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特許7189669車両のエネルギー蓄積モジュールを作動させる制御装置および方法、車両のエネルギー蓄積モジュール、および、電動ブレーキ装置
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  • 特許-車両のエネルギー蓄積モジュールを作動させる制御装置および方法、車両のエネルギー蓄積モジュール、および、電動ブレーキ装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】車両のエネルギー蓄積モジュールを作動させる制御装置および方法、車両のエネルギー蓄積モジュール、および、電動ブレーキ装置
(51)【国際特許分類】
   B60L 50/60 20190101AFI20221207BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20221207BHJP
   H02J 7/04 20060101ALI20221207BHJP
   B60R 16/03 20060101ALI20221207BHJP
   B60T 13/74 20060101ALI20221207BHJP
   B60T 17/18 20060101ALI20221207BHJP
   B60L 3/00 20190101ALI20221207BHJP
【FI】
B60L50/60
H02J7/00 H
H02J7/04 H
B60R16/03 A
B60T13/74 G
B60T17/18
B60L3/00 S
【請求項の数】 8
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018055601
(22)【出願日】2018-03-23
(65)【公開番号】P2019013132
(43)【公開日】2019-01-24
【審査請求日】2021-03-04
(31)【優先権主張番号】10 2017 206 472.2
(32)【優先日】2017-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(72)【発明者】
【氏名】ボマー,ラース
(72)【発明者】
【氏名】ヴィートマイアー,マティアス
(72)【発明者】
【氏名】ドノテック,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】フリードリヒ,トーマス
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-176197(JP,A)
【文献】特開2013-102686(JP,A)
【文献】特開2009-132325(JP,A)
【文献】特開2014-043119(JP,A)
【文献】特開2010-269712(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00 - 3/12
B60L 7/00 - 13/00
B60L 15/00 - 58/40
H02J 7/00
H02J 7/04
B60R 16/03
B60T 13/74
B60T 17/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのスーパーコンデンサ(12)を搭載した車両のエネルギー蓄積モジュール(14)のための制御装置(10)であって、
前記制御装置(10)が、前記エネルギー蓄積モジュール(14)を前記車両の少なくとも1つの車両電気システム(18)に結合する、エネルギー蓄積モジュール固有またはエネルギー蓄積モジュール外部の少なくとも1つの結合コンポーネント(16)を制御するように設計されており、その場合、少なくとも1つの車両電気システム(18)から前記少なくとも1つの制御される結合コンポーネント(16)を介して提供される電流(20)によって前記エネルギー蓄積モジュール(14)の前記少なくとも1つのスーパーコンデンサ(12)を充電可能であり;
前記制御装置(10)が、さらに、前記車両の駆動モータのオフ時に多くとも1つの第1電圧または全電圧に放電する前記エネルギー蓄積モジュール(14)の前記少なくとも1つのスーパーコンデンサ(12)を、前記駆動モータの再始動時に、前記少なくとも1つの車両電気システム(18)から前記少なくとも1つの制御される結合コンポーネント(16)を介して提供される電流(20)によって、少なくとも1つの第2電圧または全電圧に充電するように設計されている、
制御装置において、
前記制御装置(10)は、さらに、前記エネルギー蓄積モジュール(14)の前記少なくとも1つのスーパーコンデンサ(12)を前記少なくとも1つの第2電圧または全電圧に充電するための目標充電速度を、少なくとも1つの走行の仕方情報および/または周辺情報(22~28)を考慮して設定するように、かつ前記少なくとも1つの車両電気システム(18)により提供される電流(20)によって、前記エネルギー蓄積モジュール(14)の前記少なくとも1つのスーパーコンデンサ(12)を前記設定された目標充電速度に相当する実際充電速度で充電するように設計されており、
前記制御装置(10)は、前記少なくとも1つの走行の仕方情報(22、24)としての前記車両の現在および/または予想車速が所定限界値を下回るかぎり、ならびに/あるいは前記車両の位置が前記少なくとも1つの周辺情報(26、28)によって所定の低速交通領域に特定されているかぎり、前記目標充電速度を多くとも1つの第1目標値に設定するように、かつ、
前記少なくとも1つの走行の仕方情報(22、24)としての前記車両の現在および/または予想車速が所定限界値を上回るかぎり、ならびに/あるいは前記車両の位置が前記少なくとも1つの周辺情報(26、28)によって所定の高速交通領域に特定されているかぎり、前記目標充電速度を前記第1目標値よりも大きい少なくとも1つの第2目標値に設定するように設計されている、
制御装置(10)
【請求項2】
前記制御装置(10)は、前記少なくとも1つの走行の仕方情報および/または周辺情報(22~28)として、少なくとも1つの事故警告センサにより提供される少なくとも1つの警告信号、少なくとも1つの周辺センサにより提供される少なくとも1つの情報(26)、グローバルポジショニングシステムから出力される位置データ(28)、インテリジェント交通信号灯および/またはインテリジェント道路交通標識により受信される少なくとも1つの信号、無線および/または少なくとも1つの車載センサにより提供される交通状況データ、ならびに/あるいは前記車両の自律走行のために設定された車両軌跡(24)を評価するように設計されている、
請求項1に記載の制御装置(10)。
【請求項3】
車両のエネルギー蓄積モジュール(14)であって、
請求項1または2に記載の制御装置(10)と、
少なくとも1つのスーパーコンデンサ(12)と
を備えた、
車両のエネルギー蓄積モジュール
【請求項4】
前記少なくとも1つのスーパーコンデンサ(12)が、少なくとも1つの二層コンデンサ、少なくとも1つの疑似コンデンサ、および/または少なくとも1つのハイブリッドスーパーコンデンサである、
請求項3に記載のエネルギー蓄積モジュール(14)。
【請求項5】
車両の電動ブレーキ装置(30)であって、
少なくとも1つの電気モータ(32)を備え、
該電気モータには、
前記車両の少なくとも1つの車両電気システム(18)の破損または機能不全時に、前記それぞれのエネルギー蓄積モジュール(14)によって、前記少なくとも1つの電気モータ(32)に少なくとも過渡的に電力供給可能であるように、協働する、かつ少なくとも1つのスーパーコンデンサ(12)を搭載したエネルギー蓄積モジュール(14)を有する請求項1または2に記載の制御装置(10)が結合されているか、または請求項3または4に記載のエネルギー蓄積モジュール(14)が結合されている、
電動ブレーキ装置
【請求項6】
前記電動ブレーキ装置は、液圧ブレーキシステム、少なくとも1つのポンプを有する液圧ポンプシステム、電動ピストンシリンダ装置、または他の液圧ブレーキシステムのマスタブレーキシリンダに前置された電気機械式ブレーキ倍力装置(30)である、
請求項5に記載の電動ブレーキ装置(30)。
【請求項7】
車両の駆動モータのオフ時に多くとも1つの第1電圧または全電圧に放電する前記エネルギー蓄積モジュール(14)の前記少なくとも1つのスーパーコンデンサ(12)を、前記駆動モータの再始動時に、前記車両の少なくとも1つの車両電気システム(18)から提供される電流(20)によって、少なくとも1つの第2電圧または全電圧に充電するステップ(S2)を包含する、少なくとも1つのスーパーコンデンサ(12)を搭載した車両のエネルギー蓄積モジュール(14)を作動させる方法であって、
前記エネルギー蓄積モジュール(14)の前記少なくとも1つのスーパーコンデンサ(12)を前記少なくとも1つの第2電圧または全電圧に充電するための目標充電速度が、少なくとも1つの走行の仕方情報および/または周辺情報(22~28)を考慮して設定され(S3)、前記少なくとも1つの車両電気システム(18)により提供される電流(20)によって、前記エネルギー蓄積モジュール(14)の前記少なくとも1つのスーパーコンデンサ(12)が前記設定された目標充電速度に相当する実際充電速度で充電され、
前記少なくとも1つの走行の仕方情報(22、24)としての前記車両の現在および/または予想車速が所定限界値を下回るかぎり、ならびに/あるいは前記車両の位置が前記少なくとも1つの周辺情報(26、28)によって所定の低速交通領域に特定されるかぎり、前記目標充電速度が多くとも1つの第1目標値に設定され、かつ、前記少なくとも1つの走行の仕方情報(22、24)としての前記車両の現在および/または予想車速が所定限界値を上回るかぎり、ならびに/あるいは前記車両の位置が前記少なくとも1つの周辺情報(26、28)によって所定の高速交通領域に特定されるかぎり、前記目標充電速度が前記第1目標値よりも大きい少なくとも1つの第2目標値に設定される、方法
【請求項8】
前記少なくとも1つの走行の仕方情報および/または周辺情報(22~28)として、少なくとも1つの事故警告センサにより提供される少なくとも1つの警告信号、少なくとも1つの周辺センサにより提供される少なくとも1つの情報(26)、グローバルポジショニングシステムから出力される位置データ(28)、インテリジェント交通信号灯および/またはインテリジェント道路交通標識により受信される少なくとも1つの信号、無線および/または少なくとも1つの車載センサにより提供される交通状況データ、ならびに/あるいは前記車両の自律走行のために設定された車両軌跡(24)が評価される、
請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つのスーパーコンデンサ(Superkondensator)を搭載した車両のエネルギー蓄積モジュールのための制御装置に関する。同様に、本発明は、車両用のエネルギー蓄積モジュールおよび車両用の電動ブレーキ装置(motorisierte Bremsvorrichtung)に関する。さらに、本発明は、少なくとも1つのスーパーコンデンサを搭載した車両のエネルギー蓄積モジュールを作動させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に蓄電コンデンサを搭載した車両が記載されている。蓄電コンデンサ(Speicherkondesator)によって、車両の電動ブレーキ装置の少なくとも1つのモータへの電力供給が車両の車両バッテリの破損後もなお可能であるということである。車両のイグニッションスイッチをオフにすると蓄電コンデンサが放電され、イグニッションスイッチをオンにすると再び充電される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第7,812,474号明細書
【発明の概要】
【0004】
本発明は、請求項1の特徴を有する少なくとも1つのスーパーコンデンサを搭載した車両のエネルギー蓄積モジュールのための制御装置、請求項4の特徴を有する車両用のエネルギー蓄積モジュール、請求項6の特徴を有する車両用の電動ブレーキ装置、および請求項8の特徴を有する少なくとも1つのスーパーコンデンサを搭載した車両のエネルギー蓄積モジュールを作動させる方法を提供する。
【0005】
本発明は、エネルギー蓄積モジュールの少なくとも1つのスーパーコンデンサの車両始動を条件とした充電時に、現在の実際充電速度をそれぞれの車両の現在の走行の仕方(Fahrweise)および/または車両の現在の周辺における少なくとも1つの周辺条件に適合させる可能性を提供する。このことは、実際充電速度がそれぞれのエネルギー蓄積モジュール/エネルギー蓄積モジュールの少なくとも1つのスーパーコンデンサの寿命に影響を及ぼすので有利である(テスラ スーパーチャージャの問題性)。本発明によりもたらされる、車両始動を条件とした(Fahrzeugstart-bedingt)それぞれのエネルギー蓄積モジュールの少なくとも1つのスーパーコンデンサの充電時における現在の実際充電速度のインテリジェントで状況的な適合によって、少なくとも1つのスーパーコンデンサ/エネルギー蓄積モジュールの寿命を延ばすことができる。それゆえ本発明によって、少なくとも1つのスーパーコンデンサを搭載したエネルギー蓄積モジュールをそれぞれの車両において使用した場合に修理コストおよび取替コストを削減することができる。
【0006】
したがって、本発明を利用した場合、標準的なスーパーコンデンサ・エネルギー蓄積モジュールの最大可能な実際充電速度(もしくはCレート)での従来の充電は行われない。その代わりに、本発明により再充電されるエネルギー蓄積モジュールは、車両始動を条件とした少なくとも1つのスーパーコンデンサによる充電時に「保護(geschont)」される。なぜなら、多くの場合、現在の実際充電速度がそれぞれ最大可能な実際充電速度(Cレート)を下回るからである。通常、現在の実際充電速度を最大可能な充電速度(Cレート)よりもこのように「低くする」ことは可能である。なぜなら、少なくとも1つの走行の仕方情報および周辺情報をもとにして、電気システムの欠陥または電気システムの破損(車両の耐用期間の間に生じることは20回よりも少ないが、その一方でそれぞれの車両は約50000回の「イグニッション・オン」サイクルを行う)が生じた場合でも、車両をその走行の仕方および/またはその実際の周辺にもとづいて容易かつ確実に停止させ得ることが認識可能だからである。
【0007】
有利な一実施形態において、制御装置は、少なくとも1つの走行の仕方情報としての車両の現在および/または予想車速が所定限界値を下回るかぎり、ならびに/あるいは車両の位置が少なくとも1つの周辺情報によって所定の低速交通領域(langsamen Verkehrsbereich)に特定されているかぎり、目標充電速度を多くとも1つの第1目標値に設定するように、かつ、少なくとも1つの走行の仕方情報としての車両の現在および/または予想車速が所定限界値を上回るかぎり、ならびに/あるいは車両の位置が少なくとも1つの周辺情報によって所定の高速交通領域(schnellen Verkehrsbereich)に特定されている(lokalisiert)かぎり、目標充電速度を第1目標値よりも大きい少なくとも1つの第2目標値に設定するように設計されている。例えば、少なくとも1つの走行の仕方情報としての車両の現在および/または予想車速が所定限界値を下回るかぎり、ならびに/あるいは車両の位置が少なくとも1つの周辺情報によって(所定の低速交通領域の一部としての)駐車場または制限速度30キロ区域に特定されているかぎり、目標充電速度が多くとも1つの第1目標値に設定され、少なくとも1つの走行の仕方情報としての車両の現在および/または予想車速が所定限界値を上回るかぎり、ならびに/あるいは車両の位置が少なくとも1つの周辺情報によって、(所定の高速交通領域の一部としての)高速道路上または近くもしくは高速道路に通じる道路に特定されているかぎり、目標充電速度が第1目標値よりも大きい少なくとも1つの第2目標値に設定される。このように実際充電速度は自動的に次のように適合される。すなわち、それぞれの車両の少なくとも1つの車両電気システムの突然の破損または予期せぬ機能不全時に車両の減速において運転者を支援するのに十分なエネルギーが確保され、それと同時に少なくとも1つのスーパーコンデンサの「保護」によってこれを搭載したエネルギー蓄積モジュールの寿命を延ばすことができるように適合される。
【0008】
さらに別の有利な一実施形態において、制御装置は、少なくとも1つの走行の仕方情報および/または周辺情報として、少なくとも1つの事故警告センサにより提供される少なくとも1つの警告信号、少なくとも1つの周辺センサにより提供される少なくとも1つの情報、グローバルポジショニングシステム(globalen Positionsbestimmungssystem)から出力される位置データ、インテリジェント交通信号灯および/またはインテリジェント道路交通標識により受信される少なくとも1つの信号、無線および/または少なくとも1つの車載センサ(fahrzeugeigenen Sensor)により提供される交通状況データ、ならびに/あるいは車両の自律走行のために設定された車両軌跡を評価するように設計されている。このようにすることで、エネルギー蓄積モジュールの少なくとも1つのスーパーコンデンサの車両始動を条件とした充電時の現在の実際充電速度を、現在周辺状況および/または現在交通状況、インテリジェント交通信号灯および/またはインテリジェント道路交通標識の現在の切換え(Schaltung)、および/または自律走行時の車両の今後の操縦に適合させ得ることも有利である。
【0009】
前述の利点は、相応の制御装置および少なくとも1つのスーパーコンデンサを備えて形成されているエネルギー蓄積モジュールでも保証されている。少なくとも1つのスーパーコンデンサは、例えば少なくとも1つの二重層コンデンサ(Doppelschichtkondensator)、少なくとも1つの疑似コンデンサ(Pseudokondensator)、および/または少なくとも1つのハイブリッドスーパーコンデンサ(Hybridsuperkondensator)であってもよい。
【0010】
車両の少なくとも1つの車両電気システムの破損または機能不全時に、それぞれのエネルギー蓄積モジュールによって、少なくとも1つの電気モータに少なくとも過渡的に電力供給できるように、協働する、かつ少なくとも1つのスーパーコンデンサを搭載したエネルギー蓄積モジュールを有する相応の制御装置が結合されているか、または対応するエネルギー蓄積モジュールが結合されている少なくとも1つの電気モータを備えた車両用の電動ブレーキ装置も上述の利点を提供する。電動ブレーキ装置は、例えば液圧ブレーキシステム、少なくとも1つのポンプを有する液圧ポンプシステム、電動ピストンシリンダ装置、または他の液圧ブレーキシステムのマスタブレーキシリンダに前置された電気機械式ブレーキ倍力装置(Bremskraftverstaerker)であってもよい。
【0011】
さらに、少なくとも1つのスーパーコンデンサを搭載した車両のエネルギー蓄積モジュールを作動させる対応する方法の実行も上述の利点をもたらす。制御装置、エネルギー蓄積モジュール、および/または電動ブレーキ装置の上述の実施形態に係る方法が展開可能であることを明示的に指摘しておく。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】制御装置もしくは制御装置を備えて形成されたエネルギー蓄積モジュールの一実施形態の模式図である。
図2】少なくとも1つのスーパーコンデンサを搭載した車両のエネルギー蓄積モジュールを作動させる方法の一実施形態を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図をもとにして本発明の他の特徴および利点を説明する。
【0014】
図1は、制御装置もしくは制御装置を備えて形成されたエネルギー蓄積モジュールの一実施形態の模式図である。
【0015】
図1に模式的に示された制御装置10は、少なくとも1つのスーパーコンデンサ12を搭載した車両のエネルギー蓄積モジュール14と協働するように形成されている。図1の実施形態において、単に例示的に、少なくとも1つのスーパーコンデンサ12を搭載したエネルギー蓄積モジュール14に制御装置10が(サブユニットとして)組み込まれている。しかし、制御装置10は同様に、少なくとも1つのスーパーコンデンサ12を有する、そのために別個に形成されたエネルギー蓄積モジュール14と協働するように(別部品(eigenes Bauteil)として)設計されていてもよい。
【0016】
図1において、エネルギー蓄積モジュール14のスーパーコンデンサ12が例示的に1つだけ示されている。しかし、エネルギー蓄積モジュール14は複数のスーパーコンデンサ12、特に多数のスーパーコンデンサ12を搭載していてもよいことに留意されたい。選択的に、スーパーコンデンサ12は、直列接続、並列接続、または直列および並列接続で配置されていてもよい。
【0017】
少なくとも1つのスーパーコンデンサ12(Supercapacitor)は蓄電コンデンサと解することができる。少なくとも1つのスーパーコンデンサ12は、SC、Supercap、またはウルトラコンデンサとも呼ぶことができる。少なくとも1つのスーパーコンデンサ12は、少なくとも1つの二重層コンデンサ(Electric Double Layer Capacitor、EDLS)、少なくとも1つの疑似コンデンサ(Pseudocapacitor)、および/または少なくとも1つのハイブリッドスーパーコンデンサ(Hybride Supercapacitor、HSC)であってもよい。これらのどの場合も、少なくとも1つのスーパーコンデンサ12は、その電力密度が(例えばリチウムイオン電池と比べて)高いことにより、これを搭載した車両におけるエネルギー蓄積モジュール14の使用を有利ならしめる。したがってエネルギー蓄積モジュール14は、特に電力集約的な用途に対して有利に使用することができる。さらに、ハイブリッドスーパーコンデンサ(例えばリチウムイオンコンデンサ)は、二重層コンデンサまたは疑似コンデンサと比べて高い電力密度を有しているのみならず高いエネルギー密度も有している。さらに、少なくとも1つのハイブリッドスーパーコンデンサを搭載したエネルギー蓄積モジュール14は、比較的極端な温度でも使用することができる。
【0018】
制御装置10もしくはエネルギー蓄積モジュール14を搭載した車両は、例えば乗用車、小型トラック、オートバイ、および/または(農業用)実用車両などの自動車と解することができる。制御装置10もしくはエネルギー蓄積モジュール14を使用できるのが、特定のタイプの車両/自動車に限定されないことを明示的に指摘しておく。
【0019】
制御装置10は、エネルギー蓄積モジュール14を車両の少なくとも1つの車両電気システム18に結合する、エネルギー蓄積モジュール固有(Energiespeichermodul-eigene)またはエネルギー蓄積モジュール外部(Energiespeichermodul-externe)の少なくとも1つの結合コンポーネント16を(少なくとも1つの制御信号10aによって)制御するように設計されており、その場合、少なくとも1つの車両電気システム18から少なくとも1つの制御される結合コンポーネント16を介して提供される電流20によってエネルギー蓄積モジュール14の少なくとも1つのスーパーコンデンサ12を充電可能である。さらに、制御装置10は、車両の(図示されない)駆動モータのオフ/停止時に多くとも1つの第1電圧または全電圧を放電するエネルギー蓄積モジュール14の少なくとも1つのスーパーコンデンサ12を、駆動モータの再始動時に、少なくとも1つの車両電気システム18から少なくとも1つの制御される結合コンポーネント16を介して提供される電流20によって少なくとも1つの第2電圧または全電圧に充電するように設計されている。(エネルギー蓄積モジュール14の少なくとも1つのスーパーコンデンサ12の第1電圧/全電圧は、エネルギー蓄積モジュール14の少なくとも1つのスーパーコンデンサ12の第2電圧/全電圧よりも小さい電圧値と解される。)特に、多くとも1つの第1電圧/全電圧に放電されるエネルギー蓄積モジュール14の少なくとも1つのスーパーコンデンサ12は完全に放電されていてもよい/されてもよい(0%充電状態、0%State of Charge)。これに加えて、またはこれに代えて、少なくとも1つの第2電圧/全電圧に充電されたエネルギー蓄積モジュール14の少なくとも1つのスーパーコンデンサ12は完全に充電されていてもよい/されてもよい(100%充電状態、100%State of Charge)。しかし、第1電圧/全電圧および/または第2電圧/全電圧は、エネルギー蓄積モジュール14の少なくとも1つのスーパーコンデンサ12の0%よりも大きい、および100%よりも小さい充電状態にそれぞれ相当してもよい。
【0020】
駆動モータのオフ/停止時にエネルギー蓄積モジュール14の少なくとも1つのスーパーコンデンサ12を多くとも1つの第1電圧または全電圧に放電することによって、エネルギー蓄積モジュール14の少なくとも1つのスーパーコンデンサ12が比較的長時間に比較的高い電圧レベルを維持したときに比較的高い確率で生じる劣化させる作用(degradierenden Effekten)/劣化作用(Degradationseffekten)が妨害される。それにより、(少なくとも1つのスーパーコンデンサ12に蓄積されたエネルギーが比較的長い時間必要とされないということを除けば)駆動モータのオフ/停止時にエネルギー蓄積モジュール14の少なくとも1つのスーパーコンデンサ12の(少なくとも一部の)放電によって、エネルギー蓄積モジュール14の少なくとも1つのスーパーコンデンサ12の寿命が延長される。所望されるならば、エネルギー蓄積モジュール14の少なくとも1つのスーパーコンデンサ12は、駆動モータのオフ時/後(直ちに)多くとも1つの第1電圧または全電圧に放電されてもよい。しかし、同様に駆動モータのオフ時/後の少なくとも1つのスーパーコンデンサ12の第1電圧レベルへの放電を、少なくとも1つの別の前提条件/量、例えば最低停止時間、現在時刻および/または車両の現在の周辺に依存させてもよい。
【0021】
制御装置10は、さらに、エネルギー蓄積モジュール14の少なくとも1つのスーパーコンデンサ12を少なくとも1つの第2電圧または全電圧に充電するための目標充電速度を、少なくとも1つの走行の仕方情報および/または周辺情報22~28を考慮して設定するように、かつ少なくとも1つの車両電気システム18により提供される電流20によって、エネルギー蓄積モジュール14の少なくとも1つのスーパーコンデンサ12を設定された目標充電速度に相当する実際充電速度で充電するように設計されている。したがって実際充電速度は、駆動モータの再始動時に車両の走行の仕方および/または車両の現在の周辺における少なくとも1つの周辺条件に適合させられる。それにより車両の走行の仕方および/または少なくとも1つの周辺条件ゆえに正当化されないエネルギー蓄積モジュール14の少なくとも1つのスーパーコンデンサ12の不必要に高速な充電が回避される。このことは、低い(実際)充電速度がエネルギー蓄積モジュール14の少なくとも1つのスーパーコンデンサ12の寿命を高めるので有利である。同時に、車両の走行の仕方および/または少なくとも1つの周辺条件にもとづいてエネルギー蓄積モジュール14の少なくとも1つのスーパーコンデンサ12の高速充電が望ましい状況では、エネルギー蓄積モジュール14の少なくとも1つのスーパーコンデンサ12を、通常、比較的高い実際充電速度で充電することが依然として保証されている。
【0022】
制御装置10は、少なくとも1つの走行の仕方情報22、24としての車両の現在および/または予想車速が所定限界値を下回るかぎり、ならびに/あるいは車両の位置が少なくとも1つの周辺情報26、28によって所定の低速交通領域、例えば(所定の低速交通領域の一部としての)駐車場または制限速度30キロ区域に特定されているかぎり、目標充電速度を多くとも1つの第1目標値に設定するように設計されていることが好ましい。例えば駐車場での車両の走行、および制限速度30キロ区域での車両の走行など、車両が比較的低速で走行しているときに、少なくとも1つの車両電気システム18が突然破損しても運転者は車両を容易に停止させることができる。このような状況では、ブレーキ力を増強しなくても、運転者は車載ブレーキシステムの機械的バックアップだけを利用して車両を簡単に停止させることができる。それゆえ、そのような状況では、運転者は、エネルギー蓄積モジュール14の少なくとも1つのスーパーコンデンサ12に蓄積されたエネルギーをほとんど必要としない。そのため、このような場合には、エネルギー蓄積モジュール14の少なくとも1つのスーパーコンデンサ12の高速充電を断念しても問題ない。これに加えて、このような状況では、少なくとも1つの車両電気システム18の破損または機能不全が重大な結果に至るまでに少なくとも30~60秒の時間がかかると確実に考えることができる。例えば駐車場での走行および制限速度30キロ区域での走行など、比較的低速の走行は、駐車場からの退出状況に典型的であるので、目標充電速度を低く設定できることがわりあい多い。
【0023】
しかし、少なくとも1つの走行の仕方情報22、24としての車両の現在および/または予想車速が所定限界値を上回る場合、ならびに/あるいは車両の位置が所定の高速交通領域の少なくとも1つの周辺情報26、28によって、例えば、(所定の高速交通領域の一部としての)高速道路上または近くもしくは高速道路に通じる道路に特定されている場合、制御装置10は、目標充電速度を第1目標値よりも大きい少なくとも1つの第2目標値に設定するように設定されていることが有利である。例えば、車両が高速道路上を走行、および車両が高速道路に通じる道路を走行するなど、車両が比較的高速で走行しているときに、少なくとも1つの車両電気システム18の突然の破損時に、エネルギー蓄積モジュール14の少なくとも1つのスーパーコンデンサ12に蓄積されたエネルギーによって、運転者が車両の減速において力に関して(kraftmaessig)支援されるならば有利である。これは、車両が比較的高速で走行するとき(例えば車両が高速道路上を走行、および車両が高速道路に通じる道路を走行するなど)に目標充電速度(および実際充電速)が増すことにより保証されている。目標充電速度を少なくとも1つの第2目標値に増すことによって、このような状況において、少なくとも1つの車両電気システム18の突然の破損または予期せぬ機能不全時に、車両の減速において運転者を力に関して支援するのに十分なエネルギーが少なくとも1つのスーパーコンデンサ12によってすでに確保されていることを保証することができる。それにより、少なくとも1つの車両電気システム18の突然の破損または予期せぬ機能不全が運転者に重大な結果をもたらさない。なぜなら、駆動モータの再始動後に車両が大きく加速するにも関わらず、少なくとも1つのスーパーコンデンサ12に確保されたエネルギーによって車両の(停止まで)減速において運転者を支援することができるからである。したがって、本明細書中に記載の制御装置10は、エネルギー蓄積モジュール14の保護に寄与するだけでなく、運転者に少なくとも1つの車両電気システム18の突然の破損時の良好なブレーキ快適性を確保する。
【0024】
現在の車速は、例えば、車速センサの速度信号22および/または車輪回転センサの車輪回転速度信号によって制御装置10に提供されていてもよい/されてもよい。制御装置10は、予想/予測車速を、特に車両の自律走行のために設定された車両軌跡24を考慮して推定するように設計されていてもよい。少なくとも1つの周辺センサにより提供される少なくとも1つの情報26も、車両の推定される走行の仕方および/または少なくとも1つの周辺条件に関して評価することができる。例えば、少なくとも1つの車載カメラにより検出された少なくとも1つの画像を情報26として(目標充電速度を設定するために)画像認識によって評価することができる。グローバルポジショニングシステムから出力される位置データ28も、目標充電速度を車両の現在の周辺の少なくとも1つの周辺条件に適合させるのによく適している。さらに、少なくとも1つの事故警告センサにより提供される少なくとも1つの警告信号、インテリジェント交通信号灯および/またはインテリジェント道路交通標識により受信される少なくとも1つの信号、ならびに/あるいは無線および/または少なくとも1つの車載センサにより提供される交通状況データが、少なくとも1つの走行の仕方情報および/または周辺情報22~28として制御装置10により評価されてもよい。したがって、制御装置10もしくは該制御装置を備えて形成されたエネルギー蓄積モジュール14は、従来どおりすでに車両に組み付けられている多数の異なるタイプのセンサと協働することができる。したがって車両のセンサ系を拡張しなくても制御装置10の有利な動作原理を実現可能である。
【0025】
図1の実施形態において、少なくとも1つの車両電気システム18の破損または機能不全時に少なくとも1つの電気モータ32が少なくとも過渡的にエネルギー蓄積モジュール14(すなわち少なくとも1つのスーパーコンデンサ12)によって電力供給可能であるように、エネルギー蓄積モジュール14が、少なくとも1つの電気モータ32を有する電動ブレーキ装置30に結合可能である/結合されている。電動ブレーキ装置30の少なくとも1つの電気モータ32に非常電流34を提供することによって、停止までの車両の減速において運転者を力に関して支援することができる。それにより、少なくとも1つの車両電気システム18の破損または機能不全に不意に見舞われた運転者が比較的わずかな労力で車両を停止させるという可能性をさらに有する。このことは運転者を落ち着かせ、このような状況での事故のリスクを低減することに寄与する。
【0026】
図1の実施形態において、電動ブレーキ装置30は、例示的に、液圧ブレーキシステムのマスタブレーキシリンダに前置されている電気機械式ブレーキ倍力装置30である。制御装置10/エネルギー蓄積モジュール14と電気機械式ブレーキ倍力装置30との協働は、電気機械式ブレーキ倍力装置30が、従来型真空ブレーキ倍力装置とは異なり、少なくとも1つの車両電気システム18の破損または機能不全時に車両を過渡的にさらに減速させることができる残り負圧(Rest-Unterdruck)を有していないので有利である。しかし従来型の真空ブレーキ倍力装置に対する電気機械式ブレーキ倍力装置30のこれまでの欠点が制御装置10/エネルギー蓄積モジュール14との協働によって解消され、それにより、提供される非常電流34によって機械的な復帰レベル(Rueckfallebene)への「穏やかな移行(sanfter Uebergang)」が保証されている。
【0027】
これに代わる一実施形態において、電動ブレーキ装置30は、液圧ブレーキシステム、少なくとも1つのポンプを有する液圧ポンプシステム、または電動ピストンシリンダ装置であってもよい。さらに、ここに挙げた電動ブレーキ装置30の例がこれで終わりであると解釈されてはならない。
【0028】
図2は、少なくとも1つのスーパーコンデンサを搭載した車両のエネルギー蓄積モジュールを作動させる方法の一実施形態を説明するフローチャートである。
【0029】
車両の駆動モータのオフ時に実行される方法ステップS1において、エネルギー蓄積モジュールの少なくとも1つのスーパーコンデンサが、多くとも1つの第1電圧または全電圧に放電される。例えば、方法ステップS1においてエネルギー蓄積モジュールの少なくとも1つのスーパーコンデンサは完全に放電される。方法ステップS1は、常に車両の駆動モータのオフ時に行われてもよいし、少なくとも1つの付加的条件に依存して行われてもよい。
【0030】
駆動モータの再始動時に実行される方法ステップS2において、多くとも1つの第1電圧または全電圧に放電したエネルギー蓄積モジュールの少なくとも1つのスーパーコンデンサが車両の少なくとも1つの車両電気システムにより提供される電流によって少なくとも1つの第2電圧または全電圧に充電される。エネルギー蓄積モジュールの少なくとも1つのスーパーコンデンサは、特に完全に充電されてもよい。
【0031】
しかし、方法ステップS2の前に、方法ステップS3において、エネルギー蓄積モジュールの少なくとも1つのスーパーコンデンサを少なくとも1つの第2電圧または全電圧に充電するための目標充電速度が少なくとも1つの走行の仕方情報および/または周辺情報を考慮して設定される。その場合、方法ステップS2において、エネルギー蓄積モジュールの少なくとも1つのスーパーコンデンサは、設定された目標充電速度に相当する実際充電速度で、少なくとも1つの車両電気システムにより提供された電流によって充電される。したがって、本明細書中に記載の方法の実行も上述の利点を提供する。
【0032】
少なくとも1つの走行の仕方情報としての車両の現在および/または予想車速が所定限界値を下回るかぎり、ならびに/あるいは車両の位置が少なくとも1つの周辺情報によって所定の低速交通領域(例えば駐車場または制限速度30キロ区域)に特定されるかぎり、目標充電速度が多くとも1つの第1目標値に設定されると有利である。これに対して、少なくとも1つの走行の仕方情報としての車両の現在および/または予想車速が所定限界値を上回るかぎり、ならびに/あるいは車両の位置が少なくとも1つの周辺情報によって所定の高速交通領域(例えば高速道路上または近くもしくは高速道路に通じる道路)に特定されるかぎり、目標充電速度が第1目標値よりも大きい少なくとも1つの第2目標値に設定されることが有利である。この解決手法の利点についてはすでに説明した。
【0033】
例えば、方法ステップS3において、少なくとも1つの事故警告センサにより提供される少なくとも1つの警告信号、少なくとも1つの周辺センサにより提供される少なくとも1つの情報、グローバルポジショニングシステムから出力される位置データ、インテリジェント交通信号灯および/またはインテリジェント道路交通標識により受信される少なくとも1つの信号、無線および/または少なくとも1つの車載センサにより提供される交通状況データ、ならびに/あるいは車両の自律走行のために設定された車両軌跡が少なくとも1つの走行の仕方情報および/または周辺情報として評価されてもよい。しかしここに記載された少なくとも1つの走行の仕方情報および/または周辺情報の可能性は単に例示であると解釈されなければならない。
【符号の説明】
【0034】
10 制御装置
10a 制御信号
12 スーパーコンデンサ
14 エネルギー蓄積モジュール
16 結合コンポーネント
18 車両電気システム
20 電流
22,24 走行の仕方情報
26,28 周辺情報
30 電動ブレーキ装置
32 電気モータ
34 非常電流
S1 方法ステップ
S2 方法ステップ
S3 方法ステップ
図1
図2