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特許7189767組換えヒトC1エステラーゼインヒビター及びその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】組換えヒトC1エステラーゼインヒビター及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/81 20060101AFI20221207BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20221207BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20221207BHJP
   C12N 15/15 20060101ALI20221207BHJP
   C07K 14/76 20060101ALI20221207BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20221207BHJP
   C12N 15/85 20060101ALI20221207BHJP
   C12P 21/02 20060101ALI20221207BHJP
   C07K 1/16 20060101ALI20221207BHJP
   C07K 1/18 20060101ALI20221207BHJP
   C07K 1/20 20060101ALI20221207BHJP
   C07K 1/22 20060101ALI20221207BHJP
   C07K 1/34 20060101ALI20221207BHJP
   A61K 38/55 20060101ALI20221207BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20221207BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20221207BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20221207BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20221207BHJP
   A61P 7/10 20060101ALI20221207BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20221207BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20221207BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20221207BHJP
   A61P 25/02 20060101ALI20221207BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20221207BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20221207BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20221207BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20221207BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
C07K14/81 ZNA
C07K19/00
C07K16/00
C12N15/15
C07K14/76
C12N5/10
C12N15/85 Z
C12P21/02 C
C07K1/16
C07K1/18
C07K1/20
C07K1/22
C07K1/34
A61K38/55
A61K47/18
A61K47/26
A61K9/08
A61K9/19
A61P7/10
A61P37/06
A61P27/02
A61P25/00 101
A61P25/02 101
A61P9/10
A61P17/02
A61P25/16
A61P9/00
A61P21/04
【請求項の数】 105
(21)【出願番号】P 2018526218
(86)(22)【出願日】2016-11-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-12-27
(86)【国際出願番号】 US2016062906
(87)【国際公開番号】W WO2017087882
(87)【国際公開日】2017-05-26
【審査請求日】2019-11-18
(31)【優先権主張番号】62/257,711
(32)【優先日】2015-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000002934
【氏名又は名称】武田薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ノートン, アンジェラ ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】コッポラ, ジェルマーノ
【審査官】進士 千尋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/135694(WO,A1)
【文献】特開2013-126992(JP,A)
【文献】国際公開第2015/143199(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/145519(WO,A2)
【文献】米国特許第05622930(US,A)
【文献】特開2001-029074(JP,A)
【文献】SILKE WISSING; ET AL,NOVEL METHOD FOR GLYCOPROTEIN EXPRESSION,GENETIC ENGINEERING & BIOTECHNOLOGY NEWS,米国,2015年11月01日,VOL. 35, NO. 19,PAGES. 32 - 33(1-4),https://www.liebertpub.com/doi/abs/10.1089/gen.35.19.15?journalCode=gen
【文献】SILKE WISSING; ET AL,EXPRESSION OF GLYCOPROTEINS WITH EXCELLENT GLYCOSYLATION PROFILE AND SERUM HALF-LIFE IN CAP-GO CELLS,BMC PROCEEDINGS,英国,2015年06月03日,VOL. 9, NO. SUPPL 9,PAGES. P12-1/2,https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4685431/
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 14/81
C07K 19/00
C07K 16/00
C07K 14/76
C12N 15/15
C12N 5/10
C12N 15/85
C12P 21/02
C07K 1/16
C07K 1/20
C07K 1/22
C07K 1/34
A61K 38/55
A61K 47/18
A61K 47/26
A61K 9/08
A61K 9/19
A61P 7/10
A61P 37/06
A61P 27/02
A61P 25/00
A61P 25/02
A61P 9/10
A61P 17/02
A61P 25/16
A61P 9/00
A61P 21/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号4においてE68Q変異を有するアミノ酸配列に対して少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を有する精製され短縮された組換えヒトC1エステラーゼインヒビター(rhC1-INH)を含む組成物であって、前記精製され短縮されたrhC1-INHが配列番号4のE68Q変異に対応するアミノ酸を含み、前記精製され短縮されたrhC1-INHが、血漿由来ヒトC1エステラーゼインヒビターと同様のまたはそれよりも長い半減期を有し、前記短縮されたrhC1-INHが野生型ヒトC1-INHタンパク質のアミノ酸1~97を含まない、前記組成物。
【請求項2】
配列番号4においてE68Q変異を有するアミノ酸配列に対して少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を有する精製され短縮された組換えヒトC1エステラーゼインヒビター(rhC1-INH)を含む組成物であって、前記精製され短縮されたrhC1-INHが配列番号4のE68Q変異に対応するアミノ酸を含み、前記精製され短縮されたrhC1-INHが、少なくとも約10時間、15時間、20時間、25時間、30時間、35時間、40時間、45時間、50時間、55時間、60時間、65時間、または70時間の半減期を有し、前記短縮されたrhC1-INHが野生型ヒトC1-INHタンパク質のアミノ酸1~97を含まない、前記組成物。
【請求項3】
前記精製され短縮されたrhC1-INHが、約50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、または5%以下の中性グリカン種を含むグリコシル化プロファイルを有する、請求項1から請求項2のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項4】
前記短縮されたrhC1-INHタンパク質が融合タンパク質である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記短縮されたrhC1-INHタンパク質が、C1-INHドメインに直接的または間接的に融合されたFcドメインを含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記短縮されたrhC1-INHタンパク質が、C1-INHドメインに直接的または間接的に融合されたアルブミンドメインを含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記精製され短縮されたrhC1-INHが、約5%~約25%の中性グリカン種を含むグリコシル化プロファイルを有する、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記精製され短縮されたrhC1-INHが、約20%、15%、10%、または5%未満の、マンノース、α-ガラクトース、NGNA、及び/またはオリゴマンノース型のグリコシル化のうちの1つ以上を含有するか、または、0%のマンノース、α-ガラクトース、NGNA、及び/またはオリゴマンノース型のグリコシル化のうちの1つ以上を含有する、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記精製され短縮されたrhC1-INHが、約30%以下の中性グリカン種と、前記精製され短縮されたrhC1-INHが血漿由来C1-INHと同様のまたはそれよりも長い半減期を有するのに十分なシアリル化グリカン種とを含むグリコシル化プロファイルを有する、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
前記精製され短縮されたrhC1-INHが、
約5%~約30%の中性グリカン種、
約10%~約30%のモノシアリル化グリカン種、
約30%~約50%のジシアリル化グリカン種、
約15%~約35%のトリシアリル化グリカン種、または
約5%~約15%のテトラシアリル化グリカン種、のうちの少なくとも1つを含むグリコシル化プロファイルを有する、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記精製され短縮されたrhC1-INHが、
30%以下の中性グリカン種、
約20%~約30%のモノシアリル化グリカン種、
約30%~約40%のジシアリル化グリカン種、
約10%~約20%のトリシアリル化グリカン種、及び
約5%~約10%のテトラシアリル化グリカン種、を含むグリコシル化プロファイルを有する、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
配列番号4においてE68Q変異を有するアミノ酸配列に対して少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一のアミノ酸配列を有する精製され短縮された組換えヒトC1エステラーゼインヒビター(rhC1-INH)を含む組成物であって、前記精製され短縮されたrhC1-INHが配列番号4のE68Q変異に対応するアミノ酸を含み、前記精製され短縮されたrhC1-INHが、平均して1分子当たり少なくとも約10個、11個、12個、13個、または14個のシアリル化グリカン残基を含み、ヒト血漿由来C1エステラーゼインヒビターと同様のまたはそれよりも長い半減期を有し、前記短縮されたrhC1-INHが野生型ヒトC1-INHタンパク質のアミノ酸1~97を含まない、前記組成物。
【請求項13】
前記精製され短縮されたrhC1-INHが、平均して1分子当たり少なくとも約15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、または29個のシアリル化グリカン残基を含む、請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
前記精製され短縮されたrhC1-INHが、平均して1分子当たり少なくとも約30個、31個、32個、33個、34個、35個、36個、37個、38個、39個、または40個のシアリル化グリカン残基を含む、請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
配列番号4においてE68Q変異を有するアミノ酸配列に対して少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一のアミノ酸配列を有する精製され短縮された組換えヒトC1エステラーゼインヒビター(rhC1-INH)を含む組成物であって、前記精製され短縮されたrhC1-INHが配列番号4のE68Q変異に対応するアミノ酸を含み、前記精製され短縮されたrhC1-INHが、平均して1分子当たり少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の荷電グリカンを含み、ヒト血漿由来C1エステラーゼインヒビターと同様のまたはそれよりも長い半減期を有し、前記短縮されたrhC1-INHが野生型ヒトC1-INHタンパク質のアミノ酸1~97を含まない、前記組成物。
【請求項16】
前記精製され短縮されたrhC1-INHが、平均してタンパク質1モル当たり少なくとも約15モル、16モル、17モル、18モル、19モル、20モル、21モル、22モル、23モル、24モル、25モル、26モル、27モル、28モル、29モル、30モル、31モル、32モル、33モル、34モル、35モル、36モル、37モル、38モル、39モル、または40モルのシアル酸を含む、請求項1から請求項15のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項17】
前記精製され短縮されたrhC1-INHが、血漿由来ヒトC1エステラーゼインヒビターの半減期の50%~150%の範囲内の半減期を有する、請求項1から請求項16のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項18】
前記精製され短縮されたrhC1-INHが、血漿由来ヒトC1エステラーゼインヒビターの半減期の80%~120%の範囲内の半減期を有する、請求項1から請求項17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
前記精製され短縮されたrhC1-INHが、血漿由来ヒトC1エステラーゼインヒビターの半減期と同様のまたはそれよりも長い半減期を有する、請求項1から請求項18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
前記精製され短縮されたrhC1-INHタンパク質が、約20mg/mLを超える濃度で液体産物として安定している、請求項1から請求項19のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
前記精製され短縮されたrhC1-INHタンパク質が、約60mg/mLを超える濃度で液体産物として安定している、請求項1から請求項20のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項22】
前記精製され短縮されたrhC1-INHタンパク質が、約70mg/mL以上の濃度で液体産物として安定している、請求項1から請求項21のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項23】
前記精製され短縮されたrhC1-INHタンパク質が、約100mg/mL以上の濃度で液体産物として安定している、請求項1から請求項22のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項24】
前記精製され短縮されたrhC1-INHタンパク質が、約50U/mL、100U/mL、150U/mL、200U/mL、250U/mL、300U/mL、350U/mL、400U/mL、450U/mL、500U/mL、550U/mL、600U/mL、650U/mL、700U/mL、または750U/mLを超える濃度で液体産物として安定している、請求項1から請求項23のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項25】
配列番号4においてE68Q変異を有するアミノ酸配列に対して少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を有する短縮された組換えヒトC1エステラーゼインヒビター(rhC1-INH)をコードする核酸であって、前記短縮されたrhC1-INHが配列番号4のE68Q変異に対応するアミノ酸を含み、前記短縮されたrhC1-INHが野生型ヒトC1-INHタンパク質のアミノ酸1~97を含まない、前記核酸。
【請求項26】
請求項25に記載の核酸を含む細胞。
【請求項27】
配列番号4においてE68Q変異を有するアミノ酸配列に対して少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を有する短縮された組換えヒトC1エステラーゼインヒビター(rhC1-INH)をコードする発現ベクターを含む宿主細胞であって、一旦細胞培養条件下で培養されると、約0.1g/L~約10.0g/Lの力価で前記短縮されたrhC1-INHを発現することができ、前記短縮されたrhC1-INHが配列番号4のE68Q変異に対応するアミノ酸を含み、前記短縮されたrhC1-INHが野生型ヒトC1-INHタンパク質のアミノ酸1~97を含まない、前記宿主細胞。
【請求項28】
配列番号4においてE68Q変異を有するアミノ酸配列に対して少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を有する短縮された組換えヒトC1エステラーゼインヒビター(rhC1-INH)をコードする発現ベクターを含む宿主細胞であって、一旦細胞培養条件下で培養されると、約2ピコグラム、3ピコグラム、4ピコグラム、5ピコグラム、6ピコグラム、7ピコグラム、8ピコグラム、9ピコグラム、または10ピコグラム/細胞/日を超える比産生率で前記短縮されたrhC1-INHを発現することができ、前記短縮されたrhC1-INHが配列番号4のE68Q変異に対応するアミノ酸を含み、前記短縮されたrhC1-INHが野生型ヒトC1-INHタンパク質のアミノ酸1~97を含まない、前記宿主細胞。
【請求項29】
前記宿主細胞が、一旦細胞培養条件下で培養されると、約10ピコグラム、15ピコグラム、20ピコグラム、25ピコグラム、30ピコグラム、35ピコグラム、40ピコグラム、45ピコグラム、または50ピコグラム/細胞/日を超える比産生率で前記短縮されたrhC1-INHを発現することができる、請求項27または請求項28に記載の宿主細胞。
【請求項30】
前記宿主細胞が哺乳類細胞である、請求項27から請求項29に記載の宿主細胞。
【請求項31】
前記哺乳類細胞がCHO細胞である、請求項30に記載の宿主細胞。
【請求項32】
前記哺乳類細胞がヒト細胞である、請求項30に記載の宿主細胞。
【請求項33】
前記ヒト細胞がHT1080細胞またはHEK細胞である、請求項32に記載の宿主細胞。
【請求項34】
前記宿主細胞が、前記発現した短縮されたrhC1-INHのシアリル化を増加させるように操作されている、請求項27から請求項33のいずれかに記載の宿主細胞。
【請求項35】
配列番号4においてE68Q変異を有するアミノ酸配列に対して少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を有する短縮された組換えヒトC1エステラーゼインヒビター(rhC1-INH)をコードする発現ベクターを含む宿主細胞であって、前記短縮されたrhC1-INHが配列番号4のE68Q変異に対応するアミノ酸を含み、前記短縮されたrhC1-INHタンパク質がシアリル化を増加させるように操作されており、前記短縮されたrhC1-INHが野生型ヒトC1-INHタンパク質のアミノ酸1~97を含まない、前記宿主細胞。
【請求項36】
前記宿主細胞が、シアリル化を増加させるべく異種酵素を発現するように操作され、シアリル化を増加させるべく変異異種酵素を発現するように操作され、シアリル化を増加させるべく内因性酵素を過剰発現するように操作され、シアリル化を増加させるべく変異型内因性酵素を発現するように操作され、及び/またはシアリル化を低減、阻害、もしくは劣化させる内因性酵素の発現を低減させるか、もしくは妨げるように操作されている、請求項34に記載の宿主細胞。
【請求項37】
請求項27から請求項36のいずれかに記載の宿主細胞を培養培地中で培養することを含む、短縮された組換えヒトC1エステラーゼインヒビター(rhC1-INH)を産生する方法。
【請求項38】
配列番号4においてE68Q変異を有するアミノ酸配列に対して少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む短縮されたrhC1-INHを発現するように操作された宿主細胞を提供する工程であって、前記精製され短縮されたrhC1-INHが配列番号4のE68Q変異に対応するアミノ酸を含み、前記短縮されたrhC1-INHが野生型ヒトC1-INHタンパク質のアミノ酸1~97を含まない工程と、
前記宿主細胞が短縮されたrhC1-INHを産生するのに適切な条件下であって、少なくともある期間の間、グリコシル化調節因子を含む培養培地で前記細胞に栄養を与えることを含む前記条件下で前記細胞を培養する工程と、を含む、短縮された組換えヒトC1エステラーゼインヒビター(rhC1-INH)を産生する方法。
【請求項39】
前記細胞が、少なくともある期間の間、約30℃~34℃で培養される、請求項37または請求項38に記載の方法。
【請求項40】
哺乳類細胞における短縮された組換えヒトC1エステラーゼインヒビター(rhC1-INH)タンパク質の大規模産生のための方法であって、大規模培養容器に入れた培養培地中の懸濁液で、短縮されたrhC1-INHタンパク質を発現する哺乳類細胞を培養することを含み、前記短縮された組換えヒトC1エステラーゼインヒビターが、ヒト血漿由来C1エステラーゼインヒビターと同様のまたはそれよりも長い半減期を有し、前記短縮されたrhC1-INHが、配列番号4においてE68Q変異を有するアミノ酸配列に対して少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含み、前記短縮されたrhC1-INHが配列番号4のE68Q変異に対応するアミノ酸を含み、前記短縮されたrhC1-INHが野生型ヒトC1-INHタンパク質のアミノ酸1~97を含まない、前記方法。
【請求項41】
前記細胞がグリカン修飾構築物を共発現する、請求項37から請求項40のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記グリカン修飾構築物がシアリル化を増加させる、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記哺乳類細胞が血清を含まない細胞培養培地で培養される、請求項40から請求項42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記大規模培養容器がバイオリアクターである、請求項40から請求項43のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
前記バイオリアクターが、約5L、10L、200L、500L、1,000L、1,500L、2,000L、5,000L、10,000L、15,000L、もしくは20,000Lの規模か、またはそれを超える規模である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記培養する工程が灌流プロセスを含む、請求項37から請求項45のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
前記培養する工程が流加培養プロセスを含む、請求項37から請求項46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記細胞が、少なくともある期間の間、30℃~34℃の流加培養プロセスで培養される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記細胞が、平均して約5ピコグラム/細胞/日を超える比産生率で前記短縮されたrhC1-INHタンパク質を産生する、請求項37から請求項48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
前記細胞が、平均して約10ピコグラム/細胞/日を超える比産生率で前記短縮されたrhC1-INHタンパク質を産生する、請求項37から請求項49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
前記細胞が、1日につき1リットル当たり少なくとも約5mg、6mg、8mg、10mg、20mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mg、100mg、110mg、120mg、130mg、140mg、150mg、160mg、170mg、180mg、190mg、200mg、210mg、220mg、230mg、240mg、250mg、260mg、270mg、280mg、290mg、または300mgの平均収穫力価で前記短縮されたrhC1-INHタンパク質を産生する、請求項37から請求項50のいずれか1項に記載の方法。
【請求項52】
前記細胞がヒト細胞である、請求項37から請求項51のいずれか1項に記載の方法。
【請求項53】
前記細胞がCHO細胞である、請求項37から請求項52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
前記培養培地が動物由来の成分を含まない、請求項37から請求項53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
前記培養培地が合成培地である、請求項37から請求項54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
前記培養培地が無タンパク質である、請求項37から請求項55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
前記培養培地が少なくとも1つのグリコシル化調節因子を含む、請求項37から請求項56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
前記培養培地が少なくとも1つの増殖調節因子を含む、請求項37から請求項57のいずれか1項に記載の方法。
【請求項59】
前記少なくとも1つの増殖調節因子がヒポキサンチンを含む、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記ヒポキサンチンの濃度が約0.1mM~約10mMの範囲である、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記少なくとも1つの増殖調節因子がチミジンを含む、請求項58から請求項60のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
前記チミジンの濃度が約1μM~約100mMの範囲である、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記培養培地のpHが約6.8~7.5の範囲である、請求項37から請求項62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
前記培養培地のpHが約6.9~7.3の範囲である、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記培養する工程が、約20%~約40%の溶存酸素の溶存酸素セットポイントを維持することを含む、請求項37から請求項64のいずれか1項に記載の方法。
【請求項66】
前記培養する工程が増殖期と産生期とを含む、請求項37から請求項65のいずれか1項に記載の方法。
【請求項67】
前記細胞が30℃~37℃の温度範囲で培養される、請求項37から請求項66のいずれか1項に記載の方法。
【請求項68】
前記細胞が、前記増殖期及び前記産生期の間に異なる温度で培養される、請求項66または請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記細胞が、前記増殖期の間に約37℃、前記産生期の間に約32℃~34℃で培養される、請求項66に記載の方法。
【請求項70】
前記増殖期の培養培地と前記産生期の培養培地とが異なるpHを有する、請求項66から請求項69のいずれか1項に記載の方法。
【請求項71】
前記方法が前記短縮されたrhC1-INHタンパク質を収穫する工程をさらに含む、請求項37から請求項70のいずれか1項に記載の方法。
【請求項72】
前記培養することにおけるpH、ガス処理、及び温度のうちの1つ以上が、ヒト血漿由来C1エステラーゼインヒビターと同様のまたはそれよりも長い半減期を付与するのに十分な前記rhC1-INH分子のシアリル化が可能になるように制御される、請求項37から請求項71のいずれか1項に記載の方法。
【請求項73】
不純物の混ざった調製物から短縮された組換えヒトC1エステラーゼインヒビター(rhC1-INH)を精製する方法であって、アフィニティクロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、混合モードクロマトグラフィー、及び疎水性相互作用クロマトグラフィーのうちの1つ以上の工程を含み、前記精製され短縮されたrhC1-INHタンパク質が少なくとも90%純粋であり、かつヒト血漿由来C1エステラーゼインヒビターと同様のまたはそれよりも長い半減期を有し、前記短縮されたrhC1-INHが、配列番号4においてE68Q変異を有するアミノ酸配列に対して少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含み、前記短縮されたrhC1-INHが配列番号4のE68Q変異に対応するアミノ酸を含み、前記短縮されたrhC1-INHが野生型ヒトC1-INHタンパク質のアミノ酸1~97を含まない、前記方法。
【請求項74】
前記不純物の混ざった調製物が細胞培養培地を含む、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記方法が、プロセス不純物及び不必要なグリカン種を低減させるために、陰イオン交換(AEX)クロマトグラフィーを行うことを含む、請求項73または請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記方法が、プロセス不純物及び不必要なグリカン種を低減させるために、陽イオン交換(CEX)クロマトグラフィーを行うことを含む、請求項73から請求項75のいずれかに記載の方法。
【請求項77】
前記方法が、陰イオン交換(AEX)クロマトグラフィー、陽イオン交換(CEX)クロマトグラフィー、及び疎水性相互作用(HIC)クロマトグラフィーを行うことを含む、請求項73から請求項76のいずれかに記載の方法。
【請求項78】
1つ以上のウイルス不活性化工程及び/または除去工程をさらに含む、請求項73から請求項77のいずれかに記載の方法。
【請求項79】
前記ウイルス不活性化工程及び/または除去工程が、濾過工程、溶媒ウイルス不活性化工程、及び界面活性剤不活性化工程から選択される、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記精製され短縮されたrhC1-INHタンパク質が、平均して約50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、または5%以下の中性グリカン種を含む、請求項73から請求項79のいずれか1項に記載の方法。
【請求項81】
前記精製され短縮されたrhC1-INHが、血漿由来ヒトC1エステラーゼインヒビターの半減期の50%~150%の範囲内の半減期を有する、請求項37から請求項80のいずれか1項に記載の方法。
【請求項82】
前記精製され短縮されたrhC1-INHが、血漿由来ヒトC1エステラーゼインヒビターの半減期の80%~120%の範囲内の半減期を有する、請求項37から請求項81のいずれか1項に記載の方法。
【請求項83】
前記精製され短縮されたrhC1-INHタンパク質が、約20mg/mLを超える濃度で液体産物として安定している、請求項37から請求項82のいずれか1項に記載の方法。
【請求項84】
前記精製され短縮されたrhC1-INHタンパク質が、約60mg/mLを超える濃度で液体産物として安定している、請求項37から請求項83のいずれか1項に記載の方法。
【請求項85】
前記精製され短縮されたrhC1-INHタンパク質が、約70mg/mL以上の濃度で液体産物として安定している、請求項37から請求項84のいずれか1項に記載の方法。
【請求項86】
請求項1から請求項24のいずれか1項に記載の精製され短縮された組換えヒトC1エステラーゼインヒビタータンパク質を含む組成物と、薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
【請求項87】
請求項1から請求項24、または請求項86のいずれか1項に記載の短縮された組換えヒトC1エステラーゼインヒビタータンパク質を、50mMのTrisと、50mMのソルビトールと、150mMのグリシンとを含む製剤緩衝液中に含む医薬組成物であって、前記組成物のpHが7.2である、前記医薬組成物。
【請求項88】
前記組成物が液体である、請求項1から請求項24、または請求項86から請求項87のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項89】
前記組成物が凍結乾燥されている、請求項1から請求項24、または請求項86から請求項87のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項90】
前記凍結乾燥された組成物が再構成に適切な緩衝液で元に戻される、請求項89に記載の組成物。
【請求項91】
前記再構成に適切な緩衝液が、滅菌水、滅菌食塩水、滅菌緩衝溶液、または1つ以上の薬学的に許容される担体を含む滅菌溶液から選択される、請求項90に記載の組成物。
【請求項92】
前記精製され短縮されたrhC1-INHタンパク質が、約20mg/mLを超える濃度で液体産物として安定している、請求項86から請求項88、または請求項90から請求項91のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項93】
前記精製され短縮されたrhC1-INHタンパク質が、約60mg/mLを超える濃度で液体産物として安定している、請求項86から請求項88、または請求項90から請求項91のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項94】
前記精製され短縮されたrhC1-INHタンパク質が、約70mg/mL以上の濃度で液体産物として安定している、請求項86から請求項88、または請求項90から請求項91のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項95】
前記精製され短縮されたrhC1-INHタンパク質が、約100mg/mL以上の濃度で液体産物として安定している、請求項86から請求項88、または請求項90から請求項91のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項96】
前記精製され短縮されたrhC1-INHタンパク質が、約50U/mL、100U/mL、150U/mL、200U/mL、250U/mL、300U/mL、350U/mL、400U/mL、450U/mL、500U/mL、550U/mL、600U/mL、650U/mL、700U/mL、または750U/mLを超える濃度で液体産物として安定している、請求項86から請求項88、または請求項90から請求項91のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項97】
請求項86から請求項96のいずれかに記載の組成物を含むキット。
【請求項98】
シリンジをさらに含む、請求項97に記載のキット。
【請求項99】
前記シリンジに、請求項86から請求項88、または請求項92から請求項96のいずれか1項に記載の組成物が予め担持されている、請求項98に記載のキット。
【請求項100】
請求項89に記載の組成物と、
再構成用の緩衝液とを含むキットであって、前記凍結乾燥された組成物と前記再構成用の前記緩衝液とを混合することにより、請求項86から請求項88、または請求項92から請求項96のいずれか1項に記載の組成物を産生させる、前記キット。
【請求項101】
シリンジをさらに含む、請求項100に記載のキット。
【請求項102】
補体媒介性障害を治療するための、請求項86から請求項96のいずれか1項に記載の組成物または請求項97から請求項101のいずれか1項に記載のキット。
【請求項103】
前記補体媒介性障害が、遺伝性血管性浮腫、抗体関連型拒絶反応、視神経脊髄炎関連疾患、外傷性脳損傷、脊椎損傷、虚血性脳損傷、火傷、中毒性表皮壊死症、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病、脳卒中、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)、重症筋無力症、及び多巣性運動ニューロパチーから選択される、請求項102に記載の組成物またはキット。
【請求項104】
請求項1から請求項24のいずれかに記載の短縮された組換えヒトC1エステラーゼインヒビターを含む組成物の、補体媒介性障害を治療するための薬剤の製造における使用。
【請求項105】
前記補体媒介性障害が、遺伝性血管性浮腫、抗体関連型拒絶反応、視神経脊髄炎関連疾患、外傷性脳損傷、脊椎損傷、虚血性脳損傷、火傷、中毒性表皮壊死症、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病、脳卒中、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)、重症筋無力症、及び/または多巣性運動ニューロパチーから選択される、請求項104に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2015年11月19日に出願された米国仮出願第62/257,711号に対する優先権及びその利益を主張するものであり、該仮出願の内容は、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0002】
配列表の引用による援用
2016年11月16日に作成され、サイズが15KBである「SHR-1234WO Sequence Listing_ST25.txt」という名称のテクストファイルの内容は、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【背景技術】
【0003】
C1-インヒビター(C1-INH)は、C1エステラーゼインヒビターとしても知られ、セルピンタンパク質スーパーファミリーの最も大きなメンバーである。これは重度にグリコシル化されたセリンプロテイナーゼインヒビターであり、その主な機能は、補体系の自発的活性化を阻害することである。C1-INHは、補体カスケード系を調節し、接触(カリクレイン・キニン)増幅カスケードの調節に重要な役割を果たし、凝固系及び線溶系の調節に関与している。Karnaukhova,E.,C1-Esterase Inhibitor:Biological Activities and Therapeutic Applications.J Hematol Thromb Dis,1:113(2013)を参照されたい。
【0004】
対象におけるC1-INHの機能不全及び/または欠損は、C1-INHが補体系の活性化を阻害できなくなることから、種々の自己免疫性疾患と関連付けられてきた。こうした疾患の一例は、遺伝性血管性浮腫(HAE)であり、これは、予測不可能な反復性の炎症発作によって特徴付けられる稀な障害だが場合によっては生命を脅かす障害である。HAE発作の症状として、顔面、口、及び/または気道の腫脹が挙げられ、これらは自然発症的に生じるか、または軽度の外傷によって誘発される。こうした腫脹は、身体の任意の部分にも生じ得る。HAEは、C1-インヒビターの血漿レベルが低いことに関連している場合がある一方で、そのタンパク質が正常または基準以上の量で循環しているが機能不全となっている場合もある。炎症の発症に加えて、自己免疫性疾患または紅斑性狼瘡などのさらに重篤であるか、または生命を脅かす症候を引き起こす可能性もある。
【0005】
CINRYZE(登録商標)は、ヒト血漿由来C1エステラーゼインヒビターであり、HAEの急性発作の予防的使用及び治療用に承認されている。ベリナート(登録商標)(同じく血漿由来ヒトC1-INH、CSLベーリング社)は、急性HAE発作の治療に適応している。だが、ヒト血漿由来C1エステラーゼインヒビターの供給は、献血された血液及び血漿の利用可能性に制限されることになる。ルコネスト(登録商標)(コネスタットアルファ、Pharming N.V.社)は、改変ウサギで発現した組換えC1-INHであり、急性HAE発作の治療にIV投与用として適応するものである。ルコネスト(登録商標)は、ヒト血漿由来C1-INHと同一のアミノ酸配列を有するが、ウサギで作製されるため、そのグリコシル化プロファイルはヒト血漿由来C1-INHのプロファイルとは全く異なっている。その結果として、ルコネストは約2.4時間~2.7時間という極めて短い半減期を有する。ルコネスト(登録商標)FDAラベル及び処方情報を参照されたい。
したがって、当該技術分野において、種々のC1エステラーゼ媒介性症候の治療に適する改良型の組換えヒトC1エステラーゼインヒビターが依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Karnaukhova,E.,C1-Esterase Inhibitor:Biological Activities and Therapeutic Applications.J Hematol Thromb Dis,1:113(2013)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、特に、種々の補体媒介性障害を効果的に治療するのに使用可能であり、かつ高い費用対効果で製造することができる、改良型の長時間作用性組換えヒトC1エステラーゼインヒビター(rhC1-INH)を提供するものである。
【0008】
本発明は、詳細には、ルコネスト(登録商標)(コネスタットアルファ)よりも長い半減期を呈する組換えC1エステラーゼインヒビタータンパク質を提供するものである。一部の実施形態では、本発明のrhC1-INHタンパク質は、血漿由来C1-INHに匹敵するか、またはそれよりも長い半減期を呈する。例えば、発明者らは、本発明のrhC1-INHタンパク質の特定の例が、少なくとも4日という長期間にわたる血清中半減期を有することを明らかにした。rhC1-INHの長い血清半減期は、優れたin vivo有効性をもたらし、また好ましい投与レジメン及び投与経路を可能にすると考えられる。特定の実施形態では、本発明のrhC1-INHタンパク質は、承認された静脈内投与C1エステラーゼインヒビターと同様の頻度またはそれよりも少ない頻度で皮下投与され得るが、なおも所望の有効性(例えば、予防)を達成することができる。さらに、本発明のrhC1-INHタンパク質は宿主細胞で組換え産生することができることから、開示されたrhC1-INHタンパク質は、血液の供給に依存することがなく、感染病原体が伝染する危険性がなく、また製造するのに安価である。ルコネストは、ウサギ宿主に関連する不純物の存在による過敏反応及び/またはアナフィラキシー反応の危険性も伴う。ルコネストは、ウサギまたはウサギ由来の産物に対する既知の過敏性またはアレルギーを有するいかなる患者にも投与することができず、また小児への投与にも適応していない。
【0009】
本発明は宿主細胞で組換え産生される組換えC1エステラーゼインヒビタータンパク質を提供するため、ヒト血液、ヒト血液成分(例えば、血漿)、または動物乳から精製された産物よりも、産生及び最終産物において均質性が得られる。さらに、本明細書で提供されるrhC1-INHタンパク質は、ルコネストとは異なり、動物の年齢及び/または成熟度、乳汁産生、動物の疾病などを含めた、その全てがウサギ発現C1-INHの量及び品質(例えば、グリコシル化プロファイル、発現タンパク質の異質性、宿主関連不純物など)に影響を及ぼし得る畜産検討事項に左右されるものではない。
【0010】
一実施形態では、本発明は、配列番号1または配列番号2に対して少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を有する精製された組換えヒトC1エステラーゼインヒビター(rhC1-INH)を含む組成物を提供し、そこで、該精製された組換えヒトC1エステラーゼインヒビターは、血漿由来ヒトC1エステラーゼインヒビターと同様のまたはそれよりも長い半減期を有する。
【0011】
一実施形態では、本発明は、配列番号1または配列番号2に対して少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を有する精製された組換えヒトC1エステラーゼインヒビター(rhC1-INH)を含む組成物を提供し、そこで、該精製された組換えヒトC1エステラーゼインヒビターは、少なくとも約10時間、15時間、20時間、25時間、30時間、35時間、40時間、45時間、50時間、55時間、60時間、65時間、または70時間の半減期を有する。
【0012】
一態様では、組換えrhC1-INHタンパク質は、配列番号1と同一のアミノ酸配列を含む。別の態様では、精製された組換えrhC1-INHは、配列番号2と同一のアミノ酸配列を含む。別の態様では、精製された組換えrhC1-INHは、約50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、または5%以下の中性グリカン種を含むグリコシル化プロファイルを有する。別の態様では、組換えrhC1-INHタンパク質は、融合タンパク質である。別の態様では、組換えrhC1-INHタンパク質は、C1-INHドメインに直接的または間接的に融合されたFcドメインを含む。別の態様では、組換えrhC1-INHタンパク質は、C1-INHドメインに直接的または間接的に融合されたアルブミンドメインを含む。別の態様では、精製された組換えrhC1-INHは、約5%~約25%の中性グリカン種を含むグリコシル化プロファイルを有する。別の態様では、精製された組換えrhC1-INHは、約20%、15%、10%、5%、または0%未満の、マンノース、α-ガラクトース、NGNA、及び/またはオリゴマンノース型のグリコシル化のうちの1つ以上を含有する。別の態様では、精製された組換えrhC1-INHは、約30%以下の中性グリカン種と、精製されたrhC1-INHが血漿由来C1-INHと同様のまたはそれよりも長い半減期を有するのに十分なシアリル化グリカン種とを含むグリコシル化プロファイルを有する。別の態様では、精製された組換えrhC1-INHは、以下のうちの少なくとも1つを含むグリコシル化プロファイルを有する:約5%~約30%の中性グリカン種、約10%~約30%のモノシアリル化グリカン種、約30%~約50%のジシアリル化グリカン種、約15%~約35%のトリシアリル化グリカン種、または約5%~約15%のテトラシアリル化グリカン種。
【0013】
別の態様では、精製された組換えrhC1-INHは、以下を含むグリコシル化プロファイルを有する:30%以下の中性グリカン種、約20%~約30%のモノシアリル化グリカン種、約30%~約40%のジシアリル化グリカン種、約10%~約20%のトリシアリル化グリカン種、及び約5%~約10%のテトラシアリル化グリカン種。
【0014】
一実施形態では、本発明は、配列番号1または配列番号2に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一のアミノ酸配列を有する精製された組換えヒトC1エステラーゼインヒビター(rhC1-INH)を含む組成物を提供し、そこで、該精製された組換えrhC1-INHは、平均して1分子当たり少なくとも約10個、11個、12個、13個、または14個のシアリル化グリカン残基を含み、ヒト血漿由来C1エステラーゼインヒビターと同様のまたはそれよりも長い半減期を有する。
【0015】
一態様では、精製された組換えrhC1-INHは、平均して1分子当たり少なくとも約15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、または29個のシアリル化グリカン残基を含む。別の態様では、精製された組換えrhC1-INHは、平均して1分子当たり少なくとも約30個、31個、32個、33個、34個、35個、36個、37個、38個、39個、または40個のシアリル化グリカン残基を含む。
【0016】
一実施形態では、本発明は、配列番号1または配列番号2に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一のアミノ酸配列を有する精製された組換えヒトC1エステラーゼインヒビター(rhC1-INH)を含む組成物を提供し、そこで、該精製された組換えrhC1-INHは、平均して1分子当たり少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の荷電グリカンを含み、ヒト血漿由来C1エステラーゼインヒビターと同様のまたはそれよりも長い半減期を有する。
【0017】
一態様では、精製された組換えrhC1-INHは、平均してタンパク質1モル当たり少なくとも約15モル、16モル、17モル、18モル、19モル、20モル、21モル、22モル、23モル、24モル、25モル、26モル、27モル、28モル、29モル、30モル、31モル、32モル、33モル、34モル、35モル、36モル、37モル、38モル、39モル、または40モルのシアル酸を含む。別の態様では、精製された組換えrhC1-INHは、血漿由来ヒトC1エステラーゼインヒビターの半減期の50%~150%の範囲内の半減期を有する。別の態様では、精製された組換えrhC1-INHは、血漿由来ヒトC1エステラーゼインヒビターの半減期の80%~120%の範囲内の半減期を有する。別の態様では、精製された組換えrhC1-INHは、血漿由来ヒトC1エステラーゼインヒビターの半減期と同様のまたはそれよりも長い半減期を有する。別の態様では、精製された組換えrhC1-INHタンパク質は、約20mg/mLを超える濃度で液体産物として安定している。別の態様では、精製された組換えrhC1-INHタンパク質は、約60mg/mLを超える濃度で液体産物として安定している。別の態様では、精製された組換えrhC1-INHタンパク質は、約70mg/mL以上の濃度で液体産物として安定している。別の態様では、精製された組換えrhC1-INHタンパク質は、約100mg/mL以上の濃度で液体産物として安定している。別の態様では、精製された組換えrhC1-INHタンパク質は、約50U/mL、100U/mL、150U/mL、200U/mL、250U/mL、300U/mL、350U/mL、400U/mL、450U/mL、500U/mL、550U/mL、600U/mL、650U/mL、700U/mL、または750U/mLを超える濃度で液体産物として安定している。
【0018】
一実施形態では、本発明は、配列番号1または配列番号2に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を有する組換えヒトC1エステラーゼインヒビター(rhC1-INH)をコードする核酸を提供する。
【0019】
一態様では、本発明は、配列番号1または配列番号2に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を有する組換えヒトC1エステラーゼインヒビター(rhC1-INH)をコードする核酸を含む細胞を提供する。
【0020】
一実施形態では、本発明は、配列番号1または配列番号2に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を有する組換えヒトC1エステラーゼインヒビター(rhC1-INH)をコードする発現ベクターを含む宿主細胞を提供し、そこで、該宿主細胞は、一旦細胞培養条件下で培養されると、約0.1g/L~約10.0g/Lの力価で組換えrhC1-INHを発現することができる。
【0021】
一実施形態では、本発明は、配列番号1または配列番号2に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を有する組換えヒトC1エステラーゼインヒビター(rhC1-INH)をコードする発現ベクターを含む宿主細胞を提供し、そこで、該宿主細胞は、一旦細胞培養条件下で培養されると、約2ピコグラム、3ピコグラム、4ピコグラム、5ピコグラム、6ピコグラム、7ピコグラム、8ピコグラム、9ピコグラム、または10ピコグラム/細胞/日を超える比産生率で組換えrhC1-INHを発現することができる。
【0022】
一態様では、宿主細胞は、一旦細胞培養条件下で培養されると、約10ピコグラム、15ピコグラム、20ピコグラム、25ピコグラム、30ピコグラム、35ピコグラム、40ピコグラム、45ピコグラム、または50ピコグラム/細胞/日を超える比産生率で組換えrhC1-INHを発現することができる。別の態様では、宿主細胞は哺乳類細胞である。別の態様では、哺乳類細胞はCHO細胞である。別の態様では、哺乳類細胞はヒト細胞である。別の態様では、ヒト細胞は、HT1080細胞またはHEK細胞である。別の態様では、宿主細胞は、発現した組換えrhC1-INHのシアリル化を増加させるように操作されている。
【0023】
一実施形態では、本発明は、配列番号1または配列番号2に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を有する組換えヒトC1エステラーゼインヒビター(rhC1-INH)をコードする発現ベクターを含む宿主細胞を提供し、そこで、該組換えrhC1-INHタンパク質はシアリル化を増加させるように操作されている。
【0024】
一態様では、宿主細胞は、シアリル化を増加させるべく異種酵素を発現するように操作され、シアリル化を増加させるべく変異異種酵素を発現するように操作され、シアリル化を増加させるべく内因性酵素を過剰発現するように操作され、シアリル化を増加させるべく変異型内因性酵素を発現するように操作され、及び/またはシアリル化を低減、抑制、もしくは劣化させる内因性酵素の発現を低減させるか、もしくは妨げるように操作されている。一態様では、本発明は、宿主細胞を培養することを含む、組換えヒトC1エステラーゼインヒビター(rhC1-INH)を産生する方法を提供する。
【0025】
一態様では、組換えヒトC1エステラーゼインヒビター(rhC1-INH)を産生する方法は、配列番号1または配列番号2に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一のアミノ酸配列を含むrhC1-INHを発現させるように操作された宿主細胞を提供する工程と、細胞がrhC1-INHを産生するのに適切な条件下であって、少なくともある期間の間、グリコシル化調節因子を含む培養培地で細胞に栄養を与えることを含む該条件下で宿主細胞を培養する工程とを含む。別の態様では、少なくともある期間の間、細胞は約30℃~34℃で培養される。
【0026】
一実施形態では、本発明は、哺乳類細胞における組換えヒトC1エステラーゼインヒビター(rhC1-INH)タンパク質の大規模産生のための方法を提供し、該方法には、大規模培養容器に入れた懸濁液で、組換えrhC1-INHタンパク質を発現する哺乳類細胞を培養することが含まれ、該組換えヒトC1エステラーゼインヒビターは、ヒト血漿由来C1エステラーゼインヒビターと同様のまたはそれよりも長い半減期を有する。
【0027】
一態様では、細胞はグリカン修飾構築物を共発現する。別の態様では、グリカン修飾構築物は、シアリル化を増加させる。別の態様では、哺乳類細胞は血清を含まない細胞培養培地で培養される。別の態様では、大規模培養容器はバイオリアクターである。別の態様では、バイオリアクターは、約5L、10L、200L、500L、1,000L、1,500L、2,000L、5,000L、10,000L、15,000L、もしくは20,000Lの規模か、またはそれを超える規模である。別の態様では、培養工程は灌流プロセスを含む。別の態様では、培養工程は、流加培養プロセスを含む。別の態様では、細胞は、少なくともある期間の間、30℃~34℃の流加培養プロセスで培養される。別の態様では、細胞は、平均して約5ピコグラム/細胞/日を超える比産生率で組換えrhC1-INHタンパク質を産生する。別の態様では、細胞は、平均して約10ピコグラム/細胞/日を超える比産生率で組換えrhC1-INHタンパク質を産生する。別の態様では、細胞は、1日につき1リットル当たり少なくとも約5mg、6mg、8mg、10mg、20mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mg、100mg、110mg、120mg、130mg、140mg、150mg、160mg、170mg、180mg、190mg、200mg、210mg、220mg、230mg、240mg、250mg、260mg、270mg、280mg、290mg、または300mgの平均収穫力価で組換えrhC1-INHタンパク質を産生する。別の態様では、哺乳類細胞はヒト細胞である。別の態様では、哺乳類細胞はCHO細胞である。
【0028】
一態様では、培地は動物由来成分を含まない。別の態様では、培地は合成培地である。別の態様では、培地は無タンパク質である。別の態様では、培地は少なくとも1つのグリコシル化調節因子を含む。一態様では、培地は少なくとも1つの増殖調節因子を含む。別の態様では、少なくとも1つの増殖調節因子はヒポキサンチンを含む。一態様では、ヒポキサンチンの濃度は約0.1mM~約10mMの範囲である。一態様では、少なくとも1つの増殖調節因子はチミジンを含む。一態様では、チミジンの濃度は約1μM~約100mMの範囲である。一態様では、培地のpHは約6.8~7.5の範囲である。一態様では、培地のpHは約6.9~7.3の範囲である。一態様では、培養工程は、約20%~約40%の溶存酸素の溶存酸素セットポイントを維持することを含む。一態様では、培養工程は増殖期と産生期とを含む。一態様では、哺乳類細胞は、30℃~37℃の温度範囲で培養される。一態様では、哺乳類細胞は、増殖期及び産生期の間に異なる温度で培養される。一態様では、哺乳類細胞は、増殖期の間に約37℃、産生期の間に約32℃~34℃で培養される。一態様では、増殖期の培地と産生期の培地とは異なるpHを有する。
【0029】
一態様では、方法は、組換えrhC1-INHタンパク質を収穫する工程をさらに含む。一態様では、組換えrhC1-INHタンパク質は、配列番号1または配列番号2に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。一態様では、培養液のpH、ガス処理、及び温度のうちの1つ以上は、ヒト血漿由来C1エステラーゼインヒビターと同様のまたはそれよりも長い半減期を付与するのに十分なrhC1-INH分子のシアリル化が可能になるように制御される。
【0030】
一実施形態では、本発明は、不純物の混ざった調製物から組換えヒトC1エステラーゼインヒビター(rhC1-INH)を精製する方法であって、アフィニティクロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、混合モードクロマトグラフィー、及び疎水性相互作用クロマトグラフィーのうちの1つ以上の工程を含む該方法を提供し、そこで、精製されたrhC1-INHタンパク質は少なくとも90%純粋であり、かつヒト血漿由来C1エステラーゼインヒビターと同様のまたはそれよりも長い半減期を有する。
【0031】
一態様では、不純物の混ざった調製物は細胞培養培地を含む。別の態様では、方法は、プロセス不純物及び不必要なグリカン種を低減させるために、陰イオン交換(AEX)クロマトグラフィーを行うことを含む。別の態様では、方法は、プロセス不純物及び不必要なグリカン種を低減させるために、陽イオン交換(CEX)クロマトグラフィーを行うことを含む。別の態様では、方法は、陰イオン交換(AEX)クロマトグラフィー、陽イオン交換(CEX)クロマトグラフィー、及び疎水性相互作用(HIC)クロマトグラフィーを行うことを含む。別の態様では、方法は、1つ以上のウイルス不活性化工程及び/または除去工程をさらに含む。別の態様では、ウイルス不活性化工程及び/または除去工程は、濾過工程、溶媒ウイルス不活性化工程、及び界面活性剤不活性化工程から選択される。一態様では、精製された組換えrhC1-INHタンパク質は、平均して約50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、または5%以下の中性グリカン種を含む。一態様では、精製された組換えrhC1-INHは、血漿由来ヒトC1エステラーゼインヒビターの半減期の50%~150%の範囲内の半減期を有する。一態様では、精製された組換えrhC1-INHは、血漿由来ヒトC1エステラーゼインヒビターの半減期の80%~120%の範囲内の半減期を有する。一態様では、精製された組換えrhC1-INHタンパク質は、約20mg/mLを超える濃度で液体産物として安定している。一態様では、精製された組換えrhC1-INHタンパク質は、約60mg/mLを超える濃度で液体産物として安定している。一態様では、精製された組換えrhC1-INHタンパク質は、約70mg/mL以上の濃度で液体産物として安定している。
【0032】
一態様では、本発明は、精製された組換えヒトC1エステラーゼインヒビタータンパク質と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供する。
【0033】
一態様では、医薬組成物は、50mMのTrisと、50mMのソルビトールと、150mMのグリシンとを含む製剤緩衝液中に組換えヒトC1エステラーゼインヒビタータンパク質を含み、該組成物のpHは7.2である。一態様では、医薬組成物は液体である。一態様では、医薬組成物は凍結乾燥されている。一態様では、医薬組成物は再構成に適切な緩衝液で元に戻される。一態様では、再構成に適切な緩衝液は、滅菌水、滅菌食塩水、滅菌緩衝溶液、または1つ以上の薬学的に許容される担体を含む滅菌溶液から選択される。一態様では、精製された組換えrhC1-INHタンパク質は、約20mg/mLを超える濃度で液体産物として安定している。一態様では、精製された組換えrhC1-INHタンパク質は、約60mg/mLを超える濃度で液体産物として安定している。一態様では、精製された組換えrhC1-INHタンパク質は、約70mg/mL以上の濃度で液体産物として安定している。一態様では、精製された組換えrhC1-INHタンパク質は、約100mg/mL以上の濃度で液体産物として安定している。一態様では、精製された組換えrhC1-INHタンパク質は、約50U/mL、100U/mL、150U/mL、200U/mL、250U/mL、300U/mL、350U/mL、400U/mL、450U/mL、500U/mL、550U/mL、600U/mL、650U/mL、700U/mL、または750U/mLを超える濃度で液体産物として安定している。
【0034】
一態様では、キットが提供される。一態様では、キットはシリンジをさらに含む。一態様では、シリンジには医薬組成物が予め担持されている。一態様では、医薬組成物を含むキットはまた、再構成用の緩衝液を含み、凍結乾燥された組成物と再構成用の緩衝液とを混合することにより、その組成物を産生させる。一態様では、キットはシリンジをさらに含む。
【0035】
一実施形態では、本発明は、補体媒介性障害を治療する方法であって、治療を必要とする対象に医薬組成物を投与することを含む方法を提供する。一態様では、補体媒介性障害は、遺伝性血管性浮腫、抗体関連型拒絶反応、視神経脊髄炎関連疾患、外傷性脳損傷、脊椎損傷、虚血性脳損傷、火傷、中毒性表皮壊死症、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病、脳卒中、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)、重症筋無力症、多巣性運動ニューロパチーから選択される。
【0036】
一実施形態では、本発明は、組換えヒトC1エステラーゼインヒビターを含む組成物を、補体媒介性障害を治療するための薬剤の製造において使用することを提供する。一態様では、補体媒介性障害は、遺伝性血管性浮腫、抗体関連型拒絶反応、視神経脊髄炎関連疾患、外傷性脳損傷、脊椎損傷、虚血性脳損傷、火傷、中毒性表皮壊死症、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病、脳卒中、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)、重症筋無力症、及び/または多巣性運動ニューロパチーから選択される。
【0037】
したがって、本発明は、rhC1-INHインヒビターの費用対効果及び信頼性の高い製造と、HAE及び補体媒介性障害の安全でより効果的な治療とをもたらすものである。本発明の他の特徴、目的、及び利点は、以下の詳細な説明において明らかになる。しかしながら、以下の詳細な説明は本発明の実施形態を示すが、単に例示のためであり、制限するものではないことを理解すべきである。本発明の範囲内の様々な変更及び修正は、以下の詳細な説明から当業者に明らかになるであろう。
特定の実施形態では、例えば、以下が提供される:
(項目1)
配列番号1または配列番号2に対して少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を有する精製された組換えヒトC1エステラーゼインヒビター(rhC1-INH)を含む組成物であって、前記精製された組換えヒトC1エステラーゼインヒビターが、血漿由来ヒトC1エステラーゼインヒビターと同様のまたはそれよりも長い半減期を有する、前記組成物。
(項目2)
配列番号1または配列番号2に対して少なくとも約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を有する精製された組換えヒトC1エステラーゼインヒビター(rhC1-INH)を含む組成物であって、前記精製された組換えヒトC1エステラーゼインヒビターが、少なくとも約10時間、15時間、20時間、25時間、30時間、35時間、40時間、45時間、50時間、55時間、60時間、65時間、または70時間の半減期を有する、前記組成物。
(項目3)
前記組換えrhC1-INHタンパク質が配列番号1と同一のアミノ酸配列を含む、項目1または項目2に記載の組成物。
(項目4)
前記精製された組換えrhC1-INHが配列番号2と同一のアミノ酸配列を含む、項目1または項目2に記載の組成物。
(項目5)
前記精製された組換えrhC1-INHが、約50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、または5%以下の中性グリカン種を含むグリコシル化プロファイルを有する、項目1から項目4のいずれか1項に記載の組成物。
(項目6)
前記組換えrhC1-INHタンパク質が融合タンパク質である、先行項目のいずれか1項に記載の組成物。
(項目7)
前記組換えrhC1-INHタンパク質が、C1-INHドメインに直接的または間接的に融合されたFcドメインを含む、項目6に記載の組成物。
(項目8)
前記組換えrhC1-INHタンパク質が、C1-INHドメインに直接的または間接的に融合されたアルブミンドメインを含む、項目6に記載の組成物。
(項目9)
前記精製された組換えrhC1-INHが、約5%~約25%の中性グリカン種を含むグリコシル化プロファイルを有する、先行項目のいずれか1項に記載の組成物。
(項目10)
前記精製された組換えrhC1-INHが、約20%、15%、10%、5%、または0%未満の、マンノース、α-ガラクトース、NGNA、及び/またはオリゴマンノース型のグリコシル化のうちの1つ以上を含有する、先行項目のいずれか1項に記載の組成物。
(項目11)
前記精製された組換えrhC1-INHが、約30%以下の中性グリカン種と、前記精製されたrhC1-INHが血漿由来C1-INHと同様のまたはそれよりも長い半減期を有するのに十分なシアリル化グリカン種とを含むグリコシル化プロファイルを有する、先行項目のいずれか1項に記載の組成物。
(項目12)
前記精製された組換えrhC1-INHが、
約5%~約30%の中性グリカン種、
約10%~約30%のモノシアリル化グリカン種、
約30%~約50%のジシアリル化グリカン種、
約15%~約35%のトリシアリル化グリカン種、または
約5%~約15%のテトラシアリル化グリカン種、のうちの少なくとも1つを含むグリコシル化プロファイルを有する、先行項目のいずれか1項に記載の組成物。
(項目13)
前記精製された組換えrhC1-INHが、
30%以下の中性グリカン種、
約20%~約30%のモノシアリル化グリカン種、
約30%~約40%のジシアリル化グリカン種、
約10%~約20%のトリシアリル化グリカン種、及び
約5%~約10%のテトラシアリル化グリカン種、を含むグリコシル化プロファイルを有する、先行項目のいずれか1項に記載の組成物。
(項目14)
配列番号1または配列番号2に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一のアミノ酸配列を有する精製された組換えヒトC1エステラーゼインヒビター(rhC1-INH)を含む組成物であって、前記精製された組換えrhC1-INHが、平均して1分子当たり少なくとも約10個、11個、12個、13個、または14個のシアリル化グリカン残基を含み、ヒト血漿由来C1エステラーゼインヒビターと同様のまたはそれよりも長い半減期を有する、前記組成物。
(項目15)
前記精製された組換えrhC1-INHが、平均して1分子当たり少なくとも約15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、または29個のシアリル化グリカン残基を含む、先行項目のいずれか1項に記載の組成物。
(項目16)
前記精製された組換えrhC1-INHが、平均して1分子当たり少なくとも約30個、31個、32個、33個、34個、35個、36個、37個、38個、39個、または40個のシアリル化グリカン残基を含む、先行項目のいずれか1項に記載の組成物。
(項目17)
配列番号1または配列番号2に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一のアミノ酸配列を有する精製された組換えヒトC1エステラーゼインヒビター(rhC1-INH)を含む組成物であって、前記精製された組換えrhC1-INHが、平均して1分子当たり少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の荷電グリカンを含み、ヒト血漿由来C1エステラーゼインヒビターと同様のまたはそれよりも長い半減期を有する、前記組成物。
(項目18)
前記精製された組換えrhC1-INHが、平均してタンパク質1モル当たり少なくとも約15モル、16モル、17モル、18モル、19モル、20モル、21モル、22モル、23モル、24モル、25モル、26モル、27モル、28モル、29モル、30モル、31モル、32モル、33モル、34モル、35モル、36モル、37モル、38モル、39モル、または40モルのシアル酸を含む、先行項目のいずれか1項に記載の組成物。
(項目19)
前記精製された組換えrhC1-INHが、血漿由来ヒトC1エステラーゼインヒビターの半減期の50%~150%の範囲内の半減期を有する、先行項目のいずれか1項に記載の組成物。
(項目20)
前記精製された組換えrhC1-INHが、血漿由来ヒトC1エステラーゼインヒビターの半減期の80%~120%の範囲内の半減期を有する、先行項目のいずれか1項に記載の組成物。
(項目21)
前記精製された組換えrhC1-INHが、血漿由来ヒトC1エステラーゼインヒビターの半減期と同様のまたはそれよりも長い半減期を有する、先行項目のいずれか1項に記載の組成物。
(項目22)
前記精製された組換えrhC1-INHタンパク質が、約20mg/mLを超える濃度で液体産物として安定している、先行項目のいずれか1項に記載の組成物。
(項目23)
前記精製された組換えrhC1-INHタンパク質が、約60mg/mLを超える濃度で液体産物として安定している、先行項目のいずれか1項に記載の組成物。
(項目24)
前記精製された組換えrhC1-INHタンパク質が、約70mg/mL以上の濃度で液体産物として安定している、先行項目のいずれか1項に記載の組成物。
(項目25)
前記精製された組換えrhC1-INHタンパク質が、約100mg/mL以上の濃度で液体産物として安定している、先行項目のいずれか1項に記載の組成物。
(項目26)
前記精製された組換えrhC1-INHタンパク質が、約50U/mL、100U/mL、150U/mL、200U/mL、250U/mL、300U/mL、350U/mL、400U/mL、450U/mL、500U/mL、550U/mL、600U/mL、650U/mL、700U/mL、または750U/mLを超える濃度で液体産物として安定している、先行項目のいずれか1項に記載の組成物。
(項目27)
配列番号1または配列番号2に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を有する組換えヒトC1エステラーゼインヒビター(rhC1-INH)をコードする核酸。
(項目28)
項目27に記載の核酸を含む細胞。
(項目29)
配列番号1または配列番号2に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を有する組換えヒトC1エステラーゼインヒビター(rhC1-INH)をコードする発現ベクターを含む宿主細胞であって、一旦細胞培養条件下で培養されると、約0.1g/L~約10.0g/Lの力価で前記組換えrhC1-INHを発現することができる、前記宿主細胞。
(項目30)
配列番号1または配列番号2に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を有する組換えヒトC1エステラーゼインヒビター(rhC1-INH)をコードする発現ベクターを含む宿主細胞であって、一旦細胞培養条件下で培養されると、約2ピコグラム、3ピコグラム、4ピコグラム、5ピコグラム、6ピコグラム、7ピコグラム、8ピコグラム、9ピコグラム、または10ピコグラム/細胞/日を超える比産生率で前記組換えrhC1-INHを発現することができる、前記宿主細胞。
(項目31)
前記宿主細胞が、一旦細胞培養条件下で培養されると、約10ピコグラム、15ピコグラム、20ピコグラム、25ピコグラム、30ピコグラム、35ピコグラム、40ピコグラム、45ピコグラム、または50ピコグラム/細胞/日を超える比産生率で前記組換えrhC1-INHを発現することができる、項目29または項目30に記載の宿主細胞。
(項目32)
前記宿主細胞が哺乳類細胞である、項目29から項目31に記載の宿主細胞。
(項目33)
前記哺乳類細胞がCHO細胞である、項目32に記載の宿主細胞。
(項目34)
前記哺乳類細胞がヒト細胞である、項目32に記載の宿主細胞。
(項目35)
前記ヒト細胞がHT1080細胞またはHEK細胞である、項目34に記載の宿主細胞。
(項目36)
前記宿主細胞が、前記発現した組換えrhC1-INHのシアリル化を増加させるように操作されている、項目29から項目35のいずれかに記載の宿主細胞。
(項目37)
配列番号1または配列番号2に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を有する組換えヒトC1エステラーゼインヒビター(rhC1-INH)をコードする発現ベクターを含む宿主細胞であって、前記組換えrhC1-INHタンパク質がシアリル化を増加させるように操作されている、前記宿主細胞。
(項目38)
前記宿主細胞が、シアリル化を増加させるべく異種酵素を発現するように操作され、シアリル化を増加させるべく変異異種酵素を発現するように操作され、シアリル化を増加させるべく内因性酵素を過剰発現するように操作され、シアリル化を増加させるべく変異型内因性酵素を発現するように操作され、及び/またはシアリル化を低減、阻害、もしくは劣化させる内因性酵素の発現を低減させるか、もしくは妨げるように操作されている、項目36に記載の宿主細胞。
(項目39)
項目29から項目38のいずれかに記載の宿主細胞を培養することを含む、組換えヒトC1エステラーゼインヒビター(rhC1-INH)を産生する方法。
(項目40)
配列番号1または配列番号2に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含むrhC1-INHを発現するように操作された宿主細胞を提供する工程と、
前記宿主細胞がrhC1-INHを産生するのに適切な条件下であって、少なくともある期間の間、グリコシル化調節因子を含む培養培地で前記細胞に栄養を与えることを含む前記条件下で前記細胞を培養する工程と、を含む、組換えヒトC1エステラーゼインヒビター(rhC1-INH)を産生する方法。
(項目41)
前記細胞が、少なくともある期間の間、約30℃~34℃で培養される、項目32または項目33に記載の方法。
(項目42)
哺乳類細胞における組換えヒトC1エステラーゼインヒビター(rhC1-INH)タンパク質の大規模産生のための方法であって、大規模培養容器に入れた懸濁液で、組換えrhC1-INHタンパク質を発現する哺乳類細胞を培養することを含み、前記組換えヒトC1エステラーゼインヒビターが、ヒト血漿由来C1エステラーゼインヒビターと同様のまたはそれよりも長い半減期を有する、前記方法。
(項目43)
前記細胞がグリカン修飾構築物を共発現する、項目39から項目42のいずれか1項に記載の方法。
(項目44)
前記グリカン修飾構築物がシアリル化を増加させる、項目43に記載の方法。
(項目45)
前記哺乳類細胞が血清を含まない細胞培養培地で培養される、項目39から項目44のいずれか1項に記載の方法。
(項目46)
前記大規模培養容器がバイオリアクターである、項目39から項目45のいずれか1項に記載の方法。
(項目47)
前記バイオリアクターが、約5L、10L、200L、500L、1,000L、1,500L、2,000L、5,000L、10,000L、15,000L、もしくは20,000Lの規模か、またはそれを超える規模である、項目46に記載の方法。
(項目48)
前記培養する工程が灌流プロセスを含む、項目39から項目47のいずれか1項に記載の方法。
(項目49)
前記培養する工程が流加培養プロセスを含む、項目39から項目48のいずれか1項に記載の方法。
(項目50)
前記細胞が、少なくともある期間の間、30℃~34℃の流加培養プロセスで培養される、項目49に記載の方法。
(項目51)
前記細胞が、平均して約5ピコグラム/細胞/日を超える比産生率で前記組換えrhC1-INHタンパク質を産生する、項目39から項目50のいずれか1項に記載の方法。
(項目52)
前記細胞が、平均して約10ピコグラム/細胞/日を超える比産生率で前記組換えrhC1-INHタンパク質を産生する、項目39から項目51のいずれか1項に記載の方法。
(項目53)
前記細胞が、1日につき1リットル当たり少なくとも約5mg、6mg、8mg、10mg、20mg、30mg、40mg、50mg、60mg、70mg、80mg、90mg、100mg、110mg、120mg、130mg、140mg、150mg、160mg、170mg、180mg、190mg、200mg、210mg、220mg、230mg、240mg、250mg、260mg、270mg、280mg、290mg、または300mgの平均収穫力価で前記組換えrhC1-INHタンパク質を産生する、項目39から項目52のいずれか1項に記載の方法。
(項目54)
前記哺乳類細胞がヒト細胞である、項目39から項目53のいずれか1項に記載の方法。
(項目55)
前記哺乳類細胞がCHO細胞である、項目39から項目54のいずれか1項に記載の方法。
(項目56)
前記培地が動物由来の成分を含まない、項目39から項目55のいずれか1項に記載の方法。
(項目57)
前記培地が合成培地である、項目39から項目56のいずれか1項に記載の方法。
(項目58)
前記培地が無タンパク質である、項目39から項目57のいずれか1項に記載の方法。
(項目59)
前記培地が少なくとも1つのグリコシル化調節因子を含む、項目39から項目58のいずれか1項に記載の方法。
(項目60)
前記培地が少なくとも1つの増殖調節因子を含む、項目39から項目59のいずれか1項に記載の方法。
(項目61)
前記少なくとも1つの増殖調節因子がヒポキサンチンを含む、項目60に記載の方法。
(項目62)
前記ヒポキサンチンの濃度が約0.1mM~約10mMの範囲である、項目58に記載の方法。
(項目63)
前記少なくとも1つの増殖調節因子がチミジンを含む、項目60から項目62のいずれか1項に記載の方法。
(項目64)
前記チミジンの濃度が約1μM~約100mMの範囲である、項目63に記載の方法。
(項目65)
前記培地のpHが約6.8~7.5の範囲である、項目39から項目64のいずれか1項に記載の方法。
(項目66)
前記培地のpHが約6.9~7.3の範囲である、項目65に記載の方法。
(項目67)
前記培養する工程が、約20%~約40%の溶存酸素の溶存酸素セットポイントを維持することを含む、項目39から項目66のいずれか1項に記載の方法。
(項目68)
前記培養する工程が増殖期と産生期とを含む、項目39から項目67のいずれか1項に記載の方法。
(項目69)
前記哺乳類細胞が30℃~37℃の温度範囲で培養される、項目39から項目68のいずれか1項に記載の方法。
(項目70)
前記哺乳類細胞が、前記増殖期及び前記産生期の間に異なる温度で培養される、項目68または項目69に記載の方法。
(項目71)
前記哺乳類細胞が、前記増殖期の間に約37℃、前記産生期の間に約32℃~34℃で培養される、項目68に記載の方法。
(項目72)
前記増殖期の培地と前記産生期の培地とが異なるpHを有する、項目68から項目71のいずれか1項に記載の方法。
(項目73)
前記方法が前記組換えrhC1-INHタンパク質を収穫する工程をさらに含む、項目39から項目72のいずれか1項に記載の方法。
(項目74)
前記組換えrhC1-INHタンパク質が、配列番号1または配列番号2に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む、項目39から項目72のいずれか1項に記載の方法。
(項目75)
前記培養液のpH、ガス処理、及び温度のうちの1つ以上が、ヒト血漿由来C1エステラーゼインヒビターと同様のまたはそれよりも長い半減期を付与するのに十分な前記rhC1-INH分子のシアリル化が可能になるように制御される、項目39から項目74のいずれか1項に記載の方法。
(項目76)
不純物の混ざった調製物から組換えヒトC1エステラーゼインヒビター(rhC1-INH)を精製する方法であって、アフィニティクロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、陽イオン交換クロマトグラフィー、混合モードクロマトグラフィー、及び疎水性相互作用クロマトグラフィーのうちの1つ以上の工程を含み、前記精製されたrhC1-INHタンパク質が少なくとも90%純粋であり、かつヒト血漿由来C1エステラーゼインヒビターと同様のまたはそれよりも長い半減期を有する、前記方法。
(項目77)
前記不純物の混ざった調製物が細胞培養培地を含む、項目76に記載の方法。
(項目78)
前記方法が、プロセス不純物及び不必要なグリカン種を低減させるために、陰イオン交換(AEX)クロマトグラフィーを行うことを含む、項目76または項目77に記載の方法。
(項目79)
前記方法が、プロセス不純物及び不必要なグリカン種を低減させるために、陽イオン交換(CEX)クロマトグラフィーを行うことを含む、項目76から項目78のいずれかに記載の方法。
(項目80)
前記方法が、陰イオン交換(AEX)クロマトグラフィー、陽イオン交換(CEX)クロマトグラフィー、及び疎水性相互作用(HIC)クロマトグラフィーを行うことを含む、項目76から項目79のいずれかに記載の方法。
(項目81)
1つ以上のウイルス不活性化工程及び/または除去工程をさらに含む、項目76から項目80のいずれかに記載の方法。
(項目82)
前記ウイルス不活性化工程及び/または除去工程が、濾過工程、溶媒ウイルス不活性化工程、及び界面活性剤不活性化工程から選択される、項目81に記載の方法。
(項目83)
前記精製された組換えrhC1-INHタンパク質が、平均して約50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、または5%以下の中性グリカン種を含む、項目76から項目82のいずれか1項に記載の方法。
(項目84)
前記精製された組換えrhC1-INHが、血漿由来ヒトC1エステラーゼインヒビターの半減期の50%~150%の範囲内の半減期を有する、項目39から項目83のいずれか1項に記載の方法。
(項目85)
前記精製された組換えrhC1-INHが、血漿由来ヒトC1エステラーゼインヒビターの半減期の80%~120%の範囲内の半減期を有する、項目39から項目84のいずれか1項に記載の方法。
(項目86)
前記精製された組換えrhC1-INHタンパク質が、約20mg/mLを超える濃度で液体産物として安定している、項目39から項目85のいずれか1項に記載の方法。
(項目87)
前記精製された組換えrhC1-INHタンパク質が、約60mg/mLを超える濃度で液体産物として安定している、項目39から項目86のいずれか1項に記載の方法。
(項目88)
前記精製された組換えrhC1-INHタンパク質が、約70mg/mL以上の濃度で液体産物として安定している、項目39から項目87のいずれか1項に記載の方法。
(項目89)
項目1から項目26のいずれか1項に記載の精製された組換えヒトC1エステラーゼインヒビタータンパク質を含む組成物と、薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
(項目90)
項目1から項目26、または項目89のいずれか1項に記載の組換えヒトC1エステラーゼインヒビタータンパク質を、50mMのTrisと、50mMのソルビトールと、150mMのグリシンとを含む製剤緩衝液中に含む医薬組成物であって、前記組成物のpHが7.2である、前記医薬組成物。
(項目91)
前記組成物が液体である、項目1から項目26、または項目89から項目90のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(項目92)
前記組成物が凍結乾燥されている、項目1から項目26、または項目89から項目90のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(項目93)
前記組成物が再構成に適切な緩衝液で元に戻されている、項目92に記載の医薬組成物。
(項目94)
前記再構成に適切な緩衝液が、滅菌水、滅菌食塩水、滅菌緩衝溶液、または1つ以上の薬学的に許容される担体を含む滅菌溶液から選択される、項目93に記載の医薬組成物。
(項目95)
前記精製された組換えrhC1-INHタンパク質が、約20mg/mLを超える濃度で液体産物として安定している、項目89から項目91、または項目93から項目94のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(項目96)
前記精製された組換えrhC1-INHタンパク質が、約60mg/mLを超える濃度で液体産物として安定している、項目89から項目91、または項目93から項目94のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(項目97)
前記精製された組換えrhC1-INHタンパク質が、約70mg/mL以上の濃度で液体産物として安定している、項目89から項目91、または項目93から項目94のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(項目98)
前記精製された組換えrhC1-INHタンパク質が、約100mg/mL以上の濃度で液体産物として安定している、項目89から項目91、または項目93から項目94のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(項目99)
前記精製された組換えrhC1-INHタンパク質が、約50U/mL、100U/mL、150U/mL、200U/mL、250U/mL、300U/mL、350U/mL、400U/mL、450U/mL、500U/mL、550U/mL、600U/mL、650U/mL、700U/mL、または750U/mLを超える濃度で液体産物として安定している、項目89から項目91、または項目93から項目94のいずれか1項に記載の医薬組成物。
(項目100)
項目89から項目99のいずれかに記載の医薬組成物を含むキット。
(項目101)
シリンジをさらに含む、項目100に記載のキット。
(項目102)
前記シリンジに、項目89から項目91、または項目95から項目99のいずれか1項に記載の医薬組成物が予め担持されている、項目101に記載のキット。
(項目103)
項目92に記載の医薬組成物と、
再構成用の緩衝液とを含むキットであって、前記凍結乾燥された組成物と前記再構成用の前記緩衝液とを混合することにより、項目89から項目91、または項目95から項目99のいずれか1項に記載の組成物を産生させる、前記キット。
(項目104)
シリンジをさらに含む、項目103に記載のキット。
(項目105)
補体媒介性障害を治療する方法であって、治療を必要とする対象に項目89から項目104のいずれか1項に記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
(項目106)
前記補体媒介性障害が、遺伝性血管性浮腫、抗体関連型拒絶反応、視神経脊髄炎関連疾患、外傷性脳損傷、脊椎損傷、虚血性脳損傷、火傷、中毒性表皮壊死症、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病、脳卒中、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)、重症筋無力症、多巣性運動ニューロパチーから選択される、項目105に記載の方法。
(項目107)
項目1から項目26のいずれかに記載の組換えヒトC1エステラーゼインヒビターを含む組成物の、補体媒介性障害を治療するための薬剤の製造における使用。
(項目108)
前記補体媒介性障害が、遺伝性血管性浮腫、抗体関連型拒絶反応、視神経脊髄炎関連疾患、外傷性脳損傷、脊椎損傷、虚血性脳損傷、火傷、中毒性表皮壊死症、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病、脳卒中、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)、重症筋無力症、及び/または多巣性運動ニューロパチーから選択される、項目107に記載の使用。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図面は、単に例示を目的とするものであり、制限するためのものではない。
【0039】
図1】C1-INHの概略図である。左から右に3つのドメインがあり、それらはシグナルペプチド、N末端(N末端ドメインとも称される)、及びセルピンドメインである。N結合型グリカンはダイヤモンド形の先端部を持つ長い垂直線として表示されており、O結合型グリカンは短い垂直線として表示されている。
【0040】
図2】rhC1-INH精製のための下流プロセスフローの概略図である。
【0041】
図3】例示的なGigacap Q溶出プロファイルを、中性かつシアリル化された種の対応する分離と共に示す。
【0042】
図4】宿主細胞由来タンパク質(HCP)などのプロセス不純物を分離する陰イオン交換クロマトグラフィー工程の性能を示す。
【0043】
図5】所望のシアリル化グリカン種の濃縮を示す例示的なPoros XS溶出プロファイルである。
【0044】
図6】Poros XS溶出後のHCP含有量の低減を示す。
【0045】
図7】rhC1-INHのNGA-NP/AEについての試料積算の例を示す。
【0046】
図8】標識化された混合モードクロマトグラムを、rhC1-INH由来のHPLC分画グリカンプールのMALDI-TOF MS分析から同定されるピークと共に示す。
【0047】
図9】血漿由来C1-INHのグリカンプロファイルである。
【0048】
図10】例示的なrhC1-INHのN-グリカンをHILIC分析したクロマトグラムである。標識されたピークは、オンラインLC/MSによって同定された。
【0049】
図11】rhC1-INHのN-グリカンプロファイル(PNGase-F)及びN+O-グリカンプロファイル(ORELA脱グリコシル化)として得られたプロファイルである。
【0050】
図12】rhC1-INH製剤の2℃~8℃での安定性(パネルA)と、25℃での安定性(パネルB)とを示す一連のグラフである。
【0051】
図13】ウサギにおいてCINRYZE(登録商標)と比較したrhC1-INHの半減期を示す。
【0052】
図14】rhC1-INHタンパク質精製プロセスの概略を示す。
【0053】
図15A】以下のプロファイルでの実行の収率と関連記述とを示す一連のクロマトグラムである:Sartobind Q(パネルA)、Sartobind STIC(パネルB)、及びNatrix(パネルC)。
図15B】同上。
図15C】同上。
【0054】
図16A-B】30MV/分でのSartobind Q(パネルA)、Sartobind STIC(パネルB)、及び5MV/分でのSartobind STIC(パネルC)についての産物試験結果を示す一連のクロマトグラムである。
図16C】同上。
【0055】
図17】Sartobind Qを用いたDNAスパイクのブランクでの実行結果を示すクロマトグラムである。
【0056】
図18A-B】DNAスパイク検討の後にrhC1-INHを精製した結果を示す一連のクロマトグラムである。図18のパネルAはSartobind Qを用いてスパイク検討した結果(無希釈負荷)を示すクロマトグラムであり、図18のパネルBはSartobind Qを用いてスパイク検討した結果(希釈負荷)を示すクロマトグラムであり、図18のパネルCはSartobind STICを用いてスパイク検討した結果を示すクロマトグラムである。
図18C】同上。
【0057】
図19】Sartobind Qを用いた最大負荷での実行結果を示すクロマトグラムである。
【0058】
図20】GigacapQ後のSartobind Q膜の性能を評価するように設計された実験の結果を示すクロマトグラムである。
【0059】
定義
本発明をより容易に理解するために、特定の用語を以下にまず定義する。以下の用語及び他の用語のさらなる定義は、本明細書全体を通して記載される。
【0060】
本明細書で使用される場合、特定の用語は下記の定義された意味を有する。本
明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、単数形の「a」、「an」、及び「the」は、特に文脈で明らかに規定されない限り、複数への言及を含むものである。例えば、用語「細胞(a cell)」は、その混合物を含めた複数の細胞(cells)を含む。
【0061】
動物:本明細書で使用される場合、用語「動物」は、動物界の任意のメンバーを意味する。一部の実施形態では、「動物」は、発達の任意の段階でのヒトを意味する。一部の実施形態では、「動物」は、発達の任意の段階での非ヒト動物を意味する。特定の実施形態では、非ヒト動物は、哺乳類(例えば、ゲッ齒類、マウス、ラット、ウサギ、サル、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、霊長類、及び/またはブタ)である。一部の実施形態では、動物には、哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、昆虫類、及び/または蠕虫類が含まれるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、動物は、トランスジェニック動物、遺伝子組換え動物、及び/またはクローンであり得る。
【0062】
およそまたは約:本出願において使用される場合、「約」及び「およそ」という用語は同意語として用いられている。本出願において使用される任意の数字は、約/およそを伴っても伴わなくても、当業者により認識される任意の正常変動を含むことが意図されている。本明細書で使用される用語「およそ」または「約」は、関心対象となる1つ以上の値に適用される場合、記述された参照値と同等の値を意味する。特定の実施形態では、用語「およそ」または「約」は、特記されない限り、ないしは特に文脈から明らかでない限り、記述された参照値のいずれかの方向(超または未満)における25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、またはそれ以下に入る値の範囲を意味する(かかる数字が取り得る値の100%を超える場合を除く)。
【0063】
生物学的利用度:本明細書で使用される場合、用語「生物学的利用度」は、概して、投与された用量のうち対象の血流に到達する割合を意味する。
【0064】
生物学的活性:本明細書で使用される場合、語句「生物学的活性」は、生体系、特に生物体において活性を有する任意の作用剤の特徴を意味する。例えば、生物体に投与された場合に、その生物体に対して生物学的作用を有する作用剤は、生物学的活性があると見なされる。ペプチドが生物学的活性である特定の実施形態では、該ペプチドの少なくとも1つの生物活性を共有する該ペプチドの一部分が「生物学的活性」部分と称されるのが典型的である。
【0065】
担体または希釈剤:本明細書で使用される場合、「担体」及び「希釈剤」という用語は、医薬製剤の調製に有用な薬学的に許容される(例えば、ヒトへの投与に対して安全かつ無毒である)担体または希釈物質を意味する。希釈剤の例として、滅菌水、注射用静菌水(BWFI)、pH緩衝溶液(例えばリン酸緩衝生理食塩水)、滅菌生理食塩水、リンガー溶液、またはデキストロース溶液が挙げられる。
【0066】
C1-インヒビターまたはC1エステラーゼインヒビターまたはC1-INH:本明細書で使用される場合、「C1-インヒビター」または「C1エステラーゼインヒビター」または「C1-INH」という用語は、全て交換可能に使用することができ、別段の指定がない限り、実質的にC1-INHの生物学的活性を保持する、野生型、天然型、もしくは天然に存在する、または修飾型の任意のC1-INHポリペプチド(例えば、1つ以上のアミノ酸変異、トランケーション、欠失、挿入、及び/または融合タンパク質を持つC1-INHタンパク質)を意味する。一部の実施形態では、C1-INH融合タンパク質はC1-INHポリペプチドとFcドメインとを含む。一部の実施形態では、C1-INH融合タンパク質はC1-INHポリペプチドとアルブミンドメインとを含む。一部の実施形態では、融合タンパク質はリンカーをさらに含む。C1-INHは、細胞で組換え発現され得る。特定の実施形態では、rhC1-INHは、哺乳類細胞で、好ましくはCHO細胞またはヒト細胞で、好ましくはHT1080細胞またはHEK細胞で発現する。
【0067】
機能的等価物または機能的誘導体:本明細書で使用される場合、「機能的等価物」または「機能的誘導体」という用語は、アミノ酸配列の機能的誘導体の文脈では、元来の配列の生物学的活性と実質的に同様の生物活性(機能的または構造的いずれか)を保持する分子を意味する。機能的誘導体または機能的等価物は、天然の誘導体であり得るか、または合成で調製される。例示的な機能的誘導体として、1つ以上のアミノ酸の置換、欠失、または付加を有するが、タンパク質の生物学的活性が保持されているアミノ酸配列が挙げられる。置換したアミノ酸は、望ましくは、置換されたアミノ酸と類似する化学物理的性質を有する。類似した望ましい化学物理的性質として、電荷、嵩高さ、疎水性、親水性などにおける類似性が挙げられる。
【0068】
融合タンパク質:本明細書で使用される場合、「融合タンパク質」または「キメラタンパク質」という用語は、2種以上の元来は別々のタンパク質またはそれらの一部分を連結することによって作製されたタンパク質を意味する。一部の実施形態では、リンカーまたはスペーサーが各タンパク質の間に存在することになる。
【0069】
半減期:本明細書で使用される場合、用語「半減期」は、タンパク質濃度またはタンパク質活性などの量が、ある期間の開始時に測定された値の半分まで下がるのに要する時間である。
【0070】
遺伝性血管性浮腫またはHAE:本明細書で使用される場合、「遺伝性血管性浮腫」または「HAE」という用語は、予測不可能な反復性の炎症発作によって特徴付けられる血液障害を意味する。HAEはC1-INH欠損と関連しているのが典型的であり、この欠損は、C1-INHが低レベルであることか、またはC1-INHの活性が損なわれている、もしくは低下していることに起因し得る。症状として、顔面、四肢、生殖器、胃腸管、及び上気道などの身体の任意の部位に生じ得る腫脹が挙げられるが、これらに限定されない。
【0071】
改善、増加、または低減:本明細書で使用される場合、「改善」、「増加」、もしくは「低減」という用語、または文法的等価物は、本明細書に記載される治療の開始前の同一個体での測定値、または本明細書に記載される治療を受けていない対照被験体(または複数の対照被験体)での測定値などの基準測定値に対する相対的な値を示唆するものである。「対照被験体」とは、治療を受けている対象と同じ疾患形態を患っており、治療を受けている対象とほぼ同じ年齢の対象のことである。
【0072】
in situ:本明細書で使用される場合、用語「in situ」は、元来の、天然であり、現存する場所もしくは位置、または環境で生じる事象を意味する。
【0073】
in vitro:本明細書で使用される場合、用語「in vitro」は、多細胞生物体内ではなく、例えば、試験管または反応容器中、細胞培養液中などの人工的な環境で生じる事象を意味する。
【0074】
in vivo:本明細書で使用される場合、用語「in vivo」は、ヒト及び非ヒト動物などの多細胞生物体内で生じる事象を意味する。細胞型系の文脈において、該用語は、生細胞内で生じる事象を意味するのに(例えばin vitro系の対語として)使用され得る。
【0075】
リンカー:本明細書で使用される場合、用語「リンカー」は、融合タンパク質において、天然タンパク質の特定の位置に見られるもの以外のアミノ酸配列を意味し、可撓性を持つか、または2つのタンパク質部分構造の間にα-ヘリックスなどの構造を挿入するように設計されているのが一般的である。リンカーは、スペーサーとも称される。リンカーまたはスペーサーは、一般的に、それ自体には生物学的機能を持たない。
【0076】
ポリペプチド:用語「ポリペプチド」は、本明細書で使用される場合、ペプチド結合を介して互いに連結したアミノ酸の連続鎖を意味する。この用語は、任意の長さのアミノ酸鎖について言及するのに使用されるが、当業者が理解するように、この用語は長い鎖に限定されることはなく、ペプチド結合を介して互いに連結した2つのアミノ酸を含めた極めて短い鎖についても言及することができる。当業者に知られるように、ポリペプチドはプロセシング及び/または修飾されてもよい。本明細書で使用される場合、「ポリペプチド」及び「ペプチド」という用語は交換可能に使用される。
【0077】
予防:本明細書で使用される場合、「予防する」または「予防」という用語は、疾患、障害、及び/または症状の発病に関連して使用される場合、疾患、障害、及び/または症状発症の危険性を低下させることを意味する。後述の「危険性」の定義を参照されたい。
【0078】
タンパク質:本明細書で使用される用語「タンパク質」は、個別単位として機能する1つ以上のポリペプチドを意味する。単一のポリペプチドが個別の機能性単位であり、個別の機能性単位を形成するために他のポリペプチドと永続的または一時的に物理的会合することを必要としない場合、用語「ポリペプチド」と用語「タンパク質」は交換可能に用いることができる。個別の機能性単位が相互に物理的会合した2つ以上のポリペプチドで構成される場合、用語「タンパク質」は、物理的に結合し、かつ個別単位として合わせて機能する複数のポリペプチドを意味する。
【0079】
危険性:文脈から理解されるとおり、疾患、障害、及び/または症状の「危険性」は、特定の個体が疾患、障害、及び/または症状(例えば、筋ジストロフィー)を発症する可能性を包含する。一部の実施形態では、危険性は割合として表される。一部の実施形態では、危険性は0%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%から100%までである。一部の実施形態では、危険性は、参照試料または参照試料群に関連する危険性と比較した危険性として表される。一部の実施形態では、参照試料または参照試料群は、疾患、障害、症状、及び/または事象(例えば、筋ジストロフィー)の既知の危険性を有している。一部の実施形態では、参照試料または参照試料群は、ある特定の個体と比較可能な個体由来である。一部の実施形態では、相対危険性は、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはそれ以上である。
【0080】
安定性:本明細書で使用される場合、用語「安定」は、治療剤(例えば、組換えタンパク質)が治療有効性(例えば、意図した生物学的活性及び/または生理化学的完全性の全てまたは大部分)を長期間にわたって維持できることを意味する。治療剤の安定性、及び医薬組成物がかかる治療剤の安定性を維持する性能は、長期(例えば、少なくとも1か月、3か月、6か月、12か月、18か月、24か月、30か月、36か月、またはそれ以上)にわたって評価されてもよい。製剤の文脈において、安定製剤とは、保管の際及びプロセス(凍結融解、機械的混合、及び凍結乾燥など)中に、製剤に含まれる治療剤が物理的及び/または化学的完全性と生物学的活性とを実質的に保持している製剤のことである。タンパク質安定性については、高分子量(HMW)凝集体の形成、酵素活性の減少、ペプチド断片の生成、及び電荷プロファイルの変化によって測定され得る。
【0081】
対象:本明細書で使用される場合、用語「対象」は、ヒトまたは任意の非ヒト動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、または霊長類)を意味する。ヒトには、出生前及び出生後の形態が含まれる。多くの実施形態では、対象はヒトである。対象は患者である場合があり、これは、疾患の診断または治療のために医療機関に来院するヒトを意味する。用語「対象」は、本明細書において「個体」または「患者」と交換可能に使用される。対象は、疾患または障害に罹患している可能性があるか、またはそれに感受性を有するが、疾患または障害の症状を表していてもいなくてもよい。
【0082】
実質的:本明細書で使用される場合、用語「実質的」は、関心対象の特徴または特性の全てもしくはほぼ全ての範囲または程度を示す、定性的な状態を意味する。生物学分野の当業者であれば、生物学的及び化学的な現象が、完了すること及び/もしくは完了の域に到達すること、または絶対的な結果を達成もしくは回避することが、仮にあったとしても稀であることを理解するであろう。したがって、用語「実質的」は、本明細書において、多くの生物学的及び化学的現象に固有の潜在的な完全性の欠如を捉えるのに用いられる。
【0083】
実質的相同性:語句「実質的相同性」は、本明細書において、アミノ酸配列または核酸配列間の比較を示すのに用いられる。当業者には理解されるように、2つの配列が対応する位置に相同な残基を有する場合、それらは通例「実質的相同」であると見なされる。相同の残基は、同一残基であってもよい。あるいは、相同の残基は、同一残基ではなく、相応に類似した構造及び/または機能特性を有していてもよい。例えば、当業者には周知のとおり、ある特定のアミノ酸は、「疎水性」または「親水性」アミノ酸として、及び/または「極性」または「非極性」の側鎖を有するとして分類されるのが典型的である。1つのアミノ酸を同一種の別のアミノ酸で置換することは、多くの場合「相同性」置換と見なされ得る。
【0084】
当該分野で周知のとおり、アミノ酸配列または核酸配列は様々なアルゴリズムのいずれかを用いて比較することができ、そのようなアルゴリズムとして、市販のコンピュータープログラムで使用可能なアルゴリズム、例えば、ヌクレオチド配列用のBLASTN、ならびにアミノ酸配列用のBLASTP、ギャップBLAST、及びPSI-BLASTなどが挙げられる。こうしたプログラムの例は、Altschul,et al.,Basic local alignment search tool,J.Mol.Biol.,215(3):403-410,1990;Altschul,et al.,Methods in Enzymology;Altschul,et al.,“Gapped BLAST and PSI-BLAST:a new generation of protein database search programs”,Nucleic Acids Res.25:3389-3402,1997;Baxevanis,et al.,Bioinformatics:A Practical Guide to the Analysis of Genes and Proteins,Wiley,1998;及びMisener,et al.,(eds.),Bioinformatics Methods and Protocols(Methods in Molecular Biology,Vol.132),Humana Press,1999に記載されている。上述のプログラムは、相同な配列を特定することに加えて、相同性の度合いの表示も提供するのが一般的である。一部の実施形態では、2つの配列は、それらの対応する残基のうちの少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上が、関連する連続区間の残基にわたって相同である場合、実質的に相同であると見なされる。一部の実施形態では、該連続区間は完全配列である。一部の実施形態では、該連続区間は、少なくとも10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、55個、60個、65個、70個、75個、80個、85個、90個、95個、100個、125個、150個、175個、200個、225個、250個、275個、300個、325個、350個、375個、400個、425個、450個、475個、500個またはそれ以上の残基である。一部の実施形態では、アミノ酸の保存的置換には、以下の群内のアミノ酸間で行われる置換が含まれる:(a)M、I、L、V、(b)F、Y、W、(c)K、R、H、(d)A、G、(e)S、T、(f)Q、N、及び(g)E、D。一部の実施形態では、「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸置換が行われる箇所でタンパク質の相対的電荷またはサイズ特性が変更されないアミノ酸置換を意味する。
【0085】
実質的同一性:語句「実質的同一性」は、本明細書において、アミノ酸配列または核酸配列間の比較を示すのに用いられる。当業者には理解されるように、2つの配列が対応する位置に同一残基を有する場合、それらは通例「実質的に同一」であると見なされる。当該分野で周知のとおり、アミノ酸配列または核酸配列は様々なアルゴリズムのいずれかを用いて比較することができ、そのようなアルゴリズムとして、市販のコンピュータープログラムで使用可能なアルゴリズム、例えば、ヌクレオチド配列用のBLASTN、ならびにアミノ酸配列用のBLASTP、ギャップBLAST、及びPSI-BLASTなどが挙げられる。こうしたプログラムの例は、Altschul,et al.,Basic local alignment search tool,J.Mol.Biol.,215(3):403-410,1990;Altschul,et al.,Methods in Enzymology;Altschul et al.,Nucleic Acids Res.25:3389-3402,1997;Baxevanis et al.,Bioinformatics:A Practical Guide to the Analysis of Genes and Proteins,Wiley,1998;and Misener,et al.,(eds.),Bioinformatics Methods and Protocols(Methods in Molecular Biology,Vol.132),Humana Press,1999に記載されている。上述のプログラムは、同一配列を特定することに加えて、同一性の度合いの表示も提供するのが一般的である。一部の実施形態では、2つの配列は、それらの対応する残基のうちの少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%またはそれ以上が、関連する連続区間の残基にわたって同一である場合、実質的に同一であると見なされる。一部の実施形態では、該連続区間は完全配列である。一部の実施形態では、該連続区間は、少なくとも10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、55個、60個、65個、70個、75個、80個、85個、90個、95個、100個、125個、150個、175個、200個、225個、250個、275個、300個、325個、350個、375個、400個、425個、450個、475個、500個またはそれ以上の残基である。
【0086】
本明細書で使用される場合、本明細書において特定される参照タンパク質配列(例えば、参照C1-INHタンパク質配列)に対する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、それらの配列を整列させ、必要であればギャップを導入して配列同一性の最大パーセントを達成した後の、参照配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基の割合として定義され、配列同一性の一部としての任意の保存的置換を考慮していない。パーセントアミノ酸配列同一性を決定するためのアラインメントは、当該技術分野の技術範囲内にある種々の方法、例えば、BLAST、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウエアなどの公開されている入手可能なコンピューターソフトウエアを用いて実現することができる。当業者であれば、比較する配列の完全長にわたる最大アラインメントを達成するのに必要な任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを評価するための適切なパラメータを決定することができる。好ましくは、WU-BLAST-2ソフトウエアを用いてアミノ酸配列同一性を算出する(Altschul et al.,Methods in Enzymology 266,460-480(1996);http://blast.wustl/edu/blast/README.html)。WU-BLAST-2は、複数の検索パラメータを使用するが、そのほとんどがデフォルト値に設定される。調整可能なパラメータは次の値に設定される:オーバーラップスパン=1、オーバーラップフラクション=0.125、ワールド閾値(T)=11。HSPスコア(S)及びHSP S2パラメータは動的値であり、特定配列の組成に応じてプログラム自体によって確定されるが、最小値は調節可能であり、上述のとおりに設定される。
【0087】
罹患:疾患、障害、及び/または症状に「罹患」している個体は、その疾患、障害、及び/または症状を持つと診断されているか、またはその疾患、障害、及び/または症状の1つ以上の徴候を示している。
【0088】
感受性を有する:疾患、障害、及び/または症状に感受性を有する個体は、その疾患、障害、及び/または症状を持つとは診断されていない。一部の実施形態では、疾患、障害、及び/または症状に感受性を有する個体は、その疾患、障害、及び/または症状の徴候を呈していない場合がある。一部の実施形態では、疾患、障害、症状、または事象(例えば、DMD)に感受性を有する個体は、以下のうちの1つ以上によって特徴付けることができる:(1)疾患、障害、及び/または症状の発症と関連する遺伝子変異;(2)疾患、障害、及び/または症状の発症と関連する遺伝子多型;(3)疾患、障害、及び/または症状と関連するタンパク質の発現及び/または活性の増加及び/または減少;(4)疾患、障害、症状、及び/または事象の発症と関連する習慣及び/または生活様式;(5)移植を受けたか、受ける予定であるか、または移植を必要としていること。一部の実施形態では、疾患、障害、及び/または症状に感受性を有する個体は、その疾患、障害、及び/または症状を発症することになる。一部の実施形態では、疾患、障害、及び/または症状に感受性を有する個体は、その疾患、障害、及び/または症状を発症することがない。
【0089】
治療有効量:本明細書で使用される場合、治療剤の「治療有効量」という用語は、疾患、障害、及び/もしくは症状に罹患しているか、または感受性を有する対象に投与される場合、その疾患、障害、及び/または症状の徴候(複数可)を治療する、診断する、予防する、及び/またはその開始を遅延するのに十分な量を意味する。当業者は、治療有効量が少なくとも1つの単位用量を含む投与レジメンによって投与されるのが典型的であることを理解するであろう。
【0090】
治療:本明細書で使用される場合、用語「治療する」、「治療」または「治療している」は、ある特定の疾患、障害、及び/または症状の1つ以上の徴候または特徴を、部分的にまたは完全に軽減する、寛解させる、緩和する、抑制する、予防する、その開始を遅延する、その重症度を低減する、及び/またはその発症率を低減するために使用する任意の方法を意味する。疾患の症状を提示していない対象、及び/または疾患の初期の症状のみを提示している対象に対して、該疾患に関連する病態を発症させる危険性を減らすために、治療が行われる場合もある。
【発明を実施するための形態】
【0091】
本発明は、特に、タンパク質治療剤としてrhC1-INHを用いて、遺伝性血管性浮腫(HAE)を含めた補体媒介性障害を治療するための方法及び組成物を提供する。
【0092】
本発明の種々の態様を、以下の節で詳細に説明する。節の使用は、本発明を限定することを意味するものではない。各節は、本発明の任意の態様に対して適用することができる。本出願で使用される「または」は、別段の記載がない限り、「及び/または」を意味する。本明細書で引用される技術の全ての開示は、参照によりその全体が援用される。
【0093】
C1-INH
ヒトC1-INHは、広範な抑制性及び非抑制性の生物学的活性を有する重要な抗炎症性血漿タンパク質である。ヒトC1-INHは、配列相同性、そのC末端ドメインの構造、及びプロテアーゼ阻害の機序により、血漿プロテアーゼインヒビターの最大クラスであるセルピンスーパーファミリーに属する。このセルピンスーパーファミリーには、抗トロンビン、α1-プロテイナーゼインヒビター、プラスミノーゲン活性化因子インヒビター、及び多種多様な生理学系を調節する構造上類似した多くの他のタンパク質も含まれる。C1-INHは、補体系、キニン生成の接触系、及び固有凝固経路におけるプロテアーゼのインヒビターである。Cai,S.& Davis,A.E.,Complement Regulatory Protein C1 Inhibitor Binds to Selectins and Interferes with Endothelial-Leukocyte Adhesion,J Immunol,171:4786-4791(2003)。具体的には、C1-INHは、補体系のC1r及びC1sを阻害することが示されている。C1-INHは、凝固第XI因子及び凝固第XII因子、ならびにカリクレイン、及び凝固系と線溶系の他のセリンプロテアーゼ(例えば、組織型プラスミノーゲン活性化因子及びプラスミンなど)の主要レギュレーターでもある。
【0094】
C1-INHの低い血漿含有量またはその機能不全により、補体カスケード及び接触血漿カスケードの両方が活性化され、同様に他の系も影響を受ける恐れがある。C1-INHの血漿含有量が55μg/mL(正常値の約25%)未満のレベルに低下すると、C1の自発的活性化が誘導されることがわかっている。
【0095】
C1-INHの構造を示す概略図を図1に示す。シグナルペプチド、N末端ドメイン、及びセルピンドメインが示されている。22個のアミノ酸シグナルペプチドは分泌に必要であり、C1-INHタンパク質の残部から切断される。C1-INHは2つのドメインを有しており、それらは、典型的なセルピンドメインである365個のアミノ酸を有するC末端ドメインと、113個のアミノ酸を有するN末端ドメインである。このタンパク質は、ドメインを接続する2つのジスルフィド架橋によって安定化されている。これらのジスルフィド架橋は、N末端ドメインのCys101とC末端(セルピン)ドメインのCys406とが形成するジスルフィド結合、及びN末端ドメインのCys108とC末端ドメインのCys183とが形成するジスルフィド結合により形成される。セルピンドメインは、C1-INHのプロテアーゼ活性を担っている。P1-P1’は、Arg444-Thr445被切断結合を表す。
【0096】
グリコシル化タンパク質の重量のうちの26%超は炭水化物である。グリカンは、ヒトC1-INHの全体にわたって不均一に分布している。N末端は重度にグリコシル化されており、3つのN結合型(ダイヤモンド形の先端部を持つ長い垂直線として表示)炭水化物基と少なくとも7つのO結合型(短い垂直線として表示)炭水化物基とを有する。3つのN結合型グリカンは、セルピンドメインのアスパラギン残基であるAsn216、Asn231、及びAsn330に結合している(ダイヤモンド形の先端部を持つ長い垂直線として表示)。極めて長くかつ重度にグリコシル化されたN末端ドメインの機能的役割は依然として不明ではあるが、これは、タンパク質の高次構造安定性、認識、エンドトキシン及びセレクチンに対する親和性、ならびにクリアランスに不可欠である可能性がある。炭水化物部分構造の固有の不均一性はC1-INH全体の不均一性の大きな原因となっており、血漿由来C1-INHの性質を模倣するrhC1-INHの産生が困難である理由の1つになっている。
【0097】
本明細書で使用される場合、本発明に適したrhC1-INHタンパク質は、実質的にC1-INH生物学的活性を保持する任意の野生型及び修飾型ヒトC1-INHポリペプチド(例えば、アミノ酸の変異、欠失、トランケーション、及び/または挿入を有するC1-INHタンパク質)を含む。典型的には、rhC1-INHタンパク質は、組換え技術を用いて産生される。
【0098】
典型的には、好適なrhC1-INHタンパク質は、約12時間、18時間、24時間、36時間、2日、2.5日、3日、3.5日、4日、4.5日、5日、5.5日、6日、6.5日、7日、7.5日、8日、8.5日、9日、9.5日、または10日以上のin vivo半減期を有する。一部の実施形態では、rhC1-INHタンパク質は、0.5日~10日、1日~10日、1日~9日、1日~8日、1日~7日、1日~6日、1日~5日、1日~4日、1日~3日、2日~10日、2日~9日、2日~8日、2日~7日、2日~6日、2日~5日、2日~4日、2日~3日、2.5日~10日、2.5日~9日、2.5日~8日、2.5日~7日、2.5日~6日、2.5日~5日、2.5日~4日、3日~10日、3日~9日、3日~8日、3日~7日、3日~6日、3日~5日、3日~4日、3.5日~10日、3.5日~9日、3.5日~8日、3.5日~7日、3.5日~6日、3.5日~5日、3.5日~4日、4日~10日、4日~9日、4日~8日、4日~7日、4日~6日、4日~5日、4.5日~10日、4.5日~9日、4.5日~8日、4.5日~7日、4.5日~6日、4.5日~5日、5日~10日、5日~9日、5日~8日、5日~7日、5日~6日、5.5日~10日、5.5日~9日、5.5日~8日、5.5日~7日、5.5日~6日、6日~10日、7日~10日、8日~10日、9日~10日のin vivo半減期を有する。
【0099】
一部の実施形態では、精製された組換えrhC1-INHは、血漿由来ヒトC1エステラーゼインヒビターの半減期と同様のまたはそれよりも長い半減期を有する。一部の実施形態では、精製された組換えrhC1-INHは、血漿由来ヒトC1エステラーゼインヒビターの半減期に匹敵するか、またはそれよりも長い半減期を有する。一部の実施形態では、精製された組換えrhC1-INHは、血漿由来ヒトC1エステラーゼインヒビターの半減期と同等のまたはそれよりも長い半減期を有する。一部の実施形態では、精製された組換えrhC1-INHは、血漿由来ヒトC1エステラーゼインヒビターの半減期と生物学的同等のまたはそれよりも長い半減期を有する。一部の実施形態では、精製された組換えrhC1-INHは、血漿由来ヒトC1エステラーゼインヒビターの半減期と同一の半減期を有する。一部の実施形態では、精製された組換えrhC1-INHは、血漿由来ヒトC1エステラーゼインヒビターの半減期の50%~150%の範囲内の半減期を有する。一部の実施形態では、精製された組換えrhC1-INHは、血漿由来ヒトC1エステラーゼインヒビターの半減期の60%~130%の範囲内の半減期を有する。一部の実施形態では、精製された組換えrhC1-INHは、血漿由来ヒトC1エステラーゼインヒビターの半減期の70%~130%の範囲内の半減期を有する。一部の実施形態では、精製された組換えrhC1-INHは、血漿由来ヒトC1エステラーゼインヒビターの半減期の80%~120%の範囲内の半減期を有する。一部の実施形態では、精製された組換えrhC1-INHは、血漿由来ヒトC1エステラーゼインヒビターの半減期の80%~130%の範囲内の半減期を有する。一部の実施形態では、精製された組換えrhC1-INHは、血漿由来ヒトC1エステラーゼインヒビターの半減期の80%~140%の範囲内の半減期を有する。一部の実施形態では、精製された組換えrhC1-INHは、血漿由来ヒトC1エステラーゼインヒビターの半減期の80%~150%の範囲内の半減期を有する。
【0100】
一部の実施形態では、本発明に適したrhC1-INHポリペプチドとして、以下の野生型ヒトC1-INHタンパク質(アミノ酸1~478)(アミノ酸1~97を下線引きで表示)に対して少なくとも50%(例えば、少なくとも55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列が挙げられる:
【化1】
【0101】
一部の実施形態では、本発明に適したrhC1-INHポリペプチドとして、E165Q変異(変異したアミノ酸を太字にし下線引きで表示)を有する以下のヒトC1-INHタンパク質(アミノ酸1~478)に対して少なくとも50%(例えば、少なくとも55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列が挙げられる:
【化2】
【0102】
一部の実施形態では、本発明に適したrhC1-INHポリペプチドとして、以下の短縮された野生型ヒトC1-INHタンパク質(アミノ酸98~478)に対して少なくとも50%(例えば、少なくとも55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列が挙げられる:
【化3】
【0103】
一部の実施形態では、本発明に適したrhC1-INHポリペプチドとして、E165Q変異(変異したアミノ酸を太字にし下線引きで表示)を有する以下の短縮された野生型ヒトC1-INHタンパク質(アミノ酸98~478)に対して少なくとも50%(例えば、少なくとも55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%)同一であるアミノ酸配列が挙げられる:
【化4】
【0104】
本明細書で開示するとおり、配列番号1は、ヒトC1-INHタンパク質の標準アミノ酸配列を示す。一部の実施形態では、C1-INHポリペプチドは、配列番号3または配列番号4などの短縮されたC1-INHであり得る。一部の実施形態では、好適なrhC1-INHポリペプチドは、野生型または天然に存在するタンパク質の相同体または類似体であり得る。例えば、ヒト野生型または天然に存在するC1-INHポリペプチドの相同体または類似体は、実質的にC1-INHタンパク質活性を保持しつつ、野生型または天然に存在するC1-INHタンパク質(例えば、配列番号1)と比較して、1つ以上のアミノ酸もしくはドメインの置換、欠失、及び/または挿入を含む場合がある(例えば、配列番号2)。したがって、一部の実施形態では、本発明に適したrhC1-INHポリペプチドは、野生型ヒトC1-INHタンパク質(配列番号1)と実質的に相同である。
【0105】
一部の実施形態では、本発明に適したrhC1-INHポリペプチドは、配列番号1に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上相同であるアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、本発明に適したrhC1-INHポリペプチドは、野生型ヒトC1-INHタンパク質(配列番号1)と実質的に同一である。一部の実施形態では、本発明に適したrhC1-INHポリペプチドは、配列番号1に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上同一であるアミノ酸配列を有する。
【0106】
一部の実施形態では、本発明に適した組換えヒトC1-INHポリペプチドは、配列番号2に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上相同であるアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、本発明に適したrhC1-INHポリペプチドは、配列番号2のヒトC1-INHタンパク質と実質的に同一である。一部の実施形態では、本発明に適したrhC1-INHポリペプチドは、配列番号2に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上同一であるアミノ酸配列を有する。
【0107】
ヒトC1-INHタンパク質の相同体または類似体は、当業者に既知のポリペプチド配列変更方法(かかる方法をまとめた参考文献において参照されるものなど)により調製することができる。一部の実施形態では、アミノ酸の保存的置換には、以下の群内のアミノ酸間で行われる置換が含まれる:(a)M、I、L、V、(b)F、Y、W、(c)K、R、H、(d)A、G、(e)S、T、(f)Q、N、及び(g)E、D。一部の実施形態では、「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸置換が行われる箇所でタンパク質の相対的電荷またはサイズ特性が変更されないアミノ酸置換を意味する。
【0108】
一部の実施形態では、本発明に適したrhC1-INHポリペプチドは、配列番号1の野生型ヒトC1-INHタンパク質、または配列番号2のC1-INHタンパク質と比較して、1つ以上のアミノ酸欠失、挿入、または置換を含む。例えば、好適なrhC1-INHポリペプチドは、配列番号3または配列番号4のポリペプチドのように短縮され得る。
【0109】
一部の実施形態では、C1-INHポリペプチドは、実質的にC1-INHタンパク質活性を保持しつつ、短縮されたC1-INH(配列番号3または配列番号4など)であり得る。したがって、一部の実施形態では、本発明に適したrhC1-INHポリペプチドは、配列番号3または配列番号4と実質的に相同である。一部の実施形態では、本発明に適したrhC1-INHポリペプチドは、配列番号3または配列番号4に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上相同であるアミノ酸配列を有する。一部の実施形態では、本発明に適したrhC1-INHポリペプチドは、配列番号3または配列番号4と実質的に同一である。一部の実施形態では、本発明に適したrhC1-INHポリペプチドは、配列番号3または配列番号4に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上同一であるアミノ酸配列を有する。
【0110】
本発明に適したrhC1-INHタンパク質は、例えばrhC1-INHタンパク質の半減期、安定性、効力及び/もしくは送達を増大もしくは増加させるか、または免疫原性、クリアランス、もしくは毒性を低減もしくは排除することによって、C1-INHの治療効果を提示する。一部の実施形態では、rhC1-INHタンパク質は、血漿由来C1-INHと同様のまたはそれよりも長い半減期を有する。一部の実施形態では、rhC1-INHタンパク質は、血漿由来C1-INHと同様のまたはそれよりも大きい活性を有する。
【0111】
例示的な組換えC1-INHタンパク質
特定の実施形態では、好適なrhC1-INHタンパク質は、配列番号1の野生型ヒトC1-INHポリペプチド、または配列番号2のC1-INHポリペプチド、または配列番号3もしくは配列番号4の短縮されたC1-INHポリペプチドに対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、好適なrhC1-INHタンパク質は、約0.5日~10日(例えば、約0.5日~5.5日、約0.5日~5日、約1日~5日、約1.5日~5日、約1.5日~4.5日、約1.5日~4.0日、約1.5日~3.5日、約1.5日~3日、約1.5日~2.5日、約2日~6日、約2日~5.5日、約2日~5日、約2日~4.5日、約2日~4日、約2日~3.5日、約2日~3日)の範囲のin vivo半減期を有する。一部の実施形態では、好適なrhC1-INHタンパク質は、約2日~10日の範囲(例えば約2.5日~10日、約3日~10日、約3.5日~10日、約4日~10日、約4.5日~10日、約5日~10日、約3日~8日、約3.5日~8日、約4日~8日、約4.5日~8日、約5日~8日、約3日~6日、約3.5日~6日、約4日~6日、約4.5日~6日、約5日~6日の範囲)のin vivo半減期を有する。
【0112】
一部の実施形態では、好適なrhC1-INHタンパク質は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、または配列番号4に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上相同または同一であるアミノ酸配列を有する。
【0113】
本発明に適したrhC1-INHタンパク質は、様々な濃度で長期間の間安定である。一部の実施形態では、精製された組換えrhC1-INHタンパク質は、約20mg/mL、30mg/mL、40mg/mL、50mg/mL、60mg/mL、70mg/mL、80mg/mL、90mg/mL、100mg/mLまたはそれ以上の濃度で液体産物として安定している。
【0114】
グリコシル化/グリカンマッピング(プロファイル)
本発明により産生されたrhC1-INHタンパク質またはポリペプチドは、シアル酸含有量及びグリカンマップなどの固有の特徴を有する。一部の実施形態では、組換え発現C1-INHタンパク質またはポリペプチドは、血漿由来C1-INHのグリコシル化プロファイルと同様のグリコシル化プロファイルを有する。一部の実施形態では、組換え発現C1-INHタンパク質またはポリペプチドは、組換え発現C1-INHタンパク質が血漿由来C1-INHの半減期と同様の半減期を提示するようなグリコシル化プロファイルを有する。一部の実施形態では、組換え発現C1-INHタンパク質またはポリペプチドは、組換え発現C1-INHタンパク質が血漿由来C1-INHの半減期よりも長い半減期を提示するようなグリコシル化プロファイルを有する。
【0115】
一部の実施形態では、精製されたrhC1-INHタンパク質は、一般的にグリカンマッピングと称されるプロテオグリカン組成によって特徴付けられ得る。いかなる理論に束縛されることも望まないが、枝分かれ構造の形状及び複雑性を伴うグリカン結合は、in vivoクリアランス、生物学的利用度、及び/または有効性に影響を及ぼし得ると考えられる。
【0116】
グリカンマップは、通例、酵素消化法及びそれに続くクロマトグラフィー分析によって測定され得る。種々の酵素を酵素消化法に用いることができ、酵素には、好適であるグリコシラーゼ、ペプチダーゼ(例えば、エンドペプチダーゼ、エキソペプチダーゼ)、プロテアーゼ、及びホスファターゼが含まれるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、好適な酵素はアルカリホスファターゼである。一部の実施形態では、好適な酵素はノイラミニダーゼである。グリカンはクロマトグラフィー分析によって検出され得る。例えば、グリカンは、パルスアンペロメトリック検出を備えた高速陰イオン交換クロマトグラフィー(HPAE-PAD)か、またはサイズ排除高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって検出され得る。グリカンマップの各ピークにより表されるグリカンの量は、当該技術分野で既知の方法及び本明細書で開示された方法に従って、グリカンの検量線を用いて計算することができる。
【0117】
一部の実施形態では、本発明の精製されたC1-INHはグリカンマップで特徴付けられる。各ピーク群に対応するグリカンの相対量は、既定の参照標準での該当ピーク群の面積に対する該各ピーク群の面積に基づいて算出することができる。グリカンマッピング用の種々の参照標準が当該技術分野で知られており、本発明の実施に用いることができる。一部の実施形態では、精製されたrhC1-INHは、中性、モノシアリル化、ジシアリル化、トリシアリル化、またはテトラシアリル化のrhC1-INHタンパク質を示すピーク群から選択される5つ以下のピーク群を含むグリカンマップで特徴付けられる。
【0118】
一部の実施形態では、精製されたrhC1-INHは、中性グリカン種、モノシアリル化種、ジシアリル化種、トリシアリル化種、及び/またはテトラシアリル化種のうちの少なくとも1つを含むグリコシル化プロファイルを有する。一部の実施形態では、精製されたrhC1-INHは、中性グリカン種、モノシアリル化種、ジシアリル化種、トリシアリル化種、及び/またはテトラシアリル化種を含むグリコシル化プロファイルを有する。一部の実施形態では、精製された組換えrhC1-INHは、約10%~約20%の中性グリカン種を含むグリコシル化プロファイルを有する。一部の実施形態では、精製された組換えrhC1-INHは、約50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、または5%以下の中性グリカン種を含むグリコシル化プロファイルを有する。一部の実施形態では、精製された組換えrhC1-INHは、約5%~約30%の中性グリカン種を含むグリコシル化プロファイルを有する。一部の実施形態では、精製された組換えrhC1-INHは、約5%~約25%の中性グリカン種を含むグリコシル化プロファイルを有する。一部の実施形態では、精製された組換えrhC1-INHは、約10%~約30%のモノシアリル化種を含むグリコシル化プロファイルを有する。一部の実施形態では、精製された組換えrhC1-INHは、約30%~約50%のジシアリル化種を含むグリコシル化プロファイルを有する。一部の実施形態では、精製された組換えrhC1-INHは、約15%~約35%のトリシアリル化種を含むグリコシル化プロファイルを有する。一部の実施形態では、精製された組換えrhC1-INHは、約5%~約15%のテトラシアリル化種を含むグリコシル化プロファイルを有する。一部の実施形態では、rhC1-INHタンパク質は、平均して1分子当たり少なくとも約80%の(例えば、1分子当たり約85%、90%、95%、または99%を超える)荷電グリカンを含む。一部の実施形態では、精製された組換えrhC1-INHは、約30%以下の中性グリカン種と、精製されたrhC1-INHが血漿由来C1-INHと同様のまたはそれよりも長い半減期を有するようなシアリル化グリカン種とを含むグリコシル化プロファイルを有する。一部の実施形態では、精製された組換えrhC1-INHは、30%以下の中性グリカン種、約20%~約30%のモノシアリル化グリカン種、約30%~約40%のジシアリル化グリカン種、約10%~約20%のトリシアリル化グリカン種、及び約5%~約10%のテトラシアリル化グリカン種を含むグリコシル化プロファイルを有する。
【0119】
一部の実施形態では、精製された組換えrhC1-INHは、約20%、15%、10%、5%、または0%未満の、マンノース、α-ガラクトース、N-グリコリルノイラミン酸(NGNA)、及び/またはオリゴマンノース型のグリコシル化のうちの1つ以上を含有する。一部の実施形態では、精製された組換えrhC1-INHは、約20%、15%、10%、5%、または0%以下の、マンノース、α-ガラクトース、N-グリコリルノイラミン酸(NGNA)、及び/またはオリゴマンノース型のグリコシル化のうちの1つ以上を含有する。一部の実施形態では、精製された組換えrhC1-INHは、免疫原性ではないグリコシル化プロファイルを有する。一部の実施形態では、精製された組換えrhC1-INHは、血漿由来ヒトC1-INHと比べた場合に血清クリアランス速度を増加させないグリコシル化プロファイルを有する。一部の実施形態では、精製された組換えrhC1-INHは、血漿由来ヒトC1-INHと比べた場合に血清クリアランス速度を減少させるグリコシル化プロファイルを有する。一部の実施形態では、精製された組換えrhC1-INHは、コネスタットアルファと比べた場合に血清クリアランス速度を減少させるグリコシル化プロファイルを有する。
【0120】
一部の実施形態では、rhC1-INHを発現するように操作された細胞は、発現したrhC1-INHのシアリル化を増加させるようにも操作され得る。一部の実施形態では、細胞は、シアリル化を増加させるべく異種酵素を発現するように操作されている。一部の実施形態では、細胞は、シアリル化を増加させるべく変異異種酵素を発現するように操作されている。一部の実施形態では、細胞は、シアリル化を増加させるべく内因性酵素を過剰発現するように操作されている。一部の実施形態では、細胞は、シアリル化を増加させるべく変異型内因性酵素を発現するように操作されている。一部の実施形態では、細胞は、シアリル化を低減、阻害、もしくは劣化させる内因性酵素の発現を低減させるか、または妨げるように操作されている(例えば、アンチセンス構築物を用いて)。
【0121】
タンパク質のグリコシル化プロファイルを操作する様々な方法が当該技術分野で知られている。これらの方法に加えて、まだ見出されていない他の方法も、本発明により考慮される。本発明のC1-INHタンパク質及びポリペプチドのグリコシル化プロファイルを操作する方法には、in vitro、in situ、及びin vivoでの方法が含まれる。一部の実施形態では、発現したタンパク質またはポリペプチドのグリコシル化プロファイルは、発現したタンパク質またはポリペプチドの発現後化学修飾により変わる。一部の実施形態では、細胞培養条件は、所望のグリコシル化プロファイルを有するタンパク質を発現させるように操作される。これらの細胞培養条件には、培養の期間、培養培地への添加物、及び/またはグリコシル化を増やすための遺伝子の共発現を含めた、産生及び培養プロセスの制御が含まれる。宿主細胞、及び形質移入された宿主細胞の特異的クローンの選択も、グリコシル化を増大させるために利用されてもよい。グリコシル化を増やすいくつかの方法として、所望のグリコシル化プロファイルを有するタンパク質またはポリペプチドを濃縮する精製プロセスが挙げられる。
【0122】
C1-INHの半減期は、グリコシル化プロファイルによって影響を受け得る。例えば、ルコネスト(登録商標)(Pharming N.V.社)は、あまりシアリル化されていないか、及び/または血漿由来ヒトC1-INHとは異なるシアリル化分布を有する組換えC1-INHポリペプチドであり、血漿由来ヒトC1-INHよりも著しく短い半減期を有することがわかっている。例えば、Davis,B.& Bernstein,J.A.,Conestat alfa for the treatment of angioedema attacks,Ther Clin Risk Manag.7:265-273(2011);Koles,K.et al.,Influence of lactation parameters on the N-glycosylation of recombinant human C1 esterase inhibitor isolated from the milk of transgenic rabbits,Glycobiology,14(11):979-986(2004);Koles,K.et al.,N- and O-glycans of recombinant human C1 esterase inhibitor expressed in the milk of transgenic rabbits,Glycobiology,14(1):51-64(2004)を参照されたい。ルコネスト(登録商標)は、ヒト血漿由来C1-INHと同一のアミノ酸配列を有するが、ウサギで作製されるため、そのグリコシル化プロファイルはヒト血漿由来C1-INHのプロファイルとは全く異なっている。その結果として、ルコネスト(登録商標)は約2.4時間~2.7時間という極めて短い半減期を有する。ルコネスト(登録商標)FDAラベル及び処方情報を参照されたい。対照的に、ヒト血漿由来C1-INHは、約56時間~62時間の範囲内の平均半減期を有することが示されている。CINRYZE(登録商標)処方情報を参照されたい。本明細書で論じるように、本発明の細胞は、発現したrhC1-INHタンパク質のグリコシル化プロファイルを改良するように操作され、その結果、本発明のrhC1-INHが血漿由来C1-INHと同様のまたはそれよりも長い半減期を有するようになる。
【0123】
シアリル化/シアル酸含有量
一部の実施形態では、組換え発現C1-INHタンパク質またはポリペプチドは、血漿由来C1-INHのシアリル化プロファイルと同様のシアリル化プロファイルを有する。一部の実施形態では、組換え発現C1-INHタンパク質またはポリペプチドは、組換え発現C1-INHタンパク質が血漿由来C1-INHの半減期と同様の半減期を提示するようなシアリル化プロファイルを有する。一部の実施形態では、組換え発現C1-INHタンパク質またはポリペプチドは、組換え発現C1-INHタンパク質が血漿由来C1-INHの半減期よりも長い半減期を提示するようなシアリル化プロファイルを有する。一部の実施形態では、精製された組換えヒトC1エステラーゼインヒビター(rhC1-INHまたはC1-INH)は、平均して1分子当たり少なくとも約10個、11個、12個、13個、または14個のシアリル化グリカン残基を含む。一部の実施形態では、精製された組換えヒトC1エステラーゼインヒビター(rhC1-INHまたはC1-INH)は、平均して1分子当たり少なくとも約15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、26個、27個、28個、または29個のシアリル化グリカン残基を含む。一部の実施形態では、精製された組換えヒトC1エステラーゼインヒビター(rhC1-INHまたはC1-INH)は、平均して1分子当たり少なくとも約30個、31個、32個、33個、34個、35個、36個、37個、38個、39個、または40個のシアリル化グリカン残基を含む。
【0124】
タンパク質のシアリル化プロファイルを操作する様々な方法が当該技術分野で知られている。これらの方法に加えて、まだ見出されていない他の方法も、本発明により考慮される。本発明のC1-INHタンパク質及びポリペプチドのシアリル化プロファイルを操作する方法には、in vitro、in situ、及びin vivoでの方法が含まれる。一部の実施形態では、発現したタンパク質またはポリペプチドのシアリル化プロファイルは、発現したタンパク質またはポリペプチドの発現後化学修飾により変わる。一部の実施形態では、細胞培養条件は、所望のシアリル化プロファイルを有するタンパク質を発現させるように操作される。これらの細胞培養条件には、培養の期間、培養培地への添加物、及び/またはシアリル化を増やすための遺伝子の共発現を含めた、産生及び培養プロセスの制御が含まれる。宿主細胞、及び形質移入された宿主細胞の特異的クローンの選択も、シアリル化を増大させるために利用されてもよい。シアリル化を増やすいくつかの方法として、所望のシアリル化プロファイルを有するタンパク質またはポリペプチドを濃縮する精製プロセスが挙げられる。
【0125】
組換えC1-INHタンパク質の産生
本発明に適したrhC1-INHタンパク質を任意の使用可能な手段によって産生することができる。例えば、rhC1-INHタンパク質を、rhC1-INHタンパク質コード核酸を発現するように操作された宿主細胞系を利用することにより組換え産生することができる。別の方法として、または加えて、rhC1-INHタンパク質を、内因性遺伝子を活性化することによって産生してもよい。別の方法として、または加えて、rhC1-INHタンパク質を、化学合成によって部分的にまたは完全に調製してもよい。
【0126】
タンパク質が組換え産生される場合、任意の発現系を用いることができる。数例を挙げると、既知の発現系として、例えば、大腸菌(E.coli)、卵、バキュロウイルス、植物、酵母、または哺乳類の細胞が挙げられる。
【0127】
一部の実施形態では、本発明に適したrhC1-INHタンパク質は、哺乳類細胞で産生される。本発明に従って使用され得る哺乳類細胞の非限定的な例として、BALB/cマウス骨髄腫株(NSO/l、ECACC番号85110503);ヒト網膜芽細胞(PER.C6、CruCell社、オランダ、ライデン);SV40(COS-7、ATCC CRL 1651)により形質転換されたサル腎臓CV1株;ヒト胚腎臓株(懸濁培養での増殖用にサブクローンされたHEK293または293細胞、Graham et al.,J.Gen Virol.,36:59,1977);ヒト線維肉腫細胞株(例えば、HT1080);ベビーハムスター腎臓細胞(BHK21、ATCC CCL 10);チャイニーズハムスター卵巣細胞+/-DHFR(CHO、Urlaub and Chasin,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77:4216,1980);マウスセルトリ細胞(TM4、Mather,Biol.Reprod.,23:243-251,1980);サル腎細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎細胞(VERO-76、ATCC CRL-1 587);ヒト子宮頸癌細胞(HeLa、ATCC CCL 2);イヌ腎細胞(MDCK、ATCC CCL 34);バッファローラット肝細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝細胞(Hep G2、HB 8065);マウス乳癌腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL51);TRI細胞(Mather et al.,Annals N.Y.Acad.Sci.,383:44-68,1982);MRC5細胞;FS4細胞;及びヒト肝癌株(Hep G2)が挙げられる。
【0128】
一部の実施形態では、本発明はヒト細胞から産生されたrhC1-INHタンパク質を提供する。一部の実施形態では、本発明は、CHO細胞、HT1080細胞、またはHEK細胞から産生されたrhC1-INHタンパク質を提供する。
【0129】
典型的には、rhC1-INHタンパク質を発現するように操作された細胞には、本明細書に記載のrhC1-INHタンパク質をコードする導入遺伝子が含まれ得る。rhC1-INHタンパク質をコードする核酸は、調節配列、遺伝子制御配列、プロモーター、非コード配列、及び/またはrhC1-INHを発現するのに適正な他の配列を含むことができると理解されるべきである。典型的には、コード領域は、これらの核酸成分のうちの1つ以上と作用可能に連結されている。
【0130】
導入遺伝子のコード領域は、特定の細胞型に対するコドン使用頻度を最適化するように1つ以上のサイレント変異を含んでいてもよい。例えば、C1-INH導入遺伝子のコドンは、脊椎動物細胞での発現向けに最適化されていてもよい。一部の実施形態では、C1-INH導入遺伝子のコドンは、哺乳類細胞での発現向け最適化され得る。一部の実施形態では、C1-INH導入遺伝子のコドンは、ヒト細胞での発現向けに最適化され得る。一部の実施形態では、C1-INH導入遺伝子のコドンは、CHO細胞での発現向けに最適化され得る。
【0131】
組換えC1-インヒビタータンパク質をコードする核酸
一部の実施形態では、本明細書の様々な実施形態に記載された、C1-インヒビタータンパク質などの関心対象の組換え遺伝子(本明細書では導入遺伝子と称される)をコードする核酸配列を含む核酸分子が提供される。一部の実施形態では、導入遺伝子をコードする核酸は、コードされるC1-インヒビタータンパク質の発現を増加させるように修飾される(コドン最適化とも称される)場合がある。例えば、コード配列のオープンリーディングフレームを変えることによって、導入遺伝子をコードする核酸を修飾することができる。本明細書で使用される場合、用語「オープンリーディングフレーム」は、「ORF」と同義語であり、タンパク質またはタンパク質の一部分をコードできる可能性がある任意のヌクレオチド配列を意味する。オープンリーディングフレームは、通例、開始コドン(例えば、標準コードではRNA分子についてはAUGとして、及びDNA分子についてはATGとして表される)で開始し、停止コドン(例えば、標準コードではRNA分子についてはUAA、UGAまたはUAGとして、及びDNA分子についてはTAA、TGAまたはTAGとして表される)を有するフレーム末端までコドントリプレットで読まれる。本明細書で使用される場合、用語「コドン」は、タンパク質合成の間に特定のアミノ酸を定める核酸分子における3つのヌクレオチド配列を意味しており、トリプレットまたはコドントリプレットとも呼ばれている。例えば、標準の遺伝子コードにおいて考えられる64個のコドンのうち、2つのコドンGAA及びGAGはアミノ酸のグルタミンをコードするが、コドンAAA及びAAGはアミノ酸のリジンを指定する。標準の遺伝子コードでは3つのコドンが停止コドンであり、これらはアミノ酸を特定するものではない。本明細書で使用される場合、用語「同義コドン」は単一のアミノ酸をコードするコドンのいずれか及び全てを意味する。メチオニン及びトリプトファンを除いて、アミノ酸は2つ~6つの同義コドンによってコードされる。例えば、標準の遺伝子コードでは、アミノ酸のアラニンをコードする4つの同義コドンはGCA、GCC、GCG、及びGCUであり、グルタミンを指定する2つの同義コドンはGAA及びGAGであり、リジンをコードする2つの同義コドンはAAA及びAAGである。
【0132】
一部の実施形態では、C1-インヒビタータンパク質のオープンリーディングフレームをコードする核酸を、標準のコドン最適化法を用いて修飾することができる。コドン最適化には種々の市販のアルゴリズムが利用可能であり、本発明の実施に使用することができる。一般的には、コドン最適化によって、コードされるアミノ酸配列が変わることはない。一部の実施形態では、コドン最適化により、置換、欠失、または挿入などのアミノ酸の変更が生じる可能性がある。通常、こうしたアミノ酸の変更がタンパク質活性を実質的に変えることはない。
【0133】
例示的な核酸配列は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、または配列番号4に対して、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上同一または相同であるアミノ酸配列を有するC1-インヒビタータンパク質をコードする。
【0134】
一部の実施形態では、ヌクレオチドを変えることによってオープンリーディングフレーム内の同義コドンが変わり、C1-インヒビタータンパク質を発現するように選択された特定の異種細胞の内因性コドン使用頻度と符合するようになり得る。別の方法として、または加えて、ヌクレオチドを変えることによってオープンリーディングフレームの中でのG+C含有量が変わることで、異種宿主細胞に存在する内因性核酸配列に見られるオープンリーディングフレームの平均G+C含有量によく一致するようになり得る。また、ヌクレオチドを変えることにより、C1-インヒビタータンパク質配列内に見られるポリモノヌクレオチド領域または内部調節部位もしくは内部構造部位も変わり得る。したがって、原核細胞、酵母細胞、昆虫細胞、及び哺乳類細胞おいて、C1-インヒビタータンパク質の発現を増加させる核酸配列を含むが、これに限定されない種々の修飾または最適化されたヌクレオチド配列が想定される。
【0135】
修飾された核酸は、通例、アミノ酸配列の変更を伴うかまたは伴わずにC1-インヒビタータンパク質をコードする。アミノ酸変更を伴う事象において、こうした変更によってC1-インヒビタータンパク質の活性が実質的に低下することはない。一部の実施形態では、こうした変更によってC1-インヒビタータンパク質の活性が増加及び/または増大する。活性は、以下に列記される非限定的なパラメータを指してもよい:半減期の増加、宿主細胞によるタンパク質発現の増加/上昇、発現タンパク質の安定性向上、発現タンパク質の溶解性向上、発現タンパク質の凝集減少、発現タンパク質の製剤簡略化、発現タンパク質の精製簡略化、発現タンパク質のpH変化に対する耐性向上、タンパク質の高pH及び低pH条件に対する耐性能力の向上、高濃度での製剤化に適するタンパク質の発現。
【0136】
発現ベクター
本出願に記載のC1-インヒビタータンパク質をコードする核酸配列は、宿主細胞での増殖または発現に適切なベクターに分子的にクローニング(挿入)され得る。本発明を実施するために多様な発現ベクターを使用することができ、こうしたベクターとして、以下に限定されないが、原核生物発現ベクター、酵母発現ベクター、昆虫発現ベクター、及び哺乳類発現ベクターが挙げられる。本発明に適したベクターの例として、以下に限定されないが、ウイルス系ベクター(例えば、AAV系ベクター、レトロウイルス系ベクター、プラスミド系ベクター)が挙げられる。一部の実施形態では、C1-インヒビタータンパク質をコードする核酸配列は適切なベクターに挿入することができる。C1-インヒビタータンパク質をコードする核酸は、様々な調節配列または調節エレメントに作用可能に連結しているのが典型的である。
【0137】
調節配列または調節エレメント
様々な調節配列または調節エレメントを、本発明に適した発現ベクターに組み込むことができる。調節配列または調節エレメントの例として、以下に限定されないが、プロモーター、エンハンサー、リプレッサーまたはサプレッサー、5’非翻訳(または非コード)配列、イントロン、3’非翻訳(または非コード)配列が挙げられる。
【0138】
本明細書で使用される場合、「プロモーター」または「プロモーター配列」は、細胞内でRNAポリメラーゼを(例えば、直接的にまたは他のプロモーター結合タンパク質もしくは物質を介して)結合させることができ、かつコード配列の転写を開始させることができるDNA調節領域である。プロモーター配列は、通例、その3’末端において転写開始部位で結合し、上流に向かって(5’方向に)延びて、任意のレベルで転写を開始するのに必要な塩基またはエレメントの最小個数を含んでいる。プロモーターは、エンハンサー配列及びリプレッサー配列を含めた発現制御配列に作用可能に会合するか、もしくは作用可能に連結するか、または発現させる核酸に作用可能に会合し得る。一部の実施形態では、プロモーターは誘導性であり得る。一部の実施形態では、誘導性プロモーターは、一方向性または双方向性であり得る。一部の実施形態では、プロモーターは、構成的プロモーターであり得る。一部の実施形態では、プロモーターは、転写調節領域を含有する配列をある供給源から得、転写開始領域を含有する配列を第2の供給源から得るハイブリッドプロモーターであり得る。導入遺伝子内で制御エレメントをコード配列に連結する系は当該技術分野で周知である(一般的な分子生物学的技法及び組換えDNA技法は、Sambrook,Fritsch,and Maniatis,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,1989に記載されており、この文献は参照により本明細書に援用される)。種々の増殖条件下及び誘導条件下で、様々な宿主細胞に発現用の導入遺伝子を挿入するのに適した市販のベクターも、当該技術分野で周知である。
【0139】
一部の実施形態では、哺乳類宿主細胞内の導入遺伝子の発現を制御するために特異的プロモーターが使用される場合があり、こうしたプロモーターとして、以下に限定されないが、例えば、SRα-プロモーター(Takebe et al.,Molec.and Cell.Bio.8:466-472(1988)を参照)、ヒトCMV最初期プロモーター(Boshart et al.,Cell 41:521-530(1985);Foecking et al.,Gene 45:101-105(1986))、ヒトCMVプロモーター、ヒトCMV5プロモーター、マウスCMV最初期プロモーター、EF1-α-プロモーター、肝臓特異的発現用ハイブリッドCMVプロモーター(例えば、CMV最初期プロモーターと、ヒトα-1-抗トリプシン(HAT)またはアルブミン(HAL)プロモーターのいずれかの転写プロモーター配列とを結合させることにより作製)、もしくは肝細胞腫特異的発現用プロモーター(例えば、ヒトアルブミン(HAL、約1000bp)またはヒトα-1-抗トリプシン(HAT、約2000bp)のいずれかの転写プロモーターエレメントと、ヒトα-1-ミクログロブリン及びビクニン前駆体遺伝子(AMBP)の145長エンハンサーエレメントとの組み合わせ(HAL-AMBP及びHAT-AMBP));SV40初期プロモーター領域(Benoist at al.,Nature 290:304-310(1981)を参照)、オルギア・シュードツガタ(Orgyia pseudotsugata)最初期プロモーター、ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(Wagner at al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 78:1441-1445(1981)を参照);またはメタロチオネイン遺伝子の調節配列(Brinster et al.,Nature 296:39-42(1982)を参照)などがある。一部の実施形態では、哺乳類プロモーターは、構成的プロモーターであり、例えば、以下に限定されないが、ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPTR)プロモーター、アデノシンデアミナーゼプロモーター、ピルビン酸キナーゼプロモーター、ベータ-アクチンプロモーター、及び当業者に既知の他の構成的プロモーターなどである。
【0140】
一部の実施形態では、特異的プロモーターは、原核宿主細胞内で導入遺伝子の発現を制御するのに用いることができ、こうしたプロモーターとして、以下に限定されないが、β-ラクタマーゼプロモーター(Villa-Komaroff et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 75:3727-3731(1978)を参照);tacプロモーター(DeBoer et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:21-25(1983)を参照);T7プロモーター、T3プロモーター、M13プロモーター、またはM16プロモーターなどがあり、酵母宿主細胞におけるプロモーターとして、以下に限定されないが、GAL1、GAL4、もしくはGAL10プロモーター、ADH(アルコールデヒドロゲナーゼ)プロモーター、PGK(ホスホグリセロールキナーゼ)プロモーター、アルカリホスファターゼプロモーター、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼIII(TDH3)プロモーター、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼII(TDH2)プロモーター、グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼI(TDH1)プロモーター、ピルビン酸キナーゼ(PYK)、エノラーゼ(ENO)、またはトリオースリン酸イソメラーゼ(TPI)などがある。
【0141】
一部の実施形態では、プロモーターがウイルスプロモーターである場合があり、ウイルスプロモーターの多くが哺乳類細胞を含めた複数の宿主細胞型において導入遺伝子の発現を調節することができる。真核細胞中でのコード配列の恒常的発現を駆動することがわかっているウイルスプロモーターとして、例えば、サルウイルスプロモーター、単純ヘルペスウイルスプロモーター、パピローマウイルスプロモーター、アデノウイルスプロモーター、ヒト免疫不全症ウイルス(HIV)プロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、モロニーマウス白血病ウイルス及び他のレトロウイルスの末端長反復配列(LTR)、単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼプロモーター、ならびに当業者に既知の他のウイルスプロモーターが挙げられる。
【0142】
一部の実施形態では、発現ベクターの遺伝子制御エレメントには、転写開始に関与する5’非転写配列及び翻訳開始に関与する5’非翻訳配列(例えば、TATAボックス、キャッピング配列、CAAT配列、Kozak配列など)も含まれる場合がある。エンハンサーエレメントを任意選択的に使用して、発現させるポリペプチドまたはタンパク質の発現レベルを増加させることができる。哺乳類細胞で機能することがわかっているエンハンサーエレメントの例として、Dijkema et al.,EMBO J.(1985)4:761に記載されているSV40初期遺伝子エンハンサー、Gorman et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1982b)79:6777に記載されているラウス肉腫ウイルス(RSV)の末端長反復配列(LTR)由来のエンハンサー/プロモーター、及びBoshart et al.,Cell(1985)41:521に記載されているヒトサイトメガロウイルスが挙げられる。発現ベクターの遺伝子制御エレメントには、転写の終止に関与する3’非転写配列及び翻訳の終止に関与する3’非翻訳配列も含まれるはずである。例えば、プロモーターから転写されたmRNAの3’末端の安定化及びプロセシングのためのポリポリアデニル化(ポリA)シグナルなどである。例えばポリAシグナルには、ウサギベータグロビンポリAシグナル、ウシ成長ホルモンポリAシグナル、ニワトリベータグロビンターミネーター/ポリAシグナル、またはSV40後期ポリA領域が含まれていた。
【0143】
選択マーカー
発現ベクターは、好ましくは、しかし任意選択的に、少なくとも1つ選択マーカーを含むことになる。一部の実施形態では、選択マーカーは、1つ以上の遺伝子調節エレメントに作用可能に連結した耐性遺伝子をコードする核酸配列であり、細胞毒性化学物質及び/または薬剤の存在下で増殖する際に生存能力を維持する能力を宿主細胞に付与する。一部の実施形態では、選択作用剤を用いて宿主細胞内の発現ベクターの保持力を保つことができる。一部の実施形態では、選択作用剤を用いて、発現ベクター内の導入遺伝子配列の修飾(すなわちメチル化)及び/またはサイレンシングを防ぐことができる。一部の実施形態では、選択作用剤を用いて宿主細胞内のベクターのエピソーム発現を維持する。一部の実施形態では、選択作用剤を用いて、導入遺伝子配列を宿主細胞ゲノムに安定に組み込むことを促進させる。一部の実施形態では、作用剤及び/または耐性遺伝子として、以下に限定されないが、真核宿主細胞についてはメトトレキサート(MTX)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR、米国特許第4,399,216号、同第4,634,665号、同第4,656,134号、同第4,956,288号、同第5,149,636号、同第5,179,017号)、アンピシリン、ネオマイシン(G418)、ゼオマイシン、ミコフェノール酸、またはグルタミンシンテターゼ(GS、米国特許第5,122,464号;同第5,770,359号;同第5,827,739号);原核宿主細胞についてはテトラサイクリン、アンピシリン、カナマイシン、またはクロラムフェニコール;及び酵母宿主細胞についてはURA3、LEU2、HIS3、LYS2、HIS4、ADE8、CUP1、またはTRP1を挙げることができる。
【0144】
発現ベクターは宿主細胞に形質移入されるか、形質転換されるか、形質導入され得る。本明細書で使用される場合、「形質移入」、「形質転換」、及び「形質導入」という用語は全て、外来性核酸配列を宿主細胞に導入することを意味する。一部の実施形態では、C1-インヒビタータンパク質をコードする核酸配列を含む発現ベクターは、宿主細胞に形質移入されるか、形質転換されるか、または形質導入される。
【0145】
形質転換方法、形質移入方法、及び形質導入方法の例は、当該技術分野で周知であり、こうした例として、リポソーム送達(すなわち、Hawley-Nelson,Focus 15:73(1193)に記載のリポフェクタミン(商標)(Gibco BRL)法)、電気穿孔法、Graham and van der Erb,Virology,52:456-457(1978)に記載のCaPO送達法、DEAE-デキストラン介在送達、微量注入法、遺伝子銃粒子送達、ポリブレン介在送達、カチオン介在脂質送達、形質導入、ならびにウイルス感染(例えば、レトロウイルス、レンチウイルス、アデノウイルスアデノ随伴ウイルス、及びバキュロウイルス(昆虫細胞))などが挙げられる。細胞宿主形質転換の一般的な態様は、当該技術分野において説明されており、例えば、Axelによる米国特許第4,399,216号、上述のSambrook著の第1章~4章及び第16章~18章;上述のAusubel著の第1章、9章、13章、15章、及び16章で説明されている。哺乳類細胞を形質転換する様々な技術については、Keown et al.,Methods in Enzymology(1989)、Keown et al.,Methods in Enzymology,185:527-537(1990)、及びMansour et al.,Nature,336:348-352(1988)を参照されたい。
【0146】
発現ベクターは、一旦細胞内に導入されると、ゲノムに安定的に組み込まれ得るか、または染色体外構築物として存在し得る。ベクターは増幅される場合もあり、複数のコピーが存在するか、またはゲノムに組み込まれる場合がある。一部の実施形態では、本発明の細胞は、C1-インヒビタータンパク質をコードする核酸の1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個、またはそれ以上のコピーを含み得る。一部の実施形態では、本発明の細胞は、C1-インヒビタータンパク質と、発現C1-インヒビタータンパク質のグリコシル化を好ましくはシアリル化の増加によって増大させる1つ以上のタンパク質とをコードする核酸の複数のコピー(例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個、またはそれ以上)を含み得る。シアリル化は、本明細書に記載される様々な方法を用いて操作することもできる。いかなる理論に束縛されることも望まないが、シアリル化の減少は、開示される構築物のヘパリン結合の増加と関連しており、それによりC1-INH結合部位が標的に結合するのを妨げることがわかった。ヘパリン結合はまた、リソソーム内への内部移行の可能性も高め、その結果クリアランス速度を増加させる。
【0147】
宿主細胞
本明細書で使用される場合、用語「宿主細胞」は、組換えC1-インヒビタータンパク質を産生するのに用いられ得る細胞を意味する。詳細には、宿主細胞は組換えC1-インヒビタータンパク質を大規模で産生するのに適している。適正な宿主細胞は、以下に限定されないが、哺乳類、植物、鳥類(例えば、鳥類系)、昆虫類、酵母、細菌類を含めた種々の生物体由来であり得る。一部の実施形態では、宿主細胞は、哺乳類細胞である。一部の実施形態では、適切な宿主細胞は、発現したrhC1-INHタンパク質のグリコシル化プロファイルを改善するように操作されている。本発明の一部の実施形態では、rhC1-INHポリペプチドは、天然の血漿由来C1-INHの類似部分と同一または同様のグリコシル化プロファイルを有する。一部の実施形態では、C1-INHポリペプチドは、天然の血漿由来C1-INHと同等の少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%のグリカンを有する。一部の実施形態では、rhC1-INHタンパク質のグリコシル化プロファイルは、ヒト化グリコシル化プロファイルを有する。一部の実施形態では、rhC1-INHタンパク質は、天然の血漿由来C1-INHに比べてシアリル化が増加している。
【0148】
グリコシル化プロファイルの改善とは、シアリル化を増加させること、及び/またはグリコシル化プロファイルをヒト化することを意味し、例えば、操作された細胞でC1-INHポリペプチドを含むrhC1-INHタンパク質を発現することで、未操作細胞で発現したC1-INHポリペプチドと比べて天然のヒトC1-INHにさらに近いグリコシル化プロファイルを生じさせることを意味する。改善とは、ルコネストに比べてC1-INHのグリコシル化プロファイルを増加、増大、及び/または最適化することも意味し得る。
【0149】
タンパク質のグリコシル化プロファイルを変更、制御、操作、改善、増大、及び/または最適化する種々の方法は、当該技術分野で既知である。最適化可能なグリコシル化プロファイルの特性として、グリカン残基の数、グリカン残基結合位置、グリカン結合様式(例えば、結合の種類)、グリカン結合プロセス、及びタンパク質またはポリペプチドに結合しているグリカン残基の同一性が挙げられる。本発明のタンパク質の任意の部分のグリコシル化プロファイルは、グリコシル化を最適化するのに適した標的として考慮される。グリコシル化プロファイルを制御するこれらの方法に加えて、当業者が本開示に照らして本発明のタンパク質のグリコシル化を最適化するのに有用と判断する未だ発見されていない他の方法も考慮される。本発明のC1-INHタンパク質及びポリペプチドのグリコシル化プロファイルを変更、制御、操作、改善、増大、及び/または最適化する方法には、in vitro、in situ、及びin vivoでの方法が含まれる。
【0150】
一部の実施形態では、発現したタンパク質またはポリペプチドのグリコシル化プロファイルは、発現したタンパク質またはポリペプチドの翻訳後修飾及び/または化学修飾により変わる。
【0151】
一部の実施形態では、翻訳後修飾及び/または化学修飾を受けたC1-INHタンパク質は、翻訳後修飾及び/または化学修飾を受けていない同一の配列を有するC1-INHタンパク質と比べて、変更、改善、増大、ヒト化及び/または最適化されたグリコシル化プロファイルを有する。一部の実施形態では、翻訳後修飾及び/または化学修飾を受けたC1-INHタンパク質は、翻訳後修飾及び/または化学修飾を受けていない同一の配列を有するC1-INHタンパク質と比べて、変更、改善、増大、ヒト化及び/または最適化されたシアリル化プロファイルを有する。
【0152】
一部の実施形態では、C1-INHタンパク質は、グリコシル化を増大するように操作された細胞株から発現し、グリコシル化を増大するように操作されていない同一の細胞株から発現した同一の配列を有するC1-INHタンパク質に比べて、変更、改善、増大、ヒト化及び/または最適化されたグリコシル化プロファイルを有する。一部の実施形態では、C1-INHタンパク質は、シアリル化を増大するように操作された細胞株から発現し、シアリル化を増大するように操作されていない同一の細胞株から発現した同一の配列を有するC1-INHタンパク質に比べて、変更、改善、増大、ヒト化及び/または最適化されたシアリル化プロファイルを有する。
【0153】
一部の実施形態では、C1-INHタンパク質は、グリコシル化を増大する条件下で培養された細胞株から発現し、グリコシル化を増大する条件下で培養されている細胞株から発現した同一の配列を有するC1-INHタンパク質に比べて、変更、改善、増大、ヒト化及び/または最適化されたグリコシル化プロファイルを有する。一部の実施形態では、C1-INHタンパク質は、シアリル化を増大する条件下で培養された細胞株から発現し、シアリル化を増大する条件下で培養されている細胞株から発現した同一の配列を有するC1-INHタンパク質に比べて、変更、改善、増大、ヒト化及び/または最適化されたシアリル化プロファイルを有する。
【0154】
一部の実施形態では、C1-INHタンパク質は、ルコネストと比べて変更、改善、増大、ヒト化及び/または最適化されたグリコシル化プロファイルを有する。一部の実施形態では、C1-INHタンパク質は、ヒト血漿由来C1-INHと比べて変更、改善、増大、ヒト化及び/または最適化されたグリコシル化プロファイルを有する。
【0155】
一部の実施形態では、細胞培養条件は、所望のグリコシル化プロファイルを有するタンパク質を発現させるように操作される。これらの細胞培養条件には、培養の期間、培養培地への添加物、高グリコシル化によりグリコシル化を増大させるための遺伝子の共発現、及び/またはグリカン分解(例えば、シアリラダーゼ(sialyladase))と関連した酵素をノックアウトするか、該酵素の発現を抑制するか、不活性化するか、もしくは破壊する細胞操作を含めた、産生及び培養プロセスの制御が含まれる。好適なグリコシル化操作方法として、以下に限定されないが、例えば米国特許第5,047,335号、同第5,096,816号、同第5,705,364号、同第7,645,609号、同第8,273,723号、同第8,524,477号、同第8,617,878号、同第8,871,723号、PCT公開第WO2006/106348号、同WO2007/095506号、同WO2008/025856号、同WO2010/007214号、同WO2010/099394号、及び同WO2013/093760号に記載された方法が挙げられ、これらの開示は、参照により本明細書に援用される。
【0156】
宿主細胞、及び形質移入された宿主細胞の特異的クローンの選択も、グリコシル化を増大させるために利用されてもよい。グリコシル化を増やすいくつかの方法として、所望のグリコシル化プロファイルを有するタンパク質またはポリペプチドを濃縮する精製プロセスが挙げられる。
【0157】
タンパク質のシアリル化プロファイルを操作する様々な方法が当該技術分野で知られている。これらの方法に加えて、まだ見出されていない他の方法も、本発明により考慮される。本発明のC1-INHタンパク質及びポリペプチドのシアリル化プロファイルを操作する方法には、in vitro、in situ、及びin vivoでの方法が含まれる。一部の実施形態では、発現したタンパク質またはポリペプチドのシアリル化プロファイルは、発現したタンパク質またはポリペプチドの発現後化学修飾により変わる。一部の実施形態では、細胞培養条件は、所望のシアリル化プロファイルを有するタンパク質を発現させるように操作される。これらの細胞培養条件には、培養の期間、培養培地への添加物、及び/またはシアリル化を増やすための遺伝子の共発現を含めた、産生及び培養プロセスの制御が含まれる。宿主細胞、及び形質移入された宿主細胞の特異的クローンの選択も、シアリル化を増大させるために利用されてもよい。シアリル化を増やすいくつかの方法として、所望のシアリル化プロファイルを有するタンパク質またはポリペプチドを濃縮する精製プロセスが挙げられる。
【0158】
シアリル化も、本明細書に記載される様々な方法により操作することができる。いかなる理論に束縛されることも望まないが、シアリル化の減少は、開示される構築物のヘパリン結合の増加と関連しており、それによりC1-INH結合部位が標的に結合するのを妨げることがわかった。ヘパリン結合はまた、リソソーム内への内部移行の可能性も高め、その結果クリアランス速度を増加させる。
【0159】
哺乳類細胞株
細胞培養及びポリペプチド発現に感受性を有する任意の哺乳類細胞または細胞型を、本発明に従って宿主細胞として利用することができる。本発明に従って使用され得る哺乳類細胞の非限定的な例として、ヒト胎児由来腎臓293細胞(HEK293)、ヒーラー細胞;BALB/cマウス骨髄腫株(NSO/l、ECACC番号85110503);ヒト網膜芽細胞(PER.C6(CruCell社、オランダ、ライデン));SV40(COS-7、ATCC CRL 1651)により形質転換されたサル腎臓CV1株;ヒト胚腎臓株(懸濁培養での増殖用にサブクローンされた293または293細胞、Graham et al.,J.Gen Virol.,36:59(1977));ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL 10);チャイニーズハムスター卵巣細胞+/-DHFR(CHO、Urlaub and Chasin,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77:4216(1980));マウスセルトリ細胞(TM4、Mather,Biol.Reprod.,23:243-251(1980));サル腎細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎細胞(VERO-76、ATCC CRL-1 587);ヒト子宮頸癌細胞(HeLa、ATCC CCL 2);イヌ腎細胞(MDCK、ATCC CCL 34);バッファローラット肝細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝細胞(Hep G2、HB 8065);マウス乳癌腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL51);TRI細胞(Mather et al.,Annals N.Y.Acad.Sci.,383:44-68(1982));MRC5細胞;FS4細胞;及びヒト肝癌株(Hep G2)が挙げられる。一部の実施形態では、好適な哺乳類細胞はエンドソーム酸性化欠損細胞ではない。
【0160】
また、ポリペプチドまたはタンパク質を発現する多数の市販された及び市販されていないハイブリドーマ細胞株を、本発明に従って利用することができる。ハイブリドーマ細胞株が至適な増殖とポリペプチドまたはタンパク質の発現とに異なる栄養要件を有する場合があり、及び/または異なる培養条件を要する場合があることを当業者は認識し、必要に応じて条件を変更することができる。
【0161】
非哺乳類細胞株
細胞培養及びポリペプチド発現に感受性を有する任意の非哺乳類由来細胞または細胞型を、本発明に従って宿主細胞として利用することができる。本発明に従って使用され得る非哺乳類宿主細胞及び細胞株の非限定的な例として、酵母については、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、メチロトローフ酵母(Pichia methanolica)、ピキア・アングスタ(Pichia angusta)、分裂酵母(Schizosacccharomyces pombe)、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)、及び子嚢菌類酵母(Yarrowia lipolytica);昆虫類については、ヨトウガ(Sodoptera frugiperda)、イラクサギンウワバ(Trichoplusis ni)、キイロショウジョウバエ(Drosophila melangoster)、及びタバコスズメガ(Manduca sexta);細菌については、大腸菌(Escherichia coli)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、枯草菌(Bacillus subtilis)、リケニホルミス菌(Bacillus lichenifonnis)、バクテロイデス・フラジリス(Bacteroides fragilis)、ウェルシュ菌(Clostridia perfringens)、ディフィシル菌(Clostridia difficile);両生類からはアフリカツメガエル(Xenopus Laevis)に由来する細胞及び細胞株が挙げられる。
【0162】
接着増殖対懸濁増殖への適合性
特定の実施形態では、宿主細胞は、細胞培養用に選択される特定の条件下での特定の好ましい特質または増殖に基づいて、細胞株生成のために選択される。こうした特質は、樹立株(すなわち、特性決定された市販の細胞株)の既知の特徴及び/もしくは形質に基づいて、または実験による評価を通して確認され得ることを当業者は認識するであろう。一部の実施形態では、細胞株は、支持細胞層で増殖する能力に関して選択され得る。一部の実施形態では、細胞株は、懸濁液で増殖する能力に関して選択され得る。一部の実施形態では、細胞株は、細胞の接着単層として増殖する能力に関して選択され得る。一部の実施形態では、こうした細胞を、任意の組織培養容器または好適な接着基質で処理された任意の容器と共に使用することができる。一部の実施形態では、好適な接着基質は、コラーゲン(例えばコラーゲンI、II、II、またはIV)、ゼラチン、フィブロネクチン、ラミニン、ビトロネクチン、フィブリノーゲン、BDマトリゲル(商標)、基底膜マトリクス、デルマタン硫酸プロテオグリカン、ポリ-D-リジン及び/またはそれらの組み合わせからなる群から選択される。一部の実施形態では、接着宿主細胞は、特定増殖条件下で選択及び修飾されて、懸濁液中で増殖することができる。接着細胞を修飾して懸濁液中で増殖させるこうした方法は、当該技術分野で既知である。例えば、増殖培地から動物血清を経時的に徐々に除去することによって、細胞を懸濁液培養で増殖するように調節することができる。
【0163】
細胞株の選択及び評価
本発明によると、rhC1-INHタンパク質を発現するように操作される細胞は、商業的に実行可能な規模でrhC1-INHタンパク質を産生する能力に関して選択される。詳細には、本発明の操作される細胞は、高レベルで及び/または高酵素活性を伴って、rhC1-INHタンパク質を産生することができる。一部の実施形態では、所望の細胞は、細胞培養条件下(例えば、標準的な大規模懸濁液または接着培養条件)で培養されると、約5ピコグラム/細胞/日以上の(例えば、約10ピコグラム、15ピコグラム、20ピコグラム、25ピコグラム、30ピコグラム、35ピコグラム、40ピコグラム、45ピコグラム、50ピコグラム、55ピコグラム、60ピコグラム、65ピコグラム、70ピコグラム、75ピコグラム、80ピコグラム、85ピコグラム、90ピコグラム、95ピコグラム、または100ピコグラム/細胞/日を超える)量で、C1-INHタンパク質を産生することができる。一部の実施形態では、所望の細胞は、細胞培養条件下(例えば、標準的な大規模懸濁液または接着培養条件)で培養されると、約5~100ピコグラム/細胞/日(例えば、約5~90ピコグラム/細胞/日、約5~80ピコグラム/細胞/日、約5~70ピコグラム/細胞/日、約5~60ピコグラム/細胞/日、約5~50ピコグラム/細胞/日、約5~40ピコグラム/細胞/日、約5~30ピコグラム/細胞/日、約10~90ピコグラム/細胞/日、約10~80ピコグラム/細胞/日、約10~70ピコグラム/細胞/日、約10~60ピコグラム/細胞/日、約10~50ピコグラム/細胞/日、約10~40ピコグラム/細胞/日、約10~30ピコグラム/細胞/日、約20~90ピコグラム/細胞/日、約20~80ピコグラム/細胞/日、約20~70ピコグラム/細胞/日、約20~60ピコグラム/細胞/日、約20~50ピコグラム/細胞/日、約20~40ピコグラム/細胞/日、約20~30ピコグラム/細胞/日)の範囲内の量でC1-INHタンパク質を産生することができる。
【0164】
細胞培養培地及び条件
種々の細胞培養培地及び条件を使用して、本発明の操作された細胞を用いてrhC1-INHタンパク質を産生することができる。例えば、rhC1-INHタンパク質を血清含有培地または無血清培地で産生することができる。一部の実施形態では、rhC1-INHタンパク質は無血清培地で産生される。一部の実施形態では、rhC1-INHタンパク質は、動物を含まない培地(すなわち動物由来の成分を含まない培地)で産生される。一部の実施形態では、rhC1-INHタンパク質は合成培地で産生される。本明細書で使用される場合、用語「合成栄養培地」は、その化学成分の実質的に全てが既知である培地を意味する。一部の実施形態では、合成栄養培地は、血清、血清由来タンパク質(例えば、アルブミンまたはフェチュイン)、及び他の成分などの動物由来成分を含まない。一部の実施形態では、合成培地は1つ以上のタンパク質(例えば、タンパク質増殖因子またはサイトカインなど)を含む。一部の実施形態では、合成栄養培地は、1つ以上のタンパク質加水分解物を含む。一部の実施形態では、合成栄養培地は、無タンパク質培地であり、すなわちタンパク質、加水分解物、または未知組成物の成分を含有しない無血清培地である。
【0165】
一部の実施形態では、合成培地には、1つ以上の動物由来の成分が追加され得る。こうした動物由来の成分として、以下に限定されないが、ウシ胎仔血清、ウマ血清、ヤギ血清、ロバ血清、ヒト血清、及びアルブミンなどの血清由来タンパク質(例えば、ウシ血清アルブミン、またはヒト血清アルブミン)が挙げられる。
【0166】
種々の細胞培養条件を使用して、回転瓶培養、バイオリアクターバッチ培養、灌流培養、及びバイオリアクター流加培養を含めるがこれらに限定されない大規模様式で、rhC1-INHタンパク質を産生することができる。一部の実施形態では、rhC1-INHタンパク質は、懸濁液で培養された細胞によって産生される。一部の実施形態では、rhC1-INHタンパク質は、接着細胞によって産生される。一部の実施形態では、灌流培養を用いて、発現タンパク質のグリコシル化を制御する。灌流培養の例示的な方法として、以下に限定されないが、例えば、米国特許第6,528,286号及びPCT公開第WO1996/039488A1号に記載された方法が挙げられ、これらの開示は参照により本明細書に援用される。
【0167】
例示的な細胞培地及び培養条件については実施例の章で説明している。後述の実施例は限定することを意図するものではない。
【0168】
培養開始
所望の細胞発現C1-INHタンパク質を、まず当業者に周知の様々な方法のうちのいずれかによって初期培養で増殖することができる。細胞の生存、増殖、及び生存率に寄与する温度及び培地で成長させることによって細胞を増殖する。初期培養容量は任意のサイズであり得るが、最終産生で用いる産生バイオリアクターの培養容量よりも小さいことが多く、細胞を数回継代して培養容量を増加させてから、産生バイオリアクターに播種するのが一般的である。細胞培養液を攪拌または振盪して、培地の酸素化と、細胞に対する栄養物の分散とを増大することができる。別の方法として、または加えて、当該技術分野で周知の専用スパージング装置を用いて、培養物の酸素化を増強及び制御することができる。
【0169】
開始時の細胞密度は、当業者によって選択され得る。本発明によると、開始時の細胞密度は、1培養容量当たり単一の細胞と同程度に少ない可能性がある。一部の実施形態では、開始時の細胞密度は、1mL当たり約1×10個の生細胞~約1×10個、約1×10個、約1×10個、約1×10個の生細胞、及びそれよりも高い密度の範囲であり得る。
【0170】
初期細胞培養物及び中間細胞培養物を任意の所望の密度まで増殖させた後、次の中間産生バイオリアクターまたは最終産生バイオリアクターに播種することができる。一部の実施形態では、産生バイオリアクターに播種する前の最終生存率は、約70%、75%、80%、85%、90%、95%、またはそれ以上である。例えば、低速遠心分離により細胞を上清から取り出すことができる。取り出された細胞を培地で洗浄してから次のバイオリアクターに播種して、不必要な代謝廃棄産物または培地成分を除去することが望ましい場合もある。培地は、細胞を予め増殖させた培地であるか、または本発明の実施者により選択された異なる培地または洗浄溶液であってもよい。
【0171】
続いて、細胞を産生バイオリアクターに播種するのに適正な密度まで希釈することができる。一部の実施形態では、産生バイオリアクターで使用されるのと同じ培地に細胞を希釈する。別の方法として、本発明の実施者の必要性や所望に応じて、または細胞自体の特定の要件(例えば、細胞が産生バイオリアクターに播種する前に短期間の間保管されるべき場合)に適応させるために、細胞を別の培地または溶液に希釈することができる。
【0172】
増殖期
典型的には、上述のように産生バイオリアクターに播種されると、細胞培養物は、細胞培養物の生存、増殖、及び生存率に寄与する条件下で初期増殖期の状態で維持される。本発明によると、産生バイオリアクターは、タンパク質の大規模産生に適切な任意の容量であり得る。後述の「バイオリアクター」についての小節を参照されたい。
【0173】
増殖期における細胞培養の温度は、主として細胞培養物が生存可能な状態である温度範囲に基づいて選択される。増殖期の温度は、単一の一定温度であるか、またはある温度範囲内で維持され得る。例えば、温度は、増殖期の間に徐々に上昇するか、または減少してもよい。一般的に、哺乳類細胞の多くは、約25℃~42℃(例えば、30℃~40℃、約30℃~37℃、約35℃~40℃)の範囲内で十分増殖する。一部の実施形態では、哺乳類細胞は、約30℃~37℃(例えば、約31℃~37℃、約32℃~37℃、約33℃~37℃、約34℃~37℃、約35℃~37℃、約36℃~37℃)の温度範囲で培養される。一部の実施形態では、哺乳類細胞は、約30℃~34℃(例えば、約31℃~34℃、約31℃~35℃、約32℃~34℃、約33℃~34℃、約33℃~35℃)の温度範囲で培養される。典型的には、増殖期の間、細胞は約28℃、約30℃、約31℃、約32℃、約33℃、約34℃、約35℃、約36℃、約37℃、約38℃、約39℃、または約40℃で増殖する。
【0174】
実施者の必要性及び細胞自体の要件に応じて、初期増殖期の間に、長い期間または短い期間の間、細胞を増殖してもよい。一実施形態では、最大生細胞密度のある所定の割合の生細胞密度を得るのに十分な期間、細胞を増殖し、該最大生細胞密度は、細胞がそのまま増殖した場合に最終的に到達する密度である。例えば、細胞は、最大生細胞密度の1パーセント、5パーセント、10パーセント、15パーセント、20パーセント、25パーセント、30パーセント、35パーセント、40パーセント、45パーセント、50パーセント、55パーセント、60パーセント、65パーセント、70パーセント、75パーセント、80パーセント、85パーセント、90パーセント、95パーセント、または99パーセントの所望の生細胞密度を得るのに十分な期間増殖され得る。
【0175】
一部の実施形態では、細胞は所定の期間増殖される。例えば、細胞培養の開始時濃度、細胞を増殖する温度、及び細胞固有の増殖速度に応じて、細胞を0日、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日、15日、16日、17日、18日、19日、20日、またはそれ以上の間、増殖することができる。一部の場合には、細胞を1か月またはそれ以上の間増殖してもよい。
【0176】
一部の実施形態では、細胞を所望の生細胞密度まで増殖させる。例えば、増殖期の終了までの所望の生細胞密度は、約1.0×10個の生細胞/mL、1.5×10個の生細胞/mL、2.0×10個の生細胞/mL、2.5×10個の生細胞/mL、5×10個の生細胞/mL、10×10個の生細胞/mL、20×10個の生細胞/mL、30×10個の生細胞/mL、40×10個の生細胞/mL、または50×10個の生細胞/mLよりも大きい。
【0177】
細胞培養液を、酸素化と細胞に対する栄養物の分散とを増大させるために、初期培養期の間に攪拌または振盪してもよい。本発明によると、初期増殖期の間に、バイオリアクターの特定の内部条件(例えばpH、温度、酸素化などであるが、これらに限定されない条件)を制御または調節することが有益である可能性があることを当業者は理解するであろう。例えば、pHは適切な量の酸または塩基を供給することによって制御され、酸素化は当該技術分野で周知のスパージング装置を用いて制御され得る。一部の実施形態では、増殖期に所望のpHは、約6.8~7.5(例えば、約6.9~7.4、約6.9~7.3、約6.95~7.3、約6.95~7.25、約7.0~7.3、約7.0~7.25、約7.0~7.2、約7.0~7.15、約7.05~7.3、約7.05~7.25、約7.05~7.15、約7.05~7.20、約7.10~7.3、約7.10~7.25、約7.10~7.20、約7.10~7.15)の範囲である。一部の実施形態では、増殖期に所望のpHは、約6.8、6.85、6.9、6.95、7.0、7.05、7.1、7.15、7.2、7.25、7.3、7.35、7.4、7.45、または7.5である。
【0178】
一部の実施形態では、増殖期所望の溶存酸素セットポイントは、約0%~70%、約5%~60%、約25%~50%、約20%~40%、約30%~60%の範囲である。一部の実施形態では、増殖期の所望の溶存酸素セットポイントは、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、または60%である。
【0179】
移行期
一部の実施形態では、細胞は産生期に入る状態になると、培養条件は、関心対象の組換えタンパク質の産生を最大化するように変えられ得る。こうした培養条件の変更は、移行期に行われるのが典型的である。一部の実施形態では、こうした変更は、温度、pH、オスモル濃度、及び培地などを含むが、これらに限定されない幾種の培養条件のうちの1つ以上の変更であり得る。一実施形態では、培養のpHを変化させる。例えば、培地のpHを増殖期から産生期に向けて増加させるか、または減少させてもよい。一部の実施形態では、このpHの変化は急速である。一部の実施形態では、pHを長期間にわたって徐々に変化させる。一部の実施形態では、pHの変化は重炭酸ナトリウムの添加によって調節される。一部の実施形態では、pHの変化は、移行期の開始時に始まり、続く産生期の間も維持される。
【0180】
一実施形態では、細胞培養培地のグルコース濃度を変化させる。この実施形態によると、移行期の開始の際、細胞培養内のグルコース濃度は7.5mMよりも高い量に調整される。
【0181】
一部の実施形態では、温度を増殖期から産生期に向けて上昇させるか、または下降させる。例えば、増殖期から産生期までに、約0.1℃、0.2℃、0.3℃、0.4℃、0.5℃、1.0℃、1.5℃、2.0℃、2.5℃、3.0℃、3.5℃、4.0℃、4.5℃、5.0℃、5.5℃、6.0℃、6.5℃、7.0℃、7.5℃、8.0℃、またはそれ以上温度を上昇させるか、または下降させてもよい。
【0182】
産生期
本発明によれば、細胞培養が移行期を伴ってまたは伴わずに所望の細胞密度及び生存率に到達すると、細胞培養は、続く産生期の間、細胞培養物の生存及び生存率に寄与しかつ商業的に十分なレベルでC1-INHタンパク質を発現させるのに適正な培養条件下で維持される。
【0183】
一部の実施形態では、産生期の間、培養は増殖期の温度または温度範囲よりも低い温度または温度範囲で維持される。例えば、産生期の間、細胞は、約25℃~35℃(例えば、約28℃~35℃、約30℃~35℃、約32℃~35℃)の範囲内でrhC1-INHタンパク質を十分に発現することができる。一部の実施形態では、産生期の間、細胞は、約25℃、約26℃、約27℃、約28℃、約29℃、約30℃、約31℃、約32℃、約33℃、約34℃、約35℃、約36℃、約37℃の温度でrhC1-INHタンパク質を十分に発現することができる。他の実施形態では、産生期の間、培養は、増殖期の温度または温度範囲よりも高い温度または温度範囲で維持される。
【0184】
加えてまたは代わりに、産生期の間、培養は増殖期のpHまたはpH範囲とは異なる(より低いまたはより高い)pHまたはpH範囲で維持される。一部の実施形態では、産生期の培地のpHは、約6.8~7.5(例えば、約6.9~7.4、約6.9~7.3、約6.95~7.3、約6.95~7.25、約7.0~7.3、約7.0~7.25、約7.0~7.2、約7.0~7.15、約7.05~7.3、約7.05~7.25、約7.05~7.15、約7.05~7.20、約7.10~7.3、約7.10~7.25、約7.10~7.20、約7.10~7.15)の範囲である。一部の実施形態では、培地のpHは、約6.8、6.85、6.9、6.95、7.0、7.05、7.1、7.15、7.2、7.25、7.3、7.35、7.4、7.45、または7.5である。
【0185】
一部の実施形態では、産生期の所望の溶存酸素セットポイントは、約0%~70%、約5%~60%、約25%~50%、約20%~40%、約30%~60%の範囲である。一部の実施形態では、産生期の所望の溶存酸素セットポイントは、約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、または60%である。
【0186】
一部の実施形態では、細胞は産生期間を通して所望の生細胞密度範囲内に維持され得る。例えば、細胞培養の産生期の間、所望の生細胞密度は、約1.0~50×10個の生細胞/mL(例えば、約1.0~40×10個の生細胞/mL、約1.0~30×10個の生細胞/mL、約1.0~20×10個の生細胞/mL、約1.0~10×10個の生細胞/mL、約1.0~5×10個の生細胞/mL、約1.0~4.5×10個の生細胞/mL、約1.0~4×10個の生細胞/mL、約1.0~3.5×10個の生細胞/mL、約1.0~3×10個の生細胞/mL、約1.0~2.5×10個の生細胞/mL、約1.0~2.0×10個の生細胞/mL、約1.0~1.5×10個の生細胞/mL、約1.5~10×10個の生細胞/mL、約1.5~5×10個の生細胞/mL、約1.5~4.5×10個の生細胞/mL、約1.5~4×10個の生細胞/mL、約1.5~3.5×10個の生細胞/mL、約1.5~3.0×10個の生細胞/mL、約1.5~2.5×10個の生細胞/mL、約1.5~2.0×10個の生細胞/mL)の範囲であり得る。
【0187】
一部の実施形態では、細胞は、最大生細胞密度の1パーセント、5パーセント、10パーセント、15パーセント、20パーセント、25パーセント、30パーセント、35パーセント、40パーセント、45パーセント、50パーセント、55パーセント、60パーセント、65パーセント、70パーセント、75パーセント、80パーセント、85パーセント、90パーセント、95パーセント、または99パーセントの生細胞密度を得るのに十分な期間維持され得る。生細胞密度を最大値に到達させることが望ましい場合がある。一部の実施形態では、生細胞密度を最大値に到達させた後に、生細胞密度をあるレベルまで減少させてから培養を収穫することが望ましい場合がある。一部の実施形態では、産生期の終了時の全生存率は、約90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、10%、5%未満である。
【0188】
一部の実施形態では、産生期の間に、細胞をある所定の期間の間増殖させる。例えば、次の増殖期開始時の細胞培養物の濃度、細胞を増殖する温度、細胞固有の増殖速度に応じて、細胞を約5~90日間(例えば、約5~80日間、約5~70日間、約5~60日間、約5~50日間、約5~40日間、約5~30日間、約5~20日間、約5~15日間、約5~10日間、約10~90日間、約10~80日間、約10~70日間、約10~60日間、約10~50日間、約10~40日間、約10~30日間、約10~20日間、約15~90日間、約15~80日間、約15~70日間、約15~60日間、約15~50日間、約15~40日間、約15~30日間)増殖することができる。一部の実施形態では、産生期を、約5日、10日、15日、20日、25日、30日、35日、40日、45日、50日、55日、60日、65日、70日、75日、80日、85日、または90日の間続ける。
【0189】
一部の実施形態では、rhC1-INHタンパク質に対する力価が最大値に達するまで細胞を産生期に維持する。他の実施形態では、この時点になる前に、培養物を収穫することができる。例えば、一部の実施形態では、rhC1-INHタンパク質に対する力価が所望の力価に達するまで細胞を産生期に維持する。したがって、rhC1-INHタンパク質に対する所望の平均収穫力価は、1日につき1リットル当たり少なくとも6mg(mg/L/日)(例えば、少なくとも8mg、10mg、12mg、14mg、16mg、18mg、20mg、25mg、30mg、35mg、40mg、45mg、50mg、55mg、60mg、65mg、70mg、75mg、80mg、85mg、90mg、95mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、350mg、400mg、450mg、または500mg/L/日、またはそれ以上)の値となり得る。一部の実施形態では、rhC1-INHタンパク質に対する所望の平均収穫力価は、約6~500mg/L/日(例えば、約6~400mg/L/日、約6~300mg/L/日、約6~200mg/L/日、約6~100mg/L/日、約6~90mg/L/日、約6~80mg/L/日、約6~70mg/L/日、約6~60mg/L/日、約6~50mg/L/日、約6~40mg/L/日、約6~30mg/L/日、約10~500mg/L/日、約10~400mg/L/日、約10~300mg/L/日、約10~200mg/L/日、約10~100mg/L/日、約10~90mg/L/日、約10~80mg/L/日、約10~70mg/L/日、約10~60mg/L/日、約10~50mg/L/日、約10~40mg/L/日、約10~30mg/L/日、約20~500mg/L/日、約20~400mg/L/日、約20~300mg/L/日、約20~200mg/L/日、約20~100mg/L/日、約20~90mg/L/日、約20~80mg/L/日、約20~70mg/L/日、約20~60mg/L/日、約20~50mg/L/日、約20-40mg/L/日、約20~30mg/L/日)の範囲であり得る。
一部の実施形態では、産生期の間に、細胞培養液に栄養物か、または細胞により枯渇または代謝された他の培地成分を補充することが有益であるか、または必要になり得る。例えば、細胞培養液に栄養物か、または細胞培養の間に枯渇されたと見られる他の培地成分を補充することは有利である可能性がある。別の方法として、または加えて、産生期に先立って細胞培養液に補充することが有益であるか、または必要になり得る。非限定的な例として、酸化還元調節因子、増殖調節因子(例えば、ホルモン及び/または他の増殖因子)、グリコシル化調節因子、特定イオン類(例えばナトリウム、塩化物、カルシウム、マグネシウム、マンガン、リン酸塩)、緩衝液、ビタミン、ヌクレオシドもしくはヌクレオチド、微量元素(通例、極めて低最終濃度で存在する無機化合物)、アミノ酸、脂質、ペプトン、酵母抽出物、植物加水分解物、大豆加水分解物、血清、脂質補助剤、ヌクレオチド糖、ヌクレオチド糖前駆体、アンモニア、グルコサミン、ウリジン、シアル酸前駆体、N-アセチルマンノサミン、グルコース、ガラクトース、アミノ酸(例えば、グルタミン、システイン、イソロイシン、ロイシン、トリプトファン、バリン、アスパラギン、アスパラギン酸、グルタミン酸)、糖(例えば、グルコース、ガラクトース、シアル酸)、またはエネルギー源を、細胞培養液に補充することが有益であるか、または必要になり得る。
【0190】
これらの補充成分を全て一度に細胞培養液に加えてもよく、またはそれらを一連の添加によって細胞培養液に供給してもよい。一部の実施形態では、補充成分は、比例した量で細胞培養液に複数回供給される。他の実施形態では、細胞培養液にこれらの補充成分を連続的に供給する。典型的には、このプロセスは灌流として知られ、灌流に関わる細胞培養は「灌流培養」として知られている。本明細書で使用される場合、用語「灌流培養」は、培養プロセスの開始後に、追加の成分が培養液に連続的または半連続的に供給される細胞培養方法を意味する。培地中の細胞及び/または成分の一部は、通常、連続方式または半連続方式で収穫され、任意選択的に精製される。
【0191】
一部の実施形態では、培地は、産生期の間に灌流プロセスにより連続的に交換される。一般的には、1日当たりのリアクター稼働容量に対する新鮮培地の容量(VVD)は、灌流速度として定義される。様々な灌流速度を本発明に従って用いることができる。一部の実施形態では、灌流プロセスは、細胞培養液に加えられる全容量が最小量に保たれるような灌流速度を有する。一部の実施形態では、灌流プロセスは、0.5~2の新鮮培地容量/リアクター稼働容量/日(VVD)(例えば、約0.5~1.5VVD、約0.75~1.5VVD、約0.75~1.25VVD、約1.0~2.0VVD、約1.0~1.9VVD、約1.0~1.8VVD、約1.0~1.7VVD、約1.0~1.6VVD、約1.0~1.5VVD、約1.0~1.4VVD、約1.0~1.3VVD、約1.0~1.2VVD、約1.0~1.1VVD)の範囲の灌流速度を有する。一部の実施形態では、灌流プロセスは、約0.5VVD、0.55VVD、0.6VVD、0.65VVD、0.7VVD、0.75VVD、0.8VVD、0.85VVD、0.9VVD、0.95VVD、1.0VVD、1.05VVD、1.10VVD、1.15VVD、1.2VVD、1.25VVD、1.3VVD、1.35VVD、1.4VVD、1.45VVD、1.5VVD、1.55VVD、1.6VVD、1.65VVD、1.7VVD、1.75VVD、1.8VVD、1.85VVD、1.9VVD、1.95VVD、または2.0VVDの灌流速度を有する。
【0192】
灌流プロセスはまた、1日につき1個の細胞当たりに加えられる新鮮培地の容量(細胞特異的な灌流速度として定義される)によっても特徴付けられ得る。様々な細胞特異的な灌流速度が用いられ得る。一部の実施形態では、灌流プロセスは、1日につき1個の細胞当たり約0.05~5ナノリットル(nL/細胞/日)(例えば、約0.05~4nL/細胞/日、約0.05~3nL/細胞/日、約0.05~2nL/細胞/日、約0.05~1nL/細胞/日、約0.1~5nL/細胞/日、約0.1~4nL/細胞/日、約0.1~3nL/細胞/日、約0.1~2nL/細胞/日、約0.1~1nL/細胞/日、約0.15~5nL/細胞/日、約0.15~4nL/細胞/日、約0.15~3nL/細胞/日、約0.15~2nL/細胞/日、約0.15~1nL/細胞/日、約0.2~5nL/細胞/日、約0.2~4nL/細胞/日、約0.2~3nL/細胞/日、約0.2~2nL/細胞/日、約0.2~1nL/細胞/日、約0.25~5nL/細胞/日、約0.25~4nL/細胞/日、約0.25~3nL/細胞/日、約0.25~2nL/細胞/日、約0.25~1nL/細胞/日、約0.3~5nL/細胞/日、約0.3~4nL/細胞/日、約0.3~3nL/細胞/日、約0.3~2nL/細胞/日、約0.3~1nL/細胞/日、約0.35~5nL/細胞/日、約0.35~4nL/細胞/日、約0.35~3nL/細胞/日、約0.35~2nL/細胞/日、約0.35~1nL/細胞/日、約0.4~5nL/細胞/日、約0.4~4nL/細胞/日、約0.4~3nL/細胞/日、約0.4~2nL/細胞/日、約0.4~1nL/細胞/日、約0.45~5nL/細胞/日、約0.45~4nL/細胞/日、約0.45~3nL/細胞/日、約0.45~2nL/細胞/日、約0.45~1nL/細胞/日、約0.5~5nL/細胞/日、約0.5~4nL/細胞/日、約0.5~3nL/細胞/日、約0.5~2nL/細胞/日、約0.5~1nL/細胞/日)の範囲の細胞特異的な灌流速度を有する。一部の実施形態では、灌流プロセスは、約0.05nL、0.1nL、0.15nL、0.2nL、0.25nL、0.3nL、0.35nL、0.4nL、0.45nL、0.5nL、0.55nL、0.6nL、0.65nL、0.7nL、0.75nL、0.8nL、0.85nL、0.9nL、0.95nL、1.0nL、1.1nL、1.2nL、1.3nL、1.4nL、1.5nL、1.6nL、1.7nL、1.8nL、1.9nL、2.0nL、2.1nL、2.2nL、2.3nL、2.4nL、2.5nL、2.6nL、2.7nL、2.8nL、2.9nL、3.0nL、3.1nL、3.2nL、3.3nL、3.4nL、3.5nL、3.6nL、3.7nL、3.8nL、3.9nL、4.0nL、4.1nL、4.2nL、4.3nL、4.4nL、4.5nL、4.6nL、4.7nL、4.8nL、4.9nL、または5.0nL/細胞/日の細胞特異的な灌流速度を有する。
【0193】
細胞培養液を、酸素化と細胞に対する栄養物の分散とを増大させるために、産生期の間に攪拌または振盪してもよい。本発明によると、増殖期の間に、バイオリアクターの特定の内部条件(例えばpH、温度、酸素化などであるが、これらに限定されない条件)を制御または調節することが有益である可能性があることを当業者は理解するであろう。例えば、pHは適切な量の酸または塩基を供給することによって制御され、酸素化は当該技術分野で周知のスパージング装置を用いて制御され得る。1つ以上の消泡剤も供給され得る。
【0194】
同一の培養培地を、増殖期、産生期、及び灌流を含めた産生プロセスを通して使用することができる。一部の実施形態では、少なくとも2つの異なる培地をrhC1-INHの産生に使用する。例えば、細胞増殖用に調製された栄養培地を使用して細胞増殖期にわたって細胞の増殖を補助することが多く、また、タンパク質産生用に調製された栄養培地をプロセスの産生期の間に使用してC1-INHの発現及び収穫を補助する。いずれの場合にも、栄養培地は、血清または他の動物由来成分(例えば、フェチュイン)を含んでいても、含んでいなくてもよい。
【0195】
本発明によると、細胞を懸濁液で増殖するのが典型的である。しかしながら、細胞を基体に付着させる場合がある。一例では、細胞を、栄養培地に懸濁したマイクロビーズまたは粒子に付着させる場合がある。
【0196】
バイオリアクター
本発明は、rhC1-INHを産生するのに有用なバイオリアクターも提供する。バイオリアクターは、例えば、灌流型、バッチ型、流加培養型、反復バッチ型、または連続型(例えば、連続攪拌槽リアクターモデル)であり得る。バイオリアクターは、培地(例えば、合成栄養培地)を収容するように設計及び構成されたされた少なくとも1つの容器を含むのが一般的である。容器は、新鮮栄養培地を容器に流し入れるように設計及び構成された少なくとも1つの導入口を含むのが一般的である。容器はまた、廃棄培地を容器から流し出すように設計及び構成された少なくとも1つの排出口を含むのが一般的である。一部の実施形態では、容器は、容器内の単離された細胞が少なくとも1つの排出口から廃棄培地と共に排出される程度を最小化するように設計及び構成された、少なくとも1つのフィルタをさらに含んでもよい。バイオリアクターは、細胞増殖に適した条件を維持するように設計された1つ以上の他の構成要素を備えていてもよい。例えば、バイオリアクターは、栄養培地を容器内で循環または混合させるように設計及び構成された1つ以上の循環装置または混合装置を備えていてもよい。典型的には、rhC1-INHを発現するように操作された単離された細胞は、栄養培地に懸濁される。したがって、ある場合には、循環装置は、単離された細胞が確実に栄養培地中に懸濁されたままになるようにする。細胞を基体に付着させる場合がある。細胞を、栄養培地に懸濁された1つ以上の基体(例えば、マイクロビーズ)に付着させる場合がある。バイオリアクターは、容器から細胞懸濁液の試料を得るための1つ以上のポートを含んでもよい。バイオリアクターは、ガス(例えば、空気、酸素、窒素、二酸化炭素)含有量、流量、温度、pH、溶存酸素レベル、及び攪拌速度/循環速度などの条件を含めた培養条件を、モニタリング及び/または制御するための1つ以上の構成要素を伴って構成されていてもよい。
【0197】
任意の適正なサイズの容器をバイオリアクターで使用することができる。容器サイズは、rhC1-INH製造の生産需要を満たすのに適したサイズであるのが一般的である。一部の実施形態では、容器は栄養培地の最大1L、最大10L、最大100L、最大500L、最大1000L、最大1500L、最大2000L、またはそれ以上の量まで含有するように設計及び構成されている。一部の実施形態では、産生バイオリアクターの容量は、少なくとも10L、少なくとも50L、100L、少なくとも200L、少なくとも250L、少なくとも500L、少なくとも1000L、少なくとも1500L、少なくとも2000L、少なくとも2500L、少なくとも5000L、少なくとも8000L、少なくとも10,000L、少なくとも12,000L、少なくとも15,000L、もしくは少なくとも20,000L、もしくはそれ以上であるか、またはそれらの間の任意の容量である。産生バイオリアクターは、産生C1-INHタンパク質の発現または安定性もしくは活性を妨げることのない、細胞増殖及び生存率に寄与する任意の材料で構成されていてもよい。材料の例として、以下に限定されないが、ガラス、プラスチック、または金属が挙げられ得る。
【0198】
一部の実施形態では、バイオリアクターの容器に収容された合成培地で細胞を培養することができる。培養方法には、新鮮栄養培地を少なくとも1つの導入口を介して容器内に灌流することと、廃棄栄養培地を少なくとも1つの排出口を介して容器から排出することとが含まれることが多い。排出は、最大1日当たり約0.1容器容量、1日当たり約0.2容器容量、1日当たり約0.3容器容量、1日当たり約0.4容器容量、1日当たり約0.5容器容量、1日当たり約1容器容量、1日当たり約1.5容器容量、またはそれ以上の容器容量までの速度で行われる。方法には、rhC1-INHを含む栄養培地を収穫することも含まれる。収穫は、最大1日当たり約0.1容器容量、1日当たり約0.2容器容量、1日当たり約0.3容器容量、1日当たり約0.4容器容量、1日当たり約0.5容器容量、1日当たり約1容器容量、1日当たり約1.5容器容量、またはそれ以上の容器容量までの速度で行われ得る。灌流も排出速度と収穫速度との合計と同等の速度で行われるのが典型的である。例えば、灌流速度は、1日当たり約0.1容器容量、0.2容器容量、0.3容器容量、0.4容器容量、0.5容器容量、0.6容器容量、0.7容器容量、0.8容器容量、0.9容器容量、1.0容器容量、1.1容器容量、1.2容器容量、1.3容器容量、1.4容器容量、1.5容器容量、1.6容器容量、1.7容器容量、1.8容器容量、1.9容器容量、2.0容器容量を超えてもよい。一部の実施形態では、灌流速度は、1日当たり約5.0容器容量、4.5容器容量、4.0容器容量、3.5容器容量、3.0容器容量、2.5容器容量、2.0容器容量、1.5容器容量、1.4容器容量、1.3容器容量、1.2容器容量、1.1容器容量、1.0容器容量、0.9容器容量、0.8容器容量、0.7容器容量、0.6容器容量、0.5容器容量未満である。灌流速度の例は、本明細書を通して記載されている。
【0199】
培養条件のモニタリング
本発明の特定の実施形態では、実施者が、増殖細胞培養液の特定の条件を定期的にモニタリングすることが有益であるかまたは必要であると認識する場合がある。細胞培養条件をモニタリングすることにより、実施者は、細胞培養が組換えポリペプチドもしくはタンパク質を準最適なレベルで産生しているかどうか、または培養が準最適な産生期に入ろうとしているのかどうかを判定できるようになる。特定の細胞培養条件をモニタリングするために、分析用に培養液の少量アリコートを採取する必要がある。
【0200】
非限定的な例として、温度、pH、細胞密度、細胞生存率、積算生細胞密度、オスモル濃度、または発現C1-INHタンパク質の力価もしくは活性をモニタリングすることが有益であるかまたは必要である場合がある。当業者がこれらの条件を測定できるようにする数多くの技術が当該技術分野で周知である。例えば、細胞密度は、血球計数器、コールターカウンター、または細胞密度試験(CEDEX)を用いて測定され得る。生細胞密度は、培養試料をトリパンブルーで染色することにより測定することができる。死細胞のみがトリパンブルーを吸収するため、生細胞密度は、細胞の総数を数え、染料を吸収した細胞の数をその細胞の総数で除算し、その反数を取ることによって算出され得る。別の方法として、発現C1-INHタンパク質のレベルを、SDS-PAGEゲルのクーマシー染色、ウエスタンブロット法、ブラッドフォードアッセイ、ローリーアッセイ、ビウレットアッセイ、及びUV吸光度法などの標準的な分子生物学的技法により測定することができる。リン酸化及びグリコシル化を含めた発現C1-INHタンパク質の翻訳後修飾をモニタリングすることも有益であるかまたは必要である場合がある。
【0201】
例示的な細胞培地及び培養条件については実施例の章で説明している。後述の実施例は限定することを意図するものではない。
【0202】
発現C1-INHタンパク質の精製
様々な方法を用いて、本明細書に記載の種々の方法によって産生されたC1-INHタンパク質を精製または単離することができる。一部の実施形態では、発現C1-INHタンパク質は培地中に分泌されるため、精製プロセスの第1の工程として、例えば遠心分離または濾過によって細胞及び他の固形物を除去することができる。別の方法として、または加えて、発現C1-INHタンパク質は宿主細胞の表面に結合している。一部の実施形態では、ポリペプチドまたはタンパク質を発現する宿主細胞を精製用に溶解する。哺乳類宿主細胞の溶解は、ガラスビーズによる物理的破壊及び高pH条件への曝露を含めた当業者に周知の多くの手段によって成し遂げることができる。
【0203】
C1-INHタンパク質は、以下に限定されないが、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、アフィニティ、サイズ排除、及びヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー)、ゲル濾過、遠心分離、もしくは溶解度差法、エタノール沈殿を含めた標準方法により、またはタンパク質の精製に使用可能な任意の他の技術(例えば、Scopes,Protein Purification Principles and Practice 2nd Edition,Springer-Verlag,New York,1987;Higgins,S.J.and Hames,B.D.(eds.),Protein Expression:A Practical Approach,Oxford Univ Press,1999;and Deutscher,M.P.,Simon,M.I.,Abelson,J.N.(eds.),Guide to Protein Purification:Methods in Enzymology(Methods in Enzymology Series,Vol 182),Academic Press,1997を参照されたく、これら全ての文献は参照により本明細書に援用される)により、単離かつ精製され得る。特に、免疫アフィニティクロマトグラフィーに関しては、タンパク質を、該タンパク質に対して産生され、かつ固定担体に固定された抗体を含むアフィニティカラムに結合することによって単離することができる。別の方法では、例えば、インフルエンザコート配列、ポリヒスチジン、またはグルタチオン-S-トランスフェラーゼなどのアフィニティタグを標準的な組換え技法によってタンパク質に付着させて、適正なアフィニティカラムを通過させることで簡易的な精製を可能にすることができる。精製プロセス中のポリペプチドまたはタンパク質の分解を低減または排除するために、フッ化フェニルメチルスルホニル(PMSF)、ロイペプチン、ペプスタチン、またはアプロチニンなどのプロテアーゼインヒビターを、任意の段階または全ての段階で添加することができる。プロテアーゼインヒビターは、発現ポリペプチドまたはタンパク質を単離かつ精製するために、細胞を溶解しなければならない場合に特に所望される。
【0204】
C1-INHタンパク質の精製に関連する問題を回避する精製方法の例が、後述の実施例の節で説明される。精製用の好適な樹脂には、以下に限定されないが、陰イオン交換樹脂、アルブミンアフィニティ樹脂、C1エステラーゼインヒビターアフィニティ樹脂、及びタンパク質A樹脂が含まれる。一部の実施形態では、pHの低減を要さない精製方法が好ましい。一部の実施形態では、溶出のために酸性pHを要さない精製方法が好ましい。他の実施形態では、凝集を防止する安定剤が利用される。一部の実施形態では、凝集を防止する安定剤がpHの低減を要する方法で使用される。好適な安定剤の非限定的な例としてEDTAが挙げられる。
【0205】
本発明のC1-INHタンパク質の好適な精製方法として、以下に限定されないが、例えば米国特許第5,276,141号、同第7384754号、同第8,802,816号、PCT公開第WO2012107572号、同第WO2013009526号に記載された方法が挙げられ、これらの開示は参照により本明細書に援用される。
【0206】
混入物の低減
本開示はまた、下流プロセスにおいて非標的タンパク質混入物または不純物を低減する方法を提供する。一実施形態では、下流プロセスは、rhC1-INHのプロセスである。非標的タンパク質混入物として、例えば、混入DNA、RNA、宿主細胞由来タンパク質(HCP)、及び/もしくはウイルス、ならびに/または標的タンパク質ではない任意の他の物質が含まれる。一実施形態では、非標的タンパク質混入物を、rhC1-INH下流プロセスに追加の精製工程を導入することによって低減する。追加の精製工程を伴わないrhC1-INHの1つの下流プロセスの例を図14に示す。
【0207】
下流プロセスの任意の段階で、DNA、HCP、及び/またはウイルスの混入物を低減させることができる。一実施形態では、陰イオン交換(AEX)膜吸収体を使用して混入物を低減させる。AEX膜吸収体の例として、Sartobind Q、Sartobind STIC、及び/またはNatrixが挙げられ得る。一実施形態では、DNA及び/または宿主細胞由来タンパク質の混入物を、図14に示したPOROS XS精製工程の後にAEX膜工程を導入することよって低減させる。一実施形態では、DNA、宿主細胞由来タンパク質、及び/またはウイルスの混入物を、図14に示した下流プロセスにおいて、POROS XS精製工程の後にSartobind Q膜吸収体を導入することによって低減させる。一実施形態では、DNA混入物を、図14に示した下流プロセスにおいて、POROS XS精製工程の後にSartobind Q膜吸収体を導入することによって低減させる。一実施形態では、宿主細胞由来タンパク質混入物を、図14に示した下流プロセスにおいて、POROS XS精製工程の後にSartobind Q膜吸収体を導入することによって低減させる。一実施形態では、DNA混入物を、図14に示した下流プロセスにおいて、POROS XS精製工程の後にSartobind STIC膜吸収体を導入することによって低減させる。一実施形態では、宿主細胞由来タンパク質混入物を、図14に示した下流プロセスにおいて、POROS XS精製工程の後にSartobind STIC膜吸収体を導入することによって低減させる。
【0208】
追加の混入物精製工程を導入することにより、rhC1-INHの収率及び純度が影響を受け得る。一実施形態では、rhC1-INHの収率及び純度は、Sartobind QのAEX膜を使用することにより、Sartobind STIC膜またはNatrix膜の使用と比べて増加する。一実施形態では、rhC1-INHの収率及び純度は、POROS XS下流プロセス段階の後にSartobind QのAEX膜を使用することにより増加する。
【0209】
混入物は、AEX膜精製工程の間にpH及び/または導電率パラメータを操作することによって、さらに減少することができる。例えば、約5mS/cmまで導電率を下げることにより、混入DNA、HCP、及び/またはウイルスなどの混入物がさらに減少する。一実施形態では、混入物は、約0.5~20mS/cmの導電率を有することにより、さらに減少する。例えば、導電率は、約0.5mS/cm、1.0mS/cm、1.5mS/cm、2.0mS/cm、2.5mS/cm、3.0mS/cm、3.5mS/cm、4.0mS/cm、4.5mS/cm、5.0mS/cm、5.5mS/cm、6.0mS/cm、6.5mS/cm、7.0mS/cm、7.5mS/cm、8.0mS/cm、8.5mS/cm、9.0mS/cm、9.5mS/cm、10.0mS/cm、10.5mS/cm、11.0mS/cm、11.5mS/cm、12.0mS/cm、12.5mS/cm、13.0mS/cm、13.5mS/cm、14.0mS/cm、14.5mS/cm、15.0mS/cm、15.5mS/cm、16.0mS/cm、16.5mS/cm、17.0mS/cm、17.5mS/cm、18.0mS/cm、18.5mS/cm、19.0mS/cm、19.5mS/cm、もしくは20mS/cm、またはその間の任意の数であり得る。一実施形態では、混入物は、約0.5~8mS/cmの導電率を有することにより、さらに減少する。例えば、導電率は、約0.5mS/cm、1.0mS/cm、1.5mS/cm、2.0mS/cm、2.5mS/cm、3.0mS/cm、3.5mS/cm、4.0mS/cm、4.5mS/cm、5.0mS/cm、5.5mS/cm、6.0mS/cm、6.5mS/cm、7.0mS/cm、7.5mS/cm、もしくは8.0mS/cm、またはその間の任意の数であり得る。一実施形態では、混入物は、約3.0~6.0mS/cmの導電率を有することにより、さらに減少する。例えば、導電率は、約3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、またはその間の任意の数であり得る。
【0210】
一実施形態では、混入物は、AEX膜精製工程で約5.0~9.0のpHを有することにより、さらに減少する。例えば、pHは、約5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、または9.0であり得る。一実施形態では、混入物は、約5.0~7.5のpHを有することにより、さらに減少する。例えば、pHは、約5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、または7.5であり得る。
【0211】
医薬組成物
本発明は、本明細書に記載のrhC1-INHタンパク質と生理学的に許容される担体または賦形剤とを含有する医薬組成物をさらに提供する。担体及びrhC1-INHタンパク質は、無菌であり得る。製剤は、投与様式に適したものであるべきである。
【0212】
好適な薬学的に許容される担体として、以下に限定されないが、水、塩溶液(例えば、NaCl)、食塩水、緩衝食塩水、アルコール、グリセロール、エタノール、アラビアゴム、植物油、ベンジルアルコール、ポリエチレングリコール、ゼラチン、炭水化物(ラクトース、アミロース、またはデンプンなど)、糖(マンニトール、スクロース、またはその他など)、デキストロース、ステアリン酸マグネシウム、タルク、珪酸、粘性パラフィン、香油、脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドンなど、及びこれらの組み合わせが挙げられる。医薬製剤は、所望に応じて、活性化合物と有害な反応を起こさないか、またはそれらの活性を妨げない助剤(例えば、潤滑剤、防腐剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧に影響を及ぼす塩類、緩衝剤、着色料、香味料、及び/または芳香剤など)と混合され得る。好ましい実施形態では、静脈内投与に適した水溶性担体が用いられる。
【0213】
所望に応じて、好適な医薬組成物または薬剤は、少量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝剤を含むこともできる。組成物は、溶液、懸濁液、乳濁液、錠剤、丸剤、カプセル剤、徐放性製剤、または粉末であり得る。組成物はまた、従来の結合剤及び担体(トリグリセリドなど)を用いて座薬としても製剤化され得る。経口製剤は、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウムなどの標準的な担体を含み得る。
【0214】
医薬組成物または薬剤は、ヒトに対する投与に適した医薬組成物として、慣行的な手順に従って製剤化され得る。例えば、一部の実施形態では、静脈内投与用の組成物は、無菌等張水性緩衝溶液であるのが典型的である。必要に応じて、組成物はまた、可溶化剤、及び注射部位の痛みを軽減するための局所麻酔薬を含んでもよい。一般的に、成分は、例えば凍結乾燥粉末または無水濃縮物として、活性作用剤の量を提示するアンプルまたはサシェ(sachette)などの密封容器に、別々に、または単位剤形の形態で混合されて供給される。組成物を注入によって投与しようとする場合、無菌医薬品グレードの水、食塩水、またはデキストロース/水を含有する注入瓶を用いて調剤することができる。組成物を注射によって投与する場合、注射用の無菌水か、または食塩水のアンプルを供給することができ、投与に先立って成分を混合できるようにする。
【0215】
本明細書に記載のrhC1-INHタンパク質は、中性形態または塩形態として製剤化され得る。薬学的に許容される塩として、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸、その他の由来の塩などの遊離アミノ基で形成される塩、及びナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、水酸化鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカイン、その他の由来の塩などの遊離カルボキシル基で形成される塩が挙げられる。
【0216】
好ましい製剤は、50mMのNaPO4(pH7.2)と、50mMのソルビトールと、150mMのグリシンとを含む。一部の実施形態では、製剤は、約50mMのNaPO4(pH7.2)と、約50mMのソルビトールと、約150mMのグリシンとを含む。例えば、一部の実施形態では、製剤は、約20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、45mM、50mM、55mM、60mM、65mM、70mM、75mM、または80mMのNaPO4(pH7.2)を含み、NaPO4のpHは、約6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、または8.0であり、ソルビトール濃度は、約20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、45mM、50mM、55mM、60mM、65mM、70mM、75mM、または80mMであり、グリシン濃度は、約75mM、80mM、85mM、90mM、95mM、100mM、105mM、110mM、115mM、120mM、125mM、130mM、135mM、140mM、145mM、150mM、155mM、160mM、165mM、170mM、175mM、180mM、190mM、195mM、または200mMである。
【0217】
別の好ましい製剤は、150mMのグリシンと、50mMのソルビトールと、50mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.1)との中に70mg/mLのrhC1-INHを含む。一部の実施形態では、製剤は、約150mMのグリシンと、約50mMのソルビトールと、約50mMのリン酸ナトリウム緩衝液(約pH7.1)との中に約70mg/mLのrhC1-INHを含む。例えば、一部の実施形態では、rhC1-INH濃度は、約45mg/mL、50mg/mL、55mg/mL、60mg/mL、65mg/mL、70mg/mL、75mg/mL、80mg/mL、85mg/mL、90mg/mL、95mg/mL、または100mg/mLであり、グリシン濃度は、約75mM、80mM、85mM、90mM、95mM、100mM、105mM、110mM、115mM、120mM、125mM、130mM、135mM、140mM、145mM、150mM、155mM、160mM、165mM、170mM、175mM、180mM、190mM、195mM、または200mMであり、ソルビトール濃度は、約20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、45mM、50mM、55mM、60mM、65mM、70mM、75mM、または80mMであり、リン酸ナトリウム緩衝液は、約20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、45mM、50mM、55mM、60mM、65mM、70mM、75mM、または80mMであり、リン酸ナトリウム緩衝液のpHは、約6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、または8.0である。
【0218】
別の好ましい製剤は、150mMのグリシンと、50mMのソルビトールと、150mMのアルギニンHClと、50mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.1)との中にrhC1-INHを含む。一態様では、製剤は2℃~8℃、及び25℃で安定性を増している。一部の実施形態では、製剤は、約150mMのグリシンと、約50mMのソルビトールと、約150mMのアルギニンHClと、約50mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.1)との中にrhC1-INHを含む。例えば、一部の実施形態では、製剤は、約45mg/mL、50mg/mL、55mg/mL、60mg/mL、65mg/mL、70mg/mL、75mg/mL、80mg/mL、85mg/mL、90mg/mL、95mg/mL、または100mg/mLの濃度でrhC1-INHを含み、グリシン濃度は、約75mM、80mM、85mM、90mM、95mM、100mM、105mM、110mM、115mM、120mM、125mM、130mM、135mM、140mM、145mM、150mM、155mM、160mM、165mM、170mM、175mM、180mM、190mM、195mM、または200mMであり、ソルビトール濃度は、約20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、45mM、50mM、55mM、60mM、65mM、70mM、75mM、または80mMであり、アルギニンHCl濃度は、約75mM、80mM、85mM、90mM、95mM、100mM、105mM、110mM、115mM、120mM、125mM、130mM、135mM、140mM、145mM、150mM、155mM、160mM、165mM、170mM、175mM、180mM、190mM、195mM、または200mMであり、リン酸ナトリウム濃度は、約20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、45mM、50mM、55mM、60mM、65mM、70mM、75mM、または80mMであり、リン酸ナトリウム緩衝液のpHは、約6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、または8.0である。
【0219】
製剤は液体であってもよく、または凍結乾燥され、投与前に元に戻されてもよい。
【0220】
投与経路
本明細書に記載のrhC1-INHタンパク質(または本明細書に記載のrhC1-INHタンパク質を含有する組成物または薬剤)は、任意の適正な経路により投与される。一部の実施形態では、rhC1-INHタンパク質またはそれを含有する医薬組成物は、全身に投与される。全身投与は、静脈内、皮内、頭蓋内、鞘内、吸入、経皮(局所的)、眼内、筋肉内、皮下、筋肉内、経口、及び/または経粘膜的投与であり得る。一部の実施形態では、rhC1-INHタンパク質またはそれを含有する医薬組成物は、皮下に投与される。本明細書で使用される場合、用語「皮下組織」は、皮膚直下の疎性不規則性結合組織の層として定義される。例えば、皮下投与は、組成物を、以下に限定されないが、大腿部、腹部、殿部、または肩甲部を含めた領域に注射することによって行われ得る。一部の実施形態では、rhC1-INHタンパク質またはそれを含有する医薬組成物は、静脈内に投与される。一部の実施形態では、rhC1-INHタンパク質またはそれを含有する医薬組成物は、経口投与される。一部の実施形態では、rhC1-INHタンパク質またはそれを含有する医薬組成物は、頭蓋内に投与される。一部の実施形態では、rhC1-INHタンパク質またはそれを含有する医薬組成物は、鞘内に投与される。所望の場合には、2つ以上の経路を同時に用いることができる。
【0221】
一部の実施形態では、rhC1-INHタンパク質またはそれを含有する医薬組成物は、鞘内投与により対象に投与される。本明細書で使用される場合、「鞘内投与」または「鞘内注射」という用語は、脊椎管(脊髄周囲の鞘内空間)に注射することを意味する。穿頭孔穿刺または大槽穿刺または腰椎穿刺などを介した脳室内注射を含めるが、これに限定されない種々の技法を用いることができる。一部の実施形態では、本発明による「鞘内投与」または「鞘内送達」は、腰部または腰部領域を介したIT投与または送達(すなわち腰部IT投与または送達)を意味する。本明細書で使用される場合、「腰部領域」または「腰部」という用語は、第3腰椎と第4腰椎(腰背部)との間の領域、より包括的には、脊椎のL2-S1領域を意味する。
【0222】
一部の実施形態では、rhC1-INHタンパク質またはそれを含有する医薬組成物は、皮下(すなわち皮膚下)投与により対象に投与される。かかる目的に対して、シリンジを用いて製剤を注射してもよい。しかしながら、注射デバイス(例えば、Inject-ease(商標)デバイス及びGenject(商標)デバイス)、注射ペン(GenPen(商標)など)、無針デバイス(例えば、MediJector(商標)及びBioJector(商標))、ならびに皮下パッチ送達系といった製剤投与用の他のデバイスが使用可能である。
【0223】
一部の実施形態では、鞘内投与は、他の投与経路(例えば、静脈内、皮下、筋肉内、非経口、経皮または経粘膜(例えば、経口または経鼻))と併用して使用され得る。
【0224】
本発明は、本明細書に記載のrhC1-INHタンパク質またはそれを含有する医薬組成物の治療有効量の単回投与及び複数回投与を企図している。rhC1-INHタンパク質またはそれを含有する医薬組成物は、対象の症状(例えば、遺伝性血管性浮腫)の性質、重症度、及び程度に応じて規則的な間隔で投与され得る。一部の実施形態では、rhC1-INHタンパク質またはそれを含有する医薬組成物の治療有効量を、規則的な間隔で(例えば、年に1回、6か月に1回、5か月に1回、3か月に1回、隔月(2か月に1回)、毎月(毎月1回)、隔週(2週間に1回)、毎週、毎日、または連続して)、周期的に投与することができる。
【0225】
一部の実施形態では、投与により個体において単に局所的効果を得るだけであるが、他の実施形態では、投与により個体の複数の部位にわたる効果(例えば、全身効果)を得る。投与の結果、通例、rhC1-INHタンパク質が1つ以上の標的組織に送達される。一部の実施形態では、rhC1-INHタンパク質は、以下に限定されないが、心臓、脳、皮膚、血液、脊髄、横紋筋(例えば、骨格筋)、平滑筋、腎臓、肝臓、肺、及び/または脾臓を含めた1つ以上の標的組織に送達される。一部の実施形態では、rhC1-INHタンパク質は心臓に送達される。一部の実施形態では、rhC1-INHタンパク質は中枢神経系、特に脳及び/または脊髄に送達される。一部の実施形態では、rhC1-INHタンパク質は、三頭筋、前脛骨筋、ヒラメ筋、腓腹筋、二頭筋、僧帽筋、三角筋、四頭筋、及び/または横隔膜に送達される。
【0226】
剤形及び投与レジメン
一部の実施形態では、組成物は、治療有効量で、及び/または特定の所望の結果(例えば、HAEなどの補体媒介性慢性疾患の予防)と相関する投与レジメンに従って投与される。
【0227】
本発明に従って投与される特定の用量または量は様々であり、例えば、所望の結果の性質及び/もしくは程度、投与経路及び/もしくはタイミングの詳細、ならびに/または1つ以上の特徴(例えば、体重、年齢、個人歴、遺伝的特徴、ライフスタイルパラメータ、心臓障害の重症度、及び/もしくは心臓障害の危険性レベルなど、またはそれらの組み合わせ)に依存する。こうした用量または量は、当業者によって決定され得る。一部の実施形態では、適正な用量または量は、標準的な臨床技術に従って決定される。別の方法として、または加えて、一部の実施形態では、適正な用量または量は、所望のまたは至適な投与用量範囲または量を特定するのに役立つ1つ以上のin vitroアッセイまたはin vivoアッセイを通して決定される。
【0228】
種々の実施形態では、rhC1-INHタンパク質は治療有効量で投与される。一般に、治療有効量は、対象に対して意義のある利益を得る(例えば、基礎疾患または症状を予防する、治療する、調節する、治癒する、防止する、及び/または寛解させる)のに十分な量である。一般に、治療剤(例えば、rhC1-INHタンパク質)の量であって、治療剤を必要とする対象に投与される量は、対象の特徴によって決まる。こうした特徴には、対象の症状、疾患の重症度、一般的な健康状態、年齢、性別、及び体重が含まれる。当業者は、これらの及び他の関連する要因によって適正な用量を容易に決定することができるはずである。加えて、至適な用量の範囲を特定するために、客観的及び主観的アッセイの両方が任意選択的に採用され得る。特定の一部の実施形態では、適正な投与用量または投与量を、in vitroまたは動物モデル評価系由来の用量反応曲線から外挿することができる。
【0229】
一部の実施形態では、組成物は医薬製剤として提供される。一部の実施形態では、医薬製剤は、HAE発作の発症率または危険性を低減させることと相関した投与レジメンに従う投与用の単位用量であるか、または該単位用量を含む。
【0230】
一部の実施形態では、本明細書に記載のrhC1-INHタンパク質を含む製剤は、単回投与として投与される。一部の実施形態では、本明細書に記載のrhC1-INHタンパク質を含む製剤は、規則的間隔で投与される。本明細書で使用される「間隔」での投与は、治療有効量が周期的(1回限りの投与とは区別される)に投与されることを示している。間隔は、標準的な臨床技術で決定され得る。一部の実施形態では、本明細書に記載のrhC1-INHタンパク質を含む製剤は、隔月、毎月、月2回、3週間毎、隔週、毎週、週2回、週3回、毎日、1日2回、または6時間毎に投与される。単一個体に対する投与間隔は、一定の間隔である必要はなく、個体の必要性に応じて経時的に変動する可能性がある。
【0231】
治療有効量は、一般的に、複数単位用量が含まれ得る投与レジメンで投与される。任意の特定の治療用タンパク質に関して、治療有効量(及び/または有効投与レジメン内での適正な単位用量)は、例えば、投与経路、他の医薬作用剤との組み合わせに応じて変動し得る。また、任意の特定の患者に固有の治療有効量(及び/または単位用量)は、治療される障害及び障害の重症度;採用される特定の医薬作用剤の活性;採用される特定の組成物;患者の年齢、体重、一般的な健康状態、性別、及び食事;投与時間、投与経路、及び/または採用される特定のタンパク質の排出または代謝速度;治療期間;ならびに医療分野において周知の類似要因を含む様々な要因に依存し得る。
【0232】
本明細書で使用される場合、用語「隔月」は2か月に1回(すなわち、2か月毎に一回)の投与を意味し、用語「毎月」は1か月に1回の投与を意味し、用語「3週間毎」は3週間に1回(すなわち3週間毎に1回)の投与を意味し、用語「隔週」は2週間に1回(すなわち、2週間毎に1回)の投与を意味し、用語「毎週」は週に1回の投与を意味し、用語「毎日」は1日に1回の投与を意味する。
【0233】
一部の実施形態では、本明細書に記載のrhC1-INHタンパク質を含む製剤は、無期限に規則的間隔で投与される。一部の実施形態では、本明細書に記載のrhC1-INHタンパク質を含む製剤は、決められた期間の間、規則的間隔で投与される。
【0234】
さらに当然のことながら、任意の特定の対象に対して、個体の必要性と、酵素補充療法を施行するかまたは施行を管理する人の専門的判断とに従って、固有の投与レジメンを経時的に調整すべきであり、また本明細書に記載された用量範囲は単に例を示したものであり、請求される発明の範囲または実施を制限することを意図するものではない。
【0235】
併用療法
一部の実施形態では、rhC1-INHタンパク質は、補体媒介性疾患の治療に現在用いられている1つ以上の既知の治療剤(例えば、コルチコステロイド)と併用して投与される。一部の実施形態では、既知の治療剤(複数可)は、その標準的もしくは承認済投与レジメン及び/またはスケジュールに従って投与される。一部の実施形態では、既知の治療剤(複数可)は、その標準的もしくは承認済投与レジメン及び/またはスケジュールと比較して変更されたレジメンに従って投与される。一部の実施形態では、こうした変更されたレジメンは、1つ以上の単位用量が異なる(例えば減少または増加)という点で、及び/または投与頻度が異なるという点で(例えば、単位投与間の1つ以上の間隔を長くして低頻度にするか、または間隔を短くして高頻度にしているという点で)、標準的または承認済投与レジメンとは異なっている。
【0236】
障害
一部の実施形態では、本発明で提供される組換えタンパク質は、補体媒介性障害(例えば、NMOSD、AMR、またはHAE事象)に関連する急性発作に適している。これらの発作は長い場合もあり、短い場合もある。一部の実施形態では、疾患または障害は慢性的である。一部の実施形態では、本発明の組成物及び方法は予防的に用いられる。本明細書に開示される組成物及び方法を用いて治療され得る補体媒介性疾患の例として、以下に限定されないが、遺伝性血管性浮腫、抗体関連型拒絶反応、視神経脊髄炎関連疾患、外傷性脳損傷、脊椎損傷、虚血性脳損傷、火傷、中毒性表皮壊死症、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病、脳卒中、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパチー(CIDP)、重症筋無力症、多巣性運動ニューロパチーが挙げられる。
【実施例
【0237】
本発明の他の特徴、目的、及び利点は、以下の実施例において明らかになる。しかしながら、本実施例は、本発明の実施形態を示すが、単に例示のためであり、制限するものではないことを理解すべきである。本発明の範囲内の様々な変更及び修正は、本実施例から当業者に明らかになるであろう。
【0238】
実施例1:組換えヒトC1-INHの一過性発現
ヒト血漿由来C1-INHのアミノ酸配列を用いて、CHO最適化ヌクレオチド配列を作製した。続いて、この配列をpXLG6発現ベクターに挿入し、CHO細胞に形質移入した。
【0239】
2つの異なる形質移入方法(HD1及びHD2)、ならびに2つの異なる培養温度(31℃及び37℃)を評価した。HD1とHD2の両方に関して、形質移入した日に細胞を新鮮な増殖培地で継代培養し、直鎖状ポリエチレンイミン(分子量25,000)(PEI)とDNAとの混合物を細胞に加えた。形質移入物の全てが良好な生存率と良好な形質移入効率を示した。C1-INH活性アッセイと抗原ELISAアッセイとを用いて、細胞培養上清における活性タンパク質の力価を算出した。
【0240】
評価した全ての条件について、C1インヒビターは高レベル(>200mg/L)で発現されていた。HD2とフィードとを組み合わせた結果、予想外に極めて高い発現レベル(>600mg/L)を得た。この条件では、37℃で、5日目までに1000mg/Lを超える量に達することができ、これは発現に利用できる短い期間を考慮すると驚くほど多い量である。31℃では、観測した力価は概してそれよりは低いにしても、600mg/Lを超えている。
【0241】
実施例2:C1-インヒビターを産生する安定クローンの確立
懸濁液培養と無血清増殖条件とに適合したCHO細胞株を親細胞株として用いて、組換えヒトC1-INHを安定的に発現する細胞株を生成及び発生させた。
【0242】
親CHO細胞株を、HD1とHD2とを用いた化学的形質移入によりpXLG6-C1-INHで形質移入した。組換え細胞のプールをピューロマイシンを用いて数日間にわたって選択し、そのrhC1-INH発現レベルを評価した。次いで、クローン集団をプールの限界希釈により生成した。プール番号1とプール番号12を、高い発現レベルと高い活性/抗原比とを併せ持つことから選択して、クローン細胞株の産生に用いた。
【0243】
96ウェルプレートでの限界希釈法を用いて、単一細胞クローニングをプール番号1及びプール番号12から行った。細胞密度、生存率、及び産生性を定期的に測定した。クローン番号1及びクローン番号31を、高産生性、発現したrhC1-INHの品質、及び安定性に基づき、さらなる開発用に選択した。
【0244】
実施例3:細胞培養最適化
スケーラブルな産生プロセスの開発用にクローン/培地のロバストな組み合わせ(例えば、高容積産生性と所望のシアリル化度)を見つけ出すために、40個の市販培地の培地スクリーニングをクローン番号1及びクローン番号31を用いて実施検討した。
【0245】
使用された培養培地に応じて、クローン番号1は約1000~1200mg/Lの組換えC1-INHを産生することができ、クローン番号31は約600~800mg/Lを産生した。一方、クローン番号31によって産生されたC1-INHのシアリル化は、クローン番号1によって産生されたC1-INHよりも血漿由来C1-INHに類似していた。したがって、クローン番号31をさらなる開発用に選択した。
【0246】
実施例4:培地及びフィード最適化
4種のフィードについて、細胞増殖及びC1-INH発現への影響を評価するために検討した。これらは、表1に記載のFeed3、PW2、Pep1510、及びPep4601である。細胞生存率及び力価を7日目と10日目とに各条件について測定した。Feed3とPep1510との混合物(Feed3:Pep1510(v/v)=9:1)が、実験培養条件可で力価と生存率の両方を最大化した。
【表1】
【0247】
実施例3に記載のスクリーニング結果に基づいて選択された3種の培地(表2に詳細を示す)を、タンパク質の品質を極大化する培養条件を特定するために、フィードと組み合わせて評価した。MaxiTubeSpin(登録商標)バイオリアクター(MTS)で、表3に略述した組み合わせを用いて実験を行った。培養液をモニタリングし、かつ補充して、グルコース及び重炭酸塩の適正なレベルを維持した。
【表2】
【0248】
これらの培地を、タンパク質の品質を極大化する培養条件を特定するために、フィードと組み合わせて評価した。MaxiTubeSpin(登録商標)バイオリアクター(MTS)で、表3に略述した条件下で実験を行った。培養液をモニタリングし、かつ補充して、グルコース及び重炭酸塩の適正なレベルを維持した。
【表3】
【0249】
3日目に、各条件下で培養された細胞を用いて、温度(31℃、34℃、及び37℃)がタンパク質の品質及び産生性に及ぼす影響を評価するために、TubeSpin(登録商標)サテライト培養を開始した。10日目に、これらのサテライト培養における生細胞密度及び生存率をフローサイトメーターを用いて測定した。各条件に対して、後の分析のためにCCS試料を採取した。データによると、PowerCHO1を用いた条件が産生量及び品質を極大化したことがわかった。
【0250】
実施例5:大規模組換えC1-インヒビター産生
クローン番号31によるC1-INHの大規模産生を最適化するために、いくつかの産生を実行し種々のパラメータを評価した。培養液のフィードに至適な混合物は、1容量のHyPep1510(本明細書では「Pep1510」と称される)(Sheffield Bioscience社、カタログ番号5X59053、水中200g/l)に対して、9容量のimMEDIAte ADVANTAGE(本明細書では「Feed3」と称される)(Sigma社(SAFC)、カタログ番号8383C)であることを見出した。PowerCHO1培地と共にFeed3+Pep1510混合物を用いることで、10日目におよそ1.3g/l(90%の生存率)の収率、また14日目に約2.0g/l(87%の生存率)の収率を得た。PCO及びオスモル濃度を最小化するために、pHをHCl/炭酸塩で制御した。空気と5%COの混合ガスを0.03vvmで連続的に吹き込み、pHを7.2に維持した。
【0251】
同一の播種密度及びpH制御スキームを再び使用しつつ、複合体の非合成フィードであるFeed3を、合成フィードであるPowerFeed A(本明細書では「PW2」として称される)(Lonza社、カタログ番号BE02-044Q)で置き換えられるかどうか調べるために別のバイオリアクター試験を計画した。全てのリアクターに対して、播種密度として0.5×10個の細胞/mlを用いた。表4に示すように、驚くべきことに、PW2を使用して得られた産生力価の結果は期待値をはるかに下回った。
【表4】
【0252】
評価した2つの他の培地/フィードの組み合わせにより良好な結果がもたらされた:CDCIM/(平衡フィード+フィード補充):10日目に1.2g/l(94%生存率)及び14日目に2.6g/l(92%生存率)、CDCIM+CB/Feed C:10日目に1.0g/l(98%生存率)及び14日目に2.0g/l(82%生存率)。
【0253】
概して、全条件は極めて良好に機能した。高細胞密度はCell BoostとFeedCとを用いた場合に得られ、最高力価は14日目の終わりにCell Boostを用いずBalanced Feedを用いた場合に得られた。10日目に、力価の差異が有意ではなくなった。したがって、1g/Lのプロセスに対して、両方のプロセスを用いることができると考えられる。
【0254】
得られたデータは、本発明の細胞株の例が、十分に最適化された流加培養プロセスにおいて2g/リットルレベルを超えるC1インヒビターの収率をもたらすことができることを総じて明らかにした。重要なことは、以下の実施例によって示されるように、高力価の細胞培養プロセスを、所望の産物品質特性(特に、血漿由来ヒトC1-INHと同様のまたはそれよりも長い半減期を達成するのに必要なシアリル化)を維持しつつ成し遂げたことである。
【0255】
実施例6:組換えC1-インヒビターの精製
細胞により発現したrhC1-INHを精製するプロセスには、収穫物の濃縮、それに続く溶媒界面活性剤処理(SD)を用いた濃縮された収穫物のウイルス不活性化、3種のクロマトグラフィー下流精製工程、ウイルスフィルタ低減工程、及び最終濃縮/透析濾過工程が含まれ得る。図2は、rhC1-INH精製の例示的なプロセスを示す。
【0256】
Gigacap Qを用いたAEXクロマトグラフィーの例示的なクロマトグラフィー動作パラメータを以下の表5に示す。
【表5】
【0257】
確定されたクロマトグラフィー条件は、プロセス不純物を除去し、シアリル化グリカンを増やすことによって産物の品質を向上させるように設定されている。例示的な溶出プロファイルを、中性かつシアリル化された種の対応する分離と共に図3に示す(表6)。さらに、図4に示すように、開発された陰イオン交換工程は、宿主細胞由来タンパク質(HCP)などのプロセス不純物を分離することができる。
【表6】
【0258】
POROS XSを用いる陽イオンクロマトグラフィーを使用して産物品質を最適化するためのクロマトグラフィー動作パラメータを以下の表7に示す。
【表7】
【0259】
確定された動作条件は、産物混入物を除去し、所望のグリコシル化プロファイルを増やすことによって産物品質を向上させるように設定されている。Poros XS溶出後のHCP含有量の低減を図6に示す。図5は、所望のシアリル化グリカン種の濃縮を示す例示的なPoros XS溶出プロファイルである。Poros XSによる所望のシアリル化グリカン種の濃縮について表8に示す。
【表8】
【0260】
実施例7:組換えC1-インヒビターのグリカン分析
C1-INHのインタクトな分子量のおよそ50%がグリカンである。6つのN結合型部位(セルピンドメインに3つ(Asn216、Asn231、Asn330)及びN末端ドメインに3つ(Asn3、Asn47、Asn59))と、8つのO結合型部位(N末端ドメインに全て(Ser42、Thr25、Thr26、Thr49、Thr61、Thr66、Thr70、Thr74))とがある。
【0261】
本明細書に記載の方法に従ってCHO細胞により発現した組換えC1-インヒビターにおけるN-グリカン及びO-グリカンの分布の特徴を明らかにするために、数種類の分析方法を開発及び/または評価した。市販の血漿由来ヒトC1-INHを比較対照として流した。これらの方法は、グリコシル化を分析するための例示的な方法であり、何ら限定することを意図するものではない。
【0262】
各方法には、タンパク質由来のグリカンの除去工程、フルオロフォア(例えば、2-アミノ安息香酸(2-AA))を用いたグリカンの誘導体化工程、過剰な誘導体化試薬の固相抽出による除去工程、及び得られた分類済グリカンの特性決定工程といったアッセイ前工程が必要である。
【0263】
1.混合モード順相/陰イオン交換HPLC(NP/AE)によるN-グリカン分析
混合モード順相/陰イオン交換クロマトグラフィー(NP/AE)によるN-グリカン分析法(NGA)を用いることで、分類されたグリカンを、主に電荷(シアル酸を含むため)に基づいて、さらにはサイズ、オリゴ糖組成、及び結合に基づいて分離することによって、rhC1-INHのN結合型グリカン含有物プロファイルを得た。溶出ピークをシアル酸含有量に基づき大まかに「電荷クラスター」に分類したが、電荷クラスター内のピークは、サイズ、オリゴ糖組成、または結合という点で様々である。蛍光検出器を備えた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)システムを用いてグラジエント分離を行った。得られたクロマトグラムを積分することにより、シアル酸含有量に基づいて、相対的なN-グリカン分布の再現性の高い定量が可能であった。エラー!参照元が見つかりません。図7は、シアル酸含有量に基づいて分類されたピーク群を持つrhC1-INHプロファイルの例を表す。観測されたピーク群の帰属を、分取したピーク画分のオフラインMALDI-TOF質量分析で確認した(図8)。
【0264】
比較のため、血漿由来C1-INHのグリカンプロファイルを図9に示す。
【0265】
2.親水性相互作用HPLC(HILIC)によるN-グリカン分析
親水性相互作用液体クロマトグラフィー(NGA-HILIC)を用いたN-グリカン分析法(NGA)により、主にグリカンサイズに基づいて、さらには単糖含有量、及び結合に基づいて、C36のN結合型グリカン含有物の高分解能プロファイルを得た。蛍光検出器を備えた高速液体クロマトグラフィーシステムを用いてグラジエント分離を行った。得られたクロマトグラムを積分することにより、相対的なN-グリカン分布の再現性の高い定量が可能であった。
【0266】
図10は、オンラインLC/MS評価から得られたピーク帰属を有する代表的なrhC1-INHのHILICクロマトグラムを表す。クロマトグラムのベースライン分離状態により、フコシル化、アンテナリティ(antennarity)、シアリル化などの異なるグリカン属性の相対レベル、及び末端ガラクトースレベルを計算可能である。
【0267】
混合モードクロマトグラフィー及びHILICによるNGAから得られた結果は、1つ~4つのシアル酸を有するグリカンに対して同様であった。
【0268】
3.親水性相互作用HPLC(HILIC)によるNグリカン及びOグリカン分析
O-グリカン分析をORELA遊離試薬(Ludger社)を用いて行った。ORELA試薬を用いて化学的にグリカンを遊離した結果として、アスパラギン結合型(N結合型)グリカン、及びセリン/トレオニン結合型(O結合型)グリカンから構成されるグリカン試料を得る。ORELA試薬を用いて生成した評価試料の分析結果を、PNGaseFを用いて生成した試料と比較して、全グリカンプロファイルをN結合型(単独)グリカンプロファイルと比較できるようにする。したがって、付加的なグリカンピークは、rhC1-INHのO結合型グリコシル化部位からの寄与を表す。この分析を親水性相互作用クロマトグラフィー(HILIC)を用いて行う。
【0269】
HILICクロマトグラフィー方法は、分類されたグリカンを、主としてサイズに基づいて、さらには単糖含有量及び結合に基づいて分離することを可能にする。それ故に、最も多く見られるO結合型グリカンはクロマトグラムで早期に溶出すべきであり、N結合型グリカンと共溶出するべきではない。この方法は、1.7μmの粒子サイズを有するUPLCカラムを利用する。蛍光検出器を備えたHPLCシステムまたはUPLCシステムのいずれかを用いてグラジエント分離を行ってもよい。
【0270】
ORELA試料で観測された新規なピークは、O結合型グリカンを表し、これらは、オンライン陰イオン液体クロマトグラフィー/質量分析(LC/MS)を用いて同定され得るか、または採取され、オフラインマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型(MALDI-TOF)質量分析され得る。
【0271】
N結合型グリカン及びO結合型グリカンの遊離を、上述のようにORELA遊離試薬を用いて行った。N結合型グリカン及びO結合型グリカンの誘導体化を蛍光標識として2-AAを用いて行った。PNGase-F消化によりN結合型グリカンを脱グリコシル化したN結合型グリカンプロファイルの評価を、クロマトグラフィープロファイルの比較用に行った。図11は、代表的なrhC1-INH試料のN-グリカンプロファイル(PNGase-F)及びN+O-グリカンプロファイル(ORELA脱グリコシル化)として得られたプロファイルを表す。図11に示すように、有意な新規のピークが保持時間16分で観察され、約5分で小さいピークが観察された。付加的なピークが溶出後期に観測されたが、これはN結合型プロファイルで観測されたグリカンの保持時間と一致した。
【0272】
新規ピークの帰属の評価を、陰イオンモードのオンラインLC/MS分析を用いて行った。この分析の結果、新規ピークを、1つまたは2つのシアル酸を有するCore-1 O-グリカンとして同定した(Core-1=N-アセチルヘキソサミン+ヘキソース(HexNAC/Hex))。注目すべきことに、2つのシアル酸を有するCore-1 O-グリカンは2つのピークで観測された。この理由はまだ明らかではないが、グリカン成分の間の結合の違いに関連している可能性がある。N+O-グリカン分析で観測された結果は、脱シアリル化後のrhC1-INHのペプチドマッピングからの観測結果と一致し、O-グリコシル化したと考えられる糖ペプチドをHexNAC/Hex修飾型として観測した。
【0273】
実施例8:rhC1-INHの構造分析
例示的なrhC1-INHタンパク質の構造の特徴を、種々の生理化学的方法を用いて明らかにした。1次構造及び翻訳後修飾を、脱N-グリコシル化したrhC1-INHのペプチドマッピングLCMS、MS/MSにより評価した。この方法により、野生型C1-INH(E165Q)とは単一のアミノ酸が異なっている、予測されたアミノ酸配列が確認された。O結合型グリカンをこの方法により同定し、LCに基づくグリカンマッピングによって別途確認した。
【0274】
さらなる方法をグリコシル化、シアリル化、及び全体の電荷分布を評価するために用いた。rhC1-INHグリカンは、主に複合N結合型グリカン、ならびにジシアリル化及びトリシアリル化したCore-1 O結合型構造からなることが、遊離N-グリカン及びO-グリカンのグリカンマッピングから明らかになった。この分析は、潜在的な免疫原性のα-ガラクトース構造が存在しなかったことも示している。高レベルのN-アセチルノイラミン酸(NANA)をシアル酸含有量アッセイで確認したが、これらのデータは観測されたグリカンプロファイル及びpI分布と整合性がある。また、全炭水化物の評価がインタクト質量評価と合わせて行われ、分子における高程度のグリコシル化を示している。
【0275】
平均インタクト質量をMALDI-MSで測定し、その結果を未修飾のポリペプチドの理論的質量と比較した。理論的質量と測定質量の差は炭水化物含有量を表し、血漿由来C1エステラーゼインヒビターとの整合性が見られている。また、rhC1-INHの見掛けの分子量とサイズ分布とを、それぞれSDS-PAGEとサイズ排除クロマトグラフィーとで調べた。rhC1-INHの高次構造をDSCで評価し、血漿由来C1エステラーゼインヒビターと比較できるように算出した。
【0276】
生物学的に適切な酵素アッセイを用いて、国際標準と対照してかつ初期発生参照標準に対して組換えC1-INHの効力を評価し、組換え分子が十分機能的であることを示した。種々の方法がこれらの経路をモニタリングできることがわかった。これらの検討を積み上げることにより、1次構造を確認し、ならびに生物学的活性、グリコシル化プロファイル、翻訳後修飾、及び分子のさらなる高次構造について評価することで、rhC1-INH構造を明らかにすることができた。さらに、これらの検討により、rhC1-INHは血漿由来C1-INHとは異なるグリコシル化構造を有するが、rhC1-INHは意外にも、血漿由来C1-INHと同様のまたはそれよりも良好な活性、及び同様のまたはそれよりも良好な薬物動態特性(例えば、半減期)を呈することが明らかになった。
【0277】
実施例9:組換えC1-インヒビターの機能的結合アッセイ
rhC1-INHタンパク質の活性を、TECHNOCHROM(登録商標)C1-INH試薬キット(Technoclone社、オーストリア、ウィーン)などの発色診断キットを用いて評価することができる。市販の診断キットを、国際標準と対照してかつ参照標準に対してrhC1-INHの効力を測定するために、完全曲線発色アッセイに改良した。
【0278】
例示的なrhC1-INHの原薬ロットの効力は7.2U/mgであると算出され、これは初期発生参照標準に対して121%の効力である。また、発色性C1エステラーゼ阻害アッセイを用いて、本明細書に記載の産生工程及び強制分解試験から採取された種々の試料におけるrhC1-INHの効力を測定した。血漿由来C1-INHは、中間点が約7U/mgの特異的活性を有することが観測された。rhC1-INHの種々のロットの特異的活性は、7.1~7.3U/mgの範囲であった。CINRYZE(登録商標)と比較すると、rhC1-INHのロットの特異的活性値に有意な差は観測されなかった。
【0279】
実施例10:組換えC1-インヒビターの製剤及び安定性
一実施形態では、150mMのグリシンと、50mMのソルビトールと、50mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.1)との中に70mg/mLのrhC1-INHを含有する水溶液を調製した。タンパク質濃度は、rhC1-INHの溶解性及び安定性プロファイルに基づき、最大の臨床用量を提供するように選択された。50mMのリン酸ナトリウム(pH7.1)は、温度ストレス下で安定性を持つことから選択された。150mMのグリシン及び50mMのソルビトールは、至適なタンパク質安定性だけでなく、静脈内及び皮下投与用の適正な等張性も得られるように選択された。
【0280】
この例示的な製剤は、-65℃以下での長期保管(少なくとも12か月)向けに、かつ静脈内注射または皮下注射のいずれかによって非経口投与する臨床状況での使用向けに妥当であるrhC1-INHの溶解性及び安定性を持つことが示された。この例示的な製剤はまた、構造的及び機能的(例えば、効力)分析によって立証されたように、室温で少なくとも1か月間安定であり、また2℃~8℃で少なくとも6か月間安定であることもわかった。
【0281】
rhC1-INH製剤をさらに精製して、2℃~8℃及び25℃での安定性を最適化した。この精製した製剤は、150mMのグリシンと、50mMのソルビトールと、150mMのアルギニンHClと、50mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.1)との中にrhC1-INHを含有した。精製された例示的な製剤の凝集プロファイルを、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により2℃~8℃及び25℃で3か月間モニタリングした。これらの保管条件でのSECデータから、精製された製剤では高分子量凝集体(HMW)のレベルが有意に低いことがわかった。(図13を参照)
【0282】
実施例11:rhC1-INHのin vivo試験
ウサギに血漿由来C1-INHまたはrhC1-INHを注射した。rhC1-INHは、10~20%の中性グリカン、約26%のモノシアリル化グリカン、約35%のジシアリル化グリカン、約17%のトリシアリル化グリカン、及び約5%のテトラシアリル化グリカンというグリコシル化プロファイルを有していた。ウサギPK試験の結果を図13に示す。
【0283】
PKデータの分析結果により、rhC1-INHの半減期は血漿由来C1-INHと比べてわずかに増加していることがわかった。
【0284】
rhC1-INHの生物学的効力は、半減期及び多数の補完パラメータの比較によって評価されたように、血漿由来C1-INHと同様であることが明らかになった。したがって、rhC1-INHは、血漿由来C1-INHと同一または同様の量及び濃度で投与するのに適しており、また同じ症候の治療に用いるのに適している。
【0285】
実施例12:前臨床安全性試験
14日ラット毒性/TKと14日回復期間試験において、150mMのグリシンと、50mMのソルビトールと、50mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.1)との中に70mg/mLのrhC1-INHを含有する水溶液として製剤化されたrhC1-INHを、ラットに500U/kg/日、1000U/kg/日、または2000U/kg/日で投与した。各群は10匹のラットを含んだ。全ての動物が生存した。rhC1-INHに関連して及ぼされる、体重、摂食量、または臨床病理学パラメータ(血液学、凝固、血清化学、及び尿分析)への影響はいずれも見られなかった。rhC1-INHに関連した眼科的所見、巨視的観察、臓器重量の変化、または組織学的変化はいずれも見られなかった。抗薬物抗体を検出したが、非中和性であり、曝露には影響を及ぼさなかった。無毒性量(NOAEL)は、評価した最大投与量である2000U/kg/日であった。
【0286】
14日非ヒト霊長類(NHP)毒性/TKと14日回復期間試験において、150mMのグリシンと、50mMのソルビトールと、50mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.1)との中に70mg/mLのrhC1-INHを含有する水溶液として製剤化されたrhC1-INHを、カニクイザルに250U/kg/日、500U/kg/日、または1000U/kg/日で投与した。各群は4匹のサルを含んだ。全ての動物が生存した。rhC1-INHに関連して及ぼされる体重または他の関連する臨床的観察への影響はいずれもなかった。rhC1-INHに関連した眼科的所見、心電図上所見、巨視的所見、もしくは微視的所見、または臓器重量の変化はいずれも見られなかった。
【0287】
まとめると、非臨床動物データは、記載のrhC1-INHがヒトにおける評価に十分忍容性があり、安全であることを示している。
【0288】
実施例13:混入物の低減
本実施例では、組換えヒトC1インヒビタータンパク質(rhC1-INH)を精製するための混入物(例えば、DNA及び/または宿主細胞由来タンパク質)低減工程の開発について詳細に述べる。現行の下流プロセスの概要を図14に示す。
【0289】
陰イオン交換膜吸収体(Sartobind Q、Sartobind STIC、及びNatrix)について、図14に示した下流プロセスに付加的なDNAクリアランスを付与することに関して評価した。陰イオン交換(AEX)膜吸収体(Sartobind Q及びSartobind STIC)が、rhC1-INH下流プロセス(図14を参照)の第3のクロマトグラフィー工程(すなわちPOROS XS(CEX))後において、DNA低減を含めた混入物低減のための好適なプロセス手段であることを示すデータを以下に提示する。以下詳細に示すように、CHO DNAを用いたDNAスパイク試験に基づくと、Sartobind QはSartobind STICに比べて優れたプロセス収率を有した。Sartobind Qは、90%よりも高いプロセス収率と、4.1logよりも高いDNAクリアランスとを有した。Sartobind QとSartobind STICの両方に対して測定された宿主細胞由来タンパク質クリアランスは最少(<1log)であった。
【0290】
一般的な材料、方法、及び装置
UV分光光度法によるタンパク質含有量の算出
馴化培地を含まない全試料のタンパク質濃度を、測定された280nmでの吸収と、吸光係数ε280=0.514mL/(mg×cm)とを用いて算出した。
TME-0499-01(チャイニーズハムスター卵巣細胞タンパク質(CHOP)ELISA-第3世代)
【0291】
開発プロセスにおいて分析された試料にはTME-0499が用いられ、該試料におけるCHO細胞タンパク質の量を算出した。この方法には、Cygnus Technologies社で製造された第3世代チャイニーズハムスター卵巣宿主細胞由来タンパク質キット(カタログ番号F550)を用いた。
【0292】
DNA濃度
CHOのDNA分析をまずPico Greenにより行った。この方法は、超高感度蛍光核酸染色法である。dsDNAを含み得る試料をまず希釈して、使い捨てのキュベットでTE緩衝液の最終容量を1.0mlにする。実験試料の希釈を行って、特定の混入物(例えば、NaCl)の干渉の影響を減らす。続いて、Quant-IT PicoGreen試薬の1.0ml希釈標準水溶液をキュベットに加え、遮光しながら2~5分間インキュベートする。試料の蛍光を分光蛍光光度計で標準フルオレセイン波長(励起波長:約480nm、発光波長:約520nm)にて測定する。未知試料のシグナルを、同時にアッセイしたdsDNA標準と比較することによって正確に定量する。また、CHO DNA分析をqPCRによって行った。
【0293】
DNA低減工程の開発
表9は、rhC1-INH発生用のプロセス中間体及び最終バルクの既存のDNAレベルを示す。データは、DNAレベルがプロセスでの最初のカラム工程の後に検出限界値未満であることを示した。しかしながら、最終バルクの濃度が70g/Lまでになると、全ての試験で測定できるDNAレベルとなった。
【0294】
典型的な投与の量が70mg/mlのバルク原薬であることに基づいて、目標値は14ng(DNA)/mg未満であることが推奨される。
【表9】
【0295】
3つの陰イオン交換(AEX)吸収体について、混入物を低減させる能力、特に混入DNAを低減させる能力に関して評価した。評価した吸収体は、Sartobind Q膜、Sartobind STIC膜、及びNatrix膜であった。
【0296】
AEX吸収体の適用に至適であるとして特定されたPOROS XS溶出物
POROS XS溶出物を、AEX吸収体を適用するのに至適であるとして特定した。POROS XS溶出物は、rhC1-INHのpIが約2.7~3.6と低いことを考慮すると、Gigacap Q溶出物に対するpH7.5と比べてpH6で、AEX吸収体の負荷としてより好適であると考えられた。AEX膜吸収体の理想形態は、負に帯電した混入物を結合させる一方で、rhC1-INHを装置を貫通させて流すものである。pHが低い実行条件により、混入物を結合させつつ、タンパク質が膜に結合する可能性を減じた。導電性はPOROS XS溶出物を選択した別の理由である。高負荷導電率は一般的にAEX膜クロマトグラフィーに望ましくないが、これは、混入物の膜への親和性が減少するからである。POROS XS溶出物の導電率は、GigacapQ溶出物よりもわずかに低いのが通例であり、それ故にこの点からさらに好適である。さらに、GigacapQ溶出物は50mMのリン酸塩という二価の負に帯電した緩衝液で処理される。高いリン酸塩濃度条件は、その高イオン強度と複数の負電荷とが陰イオン交換クロマトグラフィーと干渉する可能性があるため、極めて悪い条件と考えられる。
【0297】
Sartobind Q膜、Sartobind STIC膜、及びNatrix膜でのプロファイルの実行
Sartobind Q膜、Sartobind STIC膜、及びNatrix膜に対してフロースルーモードでAEX吸収体工程を実施できるかどうかを判定するために、プロファイルを実行させた。
【0298】
オクチルフロースルーをこれらの実験に使用した。オクチルフロースルーを20mMのBis Trisと30mMのNaCl(pH6.0)に透析し、1g/Lまで濃縮した。この低塩濃度条件を極めて悪い評価条件として用いて、rhC1-INHが低塩濃度条件下で結合するかどうかを判定した。イオン強度を上昇させていく段階的洗浄を用いて、結合したrhC1-INHの遊離を促進させる条件を特定した。緩衝液混合物を用いて、段階的洗浄を行った。各吸収体を、単一膜を500Lスケール規模で使用するのに要する最少負荷条件(例えば、Sartobind Q及びSTICについては、500Lスケールに対して1.6Lの大型サイズを仮定して250g(rhC1-INH)/Lを超える膜)で試験した。
【0299】
クロマトグラム、正確な実行条件、及び収率を図15に示す。Sartobind Q及びSartobind STICに関する結果によると、約150mM NaCl未満の塩濃度でC36の結合が最小化することがわかった。POROS XSクロマトグラフィー樹脂を30~300mMのNaCl塩グラジエントを有する20mMのBis-Trisで溶出し、その溶出液はほぼ150mMの塩濃度であると考えられる。これらの実験に基づき、Sartobind Q及びSartobind STICを、さらなる評価に好ましい候補として選択した。
【0300】
対照的に、Natrix膜に対しては、産物の結合を150mMをはるかに下回る塩濃度で観察した。このことから、Natrix膜をさらなる評価対象から削除した。
【0301】
Sartobind STICと比較した場合のSartobind Qの高収率性
産物の試験を、Sartobind Q吸収体とSartobind STIC吸収体とを比較して行った。Sartobind QとSartobind STICとを、平衡状態かつ予想されるPOROS XS溶出条件に合わせた洗浄条件で評価した。AEX膜吸収体は使い捨てになるように設計されているが、これらの実験に高導電性洗浄及びストリップを含めることで、低イオン強度で膜が保持した材料の定量を可能にしている。これらの産物試験の実験条件を以下の表10に示す。
【表10】
【0302】
これらの実験結果のクロマトグラムを図16に示す。これらの結果は、下記の表11にまとめられている。
【表11】
【0303】
各クロマトグラムにおけるA280のトレースは、負荷段階の間にタンパク質がフィルタをどの程度十分に通過しているか、また、結合した物質が高導電性洗浄及びストリップの段階で遊離されるかどうかを示している。Sartobind Qは、STICに比べてわずかに高い収率を有し、これは、Sartobind Q試験で洗浄2のピークが小さいことと、ストリップピークがないこととに対応している。Sartobind Qは流れ特性に関してもロバスト性が高く、35psi未満の導入口圧力で30MV/分の高流量にて動作することができた。対照的に、STICを30MV/分で動作させた場合には90psiを超える圧力を観測した。これに対処するために、プロセス流量を5MV/分に低減させた。5MV/分の流量は、1.6Lの大型サイズの膜に対する8LPMに相当し、通例500L規模に対するものである。8LPMという流量はプロセス時間を最少化するのに十分高く、簡易な蠕動ポンプを用いて達成可能である。しかしながら、低い流量での動作の改善にもかかわらず、STICの収率は、Sartobind Qよりも未だ低かった(91%対95%)。
【0304】
宿主細胞由来タンパク質の分析をCHOP ELISAによりフロースループールで行った。理想的条件下では、AEX膜は数logのHCPクリアランスを付与すると予測されている。しかしながら、観測されたクリアランスは両方の膜で1log未満であった。Sartobind STICは、この装置の耐塩性特質を考慮すると、0.2logというわずかに良好なクリアランスを有した。両方の吸収体に対する不十分なHCPクリアランスは、負荷材料の高い塩濃度条件か、または負荷材料の比較的高いHCP含有量(>2000ng/ml)に起因すると考えられる。
【0305】
これらのデータによると、Sartobind QはSartobind STICと比べてわずかに高い収率を有した(95%対82%~91%)が、Sartobind STICはわずかに優れたHCPクリアランスを示した(0.21対0.14)。STICはまた、高流量での圧力上昇の影響を受けやすかった。製造上の利便性のため、かつ動作中の高い導入口圧力を回避するために、両方の吸収体には最大流量5MV/分が推奨される。
【0306】
Sartobind STICと比較した場合のSartobind Qの有するDNAクリアランス優位性
Sartobind QとSartobind STICとを、平衡状態でかつ予想されるPOROS XS溶出条件に合わせた洗浄条件で評価した。これらの実験に高導電性洗浄及びストリップを再度含めることで、低イオン強度で膜が保持した材料の定量を可能にしている。
【0307】
Lambda DNA(Thermo Fischer社、品番:SD0011、ロット番号:1304003VS)を産物を含まない初期スパイク実験(すなわち、緩衝液ブランク試験)に用いて、PicoGreenによって評価した。続いてスパイク試験を、CHO DNA(Cygnus社、品番:D552、ロット番号:71211A、9.4μg/mL)と、以前の試験由来のrhC1-INH負荷材料とを用いて行った。これらの実験からの画分をqPCRで評価した。CHO DNAスパイク実験の実行条件を表12に示す。
【表12】
【0308】
最初の試験を、Sartobind QのDNAクリアランス能力を判定する目的のためだけに緩衝液を用いて行った。負荷材料は、20mMのBis-Trisと30mMのNaCl(pH6.0)のうちの20mLに添加された360μLのラムダDNAストック(298ng/μL)からなっていた。負荷材料として得られたDNA濃度をA260で測定した結果、5.5ng/μl(DNA)であった。数回の高導電率洗浄を負荷及び洗浄段階の後に行った(図17を参照)。溶出画分を収集し、PicoGreenによってDNA含有量を評価した。rhC1-INHタンパク質をこの実験から除外したが、これは、そのタンパク質がPicoGreenアッセイと干渉するからである。この実験の目的は、この工程の予想される緩衝液条件で実現可能なDNAクリアランスのレベルを推定することであった。非結合画分で測定したDNA量は0.874pgであり、5.1logのクリアランスを示していた。DNAは膜に強力に結合していたが、これは続く高塩濃度洗浄でDNAが検出不可能なレベルであったことにより裏付けられている。一部のDNA(負荷の26%)は2MのNaClによるストリップでフィルタから遊離した。
【0309】
CHO DNAを用いたスパイク試験を、Q膜及びSTIC膜を使用して行った。9.4μg/ml濃度のCHO DNAのうちの1mLをPOROS XSサイクル1溶出液の25~30mLに加えて、各実験の負荷材料として供給した。試料をqPCRを用いてShire社でアッセイした。これらの実験の各々のクロマトグラムを図18に示している。この結果により、Sartobind QのDNAのlogクリアランスが、無希釈負荷材料及び希釈負荷材料に対してそれぞれ4.1超及び3.7であることがわかった。希釈負荷材料はDNAクリアランスの向上が期待できないと思われるが、希釈負荷実験はプロセス中に異常な圧力スパイク(図18のパネルBを参照)を受け、これによって低い結果になった可能性がある。これに対して、Sartobind STICのクリアランスは2.5logであった。この最後の結果は、Sartobind STICがPOROS XS溶出液の高い塩濃度条件で優位であると予測されていたことを考慮すると、意外な結果であった。前述した結果と符合して、Sartobind STICの収率はSartobind Qよりもわずかに低かった。これらの結果を以下の表13にまとめている。これらのデータは、Sartobind Qが収率及びDNAクリアランスに関して優れた性能を有することを示している。
【表13】
【0310】
Sartobind Qの最大負荷試験
最大負荷でのSartobind Qフィルタを評価するために実験を行った。これらの実験に対する実験計画を以下の表14に示す。
【表14】
【0311】
これらの実験は、最大605g/Lm(500L規模に要する量の2倍)までの負荷に対して好ましい結果を示した。圧力増加は、この実験を通して極わずかであった。これらの実験のデータを表15及び図19に示す。
【表15】
【0312】
Gigacap Qの後のSartobind Q
GigacapQの後の膜の性能を評価するために、追加の実験を行った。
【0313】
実験計画とCHO DNAスパイク実験の実行条件とを表16に示す。
【表16】
【0314】
これらの結果は、Gigacap Q溶出液を用いたSartobind Qについて低い収率を示した。図20に示すクロマトグラムによると、何らかの結合が膜に生じていることもわかった。プロセス条件は、50mMのリン酸塩緩衝液(pH7.0)及び負荷導電率17mSであった。rhC1-INHの低いpIを考慮すると、高いpHで低い収率となる可能性がある。高いpH条件でHCPクリアランスに関して改善は見られなかったが、この結果はHCPと同様のpI値を有するウイルスに対するウイルスクリアランスを示唆し得る。
【0315】
結果の要約
要約すると、この実施例は、rhC1-INH下流プロセスの新規なDNAクリアランス工程を特定することを目的とした一連の実験について詳細に述べている。陰イオン交換クロマトグラフィーはDNAクリアランス工程としての一選択肢であるが、これは、DNAの極めて低いpIにより、ほぼ全てのpHでDNAが陰イオン交換リガンドに結合するためである。しかしながら、rhC1-INHの低いpIにより、rhC1-INHも陰イオン交換膜に結合する可能性もある。Sartobind Q、Sartobind STIC、及びNatrixのAEX膜吸収体の適正を、現行のrhC1-INHプロセスの第2のカラム工程の後に評価した。Natrixは、rhC1-INHがその膜に結合し、その結果、この膜に対して低収率になったことから、初期に検討から除外された。Sartobind Q及びSartobind STICをDNAスパイク試験でさらに評価し、Sartobind Qが、STICと比較して優位な収率とDNAクリアランスとを有することから選択された。さらなる実験によって、Sartobind Qは、収率及びDNAクリアランスに関して優れた性能を有することが示された。
【0316】
等価物及び範囲
当業者は、本明細書に記載される本発明の特定の実施形態に対する多くの等価物を認識するか、または単なる日常的な実験方法を使用して確認することができるであろう。本発明の範囲は、上記の説明に限定されることを意図せず、むしろ以下の特許請求の範囲に記述されるとおりである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図15C
図16A-B】
図16C
図17
図18A-B】
図18C
図19
図20
【配列表】
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