(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】リアクトル
(51)【国際特許分類】
H01F 37/00 20060101AFI20221207BHJP
H01F 27/24 20060101ALI20221207BHJP
H01F 41/12 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
H01F37/00 G
H01F37/00 A
H01F37/00 J
H01F37/00 M
H01F27/24 L
H01F41/12
(21)【出願番号】P 2018029390
(22)【出願日】2018-02-22
【審査請求日】2021-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【氏名又は名称】木内 光春
(72)【発明者】
【氏名】二宮 亨和
【審査官】久保田 昌晴
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-204309(JP,U)
【文献】国際公開第2013/001592(WO,A1)
【文献】特開2002-134330(JP,A)
【文献】特開2006-041002(JP,A)
【文献】特開2017-045894(JP,A)
【文献】特開平06-189151(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00-19/08、27/02、27/24-27/26
H01F 27/32、30/10、37/00、41/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルと、
磁性体を含み構成され、対向する一対の継板と、前記一対の継板の間に収容された前記コイルの外周の一部を覆う外脚を有するコアと、
を有し、
前記コアは、それぞれが前記継板を有する一対の部分コアの二分割構成であり、
前記一対の部分コアの継板のそれぞれに密着した樹脂材料より形成され、互いに合致することにより、内部に前記一対の部分コアを収容する外装部を有し、
前記外脚は、その外周面が前記継板の外縁から離れた位置に立設され、
前記コアには
前記外脚の立設方向に略直交する平坦面であるフランジ部が設けられ、
前記外装部は、
前記継板の外周面を覆うように密着した周壁である側面部と、当該側面部の内側に沿って前記フランジ部の一部に延設される嵌合部とを有することを特徴とするリアクトル。
【請求項2】
前記継板及び前記外脚に密着した絶縁材料により形成され、前記コアと前記コイルとを絶縁する絶縁部を有することを特徴とする請求項1記載のリアクトル。
【請求項3】
前記外装部及び前記絶縁部は、樹脂材料により一体的に形成されていることを特徴とする請求項2記載のリアクトル。
【請求項4】
前記外脚は、間隔を空けて複数設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のリアクトル。
【請求項5】
前記外装部は、前記外脚の周囲の前記継板の面に形成されていることを特徴とする請求項4記載のリアクトル。
【請求項6】
前記継板は、略方形状であり、
前記外脚は、前記継板の4隅の近傍に設けられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のリアクトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイルを収容したコアを有するリアクトルに関する。
【背景技術】
【0002】
リアクトルは、ハイブリッド自動車や電気自動車の駆動システム等をはじめ、種々の用途で使用されている。リアクトルは、基本的には、磁性材料のコアに、導線を巻回したコイルが装着されて構成されている。
【0003】
ここで、冷却効率を考慮して、コアを直接冷却できるリアクトルとして、コア内にコイルを収容し、コアの外脚でコイルを覆うポット型のリアクトルが存在する。このようなポット型のリアクトルは、一対の部分コアによる分割構造であり、部分コアを合致させた場合に内部にコイルを収容する空間が生じる構成となっている。そして、コイルの端子を引き出すために、部分コアを合致したときにコアに開口が形成されるように、部分コアには溝が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ポット型のリアクトルは、コアが露出しているため、コアと外部との絶縁を考慮した配置等が必要となる。また、コアを直接冷却する強制冷却手段が必要となる。一方、リアクトルを金属製のケースに収容すると、金属製のケースによる外部との絶縁や放熱が期待できる。
【0006】
しかし、リアクトル本体とケースとの間には隙間が生じる。すなわち、コアの一部はケースと接するが、その他の部分についてはケースと接触せず、両者の間に間隙が生じる。すると、ケース内に余計なスペースが生じることになり、リアクトル全体が大型化する。
【0007】
また、リアクトルは量産品であるため、その組立性の良さが要求される。しかし、コイルをコアに収容した後、ケースへ収容するといった手順を経るため、組み立て工数が多くなっていた。
【0008】
さらに、リアクトル本体とケースとの間の間隙には空気が介在するので、熱抵抗が増大する。これに対処するため、リアクトル本体をケースに収容した後、ケース内に充填材を充填することにより、リアクトル本体とケースとの間の間隙に充填材を介在させ、コア及びコイルからの熱を、充填材、ケースを介して、冷却面を兼ねるリアクトルの設置面に伝達していた。しかし、コアから設置面までの間に介在する部材の数が多く、熱抵抗が増大するため、冷却効率は必ずしも高くない。
【0009】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、小型で、組立性及び冷却効率に優れたリアクトルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のリアクトルは、コイルと、磁性体を含み構成され、対向する一対の継板と、前記一対の継板の間に収容された前記コイルの外周の一部を覆う外脚を有するコアと、を有し、前記コアは、それぞれが前記継板を有する一対の部分コアの二分割構成であり、前記一対の部分コアの継板のそれぞれに密着した樹脂材料より形成され、互いに合致することにより、内部に前記一対の部分コアを収容する外装部を有し、前記外脚は、その外周面が前記継板の外縁から離れた位置に立設され、前記コアには前記外脚の立設方向に略直交する平坦面であるフランジ部が設けられ、前記外装部は、前記継板の外周面を覆うように密着した周壁である側面部と、当該側面部の内側に沿って前記フランジ部の一部に延設される嵌合部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、小型で、組立性及び冷却効率に優れたリアクトルを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態に係るリアクトルの全体構成を示す斜視図である。
【
図2】実施形態に係るリアクトルの全体構成を示す分解斜視図である。
【
図5】外脚の配置態様と金型の縁部を示す内平面側の図である。
【
図6】部分外装部及び部分コアの内平面側の図である。
【
図8】コアと金型の縁部を示す内平面側の図である。
【
図10】実施例と比較例の特性をシミュレーションした結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態のリアクトルについて説明する。
[概略構成]
図1は、本実施形態に係るリアクトルの全体構成を示す斜視図であり、
図2は、その分解斜視図である。リアクトルは、電気エネルギーを磁気エネルギーに変換して蓄積及び放出する電磁気部品であり、電圧の昇降圧等に使用される。本実施形態のリアクトルは、例えばハイブリッド自動車や電気自動車の駆動システム等で使用される大容量のリアクトルである。リアクトルは、これら自動車に搭載される昇圧回路の主要部品である。
【0014】
リアクトルは、
図1及び
図2に示すように、リアクトル本体1と、リアクトル本体1を収容する外装部2とを有する。リアクトル本体1は、コイル3とコア4とを有する。コイル3は、絶縁被覆を有する導線により構成される。コア4は、磁性体を含み構成され、対向する一対の継板41と、一対の継板41の間に収容されたコイル3の外周の一部を覆う外脚43を有する。コア4は、それぞれが継板41を有する部分コア40A、40Bの二分割構成である。
【0015】
外装部2は、部分コア40A、40Bの継板41のそれぞれの外表面に密着した樹脂材料より形成され、互いに合致することにより、内部に部分コア40A、40Bを収容する。さらに、外装部2に収容されたコア4とコイル3との間には、充填材による充填成形部5が設けられている。
【0016】
[詳細構成]
本実施形態のリアクトルの各部の詳細構成について、
図1~
図9を用いて説明する。なお、本明細書において、
図1に示すz軸方向を「上」側、その逆方向を「下」側とする。z軸方向は、リアクトルの上下方向であり、リアクトルの高さ方向である。これらの方向は、リアクトルの各構成の位置関係を述べるための表現であり、リアクトルが設置対象に設置された際の位置関係や方向を限定するものではない。
【0017】
(コイル)
コイル3は、
図2に示すように、平角線の導線が円状に巻かれて成るエッジワイズコイルである。コイル3は、その全体形状が扁平である。つまり、導線が巻かれてなる巻回部31は、その巻軸方向の長さが、直径よりも短い。コイル3の両端である端子32a、32bは、互いに平行に直線状に延びている。なお、コイル3の線材や巻き方は、平角線のエッジワイズコイルに限定されず、他の形態であっても良い。
【0018】
(コア)
コア4は圧粉磁心(以下、ダストコアとも呼ぶ)である。圧紛磁心は、例えば、絶縁樹脂で被覆した軟磁性粉末を金型に入れて加圧成形した成形体に、焼鈍などの熱処理を行うことにより製造される。コア4は、
図2に示すように、コイル3の巻軸方向に直交する面で二分割されており、一対の部分コア40A、40Bによって構成される。部分コア40A、40Bは、いずれも継板41、中脚42及び外脚43を有する同一形状であり、中脚42にコイル3の巻回部31を嵌め込み、中脚42及び外脚43が互いに突き合わされてコア4が構成される。
【0019】
より具体的には、
図3の部分コア40A、40Bの斜視図に示すように、継板41は、略方形の平板状である。部分コア40A、40Bのそれぞれの継板41は、平面が互いに平行に対向するように突き合わされる。このとき、部分コア40A、40Bの対向する側の面を内平面41a、相反する側の面を外平面41bとする。また、内平面41aと外平面41bとの間の側面を外周面41cとする。内平面41a、外平面41bは、角丸正方形状であり、継板41の外周面41cは、角がなく丸みが形成されている。但し、内平面41aと外周面41cとの境界、外平面41bと外周面41cとの境界は、直交する角が形成されている。
【0020】
中脚42及び外脚43は、継板41の内平面41aに設けられている。中脚42は、円柱形状であり、内平面41aの中央に立設されている。外脚43は、その外周面43aが継板41の外縁から離れた位置に立設されている。つまり、外脚43は、内側に寄った位置に設けられていることにより、その外周面43aが継板41の外縁に達していない。このため、外脚43の周囲の継板41の内平面41aは、各外脚43の立設方向に略直交する平坦面であるフランジ部Fとなっている。
【0021】
外脚43の外周面43aと継板41の内平面41aとの間は、角がなく曲面で連続している。つまり、
図4の断面図に示すように、外脚43の側面である外周面43aは、継板41側の縁部である根本部43bが、全周に亘って角のない曲面となっている。根本部43bの立設方向の断面の曲率半径Rは、0.5mm以上、好ましくは1mm以上であるが、これには限定されない。但し、外脚43の継板41と反対側の頭頂面43cと外周面43aとの境界は、断面が略直角となっている。頭頂面43cは、部分コア40A、40Bを突き合わせる際に互いに接触する平坦面である。
【0022】
なお、中脚42と継板41の内平面41aとの間も、角がなく曲面で連続している。つまり、中脚42の側面である外周面42aは、継板41側の縁部である根本部42bが、全周に亘って角のない曲面となっている。根本部42bの立設方向の断面の曲率半径Rは、0.5mm以上、好ましくは1mm以上であるが、これには限定されない。但し、中脚42の継板41と反対側の円形の頭頂面42cと、外周面41cとの境界は、断面が略直角となっている。頭頂面42cは、部分コア40A、40Bを突き合わせる際に互いに接触する平坦面である。
【0023】
また、外脚43は、間隔を空けて複数設けられている。本実施形態の外脚43は、継板41の内平面41aの4隅の近傍に、1つずつ設けられている。外脚43は、
図5(A)の平面図に示すように、角が丸くなった略三角柱形状であり、外脚43の外周面43aは、角がなく丸みが形成されている。外周面43aは、外脚43の立設方向に直交する断面の曲線部分の曲率半径Rは、1mm以上で、好ましくは2mm以上であるが、これには限定されない。
【0024】
上記のように、各外脚43は、立設方向に直交する断面が、直角三角形の角を丸くした形状となっていて、それぞれの斜辺が、
図3に示すように、中脚42に間隔を空けて対向するように配置されている。この斜辺に対応する外周面43aは、円弧状に窪んだ曲面となっている。これにより、中脚42と外脚43との間に、コイル3の巻回部31が入る空間が形成されている。
【0025】
つまり、部分コア40A及び部分コア40Bにおいて、頭頂面42cを突き合わせた中脚42の部分が、コイル3の巻回部31の内側に入り、頭頂面43cを突き合わせた外脚43の部分が、コイル3の巻回部31の外側に配置される。これにより、コイル3の巻軸と中脚42の軸が平行になる。部分コア40A、40Bが突き合わされてコア4が構成された場合、各外脚43の間が開口となる。コイル3の端子32a、32bは、この開口のうちのいずれかから外部に引き出されている。
【0026】
中脚42には、コイル3に通電がなされることにより磁束が発生する。継板41及び外脚43は、中脚42で発生した磁束が通過するヨーク部である。例えば、部分コア40Aの中脚42で発生した磁束は、部分コア40Aの継板41から、部分コア40Aの4つの外脚43、部分コア4Bの4つの外脚43及び部分コア40Bの継板41を介して中脚42に戻り、閉じた磁気回路を形成する。
【0027】
また、コア4には、
図4に示すように、絶縁部44が設けられている。絶縁部44は、継板41、中脚42、外脚43に密着した絶縁材料により形成され、コア4とコイル3とを絶縁する。絶縁部44は、エポキシ系、アクリル系、フッ素系等の材料による膜状の絶縁被覆である。絶縁被覆は、浸漬又はスプレー塗布によって行うことができる。なお、絶縁部44は、コイル3とコア4とを絶縁できればよいため、コア4の全体を覆うように形成しても、コア4の一部に形成してもよい。例えば、継板41の内平面41a、中脚42の外周面42a、外脚43の外周面43aだけに形成してもよい。
【0028】
部分コア40A、40Bを突き合せたコア4は、その全体形状が扁平である。すなわち、コア4全体の厚さ方向の長さ、つまりコイル3の巻軸方向の長さが、継板41の外平面41bの一辺の長さよりも短い。
【0029】
(外装部)
外装部2は、リアクトル本体1を収容する収容体である。外装部2は、コア4の外表面を覆うように、コア4と一体的に形成されている。一体的に形成とは、コア4に対して密着するように外装部2を形成する場合も、両者を別々に形成してから合体させて密着させる場合も含む。但し、外装部2がコア4に対して密着するように、外装部2にコア4を埋設する一体成型によることがより好ましい。これは、両者を別々に形成してから合体させる場合と比較して、両者の間に発生するクリアランスや両者の寸法のばらつきを考慮する必要が無く、その分小型化できることによる。コア4の外表面は、継板41の外平面41b、外周面41cの全体を含む。
【0030】
本実施形態の外装部2は、外脚43の周囲の継板41の面にも形成されている。つまり、外装部2は、内平面41aの一部も覆うように密着している。より具体的には、外装部2は、内平面41aの外縁に沿って連続して形成され、外脚43側に入り込んでいる。このため、外装部2は、フランジ部Fの一部を覆っている。なお、コア4に密着するとは、コア4の表面に隙間なく接する部分を有していることをいい、コア4の表面に直接接する場合も、コア4の表面に設けられた絶縁部44を介して接する場合も含む。
【0031】
外装部2は、部分コア40Aに密着した部分外装部20A、部分コア40Bに密着した部分外装部20Bを有する。部分外装部20A、20Bは、それぞれ平板部21、側面部22、嵌合部23を有する。平板部21は、継板41の外平面41bを覆うように密着した部分である。側面部22は、継板41の外周面41cを覆うように密着した周壁である。
【0032】
嵌合部23は、
図6の平面図に示すように、側面部22の内側に沿って、フランジ部Fの一部に延設されている。部分外装部20A、20Bを合致させる際に、いずれか一方の嵌合部23が他方の嵌合部23の内側に入ることにより互いに嵌合する。さらに、側面部22及び嵌合部23は、切欠22aを有する。この切欠22aは、側面部22及び嵌合部23の一部が方形状に切り欠かれた部分である。
【0033】
外装部2を形成する樹脂材料としては、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)、不飽和ポリエステル系樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、BMC(バルクモールディングコンパウンド)、PBT(ポリブチレンテレフタラート)等を適用できる。外装部2は、金型内に挿入した部分コア40A、40Bの周囲に樹脂材料を注入して、部分コア40A、40Bと樹脂材料とを一体化するインサート成形によって形成できる。
【0034】
また、部分コア40A、40Bとともに、部分外装部20A、20Bが合致すると、切欠22aによって開口Hが形成される(
図1参照)。本実施形態では、開口Hは、外装部2の一側面に構成される。この開口Hから、コイル3の端子32a、32bが外部に引き出されている。
【0035】
外装部2は、コア4及びコイル3が扁平であるため、
図1に示すように、外装部2も全体的に扁平である。すなわち、外装部2の厚さ方向、つまりコイル3の巻軸方向の長さが、外装部2の幅方向、つまり部分コア40A、40Bの外平面41bの辺方向の長さよりも短い。
【0036】
(充填成形部)
充填成形部5は、
図2に示すように、充填材が外装部2内に充填及び固化されることにより形成されている。充填成形部5は、コア4及び外装部2内のコイル3が収容された空間内に形成される。そのため、充填成形部5は、コア4、コイル3、外装部2の形状に倣った形状となっている。充填材には、リアクトルの放熱性能の確保及びリアクトル本体1から外装部2への振動伝搬の軽減のため、比較的柔らかく熱伝導性の高い樹脂が適している。また、充填材は絶縁性を有することが好ましい。これにより、コイル3の周囲に充填成形部5が配置され、コイル3の熱がコア4及び外装部2を介して、外部へと至る放熱ルートが形成される。
【0037】
[リアクトルの製造方法]
次に、本実施形態のリアクトルの製造方法について説明する。本リアクトルの製造方法は、(a)コア形成工程、(b)コアユニット製造工程、(c)組立工程、(d)充填工程を有している。
【0038】
(a)コア形成工程
まず、部分コア40A及び部分コア40Bをそれぞれ圧粉磁心により形成する。これは、
図7に示すように、圧粉磁心の材料となる粉末を、外型C1の成形孔の内周面と、下型C2の上面によって形成される領域に投入し、上型C3によって圧縮後、上型C3を抜くことにより形成する。この圧縮方向は、
図7の白抜きの矢印に示すように、中脚42及び外脚43の立設方向である。
【0039】
上型C3の中脚42及び外脚43に対応するキャビティの縁部は、曲面となっていて、中脚42及び外脚43の根本部42b、43bの曲面が形成される。このように角がない曲面となっているため、高い圧力をかけても上型C3が抜け易くなる。また、中脚42の外周面42a、外脚43の外周面43aは、角がなく丸みが形成されているため、上型C3が抜け易い。このように成形された部分コア40A、40Bの表面には、浸漬又はスプレー塗布によって、
図4に示すように、絶縁部44が形成される。
【0040】
(b)部分コアユニット製造工程
次に、部分コア40A、40Bと部分外装部20A、20Bとを、インサート成形によって一体化させることによって、部分コアユニットを製造する。部分コアユニットは、部分コア40A、40Bと部分外装部20A、20Bとをそれぞれ一体化したユニットである。部分コアユニットは、金型内に部分コア40A又は部分コア40Bをセットして、金型内に樹脂を注入して固化させることによって、部分コア40A又は部分コア40Bに、それぞれ部分外装部20A、20Bを一体的に形成する。
【0041】
このとき、
図6及び
図8(A)の平面図に示すように、内平面41aに入り込む嵌合部23を形成する必要があるため、金型Zの内縁は内平面41a側に入り込む形状となる。但し、外脚43は継板41の外縁に達しておらず、フランジ部Fが形成されている。このため、金型Zの内縁の形状は、角丸正方形状等の単純な直線と曲線で囲まれた簡単な形状とすればよい。
【0042】
(c)組立工程
上記のように、部分外装部20Aと一体化した部分コア40Aと、部分外装部20Bと一体化した部分コア40Bを、コイル3を介在させてリアクトルを組み立てる工程を説明する。すなわち、コイル3を、部分コア40A、40Bのいずれか一方の中脚42が、巻回部31内に入るように装着する。コイル3の端子32a、32bは、切欠22a内に合わせる。
【0043】
そして、部分コア40A及び部分コア40Bの互いの中脚42の頭頂面42cと外脚43の頭頂面43cとを突き合わせ、互いの部分外装部20A、20Bの嵌合部23を嵌合させるように、一方の部分コアユニットを他方の部分コアユニットに被せて組み立てる。
【0044】
その際、頭頂面42c、頭頂面43c及び嵌合部23のそれぞれに、接着剤を塗布して両部分コアユニットを接着する。但し、中脚42、外脚43の接着は必須ではなく、リアクトルの使用される周波数帯域によっては、各脚を接着しなくても良い。
【0045】
この組立工程により、切欠22aが合致して、外装部2の側面に開口Hが形成される。また、少なくとも部分外装部20A、20Bが接着されているので、当該開口Hを除いて、リアクトルは、密閉される。
【0046】
(d)充填工程
充填工程は、開口Hから充填材を外装部2内に充填させて、固化させることにより充填成形部5を形成する工程である。その際、
図1に示すように、開口Hを上方に向けて充填材を充填させる。すなわち、開口Hは、コイル3の端部32a、32bを引き出すものであるとともに、外装部2内に充填材を注入する機能も兼ねる。本実施形態では、外装部2の一側面に1つの開口Hが設けられており、かつ、開口H以外の部分で外装部2が密閉されているため、充填した充填材が開口H以外から漏れ出るのを防止することができる。
【0047】
[作用・効果]
(1)本実施形態のリアクトルは、コイル3と、磁性体を含み構成され、対向する一対の継板41と、一対の継板41の間に収容されたコイル3の外周の一部を覆う外脚43を有するコア4とを有し、コア4は、それぞれが継板41を有する一対の部分コア40A、40Bの二分割構成であり、一対の部分コア40A、40Bの継板41のそれぞれに密着した樹脂材料より形成され、互いに合致することにより、内部に一対の部分コア40A、40Bを収容する外装部2とを有する。
【0048】
これにより、コア4に密着した外装部2によって、コイル3を収容したコア4を覆うことができるので、余分な隙間が排除され、リアクトル全体として小型化が可能となる。また、外装部2が密着して形成された部分コア40A、40Bを合致させることにより、リアクトルを組み立てることができるので、コアのボビンへの収容、コイルの装着、ケースの収容といった工程を経る場合に比べて、組み立て工数を減らすことができる。
【0049】
また、通常のポットコアのように、コア4の外脚で連続した壁状の外装を形成する場合、金型によって薄い壁を形成することは非常に難しいが、本実施形態では、薄く形成しやすい樹脂材料による外装部2とすることにより、成形性の向上、小型化を図ることができる。これは、成形圧力が10~15トンにもなるために、薄い部分を形成することが困難なダストコアの場合に、より一層有効となる。さらに、外装部2はコア4に密着しているため、コイル3及びコア4からの熱を、外装部2のみを介して外部に伝達できるので、高い冷却効率が得られる。
【0050】
(2)継板41及び外脚43に密着した絶縁材料により形成され、コア4とコイル3とを絶縁する絶縁部44を有する。このため、外装部2によって外部との絶縁を確保しつつ、絶縁部44によってコア4とコイル3との絶縁を確保できる。また、コイル4と対向するコア3の面に絶縁材料が形成されているために、コイル4とコア3との距離を拡大させる必要がなく、大型化を抑えることができる。さらに、本実施形態では、絶縁被覆とすることにより、樹脂材料よりも薄く形成することができるので、厚みを低減することができ、小型化が可能となる。例えば、樹脂材料は1ミリ~数ミリの厚みとなるが、絶縁材料は数ミクロンの厚みとすることができるので、小型化が可能となる。
【0051】
(3)外脚43は、間隔を空けて複数設けられている。例えば、継板の辺に沿って連続した壁状の外脚を形成する場合、コイル3との絶縁のためのクリアランスを確保する必要があるために、全体として大型化する。大型化を抑えるためには、外脚の壁を極力薄く形成する必要があるが、上記のように、金型によって薄い壁を形成することは非常に難しい。
【0052】
本実施形態では、外脚43を間隔を空けて複数配置しているので、間隔を空けた部分については、コイル3との絶縁を考慮する必要がなくなり小型化が可能となるとともに、外脚43は薄い壁とする必要がないため、金型の加圧によっても容易に形成できる。これは、上記のように、成形圧力が大きいために、薄い部分を形成することが困難なダストコアの場合に、より一層有効となる。さらに、各外脚43の間に間隔が設けられていることにより、充填剤が流入しやすく、内部に行き渡りやすくなるため、充填剤の充填性を向上させることができる。
【0053】
(4)外脚43は、その外周面43aが継板41の外縁から離れた位置に立設されている。このため、インサート成形の際の金型の形状を簡素化できる。例えば、
図8(B)に示すように、コイル3の端子32a、32bを引き出すために複数の外脚43を間隙を持って配置する場合に、外脚43の外周面43aが継板41の外縁に達していると、外装部2を成形するための金型Zとしては、複数の外脚43の間に入る凸部分を断続的に形成する必要がある。すると、金型Zの形状が複雑化して、コスト高につながる。また、凸部分を外脚43の間に正確に合わせることは難しいため、凸部分と外脚43との隙間から内側への樹脂材料の流入が生じ、バリが発生する。
【0054】
これに対して、本実施形態では、外脚43は、その外周面43aが継板41の外縁から離れた位置に立設されていることから、外装部2は、外脚43の周囲の継板41の面に形成することができる。つまり、
図8(A)に示すように、金型Zとしては、外脚43の周囲に連続した環状の凸部分を形成すればよいため、金型Zの構成を簡略化でき、コストを低減できる。また、内側への樹脂材料の流入も防ぐことができるので、バリの発生もない。
【0055】
また、平面視で金型にエッジとなる部分を設ける必要がないので、コア4を金型により形成する場合、高い圧力をかけても金型が変形することがない。例えば、
図5(B)に示すような先端が細くなった先鋭部分T1や、
図5(C)に示すような角部分T2を、上型C3に形成した場合、この先鋭部分T1や角部分T2に応力が集中して、上型C3が破損する可能性がある。
【0056】
これに対して、本実施形態では、このような応力が集中する部分が生じないため、上型C3が破損することなく、量産に適した構造となる。これは、成形圧力が非常に大きいダストコアの場合に、より一層有効となる。さらに、外装部2を、外脚43の周囲の継板41の面に形成することができるので、外装部2の肉厚を確保できる。つまり、フランジ部Fまで外装部2を設けることにより、外装部2を肉厚としつつも大型化を抑えることが可能となり、成形性、絶縁性の向上にもつながる。
【0057】
(5)継板41は、略方形状であり、外脚43は、継板41の4隅の近傍に設けられている。このため、コイル3の巻回部31の配置領域に対して、デッドスペースになる4隅の近傍を利用して、外脚43を配置するので、全体として小型化が可能となる。例えば、
図8(B)に示すように、一対の外脚43aを継板41の対向する辺に沿って略円弧状に形成したコア4の場合よりも、体積を小さく構成できる。また、外装部2としてコア4を用いるのではなく、樹脂材料を用いて構成しても、デッドスペースを利用することで外脚43のスペースを確保できる。
【0058】
本実施形態のリアクトルと比較例との特性を比較したシミュレーションの結果を、
図9、
図10を参照して説明する。実施例は、本実施形態に対応するリアクトル本体を適用した例である。比較例は、
図8(B)のような一対のコア4を、コイル3を収容して合致させることにより、
図9に示すようなリアクトル本体を構成した例である。実施例と比較例のコイル3の線形及び巻数は同一である。実施例、比較例のコア4の外形寸法は、以下の通りである。
実施例 30.7mm×30.7mm×18.9mm=17813.1mm
3
比較例 33.5mm×28.5mm×21.3mm=20336.2mm
3
【0059】
つまり、実施例は、比較例よりも体積が12.4%小さくなっている。但し、実施例及び比較例は、中脚42及び外脚43の軸に直交する方向の断面積、つまり磁束の通路となる断面積は、81.8mm2で等しい。より詳細には、実施例の中脚の断面積=比較例の中脚の断面積=実施例の外脚(4本)の断面積合計=比較例の外脚(2本)の断面積合計=81.8mm2である。また、継板41の断面積も、実施例と比較例で同一である。
【0060】
以上のような実施例と比較例について、重畳電流Idc[A]とインダクタンスL[μH]の関係をシミュレーションした結果を、
図10に示す。この
図10に示すように、実施例のインダクタンスLの値は、比較例よりも高い。つまり、実施例では、小型化を実現しつつ、高いインダクタンスLの値を得ることができる。
【0061】
(6)外脚43の外周面43aと継板41との間は、角がなく曲面で連続している。例えば、金型による加圧を受ける外脚43と継板41との間に角が存在すると、角に応力が集中して加わるので、金型を外す際にスムーズに抜けなくなったり、かじりが発生する可能性がある。本実施形態では、外脚43と継板41との間に角がないため、特定箇所に応力が集中せず、金型をスムーズに抜くことができ、かじりを防止できる。これも、成形圧力が非常に大きいダストコアの場合に、より一層有効となる。
【0062】
(7)外脚43の外周面43aには、角がなく丸みが形成されている。例えば、外脚の外周面に角が存在する場合にも、金型を外す際にスムーズに抜けなくなったり、かじりが発生する可能性がある。本実施形態では、外脚43の外周面43aに角がないため、特定箇所に応力が集中せず、金型をスムーズに抜くことができ、かじりを防止できる。これも、成形圧力が非常に大きいダストコアの場合に、より一層有効となる。
【0063】
[他の実施形態]
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、下記に示す他の実施形態も包含す
る。また、本発明は、上記実施形態及び下記の他の実施形態を全て又はいずれかを組み合
わせた形態も包含する。さらに、これらの実施形態を発明の範囲を逸脱しない範囲で、種
々の省略や置き換え、変更を行うことができ、その変形も本発明に含まれる。
【0064】
(1)外装部2及び絶縁部44を樹脂材料により一体的に形成してもよい。一体的とは、外装部2と絶縁部44とが継ぎ目なく連続して形成されていることをいう。例えば、
図11に示すように、インサート成形によって、樹脂材料で部分外装部20A、20Bを形成する際に、継板41の内平面41a、中脚42の外周面42a、外脚43の外周面43aも継ぎ目なく連続して樹脂材料で覆う。
【0065】
これにより、絶縁部44の形成工程を省略することができ、工数の削減につながる。また、絶縁部44は、数10ミクロンの膜と比較すると、厚めに形成されるので、コイル3の絶縁が確実となるとともに、位置決めもしやすい。
【0066】
(2)上記の実施形態では、中脚42、外脚43は、部分コア40A、部分コア40Bの双方に設けられていたが、少なくとも一方に設けられていればよい。また、コア4は、中脚42を有していたが、直流用のリアクトルであれば、中脚42を省略してもよい。さらに、部分コア40A、部分コア40Bの対になる各脚間にスペーサを設けていないが、当該部分にスペーサを介在させても良い。スペーサは、所定幅の磁気的なギャップを与えてリアクトルのインダクタンス低下を防止する。スペーサの材料としては、非磁性体、セラミック、非金属、樹脂、炭素繊維、若しくはこれら二種以上の合成材又はギャップ紙を用いることができる。
【0067】
(3)コア4を構成する継板41、中脚42、外脚43の形状についても、上記の実施形態の態様には限定されない。例えば、継板41を、円形状、楕円形状、略長方形状、多角形状としてもよい。中脚42、外脚43も円柱形状、多角形状としてもよい。コイル3の形状についても、巻回部31は、円形には限定されず、長円形状としてもよい。但し、継板41とコイル3の形状は、コイル3を配置した場合にデッドスペースが生じ、そのデッドスペースに外脚43を配置できる形状が好ましい。
【0068】
(4)コア4及び外装部2を別々に成形して作成して、互いに組付けても、貼り付けてもよい。つまり、部分コア40A、40B、部分外装部20A、20Bをそれぞれ成形して、互いに合体させてもよい。この場合には、別途金属ケース等を用意して収容する工数及び部品点数の削減になる。
【0069】
(5)実施形態では、部分外装部20A、20Bを接着剤により接着して密閉するようにしたが、Oリングなどのゴム、ガスケットなどのシール材を部分外装部20A、20B間に介在させて密閉するようにしても良い。
【符号の説明】
【0070】
1 リアクトル本体
2 外装部
20A、20B 部分外装部
21 平板部
22 側面部
22a 切欠
23 嵌合部
3 コイル
31 巻回部
32a、32b 端子
4 コア
40A、40B 部分コア
41 継板
41a 内平面
41b 外平面
41c 外周面
42 中脚
42a 外周面
42b 根本部
42c 頭頂面
43 外脚
43a 外周面
43b 根本部
43c 頭頂面
44 絶縁部
5 充填成形部
F フランジ部
H 開口
C1 外型
C2 下型
C3 上型
Z 金型
T1 先鋭部分
T2 角部分