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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】電力変換システム及び制御装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20221207BHJP
   H02M 7/12 20060101ALI20221207BHJP
   H02J 3/34 20060101ALI20221207BHJP
   H02J 3/36 20060101ALI20221207BHJP
   H02J 1/00 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
H02M7/48 E
H02M7/12 A
H02J3/34
H02J3/36
H02J1/00 301C
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019229990
(22)【出願日】2019-12-20
(65)【公開番号】P2021100301
(43)【公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-01-14
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】木村 祐己
(72)【発明者】
【氏名】狼 智久
【審査官】柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/069394(WO,A1)
【文献】特開平6-296396(JP,A)
【文献】特開平8-168252(JP,A)
【文献】特開2008-312273(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
H02M 7/12
H02J 3/34
H02J 3/36
H02J 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電力から直流電力への変換及び直流電力から交流電力への変換の少なくとも一方を行う主回路部と、
前記主回路部の動作に関する制御を行い、一方が停止した場合にも他方で前記主回路部の運転を継続できるようにする2つの制御装置と、
を備え、
前記2つの制御装置は、
前記直流電力の目標値と所定のレート速度とを基に、前記直流電力を前記目標値に近付けるための直流電力指令値を演算する指令値演算部と、
通信を行うことにより、他方の前記制御装置の前記直流電力指令値を取得可能とする通信部と、
前記主回路部の動作に関する前記制御を停止した状態から前記制御を行う状態に復帰する際に、前記通信部を介して他方の前記制御装置の前記直流電力指令値を取得し、前記指令値演算部の演算する前記直流電力指令値を、他方の前記制御装置の前記直流電力指令値に合わせ込む制御部と、
を有する電力変換システム。
【請求項2】
前記指令値演算部は、前記直流電力指令値の上限値及び下限値を設定するリミッタを有し、
前記制御部は、他方の前記制御装置の前記直流電力指令値を取得した後、前記リミッタの前記上限値及び前記下限値を他方の前記制御装置の前記直流電力指令値に設定することにより、前記指令値演算部の演算する前記直流電力指令値を、他方の前記制御装置の前記直流電力指令値に合わせ込む請求項1記載の電力変換システム。
【請求項3】
前記通信部は、他方の前記制御装置と通信を行うことにより、他方の前記制御装置の前記直流電力指令値を他方の前記制御装置から直接的に取得する請求項1又は2に記載の電力変換システム。
【請求項4】
前記2つの制御装置に前記目標値を入力する上位装置をさらに備え、
前記通信部は、前記上位装置と通信を行うことにより、他方の前記制御装置の前記直流電力指令値を前記上位装置を介して取得する請求項1又は2に記載の電力変換システム。
【請求項5】
前記2つの制御装置のそれぞれに前記目標値を入力する2つの上位装置をさらに備え、
前記通信部は、前記2つの上位装置のいずれか一方と通信を行うことにより、他方の前記制御装置の前記直流電力指令値をいずれか一方の前記上位装置を介して取得する請求項1又は2に記載の電力変換システム。
【請求項6】
前記2つの制御装置に個別に前記目標値を入力する2つの上位装置をさらに備え、
前記2つの上位装置は、互いに通信を行い、
前記通信部は、他方の前記制御装置の前記直流電力指令値を前記2つの上位装置を介して取得する請求項1又は2に記載の電力変換システム。
【請求項7】
前記2つの制御装置から入力される前記直流電力指令値を基に、前記主回路部の動作に関する制御を行う下位装置をさらに備え、
前記通信部は、前記下位装置と通信を行うことにより、他方の前記制御装置の前記直流電力指令値を前記下位装置を介して取得する請求項1又は2に記載の電力変換システム。
【請求項8】
前記2つの制御装置のそれぞれから入力される前記直流電力指令値を基に、前記主回路部の動作に関する制御を行う2つの下位装置をさらに備え、
前記通信部は、前記2つの下位装置のいずれか一方と通信を行うことにより、他方の前記制御装置の前記直流電力指令値をいずれか一方の前記下位装置を介して取得する請求項1又は2に記載の電力変換システム。
【請求項9】
前記2つの制御装置のそれぞれに対応して設けられ、前記2つの制御装置の一方から入力される前記直流電力指令値を基に、前記主回路部の動作に関する制御を行う2つの下位装置をさらに備え、
前記2つの下位装置は、互いに通信を行い、
前記通信部は、他方の前記制御装置の前記直流電力指令値を前記2つの下位装置を介して取得する請求項1又は2に記載の電力変換システム。
【請求項10】
交流電力から直流電力への変換及び直流電力から交流電力への変換の少なくとも一方を行う主回路部と、
前記主回路部の動作に関する制御を行い、一方が停止した場合にも他方で前記主回路部の運転を継続できるようにする2つの制御装置と、
を備えた電力変換システムに用いられる制御装置であって、
前記直流電力の目標値と所定のレート速度とを基に、前記直流電力を前記目標値に近付けるための直流電力指令値を演算する指令値演算部と、
通信を行うことにより、他方の前記制御装置の前記直流電力指令値を取得可能とする通信部と、
前記主回路部の動作に関する前記制御を停止した状態から前記制御を行う状態に復帰する際に、前記通信部を介して他方の前記制御装置の前記直流電力指令値を取得し、前記指令値演算部の演算する前記直流電力指令値を、他方の前記制御装置の前記直流電力指令値に合わせ込む制御部と、
を備えた制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力変換システム及び制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
交流電力から直流電力への変換及び直流電力から交流電力への変換の少なくとも一方を行う主回路部と、主回路部の動作を制御する制御装置と、を備えた電力変換システムが知られている。こうした電力変換システムにおいて、2つの制御装置を設けることにより、一方の制御装置に故障などが生じた場合にも、他方の制御装置で運転を継続できるようにすることが行われている。
【0003】
制御装置には、直流電力の目標値が入力される。制御装置は、入力された目標値に対応する直流電力指令値を演算し、直流電力指令値を出力することにより、直流電力が目標値に近づくように主回路部の動作を制御する。
【0004】
2つの制御装置を備えた電力変換システムでは、一方の制御装置を停止させ、他方の制御装置で運転を継続している状態で、停止させた制御装置を復帰させる場合に、2つの制御装置のそれぞれから出力される直流電力指令値を一致させる必要がある。一方で、制御装置は、直流電力指令値の急激な変化を抑制するため、直流電力指令値を目標値に対してスロープ状に変化させるレート処理を行っている。このため、直流電力指令値を一致させるまでに時間がかかり、結果として、制御装置の復帰の完了までに時間がかかってしまう場合がある。例えば、レート処理のレート速度が1MW/sで目標値が300MWである場合には、300/60で、制御装置に復帰の完了までに5分程度の時間がかかってしまう。
【0005】
このため、2つの制御装置を備えた電力変換システムでは、停止させた制御装置をより早期に復帰できるようにすることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-129963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
実施形態は、2つの制御装置の一方を停止させた状態から復帰させる場合に、より早期に復帰させることができる電力変換システム及び制御装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態に係る電力変換システムは、交流電力から直流電力への変換及び直流電力から交流電力への変換の少なくとも一方を行う主回路部と、前記主回路部の動作に関する制御を行い、一方が停止した場合にも他方で前記主回路部の運転を継続できるようにする2つの制御装置と、を備え、前記2つの制御装置は、前記直流電力の目標値と所定のレート速度とを基に、前記直流電力を前記目標値に近付けるための直流電力指令値を演算する指令値演算部と、通信を行うことにより、他方の前記制御装置の前記直流電力指令値を取得可能とする通信部と、前記主回路部の動作に関する前記制御を停止した状態から前記制御を行う状態に復帰する際に、前記通信部を介して他方の前記制御装置の前記直流電力指令値を取得し、前記指令値演算部の演算する前記直流電力指令値を、他方の前記制御装置の前記直流電力指令値に合わせ込む制御部と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本実施形態では、2つの制御装置の一方を停止させた状態から復帰させる場合に、より早期に復帰させることができる電力変換システム及び制御装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る電力変換システムを模式的に表すブロック図である。
図2】実施形態に係る制御装置を模式的に表すブロック図である。
図3】実施形態に係る指令値演算部を模式的に表すブロック図である。
図4図4(a)及び図4(b)は、オンライン復旧時の直流電力指令値の時間変化の一例を模式的に表すグラフ図である。
図5】実施形態に係る電力変換システムの変形例を模式的に表すブロック図である。
図6】実施形態に係る電力変換システムの変形例を模式的に表すブロック図である。
図7】実施形態に係る電力変換システムの変形例を模式的に表すブロック図である。
図8】実施形態に係る電力変換システムの変形例を模式的に表すブロック図である。
図9】実施形態に係る電力変換システムの変形例を模式的に表すブロック図である。
図10】実施形態に係る電力変換システムの変形例を模式的に表すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して詳細な説明を適宜省略する。
【0012】
図1は、実施形態に係る電力変換システムを模式的に表すブロック図である。
図1に表したように、電力変換システム10は、主回路部12と、2つの制御装置14、16と、を備える。
【0013】
主回路部12は、交流電力から直流電力への変換及び直流電力から交流電力への変換の少なくとも一方を行う。主回路部12の構成は、上記の変換を行うことが可能な任意の構成でよい。
【0014】
電力変換システム10は、例えば、直流電力で送電を行うことにより、2つの交流電力系統を連系させる直流送電システムや、周波数の異なる2つの交流電力系統を連系させる周波数変換システムなどに用いられる。
【0015】
2つの制御装置14、16は、主回路部12の動作に関する制御を行う。2つの制御装置14、16は、例えば、主回路部12による電力の変換を制御する。2つの制御装置14、16は、一方が停止した場合にも他方で主回路部12の運転を継続できるようにする。これにより、例えば、制御装置14を修理などで停止させた場合にも、制御装置16によって主回路部12の運転を継続でき、電力変換システム10の動作安定性を高めることができる。
【0016】
2つの制御装置14、16は、例えば、主回路部12の一部の動作を制御する。制御装置14は、主回路部12の第1モジュールの動作を制御する。制御装置16は、主回路部12の第2モジュールの動作を制御する。制御装置14、16が正常に動作している場合には、第1モジュール及び第2モジュールの出力を等配分する。例えば、直流電力の目標値が300MWである場合、第1モジュール及び第2モジュールのそれぞれの直流電力を150MWとして制御を行う。制御装置14が動作を停止し、制御装置16のみで運転を継続する場合には、第1モジュールを休止させ、第2モジュールの直流電力を300MWとして制御を行う。これにより、一方が停止した場合にも他方で主回路部12の運転を継続することができる。但し、制御装置14、16は、それぞれが主回路部12の全体の動作を制御してもよい。制御装置14、16が正常に動作している場合には、制御装置14、16のいずれか一方の制御信号で主回路部12の動作を制御してもよい。
【0017】
図2は、実施形態に係る制御装置を模式的に表すブロック図である。
図2に表したように、2つの制御装置14、16は、指令値演算部20と、通信部22と、制御部24と、を有する。2つの制御装置14、16の構成は、実質的に同じである。
【0018】
2つの制御装置14、16には、主回路部12から供給する又は主回路部12に供給される直流電力の目標値が入力される。目標値は、例えば、上位装置(上位のコントローラ)などから制御装置14、16に入力される。目標値は、例えば、操作部などを介して手動で入力できるようにしてもよい。
【0019】
指令値演算部20は、入力された直流電力の目標値と所定のレート速度とを基に、直流電力を目標値に近付けるための直流電力指令値を演算する。レート速度は、例えば、1MW/sである。指令値演算部20は、例えば、現在の直流電力指令値を所定のレート速度で目標値に近付けるように、直流電力指令値を演算する。指令値演算部20は、例えば、現在の直流電力指令値が100MWで、目標値が300MWで、レート速度が1MW/sである場合、101MWと直流電力指令値を演算し、その1秒後に102MWと演算する。このように、指令値演算部20は、所定のレート速度に基づいて直流電力指令値を順次更新する。
【0020】
制御装置14、16は、例えば、指令値演算部20によって演算された直流電力指令値を基に、主回路部12の動作を制御する。これにより、主回路部12から供給する又は主回路部12に供給される直流電力を目標値に近付けることができる。
【0021】
通信部22は、通信を行うことにより、他方の制御装置14、16の直流電力指令値を取得可能とする。この例において、通信部22は、他方の制御装置14、16と通信を行うことにより、他方の制御装置14、16の直流電力指令値を他方の制御装置14、16から直接的に取得する。すなわち、制御装置14の通信部22は、制御装置16の通信部22と通信を行うことにより、制御装置16の直流電力指令値を制御装置16から直接的に取得する。同様に、制御装置16の通信部22は、制御装置14の通信部22と通信を行うことにより、制御装置14の直流電力指令値を制御装置14から直接的に取得する。
【0022】
制御部24は、主回路部12の動作に関する制御を停止した状態から制御を行う状態に復帰する際に、通信部22を介して他方の制御装置14、16の直流電力指令値を取得する。電力変換システム10では、前述のように、制御装置14を修理などで停止させた場合にも、制御装置16によって主回路部12の運転を継続することができる。このように、システムとして電力供給を継続している状態(主回路部12が変換を行っている状態)での制御装置14又は制御装置16の復帰は、オンライン復旧などと呼ばれる場合もある。制御部24は、換言すれば、制御装置14、16のオンライン復旧の際に、通信部22を介して他方の制御装置14、16の直流電力指令値を取得する。
【0023】
制御部24は、通信部22を介して他方の制御装置14、16の直流電力指令値を取得した後、指令値演算部20の演算する直流電力指令値を、他方の制御装置14、16の直流電力指令値に合わせ込む。すなわち、制御装置14の制御部24は、制御装置14のオンライン復旧の際に、通信部22を介して制御装置16の直流電力指令値を取得し、指令値演算部20の演算する直流電力指令値を、制御装置16の直流電力指令値に合わせ込む。同様に、制御装置16の制御部24は、制御装置16のオンライン復旧の際に、通信部22を介して制御装置14の直流電力指令値を取得し、指令値演算部20の演算する直流電力指令値を、制御装置14の直流電力指令値に合わせ込む。
【0024】
また、制御部24は、オンライン復旧の処理を開始した後、復帰する制御装置の直流電流指令値が、健全な制御装置の直流電流指令値と一致した際に、オンライン復旧の処理が完了したと判断する。制御装置14、16は、オンライン復旧の処理が完了した後、通常の処理を開始する。
【0025】
図3は、実施形態に係る指令値演算部を模式的に表すブロック図である。
図3に表したように、指令値演算部20は、レート処理回路30と、リミッタ32と、を有する。レート処理回路30は、前述のように、直流電力の目標値と所定のレート速度とを基に、直流電力を目標値に近付けるための直流電力指令値を演算する。
【0026】
リミッタ32は、レート処理回路30によって演算された直流電力指令値の上限値及び下限値を設定する。リミッタ32は、レート処理回路30によって演算された直流電力指令値が下限値よりも小さい場合に、直流電力指令値を下限値に制限する。また、リミッタ32は、レート処理回路30によって演算された直流電力指令値が上限値よりも大きい場合に、直流電力指令値を上限値に制限する。すなわち、リミッタ32は、直流電力指令値を下限値以上及び上限値以下の範囲に制限する。指令値演算部20は、リミッタ32を通過した後の直流電力指令値を、最終的な直流電力指令値として出力する。
【0027】
この例において、指令値演算部20は、演算器34を有する。指令値演算部20には、リミッタ32の上下限値が入力される。指令値演算部20は、入力された上下限値をリミッタ32の上限値として設定するとともに、上下限値に演算器34で「-1」をかけたものをリミッタ32の下限値として設定する。リミッタ32の上限値及び下限値は、上記に限ることなく、例えば、上限値及び下限値を個別に設定してもよい。リミッタ32の上限値及び下限値は、制御装置14、16に設けられた操作部などを介して指令値演算部20に入力してもよいし、上位装置や下位装置などから指令値演算部20に入力してもよい。リミッタ32の上限値及び下限値は、予め決められた固定値でもよい。
【0028】
制御部24は、他方の制御装置14、16の直流電力指令値(健全系の直流電力指令値)を取得した後、リミッタ32の上限値及び下限値を他方の制御装置14、16の直流電力指令値に設定することにより、指令値演算部20の演算する直流電力指令値を、他方の制御装置14、16の直流電力指令値に合わせ込む。
【0029】
指令値演算部20は、例えば、切替器36、38を有する。切替器36は、所定の上限値をリミッタ32の上限値に設定する状態と、他方の制御装置14、16の直流電力指令値をリミッタ32の上限値に設定する状態と、を切り替える。切替器38は、所定の下限値をリミッタ32の下限値に設定する状態と、他方の制御装置14、16の直流電力指令値をリミッタ32の下限値に設定する状態と、を切り替える。
【0030】
制御部24は、オンライン復旧の際に、復旧指令を指令値演算部20に入力する。制御部24から指令値演算部20への復旧指令の入力は、オンライン復旧の状態か否かを制御部24で判断し、オンライン復旧の状態と判断したことに応答して制御部24から指令値演算部20に自動的に入力してもよいし、制御装置14、16に設けられた操作部、上位装置、あるいは下位装置などから制御部24にオンライン復旧の処理の実行が指示されたことに応答して制御部24から指令値演算部20に入力してもよい。
【0031】
復旧指令は、例えば、オンライン復旧の際にLowからHiに切り替わるパルス状の信号である。切替器36、38は、復旧指令が入力された際(復旧指令がHiになった際)に、他方の制御装置14、16の直流電力指令値をリミッタ32の下限値に設定する状態に切り替える。これにより、指令値演算部20の演算する直流電力指令値を、他方の制御装置14、16の直流電力指令値に合わせ込むことができる。
【0032】
図4(a)及び図4(b)は、オンライン復旧時の直流電力指令値の時間変化の一例を模式的に表すグラフ図である。
図4(a)は、実施形態に係る制御装置14、16の動作の一例を模式的に表す。図4(b)は、直流電力指令値の合わせ込みを行わない参考の制御装置の動作の一例を模式的に表す。なお、ここでは、主回路部12の運転を継続する制御装置の直流電力指令値を健全系の直流電力指令値Pdp1、オンライン復旧を行う制御装置の直流電力指令値を復帰系の直流電力指令値Pdp2として説明を行う。
【0033】
直流電力指令値のレート処理を行う制御装置において、直流電力指令値の合わせ込みを行わない場合には、図4(b)に表したように、各指令値Pdp1、Pdp2の差やレート速度などに応じて、復帰系の直流電力指令値Pdp2が、健全系の直流電力指令値Pdp1と一致するまでに時間がかかってしまう可能性がある。前述のように、制御装置14、16(制御部24)は、復帰系の直流電力指令値Pdp2が、健全系の直流電力指令値Pdp1と一致した際に、オンライン復旧が完了したと判断する。従って、この場合には、オンライン復旧が完了するまでに時間がかかってしまう。
【0034】
これに対し、実施形態に係る制御装置14、16では、制御部24が、通信部22を介して健全系の直流電力指令値Pdp1を取得し、指令値演算部20の演算する復帰系の直流電力指令値Pdp2を、健全系の直流電力指令値Pdp1に合わせ込む。従って、図4(a)に表したように、オンライン復旧の開始の後、すぐに復帰系の直流電力指令値Pdp2を健全系の直流電力指令値Pdp1と一致させることができる。すなわち、オンライン復旧をすぐに完了させることができる。
【0035】
このように、本実施形態に係る電力変換システム10及び制御装置14、16では、2つの制御装置14、16の一方を停止させた状態から復帰させる場合に、より早期に復帰させることができる。
【0036】
図5は、実施形態に係る電力変換システムの変形例を模式的に表すブロック図である。 なお、上記実施形態と機能・構成上実質的に同じものについては、同符号を付し、詳細な説明は省略する。
図5に表したように、電力変換システム10aは、上位装置50をさらに備える。上位装置50は、2つの制御装置14、16に目標値を入力する。
【0037】
通信部22は、上位装置50と通信を行うことにより、他方の制御装置14、16の直流電力指令値を上位装置50を介して取得する。このように、健全系の直流電力指令値は、上位装置50を介して取得してもよい。この場合、通信部22は、必ずしも他方の制御装置14、16の通信部22と通信する機能を有していなくてもよい。
【0038】
図6は、実施形態に係る電力変換システムの変形例を模式的に表すブロック図である。 図6に表したように、電力変換システム10bは、2つの上位装置51、52をさらに備える。2つの上位装置51、52は、2つの制御装置14、16のそれぞれに目標値を入力する。
【0039】
この場合、通信部22は、2つの上位装置51、52のいずれか一方と通信を行うことにより、他方の制御装置14、16の直流電力指令値をいずれか一方の上位装置51、52を介して取得する。このように、制御装置14、16に対して複数の上位装置が接続されている場合には、複数の上位装置のいずれかを介して健全系の直流電力指令値を取得してもよい。
【0040】
図7は、実施形態に係る電力変換システムの変形例を模式的に表すブロック図である。 図7に表したように、電力変換システム10cでは、2つの上位装置51、52が、2つの制御装置14、16に個別に目標値を入力する。また、2つの上位装置51、52は、互いに通信を行う。
【0041】
この場合、通信部22は、他方の制御装置14、16の直流電力指令値を2つの上位装置51、52を介して取得する。このように、制御装置14、16のそれぞれに上位装置51、52が接続されている場合には、各上位装置51、52を介して健全系の直流電力指令値を取得してもよい。
【0042】
図8は、実施形態に係る電力変換システムの変形例を模式的に表すブロック図である。 図8に表したように、電力変換システム10dは、下位装置60をさらに備える。下位装置60は、2つの制御装置14、16から入力される直流電力指令値を基に、主回路部12の動作に関する制御を行う。下位装置60は、例えば、直流電力指令値を基に、主回路部12の動作を制御する。但し、下位装置60の行う制御は、主回路部12の動作に関する任意の制御でよい。
【0043】
通信部22は、下位装置60と通信を行うことにより、他方の制御装置14、16の直流電力指令値を下位装置60を介して取得する。このように、健全系の直流電力指令値は、下位装置60を介して取得してもよい。この場合も、通信部22は、必ずしも他方の制御装置14、16の通信部22と通信する機能を有していなくてもよい。
【0044】
図9は、実施形態に係る電力変換システムの変形例を模式的に表すブロック図である。 図9に表したように、電力変換システム10eは、2つの下位装置61、62をさらに備える。2つの下位装置61、62は、2つの制御装置14、16のそれぞれから入力される直流電力指令値を基に、主回路部12の動作に関する制御を行う。
【0045】
この場合、通信部22は、2つの下位装置61、62のいずれか一方と通信を行うことにより、他方の制御装置14、16の直流電力指令値をいずれか一方の下位装置61、62を介して取得する。このように、制御装置14、16に対して複数の下位装置が接続されている場合には、複数の下位装置のいずれかを介して健全系の直流電力指令値を取得してもよい。
【0046】
図10は、実施形態に係る電力変換システムの変形例を模式的に表すブロック図である。
図10に表したように、電力変換システム10fでは、2つの下位装置61、62が、2つの制御装置14、16のそれぞれに対応して設けられ、2つの制御装置14、16の一方から入力される直流電力指令値を基に、主回路部12の動作に関する制御を行う。また、2つの下位装置61、62は、互いに通信を行う。
【0047】
この場合、通信部22は、他方の制御装置14、16の直流電力指令値を2つの下位装置61、62を介して取得する。このように、制御装置14、16のそれぞれに下位装置61、62が接続されている場合には、各下位装置61、62を介して健全系の直流電力指令値を取得してもよい。
【0048】
なお、上記各実施形態では、2つの制御装置14、16を備えた電力変換システムを表しているが、電力変換システムの備える制御装置の数は、2つに限ることなく、3つ以上でもよい。3つ以上の制御装置を備える場合にも、オンライン復旧の際に、健全系の直流電力指令値を取得し、復帰系の直流電力指令値を健全系の直流電力指令値に合わせ込むことで、上記と同様に、復帰系の制御装置を早期に復帰させ、オンライン復旧をすぐに完了させることができる。2つの制御装置14、16は、3つ以上の制御装置のうちの2つの制御装置でもよい。
【0049】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他のさまざまな形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明およびその等価物の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0050】
10、10a~10f 電力変換システム、 12 主回路部、 14 制御装置、 16 制御装置、 20 指令値演算部、 22 通信部、 24 制御部、 30 レート処理回路、 32 リミッタ、 34 演算器、 36 切替器、 38 切替器、 50、51、52 上位装置、 60、61、62 下位装置
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
図9
図10