(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】タンクの施工方法
(51)【国際特許分類】
E04H 7/06 20060101AFI20221207BHJP
【FI】
E04H7/06 302
(21)【出願番号】P 2019011975
(22)【出願日】2019-01-28
【審査請求日】2021-10-15
(73)【特許権者】
【識別番号】592009281
【氏名又は名称】株式会社IHIプラント
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】内山 尋雄
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-092004(JP,A)
【文献】特開平07-248096(JP,A)
【文献】特開平04-119298(JP,A)
【文献】米国特許第08434273(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 7/06
E04H 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根上に架構が形成されるタンクの施工方法であって、
前記タンクの屋根を鉛直方向上方へと持ち上げる屋根持ち上げ工程と、
タンクの屋根に対して、前記架構の支柱を鉛直方向下側から支持すると共に上下方向に伸縮可能な仮支柱を固定するベース構築工程と、
前記ベース構築工程の後において、前記仮支柱の高さを調整する高さ調整工程と
前記架構を構築する架構構築工程と
を有することを特徴とするタンクの施工方法。
【請求項2】
前記ベース構築工程は、前記屋根持ち上げ工程及び前記高さ調整工程よりも前に行われることを特徴とする請求項1記載のタンクの施工方法。
【請求項3】
前記屋根持ち上げ工程の後において、前記屋根に対してコンクリートを打設するコンクリート打設工程を有し、
前記高さ調整工程は、前記コンクリート打設工程の後に行われることを特徴とする請求項1または2記載のタンクの施工方法。
【請求項4】
前記屋根持ち上げ工程は、ジャッキ装置を用いて行われ、
前記架構構築工程は、
前記ベース構築工程の後であって、前記屋根持ち上げ工程よりも前に行われることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のタンクの施工方法。
【請求項5】
前記仮支柱によって支持された前記支柱の鉛直方向下側にはジャッキが配置されており、
前記高さ調整工程における前記仮支柱の高さの調整は、前記ジャッキを用いて行われ、
前記高さ調整工程の後において、前記支柱を前記屋根に対して固定する固定工程を有し、
前記固定工程において、
前記ジャッキは撤去されることを特徴とする
請求項1~4のいずれか一項に記載のタンクの施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンクの施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1においては、円筒型タンクの構築方法が開示されている。このような円筒型タンクにおいて、屋根の上部には、架構が設けられる場合がある。架構には、配管設備や、作業者が歩行可能な通路等が構築されており、屋根の一方に対して固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
タンク施工時においては、移動やコンクリートの打設等により屋根に撓みや変形が発生するため、架構は、屋根の構築及び固定が完全に完了するまで構築することができない。したがって、架構を設けたタンクの施工時には、工期が大きく伸びる傾向がある。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、架構を設けるタンクの施工時において工期を短縮することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0007】
第1の手段は、屋根上に架構が形成されるタンクの施工方法であって、前記タンクの屋根を鉛直方向上方へと持ち上げる屋根持ち上げ工程と、タンクの屋根に対して、前記架構の支柱を鉛直方向下側から支持すると共に上下方向に伸縮可能な仮支柱を固定するベース構築工程と、前記ベース構築工程の後において、前記仮支柱の高さを調整する高さ調整工程と前記架構を構築する架構構築工程とを有する、という構成を採用する。
【0008】
第2の手段は、上記第1の手段において、前記ベース構築工程は、前記屋根持ち上げ工程及び前記高さ調整工程よりも前に行われる、という構成を採用する。
【0009】
第3の手段は、上記第1または第2の手段において、前記屋根持ち上げ工程の後において、前記屋根に対してコンクリートを打設するコンクリート打設工程を有し、前記高さ調整工程は、前記コンクリート打設工程の後に行われる、という構成を採用する。
【0010】
第4の手段は、上記第1~第3のいずれかの手段において、前記屋根持ち上げ工程は、ジャッキ装置を用いて行われ、前記架構構築工程は、前記屋根持ち上げ工程よりも前に行われる、という構成を採用する。
【0011】
第5の手段は、上記第4の手段において、前記高さ調整工程の後において、前記支柱を前記屋根に対して固定する固定工程を有し、前記固定工程において、ジャッキ装置は撤去される、という構成を採用する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、上下方向において伸縮可能な仮支柱に架構の支柱を設置した上で加工を構築している。これにより、屋根の変形や撓みが発生した場合でも、仮支柱の長さを調整することで、支柱の高さを屋根の変形や撓みに合わせて調整することが可能である。したがって、屋根の構築と並行して架構を構築することが可能であり、タンクの施工工期を短縮することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態におけるタンクの模式断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態におけるタンク屋根上の架構取り付け位置を示す模式図である。
【
図3】本発明の一実施形態におけるタンクの屋根の架構取り付け時における施工手順を説明するフローチャートである。
【
図4】本発明の一実施形態におけるタンクの屋根の架構取り付け時における施工手順を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明に係るタンク1の施工方法の一実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0015】
タンク1は、
図1に示すように、基礎床版2と、外槽3と、底部保冷層4と、内槽5と、架構6とを備えている。
【0016】
基礎床版2は、外槽3や内槽5等を下方から支持する基礎であり、上方から見て外槽3よりも大径な略円盤状とされている。この基礎床版2には、不図示のヒータが設置されており、貯留されたLNGの冷熱が地中に伝わることが抑止される。
【0017】
外槽3は、プレストレストコンクリートからなる容器であり、内槽5を覆うように基礎床版2上に立設されている。この外槽3は、主としてコンクリートにより形成されており、円筒形状の外槽側壁3aと、外槽側壁3aの上縁部に接続された外槽屋根部3bとを有している。外槽屋根部3bは、組立時において、屋根骨3b1(屋根)を上方へと持ち上げ、外槽側壁3aに固定し、コンクリートを打設することにより構築される。
【0018】
底部保冷層4は、基礎床版2の上面に載置されており、内槽5を下方から支持している。この底部保冷層4は、基礎床版2よりも小径の略円盤状とされており、上方から見て基礎床版2の同軸状に配置されている。この底部保冷層4は、例えばパーライトコンクリートや砂等によって形成されている。
【0019】
内槽5は、底部保冷層4上にされた金属製の容器であり、有底円筒で上端が開口端とされた形状を有している。この内槽5の内部にLNGが貯留される。この内槽5は、内槽底部5a(床面)と、内槽底部5aの縁部に立設される内槽側壁5bとを有している。内槽側壁5bは、複数の矩形の側板を筒状となるように周方向及び上下方向に接続することにより構築されている。
【0020】
架構6は、外槽屋根部3bの上部に設けられた架構であり、
図1に示すような作業者が歩行可能な通路と、LNG等が流通する配管等の設備を含んでいる。このような架構6は、
図2に示すように、外槽屋根部3bの破線で囲まれた領域に構築される。このため、外槽屋根部3bは、架構6の重さで撓みが発生する。また、架構6は、外槽屋根部3b上に設けられる架構支柱6aにより荷重を支持している。
【0021】
続いて、本実施形態におけるタンク施工方法について、
図3及び
図4を参照して説明する。
まず、床面において外槽屋根部3bの屋根骨3b1が組み上げられた後に、ベース構築工程が行われる(ステップS1)。ベース構築工程においては、
図4(a)に示すように、仮止め支柱6bが複数、屋根骨3b1に対して固定される。この仮止め支柱6bは、長手方向において伸縮可能とされ、例えばレバー等により屋根骨3b1に対して固定される。さらに、仮止め支柱6bに対してベース6cが載置されて固定される。そして、ベース6c上に架構支柱6aを形成する。また、ベース6cの下方(仮止め支柱6bの間の空間)には、ジャッキJが配置される。ジャッキJは、上部が曲面状とされ、手動にて操作可能なジャッキ装置であり、屋根骨3b1上に構築された台座3b2に載置される。なお、台座3b2は、外槽屋根部3bのコンクリート打設時の外表面よりも突出する高さに設定されている。
【0022】
次に、屋根骨吊上工程(屋根持ち上げ工程)が行われる(ステップS2)。屋根骨吊上工程においては、外槽屋根部3bの屋根骨3b1は、床面から鉛直方向上方に向けて複数の油圧ジャッキにより吊り上げられる。このとき、不図示の制御装置により、各油圧ジャッキの制御が行われる。具体的には、制御装置は、全油圧ジャッキを制御して、荷重・傾きが許容値を超える、またはストローク回数が設定回数に達するまで屋根を吊り上げる。荷重・傾きが許容値を超えた場合には、外槽屋根部3bの姿勢を作業者による手動、または油圧ジャッキを制御して調整を行う。ストローク回数が設定回数に達した場合には、作業者が、外槽屋根部3bの屋根骨3b1を外槽側壁3aの上端に対して溶接して固定する。このような施工方法においては、外槽屋根部3bの屋根骨3b1を吊り上げる際に、一部の油圧ジャッキに大きな荷重がかかると当該油圧ジャッキのストローク量が減少し、次の油圧ジャッキの作動時に他の油圧ジャッキ側に荷重が移ることにより、徐々に荷重が分散し、各油圧ジャッキの荷重ごとの差分が小さくなる。したがって、外槽屋根部3bの屋根骨3b1の吊り上げ作業を短期間で実施することが可能である。
【0023】
そして、コンクリート打設工程が行われる(ステップS3)。コンクリート打設工程においては、屋根骨3b1に対してコンクリートが打設される。このとき、ジャッキJは、
図4(b)に示すように、台座3b2上に載置されているため、コンクリートの外表面よりも上方に露出した状態である。コンクリート打設工程により、外槽屋根部3bは、自重で僅かに変形する。
【0024】
続いて、高さ調整工程が行われる(ステップS4)。高さ調整工程においては、コンクリート打設工程において発生した変形等に合わせて、ジャッキJを用いて架構支柱6aの高さ及び水平方向における位置を調整する。水平方向の位置調整は、ジャッキJの上部が曲面状であることを用いて、荷重の位置を調整することで、架構支柱6aの位置を変更する。また、このようなジャッキJの調整に合わせて、仮止め支柱6bの長さを調整する。
【0025】
そして、支柱固定工程が行われる(ステップS5)。支柱固定工程においては、まず、
図4(c)に示すように、ジャッキJを台座3b2より撤去する。そして、
図4(d)に示すように、仮止め支柱6bとベース6cと架構支柱6aの下部とを含む領域にコンクリートを打設する。これにより、架構支柱6aは、外槽屋根部3bに対して固定された状態となる。
【0026】
さらに架構構築工程が行われる(ステップS6)。架構構築工程においては、ベース6cの上に載置された架構支柱6aを用いて、
図1に示すような架構6を構築する。
【0027】
本実施形態によれば、ジャッキJにより上下方向において移動可能な状態で架構6を構築する。したがって、屋根骨3b1の撓みや変形に追従するように架構6の高さ調整を行うことが可能である。すなわち、外槽屋根部3bの構築及び取り付けが完了するよりも前に架構6の構築を開始でき、並行して作業可能である。したがって、タンク1の施工工期を短縮することが可能である。
【0028】
特に、本実施形態においては、ベース構築工程を屋根骨吊上工程よりも前に実施している。したがって、屋根骨3b1を吊り上げる前に、並行して架構6の架構支柱6aを構築可能であり、タンクの施工工期をより短縮することが可能である。
【0029】
さらに、本実施形態においては、屋根骨3b1に対してコンクリートを打設するコンクリート打設工程を有している。コンクリートを打設する場合には、コンクリートの硬化まで時間がかかるため、施工工期が長くなる傾向がある。しかしながら、本実施形態においては、屋根骨3b1へのコンクリートの打設より前に架構6を構築可能であるため、コンクリートの硬化を待つことなく作業が可能である。したがって、タンクの施工工期を効果的に短縮することが可能である。
【0030】
また、本実施形態においては、高さ調整工程を、ジャッキJを用いた調整により行っている。ジャッキJは、上部が曲面状とされるため、架構支柱6aの高さ方向だけでなく、水平方向における位置の調整も可能である。
【0031】
また、本実施形態は、支柱固定工程において、ジャッキJを撤去した後に支柱を屋根骨3b1に対して固定する。したがって、ジャッキJは再利用可能であり、本施工方法が施工コストを高めることがない。
【0032】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0033】
上記実施形態においては、コンクリート打設工程を有するものとしたが、本発明はこれに限定されない。外槽屋根部3bに対してコンクリートを打設しない構造のタンクにおいても、本発明は適用可能である。
【0034】
上記実施形態においては、屋根骨吊上工程よりも後に架構構築工程を行うものとしたが、本発明はこれに限定されない。架構構築工程は、屋根骨吊上工程の前に行うものとしてもよい。
【0035】
上記実施形態においては、屋根骨吊上工程は、ジャッキJを用いて屋根骨3b1を吊り上げるものとしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、エアレーションにより屋根骨3b1を持ち上げるものとしてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 タンク
2 基礎床版
3 外槽
3a 外槽側壁
3b 外槽屋根部
3b1 屋根骨
3b2 台座
4 底部保冷層
5 内槽
5a 内槽底部
5b 内槽側壁
6 架構
6a 架構支柱
6b 支柱
6c ベース
J ジャッキ