(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】流体制御機器
(51)【国際特許分類】
F16K 27/02 20060101AFI20221207BHJP
F16K 37/00 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
F16K27/02
F16K37/00 D
F16K37/00 J
(21)【出願番号】P 2020530034
(86)(22)【出願日】2019-06-04
(86)【国際出願番号】 JP2019022102
(87)【国際公開番号】W WO2020012828
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2022-03-02
(31)【優先権主張番号】P 2018129671
(32)【優先日】2018-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】100103872
【氏名又は名称】粕川 敏夫
(74)【代理人】
【識別番号】100088856
【氏名又は名称】石橋 佳之夫
(74)【代理人】
【識別番号】100149456
【氏名又は名称】清水 喜幹
(74)【代理人】
【識別番号】100194238
【氏名又は名称】狩生 咲
(72)【発明者】
【氏名】丹野 竜太郎
(72)【発明者】
【氏名】篠原 努
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕也
(72)【発明者】
【氏名】木曽 秀則
【審査官】篠原 将之
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-525622(JP,A)
【文献】特開平02-309079(JP,A)
【文献】特開2010-078002(JP,A)
【文献】特開昭62-177389(JP,A)
【文献】特開2002-081568(JP,A)
【文献】特開2017-020632(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 27/00 - 27/12
F16K 7/12 - 7/17
F16K 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部動作に関するデータを取得可能な流体制御機器であって、
前記流体制御機器内の動作を検出するための
センサとして、磁気センサが取り付けられたボンネット部と、
前記ボンネット部を内部に収容するバルブボディと、を有し、
前記ボンネット部は、
前記磁気センサを構成する磁石と、
前記磁気センサを構成し、前記磁石と離間して設けられた磁性体と、
前記磁石が取り付けられると共に、ダイヤフラムを押圧する円柱状のダイヤフラム押えと、
所定の貫挿孔内を摺動する前記ダイヤフラム押えについて、前記ダイヤフラム押えの周方向の回動を規制する回動規制手段と、を有する、
流体制御機器。
【請求項2】
前記ボンネット部には、
前記
センサの一つとして、ダイヤフラムによって隔離された空間の圧力を検出する圧力センサが取り付けられている、
請求項
1記載の流体制御機器。
【請求項3】
前記
センサに接続された通信用のケーブルの一端は、流体制御機器の外側に設けられたコネクタに接続しており、
前記コネクタを前記流体制御機器に固定する固定手段、をさらに有する、
請求項1
又は2記載の流体制御機器。
【請求項4】
前記バルブボディは、基台部が矩形状からなり、
前記固定手段は、前記コネクタを前記バルブボディの基台部の対角線方向に向けて前記流体制御機器に固定する、
請求項
3記載の流体制御機器。
【請求項5】
前記センサに接続された通信用のケーブルは、可撓性を有するフレキシブル基板である、
請求項1乃至
4いずれかの項に記載の流体制御機器。
【請求項6】
内部動作に関するデータを取得可能な流体制御機器であって、
前記流体制御機器内の動作を検出するためのセンサが取り付けられたボンネット部と、
前記ボンネット部を内部に収容するバルブボディと、
前記センサに接続された通信用のケーブルと、
前記通信用のケーブルの一端が接続すると共に、前記流体制御機器の外側に設けられたコネクタと、
前記コネクタを前記流体制御機器に固定する固定手段と、を有し、
前記バルブボディは、基台部が矩形状からなり、
前記固定手段は、前記コネクタを前記バルブボディの基台部の対角線方向に向けて前記流体制御機器に固定する、
流体制御機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器内にセンサを備えると共に、当該センサによって検出したデータを出力可能な流体制御機器に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハの表面に薄膜を形成する成膜処理においては薄膜の微細化が求められ、近年では原子レベルや分子レベルの厚さで薄膜を形成するALD (Atomic Layer Deposition)という成膜方法が使われている。
しかし、そのような薄膜の微細化は流体制御機器に今まで以上の高頻度な開閉動作を要求しており、その負荷により流体の漏出等を引き起こしやすくなる場合がある。そのため、流体制御機器における流体の漏出を容易に検知できる技術への要求が高まっている。
また、漏出を容易に検知するだけでなく、動作に伴うデータを収集することができれば、従来は考慮できていなかった流体制御機器の使用頻度や個体差などを把握し、流体制御機器をこれまで以上に精度よく制御することも可能と考えられる。
【0003】
この点、特許文献1では、流体の流量を制御する制御器の外面に形成された孔とこの孔に取付けられて流体の漏洩を検知する漏洩検知部材とからなるシール部破損検知機構付制御器であって、前記孔は制御器内の空隙に連通し、前記漏洩検知部材は特定の流体の存在によって感応するとともに、前記孔は漏洩検知部材が取り付けられた状態で外部に連通してなることを特徴とするシール部破損検知機構付制御器が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載のシール部破損検知機構付制御器は、漏洩検知部材を備え、制御器外の信号発生装置と電気的に連通されている。一方で、リークの検知にとどまらず、平常時における機器の内部動作に関するデータを取得する流体制御機器はこれまで提供されていない。
【0006】
そこで、本発明は、機器の内部動作に関するデータを取得可能な流体制御機器を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る流体制御機器は、内部動作に関するデータを取得可能な流体制御機器であって、前記流体制御機器内の動作を検出するための一又は複数のセンサが取り付けられたボンネット部と、前記ボンネット部を内部に収容するバルブボディと、を有し、前記バルブボディには、前記ボンネット部の少なくとも一部を収容するための凹部と、前記センサに接続された通信用のケーブルを外側へ導出させると共に、流路が形成されている基台部とは反対側の一端が開口し、外側から凹部側へ貫通したスリットが設けられている。
【0008】
また、前記センサの一つは、離間した磁石と磁性体の磁界の変化を検出する磁気センサであって、前記磁性体が取り付けられると共に、ダイヤフラムを押圧する円柱状のダイヤフラム押えと、前記ボンネット部に設けられている貫挿孔内に摺動可能に貫挿された前記ダイヤフラム押えについて、前記ダイヤフラム押えの周方向の回動を規制する回動規制手段と、をさらに有し、前記ボンネット部には、前記磁石が取り付けられると共に、前記ダイヤフラム押えを貫挿させる貫挿孔が設けられているものとしてもよい。
【0009】
また、前記センサの一つは、ダイヤフラムによって隔離された空間の圧力を検出する圧力センサであって、前記ボンネット部には、前記圧力センサが取り付けられているものとしてもよい。
【0010】
また、前記ケーブルの一端は、流体制御機器の外側に設けられたコネクタに接続しており、前記コネクタを前記流体制御機器に固定する固定手段、をさらに有するものとしてもよい。
【0011】
また、前記バルブボディは、基台部が矩形状からなり、前記固定手段は、前記コネクタを前記バルブボディの基台部の対角線方向に向けて前記流体制御機器に固定するものとしてもよい。
【0012】
また、前記センサに接続された通信用のケーブルは、可撓性を有するフレキシブル基板であるものとしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る流体制御機器によれば、機器の内部動作に関するデータを取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る流体制御機器を示した(a)外観斜視図、(b)平面図である。
【
図2】本実施形態に係る流体制御機器の内部構造を示したA-A断面図であって、(a)弁閉状態、(b)弁開状態を示す。
【
図3】本実施形態に係る流体制御機器の内部構造を示したB-B断面図であって、(a)弁閉状態、(b)弁開状態を示す。
【
図4】本実施形態に係る流体制御機器を示した分解斜視図である。
【
図5】本実施形態に係る流体制御機器を示した分解斜視図である。
【
図6】本実施形態に係る流体制御機器を示した分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に係る流体制御機器について、図を参照して説明する。
なお、以下の説明では、便宜的に図面上での方向によって部材等の方向を上下左右と指称することがあるが、これらは本発明の実施あるいは使用の際の部材等の方向を限定するものではない。
図1に示されるように、本実施形態に係る流体制御機器Vは、流体制御機器Vの内部動作を検出するセンサを内蔵し、他の端末等と有線による通信を実行するエア作動式のダイレクトダイヤフラムバルブである。
なお、ここにいう他の端末には、サーバ等の所謂コンピュータのほか、他の流体制御機器や流量制御装置などの機器や装置が含まれる。
【0016】
本実施形態に係る流体制御機器Vは内部動作に関するデータを取得可能な機器であって、
図1~
図3に示されるように、バルブボディ1、ボンネット部2、カバー部3、アクチュエータ部4を備える。
【0017】
●バルブボディ1
バルブボディ1は
図2~
図4に示されるように、流路が形成された基台部11と、基台部11上に設けられた略円筒形状の円筒部12とからなる。
基台部11は平面視矩形状からなり、複数の流体制御機器Vによってユニット化された流体制御装置を構成する場合には、基板あるいはマニホールドブロック上に設置される部分となる。
【0018】
円筒部12は、ボンネット部2が配設される側の端面が開口した中空形状からなり、中空の内部はボンネット部2が収容される凹部12aを構成する。
この円筒部12には、軸心方向に長さを有し、ボンネット部2が配設される側であって基台部11とは反対側の一端が開口すると共に、外側から凹部12a側へ貫通したスリット12bが設けられている。このスリット12bを介して、ボンネットウォール25から延び出したフレキシブルケーブル51が内側から外側へ導出される。
【0019】
凹部12aの下方及び基台部11内には、流体が流入する流入路111と流体が流出する流出路113、及び当該流入路111と流出路113に連通する弁室112が形成されている。流入路111、流出路113、及び弁室112は、流体が流通する流路を一体的に構成している。
【0020】
●ボンネット部2
ボンネット部2は
図2~
図5に示されるように、バルブボディ1の凹部12a内に収容した状態に配設される。
このボンネット部2は、シート21、ダイヤフラム22、ダイヤフラム押え23、ボンネット24、ボンネットウォール25を備える。
【0021】
環状のシート21は、流入路111と流出路113とが連通する箇所の周縁に設けられている。シート21上には、シート21に当接離反することによって流入路111から流出路113へ流体を流通させたり、流通を遮断させたりするダイヤフラム22が設けられている。
【0022】
ダイヤフラム22は、ステンレス、Ni-Co系合金等の金属やフッ素系樹脂からなると共に、中心部が凸状に膨出した球殻状の部材であり、流路とアクチュエータ部4が動作する空間とを隔離している。このダイヤフラム22は駆動圧としてのエアが供給されてダイヤフラム押え23による押圧から開放されると、
図2(b)及び
図3(b)に示されるように、自身の復元力や流路内の圧力によって中央部がシート21から離反する方向に変位してシート21から離反する。その結果、弁室112が開放され、流入路111と流出路113とが連通した状態となる。一方、駆動圧としてのエアの供給が止まってダイヤフラム22がダイヤフラム押え23によって押圧されると、
図2(a)及び
図3(a)に示されるように、ダイヤフラム22の中央部がシート21に当接する方向に変位してシート21に当接する。その結果、弁室112が遮断され、流入路111と流出路113が遮断された状態となる。
【0023】
ダイヤフラム押え23は、ダイヤフラム22の上側に設けられ、ボンネット24により上下動可能に支持されると共に、摺動するピストン43に連動してダイヤフラム22の中央部を押圧する。
このダイヤフラム押え23は、略円柱状の基体部231と、ダイヤフラム22に当接する側の一端側において拡径した拡径部232からなる。
【0024】
基体部231には、軸心方向に長さを有し、拡径部232とは反対側の一端が開口した有底の条溝231aが形成されている。この条溝231aには、ボンネットウォール25のネジ孔25cにねじ込まれたネジ25dの軸棒部分が摺動可能に嵌合する。条溝231aとネジ25dは、ダイヤフラム押え23の周方向の回動を規制する回動規制手段を構成し、これによりダイヤフラム押え23は、摺動するピストン43に連動して上下動しつつも、周方向の回動を規制される。
【0025】
また、基体部231には、磁気センサを構成する磁石M1が取り付けられている。この磁石M1は、ボンネットウォール25に取り付けられた磁性体M2と共に後述する磁気センサを構成する。なお、本実施例では、磁石M1は、基体部231の条溝231aの反対側に取り付けられているが、磁性体M2と磁気センサを構成するのに支障がない限り、基体部231上の他の位置に取り付けることもできる。
【0026】
拡径部232は、その下面側においてダイヤフラム22に当接し、摺動するピストン43に連動してダイヤフラム22を押圧する。
【0027】
ボンネット24は、略円筒状からなり、弁室112を覆ってバルブボディ1の凹部12a内に収容される。
ボンネット24の内部には、ダイヤフラム押え23が貫挿される貫挿孔241aが中心部に形成された略円盤状の仕切部241が設けられている。
仕切部241の上方ないしは、アクチュエータ部4が配設される側に形成される凹部24aには、ボンネットウォール25が収容される。仕切部241とボンネットウォール25には夫々、互いに対応する位置にネジ穴241bと貫通孔25eが設けられており、ボンネット24にボンネットウォール25がボルト25fによって螺設される。
【0028】
ボンネット24の仕切部241は、一定の厚みを有しており、仕切部24に形成されている貫挿孔241aの内周面とダイヤフラム押え23の間にはOリングO2が介装されている。これにより、仕切部241とダイヤフラム22によって画定される空間の気密性が確保されている。
また、ボンネット24の仕切部241には、ボンネットウォール25に取り付けられている圧力センサPに連通する連通孔241dが設けられている。連通孔241dを介して圧力センサPが設けられていることにより、仕切部241とダイヤフラム22によって画定された空間内の圧力を測定することができる。
【0029】
また、ボンネット24の側面には、内側に収容したボンネットウォール25から導出されたフレキシブルケーブル51を外側へ導出させるための貫通孔241cが設けられている。
【0030】
ボンネットウォール25は、ボンネット24内に配設される部材である。このボンネットウォール25は肉厚の略円盤状の部材を平面視略C字状に刳り貫いた形状からなる。このボンネットウォール25の中心には、ダイヤフラム押え23の基体部231を貫挿させる貫挿孔25aが設けられている。また、貫挿孔25aをボンネットウォール25の半径方向外側に向かって開口させる開口部25bが設けられている。
【0031】
ボンネットウォール25の厚み部分の所定の箇所には、貫挿孔25aから半径方向外側に向かってねじ切られたネジ孔25cが形成されている。このネジ孔25cには外側からネジ25dが螺合し、螺合したネジ25dの軸心部分は、貫挿孔25a側へ抜け出して、貫挿孔25aに貫挿されたダイヤフラム押え23の条溝231aに摺動可能に嵌合する。
【0032】
ボンネットウォール25には、ボンネット24のネジ穴241bに対応する位置に貫通孔25eが設けられている。ネジ穴241bと貫通孔25eには、ボンネット24の仕切部241上にボンネットウォール25が配設された状態でボルト25fが螺合し、これによりボンネット24にボンネットウォール25が固定される。
【0033】
ボンネットウォール25の外周面のうち、開口部25b近傍には、開口部25bを塞ぐように掛け渡して固定された平板状の磁性体M2が取り付けられている。この磁性体M2は、ダイヤフラム押え23に取り付けられた磁石M1と共に後述する磁気センサを構成する。
【0034】
●カバー部3
カバー部3は
図1及び
図6に示されるように、アクチュエータボディ41とバルブボディ1を挟圧して一体的に保持すると共に、回路基板52及び回路基板52に設けられたコネクタ53を流体制御機器Vに固定する固定手段を構成する。
このカバー部3は、カバー31と平板状のプレート32、33を備える。
【0035】
カバー31は、略U字状からなり、その内側にはアクチュエータボディ41とバルブボディ1の端部が嵌め込まれる。
カバー31の両側面には、アクチュエータボディ41が嵌め込まれる位置に対応してネジ孔31aが設けられている。これにより、バルブボディ1が内側にはめ込まれた状態でネジ孔31aにネジ31bを螺入させ、ネジ31bの先端をバルブボディ1に圧接させると、バルブボディ1をカバー31の内側に挟持することができる。
【0036】
また、カバー31の厚み部分には、ネジ穴31cが設けられている。このネジ穴31cに、ネジ31dがプレート32、33の貫通孔32b、33bを介して螺合することで、カバー31にプレート32、33が取り付けられる。
【0037】
プレート32、33は、カバー31の内側にアクチュエータボディ41とバルブボディ1の端部を嵌めた状態でカバー31とネジ止め固定され、固定された状態においては、カバー31との間にアクチュエータボディ41とバルブボディ1を挟圧保持する。
このプレート32の下方には、舌片状に切り欠いた切欠部32aが形成されており、フレキシブルケーブル51はこの切欠部32aを介して、コネクタ53が設けられた回路基板52へ導出される。
【0038】
プレート33は、プレート32との間に回路基板52を介装させた状態でプレート32及びカバー31にネジ止め固定され、プレート32との間に回路基板52を挟圧保持する。
このプレート33には、中央部に略矩形状の貫通孔33aが設けられており、回路基板52に設けられたコネクタ53はこの貫通孔33aから外側へ抜け出る。
【0039】
ここで、基台部11が平面視矩形状からなるところ、カバー部3は
図1(b)に示されるように、コネクタ53を矩形状の基台部11の対角線方向に向けて流体制御機器Vに固定している。このような向きにコネクタ53を固定するのは以下の理由による。即ち、複数の流体制御機器Vによってユニット化された流体制御装置(ガスボックス)を構成する場合には、集積化の要請から、隣り合う矩形状の基台部11の向きを揃えてできる限り隙間をなくし、基盤あるいはマニホールドブロック上に流体制御機器Vを配設するのが好適である。他方、このように配設して集積させた場合には、コネクタ53に端子等を接続しにくくなる。そのため、コネクタ53を基台部11の対角線方向に向けることで、真横に配設されている流体制御機器Vの方に向ける場合と比べ、接続するスペースを広く取ることができる。その結果、コネクタ53に端子等を接続するのが容易であるし、端子等の折れや撚れによる断線等の不具合を防いだり、端子等が流体制御機器Vに当たって流体制御機器Vの動作に異常をもたらすといった不具合を防ぐこともできる。
【0040】
●アクチュエータ部4
アクチュエータ部4は、ボンネット部2上に配設される。
このアクチュエータ部4は
図2及び
図3に示されるように、アクチュエータボディ41、アクチュエータキャップ42、ピストン43、バネ44を備える。なお、
図4においては、アクチュエータ部4の内部構造を省略しているが、内部構造は
図2及び
図3に示されるとおりである。
【0041】
アクチュエータボディ41は、ピストン43とボンネット24の間に介装される。
このアクチュエータボディ41は
図4に示されるように略円柱形状からなり、中心部には、ピストン43とダイヤフラム押え23が貫挿される貫挿孔41aが長さ方向に沿って設けられている。
図2及び
図3に示されるように、貫挿孔41a内ではピストン43とダイヤフラム押え23が当接しており、ダイヤフラム押え23はピストン43の上下動に連動して上下動する。
【0042】
ピストン43が配設される側の上端面には、環状の突条からなる周壁411が形成されており、周壁411の内側の平坦な水平面とピストン43の拡径部431の下端面との間には、駆動圧が導入される駆動圧導入室Sが形成される。
【0043】
また、アクチュエータボディ41の一端側の外周面上には、雄ネジが切られており、アクチュエータキャップ42の内周面に切られた雌ネジと螺合することにより、アクチュエータボディ41はアクチュエータキャップ42の一端に取り付けられる。
【0044】
アクチュエータボディ41の長さ方向の中心部は、断面視略六角形状に形成されており、当該断面視六角形状の部分とバルブボディ1の上端部分は、カバー31によって一体的に挟圧される。
【0045】
アクチュエータキャップ42は、下端部が開口したキャップ状の部材であり、内部にピストン43とバネ44を収容している。
アクチュエータキャップ42の上端面には、ピストン43の駆動圧導入路432に連通する開口部42aが設けられている。
アクチュエータキャップ42の下端部は、アクチュエータボディ41の上部が螺合して閉止されている。
【0046】
ピストン43は、駆動圧の供給と停止に応じて上下動し、ダイヤフラム押え23を介してダイヤフラム22をシート21に当接離反させる。
このピストン43の軸心方向略中央は円盤状に拡径しており、当該箇所は拡径部431を構成している。ピストン43は、拡径部431の上面側においてバネ44の付勢力を受ける。また、拡径部431の下端側には、駆動圧が供給される駆動圧導入室Sが形成される。
【0047】
また、ピストン43の内部には、上端面に形成された開口部43aと、拡径部431の下端側に形成される駆動圧導入室Sとを連通させるための駆動圧導入路432が設けられている。ピストン43の開口部43aはアクチュエータキャップ42の開口部42aまで連通しており、外部から駆動圧を導入するための導入管が開口部42aに接続され、これにより駆動圧導入室Sに駆動圧が供給される。
【0048】
ピストン43の拡径部431の外周面上には、OリングO41が取り付けられており、このOリングO41はピストン43の拡径部431の外周面とアクチュエータボディ41の周壁411の間をシールしている。また、ピストン43の下端側にもOリングO42が取り付けられており、このOリングO42はピストン43の外周面とアクチュエータボディ41の貫挿孔41aの内周面の間をシールしている。これらのOリングO41、O42により、ピストン43内の駆動圧導入路432に連通する駆動圧導入室Sが形成されると共に、この駆動圧導入室Sの気密性が確保されている。
【0049】
バネ44は、ピストン43の外周面上に巻回されており、ピストン43の拡径部431の上面に当接してピストン43を下方、即ちダイヤフラム22を押下する方向に付勢している。
【0050】
ここで、駆動圧の供給と停止に伴う弁の開閉動作について言及する。開口部42aに接続された導入管(図示省略)からエアが供給されると、エアはピストン43内の駆動圧導入路432を介して駆動圧導入室Sに導入される。これに応じて、ピストン43はバネ44の付勢力に抗して上方に押し上げられる。これにより、ダイヤフラム22がシート21から離反して開弁した状態となり、流体が流通する。
一方、駆動圧導入室Sにエアが導入されなくなると、ピストン43がバネ44の付勢力に従って下方に押し下げられる。これにより、ダイヤフラム22がシート21に当接して閉弁した状態となって、流体の流通が遮断される。
【0051】
●センサ
流体制御機器Vは、機器内の動作を検出するためのセンサとして、圧力センサPと、磁石M1と磁性体M2からなる磁気センサを備えている。
圧力センサPは
図3に示されるように、ボンネットウォール25の下面、ないしは流路側に取り付けられている。この圧力センサPは連通孔241dを介して、ダイヤフラム22とボンネット24の仕切部241によって画定された空間に連通している。これにより圧力センサPは、ダイヤフラム22とボンネットの仕切部241によって画定された空間内の圧力を検出することができる。
なお、圧力センサPが連通孔241dに通じる箇所にはパッキン26が介装されており、気密状態が担保されている。
【0052】
ボンネットウォール25の開口部25bには磁性体M2が取り付けられており、この磁性体M2は、ダイヤフラム押え23に取り付けられた磁石M1と共に磁気センサを構成する。
この磁気センサによって以下の通り、弁の開閉動作を検知することができる。即ち、磁石M1がダイヤフラム押え23の上下動に応じて摺動するのに対し、磁性体M2はボンネットウォール25及びボンネット24共にバルブボディ1内に固定されている。この結果、ダイヤフラム押え23の上下動に従って上下動する磁石M1と、位置が固定されている磁性体M2との間に発生する磁界の変化に基づき、ダイヤフラム押え23の動作、ひいては弁の開閉動作を検知することができる。
なお、本実施形態では磁気センサを用いたが、これに限らず、他の実施形態においては、光学式の位置センサ等、他の種類のセンサを用いることもできる。
【0053】
圧力センサPと磁気センサには夫々、可撓性を有する通信用のフレキシブルケーブル51の一端が接続しており(磁気センサについては、詳細には磁性体M2に接続している)、フレキシブルケーブル51の他端は、流体制御機器Vの外側に設けられた回路基板52に接続している。さらに、回路基板52には外部端子接続用の略矩形状のコネクタ53が設けられており、これにより、圧力センサPと磁気センサによって測定されたデータを抽出することができる。
【0054】
なお、本実施形態において、フレキシブルケーブル51と回路基板52にはフレキシブル基板(FPC)が用いられ、フレキシブルケーブル51、回路基板52、及びコネクタ53は一体的に構成されている。フレキシブルケーブル51と回路基板52にフレキシブル基板を用いることにより、配線経路として部材間の隙間を利用することが可能になり、その結果、被覆線を用いる場合に比べて流体制御機器V自体を小型化することができる。
また、コネクタ53の種類や形状は、各種の規格に応じて適宜に設計し得る。
【0055】
このような構成からなる流体制御機器Vによれば、圧力センサP及び磁気センサによって検出されたデータを外部へ出力させることができる。そして、このようなデータは、弁の開閉動作、ダイヤフラム22の破損等によるリーク、流体制御機器Vの経年劣化や個体差などを把握するための情報となり得る。
【0056】
●組立工程
続いて、本実施形態に係る流体制御機器Vを構成する各部材の組立工程について説明する。
まず、
図5に示されるように、ボンネットウォール25をボンネット24に収容させる。このとき、ボンネットウォール25の圧力センサP及び磁性体M2に一端が接続するフレキシブルケーブル51の他端を貫通孔241cから外側へ導出させる。
ボンネットウォール25に取り付けられた磁性体M2とダイヤフラム押え23に取り付けられた磁石M1の位置や、ダイヤフラム押え23に設けられている条溝231aとネジ25dの位置を対応させて、ボンネット24の貫挿孔241aとボンネットウォール25の貫挿孔25aにダイヤフラム押え23を貫挿させる。
【0057】
次に
図4に示されるように、シート21、ダイヤフラム22、ボンネットウォール25が取り付けられたボンネット24の順でバルブボディ1の凹部12a内にボンネット部2を収容し、さらにアクチュエータボディ41を凹部12a内に収容する。ここで、バルブボディ1には、基台部11とは反対側の一端が開口すると共に、外側から凹部12a側へ貫通したスリット12bが設けられている。これにより、ボンネット部2を凹部12a内に収容させる際には、貫通孔241cから導出されたフレキシブルケーブル51の位置をスリット12bの位置に合わせるだけで、スムーズにボンネット部2を凹部12a内に収容することができる。即ち、バルブボディ1内からフレキシブルケーブル51をわざわざ引き出したりするような手間がなく組立作業性が良い。
【0058】
バルブボディ1内にボンネット部2を収容した後は、ボンネット部2上にアクチュエータ部4を配設した上、カバー部3でバルブボディ1とアクチュエータ部4をカバーする。
図1及び
図6に示されるように、カバー部3でバルブボディ1とアクチュエータ部4をカバーする工程ではまず、カバー31の内側にアクチュエータボディ41とバルブボディ1の上端部を嵌め込み、ネジ孔31aにネジ31bを螺入させてバルブボディ1にカバー31を固定する。そして、プレート32とプレート33の間に回路基板52を介装させてプレート32、33同士をネジ止め固定してプレート32とプレート33の間に回路基板52を挟圧保持させ、これをカバー31に取り付けてネジ31dで固定する。
【0059】
以上の本実施形態に係る流体制御機器Vの組立においては、基台部11とは反対側の一端が開口すると共に、外側から凹部12a側へ貫通したスリット12bが設けられていることにより、ボンネット部2をバルブボディ1の上端開口部から凹部12a内へ収容させるだけで、フレキシブルケーブル51をバルブボディ1の凹部12aから導出させた状態とすることができる。そのため、組み立てが容易であるし、フレキシブルケーブル51を傷つけて断線等するおそれもない。
【0060】
また、流体制御機器Vからデータを取得する構造をフレキシブルケーブル51による有線の構造としたことで、圧力センサPや磁気センサ等のセンサの設置箇所から外部をステンレス等の金属部材が隔てる場合あっても通信可能である。また、有線にすることでセンサへの電源供給が可能になり、電池交換が不要であるため、作業者のアクセスが難しい半導体製造装置内で使用される流体制御機器Vには好適である。さらに、流体制御装置(ガスボックス)内、あるいは半導体製造装置内のように、機器が密集した空間であっても、電波障害が生じず、確実な通信が可能である。
【0061】
なお、以上の本実施形態に係る流体制御機器Vでは、圧力センサPと、磁石M1と磁性体M2からなる磁気センサという複数のセンサを備えたが、これに限らず、いずれか一つのセンサのみを備えたものとすることもできる。
【符号の説明】
【0062】
1 バルブボディ
11 基台部
12 円筒部
12a 凹部
12b スリット
2 ボンネット部
21 シート
22 ダイヤフラム
23 ダイヤフラム押え
231 基体部
231a 条溝
231b ネジ
232 拡径部
24 ボンネット
241 仕切部
241a 貫挿孔
241b ネジ穴
25 ボンネットウォール
25a 貫挿孔
25b 開口部
3 カバー部
31 カバー
32 プレート
33 プレート
4 アクチュエータ部
41 アクチュエータボディ
41a 貫挿孔
411 周壁
42 アクチュエータキャップ
43 ピストン
43a 開口部
431 拡径部
432 駆動圧導入路
44 バネ
51 フレキシブルケーブル
52 回路基板
53 コネクタ
P 圧力センサ
M1 磁石
M2 磁性体
S 駆動圧導入室