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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】内燃機関の吸気装置
(51)【国際特許分類】
   F02B 31/04 20060101AFI20221207BHJP
【FI】
F02B31/04 500A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018100436
(22)【出願日】2018-05-25
(65)【公開番号】P2019203474
(43)【公開日】2019-11-28
【審査請求日】2021-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】弁理士法人太田特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100100103
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 明男
(74)【代理人】
【識別番号】100173163
【弁理士】
【氏名又は名称】石塚 信洋
(74)【代理人】
【識別番号】100134522
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 朝子
(74)【代理人】
【識別番号】100135024
【弁理士】
【氏名又は名称】本山 敢
(72)【発明者】
【氏名】照沼 臨
【審査官】小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-266648(JP,A)
【文献】特開2007-231851(JP,A)
【文献】特開2009-264270(JP,A)
【文献】特開2013-050048(JP,A)
【文献】特開2017-002758(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 31/00
F02F 1/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の吸気装置であって、
吸気管の内部を第1通路と第2通路に区画する隔壁と、
前記第1通路を開閉可能な制御弁と、
前記吸気管の内面と前記隔壁との境界にあり、前記第1通路と前記第2通路を接続し、前記吸気管の軸方向に沿った所定の長さを有する隙間と、
前記第2通路の内面を構成する前記隔壁の面もしくは前記吸気管の内面において、前記隙間の近傍に前記隙間の前記所定の長さの方向に配列して設けられた複数の凸部と、を有する
内燃機関の吸気装置。
【請求項2】
前記凸部の少なくとも一部は、前記吸気管における気体の流れ方向で前記隙間の上流側にある
請求項1に記載の内燃機関の吸気装置。
【請求項3】
前記凸部と前記隙間との距離は、前記凸部により生じる気体の乱流渦が前記隙間の少なくとも一部に重なる距離である
請求項1または2に記載の内燃機関の吸気装置。
【請求項4】
前記複数の凸部は、それぞれ隔壁の面の法線方向に延びる板状の突起であり、隣接する前記突起同士が鋭角をなして互いに接続され、交互に折れ曲がった形で連続する
請求項1に記載の内燃機関の吸気装置。
【請求項5】
前記凸部は、前記吸気管の内面に対向する前記隔壁の側端であって、前記第1通路または前記第2通路に向かって折れ曲がった部分である
請求項1~3のいずれか1項に記載の内燃機関の吸気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の吸気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吸気管の内部が隔壁により第1通路と第2通路に区画された内燃機関の吸気装置が知られている。例えば、特許文献1に記載の吸気装置は、第1通路としてのメインポートと第2通路としてのスワールポートとを区画する隔壁を有しており、これによりシリンダ内にスワールを発生させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-235546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、吸気管の内面と隔壁との境界または隔壁に、第1通路と第2通路を接続する隙間が存在する場合がある。この隙間を介して一方の通路から他方の通路へガスが流通することで、吸気の制御性が低下するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、吸気の制御性を向上することが可能な、新規かつ改良された内燃機関の吸気装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、吸気管の内部を第1通路と第2通路に区画する隔壁と、上記第1通路を開閉可能な制御弁と、上記吸気管の内面と上記隔壁との境界にあり、上記第1通路と上記第2通路を接続し、上記吸気管の軸方向に沿った所定の長さを有する隙間と、上記第2通路の内面を構成する上記隔壁の面もしくは上記吸気管の内面において、上記隙間の近傍に上記隙間の上記所定の長さの方向に配列して設けられた複数の凸部と、を有する内燃機関の吸気装置が提供される。
【0007】
上記凸部の少なくとも一部は、上記吸気管における気体の流れ方向において上記隙間の上流側にあってもよい。
【0008】
上記凸部と上記隙間との距離は、上記凸部により生じる気体の乱流渦が上記隙間の少なくとも一部に重なる距離であってもよい。
【0010】
上記複数の凸部は、交互に折れ曲がった形で連続してもよい。
【0011】
上記凸部は、上記吸気管の内面に対向する上記隔壁の側端であって、上記第1通路または上記第2通路に向かって折れ曲がった部分であってもよい。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように本発明によれば、隙間の近傍に凸部があることで、上記隙間の少なくとも一部に乱流渦が介在する。よって、上記隙間を介した通路間のガス流通が抑制されるため、吸気の制御性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1の実施形態に係るエンジンの概略構成を示す断面図である。
図2】同実施形態に係るエンジンをシリンダブロックの側からみた図である。
図3】同実施形態に係る隔壁の部分拡大図である。
図4】同実施形態に係るエンジンの吸気行程を示す断面図である。
図5】同実施形態に係る隙間の近傍における気体の流れを示す隔壁の部分断面図である。
図6】同実施形態に係る隙間の近傍における気体の流れを示す隔壁の部分拡大図である。
図7】本発明の第2の実施形態に係る隔壁の部分拡大図である。
図8】本発明の第3の実施形態に係る隔壁の部分拡大図である。
図9】同実施形態に係る隙間の近傍における気体の流れを示す隔壁の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0016】
<第1の実施形態>
まず、図1~3を参照して、第1の実施形態に係る内燃機関(以下、エンジン)の吸気装置の構成について説明する。
[内燃機関の構成]
図1は、本実施形態のエンジン1における1つの気筒の断面を示す。エンジン1は、いわゆる4ストロークのガソリンエンジンであり、自動車に搭載され、自動車の動力源として機能する。図1に示すように、エンジン1は、シリンダブロック101、シリンダヘッド103、バルブユニット105、吸気バルブ107、排気バルブ109、吸気カムシャフト111、排気カムシャフト113、点火プラグ115、ピストン117、コンロッド119、およびクランクシャフト121を有している。
【0017】
シリンダブロック101には、略円筒状のシリンダボア102が形成されている。シリンダブロック101には、シリンダヘッド103が設置されている。シリンダブロック101と一体にクランクケース104が設けられている。クランクケース104の内部には、クランク室が形成されている。クランク室には、クランクシャフト121が回転自在に収容されている。
【0018】
シリンダボア102には、ピストン117が摺動自在に収容されている。シリンダヘッド103、シリンダボア102、およびピストン117により区画された空間が燃焼室106として機能する。シリンダヘッド103の側における燃焼室106の形状は、いわゆるペントルーフ型である。コンロッド119の小端部は、ピンを介してピストン117に支持されている。コンロッド119の大端部は、クランクシャフト121に回転自在に支持されている。ピストン117は、コンロッド119を介してクランクシャフト121に連結されている。
【0019】
シリンダヘッド103には、吸気ポート21及び排気ポート51が形成されている。両ポート21,51は管状であり、それぞれ2つに分岐して燃焼室106に接続する(図2参照)。シリンダヘッド103には、2つの吸気バルブ107と2つの排気バルブ109が設置されている。吸気カムシャフト111は、2つの吸気バルブ107が並ぶ方向に、クランクシャフト121と略平行に延びている。排気カムシャフト113は、2つの排気バルブ109が並ぶ方向に、クランクシャフト121と略平行に延びている。
【0020】
各吸気バルブ107の一端は、燃焼室106の内部であって吸気ポート21が燃焼室106へ開口する部位またはその近傍に位置する。各吸気バルブ107の他端には、吸気カム112が当接している。吸気カム112は吸気カムシャフト111により回転駆動される。吸気カム112が回転することで、吸気バルブ107が往復移動する。これにより、吸気バルブ107は、吸気ポート21と燃焼室106との間を開閉する。同様に、排気カム114が排気カムシャフト113により回転駆動されることで、排気バルブ109が往復移動する。これにより、排気バルブ109は、排気ポート51と燃焼室106との間を開閉する。
【0021】
シリンダヘッド103には、点火プラグ115が設置されている。点火プラグ115の先端は、シリンダボア102の軸心に略重なる位置であって吸気ポート21と排気ポート51に囲まれた位置で、燃焼室106の内部に突出する。
【0022】
エンジン1の吸気行程では、吸気バルブ107が開くとともに燃焼室106の体積が増加することで、空気と燃料との混合気が、吸気ポート21を介して燃焼室106に流入する。吸気ポート21は、吸気管20として機能する。吸気行程後の圧縮工程で、燃焼室106の混合気が圧縮される。点火プラグ115が所定のタイミングで火花を発生すると、混合気が点火されて燃焼する。これにより燃焼室106の体積が増加する(燃焼行程)。その後、排気バルブ109が開くとともに燃焼室106の体積が減少することで、燃焼後の混合気が、排気ポート51を介して燃焼室106から流出する(排気行程)。排気ポート51は、排気管50として機能する。このように、燃焼によりピストン117が往復運動を行う。往復運動は、コンロッド119を介してクランクシャフト121の回転運動に変換される。
【0023】
[吸気装置の構成]
図1に示すように、吸気ポート21における燃焼室106と反対側の開口部には、バルブユニット105が設置されている。バルブユニット105は、通路部材108とTGV(Tumble Generation Valve)23を有している。通路部材108の内部には、通路22が形成されている。通路22は、吸気ポート21と接続しており、吸気管20として機能する。TGV23は、通路22に設置されている。TGV23は、例えば、いわゆるバタフライバルブであり、板状の部材(弁体)が軸231の周りに回転することで通路22の開度を調整する。軸231は、電動モータにより回転駆動される。
【0024】
バルブユニット105には、インテークマニホールドが取り付けられている。インテークマニホールドの内部の通路は、通路部材108の通路22と接続しており、吸気管20として機能する。インテークマニホールドにはスロットルボディが設置されており、インテークマニホールドの通路の開度はスロットル弁により調整される。
【0025】
吸気管20には、隔壁24が設置されている。吸気管20および隔壁24は、エンジン1の吸気装置2として機能する。図2は、吸気管20、燃焼室106、および排気管50を、シリンダブロック101の側からみた模式図である。以下で、上流、中流、および下流とは、吸気管20における気体の流れ方向における上流、中流、および下流をそれぞれ意味する。
【0026】
隔壁24は、本体部240と連結部241を有している。本体部240は、例えば金属材料から形成されており、板状である。本体部240は、上流部242、中流部244、および下流部246を有している。上流部242は、平板状であり、中流部244に対して折れ曲がっている。上流部242は、バルブユニット105の通路22の内部にあって、通路22の軸方向(長手方向)すなわち気体の流れ方向に延びている。中流部244および下流部246は、平板状であり、吸気ポート21の内部にあって吸気ポート21の軸方向(長手方向)すなわち気体の流れ方向に延びている。
【0027】
吸気管20(具体的にはTGV23および隔壁24が設けられる箇所)を径方向に切った断面は略矩形状である。本体部240は、吸気管20におけるシリンダブロック101の側の面に対し略平行に延びている。本体部240は、吸気管20を第1通路26と第2通路28に区画している。吸気管20の内部において吸気カムシャフト111の側に第1通路26があり、シリンダブロック101の側に第2通路28がある。図2で、隔壁24は第2通路28の側から見られている。本体部240は、吸気管20の径方向において吸気管20の軸心よりもシリンダブロック101の側に偏った位置にある。第1通路26の流路断面積(径方向における断面積)は、第2通路28の流路断面積よりも大きい。TGV23は、隔壁24(本体部240)よりも上流側の吸気管20にあり、第1通路26を開閉することが可能である。TGV23は、吸気装置2として機能する。
【0028】
隔壁24の連結部241は、例えば樹脂材料から形成されており、半円柱状(棒状・スティック状)である。連結部241は、本体部240における中流部244の両側に一体的に接続している。図2に示すように、吸気ポート21の内壁には、半円筒状の凹部210が形成されている。凹部210は、吸気ポート21の軸方向に延びている。凹部210の軸方向における吸気上流側の一端は、吸気ポート21とともにシリンダヘッド103の外壁面に開口している。隔壁24の組み付け時、連結部241は、吸気ポート21の開口部から軸方向に凹部210の内部に挿入され、凹部210に嵌まる。これにより、隔壁24が吸気ポート21の内壁に固定設置される。連結部241における本体部240の側の面(半円筒状の外周面に対し径方向反対側の面)は、吸気ポート21の内面に連続しており、当該内面の一部として機能する。
【0029】
下流部246の幅(吸気管20の軸方向に対し直角の方向における寸法)は、中流部244の幅よりも小さい。下流部246の幅は、吸気管20の軸方向において上流部242から燃焼室106の側へ向かうにつれて、徐々に小さくなる。下流部246の幅方向(吸気管20の軸方向に対し直角の方向)の両側と吸気ポート21の内壁との間には隙間25がある。隙間25は、吸気ポート21の内面と隔壁24(本体部240)との境界にあり、第1通路26と第2通路28を接続する。隙間25の幅(吸気管20の軸方向に対し直角の方向における寸法)は、吸気管20の軸方向において上流部242の側(上流側)から燃焼室106の側(下流側)へ向かうにつれて、徐々に大きくなる。隙間25の平均幅は、例えば1~2mmである。
【0030】
図3は、図2における隔壁24(本体部240)の一部分を拡大した模式図であり、隙間25の近傍を示す。第2通路28の内面を構成する下流部246の面において、隙間25の近傍に、凸部27が形成されている。凸部27は、複数の突起271からなる。各突起271は、第2通路28の内部に向かって延びており、下流部246の面に対して所定の高さ(例えば1mm)まで突出している。突起271同士は互いに連続していない。複数の突起271は、隙間25の近傍において、下流部246の幅方向端に沿って一列に並んでいる。
【0031】
各突起271の形状は、四角柱状である。図3に示すように、下流部246の面に直交する方向(上記面の法線方向)から見た各突起271の形状は、略台形であり、その幅(吸気管20の軸方向に対し直角の方向における寸法)は、吸気管20の軸方向において上流部242の側から燃焼室106の側へ向かうにつれて、徐々に大きくなる。上記台形の各辺のうち上底と脚をなす3面は、上記軸方向(流れ方向)で上流に面しており、上記軸方向(流れ方向)に対してゼロより大きい角度を有している。なお、下流部246の面の法線方向における突起271の上面が、上流に面し(上記角度を有し)ていてもよい。
【0032】
[吸気装置の作用効果]
次に、図4~6を参照して、本実施形態に係る吸気装置2の作用効果を説明する。図4は、図1における一部分を拡大した図であり、連結部241および凸部27の図示を省略している。図4で、吸気行程における吸気(主流)の流れを破線の矢印30で示す。図4に示すように、吸気行程で、気体は吸気管20を通って燃焼室106に吸入される。燃焼室106に流入した吸気は、シリンダボア102に沿ってピストン117の頂面に向かった後、この頂面に沿ってシリンダヘッド103の側へ流れる。これにより、吸気が燃焼室106の内部で縦渦流(タンブル流)を形成する。例えば、エンジン1の負荷が小さく吸気量が少量のとき、TGV23により第1通路26の流路断面積を絞ることで、気体を第2通路28の側に通過させる。TGV23の開度が最小となり、TGV23の弁体によって第1通路26が閉じられると、吸気管20に導かれた気体のほとんどは、第2通路28を通って燃焼室106へ向かう。
【0033】
このように、気体が通過する流路が狭まり、吸気管20の流路断面積が小さくなることで、気体の流速が高められる。この流速が高まった気体(混合気)が燃焼室106に流入することで、タンブル流が強められる。圧縮行程でピストン117が上死点付近までストロークすると、タンブル流が崩壊して小さな乱流渦が複数生成し、点火直前の燃焼室106の内部における吸気の流速変動(ガス流の乱れ強さ)が大きくなる。この状態で点火プラグ115により混合気に点火されることで、燃料の急速燃焼が実現され、燃費改善や燃焼安定性の向上が可能になる。このように、TGV23は、第1通路26を開閉することで、タンブル流を強化するための制御弁として機能する。なお、ピストン117の頂面は、ガス流動の強化や成層燃焼等に適した形状であってもよい。
【0034】
隔壁24(下流部246)と吸気ポート21の内壁との間には隙間25がある。よって、図4において矢印300で示すように、第2通路28から隙間25を通って第1通路26へ気体(主流の一部)が漏れ出すおそれがある。このように第2通路28から気体が漏れ出すと、燃焼室106に流入する吸気の流速が低下するため、燃焼室106におけるタンブル流が十分に強められず、所期のガス流動(意図した筒内流動)が得られないおそれがある。
【0035】
これに対し、本実施形態では、第2通路28の内面を構成する隔壁24の面において、隙間25の近傍に、凸部27(複数の突起271)がある。図5は、隙間25の近傍における隔壁24(本体部240)の一部分を吸気管20の軸方向で切った断面図であり、気体の主流30と乱流渦31を模式的に示す。図6は、図3と同様の図であり、気体の主流30と乱流渦31を模式的に示す。
【0036】
図5に示すように、突起271の下流側に乱流渦31が発生する。乱流渦31を含む乱流は隙間25に向かって延びるように発生する。また、各突起271の下流側に乱流渦31が発生することで、図6において破線で囲んで示すように、隙間25を覆うような乱流場310が形成される。このように隙間25に乱流渦31が介在することで、第2通路28から隙間25を介して第1通路26へ気体が漏れ出すことが抑制される。図4において矢印300で示す気体の漏れ出しが、乱流渦31により遮られるため、第1通路26と第2通路28の間のガス流通が抑制される。よって、燃焼室106に流入する吸気の流速低下が抑制されるため、燃焼室106におけるタンブル流の強化機能(ガス流動の制御性)の低下を抑制できる。すなわち、吸気の制御性を向上することができる。
【0037】
なお、乱流の層が厚くなると、第2通路28の有効流路断面積が小さくなる(有効流路径を狭める)ため、その分、第2通路28を流れる気体の流速が高くなる。よって、燃焼室106に流入する吸気の流速低下がより効果的に抑制される。また、第2通路28を流れる気体の流速が高いとき、突起271の下流に発生し隙間25に介在する乱流渦31は大きくなる。よって、第1通路26と第2通路28の間で隙間25を介して気体が流通するおそれが高い高流速時に、上記流通の抑制効果を自動的に高くできる。
【0038】
突起271と隙間25との間の(軸方向または幅方向)距離は、第2通路28を流れる気体の流速が所定速であるとき、突起271により生じる乱流渦31が隙間25の少なくとも一部に重なるような距離に設定することができる。乱流渦31が隙間25の少なくとも一部に重なれば、この重なり部分における第1通路26と第2通路28の間の流通が抑制され、上記作用効果が得られる。なお、隙間25は、吸気管20の内面と隔壁24との境界に限らず、隔壁24にあってもよい。
【0039】
ここで、隙間25を介したガス流通を抑制するため、隙間25の近傍に凸部27(複数の突起271)を設ける代わりに、隙間25を隔壁24(本体部240)等で埋めることも考えられる。しかし、隔壁24が吸気管20とは別の部材として形成され、吸気管20の内部に組付けられるような場合、組み付けバラツキによって隙間25が生じうる。言い換えると、吸気管20の内面と隔壁24との間に所定の隙間25が生じるようにあらかじめ寸法(公差)を設定すれば、組み付け性が向上し、コストを削減することができる。また、組み付けバラツキによって隔壁24と吸気管20の内面が干渉する事態を抑制できる。
【0040】
あるいは、隔壁24が、本実施形態のように本体部240と連結部241とを有する場合、この連結部241と本体部240との組み付けバラツキによっても(連結部241と本体部240との間に)隙間25が生じうる。よって、組み付け性の向上等の観点からは、吸気管20の内面と隔壁24との境界または隔壁24に、第1通路26と第2通路28を接続する隙間25が存在するほうが便宜である。また、その他の理由で隙間25が設けられる場合も考えられる。このように隙間25が存在する場合に、当該隙間25の近傍に凸部27(複数の突起271)を設けることで、隙間25を介したガス流通を抑制することが可能である。
【0041】
なお、隙間25は、隔壁24の下流側に限らず、中流側や上流側にあってもよい。隙間25の形状は、本実施形態のような楔形(三角形)に限らず、矩形(長方形)等であってもよい。また、隙間25を構成する部材の縁は、直線状に限らず曲線状であってもよい。隙間25は、隔壁24の幅方向(吸気管20の軸方向に対し直角の方向)で隔壁24の片側にあってもよい。
【0042】
また、吸気管20の径方向断面の形状は、矩形状に限らず、円形状や楕円状等であってもよい。隔壁24(本体部240)の形状は平板状でなくてもよい。例えば、吸気管20の内壁が湾曲している場合、隔壁24(本体部240)は、吸気管20の上流側から下流側へ向かうにつれて、吸気管20の内壁に沿って湾曲した形状でもよい。隔壁24(本体部240)の幅は一定でなくてもよい。例えば、吸気管20の内径が変化している場合、吸気管20の上流側から下流側へ向かうにつれて、吸気管20の内径の変化に沿うように隔壁24(本体部240)の幅が変化してもよい。
【0043】
本体部240の材質は、金属に限らず、樹脂等であってもよい。吸気管20の内壁への隔壁24の取り付け方法は任意であり、ボルト、リベットや溶接等により隔壁24を吸気管20に固定可能である。また、シリンダヘッド103を鋳造する際に別体の金属板を鋳込むことで隔壁24を吸気管20(吸気ポート21)に形成してもよい。隔壁24は吸気管20にあればよく、吸気ポート21に限らず、インテークマニホールド等に設置されていてもよい。
【0044】
凸部27(複数の突起271)は、隙間25の近傍にあればよく、隔壁24の面でなく、(第2通路28の内面を構成する)吸気ポート21その他の吸気管20の内面にあってもよい。本実施形態では、凸部27(複数の突起271)が隔壁24の側にあるため、隙間25の近傍に凸部27(複数の突起271)を設けることが比較的容易である。本実施形態で、隔壁24は、本体部240と連結部241を含んでいる。隙間25が本体部240と連結部241との間に(本体部240に対向して)ある場合には、連結部241において、上記隙間25の近傍に、凸部27があってもよい。なお、連結部241を省略してもよい。
【0045】
凸部27(複数の突起271)は、吸気管20の軸方向において隙間25の上流側にある。言い換えると、各突起271は、第2通路28における流れ方向で隙間25と重なる。よって、この流れ方向において凸部27(複数の突起271)の下流に発生する乱流渦31を含む乱流が隙間25に向かって延びるため、乱流渦31(乱流場310)が隙間25に重なることが容易になる。
【0046】
凸部27は複数の突起271からなる。複数の突起271は互いに連続しておらず、凸部27は断続している。よって、複数の突起271の配置や間隔、大きさや形状を適宜変えることで、凸部27により発生する乱流場310の大きさ(厚さ)や範囲を調整することが容易である。本実施形態では、複数の突起271は、互いに同じ形状・大きさであり、本体部240の幅方向端(隙間25)に沿って1列に並んでいるが、これに限らない。
【0047】
例えば、第2通路28における流れ方向の下流側よりも上流側で、複数の突起271を密に配置したり、幅方向において複数列配置したり、個々の突起271を幅広にしたり高くしたりしてもよい。隙間25の幅が小さい箇所よりも大きい箇所の近傍で、複数の突起271を密に配置したり、幅方向において複数列配置したり、個々の突起271を幅広にしたり高くしたりしてもよい。これにより、乱流渦31(乱流場310)を効果的に隙間25に重ならせることができる。
【0048】
一方、乱流場310が厚くなりすぎると、第2通路28を流れる気体の量(吸気量)が少なくなってエンジン1の出力が低下するおそれもある。このため、乱流場310の厚さが所定以下となるように、複数の突起271の配置や大きさ・形状を設定してもよい。
【0049】
各突起271の形状は任意である。板状であってもよいし、錐体状や錐台状であってもよいし、円柱状や角柱状であってもよい。各突起271の表面は平面状であってもよいし曲面状であってもよい。突起271の上流側の端部が鈍頭であってもよい。突起271の下流側に発生する乱流の延在方向が、第2通路28における主流30の流れ方向に対しゼロより大きい角度を有して隙間25に向かう方向となるように、突起271の形状を調整してもよい。例えば、突起271が上記角度を有して隙間25に向かって延びる板状であってもよい。
【0050】
凸部27(複数の突起271)の形成方法は任意である。各突起271は、パンチ等のプレス加工により本体部240に形成した爪であってもよい。突起271を本体部240等とは別に作成し、これを隙間25の近傍の面に設置してもよい。また、突起271を有するシートを作成し、これを隙間25の近傍の面に接着してもよい。
【0051】
<第2の実施形態>
次に、図7を参照して、第2の実施形態に係る内燃機関の吸気装置について説明する。本実施形態は、第1の実施形態における凸部27の変形例である。図7は、第2の実施形態における隔壁24(本体部240)の一部分の、図3と同様の模式図である。凸部27は、複数の突起271からなる。各突起271は、板状であり、下流部246の面の法線方向に延びる。隣接する突起271同士は、鋭角をなして互いに接続している。複数の突起271は、交互に折れ曲がった形で連続している。凸部27(連続する複数の突起271)は、下流部246の幅方向端(隙間25)に沿って延びている。
【0052】
このように、複数の突起271がジグザグにつながれているため、吸気管20の軸方向(第2通路28における流れ方向)で上流に面する凸部27の実質的な面積を増大させ、より大きな乱流渦31を容易に発生させることができる。他の構成および作用効果は第1の実施形態と同じであるため、説明を省略する。
【0053】
<第3の実施形態>
次に、図8,9を参照して、第3の実施形態に係る内燃機関の吸気装置について説明する。本実施形態は、第1の実施形態における凸部27の変形例である。図8は、第3の実施形態における隔壁24(本体部240)の一部分の、図3と同様の模式図である。図9は、本実施形態における隔壁24(本体部240)の一部分を、吸気管20の径方向で切った端面図である。凸部27は、下流部246の幅方向端(隙間25)に沿って延びている。凸部27は、吸気管20の内面に対向する下流部246の幅方向端(側端)であり、当該端が第2通路28の内部に向かって折れ曲がった部分である。図8に示すように、凸部27は、吸気管20の軸方向(第2通路28における流れ方向)で上流に面しており、上記軸方向(流れ方向)に対してゼロより大きい角度θ1を有している。図9に示すように、第2通路28の内面において、凸部27が下流部246に対してなす角度θ2は鈍角である。
【0054】
このように、隙間25の近傍に凸部27があることで、図9に示すように、隙間25に向かう流れが剥離する。凸部27を超える流れが乱流渦31を生成し、隙間25に向かって延びる乱流が発生する。隙間25に重なる乱流場310が形成される。下流部246の幅方向端に角度θ2をつけるだけでよいため、プレス加工等により、凸部27を容易に形成できる。他の構成および作用効果は第1の実施形態と同じであるため、説明を省略する。
【0055】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0056】
例えば、上記実施形態では、吸気管の内部にある制御弁は、タンブル流を強化するためのTGVであるとしたが、横渦流(スワール流)を強化するためのスワール制御弁その他の弁であってもよい。スロットル弁がTGVやスワール制御弁の機能を兼ね備えてもよい。吸気管に設置される制御弁の弁体が隔壁の機能を兼ね備えてもよい。すなわち、制御弁の弁体が吸気管を絞るとともに当該弁体が吸気管の内部を第1、第2通路に区画した状態で、弁体と吸気管の間の隙間の近傍に凸部があってもよい。
【0057】
また、制御弁やスロットル弁がない吸気装置に本発明を適用してもよい。例えば、隔壁は、成層燃焼を実現するため、混合気が流通する通路と、空気が流通する通路とを区画する機能を有してもよい。この場合、一方の通路から隙間を介して他方の通路へガスが漏れ出すと、所期の成層燃焼が得られないおそれがある。両通路のいずれかの内面において、隙間の近傍に凸部があることで、通路間のガス流通を抑制することができる。要は、何らかのガスの流れがある通路(第1通路または第2通路)の内面において、隙間の近傍に凸部を設ければ、通路間のガス流通を抑制することが可能である。
【0058】
上記実施形態では、内燃機関は4ストロークのガソリンエンジンとしたが、2ストローク・エンジンやディーゼルエンジンの吸気装置に本発明を適用してもよい。例えば、ディーゼルエンジンの吸気装置においてスワール流を強化するための隔壁が設けられている場合、隔壁により区画される一方の通路から他方の通路への気体の漏れ出しを、隙間の近傍の凸部により抑制できる。
【0059】
吸気管において燃料を噴射する位置は、隔壁より上流側であってもよいし、下流側であってもよい。また、燃料を吸気管に噴射するエンジンに限らず、燃料を燃焼室に直接噴射するエンジンの吸気装置に本発明を適用してもよい。すなわち、吸気管を通る気体は混合気に限らず空気でもよい。また、上記実施形態では、内燃機関はレシプロエンジンとしたが、ロータリーエンジンの吸気装置に本発明を適用してもよい。また、燃料としてガソリンや軽油を用いるエンジンだけでなく、天然ガス等を用いるエンジンの吸気装置にも本発明を適用可能である。さらに、自動車のエンジンだけでなく、船舶や飛行機のエンジンの吸気装置に本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 エンジン(内燃機関)
2 吸気装置
20 吸気管
23 TGV(制御弁)
24 隔壁
25 隙間
26 第1通路
27 凸部
271 突起
28 第2通路
31 乱流渦

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9