(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】継手、及び排水システム
(51)【国際特許分類】
E03C 1/12 20060101AFI20221207BHJP
E03C 1/122 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
E03C1/12 E
E03C1/12 C
E03C1/122 Z
(21)【出願番号】P 2018194603
(22)【出願日】2018-10-15
【審査請求日】2021-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】豊田 秀司
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-256603(JP,A)
【文献】特開2001-220791(JP,A)
【文献】特開2018-127766(JP,A)
【文献】特開2018-025073(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/12
E03C 1/122
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状に形成され、屈曲部を中心に湾曲されると共に延在方向の一端と他端とが水回り器具からの排水を流す管材に接続される本体管部と、
前記本体管部に形成され、平面視で前記屈曲部の少なくとも一部と重なる位置に設けられた清掃口と、
前記清掃口に嵌合して前記清掃口を閉鎖する閉塞部材と、
を備え
、
前記本体管部は、該本体管部の前記一端に接続される管材の軸方向に沿って延在する第1直線部と、該第1直線部から連続して形成され、前記本体管部の前記他端に接続される管材の軸方向に沿って延在する第2直線部と、を備えており、
前記清掃口が平面視で前記第1直線部と前記第2直線部の外形より大きく形成されていることにより、前記清掃口を通して前記第1直線部と前記第2直線部の内部が視認可能となっている継手。
【請求項2】
前記清掃口は、前記第1直線部及び前記第2直線部の少なくとも一部と重なる位置に形成されている、
請求項1に記載の継手。
【請求項3】
前記閉塞部材は、前記本体管部の内周面と段差無く繋がる湾曲面を有し
かつL字状に形成された清掃口閉塞部を含み、前記屈曲部の一部を構成する、請求項1又は請求項2に記載の継手。
【請求項4】
前記閉塞部材は、少なくとも一部が透明又は半透明に形成されている、
請求項1~請求項3の何れか1項に記載の継手。
【請求項5】
前記本体管部は、前記一端が横方向に延在する横引き管に接続され、前記他端が鉛直方向に延在する竪管に接続されている、
請求項1~請求項4の何れか1項に記載の継手。
【請求項6】
横方向に延在し、水廻り器具からの排水を流す前記横引き管と、前記横引き管の下流側に接続され、床上から床下へ鉛直方向に延在する前記竪管を含んで構成される排水管と、
延在方向の一端が前記横引き管の排水方向下流側の端部に接続され、他端が前記竪管の排水方向上流側の端部に接続されると共に床面に支持された請求項5に記載の継手と、
を有する排水システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓋で閉塞可能な開口が形成された継手、及びその継手を用いた排水システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、水平方向(横方向)に延在する横引き管と、鉛直方向に延在する竪管とが、L字状に湾曲された所謂曲げ管(L字配管部材)によって連結された排水管の配管構造が開示されている。このように湾曲された配管構造においては、配管の内部に汚れの付着しやすい湾曲部分を清掃するための工夫が必要となる。
【0003】
そこで、特許文献1では、横引き管の途中に蓋で閉塞可能な開口が形成された継手を予め接続する構成が開示されている。これにより、配管内の洗浄を行う場合に、蓋を外して開口から配管内に洗浄ノズルを挿入し、配管の湾曲部分を洗浄可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記先行技術では、湾曲された配管構造の途中に洗浄ノズルを挿入する清掃口を備える継手と横引き管と竪管とを連結する曲げ管としての継手が別途設けられている。このため、配管の設置スペースが拡大しやすく、設置スペースのコンパクト化という点で改善の余地がある。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮し、接続した配管の内部が洗浄し易くなると共に、配管の設置スペースのコンパクト化を図ることができる継手、及び排水システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の本発明に係る継手は、管状に形成され、屈曲部を中心に湾曲されると共に延在方向の一端と他端とが水回り器具からの排水を流す管材に接続される本体管部と、前記本体管部に形成され、平面視で前記屈曲部の少なくとも一部と重なる位置に設けられた清掃口と、前記清掃口に嵌合して前記清掃口を閉鎖する閉塞部材と、を備え、前記本体管部は、該本体管部の前記一端に接続される管材の軸方向に沿って延在する第1直線部と、該第1直線部から連続して形成され、前記本体管部の前記他端に接続される管材の軸方向に沿って延在する第2直線部と、を備えており、前記清掃口が平面視で前記第1直線部と前記第2直線部の外形より大きく形成されていることにより、前記清掃口を通して前記第1直線部と前記第2直線部の内部が視認可能となっている。
【0008】
請求項1に記載の本発明に係る継手では、管状に形成された本体管部が屈曲部を中心に湾曲されている。また、本体管部の延在方向の一端と他端とが水廻り器具からの排水を流す管材に接続される。つまり、管材による排水経路は、継手の接続部分において湾曲した経路とされており、継手は、排管構造における曲げ管部分に配置されている。
【0009】
さらに、継手には、平面視で継手を構成する本体管部の屈曲部の少なくとも一部と重なる位置に清掃口が設けられている。そして、継手の通常の使用時においては、清掃口を閉塞部材で閉塞し、排水が継手外へ漏れない構成とされている。
【0010】
なお、平面視とは、継手を設置した状態で、鉛直方向の上方側から見た場合である。
【0011】
一方、管材の内部を洗浄ノズルで洗浄する場合には、閉塞部材を取り外し、一例として、清掃口から管材の内部へ洗浄ノズルを挿入する。そして、洗浄ノズルから水を噴出させながら管材へ洗浄ノズルのホースを順次送り込む。これにより、管材の内部を順次洗浄することができる。
【0012】
このように、上記構成の継手によれば、湾曲された排管構造における曲げ管部分に配管内部の清掃作業に用いる清掃口が設けられている。このため、配管の途中に清掃口を備える継手と曲げ管として機能する継手を別途設ける構造と比べて、配管の設置スペースのコンパクト化が図られる。また、洗浄ノズルを屈曲部の近傍から挿入することができるため、配管の内部の洗浄が容易になる。
【0013】
請求項2に記載の本発明に係る継手は、請求項1に記載の構成において、前記清掃口は、前記第1直線部及び前記第2直線部の少なくとも一部と重なる位置に形成されている。
【0014】
請求項2に記載の本発明に係る継手において、本体管部を構成する第1直線部及び第2直線部は、該本体管部の両端に接続される管材の軸方向に沿ってそれぞれ延在している。また、本体管部に設けられる清掃口は、第1直線部と第2直線部の少なくとも一部と重なる位置に形成されている。つまり、清掃口は、継手の屈曲部の延在方向全域に亘って形成されている。このため、管材の内部を洗浄ノズルで洗浄する場合には、屈曲部に形成された清掃口から洗浄ノズルのホースを容易に挿入することができるため、配管の内部の洗浄作業が、一層、容易になる。
【0015】
請求項3に記載の本発明に係る継手は、請求項1又は請求項2に記載の構成において、前記閉塞部材は、前記本体管部の内周面と段差無く繋がる湾曲面を有しかつL字状に形成された清掃口閉塞部を含み、前記屈曲部の一部を構成している。
【0016】
請求項3に記載の本発明に係る継手において、閉塞部材は、本体管部の清掃口に嵌合されることにより屈曲部の一部を構成している。また、閉塞部材は、本体管部の内周面と段差無く繋がる湾曲面を有している。これにより、湾曲された継手の内部を排水がスムーズに通過できるため、排水経路の水勢が良好に維持される。
【0017】
請求項4に記載の本発明に係る継手は、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の構成において、前記閉塞部材は、少なくとも一部が透明又は半透明に形成されている。
【0018】
請求項4に記載の本発明に係る継手では、閉塞部材の少なくとも一部が、透明又は半透明に形成されているため、継手の外部から内部が視認可能とされている。これにより、排水経路内の排水状況を点検する際に閉塞部材を取り外す作業が不要となり、点検作業が容易になる。
【0019】
請求項5に記載の本発明に係る継手は、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の構成において、前記本体管部は、一端が横方向に延在する横引き管に接続され、他端が鉛直方向に延在する竪管に接続されている。
【0020】
請求項5に記載の本発明に係る継手において、本体管部は、一端が横方向に延在する横引き管に接続され、他端が鉛直方向に延在する竪管に接続されている。つまり、継手は、横引き管と竪管とを連結しており、横方向に延在する配管を鉛直下方に落とし込む曲げ管として機能する。このため、曲げ管部材の上流側、つまり、横引き管の配管経路の途中に清掃口付き継手を別途配置する場合と比べて、横引き管の長さが短縮される。これにより、配管の設置スペースの省スペース化を図ることができる。
【0021】
請求項6に記載の本発明に係る排水システムは、水廻り器具からの排水を流す前記横引き管と、前記横引き管の下流側に接続され、床上から床下へ鉛直方向に延在する前記竪管を含んで構成される排水管と、延在方向の一端が前記横引き管の排水方向下流側の端部に接続され、他端が前記竪管の排水方向上流側の端部に接続されると共に床面に支持された請求項5に記載の継手と、を有している。
【0022】
請求項6に記載の本発明に係る排水システムでは、水廻り器具からの排水が横引き管、及び竪管を含んで構成される排水管を介して排水される。また、清掃口を備えた継手が、横引き管の下流側の端部と竪管の上流側の端部に接続されている。つまり、当該継手は、横引き管と竪管とを連結しており、横方向に延在する配管を鉛直下方に落とし込む曲げ管としての機能を有する。これにより、曲げ管部の近傍から管材の内部に洗浄ノズルのホースを挿入することができ、配管内でホースが大きく折り曲げられることが抑制される。その結果、横引き管及び竪管の内部へホースを挿入し易くなり、洗浄作業が容易になる。
【0023】
さらに、継手の下流側の端部は、床面に支持されている。これにより、横引き管と竪管との連結部を継手によって支持することができるため、清掃口付き継手と曲げ管部材を別途備える配管構造に比べて、曲げ管を支える治具の設置が不要となる。その結果、配管の設置スペースの省スペース化が一層促進される。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように本発明の継手によれば、接続した配管の内部が洗浄し易くなる、という優れた効果を奏する。
また、本発明の排水システムによれば、横引き管、及び竪管の内部が洗浄し易くなると共に、配管の設置スペースの省スペース化を図ることができる、という優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】サイホン排水システムの全体構造を示す側面図である。
【
図2】清掃口付き継手を示す一部を断面とした斜視図である。
【
図3】清掃口付き継手を示す一部を断面とした分解斜視図である。
【
図4】中子と蓋を外した清掃口付き継手を示す平面図である。
【
図6】
図2に示す清掃口付き継手の6-6線断面図である。
【
図7】洗浄ノズルを挿入した清掃口付き継手を示す断面図である。
【
図8】ガイド部材を挿入した清掃口付き継手を示す一部を断面にした斜視図である。
【
図9】ガイド部材の変形例を示す
図8に対応する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、
図1~
図8に基づいて、本発明の一実施形態に係る清掃口付き継手50について説明する。
図1には、本実施形態に係る清掃口付き継手50が用いられたサイホン排水システム10の全体構成が概略図にて示されている。本実施形態に係るサイホン排水システム10は、サイホン力を利用して水回り器具からの排水を効率よく排出する排水システムである。
【0027】
(サイホン排水システムの概略)
サイホン排水システム10は、複数階で構成された集合住宅に用いられ、
図1に示すように、排水を下方へ流す排水立て管12を備えている。この排水立て管12は、集合住宅の上下方向(鉛直方向)に延設され、集合住宅の各階の床スラブ14を貫いている。なお、排水立て管12は、住戸の内外を仕切る外壁16の外側、例えば、メーターボックス18の中に配置されている。本実施形態のサイホン排水システムは、集合住宅に好適に用いられるが、集合住宅以外の戸建て住宅や工場等にも用いることができる。
【0028】
集合住宅の各階の各戸には、水回り器具20が設けられている。この水回り器具20は、一例としてキッチンのシンクであり、排水方向下流側にディスポーザー22、及び排水トラップ24が接続されている。排水トラップ24の排水方向下流側には、L字状に曲げられたL字配管部材26が配置されている。L字配管部材26は、排水トラップ24に接続されて鉛直方向に延びる鉛直部26A、床スラブ14の上に水平方向に配置されて水平方向に延びる水平部26B、及び鉛直部26Aと水平部26Bとを繋ぐ湾曲部26Cを含んで構成されている。
【0029】
L字配管部材26の排水方向下流側には、床スラブ14の上に配置されて水平方向、言いかえれば鉛直方向に対して直角方向に延びる横引き管部材28が配置されている。L字配管部材26と横引き管部材28とは、継手30を介して接続されている。
【0030】
横引き管部材21の排水方向下流側の端部には、継手32を介して後述する清掃口付き継手50の第1接続部60が接続されている。清掃口付き継手50の下流側には、床スラブ14を貫通して配置され、上下方向に延びる竪管部材36が配置されている。この竪管部材36の上流側の端部には、清掃口付き継手50の第2接続部62が接続されている。
【0031】
竪管部材36の排水方向下流側の端部は、排水立て管12の中間部に取付けられた合流継手40に継手42を介して接続されている。
【0032】
本実施形態において、床スラブ14の上に水平に配置されている配管部分、具体的にはL字配管部材26の水平部26B、横引き管部材28、がサイホン排水管44の横引き管46とされ、竪管部材36がサイホン排水管44の竪管48とされている。
【0033】
(継手の構成)
図2、及び
図3に示すように、本発明の継手の一例である清掃口付き継手50は、本体部52、閉塞部材としての中子54、及び蓋56を含んで構成されている。本実施形態の本体部52、中子54、及び蓋56は、合成樹脂で形成されている。
【0034】
本体部52は、不透明な合成樹脂で形成されており、筒状をなす本体管部58を備えている。本体管部58は、略L字状に湾曲されており、横引き管46の軸方向に沿って延在する水平部58Aと、竪管48の軸方向に沿って延在された鉛直部58Bと、を備えている。また、本体管部58は、水平部58Aの下流側の端部と鉛直部58Bの上流側の端部とを繋ぐ屈曲部58Cを備えている。換言すると、本体管部58は、屈曲部58Cを中心に湾曲された筒体をなしている。また、屈曲部58Cの両側に配置された水平部58Aと鉛直部58Bは、互いに直交する方向に延在している。なお、本体管部58の内径は、一定の径で形成されている。
【0035】
さらに、本体管部58には、水平部58Aの上流側の端部(本体管部58の一端)に第1接続部60が一体的に形成され、鉛直部58Bの下流側の端部(本体管部58の他端)に第2接続部62が一体的に形成されている。
【0036】
第1接続部60は、本体管部58の径よりも大径に形成されており、継手32が挿入可能となっている。第2接続部62は、本体管部58の径よりも大径に形成されており、竪管48の上流側の端部が挿入可能となっている(
図2参照)。このように、本実施形態のサイホン排水管44の清掃口付き継手50は、横引き管46と竪管48とを連結しており、略水平方向(横方向)に延在する配管を鉛直下方側へ落とし込む曲げ管として機能している。なお、本実施形態の清掃口付き継手50において、第1接続部60と第2接続部62とは同一形状であり、第1接続部60の内径と第2接続部62の内径は同一内径とされている。
【0037】
さらに、上記した第2接続部62は、床スラブ14の床面14Aに図示しない固定手段を用いて固定されている。これにより、清掃口付き継手50が床スラブ14によって下方側から支持されている(
図1参照)。
【0038】
図2、
図3、
図6に示されるように、本体管部58には、円筒状に形成され、本体管部58の上面から鉛直上方側へ立設された側管部64が一体的に設けられている。具体的には、側管部64は、本体管部58を構成する水平部58Aの上面から屈曲部58Cの上面に亘って設けられている。この側管部64の径は、本体管部58の径よりも大径に形成されている。
【0039】
また、側管部64と本体管部58との間には、仕切壁66が設けられている。仕切壁66の中央には、仕切壁66を上下方向に貫通する清掃口68が形成されている。これにより、側管部64の内部と本体管部58の内部とが清掃口68を介して連通している。
【0040】
清掃口68は、平面視で長尺な矩形状に形成されており、長手方向が横引き管46の軸方向に一致している。また、清掃口68は、平面視で本体管部58の少なくとも一部、具体的には、水平部58A及び屈曲部58Cと重なる位置に形成されている。具体的には、
図4に示すように、清掃口68は、平面視で本体管部58の水平部58Aと屈曲部58Cの外形より一回り大きく形成されている。このため、仕切壁66に形成された清掃口68を通して、水平部58Aと鉛直部58Bの内部が視認可能とされている。また、清掃口68の周縁部と本体管部58との境界部分には、本体管部58の水平部58Aの下流側端部、屈曲部58C、鉛直部58Bの上流側端部に亘って連続して形成された段差部67が設けられている。
【0041】
図3、
図4、
図6に示すように、側管部64の下端部かつ内周面には、側管部64の径方向の内側(中心側)へ突出した環状の段部70が形成されている。一方、側管部64の外周面には、側管部64の軸方向の上部に雄螺子72が形成されており、雄螺子72の下方側には、環状溝74が形成されている。この環状溝74には、Oリング76が装着されている。
【0042】
図2に示すように、側管部64の内部には、中子54が挿入されている。中子54は、透明な合成樹脂で形成されている。
図5にも示すように、中子54は、側管部64の内部に挿入される円筒部78を備え、円筒部78の軸方向の下端部には清掃口68に嵌合する清掃口閉塞部80が円筒部78と一体的に形成されている。
【0043】
円筒部78には、軸方向下端部の外周面に環状溝82が形成されており、この環状溝82には、Oリング84が装着されている。
図2、及び
図6に示すように、中子54が側管部64の内部に挿入された状態では、Oリング84が側管部64の内周面に接触し、中子54と側管部64との間の隙間をシールする構成とされている。
【0044】
図2、及び
図5に示すように、清掃口閉塞部80は、L字状に湾曲された板材として形成され、側管部64の内部に中子54を挿入した際に、清掃口68を上方側から覆うように配置される。また、上記した通り、中子54は透明な合成樹脂で形成されているため、側管部64の内部に中子54を挿入した状態で外部から本体管部58の内部が視認可能とされている。なお、中子54を半透明な合成樹脂で形成する構成としてもよい。
【0045】
また、清掃口閉塞部80は、清掃口閉塞部80の延在方向と直行する方向に沿った断面形状が、本体管部58側に開放された略円弧状とされている。さらに、清掃口閉塞部80の内面を構成する湾曲面86の曲率半径は、本体管部58内周面の曲率半径と一致している。従って、清掃口閉塞部80を清掃口68に嵌合させた状態では、清掃口閉塞部80の周縁部が段差部67に嵌合し、清掃口閉塞部80の湾曲面86は、本体管部58の内周面と段差無く繋がる構成とされている。これにより、中子54の清掃口閉塞部80が、屈曲部58Cの一部を構成している。
【0046】
蓋56の内周部には、側管部64の雄螺子72に螺合する雌螺子88と、側管部64のOリング76が接触する接触部90が形成されている。側管部64に蓋56を取り付けると、側管部64のOリング76が蓋56の接触部90に接触し、側管部64と蓋56との間の隙間をシールする構成とされている。なお、蓋56は、中子54と同様に、透明又は半透明な合成樹脂で形成されることが好ましい。蓋56を透明又は半透明な合成樹脂で形成した場合、蓋56を側管部64に装着した状態で、蓋56、中子54を通して本体管部58の内部を視認可能とされる。
【0047】
(サイホン排水管44の内部を洗浄する方法)
次に、本実施形態のサイホン排水管44の内部を洗浄する際の手順を以下に説明する。
【0048】
(1) 先ず、水廻り器具20からの排水を停止し、清掃口付き継手50から蓋56を取り外し、側管部64の内部から中子54を取り出して、
図7に示すように清掃口68を露出させる。
【0049】
(2) 次に、
図8に示すように清掃口付き継手50の側管部64に筒状に形成されたガイド部材92を取り付ける。ガイド部材92は、ゴム等の弾性体により構成され、略円筒状に形成された基部92Aと、基部92Aの軸方向の一端側の周縁部から一体に形成された支持部92Bを備えている。支持部92Bは、基部92Aの軸方向一端側の周縁部から外側へ立設され、側面視ですり鉢状をなしている。換言すると、支持部92Bは、基部92Aの周縁部から外側へ向かうにつれて内径が徐々に拡径された筒体状に形成されている。ガイド部材92の取付作業は、円筒状の基部92Aを側管部64の内側に挿入することにより完了する。この状態において、支持部92Bの内側面は、基部92Aの軸方向(鉛直方向)に対して径方向外側へ傾斜して配置されている。
【0050】
(3) 次に、洗浄ノズル92をガイド部材92を介して清掃口68に挿入し、横引き管46と竪管48の内部を洗浄する。清掃口付き継手50よりも上流側の横引き管46の内部を洗浄する場合には、
図7に実線で示すように、水wを噴射する洗浄ノズル92を、清掃口68から本体管部58の水平部58A側へ送り込み、横引き管46の内部へ向けて挿入する。そして、洗浄ノズル92から水wを噴出させながら横引き管46の上流側へホース94を順次送り込む。これにより、横引き管46の内部を順次洗浄することができる。なお、洗浄で使用された水wは、竪管48側へ流れて排水立て管12に排出される。
【0051】
ここで、清掃口68の周りはガイド部材92の側面で覆われているため、洗浄用の水wが清掃口付き継手50の外部に飛散するということが抑制される。さらに、洗浄ノズル92を横引き管46の上流側に送り込む際、側管部64よりも外側に配置されたホース94が、ガイド部材92の支持部92Bによって緩やかに傾斜しながら支持される。このため、ガイド部材92を介して清掃口68へ洗浄ノズル94を挿入する場合でも、ホース96を洗浄ノズル94の進行方向に沿って支持することができるため、洗浄ノズル94及びホース96の送り込み作業が容易に行える構成とされている。
【0052】
なお、配管の内径寸法が小さい場合等、ホース96を配管に沿って大きく傾斜させながら挿入する必要がある場合には、ゴム製の支持部92Bを弾性変形させて傾斜方向を変更し、ホース96を挿入方向に合わせて支持可能とされている。
【0053】
一方、清掃口付き継手50よりも下流側の竪管48の内部を洗浄する場合には、
図7に2点鎖線で示すように、水wを噴射する洗浄ノズル92を、清掃口68から本体管部58の鉛直部58B側へ送り込み、竪管48の内部へ向けて挿入する。そして、洗浄ノズル92から水wを噴出させながら竪管48の下流側へホース94を順次送り込む。これにより、竪管48の内部を順次洗浄することができる。本実施形態では、清掃口68が、平面視で本体管部58の屈曲部58Cと重なる位置に形成されている。このため、洗浄ノズル94を清掃口68から鉛直下方側へ挿入することで竪管48の内部へ洗浄ノズル94を送り込むことができる。これにより、洗浄ノズル94のホース96をほとんど折り曲げることなく竪管48内部の洗浄作業が可能とされている。なお、洗浄で使用された水wは、竪管48の下流側へ流れて排水立て管12に排出される。
【0054】
(作用、効果)
次に、本実施形態に係る清掃口付き継手50及びサイホン排水システム10の作用並びに効果について説明する。
【0055】
本実施形態のサイホン排水システム10を構成する清掃口付き継手50は、管状に形成された本体管部58が屈曲部58Cを中心に湾曲されている。また、本体管部58の上流側の一端が横引き管46に接続され、本体管部58の下流側の他端が竪管48に接続されている。つまり、サイホン排水システム10における排水経路では、清掃口付き継手50の接続部分において湾曲した経路とされており、清掃口付き継手50は、排管構造における曲げ管部分に配置されている。
【0056】
さらに、清掃口付き継手50には、平面視で継手を構成する本体管部58の屈曲部58Cの少なくとも一部と重なる位置に清掃口68が設けられている。そして、清掃口付き継手50の通常の使用時においては、清掃口68を中子54の清掃口閉塞部80で閉塞し、排水が継手の外へ漏れない構成とされている。
【0057】
一方、横引き管46及び竪管48の内部を洗浄ノズル94で洗浄する場合には、中子54を取り外し、清掃口68から横引き管46及び竪管48の内部へ洗浄ノズル94を挿入する。そして、洗浄ノズル94から水wを噴出させながら横引き管46及び竪管48の内部へ洗浄ノズル94のホース96を順次送り込む。これにより、配管の内部を順次洗浄することができる。
【0058】
このように、上記構成の清掃内付き継手50によれば、湾曲された排管構造における曲げ管部分に配管内部の清掃作業に用いる清掃口68が設けられている。このため、配管の途中に清掃口を備える継手と曲げ管として機能する継手を別途設ける構造と比べて、配管の設置スペースのコンパクト化が図られる。また、洗浄ノズル94を屈曲部58Cの近傍から挿入することができるため、ホース96を急激に曲げずに配管内に送り込むことができ、配管の内部の洗浄が容易になる。
【0059】
また、本実施形態では、清掃口付き継手50を構成する本体管部58の水平部58A及び鉛直部58Bは、該本体管部58の両端に接続される横引き管46及び竪管48の軸方向に沿ってそれぞれ延在している。また、本体管部58に設けられる清掃口68は、水平部58Aと鉛直部58Bの少なくとも一部と重なる位置に形成されている。つまり、清掃口68は、清掃口付き継手50の湾曲部分の全域に亘って形成されている。このため、横引き管46及び竪管48の内部を洗浄ノズル94で洗浄する場合には、清掃口68から洗浄ノズル94のホース96を容易に挿入することができるため、一層、配管の内部を洗浄し易くなる。
【0060】
また、本実施形態では、清掃口付き継手50の中子54は、清掃口閉塞部80が清掃口68に嵌合されることにより本体管部58の屈曲部58Cの一部を構成している。また、当該清掃口閉塞部80の内面を構成する湾曲面86は、本体管部58の内周面と段差無く繋がる構成とされている。これにより、湾曲された清掃内付き継手50の内部を排水がスムーズに通過できるため、排水経路の水勢を良好に維持することができる。
【0061】
また、本実施形態の清掃口付き継手50では、中子54が透明な合成樹脂で形成されているため、清掃口付き継手50の外部から内部が視認可能とされている。これにより、サイホン排水システムの設置後や、定期点検作業時に清掃口付き継手50に中子54を装着した状態で排水経路内の排水状況を点検することができ、点検作業が容易になる。
【0062】
なお、蓋56を透明又は半透明な合成樹脂で形成すれば、蓋56及び中子54を清掃口付き継手50に装着したままで排水経路内の排水状況を点検することができ、点検作業を一層容易に行うことができる。
【0063】
また、本実施形態の清掃口付き継手50を構成する本体管部58は、一端が水平方向(横方向)に延在する横引き管46に接続され、他端が鉛直方向に延在する竪管48に接続されている。つまり、清掃口付き継手50は、横引き管46と竪管48とを連結しており、横方向に延在する配管を鉛直下方に落とし込む曲げ管として機能している。このため、曲げ管部材の上流側、つまり、横引き管46の配管経路の途中に清掃口付き継手を別途配置する場合と比べて、横引き管46の長さが短縮される。これにより、配管の設置スペースの省スペース化を図ることができる。
【0064】
また、本実施形態のサイホン排水システム10では、清掃口付き継手50が、横引き管46の下流側の端部と竪管48の上流側の端部に接続されている。さらに、清掃口付き継手の下流側の端部は、床面に支持されている。これにより、横引き管と竪管との連結部を継手によって支持することができるため、排水経路の途中に清掃口付き継手と曲げ管部材を別途備える配管構造に比べて、曲げ管を支える治具の設置が不要となる。その結果、配管の設置スペースの省スペース化を、一層、促進することができる。
【0065】
[補足説明]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0066】
例えば、上記実施形態では、清掃口付き継手50を構成する中子54及び蓋56の全体を透明又は半透明の合成樹脂で形成する構成としたが、本発明はこれに限らない。中子54、及び蓋56の一部が透明又は半透明の合成樹脂で形成する構成としてもよい。具体的には、中子54の円筒部78を不透明な合成樹脂で形成し、清掃口閉塞部80を透明な合成樹脂で形成してもよい。つまり、中子54及び蓋56において、平面視で清掃口付き継手50の清掃口68を重なる部位が透明又は半透明な合成樹脂で形成されていればよい。
【0067】
また、本発明はこれに限らず、中子54及び蓋56の全体を不透明な合成樹脂で形成する構成としてもよい。
【0068】
また、本実施形態では、清掃口付き継手50の清掃口68が、継手の曲がり部全体と重なる位置に形成される構成としたが、本発明はこれに限らない。清掃口68は継手の曲がり部(本体管部58の屈曲部58C)の少なくとも一部と重なる位置に形成されていればよく、平面視で、本体管部58の水平部58A及び鉛直部58Bの内部の少なくとも一部が視認可能であることが好ましい。
【0069】
また、本実施形態では、横引き管46及び竪管48の内部を洗浄する方法の一例として、清掃口付き継手50の側管部64にガイド部材92を装着する構成としたが、本発明はこれに限らない。側管部64にガイド部材92を装着せず、直接側管部64に洗浄ノズル94を挿入して洗浄してもよい。また、本実施形態では、ガイド部材92を弾性変形可能なゴム製としたが、弾性変形しない合成樹脂で形成してもよい。
【0070】
また、横引き管46及び竪管48の内部を洗浄する方法の一例として、
図9に示されるガイド部材100を側管部64に装着してもよい。ガイド部材100は、合成樹脂により形成され、略円筒状をなす基部100Aと、基部100Aの軸方向の一端側の周縁部に一体に形成された支持部100Bを備えている。支持部100Bは、基部100Aの軸方向一端側の周縁部から基部100Aの軸方向に対して所定の角度傾斜した方向へ延出した筒体をなしている。ガイド部材100の取付作業は、円筒状の基部100Aを清掃口付き継手50の側管部64の内側に挿入することにより完了する。
【0071】
このガイド部材100では、側管部64への基部100Aの挿入方向を軸回りに回転させて変更することにより、支持部100Bの延在方向を所定の方向に変更することができる。このため、横引き管46の洗浄時には、横引き管46の延在方向に合わせて支持部100Bが配置される向きにガイド部材100を装着する(
図9に示す実線位置参照)。そして、竪管48の洗浄時には、ガイド部材の向きを変更し、竪管48の延在方向に合わせて支持部100Bを配置する(
図9に示す2点鎖線位置参照)。これにより、ガイド部材100を用いて洗浄ノズル94をその導入方向に合わせて支持することができるため、上記実施形態と同様に、配管内部への洗浄ノズル94の挿入作業を容易に行うことができる。
【0072】
また、上記実施形態では、清掃口付き継手50をサイホン排水管44に接続したが、下流側へ向けて傾斜する一般的な勾配配管に接続してもよい。また、清掃口付き継手50を水平方向に延在する横引き管46と鉛直下方に延在する竪管48とに接続される構成としたが、これに限らず、水平面上において互いに異なる方向に延在する2本の配管の連結部に適用してもよい。
【符号の説明】
【0073】
10…サイホン排水システム、14…床スラブ(床)、20…水廻り器具、46…横引き管、48…竪管、50…清掃口付き継手(継手)、54…中子(閉塞部材)、58…本体管部、58A…水平部(第1直線部)、58B…鉛直部(第2直線部)58C…屈曲部、68…清掃口、86…湾曲面