(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】ヒートパイプ及びヒートパイプの製造方法
(51)【国際特許分類】
F28D 15/02 20060101AFI20221207BHJP
F28F 19/02 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
F28D15/02 102G
F28D15/02 106Z
F28D15/02 L
F28F19/02 501Z
F28F19/02 501D
F28D15/02 104
(21)【出願番号】P 2018567972
(86)(22)【出願日】2018-08-21
(86)【国際出願番号】 JP2018030733
(87)【国際公開番号】W WO2019039445
(87)【国際公開日】2019-02-28
【審査請求日】2021-05-20
(31)【優先権主張番号】P 2017160126
(32)【優先日】2017-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100143959
【氏名又は名称】住吉 秀一
(72)【発明者】
【氏名】藤井 恵人
(72)【発明者】
【氏名】虎谷 智明
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-096494(JP,A)
【文献】特開2001-348681(JP,A)
【文献】特開昭58-096992(JP,A)
【文献】特開昭57-144890(JP,A)
【文献】特開2007-263535(JP,A)
【文献】特開2017-106695(JP,A)
【文献】特開2003-214780(JP,A)
【文献】特開2016-035357(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 15/02
F28F 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンテナ基材を含むコンテナと、該コンテナに封入された作動流体とを有するヒートパイプであって、
前記作動流体が、水を含み、
前記コンテナ基材の少なくとも内面に、スズ及び/またはスズ合金を有する第1の皮膜と、該第1の皮膜の表面の少なくとも一部に形成された、スズを含む酸化物及び/または水酸化物を有する第2の皮膜と、を備え、
前記第1の皮膜が、前記コンテナの端部に形成され、前記コンテナの端部が前記第1の皮膜ごと封止されており、
前記コンテナが、塑性変形されているヒートパイプ。
【請求項2】
前記スズ合金が、銅、ニッケル、銀、鉛及びビスマスからなる群から選択された少なくとも1種の金属を含む請求項1に記載のヒートパイプ。
【請求項3】
前記第2の皮膜の平均厚さが、5nm以上200nm以下である請求項1または2に記載のヒートパイプ。
【請求項4】
前記コンテナ基材が、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、チタン、チタン合金及びステンレス鋼からなる群から選択された少なくとも1種の金属からなる請求項1乃至3のいずれか1項に記載のヒートパイプ。
【請求項5】
前記第1の皮膜の平均厚さが、1μm以上30μm以下である請求項1乃至4のいずれか1項に記載のヒートパイプ。
【請求項6】
前記コンテナ基材の表面と前記第1の皮膜との間に、ニッケル、亜鉛、コバルト、クロム及び銅からなる群から選択された少なくとも1種の金属、及び/またはニッケル、亜鉛、コバルト、クロム及び銅からなる群から選択された少なくとも1種の金属を含む合金からなる、1層または2層以上の中間層が設けられている請求項1乃至5のいずれか1項に記載のヒートパイプ。
【請求項7】
前記中間層の平均厚さが、0.001μm以上2μm以下である請求項1乃至6のいずれか1項に記載のヒートパイプ。
【請求項8】
前記コンテナに、ウィック構造体が収容されている請求項1乃至7のいずれか1項に記載のヒートパイプ。
【請求項9】
前記ウィック構造体が、ガラス素材である請求項8に記載のヒートパイプ。
【請求項10】
前記ガラス素材が、ガラスファイバ、ガラスウール、ガラスクロス及びガラス不織布からなる群から選択された少なくとも1種である請求項9に記載のヒートパイプ。
【請求項11】
コンテナ基材を含むコンテナと、該コンテナに封入された水を含む作動流体とを有するヒートパイプの製造方法であって、
前記コンテナ基材の少なくとも内面に、スズ及び/またはスズ合金を有する第1の皮膜と、該第1の皮膜の表面の少なくとも一部に形成された、スズを含む酸化物及び/または水酸化物を有する第2の皮膜と、を備えたコンテナを用意する工程と、
前記コンテナの内部に作動流体を注入する注入工程と、
作動流体が注入された前記コンテナの内部を脱気する脱気工程と、
脱気された前記コンテナの端部を封止する封止工程と、
を含み、
前記第1の皮膜が、前記コンテナの端部に形成され、前記コンテナの端部が前記第1の皮膜ごと封止されており、
前記コンテナが、塑性変形されているヒートパイプの製造方法。
【請求項12】
前記第1の皮膜を溶融する熱処理工程をさらに含む請求項11に記載のヒートパイプの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンテナ内部の真空度を維持して優れた熱輸送特性を発揮できるヒートパイプ及び該ヒートパイプの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気・電子機器に搭載されている半導体素子等の電子部品は、高機能化や大電流化等により、発熱量が増大し、その冷却がより重要となっている。電子部品の冷却方法として、ヒートパイプが使用されることがある。
【0003】
また、近年、例えば、モバイル機器や車両に搭載される電気・電子機器について、軽量化の要求がさらに高まっており、それに応じて、ヒートパイプの軽量化も要求されている。ヒートパイプの軽量化の観点から、コンテナの材料として、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金等を使用することが検討されている。また、コンテナに封入される作動流体としては、熱輸送特性に優れる点から水が使用されることがある。しかし、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金は水と化学反応しやすので、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金等からなるコンテナに作動流体として水を使用すると、コンテナと水との化学反応により水素ガスが発生して、ヒートパイプ内部の真空度が低下してしまい、結果、ヒートパイプの熱輸送特性が低下してしまう場合があるという問題があった。
【0004】
さらに、コンテナの材料であるアルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金と作動流体である水との化学反応により、コンテナが腐食する場合があるという問題があった。
【0005】
従って、コンテナ材料としてアルミニウム等が使用され、作動流体として水が使用される場合には、従来、コンテナの内面に防食機能を有する被覆層を形成していた。
【0006】
コンテナの防食機能を有する被覆層を形成したヒートパイプとしては、例えば、アルミニウムより形成されたコンテナの内壁に、水を透過させない保護皮膜として 、ケイ酸(SiO2)皮膜、アルマイト(Al2O3)皮膜、ベーマイト皮膜等が形成されていると共に、作動流体として水が封入されているヒートパイプが提案されている(特許文献1)。また、特許文献1では、ケイ酸(SiO2)皮膜、アルマイト(Al2O3)皮膜、ベーマイト皮膜等の保護皮膜は硬く、クラック等の欠陥が発生する場合があることから、水にマイナスイオンを添加することによって、皮膜の欠陥部をマイナスイオンが修復するように作用させている。
【0007】
しかし、特許文献1では、保護皮膜が硬いので、コンテナの封止のための曲げ加工や、形状変更のために曲げや扁平等の加工を行ったり、被冷却体の発熱量が増大してヒートパイプへの熱的負荷が大きくなると、依然として、保護皮膜にクラック等の欠陥が発生してしまうという問題があった。保護皮膜にクラック等の欠陥が発生すると、該欠陥から侵入した水がコンテナの材料と化学反応してガス(例えば、水素ガス)が発生し、熱輸送特性が低下しやすいという問題、また、コンテナの材料と水が化学反応することで、コンテナが腐食しやすいという問題があった。さらに、特許文献1の保護皮膜では、溶接にてコンテナを密封するにあたり、コンテナに高い封止性を付与することが難しい。また、水に対する耐腐食性を付与するために、鉛を被覆させたヒートパイプが提案されている(特許文献2)。しかし、鉛からなる耐腐食用の被膜は、環境への負荷から好ましくはない。他の耐腐食用の被膜が設けられたヒートパイプとして、ニッケルでコーティングされたコンテナを用いたヒートパイプ(特許文献3)、銅部材とアルミニウム部材等のクラッド材をコンテナに用いたヒートパイプ(特許文献4)が提案されている。しかし、特許文献3のニッケルコーティングでは、コンテナの封止のための曲げ加工や、形状変更のために曲げや扁平等の加工を行うと、やはり、ニッケルコーティングにクラック等の欠陥が発生してしまうという問題があった。また、特許文献4のクラッド材では、近年の小型軽量化に要求される薄い材料の製造が困難であり、軽量化の点で改善の余地がある。また、無理に材料を薄くしようとすると、コンテナの材料の被覆が不完全となり、コンテナの材料と水が化学反応してガスの発生やコンテナの腐食が起こり易くなる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2004-325063号公報
【文献】特開昭61-259087号公報
【文献】特開2006-284167号公報
【文献】特開2002-168577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記事情に鑑み、本発明の目的は、コンテナに曲げ加工等の塑性変形が施されたり、発熱量の大きい被冷却体が熱的に接続されても、水を含む作動流体によるコンテナの腐食と水素ガス発生を防止できるヒートパイプ、及び前記ヒートパイプの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の態様は、コンテナ基材を含むコンテナと、該コンテナに封入された作動流体とを有するヒートパイプであって、前記作動流体が、水を含み、前記コンテナ基材の少なくとも内面に、スズ及び/またはスズ合金を有する第1の皮膜と、該第1の皮膜の表面の少なくとも一部に形成された、スズを含む酸化物及び/または水酸化物を有する第2の皮膜と、を備えたヒートパイプである。
【0011】
本発明の態様は、前記スズ合金が、銅、ニッケル、銀、鉛及びビスマスからなる群から選択された少なくとも1種の金属を含むヒートパイプである。
【0012】
本発明の態様は、前記第2の皮膜の平均厚さが、5nm以上200nm以下であるヒートパイプである。
【0013】
本発明の態様は、前記コンテナ基材が、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、チタン、チタン合金及びステンレス鋼からなる群から選択された少なくとも1種の金属からなるヒートパイプである。
【0014】
本発明の態様は、前記第1の皮膜の平均厚さが、1μm以上30μm以下であるヒートパイプである。
【0015】
本発明の態様は、前記コンテナ基材の表面と前記第1の皮膜との間に、ニッケル、亜鉛、コバルト、クロム及び銅からなる群から選択された少なくとも1種の金属、及び/またはニッケル、亜鉛、コバルト、クロム及び銅からなる群から選択された少なくとも1種の金属を含む合金からなる、1層または2層以上の中間層が設けられているヒートパイプである。
【0016】
本発明の態様は、前記中間層の平均厚さが、0.001μm以上2μm以下であるヒートパイプである。
【0017】
本発明の態様は、前記コンテナに、ウィック構造体が収容されているヒートパイプである。
【0018】
本発明の態様は、前記ウィック構造体が、ガラス素材であるヒートパイプである。
【0019】
本発明の態様は、前記ガラス素材が、ガラスファイバ、ガラスウール、ガラスクロス及びガラス不織布からなる群から選択された少なくとも1種であるヒートパイプである。
【0020】
本発明の態様は、コンテナ基材を含むコンテナと、該コンテナに封入された水を含む作動流体とを有するヒートパイプの製造方法であって、前記コンテナ基材の少なくとも内面に、スズ及び/またはスズ合金を有する第1の皮膜と、該第1の皮膜の表面の少なくとも一部に形成された、スズを含む酸化物及び/または水酸化物を有する第2の皮膜と、を備えたコンテナを用意する工程と、前記コンテナの内部に作動流体を注入する注入工程と、作動流体が注入された前記コンテナの内部を脱気する脱気工程と、脱気された前記コンテナの端部を封止する封止工程と、を含むヒートパイプの製造方法である。
【0021】
本発明の態様は、前記第1の皮膜を溶融する熱処理工程をさらに含むヒートパイプの製造方法である。
【発明の効果】
【0022】
本発明の態様によれば、コンテナ基材の少なくとも内面に、スズ及び/またはスズ合金を有する第1の皮膜と、該第1の皮膜の表面にスズを含む酸化物及び/または水酸化物を有する第2の皮膜とが形成されることにより、コンテナに曲げ加工等の塑性変形が施されたり、発熱量の大きい被冷却体が熱的に接続されても、水を含む作動流体によるコンテナの腐食と水素ガス発生を防止でき、結果、ヒートパイプの熱輸送特性の低下を防止できる。
【0023】
本発明の態様によれば、第2の皮膜の平均厚さが5nm以上200nm以下であることにより、発熱量の大きい被冷却体が熱的に接続され、さらにコンテナに曲げ加工等の塑性変形が施されても、水を含む作動流体によるコンテナの腐食と水素ガス発生をより確実に防止して、ヒートパイプの熱輸送特性の低下をより確実に防止できる。
【0024】
本発明の態様によれば、第1の皮膜の平均厚さが、1μm以上30μm以下であることにより、コンテナの重量化を防止しつつ、水を含む作動流体によるコンテナの腐食と水素ガス発生の防止に、より確実に寄与することができる。
【0025】
本発明の態様によれば、ウィック構造体がガラス素材であることにより、水を含む作動流体とウィック構造体との化学反応を防止できるので、コンテナ内部に水素ガスが発生することをより確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の第1実施形態例に係るヒートパイプの正面断面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態例に係るヒートパイプの側面断面図である。
【
図3】本発明の第2実施形態例に係るヒートパイプの正面断面図である。
【
図4】本発明の第2実施形態例に係るヒートパイプの側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明の実施形態例に係るヒートパイプについて、図面を用いながら説明する。
【0028】
図1、2に示すように、本発明の第1実施形態例に係るヒートパイプ1は、コンテナ基材11を含むコンテナ10と、コンテナ10に封入された作動流体14を有している。コンテナ10の内部には空洞部17が設けられており、空洞部17に作動流体14が封入されている。
【0029】
コンテナ基材11の少なくとも内表面には、第1の皮膜12が設けられている。また、第1の皮膜12の表面には、さらに第2の皮膜13が設けられている。従って、コンテナ基材11の少なくとも内表面には、第1の皮膜12と第2の皮膜13を有する多層構造15が形成され、多層構造15では、第1の皮膜12の表面が第2の皮膜13によって被覆されている。
【0030】
第1実施形態例に係るヒートパイプ1では、コンテナ基材11は管材であり、管材の長手(軸)方向が熱輸送方向となっている。コンテナ基材11の径方向(すなわち、長手方向に対して直交方向)の形状は、特に限定されず、使用状況に応じて適宜選択可能であり、例えば、略円形、楕円形、扁平形状、矩形、角丸長方形等が挙げられる。
図1では、コンテナ基材11の径方向の形状は、円形状となっている。コンテナ基材11の長手方向の形状は、特に限定されず、使用状況に応じて適宜選択可能であり、例えば、L字状、U字状または段差部を有する形状等の曲げ部を有する形状、直線形状等を挙げることができる。
図2では、コンテナ基材11の長手方向の形状は、直線形状となっている。
【0031】
コンテナ基材11の材質は、特に限定されず、使用状況に応じて適宜選択可能であるが、例えば、熱伝導性と重量化防止の点から、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、チタン、チタン合金及びステンレス鋼が好ましく、より軽量化する点から、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金が特に好ましい。
【0032】
ヒートパイプ1では、優れた熱輸送特性を得る点、環境負荷防止の点及び管理容易性の点から、作動流体14は水を含んでいる。また、必要に応じて、作動流体14に、pH調整剤、不凍液等の添加剤を配合してもよい。
【0033】
図1、2に示すように、コンテナ基材11の内表面は、第1の皮膜12によって、被覆されている。ヒートパイプ1では、コンテナ基材11の内表面は、第1の皮膜12と接した態様となっている。第1の皮膜12は、構成要素として、スズ及び/またはスズ合金からなる被覆層等のスズ及び/またはスズ合金を有する被覆層となっている。スズ及び/またはスズ合金を有する被覆層である第1の皮膜12は、コンテナ10の内面に防食性を付与するための被覆である。また、スズ及び/またはスズ合金を有する被覆層である第1の皮膜12は、ケイ酸(SiO
2)皮膜、アルマイト(Al
2O
3)皮膜、ベーマイト皮膜等と比較して柔らかい。従って、コンテナ10に曲げや扁平等の塑性変形が施されても、第1の皮膜12にクラック等の欠陥が発生することを防止できるので、コンテナ基材11と作動流体14に含まれる水とが化学反応して水素ガスが発生することを防止できる。また、第1の皮膜12は、鉛からなる被覆層ではないので、環境への負荷を防止できる。
【0034】
上記から、コンテナ基材11の内表面に第1の皮膜12が形成されていることにより、コンテナ10の腐食防止に寄与し、コンテナ10に曲げや扁平等の加工が施されても水素ガスの発生を防止して、優れた熱輸送特性を維持することができる。
【0035】
さらに、スズ及び/またはスズ合金を有する第1の皮膜12は、比較的柔らかい被覆層なので、コンテナ10に優れた封止性を付与することができ、空洞部17の気密性が向上する。
【0036】
なお、ヒートパイプ1では、コンテナ基材11の少なくとも内表面全体が、第1の皮膜12によって被覆されていればよく、更にコンテナ基材11の外表面全体が、第1の被覆と同質の材料、すなわち、スズ及び/またはスズ合金を有する被覆層で被覆されていてもよい。
【0037】
また、第1の皮膜12は1層でもよく、2層以上の複数層としてもよい。なお、ヒートパイプ1では、第1の皮膜12は1層の構造となっている。
【0038】
第1の皮膜12の平均厚さは、特に限定されず、使用状況に応じて適宜選択可能であるが、例えば、その下限値は、コンテナ基材11の内表面を確実に被覆して防食性を付与し、水素ガスの発生を防止する点から1μmが好ましく、5μmが特に好ましい。一方で、第1の皮膜12の平均厚さの上限値は、軽量化の点から30μmが好ましく、15μmが特に好ましい。また、第1の皮膜12をスズ合金とすることで、防食性の向上や、融点の調整が望める。合金化により第1の皮膜12の融点は変化するため、第1の皮膜12を溶融する熱処理や、本発明のヒートパイプをはんだ付け等で実装する際の条件を鑑み、スズ合金の組成を調整してもよい。スズ合金が用いられる場合、スズ合金の成分としては、例えば、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、銀(Ag)、鉛(Pb)及びビスマス(Bi)からなる群から選択された少なくとも1種の金属を含むスズ合金が好ましい。スズ合金としては、例えば、SnCu合金(例えば、Sn-3質量%Cu合金、Cu6Sn5化合物)、SnNi合金(例えば、Ni3Sn4化合物)、SnAg合金(例えば、Sn-3.5質量%Ag合金)、SnPb合金(例えば、Sn-10質量%Pb合金、Sn-38質量%Pb合金)、SnBi合金(例えば、Sn-0.5質量%Bi合金、Sn-3質量%Bi合金、Sn-58質量%Bi合金)等を挙げることができる。このうち、環境負荷を防止する点から鉛フリーのスズ合金がより好ましく、防食性の向上の観点からは、ビスマスを含むスズ合金が、特に好ましい。
【0039】
一方で、スズ及び/またはスズ合金を有する被覆層である第1の皮膜12のみでは、コンテナ10の腐食防止機能が十分ではない。そこで、ヒートパイプ1では、
図1、2に示すように、第1の皮膜12上には第2の皮膜13が積層されている。第2の皮膜13はコンテナ10の内部空間である空洞部17に露出している。第2の皮膜13は、構成要素として、スズを含む酸化物及び/または水酸化物を有する被覆層となっている。ヒートパイプ1では、コンテナ基材11の内表面と第2の皮膜13との間に第1の皮膜12が設けられている。従って、第1の皮膜12のうち、第2の皮膜13が設けられた部位は、コンテナ10の空洞部17に露出していない態様となっている。
【0040】
スズを含む酸化物及び/または水酸化物を有する被覆層である第2の皮膜13は、コンテナ10の内面の防食性をさらに向上させるための被覆である。従って、第1の皮膜12上に第2の皮膜13が形成されていることにより、コンテナ10に発熱量の大きい被冷却体が熱的に接続されて、ヒートパイプ1への熱的負荷が大きくなっても、水を含む作動流体14によるコンテナ10の腐食を防止して水素ガス発生を防止でき、結果、長期にわたって、ヒートパイプの熱輸送特性の低下を防止できる。また、第2の皮膜13は、鉛からなる被覆層ではないので、環境への負荷を防止できる。
【0041】
第2の皮膜13は第1の皮膜12の表面全体を被覆していてもよく、第1の皮膜12の表面の一部領域、例えば、コンテナ基材11の長手方向の中央部に対応する領域のみ、コンテナ基材11の長手方向の両端部または一方の端部に対応する領域のみ、コンテナ基材11の径方向の周面の一部に対応する領域のみを被覆していてもよい。第2の皮膜13が第1の皮膜12の表面の一部領域を被覆している場合には、第1の皮膜12の表面のうち、第2の皮膜13によって被覆されていない領域は、第1の皮膜12がコンテナ10の空洞部17に露出した態様となっている。なお、ヒートパイプ1では、第1の皮膜12の表面全体が、第2の皮膜13によって被覆されている。また、コンテナ基材11の外表面も第1の被覆と同質の材料で被覆されている場合には、コンテナ基材11の外表面の該被覆上に第2の被覆と同質の材料をさらに被覆してもよい。
【0042】
また、第2の皮膜13は1層でもよく、2層以上の複数層としてもよい。なお、ヒートパイプ1では、第2の皮膜13は1層の構造となっている。
【0043】
第2の皮膜13の平均厚さは、特に限定されず、使用状況に応じて適宜選択可能であるが、例えば、その下限値は、コンテナ10の防食性を確実にさらに向上させる点から5nmが好ましく、10nmが特に好ましい。また、第2の皮膜13の平均厚さの上限値は、コンテナ10の封止性と曲げや扁平等の塑性変形時におけるクラック発生の防止の点から200nmが好ましく、100nmが特に好ましい。
【0044】
また、ヒートパイプ1には、コンテナ10の内部に、毛細管力を有するウィック構造体(図示せず)が収容されていてもよい。コンテナ10の内部にウィック構造体が収容されていることにより、ヒートパイプ1の放熱部で気相から液相へ相変化した作動流体14を円滑にヒートパイプ1の受熱部へ還流させることができる。
【0045】
ウィック構造体としては、一般に使用されるものであれば、いずれも使用可能であるが、コンテナ基材11とウィック構造体の共存下で水を含む作動流体14と接触することで化学反応が促進されることを防止する点から、ガラス素材が好ましく、ガラス素材のうち、十分な毛細管力を得る点から、ガラスファイバ、ガラスウール、ガラスクロス、ガラス不織布が特に好ましい。これらは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
コンテナ10におけるウィック構造体の位置は、特に限定されず、使用状況等により適宜選択可能であり、例えば、コンテナ10の長手方向全体やコンテナ10の長手方向のうち、受熱部に対応する部位等を挙げることができる。
【0047】
次に、本発明の第1実施形態例に係るヒートパイプ1の熱輸送のメカニズムについて、
図1、2を用いながら説明する。
【0048】
まず、コンテナ10のうち、所定の部位(例えば、端部または中央部)に、発熱体(図示せず)を熱的に接続する。ヒートパイプ1が受熱部にて発熱体から受熱すると、受熱部において液相の作動流体14が気相へ相変化する。コンテナ10の内部空間である空洞部17は、気相の作動流体14が流通する蒸気流路として機能する。気相の作動流体14が、蒸気流路を、コンテナ10の長手方向に受熱部から放熱部へと流れることで、発熱体からの熱が受熱部から放熱部へ輸送される。受熱部から放熱部へ輸送された発熱体からの熱は、必要に応じて熱交換手段の設けられた放熱部にて、気相の作動流体14が液相へ相変化することで潜熱として放出される。放熱部にて放出された潜熱は、放熱部からヒートパイプ1の外部環境へ放出される。放熱部にて気相から液相へ相変化した作動流体14は、例えば、コンテナ10の内部に収容されたウィック構造体(図示せず)に取り込まれ、該ウィック構造体の毛細管力によって、放熱部から受熱部へと還流される。
【0049】
次に、本発明の第2実施形態例に係るヒートパイプについて、図面を用いながら説明する。なお、第1実施形態例に係るヒートパイプと同じ構成要素については、同じ符号を用いて説明する。
【0050】
第1実施形態例に係るヒートパイプ1では、コンテナ基材11の少なくとも内表面は第1の皮膜12と接していたが、これに代えて、
図3、4に示すように、第2実施形態例に係るヒートパイプ2では、コンテナ基材11の表面と第1の皮膜12との間に、さらに中間層16が設けられている。従って、ヒートパイプ2では、中間層16が設けられている領域では、コンテナ基材11の表面は第1の皮膜12と接しておらず、中間層16と接した態様となっている。
【0051】
ヒートパイプ2では、コンテナ基材11の少なくとも内表面には、中間層16と第1の皮膜12と第2の皮膜13が積層された多層構造15が形成されている。コンテナ基材11の内表面と第1の皮膜12との間に中間層16が設けられていることで、コンテナ10内面の防食性をさらに向上させつつ、コンテナ基材11の表面に対する第1の皮膜12の密着性を向上させることができる。
【0052】
中間層16の構成成分としては、例えば、ニッケル、亜鉛、コバルト、クロム、銅等の金属、ニッケル、亜鉛、コバルト、クロム、銅等の金属を含む合金を挙げることができる。これらの成分は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0053】
中間層16は、コンテナ基材11の内表面全体を被覆していてもよく、コンテナ基材11の内表面の一部領域、例えば、コンテナ基材11の長手方向の中央部のみ、コンテナ基材11の長手方向の両端部または一方の端部のみ、コンテナ基材11の径方向の周面の一部のみを被覆していてもよい。また、中間層16はコンテナ基材11の外表面の一部または全体を被覆してもよい。なお、ヒートパイプ2では、コンテナ基材11の内表面全体が、中間層16によって被覆されている。
【0054】
中間層16は1層でもよく、2層以上の複数層としてもよい。なお、ヒートパイプ2では、中間層16は1層の構造となっている。
【0055】
中間層16の平均厚さは、特に限定されず、使用状況に応じて適宜選択可能であるが、例えば、その下限値は、コンテナ10の防食性を確実に向上させつつ、第1の皮膜12の密着性を確実に向上させる点から0.001μmが好ましく、0.01μmがより好ましく、1μmが特に好ましい。一方で、中間層16の平均厚さの上限値は、コンテナ10の曲げや扁平等の塑性変形時におけるクラック発生の防止の点から5μmが好ましく、2μmが特に好ましい。
【0056】
次に、本発明のヒートパイプの製造方法例について説明する。本発明のヒートパイプの製造方法としては、例えば、コンテナ基材11の少なくとも内面に形成された第1の皮膜12と第1の皮膜12の表面に形成された第2の皮膜13とを備えたコンテナ10を用意する工程と、コンテナ10の内部に作動流体14を注入する注入工程と、作動流体14が注入されたコンテナ10の内部を脱気する脱気工程と、脱気されたコンテナ10の端部を封止する封止工程と、を含む。
【0057】
上記の通り、本発明のヒートパイプの製造方法では、まず、コンテナ基材11の少なくとも内面に第1の皮膜12と第1の皮膜12の表面に形成された第2の皮膜13とを備えたコンテナ10を用意する。コンテナ10を作製する方法は、例えば、コンテナ基材11に中間層16を設ける場合には、コンテナ基材11の少なくとも内表面に、まず、中間層16を形成し、中間層16を形成後、中間層16の表面に第1の皮膜12を形成し、その後、第1の皮膜12の表面に第2の皮膜13を形成する。次に、コンテナ基材11の周縁部のうち、上記脱気工程の際にコンテナ10内部の気体を抜くのに必要な部分以外を封止することで、コンテナ10を作製することができる。一方で、コンテナ基材11に中間層16を設けない場合には、コンテナ基材11の少なくとも内表面に、まず、第1の皮膜12を形成し、その後、第1の皮膜12の表面に第2の皮膜13を形成し、コンテナ基材11の周縁部のうち、上記脱気工程の際にコンテナ10内部の気体を抜くのに必要な部分以外を封止することで、コンテナ10を作製することができる。
【0058】
コンテナ基材11の封止方法は、特に限定されず、公知の方法を使用することができ、例えば、TIG溶接、抵抗溶接、レーザー溶接、圧接、はんだ付け等を挙げることができる。
【0059】
中間層16を形成する方法は、特に限定されないが、例えば、電解めっき、無電解めっき、化成処理等を挙げることができる。また、必要に応じて、コンテナ基材11の表面に対して、溶剤脱脂、電界脱脂、酸洗、エッチング処理等の洗浄処理を実施してから、中間層16を形成してもよい。
【0060】
第1の皮膜12を形成する方法は、特に限定されないが、例えば、電解めっき、無電解めっき、ホットディップ、蒸着等により、第1の皮膜12を形成することができる。また、必要に応じて、コンテナ基材11の表面(中間層16が形成されている場合には中間層16の表面)に対して、溶剤脱脂、電界脱脂、酸洗、エッチング処理等の洗浄処理を実施してから、第1の皮膜12を形成してもよい。また、上記のようにして形成した中間層16の上に、電解めっき、無電解めっき、ホットディップ、蒸着等により第1の皮膜12の成分を構成する金属含有成分の皮膜を形成後に、加熱処理等により前記金属含有成分の皮膜と中間層16とを反応させて合金化することで、第1の皮膜12を形成してもよい。また、電解めっき、無電解めっき、ホットディップ、蒸着等により第1の皮膜12の成分を構成する金属含有成分の皮膜を複数層形成後、複数層の金属含有成分の皮膜を熱処理して合金化すること、第1の皮膜12を形成してもよい。
【0061】
第2の皮膜13を形成する方法は、特に限定されないが、例えば、第1の皮膜12に対する、酸素ガスを含む気相の雰囲気にての熱処理、水を含む溶液に浸漬させての熱処理、陽極酸化処理、水を含む溶液から生じた蒸気への暴露処理、水を含む溶液から生じた蒸気中にての熱処理等の酸化処理を挙げることができる。
【0062】
なお、第1の皮膜12を形成後であって第2の皮膜13の形成前または第2の皮膜13の形成時に、第1の皮膜12を加熱して溶融させる熱処理工程を追加してもよい。この熱処理工程によって、第1の皮膜に含まれる空孔等の欠陥が埋まるため、コンテナ基材11と作動流体14の反応をより確実に防止できる。第1の皮膜12を加熱して溶融させる熱処理の方法としては、特に限定されないが、例えば、バッチ式熱処理、通電加熱式熱処理、誘電加熱式熱処理、走間熱処理等の連続式熱処理を挙げることができる。
【0063】
次に、上記のようにして用意されたコンテナ10の内部に、作動流体14を注入する。作動流体14を注入する方法は、特に限定されず、公知の方法を使用することができる。なお、作動流体14は、コンテナ10の内部への注入前に、必要に応じて、加熱することで作動流体14中の溶存ガスを排出させてもよい。
【0064】
次に、作動流体14が注入されたコンテナ10の内部を、コンテナ基材11の周縁部のうち、封止されていない部位を介して脱気する。この脱気処理により、コンテナ10の空洞部17を減圧する。脱気方法は、特に限定されず、公知の方法を使用することができ、例えば、真空引き、加熱脱気等を挙げることができる。
【0065】
次に、コンテナ基材11の周縁部のうち、脱気処理のために封止されていなかった部位を封止することで、本発明のヒートパイプを製造することができる。脱気処理のために封止されていなかった部位を封止する方法としては、上記と同じく、特に限定されず、公知の方法を使用することができ、例えば、TIG溶接、抵抗溶接、レーザー溶接、圧接、はんだ付け等を挙げることができる。
【0066】
なお、必要に応じて、脱気工程前に、コンテナ10の内部に、ウィック構造体を収容してもよい。ウィック構造体は、必要に応じて、溶剤脱脂、酸洗等の洗浄処理を実施してから、コンテナ10の内部に収容してもよい。
【0067】
次に、本発明のヒートパイプの他の実施形態例について説明する。上記各実施形態例ではコンテナ基材11は管材であったが、これに代えて、対向した2つの板状体を組み合わせた平面型としてもよい。
【0068】
また、上記した本発明のヒートパイプの製造方法例では、中間層16、第1の皮膜12、第2の皮膜13の形成後に、コンテナ基材11の周縁部のうち、脱気工程の際にコンテナ10内部の気体を抜くのに必要な部分以外を封止していたが、これに代えて、脱気工程の際にコンテナ10内部の気体を抜くのに必要な部分以外を封止してから、中間層16、第1の皮膜12、第2の皮膜13を形成してもよい。また、第2の皮膜13は、上記した第1の皮膜12を加熱して溶融させる熱処理工程時、コンテナ10を加熱脱気等で脱気処理する工程時、コンテナ10を封止する工程時等に形成させてもよい。
【実施例】
【0069】
次に、本発明の実施例を説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、これらの例に限定されるものではない。
【0070】
実施例1~23、比較例1、2で使用するヒートパイプとして、径8mm×長さ220mm×コンテナ基材の肉厚0.3mmの直線形状のヒートパイプを使用した。コンテナ基材としてアルミニウム製を使用した。作動流体として水を封入した。
【0071】
実施例1~23、比較例1、2で使用するヒートパイプの第1の皮膜(SnまたはSn合金)、第2の皮膜(SnO)及び中間層の詳細について、下記表1に示す。なお、第2の皮膜の平均厚さは、X線光電子分光分析法(XRS)の深さ分析にて、第1の皮膜の平均厚さと中間層の平均厚さは、蛍光X線分析にて、それぞれ、測定した。
【0072】
評価
(1)防食能(耐久性)
ヒートパイプを90℃のオーブンで1000時間熱処理した。その後、ヒートパイプの長手を垂直方向に向け、ヒートパイプの下端から80mmの位置までを50℃のお湯に浸けた。また、下端から40mmの位置と上端から15mmの位置に熱電対を接続し、それらの温度差(ΔT)を測定した。測定結果は、以下の4段階で評価した。
◎:比較例1のΔTに対して、ΔTが1.5℃以上小さい。
○:比較例1のΔTに対して、ΔTが1.0℃以上1.5℃未満の範囲で小さい。
△:比較例1のΔTに対して、ΔTが0.5℃以上1.0℃未満の範囲で小さい。
×:比較例1のΔTに対して、ΔTが0.5℃未満の範囲で小さい、または比較例1のΔTよりも大きい。
【0073】
(2)加工性
ヒートパイプを角度30°に曲げて、曲げ部における第2の皮膜の外観を目視にて観察し、以下の3段階で評価した。
○:クラック等の欠陥が認められない。
△:クラック等の欠陥が若干認められる。
×:クラック等の欠陥が著しく認められる。
【0074】
(3)封止性
抵抗溶接にて封止部を形成し、該封止部におけるヘリウムガスのリークテストを実施し、以下の3段階で評価した。
○:3回の封止処理のうち、3回ともヘリウムガスのリークなし。
△:3回の封止処理のうち、1~2回、ヘリウムガスのリークなし。
×:3回の封止処理のうち、3回ともヘリウムガスのリークあり。
【0075】
防食能、加工性、封止性の評価結果を下記表1に示す。
【0076】
【0077】
上記表1に示すように、第1の皮膜と第2の皮膜が形成された実施例1~23では、第2の皮膜が形成されていない比較例1と比較して、封止性を損なうことなく、防食能が向上し、第1の皮膜が形成されていない比較例2と比較して、封止性を損なうことなく、防食能と加工性が向上した。従って、防食能が向上した実施例1~23では、発熱量の大きい被冷却体が長期にわたって熱的に接続されても、優れた熱輸送特性を発揮できることが判明した。
【0078】
また、実施例2~5と実施例1、6との対比から、第2の皮膜の平均厚さが5~200nmであることにより、防食能、加工性及び封止性をバランスよく向上させることができた。また、実施例3~5から、第2の皮膜の平均厚さが10~200nmであることにより、さらに優れた防食能を得ることができた。
【0079】
また、実施例8~10と実施例7の対比から、第1の皮膜の平均厚さが1~30μmであることにより、より優れた防食能を得ることができた。また、実施例9、10から、第1の皮膜の平均厚さが5~30μmであることにより、さらに優れた防食能を得ることができた。
【0080】
また、実施例4、12~16から、中間層が形成され、該中間層がニッケル、亜鉛、コバルト、クロム、銅のいずれであっても、防食能、加工性及び封止性をバランスよく向上させることができた。また、実施例4、16、17、19と実施例18、20との対比から、中間層の平均厚さが1~2μmであることにより、防食能と加工性がさらに向上した。
【0081】
また、実施例2と実施例21~23から、第1の皮膜をSn-Bi合金とすることで、防食能をさらに向上させることができた。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明のヒートパイプは、コンテナに曲げ加工等の塑性変形が施されたり、発熱量の大きい被冷却体が熱的に接続されて熱的負荷が大きくなっても、水を含む作動流体によるコンテナの腐食と水素ガス発生を防止でき、優れた熱輸送特性を発揮できるので、広汎な分野で利用可能であり、例えば、発熱量の大きい電子部品を冷却する分野で利用価値が高い。
【符号の説明】
【0083】
1、2 ヒートパイプ
10 コンテナ
11 コンテナ基材
12 第1の皮膜
13 第2の皮膜
14 作動流体