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特許7189688車両走行制御サーバ、車両走行制御方法、および車両制御装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】車両走行制御サーバ、車両走行制御方法、および車両制御装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/0965 20060101AFI20221207BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
G08G1/0965
G08G1/09 P
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018115265
(22)【出願日】2018-06-18
(65)【公開番号】P2019219796
(43)【公開日】2019-12-26
【審査請求日】2021-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100119987
【氏名又は名称】伊坪 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100122116
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩二
(72)【発明者】
【氏名】山本 賢
(72)【発明者】
【氏名】播磨 良幸
(72)【発明者】
【氏名】高橋 信哉
(72)【発明者】
【氏名】猪尾 宜弘
(72)【発明者】
【氏名】亀山 萌
【審査官】中田 善邦
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-033096(JP,A)
【文献】特開2008-108086(JP,A)
【文献】特開平10-086761(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G01C 21/00-21/36
B60W 40/08
A61B 5/16-5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信部を介して車両の識別子と前記車両の位置情報とを取得する車両位置取得部と、
前記通信部を介して事故現場の位置情報を取得する事故現場取得部と、
前記車両のうち、事故現場への緊急走行が認められた緊急車両の識別子を記憶する緊急車両記憶部と、
前記位置情報が前記事故現場から所定の距離内の位置を示し、かつ、前記識別子が前記緊急車両の識別子に該当しない車両に対し、前記通信部を介して走行の制限を要求する走行制御信号を送信する走行制限部と、を備える、車両走行制御サーバ。
【請求項2】
通信部を介して車両の識別子と前記車両の位置情報とを取得する車両位置取得部と、
前記通信部を介して事故現場の位置情報を取得する事故現場取得部と、
前記車両のうち、事故現場への緊急走行が認められた緊急車両の識別子を記憶する緊急車両記憶部と、
前記通信部を介して前記事故現場から所定の距離内における道路の幅である道路幅を取得する道路幅取得部と、
前記位置情報が前記事故現場から前記所定の距離内の位置を示す前記車両に対し、前記通信部を介して、当該車両が走行中の道路についての前記道路幅が所定値よりも小さい場合に所定速度以下での走行を許可する走行制御信号を送信し、前記道路幅が所定値よりも小さくない場合に走行を許可しない走行制御信号を送信する走行制限部と、を備え
前記走行制限部は、前記位置情報が前記事故現場から所定の距離内の位置を示し、かつ、前記識別子が前記緊急車両の識別子に該当しない車両に対して、前記走行制御信号を送信する、車両走行制御サーバ。
【請求項3】
前記道路幅取得部は、前記通信部を介して、地図上の位置と当該位置に基づいて特定される道路の道路幅とを関連づけて記憶する地図情報サーバに前記事故現場の位置情報を送信し、前記通信部を介して前記地図情報サーバから前記道路幅を取得する、請求項に記載の車両走行制御サーバ。
【請求項4】
前記道路幅取得部は、前記位置情報が前記事故現場から所定の距離内の位置を示す前記車両のうち、前記車両の周囲の画像に基づいて道路幅を計測する車両から、前記通信部を介して前記道路幅の情報を取得する、請求項に記載の車両走行制御サーバ。
【請求項5】
前記走行制御信号を送信してから所定時間が経過した場合、前記走行制御信号が送信された前記車両に対し、前記通信部を介して当該車両に対して前記走行の制限の解除を要求する制限解除制御信号を送信する制限解除部をさらに備える、請求項ないしのいずれか一項に記載の車両走行制御サーバ。
【請求項6】
前記制限解除部は、前記走行制御信号が送信された前記車両のアクセル開度を取得し、前記アクセル開度が閾値以下であることを条件として、当該車両に対して前記制限解除制御信号を送信する、請求項に記載の車両走行制御サーバ。
【請求項7】
通信部を介して車両の識別子と前記車両の位置情報とを取得する車両位置取得部と、
前記通信部を介して事故現場の位置情報を取得する事故現場取得部と、
前記車両のうち、事故による負傷者の医療機関への搬送のための事故現場への緊急走行が認められた救急車の識別子を記憶する救急車記憶部と、
前記位置情報が前記事故現場から所定の距離内の位置を示す前記車両に対して、走行の制限を要求する走行制御信号を送信する走行制限部と、
前記救急車から前記事故現場の対応が終了したことを示す対応終了通知を受信した場合、前記走行制御信号が送信された前記車両に対し、前記通信部を介して前記走行の制限の解除を要求する制限解除制御信号を送信する制限解除部と、を備える、車両走行制御サーバ。
【請求項8】
前記制限解除部は、前記事故現場に到着した前記救急車がサイレンを鳴動させて発進したことを示す通知を受信した場合、前記対応終了通知を受信したとみなして前記制限解除制御信号を送信する、請求項に記載の車両走行制御サーバ。
【請求項9】
前記制限解除部は、前記事故現場に到着した前記救急車が前記事故現場から前記所定の距離よりも離れたことを示す通知を受信した場合、前記対応終了通知を受信したとみなして前記制限解除制御信号を送信する、請求項に記載の車両走行制御サーバ。
【請求項10】
前記車両のうち、事故現場への緊急走行が認められた緊急車両の識別子を記憶する緊急車両記憶部をさらに備え、
前記制限解除部は、前記事故現場の対応が終了したことを示す通知を前記救急車以外の前記緊急車両から受信した場合、前記対応終了通知を受信したとみなして前記制限解除制御信号を送信する、請求項に記載の車両走行制御サーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両走行制御サーバ、車両走行制御方法、および車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両が衝突による事故を起こした時に、車両が事故を発生したことを自動的に送信して、車両に搭乗しているユーザを救護するシステムが提案されている。
【0003】
上述したようなシステムとして、先進事故自動通報システム(AACN:Advanced Automatic Collision Notification)が運用されている。先進事故自動通報システムとして、国内では、例えば、ヘルプネットというサービスが提供されている。
【0004】
ヘルプネットでは、車両は、エアバッグの作動により衝突事故の発生を検知すると、車両の位置および事故発生時の車両情報をセンタへ送信する。センタでは、受信した車両情報に基づいて、車両に搭乗しているユーザを救護する活動を開始する。
【0005】
車両が衝突した相手が歩行者の場合、負傷した歩行者を救護することが求められる。例えば、事故が発生した車両の搭乗者または周囲にいる人は、負傷した歩行者の救護活動を行うことになる。
【0006】
そこで、事故が発生した位置の周辺を走行する車両に対しては、事故を起こした車両のそばにいる人に注意して走行することが求められる。
【0007】
例えば、特許文献1は、衝突事故を起こした車両が警報を出力して、周囲の歩行者に対して警告する装置を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2014-141186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
事故を起こした車両の近くでは、負傷した歩行者、救助者、または車両の搭乗者等がおり、救護または避難のために人が道路上を移動する場合もある。
【0010】
そこで、事故が発生した位置の周辺を走行する車両が、事故を起こした車両の周囲にいる人と接触する2次被害を発生させないことが望まれる。
【0011】
しかし、特許文献1が提案するように、車両が警報を出力することでは、周囲を走行する車両の運転者に対して十分に注意を喚起できないおそれがある。
【0012】
本明細書では、車両事故の2次被害の発生を抑制する方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明にかかる第1の車両走行制御サーバは、通信部を介して車両の識別子と車両の位置情報とを取得する車両位置情報取得部と、通信部を介して事故現場の位置情報を取得する事故現場情報取得部と、車両のうち、事故現場への緊急走行が認められた緊急車両の識別子を記憶する緊急車両記憶部と、位置情報が事故現場から所定の距離内の位置を示し、かつ、識別子が緊急車両の識別子に該当しない車両に対し、通信部を介して走行の制限を要求する走行制御信号を送信する走行制限部と、を備えることを特徴とする。
【0014】
本発明にかかる第2の車両走行制御サーバは、通信部を介して車両の識別子と車両の位置情報とを取得する車両位置情報取得部と、通信部を介して事故現場の位置情報を取得する事故現場情報取得部と、位置情報が事故現場から所定の距離内の位置を示す車両に対して、走行の制限を要求する走行制御信号を送信する走行制限部と、走行制御信号を送信してから所定時間が経過した場合、走行制御信号が送信された車両に対し、通信部を介して走行の制限の解除を要求する制限解除制御信号を送信する制限解除部と、を備えることを特徴とする。
【0015】
また、本発明にかかる第2の車両走行制御サーバは、車両のうち、事故による負傷者の医療機関への搬送のための事故現場への緊急走行が認められた救急車の識別子を記憶する救急車記憶部をさらに備え、制限解除部は、救急車が事故現場に到達するまでに要する予想所要時間に基づき所定時間を定めることが好ましい。
【0016】
本発明にかかる第3の車両走行制御サーバは、通信部を介して車両の識別子と車両の位置情報とを取得する車両位置情報取得部と、通信部を介して事故現場の位置情報を取得する事故現場情報取得部と、通信部を介して事故現場から所定の距離内における道路の幅である道路幅を取得する道路幅取得部と、位置情報が事故現場から所定の距離内の位置を示す車両に対し、通信部を介して、当該車両が走行中の道路についての道路幅が所定値よりも小さい場合に所定速度以下での走行を許可する走行制御信号を送信し、道路幅が所定値よりも小さくない場合に走行を許可しない走行制御信号を送信する走行制限部と、を備えることを特徴とする。
【0017】
また、本発明にかかる第3の車両走行制御サーバにおいて、道路幅取得部は、通信部を介して、地図上の位置と当該位置に基づいて特定される道路の道路幅とを関連づけて記憶する地図情報サーバに事故現場の位置情報を送信し、通信部を介して地図情報サーバから道路幅を取得することが好ましい。
【0018】
また、本発明にかかる第3の車両走行制御サーバにおいて、道路幅取得部は、位置情報が事故現場から所定の距離内の位置を示す車両のうち、車両の周囲の画像に基づいて道路幅を計測する車両から、通信部を介して道路幅の情報を取得することが好ましい。
【0019】
また、本発明にかかる第3の車両走行制御サーバは、走行制御信号を送信してから所定時間が経過した場合、走行制御信号が送信された車両に対し、通信部を介して当該車両に対して走行の制限の解除を要求する制限解除制御信号を送信する制限解除部をさらに備えることが好ましい。
【0020】
また、本発明にかかる第3の車両走行制御サーバにおいて、制限解除部は、走行制御信号が送信された車両のアクセル開度を取得し、アクセル開度が閾値以下であることを条件として、当該車両に対して制限解除制御信号を送信することが好ましい。
【0021】
また、本発明にかかる第3の車両走行制御サーバは、車両のうち、事故現場への緊急走行が認められた緊急車両の識別子を記憶する緊急車両記憶部をさらに備え、走行制限部は、位置情報が事故現場から所定の距離内の位置を示し、かつ、識別子が緊急車両の識別子に該当しない車両に対して、走行制御信号を送信することが好ましい。
【0022】
本発明にかかる第4の車両走行制御サーバは、通信部を介して車両の識別子と車両の位置情報とを取得する車両位置情報取得部と、通信部を介して事故現場の位置情報を取得する事故現場情報取得部と、車両のうち、事故による負傷者の医療機関への搬送のための事故現場への緊急走行が認められた救急車の識別子を記憶する救急車記憶部と、位置情報が事故現場から所定の距離内の位置を示す車両に対して、走行の制限を要求する走行制御信号を送信する走行制限部と、救急車から事故現場の対応が終了したことを示す対応終了通知を受信した場合、走行制御信号が送信された車両に対し、通信部を介して走行の制限の解除を要求する制限解除制御信号を送信する制限解除部と、を備えることを特徴とする。
【0023】
また、本発明にかかる第4の車両走行制御サーバにおいて、制限解除部は、事故現場に到着した救急車がサイレンを鳴動させて発進したことを示す通知を受信した場合、対応終了通知を受信したとみなして制限解除制御信号を送信することが好ましい。
【0024】
また、本発明にかかる第4の車両走行制御サーバにおいて、制限解除部は、事故現場に到着した救急車が事故現場から所定の距離よりも離れたことを示す通知を受信した場合、対応終了通知を受信したとみなして制限解除制御信号を送信することが好ましい。
【0025】
また、本発明にかかる第4の車両走行制御サーバは、車両のうち、事故現場への緊急走行が認められた緊急車両の識別子を記憶する緊急車両記憶部をさらに備え、制限解除部は、事故現場の対応が終了したことを示す通知を救急車以外の緊急車両から受信した場合、対応終了通知を受信したとみなして制限解除制御信号を送信することが好ましい。
【0026】
本発明にかかる車両走行制御方法は、車両走行制御サーバにより車両の走行を制御する車両走行制御方法であって、車両走行制御サーバが、車両を一意に識別する識別子と車両の位置情報とを取得する車両位置情報取得ステップと、車両走行制御サーバが、事故現場の位置情報を取得する事故現場情報取得ステップと、車両走行制御サーバが、位置情報が事故現場から所定の距離内の位置を示す車両に、当該車両の走行中の道路の道路幅の情報を要求する道路幅要求信号を送信する道路幅要求ステップと、車両が、道路幅要求信号を受信すると、車両の周囲の画像に基づいて周囲の道路の道路幅を計測するステップと、車両が、道路幅を車両走行制御サーバに送信する道路幅送信ステップと、車両走行制御サーバが、受信した道路幅に基づいて、車両が実行すべき走行の制限を決定する走行制限決定ステップと、車両走行制御サーバが、位置情報が事故現場から所定の距離内の位置を示す車両に、決定された走行の制限を要求する走行制御信号を送信する走行制限要求ステップと、車両が、受信した走行制御信号に基づいて、走行の制限を実行する制限走行ステップと、を含むことを特徴とする。
【0027】
本発明にかかる車両制御装置は、車両を制御する車両制御装置であって、現在位置の情報を取得する位置情報取得部と、車両を一意に識別する識別子とともに現在位置の情報を車両走行制御サーバに送信する位置情報送信部と、周囲の画像を取得する画像取得部と、取得した画像に基づいて周囲の道路の道路幅を計測する道路幅計測部と、計測した道路幅の情報を車両走行制御サーバに送信する道路幅送信部と、車両走行制御サーバから走行の制限を要求する走行制御信号を受信する制御信号受信部と、受信した走行制御信号に基づいて、走行の制限を実行する走行制御部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明の車両走行制御サーバによれば、車両事故の2次被害の発生を抑制することができる。
【0029】
本発明の車両走行制御方法によれば、車両事故の2次被害の発生を抑制することができる。
【0030】
本発明の車両制御装置によれば、車両事故の2次被害の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】車両走行制御システムの動作概要図である。
図2】第1実施形態の車両走行制御サーバ2の概略構成を示す模式図である。
図3】第1実施形態の車両3のハードウェア模式図である。
図4】第1実施形態の車両制御装置30の概略構成を示す図である。
図5】第1実施形態の車両走行制御サーバ2の処理フローチャートである。
図6】第2実施形態の車両走行制御サーバ5の概略構成を示す模式図である。
図7】第2実施形態の車両走行制御サーバ5の処理フローチャートである。
図8】第3実施形態の車両走行制御サーバ6の概略構成を示す模式図である。
図9】第3実施形態の車両3′のハードウェア模式図である。
図10】第3実施形態の車両制御装置37の概略構成を示す図である。
図11】第3実施形態の車両走行制御システムにおいて、車両走行制御サーバ6が車両制御装置37から道路幅の情報を取得する場合の動作シーケンス図である。
図12】第3実施形態の車両走行制御サーバ6における走行制限決定処理のフローチャートである。
図13】第4実施形態の車両走行制御サーバ7の概略構成を示す模式図である。
図14】第4実施形態の車両走行制御サーバ7の処理フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面を参照して車両走行制御サーバ、車両走行制御方法、および車両制御装置について詳細に説明する。ただし、本発明は図面または以下に記載される実施形態に限定されないことを理解されたい。
【0033】
本発明にかかる車両走行制御サーバは、事故現場の位置情報および車両の位置情報を取得し、事故現場から所定の距離内にある車両から選択された車両に対し、所定の条件に従って走行の制限を要求する。これにより、車両走行制御サーバは、緊急車両による事故への適切な対応を妨げないように車両の走行を制御し、車両事故の2次被害の発生を抑制することができる。
【0034】
図1は、車両走行制御システムの動作概要図である。
【0035】
車両走行制御システム1は、車両走行制御サーバ2と、車両3a~3d(以下、あわせて「車両3」とも言う)とを有する。車両3a~3dのうち、車両3aは事故現場へ緊急走行する緊急車両である。車両走行制御サーバ2と車両3とは、ネットワーク4を介して接続される。
【0036】
車両走行制御サーバ2は、車両3の位置情報を取得する。そして、車両走行制御サーバ2は、事故現場Pの位置情報を取得すると、事故現場Pから所定の距離内にある車両3b~3dに対し、所定の条件に従って走行の制限を要求する。これにより、車両走行制御サーバ2は、事故現場Pへ緊急走行する緊急車両3aによる事故への適切な対応を妨げないように、車両3の走行を制御することができる。
【0037】
ネットワーク4には、車両走行制御サーバ2および車両3が接続される。ネットワーク4は、例えばTCP/IP(Transport Control Protocol / Internet Protocol)による通信が行われるインターネットである。車両3は、4G(4th Generation)回線網などの携帯電話回線網を介してネットワーク4内の基地局と接続される。
【0038】
(第1実施形態)
図2は、第1実施形態の車両走行制御サーバ2の概略構成を示す模式図である。
【0039】
車両走行制御サーバ2は、車両3と接続し、車両3から受信する車両識別子および位置情報に応じて、走行制御信号を車両3に送信する。そのために、車両走行制御サーバ2は、サーバ通信部21と、サーバ記憶部22と、サーバ処理部23とを備える。
【0040】
サーバ通信部21は、車両走行制御サーバ2をネットワーク4に接続するための通信インタフェース回路を有する。サーバ通信部21は、車両3から受信したデータをサーバ処理部23に供給する。また、サーバ通信部21は、サーバ処理部23から供給されたデータを車両3に送信する。
【0041】
サーバ記憶部22は、例えば、半導体メモリ、磁気ディスク装置および光ディスク装置のうちの少なくとも1つを有する。サーバ記憶部22は、サーバ処理部23による処理に用いられるドライバプログラム、オペレーティングシステムプログラム、アプリケーションプログラム、データ等を記憶する。例えば、サーバ記憶部22は、ドライバプログラムとして、サーバ通信部21を制御する通信デバイスドライバプログラム等を記憶する。各種プログラムは、例えばCD-ROM(Compact Disc Read-Only Memory)、DVD-ROM(DVD Read-Only Memory)等のコンピュータ読み取り可能な可搬型記録媒体から、公知のセットアッププログラム等を用いてサーバ記憶部22にインストールされてよい。
【0042】
サーバ処理部23は、1以上のプロセッサおよびその周辺回路を備える。サーバ処理部23は、車両走行制御サーバ2の全体的な動作を統括的に制御するものであり、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。サーバ処理部23は、車両走行制御サーバ2の各種処理がサーバ記憶部22に記憶されているプログラム等に基づいて適切な手段で実行されるように、サーバ通信部21等の動作を制御する。サーバ処理部23は、サーバ記憶部22に記憶されているプログラム(オペレーティングシステムプログラム、ドライバプログラム、アプリケーションプログラム等)に基づいて処理を実行する。また、サーバ処理部23は、複数のプログラム(アプリケーションプログラム等)を並列に実行することができる。
【0043】
サーバ処理部23は、車両位置取得部231と、事故現場取得部232と、緊急車両記憶部233と、走行制限部234とを有する。サーバ処理部23が有するこれらの各部は、サーバ処理部23が有するプロセッサ上で実行されるプログラムによって実装される機能モジュールである。あるいは、サーバ処理部23が有するこれらの各部は、独立した集積回路、マイクロプロセッサ、またはファームウェアとして車両走行制御サーバ2に実装されてもよい。
【0044】
車両位置取得部231は、サーバ通信部21を介して、車両3から車両の識別子と車両の位置情報とを取得する。サーバ処理部23は、取得した識別子と位置情報とを関連づけてサーバ記憶部22に記憶する。
【0045】
事故現場取得部232は、サーバ通信部21を介して事故現場の位置情報を取得する。事故現場取得部232は、車両3からシートベルトが作動したことを示す情報とともに当該車両の位置情報を取得したときに、当該車両の位置を事故現場の位置情報として取得する。また、事故現場取得部232は、ネットワーク4に接続された図示しない救急センタサーバから事故現場の位置情報を取得してもよい。
【0046】
緊急車両記憶部233は、車両3の識別子のうち、事故現場への緊急走行が認められた緊急車両の識別子を記憶する。緊急車両には、事故による負傷者の医療機関への搬送を行う救急車、事故により発生した火災の消火を行う消防車、および事故原因の特定のための現場検証を行う警察車等が含まれる。緊急車両記憶部233は、緊急車両の識別子を、救急車、消防車、警察車両といった緊急車両の種別ごとに記憶してもよい。
【0047】
走行制限部234は、位置情報を取得した車両3のうち、位置情報が事故現場から所定の距離(例えば100m)内の位置を示し、かつ、識別子が緊急車両の識別子に該当しない車両に対して走行の制限を要求する走行制御信号を、サーバ通信部21を介して送信する。
【0048】
図3は、第1実施形態の車両3のハードウェア模式図である。
【0049】
車両3は、車両制御装置30と、GPS(Global Positioning System)受信機31と、データ通信モジュール(Data Communication Module、DCM)32と、運転制御装置33と、エンジン34と、ブレーキ35と、変速機36とを有する。
【0050】
車両制御装置30は、GPS受信機31が取得した車両3の位置情報を、データ通信モジュール32を介して車両走行制御サーバ2に送信する。また、車両制御装置30は、データ通信モジュール32を介して受信した走行制御信号に基づいて、運転制御装置33に走行の制限を要求する。車両制御装置30の詳細な構成については後述する。
【0051】
GPS受信機31は、受信したGPS衛星からの信号に基づいて現在位置を特定する。GPS受信機31は、車両制御装置30に接続されており、車両制御装置30は、GPS受信機31により車両3の現在位置を検出することができる。GPS受信機31が受信する信号はGPS衛星からのものに限定されず、GLONASS、Galileo、Compassなどの衛星測位システムに含まれる衛星からの信号であればよい。
【0052】
データ通信モジュール32は、ネットワーク4に接続するための通信インタフェースを有する。データ通信モジュール32は車両走行制御サーバ2などの外部装置との通信を実行する。データ通信モジュール32は、車両制御装置30に接続されており、車両制御装置30は、データ通信モジュール32を介して車両走行制御サーバ2などのネットワーク4に接続された機器との間でデータを送受信することができる。
【0053】
運転制御装置33は、車両3のエンジン34、ブレーキ35、および変速機36と通信インタフェースを介して接続されており、車両3のエンジン34、ブレーキ35、および変速機36の動作を電子的に制御する。運転制御装置33は、ECU(Electronic Control Unit)として車両3に搭載される。運転制御装置33は、複数のプロセッサで実現されてもよく、専用回路により実現されてもよい。
【0054】
運転制御装置33は車両制御装置30に接続されている。車両制御装置30は、運転制御装置33に車両3の走行の制限を要求し、運転制御装置33は、車両制御装置30からの要求に従って車両3のエンジン34等の動作を制御することにより、車両3の走行を制御する。
【0055】
図4は、第1実施形態の車両制御装置30の概略構成を示す図である。
【0056】
車両制御装置30は、入力部301と、出力部302と、記憶部303と、演算部304とを有する。車両制御装置30は、ECUとして車両3に搭載される。
【0057】
入力部301は、GPS受信機31およびデータ通信モジュール32からデータを受信する回路である。入力部301は、受信したデータを演算部304に供給する。
【0058】
出力部302は、データ通信モジュール32および運転制御装置33にデータを送信する回路である。出力部302は、演算部304から供給された制御信号に基づいて、データ通信モジュール32および運転制御装置33にデータを送信する。
【0059】
記憶部303は、車両3を一意に識別する識別子を記憶する。記憶部303は、演算部304からの要求に応じて、演算部304に識別子を供給する。また、記憶部303は、演算部304が実行する処理に用いるデータを記憶してもよい。
【0060】
演算部304は、入力部301から供給された信号に基づき演算を行い、出力部302に信号を出力する。演算部304は、所定のプログラムを実行することにより演算を実行するプロセッサを有する。
【0061】
演算部304は、位置情報取得部3041と、位置情報送信部3042と、制御信号受信部3043と、走行制御部3044とを有する。演算部304が有するこれらの各部は、演算部304が有するプロセッサ上で実行されるプログラムによって実装される機能モジュールである。あるいは、演算部304が有するこれらの各部は、専用回路により実現されてもよい。
【0062】
位置情報取得部3041は、車両3の現在位置の情報を、GPS受信機31を介して取得する。
【0063】
位置情報送信部3042は、取得した現在位置の情報を、記憶部303に記憶された識別子とともに、データ通信モジュール32を介して車両走行制御サーバ2に送信する。
【0064】
制御信号受信部3043は、車両走行制御サーバ2から、データ通信モジュール32を介して、走行の制限を要求する走行制御信号を受信する。
【0065】
走行制御部3044は、受信した走行制御信号に基づいて運転制御装置33にデータを送信し、走行の制限を実行する。
【0066】
図5は、第1実施形態の車両走行制御サーバ2の処理フローチャートである。
【0067】
まず、車両位置取得部231は、サーバ通信部21を介して、車両3から車両の識別子と車両の位置情報とを取得する(ステップS11)。サーバ処理部23は、取得した識別子と位置情報とを関連づけてサーバ記憶部22に記憶する。
【0068】
次に、事故現場取得部232は、サーバ通信部21を介して事故現場の位置情報を取得する(ステップS12)。
【0069】
次に、走行制限部234は、車両3から取得した位置情報が事故現場から所定の距離内の位置を示すか否かを判定する(ステップS13)。
【0070】
走行制限部234は、車両3から取得した位置情報が事故現場から所定の距離内の位置を示さないと判定した場合(ステップS13:N)、処理を終了する。
【0071】
一方、走行制限部234は、車両3から取得した位置情報が事故現場から所定の距離内の位置を示すと判定した場合(ステップS13:Y)、車両3から取得した識別子が緊急車両の識別子に該当するか否かを判定する(ステップS14)。
【0072】
走行制限部234は、車両3から取得した識別子が緊急車両の識別子に該当すると判定した場合(ステップS14:Y)、処理を終了する。
【0073】
一方、走行制限部234は、車両3から取得した識別子が緊急車両の識別子に該当しないと判定した場合(ステップS14:N)、当該車両3に対して走行の制限を要求する走行制御信号を、サーバ通信部21を介して送信し(ステップS15)、処理を終了する。
【0074】
サーバ処理部23は、複数の車両3のそれぞれについて、上述した一連の処理を実行する。また、サーバ処理部23は、所定の時間間隔で、複数の車両3に対する上述した一連の処理を繰り返し実行する。
【0075】
以上のように処理を実行することにより、第1実施形態にかかる車両走行制御サーバ2は、事故現場近傍における緊急車両の走行の制限を行わないため、緊急車両による事故への適切な対応を可能とし、2次被害の発生を抑制する。
【0076】
走行制限部234は、ステップS13の判定の前にステップS14の判定を実行してもよい。
【0077】
また、車両走行制御サーバ2は、自動運転車両記憶部と、運転モード取得部とをさらに有してもよい。自動運転車両記憶部は、車両3のうち自動運転モードでの走行が可能な自動運転車両の識別子を記憶する。運転モード記憶部は、自動運転車両である車両3から、サーバ通信部21を介して、車両3が自動運転モードであるか否かを示す運転モードを取得部する。
【0078】
かかる車両走行制御サーバ2において、走行制限部234は、走行制限信号を、自動運転モードでない自動運転車両に送信し、自動運転モードである自動運転車両には送信しない。このように処理することにより、自動運転モードである自動運転車両の走行を継続させ、手動運転モードである(自動運転モードでない)自動運転車両の走行を制限することができる。
【0079】
(第2実施形態)
第2実施形態の車両走行制御システムは、車両走行制御サーバ5と、車両3とを有し、車両走行制御サーバ5と車両3とはネットワーク4を介して接続される。車両3およびネットワーク4は、第1実施形態と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0080】
図6は、第2実施形態の車両走行制御サーバ5の概略構成を示す模式図である。
【0081】
車両走行制御サーバ5は、車両3と接続し、車両3から受信する車両識別子および位置情報に応じて、走行制御信号を車両3に送信する。そのために、車両走行制御サーバ5は、サーバ通信部51と、サーバ記憶部52と、サーバ処理部53とを備える。サーバ通信部51およびサーバ記憶部52は、第1実施形態のサーバ通信部21およびサーバ記憶部22と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0082】
サーバ処理部53は、車両位置取得部531と、事故現場取得部532と、救急車記憶部533と、走行制限部534と、制限解除部535とを有する。車両位置取得部531、事故現場取得部532、および走行制限部534は、第1実施形態の車両走行制御サーバ2における車両位置取得部231、事故現場取得部232、および走行制限部234と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0083】
救急車記憶部533は、車両3の識別子のうち、事故による負傷者の医療機関への搬送を行うための事故現場への緊急走行が認められた救急車の識別子を記憶する。
【0084】
制限解除部535は、走行制限部534が走行制御信号を送信してから所定時間(例えば10分間)が経過した場合、走行制御信号が送信された車両に対して、サーバ通信部51を介して走行の制限の解除を要求する制限解除制御信号を送信する。
【0085】
所定時間は、車両走行制御サーバ5の運営者により適宜設定され、サーバ記憶部52に記憶される。
【0086】
また、制限解除部535は、救急車が事故現場に到達するまでに要する予想所要時間に基づいて所定時間を定めてもよい。救急車の予想所要時間は、事故現場から最寄りの消防署までの距離Dを、救急車の平均走行速度Vで除する(D/V)ことによって求めることができる。
【0087】
このとき、制限解除部535は、道路状況を考慮して予想所要時間を求めてもよい。例えば、救急車が事故の発生した車線を走行して事故現場に到達する場合、事故により生ずる渋滞の影響を受けることが想定される。そのため、この場合の予想所要時間を求めるための平均走行速度V1を、現実の平均走行時間Vよりも小さく(V1<V)設定してよい。また、救急車が事故現場に到達するために事故の発生していない車線を走行して事故現場に到達する場合であって、走行する道路が中央分離帯等により車線が分離されていない道路である場合、事故の発生していない車線であっても渋滞の影響を受けると想定される。そのため、この場合の平均走行速度V2を、現実の平均走行速度Vと事故現場と同一車線のときの予想所要時間を求めるための平均走行速度V1との間に(V1<V2<V)設定してよい。
【0088】
救急車の予想所要時間に基づいて所定時間を定めることにより、車両走行制御サーバ5は、救急車の到達により必要な救護が開始された後に、周辺車両の走行を解除する。これにより、車両走行制御サーバ5は、事故現場周辺での2次被害の発生を適切に抑制しつつ、事故現場周辺での走行の制限により生ずる交通渋滞の早期解消が可能となり、事故現場から病院に負傷者を搬送する救急車の走行時間の短縮を図ることができる。
【0089】
図7は、第2実施形態の車両走行制御サーバ5の処理フローチャートである。
【0090】
まず、車両位置取得部531は、サーバ通信部51を介して、車両3から車両の識別子と車両の位置情報とを取得する(ステップS21)。サーバ処理部53は、取得した識別子と位置情報とを関連づけてサーバ記憶部52に記憶する。
【0091】
次に、事故現場取得部532は、サーバ通信部51を介して事故現場の位置情報を取得する(ステップS22)。
【0092】
次に、走行制限部534は、車両3から取得した位置情報が事故現場から所定の距離内の位置を示すか否かを判定する(ステップS23)。
【0093】
走行制限部534は、車両3から取得した位置情報が事故現場から所定の距離内の位置を示さないと判定した場合(ステップS23:N)、処理を終了する。
【0094】
一方、走行制限部534は、車両3から取得した位置情報が事故現場から所定の距離内の位置を示すと判定した場合(ステップS23:Y)、当該車両3に対して走行の制限を要求する走行制御信号を、サーバ通信部51を介して送信する(ステップS24)。
【0095】
次に、制限解除部535は、走行制限部534が走行制御信号を送信してから所定時間が経過したか否かを判定する(ステップS25)。
【0096】
制限解除部535は、走行制限部534が走行制御信号を送信してから所定時間が経過していないと判定した場合(ステップS25:N)、処理を終了する。
【0097】
制限解除部535は、走行制限部534が走行制御信号を送信してから所定時間が経過したと判定した場合(ステップS25:Y)、走行制御信号が送信された車両に対して、サーバ通信部51を介して走行の制限の解除を要求する制限解除制御信号を送信し(ステップS26)、処理を終了する。
【0098】
サーバ処理部53は、複数の車両3のそれぞれについて、上述した一連の処理を実行する。また、サーバ処理部53は、所定の時間間隔で、複数の車両3に対する上述した一連の処理を繰り返し実行する。
【0099】
以上のように処理を実行することにより、第2実施形態にかかる車両走行制御サーバ5は、事故現場近傍における車両の走行の制限を適切なタイミングで解除するため、車両の走行制限により生ずる渋滞を解消し、2次被害の発生を抑制することができる。
【0100】
(第3実施形態)
第3実施形態の車両走行制御システムは、車両走行制御サーバ6と、車両3′とを有し、車両走行制御サーバ6と車両3′とはネットワーク4を介して接続される。ネットワーク4は、第1実施形態と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0101】
図8は、第3実施形態の車両走行制御サーバ6の概略構成を示す模式図である。
【0102】
車両走行制御サーバ6は、車両3と接続し、車両3から受信する車両識別子および位置情報に応じて、走行制御信号を車両3に送信する。そのために、車両走行制御サーバ6は、サーバ通信部61と、サーバ記憶部62と、サーバ処理部63とを備える。サーバ通信部61およびサーバ記憶部62は、第1実施形態のサーバ通信部21およびサーバ記憶部22と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0103】
サーバ処理部63は、車両位置取得部631と、事故現場取得部632と、道路幅取得部633と、走行制限部634とを有する。車両位置取得部631および事故現場取得部632は、第1実施形態のサーバ処理部23における車両位置取得部231および事故現場取得部232と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0104】
道路幅取得部633は、サーバ通信部61を介して、事故現場から所定の距離内における道路の幅である道路幅を取得する。
【0105】
走行制限部634は、位置情報が事故現場から所定の距離内の位置を示す車両3に対し、サーバ通信部61を介して、当該車両が走行中の道路についての道路幅が所定値(例えば2.5m)よりも小さい場合に所定速度(例えば時速5km)以下での走行を許可する走行制御信号を送信する。一方、走行制限部634は、道路幅が所定値よりも小さくない場合に、車両3に対しサーバ通信部61を介して走行を許可しない走行制御信号を送信する。
【0106】
道路幅の狭い道路で車両3が停止していると、緊急車両がその道路を通行できない。走行制限部634は、そのような道路上にある車両3に対して走行の制限を一部緩和し、2次被害の発生を抑制可能な比較的低速での走行を許可し、より道路幅の大きい道路への移動を促す。これにより、緊急車両は道路幅の狭い道路で停止車両に走行を阻害されることなく、事故現場に到達することができる。
【0107】
道路幅取得部633は、サーバ通信部61を介して地図情報サーバに事故現場の位置情報を送信し、サーバ通信部61を介して道路幅の情報を取得してもよい。地図情報サーバは、地図上の位置と当該位置に基づいて特定される道路の道路幅とを関連づけて記憶し、ネットワーク4に接続されている。
【0108】
道路幅取得部633が地図情報サーバから道路幅の情報を取得することにより、車両走行制御サーバ6は、車両走行制御システムに特段の構成を追加することなく事故現場の周辺の道路の道路幅の情報を取得することができる。
【0109】
また、道路幅取得部633は、位置情報が事故現場から所定の距離内の位置を示す車両のうち、車両周辺の画像に基づいて道路幅を計測する車両3′から、サーバ通信部61を介して道路幅の情報を取得してもよい。
【0110】
道路幅取得部633が車両3′から道路幅の情報を取得することにより、車両走行制御サーバ6は、実際に計測された道路幅に基づいて車両3′の走行を適切に制御することができる。
【0111】
図9は、第3実施形態の車両3′のハードウェア模式図である。
【0112】
車両3′は、車両制御装置30に代えて車両制御装置37を有し、さらにカメラ38を有する点のみが第1実施形態の車両3と相違する車両である。車両制御装置37については後述する。
【0113】
カメラ38は、車外の画像をデータとして取得する。カメラ38は、車両制御装置37に接続されており、車両制御装置37は、カメラ38により車両3′の周囲の画像を取得することができる。
【0114】
図10は、第3実施形態の車両制御装置37の概略構成を示す図である。
【0115】
車両制御装置37は、入力部371と、出力部372と、記憶部373と、演算部374とを有する。車両制御装置37は、ECUとして車両3′に搭載される。入力部371、出力部372、および記憶部373は、第1実施形態の車両制御装置30における入力部301、出力部302、および記憶部303と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0116】
演算部374は、位置情報取得部3741と、位置情報送信部3742と、制御信号受信部3743と、走行制御部3744と、画像取得部3745と、道路幅計測部3746と、道路幅送信部3747とを有する。位置情報取得部3741、位置情報送信部3742、制御信号受信部3743、および走行制御部3744は、第1実施形態の車両制御装置30における位置情報取得部3041、位置情報送信部3042、制御信号受信部3043、および走行制御部3044と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0117】
画像取得部3745は、カメラ38が撮像した周囲の画像を、入力部371を介して取得する。
【0118】
道路幅計測部3746は、画像取得部3745が取得した周囲の画像に基づいて、車両3′の周囲の道路の道路幅を計測する。道路幅計測部3746は、例えば取得した画像から交通標識または車道外側線といった基準オブジェクトを検出し、予め記憶された基準オブジェクトの現実のサイズと対比することにより、周囲の画像に基づいて道路幅を計測することができる。
【0119】
道路幅送信部3747は、計測した周囲の道路の道路幅を、出力部372およびデータ通信モジュール32を介して車両走行制御サーバ6に送信する。
【0120】
図10は、第3実施形態の車両走行制御システムにおいて、車両走行制御サーバ6が車両制御装置37から道路幅の情報を取得する場合の動作シーケンス図である。
【0121】
まず、車両走行制御サーバ6の車両位置取得部631は、サーバ通信部61を介して、車両3′から車両の識別子と車両の位置情報とを取得する(ステップS31)。サーバ処理部63は、取得した識別子と位置情報とを関連づけてサーバ記憶部62に記憶する。
【0122】
次に、車両走行制御サーバ6の事故現場取得部632は、サーバ通信部61を介して事故現場の位置情報を取得する(ステップS32)。
【0123】
次に、車両走行制御サーバ6の道路幅取得部633は、位置情報が事故現場から所定の距離内の位置を示す車両3′の車両制御装置37に、サーバ通信部61を介して道路幅を要求する(ステップS33)。
【0124】
車両制御装置37の道路幅計測部3746は、道路幅の要求を受信すると、画像取得部3745が取得した周囲の画像に基づいて、車両3′の周囲の道路の道路幅を計測する(ステップS34)。
【0125】
次に、車両制御装置37の道路幅送信部3747は、計測した周囲の道路における道路幅の情報を、出力部372およびデータ通信モジュール32を介して車両走行制御サーバ6に送信する(ステップS35)。
【0126】
車両走行制御サーバ6の走行制限部634は、サーバ通信部61を介して道路幅の情報を受信すると、車両3′に要求する走行の制限を決定する(ステップS36)。走行制限決定処理の詳細は後述する。
【0127】
次に、車両走行制御サーバ6の走行制限部634は、サーバ通信部61を介して走行制御信号を車両3′に送信する(ステップS37)。
【0128】
車両制御装置37の走行制御部3744は、走行制御信号を受信すると、受信した走行制御信号に基づいて、車両3′の走行の制限を実行する(ステップS38)。
【0129】
サーバ処理部63は、複数の車両3′のそれぞれについて、上述した一連の処理を実行する。また、サーバ処理部63は、所定の時間間隔で、複数の車両3′に対する上述した一連の処理を繰り返し実行する。
【0130】
図11は、第3実施形態の車両走行制御サーバ6における走行制限決定処理のフローチャートである。
【0131】
まず、走行制限部634は、車両3′から取得した位置情報が事故現場から所定の距離内の位置を示すか否かを判定する(ステップS361)。
【0132】
走行制限部634は、車両3′から取得した位置情報が事故現場から所定の距離内の位置を示さないと判定した場合(ステップS361:N)、走行制限決定処理を終了する。
【0133】
一方、走行制限部634は、車両3′から取得した位置情報が事故現場から所定の距離内の位置を示すと判定した場合(ステップS361:Y)、車両3′が走行中の道路についての道路幅が所定値よりも小さいか否かを判定する(ステップS362)。
【0134】
走行制限部634は、車両3′が走行中の道路についての道路幅が所定値よりも小さいと判定すると(ステップS362:Y)、「所定速度以下での走行」を、車両3′に要求する走行の制限として決定し(ステップS363)、走行制限決定処理を終了する。
【0135】
一方、走行制限部634は、車両3′が走行中の道路についての道路幅が所定値よりも小さくないと判定すると(ステップS362:N)、「走行不許可」を、車両3′に要求する走行の制限として決定し(ステップS364)、走行制限決定処理を終了する。
【0136】
以上のように処理を実行することにより、第3実施形態にかかる車両走行制御サーバ6は、事故現場の周辺の道路の道路幅に応じて走行の制限の内容を決定する。これにより、車両走行制御サーバ6は、緊急車両が道路幅の狭い道路で停止車両に走行を阻害されることを回避し、緊急車両の事故現場への迅速な到達を可能とする。このようにして、車両走行制御サーバ6は、車両事故の2次被害の発生を抑制する。
【0137】
なお、車両走行制御システムは、上述した第3実施形態の一部を変形して実施することも可能である。
【0138】
例えば、車両走行制御サーバ6は、走行制御信号を受信してから所定時間が経過した場合、走行制御信号が送信された車両に対し、サーバ通信部61を介して当該車両に対して走行の制限の解除を要求する制限解除制御信号を送信する制限解除部をさらに備えてもよい。
【0139】
制限解除部をさらに備えるように車両走行制御サーバ6を構成すると、事故現場近傍における車両の走行の制限が適切なタイミングで解除されるため、車両走行制御サーバ6は、車両の走行制限により生ずる渋滞を解消することができる。
【0140】
上述の制限解除部は、さらに、サーバ通信部61を介して走行制御信号が送信された車両のアクセル開度を取得し、アクセル開度が閾値以下であることを条件として、当該車両に対して制限解除信号を送信してもよい。
【0141】
走行制御信号が送信された車両3では、車両制御装置30により走行が制限されているため、運転者がアクセルを踏み込んでアクセル開度を大きくしても、車両は停止または所定速度以下での走行を行う。運転者がアクセルを踏み込んだ状態で車両が制限解除信号を受信すると、車両における走行の制御が終了し、車両は現実のアクセル開度に応じた走行、すなわち急発進を開始するため、危険である。上述のように制限解除部を構成すると、車両走行制御サーバ6は、アクセル開度が閾値以下であることを条件として制限解除信号を送信するため、急発進による事故発生のリスクを小さくすることができる。
【0142】
また、車両走行制御サーバ6は、緊急車両の識別子を記憶する緊急車両記憶部をさらに備えてもよい。このとき、走行制限部634は、位置情報が事故現場から所定の距離内の位置を示し、かつ、識別子が緊急車両の識別子に該当しない車両に対して、走行制御信号を送信する。
【0143】
このような車両走行制御サーバ6によると、事故現場近傍における緊急車両の走行の制限を行わないため、緊急車両による事故への適切な対応が可能となる。
【0144】
また、車両走行制御サーバ6の道路幅取得部633が地図情報サーバから道路幅の情報を取得するよう構成されている場合、車両3′は上述の構成である必要はなく、第1実施形態における車両3と同様の構成であってもよい。
【0145】
(第4実施形態)
第4実施形態の車両走行制御システムは、車両走行制御サーバ7と、車両3とを有し、車両走行制御サーバ7と車両3とはネットワーク4を介して接続される。車両3およびネットワーク4は、第1実施形態と同様であるので、詳細な説明を省略する。
【0146】
図12は、第4実施形態の車両走行制御サーバ7の概略構成を示す模式図である。
【0147】
車両走行制御サーバ7は、車両3と接続し、車両3から受信する車両識別子および位置情報に応じて、走行制御信号を車両3に送信する。そのために、車両走行制御サーバ7は、サーバ通信部71と、サーバ記憶部72と、サーバ処理部73とを備える。サーバ通信部71およびサーバ記憶部72は、第1実施形態のサーバ通信部21およびサーバ記憶部22と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0148】
サーバ処理部73は、車両位置取得部731と、事故現場取得部732と、救急車記憶部733と、走行制限部734と、制限解除部735とを有する。車両位置取得部731、事故現場取得部732、および走行制限部734は、第1実施形態のサーバ処理部23における車両位置取得部231、事故現場取得部232、および走行制限部234と同様であるので、詳細な説明は省略する。また、救急車記憶部733は、第2実施形態のサーバ処理部53における救急車記憶部533と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0149】
制限解除部735は、救急車から事故現場の対応が終了したことを示す対応終了通知を受信した場合、走行制御信号が送信された車両に対し、サーバ通信部71を介して走行の制限の解除を要求する制限解除制御信号を送信する。
【0150】
図13は、第4実施形態の車両走行制御サーバ7の処理フローチャートである。
【0151】
まず、車両位置取得部731は、サーバ通信部71を介して、車両3から車両の識別子と車両の位置情報とを取得する(ステップS41)。サーバ処理部73は、取得した識別子と位置情報とを関連づけてサーバ記憶部72に記憶する。
【0152】
次に、事故現場取得部732は、サーバ通信部71を介して事故現場の位置情報を取得する(ステップS42)。
【0153】
次に、走行制限部734は、車両3から取得した位置情報が事故現場から所定の距離内の位置を示すか否かを判定する(ステップS43)。
【0154】
走行制限部734は、車両3から取得した位置情報が事故現場から所定の距離内の位置を示さないと判定した場合(ステップS43:N)、処理を終了する。
【0155】
一方、走行制限部734は、車両3から取得した位置情報が事故現場から所定の距離内の位置を示すと判定した場合(ステップS43:Y)、当該車両3に対して走行の制限を要求する走行制御信号を、サーバ通信部71を介して送信する(ステップS44)。
【0156】
次に、制限解除部735は、サーバ通信部71を介して救急車から事故現場の対応が終了したことを示す対応終了通知を受信したか否かを判定する(ステップS45)。対応終了通知は、救急車に設けられた操作部に対する操作(例えばタッチパネルディスプレイであるカーナビ画面に表示された「対応終了」アイコンに対するタップ)に応じて、ネットワーク4を介して車両走行制御サーバ7に送信される。
【0157】
制限解除部735は、対応終了通知を受信していないと判定した場合(ステップS45:N)、処理を終了する。
【0158】
制限解除部735は、対応終了通知を受信したと判定した場合(ステップS45:Y)、走行制御信号が送信された車両に対して、サーバ通信部71を介して走行の制限の解除を要求する制限解除制御信号を送信し(ステップS46)、処理を終了する。
【0159】
サーバ処理部73は、複数の車両3のそれぞれについて、上述した一連の処理を実行する。また、サーバ処理部73は、所定の時間間隔で、複数の車両3に対する上述した一連の処理を繰り返し実行する。
【0160】
以上のように処理を実行することにより、車両走行制御サーバ5は、事故現場近傍における車両の走行の制限を適切なタイミングで解除するため、車両の走行制限により生ずる渋滞の解消を図り、2次被害の発生を抑制することができる。
【0161】
なお、車両走行制御サーバ7において、制限解除部735は、サーバ通信部21を介して、事故現場に到着した救急車がサイレンを鳴動させて発進したことを示す通知を受信した場合、対応終了通知を受信したとみなして制限解除制御信号を送信してもよい。
【0162】
制限解除部735がこのように動作することにより、車両走行制御サーバ7は、救急車から対応終了通知が送信されなかった場合であっても車両3に対して制限解除制御信号を送信し、渋滞の解消を図ることができる。
【0163】
また、車両走行制御サーバ7において、制限解除部735は、サーバ通信部21を介して、事故現場に到着した救急車が事故現場から所定の距離よりも離れたことを示す通知を受信した場合、対応終了通知を受信したとみなして制限解除制御信号を送信してもよい。
【0164】
制限解除部735がこのように動作することにより、車両走行制御サーバ7は、救急車から対応終了通知が送信されなかった場合であっても車両3に対して制限解除制御信号を送信し、渋滞の解消を図ることができる。
【0165】
また、車両走行制御サーバ7は、緊急車両の識別子を記憶する緊急車両記憶部をさらに備えてよい。このとき、制限解除部735は、サーバ通信部21を介して、事故現場の対応が終了したことを示す通知を救急車以外の緊急車両から受信した場合、対応終了通知を受信したとみなして制限解除制御信号を送信する。
【0166】
緊急車両記憶部は、第1実施形態のサーバ処理部23における緊急車両記憶部233と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0167】
このような車両走行制御サーバ7は、救急車から対応終了通知が送信されなかった場合であっても車両3に対して制限解除制御信号を送信し、渋滞の解消を図ることができる。
【0168】
当業者は、本発明の精神および範囲から外れることなく、種々の変更、置換および修正をこれに加えることが可能であることを理解されたい。
【符号の説明】
【0169】
1 車両走行制御システム
2、5、6、7 車両走行制御サーバ
3、3′ 車両
231、531、631、731 車両位置取得部
232、532、632、732 事故現場取得部
233 緊急車両記憶部
234、534、634、734 走行制限部
533、733 救急車記憶部
535、735 制限解除部
633 道路幅取得部
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
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図9
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図11
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図14