IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 京セラ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-静電チャック 図1
  • 特許-静電チャック 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】静電チャック
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20221207BHJP
   H02N 13/00 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H02N13/00 D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018182268
(22)【出願日】2018-09-27
(65)【公開番号】P2020053579
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宗石 猛
【審査官】中田 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-274229(JP,A)
【文献】特開2008-177339(JP,A)
【文献】特開2002-033377(JP,A)
【文献】特開2004-172637(JP,A)
【文献】特表2016-508288(JP,A)
【文献】特開2016-072478(JP,A)
【文献】特開2016-213237(JP,A)
【文献】特開2001-130982(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H02N 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層と、
該誘電体層に接触して位置する、静電吸着用の第1電極と、
該第1電極を覆うとともに、前記誘電体層に接触して位置する、セラミックスからなる第1層と、
前記第1層における前記第1電極側とは反対の面に接触して位置する、加熱用の第2電極と、
該第2電極を覆うとともに、前記第1層に接触して位置する、セラミックスからなる第2層と、を備え、
該第1層の気孔率は3面積%未満であり、
該第2層の気孔率は3面積%未満であり、
前記第2層の気孔率は、前記第1層の気孔率よりも大きい、静電チャック。
【請求項2】
前記第1層の体積抵抗率は、1.0×10Ω・cm以上である、請求項1に記載の静電チャック。
【請求項3】
前記第2層の体積抵抗率は、1.0×10Ω・cm以上である、請求項1または2に記載の静電チャック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、静電チャックに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程では、ウェハ等の被処理物を吸着保持する手段として、静電チャックが利用されている。ここで、静電チャックは、サファイア等の誘電体層と、この誘電体層に接触して位置する静電吸着用の電極と、この電極を覆う絶縁体を備えている。そして、電極に電圧を印加することによって、誘電体層に被処理物が吸着保持される。
【0003】
例えば、特許文献1には、サファイアと基板とをポリイミド系の接着剤で接合し、この接着剤の内部に電極を有する静電チャックが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-260472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体デバイスの製造工程では、プラズマガスが利用され、プラズマガスと電極との間で放電現象が発生する場合がある。ここで、特許文献1に記載の静電チャックのように、電極をポリイミドのような有機系の接着剤で覆っている場合、接着剤がこの放電現象により損傷し、静電チャックとしての信頼性が損なわれるおそれがあった。
【0006】
本開示は、このような事情を鑑みて案出されたものであり、信頼性に優れる静電チャックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の静電チャックは、誘電体層と、該誘電体層に接触して位置する、静電吸着用の第1電極と、該第1電極を覆うとともに、前記誘電体層に接触して位置する、セラミックスからなる第1層と、を備える。そして、第1層の気孔率は3面積%未満である。
【発明の効果】
【0008】
本開示の静電チャックは、信頼性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の静電チャックの一例を示す断面図である。
図2】本開示の静電チャックの他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の静電チャックについて、図面を参照しながら、以下に詳細に説明する。
【0011】
本開示の静電チャック10は、図1に示すように、誘電体層1と、誘電体層1に接触して位置する、静電吸着用の第1電極2と、第1電極2を覆うとともに、誘電体層1に接触して位置する、セラミックスからなる第1層3と、を備える。
【0012】
ここで、図1では、第1電極2の個数が3個である例を示しているが、これに限定されるものではなく、第1電極2の個数は少なくとも1個以上であればよい。そして、第1電
極2は単一の電極で構成される、いわゆる単極型に限定されるものでなく、第1電極2は、正電圧が印加される電極と負電圧が印加される電極とで構成される、いわゆる双極型であってもよい。
【0013】
そして、第1電極2に電圧を印加することにより、クーロン力およびジョンソン・ラーベック力等の静電吸着力によって、誘電体層2にウェハ等の被処理物を吸着保持することができる。
【0014】
また、第1電極2は、導電性を有するならば、どのような材料で構成されていても構わないが、モリブデン、タングステン、白金が主成分であってもよい。ここで、主成分とは、第1電極2を構成する全成分100質量%のうち、70質量%以上占める成分のことである。
【0015】
また、第1電極2の平均厚みは、例えば、1μm以上150μm以下であってもよい。
【0016】
また、誘電体層1とは、例えば、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、サファイア等である。特に、誘電体層1がサファイアであるならば、サファイアは粒界を有しないことから、プラズマガスによるエッチングによって発生する浮遊粒子(パーティクル)が少なくなる。
【0017】
ここで、誘電体層1の平均厚みは、例えば、50μm以上300μm以下であってもよい。
【0018】
また、第1層3を構成するセラミックスとは、例えば、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化珪素等である。このように、第1層3はセラミックスで構成されていることで、高いプラズマ耐性を有する。
【0019】
そして、本開示の静電チャック10において、第1層3の気孔率は3面積%未満である。このような構成を満足していることで、プラズマガスが気孔を介して第1層3の内部に侵入するおそれが低く、プラズマガスと第1電極2との間で発生する放電現象が抑制されることから、第1層3が放電現象により損傷しにくく、本開示の静電チャック10は、信頼性に優れる。なお、第1層3の平均厚みは、例えば、50μm以上600μm以下であってもよい。
【0020】
ここで、第1層3の気孔率は、静電チャック10を切断するとともに、測定可能な面積の第1層3が露出するまで研削加工を行なった後、画像解析ソフトを用いて測定することで算出すればよい。
【0021】
また、本開示の静電チャック10において、第1層3の体積抵抗率は、1.0×10Ω・cm以上であってもよい。このような構成を満足するならば、第1層3の存在により、プラズマガスと第1電極2との間で発生する放電現象がより抑制されることから、第1層3が放電現象によって損傷しにくくなり、本開示の静電チャック10の信頼性が向上する。特に、第1層3の体積抵抗率が、1.0×1013Ω・cm以上ならば、第1電極2から発生するリーク電流を減らすことができる。
【0022】
ここで、第1層3の体積抵抗率は、静電チャック10を切断するとともに、測定可能な面積の第1層3が露出するまで研削加工を行なった後、四端子法で測定することで確認すればよい。
【0023】
また、本開示の静電チャック10は、図2に示すように、第1層3における第1電極2
側とは反対の面に接触して位置する、加熱用の第2電極8と、第2電極8を覆うとともに、第1層3に接触して位置する、セラミックスからなる第2層9と、を備えていてもよい。このような構成であれば、本開示の静電チャック10は、ヒータとして機能する。
【0024】
また、第2電極8は、導電性を有するならば、どのような材料で構成されていても構わないが、モリブデン、タングステン、白金が主成分であってもよい。ここで、主成分とは、第2電極8を構成する全成分100質量%のうち、70質量%以上占める成分のことである。
【0025】
また、第2電極8の平均厚みは、例えば、1μm以上150μm以下であってもよい。
【0026】
また、第2層9を構成するセラミックスとは、例えば、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化珪素等である。このように、第2層9はセラミックスで構成されていることで、高いプラズマ耐性を有する。
【0027】
特に、第1層3と第2層9とは、同じセラミックスで構成されていてもよい。ここで、第1層3と第2層9とが同じセラミックスで構成されているとは、例えば、第1層3が酸化アルミニウムで構成されている場合、第2層9も酸化アルミニウムで構成されるということである。そして、このような構成を満足するならば、第1層3と第2層9との熱膨張係数が同じとなり、第2電極8により加熱および冷却が繰り返されても、熱膨張係数の差に起因して亀裂が発生するおそれが低くなり、信頼性が向上する。
【0028】
そして、本開示の静電チャック10において、第2層9の気孔率は3面積%未満である。このような構成を満足していることで、プラズマガスが気孔を介して第2層9の内部に侵入するおそれが低いことから、第2層9が損傷しにくく、本開示の静電チャック10の信頼性が向上する。
【0029】
ここで、第2層9の気孔率は、第1層3の気孔率を測定した同じ方法で測定することで算出すればよい。
【0030】
なお、第2層9の平均厚みは、例えば、50μm以上600μm以下であってもよい。
【0031】
また、本開示の静電チャック10において、第2層9の体積抵抗率は、1.0×10Ω・cm以上であってもよい。このような構成を満足するならば、第2層9が放電現象により損傷しにくくなり、本開示の静電チャック10の信頼性が向上する。特に、第2層9の体積抵抗率が、1.0×1013Ω・cm以上ならば、第2電極8から発生するリーク電流を減らすことができる。
【0032】
ここで、第2層9の体積抵抗率は、第1層3の体積抵抗率を測定した同じ方法で測定することで算出すればよい。
【0033】
また、本開示の静電チャック10において、第2層9の気孔率は、第1層3の気孔率よりも大きくてもよい。このような構成を満足するならば、第2電極8により静電チャック10が加熱された際に、熱が第2層9から第1層3へ伝搬しやすくなり、誘電体層1への熱の伝搬効率が高まり、静電チャック10をヒータとして利用した際の均熱性を高めることができる。
【0034】
また、本開示の静電チャック10は、図1および図2に示すように、流路4を有する流路部材5を備えていてもよい。ここで、図1では、流路部材5が、接着剤6を介して第1層3に接合されている例を示している。一方、図2では、流路部材5が、接着剤6を介し
て第2層9に接合されている例を示している。なお、接着剤6とは、例えば、シリコーン樹脂等の有機系接着剤である。
【0035】
このような構成を満足するならば、流路部材5の流路4に流す流体により、本開示の静電チャック10の温度を適宜調整することが可能となる。
【0036】
また、流路部材5は、どのような材料で構成されていてもよいが、主成分が第2層9を構成するセラミックスと同じであってもよい。ここで、主成分とは、流路部材5を構成する全成分100質量%のうち、70質量%以上占める成分のことである。そして、流路部材5の主成分が第2層9を構成するセラミックスと同じとは、例えば、第2層9が酸化アルミニウムで構成されている場合、流路部材5の主成分も酸化アルミニウムであるということである。このような構成を満足するならば、流路部材5と第2層9との熱膨張係数が近似し、第2電極8により加熱および冷却が繰り返されても、熱膨張係数の差に起因して亀裂が発生するおそれが低くなり、信頼性が向上する。
【0037】
なお、誘電体層1、第1電極2、第1層3、第2電極8、第2層9を構成する各成分はX線回折装置(XRD)を用いて測定し、得られた2θ(2θは、回折角度である。)の値よりJCPDSカードを用いて同定を行なうとともに、蛍光X線分析装置(XRF)を用いて定量分析を行なうことで算出すればよい。
【0038】
なお、流路部材5が導電性を有するならば、流路部材5自身をRF電極として利用することができる。また、流路部材5が絶縁体であれば、流路部材5の内部または外部に別途RF電極を設ければよい。
【0039】
また、本開示の静電チャック10は、図1および図2に示すように、流路部材5から誘電体層1までを貫通する、リフトピン用の貫通孔7を有していても構わない。
【0040】
次に、本開示の静電チャックの製造方法の一例について説明する。
【0041】
まず、体積抵抗率が調整された、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、サファイア等からなる誘電体層を準備する。
【0042】
次に、誘電体層の表面に第1電極を形成する。ここで、第1電極は、モリブデン、タングステン、白金等を主成分とする導電性ペーストを用いた焼結法またはスパッタリング法等で形成すればよい。なお、スパッタリング法であれば、誘電体層に熱的損傷を与えにくく、誘電体層の体積抵抗率を変化させるおそれが低い。
【0043】
次に、第1電極を覆うとともに、誘電体層に接触して位置する、セラミックスからなる第1層を形成する。ここで、第1層は、化学気相蒸着法を用いて形成する。化学気相蒸着法は、溶射法に比べて緻密な膜質を形成することができ、第1層の気孔率を3面積%未満とすることができる。また、誘電体層に熱的損傷を与えにくく、誘電体層の体積抵抗率を変化させるおそれが低い。さらに、誘電体層と第1層との界面に気孔を生じにくくできる。そして、以上の製造方法によって、本開示の静電チャックを得る。
【0044】
また、化学気相蒸着法で第1層を形成する際に、使用する水素量を調整することによって、第1層内に不対電子を生成することができ、第1層の体積抵抗率を任意の値に調整することができる。
【0045】
また、第1層の表面に第2電極を形成し、第2電極を覆うとともに、第1層に接触して位置する第2層を形成してもよい。ここで、第2電極および第2層は、それぞれ上述した
第1電極および第1層と同じ方法で形成すればよい。
【0046】
また、化学気相蒸着法で第2層を形成する際に、使用する水素量を調整することによって、第2層内に不対電子を生成することができ、第2層の体積抵抗率を任意の値に調整することができる。
【0047】
また、第1層および第2層の気孔率は、第1層および第2層を形成する際に、第1層であれば誘電体層を、第2層であれば第1層を、それぞれ100℃以上400℃以下に加熱しておくことで適宜調整することができる。
【0048】
また、流路を有する流路部材を準備し、シリコーン樹脂等の有機系接着剤を用いて第1層または第2層と接合してもよい。
【0049】
なお、本開示は上述の実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。
【符号の説明】
【0050】
1:誘電体層
2:第1電極
3:第1層
4:流路
5:流路部材
6:接着剤
7:貫通孔
8:第2電極
9:第2層
10、10a、10b:静電チャック
図1
図2