(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20221207BHJP
【FI】
B41J2/01 301
B41J2/01 303
(21)【出願番号】P 2019011986
(22)【出願日】2019-01-28
【審査請求日】2021-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】山本 明広
(72)【発明者】
【氏名】半場 栄治
(72)【発明者】
【氏名】池村 基弘
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-200913(JP,A)
【文献】特開2019-001086(JP,A)
【文献】特開2002-103577(JP,A)
【文献】特開2005-254619(JP,A)
【文献】特開2002-144540(JP,A)
【文献】特開2003-112413(JP,A)
【文献】特開2014-046641(JP,A)
【文献】特開平10-044386(JP,A)
【文献】特開平02-252573(JP,A)
【文献】特開2005-035292(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主走査方向に移動可能なキャリッジと、
前記キャリッジに設けられ、インクジェットヘッドの駆動回路を搭載する基板と、
前記駆動回路の少なくとも一部を覆うカバーと、
前記カバーから外部に露出した露出部と、を有し、
前記露出部は、前記基板に設置される放熱板を含
み、
前記基板は、前記駆動回路と電気的に接続するドライバ素子を有し、
前記放熱板は、前記カバーから外部に露出した一面と、前記一面の反対面であって、前記カバーに覆われ、前記ドライバ素子を保持する他面とを持つことを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記カバーは、前記主走査方向において前記カバーの外方に向けて拡大する開口部を形成し、
前記露出部は、前記開口部と連通することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記一面は、前記主走査方向に平行であることを特徴とする
請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記露出部は、互いに対向する第1の露出部と第2の露出部との一対設けられることを特徴とする
請求項1から3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記カバーは、
前記第1の露出部を外部に露出する第1のカバーと、
前記第2の露出部を外部に露出する第2のカバーとを備え、
前記第1の露出部と前記第2の露出部により形成される風路を前記第1のカバーと前記第2のカバーとの間に有することを特徴とする
請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記カバーは、
前記第1のカバーと前記第2のカバーとに架設され、前記第1のカバー及び前記第2のカバーと共に前記風路を形成する第3のカバーを、さらに有することを特徴とする
請求項5に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
キャリッジの筐体に空気流入口を設け、キャリッジ内に空気を流入させることによって、キャリッジ内部の基板を冷却可能としたインクジェットプリンタが、従来技術として知られている(特許文献1)。また、印字ヘッドの移動方向両側を開口し、印字ヘッド内部に空気を取り込み、印字ヘッド内部の基板を冷却する構造が、従来知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-44386号公報
【文献】特開平2-252573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来では、キャリッジまたは印字ヘッド内部の基板に、冷却用に取り込んだ空気が接触していた。しかし、インクジェット方式を採用する画像形成装置は微小なインクを吐出して印刷を実行する。印字ヘッドのノズルからインク滴が吐出されるに伴い、さらに微細なインク滴であるインクミストが発生する。キャリッジまたは印字ヘッド周辺の空気には、埃に加え、インクミストが含まれている。
【0005】
そのため、従来のように、キャリッジ内部や印字ヘッド内部に空気を導入して基板を冷却すると、インクミストや埃等の異物が基板上の回路や電子部品と接触し、回路のショートや電子部品の不具合を生じる虞があった。
【0006】
上記課題に鑑み、本発明の目的は、基板を異物から保護しながら冷却可能な画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、走査方向に移動可能なキャリッジと、前記キャリッジに設けられ、インクジェットヘッドの駆動回路を搭載する基板と、前記駆動回路の少なくとも一部を覆うカバーと、前記カバーから外部に露出した露出部と、を有し、前記露出部は、前記基板に設置される放熱板を含むことを特徴とする画像形成装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、基板を異物から保護しながら冷却可能な画像形成装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る印刷装置を示す外観斜視図である。
【
図2】実施形態に係る印刷装置のブロック図である。
【
図3】実施形態に係るキャリッジの前方からの斜視図である。なお、理解を容易にするため、キャリッジ内部の機構、部品等を透視して示す。また、上部カバーは上方に分解した状態で図示する。
【
図4】実施形態に係るキャリッジの後方からの斜視図である。なお、理解を容易にするため、キャリッジ内部の機構、部品等を透視して示す。また、上部カバーは上方に分解した状態で図示する。
【
図5】実施形態に係るキャリッジの上面図である。なお、理解を容易にするため、上部カバーの図示を省略する。
【
図6】実施形態に係る(a)後部カバー及び(b)前部カバーの斜視図である。
【
図8】変形例に係るキャリッジの後方からの斜視図である。なお、理解を容易にするため、キャリッジ内部の機構、部品等を透視して示す。また、上部カバー及び下部カバーは上方に分解した状態で図示する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施形態>
図1~
図7を参照し、本発明の画像形成装置の一実施形態である、印刷装置1について説明を行う。印刷装置1はインクジェットプリンタであり、印刷媒体9(紙、フィルム、布等)にインクを吐出して印刷を行うための装置である。
図1及び
図2に示すように、印刷装置1は、搬送機構部2と、制御部3と、キャリッジ4と、を備えている。
図1に示すように、印刷装置1において、互いに直交する3方向を、上下方向、前後方向、及び、左右方向と定義する。なお、以下では、前後方向を搬送方向といい、左右方向を主走査方向という場合もある。
【0011】
なお、実施形態及び変形例における「インクジェット方式」とは、インクや、光硬化性樹脂等の液体を微細な液滴として吐出することで、目的の位置に該液体を供給する液体供給手法を意味する。液滴化の手法は、サーマル方式あるいは圧電素子方式など、各種の方式が採用可能である。
【0012】
印刷装置1は、本体部10と、ガイドレール11とを主に備える。本体部10の前面及び後面には開口が形成され、それら開口がそれぞれカバーによって開閉される。
図1では、本体部10の前面の開口を開閉するカバーが外された状態が図示されている。ガイドレール11は軸状部材であり、左右方向に延びるように本体部10に取り付けられている。
【0013】
搬送機構部2は、印刷媒体9を前後方向に搬送するためのものであり、駆動ローラである搬送ローラ(図示せず)と、従動ローラであるピンチローラ22とを備えている(
図1)。搬送ローラは、不図示のモータより動力の供給を受け、回転可能である。搬送ローラとピンチローラ22との間に印刷媒体9を挟んだ状態で搬送ローラが回転することによって、印刷媒体9を前後方向に搬送できる。
【0014】
制御部3は、印刷装置1の制御を司るためのものである。制御部3は、搬送機構部2及びキャリッジ4に通信可能に接続されており、これらの各部動作を制御する機能を備える。制御部3の構成は特に限定されないが、本実施形態においては、外部機器からの印刷データ(ラスタデータ)等を受信するインターフェイス(I/F)と、プログラムを記憶するROMと、プログラムを実行するCPUと、CPUによる処理において作業領域を提供するRAMと、不揮発性メモリであって各種データを記憶するNVRAMとを主に備える。制御部3は、受信した印刷データに基づいて、印刷装置1の搬送機構部2及びキャリッジ4を制御する。
【0015】
キャリッジ4は、インクジェットプリンタ方式の印刷を行うための各種構成を備える。具体的には、
図3及び4に示すように、キャリッジ4は、筐体41、基板42、放熱板43A、43B、及びヘッド部44を備える。キャリッジ4は、ガイドレール11に対して主走査方向に移動可能に係合し、印刷媒体9にインクを吐出することによって印刷を実行する機能を備える。インクは、イエローインクY、マゼンタインクM、シアンインクC、及びブラックインクKの4種が用いられる。
【0016】
<筐体>
筐体41は、キャリッジ4の外殻をなす部材であり、上壁410と、前部カバー411と、後部カバー412と、上部カバー413と、側壁414と、下壁415とを備える。
【0017】
上壁410、側壁414、及び下壁415は、キャリッジ4の下部及び後部を構成し、基板42及びヘッド部44などのキャリッジ4内部の機構、部品を支持する機能を備える。上壁410は、左右方向及び前後方向に延びる略矩形の平板状部材であり、ガイドレール11の上方に所定の間隔を隔てて配置される。上壁410の上面は、基板42を支持するとともに、前部カバー411及び後部カバー412を支持する。
【0018】
側壁414は、上壁410の前端部と連結し、上壁410の前端部から下方に垂下するように設けられた平板状部材である。側壁414は、前後方向視で略矩形に形成される。側壁414の後面には、係合部414Aが固定される(
図3、
図4)。係合部414Aは、ガイドレール11に対して主走査方向に移動可能に支持される。
【0019】
下壁415は、側壁414の下端部と連結し、前方に延出するように設けられた略矩形の平板状部材である。下壁415には、ヘッド部44が下壁415を上下方向に貫通するように設けられる。
【0020】
<筐体、前部カバー>
図3から
図7に示すように、前部カバー411は、上壁410の上面、側壁414の前面、及び下壁415の上面を覆うように配置される。また、前部カバー411は、上壁410の上面、側壁414の前面、及び下壁415の上面と当接している。前部カバー411は、複数の板状部材によって構成された、内部空間を形成する部材であり、その内部空間に基板42の一部及びヘッド部44を収容する。前部カバー411は、2枚の側板411Aと、開壁板411Ba、411Bbと、後板411Cと、上板411E、411Fと、前板411Gとを備え、これらの部材は互いに隙間なく当接し、固定される(
図6(b))。
【0021】
2枚の側板411Aは、それぞれ同形状に形成された板状部材であり、前部カバー411の左右の外壁をそれぞれ構成する。側板411Aの下部は、上壁410の上面、側壁414の前面、及び下壁415の上面のなす形状と、左右方向視で略同形に形成される。そのため、側板411Aの下部は、上壁410の上面、側壁414の前面、及び下壁415の上面と隙間なく当接している。
【0022】
開壁板411Ba、411Bbは、それぞれ板状部材であり、後板411Cの左右に配置される(
図6(b))。具体的には、開壁板411Baは後板411Cの右側に配置され、開壁板411Bbは後板411Cの左側に配置され、固定される。開壁板411Ba、411Bbはそれぞれ、上下方向に延びるとともに、主走査方向に対して所定の角度を形成するように配置される。具板的には、開壁板411Ba、411Bbはそれぞれ上面視において、前部カバー411の主走査方向外方に向かうにしたがって、前方に向かうように傾斜して配置される(
図5)。開壁板411Ba、411Bbは、それぞれ切り欠き部411Hを形成する(
図6(b))。切り欠き部411Hの上端は、基板42の上面と面一となるように形成されている。そのため、基板42の上面は、開壁板411Ba、411Bbと隙間なく当接している。
【0023】
後板411Cは、上下左右に延在するように配置された板状部材である。後板411Cの下端は基板42の上面と面一となるように形成され、したがって、後板411Cの下端は、基板42の上面と隙間なく当接している。後板411Cは、その左右に配置された開壁板411Ba、411Bbに固定され、開壁板411Ba、411Bbとともに、前部カバー411の連続した後面を構成する。後板411Cは、矩形の開口部411Dを形成する。
【0024】
上板411Eは、略台形状に形成された板状部材であり、前後及び左右に延びるように配置される。上板411Eの後端部は、後板411Cの上端部に固定され、上板411Eの左右端部は、側板411Aの上端部及び開壁板411Ba、411Bbの上端部に固定される。上板411Eは、基板42から所定の距離を空けて上方に配置される。
【0025】
上板411Fは、左右方向視で傾斜して配置された、略矩形の板状部材である。上板411Fの後端部は上板411Eの前端部に固定され、上板411Fの左右端部は、それぞれ側板411Aに固定される。上板411Fは、前方に向かうにしたがって下降するように傾斜する。上板411Fは、上壁410の前部、側壁414、及び下壁415から、所定の距離を空けて配置される。
【0026】
前板411Gは、上下及び左右に延びるように配置された、略矩形の板状部材である。前板411Gの上端部は上板411Fの前端部に固定され、前板411Gの左右端部は、それぞれ側板411Aの前端部に固定される。前板411Gの下端部は、下壁415の上面と隙間なく当接している。前板411Gは、側壁414及びヘッド部44から、所定の距離を空けて配置される。
【0027】
<筐体、後部カバー>
図3から
図7に示すように、後部カバー412は、上壁410の上面を覆うように配置される。また、後部カバー412の下端部は、上壁410の上面と当接している。後部カバー412は、内部空間を形成する部材であり、その内部空間に基板42の後部を収容する。後部カバー412は、2枚の側板412Aと、開壁板412Ba、412Bbと、前板412Cと、上板412Eと、後板412Gとを備え、これらの部材は互いに隙間なく当接し、固定される(
図6(a))。
【0028】
2枚の側板412Aは、それぞれ同形状に形成された略矩形の板状部材であり、後部カバー412の左右の外壁をそれぞれ構成する。側板412Aの下端部は、上壁410の上面と隙間なく当接している。
【0029】
開壁板412Ba、412Bbは、それぞれ板状部材であり、前板412Cの左右に配置される。具体的には、開壁板412Baは前板412Cの右側に配置され、開壁板412Bbは前板412Cの左側に配置され、固定される。開壁板412Ba、412Bbはそれぞれ、上下方向に延びるとともに、主走査方向に対して所定の角度を形成するように配置される。具板的には、開壁板412Ba、412Bbはそれぞれ上面視において、後部カバー412の主走査方向外方に向かうにしたがって、後方に向かうように傾斜して配置される(
図5)。
【0030】
開壁板412Ba、412Bbは、それぞれ切り欠き部412Hを形成する(
図6(a))。切り欠き部412Hの上端は、基板42の上面と面一となるように形成されている。そのため、基板42の上面は、開壁板412Ba、412Bbと隙間なく当接している。
【0031】
前板412Cは、上下左右に延在するように配置された板状部材である。前板412Cの下端は基板42の上面と面一となるように形成され、したがって、前板412Cの下端は、基板42の上面と隙間なく当接している。前板412Cは、その左右に配置された開壁板412Ba、412Bbに固定され、開壁板412Ba、412Bbとともに、後部カバー412の連続した前面を構成する。前板412Cは、矩形の開口部412Dを形成する(
図6(a))。
【0032】
上板412Eは、略台形状に形成された板状部材であり、前後及び左右に延在する。上板412Eの前端部は、前板412Cの上端部に固定され、上板412Eの左右端部は、側板412Aの上端部及び開壁板412Ba、412Bbの上端部に固定される。上板412Eは、基板42から所定の距離を空けて上方に配置される。
【0033】
後板412Gは、上下及び左右に延びるように配置された、略矩形の板状部材である。後板412Gの上端部は上板412Eの後端部に固定され、後板412Gの左右端部は、側板412Aの後端部に固定される。後板412Gの下端部は、上壁410の上面と隙間なく当接している。
【0034】
<上部カバー>
上部カバー413は、水平方向に延在する略矩形の板状部材であり、前部カバー411と後部カバー412とに架設される。上部カバー413の前部は、上板411Eの上面に固定され、上部カバー413の後部は上板412Eの上面に固定される。上部カバー413前後方向中央部は、基板42と所定の距離を空けて上下方向に対向する。
【0035】
<基板>
基板42は、
図3、4及び
図7に示すように、上壁410の上方において、4つの略円筒形状の支持台45を介して略水平に配置される。基板42は、基板42の上面に配置された駆動回路421と、ドライバ素子422、423と、4本のFFC424と、FFC425とを備える。FFC424及びFFC425はいずれも、電導体をフィルムで上下より挟んで作られたフラットケーブルである。
【0036】
駆動回路421は、ヘッド部44の駆動に用いる回路であり、基板42上面のほぼ全面に亘って形成される。駆動回路421は、ドライバ素子422、423と電気的に接続する。また、ドライバ素子422、423以外にも、駆動回路421は不図示の素子を複数備え、各々と電気的に接続する。駆動回路421は、前側に配置される前部回路421Aと、後側に配置される後部回路421Cと、前部回路421Aと後部回路421Cとの間に配置される中央回路421Bとを有する(
図7)。
【0037】
前部回路421Aにはドライバ素子422が設けられる。前部回路421Aは、前部カバー411に上部を覆われており、前部カバー411の内部に収容される。前部回路421Aは、FFC424を介して、ヘッド部44と電気的に接続する。
【0038】
後部回路421Cにはドライバ素子423が設けられる。後部回路421Cは、後部カバー412に上部を覆われており、後部カバー412の内部に収容される。後部回路421Cは、FFC425を介して、制御部3と電気的に接続する。
【0039】
中央回路421Bは、前部回路421A及び後部回路421Cを電気的に接続する回路から構成されており、素子類は設けられていない。中央回路421Bは、前部カバー411及び後部カバー412のどちらからも露出している。中央回路421Bは、上方からレジストで被覆されており、外気から保護される。
【0040】
また、中央回路421Bの下部を塞ぐカバー416で、カバー411、412内部への冷却風の侵入を防ぐ。詳しくは、カバー416は、基板42の左右両端部の下部を覆うカバー416A、416Bを含み、基板42の下部からカバー411、412内部へ回り込む冷却風の侵入を防ぐ(
図3、4、7)。カバー416A、416Bは、それぞれ左右の側面視で矩形状の板部材である。カバー416A、416Bの上端部は、いずれも基板42の下面に当接し、その下端部はいずれも上壁410の上面に当接する。カバー416Aの前端部及び後端部は、開壁板411Bb及び開壁板412Bbにそれぞれ当接する。カバー416Bの前端部及び後端部は、開壁板411Ba及び開壁板412Baにそれぞれ当接する。
【0041】
ドライバ素子422は、ハイサイドゲート側のドライバIC素子であり、前部回路421Aと電気的に接続する。ドライバ素子422は、4つのドライバ素子422Y、422M、422C、422Kから構成される。それぞれの素子は、ヘッド部44を構成する4つのヘッド44Y、44M、44C、44K(後述)に対応しており、対応するヘッドへの供給電圧を調整する機能を備える。ドライバ素子422Y、422M、422C、422Kは、それぞれ基板42に対して垂直に立設されており、それらの後面が放熱板43Aの前面に支持、固定される。
【0042】
ドライバ素子423は、ローサイドゲート側のドライバIC素子であり、後部回路421Cと電気的に接続する。ドライバ素子423は、4つのドライバ素子423Y、423M、423C、423Kから構成される。それぞれの素子は、ヘッド部44を構成する4つのヘッド44Y、44M、44C、44K(後述)に対応しており、対応するヘッドへの供給電圧を調整する機能を備える。ドライバ素子423Y、423M、423C、422Kは、それぞれ基板42に対して垂直に立設されており、それらの前面が放熱板43Bの後面に支持、固定される。
【0043】
<放熱板>
放熱板43A、43Bは、ドライバ素子422、423、及び基板42で発生した熱を外部に放出する部材であり、アルミや銅などの熱伝導率の高い金属によって形成される。放熱板43A、43Bはそれぞれ、基板42の上面に垂直となるように立設される。放熱板43A、43Bは、前面視または後面視において、それぞれ開口部411D、412Dと略同形状、かつ同じ大きさに形成される。
【0044】
放熱板43Aは、放熱板43Bの前方に位置し、開口部411Dを塞ぐように配置される。放熱板43Aの後面は開口部411Dから外部に露出しており、放熱板43Aの前面は前部カバー411の内部に収容される。放熱板43Bは、開口部412Dを塞ぐように配置される。放熱板43Bの前面は開口部412Dから外部に露出しており、放熱板43Bの後面は後部カバー412の内部に収容される。
【0045】
放熱板43Aの後面及び放熱板43Bの前面は、搬送方向または前後方向において、互いに対向する。放熱板43Aの前面は平滑に形成され、ドライバ素子422Y、422M、422C、422Kそれぞれの後面と当接して支持する。放熱板43Bの後面は平滑に形成され、ドライバ素子423Y、423M、423C、423Kそれぞれの前面と当接して支持する。なお、支持される部品は、ドライバ素子422、423に限らず、その他の素子、部品等が支持されても良い。放熱板43Aの後面及び放熱板43Bの前面は平滑に図示されるが、表面積を増やして放熱を容易とするために、複数の突起部等を備える構成としても良い。なお、放熱板は、本発明における露出部の一例である。
【0046】
<風路>
図3から
図5に示すように、前部カバー411と後部カバー412との間に風路Wが形成される。風路Wは、主走査方向または左右方向に延び、風路Wの左右両端部には、外部に開放された左開口部Lと右開口部Rとがそれぞれ形成される。そのため、放熱板43A、43Bは、風路Wを介して開口部L、Rと連通する。左開口部Lは、開壁板411Bbと開壁板412Bbとによって形成される開口部であり、左方向に向かうにしたがって拡大するように形成される。右開口部Rは、開壁板411Baと開壁板412Baとによって形成される開口部であり、右方向に向かうにしたがって拡大するように形成される。換言すれば、右開口部R及び左開口部Lのそれぞれは、主走査方向において前部カバー411または後部カバー412の外方に向けて拡大するように形成される。
【0047】
詳細には
図5に示すように、風路Wは、放熱板43Aと放熱板43Bとの間に形成される。さらに、風路Wは、開壁板411Ba、411Bb、及び後板411Cと、開壁板412Ba、412Bb、及び前板412Cとの間にも形成される。風路Wの上部及び下部は、上部カバー413の下面及び基板42の上面によって区画、規定される。
【0048】
<ヘッド部>
ヘッド部44は、主走査方向に並んで配置された、インクを吐出する4つのヘッドを備えている。具体的には、ヘッド部44は、吐出するインク色に対応したヘッド44Y、44M、44C、44Kから構成されている。
【0049】
ヘッド44Y、44M、44C、44Kは、それぞれ、略直方体形状を有しており、それぞれの下面には、インク滴を吐出する複数のノズル(不図示)が搬送方向に並んで配置、形成される。
【0050】
ヘッド44Y、44M、44C、44Kは、下壁415に支持されるとともに、下壁415を上下に貫通する。ヘッド44Y、44M、44C、44Kの上部はいずれも、前部カバー411の内部に収容される。ヘッド44Y、44M、44C、44Kはそれぞれ、FFC424を介して、駆動回路421と電気的に接続する。
【0051】
<印刷作業>
上記のように構成された印刷装置1において、印刷を実行する際の動作について以下に説明する。制御部3は、キャリッジ4及び搬送機構部2を制御し、印刷データに従ってヘッド部44からインク滴を吐出させ、印刷媒体9に画像を形成する。印刷作業において、キャリッジ4は不図示の動力源を用いて主走査方向に移動し、同時にヘッド部44から印刷媒体9へ向かってインク滴を吐出する。インク吐出の際にはインク滴よりさらに微細なインクミストが発生する。そのため、キャリッジ4またはヘッド部44周辺の空気には、埃に加え、インク滴よりさらに微細なインクミストが発生する。
【0052】
キャリッジ4の主走査方向の移動に伴い、キャリッジ4の周囲には、キャリッジ4に対する相対的な空気の流れである冷却風が発生する。風路Wには、
図5中の白抜き矢印で示すように冷却風が流通し、放熱板43A、43Bを冷却する。左右の開口部L、Rが、主走査方向において筐体41の外方に向かって拡大しているため、多くの冷却風を風路W内に取り込むことが可能である。ドライバ素子422、423に発生した熱、及び基板42に発生した熱は、放熱板43A、43Bに伝導し、冷却風を介して外部に放出される。
【0053】
前部回路421A及びドライバ素子422は、前部カバー411及び放熱板43Aによって、外気から遮断されている。また、後部回路421C及びドライバ素子423は、後部カバー412及び放熱板43Bによって、外気から遮断されている。そのため、埃やインクミスト等の空気中の異物が、前部回路421A及び後部回路421C、特にドライバ素子422、423と接触することが防止される。また、中央回路421Bは、レジストによって被覆されるため、空気中の異物との接触が防止される。
【0054】
<効果>
上記実施形態の印刷装置1は、主走査方向に移動可能なキャリッジ4と、キャリッジ4に設けられ、ヘッド部44の駆動回路421を搭載する基板42を有する。さらに印刷装置1は、前部回路421Aまたは後部回路421Cを覆う前部カバー411または後部カバー412と、基板42に設置されて、これらのカバーから外部に露出した放熱板43Aまたは放熱板43Bを含む。
【0055】
上記構成では、基板42、特に前部回路421A及び後部回路421Cが外気から遮断され、空気中の埃やインクミストなどの異物から保護される。また、放熱板43A、43Bが外部に露出しているため、基板42に発生した熱を、放熱板43A、43Bを介して効率よく外気へ放熱することができる。
【0056】
前部カバー411または後部カバー412は、主走査方向において前部カバー411または後部カバー412の外方に向けて拡大する開口部Lまたは開口部Rを形成し、放熱板43Aまたは放熱板43Bは、開口部L、Rと連通する。
【0057】
開口部L、Rが外方に向けて拡大した形状を有するため、効率よく冷却風を集め、放熱板43A、43Bへ流通させることができる。冷却風を効率よく集めることによって、放熱板43Aまたは放熱板43Bに接触する風量が増し、放熱効率が上昇する。
【0058】
基板42は、駆動回路421と電気的に接続するドライバ素子422、423を有する。放熱板43Aは、ドライバ素子422を前面に保持し、放熱板43Bは、ドライバ素子423を後面に保持する。放熱板43Aの前面または放熱板43Bの後面は、前部カバー411及び後部カバー412によってそれぞれ覆われる。
【0059】
上記構成では、ドライバ素子422、423が前部カバー411及び後部カバー412によって覆われ、異物から保護されている。同時に、ドライバ素子422、423に発生した熱は、直接放熱板43A、43Bに伝導するため、効率よく外部に放出される。
【0060】
放熱板43Aの後面または放熱板43Bの前面は、主走査方向に平行である。
【0061】
上記構成では、放熱板43A、43Bが冷却風の流通方向と並行となるため、冷却風の進路を妨害せず、効率よく放熱することが可能である。
【0062】
放熱板43A、43Bは、互いに対向するように設けられる。
【0063】
上記構成では、冷却風の流路を放熱板43A、43Bの間の1カ所とすることができ、複数箇所設ける必要がない。そのため、キャリッジ4や前部カバー411及び後部カバー412等を小型化することができる。
【0064】
印刷装置1は、放熱板43Aを外部に露出する前部カバー411と、放熱板43Bを外部に露出する後部カバー412とを備える。印刷装置1は、放熱板43Aと放熱板43Bにより形成される風路Wを前部カバー411と後部カバー412との間に有する。
【0065】
上記構成では、冷却風の流路を前部カバー411及び後部カバー412の間の1カ所とすることができ、複数箇所設ける必要がない。そのため、キャリッジ4や前部カバー411及び後部カバー412等を小型化することができる。
【0066】
印刷装置1は、前部カバー411と後部カバー412とに架設され、前部カバー411及び後部カバー412と共に風路Wを形成する上部カバー413を備える。
【0067】
上記構成では、上部カバー413によって、風路Wに集められた冷却風が上部へ逃げることが防止される。
【0068】
<変形例>
上記実施形態において、上部カバー413は、平板状に構成されていたが、本発明はこのような構成に限定されない。例えば、
図8及び
図9の変形例に係るキャリッジ5に示すように、上部カバー513または下部カバー516をさらに有しても良い。なお、キャリッジ5のその他の構成は、実施形態に係るキャリッジ4と同様である。
【0069】
詳細には、上部カバー513は、板状部材によって構成されており、その中央部は略水平に配置されている。上部カバー513の前端部は、前部カバー411及び放熱板43Aと隙間なく当接している。また、上部カバー513の後端部は、後部カバー412及び放熱板43Bと隙間なく当接している。また、上部カバー513は、その左右両端部において、外方に向かうにしたがって上方に傾斜する。これに伴い、左右の開口部L、Rは、主走査方向の外方に向かって上方にも拡大した形状を備える。そのため、風路Wには、多くの冷却風が取り込まれ、放熱板43A、43Bの放熱効率を高めることができる。
【0070】
下部カバー516は、中央回路421Bの上方を覆うように配置される。下部カバー516は、板状部材によって構成されており、その中央部は略水平に配置されている。下部カバー516の前端部は、前部カバー411及び放熱板43Aと隙間なく当接している。また、下部カバー516の後端部は、後部カバー412及び放熱板43Bと隙間なく当接している。そのため、中央回路421Bは、下部カバー516によって、外気から遮断されている。
【0071】
下部カバー516の左右両端部は、それぞれ外方に向けて下方に傾斜するよう形成される。そのため、左右の開口部L、Rは、外方に向かうにしたがって下部にも拡大するように形成される。そのため、風路Wには、多くの冷却風が取り込まれ、放熱板43A、43Bの放熱効率を高めることができる。
【0072】
また、中央回路421Bを含めた基板42の全体が、前部カバー411、後部カバー412、及び下部カバー516によって、埃やインクミストを含む空気から遮断される。そのため、中央回路421Bにも電子部品を配置することができる。
【0073】
上記実施形態及び変形例においては、カバーは複数の部材によって構成されていたが本発明はこの限りではなく、カバーが一体的に形成されていてもよい。また、前部カバー411の後面及び後部カバー412の前面は、必ずしも上面視で多角形状に形成される必要はなく、例えば滑らかな曲面で形成されても良い。
【0074】
上記実施形態は、発明の例として提示したものであり、発明の範囲を限定するものではない。上記の構成は、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。上記実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0075】
1 印刷装置
2 搬送機構部
3 制御部
4 キャリッジ
5 キャリッジ
41 筐体
42 基板
43A、43B 放熱板
44 ヘッド部
411 前部カバー
412 後部カバー
413 上部カバー
513 上部カバー
516 下部カバー