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特許7189689コーティング組成物並びに経口固形剤及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】コーティング組成物並びに経口固形剤及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/26 20060101AFI20221207BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20221207BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20221207BHJP
   A61K 9/30 20060101ALI20221207BHJP
   A61K 9/36 20060101ALI20221207BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20221207BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20221207BHJP
   A61K 47/14 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
A61K47/26
A61K47/32
A61K9/14
A61K9/30
A61K9/36
A23L5/00 F
A61K47/04
A61K47/14
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018119467
(22)【出願日】2018-06-25
(65)【公開番号】P2020002012
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-01-07
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】594146788
【氏名又は名称】日本酢ビ・ポバール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】川田 章太郎
(72)【発明者】
【氏名】河西 将利
【審査官】長谷川 茜
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0354608(US,A1)
【文献】特開2016-196439(JP,A)
【文献】特開2010-189378(JP,A)
【文献】特開2017-101021(JP,A)
【文献】特開2011-207873(JP,A)
【文献】特表2003-509339(JP,A)
【文献】特開2016-196438(JP,A)
【文献】特開2002-201418(JP,A)
【文献】特開2001-112421(JP,A)
【文献】特開平07-316077(JP,A)
【文献】特開2018-090575(JP,A)
【文献】国際公開第2010/074223(WO,A1)
【文献】妹尾学他著,界面活性の化学と応用,初版第2刷,大日本図書(株),2003年08月25日,第24,51頁
【文献】社団法人日本油化学協会編,改訂三版 油脂化学便覧,丸善株式会社,1990年02月28日,第490,491頁
【文献】川田章太郎ほか,パネルディスカッション38 PVAを用いた防湿コーティング処方のご紹介,第34回 製剤と粒子設計シンポジウム講演要旨集,2017年,pp.86-87
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00- 9/72
A61K 47/00-47/69
A23L 5/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコール系重合体(a)、3以上のヒドロキシ基を有するポリオールの脂肪酸エステル(b)及びタルク(c)を含み、
ポリビニルアルコール系重合体(a)と3以上のヒドロキシ基を有するポリオールの脂肪酸エステル(b)の質量比が95:5~50:50であり、
ポリビニルアルコール系重合体(a):タルク(c)(質量比)が、90:10~30:70であり、
3以上のヒドロキシ基を有するポリオールの脂肪酸エステル(b)が、ソルビタン脂肪酸エステルを含み、下記要件(1)~(3)を満たす経口固形剤用コーティング組成物。
(1)3以上のヒドロキシ基を有するポリオールの脂肪酸エステル(b)のHLB値が4.0以上である
(2)3以上のヒドロキシ基を有するポリオールの脂肪酸エステル(b)の脂肪酸エステルユニットの炭素数が12以上22以下である
(3)タルク(c)の割合が、組成物全体において50質量%以下である
【請求項2】
ポリビニルアルコール系重合体(a)と3以上のヒドロキシ基を有するポリオールの脂肪酸エステル(b)の質量比が90:10~60:40である請求項1記載の経口固形剤用コーティング組成物。
【請求項3】
さらに色素を含有する請求項1又は2記載の経口固形剤用コーティング組成物。
【請求項4】
固形剤に対して、請求項1~のいずれかに記載のコーティング組成物で被覆された経口固形剤。
【請求項5】
固形剤に、請求項1~のいずれかに記載のコーティング組成物を含む水溶液及び/又は水性溶液を塗布又は噴霧し、固形剤表面に当該コーティング組成物を被覆させる工程を含む経口固形剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経口固形剤に用いるコーティング組成物、並びにこれを被膜として用いた経口固形剤及びその製造方法などに関する。
【背景技術】
【0002】
フィルムコーティングや糖衣コーティングは、経口固形剤において、薬物の不快な味に対するマスキング、酸素の遮断、防湿又は製品としての美観の向上などの目的で、薬物を含有する固形剤(例えば、錠剤など)などの被覆用に、広く用いられる技術である。
フィルムコーティングは、糖衣コーティングに比べて、短時間で簡便に実施でき、またコーティング皮膜の厚みを薄くできることから、固形剤の大きさを小さくでき、得られた経口固形剤が服用性に優れるという点でも有用である。
【0003】
フィルムコーティングに用いられる基剤としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(以下、HPMCと略記する)をはじめとした様々なポリマーが用いられているが、近年、ポリビニルアルコール(以下、PVAとも略記する)が注目されている。
PVAフィルムは防湿性に優れているため、吸湿しやすい成分を含む固形剤にPVAのフィルムコーティングを施すことで、保存安定性を向上させることができる。
【0004】
しかし、PVAをコーティング基剤として用いた場合、PVA水溶液の高い粘着性によって、コーティング中に固形剤同士が付着したり、固形剤がコーティング機内に付着するなどの現象が発生しやすくなるため、スプレー噴霧速度を高くすることができず、生産性が低いという問題があった。
【0005】
上記のような問題点を解決する手段として、PVAと、PVAの粘着性を抑制するような添加剤を組み合わせたコーティング組成物を用いて固形剤にコーティングを施し、コーティング時の固形剤同士の付着を抑制する方法が知られている。
【0006】
例えば、特許文献1には、PVA、可塑剤及びタルクを併用したコーティング組成物が開示されており、可塑剤やタルクと併用することにより、PVAの粘着性を抑制し、高い生産性を維持したまま、外観も優れるコーティングが実施できる旨が記載されている。
【0007】
しかしながら、特許文献1のコーティング組成物は、ポリエチレングリコールなどの可塑剤を添加することでPVAの粘着性は抑制できるものの、PVAが本来持ち合わせる防湿性能が低下してしまう問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特表2003-509339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、新規な経口固形剤用コーティング組成物を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、高い防湿性を有するコーティング皮膜を形成できる、経口固形剤用コーティング組成物を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、コーティング時に粘着性が発現されにくい経口固形剤用コーティング組成物を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、表面平滑性に優れたコーティング皮膜を形成できる、経口固形剤用コーティング組成物を提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、一般的な経口固形剤にも応用できる実用的な経口固形剤用コーティング組成物を提供することにある。
【0014】
本発明のさらに他の目的は、このようなコーティング組成物で被覆された経口固形剤を提供することにある。
【0015】
本発明のさらに他の目的は、このようなコーティング組成物で被覆された経口固形剤の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、PVA系重合体(a)、特定の要件を満たす3以上のヒドロキシ基を有するポリオールの脂肪酸エステル(b)及び特定の割合のタルク(c)を含むコーティング組成物を用いて固形剤にコーティングすることで、コーティング時に粘着性が発現されにくく、高い生産性を実現できることなどを見出した。
【0017】
すなわち、本発明は、次の発明などに関する。
[1]
ポリビニルアルコール系重合体(a)、3以上のヒドロキシ基を有するポリオールの脂肪酸エステル(b)及びタルク(c)を含み、下記要件(1)~(3)を満たす経口固形剤用コーティング組成物。
(1)3以上のヒドロキシ基を有するポリオールの脂肪酸エステル(b)のHLB値が4.0以上である
(2)3以上のヒドロキシ基を有するポリオールの脂肪酸エステル(b)の脂肪酸エステルユニットの炭素数が12以上22以下である
(3)タルク(c)の割合が、組成物全体において50質量%以下である
[2]
3以上のヒドロキシ基を有するポリオールの脂肪酸エステル(b)が、糖脂肪酸エステル及び糖アルコール脂肪酸エステルから選択される少なくとも1種を含む[1]に記載の経口固形剤用コーティング組成物。
[3]
3以上のヒドロキシ基を有するポリオールの脂肪酸エステル(b)が、ソルビタン脂肪酸エステルを含む[1]に記載の経口固形剤用コーティング組成物。
[4]
ポリビニルアルコール系重合体(a)と3以上のヒドロキシ基を有するポリオールの脂肪酸エステル(b)の質量比が95:5~50:50である[1]~[3]のいずれかに記載の経口固形剤用コーティング組成物。
[5]
さらに色素を含有する[1]~[4]のいずれかに記載の経口固形剤用コーティング組成物。
[6]
ポリビニルアルコール系重合体(a)の4質量%水溶液粘度が2.0mPa・s以上10.0mPa・s以下である[1]~[5]のいずれかに記載の経口固形剤用コーティング組成物。
[7]
固形剤に対して、[1]~[6]のいずれかに記載のコーティング組成物で被覆された経口固形剤。
[8]
固形剤に、[1]~[6]のいずれかに記載のコーティング組成物を含む水溶液及び/又は水性溶液を塗布又は噴霧し、固形剤表面に当該コーティング組成物を被覆させる工程を含む経口固剤の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、新規な経口固形剤用コーティング組成物を提供できる。
このようなコーティング組成物は、PVA系重合体(a)、特定の要件を満たす3以上のヒドロキシ基を有するポリオールの脂肪酸エステル(b)及び特定の割合のタルク(c)を含有しているため、高い防湿性(特に、高湿度条件下での高い防湿性)を有するコーティング皮膜を形成できる。
また、本発明のコーティング組成物は、固形剤にコーティングを行った場合に、固形剤同士の粘着が発現されにくいため、コーティング時間を短縮でき、コーティングの生産性に優れる。
また、本発明のコーティング組成物は、表面平滑性に優れた経口固形剤を提供できる。
また、本発明のコーティング組成物は、一般的な経口固形剤にも応用できる実用的なものである。
【0019】
そして、本発明では、上記のようなコーティング組成物で被覆された経口固形剤を提供できる。
さらに、本発明では、上記のようなコーティング組成物で被覆された経口固形剤の製造方法を提供できる。このような方法では、コーティング時に固形剤同士の粘着が発現されにくいため、コーティングを効率良く行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[経口固形剤用コーティング組成物]
本発明の経口固形剤用コーティング組成物は、ポリビニルアルコール系重合体(a)、3以上のヒドロキシ基を有するポリオールの脂肪酸エステル(b)及び特定の含有量のタルク(c)を含む。そして、この組成物において、3以上のヒドロキシ基を有するポリオールの脂肪酸エステル(b)は、後述するように、特定の要件を満たす。
【0021】
なお、本発明のコーティング組成物は、通常は、コーティングに使用するコーティング液における溶媒(例えば、水、有機溶媒などの液体成分)以外の構成成分のことを示し、以下に述べるコーティング組成物中の各成分の質量比及び質量割合は、通常は、溶媒以外の構成成分における割合を示す。
【0022】
(ポリビニルアルコール系重合体(a))
ポリビニルアルコール系重合体(PVA系重合体、PVAなどということがある)(a)は、通常、ビニルエステル系重合体(少なくともビニルエステルを重合成分とする重合体)の鹸化物である。
【0023】
ビニルエステル(ビニルエステル系単量体)としては、特に限定されないが、例えば、脂肪酸ビニルエステル[例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプリル酸ビニル、バーサチック酸ビニル、モノクロロ酢酸ビニルなどのC1-20脂肪酸ビニルエステル(例えば、C1-16アルカン酸-ビニルエステル)など]、芳香族カルボン酸ビニルエステル[例えば、安息香酸ビニルなどのアレーンカルボン酸ビニル(例えば、C7-12アレーンカルボン酸-ビニルエステル)など]などが挙げられる。
【0024】
ビニルエステルは、1種で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0025】
ビニルエステルは、少なくとも脂肪酸ビニルエステル(例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニルなどのC1-10アルカン酸-ビニルエステルなど)を含んでいるのが好ましく、工業的観点などから、特に、酢酸ビニルを含んでいてもよい。
【0026】
ビニルエステル系重合体は、ビニルエステル単位を有していればよく、必要に応じて、他の単量体(ビニルエステルと共重合可能な単量体)由来の単位を有していてもよい(他の単量体により変性されていてもよい)。
【0027】
他の単量体としては、特に限定されないが、例えば、α-オレフィン類(例えば、エチレン、プロピレンなど)、(メタ)アクリル酸エステル類[例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルなどの(メタ)アクリル酸アルキルエステル]、不飽和アミド類[例えば、(メタ)アクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミドなど]、不飽和酸類{例えば、不飽和酸[例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸など]、不飽和酸エステル[(メタ)アクリル酸以外の不飽和酸エステル、例えば、アルキル(メチル、エチル、プロピルなど)エステルなど]、不飽和酸無水物(無水マレイン酸など)、不飽和酸の塩[例えば、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩など)、アンモニウム塩など]など}、グリシジル基含有単量体[例えば、アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレートなど]、スルホン酸基含有単量体(例えば、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、その塩類など)、リン酸基含有単量体[例えば、アシッドホスホオキシエチル(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシプロピル(メタ)アクリレートなど]、ビニルエーテル類(例えば、アルキルビニルエーテル類)、アリルアルコールなどが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0028】
他の単量体は、1種で又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0029】
なお、PVA系重合体(a)は、ビニルアルコール単位の一部が、アセタール化、エーテル化、アセトアセチル化、カチオン化などの反応によって、変性されたものであってもよい。
【0030】
PVA系重合体(a)は、1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0031】
なお、PVA系重合体(a)としては、市販品を使用してもよい。
【0032】
PVA系重合体(a)の製造方法としては、特に限定されず、例えば、ビニルエステル系重合体をけん化する方法などの公知の方法を用いてよい。
ビニルエステル系重合体の重合方法としては、特に限定されず、例えば、従来公知の塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などが挙げられるが、溶液重合(例えば、溶剤としてメタノールを用いた溶液重合など)が工業的に好ましい。
該溶液重合には、過酸化物系、アゾ系などの公知の開始剤を用いることができ、ビニルエステル系単量体と溶剤の配合比、重合収率を変えることにより、得られるビニルエステル系重合体の重合度を調整することができる。
【0033】
ビニルエステル系重合体のけん化方法としては、従来から公知のアルカリ触媒又は酸触媒を用いたけん化方法を使用することができる。中でも、ビニルエステル系重合体のメタノール溶液又はビニルエステル系重合体のメタノール、水、酢酸メチルなどの混合溶液に水酸化ナトリウムなどのアルカリを加えて、撹拌して混合しながら、加アルコール分解する方法が、工業的に好ましい。
その後、得られた塊状物、ゲル状物あるいは粒状物を粉砕し、必要に応じて添加したアルカリを中和した後、固形物と液体成分を分離し、固形物を乾燥することによりPVA系重合体を得てもよい。
【0034】
PVA系重合体(a)のけん化度は、特に限定されないが、医薬品添加物規格、米国薬局方及びヨーロッパ薬局方の3つの公定書に記載されているPVAのけん化度の規格内に入ることが好ましい。また、体内で速やかに溶解できるなどの観点から、PVA系重合体の平均けん化度は、例えば、74.0モル%~89.0モル%(例えば、80.0~89.0モル%など)が好ましく、85.0モル%~89.0モル%が特に好ましい。
【0035】
平均けん化度が85.0モル%以上であれば、グローバルに販売される医薬用製剤の原料として使用でき、また、疎水性基の割合が少なくなることから、親水性が向上したり、水溶液を調製する際に高温で析出しにくいため、取扱いが容易になるなどの観点から特に好ましい。
一方、平均けん化度が89.0モル%以下であれば、グローバルに販売される医薬用製剤の原料として使用でき、PVAの水酸基の増加に伴う結晶性の向上による水への溶解性の低下や、経口固形剤のコーティングに使用した際の溶出速度の低下を防止できるなどの観点から特に好ましい。
【0036】
なお、PVAの平均けん化度は、特に限定されないが、例えば、JIS K6726のけん化度測定方法などによって、測定してもよい。
【0037】
PVA系重合体(a)の重合度は、特に限定されないが、4質量%水溶液粘度は、例えば、2.0mPa・s以上10.0mPa・s以下(例えば、3.0mPa・s以上9.0mPa・s以下など)が好ましく、3.0mPa・s以上7.0mPa・s以下がさらに好ましい。
4質量%水溶液粘度が2.0mPa・s以上の場合、コーティング後に固形剤表面に形成される被覆層の強度が高くなるなどの観点から、好ましい。4質量%水溶液粘度が10mPa・s以下の場合、粘度が低いため、コーティング時のスプレー速度を上げることができ、生産性が向上するなどの観点から、好ましい。
なお、4質量%水溶液粘度は、特に限定されないが、例えば、JIS K6726に規定された方法などによって、測定してもよい。
【0038】
(3以上のヒドロキシ基を有するポリオールの脂肪酸エステル(b))
3以上のヒドロキシ基を有するポリオールの脂肪酸エステル(b)(以下、単に、ポリオール脂肪酸エステル(b)ということがある)において、ヒドロキシ基の数は、3以上であればよく、特に限定されないが、例えば、3~10個(例えば、3~8個など)であってよい。
【0039】
3以上のヒドロキシ基を有するポリオールとしては、例えば、糖[例えば、単糖類(例えば、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトースなど)、二糖類(例えば、ショ糖、マルトース、乳糖、トレハロースなど)]、糖アルコール(例えば、エリスリトール、ラクチトール、マルチトール、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、イノシトール、ソルビタンなど)、アルカンポリオール[例えば、アルカントリオール(例えば、グリセリン、ブタントリオール、ヘキサントリオールなどのC3-10アルカントリオール、好ましくはC3-6アルカントリオール)]、ポリアルカンポリオール{例えば、ポリアルカントリオール[例えば、ポリグリセリン(例えば、ジグリセリン、トリグリセリン)などのポリアルカントリオール、好ましくはジ乃至トリC3-6アルカントリオール]}などが挙げられる。
また、3以上のヒドロキシ基を有するポリオールとしては、オキシアルキレン付加体(例えば、ポリオキシアルキレン付加体)であってもよく、例えば、上記に例示したもののポリオキシアルキレン付加体[例えば、ポリオキシアルキレンソルビタン(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンなど)、ポリオキシアルキレングリセリン(例えば、ポリオキシエチレングリセリンなど)など]であってもよい。
【0040】
これらの中でも、糖、糖アルコールなどが好ましく、ショ糖、ソルビタンなどが特に好ましい。
【0041】
3以上のヒドロキシ基を有するポリオールは、1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0042】
ポリオール脂肪酸エステル(b)は、通常、要件(1)及び(2)を満たすことが好ましく、以下にその要件の意味について説明する。
【0043】
「要件(1):3以上のヒドロキシ基を有するポリオールの脂肪酸エステル(b)のHLB値が4.0以上である」
HLBとは、Hydrophilic Lypophilic Balanceの略称であり、分子中における脂肪酸エステルの導入の仕方により変化する。分子中における脂肪酸エステルのモノエステル体の割合が高いと、HLB値が高くなり、より親水性が高いことを意味している。一方、分子中におけるジエステル体やトリエステル体などのポリエステル体の割合が高く、モノエステルの割合が低いと、HLB値は低くなり、疎水性が強くなる。本発明においては、HLB値が4.0以上(例えば、4~20、4~18、10~18、12~18など)であることが好ましい。HLB値が4.0以上の場合、モノエステル体の比率が高く、コーティング組成物の水への溶解性及び/又は分散性が向上し、均一な水溶液になりやすいなどの観点から好ましい。
【0044】
なお、HLB値の算出方法は、特に限定されず、例えば、鹸化価をS、脂肪酸の酸価をAとしたアトラス法(HLB値=20(1-S/A))を用いて算出してもよい。
【0045】
次に、要件(2)について説明する。
「要件(2)3以上のヒドロキシ基を有するポリオールの脂肪酸エステル(b)の脂肪酸エステルユニットの炭素数が12以上22以下である」
前記脂肪酸エステルは、疎水基を構成しており、飽和、不飽和、直鎖、分岐鎖の何れでもよいが、炭素数の数によってその疎水性の強さが変化する。
本発明においては、脂肪酸エステルユニットの炭素数が12~22(例えば、14~22、12~20、12~18など)であることが好ましい。炭素数が12以上の場合、分子中における疎水基の割合が高くなるため、PVAと併用した場合に防湿性が優れるなどの観点から、好ましい。また、炭素数が22以下の場合、分子中における疎水基の割合が少なくなるため、水への溶解性及び/又は分散性が向上し、均一な水溶液になりやすくなるなどの観点から好ましい。
【0046】
このような脂肪酸エステル単位を構成する脂肪酸としては、例えば、C12-22脂肪酸{例えば、C12-22飽和脂肪酸[例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデカン酸、ステアリン酸などのC12-22アルカン酸]、C12-22不飽和脂肪酸[例えば、C12-22モノ不飽和脂肪酸(例えば、オレイン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸などのC12-22アルケン酸)、C12-22ジ乃至ヘキサ不飽和脂肪酸(例えば、リノール酸などのC12-22アルカジエン酸、リノレン酸などのC12-22アルカトリエン酸)など]}などが挙げられる。
脂肪酸は、1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0047】
ポリオール脂肪酸エステル(b)は、1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0048】
(タルク(c))
タルク(c)としては、特に限定されず、例えば、医薬品または食品の添加剤として通常用いられるタルクが挙げられ、日本薬局方で規定されたタルクが好ましい。
本発明において、コーティング組成物中のタルクの含有量は、通常、後述するように要件(3)を満たす。
【0049】
(他の成分)
経口固形剤用コーティング組成物は、ポリビニルアルコール系重合体(a)、3以上のヒドロキシ基を有するポリオールの脂肪酸エステル(b)及びタルク(c)の他に、他の成分を含んでいてもよい。
【0050】
他の成分としては、特に限定されず、例えば、色素[顔料系色素(例えば、酸化チタン、アルミニウム・レーキ、酸化鉄など)、天然色素など]、通常医薬製剤に用いられる薬物、滑択剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸など)、PVA系重合体(a)以外のポリマー(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなど)、ポリオール脂肪酸エステル(b)以外の界面活性剤、甘味料、コーティング剤、消泡剤、pH調製剤などの添加剤が挙げられる。
【0051】
これらの他の成分の中でも、色素が好ましい。
色素の中でも、酸化チタンが、コーティング後の固形剤表面の色相改善などの観点から好ましい。
【0052】
他の成分は、1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0053】
(経口固形剤用コーティング組成物の態様)
組成物において、PVA系重合体(a)の割合(組成物全体に対するPVA系重合体(a)の割合)は、特に限定されないが、例えば、25~90質量%(例えば、30~80質量%)、好ましくは35~70質量%、より好ましくは40~60質量%程度であってもよい。
【0054】
組成物において、ポリオール脂肪酸エステル(b)の割合(組成物全体に対するポリオール脂肪酸エステル(b)の割合)は、特に限定されないが、例えば、2~45質量%、好ましくは5~30質量%、より好ましくは5~20質量%(例えば、7~15質量%)程度であってもよい。
【0055】
組成物において、タルク(c)の割合(組成物全体に対するタルク(c)の割合)は、通常、「要件(3):タルク(c)の割合が、組成物全体において50質量%以下である」を満たすことが好ましい。
組成物において、タルク(c)の割合は、50質量%未満、49質量%以下、45質量%以下、40質量%以下などであってもよい。
また、組成物において、タルク(c)の割合の下限値は、特に限定されないが、例えば、5質量%以上(例えば、10質量%以上、15質量%以上など)が好ましく、30質量%以上がより好ましい。
タルクの割合が5質量%以上の場合、コーティング組成物で形成される被覆層の防湿性が向上し、かつ、コーティング後の表面平滑性も優れるなどの観点から好ましい。また、タルクの割合が50質量%以下であれば、コーティング後の被覆層が脆くなりにくいなどの観点から好ましい。
【0056】
組成物が他の成分を含む場合、組成物において、他の成分の割合(組成物全体に対する他の成分の割合)は、特に限定されないが、例えば、1~50質量%、好ましくは2~30質量%、より好ましくは5~20質量%程度であってもよい。
【0057】
組成物において、PVA系重合体(a)とポリオール脂肪酸エステル(b)との割合は、特に限定されないが、(a):(b)(質量比)が、例えば、95:5~50:50が好ましく、90:10~60:40がより好ましく、80:20~70:30が特に好ましい。
(a):(b)(質量比)が、95:5よりも(b)の割合が大きい場合、PVAの粘着性抑制効果が十分となり、コーティング中に固形剤同士の付着が発生しにくくなるなどの観点から、好ましい。
また、(a):(b)(質量比)が、50:50よりも(b)の割合が小さい場合、形成される被覆層の強度が高くなるなどの観点から、好ましい。
【0058】
組成物において、PVA系重合体(a)とタルク(c)との割合は、特に限定されないが、(a):(c)(質量比)が、例えば、90:10~30:70、好ましくは80:20~40:60、より好ましくは70:30~50:50であってもよい。
【0059】
組成物が他の成分を含む場合、組成物において、PVA系重合体(a)と他の成分との割合は、特に限定されないが、PVA系重合体(a)100質量部に対して、1質量部以上100質量部以下(例えば、1質量部以上80質量部以下、1質量部以上60質量部以下など)が好ましく、1質量部以上50質量部以下がより好ましい。
【0060】
経口固形剤用コーティング組成物の使用形態は、特に限定されないが、溶媒(例えば、水、有機溶媒、水と有機溶媒の混合溶媒など)に溶解又は分散した液状(水溶液、水性溶液など)で使用してもよい。
有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、アルコール類(例えば、エタノールなど)などが挙げられる。
溶媒は、1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
なお、溶媒としては、環境への配慮や、固形剤中の残留有機溶媒の影響などの観点から、水のみを使用するのが好ましい。
【0061】
コーティング組成物の溶媒への溶解又は分散方法としては、例えば、溶媒(必要に応じて加熱された溶媒、例えば、水、温水など)に当該コーティング組成物を分散させ、常温又は加熱しながら撹拌するという従来公知の方法で作成することができる。
例えば、PVA系重合体(a)、3以上のヒドロキシ基を有するポリオールの脂肪酸エステル(b)及びタルク(c)をそれぞれ別々に溶媒(必要に応じて加熱された溶媒、例えば、水、温水など)に投入して、コーティング液を作成する方法であっても良い。
【0062】
経口固形剤用コーティング組成物を液状で使用する場合、液中の固形分濃度は、例えば、1~50質量%、好ましくは1~30質量%程度であってもよい。
【0063】
[経口固形剤]
本発明は、固形剤に対して、本発明のコーティング組成物で被覆された経口固形剤も含む。
このような経口固形剤は、例えば、固形剤と、固形剤を被覆する被覆部(被覆層)からなり、該被覆部が前記コーティング組成物を少なくとも含む。
【0064】
固形剤の形態としては、例えば、錠剤、顆粒剤、細粒剤などが挙げられるが、その中でも、錠剤が特に好ましい。
【0065】
固形剤は、例えば、医薬品、医薬部外品、食品などであってよい。
固形剤としては、例えば、医薬製剤、医薬部外品製剤、健康食品(例えば、特別用途食品、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性食品、栄養補助食品、健康補助食品、栄養強化食品など)などが挙げられる。
【0066】
固形剤の成分は、固形剤の態様や用途などに応じて適宜選択でき、例えば、有効成分、栄養素などのいずれであってもよい。
【0067】
固形剤は、通常この分野で常用され得る添加剤(例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑択剤、凝集防止剤、医薬化合物の溶解補助剤など)を含んでいてもよい。
【0068】
賦形剤としては、例えば、白糖、乳糖、マンニトール、グルコースなどの糖類、でんぷん、結晶セルロース、リン酸カルシウム、硫酸カルシウムなどが挙げられる。
【0069】
結合剤としては、例えば、PVA、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリビニルピロリドン、グルコース、白糖、乳糖、麦芽糖、デキストリン、ソルビトール、マンニトール、ヒドロキシエチルセルロース、HPMC、ヒドロキシプロピルセルロース、マクロゴール類、アラビアゴム、ゼラチン、寒天、でんぷんなどが挙げられる。
【0070】
崩壊剤としては、例えば、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース又はその塩、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスポリビニルピロリドン、結晶セルロース、結晶セルロース・カルメロースナトリウムなどが挙げられる。
【0071】
滑択剤又は凝集防止剤としては、例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、コロイダルシリカ、ステアリン酸、ワックス類、硬化油、ポリエチレングリコール類、安息香酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0072】
医薬化合物の溶解補助剤としては、例えば、フマル酸、コハク酸、リンゴ酸、アジピン酸などの有機酸などが挙げられる。
【0073】
これらの添加剤は、1種又は2種以上を使用することができる。
【0074】
また、これら添加剤の含有量は、固形剤の成分の種類などに応じて適宜決定することができる。
【0075】
経口固形剤は、複数の被覆層を有していてもよい。
例えば、経口固形剤は、本発明のコーティング組成物によって形成される被覆層の下に、アンダーコーティング層を有していてもよく、該被覆層の上に、オーバーコーティング層を有していてもよい。
アンダーコーティング層及びオーバーコーティング層は、例えば、医薬製剤のコーティングに常用されるポリマー(例えば、HPMCなど)を成分として含有する組成物を用いてコーティングすることによって形成してよい。
【0076】
[経口固形剤の製造方法]
本発明は、固形剤に、本発明のコーティング組成物を含む水溶液及び/又は水性溶液を塗布又は噴霧し、固形剤表面に当該コーティング組成物を被覆させる工程を含む経口固形剤の製造方法も含有する。
【0077】
固形剤表面にコーティング組成物を被覆させる方法としては、特に限定されず、従来公知のコーティング手段を使用してよく、フィルムコーティングなどが挙げられる。
コーティング方法としては、例えば、スプレーコーティングが挙げられる。
コーティングの装置としては、例えば、パンコーティング装置、ドラムタイプコーティング装置などを使用してよい。また、これらの装置に付帯するスプレー装置としては、例えば、エアースプレー、エアレススプレーなどを使用してよい。
【0078】
固形剤表面にコーティング組成物を被覆させる方法としては、例えば、上述したコーティング装置を用い、固形剤に、必要に応じて添加剤を加えた本発明のコーティング組成物を、溶媒[例えば、水、有機溶媒(例えば、エタノールなどのアルコール類など)、水と有機溶媒の混合溶媒など]に溶解又は分散させた溶液を調整し、乾燥と同時に該溶液を塗布又は噴霧して固形剤表面へ被覆する方法などが挙げられる。
【0079】
固形剤の表面にコーティングされるコーティング組成物の被覆量は、固形剤の種類、形、大きさ、表面状態、固形剤中に含まれる成分や添加剤の性質などによって異なるが、固形剤全量に対して、好ましくは1~10質量%、更に好ましくは1~7質量%、特に好ましくは2~6質量%である。このような範囲であれば、完全な皮膜が得られ、十分な防湿効果、酸素バリア性、臭気マスキング効果が得られるなどの観点から好ましい。また、このような範囲であれば、コーティングに要する時間が短くなるなどの観点から好ましい。
【実施例
【0080】
以下、本発明について実施例をあげて具体的に説明するが本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、以下の実施例及び比較例中、特にことわりのないかぎり、「%」及び「部」は質量基準を表す。
【0081】
<コーティング条件>
装置:ハイコーター(HC-FZ-Labo、フロイント産業製)
錠剤仕込み量:1000g
給気温度:70-80℃
排気温度:44-52℃
給気空気量:0.6m/min
スプレーガン数:1個
スプレーガン エア量(アトマイズドエア):30L/min
スプレーガン エア量(パターンエア):9L/min
スプレー速度:チューブポンプの吐出量で調整
パン回転数:18rpm
【0082】
<コーティング時間の評価>
コーティング試験において、コーティング溶液をスプレー塗布する際のスプレー速度を2.0g/minで開始し、錠剤同士及び錠剤とパンとの貼り付きが起こらない場合は、徐々にスプレー速度を高くしていき、錠剤同士又は錠剤とパンとの貼り付きが発生するまでスプレー速度を上げた。その後、一旦、スプレー速度を落とし、錠剤同士又は錠剤とパンとの貼り付きが発生しない速度になったことを確認し、10分間そのスプレー速度でコーティング試験を継続して貼り付きが発生しないことを確認し、該スプレー速度を最大スプレー速度とした。一方、初期のスプレー速度2.0g/minで錠剤同士又は錠剤とパンとの貼り付きが起こる場合は、徐々にスプレー速度を落としていき、10分間そのスプレー速度で貼り付きが発生しないことを確認し、該スプレー速度を最大スプレー速度とした。さらに、最大スプレー速度から、錠剤に対し固形分で3質量%の被覆を施すための最短コーティング時間を算出した。
【0083】
<表面平滑性の評価>
コーティングした錠剤の表面平滑性を以下の条件において評価した。
測定装置:レーザー顕微鏡(VK-9510、キーエンス社製)
測定項目:表面粗さ:Ra
測定倍率:50倍(対物レンズ)
【0084】
<水蒸気透過度の評価>
固形分濃度が10質量%のコーティング組成物の溶液もしくは分散液を、PETシート上にキャスティングし、20℃×65%RHの恒温恒湿機内で乾燥して、厚さ100μmのフィルムを得た。得られたフィルムの水蒸気透過度をL80-5000型水蒸気透過度計(Systech Instruments社製)を用いてJIS K7129の方法に従った方法で25℃、75%相対湿度差の水蒸気透過度を測定した。
【0085】
(実施例1)
部分けん化PVA(日本酢ビ・ポバール製 PE-05JPS けん化度:88.2モル%、4質量%水溶液粘度:5.3mPa・s)12.0質量部とショ糖脂肪酸エステル(三菱ケミカルフーズ製、P-1570、脂肪酸エステルユニットの炭素数=16、HLB値=15)3.0質量部とタルク(日本タルク製)15.0質量部を、撹拌している精製水270.0質量部に添加し、1時間撹拌し続け、コーティング液を調製した(水溶液濃度:10質量%)。このコーティング液を用い、乳糖及びコーンスターチを主体とした素錠に対してコーティング試験を実施し、最大スプレー速度、最短コーティング時間、表面粗さ及びコーティング組成物の水蒸気透過度を評価した。
実施例1の最大スプレー速度は6.7g/minで、3質量%の被覆を施すためのコーティング時間は45分であった。また、錠剤の表面粗さは2.9μmであり、水蒸気透気度は、56g/m・日であった。結果を表2に示す。
【0086】
(実施例2~9)
表1に記載の各成分からなるコーティング組成物を用いた以外は、実施例1と同様にしてコーティング試験を実施し、最大スプレー速度、最短コーティング時間、表面粗さ及び水蒸気透過度を評価した。結果を表2に示す。
【0087】
(比較例1)
部分けん化PVA(日本酢ビ・ポバール製 PE-05JPS けん化度:88.2モル%、4質量%水溶液粘度:5.3mPa・s)13.2質量部とPEG3000(和光純薬製)3.7質量部とレシチン(関東化学製)1.1質量部とタルク(日本タルク製)6.0質量部と酸化チタン(フロイント産業製)6.1質量部を、撹拌している精製水270.0質量部に添加し、1時間撹拌し続け、コーティング液を調製した(水溶液濃度:10質量%)。このコーティング液を用い、乳糖及びコーンスターチを主体とした素錠に対してコーティング試験を実施し、最大スプレー速度、最短コーティング時間、表面粗さ及びコーティング組成物の水蒸気透過度を評価した。
比較例1の最大スプレー速度は7.5g/minで、3質量%の被覆を施すためのコーティング時間は40分であった。また、表面粗さは3.3μmであり、水蒸気透気度は、300g/m・日であった。結果を表2に示す。
【0088】
(比較例2)
部分けん化PVA(日本酢ビ・ポバール製 PE-05JPS けん化度:88.2モル%、4質量%水溶液粘度:5.3mPa・s)13.2質量部とPEG3000(和光純薬製)3.7質量部とレシチン(関東化学製)1.1質量部とタルク(日本タルク製)6.0質量部と酸化チタン(フロイント産業製)6.1質量部を、撹拌している精製水120.0質量部に添加し、1時間撹拌し続け、コーティング液を調製した(水溶液濃度:20質量%)。このコーティング液を用い、乳糖及びコーンスターチを主体とした素錠に対してコーティング試験を実施し、最大スプレー速度、最短コーティング時間、表面粗さ及びコーティング組成物の水蒸気透過度を評価した。
比較例2の最大スプレー速度は7.2g/minで、3質量%の被覆を施すためのコーティング時間は21分であった。また、表面粗さは3.8μmであり、水蒸気透気度は、300g/m・日であった。結果を表2に示す。
【0089】
(比較例3)
部分けん化PVA(日本酢ビ・ポバール製 PE-05JPS けん化度:88.2モル%、4質量%水溶液粘度:5.3mPa・s)10.5質量部とPEG3000(和光純薬製)3.3質量部とタルク(日本タルク製)7.5質量部と酸化チタン(フロイント産業製)8.7質量部を、撹拌している精製水270.0質量部に添加し、1時間撹拌し続け、コーティング液を調製した(水溶液濃度:10質量%)。このコーティング液を用い、乳糖及びコーンスターチを主体とした素錠に対してコーティング試験を実施し、最大スプレー速度、最短コーティング時間、表面粗さ及びコーティング組成物の水蒸気透過度を評価した。
比較例3の最大スプレー速度は7.5g/minで、3質量%の被覆を施すためのコーティング時間は40分であった。また、表面粗さは3.5μmであり、水蒸気透気度は、400g/m・日であった。結果を表2に示す。
【0090】
(比較例4)
部分けん化PVA(日本酢ビ・ポバール製 PE-05JPS けん化度:88.2モル%、4質量%水溶液粘度:5.3mPa・s)30.0質量部を、撹拌している精製水270.0質量部に添加し、1時間撹拌し続け、コーティング液を調製した(水溶液濃度:10質量%)。このコーティング液を用い、乳糖及びコーンスターチを主体とした素錠に対してコーティング試験を実施し、最大スプレー速度、最短コーティング時間、表面粗さ及びコーティング組成物の水蒸気透過度を評価した。
比較例4の最大スプレー速度は3.2g/minで、3質量%の被覆を施すためのコーティング時間は94分であった。また、表面粗さは3.0μmであり、水蒸気透気度は、169g/m・日であった。結果を表2に示す。
【0091】
表2から明らかなように、実施例1~9では、本発明のコーティング組成物を使用することにより、コーティング時の粘着性を抑制できることが確認できた。
また、実施例1~9では、低い水蒸気透過度、すなわち高い防湿性効果を発現することを確認できた。実施例1~9では、可塑剤を含まない比較例4と比較しても、いずれも低い水蒸気透過度を示しており、従来よりも優れた防湿性を発揮することが確認された。
さらに、実施例1~9では、コーティング皮膜の表面平滑性が優れていた。
【0092】
一方、比較例1~4では、防湿性が低い結果となった。
【0093】
すなわち、本発明のコーティング組成物は、高い生産性、高い防湿性などを発揮することが確認された。
【0094】
【表1】
【0095】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明のコーティング組成物は、短時間でのコーティングによる高い生産性、優れた防湿効果を有するコーティング皮膜の形成などを実現できるため、本発明のコーティング組成物を用いて経口固形剤を製造することは、工業的に極めて有用である。