵌合部材に嵌め込むことにより、車椅子1へジャッキレバー10を回転可能に連結することができる。一方、使用者は、車体2の一部を嵌合部材から引き抜くことにより、車椅子1からジャッキレバー10を取り外すことができる。
【0061】
このような構成を有する連結部によれば、ジャッキレバー10の先端部を第1の連結部として機能させることができる。したがって、車椅子1の車体2に予め図5の連結具50を取り付ける必要がない。また、車椅子1の車体2に予め図9の挿入孔310を形成する必要がない。
【0062】
(d)上記実施の形態に係る車椅子1においては、車椅子1に付勢装置200が設けられるが、付勢装置200は設けられなくてもよい。この場合、付勢装置200を車体2に取り付けるための連結軸220および取付具211,221が不要となる。
【0063】
(e)上記実施の形態に係る段差乗り上げ用リフタ100において、ジャッキレバー10の前端部には、左右方向に延びるように左右一対の軸部30が設けられるが、一対の軸部30の各々は、左右方向に伸縮可能に構成されてもよい。この場合、段差乗り上げ用リフタ100が車椅子1から取り外された状態で、各軸部30が縮められることによりジャッキレバー10の取り扱いが容易になる。
【0064】
(f)上記実施の形態は、本発明を輸送機器として車椅子1に適用した例であるが、本発明は車椅子1に限らず、輸送機器としてベビーカー、台車またはストレッチャー等の他の手押し車にも同様に適用可能である。あるいは、輸送機器として電動搬送車等にも同様に適用可能である。
(6)参考形態
(a)第1の参考形態に係る段差乗り上げ用リフタは、輸送機器に段差を乗り上げさせるために、てこの原理を用いて輸送機器を昇降させる段差乗り上げ用リフタであって、屈曲した側面形状を有するジャッキレバーと、ジャッキレバーの中間部に設定された接地部と、接地部に配置された接地車輪と、ジャッキレバーに設定された昇降操作部と、ジャッキレバーと輸送機器とを連結させかつジャッキレバーが鉛直面内で回転可能に設定された連結部とを備え、ジャッキレバーは、接地車輪が接地した状態で昇降操作部が押し下げられることにより輸送機器が持ち上げられるように構成され、連結部は、ジャッキレバーを輸送機器に着脱可能に構成された。
上記の段差乗り上げ用リフタによれば、使用者は、連結部によりジャッキレバーが輸送機器に連結された状態で、接地車輪を接地させつつジャッキレバーの昇降操作部を押し下げることができる。この場合、接地部が支点として働き、連結部が作用点として働くことにより、輸送機器が持ち上げられる。この状態で、使用者が輸送機器を押すことにより、接地車輪が回転し、輸送機器が移動する。それにより、使用者は、輸送機器に段差を容易に乗り上げさせることができる。
連結部は、ジャッキレバーを輸送機器に着脱可能に構成されている。それにより、使用者は、必要に応じて輸送機器からジャッキレバーを取り外すことができる。したがって、輸送機器に段差を乗り上げさせる必要がない場合に、輸送機器からジャッキレバーを取り外すことにより輸送機器の取り扱いが容易になる。また、複数の輸送機器に1つのジャッキレバーを共通に用いることができる。これらの結果、利便性の高い段差乗り上げ用リフタが実現される。
(b)ジャッキレバーは、軸部を有し、連結部は、輸送機器に固定されかつ軸部が嵌合可能な嵌合部を有する固定部材と、嵌合部に嵌合された軸部を保持する保持状態と、嵌合部から軸部を解放する解放状態とに切替可能に構成された可動部材と、可動部材を保持状態と解放状態との間で切り替えるために使用者により操作される切替操作部とを含んでもよい。
この場合、使用者は、切替操作部を操作することにより、ジャッキレバーを輸送機器に連結する作業および輸送機器からジャッキレバーを取り外す作業を容易に行うことができる。
(c)第2の参考形態に係る輸送機器は、上記の段差乗り上げ用リフタを備える。
その輸送機器は、上記の段差乗り上げ用リフタを備える。したがって、輸送機器が段差を乗り上がる必要がない場合に、当該輸送機器からジャッキレバーを取り外すことにより輸送機器の取り扱いが容易になる。また、連結部を備える複数の輸送機器に1つのジャッキレバーを共通に用いることができる。したがって、輸送機器の利便性が向上する。
【符号の説明】
【0065】
1…車椅子,2…車体,2x…フレーム,3…前輪,4…後輪,5…ハンドル部,10…ジャッキレバー,10a,10b…レバー部材,11…接地部,17…回転部材,20…接地車輪,200…付勢装置,30…軸部,40…昇降操作部,50…連結具,51…固定部材,51f…嵌合部,52…可動部材,52a…回転支持部,52b…開閉部,53…回転軸,54…回転付勢部材,100…段差乗り上げ用リフタ,100p…部分,210,220,30x…連結軸,211,221…取付具,310…挿入孔,321…軸本体部,322…移動軸,330…伸縮操作部,k1…一端部,k2…他端部
図1
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図9