(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】吸入装置のための香味要素
(51)【国際特許分類】
A61M 15/06 20060101AFI20221207BHJP
A24F 47/00 20200101ALI20221207BHJP
【FI】
A61M15/06 Z
A61M15/06 C
A24F47/00
(21)【出願番号】P 2018505572
(86)(22)【出願日】2016-04-13
(86)【国際出願番号】 US2016027255
(87)【国際公開番号】W WO2016168276
(87)【国際公開日】2016-10-20
【審査請求日】2019-04-15
【審判番号】
【審判請求日】2021-12-17
(32)【優先日】2015-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】ステンツラー,アレックス
(72)【発明者】
【氏名】ハン,スティーヴ
(72)【発明者】
【氏名】スルツキー,アーサー
(72)【発明者】
【氏名】エリス,スティーヴン
(72)【発明者】
【氏名】ザメル,ノエ
(72)【発明者】
【氏名】ニャンブラ,ビルダッド
【合議体】
【審判長】村上 聡
【審判官】安井 寿儀
【審判官】井上 哲男
(56)【参考文献】
【文献】実公昭31-5390(JP,Y1)
【文献】特表2002-522173(JP,A)
【文献】実開昭62-175896(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
香味または鎮咳剤成分を吸入器に加えるための装置であって、前記装置が:
前記吸入器の外側に適合するよう構成されたハウジングであって、前記ハウジングは、内部チャンバを有し、前記内部チャンバに接続された少なくとも1つの空気入口及び少なくとも1つの空気出口を含み、それによって前記内部チャンバを通る空気流路を形成するハウジング;
前記内部チャンバ内に配置された少なくとも1つの香味または鎮咳剤成分であって、パッドまたはウィック内に含まれていてもよい、前記少なくとも1つの香味または鎮咳剤成分;及び
前記ハウジングを少なくとも1つの空気入口を有する吸入器の外部表面にクリップ留めするよう構成された前記ハウジングの両側に配置されたアームを含むスナップ嵌合取り付け部品であって、前記装置の少なくとも1つの空気出口は、前記装置を通って前記吸入器中への空気流路を形成する前記吸入器の少なくとも1つの空気入口と整列し、この空気流路が前記少なくとも1つの香味または鎮咳剤成分の上を通過するよう構成された、前記取り付け部品
からなる、前記装置。
【請求項2】
前記香味または鎮咳剤成分は粉末である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記香味または鎮咳剤成分は、前記装置の前記内部チャンバ内に配置されたウィック内に収容された液体である、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記吸入器は乾燥粉末吸入器である、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記乾燥粉末吸入器は、ニコチンを含む乾燥粉末製剤を送達するのに適している、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記香味または鎮咳剤成分はメントールを含む、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記メントール及びニコチン製剤は、吸入を介して被験者に同時に送達される、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
乾燥粉末吸入器であって:
近位端、遠位端及びそれらの間の長さを有する第1のハウジングであって、前記第1のハウジングの長さに沿って近位、中間及び遠位の領域を有する内部通路を画定する第1のハウジングと;
前記内部通路にそれぞれ接続した近位端開口部、遠位端開口部及び近位領域開口部であって、前記近位領域開口部はマウスピース開口部であり、前記近位領域開口部は前記近位の領域にある、前記近位領域開口部と;
前記内部通路の前記遠位領域内の乾燥粉末薬剤コンパートメントと;
前記内部通路の前記中間領域内の粉末流動化及びデアグロメレーション器具と;
前記吸入器の外側に適合するよう構成された第2のハウジング、及びパッドまたはウィック内に含まれていてもよい少なくとも1つの香味または鎮咳剤成分
を含み、
前記第2のハウジングは、内部チャンバを有し、前記内部チャンバに接続された少なくとも1つの空気入口及び少なくとも1つの空気出口を含み、それによって前記内部チャンバを通る空気流路を形成し、前記少なくとも1つの香味または鎮咳剤成分及び前記少なくとも1つの香味または鎮咳剤成分が含まれていてもよいパッドまたはウィックは前記内部チャンバ内に配置され、前記空気流路が前記少なくとも1つの香味または鎮咳剤成分の上を通過するよう構成され、
前記第2のハウジングの前記少なくとも1つの空気出口は、前記第2のハウジングが前記第1のハウジングと係合するとき、前記第1のハウジングの前記近位領域の開口部と整列するように、前記第2のハウジングが、該第2のハウジングの両側に配置されたアームを含む取り付け機構を含み、前記第1のハウジングの長さに沿って該第1のハウジングの外部表面にクリップ留めするよう構成された、前記吸入器。
【請求項9】
前記香味または鎮咳剤成分は粉末である、請求項8に記載の吸入器。
【請求項10】
前記香味または鎮咳剤成分は、前記装置の前記内部チャンバ内に配置されたウィック内に収容された液体である、請求項8に記載の吸入器。
【請求項11】
前記香味または鎮咳剤成分はメントールを含む、請求項10に記載の吸入器。
【請求項12】
薬剤としてニコチンを含む乾燥粉末製剤を送達するのに適している、請求項11に記載の吸入器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる2015年4月15日に出願された米国仮出願No.62/148,030の優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
粉末ニコチンを吸入することは、ニコチンを血流に送達して喫煙の有害な影響を軽減する効果的かつ一般的な方法となっている。不快な臭気と受動喫煙の有害な影響は、従来の紙巻きタバコに対して乾燥粉末吸入器によって避けることができる効果のほんの一部である。従来の乾燥粉末ニコチン製剤は、実質的に香味がなくてもよく、そうでなければ、ユーザが望まない微妙なまたは結果的な香味を有してもよい。さらに、一部のユーザは、特定の香味を導入するか、または吸入中に快適に味わう一般的に魅力的なものを導入することを好み得る。
【0003】
香味付けされた粒子は、活性成分を有する組成物として乾燥粉末製剤及び吸入装置に混合することができ、香味要素が吸入中に有効成分とともにエアロゾル化してより快適な味が得られる(例えば、KamlerらのP.C.T.国際公開公報No.WO 2013133903及びShanの米国特許出願公開No.2007/0267032参照)。しかしながら、特定の香味が活性成分と予め混合されると、ユーザは、混合物全体を置換することなく、異なる香味に切り替えることができず、薬物を無駄にする可能性がある。同様に、ユーザが香味のない味に切り替えることを望む場合、香味の付いた要素を後に活性成分から除去することができないので、同じ無駄な結果が生じる。
【0004】
さらに、典型的な喫煙者は咳の増加を経験することが多い。咳は、分泌物及び微粒子の気道を浄化するために引き起こされる反射である(Polverinoら、Multidiscip Respir Med.2012;7(1):5)。他の原因の中でも、咳は、気管、大気道の分岐点、咽頭及び喉頭などのヒト気道の様々な部分に見られる咳受容体上の機械的または化学的刺激剤によって誘発され得る。最低でも、咳は、喫煙者がニコチン製剤または禁煙治療で、負に連想し得る不快な副作用であり得る。しかし同時に、気道外に吸入されたニコチン製剤粒子を追い出すことによって咳が治療を無効にする可能性もある。ニコチン中毒の治療のための有効な製剤は、理想的には、喫煙者の気道に、喫煙の効果を模倣する形態及び濃度のニコチン製剤を十分に送達することができ、同時に、咳反射を制御及び抑制できなければならない。
【0005】
メントールは、公知の広く使用されている局所鎮痛薬、うっ血除去剤及び鎮咳剤である。香味を調整して咳を減らすために、ほとんどのタバコはメントールを含む。たばこのメントール濃度が3%を超えると、それはメントールシガレットとして分類される。紙巻きタバコにメントールを使用する方法には、タバコの葉への添加が含まれる。メントールで満たされたプラスチックボールは、たばこのフィルタに貯蔵され、次いで、たばこを喫煙する前に粉砕され得る。タバコを点火すると、加熱された煙は揮発してメントールを喫煙者の気道に運ぶように作用する。
【0006】
しかし、ニコチンの乾燥粉末製剤にメントールを加えることは、最終製品の有効性の点でいくつかの課題をもたらす。特に重要なのは、喫煙者の咳受容器に到達するメントールの有効性である。メントール粒子がニコチン粒子より少ない数の受容器に当たった場合、咳の抑制におけるメントールの有効性は、せいぜい弱められ、または存在しないことさえある。
【0007】
したがって、当該技術分野において、香味及び/または鎮咳剤成分を任意選択で吸入装置を介して取り込むための改良された装置及び方法が必要であり、ユーザは、活性成分の全部または一部を投与する過程でどのような追加の化合物を添加または除去するかについて、高いレベルの柔軟性及び選択肢を有する。本発明はこの必要性を満たす。
【発明の概要】
【0008】
香味成分を吸入器に加えるための装置が記載される。装置は、内部チャンバを有するハウジングであって、内部チャンバに接続された少なくとも1つの空気入口及び少なくとも1つの空気出口を含み、それによって内部チャンバを通る空気流路を形成するハウジング、及び内部チャンバ内に配置された少なくとも1つの香味成分と、を含み、ハウジングは、少なくとも1つの空気入口を有する吸入器の外部表面に取り付け可能であり、装置の少なくとも1つの空気出口は、装置を通って吸入器中への空気流路を形成する吸入器の少なくとも1つの空気入口と整列する。
【0009】
乾燥粉末吸入器も記載される。吸入器は、近位端、遠位端及びそれらの間の長さを有する第1のハウジングであって、第1のハウジングの長さに沿って近位、中間及び遠位の領域を有する内部通路を画定する第1のハウジングと、内部通路にそれぞれ接続した近位端開口部、遠位端開口部及び近位領域開口部と、内部通路の遠位領域内の乾燥粉末薬剤コンパートメントと、内部通路の中間領域内の粉末流動化及びデアグロメレーション器具と、及び内部チャンバを有する第2のハウジングと、を含み、第2のハウジングは内部チャンバに接続された少なくとも1つの空気入口及び少なくとも1つの空気出口を含み、それによって内部チャンバを通る空気流路を形成して少なくとも1つの香味成分は内部チャンバ内に配置され、第2のハウジングの少なくとも1つの空気出口は、第2のハウジングが第1のハウジングと係合するとき、第1のハウジングの近位領域の開口部と整列する。
【0010】
乾燥粉末吸入の方法も記載される。特定の実施形態では、その方法は、近位開口部、遠位端部、及び近位端部から遠位端部に延びるシャフト壁を有する近位端部、乾燥粉末を保持するように構成された第1のコンパートメント、第1の開口部によって第1のコンパートメントに接続された経路であって、近位開口部を含む前記経路、及び経路に接続されたシャフト壁の第2の開口部、を含む乾燥粉末吸入器を提供するステップを含む。特定の実施形態では、その方法は、シャフト壁に取り付け可能で第2の開口部を少なくとも部分的に覆うように構成されたハウジングを提供し、そのハウジングは第1及び第2のハウジング開口部並びに少なくとも1つの香味剤または鎮咳剤成分を有する。その方法は、近位開口部に負圧を発生させるステップも含み、乾燥粉末の一部が第1のコンパートメントを出て経路に入り、少なくとも1つの香味または鎮咳剤成分の一部がハウジングを出て、第2の開口部を通って経路に入り、及び乾燥粉末の一部及び少なくとも1つの香味または鎮咳剤の一部は、負圧によって生成された空気流中で混合する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
前述の目的及び特徴並びに他の目的及び特徴は、以下の記載及び添付の図面を参照して明らかになるであろう。それらは、本発明の理解を提供するために含まれて本明細書の一部を構成し、同様の数字は同様の要素を表す。
【
図2】例示的な取り付け可能な香味及び/または鎮咳剤コンパートメントの断面図である。
【
図3】香味または鎮咳剤コンパートメントが取り付けられた例示的な乾燥粉末吸入器の断面図である。
【
図4】香味または鎮咳剤コンパートメントが取り付けられた別の例示的な乾燥粉末吸入器の断面図である。
【
図5】香味または鎮咳剤コンパートメントが取り付けられたさらに別の例示的な乾燥粉末吸入器の断面図である。
【
図6】吸入器に取り付けられた典型的な香味または鎮咳剤コンパートメントの写真である。
【
図7】吸入器の開口部に挿入可能な例示的な円筒形香味または鎮咳剤コンパートメントの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、以下の詳細な説明、そこに含まれる実施例、並びに図面及びそれらの以下の説明を参照することにより、より容易に理解され得る。必ずしも縮尺通りではない図面は、選択された実施形態を示しており、本発明の範囲を限定するものではない。詳細な説明は、限定としてではなく例として、本発明の原理を説明するものである。当業者であれば、本明細書に記載の装置及び方法は単なる例であり、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく変形が可能であることを容易に理解するであろう。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、限定することを意図するものではないことも理解されるべきである。本発明のより明確な理解に関連する要素を例示するために、本発明の図面及び記載は簡略化されていることは理解されるべきであるが、明確さの目的で、吸入器用の香味及び/または鎮咳剤化合物を提供するシステム及び方法に見られる他の多くの要素を排除する。当業者であれば、本発明の実施において他の要素及び/またはステップが望ましく及び/または必要であることを認識することができる。しかし、そのような要素及びステップは、当該技術分野において周知であり、それらは本発明のより良い理解を容易にしないので、そのような要素及びステップの議論は本明細書では提供されない。本明細書の開示は、当業者に公知のそのような要素及び方法に対するそのようなすべての変形及び修正を対象とする。
【0013】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されたものと類似または等価な任意の方法及び材料が本発明の実施または試験において使用され得るが、好ましい方法及び材料が記載される。
【0014】
本明細書中で使用される場合、以下の各用語は、本セクションでそれに関連した意味を有する。
【0015】
冠詞「a」及び「an」は、本明細書で使用される場合、その冠詞の文法的対象の1つまたは複数(すなわち、少なくとも1つ)を指すのに使用される。例として、「要素」は、1つの要素または2つ以上の要素を意味する。
【0016】
量、持続時間などの測定可能な値を指すときに本明細書で使用される「約」は、そのような変動が適切である場合、±20%、±10%、±5%、±1%、及び±0.1%の変動を包含することを意味する。
【0017】
本明細書で使用される場合、用語「乾燥粉末」は、推進剤、担体または他の液体中に懸濁または溶解していない微粒子組成物を指し、必ずしもすべての水分子が完全に存在しないことを意味するものではない。
【0018】
他に記載されない限り、粒子の記載されたサイズまたはサイズの範囲は、粒子または粒子の集合の質量中央空気力学的直径(MMAD)として考慮されるべきである。そのような値は、特徴付けられている粒子と同じ空力的挙動を有する1gm/cm3の密度を有する球の直径として定義される空気力学的粒子直径の分布に基づく。本明細書に記載される粒子は様々な密度及び形状であり得るので、粒子のサイズは粒子の実際の直径ではなくMMADとして表される。
【0019】
範囲:本開示を通じて、本発明の様々な態様を範囲形式で提示することができる。範囲の形式の記載は、便宜上のものであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈されるべきではないことが理解されるべきである。適切な場合には、範囲の説明は、その範囲内のすべての可能な部分範囲及び個々の数値を具体的に開示したものとみなされるべきである。例えば、1~6のような範囲の記載は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などのような部分範囲、及び、個々の数字、例えば、1、2、2.7、3、4、5、5.3及び6を具体的に開示したものと考えられるべきである。これは範囲の幅に関係なく適用される。
【0020】
様々な実施形態において、いくつかのビューを通して同様の参照番号が同様の部品または要素を示す図面を詳細に参照すると、本明細書に提示されているのは、吸入装置と組み合わせて使用するのに適した香味及び/または鎮咳剤コンパートメントであり、ニコチンベースの製剤の吸入に使用され得る。
【0021】
図1を参照すると、乾燥粉末吸入器または装置10は、近位端12から遠位端16に延びるシャフトの形態のハウジング20から形成される。好ましくは、ハウジング20は、従来の紙巻きタバコと同様の、ほぼ円筒形を形成することができる。代替の実施形態では、装置ハウジングは、当業者によって理解されるように、実質的に長方形、三角形、台形または他の任意の形状などの任意の他の所望の形状を形成することができる。装置10の近位先端は、ユーザが開口部11を通して吸入し、装置10の近位端12に負圧を発生させるマウスピース(MP)を形成する丸い開口部11を有する。開口部11は、楕円形または狭いスリットなどの所望の任意の形状であってもよいことが理解されるべきである。好ましくは、開口部11は、被験者の口内に快適にフィットするように、MPの近位端と併せて人間工学的に成形されているか、または輪郭付けされている。装置10の中間領域14は、装置ハウジング20の内部チャンバ26内に配置された粉末流動化及びデアグロメレーション器具(PFD)を含む。PFDは、ハウジング20の内部表面と単一のユニットとして一体化されてもよく、またはPFDは、ハウジング20の内部から取り外し可能な別個の構成要素であってもよい。PFDは、内部チャンバ24を形成するハウジング壁30も有する。PFDはさらに、その遠位端に、乾燥粉末カプセル50などの乾燥粉末の容器を穿孔するための穿孔要素としてさらに作用することができる開口部34をさらに含む。開口部34は、カプセル50の内部とPFDの内部チャンバ24の間に空気通路が形成されるように、内部チャンバ24へのチャネルを含む。あるいは、PFDの開口部34は、ハウジング20内の乾燥粉末リザーバにアクセスするように配置されてもよい。本明細書で考察するように、PFDハウジング壁30は、
図1に示すように、円錐台状のチャンバ24を形成するテーパ形状を含む、内部チャンバ24を画定する多数の形状を形成することができる。機能的には、PFDは、粉末流動化、または空気流における粉末の取り込みを提供し、空気流中に懸濁した流動化粉末を一次粒子状態にまたはそれに近く還元する。装置10の遠位端16は、特定の実施形態では、取り外し可能であり、及び/またはフィルタによって覆われ得る開口部17で終端する。
【0022】
MPの近位通路22に負の圧力が加えられると、空気は、装置10の遠位端16の開口部17を通って外部環境5から引き出され、カプセル50または他の粉末リザーバを通過して装置10の内部チャンバ26に入る。この空気は、次に、PFDハウジングの壁30内の開口部32を通ってPFDの内部チャンバ24にさらに引き込まれる。チャンバ開口部32を介してチャンバ24に入る空気の一部は、近位開口部11に向かって直接流れて、一次空気流を形成する。さらに、内部チャンバ24の遠位端の低圧領域は、内部チャンバ24のこの遠位端領域に向けて誘導される二次空気流を生成する。遠位方向にあるチャンバ24の断面積が減少すると、穿刺されたカプセルに入る2次空気流のバーストが生じ、使用者による吸入のために開口部11に向かって近位方向に移動する一次空気流に再結合する前に、粉末の小部分を取り込んでカプセル内の粉末の表面を洗浄する。あるいは、開口部32の代わりに(または開口部32に加えて)PFDハウジング壁30は、空気がチャンバ26からカプセル内に直接流れるように、穿刺されたときにカプセル壁内に空気通路または孔を生成するのに適した形状またはジオメトリを含んでもよい。装置10は、粉末貯蔵室に直接配置されるか、または装置10内に配置され得るカプセルまたは他の別個の包装内に収容される乾燥粉末製剤を吸入するために使用され得る。
【0023】
MPのハウジング壁20の開口部40は、通路22内に開口して、近位通路22と外部環境5の間に通路を提供する。したがって、一実施形態では、開口部40(またはCA)は、MP及び使用者の口に沈降するのではなく、PFDによってMPに引き込まれた空気中の粉末粒子の速度が増加し、肺の深部に送達されるように、チェース空気流路として機能することができる。
【0024】
特定の実施形態では、本明細書に記載の吸入装置を使用して、ニコチンの乾燥粉末製剤などの医薬品、及び任意選択でカプセルなどの保存チャンバ内に含まれる他の選択された材料を送達することができる。例えば、一実施形態では、製剤は、粒子のMMDに基づいて実質的に1~10ミクロンの間のサイズのニコチン粒子(本明細書ではニコチンベースの成分とも呼ばれる)を含む。
【0025】
さらに、
図2に単独で示すように、少なくとも1つの香味及び/または鎮咳剤成分を含有するのに適した取り外し可能なコンパートメント60が含まれる。コンパートメント60は、少なくとも1つの空気入口開口部64、少なくとも1つの空気出口開口部66、並びに少なくとも部分的にハウジング62の内部チャンバ68内に配置された少なくとも1つの香味及び/または鎮咳剤成分70を含むことができるハウジング62から形成される。ハウジング62は、制限なく、所望の任意の形状、サイズまたは形状であってもよい。
【0026】
香味及び/または鎮咳剤制成分70は、粉末などのゆるい組成物であってもよく、または液体組成物の少なくとも一部が相転移を経てチャンバ68内で蒸気形成するように、パッドまたはウィック内の液体組成物であってもよい。香味及び/または鎮咳剤成分のタイプ、香味及び/または鎮咳剤成分の閉じ込めメカニズム、またはチャンバ68内の香味及び/または鎮咳剤の任意の部分の放出に対する制限はないことが理解されるべきである。
【0027】
別の実施形態では、成分70は香味成分であってもよいし、それを含んでもよい。一実施形態では、香味成分はメントールである。別の実施形態では、香味成分はバニラである。他の実施形態では、香味成分は、タバコ、フルーツ香味、またはキャンディ若しくはベーキングに使用される食品等級の香味を含み得る。香味化合物は、当該技術分野で公知の任意の香味化合物、好ましくは規制認可香味化合物であり得ることが理解されるべきである。この香味成分は、香味成分粒子が被験者の肺に入る能力が制限され得るので、本明細書に記載の装置の使用中に、被験者の口腔内に影響を与えて所望の風味を生成し得る。
【0028】
一実施形態では、成分70は、鎮咳剤成分であってもよく、またはそれを含んでもよい。一実施形態では、鎮咳剤成分はメントールである。別の実施形態において、鎮咳剤成分は、ベンゾカインを含み得る。鎮咳剤成分は、咳を鎮めるために認可された任意の化合物を含むことができることが理解されるべきである。成分がメントールである実施形態では、咳は、本明細書に記載の装置を介して吸入されたときに被験者の上気道に接触するメントール粒子を介して被験者の上気道における刺激を和らげることによって低減され得る。別の実施形態では、鎮咳剤成分は、咽頭、声門声帯、及び咳を引き起こすかまたは他の望ましくない感覚を引き起こし得る受容体を含む口のより近位または近くにある他の解剖学的領域の刺激によって引き起こされる咳を低減することもできる。本明細書で意図されるように、鎮咳剤成分は、声門下気道に入ることが実質的に禁止されるように処方され得る。鎮咳剤成分は、薬剤成分を希釈し、口腔咽頭、声帯及び気管に近接する他の解剖学的領域を刺激するニコチンによって引き起こされる咳を減少させるように作用し得ることが理解されるべきである。
【0029】
したがって、本明細書に提示された装置及び方法は、任意のまたはカスタマイズされた香味及び/または鎮咳剤成分を含む乾燥粉末ニコチンベース製剤の送達に対する新規な製品及びアプローチを表す。サイズ、組成または他のパラメータによって材料成分を分離または隔離しない既存の技術とは異なり、本発明は、ユーザの選択によって使用時に対象に送達される成分の組合せを選択的に制御する。したがって、任意選択で咳抑制剤をより大きな気道及び/または口腔咽頭に送達し、並びに風味粒子を口腔に送達する一方、呼吸可能なニコチンを肺胞及び小気道に送達する独特の優れた製品が提示される。
【0030】
図3に示された例示的な実施形態では、より単純化された乾燥粉末吸入器10が示されており、コンパートメント60が放出可能に取り付けられている。図示のように、コンパートメント60は、少なくとも1つの空気出口66がハウジング20の開口部40の上に配置されるようにハウジング20の外面に配置され、それによって空気流路80が、外部環境5からの空気を、入口開口部64を通ってチャンバ68に、開口部40を通って装置10の近位通路22に吸い込むことを可能にする。特定の実施形態では、コンパートメント60は、コンパートメント60を装置10に一時的に係合させるためのスナップ嵌合または類似の嵌合構成を使用して、ハウジング20の外面にクリップ留めする。スナップまたは他の摩擦嵌合、バネ張力、タイ、接着剤、ねじ込みまたは磁気固定などの、当技術分野で公知の代替の固定方法を使用することもできる。コンパートメント60を装置10に取り付けるための係合機構のタイプに制限はないことが理解されるべきである。香味及び/または鎮咳剤コンパートメントは、一般に、着脱可能であると記載されているが、他の実施形態では、香味及び/または鎮咳剤コンパートメントは、装置10のハウジング20の少なくとも一部分に恒久的に固定されてもよい。
【0031】
吸入の間、流路80に沿った空気流は、香味及び/または鎮咳剤成分70の少なくとも一部が(蒸気または他の粒子のいずれかとして)チャンバ68に放出されるように、香味及び/または鎮咳剤成分70を通過し、マウスピース開口部11における吸入中に近位通路22に引き込まれる。したがって、装置10がPFDによって係合されたカプセル50も有する場合、カプセル50内の薬剤は、近位通路22に引き込まれ、コンパートメント60から引き出された香味及び/または鎮咳剤成分70と混合され、医薬並びに香味及び/または鎮咳剤成分の混合物として患者に送達される。香味/または鎮咳剤成分は、上記のように薬剤との混合物としてこの方法で送達され得るか、または被験者によって所望されるように、薬剤送達の直前若しくは薬剤送達の直後など、薬剤とは別に送達され得ることが理解されるべきである。
【0032】
特定の実施形態では、単一の香味及び/または鎮咳剤成分70は、遠位側の、近位側の、隣接する、または開口部40若しくは装置10の上方の位置を形成するように成形される。別の実施形態では、複数の香味及び/または鎮咳剤成分70を、開口部40の近くの様々な位置に配置するために利用することができる。
図3の例示的な実施形態では、単一の香味及び/または鎮咳剤成分70が開口部40の遠位に配置される。
図4の例示的な実施形態に示される別の例では、香味及び/または鎮咳剤成分は開口部40の近位に配置される。
図5の例は、開口部40の両側に配置された第1の70a及び第2の70bの香味及び/または鎮咳剤成分を示す。したがって、成分70a及び70bは、同じまたは異なるタイプの香味及び/または鎮咳剤成分であってもよい。これらの位置の組み合わせは、所望であれば、別の実施形態で使用され得る。単一の入口開口部64が
図3~5に示されているが、前述のように、出口開口部66に当てはまるように、複数の開口部、または濾過若しくは多孔質の開口部を使用することができる。さらに、入口開口部64は、ハウジング62を通って角度を付けられてもよく、または吸入中に空気の特定の空気流を促進するために異なるサイズで形成されてもよい。より強力な香味及び/または鎮咳剤の効果を得るために、香味及び/または鎮咳剤成分70上の空気流を増加させるように、同様の開口部64のパターンを形成することができる。香味及び/または鎮咳剤成分が使用されていない間にあまりにも速く乾燥しないように、開口部64のいずれかに対してヒンジ付きまたは取り外し可能なキャップを使用することもできる。乾燥粉末吸入器に取り外し可能に取り付けられた香味及び/または鎮咳剤コンパートメントの実施例を
図6に示す。
【0033】
さらに他の実施形態では、コンパートメント60は、
図7に示すように、挿入可能なカラムの形態を取ることができる。図示のように、コンパートメント60は、概ね円筒形であってもよいし、そうでなければ、装置10の開口部40にぴったりと嵌るように適切に成形されてもよい。コンパートメント60は、中空の通路またはその長さを通る内腔を含み、香味及び/または鎮咳剤成分70は、内腔の内面の少なくとも一部に沿って配置され得る。したがって、外部環境5からの空気流は、挿入されたコンパートメント60の内腔を通って流れて、香味及び/または鎮咳剤成分70の少なくとも一部が装置10の近位通路22に引き込まれる。この実施形態では、コンパートメント60は、乾燥粉末吸入器の通路内に部分的に突き出て、装置の内部空気流との混合をさらに促進することができる。さらなる実施形態では、コンパートメント60を通る管腔は、ユーザの吸入などの閾値負圧に応答して作動する圧力作動エラストマバルブ(スリーブ、ダックビルまたはスリットバルブなど)を含んでもよい。
【0034】
さらなる実施形態では、香味及び/または鎮咳剤コンパートメントは、装置10の遠位開口部17と係合することができる。したがって、香味及び/または鎮咳剤成分70は、カプセル50内に薬剤粉末を取り込む前に、同じ空気流に引き込むことができる。
【0035】
当業者には理解されるように、本発明の実施形態は、乾燥粉末吸入器を超えて広がり得る可能性がある用途を有する。例えば、蒸気タイプの紙巻きタバコ及び気管支挑発装置などの診断吸入システムも、実施形態を通じて説明したように、本発明から利益を得ることができる。
【0036】
乾燥粉末吸入の例示的方法は以下のようになる。特定の実施形態では、その方法は、近位端部、遠位端部、及び近位端部から遠位端部に延びるシャフト壁を有する近位端部、乾燥粉末を保持するように構成された第1のコンパートメント、第1の開口部によって第1のコンパートメントに接続された経路であって、近位開口部を含む前記経路、及び経路に接続されたシャフト壁の第2の開口部、を含む乾燥粉末吸入器を提供するステップを含む。特定の実施形態では、その方法は、シャフト壁に取り付け可能で第2の開口部を少なくとも部分的に覆うように構成されたハウジングを提供し、そのハウジングは第1及び第2のハウジング開口部並びに少なくとも1つの香味剤または鎮咳剤成分を有する。その方法は、近位開口部に負圧を発生させるステップも含み、乾燥粉末の一部が第1のコンパートメントを出て経路に入り、少なくとも1つの香味または鎮咳剤成分の一部がハウジングを出て、第2の開口部を通って経路に入り、乾燥粉末の一部及び少なくとも1つの香味または鎮咳剤の一部は、負圧によって生成された空気流中で混合する。特定の実施形態では、乾燥粉末はニコチンを含む。他の薬剤も利用することができる。特定の実施形態では、負圧は、吸入器によって生成されるが、診断装置などの機械によって生成されてもよい。ハウジングは、シャフト壁に着脱可能であり、したがって、特定の実施形態では、シャフト壁からハウジングを取り外し、乾燥粉末を含む空気流を生成する第2のユーザ吸入を生成するステップを含む。使用者は、香味または鎮咳剤に対する好みに応じて、ハウジングを再取り付けし、第3のユーザの吸入を生成するか、あるいはハウジングを再取り付けすることなく第3の吸入を生成することができる。特定の実施形態では、乾燥粉末の一部及び少なくとも1つの香味または鎮咳剤の一部は、経路内に少なくとも部分的に混合する。特定の実施形態では、乾燥粉末の部分及び少なくとも1つの香味または鎮咳剤の一部は、近位開口部を出た後に少なくとも部分的に混合する。特定の実施形態では、それらは、気流における一般的な混合プロセスの一部として、近位開口部を出る前と後の両方で混合する。特定の実施形態では、香味または鎮咳剤成分は、ハウジング内に部分的または完全に配置されたウィック内に含まれる液体である。特定の実施形態では、香味または鎮咳剤成分はメントールを含む。
【0037】
本明細書で引用した各特許、特許出願及び刊行物の開示は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。本発明は、特定の実施形態を参照して開示されたが、本発明の真の精神及び範囲から逸脱することなく、他の実施形態及び本発明の変形形態が当業者によって考案され得ることは明らかである。