(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】微細タイミング分解能を用いるワイヤレス電力伝送装置
(51)【国際特許分類】
H02J 50/10 20160101AFI20221207BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20221207BHJP
H03K 7/08 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
H02J50/10
H02J7/00 301D
H03K7/08 A
(21)【出願番号】P 2020507540
(86)(22)【出願日】2018-08-10
(86)【国際出願番号】 US2018046307
(87)【国際公開番号】W WO2019033024
(87)【国際公開日】2019-02-14
【審査請求日】2021-08-09
(32)【優先日】2017-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507107291
【氏名又は名称】テキサス インスツルメンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】230129078
【氏名又は名称】佐藤 仁
(72)【発明者】
【氏名】マリウス ヴィセンチウ ディナ
(72)【発明者】
【氏名】サルマン マザール
(72)【発明者】
【氏名】ジンウェイ シュー
【審査官】早川 卓哉
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0126069(US,A1)
【文献】特開2017-135981(JP,A)
【文献】特開2009-290857(JP,A)
【文献】特開2016-116365(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0040988(US,A1)
【文献】米国特許第05657211(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J50/00-50/90
H02J7/00-7/12
H02J7/34-7/36
H02M3/00-3/44
H02M7/42-7/98
G06F1/04-1/14
G06F1/26-1/3296
H03K7/00-11/00
H03L1/00-9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力トランスミッタであって、
1次インダクタと、
前記1次インダクタに結合される駆動トランジスタであって、ゲートを有する、前記駆動トランジスタ
と、
立ち上がりエッジ制御回路であって、
電力搬送周波数入力とm段出力とクロック信号出力とを有する電圧制御発振器(VCO)と、
前記m段出力に結合されるmサブ部分入力と、選択入力と、立ち上がりエッジ
マルチプレクサ出力とを
有する
立ち上がりエッジマルチプレクサと、
前記クロック信号出力に結合される入力と、n立ち上がりエッジ部分出力とを有する立ち上がりエッジディバイダ回路と、
前記立ち上がりエッジマルチプレクサ出力と前記n立ち上がりエッジ部分出力とに結合される入力と、前記駆動トランジスタのゲート
に結合される立ち上がりエッジ制御出力とを
有する
立ち上がりエッジ論理回路要素と、
を含む、前記立ち上がりエッジ制御回路
と、
を含む、電力トランスミッタ。
【請求項2】
請求項
1に記載の電力トランスミッタであって、
mが前記VCOのクロック位相の数である、電力トランスミッタ。
【請求項3】
請求項
2に記載の電力トランスミッタであって、
前記立ち上がりエッジ制御回路が、全ての考えられるmより少ない値にのみタイミング遅延を適用するように構成される遅延回路を更に含む、電力トランスミッタ。
【請求項4】
請求項
1に記載の電力トランスミッタであって、
前記
立ち上がりエッジ制御出力が
、前記電力
搬送周波数の逆数をn×mの積で割ったものに等しい
分解能を提供する、電力トランスミッタ。
【請求項5】
請求項1に記載の電力トランスミッタであって、
立ち下がりエッジ制御回路であって、
前記m段出力に結合されるmサブ部分入力と、選択入力と、立ち下がりエッジマルチプレクサ出力とを有する立ち下がりエッジマルチプレクサと、
前記クロック信号出力に結合される入力と、n立ち下がりエッジ部分出力とを有する立ち下がりエッジディバイダ回路と、
前記立ち下がりエッジマルチプレクサ出力と前記n立ち下がりエッジ部分出力とに結合される入力と、前記駆動トランジスタのゲートに結合される
立ち下がりエッジ制御出力とを有する立ち下がりエッジ論理回路要素とを含む、前記立ち下がりエッジ制御回路を更に含む、電力トランスミッタ。
【請求項6】
請求項
5に記載の電力トランスミッタであって、
前記立ち上がりエッジ制御
出力に結合されるセット入力と
、前記立ち下がりエッジ制御
出力に結合されるリセット入力と
、前記駆動トランジスタのゲートに結合されるパルス幅出力とを有するフリップフロップを更に含
む、電力トランスミッタ。
【請求項7】
請求項1に記載の電力トランスミッタであって、
レシーバであって、
1次インダクタに結合される2次インダクタと、
前記2次インダクタに結合される整流トランジスタであって、受信立ち上がりエッジ制御回路
の出力と受信立ち下がりエッジ制御回路の出力とに結合される
ゲートを有する、前記整流トランジスタと、
を含む、前記レシーバを更に含む、電力トランスミッタ。
【請求項8】
請求項
7に記載の電力トランスミッタであって、
前記
駆動トランジスタがHブリッジ回路の一部であり、前記
整流トランジスタが整流器ブリッジの一部である、
電力トランスミッタ。
【請求項9】
コンピューティングデバイスであって、
電力リードを有するプロセッサと、
前記プロセッサの電力リードに結合される電力出力と、ゲートを有する整流トランジスタに結合される2次インダクタと、立ち上がりエッジ制御回路とを含む、ワイヤレス電力レシーバであって、前記立ち上がりエッジ制御回路が、
電力搬送周波数入力と、m段出力と、クロック信号出力とを有する電圧制御発振器(VCO)と、
前記m段出力に結合されるmサブ部分入力と、選択入力と、立ち上がりエッジ
マルチプレクサ出力とを有する立ち上がりエッジマルチプレクサと、
前記クロック信号出力に結合される入力と、n立ち上がりエッジ部分出力とを有する立ち上がりエッジディバイダ回路と、
前記立ち上がり
エッジマルチプレクサ出力と前記n立ち上がり
エッジ部分出力とに結合される入力と、前記整流トランジスタのゲートに結合される立ち上がりエッジ制御出力とを有する立ち上がりエッジ論理回路要素と、
を含む、前記ワイヤレス電力レシーバと、
を含む、コンピューティングデバイス。
【請求項10】
請求項
9に記載のコンピューティングデバイスであって、
前記電力
出力がバッテリーに
結合される、コンピューティングデバイス。
【請求項11】
請求項
9に記載のコンピューティングデバイスであって、
前記
整流トランジスタが整流器回路の一部である、コンピューティングデバイス。
【請求項12】
請求項
9に記載のコンピューティングデバイスであって、
前記
ワイヤレス電力レシーバが、
立ち下がりエッジ
制御出力を
有する立ち下がりエッジ制御回路
と、
前記立ち上がりエッジ制御
出力に結合されるセット入力と、前記立ち下がりエッジ制御
出力に結合されるリセット入力と
、前記整流トランジスタのゲートに結合されるパルス出力とを有するフリップフロップ
と、
を更に含
む、コンピューティングデバイス。
【請求項13】
方法であって、
或る電力
搬送周波数で
2次インダクタを介して電力をワイヤレスに受け取ることであって、前記
2次インダクタが
1組のトランジスタを有する整流器に結合される、前記電力をワイヤレスに受け取ること
と、
電圧制御オシレータ(VCO)出力のn×m個のサブ区分のうちの
1つ又は複数の選択されたものを用いてパルス幅変調(PWM)信号を生成することであって、前記VCOが、前記電力
搬送周波数を有する基準クロックを受け取
り、前記電力
搬送周波数のn倍の周波数とm個の選択可能な位相とを有する前記出力を生成するように構成される、前記PWM信号を生成すること
と、
前記PWM信号
で前記1組のトランジスタを制御すること
と、
を含む、方法。
【請求項14】
請求項
13に記載の方法であって、
前記電力をバッテリー又はコンピューティングデバイスに供給することを更に含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、概してワイヤレス電力伝送に関し、より詳細には微細(fractional)タイミング分解能を用いるワイヤレス電力伝送に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤレス電力伝送システムは、無線周波数(RF)トランスミッタ及びRFレシーバを有する。RFトランスミッタは、電力源(例えば、幹線電力線)に結合され、インダクタ、コイル、アンテナ、金属プレート、又は他のカップリングデバイスを用いて、電流を発振電磁場に変換する。RFレシーバにおける別のカップリングデバイスが、放射された電磁場の一部を捕捉し(互いに近接する2つのコイルは電気的変圧器を形成する)、次いで、RFレシーバは、受け取った電磁場を電流に変換する。
【0003】
多くの実装において、RFトランスミッタは、充電パッド又は端末内に配置され得、RFレシーバは、コンピューティングデバイス(デスクトップ、ラップトップ、タブレット、スマートフォンなど)又はバッテリーに結合され得る。次いで、RFトランスミッタとRFレシーバとの間で伝送されたエネルギーは、コンピューティングデバイスを動作させる及び/又はバッテリーを充電するために用いられ得る。したがって、伝送効率(送信されたエネルギーの量に対する受信したエネルギーの量)は、ワイヤレス電力伝送設計における重要なパラメータである。
【0004】
RFトランスミッタ及びRFレシーバの両方におけるコイルは、多くのスイッチ又はトランジスタを用いて制御され、電力伝送効率を増大させるには、これらのトランジスタの正確な制御が必要となることが多い。しかしながら、このような制御を提供するために典型的に必要とされる高周波数クロックは、コスト及び複雑度を著しく増大させ得る。
【発明の概要】
【0005】
微細タイミング分解能を用いるワイヤレス電力伝送のためのシステム及び方法の記載される例において、電力トランスミッタが、トランジスタと立ち上がりエッジ制御回路とを含み得、立ち上がりエッジ制御回路は、フルクロック周期より大きい分解能で選択された時間にパルスの立ち上がりエッジを生成するためにトランジスタのゲートを制御するように構成される。
【0006】
また、電力トランスミッタは、或る電力キャリア周波数にわたって電力をワイヤレスに放出するように構成されるインダクタを含み得、この場合、フルクロック周期は電力キャリア周波数の逆数である。また、電力トランスミッタは、電圧制御オシレータ(VCO)を有する位相ロックループ(PLL)回路を含み得、VCOは、電力キャリア周波数よりn倍大きい周波数を有するクロック信号を生成するように構成される。
【0007】
場合によっては、立ち上がりエッジ制御回路は、VCOに結合されてクロック信号をn個の部分に分割するように構成されるディバイダ回路を含み得る。また、立ち上がりエッジ制御回路は、VCOに結合されてn個の部分の各々を複数のm個のサブ部分に細分するように構成されるマルチプレクサを含み得る。例えば、mは、VCOのクロック位相の数であり得る。立ち上がりエッジ制御回路は更に、全ての考えられるmより少ない値にのみタイミング遅延を適用するように構成される遅延回路を含み得る。分解能は、電力キャリア周波数の逆数をn×mの積で割ったものに等しくし得る。
【0008】
幾つかの実装において、トランジスタのゲートは、この分解能で選択された後続の時間にパルスの立ち下がりエッジを生成するために電力キャリア周波数を用いる立ち下がりエッジ制御回路を介して制御され得る。ワイヤレス電力トランスミッタは更に、立ち上がりエッジ制御回路に結合されるセット入力と、立ち下がりエッジ制御回路に結合されるリセット入力とを有するフリップフロップを含み得、フリップフロップの出力がパルスを生成するために用いられ、パルスが、トランジスタのゲートを駆動するために使用可能なパルス幅変調(PWM)パルスであるようにする。
【0009】
電力トランスミッタはレシーバも含み得、レシーバは、ワイヤレス電力を受け取るように構成される別のインダクタと、他のインダクタに結合される別のトランジスタとを含む。この場合、他のトランジスタの別のゲートは、別の立ち上がりエッジ制御回路及び別の立ち下がりエッジ制御回路を用いて制御され、他の立ち上がりエッジ制御回路及び他の立ち下がりエッジ制御回路は、電力キャリア周波数を用いて、その分解能を有する別のパルスを生成するように構成される。トランジスタはHブリッジ回路の一部であり得、他のトランジスタは整流器ブリッジの一部であり得る。
【0010】
別の実施例において、コンピューティングデバイスが、プロセッサと、プロセッサに電力を供給するように構成されるワイヤレス電力レシーバとを含み得、ワイヤレス電力レシーバは、トランジスタに結合されるインダクタを含み、トランジスタのゲートが、電力キャリア周波数の逆数より大きい分解能で選択された時間にパルスの立ち上がりエッジを生成するために電力キャリア周波数を用いるように構成される立ち上がりエッジ制御回路を部分的に介して制御される。
【0011】
ワイヤレス電力レシーバは、バッテリーを充電することによってプロセッサに電力を供給するように構成され得る。トランジスタは整流器回路の一部であり得る。また、ワイヤレス電力レシーバは、PLL回路のVCOを更に含み得、VCOは電力キャリア周波数を受信し、電力キャリア周波数のn倍の周波数を有するクロック信号を生成するように構成される。
【0012】
立ち上がりエッジ制御回路は、VCOに結合されてクロック信号をn個の部分に分割するように構成されるディバイダと、VCOに結合されてn個の部分の各々を複数のm個のサブ部分に細分するように構成されるマルチプレクサとを含み得、ここで、mはVCOのクロック位相の数であり、分解能は、電力キャリア周波数の逆数をn×mの積で割ったものに等しい。トランジスタのゲートは、部分的に、この分解能で選択された後続の時間にパルスの立ち下がりエッジを生成するために電力キャリア周波数を用いるように構成される立ち下がりエッジ制御回路を介して更に制御され得、ワイヤレス電力レシーバは、立ち上がりエッジ制御回路に結合されるセット入力と、立ち下がりエッジ制御回路に結合されるリセット入力とを有するフリップフロップを更に含み、フリップフロップの出力はパルスを生成するために使用可能である。
【0013】
更に別の実施例において、或る方法が、トランジスタのセットを有する整流器に結合されるインダクタを介して或る電力キャリア周波数でワイヤレスに電力を受け取ることと、PLL回路のVCOによって生成されるVCO出力のn×m個のサブ区分のうちの1つ又は複数の選択されたサブ区分を用いてPWM信号を生成することであって、ここで、VCOが、電力キャリア周波数を有する基準クロックを受信し、電力キャリア周波数のn倍の周波数とm個の選択可能な位相とを有する出力を生成するように構成される、PWM信号を生成することと、PWM信号を用いてトランジスタのセットの各々を制御することを含み得る。この方法は、バッテリー又はコンピューティングデバイスに電力を供給することも含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】幾つかの実施例に従った、ワイヤレス電力伝送システムの一例のブロック図である。
【0015】
【
図2】幾つかの実施例に従った、微細周期タイミング分解能を用いる位相ロックループ(PLL)ベースのパルス幅変調(PWM)生成器の一例のブロック図である。
【0016】
【
図3】幾つかの実施例に従った、微細周期タイミング分解能を用いるPLLベースのPWM生成器の例示の実装の回路図である。
【0017】
【
図4】幾つかの実施例に従った、微細周期タイミング分解能を用いるPLLベースのPWM生成器のオペレーションを図示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、幾つかの実施例に従った、例示的なワイヤレス電力伝送システム100のブロック図である。図示されるように、ワイヤレス電力伝送システム100は、無線周波数(RF)トランスミッタ101及びRFレシーバ102を含む。
【0019】
RFトランスミッタ101は、RFトランスミッタ回路要素103と、複数のトランジスタ又はスイッチQ1~Q4を有するHブリッジ105とを含む。本明細書で用いられるように、「Hブリッジ」という用語は、電圧がいずれかの方向に負荷を横切って印加されることを可能にする電子回路を指す。種々の実施例において、トランジスタQ1~Q4は各々、ソース端子及びドレイン端子間にダイオードを有し得る。例えば、Q1~Q4は、パワー金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)などとして実装され得る。
【0020】
また、RFトランスミッタ101は、Hブリッジ105に結合される一次平滑化静電容量(Cprimary)及び一次インダクタ、コイル、又はアンテナ(Lprimary)を含む。Lprimaryは、二次インダクタ、コイル、又はアンテナ(Lsecondary)に電磁的に結合されると、電気的変圧器107を形成する。
【0021】
RFレシーバ102は、整流器ブリッジ106に結合されるLsecondary及び二次平滑静電容量(Csecondary)を含む。整流器ブリッジ106は、RFレシーバ回路要素104に結合される複数のトランジスタ又はスイッチQ4~Q8(例えば、パワーMOSFET)を含む。Q5とQ8との間のノードは、出力電圧レール(Vbridge_out)を提供する。Vbridge_outは、次いで、コンピューティングデバイスのバッテリー又はプロセッサなどの電気的負荷に電力を供給するために、バックブーストコンバータ、電圧レギュレータなど(図示せず)に提供される。
【0022】
電気的変圧器107は、一次電流Ipが電磁場Mに変換されることを可能にし、次いで、電磁場Mは、電力キャリア周波数を有する電力キャリア信号としてLprimaryによって放出される。その後、Lsecondaryは、電磁エネルギーの一部を受け取り、それを二次電流Isに変換する。
【0023】
RFトランスミッタ101とRFレシーバ102との間の電力伝送の効率は、電流IsとIpとの間の比に比例する、送信されたエネルギーと受信したエネルギーとの間の比によって与えられる。また、この効率は、Ip及びIsを生成するために、トランジスタQ1~Q8をオン(導通)及びオフ(漏れ効果を除く非導通)にすることができる速度及び精度に大きく依存する。
【0024】
大まかに説明すると、トランジスタQ1~Q8は、それぞれのトランジスタのゲート端子にパルス信号を印加する、RFトランスミッタ回路要素103及びRFレシーバ回路要素104によって制御される。種々の実施例において、RFトランスミッタ回路要素103及びRFレシーバ回路要素104は、クロック信号の微細区分に基づいて選択されるタイミング分解能又は粒度を有するパルス幅変調(PWM)パルスを生成し得る。例えば、そのようなクロック信号は、電力がワイヤレスに放射されるのと同じ周波数(電力キャリア周波数)であり得る。
【0025】
例えば、電力キャリア周波数が6.78MHzなど数メガヘルツを超える場合、ゲートドライバパルス(オン/オフ)の分解能又は粒度は、1.1nsレンジにあるべきである。この要件を考えると、これらのパルスを生成するための時間基準として、通常、870MHzのシステムクロックが必要とされる。しかしながら、この高クロック周波数で動作すると、最終的な解決策の実装コスト及び複雑度が著しく増大し得る。主なコスト付加要因は、そのようなシステムを実装するために必要なプロセス及び技術が、高電圧及び高速度オペレーション両方を同時にサポートする必要があることである。これは、通常、許容可能なコストで達成するのは容易ではない。また、結果として生じる高電力消費は、従来の実装を競合し得ないものにする別の要因である。
【0026】
したがって、種々の実施例において、クロック信号の微細区分は、
図2に示されるように、1つ又は複数のゲート制御回路に結合される位相ロックループ(PPL)回路を用いて達成され得る。特に、
図2は、微細周期タイミング分解能200を用いるPLLベースのPWMパルス生成器のブロック図である。種々の実施例において、PWMパルス生成器200の1つ又は複数の事例が、RFトランスミッタ回路要素103及び/又はRFレシーバ回路要素104に配置され得る。
【0027】
図示されるように、電圧制御オシレータ(VCO)203は、PLLフィルタ(図示せず)から、(例えば、6.78MHzで動作する)電力キャリア周波数にロックされた信号を受信する。これに応答して、VCO203は、電力キャリア周波数よりn倍大きい周波数を有するクロックを生成する(例えば、n=16の場合、VCO203のクロック周波数は108.48MHzである)。幾つかの実装において、VCO203は、m段の全差動リングオシレータ(例えば、108.48MHzで動作する8段オシレータ)であり得る。
【0028】
VCO203の出力は、ディバイダ回路204に提供される(この場合、ディバイダ回路204は、クロック周期を16個の部分又は「ビン」に分割する)。立ち上がりエッジ制御回路201は、第1のマルチプレクサ205を含み、第1のマルチプレクサ205は、VCO203のm個の位相のうちの1つを受信し、(例えば、制御ワードの3ビットLSB部分に基づいて)m個のうちの1つの値を選択するように構成される。カウンタ選択回路206は、(例えば、制御ワードの4ビットMSB部分に基づいて)ディバイダ204からn個のビンのうちの1つを選択する。マルチプレクサ205及びカウンタ選択回路206からの出力は、n×mの積で除算された電力キャリア周波数の周期に等しい時間分解能又は粒度(及び/又は離散時間インクリメント)を有するPWMパルスのための立ち上がり時間を選択するために、論理ゲート207によって結合される。
【0029】
特に、周波数が6.78MHzである場合、電力キャリア信号の周期は約147nsであるが、n=16及びm=8である場合、選択された立ち上がり時間のタイミング分解能は1.15ns程度である。
【0030】
図2を更に参照すると、立ち下がりエッジ制御回路202は、マルチプレクサ208がマルチプレクサ205と同じデバイスの別の事例であり得、カウンタ選択回路209がカウンタ選択回路206と同じデバイスの別の事例であり得るという点で、立ち上がりエッジ制御回路201と同様である。
【0031】
論理ゲート207の出力は、フリップフロップ211のセット入力に結合され、論理ゲート210の出力は、フリップフロップ211のリセット入力に結合される。従って、フリップフロップ211の出力において結果として得られるPWMパルスは、上述の増大したタイミング粒度又は分解能で選択される立ち上がり及び立ち下がりエッジで生成される。
【0032】
PLLベースのPWMパルス生成器200は、(VCO203からの)108.48MHzのシステムクロック速度でのみ動作する一方で、ナノ秒未満のPWMが可能である。微細タイミング分解能は、8段リングオシレータ内の中間段をタップ接続する(tapping)ことによって達成され得る。全デジタルゲート・パルスエンコーダは、リングオシレータクロック位相をPLLフィードバックディバイダから来る状態情報と組み合わせて、高忠実度で極めて柔軟なPWMパルス生成器をもたらす。
【0033】
その結果、パルス幅及び位置の両方に対して1.15nsの分解能を有するパルス幅変調生成方式が得られる。そのため、(トランスミッタ及び同期レシーバ/整流器の両方で)NexFetデバイスQ1~Q8のゲートを駆動するPWMパルスは、1/6.78MHz(約147ns)の基準クロックサイクル内の、どこでも開始することができ、どこでも止まることができる。
【0034】
トランスミッタ側では、VCO203は、6.78MHzで動作する外部基準クロックにロックされたPLL周波数シンセサイザーの一部である。レシーバ側は、6.78MHzの受信キャリア信号がPLL基準として機能することを除いて、同じ回路要素のすべてを用いることができる。
【0035】
幾つかの実装において、回路は、任意の開始時間に(例えば、常に、t=150nsで)PWMパルスの立ち上がりエッジをもたらし得、一方、立ち下がりエッジは、t=150ns+1.15nsからt=150ns+1.15ns×124=292nsまでの任意の離散時間に選択され得る。パルスの各々のパルス幅は、立ち下がりエッジを制御するデコーダの選択が1と124の間(7ビットの分解能)で変化するように制御され得る。
【0036】
例えば、8段階VCOリングオシレータからの8個のクロック位相を16フィードバックディバイダ(16で分周する)タップと組み合わせて、トランスミッタ(一次)側とレシーバ(二次)側の両方で4つすべてのゲート/FETドライバに対するPWM制御パルスを生成し得る。従って、147ns(1/6.78MHz)の基準クロックサイクルは128スロットに分割され、各スロットは1.15ns幅である。最終的に、立ち上がりエッジ制御出力は、SR FF(これは、PWMパルスを開始する)をセットし、立ち下がりエッジ制御出力は、SR FF(これは、PWMパルスを終了する)をリセットする。
【0037】
プロセスノードの選択肢の速度制約に応じて、125~128のPWM幅は回路200ではカバーできない可能性があるが、これは本願には必要ではない。しかし、他の実施例において、全PWM幅レンジをカバーすることができる。
【0038】
図3は、幾つかの実施例に従った、微細周期タイミング分解能200を用いるPLLベースのPWM生成器の実装例300の回路図である。この例において、マルチプレクサ回路301(MUX1)が、カウンタセレクタ206及び/又は209を実装し得、マルチプレクサ回路305が、マルチプレクサ206及び/又は208を実装し得る。また、実装例300は、マルチプレクサ209を介してマルチプレクサ回路301の出力と結合される前に、及び、最終PWMパルスの立ち上がり又は立ち下がりエッジのための特定の時間を選択するために、マルチプレクサ305を介して選択される位相のサブセットに応じて動作するように構成されるタイミング回路308を含む。
【0039】
マルチプレクサ回路301は、7ビット制御ワード(例えば、ビット5及び6)の2ビット部分を用いてディバイダ204のオペレーションから得られる16個のビン(ビン0から15と呼ばれる)の第1のサブセットを選択するように構成される論理ゲート302の第1のセットを含む。ここで、ビンのサブセットの各々は4つの粗いサブ区分、SELカウンタ=0→3、4→7、8→1、又は12→15を有する。
【0040】
また、マルチプレクサ回路301は、ビンのサブセットの各々内で、7ビット制御ワードの別の2つのビット部分(例えば、ビット3及び4)を用いてそれらのビンのうちの特定の1つを選択するように構成される論理ゲート303又はマルチプレクサの第2のセットを含む。ここでも、COUNTERデコード入力は、COUNTERデコード=0→3、4→7、8→1、又は12→15の異なるグループに分散され、各COUNTERデコード入力は、ビンのそのサブセット内の個々のビンを選択する(より微細な又はより正確な選択)。最終的に、論理ゲート302及び303の出力は、mの選択された値を出力することによって、16個のビンのうちの特定の1つを選択するように、論理ゲート304によって結合される。
【0041】
マルチプレクサ回路305は、マルチプレクサ306及びマルチプレクサ307を含む。マルチプレクサ306は、VCO203の位相1、2、3、又は4のうちの1つを選択するように動作可能であり、マルチプレクサ307は、位相5、6、7、又は0のうちの1つを選択するように動作可能である。マルチプレクサ306又は307のいずれかが位相を選択すると、nの値が設定され、マルチプレクサ309が、増大した分解能(例えば、1.15ns)で、選択された時間に立ち上がり又は立ち下がりエッジを発する。場合によっては、タイミング回路308は、漏れ効果などを回避するために、マルチプレクサ307の出力における特定の位相選択のタイミングを調整するために用いられ得る。
【0042】
したがって、マルチプレクサ回路301は、16個のCNTRフィードバックディバイダ位相のうちのどれが用いられるかを選択する。すべてのCNTR位相は、VCOの同じタップ、即ち、VCO PHASE 0から生じる。また、マルチプレクサ回路301は、VCO位相1、2、3、4をゲートする。CNTRが位相0上で状態を変更させると仮定すると、これは、この時点で、どのCOUNTER状態が選択されても、直接的にAND演算され得る。一方、マルチプレクサ回路305は2つの出力を有し、第1の出力はMUXされた位相1、2、3、4であり、これは直接的にAND演算される。第2の出力はMUXされた位相5、6、7、0であり、これらは、(VCO位相0によってクロックされる)COUNTERの選択された状態が、MUXされた位相5、6、7、0とAND演算されたとき望ましくない二重端をつくらないために、クロック再タイミング回路308を通る別のルートをとる。
【0043】
場合によっては、クロック再タイミング回路308は、出力を再サンプリングし、それを後続のVCO位相5、6、7、0のために再度タイミングをとるために、VCO位相4を用い得る。この場合も、これにより、VCO位相5、6、7、0が、クロック再タイミング回路308内で、選択及び再度タイミングがとられたCNTR状態とAND演算されたときに、二重クロックが生じないことが保証される。最終的に、マルチプレクサ309は、(SELclk<2>に基づいて)どのVCO位相バンク(1、2、3、4又は5、6、7、0)が最終出力に向かうのかを選択する。
【0044】
図4は、幾つかの実施例に従った、微細周期タイミング分解能200を用いるPLLベースのPWM生成器のオペレーションを図示するグラフ400を示す。VCOCLK信号401は、REFCLK信号402として示される16倍の電力キャリア周波数(例えば、それぞれ、108.48及び6.78MHz)を有する、VCO203によって出力されるクロック信号である。カウンタセレクタ403の出力は、ゲートされた曲線403に示されるビン0~16である。
【0045】
少なくとも一例において、制御ワードは、4つの上側ビット又はMSBと、3つの下側ビット又はLSBとの、2つのグループに分割される7ビットワードである。第1のグループはnについての選択された値(ビン番号0→15)を符号化し、第2の部分は、mについての選択された値(位相0→7)を符号化する。また、第1のグループは、2つの部分、ビンのサブセットを示す第1の2ビット部分と、そのサブセット内の個々のビンを示す第2の2ビット部分とに更に細分される。
【0046】
この例では、第1のパルスが、バイナリの形態で、制御ワード0011010によって与えられる立ち上がりエッジ405を有する。4つのMSBにおいて、左から右に向かって順に、「00」はビンの4つのサブセットのうちの1つ(例えば、ビン0~4のうちの1つ、この場合、ビン0)を示し、「01」はそのサブセット内の第3のビン(この場合、ビン3)を特定する。また、3つのLSBにおいて、「010」はビン内サブ区分(m=2)を示す。
【0047】
次いで、パルスは制御ワード0101110によって選択される立ち下がりエッジ406を有し、これは、それをビン5(n=5)の第6のビン内サブ区分(m=6)に正確に配置する。そのため、本明細書で説明するシステム及び方法によってもたらされる粒度を用いて、立ち上がりエッジ405が正確に所望の立ち上がり時間に配置され得る。
【0048】
後の時間において、サブシーケンスパルスが、それぞれ、制御ワード1001110及び1011001によって選択される立ち上がりエッジ407及び立ち下がりエッジ408を有する。本明細書で説明されるシステム及び方法を用いて、立ち上がりエッジ405は、ビン9(n=9)の第6のビン内サブ区分(m=6)に配置され、立ち下がりエッジ408は、ビン11(n=11)の第1のビン内サブ区分(m=1)に配置される。
【0049】
本明細書に記載のシステム及び方法とは対照的に、前述の問題に対する従来の解決策は、2つのカテゴリーのうちの1つに入る。1つ目には、同期PWM生成を用いるPLL/DLLタイプの実装に常に依存するデジタルPWM生成器がある。これらの実装は、必要とされるPWM分解能に比例するレートで動作するシステムクロックを必要とする(約1.15nsのタイミング分解能に対して870MHzなど)。また、これらの実装は、実装コストが高く、電力消費が高く、複雑度が高くなるという欠点がある。
【0050】
2つ目には、PWMパルスを生成するための、カウンタ、デジタルアナログコンバータ(DAC)、及び、コンパレータの方式に依存するアナログ実装がある。しかしながら、これらのアナログ手法は、典型的に、アナログ回路に関連する制約、例えば、不十分な構成要素マッチング、温度にわたるドリフト、プロセスにわたる変動、より高い電力、潜在的不安定性、及び/又は、低減されたスケーラビリティに悩まされる。
【0051】
また、フルクロックベースの設計(VCOが1/1.15ns=870MHzで動作する場合など)と比較して、本明細書で説明するシステム及び方法は、より安価及び/又はより古い技術が、外部NexFetデバイスを駆動するために必要な高電圧能力を用いるようにするなど、多くの特徴を提供し得る。また、これらのシステム及び方法は、オペレーションの最大周波数がフルクロックベースの設計の1/8にすぎない(RMS電力は動作周波数に比例する)と仮定すると、用いる電力がはるかに少ない。
【0052】
従来のアナログPWM生成方式と比較して、提案されたPWM生成器は、バックグラウンドの較正又はトリミングを必要とすることなく、優れた性能を提供する。全デジタル実装は、改善された部分毎のマッチング、及び、広い動作温度レンジにわたって、一貫性のある、反復可能な性能をもたらす。これらのシステム及び方法は柔軟であり、任意の所望のPWM及び/又は基準周波数に拡張可能である。
【0053】
本発明の特許請求の範囲内で、説明した例示の実施例に改変が成され得、他の実施例が可能である。