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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
   F16H 61/00 20060101AFI20221207BHJP
   F16H 59/02 20060101ALI20221207BHJP
   F16H 61/18 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
F16H61/00
F16H59/02
F16H61/18
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018221295
(22)【出願日】2018-11-27
(65)【公開番号】P2020085147
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 義基
(72)【発明者】
【氏名】青木 光夫
(72)【発明者】
【氏名】黒田 恭亮
(72)【発明者】
【氏名】山室 智幸
(72)【発明者】
【氏名】勝目 彬人
(72)【発明者】
【氏名】佐川 晋也
【審査官】藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-050381(JP,A)
【文献】特開昭63-243553(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 61/00
F16H 59/02
F16H 61/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧によりシフトチェンジする変速機と、
作動油が供給される主油路と、
前記主油路から分岐し、前記主油路から前記変速機に前記作動油を供給するための第1油路と、
制御装置の制御により、前記第1油路を開閉する第1バルブと、
前記主油路から分岐し、前記第1油路とは異なる油路であり、前記第1バルブを迂回して設けられ、前記主油路から前記変速機に前記作動油を供給するための第2油路と、
手動により駆動し、前記第1油路のうち前記第1バルブより前記主油路側、および、前記第2油路を開閉し、少なくとも、前記第1油路を開き前記第2油路を閉じた自動制御状態、および、前記第1油路を閉じ前記第2油路を開いた手動制御状態に切換可能な第2バルブと、
を備える車両。
【請求項2】
前記第1油路は、
前記第1バルブより前記主油路側に位置する分岐前油路と、
前記第1バルブより前記変速機側に位置し、前記変速機の前進クラッチに連通する第1前進連通路と、
前記第1バルブより前記変速機側に位置し、前記変速機の後進クラッチに連通する第1後進連通路と、
を有し、
前記第2油路は、
前記第1前進連通路に連通する第2前進連通路と、
前記第1後進連通路に連通する第2後進連通路と、
を有し、
前記第2バルブは、
前記手動切換状態において、前記第2前進連通路、および、前記第2後進連通路の一方を開き他方を閉じる請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記第1油路のうち、前記第1バルブよりも前記変速機側に設けられ、前記第2バルブが前記自動切換状態のときに前記第1油路を開き、前記第2バルブが前記手動切換状態のときに前記第1油路を閉じる第3バルブ
を備える請求項1または2に記載の車両。
【請求項4】
前記第3バルブは、前記第2バルブに連動して手動により駆動する請求項3に記載の車両。
【請求項5】
前記第2バルブが前記第2油路を閉じたとき、前記第2油路のうち、前記第2バルブより前記変速機側の作動油が排油される第2リリーフ油路
を備える請求項1から4のいずれか1項に記載の車両。
【請求項6】
前記第1バルブが前記第1油路を閉じたとき、前記第1油路のうち、前記第1バルブより前記変速機側の作動油が排油される第1リリーフ油路
を備える請求項1から5のいずれか1項に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、シフトバイワイヤ方式の変速機が搭載されることがある。例えば、特許文献1には、集積バルブ内をカムシャフトがモータの動力により軸方向に変位することで、集積バルブ内の複数のスプール弁が開閉される油圧制御装置が記載されている。複数のスプール弁の開閉状態に応じ、変速機のクラッチなどに供給される作動油の油圧が制御される。この油圧によってクラッチなどが係合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平07-253156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、モータなどのアクチュエータにより変速機制御用のバルブが自動制御される場合、制御装置の異常に備えて、バルブを手動レバーで切り換える機構を設けることが考えられる。しかし、アクチュエータに逆らってバルブを開閉する場合、アクチュエータの動力以上の力を作用させなければならず容易ではない。
【0005】
そこで、本発明は、異常時に変速機を手動で容易に制御することが可能な車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明による車両は、油圧によりシフトチェンジする変速機と、作動油が供給される主油路と、主油路から分岐し、主油路から変速機に前記作動油を供給するための第1油路と、制御装置の制御により、第1油路を開閉する第1バルブと、主油路から分岐し、第1油路とは異なる油路であり、第1バルブを迂回して設けられ、主油路から変速機に前記作動油を供給するための第2油路と、手動により駆動し、第1油路のうち第1バルブより主油路側、および、第2油路を開閉し、少なくとも、第1油路を開き第2油路を閉じた自動制御状態、および、第1油路を閉じ第2油路を開いた手動制御状態に切換可能な第2バルブと、を備える。
【0007】
第1油路は、第1バルブより主油路側に位置する分岐前油路と、第1バルブより変速機側に位置し、変速機の前進クラッチに連通する第1前進連通路と、第1バルブより変速機側に位置し、変速機の後進クラッチに連通する第1後進連通路と、を有し、第2油路は、第1前進連通路に連通する第2前進連通路と、第1後進連通路に連通する第2後進連通路と、を有し、第2バルブは、手動切換状態において、第2前進連通路、および、第2後進連通路の一方を開き他方を閉じてもよい。
【0008】
第1油路のうち、第1バルブよりも変速機側に設けられ、第2バルブが自動切換状態のときに第1油路を開き、第2バルブが手動切換状態のときに第1油路を閉じる第3バルブを備えてもよい。
【0009】
第3バルブは、第2バルブに連動して手動により駆動してもよい。
【0010】
第2バルブが第2油路を閉じたとき、第2油路のうち、第2バルブより変速機側の作動油が排油される第2リリーフ油路を備えてもよい。
【0011】
第1バルブが第1油路を閉じたとき、第1油路のうち、第1バルブより変速機側の作動油が排油される第1リリーフ油路を備えてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、異常時に変速機を手動で容易に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】車両の変速機を制御する油圧機構の概略図である。
図2】自動制御で前進クラッチに油圧を作用させた状態を説明するための図である。
図3】自動制御で後進クラッチに油圧を作用させた状態を説明するための図である。
図4】手動で前進クラッチに油圧を作用させた状態を説明するための図である。
図5】手動で後進クラッチに油圧を作用させた状態を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0015】
図1は、車両1の変速機2を制御する油圧機構3の概略図である。図1に示すように、変速機2は、車両1を前進させるときに接続させる前進クラッチ2a、および、車両1を後進させるときに接続させる後進クラッチ2bを有する。油圧機構3は、前進クラッチ2a、後進クラッチ2bに作動油を供給する。前進クラッチ2a、後進クラッチ2bは、作動油の油圧により、接続や切断される。変速機2は、シフトバイワイヤ方式であり、前進クラッチ2a、後進クラッチ2bに供給される作動油の油圧によってシフトチェンジする。
【0016】
油圧機構3は、調圧機構4を有する。調圧機構4は、不図示のオイルパンに貯留されたオイルをオイルポンプなどが吸い出して供給される作動油を昇圧して、所定のライン圧に調圧する。調圧機構4には、主油路5の一端が接続される。調圧後の作動油は、主油路5に供給される。主油路5の他端には、第1油路6および第2油路7が接続される。
【0017】
第1油路6には、第1バルブ10が設けられる。第1油路6は、分岐前油路6a、第1前進連通路6b、第1後進連通路6cを有する。分岐前油路6aは、第1油路6のうち、第1バルブ10よりも主油路5側の部位であり、主油路5に接続される。第1前進連通路6b、第1後進連通路6cは、第1油路6のうち、第1バルブ10よりも変速機2側の部位であり、第1前進連通路6bには、前進クラッチ2aが連通し、第1後進連通路6cには、後進クラッチ2bが連通する。
【0018】
第2油路7は、第2前進連通路7a、第2後進連通路7bを有する。第2前進連通路7aは、第1前進連通路6bに連通し、第1前進連通路6bを介して前進クラッチ2aに連通する。第2後進連通路7bは、第1後進連通路6cに連通し、第1後進連通路6cを介して後進クラッチ2bに連通する。
【0019】
第1バルブ10は、スリーブ11、ランド12a、12b、12cを備えたスプールとスプールを駆動するロッド13を有する。ランド12a、12b、12cは、ロッド13の軸方向(図1中、左右方向)に離隔して、ロッド13に設けられる。ランド12a、12b、12cは、スリーブ11に挿通される。スリーブ11の内部には、ランド12a、12b、12cで仕切られた油室11a、11b、11cが形成される。
【0020】
第1バルブ10には、図1中、左側から右側に向かって順に、第1リリーフ油路14a、第1前進連通路6b、分岐前油路6a、第1後進連通路6c、第1リリーフ油路14bが接続される。第1リリーフ油路14aは、第1前進連通路6bに接続される部位と、不図示のオイルパンに連通する部位とで構成され、いずれも、第1バルブ10に接続される。第1リリーフ油路14bは、不図示のオイルパンに連通する。各油路は、ランド12a、12b、12cが対向する位置にあるときに閉じられる。
【0021】
ロッド13は、アクチュエータ20に接続される。アクチュエータ20は、例えば、電動モータなどで構成され、ロッド13を軸方向に移動させる。制御装置21は、中央処理装置(CPU)、プログラム等が格納されたROM、ワークエリアとしてのRAM等を含むマイクロコンピュータで構成される。
【0022】
無線通信部22は、例えば、外部サーバなどと無線通信を確立する。ここでは、例えば、Wi‐Fi(登録商標)などの技術が用いられる。制御装置21は、無線通信部22を介して、外部サーバなどから種々のデータを送受信する。
【0023】
また、車両1の車室内には、シフトレバー23が設けられる。シフトレバー23に対してレンジ切り替えの操作入力があると、操作入力を示す信号が制御装置21に出力される。制御装置21は、操作入力に応じ、アクチュエータ20を制御し、アクチュエータ20を介して、前進クラッチ2a、後進クラッチ2bを制御する。ここでは、変速機2のうち、前進クラッチ2aおよび後進クラッチ2bのみを記載し、制御装置21が制御する変速機2の他の部位(例えば、変速機2がCVT(Continuously Variable Transmission)であれば油圧で変位するプーリなど)については説明を省略する。
【0024】
第2バルブ30は、スリーブ31、ランド32a、32b、32c、32dを備えたスプールとスプールを駆動するロッド33を有する。ランド32a、32b、32c、32dは、ロッド33の軸方向(図1中、左右方向)に離隔して、ロッド33に設けられる。ランド32a、32b、32c、32dは、スリーブ31に挿通される。スリーブ31の内部には、ランド32a、32b、32c、32dで仕切られた油室31a、31b、31c、および、バネ室31dが形成される。
【0025】
第2バルブ30には、図1中、左側から右側に向かって順に、第2リリーフ油路34a、分岐前油路6a、第2リリーフ油路34b、第2前進連通路7a、第2後進連通路7b、第2リリーフ油路34cが接続される。第2リリーフ油路34aは、分岐前油路6aに接続される部位と、不図示のオイルパンに連通する部位とで構成され、いずれも、第2バルブ30に接続される。
【0026】
第2リリーフ油路34bは、第2前進連通路7aに接続される部位と、不図示のオイルパンに連通する部位とで構成され、いずれも、第2バルブ30に接続される。第2リリーフ油路34cは、第2後進連通路7bに接続される部位と、不図示のオイルパンに連通する部位とで構成され、いずれも、第2バルブ30に接続される。
【0027】
分岐前油路6a、第2前進連通路7a、第2後進連通路7bは、第2バルブ30を挟んで主油路5側と変速機2側の双方に延在する。すなわち、分岐前油路6a、第2前進連通路7a、第2後進連通路7bの途中に、第2バルブ30が設けられている。
【0028】
第2バルブ30に接続される各油路は、ランド32a、32b、32c、32dが対向する位置にあるときに閉じられる。
【0029】
バネ室31dには、バネ35が配される。バネ35の一端はスリーブ31に取り付けられ、バネ35の他端はランド32aに取り付けられる。バネ35は、ランド32aを、図1中、左側(ワイヤー36から離隔する側)に引っ張る。
【0030】
ワイヤー36は、ランド32dおよび手動レバー40に接続される。手動レバー40は、例えば、車両1の車室に設けられ、手動により、回転軸41を回転中心として揺動(回転)する。手動レバー40の動作に応じ、ランド32a、32b、32c、32d、ロッド33が、ロッド33の軸方向に移動する。
【0031】
例えば、手動レバー40を、図1中、時計回りに回転させると、バネ35の弾性力により、ランド32a、32b、32c、32d、ロッド33が、図1中、左側に移動する。例えば、手動レバー40を、図1中、反時計回りに回転させると、バネ35の弾性力に抗して、ランド32a、32b、32c、32d、ロッド33が、図1中、右側に移動する。ここでは、バネ35が設けられる場合について説明したが、ワイヤー36に十分な剛性があるか、ワイヤー36の代わりにロッド33を手動レバー40まで伸長するなどすれば、バネ35を設けずともよい。
【0032】
第3バルブ50aは、第1前進連通路6bのうち、第2前進連通路7aとの合流部よりも第1バルブ10側に設けられる。第3バルブ50bは、第1後進連通路6cのうち、第2後進連通路7bとの合流部よりも第1バルブ10側に設けられる。第3バルブ50a、50bは、所謂オンオフバルブである。第3バルブ50a、50bは、実質的に同じ構成であるため、第3バルブ50bの構成については、第3バルブ50aと同じ構造に対して符号の末尾を「a」から「b」に換えて付して詳細な説明を省略する。第3バルブ50bについては、以下の第3バルブ50aの説明のうち、第1前進連通路6bを第1後進連通路6cに置き換えたものとなる。
【0033】
第3バルブ50aは、スリーブ51ランド52を有する。ランド52は、スリーブ51に挿通される。スリーブ51の内部には、ランド52で仕切られた油室51aが形成される。第3バルブ50aには、図1中、左側から右側に向かって順に、第3リリーフ油路53、第1前進連通路6bが接続される。第3リリーフ油路53は、第1前進連通路6bにも接続される。
【0034】
第1前進連通路6b、第1後進連通路6cは、第3バルブ50a、50bを挟んで主油路5側と変速機2側の双方に延在する。すなわち、第1前進連通路6b、第1後進連通路6cの途中に、第3バルブ50a、50bが設けられている。第1前進連通路6b、第1後進連通路6cは、ランド52a、52bが対向する位置にあるときに閉じられる。
【0035】
バネ54は、ランド52のうち、油室51aと反対側に設けられる。バネ54の一端はランド52に取り付けられ、バネ35の他端はスリーブ51に取り付けられる。バネ54は、ランド52を、図1中、左側(ワイヤー36から離隔する側)に押圧する。
【0036】
ワイヤー55は、ランド52および手動レバー40に接続される。例えば、手動レバー40を、図1中、時計回りに回転させると、バネ54の弾性力により、ランド52が、図1中、左側に移動する。例えば、手動レバー40を、図1中、反時計回りに回転させると、バネ54の弾性力に抗して、ランド52が、図1中、右側に移動する。ここでは、バネ54が設けられる場合について説明したが、ワイヤー55に十分な剛性があるか、ワイヤー55の代わりにロッドを用いるなどすれば、バネ54を設けずともよい。
【0037】
以下、第1バルブ10、第2バルブ30、第3バルブ50a、50bそれぞれの開閉について詳述する。
【0038】
図2は、自動制御で前進クラッチ2aに油圧を作用させた状態を説明するための図である。図3は、自動制御で後進クラッチ2bに油圧を作用させた状態を説明するための図である。図1図2図3に示す状態では、第2バルブ30は、第1油路6(分岐前油路6a)を開き、第2油路7(第2前進連通路7a、第2後進連通路7b)を閉じた状態(以下、自動制御状態という)となっている。また、第3バルブ50a、50bは、開いた状態となっている。
【0039】
具体的には、第2バルブ30において、分岐前油路6aには、いずれのランド32a、32b、32c、32dも対向していない。第2バルブ30に接続される他の油路は、いずれかのランド32a、32b、32c、32dによって閉じられている。そのため、主油路5の作動油は、分岐前油路6aを通って、第1バルブ10に供給される。
【0040】
図1に示す状態では、変速機2は、ニュートラルとなっている。分岐前油路6aは、第1バルブ10の油室11bに開口している。作動油は、油室11bに供給されるものの、油室11bに開口する油路が他にない。そのため、作動油は、図1中、太線で示すように、分岐前油路6aに留まる。
【0041】
図1に示す状態で、シフトレバー23に対し、前進(ドライブ)にシフト変速する操作入力がなされたとする。制御装置21は、アクチュエータ20を制御し、ロッド13を、図1中、左側に移動させ、図2に示す状態とする。この過程で、油室11aの作動油は、第1リリーフ油路14aから排出される。
【0042】
図2では、油室11bには、分岐前油路6aの他に、第1前進連通路6bも開口している。そのため、作動油は、図2中、太線で示すように、分岐前油路6a、第1前進連通路6bを通って、前進クラッチ2aに供給される。こうして、前進クラッチ2aに油圧が作用し、前進クラッチ2aが接続される。
【0043】
図2に示す状態で、シフトレバー23に対し、ニュートラルにシフト変速する操作入力がなされたとする。制御装置21は、アクチュエータ20を制御し、ロッド13を、図1中、右側に移動させ、図1に示す状態とする。図1に示す状態では、第1リリーフ油路14aを介して第1前進連通路6bから作動油が排油され、前進クラッチ2aは切断される。
【0044】
図1に示す状態で、シフトレバー23に対し、後進(リバース)にシフト変速する操作入力がなされたとする。制御装置21は、アクチュエータ20を制御し、ロッド13を、図1中、右側に移動させ、図3に示す状態とする。
【0045】
図3に示す状態では、油室11bには、分岐前油路6aの他に、第1後進連通路6cも開口している。そのため、作動油は、図3中、太線で示すように、分岐前油路6a、第1後進連通路6cを通って、後進クラッチ2bに供給される。こうして、後進クラッチ2bに油圧が作用し、後進クラッチ2bが接続される。
【0046】
図3に示す状態で、シフトレバー23に対し、ニュートラルにシフト変速する操作入力がなされたとする。制御装置21は、アクチュエータ20を制御し、ロッド13を、図1中、左側に移動させ、図1に示す状態とする。図1に示す状態では、第1リリーフ油路14bを介して第1後進連通路6cから作動油が排油され、後進クラッチ2bは切断される。
【0047】
ところで、例えば、無線通信部22を介して、制御装置21のシステムが不正に書き換えられるといった制御装置21の異常に備えて、手動レバー40が設けられる。以下、手動レバー40による変速機2の制御について詳述する。
【0048】
図4は、手動で前進クラッチ2aに油圧を作用させた状態を説明するための図である。図5は、手動で後進クラッチ2bに油圧を作用させた状態を説明するための図である。図4図5に示す状態では、第2バルブ30は、第1油路6(分岐前油路6a)を閉じ、第2油路7(第2前進連通路7a、第2後進連通路7bの一方)を開いた状態(以下、手動制御状態という)となっている。
【0049】
例えば、図1に示す状態で、手動レバー40を、図1中、時計回りに回転させる。第2バルブ30のランド32a、32b、32c、32d、ロッド33が、図1中、左側に移動する。これに連動し、第3バルブ50aのランド52aが、図1中、左側に移動し、分岐前油路6bに連通するポートを閉じると共に、第3バルブ50bのランド52bについても、図1中、左側に移動し、第1後進連通路6cに連通するポートを閉じる。油室51a、51bの作動油は、第3リリーフ油路53a、53bから排出される。こうして、第2バルブ30、第3バルブ50a、50bは、図4に示す状態となる。
【0050】
図4に示す第2バルブ30において、分岐前油路6aは、ランド32bによって閉じられる。第2リリーフ油路34aは、油室31aに開口する。分岐前油路6aの作動油は、第2リリーフ油路34aを介して排出される。第2後進連通路7bは、ランド32cによって閉じられる。第2リリーフ油路34cは、油室31cに開口する。第2後進連通路7bの作動油は、第2リリーフ油路34cを介して排出される。
【0051】
一方、第2前進連通路7aは第1バルブ10には接続していない。第2リリーフ油路34bは、ランド32bによって閉じられる。そのため、主油路5の作動油は、第2前進連通路7aを通って、第1バルブ10を介さずに前進クラッチ2aに供給される。こうして、前進クラッチ2aに油圧が作用し、前進クラッチ2aが接続される。
【0052】
このとき、第3バルブ50aのランド52は、第1前進連通路6bを閉じている。そのため、第1前進連通路6bを通って第1バルブ10側に作動油が逆流することがない。
【0053】
図4に示す状態で、手動レバー40を、さらに、図4中、時計回りに回転させるとする。第2バルブ30のランド32a、32b、32c、32d、ロッド33が、図4中、左側にさらに移動する。これに連動し、第3バルブ50a、50bのランド52が、図4中、左側にさらに移動し、分岐前油路6bに連通するポートを閉じると共に、第3バルブ50bのランド52bについても、図4中、左側にさらに移動し、第1後進連通路6cに連通するポートを閉じる。油室51a、51bの作動油は、第3リリーフ油路53a、53bから排出される。こうして、第2バルブ30、第3バルブ50a、50bは、図5に示す状態となる。
【0054】
図5に示す第2バルブ30において、分岐前油路6aは、ランド32bによって閉じられる。第2リリーフ油路34aは、油室31aに開口する。分岐前油路6aの作動油は、第2リリーフ油路34aを介して排出される。第2前進連通路7aは、ランド32cによって閉じられる。第2リリーフ油路34bは、油室31bに開口する。第2前進連通路7aの作動油は、第2リリーフ油路34bを介して排出される。
【0055】
一方、第2後進連通路7bは第1バルブ10には接続していない。第2リリーフ油路34cは、ランド32dによって閉じられる。そのため、主油路5の作動油は、第2後進連通路7bを通って、第1バルブ10を介さずに後進クラッチ2bに供給される。こうして、後進クラッチ2bに油圧が作用し、後進クラッチ2bが接続される。
【0056】
このとき、第3バルブ50bのランド52は、第1後進連通路6cを閉じている。そのため、第1後進連通路6cを通って第1バルブ10側に作動油が逆流することがない。
【0057】
上述したように、油圧機構3では、第1バルブ10よりも主油路5側に第2バルブ30が設けられる。手動レバー40によって、第2バルブ30を切り替えることで、第1バルブ10を迂回して、変速機2に作動油を供給することができる。そのため、制御装置21に異常があった場合でも、変速機2を限定された機能で動作させ、例えば、修理場まで車両1を移動さることができる。そのため、車両1が完全に移動不可となる事態を回避可能となる。
【0058】
また、第2バルブ30を設ける代わりに、第1バルブ10を手動レバーで切り換える機構を設けることが考えられる。しかし、アクチュエータ20に逆らって第1バルブ10を開閉する場合、アクチュエータ20の動力以上の力を作用させなければならず、容易ではない。例えば、手動レバー40を大型化し、てこの原理により手動の動力を大きくして第1バルブ10に作用させることも考えられる。この場合、手動レバー40の大型化により、車室を圧迫してしまう。第2バルブ30を設ける構成により、手動レバー40を大型化せずとも、変速機2を手動で容易に制御することができる。
【0059】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0060】
例えば、上述した実施形態では、油圧機構3は、変速機2の前進クラッチ2a、後進クラッチ2bに作用させる油圧を制御する場合について説明した。しかし、油圧を制御する対象となるのは、変速機2のうち、他の部位であってもよい。例えば、変速機2に連通する複数の油路のうち、油圧が作用する油路の組み合わせにより、変速機2の変速段が切り替わるとする。油圧機構3は、これらの油路に作用させる油圧を制御してもよい。
【0061】
また、上述した実施形態では、第1油路6は、分岐前油路6a、第1前進連通路6b、第1後進連通路6cを有し、第2油路7は、第2前進連通路7a、第2後進連通路7bを有する場合について説明した。しかし、第1油路6、第2油路7は、分岐せずに1本ずつ設けられた油路であってもよい。また、第1油路6、第2油路7は、3以上の油路に分岐してもよい。
【0062】
また、上述した実施形態では、第3バルブ50a、50bは、第2バルブ30に連動して手動により駆動する場合について説明した。この場合、第3バルブ50a、50bを別途駆動させるアクチュエータが不要となる。ただし、第2バルブ30の位置に連動して、上述した実施形態のように第3バルブ50a、50bを動作させるアクチュエータを設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、車両に利用できる。
【符号の説明】
【0064】
1 車両
2 変速機
2a 前進クラッチ
2b 後進クラッチ
5 主油路
6 第1油路
6a 分岐前油路
6b 第1前進連通路
6c 第1後進連通路
7 第2油路
7a 第2前進連通路
7b 第2後進連通路
10 第1バルブ
14a、14b 第1リリーフ油路
21 制御装置
30 第2バルブ
34a、34b、34c 第2リリーフ油路
50a、50b 第3バルブ
図1
図2
図3
図4
図5