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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】帯電防止剤とその利用
(51)【国際特許分類】
   C09K 3/16 20060101AFI20221207BHJP
   C08L 23/00 20060101ALI20221207BHJP
   C08K 5/103 20060101ALI20221207BHJP
   C08K 5/17 20060101ALI20221207BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20221207BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20221207BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
C09K3/16 102E
C09K3/16 103B
C08L23/00
C08K5/103
C08K5/17
C08J5/18 CES
B32B27/18 D
B32B27/32 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018162295
(22)【出願日】2018-08-31
(65)【公開番号】P2020033483
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-08-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000188951
【氏名又は名称】松本油脂製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】後藤 佳希
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 剛司
(72)【発明者】
【氏名】重田 啓彰
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-266463(JP,A)
【文献】特開2014-218636(JP,A)
【文献】特開2011-161666(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105172284(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0127296(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/16
C08L 23/00
C08K 5/103
C08K 5/17
C08J 5/18
B32B 27/18
B32B 27/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジグリセリン脂肪酸エステルである成分(A)、脂肪族アミンエチレンオキサイド付加物脂肪酸エステルである成分(B)、グリセリン脂肪酸エステルである成分(C)及び脂肪族アミンエチレンオキサイド付加物である成分(D)を含み、
前記成分(A)がジグリセリン脂肪酸モノエステルである成分(A-1)と、ジグリセリンと2以上の脂肪酸とのエステルである成分(A-2)とを含み、
前記成分(A-1)と前記成分(A-2)との重量比(A-1/A-2)が80/20~20/80であり、前記成分(A)がジグリセリンラウリン酸エステルを含み、前記成分(A)に占めるジグリセリンラウリン酸エステルの重量割合が40重量%以上であり、前記成分(A)を20~70重量%、前記成分(B)を10~50重量%、前記成分(C)を5~50重量%、前記成分(D)を1~20重量%の比率で含んでなる、帯電防止剤。
【請求項2】
前記成分(B)が、下記一般式(1)で示される脂肪族アミンエチレンオキサイド付加物モノ脂肪酸エステルである成分(B-1)と、下記一般式(2)で示される脂肪族アミンエチレンオキサイド付加物ジ脂肪酸エステルである成分(B-2)とを含み、前記成分(B-1)と前記成分(B-2)との重量比(B-1/B-2)が50/50~90/10である、請求項1に記載の帯電防止剤。
【化1】
(式中、R及びRは、それぞれ独立して、アルキル基、アルケニル基、アルカジエニル基またはアルカニル基である。nおよびmは0以上であり、n+m=2~3を満足する数字である。)
【化2】
(式中、R、R及びRは、それぞれ独立して、アルキル基、アルケニル基、アルカジエニル基またはアルカニル基である。oおよびpは0以上であり、o+p=2~3を満足する数字である。)
【請求項3】
水酸基価(OHv)とケン化価(Sv)との比率(OHv/Sv)が1.8~2.4の範囲にある、請求項1又は2に記載の帯電防止剤。
【請求項4】
ポリオレフィン系樹脂と、請求項1又は2に記載の帯電防止剤とを含む、ポリオレフィン系樹脂組成物。
【請求項5】
樹脂組成物に占める前記帯電防止剤の重量割合が0.01~30重量%である、請求項に記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
【請求項6】
前記ポリオレフィン系樹脂がポリプロピレンである、請求項4又は5に記載のポリオレフィン系樹脂組成物。
【請求項7】
請求項のいずれかに記載のポリオレフィン系樹脂組成物を成形してなる、フィルム。
【請求項8】
請求項に記載の帯電防止性フィルムと別の基材フィルムとが接着されてなる、少なくとも2層以上の積層フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電防止剤とその利用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン等の熱可塑性樹脂は加工の容易さと優れた外観から繊維分野や包装分野などの幅広い分野で使用されている。包装材の代表的なものとして、ポリオレフィンフィルムが挙げられる。ポリオレフィンフィルムは単独、あるいは他のフィルムにラミネートして使用されることが多い。
【0003】
一方、ポリプロピレン等の熱可塑性樹脂類の持つ欠点として樹脂の疎水性が原因となって静電気が生ずる点が挙げられる。静電気が生ずると製品に埃やゴミが付着して外観を損ねるだけではなく火花の発生や作業者の不快感等生産性に悪影響を与える場合がある。これらの問題を解決するため帯電防止剤を利用して静電気の発生を抑制することが広く行なわれている。
【0004】
これらの問題を解決するため、一般には界面活性剤を使用してフィルム表面の物性を変え、帯電防止性を賦与することにより解決する方法が取られてきた、界面活性剤による表面物性の改良としては樹脂表面に塗布する方法と樹脂に溶融混合する方法などがある。
【0005】
帯電防止剤を塗布する方法は、初期帯電防止剤に優れる等の利点があるが、持続性に問題を抱えることが多く、また加工工程が増加して経済的に不利となる点も指摘されている。そのため、比較的長期間帯電防止性を維持でき、経済的である帯電防止剤を練り込む方法が採用されることが多く、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等を使用して様々な配合処方により試みられてきた。
【0006】
また、食品包装において、ガスバリア性・フィルム強度・ヒートシール性などの物性を向上させるために複数の合成樹脂フィルムを積層するラミネートフィルムが広く使われている。ポリプロピレンフィルムについても他の合成樹脂フィルムとラミネートして使用されることが多い。しかし、帯電防止剤を含んだポリプロピレンフィルムをポリウレタン系接着剤やポリエーテル系接着剤を用いて別のフィルムとラミネートした場合、接着剤に帯電防止剤が吸着され、帯電防止性能が発現しなくなるという問題も存在する。また、帯電防止剤の添加量を上げるとフィルムの白化、帯電防止性能の減衰に繋がる。
【0007】
特許文献1では多価アルコールと脂肪酸のエステルを含んだ被覆層を設けることで帯電防止性を発揮する検討がされているが、添加量が多く十分な透明性が維持できない。
【0008】
特許文献2では複数のフィルム層に特定の界面活性剤とポリグリセリン脂肪酸エステルを別々に練り込み積層する検討がされているが、少なくとも3層以上のフィルムを積層する必要があるため、適用できる状況が限られる。
【0009】
特許文献3では多価アルコールと脂肪酸のエステルとN-アシルサルコシン塩を練り込みラミネート後の帯電防止性の維持を図っているが、アニオン活性剤の塩はポリオレフィン樹脂との相溶性が悪いために、外観不良や長期的な性能低下に繋がる可能性がある。
【0010】
特許文献4では低分子量のグリセリン脂肪酸エステルとポリグリセリン脂肪酸エステルを利用して帯電防止効果の即効性とラミネート後の帯電防止性の維持を図っているが、実施例ではポリエチレン樹脂のみ効果を確認しており、ポリプロピレン樹脂への適応が可能かは言及されていない上、高価なポリグリセリン脂肪酸エステルを多量に使用しており経済的ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開平10-34号公報
【文献】特開平5-96694号公報
【文献】特許5184331号
【文献】特開2017-179350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、ポリプロピレン系樹脂に添加した際優れた帯電防止効果を示すのみならず、ラミネートに用いた接着剤による性能低下を抑え、長期間に渡り帯電防止効果を発揮し続けることが可能な帯電防止剤とそれを練り込んだポリマーフィルム及びその積層フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、特定の構成を有するジグリセリン脂肪酸エステルである成分Aと他の特定の成分とを含む帯電防止剤であれば、上記課題が解決できることを発見し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の帯電防止剤は、ジグリセリン脂肪酸エステルである成分(A)、脂肪族アミンエチレンオキサイド付加物脂肪酸エステルである成分(B)、グリセリン脂肪酸エステルである成分(C)及び脂肪族アミンエチレンオキサイド付加物である成分(D)を含み、前記成分(A)がジグリセリン脂肪酸モノエステルである成分(A-1)と、ジグリセリンと2以上の脂肪酸とのエステルである成分(A-2)とを含み、前記成分(A-1)と前記成分(A-2)との重量比(A-1/A-2)が80/20~20/80であり、前記成分(A)がジグリセリンラウリン酸エステルを含み、前記成分(A)に占めるジグリセリンラウリン酸エステルの重量割合が40重量%以上であり、前記成分(A)を20~70重量%、前記成分(B)を10~50重量%、前記成分(C)を5~50重量%、前記成分(D)を1~20重量%の比率で含んでなる。
【0014】
前記成分(B)が、下記一般式(1)で示される脂肪族アミンエチレンオキサイド付加物モノ脂肪酸エステルである成分(B-1)と、下記一般式(2)で示される脂肪族アミンエチレンオキサイド付加物ジ脂肪酸エステルである成分(B-2)とを含み、前記成分(B-1)と前記成分(B-2)との重量比(B-1/B-2)が50/50~90/10であると好ましい。
【0015】
【化1】
【0016】
(式中、R及びRは、それぞれ独立して、アルキル基、アルケニル基、アルカジエニル基またはアルカニル基である。nおよびmは0以上であり、n+m=2~3を満足する数字である。)
【0017】
【化2】
【0018】
(式中、R、R及びRは、それぞれ独立して、アルキル基、アルケニル基、アルカジエニル基またはアルカニル基である。oおよびpは0以上であり、o+p=2~3を満足する数字である。)
【0019】
酸基価(OHv)とケン化価(Sv)との比率(OHv/Sv)が1.8~2.4の範囲にあると好ましい。
【0020】
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂と、上記帯電防止剤とを含む。
樹脂組成物に占める前記帯電防止剤の重量割合が0.01~30重量%であると好ましい。
前記ポリオレフィン系樹脂がポリプロピレンであると好ましい。
本発明のフィルムは、上記ポリオレフィン系樹脂組成物を成形してなる。
本発明の積層フィルムは、上記帯電防止性フィルムと別の基材フィルムとが接着されてなる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の帯電防止剤は、ポリプロピレン系樹脂に添加した際優れた帯電防止効果を示すのみならず、ラミネートに用いた接着剤による性能低下を抑え、長期間に渡り帯電防止効果を発揮し続けることが可能である。
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、接着剤によって帯電防止性能が低下せず、長期間に渡り帯電防止効果に優れる。
本発明のフィルムは、接着剤による帯電防止性能が低下せず、長期間に渡り帯電防止効果に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】成分(A)の模式図。
図2】成分(A)が単層フィルム表面にブリードアウトした断面図。
図3】成分(A)の親水基の一部が親水層に吸着された断面図。
図4】接着剤を用いて貼り合わせたフィルムの断面図。
図5】共押出フィルムの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
〔帯電防止剤〕
本発明の帯電防止剤は、ジグリセリン脂肪酸エステルである成分(A)、脂肪族アミンエチレンオキサイド付加物脂肪酸エステルである成分(B)、グリセリン脂肪酸エステルである成分(C)及び脂肪族アミンエチレンオキサイド付加物である成分(D)を含み、前記成分(A)がジグリセリン脂肪酸モノエステルである成分(A-1)と、ジグリセリンと2以上の脂肪酸とのエステルである成分(A-2)とを含み、前記成分(A-1)と前記成分(A-2)との重量比(A-1/A-2)が80/20~20/80である。
【0024】
〔成分(A)〕
一般的に練り込み型帯電防止剤を使用したフィルムはラミネートされた際に帯電防止性能が減衰する傾向にあるが、成分(A)は本発明においてフィルムの帯電防止性発現に寄与する成分と、フィルムがラミネートされた際の帯電防止性の減衰の抑制に寄与する成分が複合したものである。
成分(A)は、ジグリセリン脂肪酸エステルである。
ジグリセリン脂肪酸エステルを構成する脂肪酸としては、例えば、酪酸、吉草酸、カプロン酸、ヘプチル酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、及びメリシン酸などの飽和脂肪酸;クロトン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エルカ酸、ネルボン酸、リノール酸、α-リノレン酸、エレオステアリン酸、ステアリドン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、イワシ酸、及びドコサヘキサエン酸などの不飽和脂肪酸が挙げられる。
中でも、本願効果を奏する観点から、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸が好ましく、ラウリン酸が特に好ましい。
【0025】
成分(A)は、ジグリセリンラウリン酸エステルを含むと、帯電防止性能の観点から好ましい。成分(A)は、ジグリセリンラウリン酸エステルを含む場合、前記成分(A)に占めるジグリセリンラウリン酸エステルの重量割合は、帯電防止性能の観点から、40重量%以上が好ましく、50重量%以上がより好ましく、60重量%以上がさらに好ましく、90重量%以上がさらに好ましい。
【0026】
(成分(A-1))
成分(A-1)は主に帯電防止性の発揮に寄与する成分である。成分(A-1)は、ジグリセリン脂肪酸モノエステルである。
成分(A-1)としては、ジグリセリン脂肪酸モノラウレート、ジグリセリン脂肪酸モノステアレート、ジグリセリン脂肪酸モノオレエートが挙げられ、なかでも、本願効果を発揮する観点から、ジグリセリン脂肪酸モノラウレートが好ましい。
【0027】
(成分(A-2))
成分(A-2)は主にラミネート後の帯電防止性の維持に寄与する成分である。成分(A-2)は、ジグリセリンと2以上の脂肪酸とのエステルである。具体的には、ジグリセリン脂肪酸ジエステル及びジグリセリン脂肪酸トリエステル、ジグリセリン脂肪酸テトラエステルから選ばれる少なくとも1種である。
成分(A-2)を構成する脂肪酸は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0028】
前記成分(A-1)と前記成分(A-2)との重量比(A-1/A-2)は、80/20~20/80であり、75/25~25/75が好ましく、70/30~30/70がより好ましく、60/40~40/60がさらに好ましい。80/20を超えると、ラミネート後のフィルムの帯電防止性が不足し、20/80未満では、練り込んだフィルムの即効的な帯電防止性が不足する。
【0029】
〔成分(B)〕
成分(B)は、ポリオレフィン樹脂との相溶性に優れた成分であり、帯電防止剤のポリオレフィン樹脂中での分散状態をコントロールするために使用する。成分(B)は脂肪族アミンエチレンオキサイド付加物脂肪酸エステルである。
本発明の防曇剤は、上記一般式(1)で示される成分(B-1)と、上記一般式(2)に示される成分(B-2)を含有すると、樹脂相溶性のバランスをとりやすいために好ましい。
【0030】
〔成分(B-1)〕
成分(B-1)は、脂肪族アミンエチレンオキサイド付加物モノ脂肪酸エステルであり、上記一般式(1)で示される化合物である。
上記一般式(1)中、Rは、アルキル基、アルケニル基、アルカジエニル基またはアルキニル基である。Rの炭素数は8~22である。
アルキル基としては、直鎖であっても分岐であってもよく、本願効果を発揮する観点から、直鎖が好ましい。
の炭素数は8~22であり、12~18が好ましく、14~18がより好ましく、16~18がさらに好ましい。炭素数が8未満であると、ポリプロピレン樹脂との相溶性が悪くブリード過多によるべたつきや黄変を引き起こす。一方、炭素数が22を超えると、ブリード抑制効果が強すぎるために帯電防止性を阻害する。
【0031】
の炭素数は、炭素数は7~21であり、好ましくは11~17、さらに好ましくは13~17、特に好ましくは15~17である。炭素数が7未満であると、ポリプロピレン樹脂との相溶性が悪くブリード過多によるべたつきや黄変を引き起こすことがある。一方、炭素数が21を超えると、ブリード抑制効果が強すぎるために帯電防止性を阻害する。
【0032】
n及びmはオキシエチレン基の平均付加モル数を示す。n及びmは0以上であり、n+mは2~3を満足する数である。
【0033】
成分(B-1)としては、特に限定されないが、たとえばラウリルジエタノールアミンモノラウレート、ラウリルジエタノールアミンモノミリステート、ラウリルジエタノールアミンモノパルミテート、ラウリルジエタノールアミンモノステアレート、ラウリルジエタノールアミンモノオレート、ミリスチルジエタノールアミンモノラウレート、ミリスチルジエタノールアミンモノミリステート、ミリスチルジエタノールアミンモノパルミテート、ミリスチルジエタノールアミンモノステアレート、ミリスチルジエタノールアミンモノオレート、パルミチルジエタノールアミンモノラウレート、パルミチルジエタノールアミンモノミリステート、パルミチルジエタノールアミンモノパルミテート、パルミチルジエタノールアミンモノステアレート、パルミチルジエタノールアミンモノオレート、ステアリルジエタノールアミンモノラウレート、ステアリルジエタノールアミンモノミリステート、ステアリルジエタノールアミンモノパルミテート、ステアリルジエタノールアミンモノステアレート、ステアリルジエタノールアミンモノオレート、オレイルジエタノールアミンモノラウレート、オレイルジエタノールアミンモノミリステート、オレイルジエタノールアミンモノパルミテート、オレイルジエタノールアミンモノステアレート、オレイルジエタノールアミンモノオレート等が挙げられ、1種または2種以上であっても良い。
【0034】
〔成分(B-2)〕
成分(B-2)は、脂肪族アミンエチレンオキサイド付加物ジ脂肪酸エステルであり、上記一般式(2)に示される化合物である。
上記一般式(2)中、Rは、アルキル基、アルケニル基、アルカジエニル基またはアルキニル基である。Rの炭素数は8~22である。
アルキル基としては、直鎖であっても分岐であってもよく、本願効果を発揮する観点から、直鎖が好ましい。
の炭素数は8~22であり、12~18が好ましく、14~18がより好ましく、16~18がさらに好ましい。炭素数が8未満であると、ポリプロピレン樹脂との相溶性が悪くブリード過多によるべたつきや黄変を引き起こすことがある。一方、炭素数が22を超えると、ブリード抑制効果が強すぎるために帯電防止性を阻害する。
【0035】
の炭素数は、好ましくは7~21、より好ましくは13~17、さらに好ましくは15~17である。炭素数が7未満であると、ポリプロピレン樹脂との相溶性が悪くブリード過多によるべたつきや黄変を引き起こすことがある。炭素数が22を超えると、ブリード抑制効果が強すぎるために帯電防止性を阻害することがある。
【0036】
o及びpはオキシエチレン基の平均付加モル数を示す。o及びpは0以上であり、o+pは2~3を満足する数である。
【0037】
成分(B-2)として具体的にはたとえばラウリルジエタノールアミンジラウレート、ラウリルジエタノールアミンジミリステート、ラウリルジエタノールアミンジパルミテート、ラウリルジエタノールアミンジステアレート、ラウリルジエタノールアミンジオレート、ミリスチルジエタノールアミンジラウレート、ミリスチルジエタノールアミンジミリステート、ミリスチルジエタノールアミンジパルミテート、ミリスチルジエタノールアミンジステアレート、ミリスチルジエタノールアミンジオレート、パルミチルジエタノールアミンジラウレート、パルミチルジエタノールアミンジミリステート、パルミチルジエタノールアミンジパルミテート、パルミチルジエタノールアミンジステアレート、パルミチルジエタノールアミンジオレート、ステアリルジエタノールアミンジラウレート、ステアリルジエタノールアミンジミリステート、ステアリルジエタノールアミンジパルミテート、ステアリルジエタノールアミンジステアレート、ステアリルジエタノールアミンジオレート、オレイルジエタノールアミンジラウレート、オレイルジエタノールアミンジミリステート、オレイルジエタノールアミンジパルミテート、オレイルジエタノールアミンジステアレート、オレイルジエタノールアミンジオレート等が挙げられ、1種または2種以上であっても良い。成分(B-1)および成分(B-2)の合成法について特に限定は無いが、アルキルジエタノールアミンと脂肪酸をエステル化反応する際に脂肪酸の反応比を調整することにより混合物を得たり、アルキルジエタノールアミンと脂肪酸を反応させた後に精製してそれぞれを別個に得たり、することができる。
【0038】
成分(B-1)と成分(B-2)の重量比(B-1/B-2)は50/50~90/10が好ましく、53/47~90/10がより好ましく、55/45~90/10がさらに好ましい。50/50未満では、帯電防止成分の疎水性が強くなり帯電防止成分のブリード不足が起こり、帯電防止性不足となることがある。一方、90/10超では、帯電防止成分の相溶性が下がることによって、べたつきや黄変が起こることがある。
【0039】
〔成分(C)〕
成分(C)は自身が帯電防止効果を持つのと同時に、本発明に使用される成分のうちで特に帯電防止成分全体の即効的なブリードアウトを促進させる成分であり、グリセリン脂肪酸エステルである。
【0040】
成分(C)はそのエステル化度の相違によって、グリセリンモノ脂肪酸エステル、グリセリンジ脂肪酸エステル、グリセリントリ脂肪酸エステルに分類され、いずれであってもよく、グリセリンモノ脂肪酸エステルとグリセリンジ脂肪酸エステルの混合物であるグリセリンセスキ脂肪酸エステルを使用してもよい。但し、帯電防止剤の親水性の観点から、グリセリンモノ脂肪酸エステル、あるいはグリセリンセスキ脂肪酸エステルであることが望ましい。
成分(C)が炭素数8~22の脂肪酸残基を有すると、熱可塑性樹脂との相溶性が良く、透明性が高く、帯電防止性に優れるために好ましい。
成分(C)の脂肪酸残基の炭素数は、好ましくは12~18、さらに好ましくは14~18、特に好ましくは16~18である。炭素数が8未満であると、ポリオレフィン樹脂との相溶性が悪くブリード過多による透明性不良や成形品表面のべたつきを引き起こすことがある。一方、炭素数が22を超えると、即効性を充分に発現できず帯電防止性が不足することがある。
【0041】
成分(C)としては、たとえばグリセリンモノラウレート、グリセリンセスキラウレート、グリセリンモノミリステート、グリセリンセスキミリステート、グリセリンモノパルミテート、グリセリンセスキパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンセスキステアレート、グリセリンモノオレート、グリセリンセスキオレート、グリセリンモノベヘネート、グリセリンセスキベヘネート等が挙げられ、1種または2種以上でもよい。
成分(C)の合成法について特に限定は無いが、たとえば、グリセリンと脂肪酸とをエステル化反応させたり、グリセリンエステルに脂肪酸エステルをエステル交換反応させたりする方法が挙げられる。この際、反応比率を調整することで混合物を得ることができる。また、それぞれの反応で得られた組成物について、別個に得られた精製物を混合して使用しても良い。
【0042】
〔成分(D)〕
成分(D)はブリードを補助する成分であり、帯電防止剤の凝集を防止する成分である。成分(D)を含まない場合、短期的には帯電防止剤全体のブリードが遅くなることで帯電防止性が十分に発揮されず、長期的には樹脂組成物の表面で帯電防止性成分の凝集や結晶化が起こり、帯電防止性や透明性の低下が起こる可能性がある。
成分(D)は脂肪族アミンエチレンオキサイド付加物である。前記成分(D)が上記一般式(3)で示されると樹脂への相溶性や樹脂の透明性の観点から好ましい。
【0043】
【化3】
【0044】
上記一般式(3)中、Rは、アルキル基、アルケニル基、アルカジエニル基またはアルキニル基である。Rの炭素数は8~22である。
アルキル基としては、直鎖であっても分岐であってもよく、本願効果を発揮する観点から、直鎖が好ましい。
の炭素数は8~22であり、12~18が特に好ましい。炭素数が8未満であると、表面に過剰ブリードし、成型品のべたつきの原因となる。一方、炭素数が22を超えると、ブリード速度が遅すぎるために帯電防止効果や凝集防止効果を発揮しなくなる。
q及びrはオキシエチレン基の平均付加モル数を示す。q及びrは0以上であり、q+rは2~3を満足する数である。
【0045】
成分(D)としては、例えばラウリルジエタノールアミン、ミリスチルジエタノールアミン、パルミチルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、オレイルジエタノールアミン、ベヘニルジエタノールアミン等が挙げられ、1種または2種以上でもよい。
【0046】
本発明の帯電防止剤に含有される成分(A)、成分(B)、成分(C)及び成分(D)の重量比については、成分(A)、成分(B)、成分(C)及び成分(D)の合計量を100重量部としたとき、成分(A)が20~70重量部、成分(B)が10~50重量部、成分(C)が5~50重量部、成分(D)が1~20重量部であると好ましく、成分(A)が30~60重量部、成分(B)が20~40重量部、成分(C)が10~40重量部、成分(D)が5~15重量部であるとさらに好ましい。該重量比が上記範囲を外れると、本発明の効果を発揮できないことがある。
また、単位重量当りの有効成分を高めるという観点から、帯電防止剤に占める成分(A)、成分(B)、成分(C)及び成分(D)の合計の重量割合は、好ましくは80~100重量%、より好ましくは85~95重量%である。
【0047】
本発明の帯電防止剤の水酸基価(OHv)とケン化価(Sv)との比率(OHv/Sv)は1.8~2.4が好ましく、さらに好ましくは1.85~2.35であり、特に好ましくは1.9~2.3である。OHv/Svが1.8未満であれば親水性不足により即効的な帯電防止性が低下することがあり、2.4を超えると親水性過多によりブリード過剰により経時的な透明性が低下することがある。ここでいう水酸基価およびケン化価は、後述の実施例に記載した方法によって求めたものである。
【0048】
また、本発明の帯電防止剤の水酸基価(OHv)とケン化価(Sv)との比率(OHv/Sv)が上記範囲内にあると、フィルムを別のフィルムにラミネートした際の帯電防止性も良好となる。この原理について詳細は不明であるが、熱可塑性樹脂に対する水酸基価及びケン化価の影響を考慮すると以下のように考察できる。フィルムをラミネートする際、通常帯電防止性を発揮させたい面の裏面に親水性の接着剤を塗布し、接着するが、この際帯電防止剤の親水性が高すぎるとフィルム内を拡散した帯電防止剤が接着面に過剰に定着し、帯電防止面の帯電防止性が損なわれる。逆に樹脂との相溶性が高すぎると帯電防止剤がフィルム表面へブリードせず、帯電防止性が発揮しない。したがって、水酸基価及びケン化価のバランスを取って、OHv/Sv=1.8~2.4の範囲を満足することによってラミネートフィルムへの帯電防止性の付与及び維持が可能となったものと考えられる。
【0049】
本発明の帯電防止剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、成分(A)、成分(B)、成分(C)、及び成分(D)以外のその他の成分を含有していてもよい。その他の成分としては、特に限定されず、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアリールエーテル、ポリオキシアルキレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、重合度3以上のポリグリセリンと脂肪酸とのエステル化物、ソルビタン脂肪酸エステル等の成分(A)、成分(B)、成分(C)及び成分(D)を除く非イオン界面活性剤;アルキル硫酸及びその塩、アルキルアリール硫酸及びその塩、高級脂肪酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸及びその塩、アルキルスルホン酸及びその塩、ジアルキルスルホコハク酸及びその塩、アルキルエーテルリン酸及びその塩等のアニオン界面活性剤;高級脂肪酸;高級アルコール;ソルビトール、ポリグリセリン等の多価アルコール;脂肪族炭化水素等が挙げられる。なお、成分(A)、成分(B)、成分(C)及び成分(D)を製造する際に用いられる原料であって、未反応のまま残存するグリセリン、ジグリセリン、脂肪族アミン、脂肪酸等もその他の成分に含まれるものとする。
【0050】
本発明の帯電防止剤は、上記で説明した各成分をそれぞれ混合することによって製造される。混合方法については、特に限定はなく、各成分を一挙または順次に混合してもよく、予めいくつかの成分を混合しておいて、残りの成分と混合してもよい。各成分の混合は溶融混合で行ってもよいし、熱可塑性樹脂に混合してもよく、熱可塑性樹脂の成形加工時に混合してもよい。
【0051】
〔ポリオレフィン系樹脂組成物〕
本発明のポリオレフィン系樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂と、上記の帯電防止剤とを含むものである。
ポリオレフィン系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-無水マレイン酸共重合体、プロピレン-無水マレイン酸共重合体等を挙げることができる。ポリオレフィン系樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、本発明の効果が顕著に発揮されるという観点からポリオレフィン系樹脂が、ポリプロピレンであることが好ましい。
【0052】
ポリオレフィン系樹脂組成物は、上記で説明したポリオレフィン系樹脂及び帯電防止剤以外に、さらに必要に応じて、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防曇剤、滑剤、難燃剤、着色剤、顔料、無機充填剤、可塑剤、造核剤等の添加剤を含んでいてもよい。これらの添加剤としては、従来公知のものを使用することができ、その配合量は目的に応じて適宜設定すればよい。
【0053】
ポリオレフィン系樹脂組成物は、成形材料の中間原料であるマスターバッチであってもよいし、成形に用いられる成形材料であってもよい。
ポリオレフィン系樹脂組成物に占める帯電防止剤の重量割合(以下、「帯電防止剤濃度」ということがある)は、樹脂組成物がマスターバッチであるか成形材料であるかによっても変動し、特に限定されるものではないが、好ましくは0.01~30重量%である。
また、ポリオレフィン系樹脂と帯電防止剤との配合比については、特に限定されないが、本発明の効果が顕著に発揮されるという観点から、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、本発明の帯電防止剤0.015~45重量部を配合することが好ましい。
以下、ポリオレフィン系樹脂組成物がマスターバッチの場合と、成形材料の場合とに分けて、それぞれの製造方法等を説明する。
【0054】
〔マスターバッチ〕
マスターバッチは成形品の製造工程における中間原料であり、着色剤や樹脂性能改質剤等の添加剤を高濃度に含有した樹脂組成物である。樹脂ペレットにマスターバッチを混合すると、添加剤を含まない樹脂ペレットに添加剤を単独で混合するよりも、ハンドリング性良く混合することができる。また、マスターバッチを使用することにより、低濃度の添加剤であっても分散性良く樹脂中に均一に混合することが可能となる。
【0055】
ポリオレフィン系樹脂組成物がマスターバッチである場合、このマスターバッチを原料として成形材料を製造する上で、分散の均一性やハンドリング性を向上させる目的から、帯電防止剤濃度は、好ましくは1~30重量%であり、より好ましくは5~20重量%である。帯電防止剤濃度が1重量%未満では、成形材料や成形加工品を作製する際に均一な濃度での混合性を確保できないうえ、成形材料を製造する場合にマスターバッチが大量に必要となり、コスト高となる。一方、帯電防止剤濃度が30重量%を超えると、相溶性不足によりマスターバッチの製造が困難になる。
【0056】
マスターバッチの製造方法としては、たとえば、通常のプラスチック成形機、すなわちバンバリーミキサー、ヘンシェルミキサー、ベント付スクリュー押出成形機、ニーダー等を使用して、ポリオレフィン系樹脂と本発明の帯電防止剤とを溶融混練、冷却後、ペレタイズしマスターバッチを作製する方法等を挙げることができる。
【0057】
〔成形材料〕
本発明において、成形材料とは、それ自体が成形加工されて、フィルム・シート等の最終製品となるものを意味する。
ポリオレフィン系樹脂組成物が成形材料である場合、帯電防止剤濃度は、好ましくは0.01~10重量%であり、より好ましくは0.03~5重量%である。帯電防止剤濃度が0.01重量%未満であると、十分な帯電防止性能が発揮されないことがある。一方、帯電防止剤濃度が10重量%を超えると、さらなる帯電防止性能の向上が認められないうえに、ポリオレフィン系樹脂の持つ透明性が損なわれることがある。
【0058】
成形材料の製造方法としては、例えば、(1)帯電防止剤とポリオレフィン系樹脂とを単に溶融混練する方法、(2)帯電防止剤を含むマスターバッチと熱可塑性樹脂とを溶融混練する方法、等を挙げることができる。成形材料の製造方法では、マスターバッチ製造と同様の通常のプラスチック成形機を用いることができる。
上記(2)の方法において、マスターバッチに含まれる樹脂及び溶融混練で用いる熱可塑性樹脂のうち、少なくとも一方がポリオレフィン系樹脂を含有していればよく、双方の樹脂が必ずしも同じ種類の樹脂である必要はないが、両者の分散均一性を向上するため、マスターバッチに含まれる樹脂と熱可塑性樹脂とが相溶性を有していることが好ましく、マスターバッチの嵩比重と熱可塑性樹脂の嵩比重とが概略一致しているとさらに好ましい。
【0059】
〔成形体〕
本発明の成形体は、上記のポリオレフィン系樹脂組成物を成形してなるものである。成形体としては、たとえば、インフレーションフィルムや2軸延伸フィルム等のフィルム、シート、射出成形品、ブロー成形品など様々な形状の成形加工品が挙げられる。これらの中でも、本発明の効果が最も顕著に発揮されるという観点から、成形体がフィルムであると特に好ましい。フィルムの厚みは、特に限定されないが、好ましくは1~500μmである。
成形体の製造方法としては、例えば、前記成形材料を加熱溶融した状態で、射出成形、ブロー成形、押出成形、熱成形(2軸延伸加工等)する方法等を挙げることができ、成形材料を成形する同様の方法であってもよい。
成形材料と成形体の製造は、連続して行なってもよく、たとえば、前記マスターバッチと熱可塑性樹脂を押出成形機で溶融混練、ついで、Tダイ、インフレーションダイ等によりフィルムに加工する方法が挙げられる。
これら成形体の用途としては、食品等の包装材、電線被覆材、ハウス・トンネル等の農業用資材、玩具・文具等の雑貨・日用品、壁紙等の建材等が挙げられる。
【0060】
〔積層フィルム〕
本発明のフィルムは単体でも使用できるが、基材フィルム、あるいは基材樹脂と組み合わせて積層フィルムとすることでより好適に使用できる。本発明の積層フィルムとしては、少なくとも、上記のポリオレフィン系樹脂組成物から形成された層(以下、「帯電防止層」ということがある)を有するものであれば、その他の構成は特に制限されないが、該帯電防止層を表面層として有するものが好ましい。なお、表面層とは、積層フィルムの最外層を意味する。積層フィルムの好ましい態様として、以下の(a)、(b)、(c)等が挙げられる。
(a)本発明のフィルムと、基材フィルムとを、ポリウレタン系接着剤又はポリエーテル系接着剤によってドライラミネートしてなる、積層フィルム。
(b)本発明のポリオレフィン系樹脂組成物を、基材フィルム上に押出ラミネートしてなる、積層フィルム。
(c)本発明のポリオレフィン系樹脂組成物と、基材熱可塑性樹脂組成物とを、共押出してなる、積層フィルム。
このような積層フィルムもまた、本発明の一つである。
【0061】
〔ドライラミネートフィルム〕
ドライラミネートフィルムは、少なくとも2枚以上の異種又は同種のフィルムを、接着剤を介して貼り合わせることで製造される積層フィルムである。図4は、本発明のドライラミネートフィルムの一例を示す断面図である。ドライラミネートフィルム10は、帯電防止層3と基材層6とが、接着層5を介して積層された構造を有している。ドライラミネートフィルムに使用される接着剤としては主にポリウレタン系接着剤、ポリエーテル系接着剤など、いずれも市販のものを適宜使用できる。
【0062】
従来、基材フィルムに対して帯電防止剤含有フィルムをドライラミネートすると、図4に示すように接着剤に含まれるイソシアネートやポリエーテルなどの親水性の高い成分に対してブリードした帯電防止剤が吸着し、帯電防止性能が損なわれる問題が存在した。
【0063】
本発明の特徴として、成分(A-1)と(A-2)の重量割合が特定の範囲にある成分(A)に対して成分(B)、成分(C)及び成分(D)を併用することで帯電防止剤の接着剤層への吸着を阻害し、フィルムをドライラミネートした後も帯電防止性能を保つことが挙げられる。帯電防止剤の水酸基価(OHv)とケン化価(Sv)との比率(OHv/Sv)が1.8~2.4の範囲内にあると、帯電防止剤のブリードのバランスが保たれるため特に好ましい。帯電防止剤全体の基材フィルムとして使用できるフィルムに特に制限はなく、たとえばポリオレフィンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリアミドフィルム、その他単層フィルム、複層フィルムなどを目的や用途に応じて適宜使用できる。
【0064】
〔押出ラミネートフィルム〕
押出ラミネートフィルムは基材フィルムに対して溶融樹脂を押出しながら接着することで製造される積層フィルムである。押出ラミネートフィルムでは通常、フィルム同士の接着性を向上するためにアンカーコート剤が使用される。アンカーコート剤を使用した場合積層フィルムの構成は図4と同様となる。押出ラミネートフィルムに使用される基材フィルムはドライラミネートフィルムと同様のものが使用できる。
従来の帯電防止剤を使用した場合、帯電防止成分がアンカーコート接着層へ吸着されることで帯電防止性能が損なわれる問題が存在する。
しかし、本発明の帯電防止剤を使用した場合、成分(A-1)と(A-2)の重量割合が特定の範囲にある成分(A)に対して成分(B)、成分(C)及び成分(D)を併用することで帯電防止剤が親水性の高いアンカーコート接着層への吸着が抑制されるため効果的に利用できる。帯電防止剤の水酸基価(OHv)とケン化価(Sv)との比率(OHv/Sv)が1.8~2.4の範囲内にあると、帯電防止剤のブリードのバランスが保たれるため特に好ましい。アンカーコート剤はポリウレタン系接着剤、ポリエーテル系接着剤が存在し、いずれも市販のものを適宜使用できる。
【0065】
〔共押出フィルム〕
共押出フィルムは溶融樹脂と溶融基材樹脂を同時に押出し、接着することで製造される積層フィルムである。図5は本発明の共押出フィルムの一例を示す断面図である。共押出フィルム11は、帯電防止層3と親水性基材層7とが直接接着して積層された構造を有している。共押出フィルムについてもドライラミネートフィルムと同様の基材樹脂を用いることができる。
従来の帯電防止剤では帯電防止剤を含む熱可塑性樹脂に対して親水性の高い異なる熱可塑性樹脂を基材樹脂として共押出した際、帯電防止成分が基材樹脂層へ吸着されることで帯電防止性能が損なわれる問題が存在する。
本発明の帯電防止剤を使用した場合、成分(A-1)を含む成分(A)に対して成分(B)、成分(C)及び成分(D)を併用することで親水性基材層への吸着が抑制されるため、効果的に利用できる。帯電防止剤の水酸基価(OHv)とケン化価(Sv)との比率(OHv/Sv)が1.8~2.4の範囲内にあると、帯電防止剤のブリードのバランスが保たれるため特に好ましい。基材樹脂としては、たとえばポリエステルやポリビニルアルコール、ポリアミドが適宜使用できる。
【実施例
【0066】
以下の実施例および比較例で本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例における帯電防止性樹脂組成物の物性評価は、下記の方法にて実施した。
【0067】
(水酸基価)
防曇剤の水酸基価(OHv)を医薬部外品原料規格水酸基価測定法によって測定する。
(ケン化価)
防曇剤のケン化価(Sv)を医薬部外品原料規格ケン化価測定法によって測定する。
なお、上記測定法は本願出願時に規定された測定法とする。
【0068】
(帯電防止性能評価)
ポリオレフィン系樹脂組成物の成形によって作製したフィルムを40℃で1日間、及び40℃で7日間保管する。
20℃、45%RHにコントロールされた恒温、恒湿室において、超絶縁計(東亜電波工業(株)製;SM-8310型)を使用してフィルム片の表面固有抵抗率を測定する。表面固有抵抗率1×1014Ω/□以下(1000×1011Ω/□以下)で帯電防止性能合格とした。
【0069】
(フィルム透明性評価)
ポリオレフィン系樹脂組成物の成形によって作製したフィルムを、製膜後40℃で30日間保管後に、色差・濁度測定器(日本電色工業製;COH-300A)を使用してフィルムのΔHaze(フィルム表面をエタノールで軽く洗い流す前後のHaze値の差)を測定する。
【0070】
(ドライラミネートフィルムの帯電防止性評価)
ポリオレフィン系樹脂組成物の成型によって作製されたフィルムを、ポリウレタン系接着剤を用いて別の熱可塑性樹脂フィルムにドライラミネートした後、上記帯電防止性評価と同様に得られたラミネートフィルム片の表面固有抵抗率を測定する。
表面固有抵抗率1×1014Ω/□以下(1000×1011Ω/□以下)で帯電防止性合格とした。
【0071】
(ドライラミネートフィルムの作製)
ポリウレタン系ラミネート用接着剤(三洋化成工業製;ポリボンドAY-651)を主剤:硬化剤:酢酸エチル(溶剤)=100重量部:15重量部:190重量部の割合で調製し、別のポリプロピレンフィルムにバーコーターを用いて塗布量3g/m2で塗布した後、60℃にて1分間乾燥し、溶剤を揮発させる。作製したポリプロピレンフィルムを接着面に貼り合わせ、60℃に保温したローラーで圧着し、40℃にて2日間保管したものを養生直後とした。さらに40℃にて7日間保管した。
【0072】
表1に示す配合割合にて成分(A)~成分(D)を溶融混合して帯電防止剤を調整した。次いで、ポリプロピレンホモポリマー(MFR=2.5g/10min)を準備し、帯電防止剤の濃度がポリプロピレン樹脂に対して10重量%となるように帯電防止剤を混合し、二軸押出成形機にて230℃で溶融混練してストランドを得、ペレタイザーでカットすることでマスターバッチを作製した。
【表1】
【0073】
次いで、得られたマスターバッチおよび別に用意したポリプロピレンホモポリマーを混合して、二軸押出成形機にて230℃で溶融混練し、Tダイより押出した。使用するマスターバッチと別に用意したポリプロピレンホモポリマーの混合割合を調整し、フィルムの含有帯電防止剤濃度を調整した。製造例1、2及び3のみ帯電防止剤0.8重量%、0.5重量%、1.0重量%の3種類フィルムを作製し、残りの製造例・製造実施例については0.8重量%で押出しを行った。
Tダイより押出しされた樹脂組成物を1軸延伸することで厚さ20μメートルのフィルムを作製し、得られたフィルムについて帯電防止性・透明性を測定した。また、前述した方法でドライラミネートしたフィルムについても、帯電防止面の表面固有抵抗率を測定した。その結果を表2、3に示す。
【表2】
【表3】
【0074】
表1~3から分かるように、実施例1~16の帯電防止剤は、ジグリセリン脂肪酸エステルである成分(A)、脂肪族アミンエチレンオキサイド付加物脂肪酸エステルである成分(B)、グリセリン脂肪酸エステルである成分(C)及び脂肪族アミンエチレンオキサイド付加物である成分(D)を含んだ帯電防止剤であって、水酸基価(OHv)とケン化価(Sv)との比率(OHv/Sv)が1.8~2.4の範囲にあり、ジグリセリン脂肪酸モノエステルである成分(A-1)と、下記一般式(3)で示されるジグリセリンと2以上の脂肪酸のエステルである成分(A-2)とを含み、(A-1)と(A-2)との重量比(A-1/A-2)が80/20~20/80の範囲内にあるため、本願の課題を解決できている。
一方、成分(A)~(D)のいずれかが含まれていない場合(比較例1~4)、(A-1/A-2)が80/20~20/80の範囲にない場合(比較例5,6)については、本願の課題が解決できていない。
【符号の説明】
【0075】
1:親水基
2:疎水基
3:帯電防止層
4:親水層
5:接着層
6:基材層
7:親水性基材層
10:ドライラミネートフィルム
11:共押出フィルム
図1
図2
図3
図4
図5