(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】コイル部品
(51)【国際特許分類】
H01F 37/00 20060101AFI20221207BHJP
H01F 27/24 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
H01F37/00 A
H01F37/00 C
H01F37/00 M
H01F27/24 J
H01F27/24 K
(21)【出願番号】P 2017058728
(22)【出願日】2017-03-24
【審査請求日】2020-01-30
【審判番号】
【審判請求日】2021-09-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000134257
【氏名又は名称】株式会社トーキン
(74)【代理人】
【識別番号】100117341
【氏名又は名称】山崎 拓哉
(74)【代理人】
【識別番号】100148840
【氏名又は名称】松本 健志
(74)【代理人】
【識別番号】100191673
【氏名又は名称】渡邉 久典
(72)【発明者】
【氏名】阿部 有希
(72)【発明者】
【氏名】山家 孝志
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 卓哉
(72)【発明者】
【氏名】近藤 将寛
【合議体】
【審判長】山田 正文
【審判官】畑中 博幸
【審判官】山本 章裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-045765(JP,A)
【文献】特開2016-018882(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 27/24
H01F 27/34
H01F 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルと、コアとを備えるコイル部品であって、
前記コイルは、少なくとも部分的に前記コアに埋設されており、且つ、前記コイルの巻軸を含む平面内において、少なくとも1つのコイル断面を有しており、
前記巻軸は、上下方向に沿って延びており、
前記コイル断面は、外周部と、内周部と、上端部と、下端部と、2つの第1角部と、2つの第2角部とを有しており、
前記外周部は、前記巻軸と直交する方向において前記内周部の外側に位置しており、
前記上端部は、前記上下方向において前記下端部の上方に位置しており
、
前記コアは、高透磁率コアと、低透磁率コアとを備えており
、
前記高透磁率コアは、第1透磁率μ
1を有しており、
前記低透磁率コアは、第2透磁率μ
2を有しており、
1<μ
1/μ
2≦15であり、
前記高透磁率コアは、基部を有しており、
前記基部は、前記巻軸上に位置しており、
前記コイルは、平角線を有しており、
前記平角線は、前記巻軸の周りを巻回するようにエッジワイズ巻きされており、
前記2つの第1角部は、前記上端部の両側に位置しており、
前記2つの第2角部は、前記下端部の両側に位置しており、
前記平面内において、前記高透磁率コアは、2つの外側突出部と、2つの内側突出部とを更に有しており、
前記2つの外側突出部は、前記2つの内側突出部と夫々対応しており、
前記外側突出部は、
前記巻軸と直交する前記方向において、
対応する前記内側突出部の外側に位置しており、
前記外側突出部の夫々は、前記基部から前記上下方向において下方に突出しており、
前記内側突出部の夫々は、前記基部から前記上下方向において下方に突出しており、
前記巻軸と直交する前記方向において、前記基部の外端は、前記外側突出部の外端よりも外側に位置して
おり、
前記基部、前記外側突出部及び前記対応する前記内側突出部により規定されるU字状又はコの字状の部分が、前記2つの第1角部を覆っている
コイル部品。
【請求項2】
請求項1記載のコイル部品であって、
2≦μ
1/μ
2≦8
コイル部品。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のコイル部品であって、
前記高透磁率コアは、圧粉コアであり、
前記低透磁率コアは、注型コアである
コイル部品。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれかに記載のコイル部品であって、
前記低透磁率コアは、非磁性ギャップを有している
コイル部品。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれかに記載のコイル部品であって、
前記低透磁率コアは、第1低透磁率コアと、第2低透磁率コアとを含んでおり、
前記第1低透磁率コアは、前記高透磁率コアの少なくとも一部と接しており、
前記第1低透磁率コアは、前記コイル断面の前記外周部の少なくとも一部と接しており、
前記第2低透磁率コアは、前記高透磁率コアの少なくとも一部と接しており、
前記第2低透磁率コアは、前記コイル断面の前記内周部の少なくとも一部と接している
コイル部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リアクトル等に使用される、コイルとコアとを備えるコイル部品に関する。
【背景技術】
【0002】
このタイプのコイル部品は、例えば、特許文献1に開示されている。
【0003】
図10及び
図11に示されるように、特許文献1のコイル部品900は、コイル910と、コア930と、ボビン950と、ケース960とを備えている。コイル910は、平角線912を有している。平角線912は、巻軸(X方向)の周りを巻回するようにエッジワイズ巻きされている。コイル910の表面は、絶縁性樹脂からなる樹脂モールド914に覆われている。コア930は、内部コア932と、外部コア934と、一対の端部コア936とを備えている。内部コア932は、コイル910内に収容されている。外部コア934は、上下方向(Z方向)において、コイル910の上方及び下方に配置されている。端部コア936の夫々は、隣接部937と、基部938とを有している。+X側の端部コア936の隣接部937は、内部コア932の+X側の端面と隣接している。-X側の端部コア936の隣接部937は、内部コア932の-X側の端面と隣接している。+X側の端部コア936の基部938は、コイル910の+X側の端面と対向している。-X側の端部コア936の基部938は、コイル910の-X側の端面と対向している。端部コア936の基部938は、外部コア934と連結されている。端部コア936の透磁率μ
eは、内部コア932及び外部コア934の透磁率μ
i及びμ
0よりも高い。ボビン950は、コイル910の内周面と内部コア932の外面との間に配置される。ケース960は、コイル910と、コア930と、ボビン950とを収容している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コイル部品をリアクトルとして使用する場合、リアクトルの効率を高めるため、コアの鉄損のみならずコイルの交流抵抗をできるだけ低くすることが求められる。
【0006】
よって本発明は、コイルとコアとを備えるコイル部品であって、コイルの交流抵抗を低減することのできるコイル部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本出願人は、鋭意検討を重ねた結果、コイル部品に低透磁率コアと所定形状の高透磁率コアとで構成されたコアを用いた場合、高透磁率コアの透磁率と低透磁率コアの透磁率との比率が所定の範囲にあると、コイルの交流抵抗が低減できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、第1のコイル部品として、
コイルと、コアとを備えるコイル部品であって、
前記コイルは、少なくとも部分的に前記コアに埋設されており、且つ、前記コイルの巻軸を含む平面内において、少なくとも1つのコイル断面を有しており、
前記巻軸は、上下方向に沿って延びており、
前記コイル断面は、外周部と、内周部と、上端部と、下端部と、2つの第1角部と、2つの第2角部とを有しており、
前記外周部は、前記巻軸と直交する方向において前記内周部の外側に位置しており、
前記上端部は、前記上下方向において前記下端部の上方に位置しており、
前記2つの第1角部は、前記上端部の両端又は前記外周部の両端に位置しており、
前記2つの第1角部が前記上端部の両端に位置している場合、前記2つの第2角部は前記下端部の両端に位置しており、
前記2つの第1角部が前記外周部の両端に位置している場合、前記2つの第2角部は前記内周部の両端に位置しており、
前記コアは、高透磁率コアと、低透磁率コアとを備えており、
前記高透磁率コアは、前記2つの第1角部又は前記2つの第2角部を覆っており、
前記高透磁率コアは、第1透磁率μ1を有しており
前記低透磁率コアは、第2透磁率μ2を有しており、
1<μ1/μ2≦15である
コイル部品を提供する。
【0009】
また、本発明は、第2のコイル部品として、第1のコイル部品であって、
2≦μ1/μ2≦8
コイル部品を提供する。
【0010】
また、本発明は、第3のコイル部品として、第1又は第2のコイル部品であって、
前記高透磁率コアは、圧粉コアであり、
前記低透磁率コアは、注型コアである
コイル部品を提供する。
【0011】
また、本発明は、第4のコイル部品として、第1から第3までのいずれかのコイル部品であって、
前記低透磁率コアは、非磁性ギャップを有している
コイル部品を提供する。
【0012】
また、本発明は、第5のコイル部品として、第1から第4でのいずれかのコイル部品であって、
前記コイルは、平角線を有しており、
前記平角線は、前記巻軸の周りを巻回するようにエッジワイズ巻きされており、
前記2つの第1角部は、前記上端部の両側に位置しており、
前記2つの第2角部は、前記下端部の両側に位置している
コイル部品を提供する。
【0013】
また、本発明は、第6のコイル部品として、第5のコイル部品であって、
前記低透磁率コアは、第1低透磁率コアと、第2低透磁率コアとを含んでおり、
前記第1低透磁率コアは、前記高透磁率コアの少なくとも一部と接しており、
前記第1低透磁率コアは、前記コイル断面の前記外周部の少なくとも一部と接しており、
前記第2低透磁率コアは、前記高透磁率コアの少なくとも一部と接しており、
前記第2低透磁率コアは、前記コイル断面の前記内周部の少なくとも一部と接している
コイル部品を提供する。
【0014】
また、本発明は、第7のコイル部品として、第1から第4までのいずれかのコイル部品であって、
前記コイルは、平角線を有しており、
前記平角線は、前記巻軸の周りを巻回するようにフラットワイズ巻きされており、
前記2つの第1角部は、前記外周部の両側に位置しており、
前記2つの第2角部は、前記内周部の両側に位置している
コイル部品を提供する。
【0015】
また、本発明は、第8のコイル部品として、第7のコイル部品であって、
前記低透磁率コアは、第1低透磁率コアと、第2低透磁率コアとを含んでおり、
前記第1低透磁率コアは、前記高透磁率コアの少なくとも一部と接しており、
前記第1低透磁率コアは、前記コイル断面の前記上端部の少なくとも一部と接しており、
前記第2低透磁率コアは、前記高透磁率コアの少なくとも一部と接しており、
前記第2低透磁率コアは、前記コイル断面の前記下端部の少なくとも一部と接している
コイル部品を提供する。
【0016】
また、本発明は、第9のコイル部品として、第1から第8までのいずれかのコイル部品であって、
前記高透磁率コアは、前記2つの第1角部又は前記2つの第2角部を覆うU字状又はコの字状の部分を有している
コイル部品を提供する。
【0017】
また、本発明は、第10のコイル部品として、第1から第8までのいずれかのコイル部品であって、
前記高透磁率コアは、前記2つの第1角部を覆っており、
前記高透磁率追加コアは、前記2つの第2角部を覆っており、
前記高透磁率追加コアは、第3透磁率μ3を有しており、
1<μ3/μ2≦15である
コイル部品を提供する。
【0018】
また、本発明は、第11のコイル部品として、第10のコイル部品であって、
μ3=μ1である
コイル部品を提供する。
【0019】
また、本発明は、第12のコイル部品として、第10又は第11のコイル部品であって、
前記高透磁率コアは、前記2つの第1角部を覆うU字状又はコの字状の部分を有しており、
前記高透磁率追加コアは、前記2つの第2角部を覆うU字状又はコの字状の部分を有している
コイル部品を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明のコイル部品においては、高透磁率コアはコイル断面の2つの第1角部又は2つの第2角部を覆っており、高透磁率コアの透磁率と低透磁率コアの透磁率との比率が所定の範囲となっている。これにより、本発明のコイル部品においては、コイルの交流抵抗の低減が図られている。よって、本発明のコイル部品を用いたリアクトル等の効率が向上することとなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第1の実施の形態によるコイル部品を示す斜視図である。
【
図2】
図1のコイル部品をVII-VII線に沿って示す斜視断面図である。図において、低透磁率コアの一部を拡大して示している。
【
図3】
図1のコイル部品に含まれるコイルを示す斜視図である。
【
図4】
図1のコイル部品をVII-VII線に沿って示す断面図である。図において、コイルの一部を拡大して示している。
【
図5】
図1のコイル部品の一部を示す断面図である。図において、コイル及び高透磁率コアに生じる磁束を模式的に示している。
図1のコイル部品の交流抵抗R
ACとμ
1/μ
2との相関を示す図である。
【
図6】
図1のコイル部品の交流抵抗R
ACとμ
1/μ
2との相関を示す図である。
【
図7】第1の実施の形態の変形例によるコイル部品を示す断面図である。
【
図8】本発明の第2の実施の形態によるコイル部品を示す断面図である。図において、コイルの一部を拡大して示している。
【
図9】第2の実施の形態の変形例によるコイル部品を示す断面図である。
【
図10】特許文献1のコイル部品を示す断面図である。
【
図11】
図10のコイル部品に含まれるコイル、コア及びボビンを示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1の実施の形態)
図1から
図4までに示されるように、本発明の第1の実施の形態によるコイル部品10は、ケース600と、コイル100と、コア400とを備えている。コイル部品10は、例えば、車載用リアクトルとして使用できる。但し、本発明は、これに限られず、様々なコイル部品に適用可能である。
【0023】
図1から
図4までに示されるように、本実施の形態のケース600は、アルミニウム等の非磁性体からなり、底面610と、4つの側面620を有している。底面610は、X方向と直交する2辺及びY方向と直交する2辺を有する略長方形状を有している。側面620は、底面610の各辺から上下方向において上方に延びている。本実施の形態において、上下方向はZ方向であり、上方は+Z方向である。即ち、本実施の形態のケース600は、上方に開口部630を有している。
【0024】
図1から
図4までに示されるように、本実施の形態のコイル100は、平角線120を有している。コイル100の平角線120は、巻軸WAの周りを巻回するようにエッジワイズ巻きされている。ここで、コイル100の巻軸WAは、上下方向に沿って延びている。本実施の形態によるコイル100は、巻軸WAと直交する水平面(XY平面)において矩形形状を有している。但し、本発明は、これに限定されず、コイル100は、XY平面において矩形形状以外の形状(例えば、円形状)を有していてもよい。本実施の形態の平角線120は、巻回されたコイル本体121と、自由端である2つの端子122とを有している。端子122は、コイル本体121の上方に位置している。端子122の夫々は、コイル部品10の使用時に、外部の電子回路(図示せず)等に接続されるものである。本実施の形態において、端子122の夫々は、コイル100を形成する平角線120の端部である。但し、本発明は、これに限定されない。例えば、端子122の夫々は、コイル100と別体に形成された後にコイル100に溶接されていてもよい。また、コイル100及び端子122の夫々は、様々な素材から形成できる。例えば、コイル100は、銅線であってもよいし、アルミニウム線であってもよい。加えて、コイル100のコイル本体121は、周囲を覆う絶縁体を更に有していてもよい。また、平角線120は、シート状導体であってもよい。
【0025】
図1から
図4までに示されるように、本実施の形態において、コイル100の平角線120のコイル本体121の全体はコア400に埋設されており、コイル100の平角線120の端子122はコア400の上部に突出している。しかしながら本発明はこれに限定されず、コイルは、少なくとも部分的にコアに埋設されていればよい。
【0026】
図4を参照すると、コイル部品10の使用時に、コイル100のコイル本体121の周りには磁路FPに沿った磁束FXが生じる。本実施の形態において、磁路FPは、コイル100の巻軸WAを含む任意の平面内において、コイル100を取り囲むようにしてコア400の内部を周回している。即ち、本実施の形態のコイル100は、コイル100の巻軸WAとコア400の内部を周回する磁路FPとを含む平面(以下、「所定平面」という。)内において、少なくとも1つのコイル断面200を有している。本実施の形態において、所定平面は、コイル100の巻軸WAを含む任意の平面であり、例えば、YZ平面である。コイル100は、所定平面であるYZ平面において、互いに同じ構造を有する2つのコイル断面200を有している。
【0027】
図4に示されるように、コイル断面200は、外周部210と、内周部220と、上端部230と、下端部250と、2つの第1角部232と、2つの第2角部252とを有している。外周部210は、巻軸WAと直交する方向において内周部220の外側に位置している。上端部230は、上下方向において下端部250の上方に位置している。2つの第1角部232は、上端部230の両端に位置している。2つの第2角部252は、下端部250の両端に位置している。より詳しくは、2つの第1角部232は、上下方向と直交する方向(以下、「直交方向」という。)において上端部230の両端に位置しており、2つの第2角部252は、直交方向において下端部250の両端に位置している。上端部230の2つの第1角部232のうちの一つは、外周部210の上端212と接続されている。上端部230の2つの第1角部232のうちの残りの一つは、内周部220の上端222と接続されている。下端部250の2つの第2角部252のうちの一つは、外周部210の下端214と接続されている。下端部250の2つの第2角部252のうちの残りの一つは、内周部220の下端224と接続されている。
【0028】
より詳しくは、
図4に示されるように、コイル断面200は、上下方向に沿って並ぶ複数の巻線断面300から構成されている。巻線断面300の夫々は、コイル100の平角線120の断面である。上下方向において隣り合う巻線断面300は、互いに接触している。しかしながら、本発明は、これに限られない。上下方向において隣り合う巻線断面300の間には、多少の隙間が形成されていてもよい。
【0029】
図4を参照すると、コイル断面200の構造は、本実施の形態における構造に限定されず、様々に変形可能である。例えば、本実施の形態によるコイル断面200は、上下方向に沿って連なる複数の巻線断面300からなる断面列300Xを、直交方向において一列のみ有している。一般的なコイルを想定すると、断面列300Xの数は2以上であってもよい。但し、交流銅損を低減するという観点から、巻線断面300は、断面列300Xを、直交方向において1列又は2列のみ有していることが好ましい。その理由は、以下の通りである。
【0030】
コイル部品10の使用時には、各巻線断面300の直交方向における両端に多少の渦電流が生じる。また、断面列300Xの数が2の場合、断面列300Xの直交方向における両端に加えて、2つの断面列300Xの間にも渦電流が発生する。但し、渦電流は、巻線断面300の直交方向における両端に近いほど大きく、巻線断面300の直交方向における中間部(即ち、2つの断面列300Xの間)の渦電流は、巻線断面300の直交方向における両端に比べて、限りなく小さい。このため、断面列300Xの数が2の場合は、2つの断面列300Xの間に磁束FXが入り込むことは殆どない。一方、断面列300Xの数が3以上になると、磁束FXの一部が、直交方向において隣り合う2つの断面列300Xの間に渦電流を発生させると共に上下方向における巻線断面300の内部に入り込む。この結果、渦電流の影響が大きくなり、これにより交流銅損が増加するおそれがある。従って、交流銅損を低減するという観点から、断面列300Xの数は小さい方が好ましく、特に2以下であることが好ましい。
【0031】
図1から
図4までに示されるように、本実施の形態のコア400は、高透磁率コア410と、高透磁率追加コア420と、低透磁率コア450とを備えている。
【0032】
図2及び
図4に示されるように、本実施の形態の高透磁率コア410は、2つの外側突出部(突出部)412と、2つの内側突出部(突出部)414と、基部416とを有している。換言すれば、高透磁率コア410は、基部416と、2つの突出部(外側突出部412及び内側突出部414)で構成されるペアを2組備えている。外側突出部412は、直交方向において、内側突出部414の外側に位置している。外側突出部412の夫々は、基部416から上下方向において下方に突出している。内側突出部414の夫々は、基部416から上下方向において下方に突出している。本実施の形態において、下方は-Z方向である。突出部(外側突出部412及び内側突出部414)の夫々は、基部416から高透磁率追加コア420に向けて距離D
1だけ突出している。なお、本発明は、これに限られない。コイル部品は、様々な形状の複数の高透磁率コアを備えていてもよい。
【0033】
図1から
図4までを参照して、本実施の形態の高透磁率コア410は、圧粉コアであり、第1透磁率μ
1を有している。本実施の形態の高透磁率コア410は、絶縁処理を施した軟磁性合金粉末と結合剤とを圧縮成型したものである。しかしながら、高透磁率コアは、これに限らず、任意の製造方法により製造することができる。
【0034】
図2及び
図4に示されるように、本実施の形態の高透磁率追加コア420は、高透磁率コア410とは別体であり、上下方向において、高透磁率コア410の下方に位置している。高透磁率追加コア420は、高透磁率コア410を上下反転させた形状を有しており、2つの外側追加突出部(追加突出部)422と、2つの内側追加突出部(追加突出部)424と、追加基部426とを有している。換言すれば、高透磁率追加コア420は、追加基部426と、2つの追加突出部(外側追加突出部422と内側追加突出部424)で構成されるペアを2組備えている。外側追加突出部422は、直交方向において、内側追加突出部424の外側に位置している。外側追加突出部422の夫々は、追加基部426から上下方向において上方に突出している。内側追加突出部424の夫々は、追加基部426から上下方向において上方に突出している。追加突出部(外側追加突出部422と内側追加突出部424)の夫々は、追加基部426から高透磁率コア410に向けて距離D
1だけ突出している。高透磁率コア410の突出部(外側突出部412又は内側突出部414)と高透磁率追加コア420の追加突出部(外側追加突出部422又は内側追加突出部424)とは距離D
2だけ離れている。なお、本発明は、これに限られない。コイル部品は、様々な形状の複数の高透磁率追加コアを備えていてもよい。
【0035】
図1から
図4までを参照して、本実施の形態の高透磁率追加コア420は、圧粉コアであり、第3透磁率μ
3を有している。本実施の形態の高透磁率追加コア420は、高透磁率コア410と同様に、絶縁処理を施した軟磁性合金粉末と結合剤とを圧縮成型したものである。しかしながら、高透磁率追加コアは、これに限らず、任意の製造方法により製造することができる。
【0036】
図2及び
図4に示されるように、本実施の形態の高透磁率コア410は、2つの第1角部232を覆っている。即ち、本実施の形態の高透磁率コア410は、2つの第1角部232を夫々覆うL字状の部分を有している。より詳しくは、本実施の形態の高透磁率コア410は、コイル断面200の2つの第1角部232を覆うU字状又はコの字状の部分を有している。また、基部416及び2つの突出部(外側突出部412と内側突出部414)は、高透磁率コア410のU字状又はコの字状の部分を規定している。高透磁率コア410とコイル100とで構成される構造体を、直交方向から見た場合、コイル100のコイル断面200の2つの第1角部232は視認できないようになっている。同様に、高透磁率追加コア420は、2つの第2角部252を覆っている。即ち、高透磁率追加コア420は、2つの第2角部252を夫々覆うL字状の部分を有している。より詳しくは、高透磁率追加コア420は、コイル断面200の2つの第2角部252を覆うU字状又はコの字状の部分を有している。また、追加基部426及び2つの追加突出部(外側追加突出部422と内側追加突出部424)は、高透磁率追加コア420のU字状又はコの字状の部分を規定している。高透磁率追加コア420とコイル100とで構成される構造体を、直交方向から見た場合、コイル100のコイル断面200の2つの第2角部252は視認できないようになっている。これにより、コイル100のコイル断面200の内周部220の内側から上端部230の上側を通って外周部210の外側へ抜ける磁束FXは、第1角部232付近で分散することなく周回することとなり、同様に、コイル100のコイル断面200の外周部210の外側から下端部250の下側を通って内周部220の内側へ抜ける磁束FXは、第2角部252付近で分散することなく周回することとなる。なお、本発明はこれに限定されず、高透磁率コアは、2つの第1角部又は2つの第2角部を覆っていればよい。また、高透磁率コアは、2つの第1角部又は2つの第2角部を夫々覆うL字状の部分を有していてもよく、2つの第1角部又は2つの第2角部を覆うU字状又はコの字状の部分を有していてもよい。加えて、高透磁率コアが2つの第1角部を覆っている場合、高透磁率追加コアは、2つの第2角部を覆っていればよい。更に、高透磁率追加コアを有さなくてもよい。更に加えて、高透磁率コアが、複数の部材から構成されていてもよい。具体的には、高透磁率コアが、1つの外側突出部を有する部材と、2つの内側突出部を有する部材と、1つの外側突出部を有する部材との3つの部材で構成されていてもよい。また、高透磁率コアが、1つの外側突出部を有する部材と、1つの内側突出部を有する部材と、1つの内側突出部を有する部材と、1つの外側突出部を有する部材との4つの部材で構成されていてもよい。ここで、高透磁率コアが、複数の部材から構成されている場合、部材間は連結されている必要は無く、部材間に低透磁率コアが存在してもよい。同様に、高透磁率追加コアが、複数の部材から構成されていてもよい。具体的には、高透磁率追加コアが、1つの外側追加突出部を有する部材と、2つの内側追加突出部を有する部材と、1つの外側追加突出部を有する部材との3つの部材で構成されていてもよい。また、高透磁率追加コアが、1つの外側追加突出部を有する部材と、1つの内側追加突出部を有する部材と、1つの内側追加突出部を有する部材と、1つの外側追加突出部を有する部材との4つの部材で構成されていてもよい。ここで、高透磁率追加コアが、複数の部材から構成されている場合、部材間は連結されている必要は無く、部材間に低透磁率コアが存在してもよい。
【0037】
より詳しくは、
図2及び
図4に示されるように、本実施の形態の高透磁率コア410の外側突出部412の下端413は、上下方向において、コイル断面200の外周部210の上端212よりも下方に位置している。また、本実施の形態の高透磁率コア410の内側突出部414の下端415は、上下方向において、コイル断面200の内周部220の上端222よりも下方に位置している。コア400の内部を周回する磁路FP上において、高透磁率コア410の外側突出部412の下端413及び内側突出部414の下端415は、低透磁率コア450と接触している。高透磁率コア410の外側突出部412の下端413及び内側突出部414の下端415は、第1角部232よりも下方に位置している。
【0038】
図2及び
図4に示されるように、本実施の形態の高透磁率追加コア420の外側追加突出部422の上端423は、上下方向において、コイル断面200の外周部210の下端214よりも上方に位置している。また、本実施の形態の高透磁率追加コア420の内側追加突出部424の上端425は、上下方向において、コイル断面200の内周部220の下端224よりも上方に位置している。コア400の内部を周回する磁路FP上において、高透磁率追加コア420の外側追加突出部422の上端423及び内側追加突出部424の上端425は、低透磁率コア450と接触している。高透磁率追加コア420の外側追加突出部422の上端423及び内側追加突出部424の上端425は、第2角部252よりも上方に位置している。
【0039】
図2及び
図4に示されるように、本実施の形態の低透磁率コア450は、低透磁率内部コア451と、低透磁率外部コア452とを備えている。低透磁率内部コア451は、上下方向と直交する平面において、コイル100のコイル本体121の内側に位置している。また、上下方向と直交する平面において、低透磁率内部コア451の外面は、コイル100のコイル断面200の内周部220と接している。低透磁率外部コア452は、上下方向と直交する平面において、コイル100のコイル本体121の外側に位置している。また、上下方向と直交する平面において、低透磁率外部コア452の内面は、コイル100のコイル断面200の外周部210と接している。コア400の内部を周回する磁路FP上において、高透磁率コア410の外側突出部412の下端413は、低透磁率外部コア452と接触しており、高透磁率コア410の内側突出部414の下端415は、低透磁率内部コア451と接触している。同様に、コア400の内部を周回する磁路FP上において、高透磁率追加コア420の外側追加突出部422の上端423は、低透磁率外部コア452と接触しており、高透磁率追加コア420の内側追加突出部424の上端425は、低透磁率内部コア451と接触している。なお、本発明はこれに限定されず、低透磁率コアは、高透磁率コアの少なくとも一部と接している第1低透磁率コアと、高透磁率コアの少なくとも一部と接している第2低透磁率コアとを含んでいてもよい。ここで、平角線がエッジワイズ巻きされている場合には、第1低透磁率コアは、コイル断面の外周部の少なくとも一部と接していればよく、第2低透磁率コアは、コイル断面の内周部の少なくとも一部と接していればよい。また、平角線がフラットワイズ巻きされている場合には、第1低透磁率コアは、コイル断面の上端部の少なくとも一部と接していればよく、第2低透磁率コアは、コイル断面の下端部の少なくとも一部と接していればよい。
【0040】
図2を参照して、本実施の形態の低透磁率コア450は、注型コアである。より詳しくは、本実施の形態の低透磁率コア450は、硬化した結合剤455の内部に鉄系合金やフェライト等からなる軟磁性合金粉末454が分散配置された複合磁性体である。即ち、本実施の形態の低透磁率コア450は、軟磁性合金粉末454及び結合剤455等を含むスラリーを硬化させたものである。しかしながら、低透磁率コアは、これに限らず、任意の製造方法により製造することができる。また、本実施の形態の低透磁率コア450は、第2透磁率μ
2を有している。
【0041】
本実施の形態のコイル部品10において、高透磁率コア410の第1透磁率μ1と低透磁率コア450の第2透磁率μ2とは、1<μ1/μ2≦15を満たしており、高透磁率追加コア420の第3透磁率μ3と低透磁率コア450の第2透磁率μ2とは、1<μ3/μ2≦15を満たしている。より詳しくは、μ3=μ1である。
【0042】
本発明のコイル部品10におけるコイル100において、交流銅損が低減される原理を従来例と対比しながら以下に詳述する。コイルを取り囲む高透磁率コアの一部にエアギャップを設けた構成の従来のコイル部品においては、エアギャップの周囲におけるコイルへの磁束の入り込みが大きい。このため、エアギャップを低透磁率の注型コア等で置換した構成を採用することにより、置換された箇所におけるコイルへの磁束の入り込みを緩和していたが、このような構成の場合、コイルを取り囲む高透磁率コアを短絡するような磁束が増加し、コイル部品全体として交流銅損の改善がなされていなかった。一方、本発明のコイル部品10においては、高い透磁率を有する高透磁率コア410を、コイル100のコイル断面200の2つの第1角部232又は2つの第2角部252を覆うように配置している。これにより、
図5から理解されるように、コイル100自身において発生する磁束700の向きに対して、逆向きとなる磁束800が高透磁率コア410に生じるため、コイル100を貫通する磁束700が打ち消されてコイル部品10の交流銅損が低減される。また、本発明のコイル部品10においては、1<μ
1/μ
2≦15を満たすよう調整されており、交流銅損の低減効果を最大限に引き出すことができる。なお、上述のように、低透磁率コアが、第1低透磁率コアと、第2低透磁率コアとを含んでいる場合においても、第1低透磁率コアが高透磁率コア及びコイルと接しており、且つ、第2低透磁率コアが高透磁率コア及びコイルと接していることから、
図5に示される磁束800の流れを生じさせることができ、結果としてコイル部品の交流銅損が低減されることとなる。
【0043】
図6に、D
1=7.5mm、D
2=15mmの場合における、コイル100の交流抵抗R
ACと透磁率比μ
1/μ
2との相関関係を示す。この図から、透磁率比μ
1/μ
2が所定の範囲にある場合、コイル100の交流抵抗R
ACが低くなることが理解される。即ち、
図6から理解されるように、μ
1/μ
2≦15を満たすことにより、コイル100の交流抵抗R
ACをμ
1/μ
2=1のときの交流抵抗R
ACと同等以下とすることができるため、コイル100のコイル本体121での渦電流損失を抑制することができる。加えて、1<μ
1/μ
2を満たすことにより、コイル100のコイル断面200における第1角部232又は第2角部252であって高透磁率コア410が覆っている角部での渦電流損失を抑制することができる。即ち、本実施の形態のコイル部品10は、1<μ
1/μ
2≦15を満たすことにより、コイル部品10のコイル100の交流抵抗R
ACの低減が図られている。更に、
図6から理解されるように、コイル部品10のコイル100の交流抵抗R
ACの更なる低減の観点から、2≦μ
1/μ
2≦8が好ましい。
【0044】
同様に、
図6から理解されるように、μ
3/μ
2≦15を満たすことにより、コイル100の交流抵抗R
ACをμ
3/μ
2=1のときの交流抵抗R
ACと同等以下とすることができるため、コイル100のコイル本体121での渦電流損失を抑制することができる。加えて、1<μ
3/μ
2を満たすことにより、コイル100のコイル断面200における第2角部252での渦電流損失を抑制することができる。即ち、本実施の形態のコイル部品10は、1<μ
3/μ
2≦15を満たすことにより、コイル部品10のコイル100の交流抵抗R
ACの低減が図られている。更に、
図6から理解されるように、コイル部品10のコイル100の交流抵抗R
ACの更なる低減の観点から、2≦μ
3/μ
2≦8が好ましい。
【0045】
本実施の形態のコイル部品10は、下記数式(1)を満たしている。これにより、コイル100の交流抵抗R
ACをより低減することができ、コイル100のコイル本体121での渦電流損失を更に抑制することができる。
【数1】
【0046】
図1から
図4までに示されるに、本実施の形態のコイル部品10において、コイル100、低透磁率コア450、高透磁率コア410及び高透磁率追加コア420は、ケース600の内部に収容されている。ここで、本実施の形態の低透磁率コア450は、ケース600の内部において、コイル100のコイル本体121、高透磁率コア410及び高透磁率追加コア420以外の空間を埋めている。
【0047】
コイル部品10の構成は、上述したものには限定されず、例えば、以下のような変形が可能である。
【0048】
図1、
図4及び
図7を参照すると、本実施の形態の変形例によるコイル部品10Aは、ケース600と、コイル100と、コア400Aとを備えている。このうち、ケース600とコイル100については、上述した第1の実施の形態のコイル部品10のものと同じ構造を有するものである。従って、これらについては詳細な説明を省略する。
【0049】
図1、
図4及び
図7を参照すると、本実施の形態のコア400Aは、高透磁率コア410と、高透磁率追加コア420と、低透磁率コア450Aとを備えている。ここで、本実施の形態のコア400Aは、低透磁率コア450Aを除き、上述した第1の実施の形態のコア400と同様の構成を備えている。そのため、
図7に示される構成要素のうち、第1の実施の形態と同様の構成要素に対しては同一の参照符号を付すこととする。
【0050】
図7に示されるように、本実施の形態の低透磁率コア450Aは、低透磁率内部コア451Aと、低透磁率外部コア452と、非磁性ギャップ480を有している。本実施の形態の非磁性ギャップ480は、上下方向において低透磁率内部コア451Aの中心付近に位置しており、直交方向においてコイル100のコイル断面200の内周部220の内側に位置している。これにより、本実施の形態のコイル部品10Aの磁気飽和は緩和され、より良好な直流重畳特性を有することとなる。
【0051】
(第2の実施の形態)
図8に示されるように、本発明の第2の実施の形態によるコイル部品10Bは、ケース600と、コイル100Bと、コア400Bとを備えている。このうちケース600については、第1の実施の形態のコイル部品10のケース600と同じ構造を有するため、詳細な説明を省略する。
【0052】
図8を参照すると、本実施の形態のコイル100Bは、平角線120Bを有している。コイル100Bの平角線120Bは、巻軸WAの周りを巻回するようにフラットワイズ巻きされている。ここで、コイル100Bの巻軸WAは、上下方向に沿って延びている。本実施の形態によるコイル100Bは、巻軸WAと直交する水平面(XY平面)において矩形形状を有している。但し、本発明は、これに限定されず、コイル100Bは、XY平面において矩形形状以外の形状(例えば、円形状)を有していてもよい。本実施の形態の平角線120Bは、巻回されたコイル本体121Bと、自由端である2つの端子(図示せず)とを有している。自由端である2つの端子(図示せず)の夫々は、コイル部品10Bの使用時に、外部の電子回路(図示せず)等に接続されるものである。本実施の形態において、端子(図示せず)の夫々は、コイル100Bを形成する平角線120Bの端部である。但し、本発明は、これに限定されない。例えば、端子(図示せず)の夫々は、コイル100Bと別体に形成された後にコイル100Bに溶接されていてもよい。また、コイル100B及び端子(図示せず)の夫々は、様々な素材から形成できる。例えば、コイル100Bは、銅線であってもよいし、アルミニウム線であってもよい。加えて、コイル100Bのコイル本体121Bは、周囲を覆う絶縁体を更に有していてもよい。
【0053】
図8にされるように、本実施の形態において、コイル100Bの平角線120Bのコイル本体121Bの全体はコア400Bに埋設されている。しかしながら本発明はこれに限定されず、コイルは、少なくとも部分的にコアに埋設されていればよい。
【0054】
図8を参照すると、コイル部品10Bの使用時に、コイル100Bのコイル本体121Bの周りには磁路FPに沿った磁束FXが生じる。本実施の形態において、磁路FPは、コイル100Bの巻軸WAを含む任意の平面内において、コイル100Bを取り囲むようにしてコア400Bの内部を周回している。即ち、本実施の形態のコイル100Bは、コイル100Bの巻軸WAとコア400Bの内部を周回する磁路FPとを含む平面(以下、「所定平面」という。)内において、少なくとも1つのコイル断面200Bを有している。本実施の形態において、所定平面は、コイル100Bの巻軸WAを含む任意の平面であり、例えば、YZ平面である。コイル100Bは、YZ平面において、互いに同じ構造を有する2つのコイル断面200Bを有している。
【0055】
図8に示されるように、コイル断面200Bは、外周部210Bと、内周部220Bと、上端部230Bと、下端部250Bと、2つの第1角部215と、2つの第2角部225とを有している。外周部210Bは、巻軸WAと直交する方向において内周部220Bの外側に位置している。上端部230Bは、上下方向において下端部250Bの上方に位置している。2つの第1角部215は、外周部210Bの両端に位置している。2つの第2角部225は、内周部220Bの両端に位置している。より詳しくは、2つの第1角部215は、上下方向において外周部210Bの両端に位置しており、2つの第2角部225は、上下方向において内周部220Bの両端に位置している。外周部210Bの2つの第1角部215のうちの一つは、上端部230Bの外端235と接続されている。外周部210Bの2つの第1角部215のうちの残りの一つは、下端部250Bの外端255と接続されている。内周部220Bの2つの第2角部225のうちの一つは、上端部230Bの内端236と接続されている。内周部220Bの2つの第2角部225のうちの残りの一つは、下端部250Bの内端256と接続されている。
【0056】
より詳しくは、
図8に示されるように、コイル断面200Bは、上下方向と直交する方向(以下、「直交方向」という。)に沿って並ぶ複数の巻線断面300Bから構成されている。巻線断面300Bの夫々は、コイル100Bの平角線120Bの断面である。直交方向において隣り合う巻線断面300Bは、互いに接触している。しかしながら、本発明は、これに限られない。直交方向において隣り合う巻線断面300Bの間には、多少の隙間が形成されていてもよい。
【0057】
図8に示されるように、本実施の形態のコア400Bは、2つの高透磁率コア410Bと、2つの高透磁率追加コア420Bと、低透磁率コア450Bとを備えている。
【0058】
図8に示されるように、本実施の形態の高透磁率コア410Bは、上側突出部(突出部)431と、下側突出部(突出部)433と、基部435とを有している。換言すれば、高透磁率コア410Bは、基部435と、2つの突出部(上側突出部431及び下側突出部433)とを備えている。上側突出部431は、上下方向において、下側突出部433の上方に位置している。上側突出部431は、基部435から直交方向において内側に突出している。下側突出部433は、基部435から直交方向において内側に突出している。突出部(上側突出部431及び下側突出部433)の夫々は、基部435から高透磁率追加コア420Bに向けて距離D
1だけ突出している。なお、本発明は、これに限られない。コイル部品は、様々な形状の複数の高透磁率コアを備えていてもよい。
【0059】
図8を参照して、本実施の形態の高透磁率コア410Bの夫々は、圧粉コアであり、第1透磁率μ
1を有している。本実施の形態の高透磁率コア410Bは、絶縁処理を施した軟磁性合金粉末と結合剤とを圧縮成型したものである。しかしながら、高透磁率コアは、これに限らず、任意の製造方法により製造することができる。
【0060】
図8に示されるように、本実施の形態の高透磁率追加コア420Bは、高透磁率コア410Bとは別体であり、直交方向において、高透磁率コア410Bの内側に位置している。高透磁率追加コア420Bは、高透磁率コア410Bを左右反転させた形状を有しており、上側追加突出部(追加突出部)441と、下側追加突出部(追加突出部)443と、追加基部445とを有している。換言すれば、高透磁率追加コア420Bは、追加基部445と、2つの追加突出部(上側追加突出部441と下側追加突出部443)とを備えている。上側追加突出部441は、上下方向において、下側追加突出部443の上方に位置している。上側追加突出部441は、追加基部445から直交方向において外側に突出している。下側追加突出部443は、追加基部445から直交方向において外側に突出している。追加突出部(上側追加突出部441と下側追加突出部443)の夫々は、追加基部445から高透磁率コア410Bに向けて距離D
1だけ突出している。なお、本発明は、これに限られない。コイル部品は、様々な形状の複数の高透磁率追加コアを備えていてもよい。
【0061】
図8を参照して、本実施の形態の高透磁率追加コア420B、圧粉コアであり、第3透磁率μ
3を有している。本実施の形態の高透磁率追加コア420Bは、高透磁率コア410Bと同様に、絶縁処理を施した軟磁性合金粉末と結合剤とを圧縮成型したものである。しかしながら、高透磁率追加コアは、これに限らず、任意の製造方法により製造することができる。
【0062】
図8に示されるように、本実施の形態の高透磁率コア410Bは、2つの第1角部215を覆っている。即ち、本実施の形態の高透磁率コア410Bは、2つの第1角部215を夫々覆うL字状の部分を有している。より詳しくは、本実施の形態の高透磁率コア410Bは、コイル断面200Bの2つの第1角部215を覆うU字状又はコの字状の部分を有している。また、基部435及び2つの突出部(上側突出部431及び下側突出部433)は、高透磁率コア410BのU字状又はコの字状の部分を規定している。高透磁率コア410Bとコイル100Bとで構成される構造体を、上下方向から見た場合、コイル100Bのコイル断面200Bの2つの第1角部215は視認できないようになっている。同様に、高透磁率追加コア420Bは、2つの第2角部225を覆っている。即ち、高透磁率追加コア420Bは、2つの第2角部225を夫々覆うL字状の部分を有している。より詳しくは、高透磁率追加コア420Bは、コイル断面200Bの2つの第2角部225を覆うU字状又はコの字状の部分を有している。また、追加基部445及び2つの追加突出部(上側追加突出部441及び下側追加突出部443)は、高透磁率追加コア420BのU字状又はコの字状の部分を規定している。高透磁率追加コア420Bとコイル100Bとで構成される構造体を、上下方向から見た場合、コイル100Bのコイル断面200Bの2つの第2角部225は視認できないようになっている。これにより、コイル100Bのコイル断面200Bの上端部230Bの上側から外周部210Bの外側を通って下端部250Bの下側へ抜ける磁束FXは、第1角部215付近で分散することなく周回することとなり、同様に、コイル100Bのコイル断面200Bの下端部250Bの下側から内周部220Bの内側を通って上端部230Bの上側へ抜ける磁束FXは、第2角部225付近で分散することなく周回することとなる。なお、本発明はこれに限定されず、高透磁率コアは、2つの第1角部又は2つの第2角部を覆っていればよい。また、高透磁率コアは、2つの第1角部又は2つの第2角部を夫々覆うL字状の部分を有していてもよく、2つの第1角部又は2つの第2角部を覆うU字状又はコの字状の部分を有していてもよい。加えて、高透磁率コアが2つの第1角部を覆っている場合、高透磁率追加コアは、2つの第2角部を覆っていればよい。更に、高透磁率追加コアを有さなくてもよい。更に加えて、高透磁率コアが、複数の部材から構成されていてもよい。具体的には、高透磁率コアが、1つの上側突出部を有する部材と、1つの下側突出部を有する部材との2つの部材で構成されていてもよい。ここで、高透磁率コアが、複数の部材から構成されている場合、部材間は連結されている必要は無く、部材間に低透磁率コアが存在してもよい。同様に、高透磁率追加コアが、複数の部材から構成されていてもよい。具体的には、高透磁率追加コアが、1つの上側追加突出部を有する部材と、1つの下側追加突出部を有する部材との2つの部材で構成されていてもよい。ここで、高透磁率追加コアが、複数の部材から構成されている場合、部材間は連結されている必要は無く、部材間に低透磁率コアが存在してもよい。
【0063】
より詳しくは、
図8に示されるように、本実施の形態の高透磁率コア410Bの上側突出部431の内端432は、直交方向において、コイル断面200Bの上端部230Bの外端235よりも内側に位置している。また、本実施の形態の高透磁率コア410Bの下側突出部433の内端434は、直交方向において、コイル断面200Bの下端部250Bの外端255よりも内側に位置している。コア400Bの内部を周回する磁路FP上において、高透磁率コア410Bの上側突出部431の内端432及び下側突出部433の内端434は、低透磁率コア450Bと接触している。高透磁率コア410Bの上側突出部431の内端432及び下側突出部433の内端434は、第1角部215よりも内側に位置している。
【0064】
図8に示されるように、本実施の形態の高透磁率追加コア420Bの上側追加突出部441の外端442は、直交方向において、コイル断面200Bの上端部230Bの内端236よりも外側に位置している。また、本実施の形態の高透磁率追加コア420Bの下側追加突出部443の外端444は、直交方向において、コイル断面200Bの下端部250Bの内端256よりも外側に位置している。コア400Bの内部を周回する磁路FP上において、高透磁率追加コア420Bの上側追加突出部441の外端442及び下側追加突出部443の外端444は、低透磁率コア450Bと接触している。高透磁率追加コア420Bの上側追加突出部441の外端442及び下側追加突出部443の外端444は、第2角部225よりも外側に位置している。
【0065】
図8を参照して、本実施の形態の低透磁率コア450Bは、注型コアである。より詳しくは、本実施の形態の低透磁率コア450Bは、硬化した結合剤の内部に鉄系合金やフェライト等からなる軟磁性合金粉末が分散配置された複合磁性体である。即ち、本実施の形態の低透磁率コア450Bは、軟磁性合金粉末及び結合剤等を含むスラリーを硬化させたものである。しかしながら、低透磁率コアは、これに限らず、任意の製造方法により製造することができる。また、本実施の形態の低透磁率コア450Bは、第2透磁率μ
2を有している。
【0066】
第1の実施の形態のコイル部品10と同様に、本実施の形態のコイル部品10Bにおいても、高透磁率コア410Bの第1透磁率μ1と低透磁率コア450Bの第2透磁率μ2とは、1<μ1/μ2≦15を満たしており、高透磁率追加コア420Bの第3透磁率μ3と低透磁率コア450Bの第2透磁率μ2とは、1<μ3/μ2≦15を満たしている。より詳しくは、μ3=μ1である。
【0067】
第2の実施の形態のコイル部品10Bにおいても、μ1/μ2≦15を満たすことにより、コイル100Bの交流抵抗RACをμ1/μ2=1のときの交流抵抗RACと同等以下とすることができるため、コイル100Bのコイル本体121Bでの渦電流損失を抑制することができる。加えて、1<μ1/μ2を満たすことにより、コイル100Bのコイル断面200Bにおける第1角部215又は第2角部225であって高透磁率コア410Bが覆っている角部での渦電流損失を抑制することができる。即ち、本実施の形態のコイル部品10Bが1<μ1/μ2≦15を満たすことにより、コイル部品10Bのコイル100Bの交流抵抗RACの低減が図られている。更に、第1の実施の形態のコイル部品10と同様に、コイル部品10Bのコイル100Bの交流抵抗RACの更なる低減の観点から、2≦μ1/μ2≦8が好ましい。
【0068】
同様に、第2の実施の形態のコイル部品10Bにおいても、μ3/μ2≦15を満たすことにより、コイル100Bの交流抵抗RACをμ3/μ2=1のときの交流抵抗RACと同等以下とすることができるため、コイル100Bのコイル本体121Bでの渦電流損失を抑制することができる。加えて、1<μ3/μ2を満たすことにより、コイル100Bのコイル断面200Bにおける第2角部225での渦電流損失を抑制することができる。即ち、本実施の形態のコイル部品10Bが1<μ3/μ2≦15を満たすことにより、コイル部品10Bのコイル100Bの交流抵抗RACの低減が図られている。更に、第1の実施の形態のコイル部品10と同様に、コイル部品10Bのコイル100Bの交流抵抗RACの更なる低減の観点から、2≦μ3/μ2≦8が好ましい。
【0069】
本実施の形態のコイル部品10Bは、上記数式(1)を満たしている。これにより、コイル100Bの交流抵抗RACをより低減することができ、コイル100Bのコイル本体121Bでの渦電流損失を更に抑制することができる。
【0070】
図8に示されるに、本実施の形態のコイル部品10Bにおいて、コイル100B、低透磁率コア450B、高透磁率コア410B及び高透磁率追加コア420Bは、ケース600の内部に収容されている。ここで、本実施の形態の低透磁率コア450Bは、ケース600の内部において、コイル100Bのコイル本体121B、高透磁率コア410B及び高透磁率追加コア420B以外の空間を埋めている。
【0071】
コイル部品10Bの構成は、上述したものには限定されず、例えば、以下のような変形が可能である。
【0072】
図8及び
図9を参照すると、本実施の形態の変形例によるコイル部品10Cは、ケース600と、コイル100Bと、コア400Cとを備えている。このうち、ケース600とコイル100Bについては、上述した第2の実施の形態のコイル部品10Bのものと同じ構造を有するものである。従って、これらについては詳細な説明を省略する。
【0073】
図8及び
図9を参照すると、本実施の形態のコア400Cは、高透磁率コア410Bと、高透磁率追加コア420Bと、低透磁率コア450Cとを備えている。ここで、本実施の形態のコア400Cは、低透磁率コア450Cを除き、上述した第2の実施の形態のコア400Bと同様の構成を備えている。そのため、
図9に示される構成要素のうち、第2の実施の形態と同様の構成要素に対しては同一の参照符号を付すこととする。
【0074】
図9に示されるように、本実施の形態の低透磁率コア450Cは、非磁性ギャップ480Cを有している。本実施の形態の非磁性ギャップ480Cは、高透磁率コア410Bの上側突出部431の内端432と高透磁率追加コア420Bの上側追加突出部441の外端442との間に位置している。これにより、本実施の形態のコイル部品10Cの磁気飽和は緩和され、より良好な直流重畳特性を有することとなる。なお、本発明はこれに限定されず、非磁性ギャップが、高透磁率コアの下側突出部の内端と高透磁率追加コアの下側追加突出部の外端との間に位置していてもよい。
【0075】
上述した実施の形態や変形例は、様々に組み合わせることが可能である。また、本発明は、上述した実施の形態や変形例に加えて、以下に説明するように更に様々に応用可能である。
【0076】
図4及び
図8を参照すると、高透磁率コア及び高透磁率追加コアは、1<μ
1/μ
2≦15及び1<μ
3/μ
2≦15を満たす限り、圧粉磁心でなくてもよい。例えば、高透磁率コアは、フェライトコアであってもよい。また、複数の高透磁率コアを設ける場合、高透磁率コアは、互いに異なる材料から形成されていてもよい。例えば、高透磁率コアのうちの1つが圧粉磁心であり、高透磁率コアのうちの他の1つがフェライトコアであってもよい。同様に、複数の高透磁率追加コアを設ける場合、高透磁率追加コアは、互いに異なる材料から形成されていてもよい。例えば、高透磁率追加コアのうちの1つが圧粉磁心であり、高透磁率追加コアのうちの他の1つがフェライトコアであってもよい。
【0077】
本発明のコイル部品に用いられるコイルは、XY平面において、矩形形状、円形状に限られず様々な形状を有していてもよい。また、本発明のコイル部品に用いられる高透磁率コアは、コイルの形状に対応して様々な形状を有していてもよい。同様に、本発明のコイル部品に用いられる高透磁率追加コアは、コイルの形状に対応して様々な形状を有していてもよい。
【0078】
本発明のコイル部品に用いられるケースは、直方体形状に限らず、様々な形状を有していてもよい。また、ケースは、設けなくてもよい。
【符号の説明】
【0079】
10,10A,10B,10C コイル部品
100,100B コイル
120,120B 平角線
121,121B コイル本体
122 端子
200,200B コイル断面
210,210B 外周部
212 上端
214 下端
215 第1角部
220,220B 内周部
222 上端
224 下端
225 第2角部
230,230B 上端部
232 第1角部
235 外端
236 内端
250,250B 下端部
252 第2角部
255 外端
256 内端
300,300B 巻線断面
300X 断面列
400,400A,400B,400C コア
410,410B 高透磁率コア
412 外側突出部(突出部)
413 下端
414 内側突出部(突出部)
415 下端
416 基部
420,420B 高透磁率追加コア
422 外側追加突出部(追加突出部)
423 上端
424 内側追加突出部(追加突出部)
425 上端
426 追加基部
431 上側突出部(突出部)
432 内端
433 下側突出部(突出部)
434 内端
435 基部
441 上側追加突出部(追加突出部)
442 外端
443 下側追加突出部(追加突出部)
444 外端
445 追加基部
450,450A,450B,450C 低透磁率コア
451,451A 低透磁率内部コア
452 低透磁率外部コア
454 軟磁性合金粉末
455 結合剤
480,480C 非磁性ギャップ
600 ケース
610 底面
620 側面
630 開口部
700 磁束
800 磁束
WA 巻軸
FP 磁路
FX 磁束
D1 距離
D2 距離