(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】非磁性締め付けリングを有する回転子シャフトを備える電気機械によって駆動される、流体を圧縮する装置
(51)【国際特許分類】
F04D 29/28 20060101AFI20221207BHJP
F04D 29/054 20060101ALI20221207BHJP
F04D 29/62 20060101ALI20221207BHJP
F02B 39/10 20060101ALI20221207BHJP
F02B 37/10 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
F04D29/28 D
F04D29/054
F04D29/28 L
F04D29/62 D
F02B39/10
F02B37/10 Z
(21)【出願番号】P 2018227432
(22)【出願日】2018-12-04
【審査請求日】2021-09-06
(32)【優先日】2017-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】ミザ ミロサヴルジェヴィク
(72)【発明者】
【氏名】トマ ヴァリン
(72)【発明者】
【氏名】ファブリス ル ヴェール
(72)【発明者】
【氏名】ステファヌ ヴァンチュリ
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン ゴーサン
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアン ボワソン
(72)【発明者】
【氏名】アフデニュール アブデリ
(72)【発明者】
【氏名】ルカ ファブレ
【審査官】所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/156757(WO,A1)
【文献】特開2012-193653(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/28
F04D 29/054
F04D 29/62
F02B 39/10
F02B 37/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転子(1)及び固定子を含む電気機械によって駆動され、少なくとも1つの圧縮羽根車(2)が取り付けられた圧縮機シャフト(3)を有し、前記回転子(1)は前記圧縮機シャフト(3)に固定されている、流体のための圧縮装置において、
前記回転子(1)は、回転子シャフト(31)と、前記回転子シャフト(31)の少なくとも一部に取り付けられた円筒形の磁石(34)と、及び前記磁石(34)を前記回転子シャフト(31)に保持するための非磁性材料の締め付けリング(33)とを有し、
前記回転子シャフト(31)は、前記圧縮機シャフト(3)の一方の端部を挿入するための内腔(36)を有
し、
前記回転子(1)は、前記磁石(34)の側に少なくとも1つの非磁性の止め具(32)を含み、
前記非磁性の止め具(32)は、前記回転子シャフト(31)の肩部と前記円筒形の磁石(34)との間に挿入されるリングの形態を有することを特徴とする、圧縮装置。
【請求項2】
前記回転子(1)は、前記圧縮羽根車(2)の入口の直径以下である外直径を有する、請求項1に記載の圧縮装置。
【請求項3】
前記締め付けリング(33)は、チタンまたはカーボンから作られている、請求項1
または2に記載の圧縮装置。
【請求項4】
前記回転子(1)は、前記圧縮機シャフト(3)に固定するための端部に対して小さな直径の部分(35)を含み、
前記磁石(34)は、前記小さな直径の部分(35)に取り付けられている、請求項1乃至
3のいずれか1項に記載の圧縮装置。
【請求項5】
前記回転子(1)は、前記圧縮羽根車(2)の端部の平坦な表面に接触する、平坦な表面(6)を含んでいる、請求項1乃至
4のいずれか1項に記載の圧縮装置。
【請求項6】
前記回転子(1)は、前記圧縮羽根車(2)の中に挿入された円筒形部分(7)を含んでいる、請求項1乃至
5のいずれか1項に記載の圧縮装置。
【請求項7】
前記回転子(1)の前記円筒形部分(7)は、前記圧縮機シャフト(3)の直径の少なくとも1.5倍に実質的に等しい軸方向長さを有する、請求項
6に記載の圧縮装置。
【請求項8】
前記圧縮機シャフト(3)に取り付けられ、前記圧縮羽根車(2)の一方の端部と前記回転子(1)の前記円筒形部分(7)との間に配置された、管状スリーブ(9)を含んでいる、請求項
6に記載の圧縮装置。
【請求項9】
前記回転子(1)は、ねじ山(8)によって前記圧縮機シャフト(3)に固定されている、請求項1乃至
8のいずれか1項に記載の圧縮装置。
【請求項10】
前記回転子(1)は、前記回転子(1)を動かすための操作アダプタ(5)を含んでいる、請求項
9に記載の圧縮装置。
【請求項11】
前記操作アダプタ(5)は取り外し可能である、請求項
10に記載の圧縮装置。
【請求項12】
特に乗り物の内燃エンジンのための、タービン及び圧縮機を組み合わせたターボチャージャーか、またはマイクロタービンである、請求項1乃至
11のいずれか1項に記載の圧縮装置。
【請求項13】
前記電気機械は、前記ターボチャージャーの気体入口に配置されている、請求項
12に記載の圧縮装置。
【請求項14】
前記電気機械は、固定子格子を有する機械である、請求項
12または
13に記載の圧縮装置。
【請求項15】
回転子(1)及び固定子を含む電気機械によって駆動され、圧縮機シャフト(3)及び圧縮羽根車(2)を含んでいる圧縮装置の製造方法であって、
a)前記圧縮羽根車(2)を前記圧縮機シャフト(3)に取り付ける工程と、
b)円筒形の磁石(34)を回転子シャフト(31)の少なくとも一部に取り付ける工程と、
c)非磁性の締め付けリング(33)によって、前記円筒形の磁石(34)を前記回転子シャフト(31)に保持する工程と、
d)前記圧縮機シャフト(3)の一方の端部を前記回転子シャフト(31)の内腔(36)に挿入し、前記圧縮機シャフト(3)を前記回転子シャフト(31)に固定する工程と、
が実施され
、
前記回転子(1)は、前記磁石(34)の側に少なくとも1つの非磁性の止め具(32)を含み、前記非磁性の止め具(32)は、前記回転子シャフト(31)の肩部と前記円筒形の磁石(34)との間に挿入されるリングの形態を有することを特徴とする製造方法。
【請求項16】
前記圧縮機シャフト(3)を前記回転子シャフト(31)の前記内腔(36)に挿入する工程の間、前記回転子(1)は、相互に接触している平坦な表面(6)によって圧縮羽根車(2)に当接している、請求項
15に記載の製造方法。
【請求項17】
前記圧縮機シャフトを前記回転子シャフト(31)の前記内腔(36)に挿入する工程の間に、前記回転子(1)の前記円筒形部分(7)が前記圧縮羽根車(2)の中に挿入される、請求項
15または
16に記載の製造方法。
【請求項18】
前記回転子シャフト(31)は、ねじ山(8)によって前記圧縮機シャフト(3)に固定される、請求項
15乃至
17のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項19】
前記回転子(1)は操作アダプタ(5)によって回転させられる、請求項
18に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機械によって駆動される圧縮装置の分野に関し、詳細には電気機械によって駆動されるターボチャージャーに関する。
【0002】
特に本発明は、単独の圧縮機によって、またはターボチャージャーを形成するためのタービンに接続された圧縮機によって、本明細書では空気である気体状流体を圧縮し、次に、全ての種類の機器、特に内燃エンジンの入口に送るための装置に関する。
【背景技術】
【0003】
実際、広く知られているように、内燃エンジンによって供給されるパワーは、このエンジンの燃焼室に導入される空気量に依存し、空気量はそれ自体が空気の密度に比例する。
【0004】
したがって高いパワーを必要とするとき、燃焼室に空気を導入する前に、外気を圧縮して空気量を増加させることが一般的である。過給と呼ばれるこの操作は、電気機械によって電気的に駆動される単独の圧縮機(電動圧縮機)、または電動ターボチャージャーを形成するためにタービンと電気機械とを組み合わされた圧縮機など、任意の手段によって実行することができる。
【0005】
上述の2つの場合において、圧縮機と組み合わされた電気機械は、2つの種類に分けることができる。
【0006】
これらの種類の内の一方は、小さなエアギャップ(空隙)と回転子に近接した巻線とを有し、それによって最適な磁束の誘導と最適化された効率とを可能にする、電気機械である。この種類の電気機械は、一定程度の小型化という利点を有し、それが時として冷却の問題をもたらし、損失として発生する熱の排出のための特定のシステムを使用することが必要となることがある。
【0007】
圧縮機の空気入口に対する妨害をしないために、この種類の電気機械は従来から、電動圧縮機の場合には圧縮機の後部に位置付けられ、または電動ターボチャージャーの場合には、電気機械がタービンに近接するために好ましくない熱環境が存在するにもかかわらず、圧縮機とタービンとの間に位置付けられている。一般に、圧縮機とタービンと電気機械との間の接続は剛性的である。この種類の機械はまた、圧縮機側に位置付けられることがあるが、空気入口に干渉しないように、空気入口から相対的に離される。このとき、圧縮機と機械との間の接続は剛性的であるか、または機械式もしくは磁気式の継手を使用して実現される。
【0008】
この種類のシステムは、米国特許出願公開第2014/0373532号明細書、米国特許第8,157,543号明細書、米国特許第8,882,478号明細書、米国特許出願公開第2010/0247342号明細書、米国特許第6,449,950号明細書、米国特許第7,360,361号明細書、欧州特許出願公開第0,874,953号明細書、または欧州特許出願公開第0,912,821号明細書に最もよく記載されている。
【0009】
これらの種類のうちの他方は、大きなエアギャップを有する電気機械(「エアギャップ」機械と呼ばれている)である。この電気機械のエアギャップは、作動流体がこのエアギャップを通過できるように、時には数センチメートルになることがあり、それによって、より好ましい熱環境において、圧縮システムの最も密な一体化が可能になる。
【0010】
しかしながら、この電気機械の配置は、大きなエアギャップを介する回転子と固定子との間の磁束の通過を妨げかつ制限して、それが電気機械の本来の効率とその性能仕様(パワー対重量の比、及びパワー密度)を制限する一因となるという欠点がある。この種類の設計での高い損失は、回転子及び固定子から熱を排出するための特定の冷却を開発すること、または性能仕様を制限することも必要とする。
【0011】
この種類の電気機械は、欧州特許出願公開第1,995,429号明細書、米国特許出願公開第2013/169074号明細書、または米国特許出願公開第2013/043745号明細書に詳細に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】米国特許出願公開第2014/0373532号明細書
【文献】米国特許第8157543号明細書
【文献】米国特許第8882478号明細書
【文献】米国特許出願公開第2010/0247342号明細書
【文献】米国特許第6449950号明細書
【文献】米国特許第7360361号明細書
【文献】欧州特許出願公開第0874953号明細書
【文献】欧州特許出願公開第0912821号明細書
【文献】欧州特許出願公開第1995429号明細書
【文献】米国特許出願公開第2013/169074号明細書
【文献】米国特許出願公開第2013/043745号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
圧縮機の電動化の問題の1つは、回転子の設計と回転子の圧縮機シャフトへの接続とに関連する。この設計は(ねじを使用して)複雑になることが多く、(特に、中心合わせ部(centrage court)の短さのために)回転子と圧縮機シャフトとの間の同軸度を低下させ、完全なシステムでは実現可能である最大速度を制限する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
これらの欠点を克服するため、本発明は、電気機械によって駆動される圧縮装置に関しており、そのために回転子は、回転子シャフト、円筒形の磁石、及び非磁性の締め付けリング(frette)を含んでいる。本発明によると、回転子シャフトは、圧縮機シャフトの一方の端部を挿入するための内腔(alesage)を含んでいる。したがって、回転子の設計は単純で、圧縮機シャフトとの接続は容易に実施される。
【0015】
[本発明による装置]
本発明は、電気機械によって駆動される、流体のための圧縮装置に関しており、前記電気機械は回転子及び固定子を含み、前記圧縮装置は、少なくとも1つの圧縮羽根車(roue de compression)が取り付けられている圧縮機シャフトを含み、前記回転子は前記圧縮機シャフトに固定されている。前記回転子は、回転子シャフトと、前記回転子シャフトの少なくとも一部に取り付けられている円筒形の磁石と、前記磁石を前記回転子シャフトに保持するための非磁性材料の締め付けリングとを含んでいる。前記回転子シャフトは、前記圧縮機シャフトの一方の端部を挿入するための内腔を含んでいる。
【0016】
一実施態様によると、前記回転子は、前記圧縮羽根車の入口の直径以下である外直径を有している。
【0017】
有利には、前記回転子は、前記磁石の側に少なくとも1つの非磁性の止め具を含んでいる。
【0018】
一態様によると、前記締め付けリングはチタンまたはカーボンから生成される。
【0019】
一実施態様によると、前記回転子は、前記圧縮機シャフトに固定するための端部に対して小さな直径を有する部分を含み、前記磁石はこの小さな直径の部分に取り付けられている。
【0020】
際立った特徴によると、前記回転子は、前記圧縮羽根車の平坦な端部表面と接触する、平坦な表面を含んでいる。
【0021】
一実施態様によると、前記回転子は前記圧縮羽根車の中に挿入される円筒形部分を含んでいる。
【0022】
有利には、前記回転子の前記円筒形部分は、圧縮機シャフトの直径の少なくとも1.5倍に実質的に等しい軸方向長さを有している。
【0023】
あるいは、前記圧縮装置は、前記圧縮機シャフトに取り付けられて前記圧縮羽根車の一方の端部と前記回転子の前記円筒形部分との間に配置された、管状スリーブを含んでいる。
【0024】
一態様によると、前記回転子は、ねじ山によって前記圧縮機シャフトに固定されている。
【0025】
好ましくは、前記回転子は、前記回転子を動かすための操作アダプタ(embout de manipulation)を含んでいる。
【0026】
有利には、前記操作アダプタは取り外し可能である。
【0027】
好ましくは、前記圧縮装置は、特に乗り物の内燃エンジンのための、タービン及び圧縮機を組み合わせたターボチャージャー、またはマイクロタービンである。
【0028】
有利には、前記電気機械は前記ターボチャージャーの気体入口に配置されている。
【0029】
一態様によると、前記電気機械は固定子格子(grille statorique)を有する機械である。
【0030】
さらに、本発明は、電気機械によって駆動される圧縮装置の製造方法に関しており、前記電気機械は回転子及び固定子を含み、前記圧縮装置は圧縮機シャフト及び圧縮羽根車を含んでいる。この方法では、以下の工程が実施される。
【0031】
a)前記圧縮羽根車を前記圧縮機シャフトに取り付ける;
b)円筒形の磁石を、回転子シャフトの少なくとも一部に取り付ける;
c)非磁性の締め付けリングによって、前記円筒形の磁石を前記回転子シャフトに保持する;
d)前記圧縮機シャフトの一方の端部を、前記回転子シャフトの内腔に挿入し、前記圧縮機シャフトを前記回転子シャフトに固定する。
【0032】
一実施態様によると、圧縮機シャフトを前記回転子シャフトの前記内腔に挿入する工程の間、前記回転子は、相互に接触している平坦な表面によって前記圧縮羽根車に当接している。
【0033】
一実施態様によると、圧縮機シャフトを前記回転子シャフトの前記内腔に挿入する固定の間に、前記回転子の円筒形部分は、前記圧縮羽根車の中に挿入される。
【0034】
有利には、回転子シャフトは、ねじ山によって前記圧縮機シャフトに固定されている。
【0035】
好ましくは、前記回転子は操作アダプタによって回転させられる。
【0036】
本発明による装置の他の特性及び利点は、いかなる意味でも限定ではない以下の実施形態の記載を読むことによって、及び以下に示す添付図を参照して、明白となろう。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態による、電気機械の回転子を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1の実施形態による、電気機械によって駆動される圧縮装置を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の第2の実施形態による、電気機械によって駆動される圧縮装置を示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の第3の実施形態による、電気機械によって駆動される圧縮装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明は、電気機械によって駆動される、流体、特に気体のための圧縮装置に関する。換言すると、本発明は、電気機械及び圧縮装置によって形成される組立体に関する。好ましくは、圧縮装置は空気を圧縮することが意図される。
【0039】
流体のための圧縮装置は、圧縮機シャフトと呼ばれるシャフトを含んでおり、そこに圧縮羽根車(ブレードとも呼ばれる)が取り付けられている。
【0040】
電気機械は、回転子及び固定子を含んでいる。この電気機械からのトルクを圧縮機シャフトまでそして圧縮羽根車まで、そしてその逆に伝達しまたは渡すために、回転子は圧縮機シャフトに固定されている。
【0041】
本発明によると、回転子は以下を含んでいる:
-回転子シャフト:回転子シャフトは、圧縮機シャフトに固定されることが意図され、かつ電気機械の回転子の活動部分を支持するよう意図されており、これらの別々の回転要素の間での同軸度を確保している;
-回転子シャフトの少なくとも一部に取り付けられた、円筒形の磁石:好ましくはこの円筒形の磁石は、回転子を圧縮機シャフトに固定する回転子シャフトの端部とは反対側にある、回転子シャフトの一方の端部に取り付けられる。磁石は、回転子の回転運動を生じさせるため、固定子の巻線と相互作用する;
-磁石を締め付け、かつ回転子シャフト上でこの磁石を軸方向に保持するための、非磁性材料からなる締め付けリング:この締め付けリングは、円筒形の磁石と回転子シャフトの少なくとも一部とを囲む、実質的に円筒形の形状を有してよい。さらに、非磁性材料は磁気漏れを防止できる。
【0042】
さらに、回転子シャフトはその一方の端部に、圧縮機シャフトの一方の端部を挿入するための内腔を含んでいる。この内腔は、2つのシャフト(回転子シャフト及び圧縮機シャフト)を良好に位置合わせするよう、好ましくは回転子シャフトの軸に沿っている。
【0043】
本発明の一実施形態によると、回転子は、磁石の少なくとも一方の側に、非磁性の止め具も含んでもよい。この非磁性の止め具によって、磁石から回転子シャフトへの磁気漏れを防止することを可能にする。非磁性の止め具は、温度感受性を有する磁石を防護するための熱障壁としても機能できる。この非磁性の止め具は、回転子シャフトの肩部と円筒形の磁石との間に挿入されるリングの形態であってもよい。
【0044】
本発明の一態様によると、回転子はねじ山によって圧縮機シャフトに固定されている。この目的で、雄ねじを圧縮機シャフトの端部に設けてもよく、雌ねじを回転子シャフトの内腔の内側に設けてもよい。ねじ切りによるねじ固定は実施が簡単で、回転子シャフトの圧縮機シャフトへの剛性的な接続を可能にする。
【0045】
ねじ山によるこの実施形態のために、回転子は、圧縮機シャフトを回転子内に「ねじ締め」するのを容易にするための操作アダプタを含んでもよい。実施形態例によると、組み立てを容易にするために、操作アダプタは、12の側面を備える凹部を有するか、または、気流に対する慣性及び空力学的な影響を最小限に抑える、他の任意のシステムを有することができる。有利には、操作アダプタは、特にねじ締めされた組立体によって、取り外し可能であってもよい。操作アダプタの取り外し可能な特徴によって、ひとたび回転子が圧縮機シャフトに固定されると一定の外直径を有する回転子が生成されることと、及び動作中の回転子の質量を最小に抑えることが可能となる。
【0046】
あるいは他の任意の手段によって、回転子シャフトを圧縮機シャフトに固定してもよい。例えば、ピン止めまたはねじ締めによって、この固定を実施することができる。
【0047】
本発明の特徴によると、締め付けリングは、チタンもしくはカーボン、または好適な機械的特性及び非磁性の特性を有する他の任意の材料から作ることができる。
【0048】
一態様によると、回転子シャフトは、例えばAISI 420またはAPX4などの磁性材料から作ることができる。
【0049】
好ましくは、電気機械は圧縮装置の吸気側に取り付けてもよい。
【0050】
本発明の一実施態様によると、回転子(この場合、締め付けリング)は、圧縮羽根車の入口の直径以下の外直径を有している。このように、圧縮装置の入口における気体の流れは、回転子シャフトによって阻害されない。
【0051】
本発明の実装形態によると、回転子シャフトは、圧縮機シャフトに固定されることが意図されたその回転子シャフトの端部に対して小さな直径を有する部分を含んでもよい。この場合、小さな直径を有するこの部分に磁石を取り付けることができる。有利には、締め付けリングは、圧縮システムの入口における圧縮システムの直径に対応した外径を有する。したがって、回転子の直径は、制限された平坦な直径(一定の外直径)であり、それにより、圧縮装置の入口における空気の流れが回転子によって阻害されることができるだけ少なくなるようにすることが(回転子と圧縮システムの入口との間における直径の連続性によって)可能となる。
【0052】
部品の取り付け及び位置付けを促すため、回転子は、圧縮羽根車の平坦な端部表面と接触する平坦な表面を含んでよい。さらに、この特徴によって、回転子を可能な限り圧縮装置に近付けて配置することが可能になる。
【0053】
本発明の一実施態様によると、回転子は、圧縮羽根車の中に挿入される円筒形部分を含んでもよい。この円筒形部分は圧縮機シャフトを囲み、圧縮羽根車の内腔の中に挿入される。この円筒形部分は、圧縮機シャフトに対して、回転子の長い中心合わせ部を確保し、それによって2本のシャフトの同軸度をより良好にできるようにする。円筒形部分は、回転子の外直径に対して小さい外直径を有してよい。
【0054】
有利には、円筒形部分は、最適化された長い中心合わせ部を可能にするために、圧縮羽根車内の圧縮機シャフトの直径の、1.5倍以上の軸方向長さを有する。
【0055】
本実施形態の第1の変形例によると、円筒形部分は、最大の中心合わせ部を可能にし、特に高回転速度のために圧縮羽根車を強化するために、圧縮羽根車の軸方向長さに実質的に対応する軸方向長さを有する。この構成によって、特定の曲げモードで臨界点となり得る圧縮機羽根車の下におけるシャフトの部分を強化することができる。
【0056】
本実施形態の第2の変形例によると、一方の側で回転子の円筒形部分に対する止め具にくるように、管状スリーブを圧縮機シャフトに取り付けて圧縮羽根車の中に挿入し、かつこの管状スリーブを圧縮機シャフトの誘導装置のリングに取り付けることができる。このように、圧縮羽根車は、圧縮機シャフトと接触せずに、管状スリーブの上、及び円筒形部分の上に載る。この実施形態の変形例は、最適化した長い中心合わせ部を可能にし、かつ、特に高回転速度のために圧縮羽根車を強化する。この構成によって、特定の曲げモードで臨界点となり得る圧縮機羽根車の下におけるシャフトの部分を強化することができる。この解決策によって、異なる材料同士の間の接触を制限することも可能となる。一実施形態例によると、管状スリーブは、圧縮羽根車の剛性を高めるためにフランジを含んでもよい。
【0057】
本発明の実装形態によると、圧縮装置は、ターボチャージャー、特に乗り物の内燃エンジンのためのターボチャージャーである。したがって電気機械によって駆動されるターボチャージャーである。この場合、圧縮機シャフトは、ターボチャージャーのタービンをターボチャージャーの圧縮機に接続する、ターボチャージャーのシャフトに対応する。したがって電気機械は、圧縮機とタービンとの両方を駆動する。
【0058】
本発明のこの実施形態の変形例によると、電気機械は、ターボチャージャーシステムの気体(通常は空気)の吸気部に配置することができる。この解決策の利点は2つある。すなわち、電気機械が入口気体の流れによって冷却され得ること、及び、この入口気体が電気機械によって加熱されることである。これは、内燃エンジンの動作の特定のモードにおいて、好ましいことがある。
【0059】
好ましくは、電気機械は固定子格子を有する電気機械、すなわち、周りに巻線を取り付けられた固定子歯を伴う固定子を有する電気機械であってもよい。これらの固定子歯は、空気流が通過できるよう、大きい寸法を有する。このような、固定子格子を有する機械は、国際公開第2013/050577号、及び仏国特許出願公開第3048022号明細書に詳細に記載されている。
【0060】
図1は、本発明による回転子の一実施形態を、概略的かつ非限定的に示している。示される実施形態では、回転子1は、回転子シャフト31、円筒形の磁石34、締め付けリング33、及び非磁性の止め具32を含んでいる。回転子シャフト31は、圧縮機シャフト3(部分的に示される)を挿入するために、一方の側に内腔36を含んでいる。圧縮機シャフト3は雄ねじ(図示せず)を含み、内腔36は、圧縮機シャフト3の雄ねじと係合する雌ねじ(図示せず)を含むことができる。一方で、回転子シャフト31は、回転子シャフト31の第1の側での直径に対して小さな直径を有する部分35を含んでいる。円筒形の磁石34は、小さな直径を有するこの部分35に取り付けられる。磁石34は、非磁性の止め具32の位置に達して軸方向に止まることになる。非磁性の止め具32は、実質的にリングの形状を有している。非磁性の止め具32は、回転子シャフト31の肩部に配置されている。(例えばカーボン、またはチタンからなる)非磁性の締め付けリング33は、磁石34の周りに設置されている。非磁性の締め付けリング33は、磁石34を締め付けて、回転子シャフト31の所定の位置で軸方向に磁石34を保持する。非磁性の締め付けリング33は、回転子シャフト31の最大直径に対応した外直径を有している。したがって形成された回転子は、(一定の外直径の)「平坦な」円筒形状である。回転子は、操作アダプタ(図示せず)も含んでもよい。
【0061】
図2は、本発明の第1の実施形態による圧縮装置(特にターボチャージャー)を、概略的かつ非限定的に示している。この図では、回転子1の種々の構成要素、すなわち回転子シャフト、磁石、締め付けリング、及び任意に設けられる非磁性の止め具は示されていない。ターボチャージャーのタービン部も示されていない。
図2は、組立体、詳細には圧縮機羽根車2の剛性的な接続を確保しながら、ターボチャージャーシャフト3に電気回転子1を組み込んだシステムを示している。この場合、軸受4aを取り付けた後に、圧縮機羽根2が、半径方向の軸合わせによって、かつ軸受4aの内側リングと軸方向に接触するまで、ターボチャージャーシャフト3に位置付けられる。
【0062】
圧縮羽根車2の内腔を、軸受4aの反対側で大きくしてもよい。(従来の圧縮羽根車に対する)この修正は、(有利には)圧縮羽根車2の機械的強度を損ねることなく実施される。
【0063】
電気機械の回転子1の内腔には雌ねじが備えられ、その中にターボチャージャーシャフト3が、圧縮機シャフトの雄ねじ8によってねじ締めをされる。電気回転子1の位置付けは、回転子1の円筒形部分7によって、圧縮機シャフト3と相互作用する長い中心合わせ部を介して、実施される。機械的な間隙が、圧縮機羽根車2の内腔と、電気機械の回転子1の中心合わせシリンダ7との間に存在してもよい。円筒形部分7は、圧縮機シャフト3の直径の、ほぼ1.5倍に相当する。これによって、電気ターボチャージャーのシャフト全体の同軸度を確保する。電気回転子1の軸方向の位置付けは、圧縮機羽根車2における(入口の)ヘッドの平坦な表面6に対する平面継手を介して実施される。機械的な間隙が、圧縮機羽根車2の内腔の底部と、電気機械の回転子1の中心合わせシリンダとの間に存在してもよい。ターボチャージャーシャフト3上への電気機械の回転子1の剛性的な接続と、ターボチャージャーの軸受4aの内側リングにおける、軸方向の予圧は、干渉(摩擦)によって実施される。
【0064】
図3は、本発明の第2の実施形態による圧縮装置(特にターボチャージャー)を、概略的かつ非限定的に示している。この図では、回転子1の種々の構成要素、すなわち回転子シャフト、磁石、締め付けリング、及び、任意で設けられる非磁性の止め具は示されていない。ターボチャージャーのタービン部も示されていない。
図3は、組立体、特に圧縮機羽根車2の固定を確保しながら、ターボチャージャーシャフト3に電気回転子1を組み込んだシステムを示す。
図2と同一の要素は、詳細には説明しない。
図3に示される第2の実施形態は、円筒形部分7が圧縮羽根車2の軸方向長さと実質的に等しい長さを有して、軸受4aの内側リングとその端部との間の機械的な間隙を維持しているという点で、
図2に示される第1の実施形態とは異なる。本実施形態で、圧縮羽根車2は、従来の圧縮羽根車2を超える直径を有する内側の内腔を含んでいる。さらに、圧縮羽根車2は、回転子1の円筒形部分7に直接取り付けられている。電気機械の回転子1のこのような構造に適切な材料を用いることによって、安全ではない曲げモードに対して構造が影響を受けないように、ターボチャージャーのシャフト3の部分の剛性を高めることが可能になる。この構成において、一般的にアルミニウムからなる圧縮羽根車2が、電気機械の回転子1と軸受4aの内側リングとの間の境界において確認される。回転子1及び軸受4aの内側リングは、一般的に鋼で作られている。
【0065】
図4は、本発明の第3の実施形態による圧縮装置(特にターボチャージャー)を概略的かつ非限定的に示している。この図では、回転子1の種々の構成要素、すなわち回転子シャフト、磁石、締め付けリング、及び任意で設けられる非磁性の止め具は示されていない。ターボチャージャーのタービン部も示されていない。
図4は、組立体、特に圧縮機羽根車2の固定を確保しながら、ターボチャージャーシャフト3に電気回転子1を組み込んだシステムを示している。
図2と同一の要素は、詳細には説明しない。
図4に示される第3の実施形態は、圧縮機シャフト3と圧縮羽根車2との間に管状スリーブ9を使用する点で、
図2の第1の実施形態とは異なる。管状スリーブ9は、任意選択的に間隙を伴って、軸受4aと軸方向に接触し、また回転子1の円筒形部分7と軸方向に接触することになる。管状スリーブ9は、その端部に、軸受リング4aと接触するフランジを含んでいる。本実施形態では、圧縮羽根車2は、従来の圧縮羽根車2を超える直径を有する内側の内腔を含んでいる。
【0066】
さらに、本発明は、電気機械によって駆動される圧縮装置の製造方法に関しており、前記電気機械は回転子及び固定子を含み、前記圧縮装置は圧縮機シャフト及び圧縮羽根車を含んでいる。この方法では、以下の工程が実施される:
a)圧縮羽根車が圧縮機シャフトに取り付けられる;
b)円筒形の磁石が回転子シャフトの少なくとも一部に取り付けられる;
c)前記円筒形の磁石が非磁性の締め付けリングによって前記回転子シャフトに保持される。この非磁性の締め付けリングは、回転子シャフトに取り付けられた磁石を収容し、実質的に円筒形である;
d)圧縮機シャフト一方の端部が、前記回転子シャフトの内腔に挿入され、圧縮機シャフトが回転子シャフトに固定される。
【0067】
有利には、製造方法は、上述した変形例の任意の組み合わせに基づく圧縮装置を製造することが意図される。例えば、製造方法は、
図1~
図4の内の1つを参照して説明したような圧縮装置を製造することが意図され得る。
【0068】
一実施態様によると、圧縮機シャフトを回転子シャフトの内腔に挿入する工程の間、相互に接触している平坦な表面によって、回転子は前記圧縮羽根車に当接してもよい。
【0069】
一実施態様によると、圧縮機シャフトを回転子シャフトの内腔に挿入する工程の間に、回転子の円筒形部分は、圧縮羽根車の中に挿入されてよい。この円筒形部分は、圧縮機シャフトに対して、回転子の長い中心合わせ部を確保し、それによって2本のシャフトの同軸度を良好にする。
【0070】
本発明の一態様によると、回転子シャフトは、ねじ切りによって圧縮機シャフトに固定されてよい。この目的で、雄ねじを圧縮機シャフトの端部に設けてもよく、雌ねじを回転子シャフトの内腔の内側に設けてもよい。ねじ切りによるこの固定は実施が容易であって、正確な位置を維持することを可能にする。
【0071】
この実施形態は、回転子を操作アダプタによって回転させてもよく、例えばこの操作アダプタは12の側面を有する凹部を含んでいる。
【0072】
あるいは、回転子シャフトは、例えばピン止め及びねじ締めなどの他の任意で公知の手段で、圧縮機シャフトに固定してもよい。
【0073】
本方法の実施形態によると、圧縮装置または任意選択的に設けられるターボチャージャーと電気機械との組立体は、内燃エンジンの空気通路に据えられてもよい。
【0074】
有利には、圧縮装置に入る空気の流れが最初に電気機械を通過するように、電気機械を空気の吸気ダクトに配置してもよい。この解決策の利点は2つある。すなわち、電気機械が吸気気体の流れによって冷却され得ること、及び、この吸気気体が電気機械によって加熱されることである。これは、内燃エンジンの動作での特定のモードにおいて、好ましいことがある。
【0075】
本方法は、回転子の周りに固定子を据える工程を含んでもよい。
【0076】
有利には、本発明による製造方法は、圧縮装置の電動化、または(圧縮羽根車及び圧縮機シャフトを装備するが、当初は電気駆動部を伴わない)従来のターボチャージャーへの電動化に関係し得る。この目的で、圧縮羽根車及び圧縮機シャフトは、上述の工程a)~d)が実行される圧縮機シャフト及び圧縮羽根車であってもよい。
【0077】
この場合、製造方法は、少なくとも回転子の円筒形部分、及び任意選択的に管状スリーブを挿入するために、圧縮羽根車に穴を開ける追加の工程を含んでもよい。
【0078】
さらに本発明は、マイクロタービンなどのエネルギー生成システムにも好適である。
【符号の説明】
【0079】
1 回転子
2 圧縮羽根車
3 圧縮機シャフト
31 回転子シャフト
33 締め付けリング
34 磁石
36 内腔