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特許7189678ギヤボックス及びこれを備えた減速機及びモータユニット、並びに、これを製造する金型及びギヤボックスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】ギヤボックス及びこれを備えた減速機及びモータユニット、並びに、これを製造する金型及びギヤボックスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/22 20060101AFI20221207BHJP
   F16H 1/16 20060101ALI20221207BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
H02K5/22
F16H1/16 Z
H02K7/116
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018093901
(22)【出願日】2018-05-15
(65)【公開番号】P2019201469
(43)【公開日】2019-11-21
【審査請求日】2021-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000113791
【氏名又は名称】マブチモーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】武田 真
【審査官】柏崎 翔
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-61947(JP,A)
【文献】特開2003-111349(JP,A)
【文献】特開2000-282747(JP,A)
【文献】特開2015-37367(JP,A)
【文献】特開2015-233388(JP,A)
【文献】特開2008-61424(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/22
F16H 1/16
H02K 7/116
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの回転を出力軸に伝達するヘリカルギヤとこれに噛み合うウォームとを内蔵するためのギヤボックスであって、
樹脂で形成された一体ものであるギヤボックス本体と、
インサート成形によって前記ギヤボックス本体と一体化されたターミナルと、を備え、
前記ギヤボックス本体は、前記出力軸と同軸配置される前記ヘリカルギヤが収容されるヘリカルギヤ収容部と、前記モータの取付面に凹設されるとともにその底面に前記ウォームが収容されるウォーム収容部の端部の開口が形成されて前記モータの被給電側が挿入されるモータ挿入部と、前記ヘリカルギヤの回転中心に対して前記モータ挿入部と同一側であって前記ウォーム収容部と隣接して配置されるとともに前記モータ挿入部と異なる方向に開口して凹設されたコネクタ接続部と、を一体で有し、
前記ターミナルは、前記コネクタ接続部の内部に露出するコネクタ端子と、前記モータ挿入部の内部に露出するモータ給電部と、前記ギヤボックス本体に埋設され前記コネクタ端子及び前記モータ給電部を連結する連結部と、前記連結部から離隔する方向に延設されて前記モータ挿入部の内部においてその先端部が露出する固定用タブと、を有する
ことを特徴とする、ギヤボックス。
【請求項2】
前記モータ給電部及び前記固定用タブは、前記回転中心の方向と前記モータの軸方向とのいずれにも直交する方向に互いにずれて設けられる
ことを特徴とする、請求項1記載のギヤボックス。
【請求項3】
前記モータ給電部及び前記固定用タブは、前記モータの軸方向に互いにずれて設けられる
ことを特徴とする、請求項1又は2記載のギヤボックス。
【請求項4】
前記ターミナルは、一枚の板金を曲げ成形して構成されている
ことを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のギヤボックス。
【請求項5】
前記コネクタ接続部は、前記モータ挿入部と逆向きに開口している
ことを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載のギヤボックス。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のギヤボックスと、
前記ギヤボックスに内蔵され、動力源の回転が伝達される前記ウォームと、
前記ウォームと噛み合い、前記ヘリカルギヤ収容部に収容される前記ヘリカルギヤと、を備えた
ことを特徴とする、減速機。
【請求項7】
請求項6に記載の減速機と、
前記減速機の前記ギヤボックスに取り付けられ、前記減速機の前記ウォームに連結される回転軸を有するモータと、を具備した
ことを特徴とする、モータユニット。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか1項に記載のギヤボックスを製造する金型であって、
前記回転中心に沿って互いに対向する二方向から組み合わされて、少なくとも前記ヘリカルギヤ収容部を形成する二つの固定型と、
前記固定型に組み合わされて前記モータ挿入部を形成する第一スライド型と、
前記固定型に組み合わされて前記コネクタ接続部を形成する第二スライド型と、を備え、
前記第一スライド型は、前記ターミナルの前記モータ給電部及び前記固定用タブを保持する保持部を有する
ことを特徴とする、金型。
【請求項9】
前記第一スライド型は、前記固定型に組み合わされた状態で、前記保持部によって保持された前記ターミナルを支持する第一ピンを有し、
前記第二スライド型は、前記固定型に組み合わされた状態で、前記保持部によって保持された前記ターミナルを前記第一ピンとは異なる方向から支持する第二ピンを有する
ことを特徴とする、請求項8記載の金型。
【請求項10】
請求項1~5のいずれか1項に記載のギヤボックスを、金型を用いて一体成形する製造方法であって、
前記モータ挿入部を形成する第一スライド型の保持部に、前記ターミナルの前記モータ給電部及び前記固定用タブをそれぞれ保持させ、
前記ヘリカルギヤ収容部を形成する二つの固定型を前記回転中心に沿って互いに対向する二方向から組み合わせるとともに前記第一スライド型及び前記コネクタ接続部を形成する第二スライド型をそれぞれ前記固定型に組み合わせることで前記金型内にキャビティを形成し、
前記キャビティに溶融樹脂を供給する
ことを特徴とする、ギヤボックスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インサート成形によって金属製のターミナルを樹脂製のギヤボックス本体と一体成形したギヤボックス、及びこれを備えた減速機とモータユニット、並びに、これを製造する金型及びギヤボックスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、動力源であるモータと減速機とを一体化したモータユニットが車載電装機器や家電装置等に用いられている。減速機は、例えば、モータシャフトと一体回転するウォームと、これに噛み合うヘリカルギヤ(ウォームホイール)とがギヤボックスに内蔵されて構成される。ギヤボックスには、ウォーム及びモータを挿入するための挿入部やコネクタを接続するための接続部が設けられる。また、ギヤボックスとしては、インサート成形によりターミナルが一体化されたものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6234713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1のように、ターミナルをインサート成形によってギヤボックス本体と一体化する場合、金型にターミナルを保持させた状態で金型内のキャビティに溶融樹脂を流し込むことになる。しかしながら、ギヤボックスの挿入部及び接続部が異なる方向に開口している場合や、挿入部及び接続部周辺の構造によっては、金型にターミナルを保持させる箇所(支え箇所)が少ない場合があり、ターミナルの保持が不安定となってギヤボックスの品質低下を招くおそれがある。
【0005】
本件のギヤボックス及び金型、並びにギヤボックスの製造方法は、このような課題に鑑み案出されたもので、ターミナルを安定して保持することで品質を向上させることを目的の一つとする。また、本件の減速機及びこの減速機を備えたモータユニットは、このギヤボックスを用いることで、品質を高めることを目的とする。なお、これらの目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)ここで開示するギヤボックスは、モータの回転を出力軸に伝達するヘリカルギヤとこれに噛み合うウォームとを内蔵するためのギヤボックスであって、樹脂で形成された一体ものであるギヤボックス本体と、インサート成形によって前記ギヤボックス本体と一体化されたターミナルと、を備え、前記ギヤボックス本体は、前記出力軸と同軸配置される前記ヘリカルギヤが収容されるヘリカルギヤ収容部と、前記モータの取付面に凹設されるとともにその底面に前記ウォームが収容されるウォーム収容部の端部の開口が形成されて前記モータの被給電側が挿入されるモータ挿入部と、前記ヘリカルギヤの回転中心に対して前記モータ挿入部と同一側であって前記ウォーム収容部と隣接して配置されるとともに前記モータ挿入部と異なる方向に開口して凹設されたコネクタ接続部と、を一体で有し、前記ターミナルは、前記コネクタ接続部の内部に露出するコネクタ端子と、前記モータ挿入部の内部に露出するモータ給電部と、前記ギヤボックス本体に埋設され前記コネクタ端子及び前記モータ給電部を連結する連結部と、前記連結部から離隔する方向に延設されて前記モータ挿入部の内部においてその先端部が露出する固定用タブと、を有する。
【0007】
(2)前記モータ給電部及び前記固定用タブは、前記回転中心の方向と前記モータの軸方向とのいずれにも直交する方向に互いにずれて設けられることが好ましい。
(3)前記モータ給電部及び前記固定用タブは、前記モータの軸方向に互いにずれて設けられることが好ましい。
(4)前記ターミナルは、一枚の板金を曲げ成形して構成されていることが好ましい。
(5)前記コネクタ接続部は、前記モータ挿入部と逆向きに開口していることが好ましい。
【0008】
(6)ここで開示する減速機は、上記の(1)~(5)のいずれか一つに記載のギヤボックスと、前記ギヤボックスに内蔵され、動力源の回転が伝達される前記ウォームと、前記ウォームと噛み合い、前記ヘリカルギヤ収容部に収容される前記ヘリカルギヤと、を備えている。
(7)ここで開示するモータユニットは、上記の(6)に記載の減速機と、前記減速機の前記ギヤボックスに取り付けられ、前記減速機の前記ウォームに連結される回転軸を有するモータと、を具備している。
【0009】
(8)ここで開示する金型は、上記の(1)~(5)のいずれか一つに記載のギヤボックスを製造する金型であって、前記回転中心に沿って互いに対向する二方向から組み合わされて、少なくとも前記ヘリカルギヤ収容部を形成する二つの固定型と、前記固定型に組み合わされて前記モータ挿入部を形成する第一スライド型と、前記固定型に組み合わされて前記コネクタ接続部を形成する第二スライド型と、を備え、前記第一スライド型は、前記ターミナルの前記モータ給電部及び前記固定用タブを保持する保持部を有する。
【0010】
(9)前記第一スライド型は、前記固定型に組み合わされた状態で、前記保持部によって保持された前記ターミナルを支持する第一ピンを有し、前記第二スライド型は、前記固定型に組み合わされた状態で、前記保持部によって保持された前記ターミナルを前記第一ピンとは異なる方向から支持する第二ピンを有することが好ましい。
【0011】
(10)ここで開示するギヤボックスの製造方法は、上記の(1)~(5)のいずれか一つに記載のギヤボックスを、金型を用いて一体成形する製造方法であって、前記モータ挿入部を形成する第一スライド型の保持部に、前記ターミナルの前記モータ給電部及び前記固定用タブをそれぞれ保持させ、前記ヘリカルギヤ収容部を形成する二つの固定型を前記回転中心に沿って互いに対向する二方向から組み合わせるとともに前記第一スライド型及び前記コネクタ接続部を形成する第二スライド型をそれぞれ前記固定型に組み合わせることで前記金型内にキャビティを形成し、前記キャビティに溶融樹脂を供給する。
【発明の効果】
【0012】
開示のギヤボックス及び金型並びにギヤボックスの製造方法によれば、インサート成形によってターミナルをギヤボックス本体と一体化する際に、ターミナルを二点で(すなわち、モータ給電部及び固定用タブで)支えることができる。このため、安定したターミナル保持を実現でき、金型による成形性が向上し、品質を高められる。
また、開示の減速機及びモータユニットによれば、開示のギヤボックスを用いていることから、その品質を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係るモータユニットの平面図である。
図2図1のモータユニットのうち減速機を分解して示す斜視図である。
図3図2の減速機のギヤボックスをモータの軸方向に沿って切断した横断面図に、X部を拡大して透過した透過図を併せて示す。
図4図3のX部をY方向から見た側面図である。
図5図3のギヤボックスに内蔵されるターミナルの斜視図である。
図6図3のギヤボックスを製造するための金型の構成を説明するための模式図である。
図7】ターミナルの保持状態を説明する図であり、(a)は図6の金型に含まれる第一スライド型にターミナルが保持された状態を示す斜視図であり、(b)は保持部分を示すターミナルの側面図である。
図8】実施形態に係るギヤボックスの製造方法の手順を説明するフローチャートである。
図9図3のギヤボックスを製造するための金型の変形例を説明するための図であり、図3のX部に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面を参照して、実施形態としてのギヤボックスと、このギヤボックスを備えた減速機及びモータユニットについて説明するとともに、ギヤボックスを製造するための金型及びギヤボックスの製造方法について説明する。以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0015】
[1.モータユニットの構成]
図1は、本実施形態のモータユニット1の平面図(減速機3の出力軸4の軸方向から見た図)である。モータユニット1は、例えば車両のパワーウィンドウ装置やバックドア及びスライドドア等のクロージャー装置の駆動源として使用される。モータユニット1は、ハウジング2Aに図示しないロータ及びステータが内蔵されたモータ2と、モータ2の回転速度を減速する減速機3とを有する。本実施形態のモータ2は、ブラシ付きの直流モータであり、ハウジング2Aが減速機3のギヤボックス10に取り付けられることで減速機3とユニット化される。
【0016】
図2は、モータユニット1のうち減速機3を分解して示す斜視図である。減速機3は、動力源の回転が伝達されるウォーム14(図1参照)及びこれと噛み合うヘリカルギヤ15と、出力を取り出すための出力プレート16及び出力軸4と、シール材であるシールパッキン17A及びOリング17Bと、C型止輪18とワッシャ19とを備える。これらの要素はギヤボックス10に内蔵され、カバー13(図2参照)で封止される。
【0017】
ウォーム14は、ギヤボックス10のウォーム収容部11aに内蔵され、モータ2の回転軸2B(図1参照)に連結される。なお、図2中の一点鎖線Sは、モータ2の回転軸2Bの中心及びウォーム14の回転中心を示す。ウォーム収容部11aは、モータ2及びウォーム14の回転中心Sに沿って延在し、後述するモータ挿入部11dと連通する。
【0018】
ヘリカルギヤ15は、例えば射出成形により形成された樹脂歯車であって、ギヤボックス10のヘリカルギヤ収容部11bに内蔵される。ヘリカルギヤ収容部11bは、略有底円筒状をなし、出力軸4と同軸配置されるヘリカルギヤ15の回転中心Cに沿って底面部から立設された環状のボス11cを有する。ウォーム収容部11a及びヘリカルギヤ収容部11bは、ウォーム14とヘリカルギヤ15とが噛み合う位置で連通する。すなわち、ヘリカルギヤ収容部11bの周面のうちウォーム収容部11a側の位置には連通孔11g(図3参照)が貫設される。なお、ギヤボックス10の構成については詳述する。
【0019】
ヘリカルギヤ15は、外周面に歯15dが形成されたはすば歯車(外歯車)である。ヘリカルギヤ15は、互いに同軸上に位置する円環状のハブ15a及びリム15bと、これらのハブ15a及びリム15bを径方向に繋ぐ中間部15cとを有する。リム15bの外周面には歯15dが形成される。中間部15cには、円形状の凹部15eが周方向に等間隔に六つ凹設されている。これら六つの凹部15eのうち120度ずつずれて位置する三つには、出力プレート16の係合部16bが係合される。
【0020】
係合部16bは、出力プレート16の平板部16aに貫設された開口部16dと連通する筒状をなし、平板部16aのヘリカルギヤ15側の面から軸方向と平行に延設された部位である。出力プレート16には、ヘリカルギヤ15の回転中心Cと同軸上に貫通する貫通孔16cが形成されており、この貫通孔16cには出力軸4の一端部4cが嵌合される。
【0021】
出力軸4は、ヘリカルギヤ15の回転中心Cと同軸上に延設される軸部材である。出力軸4は、その中間部4aがギヤボックス10のボス11cに挿通され、その他端部4bがギヤボックス10の底面部から外方へ突設される。出力軸4の中間部4aには、他端部4b側からOリング17B及びワッシャ19がギヤボックス10の底面部の外面に向かって挿通される。そして、出力軸4の他端部4bには、Oリング17B及びワッシャ19を底面部の外面との間に挟持した状態で出力ピニオン5が嵌合される。
【0022】
出力ピニオン5は、出力軸4から出力されたモータ2の回転(動力)を被駆動体に伝達する歯車である。出力ピニオン5と出力軸4の他端部4bとは、相対回転不能に嵌合される。
なお、ヘリカルギヤ収容部11bにヘリカルギヤ15及び出力プレート16が収容されると、C型止輪18によって出力軸4の一端部4cが固定される。そして、ヘリカルギヤ収容部11bの周縁部との間にシールパッキン17Aを挟持した状態でカバー13が取り付けられる。
【0023】
[2.ギヤボックスの構成]
次に、ギヤボックス10の構成について、図3図5を用いて詳述する。ギヤボックス10は、モータ2の回転を出力軸4に伝達するためのウォーム14及びヘリカルギヤ15を内蔵するためのハウジングである。ギヤボックス10は、図3に示すように、樹脂製のギヤボックス本体11と、インサート成形によってギヤボックス本体11と一体化された二つのターミナル12とを備える。
【0024】
ギヤボックス本体11は、樹脂で形成された一体ものであり、上記のウォーム収容部11a,ヘリカルギヤ収容部11b,ボス11cに加え、モータ挿入部11d及びコネクタ接続部11fを有する。モータ挿入部11dは、モータ2の取付面11eに凹設された部分であり、モータ2の被給電側が挿入される。モータ挿入部11dの底面11hには、ウォーム収容部11aの端部の開口が形成される。なお、モータ2の被給電側とは、モータ2のハウジング2Aに固定される図示しないエンドベル側(ハウジング2Aの外部に突設された図示しない電気端子が存在する側)である。被給電側がモータ挿入部11dに挿入されたモータ2は、例えば取付面11eに対してボルト締結されて固定される。
【0025】
コネクタ接続部11fは、ヘリカルギヤ15の回転中心Cに対してモータ挿入部11dと同一側に配置されるとともにモータ挿入部11dと異なる方向に開口して凹設された部分であり、コネクタ(図示略)が挿入されて取り付けられる。コネクタは、例えば電子制御ユニットからの信号線や電力源(バッテリ)からの電源線を束ねており、コネクタ接続部11fの内部に嵌合して係止される形状を持つ。なお、ここでいう「同一側」とは、回転中心Cからモータ挿入部11d及びコネクタ接続部11fを見たときに、これらの部位11d,11fが概ね同じ方向(少なくとも、回転中心Cを中心とした90度の範囲内)に位置することを意味する。
【0026】
本実施形態のギヤボックス10は、コネクタ接続部11fがモータ挿入部11dと逆向きに開口しており、コネクタ接続部11fへのコネクタ接続方向とウォーム収容部11aの延設方向とが平行となる。また、本実施形態のコネクタ接続部11fは、ウォーム収容部11aに隣接して設けられた取付部11jと僅かな隙間を介して配置される。図3中に拡大して示すように、コネクタ接続部11fの底壁部11fw(開口の逆側に位置する壁部)の一部は、モータ挿入部11dを形成する側壁部11dwの一部を構成する。なお、取付部11jは、ウォーム収容部11aに対しヘリカルギヤ収容部11bの反対側に設けられ、図示しない締結具が挿通される孔部を有する。また、本実施形態のギヤボックス10には、この取付部11jのほかに、ヘリカルギヤ収容部11bの周囲に二つの取付部11k,11mが設けられる。
【0027】
ターミナル12は、導電性の素材(例えば金属)で形成された通電部品であり、その一部がギヤボックス本体11に埋設される。本実施形態のターミナル12は、図5に示すように、一枚の板金を曲げ成形して構成される。また、二つのターミナル12は、モータ2の回転中心Sに沿うとともに出力軸4の軸方向と直交方向(但し回転中心S以外の方向)に延在する仮想的な平面に対して鏡面対称形状に形成される。ターミナル12には、コネクタ端子12aと、モータ給電部12bと、連結部12c,12dと、固定用タブ12eとが設けられる。
【0028】
コネクタ端子12aは、図3に示すように、コネクタ接続部11fの内部に露出する部分を含む矩形状の平板部である。コネクタ端子12aの露出部分にはコネクタに設けられた信号線や電源線が接続される。モータ給電部12bは、図3及び図4に示すように、モータ挿入部11dの内部に露出する部分を含む略矩形状の平板部である。モータ給電部12bの露出部分にはモータ2の電気端子が接続される。なお、コネクタ端子12aの法線方向とモータ給電部12bの法線方向とは互いに異なる。具体的には、前者がモータ2の回転中心S及びヘリカルギヤ15の回転中心Cのいずれにも直交する方向に伸びるのに対し、後者はヘリカルギヤ15の回転中心Cと平行に伸びる。
【0029】
連結部12c,12dは、コネクタ端子12aとモータ給電部12bとを連結する部分であり、その全体がギヤボックス本体11に埋設される。本実施形態のターミナル12には、図3及び図5に示すように、コネクタ端子12aに対して略直角に屈曲形成された第一連結部12cと、第一連結部12に対してコネクタ端子12a側へ略直角に屈曲形成された第二連結部12dとが設けられる。第一連結部12cはコネクタ端子12aの法線方向に延設された矩形状の平板部であり、第二連結部12dはコネクタ端子12aと平行な(対向する)矩形状の平板部である。すなわち、本実施形態のターミナル12は、コネクタ端子12a,第一連結部12c,第二連結部12dによって形成されたコの字部分を有する。
【0030】
モータ給電部12bは、第二連結部12dの先端部の側縁から、第二連結部12dの法線方向(すなわちコネクタ端子12aの法線方向)に向かってコネクタ端子12aから離隔するように屈曲されて延設される。図3中に拡大して示すように、モータ給電部12bの露出部分は、基端部と先端部とを除いた中間部に位置する。言い換えると、モータ給電部12bの基端部及び先端部はいずれもギヤボックス本体11に埋設される。また、図5に示すように、モータ給電部12bのモータ2側の縁は、端に向かって厚みが薄くなるテーパ形状となっている。このテーパ部分は、後述する第一スライド型23の第一保持部23aに挟持される。
【0031】
固定用タブ12eは、図3及び図4に示すように、モータ挿入部11dの内部に露出する部分を含むクランク形状の平板部である。固定用タブ12eの露出部分は、例えば端子間の電気ノイズ対策に利用してもよい。固定用タブ12eは、第一連結部12cの側縁から、モータ2の軸方向に向かってコネクタ端子12aから離隔するように屈曲されて延設される。本実施形態の固定用タブ12eは、第一連結部12cのうち第二連結部12d寄りの位置から延設される。
【0032】
また、図3中に拡大して示すように、固定用タブ12eの露出部分は先端部に位置する。言い換えると、固定用タブ12eは、その基端部から中間部にかけてギヤボックス本体11に埋設される。固定用タブ12eの先端部は、モータ2の回転中心側の一部が切り欠かれており、挿入されるモータ2の被給電側との干渉が回避される。また、図5に示すように、固定用タブ12eのモータ2側の縁は、端に向かって厚みが薄くなるテーパ形状となっている。このテーパ部分は、後述する第一スライド型23の第二保持部23bに挟持される。
【0033】
図4に示すように、本実施形態のギヤボックス10は、モータ挿入部11d内に露出するモータ給電部12b及び固定用タブ12eがヘリカルギヤ15の回転中心Cの方向に互いにずれて設けられる。さらに、本実施形態のモータ給電部12b及び固定用タブ12eは、モータ2の軸方向にも互いにずれて設けられる。なお、モータ給電部12b及び固定用タブ12eは、回転中心C,Sのいずれにも直交する方向にも互いにずれている。すなわち、モータ給電部12b及び固定用タブ12eは、モータ挿入部11d内において三次元でずれた位置に配置される。ターミナル12のうちギヤボックス本体11に埋設される部分は、後述する金型20内のキャビティに配置される部分であり、露出する部分はキャビティに配置されない部分である。
【0034】
[3.ギヤボックスの製造方法]
次に、図6図8を用いて、ギヤボックス10の製造方法について説明する。上述したギヤボックス10は、図6に示すように、金型20内に形成されるキャビティ25に溶融樹脂を流し込むことで製造される。金型20は、二つの固定型21,22と二つのスライド型23,24とを備え、これら四つの型が組み合わされる(結合される)ことで、ギヤボックス10の形状と一致するキャビティ25をその内部に形成する。なお、図6には、固定型21,22を二点鎖線で示し、スライド型23,24を破線で示す。
【0035】
二つの固定型21,22は、ヘリカルギヤ15の回転中心Cに沿って互いに対向する二方向から組み合わされて、少なくともヘリカルギヤ収容部11bを形成する。具体的には、一方の固定型21(以下「第一固定型21」という)には、ギヤボックス10のウォーム収容部11a及びヘリカルギヤ収容部11b等の外形状と一致する凹部(図示略)が形成される。他方の固定型22(以下「第二固定型22」という)には、ヘリカルギヤ収容部11b及び取付部11j,11k,11m等の内形状と一致する凸部(図示略)が形成される。
【0036】
二つのスライド型23,24はいずれも固定型21,22に組み合わされるものであり、前者がモータ挿入部11dを形成し、後者がコネクタ接続部11fを形成する。本実施形態では、二つのスライド型23,24がいずれも第二固定型22に組み合わされる金型20を例示する。一方のスライド型23(以下「第一スライド型23」という)には、モータ挿入部11d及びウォーム収容部11aの各内形状と一致する凸部23c,23d〔図7(a)参照〕が形成される。他方のスライド型24(以下「第二スライド型24」という)には、コネクタ接続部11fの内形状と一致する凸部が形成される。
【0037】
さらに第一スライド型23には、図7(a)に示すように、二つのターミナル12のモータ給電部12bをそれぞれ保持する第一保持部23aと、二つのターミナル12の固定用タブ12eをそれぞれ保持する第二保持部23bとが設けられる。すなわち、ターミナル12は、図7(b)中に網掛け模様で示す部分が第一保持部23a及び第二保持部23bによって保持(挟持)された状態で(第一スライド型23にセットされた状態で)、キャビティ25に配置される。
【0038】
つまり、本実施形態のギヤボックス10を、金型20を用いて一体成形する場合には、まず、第一スライド型23の各保持部23a,23bにターミナル12のモータ給電部12b及び固定用タブ12eをそれぞれ保持させる(図8のステップS10)。次いで、二つの固定型21,22を回転中心Cに沿って互いに対向する二方向から組み合わせるとともに二つのスライド型23,24をそれぞれ固定型21,22に組み合わせることで、金型20内にキャビティ25を形成する(ステップS20)。
【0039】
なお、本実施形態では、第二固定型22に二つのスライド型23,24を組み合わせてから第一固定型21と組み合わせるが、型21~24を組み合わせる順序はこれに限らず、例えば、第一固定型21に二つのスライド型23,24の一方を組み合わせ、第二固定型22に二つのスライド型23,24の他方を組み合わせてから、二つの固定型21,22を組み合わせてもよい。あるいは、二つの固定型21,22を組み合わせたのち、二つのスライド型23,24を組み合わせてもよい。
【0040】
金型20を組み合わせたら、図示しないゲートからキャビティ25へ溶融樹脂を供給して、ターミナル12をギヤボックス本体11にインサート成形する(ステップS30)。そして、金型20を取り外せば(ステップS40)、ギヤボックス本体11とターミナル12とが一体化されたギヤボックス10が完成する。
【0041】
[4.効果]
(1)したがって、上述したギヤボックス10及びこの製造方法並びに金型20によれば、インサート成形によってターミナル12をギヤボックス本体11と一体化する際に、ターミナル12を二点で(モータ給電部12b及び固定用タブ12eで)支えることができる。このため、安定したターミナル保持を実現でき、金型20による成形性が向上し、品質を高められる。
【0042】
また、ギヤボックス10の形状によっては、コネクタ接続部11fを形成する第二スライド型24にコネクタ端子12aを保持させることができない場合がある。例えば上述したギヤボックス10の場合、図3に示すように、コネクタ接続部11fが取付部11jと僅かな隙間を介して配置されているため、コネクタ接続部11fを形成する第二スライド型24にターミナル12の一部(コネクタ端子12a)を保持させることができない。このような形状であっても、上述したギヤボックス10及びその製造方法並びに金型20であれば、ターミナル12を二点で保持できるため、コネクタ接続部11fの周辺形状にかかわらずギヤボックス10を製造できる。さらに、コネクタ接続部11fの向きがモータ挿入部11dと異なるギヤボックス10を製造できるため、ギヤボックス10のバリエーションを増やすことができる。
【0043】
(2)上述したギヤボックス10によれば、モータ給電部12b及び固定用タブ12eがヘリカルギヤ15の回転中心Cの方向に互いにずれて設けられるため、ターミナル12をより安定して保持できる。
(3)さらに、モータ給電部12b及び固定用タブ12eは、モータ2の軸方向にも互いにずれて設けられるため、ターミナル12をより安定して保持できる。
【0044】
(4)上述したギヤボックス10によれば、ターミナル12が一枚の板金を曲げ成形することで形成されるため、簡単に製造することができる。
(5)また、上述したギヤボックス10によれば、コネクタ接続部11f及びモータ挿入部11dが互いに逆向きに開口していても、ターミナル12を安定して保持できるため、ターミナル12をインサート成形によってギヤボックス本体11と一体化でき、品質の高いギヤボックス10を製造できる。
【0045】
(6)上述した減速機3によれば、ヘリカルギヤ5等を内蔵するギヤボックス10が上述した構成を有していることから、減速機3の品質を高められるとともにバリエーションを増やすことができ、製品としての価値を高めることができる。
(7)さらに、この減速機3を備えたモータユニット1によれば、同様に、その品質を高められるとともにバリエーションを増やすことができ、製品としての価値を高めることができる。
【0046】
[5.その他]
上述したギヤボックス10の形状,減速機3及びモータユニット1の構成は全て一例であって、上述したものに限られない。
例えば、コネクタ接続部11fとモータ挿入部11dとが反対向きでなくてもよく、コネクタ接続部がカバー13側や出力ピニオン5側に向かって開口してもよいし、回転中心S,Cの両方に交差する方向に向かって開口してもよい。また、コネクタ接続部11fの位置も上記した位置に限られない。
【0047】
ギヤボックスには少なくとも、出力軸4と同軸配置されるギヤ(上記実施形態ではヘリカルギヤ15)を収容する収容部と、モータ2の被給電側が挿入されるモータ挿入部と、コネクタが挿入されて取り付けられるコネクタ接続部とが設けられていればよく、例えば取付部11j,11k,11mを省略してもよい。なお、金型の形状は、ギヤボックスの形状に合わせて設定すればよい。
【0048】
また、金型20に、ターミナル12を支持するピン状の部位を設けてもよい。例えば、モータ挿入部11dを形成する第一スライド型23に、保持部23a,23bによって保持されたターミナル12を支持する第一ピン23p(図9参照)を設ける。さらに、コネクタ接続部11fを形成する第二スライド型24に、保持部23a,23bによって保持されたターミナル12を支持する第二ピン24p(図9参照)を設ける。これら二つのピン23p,24pは、二つのスライド型23,24のそれぞれが固定型21,22に組み合わされた状態で、保持されたターミナル12の第一連結部12cに当接するよう設けられる。これにより、保持されたターミナル12が、二つのピン23p,24pによって互いに異なる方向から支持されることから、その保持状態がより安定し、金型20による成形性が向上して品質を高められる。なお、図9に示す例では、二つのピン23p,24pが逆方向からターミナル12の第一連結部12cを支持しているが、ピン23p,24pの支持方向はこれに限られず、また、ターミナル12の支持する部位も第一連結部12cに限られない。
【0049】
ターミナル12の形状も一例であって、上記のものに限られない。例えば、モータ給電部12bと固定用タブ12eとがヘリカルギヤ15の回転中心Cの方向及びモータ2の軸方向のいずれか一方において互いにずれていてもよい。あるいは、これらの方向において、モータ給電部12b及び固定用タブ12eが一致して設けられていてもよい。また、上記のターミナル12は、第一連結部12cから固定用タブ12eが延設されているが、第二連結部12dから固定用タブ12eを延設してもよい。
【0050】
また、コネクタ端子12aとモータ給電部12bとを繋ぐ連結部が二つの部位(第一連結部12c及び第二連結部12d)から構成されなくてもよく、例えば、一つの曲面状の連結部によってコネクタ端子12aとモータ給電部12bとが連結されていてもよい。固定用タブ12eの形状や位置も一例であり、上記のようなクランク形状でなくてもよい。また、保持部23a,23bによって保持される部位が、図7(b)の網掛け模様で示す部分でなくてもよい。少なくとも、ターミナル12をスライド型によって二点(モータ給電部及び固定用タブ)で保持する構成であれば、上記実施形態と同様、モータ挿入部11d内に露出する部分が形成され、上記と同様の効果が得られる。なお、ターミナルが一枚の板金から構成されていなくてもよく、例えば固定用タブのみを後から溶接等で取り付けてもよい。
【0051】
また、上記の減速機3では、出力軸4がギヤボックス10の底面側から突設されているが、上記の出力軸4に相当する固定軸がギヤボックスに固定されていてもよい。また、ヘリカルギヤ15や出力プレート16等の形状は一例であって、上記のものに限られない。
【符号の説明】
【0052】
1 モータユニット
2 モータ
2B 回転軸
3 減速機
4 出力軸
10 ギヤボックス
11 ギヤボックス本体
11b ヘリカルギヤ収容部(収容部)
11d モータ挿入部
11e 取付面
11f コネクタ接続部
12 ターミナル
12a コネクタ端子
12b モータ給電部
12c 第一連結部(連結部)
12d 第二連結部(連結部)
12e 固定用タブ
14 ウォーム
15 ヘリカルギヤ(ギヤ)
20 金型
21 第一固定型(固定型)
22 第二固定型(固定型)
23 第一スライド型
23a 第一保持部
23b 第二保持部
23p 第一ピン
24 第二スライド型
24p 第二ピン
C ヘリカルギヤの回転中心
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9