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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】ズームレンズ鏡筒
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/04 20210101AFI20221207BHJP
【FI】
G02B7/04 D
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018172522
(22)【出願日】2018-09-14
(65)【公開番号】P2020046462
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000133227
【氏名又は名称】株式会社タムロン
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】澤木 亮二
【審査官】越河 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-085485(JP,A)
【文献】特開2014-085486(JP,A)
【文献】特開2014-085482(JP,A)
【文献】特開2013-224973(JP,A)
【文献】特開2016-130765(JP,A)
【文献】特開2016-130763(JP,A)
【文献】特開2008-249982(JP,A)
【文献】特開2008-249983(JP,A)
【文献】特開2005-115169(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0252998(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02-7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
摺動筒と、
前記摺動筒の半径方向の一方側に設けられた回転筒と、
前記摺動筒の半径方向の他方側に設けられた筒部材と、を含み、
前記摺動筒は半径方向の一方側に突出する第1のコマ部材と、半径方向の他方側に突出する第2のコマ部材とを有し、
前記回転筒には前記第1のコマ部材が入り込むカム溝が形成されており、
前記筒部材には前記第2のコマ部材が入り込む縦溝が形成されており、
前記筒部材に対して前記回転筒が回転されることにより、前記摺動筒が光軸方向に繰り出されるズームレンズ鏡筒であって、
前記摺動筒は、前記第2のコマ部材の半径方向の他方側に突出する突出部を有し、
前記突出部は前記第2のコマ部材を構成する部材の一部により構成されており、
前記回転筒には前記カム溝に加えて補助カム溝が形成されており、
前記補助カム溝に前記第2のコマ部材の前記突出部が入り込んでいる、ことを特徴とするズームレンズ鏡筒。
【請求項2】
前記補助カム溝は、前記カム溝と同一の軌跡を有する形状である、請求項1に記載のズームレンズ鏡筒。
【請求項3】
前記第1のコマ部材は弾性材料からなるローラを有し、当該ローラが前記カム溝に入り込んでおり、
前記ローラの直径は前記カム溝の幅と略等しい、請求項1又は2に記載のズームレンズ鏡筒。
【請求項4】
前記第2のコマ部材の前記突出部は、前記補助カム溝の側面との間に隙間が形成された状態で前記補助カム溝内に入り込んでいる、請求項3に記載のズームレンズ鏡筒。
【請求項5】
前記突出部の材質は、前記ローラの材質よりも硬い、請求項3又は4に記載のズームレンズ鏡筒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ズームレンズ鏡筒に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ズームレンズ鏡筒におけるズーミングの機構として、カムフォロアが立設された第1の鏡筒と、カム溝が形成された第2の鏡筒とを用い、カムフォロアをカム溝に係合させ、第1の鏡筒を第2の鏡筒に対して回転させることにより、第1の鏡筒を進退させる構成が知られている。
【0003】
このようなズームレンズ鏡筒を誤って落下してしまうと、カムフォロアがカム溝から脱落したり、カムフォロアがカム溝の縁に衝突してカム溝の周縁部に破損等の変形が生じてしまったりする。カム溝に変形が生じると、スムーズなズーミング動作を行うことができなくなる。
【0004】
これに対して、特許文献1には、駆動枠に設けられた同一形状のカムピン及び脱落防止用ピンを、カム枠に設けられたカム溝及び脱落防止用溝にそれぞれ係合させることにより、カムピンがカム溝から脱落するのを防止する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-128188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された構成では、新たに脱落防止用ピンを追加する必要があり、部品点数が増加してしまう。
【0007】
本発明は、上記の問題に鑑みなされたものであり、部品点数が増加することなく、落下などにより衝撃が生じた場合でも、スムーズなズーミング動作を維持することができるズームレンズ鏡筒を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のズームレンズ鏡筒は、摺動筒と、摺動筒の半径方向の一方側に設けられた回転筒と、摺動筒の半径方向の他方側に設けられた筒部材と、を含み、摺動筒は半径方向の一方側に突出する第1のコマ部材と、半径方向の他方側に突出する第2のコマ部材とを有し、回転筒には第1のコマ部材が入り込むカム溝が形成されており、筒部材には第2のコマ部材が入り込む溝が形成されており、筒部材に対して回転筒が回転されることにより、摺動筒が光軸方向に繰り出されるズームレンズ鏡筒であって、摺動筒は、第2のコマ部材の半径方向の他方側に突出する突出部を有し、回転筒にはカム溝に加えて補助カム溝が形成されており、補助カム溝に第2のコマ部材の突出部が入り込んでいる、ことを特徴とする。
【0009】
上記構成の本発明によれば、摺動筒に衝撃が加わった場合であっても、第2のコマ部材の突出部が補助カム溝の縁にぶつかり、第1のコマ部材がカム溝に衝突する際の衝撃を削減又は無くすことができる。これにより、第1のコマ部材又はカム溝が破損することを防止し、スムーズなズーミング動作を維持することができる。また、第2のコマ部材の突出部を利用しているため、新たな部材を設ける必要がなく、部材点数の増加を防止できる。
【0010】
また、本発明において好ましくは、補助カム溝は、カム溝と同一の軌跡を有する形状である。
上記構成の本発明によれば、スムーズなズーミングを維持することができるとともに、補助カム溝を形成するためのスペースを容易に確保することができる。
【0011】
また、本発明において好ましくは、第1のコマ部材は弾性材料からなるローラを有し、ローラがカム溝に入り込んでおり、ローラの直径はカム溝の幅と略等しい。
【0012】
上記構成の本発明によれば、摺動筒に衝撃が加わった場合であっても、第1のコマ部材のローラが弾性変形する。これにより、第1のコマ部材又はカム溝が破損することをより確実に防止できる。
【0013】
また、本発明において好ましくは、第2のコマ部材の突出部は、補助カム溝の側面との間に隙間が形成された状態で補助カム溝内に入り込んでいる。
【0014】
上記構成の本発明によれば、ズーミング時には、第1のコマ部材及びカム溝により摺動筒が案内されるため、スムーズなズーミング動作を維持することができる。そして、摺動筒に衝撃が加わり、第1のコマ部材のローラが弾性変形すると、第2のコマ部材の補助カム溝の側部と当接し、第1のコマ部材又はカム溝が破損することを防止できる。
【0015】
また、本発明において好ましくは、突出部の材質は、ローラの材質よりも硬い。
上記構成の本発明によれば、衝撃が加わった場合に第2のコマ部材が補助カム溝の側部と当接すると、ローラに作用する衝撃が非常に小さくなるため、ローラの破損を防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、部品点数が増加することなく、落下などにより衝撃が生じた場合でも、スムーズなズーミング動作を維持することができるズームレンズ鏡筒を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態のズームレンズ鏡筒を示す光軸に沿った縦断面図であり、広角状態を示す。
図2】第1実施形態のズームレンズ鏡筒を示す光軸に沿った縦断面図であり、図2は望遠状態を示す。
図3図1に示すズームレンズ鏡筒の内側固定筒及び第1回転筒を示す斜視図である。
図4図1に示すズームレンズ鏡筒における摺動筒、外筒、第2回転筒及び、固定筒を示す斜視図である。
図5図1に示すズームレンズ鏡筒の摺動筒のカムフォロアを拡大して示す断面図である。
図6図1に示すズームレンズ鏡筒の摺動筒の直進コマを拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のズームレンズ鏡筒の一実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1及び図2は、第1実施形態のズームレンズ鏡筒を示す光軸に沿った縦断面図であり、図1は広角状態を示し、図2は望遠状態を示す。
図1及び図2に示すように、本実施形態の鏡筒1は、第1レンズ群A、第2レンズ群B、第3レンズ群C、第4レンズ群D、及び第5レンズ群Eを備える。第4レンズ群Dは、手振れ防止のために光軸と直交する方向へシフトされるシフトレンズ群を含む。
【0019】
ズームレンズ鏡筒1は、カメラボディーに取り付けられるマウント2と、このマウント2に一体の外側固定筒4及び内側固定筒6と、内側固定筒6の内側に配置された第1回転筒10と、を有する。外側固定筒4は結像側の後方外側固定筒4Aと、被写体側の前方外側固定筒4Bとが接続されて構成されている。前方外側固定筒4Bの外周には、ズーム操作リング22が回転可能に配置されている。また、後方外側固定筒4Aの外周にはフォーカス操作リング20が回転可能に配置されている。
【0020】
図3は、図1に示すズームレンズ鏡筒の内側固定筒及び第1回転筒を示す斜視図である。同図に示すように、内側固定筒6は、被写体側の前方円筒部6Aと、結像側の後方円筒部6Bとが接続されてなる。前方円筒部6Aは後方円筒部6Bよりも径が大きく、前方円筒部6Aと後方円筒部6Bとは段状に接続されている。また、第1回転筒10は被写体側の前方円筒部10Aと、結像側の後方円筒部10Cと、前方円筒部10A及び後方円筒部10Cとの間の中間円筒部10Bとが接続されてなる。前方円筒部10Aは中間円筒部10Bよりも径が大きく、前方円筒部10Aと中間円筒部10Bとは段状に接続されおり、中間円筒部10Bは後方円筒部10Cよりも径が大きく、中間円筒部10Bと後方円筒部10Cとは段状に接続されている。
【0021】
また、図1及び図2に示すように、内側固定筒6の外側には、第2回転筒8が配置され、第2回転筒8の外側には、摺動筒12が配置されている。また、摺動筒12の外側、かつ、前方外側固定筒4Bの内側には外筒(筒部材)14が配置されている。第1回転筒10と第2回転筒8とは先端部で連結されており、第1回転筒10及び第2回転筒8は連動して回転しながら進退する。
【0022】
図4は、図1に示すズームレンズ鏡筒における摺動筒、外筒、第2回転筒及び、固定筒を示す斜視図である。
第2回転筒8の結像側端部の内面にはカムフォロア8Dが立設されている。また、内側固定筒6の前方円筒部6Aには被写体側に向かって周方向に所定の方向に傾斜するカム溝6aが形成されている。第2回転筒8のカムフォロア8Dは、内側固定筒6のカム溝6aに嵌まり込んでいる(係合している)。これにより、ズーム操作リング22が回転されると、ズーム操作リング22に連動して、内側固定筒6に対して第1回転筒10及び第2回転筒8が回転し、光軸方向に進退する。
【0023】
外筒14は後端部の外面に直進コマ14Aが形成されており、この直進コマ14Aは外側固定筒4の前方外側固定筒4Bの内面に形成された光軸方向に延びる縦溝に嵌まり込んでいる。これにより、外筒14は、回転が拘束されるとともに、前後方向に進退可能である。
【0024】
摺動筒12は後端部の外面に直進コマ(第2のコマ部材)12Aが形成されており、この直進コマ12Aは外筒14の内面に形成された光軸方向に延びる縦溝14Bに嵌まり込んでいる。これにより、摺動筒12は、回転が拘束されるとともに、外筒14に対して前後方向に進退可能である。
【0025】
第2回転筒8は外面に、被写体側に向かって所定の周方向に傾斜して延びるようにカム溝8Aが形成されている。このカム溝8Aには摺動筒12の後端部の内面に立設されたカムフォロア(第1のコマ部材)12Bが嵌まり込んでいる。また、第2回転筒8の後端部には周方向に延びる横溝8Bが形成されている。この横溝8Bには、外筒14の後端部の内面に立設されたコマ14Cが嵌まり込んでいる。さらに、周方向に隣接するカム溝8Aの間には、カム溝8Aと同形状、すなわち、同一の軌跡を有する形状の補助カム溝8Cが形成されている。カム溝8A及び補助カム溝8Cは周方向に等間隔で設けられている。
【0026】
図5は、図1に示すズームレンズ鏡筒の摺動筒のカムフォロアを拡大して示す断面図である。また、図6は、図1に示すズームレンズ鏡筒の摺動筒の直進コマを拡大して示す断面図である。図5に示すように、摺動筒12のカムフォロア12Bは、ビス60と、カムフォロア軸62と、ローラ64とを備える。カムフォロア軸62は円盤状であり、中心に貫通孔62Aが形成されている。カムフォロア12Bは、カムフォロア軸62を摺動筒12の内面の貫通孔12Cに当たる位置に配置し、ビス60を摺動筒12の外側から貫通孔12Cを挿通させ、ビス60の先端部をカムフォロア軸62の貫通孔62Aに螺合させることにより摺動筒12に取り付けられている。カムフォロア軸62の先端部62Bは他の部位に比べて小径になっており、この先端部62Bにローラ64が回転自在に取り付けられている。ローラ64は、例えば、ゴムなどの弾性変形可能な材料により形成されている。カムフォロア12Bは取り付け状態において、ビス60の頭部が摺動筒12の外面から突出せず、カムフォロア軸62及びローラ64が内面から突出している。カムフォロア12Bのローラ64の外径は、第2回転筒8のカム溝8Aの幅と略等しくなっている。カムフォロア12Bは、ローラ64がカム溝8Aの内面に当接した状態で、カム溝8Aに係合している。
【0027】
図6に示すように、摺動筒12の直進コマ12Aは、ビス70と、コマ部材72と、ナット部材74とを備える。コマ部材72は円盤状であり、中心に貫通孔72Aが形成されている。直進コマ12Aは、摺動筒12の外面の貫通孔12Dに当たる位置にコマ部材72を配置し、ビス70をコマ部材72の貫通孔72A、及び、摺動筒12の貫通孔12Dを挿通させ、ビス70の先端部にナット74を締め付けることにより、摺動筒12に取り付けられている。直進コマ12Aを摺動筒12に取り付けた状態において、コマ部材72が摺動筒12の外面から突出しており、ナット74が摺動筒の内面から突出している。コマ部材72は、外筒14の縦溝14Bに入り込んでおり、また、ナット74が第2回転筒8の補助カム溝8C内に入り込んでいる。ナット74は円形であり、ナット74の直径は補助カム溝8Cの幅よりもわずかに小さくなっており、ナット74と補助カム溝8Cの側面との間には隙間が設けられている。直進コマ12Aのナット74は、好ましくは、真鍮又はステンレスなどの金属等のカムフォロア12Bのローラ64よりも硬い材料で形成されている。なお、このナット74と補助カム8Cの間の隙間は、ローラ64の半径方向の厚みよりも小さい。
【0028】
これら直進コマ12A及びカムフォロア12Bは摺動筒12に周方向に等間隔で設けられている。カムフォロア12Bが摺動筒12のカム溝8Aに沿って移動すると、これにともない、ナット74が補助カム溝8C内を移動する。なお、本実施形態では、カム溝8Aと補助カム溝8Cとは同形状であるが、これに限らず、例えば、補助カム溝8Cに入り込むナット74の外径が大きい場合には、これに合わせて幅を広げてもよく、要するに、カムフォロア12Bがカム溝8Aに沿って移動する際に、ナット74が補助カム溝8C内を移動可能であるように、補助カム溝8Cはカム溝8Aに対応する形状であればよい。
【0029】
このような構成により、第1回転筒10に連動して第2回転筒8が回転すると、第2回転筒8は外筒14とともに光軸方向に移動し、さらに、摺動筒12が第2回転筒8に対して光軸方向に進退する。
【0030】
図1及び図2に示すように、第1レンズ群Aは、第1レンズ枠30により囲まれて保持されている。第1レンズ枠30は摺動筒12の先端部の内側に取り付けられている。上述の通り、内側固定筒6に対して第1回転筒10が回転されると、第2回転筒8が光軸方向に進退するとともに、摺動筒12が第2回転筒8に対して進退する。
【0031】
第2レンズ群Bは、第2レンズ枠32により囲まれて保持されている。第2レンズ枠32の外周面にはコマ32Aが立設されている。コマ32Aは、第1回転筒10に形成された縦溝10aと、内側固定筒6のカム溝6cに入り込んでいる。これにより、第2レンズ枠32は、内側固定筒6に対して第1回転筒10が回転しながら進退すると、第1回転筒10と連動して回転するとともに、第1回転筒10に対して進退する。
【0032】
第3レンズ群Cは、第3レンズ枠34により囲まれて保持されている。第3レンズ枠34の外周面にはコマ34Aが立設されている。コマ34Aは、第1回転筒10に形成されたカム溝10bに入り込んでいる。また、第3レンズ群Cは、第4レンズ群Dから延びるガイド部材(図示せず)により回転が拘束されている。これにより、第3レンズ枠34は、内側固定筒6に対して第1回転筒10が回転しながら進退すると、回転することなく、第1回転筒10に対して進退するように構成されている。
【0033】
第4レンズ群Dは、第4レンズ枠36により囲まれて保持されている。第4レンズ枠36の外周面にはコマ36Aが立設されている。コマ36Aは、第1回転筒10に形成された横溝10cと、内側固定筒6の内面に形成された縦溝(図示せず)に入り込んでいる。これにより、第1回転筒10が内側固定筒6に対して回転しながら進退すると、第4レンズ枠36は回転することなく、第1回転筒10とともに進退する。
【0034】
第5レンズ群は、第5レンズ枠38により囲まれて保持されている。第5レンズ枠38の外周面にはコマ38Aが立設されている。コマ38Aは、第1回転筒10に形成されたカム溝10dと、第4レンズ枠36に形成された縦溝(図示せず)に入り込んでいる。これにより、第5レンズ枠38は、内側固定筒6に対して第1回転筒10が回転されると、回転することなく、第1回転筒10に対して進退するように構成されている。
【0035】
また、ズームレンズ鏡筒1は、第2レンズ群Bと第3レンズ群Cとの間に配置された絞り機構40を備える。
【0036】
以下、本実施形態のズームレンズ鏡筒におけるズーミング操作について説明する。
ズームレンズ鏡筒1は、マウント2をカメラボディーに取り付けて使用される。マウント2をカメラボディーに取り付けることにより、外側固定筒4及び内側固定筒6がカメラボディーに対して固定される。ズーム操作は、ズーム操作リング22を回転させることにより行うことができる。ズーム操作リング22を回転させると、これと連動して第1回転筒10及び第2回転筒8が回転する。
【0037】
第1回転筒10が内側固定筒6に対して回転されると、第1回転筒10は光軸方向に移動する。また、第1回転筒10が内側固定筒6に対して回転されると、第2、第3、第4、第5レンズ枠32、34、36、38がそれぞれ、光軸方向に移動する。
【0038】
さらに、第2回転筒8が回転すると、第2回転筒8は外筒14とともに光軸方向に移動し、さらに、摺動筒12が第2回転筒8に対して光軸方向に進退する。これにより、第1レンズ枠30が光軸方向に移動する。
これにより、各レンズ群が光軸方向に移動し、ズーミングが行われる。
【0039】
ここで、ズームレンズ鏡筒1をカメラに取り付けた状態で落下し、摺動筒12が地面に衝突すると、摺動筒12に衝撃が加わる。摺動筒12に衝撃が加わると、まず、カムフォロア12Bのローラ64が第2回転筒8のカム溝8Aに当接しているため、ローラ64がカム溝8Aの側面とカムフォロア軸62に挟まれた部分が圧縮される。このようにローラ64の一部が圧縮されると、直進コマ12Aのナット74の側部が補助カム溝8Cの側面に当接する。このため、ローラ64がこれ以上圧縮変形することなく、カムフォロア12B及びカム溝8Aに過度の力が作用するのを防止できる。これにより、カムフォロア12B及びカム溝8Aの破損を防止できる。
【0040】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下の効果が奏される。
本実施形態によれば、摺動筒12に衝撃が加わった場合であっても、直進コマ12Aのナット74が補助カム溝8Cの縁にぶつかり、カムフォロア12Bがカム溝8Aに衝突する際の衝撃を無くすことができる。これにより、カムフォロア12B又はカム溝8Aが破損することを防止し、スムーズなズーミング動作を維持することができる。また、直進コマ12Aのナット74を利用しているため、新たな部材を設ける必要がなく、部材点数の増加を防止できる。
【0041】
また、本実施形態では、補助カム溝8Cは、カム溝8Aと同一の軌跡を有する形状である。これにより、スムーズなズーミングを維持することができるとともに、補助カム溝8Cを形成するためのスペースを容易に確保することができる。
【0042】
また、本実施形態では、カムフォロア12Bは弾性材料からなるローラ64を有し、ローラ64がカム溝8Aに入り込んでおり、ローラ64の直径はカム溝8Aの幅と略等しい。このような本実施形態によれば、摺動筒12に衝撃が加わった場合であっても、カムフォロア12Bのローラ64が弾性変形する。これにより、カムフォロア12B又はカム溝8Aが破損することをより確実に防止できる。
【0043】
また、本実施形態では、直進コマ12Aのナット74は、補助カム溝8Cの側面との間に隙間が形成された状態で、補助カム溝8C内に入り込んでいる。このような本実施形態によれば、ズーミング時には、カムフォロア12B及びカム溝8Aにより摺動筒12が案内されるため、スムーズなズーミング動作を維持することができる。そして、摺動筒12に衝撃が加わり、カムフォロア12Bのローラ64が弾性変形すると、直進コマ12Aの補助カム溝8Cの側部と当接し、カムフォロア12B又はカム溝8Aが破損することを防止できる。
【0044】
また、本実施形態では、直進コマ12Aのナット74の材質は、ローラ64の材質よりも硬い。これにより、衝撃が加わった場合に直進コマ12Aが補助カム溝8Cの側部と当接すると、ローラ64に作用する衝撃が非常に小さくなるため、ローラ64の破損を防止することができる。
【0045】
なお、本実施形態では、摺動筒12の半径方向外側に縦溝14Bが形成された外筒14が配置され、摺動筒12の半径方向内側にカム溝8A及び補助カム溝8Cが形成された第2回転筒8が配置された場合について説明したが、これに限らず、カム溝及び補助カム溝が形成された回転筒を摺動筒の半径方向外側に配置し、縦溝が形成された縦溝筒を摺動筒の半径方向内側に配置した場合であっても、本発明を適用できる。
【0046】
また、本実施形態では、直進コマ(第2のコマ部材)12Aのコマ部材72が外筒14の縦溝14Bに入り込んでいる場合について説明したが、これに限らず、第2のコマ部材は、カム溝に嵌まり込んでいてもよい。
【0047】
また、本実施形態では、筒部材が回転しない外筒14である場合について説明したが、筒部材は回転する部材であってもよい。この場合には、回転筒(第2回転筒8)と、筒部材とが異なる回転角度で回転することにより、筒部材と回転筒とが相対的に回転されれば本発明を適用できる。
【0048】
また、本実施形態では、補助カム溝8Cの形状が、カム溝8Aと同一軌跡の形状である場合に説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、補助カム溝8Cの物体側の傾斜がカム溝8Aよりも緩くなっていてもよい。このような構成によれば、落下した際の衝撃をより効率よく吸収することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 ズームレンズ鏡筒
2 マウント
4 外側固定筒
4A 後方外側固定筒
4B 前方外側固定筒
6 内側固定筒
6A 前方円筒部
6B 後方円筒部
6a カム溝
6c カム溝
8 第2回転筒
8A カム溝
8B 横溝
8C 補助カム溝
8D カムフォロア
10 第1回転筒
10A 前方円筒部
10B 中間円筒部
10C 後方円筒部
10a 縦溝
10b カム溝
10c 横溝
10d カム溝
12 摺動筒
12A 直進コマ
12B カムフォロア
12C 貫通孔
12D 貫通孔
14 外筒
14A 直進コマ
14B 縦溝
14C コマ
20 フォーカス操作リング
22 ズーム操作リング
30 第1レンズ枠
32 第2レンズ枠
32A コマ
34 第3レンズ枠
34A コマ
36 第4レンズ枠
36A コマ
38 第5レンズ枠
38A コマ
40 絞り機構
60 ビス
62 カムフォロア軸
62A 貫通孔
62B 先端部
64 ローラ
70 ビス
72 コマ部材
72A 貫通孔
74 ナット
A 第1レンズ群
B 第2レンズ群
C 第3レンズ群
D 第4レンズ群
E 第5レンズ群
図1
図2
図3
図4
図5
図6