(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】潤滑油に使用するための乳化剤
(51)【国際特許分類】
C10M 129/74 20060101AFI20221207BHJP
C08G 65/332 20060101ALI20221207BHJP
C10N 20/04 20060101ALN20221207BHJP
C10N 30/00 20060101ALN20221207BHJP
C10N 40/25 20060101ALN20221207BHJP
【FI】
C10M129/74
C08G65/332
C10N20:04
C10N30:00 A
C10N40:25
(21)【出願番号】P 2019002331
(22)【出願日】2019-01-10
【審査請求日】2022-01-06
(32)【優先日】2018-01-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391007091
【氏名又は名称】アフトン・ケミカル・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Afton Chemical Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・イェン
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー・ジャーヴィス
(72)【発明者】
【氏名】マシュー・ロス
【審査官】長部 喜幸
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-111270(JP,A)
【文献】特表2005-504150(JP,A)
【文献】特開昭54-132492(JP,A)
【文献】特開2017-171918(JP,A)
【文献】特表2009-511699(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103396543(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 23/52
C08G 65/332
C10M 129/74
C10M 169/04
C10N 20/04
C10N 30/00
C10N 40/25
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑油組成物のための乳化剤であって、前記乳化剤は、式Iの化合物を含み、
【化1】
式中、
各Xは、独立して、式-[OA]
p-のポリアルキレンオキシド基であり;
Yは、ヒドロキシル基であるか、または式-[OA]
p-OHのポリアルキレンオキシド基であり;
各Aは、独立して、エチレン、プロピレンおよびブチレンからなる群から選択されるアルキレン、およびこれらの混合物であり;
R
bは、Hであるか、または構造
【化2】
を有する化学部分であり;
Rは、数平均分子量
が750
~2500である直鎖または分枝鎖の脂肪族基であり;
pは、数平均分子量
が100
~1000の各Xおよび/または各Yを独立して提供する整数であり;
mは、重量平均分子量
が7,000
~50,000の式Iの化合物を提供する整数である、乳化剤。
【請求項2】
pは、数平均分子量
が150
~200のポリアルキレンオキシド基を提供する整数である、請求項1に記載の乳化剤。
【請求項3】
式Iの化合物は、重量平均分子量
が10,000
~15,000である、請求項1に記載の乳化剤。
【請求項4】
Rは、数平均分子量
が950
~2300である、請求項1に記載の乳化剤。
【請求項5】
式Iの化合物が、ジカルボン酸またはジカルボン酸無水物と反応したポリアルキレングリコールで構成される触媒反応か
ら生成され;および/または前記触媒反応が、ポリイソブチレン無水コハク酸を含み、及びそのポリイソブチレン基は、数平均分子量
が950
~2300であり;および/または前記触媒反応における前記ポリアルキレングリコールと前記ジカルボン酸または無水物のモル比が
、0.1:1.0
~1.0:0.1である、請求項1に記載の乳化剤。
【請求項6】
各Aが独立してエチレンまたはプロピレンである、請求項1に記載の乳化剤。
【請求項7】
前記直鎖または分枝鎖のR基の数平均分子量が、前記ポリアルキレンオキシド基の数平均分子量より
も1.5
~15倍高い、請求項1に記載の乳化剤。
【請求項8】
潤滑油組成物であって、
主要量の基油と、
式Iの化合物を含む乳化剤
【化3】
とを含み、
式中、
各Xは、独立して、式-[OA]
p-のポリアルキレンオキシド基であり;
Yは、ヒドロキシル基であるか、または式-[OA]
p-OHのポリアルキレンオキシド基であり;
各Aは、独立して、エチレン、プロピレンおよびブチレンからなる群から選択されるアルキレンおよびこれらの混合物であり;
R
bは、Hであるか、または構造
【化4】
を有する化学部分であり;
Rは、数平均分子量
が750
~2500である直鎖または分枝鎖の脂肪族基であり;
pは、数平均分子量
が150
~1000の各Xおよび/または各Yを独立して提供する整数であり;
mは、重量平均分子量
が7,000
~50,000の式Iの化合物を提供する整数である、潤滑油組成物。
【請求項9】
pは、数平均分子量
が150
~200のポリアルキレンオキシド基を提供する整数である、請求項8に記載の潤滑油組成物。
【請求項10】
式Iの化合物は、重量平均分子量
が10,000
~15,000である、請求項8に記載の潤滑油組成物。
【請求項11】
Rは、数平均分子量
が950
~2300である、請求項8に記載の潤滑油組成物。
【請求項12】
前記潤滑油組成物が
、0.001
~2.0重量%の式Iの化合物を含む、請求項8に記載の潤滑油組成物。
【請求項13】
式Iの乳化剤が、ジカルボン酸またはジカルボン酸無水物と反応したポリアルキレングリコールか
ら成る触媒反応から生成され;および/または前記触媒反応における前記ポリアルキレングリコールと前記ジカルボン酸またはジカルボン酸無水物のモル比が
、0.1:1.0
~1.0:0.1である、請求項8に記載の潤滑油組成物。
【請求項14】
前記潤滑油組成物が、ASTM D7563-10に従って試験した場合、24時間後
に水層を含まない、請求項8に記載の潤滑油組成物。
【請求項15】
前記直鎖または分枝鎖のR基の数平均分子量が、前記ポリアルキレンオキシド基の数平均分子量より
も1.5
~15倍高い、請求項8に記載の潤滑油組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、潤滑油の乳化剤として使用するのに適した、コハク酸または無水物とポリアルキレングリコールとの反応から作られるポリマー化合物に関する。本開示は、このような乳化剤を含有する潤滑油にも関する。
【背景技術】
【0002】
E85は、体積基準で、85%の変性エタノール燃料と15%のガソリンまたは他の炭化水素とのエタノール燃料ブレンドである。残念ながら、エタノールは吸湿性であり、そのため、E85などのバイオ燃料は、エンジン操作中に水が混入する傾向が大きい。この燃料の水混入は、ある場合には、エンジンコンパートメントに遊離水が入り込むことによって、エンジンオイルの潤滑性および洗浄性に悪影響を及ぼすことがある。エンジンコンパートメントに遊離水が存在することに起因してエンジンオイルの潤滑性および洗浄性が低下すると、ある状況では、早すぎるエンジンの摩耗が起こる場合がある。今日まで、輸送、ガスステーションタンク内での保管、自動車タンク内での保管過程の間にE85ガソリンに水が入り込まないようにするのは困難であった。したがって、エンジンオイル配合物は、多くは、水および/または燃料の混入の欠点を克服するために、水を油に乳化させるための添加剤または要素を含み、したがって、通常は、この機能のために潤滑剤中に乳化剤を含む。
【0003】
乳化剤は、一般的に、油への遊離水の乳化に効果的であり、幅広い温度範囲にわたって油中で可溶性のままであるはずである。従来の乳化剤は、ある状況では、凝集し、油から分離して下に沈んでことがあるため、乳化剤の有効性は、これらの状況では大きく低下する。他の従来の乳化剤は、複雑な化学を伴い、乳化するポリマー内に複雑な要素を構築し、有効性はほとんど上がらずに、製造および要素の費用が上がる傾向がある。他の従来の乳化剤は、所望な乳化度を達成するためには、もっと高い処理率を必要とし、これも費用を挙げ、配合物の複雑さが増してしまう。
【0004】
乳化剤の有効性は、標準的な試験、例えば、いわゆるE85乳化試験と呼ばれるASTM D7563-10を用いて決定することができる。この試験は、所定量の水が混入し、E85燃料を模倣するエンジンオイルが、撹拌後に水を乳化させ、このエマルションを維持し、20℃~25℃および-5℃~0℃の温度で少なくとも24時間、実質的に水層を含まないままである能力を評価する。比較的少量で使用し、広い温度範囲にわたって安定なエマルションを達成することができる単純な乳化剤を開発することは、依然として課題のままである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様では、本開示は、潤滑油組成物のための乳化剤を含む。一手法では、乳化剤は、式Iの化合物を含み、
【0006】
【0007】
式中、各Xは、独立して、式-[OA]p-のポリアルキレンオキシド基であり;Yは、ヒドロキシル基であるか、または式-[OA]p-OHのポリアルキレンオキシド基であり;各Aは、独立して、エチレン、プロピレンおよびブチレンからなる群から選択されるアルキレンおよびこれらの混合物であり;Rbは、Hであるか、または構造
【0008】
【0009】
を有する化学部分である。式Iにおいて、Rは、数平均分子量が約750~約2500である直鎖または分枝鎖の脂肪族基であり;pは、数平均分子量が約100~約1000の各Xおよび/または各Yを独立して与えるような整数であり;mは、重量平均分子量が約7,000~約50,000の式Iの化合物を与えるような整数である。
【0010】
上の段落の乳化剤を、多くの任意要素の特徴と、独立して、またはこれらの組み合わせで合わせてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、pは、数平均分子量が約150~約200のポリアルキレンオキシド基を与えるような整数であり;および/または式Iの化合物は、重量平均分子量が約10,000~約15,000であり;および/またはRは、数平均分子量が約950~約2300、例えば、約950~約1200であり;および/または式Iの化合物は、ジカルボン酸またはジカルボン酸無水物と反応するポリアルキレングリコールから本質的になる触媒反応から作られ;および/または触媒反応が、ポリイソブチレン無水コハク酸を含み;および/またはそのポリイソブチレン基は、数平均分子量が約950~約2300、例えば、約950~約1200であり;および/または触媒反応におけるポリアルキレングリコールとジカルボン酸または無水物のモル比が、約0.1:1.0~約1.0:0.1であり;および/または乳化剤が、潤滑油中に約0.001~約5.0%、好ましくは、約0.01~約1.0%の量で存在し、前記潤滑油は、ASTM D7563-10にしたがって試験したとき、24時間後に実質的に水層を含まず;および/または各Aは、独立してエチレンまたはプロピレンであり;および/または直鎖または分枝鎖のR基の数平均分子量が、ポリアルキレンオキシド基の数平均分子量よりも約1.5~約15倍、好ましくは約2~約10倍、または別の手法では、約2~約5倍大きい。
【0011】
別の態様では、本開示は、主要な量の基油と、式Iの化合物を含む乳化剤
【0012】
【0013】
とを含む潤滑油組成物であって、
式中、各Xは、独立して、式-[OA]p-のポリアルキレンオキシド基であり;Yは、ヒドロキシル基であるか、または式-[OA]p-OHのポリアルキレンオキシド基であり;各Aは、独立して、エチレン、プロピレンおよびブチレンからなる群から選択されるアルキレンおよびこれらの混合物であり;Rbは、Hであるか、または構造
【0014】
【0015】
を有する化学部分である。式Iにおいて、Rは、数平均分子量が約750~約2500である直鎖または分枝鎖の脂肪族基であり;pは、数平均分子量が約150~約1000の各Xおよび/または各Yを独立して与えるような整数であり;mは、数平均分子量が約7,000~約50,000の式Iの化合物を与えるような整数である。
【0016】
上の段落の潤滑油組成物を、多くの任意要素の特徴と、独立して、またはこれらの組み合わせで合わせてもよい。例えば、この態様のいくつかの実施形態では、pは、数平均分子量が約150~約200のポリアルキレンオキシド基を与えるような整数であり;および/または式Iの化合物は、数平均分子量が約10,000~約15,000であり;および/またはRは、数平均分子量が約950~約2300、例えば、約950~約1200であり;および/または潤滑油組成物は、約0.001~約2.0重量%、好ましくは約0.01~約0.2重量%の式Iの化合物を含み;および/または式Iの乳化剤は、ジカルボン酸またはジカルボン酸無水物と反応するポリアルキレングリコールから本質的になる触媒反応から作られ;および/または触媒反応が、ポリイソブチレン無水コハク酸を含み;および/またはそのポリイソブチレン基は、数平均分子量が約750~約2500であり;および/または触媒反応におけるポリアルキレングリコールとジカルボン酸または無水物のモル比が、約0.1:1.0~約1.0:0.1であり;および/または潤滑油組成物は、ASTM D7563-10にしたがって試験したとき、24時間後に実質的に水層を含まず;および/または直鎖または分枝鎖のR基の数平均分子量が、ポリアルキレンオキシド基の数平均分子量よりも約1.5~約15倍、好ましくは約2~約10倍、または別の手法では、約2~約5倍大きい。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書に記載されるのは、広い温度範囲にわたって安定なエマルションを達成する、潤滑油のための新規乳化剤である。乳化剤は、エンジンオイルおよび他の潤滑油(例えば、金属作業などのためのもの)の両方に適している。
【0018】
エンジンまたはクランクケースの潤滑剤組成物を、火花点火エンジンおよび圧縮点火エンジンを備える車両に使用し、摩擦の低減および他の利点を与える。このようなエンジンを、自動車、トラックおよび/または列車の用途で使用してもよく、限定されないが、ガソリン、ディーゼル、アルコール、バイオ燃料、圧縮天然ガスなどの燃料で操作してもよい。本開示は、エンジン潤滑剤、例えば、自動車用クランクケース潤滑剤として使用するのに適したこのような薬剤を含む乳化剤および潤滑剤を記載し、ある場合には、ILSAC GF-5および/またはAPI CJ-4の潤滑剤の基準を満たし得るか、またはこれを超え得る。他の潤滑剤、例えば、金属作業のための工業用または個人用の機械で使用する潤滑剤も、本開示の乳化剤から利益を得るだろう。
【0019】
上述のように、バイオ燃料、例えば、E10~E85、またはもっと高級なバイオ燃料は、水が混入する傾向があり、最終的には、エンジンオイルの性能に影響を与える場合がある。燃料に由来する水が油に混入する可能性があり、水が混入した油は、潤滑油の潤滑性能および洗浄性能の有効性を下げる場合がある。水の混入は、ある場合には、潤滑剤の粘度を、変えてしまうこともあり、粘度を高くしたり、または低くしたりすることがあり、ある場合には、装置の信頼性に影響を与えることがある。
【0020】
乳化剤は、乳化剤または乳化化合物とも呼ばれ、エマルションの動的安定性を高めることによってエマルションを安定化する物質である。乳化剤は、ほとんどの種類の潤滑油に対する一般的な添加剤である。しかし、ある場合には、従来の乳化剤は、凝集するか、または沈殿または不溶性の塊として油から分離する傾向がある。この現象は、多くは、乳化剤の分離として知られるが、従来の乳化剤がもつ一般的な問題であり、エンジンまたは機械デバイスが、効力のない潤滑油から腐食または損傷を受けやすい状態で放置され得る。
【0021】
本明細書には、驚くべき低い処理率で、潤滑油の中のエマルションを安定化させ、同時に低い分離率を与える乳化剤化合物が記載されている。乳化剤化合物は、コハク酸または無水物とポリアルキレングリコールの反応生成物であり、いくつかの手法では、反応生成物は、他の反応剤またはモノマーが乳化剤の中に構築されることなく、コハク酸または無水物およびポリアルキレングリコールから本質的になるか、またはこれらのみからなる。本発明の乳化化合物は、E85乳化試験によって試験されるように、従来の薬剤よりも低い処理率で、安定なエマルションを達成し得ることを発見した。
【0022】
一態様では、本発明の乳化剤化合物は、以下にさらに完全に記載するように、ジカルボン酸またはポリカルボン酸とポリアルキレンモノマー単位とのポリマーを含む。これらの乳化剤化合物を潤滑油に加えてもよく、ここで、潤滑油は、エンジン、金属作業、および油の潤滑化が必要な他の用途において用途を有する。潤滑油中の本発明の乳化剤化合物の処理率は、ASTM D7563-10(E-85乳化試験)にしたがって試験したとき、潤滑油が約24時間後に水層を実質的に含まないために効果的な処理率である。本発明の乳化化合物の驚くべき利点は、ASTM D7563-10試験に合格する潤滑油を生成するのに比較的低い処理率しか必要としないことである。いくつかの手法では、乳化化合物は、潤滑油中に、約0.001~約2重量%、他の手法では、約0.01~約1.0%の重量%で存在する。さらに他の手法では、処理率は、用途に応じて、約0.001~約5重量%であってもよい。さらに他の手法では、乳化化合物は、潤滑油中に約0.01~約0.75%の重量%で存在する。別の手法では、乳化剤は、潤滑油中に約0.01~約0.50%の重量で存在する。さらに別の手法では、乳化剤は、潤滑油中に、約0.01~約0.2%、さらなる手法では、約0.01~約0.05%、約0.05~約0.1%、約0.1~約0.15%、約0.15~約0.20%、または約0.20~約0.25%の重量%で存在する。さらに他の手法では、乳化化合物は、潤滑油中に、約0.01重量%から約0.2重量%未満の量で与えられる。
【0023】
さらに多くの具体例を考えると、本発明の乳化剤化合物は、式Iのポリマーであるか、および/または式Iのポリマーを含み、
【0024】
【0025】
式中、各Xは、独立して、式-[OA]p-のポリアルキレンオキシド基であり、その各Aは、独立して、エチレン、プロピレンおよびブチレンからなる群から選択されるアルキレンおよびこれらの混合物である。いくつかの手法では、それぞれのアルキレンオキシドは、独立して、場合により、C1-C6アルキル、C3-C6シクロアルキル、3~6員環のヘテロシクロアルキル、フェニルまたは3~6員環のヘテロアリールの1つ以上の場合で置換されていてもよく、アルキル、シクロアルキル、フェニル、ヘテロシクロアルキルおよびヘテロアリールは、それぞれ独立して、場合により、ハロ、オキソ、シアノ、ニトロ、アミノ、アミド、-OH、-COOHまたは-COO(C1-C4アルキル)のうち1つ以上で置換されている。式Iにおいて、Yは、ヒドロキシル基であるか、または式-[OA]p-OHのポリアルキレンオキシド基であり;各Aは、独立して、エチレン、プロピレンおよびブチレンからなる群から選択されるアルキレンおよびこれらの混合物であり(上述のように場合により置換されている);Rbは、Hであるか、または構造
【0026】
【0027】
を有する化学部分であり;Rは、数平均分子量が約750~約2500である直鎖または分枝鎖の脂肪族基であり;pは、数平均分子量が約150~約1000の各Xおよび/または各Y(ポリアルキレンオキシド基)を独立して与えるような整数であり;mは、重量平均分子量が約7,000~約50,000(他の手法では、約10,000~約50,000)の式Iの化合物を与えるような整数である。
【0028】
式Iのポリマーは、末端にコハク酸を有する脂肪族ポリマー化合物(式II)または無水コハク酸を有する脂肪族ポリマー化合物(式III)と、ポリアルキレングリコールとの反応から作られてもよい。(以下のさらに完全に記載するスキーム1を参照)。
【0029】
【0030】
式IIおよび式IIIにおいて、Rは、脂肪族ポリマーである。R基を与える脂肪族ポリマーは、任意の合理的な長さを有していてもよいが、好ましくは、数平均分子量は、750g/molより大きい。分子量が750g/mol未満のR基を用いると、有効な乳化剤として作用するには鎖の長さが不十分である。いくつかの実施形態では、脂肪族ポリマーRは、数平均分子量が約750~約10,000g/molであってもよい。いくつかの他の実施形態では、脂肪族ポリマーRは、数平均分子量が約750~約5,000g/molであってもよい。さらなる実施形態では、脂肪族ポリマーは、数平均分子量が約750~約3,000g/molであってもよい。さらなる実施形態では、脂肪族ポリマーは、数平均分子量が約750~約2500g/molであり、例えば、脂肪族ポリマーは、数平均分子量が約750~約1200g/mol、約800~約1200g/mol、約900~約1100g/mol、約950~約1050g/mol、約2000~約2500g/mol、約2100~約2400g/mol、約2200~約2400g/mol、または約2250~約2350g/molであってもよい。さらなる実施形態では、脂肪族ポリマーは、数平均分子量が約950g/molである。別のさらなる実施形態では、脂肪族ポリマーは、数平均分子量が約2300g/mol、さらに他の手法では、約1000g/molである。
【0031】
脂肪族ポリマーRは、2~10個の炭素原子を含む直鎖または分枝鎖の脂肪族モノマーから作られてもよい。さらなる実施形態では、脂肪族ポリマーは、2~6個の炭素原子を含む直鎖または分枝鎖の脂肪族モノマーから作られてもよい。他の実施形態では、脂肪族ポリマーは、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキサン、2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、2,2-ジメチルブタンおよび2,3-ジメチルブタンモノマー、またはこれらの混合物から選択されるモノマーから作られる。ある好ましい実施形態では、脂肪族ポリマーは、イソブチルモノマーから作られる。一実施形態では、カルボン酸出発物質は、ポリイソブチレンコハク酸またはポリイソブチレン無水コハク酸である。
【0032】
いくつかの実施形態では、ポリアルキレングリコールは、数平均分子量が100g/molを超える。さらなる実施形態では、ポリアルキレングリコールは、数平均分子量が約100~約1500g/molである。なおさらなる実施形態では、ポリアルキレングリコールは、数平均分子量が約100~約800g/molである。別のさらなる実施形態では、ポリアルキレングリコールは、数平均分子量が約100~約400g/molである。なおさらなる別の実施形態では、ポリアルキレングリコールは、数平均分子量が約150~約250g/molである。別の実施形態では、ポリアルキレングリコールは、数平均分子量が約200g/molである。さらに他の手法では、ポリアルキレングリコールは、数平均分子量が約200g/mol未満である。
【0033】
一実施形態では、(X基またはY基の)ポリアルキレングリコールは、式-[OA]p-のポリアルキレンオキシド基を含むモノマーから作られる。この基の各Aは、独立して、エチレン、プロピレンおよびブチレンからなる群から選択されるアルキレンおよびこれらの混合物である。場合により、各Aは、独立して、場合により、C1-C6アルキル、C3-C6シクロアルキル、3~6員環のヘテロシクロアルキル、フェニルまたは3~6員環のヘテロアリールの1つ以上の場合で置換されていてもよく、アルキル、シクロアルキル、フェニル、ヘテロシクロアルキルおよびヘテロアリールは、それぞれ独立して、場合により、ハロ、オキソ、シアノ、ニトロ、アミノ、アミド、-OH、-COOHまたは-COO(C1-C4アルキル)のうち1つ以上で置換されている。上のポリアルキレン基の式において、pは、上に定義した分子量を与えるのに適した整数である。なおさらなる手法では、各Aは、独立してエチレンである。一手法では、ポリアルキレングリコール中の上式のpは、2~6の整数である。さらなる実施形態では、pは、3~5の整数である。
【0034】
一実施形態では、式Iの乳化剤化合物は、重量平均分子量が約7000~約50,000g/molであってもよい。別の実施形態では、式Iの乳化剤化合物は、重量平均分子量が約7000~約30,000g/molであってもよい。さらなる実施形態では、式Iの乳化剤化合物は、重量平均分子量が約8000~約20,000g/molであってもよい。なおさらなる実施形態では、式Iの乳化剤化合物は、重量平均分子量が約10,000~約15,000g/mol、例えば、約10,000g/mol、約11,000g/mol、約12,000g/mol、約13,000g/mol、約14,000g/mol、または約15,000g/mol、およびこれらの間の任意の範囲であってもよい。
【0035】
一実施形態では、mは、5~15の整数である。別の実施形態では、mは、6~14の整数である。別の実施形態では、mは、6~13の整数である。別の実施形態では、mは、7~12の整数である。
【0036】
いくつかの手法または実施形態では、ポリアルキレンオキシド基の数平均分子量と直鎖または分枝鎖の脂肪族基の数平均分子量のモル比が選択される。例えば、いくつかの手法では、直鎖または分枝鎖の脂肪族基(R)の数平均分子量は、ポリアルキレンオキシド基の数平均分子量よりも約1.5~約15倍大きく、他の手法では、R基は、約2~約10倍大きく、なおさらなる手法では、R基は、ポリアルキレンオキシド基(-[OA]p-)の数平均分子量よりも約2~約5倍大きい。いくつかの手法では、乳化剤は、数平均分子量が200g/molであるポリアルキレンオキシド基を、数平均分子量が1000g/molである直鎖または分枝鎖脂肪族基と合わせて含み、そのため、分子量は、ポリアルキレンオキシド基の約5倍大きい。他の手法では、乳化剤は、数平均分子量が約1000g/molであるポリアルキレンオキシド基を含むが、この場合には、直鎖または分枝鎖の脂肪族基は、典型的には、数平均分子量が約2300g/molより大きいため、分子量は、ポリアルキレンオキシド基よりも約2.3倍大きい。
【0037】
以前から知られている乳化剤化合物は、一般的に、界面活性剤分子(例えば、ポリアミンまたはポリカルボン酸)、ポリオール、モノカルボン酸およびポリカルボン酸を含む3種類以上のモノマーを含む摩擦調整剤、全てが同じポリマー内に同時に構築されるポリアミンを含む。これらの従来の乳化剤は、モノマー混合物であることに起因して、複雑であり、製造するのに費用がかかり、また、ある場合には、エマルションの安定性を達成するためのより高い処理率、乳化剤の分離、合成の複雑さなどの望ましくない特性を生じる場合がある。従来の乳化剤は、これらの複雑なモノマーの構成に起因して、さらに、高度に分岐している。例えば、従来の乳化剤は、架橋したポリマーを生じ得る、3個以上の官能基OH基またはCOOH基を含むポリアルコールまたはポリ酸を使用するか、または含む。一方、本開示は、単純で高い収量を与える一工程の合成によって、驚くべき低い処理率で安定なエマルションを達成することができ、従来の構造よりも比較的単純で嵩張らない化合物中でエマルションを安定化するため、油から分離しない乳化剤を与える。いくつかの手法では、本開示の乳化剤化合物も、線状ポリマーまたは直鎖ポリマーである。
【0038】
本開示の目的のために、化学元素は、Periodic Table of the Elements、CAS version、Handbook of Chemistry and Physics、第75版にしたがって同定される。さらに、有機化学の一般的な原理は、「Organic Chemistry」、Thomas Sorrell、University Science Books、Sausolito:1999および「March’s Advanced Organic Chemistry」、第5版、編集:Smith、M.B.およびMarch、J.、John Wiley & Sons、New York:2001に記載されており、その内容全体が本明細書に参考として組み込まれる。
【0039】
本明細書で記載される場合、化合物は、1つ以上の置換基、例えば、上に一般的に示したもの、または本開示の特定の分類、副次的な分類、種によって例示されるもので場合により置換されていてもよい。
【0040】
本明細書で使用される場合、「脂肪族」との用語は、アルキル、アルケニル、アルキニルといった用語を包含し、それぞれ、場合により、以下に示すように置換されている。
【0041】
本明細書で使用される場合、「アルキル」基は、1~12個(例えば、1~8個、1~6個または1~4個)の炭素原子を含む飽和脂肪族炭化水素基を指す。アルキル基は、直鎖または分枝鎖であってもよい。アルキル基の例としては、限定されないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、n-ヘプチルまたは2-エチルヘキシルが挙げられる。アルキル基は、1つ以上の置換基、例えば、ハロ、ホスホ、脂環式[例えば、シクロアルキルまたはシクロアルケニル]、ヘテロ脂環式[例えば、ヘテロシクロアルキルまたはヘテロシクロアルケニル]、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アロイル、ヘテロアロイル、アシル[例えば、(脂肪族)カルボニル、(脂環式)カルボニルまたは(ヘテロ脂環式)カルボニル]、ニトロ、シアノ、アミド[例えば、(シクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、アラルキルカルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキル)カルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノ、ヘテロアラルキルカルボニルアミノアルキルアミノカルボニル、シクロアルキルアミノカルボニル、ヘテロシクロアルキルアミノカルボニル、アリールアミノカルボニルまたはヘテロアリールアミノカルボニル]、アミノ[例えば、脂肪族アミノ、脂環式アミノまたはヘテロ脂環式アミノ]、スルホニル[例えば、脂肪族-SO2-]、スルフィニル、スルファニル、スルホキシ、尿素、チオ尿素、スルファモイル、スルファミド、オキソ、カルボキシ、カルバモイル、脂環式オキシ、ヘテロ脂環式オキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アラルキルオキシ、ヘテロアリールアルコキシ、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはヒドロキシで置換されていてもよい(すなわち、場合により置換されている)。限定されないが、置換アルキルのいくつかの例としては、カルボキシアルキル(例えば、HOOC-アルキル、アルコキシカルボニルアルキルおよびアルキルカルボニルオキシアルキル)、シアノアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アシルアルキル、アラルキル、(アルコキシアリール)アルキル、(スルホニルアミノ)アルキル(例えば、(アルキル-SO2-アミノ)アルキル)、アミノアルキル、アミドアルキル、(脂環式)アルキルまたはハロアルキルが挙げられる。
【0042】
本明細書で使用される場合、「アルケニル」基は、2~8個(例えば、2~12個、2~6個または2~4個)の炭素原子と、少なくとも1つの二重結合とを含む脂肪族炭素基を指す。アルキル基と同様に、アルケニル基は、直鎖または分枝鎖であってもよい。アルケニル基の例としては、限定されないが、アリル、イソプレニル、2-ブテニルおよび2-ヘキセニルが挙げられる。アルケニル基は、1つ以上の置換基、例えば、ハロ、ホスホ、脂環式[例えば、シクロアルキルまたはシクロアルケニル]、ヘテロ脂環式[例えば、ヘテロシクロアルキルまたはヘテロシクロアルケニル]、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アロイル、ヘテロアロイル、アシル[例えば、(脂肪族)カルボニル、(脂環式)カルボニルまたは(ヘテロ脂環式)カルボニル]、ニトロ、シアノ、アミド[例えば、(シクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、アラルキルカルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキル)カルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノ、ヘテロアラルキルカルボニルアミノアルキルアミノカルボニル、シクロアルキルアミノカルボニル、ヘテロシクロアルキルアミノカルボニル、アリールアミノカルボニルまたはヘテロアリールアミノカルボニル]、アミノ[例えば、脂肪族アミノ、脂環式アミノ、ヘテロ脂環式アミノまたは脂肪族スルホニルアミノ]、スルホニル[例えば、アルキル-SO2-、脂環式-SO2-またはアリール-SO2-]、スルフィニル、スルファニル、スルホキシ、尿素、チオ尿素、スルファモイル、スルファミド、オキソ、カルボキシ、カルバモイル、脂環式オキシ、ヘテロ脂環式オキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アラルキルオキシ、ヘテロアラルコキシ、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシまたはヒドロキシで場合により置換されていてもよい。限定されないが、置換アルケニルのいくつかの例としては、シアノアルケニル、アルコキシアルケニル、アシルアルケニル、ヒドロキシアルケニル、アラルケニル、(アルコキシアリール)アルケニル、(スルホニルアミノ)アルケニル(例えば、(アルキル-SO2-アミノ)アルケニル)、アミノアルケニル、アミドアルケニル、(脂環式)アルケニルまたはハロアルケニルが挙げられる。
【0043】
本明細書で使用される場合、「アルキニル」基は、2~8個(例えば、2~12個、2~6個または2~4個)の炭素原子と、少なくとも1つの三重結合とを含む脂肪族炭素基を指す。アルキニル基は、直鎖または分枝鎖であってもよい。アルキニル基の例としては、限定されないが、プロパルギルおよびブチニルが挙げられる。アルキニル基は、1つ以上の置換基、例えば、アロイル、ヘテロアロイル、アルコキシ、シクロアルキルオキシ、ヘテロシクロアルキルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アラルキルオキシ、ニトロ、カルボキシ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、スルホ、メルカプト、スルファニル[例えば、脂肪族スルファニルまたは脂環式スルファニル]、スルフィニル[例えば、脂肪族スルフィニルまたは脂環式スルフィニル]、スルホニル[例えば、脂肪族-SO2-、脂肪族アミノ-SO2-または脂環式-SO2-]、アミド[例えば、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アルキルカルボニルアミノ、シクロアルキルアミノカルボニル、ヘテロシクロアルキルアミノカルボニル、シクロアルキルカルボニルアミノ、アリールアミノカルボニル、アリールカルボニルアミノ、アラルキルカルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキル)カルボニルアミノ、(シクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、ヘテロアラルキルカルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノまたはヘテロアリールアミノカルボニル]、尿素、チオ尿素、スルファモイル、スルファミド、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、脂環式、ヘテロ脂環式、アリール、ヘテロアリール、アシル[例えば、(脂環式)カルボニルまたは(ヘテロ脂環式)カルボニル]、アミノ[例えば、脂肪族アミノ]、スルホキシ、オキソ、カルボキシ、カルバモイル、(脂環式)オキシ、(ヘテロ脂環式)オキシまたは(ヘテロアリール)アルコキシで場合により置換されていてもよい。
【0044】
本明細書で使用される場合、「アミド(amido)」は、「アミノカルボニル」と「カルボニルアミノ」を両方とも包含する。これらの用語は、単独で使用される場合、または別の基と組み合わせて使用される場合、アミド基、例えば、末端で使用される場合、-N(RX)-C(O)-RYまたは-C(O)-N(RX)2を指し、内部で使用される場合、-C(O)-N(RX)-または-N(RX)-C(O)-を指し、ここで、RXおよびRYは、以下に定義される。アミド基の例としては、アルキルアミド(例えば、アルキルカルボニルアミノまたはアルキルアミノカルボニル)、(ヘテロ脂環式)アミド、(ヘテロアラルキル)アミド、(ヘテロアリール)アミド、(ヘテロシクロアルキル)アルキルアミド、アリールアミド、アラルキルアミド、(シクロアルキル)アルキルアミドまたはシクロアルキルアミドが挙げられる。
【0045】
本明細書で使用される場合、「アミノ」基は、-NRXRYを指し、ここで、RXおよびRYは、独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、(シクロアルキル)アルキル、アリール、アラルキル、ヘテロシクロアルキル、(ヘテロシクロアルキル)アルキル、ヘテロアリール、カルボキシ、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、(アルキル)カルボニル、(シクロアルキル)カルボニル、((シクロアルキル)アルキル)カルボニル、アリールカルボニル、(アラルキル)カルボニル、(ヘテロシクロアルキル)カルボニル、((ヘテロシクロアルキル)アルキル)カルボニル、(ヘテロアリール)カルボニルまたは(ヘテロアラルキル)カルボニルであり、それぞれが本明細書に定義され、場合により置換されている。アミノ基の例としては、アルキルアミノ、ジアルキルアミノまたはアリールアミノが挙げられる。用語「アミノ」が、末端基ではない場合(例えば、アルキルカルボニルアミノ)、-NRX-によって表される。RXは、上に定義したのと同じ意味を有する。
【0046】
本明細書で使用される場合、「シクロアルキル」基は、3~10個(例えば5~10個)の炭素原子を含む飽和の単環または二環の炭素環(縮合または架橋したもの)を指す。シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、アダマンチル、ノルボルニル、キュビル(cubyl)、オクタヒドロ-インデニル、デカヒドロ-ナフチル、ビシクロ[3.2.1]オクチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、ビシクロ[3.3.1]ノニル、ビシクロ[3.3.2.]デシル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、アダマンチルまたは((アミノカルボニル)シクロアルキル)シクロアルキルが挙げられる。
【0047】
本明細書で使用される場合、「ヘテロシクロアルキル」基は、3~10員環の単環または二環(縮合または架橋したもの)(例えば、5~10員環の単環または二環)の飽和環構造であり、環原子の1つ以上がヘテロ原子(例えば、N、O、S、またはこれらの組み合わせ)である構造を指す。ヘテロシクロアルキル基の例としては、ピペリジル、ピペラジル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフリル、1,4-ジオキソラニル、1,4-ジチアニル、1,3-ジオキソラニル、オキサゾリジル、イソオキサゾリジル、モルホリニル、チオモルホリル、オクタヒドロベンゾフリル、オクタヒドロクロメニル、オクタヒドロチオクロメニル、オクタヒドロインドリル、オクタヒドロピリジニル、デカヒドロキノリニル、オクタヒドロベンゾ[b]チオフェネイル、2-オキサ-ビシクロ[2.2.2]オクチル、1-アザ-ビシクロ[2.2.2]オクチル、3-アザ-ビシクロ[3.2.1]オクチルおよび2,6-ジオキサ-トリシクロ[3.3.1.0]ノニルが挙げられる。単環ヘテロシクロアルキル基は、フェニル部分と縮合し、テトラヒドロイソキノリンなどの構造を形成していてもよく、これはヘテロアリールに分類されるだろう。
【0048】
「ヘテロアリール」基は、本明細書で使用される場合、4~15個の環原子を含み、1個以上の環原子がヘテロ原子(例えば、N、O、S、またはこれらの組み合わせ)であり、単環系が芳香族であるか、または二環系または三環系の環の少なくとも1つが芳香族である、単環、二環または三環の系を指す。ヘテロアリール基は、2~3個の環を含むベンゾ縮合環系を含む。例えば、ベンゾ縮合環は、1個または2個の4~8員環のヘテロ脂環式部分(例えば、インドリジル、インドリル、イソインドリル、3H-インドリル、インドリニル、ベンゾ[b]フリル、ベンゾ[b]チオフェニル、キノリニルまたはイソキノリニル)と縮合したベンゾを含む。ヘテロアリールのいくつかの例は、アゼチジニル、ピリジル、1H-インダゾリル、フリル、ピローリル、チエニル、チアゾリル、オキサゾリル、イミダゾリル、テトラゾリル、ベンゾフリル、イソキノリニル、ベンズチアゾリル、キサンテン、チオキサンテン、フェノチアジン、ジヒドロインドール、ベンゾ[1,3]ジオキソール、ベンゾ[b]フリル、ベンゾ[b]チオフェニル、インダゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、プリル、シンノリル、キノリル、キナゾリル、シンノリル、フタラジル、キナゾリル、キノキサリル、イソキノリル、4H-キノリジル、ベンゾ-1,2,5-チアジアゾリルまたは1,8-ナフチリジルである。
【0049】
限定されないが、単環ヘテロアリールとしては、フリル、チオフェニル、2H-ピローリル、ピローリル、オキサゾリル、チアゾリル(thazolyl)、イミダゾリル、ピラゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、1,3,4-チアジアゾリル、2H-ピラニル、4-H-プラニル、ピリジル、ピリダジル、ピリミジル、ピラゾリル、ピラジルまたは1,3,5-トリアジルが挙げられる。単環ヘテロアリールは、標準的な化学命名法にしたがって番号が付けられる。
【0050】
限定されないが、二環ヘテロアリールとしては、インドリジル、インドリル、イソインドリル、3H-インドリル、インドリニル、ベンゾ[b]フリル、ベンゾ[b]チオフェニル、キノリニル、イソキノリニル、インドリジニル、イソインドリル、インドリル、ベンゾ[b]フリル、ベキソ[b]チオフェニル、インダゾリル、ベンズイミダジル、ベンズチアゾリル、プリニル、4H-キノリジル、キノリル、イソキノリル、シンノリル、フタラジル、キナゾリル、キノキサリル、1,8-ナフチリジルまたはプテリジルが挙げられる。二環ヘテロアリールは、標準的な化学命名法にしたがって番号が付けられる。
【0051】
基油
本開示の乳化剤は、大部分の基油とブレンド可能である。エンジン潤滑剤組成物および/または金属作業組成物(または他の潤滑組成物)の配合に使用するのに適した基油は、適切な合成油、動物油、植物油、鉱物油、またはこれらの混合物のいずれかから選択されてもよい。動物油および植物油(例えば、ラード油、ヒマシ油)および鉱物潤滑油、例えば、液体石油および溶媒処理または酸処理されたパラフィン型、ナフテン型またはパラフィン型とナフテン型の混合の鉱物潤滑油を使用してもよい。石炭または頁岩から誘導される油も適している場合がある。基油は、典型的には、粘度が100℃で約2~約15cSt、または、さらなる例として、約2~約10cStであってもよい。さらに、気-液プロセスから誘導される油も適している。
【0052】
適切な合成基油は、ジカルボン酸のアルキルエステル、ポリグリコールおよびアルコール、ポリ-α-オレフィン(ポリブテンを含む)、アルキルベンゼン、リン酸の有機エステル、ポリシリコーン油を含んでいてもよい。合成油としては、炭化水素油、例えば、ポリマー化およびインターポリマー化したオレフィン(例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、プロピレンイソブチレンコポリマーなど);ポリ(1-ヘキセン)、ポリ-(1-オクテン)、ポリ(1-デセン)など、およびこれらの混合物;アルキルベンゼン(例えば、ドデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン、ジ-ノニルベンゼン、ジ-(2-エチルヘキシル)ベンゼンなど);ポリフェニル(例えば、ビフェニル、ターフェニル、アルキル化ポリフェニルなど);アルキル化ジフェニルエーテルおよびアルキル化ジフェニルスルフィドおよびその誘導体、類似体および同族体などが挙げられる。
【0053】
末端ヒドロキシル基がエステル化、エーテル化などによって修飾されたアルキレンオキシドポリマーおよびインターポリマー、これらの誘導体は、使用可能な別の種類の既知の合成油を構成する。このような油は、エチレンオキシドまたはプロピレンオキシドの重合によって作られる油、これらのポリオキシアルキレンポリマーのアルキルおよびアリールエーテル(例えば、平均分子量が約1000のメチル-ポリイソプロピレングリコールエーテル、分子量が約500~1000のポリエチレングリコールのジフェニルエーテル、分子量が約1000~1500のポリプロピレングリコールのジエチルエーテルなど)またはこれらのモノカルボン酸エステルおよびポリカルボン酸エステル、例えば、酢酸エステル、混合したC3-C8脂肪酸エステル、またはテトラエチレングリコールのC13オキソ酸ジエステルによって例示される。
【0054】
使用可能な別の種類の合成油としては、ジカルボン酸(例えば、フタル酸、コハク酸、アルキルコハク酸、アルケニルコハク酸、マレイン酸、アゼライン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、アジピン酸、リノール酸ダイマー、マロン酸、アルキルマロン酸、アルケニルマロン酸など)と、種々のアルコール(例えば、ブチルアルコール、ヘキシルアルコール、ドデシルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノエーテル、プロピレングリコールなど)とのエステルが挙げられる。これらのエステルの具体例としては、ジブチルアジペート、ジ(2-エチルヘキシル)セバケート、ジ-n-ヘキシルフマレート、セバシン酸ジオクチル、アゼライン酸ジイソオクチル、アゼライン酸ジイソデシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジデシル、セバシン酸ジエイコシル、リノール酸ダイマーの2-エチルヘキシルジエステル、1モルのセバシン酸と2モルのテトラエチレングリコールと2モルの2-エチルヘキサン酸を反応させることによって作られる複雑なエステルなどが挙げられる。
【0055】
合成油として有用なエステルとしては、C5~C12モノカルボン酸、ポリオールポリオールエーテル(例えば、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトールなど)から作られるものも挙げられる。
【0056】
したがって、本明細書に記載のエンジンおよび/または金属作業用の潤滑剤組成物を製造するために使用可能な、使用される基油は、American Petroleum Institute(API) Base Oil Interchangeability Guidelinesに特定されるグループI~Vの基油のいずれかから選択されてもよい。このような基油のグループは、以下の通りである。
【0057】
【0058】
基油は、少量または主要な量のポリ-α-オレフィン(PAO)を含んでいてもよい。典型的には、ポリ-α-オレフィンは、約4~約30個、または約4~約20個、または約6~約16個の炭素原子を含むモノマーから誘導される。有用なPAOの例としては、オクテン、デセンから誘導されるもの、これらの混合物などが挙げられる。PAOは、粘度が、100℃で約2~約15、または約3~約12、または約4~約8cStである。PAOの例としては、100℃で4cStのポリ-α-オレフィン、100℃で6cStのポリ-α-オレフィン、およびこれらの混合物が挙げられる。鉱物油と上述のポリ-α-オレフィンとの混合物を使用してもよい。
【0059】
基油は、フィッシャー・トロプシュ法によって合成された炭化水素から誘導される油であってもよい。フィッシャー・トロプシュ法によって合成された炭化水素は、フィッシャー・トロプシュ触媒を用い、H2とCOとを含む合成ガスから作られる。このような炭化水素は、典型的には、基油として有用なものにするために、さらなる処理を必要とする。例えば、炭化水素は、米国特許第6,103,099号または第6,180,575号に開示されるプロセスを用いて水素異性化されていてもよく、米国特許第4,943,672号または第6,096,940号に開示されるプロセスを用いてハイドロクラッキングまたは水素異性化されていてもよく、米国特許第5,882,505号に開示される方法を用いて脱ロウされていてもよく、または米国特許第6,013,171号、第6,080,301号または第6,165,949号に開示されるプロセスを用いて水素異性化され、脱ロウされていてもよい。
【0060】
本明細書で上に開示した種類の天然または合成のいずれかの未精製油、精製油、再精製油(およびこれら任意の2つ以上の混合物)を基油に使用してもよい。未精製油は、さらに精製処理を行うことなく、天然源または合成源から直接的に得られるものである。例えば、乾留操作から直接的に得られるシェール油、一次蒸留から直接的に得られる石油、またはエステル化プロセスから直接的に得られ、さらなる処理を行うことなく使用されるエステル油が、未精製油であろう。精製油は、1つ以上の精製工程でさらに処理され、1つ以上の特性が向上していることを除き、未精製油と似ている。多くのこのような精製技術は、当業者には知られており、例えば、溶媒抽出、二次蒸留、酸または塩基による抽出、濾過、パーコレーションなどである。再精製油は、既に使用済みの精製油に適用される、精製油を得るために使用されるものと同様のプロセスによって得られる。このような再精製油は、再生油または再処理油としても知られており、多くは、使用済みの添加剤、混入物質および油分解生成物の除去に関する技術によって、さらに処理される。
【0061】
基油を、エンジン潤滑剤組成物を与える任意要素の添加剤と共に、本明細書に記載の乳化剤と合わせてもよい。したがって、基油は、エンジン潤滑剤組成物中に、潤滑剤組成物の合計重量を基準として、約50wt%~約95wt%の範囲の主要な量で存在していてもよい。
【0062】
潤滑油の他の任意の添加剤を以下に記載する。
【0063】
金属を含有する洗剤
上述の分散剤反応生成物と共に使用可能な金属洗剤は、一般的に、長い疎水性尾部を有する極性頭部を含み、極性頭部は、酸性有機化合物の金属塩を含む。この塩は、実質的に化学量論量の金属を含有していてもよく、この場合、通常は正塩または中性塩として記述され、典型的には、TBNの全塩基数(ASTM D2896によって測定される場合)が、約0から約150未満である。過剰量の金属化合物(例えば、酸化物または水酸化物)と酸性気体(例えば二酸化炭素)とを反応させることによって、大量の金属塩基が含まれてもよい。得られた過塩基化洗剤は、無機金属塩基(例えば、水和した炭酸塩)のコアの周囲に、中和された洗剤のミセルを含む。このような過塩基化洗剤は、TBNが約150以上、例えば、約150~約450、またはもっと大きくてもよい。
【0064】
本実施形態で使用するのに適していると思われる洗剤としては、油溶性の過塩基化し、塩基が少ない、金属(特に、アルカリ金属またはアルカリ土類金属、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、マグネシウム)の中性のスルホネート、フェネート、硫化フェネート、サリチレートが挙げられる。1種類より多い金属が存在していてもよく、例えば、カルシウムとマグネシウムが両方とも存在していてもよい。カルシウムおよび/またはマグネシウムとナトリウムとの混合物も適切な場合がある。適切な金属洗剤は、TBNが150~450TBNの過塩基化カルシウムまたはマグネシウムスルホネート、TBNが150~300TBNの過塩基化カルシウムまたはマグネシウムフェネートまたは硫化フェネート、TBNが130~350の過塩基化カルシウムまたはマグネシウムサリチレートであってもよい。このような塩の混合物も使用可能である。
【0065】
金属を含有する洗剤は、潤滑組成物中に、約0.5wt%~約5wt%の量で存在していてもよい。さらなる例として、金属を含有する洗剤は、約1.0wt%~約3.0wt%の量で存在していてもよい。金属を含有する洗剤は、潤滑組成物中に、潤滑剤組成物の合計重量を基準として約500~約5000ppmのアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を潤滑剤組成物に与えるのに十分な量で存在していてもよい。さらなる例として、金属を含有する洗剤は、潤滑組成物中に、約1000~約3000ppmのアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を与えるのに十分な量で存在していてもよい。
【0066】
リン系の摩耗防止剤
リン系の摩耗防止剤を使用してもよく、リン系の摩耗防止剤は、金属ジヒドロカルビルジチオホスフェート化合物、例えば、限定されないが、亜鉛ジヒドロカルビルジチオホスフェート化合物を含んでいてもよい。適切な金属ジヒドロカルビルジチオホスフェートは、ジヒドロカルビルジチオホスフェート金属塩を含んでいてもよく、ここで、金属は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属、またはアルミニウム、鉛、スズ、モリブデン、マンガン、ニッケル、銅または亜鉛であってもよい。
【0067】
ジヒドロカルビルジチオホスフェート金属塩は、まず、通常は1種類以上のアルコールまたはフェノールとP2S5との反応によってジヒドロカルビルジチオリン酸(DDPA)を生成し、次いで、生成したDDPAを金属化合物で中和することによって、既知の技術によって調製されてもよい。例えば、ジチオリン酸は、一級アルコオールと二級アルコールの混合物を反応させることによって作られてもよい。または、片方のジチオリン酸上のヒドロカルビル基が完全に2級の特徴を有し、他方のジチオリン酸上のヒドロカルビル基が完全に一級の特徴を有する複数のジチオリン酸を調製してもよい。金属塩を製造するために、任意の塩基性または中性の金属化合物が使用可能であるが、酸化物、水酸化物および炭酸塩が最も一般的に用いられる。市販の添加剤は、中和反応に過剰な塩基性金属化合物を使用するため、過剰量の金属を含んでいることが多い。
【0068】
亜鉛ジヒドロカルビルジチオホスフェート(ZDDP)は、ジヒドロカルビルジチオリン酸の油溶性塩であり、以下の式によって表されてもよく、
【0069】
【0070】
式中、RとR’は、1~18個、例えば2~12個の炭素原子を含む、同じかまたは異なるヒドロカルビル基であってもよく、アルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、アルカリールおよび脂環式基を含む。R基およびR’基は、2~8個の炭素原子を含むアルキル基であってもよい。したがって、この基は、例えば、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、sec-ブチル、アミル、n-ヘキシル、i-ヘキシル、n-オクチル、デシル、ドデシル、オクタデシル、2-エチルヘキシル、フェニル、ブチルフェニル、シクロヘキシル、メチルシクロペンチル、プロペニル、ブテニルであってもよい。油溶性を得るために、ジチオリン酸中の炭素原子の合計数(すなわち、RおよびR’)は、一般的に、約5以上であろう。したがって、亜鉛ジヒドロカルビルジチオホスフェートは、亜鉛ジアルキルジチオホスフェートを含んでいてもよい。
【0071】
リン系の摩耗防止剤として利用可能な他の適切な要素としては、任意の適切な有機リン化合物、例えば、限定されないが、ホスフェート、チオホスフェート、ジ-チオホスフェート、ホスファイト、およびこれらの塩、およびホスホネートが挙げられる。適切な例は、トリクレシルホスフェート(TCP)、ジ-アルキルホスファイト(例えば、ジブチル水素ホスファイト)、およびアミル酸ホスフェートである。
【0072】
別の適切な要素は、ホスホリル化コハク酸イミド、例えば、ヒドロカルビル置換コハク酸アシル化剤と、リン源(例えば、無機または有機の亜リン酸またはエステル)と合わせたポリアミンとの反応の完結した反応生成物である。さらに、一級アミノ基および無水物部分の反応から得られる種類のイミド結合に加え、生成物がアミド、アミジン、および/または塩結合であってもよい化合物を含んでいてもよい。
【0073】
リン系の摩耗防止剤は、潤滑組成物中に、約200~約2000ppmのリンを与えるのに十分な量で存在していてもよい。さらなる例として、リン系の摩耗防止剤は、潤滑組成物中に、約500~約800ppmのリンを与えるのに十分な量で存在していてもよい。
【0074】
リン系の摩耗防止剤は、潤滑組成物中に、潤滑組成物中のリン合計量を基準としたリン含有量(ppm)に対する、潤滑組成物中のアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属合計量を基準としたアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属含有量(ppm)の比率が約1.6~約3.0(ppm/ppm)になるのに十分な量で存在していてもよい。
【0075】
摩擦調整剤
本開示の実施形態は、1つ以上の摩擦調整剤を含んでいてもよい。適切な摩擦調整剤は、金属を含有する摩擦調整剤および金属を含まない摩擦調整剤を含んでいてもよく、限定されないが、イミダゾリン、アミド、アミン、コハク酸イミド、アルコキシル化アミン、アルコキシル化エーテルアミン、アミンオキシド、アミドアミン、ニトリル、ベタイン、四級アミン、イミン、アミン塩、アミノグアニジン、アルカノールアミド、ホスホネート、金属含有化合物、グリセロールエステルなどを含んでいてもよい。
【0076】
適切な摩擦調整剤は、ヒドロカルビル基を含んでいてもよく、ヒドロカルビル基は、直鎖、分枝鎖、または芳香族のヒドロカルビル基、またはこれらの混合物から選択され、飽和または不飽和であってもよい。ヒドロカルビル基は、炭素と水素またはヘテロ原子(例えば、硫黄または酸素)で構成されていてもよい。ヒドロカルビル基は、約12~25個の炭素原子の範囲であってもよく、飽和または不飽和であってもよい。
【0077】
アンモニア由来の摩擦調整剤は、ポリアミンのアミドを含んでいてもよい。このような化合物は、直鎖の飽和または不飽和であるか、またはこれらの混合物であるヒドロカルビル基を有していてもよく、約12~約25個の炭素原子を含んでいてもよい。
【0078】
適切な摩擦調整剤のさらなる例としては、アルコキシル化アミンおよびアルコキシル化エーテルアミンが挙げられる。このような化合物は、ヒドロカルビル基を有していてもよく、ヒドロカルビル基は、直鎖の飽和または不飽和、またはこれらの混合物である。このような化合物は、約12~約25個の炭素原子を含んでいてもよい。例としては、エトキシル化アミンおよびエトキシル化エーテルアミンが挙げられる。
【0079】
アミンおよびアミドは、そのまま使用されてもよく、またはホウ素化合物との付加物または反応生成物の形態、例えば、酸化ホウ素、ハロゲン化ホウ素、メタホウ酸塩、ホウ酸、またはモノ-、ジ-またはトリ-アルキルボレートで使用されてもよい。他の適切な摩擦調整剤は、米国特許第6,300,291号(本明細書に参考として組み込まれる)に記載される。
【0080】
他の適切な摩擦調整剤としては、有機の無灰(金属を含まない)、窒素を含まない有機摩擦調整剤が挙げられるだろう。このような摩擦調整剤は、カルボン酸および無水物とアルカノールとを反応させることによって作られるエステルを含んでいてもよい。他の有用な摩擦調整剤は、一般的に、親油性炭化水素鎖に共有結合した極性末端基(例えば、カルボキシルまたはヒドロキシル)を含む。カルボン酸および無水物とアルカノールとのエステルは、米国特許第4,702,850号に記載されている。有機無灰の窒素を含まない摩擦調整剤の別の例は、一般的に、グリセロールモノオレエート(GMO)として知られ、オレイン酸のモノエステルとジエステルを含んでいてもよい。他の適切な摩擦調整剤は、米国特許第6,723,685号(本明細書に参考として組み込まれる)に記載される。無灰摩擦調整剤は、潤滑剤組成物中に、潤滑剤組成物の合計重量を基準として、約0.1~約0.4重量%の範囲の量で存在していてもよい。
【0081】
適切な摩擦調整剤は、1つ以上のモリブデン化合物も含んでいてもよい。モリブデン化合物は、モリブデンジチオカルバメート(MoDTC)、モリブデンジチオホスフェート、モリブデンジチオホスフィネート、モリブデンキサンテート、モリブデンチオキサンテート、硫化モリブデン、三核有機モリブデン化合物、モリブデン/アミン錯体、およびこれらの混合物からなる群から選択されてもよい。
【0082】
さらに、モリブデン化合物は、酸性モリブデン化合物であってもよい。含まれるのは、モリブデン酸、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、および他のモリブデン酸アルカリ金属塩および他のモリブデン塩、例えば、モリブデン酸水素ナトリウム、MoOCl4、MoO2Br2、Mo2O3Cl6、三酸化モリブデンまたは同様の酸性モリブデン化合物である。または、例えば、米国特許第4,263,152号;第4,285,822号;第4,283,295号;第4,272,387号;第4,265,773号;第4,261,843号;第4,259,195号;第4,259,194号;国際公開第94/06897号に記載されるような塩基性窒素化合物のモリブデン/硫黄錯体によって、モリブデンを含む組成物が与えられてもよい。
【0083】
適切なモリブデンジチオカルバメートは、下式によって表されてもよく、
【0084】
【0085】
式中、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立して、水素原子、C1~C20アルキル基、C6~C20シクロアルキル、アリール、アルキルアリール、またはアラルキル基、またはエステル基、エーテル基、アルコール基またはカルボキシル基を含有するC3~C20ヒドロカルビル基を表し;X1、X2、Y1およびY2は、それぞれ独立して、硫黄原子または酸素原子を表す。
【0086】
R1、R2、R3およびR4それぞれについて適切な基の例としては、2-エチルヘキシル、ノニルフェニル、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、t-ブチル、n-ヘキシル、n-オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、トリデシル、ラウリル、オレイル、リノレイル、シクロヘキシルおよびフェニルメチルが挙げられる。R1~R4は、それぞれ、C6~C18アルキル基を含んでいてもよい。X1とX2は、同じであってもよく、Y1とY2は、同じであってもよい。X1とX2は、両方とも硫黄原子を含んでいてもよく、Y1とY2は、両方とも酸素原子を含んでいてもよい。
【0087】
モリブデンジチオカルバメートのさらなる例としては、C6~C18ジアルキルまたはジアリールジチオカルバメート、またはアルキル-アリールジチオカルバメート、例えば、ジブチル-、ジアミル-ジ-(2-エチル-ヘキシル)-、ジラウリル-、ジオレイル-およびジシクロヘキシル-ジチオカルバメートが挙げられる。
【0088】
別の種類の適切な有機モリブデン化合物は、三核モリブデン化合物、例えば、式Mo3SkLnQzを有するもの、およびこれらの混合物であり、ここで、Lは、独立して、化合物を油に可溶性または分散性にするのに十分な数の炭素原子を含む有機基を有する選択された配位子を表し、nは、1~4であり、kは、4~7を変動し、Qは、中性の電子供与性化合物の群、例えば、水、アミン、アルコール、ホスフィンおよびエーテルから選択され、zは、0~5の範囲であり、非化学量論的な値を含む。少なくとも21個、例えば、少なくとも25個、少なくとも30個、または少なくとも35個の炭素原子の合計炭素原子が、全ての配位子の有機基に存在していてもよい。さらなる適切なモリブデン化合物は、米国特許第6,723,685号(本明細書に参考として組み込まれる)に記載される。
【0089】
モリブデン化合物は、完全に配合されたエンジン潤滑剤中に、重量基準で約5ppm~500ppmのモリブデンを与えるような量で存在していてもよい。さらなる例として、モリブデン化合物は、重量基準で約50ppm~300ppmのモリブデンを与えるような量で存在していてもよい。特に適切な量のモリブデン化合物は、潤滑剤組成物に対し、約60~約250ppmのモリブデンを与えるのに十分な量であってもよい。
【0090】
消泡剤
いくつかの実施形態では、泡抑制剤は、組成物中で使用するのに適した別の要素を形成してもよい。泡抑制剤は、シリコーン、ポリアクリレートなどから選択されてもよい。本明細書に記載するエンジン潤滑剤配合物中の消泡剤の量は、配合物の合計重量を基準として、約0.001wt%~約0.1wt%の範囲であってもよい。さらなる例として、消泡剤は、約0.004wt%~約0.008wt%の量で存在していてもよい。
【0091】
酸化抑制剤要素
酸化抑制剤または酸化防止剤は、使用中にベースストックが劣化する傾向を低減し、この劣化は、酸化生成物(例えば、金属表面に堆積するスラッジおよびワニス様沈殿物)によって、また、最終的な潤滑剤の粘度上昇によって実証することができる。このような酸化抑制剤としては、嵩高いフェノール、硫化された嵩高いフェノール、C5~C12アルキル側鎖を有するアルキルフェノールチオエステルのアルカリ土類金属塩、硫化アルキルフェノール、硫化アルキルフェノールまたは非硫化アルキルフェノールの金属塩、例えば、カルシウムノニルフェノールスルフィド、無灰油溶性フェネートおよび硫化フェネート、ホスホ硫化炭化水素または硫化炭化水素、リンエステル、金属チオカルバメト、および米国特許第4,867,890号に記載されるような油溶性銅化合物が挙げられる。
【0092】
使用可能な他の酸化防止剤としては、立体的に嵩高いフェノールおよびそのエステル、ジアリールアミン、アルキル化フェノチアジン、硫化化合物および無灰ジアルキルジチオカルバメートが挙げられる。立体的に嵩高いフェノールの非限定的な例としては、限定されないが、2,6-ジ-第三級ブチルフェノール、2,6 ジ-第三級ブチルメチルフェノール、4-エチル-2,6-ジ-第三級ブチルフェノール、4-プロピル-2,6-ジ-第三級ブチルフェノール、4-ブチル-2,6-ジ-第三級ブチルフェノール、4-ペンチル-2,6-ジ-第三級ブチルフェノール、4-ヘキシル-2,6-ジ-第三級ブチルフェノール、4-ヘプチル-2,6-ジ-第三級ブチルフェノール、4-(2-エチルヘキシル)-2,6-ジ-第三級ブチルフェノール、4-オクチル-2,6-ジ-第三級ブチルフェノール、4-ノニル-2,6-ジ-第三級ブチルフェノール、4-デシル-2,6-ジ-第三級ブチルフェノール、4-ウンデシル-2,6-ジ-第三級ブチルフェノール、4-ドデシル-2,6-ジ-第三級ブチルフェノール、メチレン架橋した立体的に嵩高いフェノール(限定されないが、米国特許出願公開第2004/0266630号に記載されるような、4,4-メチレンビス(6-tert-ブチル-o-クレゾール)、4,4-メチレンビス(2-tert-アミル-o-クレゾール)、2,2-メチレンビス(4-メチル-6tert-ブチルフェノール、4,4-メチレン-ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、およびこれらの混合物を含む)が挙げられる。
【0093】
ジアリールアミン酸化防止剤としては、限定されないが、下式を有するジアリールアミンが挙げられ、
【0094】
【0095】
式中、R’およびR’’は、それぞれ独立し、6~30個の炭素原子を含む置換または非置換のアリール基を表す。アリール基の置換基の具体例としては、脂肪族炭化水素基、例えば、1~30個の炭素原子を含むアルキル、ヒドロキシ基、ハロゲン基、カルボン酸基またはエステル基、またはニトロ基が挙げられる。
【0096】
アリール基は、好ましくは、置換または非置換のフェニルまたはナフチルであり、特に、アリール基の片方または両方が、4~30個の炭素原子、好ましくは4~18個の炭素原子、最も好ましくは4~9個の炭素原子を含む少なくとも1個のアルキルで置換されている。片方または両方のアリール基が置換されているもの、例えば、モノ-アルキル化ジフェニルアミン、ジ-アルキル化ジフェニルアミン、またはモノ-アルキル化ジフェニルアミンとジ-アルキル化ジフェニルアミンの混合物が好ましい。
【0097】
ジアリールアミンは、分子内に1個より多い窒素原子を含む構造を有していてもよい。したがって、ジアリールアミンは、少なくとも2個の窒素原子を含んでいてもよく、ここで、例えば、二級窒素原子と、その窒素原子の上に2個のアリールを有する種々のジアミンの場合のように、少なくとも1個の窒素原子が、それに接続する2個のアリール基を有している。
【0098】
使用可能なジアリールアミンの例としては、限定されないが:ジフェニルアミン;種々のアルキル化ジフェニルアミン;3-ヒドロキシジフェニルアミン;N-フェニル-1,2-フェニレンジアミン;N-フェニル-1,4-フェニレンジアミン;モノブチルジフェニル-アミン;ジブチルジフェニルアミン;モノオクチルジフェニルアミン;ジオクチルジフェニルアミン;モノノニルジフェニルアミン;ジノニルジフェニルアミン;モノテトラデシルジフェニルアミン;ジテトラデシルジフェニルアミン、フェニル-α-ナフチルアミン;モノオクチルフェニル-α-ナフチルアミン;フェニル-β-ナフチルアミン;モノヘプチルジフェニルアミン;ジヘプチル-ジフェニルアミン;p-配向のスチレン化ジフェニルアミン;混合したブチルオクチルジ-フェニルアミン;および混合したオクチルスチリルジフェニルアミンが挙げられる。
【0099】
硫黄を含有する酸化防止剤としては、限定されないが、硫化オレフィンが挙げられ、その製造に使用されるオレフィンの種類と、酸化防止剤の最終的な硫黄含有量によって特徴付けられる。高分子量オレフィン、すなわち、平均分子量が168~351g/moleのオレフィンが好ましい。使用可能なオレフィンの例としては、α-オレフィン、異性体化したα-オレフィン、分岐したオレフィン、環状オレフィン、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0100】
α-オレフィンとしては、限定されないが、任意のC4~C25α-オレフィンが挙げられる。α-オレフィンは、硫黄化反応の前、または硫黄化反応の間に、異性体化していてもよい。内部の二重結合および/または分岐を含むα-オレフィンの構造異性体および/または配座異性体も使用可能である。例えば、イソブチレンは、α-オレフィン1-ブテンの分岐したオレフィン相当物である。
【0101】
オレフィンの硫化反応に使用可能な硫黄源としては、原子状硫黄、一塩化硫黄、二塩化硫黄、硫化ナトリウム、ナトリウムポリスルフィド、およびこれらの混合物、または硫化プロセスの異なる段階での混合物が挙げられる。
【0102】
不飽和油は、その不飽和度のため、硫黄化も可能であり、酸化防止剤として使用されてもよい。使用可能な油または脂肪の例としては、トウモロコシ油、キャノーラ油、綿実油、グレープシード油、オリーブ油、パーム油、ピーナッツ油、ココナツ油、菜種油、ベニバナシード油、ゴマシード油、大豆油、ヒマワリシード油、タロー、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0103】
最終的な潤滑剤に入る硫化オレフィンまたは硫化脂肪族油の量は、硫化オレフィンまたは脂肪族油の硫黄含有量、最終的な潤滑剤に入る所望な硫黄レベルに基づく。例えば、20wt%の硫黄を含有する硫化脂肪族油またはオレフィンは、1.0wt%処理レベルで最終的な潤滑剤に加えられる場合、最終的な潤滑剤に2000ppmの硫黄が入るだろう。10wt%の硫黄を含有する硫化脂肪族油またはオレフィンは、1.0wt%処理レベルで最終的な潤滑剤に加えられる場合、最終的な潤滑剤に1000ppmの硫黄が入るだろう。最終的な潤滑剤に200ppm~2000ppmの硫黄を入れる硫化オレフィンまたは硫化脂肪族油が望ましい。
【0104】
適切なエンジン潤滑剤は、広い範囲および狭い範囲で、表2に列挙した範囲で添加剤要素を含んでいてもよい。基油は、潤滑剤の残余である。
【0105】
【0106】
本明細書に記載される潤滑剤組成物に含まれてもよいさらなる任意要素の添加剤としては、限定されないが、防錆剤、乳化剤、乳化破壊剤、油溶性チタン含有添加剤が挙げられる。
【0107】
本明細書に記載の組成物に配合する際に使用される添加剤を、個々に、または種々の部分的な組み合わせで基油にブレンドしてもよい。しかし、添加剤濃縮物を用い、全ての要素(すなわち、添加剤と希釈剤、例えば、炭化水素溶媒)を同時にブレンドすることが適している場合がある。添加剤濃縮物の使用は、添加剤濃縮物の形態では、成分の組み合わせによって得られる相互相溶性を利用してもよい。また、濃縮物の使用は、混合時間を短くする可能性があり、混合を間違える可能性を減らす可能性がある。
【0108】
本開示は、具体的には自動車用エンジン潤滑剤として使用するために配合された新規潤滑油ブレンドを提供する。本開示の実施形態は、酸化防止性、摩耗防止性能、防錆、燃料経済、水の認容性、空気の入り込み、密封による保護、泡低減特性の1つ以上の特徴において向上がみられる、エンジン用途に適した潤滑油を提供するだろう。
【0109】
本発明の乳化剤を金属作業液に使用してもよい。このような手法では、乳化剤は、約0.01~約1.0重量%の量で使用されてもよい。
【0110】
種々の他の添加剤が金属作業液中に存在していてもよい。非限定的な例としては、カップリング剤、摩耗防止添加剤、極圧添加剤、例えば、リン化合物、例えば、リン酸エステルおよび硫黄化合物、例えば、ポリスルフィド、酸化防止剤、pHバッファー、油(例えば、ナフテン油またはパラフィン油)、水(例えば、水道水、蒸留水、脱イオン水、処理済み水など)、ホルムアミドを放出する殺生物剤およびホルムアルデヒドを含まない殺生物剤の両方を含む殺生物剤(例えば、殺菌剤または殺真菌剤)、泡抑制剤、防錆剤、潤滑剤、例えば、リシノレイン酸またはその自己重合した態様、腐食抑制剤、ポリマーなどが挙げられる。これらの多くは市販されている。
【0111】
腐食抑制剤の非限定的な例としては、カルボン酸のアルカリ塩およびアルカノールアミン塩、ウンデカンニ酸/ドデカンニ酸およびその塩、C4-22カルボン酸およびそれらの塩、ホウ酸、化合物およびそれらの塩、トリトリアゾールおよびその塩、ベンゾトリアゾールおよびその塩、イミダゾリンおよびその塩、アルカノールアミンおよびアミド、スルホネート、ナフテン酸のアルカリ塩およびアルカノールアミン塩、リン酸エステルアミン塩、アルカリ硝酸塩、アルカリ炭酸塩、カルボン酸誘導体、アルキルスルホンアミドカルボン酸、アリールスルホンアミドカルボン酸、脂肪族サルシド、フェノキシ誘導体およびモリブデン酸ナトリウムが挙げられる。他の非限定的な例としては、第三級ポリアミン、例えば、ペンタメチルジプロピル-トリアミンおよびその塩、例えば、EP2930229(A1)号に教示されるようなアルキルポリアルキレングリコールエーテルホスフェート塩が挙げられる。他の例としては、金属(例えば、アルミニウム、銅および他の黄色金属、例えば真鍮)を受動態化するか、または金属の染色を防ぐ生成物が挙げられる。これらの多くは市販されている。
【0112】
一般的な合成
上述の本開示の乳化剤は、一般的な合成戦略または以下のスキーム1に記載される反応によって、製造することができ、ここで、変数R、Rb、A、X、Yおよびmは、本明細書に記載される。このスキームから、触媒存在下、置換コハク酸または無水物をポリアルキレングリコールと反応させ、式Iのポリマー乳化剤を製造することができることが示されている。一手法では、反応混合物に他の反応剤は含まれない。反応は、溶媒存在下で行われてもよく、無溶媒条件で行われてもよい。反応は、触媒存在下で行うこともできる。いくつかの実施形態では、触媒は、酸触媒である。いくつかの実施形態では、触媒は、有機酸である。さらなる実施形態では、酸触媒は、スルホン酸触媒である。特定の実施形態では、触媒は、p-トルエンスルホン酸(PTSA)である。さらにいくつかの他の実施形態では、触媒は、ルイス酸触媒、例えば、遷移金属錯体である。いくつかの実施形態では、遷移金属は、アルミニウムまたはチタンである。
【0113】
いくつかの実施形態では、反応は、無水物またはジカルボン酸とポリアルキレングリコールの比が約0.1~1.0対約1.0~0.1の範囲のモル比で反応剤を反応容器に加えることによって行われる。一実施形態では、反応は、無水物またはジカルボン酸とポリアルキレングリコールの比が1:1のモル比で反応剤を反応容器に加えることによって行われる。別の実施形態では、反応は、無水物またはジカルボン酸とポリアルキレングリコールをほぼ1:1のモル比で、ポリアルキレングリコールに対して無水物またはジカルボン酸がわずかにモル過剰になるように反応剤を反応容器に加えることによって行われる。一実施形態では、わずかに過剰は、10%未満のモル過剰である。一実施形態では、わずかに過剰は、5%未満のモル過剰である。一実施形態では、わずかに過剰は、1%未満のモル過剰である。一実施形態では、わずかに過剰は、0.1%未満のモル過剰である。一実施形態では、わずかに過剰は、0.01%未満のモル過剰である。一実施形態では、わずかに過剰は、0.001%未満のモル過剰である。一実施形態では、わずかに過剰は、0.0001%未満のモル過剰である。一実施形態では、わずかに過剰は、0.00001%未満のモル過剰である。
【0114】
スキーム1:式Iの乳化剤化合物の一般的な合成
【0115】
【0116】
材料および方法
【0117】
本明細書に記載の反応を、オーバーヘッド撹拌機、水除去凝集器、温度プローブ、窒素供給部を備える500mLのフラスコ内で行った。必要な場合、反応物をイソマントル(isomantle)を用いて加熱した。
【0118】
ポリイソブチレン無水コハク酸(PIBSA)化合物は、Vertellusによって供給された。ポリエチレングリコール(PEG)は、BASFによって供給された。p-トルエンスルホン酸(PTSA)は、VWR Internationalによって供給された。
【0119】
実施例
本明細書に記載の乳化剤をさらに完全に理解するために、以下の実施例を示す。これらの一般的な例および具体的な例は、単なる説明のためのものであり、いかなる様式にも本開示を限定すると解釈すべきではないことを理解すべきである。特に言及されていない限り、全ての比および割合は、重量基準である。
【0120】
実施例1
【0121】
本実施例は、ポリイソブチレン(PIB)無水コハク酸(SA)を調製する方法であって、PIB基の数平均分子量が1000g/molであり、数平均分子量が200g/molであるポリエチレングリコール(PEG)と反応させ、PIBSA(1000)-PEG(200)乳化剤を生成し、ここで、Zは、HまたはPIBSA残基であり、p-トルエンスルホン酸(PTSA)触媒を用い、以下の反応スキームを用いる方法を提供する。
【0122】
【0123】
PIBSA-1000(約510g)およびPEG-200(約100g)(モル比1:1、非常にわずかにPIBSAが過剰)を約20℃で撹拌した。次いで、p-トルエンスルホン酸(PTSA)触媒(約6g)を加え、酸価が約5mg KOH未満になるまで(約15時間)、混合物を窒素下で撹拌しつつ約210℃まで加熱した。得られた生成物は、約20℃の室温では、非常に粘性が高く、透明褐色の液体であった。
【0124】
実施例2
【0125】
実施例1の生成物を、ASTM D7563-10(E-85 Emulsion Test)を用いて試験した。標準的な乗用車に適したガソリンエンジンオイル(約185mL)を、約0.025、0.05、0.2重量%の濃度で実施例1の乳化剤と混合することによって、エンジンオイル/乳化剤ブレンドを調製した。この実験は、乳化剤を含まない0%コントロールも含んでいた。
【0126】
次いで、エンジンオイル/乳化剤ブレンド(約185mL)を、高速ミキサーで、約10,000rpmで約60秒間、水(約18.5mL)、E-85燃料(エタノール85%と無鉛ガソリン15%のブレンド、約18.5mL)と混合した。約100mLの各混合物をメスシリンダーに入れ、次いで、これを約22℃で約24時間保存した。次いで、得られた混合物について、相分離を観察した。試験油混合物は、24時間後に水層がまったく存在しないとき、ASTM D7563-10試験に合格である。
【0127】
この結果から、0%コントロールのみが水層を含んでいることを発見し(~15mL)、実施例1の乳化剤(0.025%~0.2%)を含有する全てのサンプルがこの試験に合格し、分離した水層を含まないことを示した。したがって、本開示の乳化剤は、かなり低い処理率で、ある場合には、従来の乳化剤の従来の処理率の半分以下で、安定なエマルションを達成する。
【0128】
これらの詳細な記載と組み合わせて本開示を記載してきたが、上の記載は、説明することを意図したものであり、本開示の範囲を限定するものと理解すべきではなく、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義される。他の態様、利点および改変は、特許請求の範囲内である。