(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】車載用バッテリ
(51)【国際特許分類】
H01M 50/284 20210101AFI20221207BHJP
B60L 1/00 20060101ALI20221207BHJP
B60L 50/64 20190101ALI20221207BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20221207BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20221207BHJP
H01M 10/647 20140101ALI20221207BHJP
H01M 10/6557 20140101ALI20221207BHJP
H01M 10/6563 20140101ALI20221207BHJP
H01M 50/249 20210101ALI20221207BHJP
H01M 50/291 20210101ALI20221207BHJP
H01M 50/298 20210101ALI20221207BHJP
H01M 50/30 20210101ALI20221207BHJP
H01M 50/569 20210101ALI20221207BHJP
【FI】
H01M50/284
B60L1/00 L
B60L50/64
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/647
H01M10/6557
H01M10/6563
H01M50/249
H01M50/291
H01M50/298
H01M50/30
H01M50/569
(21)【出願番号】P 2018174802
(22)【出願日】2018-09-19
【審査請求日】2021-08-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100147913
【氏名又は名称】岡田 義敬
(74)【代理人】
【識別番号】100165423
【氏名又は名称】大竹 雅久
(74)【代理人】
【識別番号】100091605
【氏名又は名称】岡田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100197284
【氏名又は名称】下茂 力
(72)【発明者】
【氏名】横山 裕
(72)【発明者】
【氏名】原 俊之
(72)【発明者】
【氏名】池田 駿介
(72)【発明者】
【氏名】酒井 一樹
【審査官】松嶋 秀忠
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-157982(JP,A)
【文献】特開2015-195103(JP,A)
【文献】特開2013-067381(JP,A)
【文献】特開2011-249107(JP,A)
【文献】特開2017-162706(JP,A)
【文献】特開2013-077500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20-598
H01M 10/613
H01M 10/625
H01M 10/647
H01M 10/6563
H01M 10/6557
B60L 1/00
B60L 50/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリケース内に少なくとも第1の電池モジュールと、第2の電池モジュールと、前記第1の電池モジュール及び前記第2の電池モジュールを制御する制御機器と、が収納されている車載用バッテリにおいて、
前記第1の電池モジュールの電極端子が形成される第1の主面は、前記第2の電池モジュールの電極端子が形成される第1の主面と対向して配設され、
前記制御機器は、前記第1の電池モジュールの前記第1の主面と前記第2の電池モジュールの前記第1の主面との間に配設されると共に、前記第1の電池モジュール及び前記第2の電池モジュールと電気的に接続し
、
前記第1の電池モジュール、前記第2の電池モジュール及び前記制御機器を固定する固定ブラケットを更に有し、
前記固定ブラケットが、前記バッテリケースに固定されていることを特徴とする車載用バッテリ。
【請求項2】
前記第1の電池モジュールの前記第1の主面及び前記第2の電池モジュールの前記第1の主面には、それぞれ前記制御機器と接続する電池側コネクタ部が形成され、
前記制御機器の第1の主面及び前記第1の主面の反対側に位置する第2の主面には、それぞれ前記第1の電池モジュールまたは前記第2の電池モジュールと接続する制御側コネクタ部が形成され、
前記第1の電池モジュール及び前記第2の電池モジュールと前記制御機器とは、前記電池側コネクタ部及び前記制御側コネクタ部を介して電気的に接続していることを特徴とする請求項1に記載の車載用バッテリ。
【請求項3】
前記バッテリケース内にはジャンクションボックスが更に収納され、
前記ジャンクションボックスは、前記第1の電池モジュールの前記第1の主面の反対側に位置する第2の主面側または前記第2の電池モジュールの前記第1の主面の反対側に位置する第2の主面側に位置する前記固定ブラケットに対して固定されていることを特徴とする
請求項1または請求項2に記載の車載用バッテリ。
【請求項4】
前記ジャンクションボックスには、リレーが配設され、
前記固定ブラケットは、前記第1の電池モジュールの前記第2の主面または前記第2の電池モジュールの前記第2の主面と対向する前記ジャンクションボックス
の主面の端部近傍から前記リレーの配設領域の近傍まで延在して配設されていることを特徴とする
請求項3に記載の車載用バッテリ。
【請求項5】
前記バッテリケースの底面には、
一方向に延在する少なくとも3列の補強用突起部と、
前記補強用突起部の間に形成され、前記一方向に延在する第1の冷却用風路及び第2の冷却用風路と、が形成され、
前記第1の冷却用風路は、前記一方向に沿って前記第1の電池モジュールの下方に配設され、前記第2の冷却用風路は、前記一方向に沿って前記第2の電池モジュールの下方に配設されていることを特徴とする
請求項2に記載の車載用バッテリ。
【請求項6】
前記バッテリケースの前記底面の中央に位置する前記補強用突起部は、その両側に位置する前記補強用突起部よりも幅広く形成され、
前記中央に位置する前記補強用突起部の上面には、前記第1の主面側の前記第1の電池モジュール、前記制御機器及び前記第1の主面側の前記第2の電池モジュールが配設されていることを特徴とする
請求項5に記載の車載用バッテリ。
【請求項7】
前記第1の電池モジュールの前記第1の主面と前記制御機器の前記第1の主面との間には、前記一方向に延在する第1の排煙用風路が配設され、
前記第2の電池モジュールの前記第1の主面と前記制御機器の前記第2の主面との間には、前記一方向に延在する第2の排煙用風路が配設されていることを特徴とする
請求項5または
請求項6に記載の車載用バッテリ。
【請求項8】
前記制御機器の上方には、前記一方向に沿って前記バッテリケースの側面間を架橋する補強用部材が配設されていることを特徴とする
請求項5から
請求項7のいずれか1項に記載の車載用バッテリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用バッテリに関し、特に、バッテリケース内に収納される2つの電池モジュール間に、上記電池モジュールに接続された制御機器を配設することで、その小型化や軽量化を実現すると共に、組み付け作業性や作業安全性を向上させる車載用バッテリに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の電池パック100に関し、以下に説明する
図8(A)及び
図8(B)に示す構造が知られている。
図8(A)は、従来の電池パック100を説明する分解斜視図である。
図8(B)は、従来の電池パック100の内部構造を説明する断面図である。
【0003】
図8(A)に示す如く、電池パック100は、主に、筐体101と、その筐体101内に配設される電池モジュール102、103、104と、ジャンクションボックス105と、中継回路106、107と、を有している。そして、各電池モジュール102~104には、それぞれ自らの充電状態の検出や制御を行う監視ECU(Electronic Control Unit)が搭載されている。尚、ジャンクションボックス105には、各電池モジュール102~104の監視及び制御等を行う電池制御ECU(図示せず)が搭載されている。
【0004】
図示したように、筐体101は、筐体本体108と、天板部109と、から構成されている。更に、筐体本体108は、本体部110と、側板部111と、から構成されている。そして、電池モジュール102、ジャンクションボックス105及び中継回路106は、本体部110に対して固定されている。また、電池モジュール103、104及び中継回路107は、側板部111に対して固定されている。
【0005】
図8(B)に示す如く、電池モジュール102、103、104の各接続端子102A、103A、104A、ジャンクションボックス105の接続端子105A及び中継回路106、107の各接続端子106A、107Aは、筐体101内部の中央部に向いて配置され、それぞれの接続端子102A~107A同士が対向している。そして、接続端子102A~107A間は、適宜、ハーネス112により電気的に接続されている。この構造により、各電池モジュール102~104等は、ジャンクションボックス105内の電池制御ECUにより監視や制御等が成されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、電池パック100では、筐体101が、天板部109、本体部110及び側板部111に分割された構造となることで、電池モジュール102~104等の組み付け作業を容易にしている。
【0008】
しかしながら、電池モジュール102、ジャンクションボックス105及び中継回路106は、それぞれ本体部110に対して個別に組み付けられる。同様に、電池モジュール103、104及び中継回路107は、側板部111に対して個別に組み付けられる。その後、筐体101の内部にて、各接続端子102A~107Aは、適宜、ハーネス112により電気的に接続される。つまり、筐体101内に上記ハーネス112を配線する作業スペースを確保する必要があり、筐体101の小型化を実現し難いという課題がある。また、筐体101に対して電池モジュール102~104等の各部品を個別に組み付けるため作業効率が悪いという課題がある。
【0009】
また、筐体101内の狭い作業スペースにて、ハーネス112を各接続端子102A~107Aに対して接続する作業中等に、作業員の手が各接続端子102A~107Aや電極等に接触し、感電する恐れがある等、作業安全性を確保し難いという課題がある。
【0010】
また、電池モジュール102~104等の各接続端子102A~107Aが、筐体101内部にて対向して配置されることで、車両が側面から衝突された際に、筐体101も変形し、各接続端子102A~107A同士が接触し、スパークが発生する恐れがあるという課題がある。
【0011】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、バッテリケース内に収納される2つの電池モジュール間に、上記電池モジュールに接続された制御機器を配設することで、その小型化や軽量化を実現すると共に、組み付け作業性や作業安全性を向上させる車載用バッテリに関する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の車載用バッテリでは、バッテリケース内に少なくとも第1の電池モジュールと、第2の電池モジュールと、前記第1の電池モジュール及び前記第2の電池モジュールを制御する制御機器と、が収納されている車載用バッテリにおいて、前記第1の電池モジュールの電極端子が形成される第1の主面は、前記第2の電池モジュールの電極端子が形成される第1の主面と対向して配設され、前記制御機器は、前記第1の電池モジュールの前記第1の主面と前記第2の電池モジュールの前記第1の主面との間に配設されると共に、前記第1の電池モジュール及び前記第2の電池モジュールと電気的に接続し、前記第1の電池モジュール、前記第2の電池モジュール及び前記制御機器を固定する固定ブラケットを更に有し、前記固定ブラケットが、前記バッテリケースに固定されていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の車載用バッテリでは、前記第1の電池モジュールの前記第1の主面及び前記第2の電池モジュールの前記第1の主面には、それぞれ前記制御機器と接続する電池側コネクタ部が形成され、前記制御機器の第1の主面及び前記第1の主面の反対側に位置する第2の主面には、それぞれ前記第1の電池モジュールまたは前記第2の電池モジュールと接続する制御側コネクタ部が形成され、前記第1の電池モジュール及び前記第2の電池モジュールと前記制御機器とは、前記電池側コネクタ部及び前記制御側コネクタ部を介して電気的に接続していることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の車載用バッテリでは、前記バッテリケース内にはジャンクションボックスが更に収納され、前記ジャンクションボックスは、前記第1の電池モジュールの前記第1の主面の反対側に位置する第2の主面側または前記第2の電池モジュールの前記第1の主面の反対側に位置する第2の主面側に位置する前記固定ブラケットに対して固定されていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の車載用バッテリでは、前記ジャンクションボックスには、リレーが配設され、前記固定ブラケットは、前記第1の電池モジュールの前記第2の主面または前記第2の電池モジュールの前記第2の主面と対向する前記ジャンクションボックスの主面の端部近傍から前記リレーの配設領域の近傍まで延在して配設されていることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の車載用バッテリでは、前記バッテリケースの底面には、一方向に延在する少なくとも3列の補強用突起部と、前記補強用突起部の間に形成され、前記一方向に延在する第1の冷却用風路及び第2の冷却用風路と、が形成され、前記第1の冷却用風路は、前記一方向に沿って前記第1の電池モジュールの下方に配設され、前記第2の冷却用風路は、前記一方向に沿って前記第2の電池モジュールの下方に配設されていることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の車載用バッテリでは、前記バッテリケースの前記底面の中央に位置する前記補強用突起部は、その両側に位置する前記補強用突起部よりも幅広く形成され、前記中央に位置する前記補強用突起部の上面には、前記第1の主面側の前記第1の電池モジュール、前記制御機器及び前記第1の主面側の前記第2の電池モジュールが配設されていることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の車載用バッテリでは、前記第1の電池モジュールの前記第1の主面と前記制御機器の前記第1の主面との間には、前記一方向に延在する第1の排煙用風路が配設され、前記第2の電池モジュールの前記第1の主面と前記制御機器の前記第2の主面との間には、前記一方向に延在する第2の排煙用風路が配設されていることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の車載用バッテリでは、前記制御機器の上方には、前記一方向に沿って前記バッテリケースの側面間を架橋する補強用部材が配設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明の車載用バッテリでは、バッテリケース内において、第1の電池モジュールの電極端子が形成される第1の主面は、第2の電池モジュールの電極端子が形成される第1の主面と対向して配設されている。そして、制御機器は、第1の電池モジュールの第1の主面と第2の電池モジュールの第1の主面との間に配設されると共に、第1の電池モジュール及び第2の電池モジュールと電気的に接続している。この構造により、第1及び第2の電池モジュールと制御機器との配線距離が短くなり、電気配線の長さが短くなり、ノイズに対して強くなると共に、短絡等のリスクが低減される。また、車両が側面から衝突され、バッテリケース12も変形した際に、第1の電池モジュールの電極端子と第2の電池モジュールの電極端子同士が直接接触することがなくなるので、スパークが発生することが防止される。
【0022】
また、本発明の車載用バッテリでは、第1の電池モジュール及び第2の電池モジュールには、それぞれ制御機器と接続する電池側コネクタ部が形成され、制御機器には、それぞれ第1の電池モジュールまたは第2の電池モジュールと接続する制御側コネクタ部が形成されている。そして、第1の電池モジュール及び第2の電池モジュールと制御機器とは、電池側コネクタ部及び制御側コネクタ部を介して電気的に接続する。この構造により、車載用バッテリの軽量化が実現されると共に、車載用バッテリの組み付け作業を簡易にすることができる。
【0023】
また、本発明の車載用バッテリは、第1の電池モジュール、第2の電池モジュール及び制御機器を固定する固定ブラケットを有し、固定ブラケットが、バッテリケースに固定される。この構造により、作業者は、バッテリケースの外部にて、固定ブラケットに対して第1の電池モジュール等を組み付けた後、その固定ブラケットをバッテリケースに対して固定することができる。そして、バッテリケースには必要最小限の作業スペースを確保すればよく、車載用バッテリの小型化が実現される。
【0024】
また、本発明の車載用バッテリでは、ジャンクションボックスには、リレーが配設されている。そして、ジャンクションボックスの主面には、その端部近傍からリレー近傍まで延在した固定ブラケットが配設されている。この構造により、固定ブラケットは放熱板としても機能し、リレーから発生する熱をバッテリケースを介して放熱することができる。
【0025】
また、本発明の車載用バッテリでは、ジャンクションボックスは、第1の電池モジュールの側方または第2の電池モジュールの側方に位置する固定ブラケットに対して固定される。この構造により、ジャンクションボックスも固定ブラケットに対して一体に組み付けられた後、その固定ブラケットをバッテリケースに対して固定することができる。
【0026】
また、本発明の車載用バッテリでは、バッテリケースの底面には、一方向に延在する少なくとも3列の補強用突起部と、補強用突起部の間に形成され、一方向に延在する第1の冷却用風路及び第2の冷却用風路と、が形成されている。そして、第1の冷却用風路は、一方向に沿って第1の電池モジュールの下方に配設され、第2の冷却用風路は、一方向に沿って第2の電池モジュールの下方に配設されている。この構造により、バッテリケース内へと送り込まれた冷却風は、第1及び第2の冷却用風路を介して第1及び第2の電池モジュール内の各電池セル間へと流れ込み、バッテリケース上方へと吹き抜ける。そして、各電池セルでは、冷却風との接触面積が大きくなることで、第1及び第2の電池モジュールの冷却効率が向上する。
【0027】
また、本発明の車載用バッテリでは、バッテリケースの底面の中央に位置する補強用突起部は、その両側に位置する補強用突起部よりも幅広く形成されている。そして、中央に位置する補強用突起部の上面には、第1の電池モジュール、制御機器及び第2の電池モジュールが配設されている。この構造により、バッテリケースの中央部分が確実に補強され、一番短絡等に弱い第1及び第2の電池モジュールの電極端子の配置領域を下方からしっかりと支持することができる。
【0028】
また、本発明の車載用バッテリでは、第1の電池モジュールと制御機器との間には第1の排煙用風路が配設され、第2の電池モジュールと制御機器との間には第2の排煙用風路が配設されている。この構造により、電池セルの異常時に有毒ガスが発生した際には、その有毒ガスは、第1及び第2の排煙用風路を介して確実に車外空間へと排出される。
【0029】
また、本発明の車載用バッテリでは、制御機器の上方には、バッテリケースの側面間を架橋する補強用部材が配設されている。この構造により、バッテリケースでは、その底面側には補強用突起部が配設され、その上方開口部には補強用部材が配設され、バッテリケースの車両の前後方向における機械的強度が大幅に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の一実施形態である車載用バッテリを備えた車両を説明する概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態である車載用バッテリを説明する斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態である車載用バッテリを説明する(A)斜視図、(B)側面図である。
【
図4】本発明の一実施形態である車載用バッテリを説明する(A)斜視図、(B)斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態である車載用バッテリのバッテリケースを説明する断面図である。
【
図6】本発明の一実施形態である車載用バッテリの変形例を説明する(A)上面図、(B)断面図である。
【
図7】本発明の一実施形態である車載用バッテリの変形例を説明する上面図である。
【
図8】従来の電池パックを説明する(A)分解斜視図、(B)断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の一実施形態に係る車載用バッテリを図面に基づき詳細に説明する。尚、本実施形態の説明の際には、同一の部材には原則として同一の符番を用い、繰り返しの説明は省略する。
【0032】
最初に、
図1は、本実施形態の車載用バッテリ10を備えた車両11を説明する概略図である。
図2は、本実施形態の車載用バッテリ10を説明する斜視図である。
図3(A)は、本実施形態の車載用バッテリ10内に配設される第1及び第2の電池モジュール13、14等を一体に組み付け状態を説明する斜視図である。
図3(B)は、
図3(A)に示す第1及び第2の電池モジュール13、14等を一体に組み付け状態を説明する側面図である。
図4(A)は、本実施形態の車載用バッテリ10の固定ブラケット21を説明する斜視図である。
図4(B)は、本実施形態の車載用バッテリ10のジャンクションボックス16と固定ブラケット21との位置関係を説明する斜視図である。
【0033】
自動車や電車等の車両11には、モータや様々の電装部品に電力を供給するための車載用バッテリ10が搭載されている。車両11として自動車の場合には、近年、EV(Electrical Vehicle)、HEV(Hybrid Electrical Vehicle)やPHEV(Plug-in Hybrid Electrical Vehicle)等が普及しており、これらの車両11にも、高い蓄電機能を有した車載用バッテリ10が搭載されている。
【0034】
図1に示す如く、車載用バッテリ10は、例えば、車両11の後方のリアフロア下方の収納スペース11Aに配設され、車載用バッテリ10は、その長手方向が、車両11の前後方向と一致するように配設されている。尚、車載用バッテリ10は、リアフロア下方に配設される場合に限定されるものではなく、車両11の運転席や助手席が配設されるフロントフロア等の下方に配設される場合でも良い。
【0035】
図2に示す如く、車載用バッテリ10は、主に、バッテリケース12と、第1の電池モジュール13と、第2の電池モジュール14と、BCU(Battery Control Unit)15と、ジャンクションボックス16と、電気配線17と、固定ブラケット21(
図3(A)参照)と、を有している。
【0036】
バッテリケース12は、鉄やアルミニウム等の鋼板や合成樹脂板を略箱形状に成形し、その上方が開口した形状となる。バッテリケース12は、上記第1の電池モジュール13等が収納される収納領域12Aを有し、車両11の前後方向にその長手方向を有し、車両11の車幅方向に短手方向を有している。そして、第1の電池モジュール13と第2の電池モジュール14とは、それらの長手方向がバッテリケース12の長手方向と一致するように、お互いに対向してバッテリケース12の収納領域12A内に配設されている。
【0037】
図示したように、バッテリケース12の後方側の側面12Bには、冷却ダクト18が配設され、冷却ダクト18は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等の絶縁性樹脂により形成されたダクトである。そして、冷却ダクト18は、車両用空調装置(図示せず)にて空調された冷却風を流すと共に、その冷却風をバッテリケース12の収納領域12A内へと送り込み、第1及び第2の電池モジュール13、14を冷却する。
【0038】
第1の電池モジュール13は、その収納ケース内に複数の電池セル19が直列接続されて構成されている。電池セル19は、例えば、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池等の2次電池である。個々の電池セル19は、例えば、角型平板形状であり、車両11の前後方向に沿って、その前後に小さな隙間を有した状態にて等間隔に配列されている。尚、第2の電池モジュール14も第1の電池モジュール13と同様な構造である。
【0039】
BCU15は、金属製または樹脂製の略箱形状のケースにて覆われ、第1及び第2の電池モジュール13、14内の各電池セル19の監視や制御等を行う電子制御機器である。図示したように、BCU15は、第1の電池モジュール13と第2の電池モジュール14との間に配設され、電気配線17を介して第1及び第2の電池モジュール13、14と電気的に接続している。尚、BCU15が、金属製のケースにて覆われる場合には、例えば、絶縁シート等により、その表面が絶縁処理される場合でも良い。この場合には、より確実に第1及び第2の電池モジュール13、14間のスパークを防止することができる。
【0040】
ジャンクションボックス16は、リレー23(
図4(B)参照)やヒューズ等の部品を組み込んで電子回路を構成し、BCU15等と電気配線17を介して電気的に接続している。図示したように、ジャンクションボックス16は、第1の電池モジュール13の側方に配設されている。
【0041】
図3(A)に示す如く、第1の電池モジュール13、第2の電池モジュール14、BCU15及びジャンクションボックス16は、固定ブラケット21を用いて一体に組み付けられている。そして、第1の電池モジュール13等が組み付けられた固定ブラケット21をバッテリケース12(
図2参照)の収納領域12A(
図2参照)内へと収納し、固定ブラケット21とバッテリケース12とをボルト締結することで、第1の電池モジュール13等もバッテリケース12へと固定される。
【0042】
つまり、作業者は、バッテリケース12の外部にて、固定ブラケット21に対して第1の電池モジュール13等を組み付け、電気配線17を介して電気的に接続した後、その固定ブラケット21をバッテリケース12に対して固定することができる。この構造により、バッテリケース12には必要最小限の作業スペースを確保すればよく、車載用バッテリ10の小型化を実現できる。また、バッテリケース12の狭い収納領域12Aにて、第1の電池モジュール13等の各部品を個別に組み付けるための作業が不要となり、作業効率が向上する。更には、作業員は、バッテリケース12の狭い収納領域12Aでの結線作業が不要となることで、作業中に作業員の手が電極端子13B、14B(
図3(B)参照)等に接触し、感電する恐れがなくなり、作業安全性が向上する。
【0043】
具体的には、
図3(A)及び(B)に示す如く、第1の電池モジュール13の第1の主面13Aには、BCU15等と電気的に接続するための多数の電極端子13Bが形成されている。同様に、第2の電池モジュール14の第1の主面14Aにも、BCU15等と電気的に接続するための多数の電極端子14Bが形成されている。また、第1及び第2の電池モジュール13、14は、その長手方向(車両11の前後方向)の両端部には、それぞれ板状の固定プレート22が組み付けられる。そして、固定ブラケット21と固定プレート22とがボルト締結されることで、第1及び第2の電池モジュール13、14は、固定ブラケット21に固定されている。
【0044】
また、第1及び第2の電池モジュール13、14は、お互いの第1の主面13A、14A同士が対向するように固定されている。そして、BCU15は、第1の電池モジュール13と第2の電池モジュール14との間であり、その第1の主面15Aは第1の電池モジュール13の第1の主面13Aと対向し、その第2の主面15Bは第2の電池モジュール14の第1の主面14Aと対向するように、ボルト締結により固定ブラケット21に固定されている。
【0045】
また、ジャンクションボックス16は、第1の電池モジュール13の第2の主面13C側にて、固定ブラケット21に対してボルト締結にて固定されている。尚、ジャンクションボックス16は、第2の電池モジュール14の第2の主面14C側にて、固定ブラケット21に対してボルト締結にて固定される場合でも良い。
【0046】
この構造により、車両11が側面から衝突され、その衝撃によりバッテリケース12も変形した際に、第1の電池モジュール13の電極端子13Bと第2の電池モジュール14の電極端子14B同士が直接接触することがなくなり、スパークが発生することが防止される。そして、車載用バッテリ10の安全性が向上する。
【0047】
また、第1の電池モジュール13と第2の電池モジュール14との間には、BCU15が配設されることで、第1の電池モジュール13と第2の電池モジュール14とは、BCU15により遮られている。この構造により、第1及び第2の電池モジュール13、14から熱が発生するが、その発生した熱により、動作不良等お互いに悪影響を及ぼすことが防止される。
【0048】
また、BCU15が、第1の電池モジュール13と第2の電池モジュール14との間に配設されることで、BCU15と第1及び第2の電池モジュール13、14との配線距離が短くなる。この構造により、電気配線17が短くなり、ノイズに対して強くなると共に、短絡等のリスクが低減され、また、車載用バッテリ10の軽量化が実現される。
【0049】
図4(A)に示す如く、固定ブラケット21は、例えば、略L字形状の一対の金属プレートにより形成され、放熱部材としても用いられる。具体的には、
図4(B)に示す如く、固定ブラケット21の車両11の前後方向に延在する延在領域21Aは、ジャンクションボックス16の主面16Aに沿って配設され、主面16Aの端部近傍から中央部に向けて配設されている。そして、ジャンクションボックス16には、その中央部分にリレー23が電気的に接続して配設されているが、固定ブラケット21の延在領域21Aは、リレー23近傍に配設されている。
【0050】
この構造により、リレー23から発生する熱は、固定ブラケット21の延在領域21Aへと伝わり、バッテリケース12(
図2参照)を介してバッテリケース12の外部へ放熱される。そして、
図3(A)に示す如く、ジャンクションボックス16は、第1の電池モジュール13の側方近傍に配設されるが、リレー23から発生した熱により第1の電池モジュール13の電池セル19が高温状態となることが防止される。尚、
図4(B)では、説明の都合上、第1の電池モジュール13は省略して図示している。
【0051】
次に、
図5は、本実施形態の車載用バッテリ10のバッテリケース12を説明する断面図であり、
図2に示す車載用バッテリ10のA-A線方向の断面図である。
【0052】
図5に示す如く、バッテリケース12の底面12Cには、車両11の前後方向に延在する補強用突起部であるビード31、32、33が3列配設され、ビード31~33は、鉄やアルミニウム等の鋼板や合成樹脂板にて形成されている。そして、ビード31、33は、第1及び第2の電池モジュール13、14の第2の主面13C、14C側を下方から支持する位置に配設されている。一方、ビード32は、第1及び第2の電池モジュール13、14の第1の主面13A、14A側及びBCU15を下方から支持する位置に配設されている。
【0053】
ビード32は、ビード31、33の間でありバッテリケース12の中央部に、ビード31、33よりも幅広く形成されることで、バッテリケース12の中央部分が確実に補強され、一番短絡等に弱い第1及び第2の電池モジュール13、14の電極端子13B、14Bの配置領域を下方からしっかりと支持することができる。
【0054】
更には、バッテリケース12の底面12Cには、第1の冷却用風路34がビード31、32間に配設され、第2の冷却用風路35がビード32、33間に配設され、第1及び第2の冷却用風路34、35は、冷却ダクト18(
図2参照)と連通している。第1及び第2の冷却用風路34、35は、例えば、鉄やアルミニウム等の鋼板や合成樹脂板にて形成され、車両11の前後方向に延在し、その上面側が開口している。そして、第1の冷却用風路34の上方には、第1の電池モジュール13が配設され、第2の冷却用風路35の上方には、第2の電池モジュール14が配設されている。
【0055】
この構造により、点線の矢印36、37にて示すように、冷却ダクト18からバッテリケース12内へと送り込まれた冷却風は、第1及び第2の冷却用風路34、35を介して第1及び第2の電池モジュール13、14内の各電池セル19(
図2参照)間の小さな隙間へと流れ込み、バッテリケース12上方へと吹き抜ける。そして、各電池セル19では、冷却風との接触面積が大きくなることで、第1及び第2の電池モジュール13、14の冷却効率が向上する。
【0056】
次に、
図6(A)は、本実施形態の車載用バッテリ10(
図2参照)の変形例であり、車載用バッテリ40を説明する上面図である。
図6(B)は、
図6(A)に示す車載用バッテリ40のB-B線方向の断面図である。
【0057】
尚、車載用バッテリ40は、上述した車載用バッテリ10に対して、新たに排煙用風路部材41、42及び補強用部材43が追加されている構造において相違し、その他の構成部材は車載用バッテリ10と同じである。そのため、以下の説明では、排煙用風路部材41、42及び補強用部材43を中心に説明し、車載用バッテリ10と同じ構成部材には、原則として同一の符番を用い、繰り返しの説明は省略する。また、冷却ダクト18は省略して図示している。
【0058】
図6(A)に示す如く、BCU15の上面には、バッテリケース12を補強するための補強用部材43が形成されている。補強用部材43は、BCU15のパッケージと一体に樹脂成形される場合でも良く、また、角形鋼管から形成される場合でも良い。そして、補強用部材43は、車両11の前後方向において、バッテリケース12の両側面12B、12Dを架橋して配設されている。また、
図6(B)に示す如く、補強用部材43の断面形状が略四角形形状となることで、機械的強度が高まる。上述したように、バッテリケース12では、その底面12C側には3列のビード31~33(
図5(B)参照)が配設され、その上方開口部には補強用部材43が配設されている。この構造により、バッテリケース12の車両11の前後方向における機械的強度が大幅に向上する。
【0059】
図6(B)に示す如く、BCU15と第1及び第2の電池モジュール13、14との間には、それぞれ第1及び第2の排煙用風路部材41、42が配設されている。第1及び第2の排煙用風路部材41、42は、ポリエチレン、ポリプロピレン等の絶縁性樹脂により形成された略直方体形状であり、少なくともその一主面41A、42Aが、第1及び第2の電池モジュール13、14の第1の主面13A、14Aと接触している。そして、第1及び第2の排煙用風路部材41、42の中央部には、それぞれ第1及び第2の電池モジュール13、14の長手方向に沿って第1及び第2の排煙用風路41B、42Bが形成されている。
【0060】
ここで、電池セル19の上面には、正極側端子(図示せず)と負極側端子(図示せず)との間であり、その中央領域にガス排出弁(図示せず)が形成されている。ガス排出弁は、例えば、電池セル19の上面に薄肉部等を用いて形成され、電池セル19の異常時に有毒ガスの発生により内圧が高まった際に優先的に破断する構造である。そして、上記電池セル19の破断領域を介して電池セル19の内部と第1及び第2の排煙用風路41B、42Bとが連通するように、第1及び第2の排煙用風路部材41、42は、それぞれBCU15と第1及び第2の電池モジュール13、14との間に配設されている。尚、図示していないが、第1及び第2の排煙用風路41B、42Bの一端側(車両11の前方側)の端部は、塞がれており、第1及び第2の排煙用風路41B、42Bの他端側(車両11の後方側)の端部は、排煙ダクト(図示せず)と連通している。
【0061】
この構造により、電池セル19の異常時に有毒ガスが発生した際には、その有毒ガスは、第1及び第2の排煙用風路41B、42B及び排煙ダクトを介して確実に車外空間へと排出される。
【0062】
次に、
図7は、本実施形態の車載用バッテリ10(
図2参照)の変形例であり、車載用バッテリ50を説明する上面図である。尚、車載用バッテリ50は、上述した車載用バッテリ10に対して、第1及び第2の電池モジュール13、14とBCU15との接続構造において、電気配線17の代わりに電池側コネクタ部51、52及び制御側コネクタ部53、54が設けられている構造において相違し、その他の構成部材は車載用バッテリ10と同じである。そのため、以下の説明では、電池側コネクタ部51、52及び制御側コネクタ部53、54を中心に説明し、車載用バッテリ10と同じ構成部材には、原則として同一の符番を用い、繰り返しの説明は省略する。また、冷却ダクト18は省略して図示している。
【0063】
図7に示す如く、BCU15が、第1の電池モジュール13と第2の電池モジュール14との間に配設されている。第1の電池モジュール13の第1の主面13Aには、電池側コネクタ部51が形成されている。電池側コネクタ部51は、例えば、プリント基板を介して各電池セル19の電極端子等と電気的に接続している。同様に、第2の電池モジュール14の第1の主面14Aには、電池側コネクタ部52が形成されている。電池側コネクタ部52は、例えば、プリント基板を介して各電池セル19の電極端子等と電気的に接続している。
【0064】
一方、BCU15の第1の主面15Aには、電池側コネクタ部51と接続できる位置に制御側コネクタ部53が形成されている。同様に、BCU15の第2の主面15Bには、電池側コネクタ部51と接続できる位置に制御側コネクタ部54が形成されている。この構造により、BCU15と第1及び第2の電池モジュール13、14とは、電池側コネクタ部51、52及び制御側コネクタ部53、54を介して電気的に接続することができる。その結果、BCU15と第1及び第2の電池モジュール13、14とを接続する電気配線17が不要となり、車載用バッテリ10の軽量化を実現すると共に、結線作業が不要となり作業効率が向上する。
【0065】
尚、本実施形態では、バッテリケース12内に固定ブラケット21を介して一体に組み付けられた第1及び第2の電池モジュール13、14等が1セット配設される場合について説明したが、この場合に限定するものではない。例えば、バッテリケース12内に上記固定ブラケット21に固定された第1及び第2の電池モジュール13、14等が2セット配設される場合でも良い。この場合でも、上述したように、バッテリケース12の外部にて、固定ブラケット21に対して第1の電池モジュール13等を組み付けることで、作業効率が向上されると共に、車載用バッテリ10の小型化や軽量化が実現される。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲にて種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0066】
10、40、50 車載用バッテリ
11 車両
12 バッテリケース
13 第1の電池モジュール
13A 第1の主面
13B 電極端子
13C 第2の主面
14 第2の電池モジュール
14A 第1の主面
14B 電極端子
14C 第2の主面
15 BCU
15A 第1の主面
15B 第2の主面
16 ジャンクションボックス
17 電気配線
18 冷却ダクト
19 電池セル
21 固定ブラケット
31、32、33 ビード
34 第1の冷却用風路
35 第2の冷却用風路
41 第1の排煙用風路部材
42 第2の排煙用風路部材
41B 第1の排煙用風路
42B 第2の排煙用風路
43 補強用部材
51、52 電池側コネクタ部
53、54 制御側コネクタ部