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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】アスファルト混合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   E01C 19/10 20060101AFI20221207BHJP
【FI】
E01C19/10 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018197076
(22)【出願日】2018-10-19
(65)【公開番号】P2020063626
(43)【公開日】2020-04-23
【審査請求日】2021-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000226482
【氏名又は名称】日工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】神尾 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】山本 健児
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-187807(JP,U)
【文献】実開昭61-089004(JP,U)
【文献】特開平07-003715(JP,A)
【文献】特開2010-053608(JP,A)
【文献】実開平01-037507(JP,U)
【文献】実開昭62-110307(JP,U)
【文献】特開2004-285787(JP,A)
【文献】特開平05-239807(JP,A)
【文献】特開昭57-150472(JP,A)
【文献】実開昭63-190307(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2012/0263007(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路工事により掘り起こされた廃材塊を一次破砕機に投入して一次破砕し、次いで該一次破砕機より排出される廃材塊を二次破砕機に投入して略40mm粒径以下に二次破砕し、該二次破砕機より排出される略40mm粒径以下の廃材塊の全量を二次破砕機に循環供給せずにそのまま貯留ホッパに投入して貯留し、該貯留ホッパに貯留した廃材塊を所定量ずつ切り出して廃材投入側であるドラム前半部にバーナ火炎が形成される直火加熱方式の廃材ドライヤに供給するアスファルト混合物の製造方法であって、該廃材ドライヤではバーナ火炎が形成されるドラム内前半部のドラム内壁にはドラム回転方向へ鋭角の頂辺部を向けた略三角柱形状の複数の廃材塊切り崩し体を略千鳥状に突設し、供給した廃材塊をドラム内前半部に形成したバーナ火炎の輻射熱で加熱しながらドラム内壁に突設した廃材塊切り崩し体にて切り崩し、この切り崩した廃材塊をドラム内後半部に周設した掻き上げ羽根にて掻き上げ・落下させてバーナからの熱風に晒しながら衝撃力を与えることで加熱解砕し、掻き上げ羽根を周設した領域の下流側にドラム内周壁に沿って断続的に周設した板体からなる略格子形状の滞留羽根により、ドラム上流側から流下してくる廃材の一部をドラムの回転に伴ってドラム上流側に押し戻して掻き上げ羽根を周設した領域に滞留させて格子を通過可能な程度まで細かく加熱解砕された廃材のみが通過可能とし、この加熱解砕した廃材を13mm粒径以下の廃材のみが通過可能な網目を有する篩い分け手段にて篩い分け、前記篩い分け手段の下流側に20mm粒径以下の廃材のみが通過可能な間隔で複数の鋼材を並設してなるグリズリを備え、該グリズリの各鋼材間を通過した廃材、前記篩い分け手段の網目を通過した廃材を素材として使用してアスファルト混合物を製造することを特徴とするアスファルト混合物の製造方法。
【請求項2】
前記廃材ドライヤのドラムは、バーナ火炎が形成されるドラム内前半部に耐熱性のライナー部材を周設し、該ライナー部材の上面に複数の廃材塊切り崩し体を突設すると共に、ドラム内後半部には複数の掻き上げ羽根を周設し、ドラム後端部には篩い分け手段として13mm粒径以下の廃材のみが通過可能な網目を有するトロンメルを連結してなることを特徴とする請求項1記載のアスファルト混合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路工事等により発生するアスファルト舗装廃材を加熱解砕してアスファルト混合物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、道路工事等により掘り起こされたアスファルト舗装廃材(以下「廃材」という)の再利用を図るため、アスファルト混合物製造工場の一部では、先ず、廃材塊をジョークラッシャ等の一次破砕機にて略200mm粒径以下程度に一次破砕(粗破砕)し、次いでインパクトクラッシャ等の二次破砕機にて、アスファルト混合物の素材として通常使用される略13mm粒径以下程度まで二次破砕(細破砕)している。そして、この略13mm粒径以下に破砕した廃材をアスファルト舗装廃材再生用ドライヤ(以下「廃材ドライヤ」という)に供給して所定温度に加熱し、別途所定温度に加熱した新規骨材と任意の割合で混合して所望のアスファルト混合物を製造している。
【0003】
なお、廃材の破砕工程としては、例えば、特許文献1(特開2011-255287号公報)では、一次破砕機によって破砕したアスファルト廃材を一次篩い分け装置により略70mm以下の粒径の原料と略70mm以上の粒径の原料とに篩い分け、略70mm以上の原料は二次破砕機により再度、再々度、…破砕し、二次篩い分け装置によって略13mm以下の粒径の原料と略13mm以上の粒径の原料とに篩い分け、13~70mmの原料は三次破砕機により破砕して略13mm以下の粒径とし、残ったそれ以上の粒径の原料は三次破砕機により再度、再々度、…破砕するようにしており、破砕と篩い分けとを何度も繰り返し行っている。
【0004】
また、特許文献1では、破砕した廃材を粒径別(5~13mm、0~5mm)に貯留ホッパに貯留しているが、特許文献2(特開2009-102883号公報)では、より細かい粒径範囲別(13~20mm、5~13mm、2.5~5mm、0~2.5mm)に貯留ホッパに貯留しており、アスファルト混合物の配合に応じて各貯留ホッパより各粒径の廃材を所定量ずつ払い出し、廃材ドライヤに供給して所定温度に加熱している。
【0005】
そして、専ら略13mm粒径以下程度に破砕した廃材を加熱する最近の廃材ドライヤとしては、例えば、特許文献3(特開2010-53608号公報)では、廃材投入側であるドラム内前半部にバーナ火炎を形成させ、その周囲のドラム内壁面には掻き上げ羽根を設けずに耐熱性のライナー部材だけを周設し、ドラム内に投入した廃材を掻き上げずにドラム内底部側を流下させていく間にバーナ火炎の輻射熱にて加熱した後、ドラム内後半部の掻き上げ羽根にて掻き上げ・落下させてベールを形成させながらバーナからの熱風に晒して所定温度に加熱するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-255287号公報
【文献】特開2009-102883号公報
【文献】特開2010-53608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来例のように、アスファルト混合物製造工場では、専ら略13mm粒径以下程度の廃材を加熱する廃材ドライヤの使用を前提としており、それに応じて道路工事により掘り起こされる大きな廃材塊を略13mm粒径以下程度になるまで二次破砕機(必要に応じて三次破砕機)、及び篩い分け装置にて、何度も二次破砕(必要に応じて三次破砕)・篩い分けを繰り返し行っていると共に、略13mm粒径以下に破砕した廃材はより細かい粒径範囲別に篩い分けて複数の貯留ホッパに貯留するようにしているため、その際に生じる騒音や振動、粉塵等も少なくなく、工場周辺の近隣住民への影響を考慮すると何らかの改善が望まれる。また、二次破砕・篩い分けを何度も繰り返し行うことは廃材の再生処理能力の低下を招き、廃材ドライヤでは廃材の供給待ちが発生する場合もあって廃材ドライヤの能力を十分に発揮できないことも予想される。
【0008】
本発明は上記の点に鑑み、騒音や振動、粉塵等を抑制できると共に、廃材の再生処理能力の向上を期待できるアスファルト混合物の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題に対し、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、最近の廃材ドライヤでは、特許文献3のように、廃材投入側であるドラム前端部に燃焼室を介さずにバーナを直接配設し、ドラム内前半部にバーナ火炎を形成させる直火加熱方式を採用しているため、廃材を略160℃程度に加熱させる分には熱量的にも十分に余裕があると考えた。そして、これであれば、例えば、一次破砕した廃材塊を二次破砕機にて一度でも二次破砕しておけば、即ち略13mm粒径以上程度の比較的粗めの粒径のまま廃材ドライヤに供給しても、ドラム内前半部に形成されるバーナ火炎の輻射熱で高温に加熱されて廃材中のバインダーであるアスファルト分が軟化溶融し、かつドラム後半部での掻き上げ羽根による掻き上げ・落下に伴う衝撃力によって略13mm粒径以下程度まで解砕できるのではないかと考えた。
【0010】
そこで、本発明者らは、一度だけ二次破砕した略40mm粒径程度の廃材塊を廃材ドライヤのドラム内に投入して加熱し、該ドラムから排出する廃材の状態(粒径、残留水分等)を確認する実験を行った。その結果、ドラムから排出した廃材の粒径の多くは略13mm粒径以下程度に解砕できており、また残留水分についても予め略13mm粒径以下程度になるまで二次破砕した廃材を加熱した場合と比較してほぼ同程度であることを確認し、この実験結果によれば上記方法は十分に有効であると考え、本発明に至ったものである。
【0011】
即ち、上記課題を解決するために、本発明に係る請求項1記載のアスファルト混合物の製造方法では、道路工事により掘り起こされた廃材塊を一次破砕機に投入して一次破砕し、次いで該一次破砕機より排出される廃材塊を二次破砕機に投入して略40mm粒径以下に二次破砕し、該二次破砕機より排出される略40mm粒径以下の廃材塊の全量を二次破砕機に循環供給せずにそのまま貯留ホッパに投入して貯留し、該貯留ホッパに貯留した廃材塊を所定量ずつ切り出して廃材投入側であるドラム前半部にバーナ火炎が形成される直火加熱方式の廃材ドライヤに供給するアスファルト混合物の製造方法であって、該廃材ドライヤではバーナ火炎が形成されるドラム内前半部のドラム内壁にはドラム回転方向へ鋭角の頂辺部を向けた略三角柱形状の複数の廃材塊切り崩し体を略千鳥状に突設し、供給した廃材塊をドラム内前半部に形成したバーナ火炎の輻射熱で加熱しながらドラム内壁に突設した廃材塊切り崩し体にて切り崩し、この切り崩した廃材塊をドラム内後半部に周設した掻き上げ羽根にて掻き上げ・落下させてバーナからの熱風に晒しながら衝撃力を与えることで加熱解砕し、掻き上げ羽根を周設した領域の下流側にドラム内周壁に沿って断続的に周設した板体からなる略格子形状の滞留羽根により、ドラム上流側から流下してくる廃材の一部をドラムの回転に伴ってドラム上流側に押し戻して掻き上げ羽根を周設した領域に滞留させて格子を通過可能な程度まで細かく加熱解砕された廃材のみが通過可能とし、この加熱解砕した廃材を13mm粒径以下の廃材のみが通過可能な網目を有する篩い分け手段にて篩い分け、前記篩い分け手段の下流側に20mm粒径以下の廃材のみが通過可能な間隔で複数の鋼材を並設してなるグリズリを備え、該グリズリの各鋼材間を通過した廃材、前記篩い分け手段の網目を通過した廃材を素材として使用してアスファルト混合物を製造することを特徴としている。
【0012】
また、本発明に係る請求項2記載のアスファルト混合物の製造方法では、前記廃材ドライヤのドラムは、バーナ火炎が形成されるドラム内前半部に耐熱性のライナー部材を周設し、該ライナー部材の上面に複数の廃材塊切り崩し体を突設すると共に、ドラム内後半部には複数の掻き上げ羽根を周設し、ドラム後端部には篩い分け手段として13mm粒径以下の廃材のみが通過可能な網目を有するトロンメルを連結してなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る請求項1記載のアスファルト混合物の製造方法では、道路工事により掘り起こされた廃材塊を一次破砕機に投入して一次破砕し、次いで該一次破砕機より排出される廃材塊を二次破砕機に投入して略40mm粒径以下に二次破砕し、該二次破砕機より排出される略40mm粒径以下の廃材塊の全量を二次破砕機に循環供給せずにそのまま貯留ホッパに投入して貯留し、該貯留ホッパに貯留した廃材塊を所定量ずつ切り出して廃材投入側であるドラム前半部にバーナ火炎が形成される直火加熱方式の廃材ドライヤに供給するアスファルト混合物の製造方法であって、該廃材ドライヤではバーナ火炎が形成されるドラム内前半部のドラム内壁にはドラム回転方向へ鋭角の頂辺部を向けた略三角柱形状の複数の廃材塊切り崩し体を略千鳥状に突設し、供給した廃材塊をドラム内前半部に形成したバーナ火炎の輻射熱で加熱しながらドラム内壁に突設した廃材塊切り崩し体にて切り崩し、この切り崩した廃材塊をドラム内後半部に周設した掻き上げ羽根にて掻き上げ・落下させてバーナからの熱風に晒しながら衝撃力を与えることで加熱解砕し、掻き上げ羽根を周設した領域の下流側にドラム内周壁に沿って断続的に周設した板体からなる略格子形状の滞留羽根により、ドラム上流側から流下してくる廃材の一部をドラムの回転に伴ってドラム上流側に押し戻して掻き上げ羽根を周設した領域に滞留させて格子を通過可能な程度まで細かく加熱解砕された廃材のみが通過可能とし、この加熱解砕した廃材を13mm粒径以下の廃材のみが通過可能な網目を有する篩い分け手段にて篩い分け、前記篩い分け手段の下流側に20mm粒径以下の廃材のみが通過可能な間隔で複数の鋼材を並設してなるグリズリを備え、該グリズリの各鋼材間を通過した廃材、前記篩い分け手段の網目を通過した廃材を素材として使用してアスファルト混合物を製造するので、一次破砕した廃材塊を繰り返し二次破砕しなくても、廃材ドライヤのドラム内前半部でバーナ火炎の輻射熱にて加熱しながら摺動する廃材塊を廃材塊切り崩し体の鋭角の頂辺部にてより効果的に切り崩した後、ドラム後半部で掻き上げ羽根にて掻き上げ・落下させることで13mm粒径以下及び13~20mm粒径の骨材を回収する程度まで加熱解砕でき、二次破砕・篩い分け工程を減らせて騒音や振動、粉塵等を軽減できると共に、廃材の再生処理能力を高めることができる。また、13~20mm粒径の骨材を使用する配合のアスファルト混合物を製造する場合には前記回収骨材を再利用できて省資源化が図れる。
【0016】
また、本発明に係る請求項2記載のアスファルト混合物の製造方法によれば、前記廃材ドライヤのドラムは、バーナ火炎が形成されるドラム内前半部に耐熱性のライナー部材を周設し、該ライナー部材の上面に複数の廃材塊切り崩し体を突設すると共に、ドラム内後半部には複数の掻き上げ羽根を周設し、ドラム後端部には篩い分け手段として13mm粒径以下の廃材のみが通過可能な網目を有するトロンメルを連結してなるので、ドラム内に投入した廃材塊をライナー部材上を摺動させながら廃材塊切り崩し体に繰り返し衝突させることで効果的に切り崩せ、より効率よく解砕できる。また、篩い分け手段としてドラム後端部にトロンメルを連結することにより、ドラム内で加熱解砕した廃材から13mm粒径以下のものを効率よく篩い分けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係るアスファルト混合物の製造方法を説明する概略説明図である。
図2図1の廃材ドライヤの一部切り欠き拡大図である。
図3図2の一部省略A-A断面図である。
図4図2の一部省略B-B断面図である。
図5図2の一部省略C-C断面図である。
図6図2の廃材ドライヤのドラム前半部の一部拡大図である。
図7図2の廃材ドライヤのドラム後端部の一部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係るアスファルト混合物の製造方法にあっては、道路工事により掘り起こされた廃材塊を一次破砕するジョークラッシャ等の一次破砕機と、該一次破砕機より排出される廃材塊を二次破砕するインパクトクラッシャ等の二次破砕機と、該二次破砕機より排出される廃材塊を貯留する貯留ホッパと、該貯留ホッパより切り出される廃材塊を加熱解砕する廃材ドライヤと、該廃材ドライヤにて加熱解砕した廃材のうち13mm粒径以下の廃材のみが通過可能な網目を有する篩い分け手段とを備える。
【0021】
前記廃材ドライヤとしては、廃材投入側であるドラム内前半部にバーナ火炎が形成される直火加熱方式とし、その周囲のドラム内壁には掻き上げ羽根を設けずに複数の廃材塊切り崩し体を突設すると共に、バーナ火炎が形成されない(届かない)ドラム内後半部には複数の掻き上げ羽根を周設する。
【0022】
また、好ましくは、前記廃材ドライヤのドラムとして、バーナ火炎が形成されるバーナ側前半部に廃材が摺動しやすく付着の生じにくい耐熱性のライナー部材を周設し、該ライナー部材の上面にはライナー部材上を摺動する廃材が繰り返し衝突することで切り崩す複数の廃材塊切り崩し体を突設すると共に、ドラム内後半部には複数の掻き上げ羽根を周設し、ドラム後端部には篩い分け手段として13mm粒径以下の廃材のみが通過可能な網目を有するトロンメルを連結してなるドラムを採用してもよい。
【0023】
更に、好ましくは、前記廃材塊切り崩し体として、廃材塊を効果的に切り崩せ、かつ廃材との接触面積が少なくて付着・成長を抑制可能な、ドラム回転方向へ鋭角の、例えば略15~45度程度の角度の頂辺部を向けた略三角柱形状の鋼材を採用してもよい。
【0024】
更にまた、好ましくは、前記篩い分け手段の下流側に、廃材中に13~20mm粒径の骨材が含まれている場合でも個別に回収可能なように、20mm粒径以下の廃材のみが通過可能な間隔で複数の鋼材を並設してなるグリズリを備えてもよい。
【0025】
そして、道路工事に伴って発生する大きな廃材塊を解砕してアスファルト混合物を製造するときには、先ず、前記廃材塊を一次破砕機に投入して一次破砕する。次いで、前記一次破砕機より排出される略200mm粒径以下程度の廃材塊を二次破砕機に投入して二次破砕する。このとき、前記二次破砕機より排出される廃材塊は略40mm粒径以下程度と比較的粗めではあるが、従来のように二次破砕機に循環供給せず、即ち繰り返し二次破砕することなく、その全量をそのまま貯留ホッパに投入して一時的に貯留する。そして、前記貯留ホッパに貯留した略40mm粒径以下程度の廃材塊を所定量ずつ切り出して廃材ドライヤに供給する。
【0026】
そして、前記廃材ドライヤでは、供給した廃材塊をドラム内前半部に形成したバーナ火炎の輻射熱で加熱して廃材中のバインダーであるアスファルト分を軟化溶融しつつ、ドラム内壁に突設した複数の廃材塊切り崩し体にてある程度まで切り崩した後、この切り崩した廃材塊をドラム内後半部の複数の掻き上げ羽根にて掻き上げ・落下させてベールを形成し、バーナからの熱風に晒して略160℃程度に加熱しながら落下に伴う衝撃力を繰り返し与えることで徐々に細かく解砕していく。
【0027】
そして、この加熱解砕した廃材がドラム後端部に到達すると、略13mm粒径以下に解砕された廃材は篩い分け手段の網目を通過し、下位に設置される廃材貯蔵ビン等に貯蔵される。そして、製造するアスファルト混合物の配合に応じて前記廃材貯蔵ビンより所定量の廃材を払い出し、少なくともこれを素材として使用してアスファルト混合物を製造する。
【0028】
なお、前記篩い分け手段の下流側に20mm粒径以下の廃材のみを通過可能とするグリズリを備え、その下位にも別途廃材貯蔵ビンを備えると、廃材中に5号砕石相当の13~20mm粒径の骨材が含まれている場合でも個別に回収できる。そして、製造するアスファルト混合物の配合が13~20mm粒径の骨材を含むものであれば、前記13mm粒径以下用の廃材貯蔵ビンと13~20mm粒径用の廃材貯蔵ビンとからそれぞれ所定量ずつ払い出し、これらを素材として使用してアスファルト混合物を製造する。
【0029】
このように、一次破砕した廃材塊を二次破砕機にて一度だけ二次破砕し、それによって回収される略40mm粒径以下程度の比較的粗めの廃材塊は、二次破砕機に循環供給せずに繰り返し二次破砕を行うことなく、そのまま全量を廃材ドライヤに供給してドラム内で加熱解砕し、この加熱解砕した廃材を素材として使用することにより、二次破砕・篩い分け工程を減らせて騒音や振動、粉塵等を軽減できると共に、廃材の再生処理能力を高められ効率よくアスファルト混合物を製造でき、アスファルト混合物の製造量を増加させるといったことも可能となる。
【0030】
また、二次破砕機にて破砕する廃材の粒径を40mm粒径以下程度に抑えることにより、例え廃材中に13~20mm粒径程度の骨材が含まれていても破砕することなくそのままの粒径で回収でき、資源の有効活用が図れる。また、13mm粒径以下程度まで破砕する場合と比較して、破砕時に生じる粉塵量を抑えられて廃材に対して防塵用に撒く散水量を減らせる、或いは無くせる結果、廃材ドライヤでの加熱効率の向上も期待できるものとなる。
【実施例
【0031】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
【0032】
図1は道路工事により掘り起こされた廃材塊からアスファルト混合物の素材となる廃材を再生してアスファルト混合物を製造する方法を示した概略説明図であって、図中の1は道路工事現場から回収される大きな廃材塊Rを所定粒径以下、例えば略200mm粒径以下程度の廃材塊に一次破砕するジョークラッシャ等の一次破砕機である。また、前記一次破砕機1の下流側には、一次破砕機1より排出される廃材塊を高速で回転する打撃子2に衝突させて二次破砕するインパクトクラッシャ等の二次破砕機3を備えていると共に、該二次破砕機3の下流側には、二次破砕機3より排出される廃材塊を投入して一時的に貯留する貯留ホッパ4を備えている。また、前記貯留ホッパ4の下流側には、貯留ホッパ4よりベルトコンベヤ5を介して切り出される廃材塊を加熱解砕する並流加熱方式の廃材ドライヤ6を備えている。
【0033】
前記廃材ドライヤ6は、図2に詳細に示すように、円筒状のドラム7を基台8上の支持ローラ9によって回転自在に傾斜支持し、駆動装置(図示せず)により所定速度で回転駆動させている。また、前記ドラム7前端側にはバルクヘッド10を、後端側には排出ホッパ11をそれぞれ備え、該排出ホッパ11の上部には排ガス導出用の排気ダクト12を連結している。
【0034】
前記ドラム7のバルクヘッド10には、燃焼室を介さずに熱風供給用のバーナ13を直接配設し、ドラム7内部に所定長さのバーナ火炎を形成し、ドラム7内に投入される廃材塊をバーナ火炎からの輻射熱で直接加熱可能な直火加熱方式としている。また、前記ドラム7内の廃材投入側であって廃材の付着が生じやすいバーナ13側前半部(バーナ火炎が形成される範囲)には、ドラム7内で持ち上げられて落下する廃材がバーナ火炎の燃焼維持を妨げないように掻き上げ羽根を周設せず、投入した廃材塊が摺動しやすく付着の生じにくい耐熱性のライナー部材14を周設していると共に、該ライナー部材14の上面にはライナー部材14上を摺動する廃材塊を繰り返し衝突させることで切り崩す複数の廃材塊切り崩し体15を突設している。
【0035】
前記廃材塊切り崩し体15は、図3及び図6に詳細に示すように、廃材塊を効果的に切り崩せ、かつ廃材との接触面積が少なくて付着・成長を抑制可能な、ドラム回転方向へ鋭角の、例えば略15~45度程度の角度の頂辺部15aを向けた略三角柱形状の鋼材にて形成している。また、図に示すように、各廃材塊切り崩し体15は各ライナー部材14上に略千鳥状に配置しており、ドラム7内を流下する廃材塊を漏れなくかつ何度も繰り返し切り崩せるように図っている。
【0036】
前記ドラム7内の後半部(バーナ火炎が届かない範囲)には、前記廃材塊切り崩し体15にてある程度細かく切り崩した廃材塊を掻き上げ・落下させてベールを形成し、前記バーナ13からの熱風に晒して略160℃程度に加熱しながら落下に伴う衝撃力を繰り返し与えることで徐々に細かく解砕させる掻き上げ羽根16を複数周設している。
【0037】
また、前記ドラム7内の掻き上げ羽根16を周設した領域の下流側には、図5及び図7に示すように、好ましくは、ドラム7内周壁に沿って断続的に周設した板体からなる滞留羽根17を複数周設する。前記滞留羽根17はドラム7回転方向に対して羽根後端部側をドラム7上流側に向けて所定角度、例えば略30~60度程度傾斜させて固着しており、ドラム7上流側から流下してくる廃材の一部をドラム7の回転に伴ってドラム7上流側に押し戻し、掻き上げ羽根16を周設した領域に滞留させて加熱解砕時間を長く稼げる構成としている。
【0038】
前記滞留羽根17は略格子形状としており、細かく加熱解砕された廃材は、前記のように滞留羽根17にて押し戻されることなく格子孔17aを通過し、ドラム7内に過剰に廃材が滞留しないように図っている。なお、前記格子孔17aのサイズは、適宜設定するとよいが、例えば、投入時の略40mm粒径程度の廃材塊がそのまま通過しない程度、即ちある程度加熱解砕された廃材のみが通過可能な程度の略30~50mm程度に設定すると好ましい。
【0039】
また、前記ドラム7後端部(滞留羽根17の下流側)には、ドラム7上流側の廃材塊切り崩し体15や掻き上げ羽根16等により解砕した廃材を篩い分ける篩い分け手段として、略13mm粒径以下の廃材のみが通過可能な網目を有するトロンメル18を連結している。
【0040】
また、前記トロンメル18の下流側には、廃材中に13~20mm粒径の骨材が含まれている場合でも個別に回収可能なように、20mm粒径以下の廃材のみが通過可能な間隔で複数の鋼材19aを並設してなるグリズリ19を備えている。なお、図2においては、前記鋼材19aを便宜上廃材の流下方向に対して略直交方向に配置しているが、廃材の流下方向と略平行に配置しても良いのは勿論である。
【0041】
前記トロンメル18及びグリズリ19を覆う排出ホッパ11の下位には、前記トロンメル18の網目を通過する略13mm粒径以下の廃材を貯蔵する第一の廃材貯蔵ビン20、及び前記グリズリ19の各鋼材19a間を通過する略13~20mm粒径の廃材を貯蔵する第二の廃材貯蔵ビン21を並設し、これら各廃材貯蔵ビン20、21の下端部にはそれぞれ排出ゲート22、23を開閉自在に備えている。また、前記排出ゲート22、23の下位には前記各廃材貯蔵ビン20、21より排出される各粒径の廃材を累積計量する廃材計量槽24を備え、該廃材計量槽の下端部にも排出ゲート25を開閉自在に備え、その下位にミキサ(図示せず)を配置している。
【0042】
図中の26はオーバーサイズの廃材塊を排出する排出シュートであって、前記トロンメル18の網目、及びグリズリ19の各鋼材19a間を通過することなく流下してきたオーバーサイズ(略20mm粒径以上程度)の廃材塊を外部へ排出するようにしている。
【0043】
そして、道路工事に伴って発生する大きな廃材塊Rを解砕してアスファルト混合物を製造するときには、先ず、前記廃材塊Rを一次破砕機1に投入して一次破砕する。次いで、前記一次破砕機1より排出される略200mm粒径以下程度の廃材塊を二次破砕機3に投入して二次破砕する。このとき、前記二次破砕機3より排出される廃材塊は略40mm粒径以下程度と比較的粗めではあるが、二次破砕機3に循環供給せず、即ち繰り返し二次破砕することなく、排出された全量をそのままの状態で下位の貯留ホッパ4に投入して貯留する。そして、前記貯留ホッパ4に貯留した廃材塊をベルトコンベヤ5にて所定量ずつ切り出し、下流側の廃材ドライヤ6のドラム7内へ投入する。
【0044】
そして、前記廃材ドライヤ6のドラム7内に投入した略40mm粒径以下程度の廃材塊は、先ず、ドラム7内前半部に周設したライナー部材14上を摺動しながらドラム7下流側へと流下していき、その間にバーナ火炎からの輻射熱に晒されて廃材中に含まれるバインダーであるアスファルト分は軟化溶融され、複数の廃材塊切り崩し体15との衝突を繰り返して徐々に切り崩されていく。そして、ある程度切り崩された廃材塊がドラム7内後半部に到達すると、複数の掻き上げ羽根16にて掻き上げ・落下されてベールを形成し、前記バーナ13からの熱風に晒されて略160℃程度まで加熱されていくと共に、掻き上げ羽根16からの落下に伴う衝撃力を繰り返し受け、廃材塊は徐々に細かく解砕されていく。
【0045】
そして、この加熱解砕された廃材はドラム7後端部へと流下していくが、解砕が不十分な廃材については前記滞留羽根17にてドラム7上流側へと一旦押し戻され、掻き上げ羽根16を周設した領域に滞留させて加熱解砕処理を継続して行う。一方、細かく加熱解砕した廃材については、前記滞留羽根17の格子孔17aや各滞留羽根17間の隙間を通過して下流側のトロンメル18へと流下していく。
【0046】
そして、前記トロンメル18に到達した廃材のうち、略13mm粒径以下に解砕された廃材は網目を通過し、下位に配置した第一の廃材貯蔵ビン20に落下投入される一方、略13~20mm粒径の廃材はトロンメル18下流側のグリズリ19の各鋼材19a間を通過し、下位に配置した第二の廃材貯蔵ビン21に落下投入され、それ以上のオーバーサイズの廃材は更に下流側の排出シュート26より外部へ排出される。
【0047】
そして、製造するアスファルト混合物の配合に応じ、前記各廃材貯蔵ビン20、21より各粒径の廃材を所定量ずつ払い出し、下位の廃材計量槽24にて累積計量後、ミキサへと払い出して別途所定温度に加熱した新規骨材と任意の割合で混合して所望のアスファルト混合物を製造する。
【0048】
なお、本実施例では、廃材ドライヤ6のドラム7内で加熱解砕した廃材を篩い分ける篩い分け手段としてトロンメル18を採用したが、何らこれに限定するものではなく、例えば、ドラム7後端部(滞留羽根17下流側)の下位に13mm粒径以下の廃材のみが通過可能な網目を有する振動篩を別途配設してもよい。
【0049】
また、本発明においては、必ずしも一次破砕機1、二次破砕機3の両方の設置を限定するものではなく、仮に一次破砕機1を通した段階で略70mm粒径以下程度、好ましくは略40mm粒径以下程度に破砕できるのであれば、一次破砕機1のみの設置とすることができるのは勿論である。
【0050】
また、本発明においては、一次破砕機1より排出される廃材塊を二次破砕機3に一度だけ通し、略40mm粒径以下程度に破砕したものを全て一つの貯留ホッパ4に投入して貯留するようにしているが、何らこれに限定されるものではない。例えば、従来のように、二次破砕機より排出される廃材塊を二次破砕機へ何度も循環供給して略13mm粒径以下程度になるまで破砕し、かつより細かい粒径範囲別(例えば、5~13mm、0~5mmの二成分)に篩い分けて複数の貯留ホッパに投入して貯留し、製造するアスファルト混合物の配合に応じて前記各貯留ホッパより所定量ずつ切り出して廃材ドライヤ6に供給するようにしてもよい。
【0051】
このとき、前記廃材ドライヤ6では、ドラム7内前半部に周設したライナー部材14上に複数の廃材塊切り崩し体15を突設しているものの、何ら支障なく加熱できる。そして、例えば、二次破砕機3の下流側に廃材塊を二次破砕機3へ循環供給するか、そのまま貯留ホッパ4に投入するかを選択可能な切替手段を備えておき、製造するアスファルト混合物の品質、用途等に応じて二次破砕機3から排出される廃材塊の排出先を前記切替手段にて適宜切り替えるようにすれば、略40mm粒径以下程度の廃材塊の加熱解砕、または略13mm粒径以下程度の廃材の加熱の両方が可能な兼用のシステムとなり、より柔軟性の高い好都合なものとなる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、アスファルト混合物製造工場において、アスファルト舗装廃材を混入したアスファルト混合物を製造する場合に広く利用できる。
【符号の説明】
【0053】
1…一次破砕機 3…二次破砕機
4…貯留ホッパ 6…廃材ドライヤ
7…ドラム 13…バーナ
14…ライナー部材 15…廃材塊切り崩し体
16…掻き上げ羽根 17…滞留羽根
18…トロンメル(篩い分け手段) 19…グリズリ
20…第一の廃材貯蔵ビン 21…第二の廃材貯蔵ビン
24…廃材計量槽
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7