(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】スクリュー圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04C 18/16 20060101AFI20221207BHJP
F04C 29/00 20060101ALI20221207BHJP
F04C 29/12 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
F04C18/16 L
F04C29/00 C
F04C29/12 A
(21)【出願番号】P 2018227315
(22)【出願日】2018-12-04
【審査請求日】2021-10-06
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】千葉 紘太郎
(72)【発明者】
【氏名】高野 正彦
(72)【発明者】
【氏名】頼金 茂幸
(72)【発明者】
【氏名】森田 謙次
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-017191(JP,U)
【文献】特開2011-247115(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 18/16
F04C 29/00
F04C 29/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯部を有する雄ロータと、前記雄ロータの歯部と噛み合う歯部を有する雌ロータと、前記雄ロータ及び前記雌ロータを収容するケーシングとを備え、
前記ケーシングは、前記雄ロータの歯部及び前記雌ロータの歯部を収容してそれらの歯溝に雄ロータ側の作動室及び雌ロータ側の作動室を形成するボアと、前記雄ロータの歯部及び前記雌ロータの歯部よりロータ径方向の外側に位置する吸込口と、前記吸込口と吸込行程の作動室を接続するように形成され、前記吸込行程の作動室に対してロータ軸方向に連通する吸込流路とを有し、
前記吸込流路は、前記雄ロータ側、かつ前記雄ロータの中心軸及び前記雌ロータの中心軸を通る仮想平面より下流側にある雄ロータ側吸込流路と、前記雌ロータ側、かつ前記仮想平面より下流側にある雌ロータ側吸込流路とを有する、スクリュー圧縮機において、
前記雄ロータ側吸込流路は、
少なくともロータ軸方向における前記雄ロータの歯部の吸込側端面から前記歯部の軸方向ピッチの半分の範囲にて、ロータ径方向外側の流路壁が、ロータ軸方向から見て前記ボアの壁と同じ位置になるように形成され
、かつ、
少なくとも前記雄ロータの回転方向における前記仮想平面から前記雄ロータの歯部の回転方向ピッチの範囲にて、前記雄ロータの各半径方向に沿って切断されたロータ軸方向断面である各流路断面の面積が、前記雄ロータ側の各作動室のロータ径方向断面の面積と同じになるように形成されたことを特徴とするスクリュー圧縮機。
【請求項2】
請求項
1に記載のスクリュー圧縮機において、
前記雌ロータ側吸込流路は、少なくともロータ軸方向における前記雌ロータの歯部の吸込側端面から前記歯部の軸方向ピッチの半分の範囲にて、ロータ径方向外側の流路壁が、ロータ軸方向から見て前記ボアの壁と同じ位置になるように形成されたことを特徴とするスクリュー圧縮機。
【請求項3】
請求項
2に記載のスクリュー圧縮機において、
前記雌ロータ側吸込流路は、少なくとも前記雌ロータの回転方向における前記仮想平面から前記雌ロータの歯部の回転方向ピッチの範囲にて、前記雌ロータの各半径方向に沿って切断されたロータ軸方向断面である各流路断面の面積が、前記雌ロータ側の各作動室のロータ径方向断面の面積と同じになるように形成されたことを特徴とするスクリュー圧縮機。
【請求項4】
歯部を有する雄ロータと、前記雄ロータの歯部と噛み合う歯部を有する雌ロータと、前記雄ロータ及び前記雌ロータを収容するケーシングとを備え、
前記ケーシングは、前記雄ロータの歯部及び前記雌ロータの歯部を収容してそれらの歯溝に雄ロータ側の作動室及び雌ロータ側の作動室を形成するボアと、前記雄ロータの歯部及び前記雌ロータの歯部よりロータ径方向の外側に位置する吸込口と、前記吸込口と吸込行程の作動室を接続するように形成され、前記吸込行程の作動室に対してロータ軸方向に連通する吸込流路とを有し、
前記吸込流路は、前記雄ロータ側、かつ前記雄ロータの中心軸及び前記雌ロータの中心軸を通る仮想平面より下流側にある雄ロータ側吸込流路と、前記雌ロータ側、かつ前記仮想平面より下流側にある雌ロータ側吸込流路とを有する、スクリュー圧縮機において、
前記雌ロータ側吸込流路は、
少なくともロータ軸方向における前記雌ロータの歯部の吸込側端面から前記歯部の軸方向ピッチの半分の範囲にて、ロータ径方向外側の流路壁が、ロータ軸方向から見て前記ボアの壁と同じ位置になるように形成され
、かつ、
少なくとも前記雌ロータの回転方向における前記仮想平面から前記雌ロータの歯部の回転方向ピッチの範囲にて、前記雌ロータの各半径方向に沿って切断されたロータ軸方向断面である各流路断面の面積が、前記雌ロータ側の各作動室のロータ径方向断面の面積と同じになるように形成されたことを特徴とするスクリュー圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータ径方向の外側に位置する吸込口と、作動室に対してロータ軸方向に連通する吸込流路とを有する、スクリュー圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のスクリュー圧縮機は、歯部を有する雄ロータと、雄ロータの歯部と噛み合う歯部を有する雌ロータと、雄ロータ及び雌ロータを収容するケーシングとを備える。
【0003】
ケーシングは、雄ロータの歯部及び雌ロータの歯部を収容してそれらの歯溝に雄ロータ側の作動室及び雌ロータ側の作動室を形成するボアを有する。また、ケーシングは、雄ロータの歯部及び雌ロータの歯部よりロータ径方向の外側に位置する吸込口と、吸込口と吸込行程の作動室を接続するように形成された吸込流路とを有する。また、ケーシングは、雄ロータの歯部及び雌ロータの歯部よりロータ径方向の外側に位置する吐出口と、吐出口と吐出行程の作動室を接続するように形成された吐出流路とを有する。
【0004】
作動室は、ロータ軸方向の一方側から他方側に移動しつつ、その容積が変化する。これにより、作動室は、吸込流路を介して吸込口から気体を吸込む吸込行程と、気体を圧縮する圧縮行程と、吐出流路を介して吐出口へ圧縮気体を吐出する吐出行程を順次行うようになっている。
【0005】
吸込流路は、吸込行程の作動室に対してロータ軸方向に連通する。また、吸込流路は、雄ロータ側、かつ雄ロータの中心軸及び雌ロータの中心軸を通る仮想平面より下流側(言い換えれば、吸込口とは反対側)にある雄ロータ側吸込流路と、雌ロータ側、かつ前述した仮想平面より下流側にある雌ロータ側吸込流路とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-041910号公報(例えば、
図8、
図9参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、雄ロータ側吸込流路のロータ径方向外側の流路壁(但し、作動室に気体を閉じ込めるための部分を除く)は、ボアの壁よりロータ径方向の外側に位置する。そのため、雄ロータ側吸込流路から雄ロータ側作動室に向かう気体の流れの成分として、ロータ径方向の成分が生じ、圧力損失の増加の要因となっている。
【0008】
同様に、雌ロータ側吸込流路のロータ径方向外側の流路壁(但し、作動室に気体を閉じ込めるための壁部分を除く)は、ボアの壁よりロータ径方向の外側に位置する。そのため、雌ロータ側吸込流路から雌ロータ側作動室に向かう気体の流れの成分として、ロータ径方向の成分が生じ、圧力損失の増加の要因となっている。
【0009】
本発明は、上記事柄に鑑みてなされたものであり、吸込流路の圧力損失を低減することを課題の一つとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、特許請求の範囲に記載の構成を適用する。本発明は、上記課題を解決するための手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、歯部を有する雄ロータと、前記雄ロータの歯部と噛み合う歯部を有する雌ロータと、前記雄ロータ及び前記雌ロータを収容するケーシングとを備え、前記ケーシングは、前記雄ロータの歯部及び前記雌ロータの歯部を収容してそれらの歯溝に雄ロータ側の作動室及び雌ロータ側の作動室を形成するボアと、前記雄ロータの歯部及び前記雌ロータの歯部よりロータ径方向の外側に位置する吸込口と、前記吸込口と吸込行程の作動室を接続するように形成され、前記吸込行程の作動室に対してロータ軸方向に連通する吸込流路とを有し、前記吸込流路は、前記雄ロータ側、かつ前記雄ロータの中心軸及び前記雌ロータの中心軸を通る仮想平面より下流側にある雄ロータ側吸込流路と、前記雌ロータ側、かつ前記仮想平面より下流側にある雌ロータ側吸込流路とを有する、スクリュー圧縮機において、前記雄ロータ側吸込流路は、少なくともロータ軸方向における前記雄ロータの歯部の吸込側端面から前記歯部の軸方向ピッチの半分の範囲にて、ロータ径方向外側の流路壁が、ロータ軸方向から見て前記ボアの壁と同じ位置になるように形成され、かつ、少なくとも前記雄ロータの回転方向における前記仮想平面から前記雄ロータの歯部の回転方向ピッチの範囲にて、前記雄ロータの各半径方向に沿って切断されたロータ軸方向断面である各流路断面の面積が、前記雄ロータ側の各作動室のロータ径方向断面の面積と同じになるように形成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、吸込流路の圧力損失を低減することができる。
【0012】
なお、上記以外の課題、構成及び効果は、以下の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態における給油式のスクリュー圧縮機の構成を表す概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態における圧縮機本体の構造を表す鉛直断面図である。
【
図3】
図2の断面III-IIIによる水平断面図である。
【
図4】
図2の断面IV-IVによる鉛直断面図である。
【
図6】本発明の一変形例における圧縮機本体の構造を表す水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態を、
図1~
図5を用いて説明する。
【0015】
本実施形態のスクリュー圧縮機は、モータ1と、モータ1によって駆動され、空気(気体)を圧縮する圧縮機本体2と、圧縮機本体2から吐出された圧縮空気とこれに含まれる油(液体)を分離する気液分離器3と、気液分離器3で分離された油を圧縮機本体2(詳細には、後述する作動室、吸入側軸受、及び吐出側軸受)に供給する油配管4とを備える。油配管4には、油を冷却するオイルクーラ5や、油中の不純物を除去するオイルフィルタ6等が設けられている。
【0016】
圧縮機本体2は、スクリューロータである雄ロータ11A及び雌ロータ11Bと、雄ロータ11A及び雌ロータ11Bを収納するケーシング12とを備える。
【0017】
雄ロータ11Aは、螺旋状に延在する複数(本実施形態では4つ)の歯を有する歯部13Aと、歯部13Aの軸方向一方側(
図2及び
図3の左側)に接続された吸入側軸部14Aと、歯部13Aの軸方向他方側(
図2及び
図3の右側)に接続された吐出側軸部15Aとを有する。雄ロータ11Aの吸入側軸部14Aは吸入側軸受16Aで回転可能に支持され、雄ロータ11Aの吐出側軸部15Aは吐出側軸受17Aで回転可能に支持されている。
【0018】
同様に、雌ロータ11Bは、螺旋状に延在する複数(本実施形態では6つ)の歯を有する歯部13Bと、歯部13Bの軸方向一方側(
図2及び
図3の左側)に接続された吸入側軸部14Bと、歯部13Bの軸方向他方側(
図2及び
図3の右側)に接続された吐出側軸部15Bとを有する。雌ロータ11Bの吸入側軸部14Bは吸入側軸受16Bで回転可能に支持され、雌ロータ11Bの吐出側軸部15Bは吐出側軸受17Bで回転可能に支持されている。
【0019】
雄ロータ11Aの吸入側軸部14Aは、ケーシング12を貫通して、モータ1の回転軸に連結されている。そして、モータ1の駆動によって雄ロータ11Aが回転し、雄ロータ11Aの歯部13Aと雌ロータ11Bの歯部13Bの噛み合いによって雌ロータ11Bも回転するようになっている。
【0020】
ケーシング12は、メインケーシング18と、メインケーシング18の軸方向一方側(
図2及び
図3の左側)に連結された吸入側ケーシング19と、メインケーシング18の軸方向他方側(
図2及び
図3の右側)に連結された吐出側ケーシング20とで構成されている。
【0021】
ケーシング12は、雄ロータ11Aの歯部13A及び雌ロータ11Bの歯部13Bを収納してそれらの歯溝に雄ロータ側の作動室及び雌ロータ側の作動室を形成するボア21を有する。ボア21は、雄ロータ11Aの歯部13A及び雌ロータ11Bの歯部13Bをそれぞれ収納する2つの円筒状の穴が互いに部分的に重なって構成されている(
図5参照)。
【0022】
ケーシング12は、雄ロータ11Aの歯部13A及び雌ロータ11Bの歯部13Bよりロータ径方向の外側(
図2の上側)に位置する吸込口22と、吸込口22と吸込行程の作動室を接続するように形成された吸込流路23とを有する。ボア21、吸込口22、及び吸込流路23は、メインケーシング18に形成されている。
【0023】
ケーシング12は、雄ロータ11Aの歯部13A及び雌ロータ11Bの歯部13Bよりロータ径方向の外側(
図2の下側)に位置する吐出口24と、吐出口と吐出行程の作動室を接続するように形成された吐出流路25とを有する。吐出口24は、吐出側ケーシング20に形成され、吐出流路25は、吐出側ケーシング20及びメインケーシング18に形成されている。
【0024】
作動室は、ロータ軸方向の一方側から他方側に移動しつつ、その容積が変化する。これにより、作動室は、吸込流路23を介して吸込口22から気体を吸込む吸込行程と、気体を圧縮する圧縮行程と、吐出流路25を介して吐出口24へ圧縮気体を吐出する吐出行程を順次行うようになっている。
【0025】
吸込流路23は、吸込行程の作動室に対してロータ軸方向に連通する。また、吸込流路23は、雄ロータ11A側、かつ雄ロータ11Aの中心軸O1及び雌ロータ11Bの中心軸O2を通る仮想平面Cより下流側(言い換えれば、吸込口22とは反対側)にある雄ロータ側吸込流路26Aと、雌ロータ11B側、かつ仮想平面Cより下流側にある雌ロータ側吸込流路26Bとを有する(
図3及び
図4参照)。
【0026】
ここで本実施形態の大きな特徴として、雄ロータ側吸込流路26Aのロータ径方向外側の流路壁27A(但し、作動室に気体を閉じ込めるための部分28を除く)は、少なくともロータ軸方向における雄ロータ11Aの歯部13Aの吸込側端面から歯部13Aの軸方向ピッチP1(
図3参照)の半分の範囲にて(具体例として、
図3ではP1×0.8=R1の範囲にて、後述の
図6ではP1×0.5=R1の範囲にて)、ロータ軸方向から見てボア21の壁と同じ位置になるように形成されている。なお、歯部の軸方向ピッチとは、ロータ軸方向における歯先の間隔を意味する。また、加工誤差等を考慮するため、流路壁27Aがロータ軸方向から見てボア21の壁と同じ位置になるとは、雄ロータ11Aの中心軸O1を基準とした流路壁27Aの半径方向位置がボア21の壁の半径方向位置の95%~105%の範囲内にあるものとする。
【0027】
また、雌ロータ側吸込流路26Bのロータ径方向外側の流路壁27B(但し、作動室に気体を閉じ込めるための部分28を除く)は、少なくともロータ軸方向における雌ロータ11Bの歯部13Bの吸込側端面から歯部13Bの軸方向ピッチP2(但し、P1=P2。
図3参照)の半分の範囲にて(具体例として、
図3ではP2×0.8=R2の範囲にて、後述の
図6ではP2×0.5=R2の範囲にて)、ロータ軸方向から見てボア21の壁と同じ位置になるように形成されている。なお、加工誤差等を考慮するため、流路壁27Bがロータ軸方向から見てボア21の壁と同じ位置になるとは、雌ロータ11Bの中心軸O2を基準とした流路壁27Bの半径方向位置がボア21の壁の半径方向位置の95%~105%の範囲内にあるものとする。
【0028】
このような実施形態では、雄ロータ側吸込流路26Aから雄ロータ側作動室に向かう気体の流れの成分として、ロータ径方向の成分が生じにくいため、圧力損失を低減することができる。また、雌ロータ側吸込流路26Bから雌ロータ側作動室に向かう気体の流れの成分として、ロータ径方向の成分が生じにくいため、圧力損失を低減することができる。その結果、吸気流量の増大や、動力の低減を図ることができる。
【0029】
また、流路壁27A,27Bがボア21の壁よりロータ径方向の外側に位置する場合と比べて、圧縮機本体2の停止時に雄ロータ側吸込流路26A及び雌ロータ側吸込流路26Bの下部に油が溜まるのを抑制することができる。そのため、雄ロータ側吸込流路26A及び雌ロータ側吸込流路26Bの下部に溜まる油の影響による圧力損失も抑えることができる。
【0030】
流路壁27A,27Bがロータ軸方向から見てボア21の壁と同じ位置になる範囲として、少なくともロータ軸方向におけるロータの歯部の吸込側端面から歯部の軸方向ピッチの半分の範囲とした理由について補足する。スクリュー圧縮機の体積効率の観点から、雄ロータ側作動室のロータ軸方向断面(言い換えれば、ロータ軸方向に延在する断面)の面積に対する雄ロータ側吸込流路26Aのロータ軸方向断面の面積や、雌ロータ側作動室のロータ軸方向断面の面積に対する雌ロータ側吸込流路26Bのロータ軸方向断面の面積を考慮する必要がある。雄ロータ側作動室のロータ軸方向断面の面積は、例えば(雄ロータの歯の外径と軸の外径との差分)×軸方向ピッチ÷2で表されるので、雄ロータ側吸込流路26Aのロータ軸方向断面の面積は、少なくとも(雄ロータの歯の外径と軸の外径との差分)×軸方向ピッチ÷2を確保したほうがよい。同様に、雌ロータ側作動室のロータ軸方向断面の面積は、例えば(雌ロータの歯の外径と軸の外径との差分)×軸方向ピッチ÷2で表されるので、雌ロータ側吸込流路26Bのロータ軸方向断面の面積は、少なくとも(雌ロータの歯の外径と軸の外径との差分)×軸方向ピッチ÷2を確保したほうがよい。このような観点から、少なくともロータ軸方向におけるロータの歯部の吸込側端面から歯部の軸方向ピッチの半分の範囲にて、雄ロータ側吸込流路26A又は雌ロータ側吸込流路26Bに特徴をもたせないと、その効果が十分に得られない。
【0031】
なお、上記一実施形態において、雄ロータ側吸込流路26Aは、雄ロータ11Aの各半径方向に沿って切断されたロータ軸方向断面である各流路断面の面積V1(
図3参照)が、雄ロータ側の各作動室のロータ径方向断面(言い換えれば、ロータ径方向に延在する断面)の面積S1(
図5参照)より大きくなるように形成され、雌ロータ側吸込流路26Bは、雌ロータ11Bの各半径方向に沿って切断されたロータ軸方向断面である各流路断面の面積V2(
図3参照)が、雌ロータ側の各作動室のロータ径方向断面の面積S2(
図5参照)より大きくなるように形成された場合を例にとって示したが、これに限られない。本発明の一変形例を、
図6を用いて説明する。
図6は、本変形例における圧縮機本体の構造を表す水平断面図である。
【0032】
本変形例では、雄ロータ側吸込流路26Aは、少なくとも雄ロータ11Aの回転方向における仮想平面Cから雄ロータ11Aの歯部13Aの回転方向ピッチ(本実施形態では90度)の範囲にて、雄ロータ11Aの各半径方向に沿って切断されたロータ軸方向断面である各流路断面の面積V1(
図6参照)が、雄ロータ側の各作動室のロータ径方向の断面積S1(
図5参照)と同じになるように形成されている。なお、歯部の回転方向ピッチとは、ロータ回転方向における隣り合う歯先の間の角度を意味する。また、加工誤差等を考慮するため、面積V1が面積S1と同じであるとは、面積V1が面積S1の95%~105%の範囲内にあるものとする。
【0033】
また、雌ロータ側吸込流路26Bは、少なくとも雌ロータ11Bの回転方向における仮想平面Cから雌ロータ11Bの歯部13Bの回転方向ピッチ(本実施形態では45度)の範囲にて、雌ロータ11Bの各半径方向に沿って切断されたロータ軸方向断面である各流路断面の面積V2(
図6参照)が、雌ロータ側の各作動室のロータ径方向断面の面積S2(
図5参照)と同じになるように形成されている。なお、加工誤差等を考慮するため、面積V2が面積S2と同じであるとは、面積V2が面積S2の95%~105%の範囲内にあるものとする。
【0034】
このような変形例では、雄ロータ側吸込流路26A内の流速の変化や、雄ロータ側吸込流路26Aから雄ロータ側作動室への流速の変化を抑えて、圧力損失を更に低減することができる。また、雌ロータ側吸込流路26B内の流速の変化や、雌ロータ側吸込流路26Bから雌ロータ側作動室への流速の変化を抑えて、圧力損失を更に低減することができる。
【0035】
なお、上記一実施形態においては、雄ロータ側吸込流路26Aと雌ロータ側吸込流路26Bの両方が、第1の特徴(詳細には、少なくともロータ軸方向における歯部の吸込側端面から歯部の軸方向ピッチの半分の範囲にて、ロータ径方向外側の流路壁が、ロータ軸方向から見てボア21の壁と同じ位置になるように形成された特徴)を有する場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、雄ロータ側吸込流路26Aと雌ロータ側吸込流路26Bのうちの一方だけが、第1の特徴を有してもよい。
【0036】
また、上記一変形例においては、雄ロータ側吸込流路26Aと雌ロータ側吸込流路26Bの両方が、第1の特徴と第2の特徴(詳細には、少なくともロータ回転方向における仮想平面Cから歯部の回転方向ピッチの範囲にて、ロータの各半径方向に沿って切断されたロータ軸方向断面である各流路断面の面積が、各作動室のロータ径方向断面の面積と同じになるように形成された特徴)を有する場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、例えば、雄ロータ側吸込流路26Aと雌ロータ側吸込流路26Bのうちの一方だけが、第1の特徴と第2の特徴を有してもよい。また、例えば、雄ロータ側吸込流路26Aと雌ロータ側吸込流路26Bの両方が、第1の特徴を有し、雄ロータ側吸込流路26Aと雌ロータ側吸込流路26Bのうちの一方だけが、第2の特徴を有してもよい。
【0037】
また、本発明の適用対象として、給油式の(詳細には、作動室内に油を供給する)スクリュー圧縮機を例にとって説明したが、これに限られず、給水式の(詳細には、作動室内に水を供給する)スクリュー圧縮機や、無給液式の(詳細には、作動室内に油や水などの液体を供給しない)スクリュー圧縮機であってもよい。
【符号の説明】
【0038】
11A…雄ロータ、11B…雌ロータ、12…ケーシング、13A,13B…歯部、21…ボア、22…吸込口、23…吸込流路、26A…雄ロータ側吸込流路、26B…雌ロータ側吸込流路、27A…雄ロータ側吸込流路のロータ径方向外側の流路壁、27B…雌ロータ側吸込流路のロータ径方向外側の流路壁