IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日東電工株式会社の特許一覧

特許7189685粘着剤組成物、粘着シート、及び、光学部材
<>
  • 特許-粘着剤組成物、粘着シート、及び、光学部材 図1
  • 特許-粘着剤組成物、粘着シート、及び、光学部材 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】粘着剤組成物、粘着シート、及び、光学部材
(51)【国際特許分類】
   C09J 133/04 20060101AFI20221207BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20221207BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20221207BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
C09J133/04
C09J11/08
C09J7/38
B32B27/00 M
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018111742
(22)【出願日】2018-06-12
(65)【公開番号】P2019065255
(43)【公開日】2019-04-25
【審査請求日】2021-04-27
(31)【優先権主張番号】P 2017187885
(32)【優先日】2017-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片岡 賢一
(72)【発明者】
【氏名】小川 圭太
(72)【発明者】
【氏名】山形 真人
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-063712(JP,A)
【文献】特開2017-160422(JP,A)
【文献】特開2015-044970(JP,A)
【文献】特開2013-237721(JP,A)
【文献】特開2010-001360(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
B32B 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着性ポリマー、及び、水酸基価が20以上のフッ素系オリゴマーを含有し、
前記粘着性ポリマーが、(メタ)アクリル系ポリマーであり、
前記(メタ)アクリル系ポリマーが、原料モノマーとして、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーを含有し、
前記(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量100質量%に対して、前記ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーを0.1~25質量%含有することを特徴とする粘着剤組成物。
【請求項2】
基材フィルムの少なくとも片面に、請求項1に記載の粘着剤組成物より形成される粘着剤層を有し、
前記粘着剤層の内部、及び/又は、表面に、前記フッ素系オリゴマーが存在することを特徴とする粘着シート。
【請求項3】
前記粘着剤層の前記基材フィルムと接触する面と反対面に、セパレータが貼付されていることを特徴とする請求項に記載の粘着シート。
【請求項4】
前記セパレータの前記粘着剤層と接触する面に、前記フッ素系オリゴマーが存在することを特徴とする請求項に記載の粘着シート。
【請求項5】
請求項に記載の粘着シート、又は、請求項もしくは請求項に記載の粘着シートから前記セパレータを剥離した粘着シートが貼付されていることを特徴とする光学部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物、粘着シート、及び、光学部材に関する。特に、前記粘着剤組成物により得られる粘着シートは、静電気が発生しやすいプラスチック製品等に貼り付けられる用途(例えば、液晶ディスプレイパネル、プラズマディスプレイパネル(PDP)、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ等)に好適であり、なかでも特に、光学部材(例えば、液晶ディスプレイなどに用いられる偏光板、波長板、位相差板、光学補償フィルム、反射シート、輝度向上フィルム)等の表面を保護する目的で用いられる表面保護フィルムとして有用である。
【背景技術】
【0002】
表面保護フィルム(表面保護シートともいう。)は、一般に、フィルム状の基材フィルム(支持体)上に粘着剤層が設けられた構成を有する。かかる保護フィルムは、前記粘着剤層を介して被着体(被保護体)に貼り合わされ、これにより被着体を加工、搬送時等の傷や汚れから保護する目的で用いられる。例えば、液晶ディスプレイのパネルは、液晶セルに粘着剤層を介して、偏光板や波長板等の光学部材を貼り合わせることにより形成されている。かかる液晶ディスプレイパネルの製造において、液晶セルに貼り合わされる偏光板は、いったんロール形態に製造された後、このロールから巻き出して、液晶セルの形状に応じた所望のサイズにカットして用いられる。ここで、偏光板が中間工程において搬送ロール等と擦れて傷つくことを防止するために、偏光板の片面または両面(典型的には片面)に表面保護フィルムを貼り合わせる対策がとられている。この表面保護フィルムは、不要になった段階で剥離して除去される。
【0003】
表面保護フィルムには、被着体(偏光板など)に貼り付けた際に、表面保護フィルムを貼付した被着体(偏光板など)において、不必要なカールや意図しないカール(カールとは反り返る現象をいい、例えば平板状のものがどちらか一方の面側に全体的に反り返る現象、平板状のものが全体的に波打つように反り返る現象などをいう。)を生じないように、カール調整性が求められてきている。不必要なカールや意図しないカールが生じると取り扱い性に劣り、例えば、偏光板などの被着体を液晶セルに貼り付ける際に気泡の噛み込みなどの不具合が生じることがある。
【0004】
平板状の被着体にカールが生じる場合、被着体に貼り合せられた表面保護フィルムの粘着剤層には、せん断方向にカールに伴う力が作用し、この力により被着体と粘着剤層との間で徐々に滑り(ズレ)等が生じるため、低速剥離時におけるせん断力の向上が求められている。
【0005】
また、被着体(被保護体)の加工、搬送時に、表面保護フィルムの浮きや剥がれなどが生じないように、適度な粘着力を有しつつ、低速剥離時には、軽剥離性(再剥離性)が求められている。
【0006】
そこで、軽剥離化を実現するため、表面保護フィルムに使用される粘着剤組成物には各種手法が施されている。例えば、粘着剤組成物に用いるポリマーにガラス転移温度(Tg)の高い成分や反応性界面活性剤等を含有させる例、粘着剤組成物を高度に架橋させる例等が報告されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
しかしながら、上記方法では、軽剥離化が実現できた場合であっても、界面活性剤などの添加剤を含有させることにより、粘着剤層と被着体との界面において、添加剤がブリードアウトし、汚染の発生や、それに伴い、滑り(ズレ)が生じやすくなる懸念も有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2002-221906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明は、前記事情を鑑み、鋭意研究した結果、偏光板などの光学部材に対して、滑り(ズレ)、浮きや剥がれが生じにくく、カール調整性、粘着性、低速剥離時における軽剥離性(再剥離性)、及び、耐汚染性(低汚染性)に優れる粘着剤層や粘着シートが得られる粘着剤組成物、前記粘着剤組成物により形成される粘着シート、及び、前記粘着シートが貼付されている光学部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明の粘着剤組成物は、粘着性ポリマー、及び、水酸基価が1以上のフッ素系オリゴマーを含有することを特徴とする。
【0011】
本発明の粘着剤組成物は、前記粘着性ポリマーが、(メタ)アクリル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、及び、シリコーン系ポリマーからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0012】
本発明の粘着シートは、基材フィルムの少なくとも片面に、前記粘着剤組成物より形成される粘着剤層を有し、前記粘着剤層の内部、及び/又は、表面に、前記フッ素系オリゴマーが存在することが好ましい。
【0013】
本発明の粘着シートは、前記粘着剤層の前記基材フィルムと接触する面と反対面に、セパレータが貼付されていることが好ましい。
【0014】
本発明の粘着シートは、前記セパレータの前記粘着剤層と接触する面に、前記フッ素系オリゴマーが存在することが好ましい。
【0015】
本発明の光学部材は、前記粘着シート、又は、前記粘着シートから前記セパレータを剥離した粘着シートが貼付されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、特定のフッ素系オリゴマーを含有する粘着剤組成物を用いることで、前記粘着剤組成物により形成される粘着剤層を有する粘着シートを偏光板などの光学部材に貼り合せた後に、滑り(ズレ)、浮きや剥がれの発生を抑制できるため、カール調整性に優れ、更に、剥離時までの適度な粘着力(粘着性)を維持でき、かつ、低速剥離時における軽剥離化(再剥離性)を達成でき、耐汚染性(低汚染性)にも優れ、有用である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る粘着シート(表面保護フィルム)の一構成例を示す模式的断面図である。
図2】本発明に係る粘着シート(表面保護フィルム)の一構成例を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0019】
<粘着シート(表面保護フィルム)の全体構造>
ここに開示される粘着シートは、一般に、粘着テープ、粘着ラベル、粘着フィルム等と称される形態のものであり、特に光学部品(例えば、偏光板、波長板等の液晶ディスプレイパネル構成要素として用いられる光学部品)の加工時や搬送時に光学部品の表面を保護する表面保護フィルムとして好適である。前記表面保護フィルムにおける粘着剤層は、典型的には連続的に形成されるが、かかる形態に限定されるものではなく、例えば点状、ストライプ状等の規則的あるいはランダムなパターンに形成された粘着剤層であってもよい。また、ここに開示される表面保護フィルムは、ロール状であってもよく、枚葉状であってもよい。
【0020】
<基材フィルム>
本発明の粘着シート(表面保護フィルム)は、基材フィルムを有することを特徴とする。ここに開示される技術において、基材フィルムを構成する樹脂材料は、特に制限なく使用することができるが、例えば、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性、等方性、可撓性、寸法安定性等の特性に優れたものを使用することが好ましい。特に、基材フィルムが可撓性を有することにより、ロールコーターなどによって粘着剤組成物を塗布することができ、ロール状に巻き取ることができ、有用である。
【0021】
前記基材フィルム(基材、支持体)として、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系ポリマー;ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマー;ポリカーボネート系ポリマー;ポリメチルメタクリレート等のアクリル系ポリマー;等を主たる樹脂成分(樹脂成分のなかの主成分、典型的には50質量%以上を占める成分)とする樹脂材料から構成されたプラスチックフィルムを、前記基材フィルムとして好ましく用いることができる。前記樹脂材料の他の例としては、ポリスチレン、アクリロニトリル-スチレン共重合体等の、スチレン系ポリマー;ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ないしノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン-プロピレン共重合体等の、オレフィン系ポリマー;塩化ビニル系ポリマー;ナイロン6、ナイロン6,6、芳香族ポリアミド等の、アミド系ポリマー;等を樹脂材料とするものが挙げられる。前記樹脂材料のさらに他の例として、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー等が挙げられる。上述したポリマーの2種以上のブレンド物からなる基材フィルムであってもよい。
【0022】
前記基材フィルムとしては、透明な熱可塑性樹脂材料からなるプラスチックフィルムを好ましく採用することができる。前記プラスチックフィルムの中でも、ポリエステルフィルムを使用することが、より好ましい態様である。ここで、ポリエステルフィルムとは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート等のエステル結合を基本とする主骨格を有するポリマー材料(ポリエステル樹脂)を主たる樹脂成分とするものをいう。かかるポリエステルフィルムは、光学特性や寸法安定性に優れる等、粘着シート(表面保護フィルム)の基材フィルムとして、好ましい特性を有する一方、そのままでは帯電しやすい性質を有する。
【0023】
前記基材フィルムを構成する樹脂材料には、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、着色剤(顔料、染料等)等の各種添加剤が配合されていてもよい。例えば、コロナ放電処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、酸処理、アルカリ処理、下塗り剤の塗布等の、公知または慣用の表面処理が施されていてもよい。このような表面処理は、例えば、基材フィルムと粘着剤層との密着性(粘着剤層の投錨性)を高めるための処理であり得る。
【0024】
本発明の粘着シート(表面保護フィルム)は、前記基材フィルムとして、帯電防止処理がなされてなるプラスチックフィルムを使用することも可能である。前記基材フィルムを用いることにより、剥離した際の粘着シート自体の帯電が抑えられるため、好ましい。また、基材フィルムがプラスチックフィルムであり、前記プラスチックフィルムに帯電防止処理を施すことにより、粘着シート自体の帯電を低減し、かつ、被着体への帯電防止能が優れるものが得られる。なお、帯電防止機能を付与する方法としては、特に制限はなく、従来公知の方法を用いることができ、例えば、帯電防止剤と樹脂成分から成る帯電防止性樹脂や導電性ポリマー、導電性物質を含有する導電性樹脂を塗布する方法や導電性物質を蒸着あるいはメッキする方法、また、帯電防止剤等を練り込む方法等があげられる。
【0025】
前記基材フィルムの厚みとしては、通常5~200μm、好ましくは10~100μm程度である。前記基材フィルムの厚みが、前記範囲内にあると、被着体への貼り合せ作業性と被着体からの剥離作業性に優れるため、好ましい。
【0026】
ここに開示される粘着シートは、基材フィルム、及び、粘着剤層に加えて、さらに他の層を含む態様でも実施され得る。前記他の層としては、帯電防止層や粘着剤層の投錨性を高める下塗り層(アンカー層)などが挙げられる。
【0027】
<粘着剤組成物>
本発明の粘着剤組成物は、粘着性を有する粘着性ポリマーを含有するものであれば、特に制限なく使用でき、前記粘着剤組成物から粘着剤層を形成することができる。前記粘着剤組成物としては、例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、合成ゴム系粘着剤、天然ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等を使用することもでき、中でも、より好ましくは、前記粘着性ポリマーが、(メタ)アクリル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、及び、シリコーン系ポリマーからなる群より選択される少なくとも1種であり、(メタ)アクリル系ポリマーを含有するアクリル系粘着剤、ウレタン系ポリマーを含有するウレタン系粘着剤、及び、シリコーン系ポリマーを含有するシリコーン系粘着剤からなる群より選択される少なくとも1種を使用(含有)するものが更に好ましく、特に好ましくは、前記粘着性ポリマーである(メタ)アクリル系ポリマーを使用するアクリル系粘着剤を使用することである。
【0028】
前記粘着剤層がアクリル系粘着剤を使用する場合、前記アクリル系粘着剤を構成する粘着性ポリマーである(メタ)アクリル系ポリマーは、これを構成する原料モノマーとして、炭素数1~14のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーを、主モノマーとして用いることができる。前記(メタ)アクリル系モノマーとしては、1種または2種以上を使用することができる。前記炭素数が1~14であるアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーを用いることにより、被着体(被保護体)に対する剥離力(粘着力)を低く制御することが容易となり、軽剥離性や再剥離性に優れた粘着シート(表面保護フィルム)が得られる。なお、本発明における(メタ)アクリル系ポリマーとは、アクリル系ポリマーおよび/またはメタクリル系ポリマーをいい、また(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよび/またはメタクリレートをいう。
【0029】
前記炭素数1~14のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーの具体例としては、たとえば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート、n-トリデシル(メタ)アクリレート、n-テトラデシル(メタ)アクリレートなどがあげられる。
【0030】
なかでも、本発明の粘着シートを表面保護フィルムとして使用する場合には、n-ブチル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n-デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、n-ドデシル(メタ)アクリレート、n-トリデシル(メタ)アクリレート、n-テトラデシル(メタ)アクリレートなどの炭素数4~14のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーが好適なものとしてあげられる。特に、炭素数4~14のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーを用いることにより、被着体への剥離力(粘着力)を低く制御することが容易となり、再剥離性に優れたものとなる。
【0031】
特に、前記(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量100質量%に対して、炭素数1~14であるアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーを、50質量%以上含有することが好ましく、より好ましくは、80質量%以上、更に好ましくは、85~99.9質量%、最も好ましくは90~99質量%である。50質量%未満になると、粘着剤組成物の適度な濡れ性や、粘着剤層の凝集力が劣ることになり、好ましくない。
【0032】
また、本発明の粘着剤組成物は、前記(メタ)アクリル系ポリマーが、原料モノマーとして、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーを含有することが好ましい。前記ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーとしては、1種または2種以上を使用することができる。前記ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーを用いることにより、粘着剤組成物の架橋などを制御しやすくなり、ひいては流動による濡れ性の改善と剥離における剥離力(粘着力)の低減とのバランスを制御しやすくなる。
【0033】
前記ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーとしては、たとえば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレート、(4-ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチルアクリレート、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、などがあげられる。特にアルキル基の炭素数が4以上のヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーを用いることで高速剥離時の軽剥離化が容易となり好ましい。
【0034】
前記(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量100質量%に対して、前記ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーを、25質量%以下含有することが好ましく、より好ましくは、20質量%以下、更に好ましくは、0.1~15質量%であり、最も好ましくは1~10質量%である。前記範囲内にあると、粘着剤組成物の濡れ性と、得られる粘着剤層の凝集力のバランスを制御しやすくなるため、好ましい。
【0035】
また、その他の重合性モノマー成分として、粘着性能のバランスが取りやすい理由から、Tgが0℃以下(通常-100℃以上)になるようにして、(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度や剥離性を調整するための重合性モノマーなどを、本発明の効果を損なわない範囲で使用することができる。
【0036】
前記(メタ)アクリル系ポリマーにおいて用いられる前記炭素数1~14のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマー、及び、前記ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系モノマー以外のその他の重合性モノマーとしては、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーを用いることができる。前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーを用いることにより、粘着シート(粘着剤層)の経時での粘着力の上昇を抑制することができ、再剥離性、粘着力上昇防止性、及び作業性に優れる、また、粘着剤層の凝集力と共に、せん断力にも優れ、好ましい。
【0037】
前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、カルボキシルエチル(メタ)アクリレート、カルボキシルペンチル(メタ)アクリレートなどがあげられる。
【0038】
前記(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量100質量%に対して、前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーを、0~5質量%であることが好ましく、0~3質量%であることがより好ましく、0~2質量%であることが更に好ましく、0.001~1質量%が最も好ましい。前記範囲内にあると、粘着剤組成物の濡れ性と、得られる粘着剤層の凝集力のバランスを制御しやすくなるため、好ましい。
【0039】
また、前記ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーとカルボキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーを併用して用いる場合には、前記(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量100質量%に対して、前記カルボキシル基含有(メタ)アクリル系モノマーを0.005~0.1質量%含有することが好ましい。前記範囲内に調整することにより、更に、再剥離性、粘着力上昇防止性に優れる粘着剤層(粘着シート)が得られ、有効である。
【0040】
更に、前記(メタ)アクリル系ポリマーにおいて用いられる前記炭素数1~14のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマー、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系モノマー、及び、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系モノマー以外のその他の重合性モノマーとしては、本発明の特性を損なわない範囲内であれば、特に限定することなく用いることができる。たとえば、シアノ基含有モノマー、ビニルエステルモノマー、芳香族ビニルモノマーなどの凝集力・耐熱性向上成分や、アミド基含有モノマー、イミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、N-アクリロイルモルホリン、ビニルエーテルモノマーなどの剥離力(粘着力)の向上や架橋化基点として働く官能基を有する成分を適宜用いることができる。中でも、シアノ基含有モノマー、アミド基含有モノマー、イミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、及び、N-アクリロイルモルホリンなどの窒素含有モノマーを用いることが好ましい。窒素含有モノマーを用いることにより、浮きや剥がれなどが生じない適度な剥離力(粘着力)を確保でき、更にせん断力に優れた粘着シート(表面保護フィルム)を得ることができるため、有用である。これら重合性モノマーは、1種また2種以上を使用することができる。
【0041】
前記シアノ基含有モノマーとしては、たとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルがあげられる。
【0042】
前記アミド基含有モノマーとしては、たとえば、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジエチルアクリルアミド、N-ビニルピロリドン、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N,N-ジエチルメタクリルアミド、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドなどがあげられる。
【0043】
前記イミド基含有モノマーとしては、たとえば、シクロヘキシルマレイミド、イソプロピルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、イタコンイミドなどがあげられる。
【0044】
前記アミノ基含有モノマーとしては、たとえば、アミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどがあげられる。
【0045】
前記ビニルエステルモノマーとしては、たとえば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニルなどがあげられる。
【0046】
前記芳香族ビニルモノマーとしては、たとえば、スチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、α-メチルスチレン、その他の置換スチレンなどがあげられる。
【0047】
前記エポキシ基含有モノマーとしては、たとえば、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテルなどがあげられる。
【0048】
前記ビニルエーテルモノマーとしては、たとえば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテルなどがあげられる。
【0049】
本発明において、炭素数1~14のアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマー、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル系モノマー、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系モノマー以外のその他の重合性モノマーは、前記(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分全量100質量%に対して、0~50質量%であることが好ましく、0~20質量%であることがより好ましい。前記その他の重合性モノマーは所望の特性を得るために、適宜調節することができる。
【0050】
前記(メタ)アクリル系ポリマーが、更に、モノマー成分としてアルキレンオキシド基含有反応性モノマーを含有してもよい。
【0051】
また、前記アルキレンオキシド基含有反応性モノマーのオキシアルキレン単位の平均付加モル数としては、1~40であることが好ましく、3~40であることがより好ましく、4~35であることがさらに好ましく、5~30であることが特に好ましい。前記平均付加モル数が1以上の場合、被着体(被保護体)の汚染低減効果が効率よく得られる傾向がある。また、前記平均付加モル数が40より大きい場合、粘着剤組成物の粘度が上昇して塗工が困難となる傾向があるため好ましくない。なお、オキシアルキレン鎖の末端は、水酸基のままや、他の官能基などで置換されていてもよい。
【0052】
前記アルキレンオキシド基含有反応性モノマーは単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよいが、全体としての含有量は、前記(メタ)アクリル系ポリマーのモノマー成分全量中、0~20質量%であることが好ましく、0~10質量%であることがより好ましい。アルキレンオキシド基含有反応性モノマーの含有量が20質量%を超えると、被着体への低汚染性が悪化するため、好ましくない。
【0053】
前記アルキレンオキシド基含有反応性モノマーのオキシアルキレン単位としては、炭素数1~6のアルキレン基を有するものがあげられ、たとえば、オキシメチレン基、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基などがあげられる。オキシアルキレン鎖の炭化水素基は直鎖でもよく、分岐していてもよい。
【0054】
また、前記アルキレンオキシド基含有反応性モノマーがエチレンオキシド基を有する反応性モノマーであることがより好ましい。エチレンオキシド基を有する反応性モノマー含有(メタ)アクリル系ポリマーをベースポリマーとして用いることにより、ベースポリマーと、フッ素系オリゴマーとの相溶性が向上し、被着体へのブリードが好適に抑制され、耐汚染性(低汚染性)の粘着剤組成物が得られる。
【0055】
前記アルキレンオキシド基含有反応性モノマーとしては、たとえば、(メタ)アクリル酸アルキレンオキシド付加物や、分子中にアクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基などの反応性置換基を有する反応性界面活性剤などがあげられる。
【0056】
前記(メタ)アクリル酸アルキレンオキシド付加物の具体例としては、たとえば、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール-ポリブチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール-ポリブチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ブトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ラウロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ステアロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコール-ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどがあげられる。
【0057】
また、前記反応性界面活性剤の具体例としては、たとえば、(メタ)アクリロイル基またはアリル基を有するアニオン型反応性界面活性剤、ノニオン型反応性界面活性剤、カチオン型反応性界面活性剤などがあげられる。
【0058】
前記(メタ)アクリル系ポリマーは、重量平均分子量(Mw)が10万~500万が好ましく、より好ましくは20万~400万、さらに好ましくは30万~300万、最も好ましくは30万~95万である。重量平均分子量が10万より小さい場合は、粘着剤層の凝集力が小さくなることにより糊残りを生じる傾向がある。一方、重量平均分子量が500万を超える場合は、ポリマーの流動性が低下し、被着体(例えば、偏光板)への濡れが不十分となり、被着体と粘着シート(表面保護フィルム)の粘着剤層との間に発生するフクレの原因となる傾向がある。なお、重量平均分子量は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)により測定して得られたものをいう。
【0059】
また、前記(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、0℃以下が好ましく、より好ましくは-10℃以下である(通常-100℃以上)。ガラス転移温度が0℃より高い場合、ポリマーが流動しにくく、例えば、光学部材である偏光板への濡れが不十分となり、偏光板と粘着シート(表面保護フィルム)の粘着剤層との間に発生するフクレの原因となる傾向がある。特にガラス転移温度を-61℃以下にすることで偏光板への濡れ性と軽剥離性に優れる粘着剤層が得られ易くなる。なお、(メタ)アクリル系ポリマーのガラス転移温度は、用いるモノマー成分や組成比を適宜変えることにより前記範囲内に調整することができる。
【0060】
前記(メタ)アクリル系ポリマーの重合方法は、特に制限されるものではなく、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合などの公知の方法により重合できるが、特に作業性の観点や、被着体(被保護体)への低汚染性など特性面から、溶液重合がより好ましい態様である。また、得られるポリマーは、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体などいずれでもよい。
【0061】
前記粘着剤層にウレタン系粘着剤を使用する場合、任意の適切なウレタン系粘着剤を採用し得る。このようなウレタン系粘着剤としては、好ましくは、ポリオールとポリイソシアネート化合物を反応させて得られる粘着性ポリマーであるウレタン系ポリマーからなるものが挙げられる。ポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオールなどが挙げられる。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0062】
前記粘着剤層にシリコーン系粘着剤を使用する場合、任意の適切なシリコーン系粘着剤を採用し得る。このようなシリコーン系粘着剤としては、好ましくは、粘着性ポリマーであるシリコーン系ポリマーをブレンドまたは凝集させることにより得られるものを採用し得る。
【0063】
また、前記シリコーン系粘着剤としては、付加反応硬化型シリコーン系粘着剤や過酸化物硬化型シリコーン系粘着剤が挙げられる。これらのシリコーン系粘着剤の中でも、過酸化物(過酸化ベンゾイルなど)を使用せず、分解物が発生しないことから、付加反応硬化型シリコーン系粘着剤が好ましい。
【0064】
前記付加反応硬化型シリコーン系粘着剤の硬化反応としては、例えば、ポリアルキルシリコーン系粘着剤を得る場合、一般的に、ポリアルキル水素シロキサン組成物を白金触媒により硬化させる方法が挙げられる。
【0065】
<フッ素系オリゴマー>
本発明の粘着剤組成物は、粘着性ポリマー、及び、水酸基価が1以上のフッ素系オリゴマーを含有することを特徴とする。前記粘着剤組成物に、水酸基価が1以上のフッ素系オリゴマーを含むことで、得られる粘着剤層(粘着シート)を偏光板などの光学部材に貼り合せた場合に、フッ素系オリゴマー中のフッ素部位の低表面自由エネルギーによる軽剥離効果を発揮し、また、水酸基価が1以上であることにより、フッ素系オリゴマーと粘着性ポリマーとの相互作用が強まり、被着体への転写量が少なくなり、粘着シート(表面保護フィルム)の滑り(ズレ)、浮きや剥がれ等を抑制でき、つまり、軽剥離性(再剥離性)と粘着性の両立を図ることができ、好ましい態様となる。また、本発明の粘着シートは、基材フィルムの少なくとも片面に、前記粘着剤組成物より形成される粘着剤層を有し、前記粘着剤層の内部、及び/又は、表面に、前記フッ素系オリゴマーが存在することが好ましい。なお、前記粘着剤層の「内部」とは、例えば、前記フッ素系オリゴマーを配合した前記粘着剤組成物を用いて粘着剤層を形成した場合に、前記粘着剤層中に含まれる場合を指す。また、前記粘着剤層の「表面」とは、例えば、前記フッ素系オリゴマーを配合した粘着剤層中に含まれるフッ素系オリゴマーが粘着剤層表面に存在(表出)している場合や、前記粘着剤層表面を保護するため貼付されるセパレータ表面に、予め、前記フッ素系オリゴマーが塗布(積層)しておき、前記セパレータを前記粘着剤層の貼付した場合に、前記セパレータ表面から、前記フッ素系オリゴマーが前記粘着剤層表面に転写(移行)される場合を指す。
【0066】
前記フッ素系オリゴマーの水酸基価は1以上であり、好ましくは5以上であり、より好ましくは10以上、さらに好ましくは20以上であり、特に好ましくは40以上である。前記フッ素系オリゴマーの水酸基価が1以上であると、フッ素系オリゴマーと粘着性ポリマーとの相互作用が強まり、被着体への転写量が少なくなり、粘着シート(表面保護フィルム)の滑り(ズレ)、浮きや剥がれなどを抑制できる。さらに、水酸基価が20以上であると、耐汚染性(低汚染性)がより優れるため、好ましい。また、前記フッ素系オリゴマーの水酸基価は500以下であることが好ましく、400以下であることがより好ましい。前記フッ素系オリゴマーの水酸基価が500を超えると、フッ素系オリゴマーと架橋剤の反応が優先されてしまい、本来の架橋剤と粘着性ポリマーとの反応を阻害してしまい、凝集力が落ちる恐れがあるため、好ましくない。
【0067】
前記フッ素系オリゴマーの具体例としては、例えば、市販品の商品名が、メガファックF-477、F-556、F-559、F-562、F-563、F-569、F-571(以上、DIC社製)、などがあげられる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0068】
前記フッ素系オリゴマーの含有量は、前記粘着剤組成物を構成する粘着性ポリマー(ベースポリマーであり、例えば、(メタ)アクリル系ポリマー、ウレタン系ポリマー、シリコーン系ポリマー等)100質量部に対して、0.01~10質量部が好ましく、より好ましくは0.02~8質量部であり、更に好ましくは0.04~7質量部、最も好ましくは0.06~6質量部である。前記範囲内にあると、本発明の粘着シートを、光学部材などに貼り合せた後に、滑り(ズレ)、浮きや剥がれなどを抑制でき、さらに、軽剥離効果に優れ、好ましい。また、粘着シート(表面保護フィルム)としての外観を満足させるためには、前記粘着性ポリマー100質量部に対して、前記フッ素系オリゴマーの含有量は、0.01~5.5質量部が好ましい。
【0069】
<架橋剤>
本発明の粘着シート(表面保護フィルム)は、前記粘着剤組成物が、架橋剤を含有することが好ましい。また、本発明においては、前記粘着剤組成物を用いて、粘着剤層とすることができる。例えば、前記粘着剤組成物が、前記(メタ)アクリル系ポリマーを含有するアクリル系粘着剤の場合、前記(メタ)アクリル系ポリマーの構成単位、構成比率、架橋剤の選択および添加比率等を適宜調節して架橋することにより、より耐熱性に優れた粘着シート(粘着剤層)を得ることができる。
【0070】
本発明に用いられる架橋剤としては、イソシアネート化合物、エポキシ化合物、メラミン系樹脂、アジリジン誘導体、および金属キレート化合物などを用いてもよく、特にイソシアネート化合物の使用は、好ましい態様となる。また、これらの化合物は単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0071】
前記イソシアネート化合物としては、たとえば、トリメチレンジイソシアネート、ブチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ダイマー酸ジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート類、シクロペンチレンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンなどの脂環族イソシアネート類、2,4-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)などの芳香族イソシアネート類、前記イソシアネート化合物をアロファネート結合、ビウレット結合、イソシアヌレート結合、ウレトジオン結合、ウレア結合、カルボジイミド結合、ウレトンイミン結合、オキサジアジントリオン結合などにより変性したポリイソシネート変性体が挙げられる。たとえば、市販品として、商品名タケネート300S、タケネート500、タケネート600、タケネートD165N、タケネートD178N(以上、三井化学社製)、スミジュールT80、スミジュールL、デスモジュールN3400(以上、住化バイエルウレタン社製)、ミリオネートMR、ミリオネートMT、コロネートL、コロネートHL、コロネートHX(以上、東ソー社製)などがあげられる。これらイソシアネート化合物は、単独で使用してもよく、2種以上混合して使用してもよく、2官能のイソシアネート化合物と3官能以上のイソシアネート化合物を併用して用いることも可能である。架橋剤を併用して用いることにより粘着性と耐反発性(曲面に対する接着性)を両立することが可能となり、より接着信頼性に優れた粘着シートを得ることができる。
【0072】
また、前記イソシアネート化合物(2官能のイソシアネート化合物と3官能以上のイソシアネート化合物)を併用して用いる場合には、両化合物の配合比(質量比)としては、[2官能のイソシアネート化合物]/[3官能以上のイソシアネート化合物](質量比)が、0.1/99.9~50/50で配合することが好ましく、0.1/99.9~20/80がより好ましく、0.1/99.9~10/90がさらに好ましく、0.1/99.9~5/95が特に好ましく、0.1/99.9~1/99が最も好ましい。前記範囲内に調整して配合することにより、粘着性と耐反発性に優れた粘着剤層となり、好ましい態様となる。
【0073】
前記エポキシ化合物としては、たとえば、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシレンジアミン(商品名TETRAD-X、三菱瓦斯化学社製)や1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(商品名TETRAD-C、三菱瓦斯化学社製)などがあげられる。
【0074】
前記メラミン系樹脂としては、ヘキサメチロールメラミンなどがあげられる。アジリジン誘導体としては、たとえば、市販品としての商品名HDU、TAZM、TAZO(以上、相互薬工社製)などがあげられる。
【0075】
前記金属キレート化合物としては、金属成分としてアルミニウム、鉄、スズ、チタン、ニッケルなど、キレート成分としてアセチレン、アセト酢酸メチル、乳酸エチルなどがあげられる。
【0076】
本発明に用いられる架橋剤の含有量は、例えば、前記(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましく、0.1~15質量部であることがより好ましく、0.5~10質量部であることがさらに好ましく、1~6質量部であることが特に好ましい。前記含有量が0.01質量部よりも少ない場合、架橋剤による架橋形成が不十分となり、得られる粘着剤層の凝集力が小さくなって、十分な耐熱性が得られない場合もあり、また糊残りの原因となる傾向がある。一方、含有量が20質量部を超える場合、ポリマーの凝集力が大きく、流動性が低下し、被着体(例えば、偏光板)への濡れが不十分となって、被着体と粘着剤層(粘着剤組成物層)との間に発生するフクレの原因となる傾向がある。また、これらの架橋剤は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0077】
前記粘着剤組成物には、さらに、上述したいずれかの架橋反応をより効果的に進行させるための架橋触媒を含有させることができる。かかる架橋触媒として、例えば、ジラウリン酸ジブチルスズ、ジラウリン酸ジオクチルスズなどのスズ系触媒、トリス(アセチルアセトナト)鉄、トリス(ヘキサン-2,4-ジオナト)鉄、トリス(ヘプタン-2,4-ジオナト)鉄、トリス(ヘプタン-3,5-ジオナト)鉄、トリス(5-メチルヘキサン-2,4-ジオナト)鉄、トリス(オクタン-2,4-ジオナト)鉄、トリス(6-メチルヘプタン-2,4-ジオナト)鉄、トリス(2,6-ジメチルヘプタン-3,5-ジオナト)鉄、トリス(ノナン-2,4-ジオナト)鉄、トリス(ノナン-4,6-ジオナト)鉄、トリス(2,2,6,6-テトラメチルヘプタン-3,5-ジオナト)鉄、トリス(トリデカン-6,8-ジオナト)鉄、トリス(1-フェニルブタン-1,3-ジオナト)鉄、トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)鉄、トリス(アセト酢酸エチル)鉄、トリス(アセト酢酸-n-プロピル)鉄、トリス(アセト酢酸イソプロピル)鉄、トリス(アセト酢酸-n-ブチル)鉄、トリス(アセト酢酸-sec-ブチル)鉄、トリス(アセト酢酸-tert-ブチル)鉄、トリス(プロピオニル酢酸メチル)鉄、トリス(プロピオニル酢酸エチル)鉄、トリス(プロピオニル酢酸-n-プロピル)鉄、トリス(プロピオニル酢酸イソプロピル)鉄、トリス(プロピオニル酢酸-n-ブチル)鉄、トリス(プロピオニル酢酸-sec-ブチル)鉄、トリス(プロピオニル酢酸-tert-ブチル)鉄、トリス(アセト酢酸ベンジル)鉄、トリス(マロン酸ジメチル)鉄、トリス(マロン酸ジエチル)鉄、トリメトキシ鉄、トリエトキシ鉄、トリイソプロポキシ鉄、塩化第二鉄などの鉄系触媒を用いることができる。これら架橋触媒は、1種でもよく、2種以上を併用してもよい。
【0078】
前記架橋触媒の含有量は、特に制限されないが、例えば、前記(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、およそ0.0001~1質量部とすることが好ましく、0.001~0.5質量部がより好ましい。前記範囲内にあると、粘着剤層を形成した際に架橋反応の速度が速く、粘着剤組成物のポットライフも長くなり、好ましい態様となる。
【0079】
更に、前記粘着剤組成物には、ケト-エノール互変異性を生じる化合物を含有させることができる。例えば、架橋剤を含む粘着剤組成物または架橋剤を配合して使用され得る粘着剤組成物において、前記ケト-エノール互変異性を生じる化合物を含む態様を好ましく採用することができる。これにより、架橋剤配合後における粘着剤組成物の過剰な粘度上昇やゲル化を抑制し、粘着剤組成物のポットライフを延長する効果が実現され得る。前記架橋剤として少なくともイソシアネート化合物を使用する場合には、ケト-エノール互変異性を生じる化合物を含有させることが特に有意義である。この技術は、例えば、前記粘着剤組成物が、有機溶剤溶液又は無溶剤の形態である場合に好ましく適用され得る。
【0080】
前記ケト-エノール互変異性を生じる化合物としては、各種のβ-ジカルボニル化合物を用いることができる。具体例としては、アセチルアセトン、2,4-ヘキサンジオン、3,5-ヘプタンジオン、2-メチルヘキサン-3,5-ジオン、6-メチルヘプタン-2,4-ジオン、2,6-ジメチルヘプタン-3,5-ジオン等のβ-ジケトン類;アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸tert-ブチル等のアセト酢酸エステル類;プロピオニル酢酸エチル、プロピオニル酢酸エチル、プロピオニル酢酸イソプロピル、プロピオニル酢酸tert-ブチル等のプロピオニル酢酸エステル類;イソブチリル酢酸エチル、イソブチリル酢酸エチル、イソブチリル酢酸イソプロピル、イソブチリル酢酸tert-ブチル等のイソブチリル酢酸エステル類;マロン酸メチル、マロン酸エチル等のマロン酸エステル類;等が挙げられる。なかでも好適な化合物として、アセチルアセトンおよびアセト酢酸エステル類が挙げられる。かかるケト-エノール互変異性を生じる化合物は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0081】
前記ケト-エノール互変異性を生じる化合物の含有量は、前記(メタ)アクリル系ポリマー100質量部に対して、例えば0.1~20質量部とすることができ、通常は0.5~15質量部(例えば1~10質量部)とすることが適当である。前記化合物の量が少なすぎると、十分な使用効果が発揮され難くなる場合がある。一方、前記化合物を必要以上に多く使用すると、粘着剤層に残留し、凝集力を低下させる場合がある。
【0082】
さらに、前記粘着剤組成物には、その他の公知の添加剤を含有していてもよく、たとえば、滑剤、着色剤、顔料などの粉体、可塑剤、粘着付与剤、低分子量ポリマー、表面潤滑剤、レベリング剤、酸化防止剤、腐食防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、シランカップリンング剤、無機または有機の充填剤、金属粉、粒子状、箔状物などを使用する用途に応じて適宜添加することができる。
【0083】
<粘着剤層及び粘着シート(表面保護フィルム)>
本発明の粘着シートは、前記粘着剤層を基材フィルムの少なくとも片面に形成してなるものであるが、その際、粘着剤組成物の架橋は、粘着剤組成物の塗布後に行うのが一般的であるが、架橋後の粘着剤組成物からなる粘着剤層を基材フィルムなどに転写することも可能である。
【0084】
また、基材フィルム上に粘着剤層を形成する方法は特に問わないが、たとえば、前記粘着剤組成物(溶液)を基材フィルムに塗布し、重合溶剤などを乾燥除去して粘着剤層を基材フィルム上に形成することにより作製される。その後、粘着剤層の成分移行の調整や架橋反応の調整などを目的として養生をおこなってもよい。また、粘着剤組成物を基材フィルム上に塗布して粘着シートを作製する際には、基材フィルム上に均一に塗布できるよう、前記粘着剤組成物中に重合溶剤以外の一種以上の溶剤を新たに加えてもよい。
【0085】
また、本発明の粘着シートを製造する際の粘着剤層の形成方法としては、粘着テープ類の製造に用いられる公知の方法が用いられる。具体的には、たとえば、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、エアーナイフコート法、ダイコーターなどによる押出しコート法などがあげられる。
【0086】
本発明の粘着シートは、通常、前記粘着剤層の厚みが3~100μm、好ましくは5~50μm程度となるように作製する。粘着剤層の厚みが、前記範囲内にあると、適度な再剥離性と接着性のバランスを得やすいため、好ましい。
【0087】
また、本発明の粘着シートは、総厚みが、8~300μmであることが好ましく、10~200μmであることがより好ましく、20~100μmであることが最も好ましい。前記範囲内であると、粘着特性(再剥離性、接着性など)、作業性、外観特性に優れ、好ましい態様となる。なお、前記総厚みとは、基材フィルム、粘着剤層、その他の層などの全ての層を含む厚みの合計を意味する。
【0088】
<セパレータ>
本発明の粘着シートには、前記粘着剤層の前記基材フィルムと接触する面と反対面に、セパレータが貼付することが好ましい。前記セパレータは、必要に応じて粘着面を保護する目的で、粘着剤層表面にセパレータを貼り合わせることが可能である。
【0089】
前記セパレータを構成する材料としては、紙やプラスチックフィルムがあるが、表面平滑性に優れる点からプラスチックフィルムが好適に用いられる。そのフィルムとしては、前記粘着剤層を保護し得るフィルムであれば特に限定されず、たとえば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルムなどがあげられる。
【0090】
前記セパレータの厚みは、通常5~200μm、好ましくは10~100μm程度である。前記範囲内にあると、粘着剤層への貼り合せ作業性と粘着剤層からの剥離作業性に優れるため、好ましい。前記セパレータには、必要に応じて、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル系もしくは脂肪酸アミド系の離型剤、シリカ粉などによる離型および防汚処理や、塗布型、練り込み型、蒸着型などの帯電防止処理をすることもできる。
【0091】
また、本発明の粘着シートは、前記セパレータの前記粘着剤層と接触する面に、前記フッ素系オリゴマーが存在(塗布・積層)することが好ましい(図1参照)。前記セパレータの前記粘着剤層と接触する面に、前記フッ素系オリゴマーが存在することで、前記セパレータを前記粘着剤層に貼付した場合に、前記セパレータ表面から、前記フッ素系オリゴマーが前記粘着剤層表面に転写(移行)され、粘着剤層を被着体(例えば、偏光板)などに貼り合せた後に、フッ素部位の低表面自由エネルギーによる軽剥離効果と、また、粘着付与樹脂として機能し、接着性を向上させ、粘着シート(表面保護フィルム)の滑り(ズレ)、浮きや剥がれの抑制を達成(再剥離性と粘着性の両立)することができ、より好ましい態様となる。
【0092】
<光学部材>
本発明の光学部材は、前記粘着シート、又は、前記セパレータを剥離した粘着シートにより貼付(保護)されていることが好ましい。前記粘着シートは、カール調整性と軽剥離性(再剥離性)に優れるため、加工、搬送、出荷時等の表面保護用途(表面保護フィルム)に使用できるため、前記光学部材(偏光板など)の表面を保護するために、有用なものとなる。
【実施例
【0093】
以下、本発明に関連するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる具体例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明中の「部」および「%」は、特に断りがない限り質量基準である。
【0094】
また、以下の説明中の各特性は、それぞれ次のようにして測定または評価した。
【0095】
<重量平均分子量(Mw)の測定>
使用するポリマーの重量平均分子量(Mw)は、東ソー株式会社製GPC装置(HLC-8220GPC)を用いて測定を行った。測定条件は下記の通りである。
サンプル濃度:0.2質量%(THF溶液)
サンプル注入量:10μl
溶離液:THF
流速:0.6ml/min
測定温度:40℃
カラム:
サンプルカラム;TSKguardcolumn SuperHZ-H(1本)+TSKgel SuperHZM-H(2本)
リファレンスカラム;TSKgel SuperH-RC(1本)
検出器:示差屈折計(RI)
なお、重量平均分子量はポリスチレン換算値にて求めた。
【0096】
<ガラス転移温度(Tg)の理論値>
ガラス転移温度Tg(℃)は、各モノマーによるホモポリマーのガラス転移温度Tgn(℃)として下記の文献値を用い、下記の式により求めた。
【0097】
式:1/(Tg+273)=Σ[Wn/(Tgn+273)]
〔式中、Tg(℃)は共重合体のガラス転移温度、Wn(-)は各モノマーの質量分率、Tgn(℃)は各モノマーによるホモポリマーのガラス転移温度、nは各モノマーの種類を表す。〕
文献値:
2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA):-70℃
4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA):-32℃
アクリル酸(AA):106℃
【0098】
なお、上記文献値として、「アクリル樹脂の合成・設計と新用途展開」(中央経営開発センター出版部発行)及び「Polymer Handbook」(John Wiley & Sons)を参照した。
【0099】
<水酸基価の測定>
無水酢酸25gを全量フラスコ100mlに取り、ピリジンを加えて全量を100mlにし、充分に攪拌しアセチル化試薬を作製した。
次に、試料(フッ素系オリゴマー)を2g平底フラスコに量り取り、これにアセチル化試薬5mlを全量加えた。上記フラスコを100℃の浴中で70分間加熱した後、放冷した。ここに、フェノールフタレイン溶液数滴を指示薬として加え、0.5mol/l水酸化カリウムエタノール溶液で滴定し、指示薬のうすい紅色が約30秒間続いたときを終点とした。以下の式により水酸基価を算出した。
水酸基価(mgKOH/g)=[(B-C)×f×28.05]/S+D
B:空試験に用いた0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液の量(mL)
C:試料に用いた0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液の量(mL)
f:0.5mol/L水酸化カリウムエタノール溶液のファクター
S:試料の重量(g)
D:酸価
28.05:水酸化カリウムの分子量56.11の1/2
【0100】
<アクリルフィルムの作製>
(樹脂組成物の製造)
押出反応機を2台直列に並べたタンデム型反応押出機を用いて、樹脂を製造した。
タンデム型反応押出機に関しては、第1押出機、第2押出機共に直径75mm、L/D(押出機の長さLと直径Dの比)が74の同方向噛合型二軸押出機を使用し、定重量フィーダー(クボタ(株)製)を用いて、第1押出機原料供給口に原料樹脂を供給した。また、第1押出機、第2押出機に於ける各ベントの減圧度は-0.095MPaとした。更に、直径38mm、長さ2mの配管で第1押出機と第2押出機を接続し、第1押出機の樹脂吐出口と第2押出機原料供給口を接続する部品内圧力制御機構には定流圧力弁を用いた。第2押出機から吐出された樹脂(ストランド)は、冷却コンベアで冷却した後、ペレタイザーでカッティングしペレットとした。ここで、第1押出機の樹脂の吐出口と第2押出機原料供給口を接続する部品内圧力調整、又は押出変動を見極めるために、第1押出機出口、第1押出機と第2押出機接続部品中央部、第2押出機出口に樹脂圧力計を設けた。
第1押出機に関して、原料の樹脂としてポリメタクリル酸メチル樹脂(Mw:10.5万)を使用し、イミド化剤として、モノメチルアミンを用いてイミド樹脂中間体1を製造した。この際、押出機最高温部温度を280℃、スクリュー回転数は55rpm、原料樹脂供給量は150kg/時間、モノメチルアミンの添加量は原料樹脂100質量部に対して2.0質量部とした。又、定流圧力弁は第2押出機原料供給口直前に設置し、第1押出機モノメチルアミン圧入部圧力を8MPaになるように調整した。
続いて、イミド中間体1を第2押出機に供給し、リアベント及び真空ベントで残存しているイミド化反応試剤及び副生成物を脱揮したのち、エステル化剤として炭酸ジメチルとトリエチルアミンの混合溶液を添加しイミド樹脂中間体2を製造した。この際、押出機各バレル温度を260℃、スクリュー回転数は55rpm、炭酸ジメチルの添加量は原料樹脂100質量部に対して3.2質量部、トリエチルアミンの添加量は原料樹脂100質量部に対して0.8質量部とした。更に、イミド中間体2をベントでエステル化剤を除去した後、ストランドダイから押し出し、水槽で冷却した後、ペレタイザーでペレット化することで、樹脂組成物を得た。この樹脂組成物のイミド化率は3.7%、酸価は0.29mmol/gであった。
【0101】
(アクリルフィルムの製造)
前記樹脂組成物100質量部、及び、トリアジン系紫外線吸収剤(アデカ社製、商品名:T-712)0.62質量部を、2軸混練機にて220℃にて混合し、樹脂ペレットを作製した。得られた樹脂ペレットを、100.5kPa、100℃で12時間乾燥させ、単軸の押出機にてダイス温度270℃でTダイから押出してフィルム状に成形した(厚み160μm)。
さらに前記フィルムを、その搬送方向に150℃の雰囲気下に延伸し(厚み80μm)、次いでフィルム搬送方向と直交する方向に150℃の雰囲気下に延伸して、厚み40μmのアクリルフィルム(アクリル系樹脂フィルム)を得た。
【0102】
<アクリル系ポリマー(1)の調製>
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた四つ口フラスコに、2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)91質量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)9質量部、アクリル酸(AA)0.02質量部、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.2質量部、酢酸エチル150質量部を仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入し、フラスコ内の液温を65℃付近に保って6時間重合反応を行い、アクリル系ポリマー(1)溶液(40質量%)を調製した。前記アクリル系ポリマー(1)の重量平均分子量(Mw)は、54万、ガラス転移温度(Tg)は、-67℃であった。
【0103】
<アクリル系ポリマー(2)の調製>
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた四つ口フラスコに2-エチルヘキシルアクリレート(2EHA)98.5質量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)1.5質量部、アクリル酸(AA)0.006質量部、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.2質量部、酢酸エチル150質量部を仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入し、フラスコ内の液温を65℃付近に保って6時間重合反応を行い、アクリル系ポリマー(2)溶液(40質量%)を調製した。前記アクリル系ポリマー(2)の重量平均分子量(Mw)は、48万、ガラス転移温度(Tg)は、-70℃であった。
【0104】
<実施例1>
〔アクリル系粘着剤溶液の調製〕
上記アクリル系ポリマー(1)溶液(40質量%)を酢酸エチルで20質量%に希釈し、この溶液500質量部(固形分100質量部)に、フッ素系オリゴマー(メガファックF-563、DIC社製)を酢酸エチルで10%に希釈した溶液50質量部(固形分5質量部)、架橋剤として、3官能イソシアネート化合物であるヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(東ソー社製、コロネートHX)3質量部(固形分3質量部)、架橋触媒としてジラウリン酸ジオクチルスズ(1質量%酢酸エチル溶液)3質量部(固形分0.03質量部)を加えて、混合攪拌を行い、アクリル系粘着剤溶液を調製した。
【0105】
〔帯電防止処理フィルムの作製〕
バインダとして、ポリエステル樹脂バイロナールMD-1480(25%水溶液、東洋紡社製)を固形分量で100質量部、導電性ポリマーとして、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)/ポリスチレンスルホン酸(PSS)(Baytron P、H,C,Starck社製)を固形分量で100質量部、架橋剤としてヘキサメチロールメラミンを固形分量で10質量部、とを水/エタノール(1/1)の混合溶媒に加え、約20分間撹拌して十分に混合した。このようにして、NV(不揮発分)約0.4%の帯電防止層用溶液を調製した。
得られた帯電防止剤溶液を、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(厚さ:38μm)上にマイヤーバーを用いて塗布し、130℃で1分間乾燥することにより溶剤を除去して帯電防止層(厚さ:0.2μm)を形成し、帯電防止処理フィルムを作製した。
【0106】
〔粘着シート(表面保護フィルム)の作製〕
上記アクリル系粘着剤溶液を、上記の帯電防止処理フィルムの帯電防止処理面とは反対の面に塗布し、130℃で2分間加熱して、厚さ15μmの粘着剤層を形成した。次いで、上記粘着剤層の表面に、片面にシリコーン処理を施したポリエチレンテレフタレートフィルム(セパレータ、厚さ25μm)のシリコーン処理面を貼り合わせ、粘着シート(表面保護フィルム)を作製した(図2参照)。
【0107】
<実施例2~6>
実施例1で使用したフッ素系オリゴマーのメガファックF-563の代わりに、表1中に記載のフッ素系オリゴマーを用い、表1中に記載の配合量で、実施例1と同様の方法で、粘着シートを作製した。
【0108】
<実施例7>
実施例2で使用したアクリル系ポリマー(1)の代わりに、アクリル系ポリマー(2)を用い、メガファックF-562を表1中の配合量で、実施例2と同様の方法で、粘着シートを作製した。
【0109】
<実施例8>
実施例3で使用したメガファックF-569を、表1中に記載の配合量で、実施例3と同様の方法で、粘着シートを作製した。
【0110】
<実施例9~11>
実施例2で使用したメガファックF-562に加えて、その他フッ素オリゴマーを併用し、表1中に記載の配合量で、実施例2と同様の方法で、粘着シートを作製した。
【0111】
<実施例12>
実施例7で使用したメガファックF-562の代わりに、表1中に記載のフッ素系オリゴマーを用い、表1中に記載の配合量で、実施例7と同様の方法で、粘着シートを作製した。
【0112】
<実施例13及び14>
実施例7で使用したメガファックF-562に加えて、その他フッ素オリゴマーを併用し、表1中に記載の配合量で、実施例7と同様の方法で、粘着シートを作製した。
【0113】
<実施例15及び16>
実施例2で使用したメガファックF-562を、表1中に記載の配合量で、実施例2と同様の方法で、粘着シートを作製した。
【0114】
<実施例17及び18>
実施例3で使用したメガファックF-569を、表1中に記載の配合量で、実施例3と同様の方法で、粘着シートを作製した。
【0115】
<比較例1~2>
実施例1で用いたフッ素系オリゴマーの代わりに、表1中に記載のフッ素系オリゴマーを用いた以外は、実施例1と同様の方法で、粘着シートを作製した。
【0116】
<比較例3>
実施例1で用いたフッ素系オリゴマーを使用しなかった以外は、実施例1と同様の方法で、粘着シートを作製した。
【0117】
実施例及び比較例に係る粘着シートにつき、上述した配合内容、各種測定および評価を行った結果を、表1及び表2に示した。なお、表1中の配合量は有効成分を示した。また、実施例1以外の実施例及び比較例において、表1中に配合量の記載のない架橋剤や架橋触媒について、実施例1と同量を配合した。なお、表1中の略称を、以下に説明する。
【0118】
[フッ素系オリゴマー]
F-563:フッ素系オリゴマー、水酸基価120mgKOH/g、DIC社製、商品名:メガファックF-563
F-562:フッ素系オリゴマー、水酸基価56mgKOH/g、DIC社製、商品名:メガファックF-562
F-569:フッ素系オリゴマー、水酸基価59mgKOH/g、DIC社製、商品名:メガファックF-569
F-477:フッ素系オリゴマー、水酸基価18mgKOH/g、DIC社製、商品名:メガファックF-477
F-556:フッ素系オリゴマー、水酸基価14mgKOH/g、DIC社製、商品名:メガファックF-556
F-559:フッ素系オリゴマー、水酸基価11mgKOH/g、DIC社製、商品名:メガファックF-559
F-565:フッ素系オリゴマー、水酸基価0mgKOH/g、DIC社製、商品名:メガファックF-565
R-40:フッ素系オリゴマー、水酸基価0mgKOH/g、DIC社製、商品名:メガファックR-40
【0119】
【表1】
【0120】
<せん断力>
各例に係る粘着シートを幅10mm、長さ100mmのサイズにカットし、セパレータを剥離した後、前記粘着シートの粘着剤層の接着面積が、1cmになるように、上記アクリルフィルム(幅:25mm、長さ:100mm)に貼り合わせ、23℃で引張り速度0.06mm/minでせん断方向に引張り、そのときの最大荷重(N/cm)をせん断力とした。
【0121】
本発明の粘着シートは、前記粘着シートに用いられる粘着剤層の上記アクリルフィルム(例えば、アクリルフィルムから形成される偏光板)に対する23℃×50%RHでのせん断力が、5N/cm以上であることが好ましく、5~50N/cmであることがより好ましく、7~40N/cmであることが更に好ましい。前記せん断力が5N/cm以上に調整することにより、被着体に貼付後において、滑り(ズレ)、浮きや剥がれ等を抑制でき、カール調整性に優れ、好ましい態様となる。
【0122】
<低速剥離力の測定>
23℃×50%RHの環境下に24時間放置した後、幅25mm、長さ100mmにカットした粘着シートを、上記アクリルフィルム(幅:70mm、長さ:100mm)に0.25MPaの圧力、0.3m/minの速度でラミネートし、評価サンプルを作製した。上記ラミネート後、23℃×50%RHの環境下に30分間放置した後、万能引張試験機にて剥離速度0.3m/min(低速剥離)、剥離角度180°で剥離したときの低速剥離力(N/25mm)を測定した。測定は23℃×50%RHの環境下でおこなった。
【0123】
本発明の粘着シートは、前記粘着シートに用いられる粘着剤層の上記アクリルフィルム(例えば、アクリルフィルムから形成される偏光板)に対する23℃×50%RHでの180°ピール粘着力(引張速度0.3m/min:低速剥離力)が、0.15N/25mm以下であることが好ましく、0.01~0.15N/25mmであることがより好ましく、0.02~0.14N/25mmであることが更に好ましい。前記ピール粘着力(引張速度0.3m/min)を0.15N/25mm以下に調整することにより、粘着シート(表面保護フィルム)が不要となった場合に、剥離作業が容易(再剥離性)となり、被着体の損傷等も防止することができ、好ましい態様となる。
【0124】
<汚染の有無(耐汚染性)>
各例に係る粘着シートを幅50mm、長さ80mmのサイズにカットし、セパレータを剥離した後、上記アクリルフィルム(幅:70mm、長さ:100mm)に気泡を入れながらハンドローラーにて圧着し、評価サンプルを作製した。上記評価サンプルを70℃の環境下に120時間放置した後、粘着シートを被着体から手で剥離し、その際の被着体表面の気泡跡を目視にて観察した。なお、評価は、気泡跡が認められなかった場合を○(実用上問題なし)、暗室内蛍光灯下でのみ気泡跡が認められた場合を△(実用上問題なし)、通常室内蛍光灯下で気泡跡が認められた場合を×(実用上問題あり)とした。
【0125】
【表2】
【0126】
上記表2より、全ての実施例において、せん断力、及び、低速剥離力が所望の結果であり、カール調整性や軽剥離性(再剥離性)に優れ、更に、耐汚染性に優れることが確認できた。また、水酸基価が20以上のフッ素系オリゴマーを用いた実施例の場合、更にせん断力や耐汚染性に優れることが確認できた。
【0127】
一方、上記表2より、比較例1及び比較例2においては、水酸基価が1未満(水酸基価0)のフッ素系オリゴマーを用いたため、せん断力、及び、耐汚染性に劣り、比較例3では、フッ素系オリゴマーを使用しなかったため、低速剥離力が高く、軽剥離性(再剥離性)に劣ることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0128】
ここに開示される粘着シートは、液晶ディスプレイパネル、プラズマディスプレイパネル(PDP)、有機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ等の構成要素として用いられる光学部材の製造時、搬送時等に該光学部材を保護するための表面保護フィルムとして好適である。特に、液晶ディスプレイパネル用の偏光板、波長板、位相差板、光学補償フィルム、輝度向上フィルム、光拡散シート、反射シート等の光学部材に適用される表面保護フィルム(光学用表面保護フィルム)として有用である。
【符号の説明】
【0129】
1 :セパレータ付き粘着シート(表面保護フィルム)
2 :帯電防止処理フィルム
11:セパレータ
12:フッ素系オリゴマー塗布膜
13:粘着剤層
14:基材フィルム
15:帯電防止層
図1
図2