(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】加熱装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20221207BHJP
【FI】
G03G15/20 515
(21)【出願番号】P 2019021853
(22)【出願日】2019-02-08
【審査請求日】2021-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊地 和彦
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-186321(JP,A)
【文献】特開2006-235550(JP,A)
【文献】特開2016-001247(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0083746(US,A1)
【文献】特開2015-169678(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 13/20
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム状の筒状体と、
前記筒状体に当接してニップを形成可能であり、回転して前記ニップに挟んだシートを搬送可能な加圧ローラと、
前記筒状体の内側に配置され、前記筒状体の軸方向を長手方向とし、
前記長手方向に並んで配置された複数の発熱体を有し、前記筒状体の中心軸および前記加圧ローラの中心軸を含む基準面より前記シートの搬送方向の上流側に短手方向の中心が配置される発熱体
セットと、
前記発熱体
セットを有し、
前記発熱体セットの前記搬送方向の上流側に配置され前記複数の発熱体の前記搬送方向の上流側に接続される共通配線を有し、前記発熱体セットの前記搬送方向の下流側に配置され対応する前記複数の発熱体の前記搬送方向の下流側に接続される複数の配線を有し、前記筒状体の内面に当接するヒータユニットと、
前記筒状体の内側に配置され、前記ヒータユニットより前記搬送方向の上流側に配置され、前記搬送方向の下流側の第1端部が前記ニップにおける前記搬送方向の上流側の端部より前記搬送方向の下流側に配置され、前記第1端部が前記ヒータユニットより前記加圧ローラ側に配置されるガイド部材
の第1ガイド部と、を有する、
加熱装置。
【請求項2】
前記ヒータユニットは、前記筒状体の軸方向を長手方向とし、前記基準面より前記搬送方向の下流側に短手方向の中心が配置される、
請求項1に記載の加熱装置。
【請求項3】
前記ヒータユニットにおける前記搬送方向の下流側の端部は、前記ニップにおける前記搬送方向の下流側の端部より、前記搬送方向の下流側に配置さ
れ、
前記筒状体の内側に配置され、前記ヒータユニットより前記搬送方向の下流側に配置される前記ガイド部材の第2ガイド部をさらに有し、
前記第2ガイド部の前記搬送方向の上流側の第2端部が、前記ヒータユニットより前記加圧ローラ側に配置され、
前記ヒータユニットは、前記発熱体セットが配置される金属材料で形成された基板を有する、
請求項1または2に記載の加熱装置。
【請求項4】
前記発熱体
セットは、長手方向および短手方向において前記ニップの範囲内に配置される、
請求項1から3のいずれか1項に記載の加熱装置。
【請求項5】
前記ガイド部材は、前記ヒータユニットを挟んで前記加圧ローラの反対側に延設され、前記ヒータユニットを支持する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像処理装置として、シートに画像を形成する画像形成装置が利用されている。画像形成装置は、トナー(記録剤)をシートに定着させる加熱装置を有する。加熱装置には、耐久性を向上することが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-191797号公報
【文献】特開2003-186321号公報
【文献】特開2016-136236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、耐久性を向上することができる加熱装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態の加熱装置は、フィルム状の筒状体と、加圧ローラと、発熱体と、ヒータユニットと、ガイド部材の第1ガイド部と、を持つ。加圧ローラは、前記筒状体に当接してニップを形成可能であり、回転して前記ニップに挟んだシートを搬送可能である。発熱体セットは、前記筒状体の内側に配置され、前記筒状体の軸方向を長手方向とする。発熱体セットは、前記筒状体の中心軸および前記加圧ローラの中心軸を含む基準面より前記シートの搬送方向の上流側に短手方向の中心が配置される。発熱体セットは、前記長手方向に並んで配置された複数の発熱体を有する。ヒータユニットは、前記発熱体セットを有し、前記筒状体の内面に当接する。ヒータユニットは、共通配線と、複数の配線と、を有する。共通配線は、前記発熱体セットの前記搬送方向の上流側に配置され、前記複数の発熱体の前記搬送方向の上流側に接続される。複数の配線は、前記発熱体セットの前記搬送方向の下流側に配置され、対応する前記複数の発熱体の前記搬送方向の下流側に接続される。ガイド部材の第1ガイド部は、前記筒状体の内側に配置され、前記ヒータユニットより前記搬送方向の上流側に配置される。ガイド部材の第1ガイド部は、前記搬送方向の下流側の第1端部が前記ニップにおける前記搬送方向の上流側の端部より前記搬送方向の下流側に配置される。ガイド部材の第1ガイド部は、前記第1端部が前記ヒータユニットより前記加圧ローラ側に配置される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図2】実施形態の画像処理装置のハードウエア構成図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態の加熱装置を、図面を参照して説明する。
図1は、実施形態の画像処理装置の概略構成図である。
実施形態の画像処理装置は、画像形成装置1である。画像形成装置1は、シート(用紙)Sに画像を形成する処理を行う。
画像形成装置1は、ハウジング10と、スキャナ部2と、画像形成ユニット3と、シート供給部4と、搬送部5と、排紙トレイ7と、反転ユニット9と、コントロールパネル8と、制御部6と、を有する。
【0008】
ハウジング10は、画像形成装置1の外形を形成する。
スキャナ部2は、複写対象物の画像情報を光の明暗として読み取り、画像信号を生成する。スキャナ部2は、生成した画像信号を画像形成ユニット3に出力する。
画像形成ユニット3は、スキャナ部2から受信した画像信号または外部から受信した画像信号に基づいて、トナー等の記録剤により出力画像(以下、トナー像という)を形成する。画像形成ユニット3は、トナー像をシートSの表面上に転写する。画像形成ユニット3は、シートSの表面上のトナー像を加熱および加圧して、トナー像をシートSに定着させる。画像形成ユニット3の詳細は後述される。
【0009】
シート供給部4は、画像形成ユニット3がトナー像を形成するタイミングに合わせて、シートSを1枚ずつ搬送部5に供給する。シート供給部4は、シート収容部20と、ピックアップローラ21と、を有する。
シート収容部20は、所定のサイズおよび種類のシートSを収納する。
ピックアップローラ21は、シート収容部20からシートSを1枚ずつ取り出す。ピックアップローラ21は、取り出したシートSを搬送部5へ供給する。
【0010】
搬送部5は、シート供給部4から供給されるシートSを画像形成ユニット3に搬送する。搬送部5は、搬送ローラ23と、レジストローラ24と、を有する。
搬送ローラ23は、ピックアップローラ21から供給されるシートSをレジストローラ24へ搬送する。搬送ローラ23は、シートSの搬送方向の先端をレジストローラ24のニップNに突き当てる。
レジストローラ24は、ニップNにおいてシートSを撓ませることにより、搬送方向でのシートSの先端の位置を整える。レジストローラ24は、画像形成ユニット3がトナー像をシートSに転写するタイミングに応じてシートSを搬送する。
【0011】
画像形成ユニット3について説明する。
画像形成ユニット3は、複数の画像形成部25と、レーザ走査ユニット26と、中間転写ベルト27と、転写部28と、定着装置30と、を有する。
画像形成部25は、感光体ドラム25dを有する。画像形成部25は、スキャナ部2または外部からの画像信号に応じたトナー像を感光体ドラム25dに形成する。複数の画像形成部25Y,25M,25C,25Kは、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナーによるトナー像を形成する。
【0012】
感光体ドラム25dの周囲には、帯電器、現像器などが配置される。帯電器は、感光体ドラム25dの表面を帯電させる。現像器は、イエロー、マゼンタ、シアン、およびブラックのトナーを含む現像剤を収容する。現像器は、感光体ドラム25d上の静電潜像を現像する。この結果、感光体ドラム25d上には、各色のトナーによるトナー像が形成される。
【0013】
レーザ走査ユニット26は、帯電した感光体ドラム25dにレーザ光Lを走査して感光体ドラム25dを露光する。レーザ走査ユニット26は、各色の画像形成部25Y,25M,25C,25Kの感光体ドラム25dを、各別のレーザ光LY,LM,LC,LKで露光する。これによりレーザ走査ユニット26は、感光体ドラム25dに静電潜像を形成する。
【0014】
中間転写ベルト27には、感光体ドラム25dの表面のトナー像が1次転写される。
転写部28は、中間転写ベルト27上に1次転写されたトナー像を2次転写位置においてシートSの表面上に転写する。
定着装置30は、シートSに転写されたトナー像を加熱および加圧して、トナー像をシートSに定着させる。定着装置30の詳細は後述される。
【0015】
反転ユニット9は、シートSの裏面に画像を形成するためシートSを反転させる。反転ユニット9は、定着装置30から排出されるシートSを、スイッチバックにより表裏反転させる。反転ユニット9は、反転したシートSをレジストローラ24に向けて搬送する。
排紙トレイ7は、画像が形成されて排出されたシートSを載置する。
コントロールパネル8は、操作者が画像形成装置1を操作するための情報を入力する入力部の一部である。コントロールパネル8は、タッチパネルや各種ハードキーを有する。
制御部6は、画像形成装置1の各部の制御を行う。制御部6の詳細は後述される。
【0016】
図2は、実施形態の画像処理装置のハードウエア構成図である。画像形成装置1は、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)91、メモリ92、補助記憶装置93などを備え、プログラムを実行する。画像形成装置1は、プログラムの実行によってスキャナ部2、画像形成ユニット3、シート供給部4、搬送部5、反転ユニット9、コントロールパネル8、通信部90を備える装置として機能する。
【0017】
CPU91は、メモリ92および補助記憶装置93に記憶されたプログラムを実行することによって制御部6として機能する。制御部6は、画像形成装置1の各機能部の動作を制御する。
補助記憶装置93は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの記憶装置を用いて構成される。補助記憶装置93は、情報を記憶する。
通信部90は、自装置を外部装置に接続するための通信インタフェースを含んで構成される。通信部90は、通信インタフェースを介して外部装置と通信する。
【0018】
定着装置30について詳しく説明する。
図3は、実施形態の加熱装置の正面断面図である。実施形態の加熱装置は、定着装置30である。定着装置30は、加圧ローラ30pと、フィルムユニット30hと、を有する。
【0019】
加圧ローラ30pは、フィルムユニット30hとの間でニップNを形成する。加圧ローラ30pは、ニップNに進入したシートSのトナー像を加圧する。加圧ローラ30pは、自転してシートSを搬送する。加圧ローラ30pは、芯金32と、弾性層33と、離型層(不図示)と、を有する。
【0020】
芯金32は、ステンレス等の金属材料により円柱状に形成される。芯金32の軸方向の両端部は、回転可能に支持される。芯金32は、モータ(不図示)により回転駆動される。芯金32は、カム部材(不図示)に当接する。カム部材は、回転することにより、芯金32をフィルムユニット30hに対して接近および離反させる。
【0021】
弾性層33は、シリコーンゴム等の弾性材料で形成される。弾性層33は、芯金32の外周面上に一定の厚さで形成される。
離型層(不図示)は、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)などの樹脂材料で形成される。離型層は、弾性層33の外周面上に形成される。
加圧ローラ30pの外周面の硬度は、ASKER-C硬度計で9.8Nの荷重において、40°~70°であることが望ましい。これにより、ニップNの面積と加圧ローラ30pの耐久性が確保される。
【0022】
加圧ローラ30pは、カム部材の回転によりフィルムユニット30hに対して接近および離反することが可能である。加圧ローラ30pをフィルムユニット30hに接近させ、加圧バネにより押圧すると、ニップNが形成される。一方、定着装置30でシートSのジャムが発生した場合において、加圧ローラ30pをフィルムユニット30hから離反させることにより、シートSを取り除くことができる。また、スリープ時など筒状フィルム35が回転停止している状態において、加圧ローラ30pをフィルムユニット30hから離反させることにより、筒状フィルム35の塑性変形が防止される。
【0023】
加圧ローラ30pは、モータにより回転駆動されて自転する。ニップNが形成された状態で加圧ローラ30pが自転すると、フィルムユニット30hの筒状フィルム35が従動回転する。加圧ローラ30pは、ニップNにシートSが配置された状態で自転することにより、シートSを搬送方向Wに搬送する。
【0024】
フィルムユニット30hは、ニップNに進入したシートSのトナー像を加熱する。フィルムユニット30hは、筒状フィルム(筒状体)35と、ヒータユニット40と、伝熱部材49と、ガイド部材70と、ステイ38と、ヒータ温度計62と、サーモスタット68と、フィルム温度計64と、を有する。
【0025】
筒状フィルム35は、筒状に形成される。筒状フィルム35は、内周側から順に、基層と、弾性層と、離型層と、を有する。基層は、ニッケル(Ni)等の材料により筒状に形成される。弾性層は、基層の外周面上に積層配置される。弾性層は、シリコーンゴム等の弾性材料で形成される。離型層は、弾性層の外周面上に積層配置される。離型層は、PFA樹脂などの材料で形成される。
【0026】
図4は、
図5のIV-IV線におけるヒータユニットの正面断面図である。
図5は、ヒータユニットの底面図(+z方向から見た図)である。
ヒータユニット40は、基板41と、発熱体セット(発熱体)45と、配線セット55と、を有する。
【0027】
基板41は、ステンレス等の金属材料または窒化アルミニウム等のセラミック材料などで形成される。基板41は、長細い長方形の板状に形成される。基板41は、筒状フィルム35の径方向の内側に配置される。基板41は、筒状フィルム35の軸方向を長手方向とする。
【0028】
本願において、x方向、y方向およびz方向が以下のように定義される。y方向は基板41の長手方向である。後述されるように、+y方向は中央部発熱体45aから第1端部発熱体45b1に向かう方向である。x方向は基板41の短手方向であり、+x方向はシートSの搬送方向(下流側の方向)である。z方向は基板41の法線方向であり、+z方向は基板41に対して発熱体セット45が配置される方向である。
図4に示されるように、基板41の+z方向の面には、ガラス材料等により絶縁層43が形成される。
【0029】
発熱体セット45は、基板41に配置される。発熱体セット45は、
図4に示されるように、絶縁層43の+z方向の面に形成される。発熱体セット45は、銀・パラジウム合金等により形成される。発熱体セット45の外形は、y方向を長手方向とし、x方向を短手方向とする長方形状に形成される。
図5に示されるように、発熱体セット45は、y方向に並んで配置された、第1端部発熱体45b1と、中央部発熱体45aと、第2端部発熱体45b2と、を有する。中央部発熱体45aは、発熱体セット45のy方向の中央部に配置される。中央部発熱体45aは、y方向に並んで配置される複数の小発熱体を組み合わせて構成されてもよい。第1端部発熱体45b1は、中央部発熱体45aの+y方向であって、発熱体セット45の+y方向の端部に配置される。第2端部発熱体45b2は、中央部発熱体45aの-y方向であって、発熱体セット45の-y方向の端部に配置される。中央部発熱体45aと第1端部発熱体45b1との境界線は、x方向と平行に配置されてもよく、x方向と交差して配置されてもよい。中央部発熱体45aと第2端部発熱体45b2との境界線についても同様である。
【0030】
発熱体セット45は、通電により発熱する。中央部発熱体45aの電気抵抗値は、第1端部発熱体45b1および第2端部発熱体45b2の電気抵抗値より小さい。
y方向の幅が小さいシートSは、定着装置30のy方向の中央部を通過する。この場合に制御部6は、中央部発熱体45aのみを発熱させる。一方で制御部6は、y方向の幅が大きいシートSの場合に、発熱体セット45の全体を発熱させる。そのため、中央部発熱体45aと、第1端部発熱体45b1および第2端部発熱体45b2とは、相互に独立して発熱を制御される。また第1端部発熱体45b1および第2端部発熱体45b2は、同様に発熱を制御される。
【0031】
配線セット55は、銀等の金属材料で形成される。配線セット55は、中央部接点52aと、中央部配線53aと、端部接点52bと、第1端部配線53b1と、第2端部配線53b2と、共通接点58と、共通配線57と、を有する。
【0032】
中央部接点52aは、発熱体セット45の-y方向に配置される。中央部配線53aは、発熱体セット45の+x方向に配置される。中央部配線53aは、中央部発熱体45aの+x方向の端辺と、中央部接点52aとを接続する。
【0033】
端部接点52bは、中央部接点52aの-y方向に配置される。第1端部配線53b1は、発熱体セット45の+x方向であって、中央部配線53aの+x方向に配置される。第1端部配線53b1は、第1端部発熱体45b1の+x方向の端辺と、端部接点52bの+x方向の端部とを接続する。第2端部配線53b2は、発熱体セット45の+x方向であって、中央部配線53aの-x方向に配置される。第2端部配線53b2は、第2端部発熱体45b2の+x方向の端辺と、端部接点52bの-x方向の端部とを接続する。
【0034】
共通接点58は、発熱体セット45の+y方向に配置される。共通配線57は、発熱体セット45の-x方向に配置される。共通配線57は、中央部発熱体45a、第1端部発熱体45b1および第2端部発熱体45b2の-x方向の端辺と、共通接点58とを接続する。
【0035】
このように、発熱体セット45の+x方向には、第2端部配線53b2、中央部配線53aおよび第1端部配線53b1が配置される。これに対して、発熱体セット45の-x方向には、共通配線57のみが配置される。そのため、発熱体セット45のx方向の中心45cは、基板41(ヒータユニット40)のx方向の中心41cより、-x方向に配置される。
【0036】
図3に示されるように、加圧ローラ30pの中心pcとフィルムユニット30h(筒状フィルム35)の中心hcとを結ぶ直線CLが定義される。また、加圧ローラ30pの中心軸pxとフィルムユニット30h(筒状フィルム35)の中心軸hxとを含む基準面CSが定義される。
【0037】
図6は、
図3のニップ周辺の拡大図である。
図6に示されるように、基板41のx方向の中心41cは、直線CLまたは基準面CSより+x方向に配置される。これにより、+x方向にヒータユニット40が伸びる。ヒータユニット40の+x方向の端部40dは、ニップNの+x方向の端部Ndより+x方向に配置される。これにより、ニップNの+x方向にヒータユニット40が伸びる。したがって、ニップNを通過したシートSがフィルムユニット30hから容易に剥離される。
【0038】
発熱体セット45のx方向の中心45cは、直線CLまたは基準面CSより-x方向に配置される。これにより、発熱体セット45からニップNの+x方向の端部Ndまでのx方向の距離が長くなり、ニップNの+x方向の温度が低下する。そのため、ニップNを通過したシートSの温度が低下し、トナーの付着したシートSが筒状フィルム35に貼り付きにくくなる。したがって、ニップNを通過したシートSがフィルムユニット30hから容易に剥離される。
発熱体セット45は、x方向およびy方向においてニップNの範囲内に配置される。これにより、ニップNを通過中のシートSが十分に加熱される。
【0039】
図4に示されるように、絶縁層43の+z方向の面に、発熱体セット45および配線セット55が形成される。発熱体セット45および配線セット55を覆うように、ガラス材料等により保護層46が形成される。保護層46は、ヒータユニット40と筒状フィルム35との摺動性を向上させる。
【0040】
図3に示されるように、ヒータユニット40は、筒状フィルム35の内側に配置される。筒状フィルム35の内周面にはグリース(不図示)が塗布されている。ヒータユニット40は、グリースを介して筒状フィルム35の内周面に接触する。ヒータユニット40が発熱すると、グリースの粘度が低下する。これにより、ヒータユニット40と筒状フィルム35との摺動性が確保される。
【0041】
伝熱部材49は、銅などの熱伝導率の高い金属材料により形成される。伝熱部材49の外形は、ヒータユニット40の基板41の外形と同等である。伝熱部材49は、ヒータユニット40の-z方向の面に接触して配置される。
定着装置30を通過するシートSを加熱するとき、シートSのサイズに応じてヒータユニット40に温度分布が発生する。ヒータユニット40が局所的に高温になると、樹脂材料で形成されるガイド部材70の耐熱温度を上回る可能性がある。伝熱部材49は、ヒータユニット40の温度分布を平均化させる。これにより、ガイド部材70の耐熱性が確保される。
【0042】
ガイド部材70は、液晶ポリマーなどの樹脂材料により形成される。ガイド部材70はy方向に伸びる。ガイド部材70は、ヒータユニット40の-z方向と、x方向の両側とを覆うように配置される。ガイド部材70については後に詳しく説明される。
【0043】
ステイ38は、鋼板材料等により形成される。ステイ38のy方向に垂直な断面はU字状に形成される。ステイ38は、U字の開口部をガイド部材70で塞ぐように、ガイド部材70の-z方向に装着される。ステイ38はy方向に伸びる。ステイ38のy方向の両端部は、画像形成装置1のハウジングに固定される。これにより、フィルムユニット30hが画像形成装置1に支持される。ステイ38は、フィルムユニット30hの曲げ剛性を向上させる。ステイ38のy方向の両端部付近には、筒状フィルム35のy方向への移動を規制するフランジ(不図示)が装着される。
【0044】
ヒータ温度計62は、伝熱部材49を挟んでヒータユニット40の-z方向に配置される。例えば、ヒータ温度計62はサーミスタである。ヒータ温度計62は、ガイド部材70の-z方向の面に装着されて支持される。ヒータ温度計62の感温素子は、ガイド部材70をz方向に貫通する孔を通って、伝熱部材49に接触する。ヒータ温度計62は、伝熱部材49を介してヒータユニット40の温度を計測する。
【0045】
サーモスタット68は、ヒータ温度計62と同様に配置される。サーモスタット68は、伝熱部材49を介して検知したヒータユニット40の温度が所定温度を超えた場合に、発熱体セット45への通電を遮断する。
フィルム温度計64は、筒状フィルム35の内側であって、ヒータユニット40の+x方向に配置される。フィルム温度計64は、筒状フィルム35の内周面に接触して、筒状フィルム35の温度を計測する。
【0046】
ガイド部材70について詳しく説明する。
図6に示されるように、ガイド部材70は、支持部71と、第1ガイド部72と、第2ガイド部77と、を有する。
支持部71は、ヒータユニット40の-z方向に配置される。支持部71は、伝熱部材49を介してヒータユニット40を支持する。なお、第1ガイド部72および第2ガイド部77がヒータユニット40の-z方向に延設されて、支持部71が形成される。ガイド部材70が一体に形成されることで、部品点数の増加が抑制されて、定着装置30が低コストになる。
【0047】
第1ガイド部72は、ヒータユニット40の-x方向に配置される。第1ガイド部72の+z方向(および+x方向)の端部には、第1平面74が形成される。第1平面74の+z方向の表面は、ヒータユニット40の+z方向の表面と平行である。第1ガイド部72の第1平面74の-x方向に連続して、第1曲面73が形成される。第1曲面73は、-x方向に向かうほど-z方向に湾曲する曲面である。第1平面74および第1曲面73は、ニップNの-x方向において筒状フィルム35の内周面をガイドする。
【0048】
ヒータユニット40の-x方向の端部40uは、ニップNの-x方向の端部Nuより+x方向に配置される。ヒータユニット40の-x方向の端部40uが、ニップNのx方向の内側に含まれる。ニップNの内側では筒状フィルム35が安定して保持される。そのため、筒状フィルム35がヒータユニット40の端部40uに擦れて損傷することが抑制される。したがって、定着装置30の耐久性が向上する。
【0049】
第1ガイド部72の第1平面74の+x方向の端部74dは、ニップNの-x方向の端部Nuより+x方向に配置される。これにより、ニップNを形成している筒状フィルム35の-x方向の一部が、第1ガイド部72によって支持される。第1平面74の-x方向の端部74uは、ニップNの-x方向の端部Nuと同じx方向の位置か、それより-x方向に配置される。これにより、ニップNを形成している筒状フィルム35の-x方向の端部が、第1ガイド部72の第1平面74によって支持される。これにより、第1ガイド部72を利用してニップNが形成される。
【0050】
第1ガイド部72を利用してニップNを形成することで、ニップNのx方向の長さが長くなる。ニップNにおいて筒状フィルム35が安定して保持され、筒状フィルム35の撓みが抑制される。ニップNに進入しようとするシートSが、筒状フィルム35の撓みに衝突することが回避される。したがって、ニップNに対するシートSの進入が安定する。
【0051】
図7は、
図3のニップ上流側の拡大図である。第1ガイド部72の+x方向および+z方向の端部74dは、ヒータユニット40より+z方向に突出する。突出量はギャップGである。言い換えれば、第1ガイド部72の第1平面74が、ヒータユニット40の+z方向の表面より+z方向に配置される。
これにより、筒状フィルム35がヒータユニット40の-x方向および+z方向の端部40uに擦れて損傷することが抑制される。したがって、定着装置30の耐久性が向上する。ヒータユニット40の-x方向(および+z方向)の端部40uには、丸面取りが形成される。これにより、筒状フィルム35の損傷が抑制され、定着装置30の耐久性が向上する。
【0052】
図6に示されるように、第2ガイド部77は、ヒータユニット40の+x方向に配置される。第2ガイド部77の+z方向の端部には、第2曲面78が形成される。第2曲面78は、+x方向に向かうほど-z方向に湾曲する曲面である。第2曲面78は、ニップNの+x方向において筒状フィルム35の内周面をガイドする。
第2ガイド部77の-x方向および+z方向の端部は、ヒータユニット40より+z方向に突出する。これにより、筒状フィルム35がヒータユニット40の+x方向および+z方向の端部40uに擦れて損傷することが抑制される。したがって、定着装置30の耐久性が向上する。
【0053】
以上に詳述されたように、実施形態の定着装置30は、筒状フィルム35と、加圧ローラ30pと、発熱体セット45と、ヒータユニット40と、ガイド部材70と、を持つ。加圧ローラ30pは、筒状フィルム35に当接してニップNを形成可能であり、回転してニップNに挟んだシートSを搬送可能である。発熱体セット45は、筒状フィルム35の内側に配置され、筒状フィルム35の軸方向を長手方向とする。発熱体セット45は、筒状フィルム35の中心軸hxおよび加圧ローラ30pの中心軸pxを含む基準面CSより-x方向に短手方向の中心45cが配置される。ヒータユニット40は、発熱体セット45を有し、筒状フィルム35の内面に当接する。ガイド部材70は、筒状フィルム35の内側に配置され、ヒータユニット40より-x方向に配置される。ガイド部材70は、+x方向の端部74dがニップNにおける-x方向の端部Nuより+x方向に配置される。ガイド部材70は、端部74dがヒータユニット40より加圧ローラ30p側に配置される。
【0054】
発熱体セット45は、基準面CSより-x方向に短手方向の中心45cが配置される。これにより、ニップNの+x方向の温度が低下する。したがって、ニップNを通過したシートSが筒状フィルム35から容易に剥離される。
ガイド部材70は、+x方向の端部74dがニップNにおける-x方向の端部Nuより+x方向に配置される。ガイド部材70を利用してニップNが形成されるので、ニップNが長くなる。筒状フィルム35が安定して保持され、筒状フィルム35の撓みが抑制される。したがって、ニップNに対するシートSの進入が安定する。
ガイド部材70は、+x方向の端部74dがヒータユニット40より加圧ローラ30p側に配置される。これにより、筒状フィルム35がヒータユニット40の-x方向の端部40uに擦れて損傷することが抑制される。したがって、定着装置30の耐久性が向上する。
【0055】
ヒータユニット40は、筒状フィルム35の軸方向を長手方向とし、基準面CSより+x方向に短手方向の中心41cが配置される。
これにより、+x方向にヒータユニット40が伸びるため、ニップNを通過したシートSが筒状フィルム35から容易に剥離される。
【0056】
ヒータユニット40における+x方向の端部は、ニップNにおける+x方向の端部Ndより、+x方向に配置される。
これにより、ニップNの+x方向にヒータユニット40が伸びるため、ニップNを通過したシートSが筒状フィルム35から容易に剥離される。
【0057】
発熱体セット45は、長手方向および短手方向においてニップNの範囲内に配置される。
これにより、ニップNを通過中のシートSが十分に加熱される。
【0058】
ガイド部材70は、ヒータユニット40を挟んで加圧ローラ30pの反対側に延設され、ヒータユニット40を支持する。
これにより、部品点数の増加が抑制されるので、定着装置30が低コストになる。
【0059】
実施形態の画像処理装置は画像形成装置1であり、加熱装置は定着装置30である。これに対して、画像処理装置は消色装置であり、加熱装置は消色部であってもよい。消色装置は、消色トナーによりシートに形成された画像を消色(消去)する処理を行う。消色部は、ニップを通過するシートに形成された消色トナー像を加熱して消色する。
【0060】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、ガイド部材70の+x方向の端部74dが、ヒータユニット40より加圧ローラ30p側に配置される。これにより、定着装置30の耐久性が向上する。
【0061】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0062】
CS…基準面、hx…筒状フィルムの中心軸(筒状体の中心軸)、N…ニップ、Nu…-x方向の端部(上流側の端部)、Nd…+x方向の端部(下流側の端部)、px…加圧ローラの中心軸、S…シート、30…定着装置(加熱装置)、30p…加圧ローラ、35…筒状フィルム(筒状体)、40…ヒータユニット、41c…短手方向の中心、40u…-x方向の端部(上流側の端部)、45…発熱体セット(発熱体)、45c…短手方向の中心、70…ガイド部材、74d…+x方向の端部(下流側の端部)。