(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】インクジェットプリンタおよびインク供給装置の開放方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20221207BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
B41J2/175 501
B41J2/01 401
B41J2/175
B41J2/175 503
(21)【出願番号】P 2019028302
(22)【出願日】2019-02-20
【審査請求日】2021-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000116057
【氏名又は名称】ローランドディー.ジー.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【氏名又は名称】古市 昭博
(72)【発明者】
【氏名】森園 和也
(72)【発明者】
【氏名】藤田 陽
(72)【発明者】
【氏名】澤田 哲平
【審査官】亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-239872(JP,A)
【文献】特開平6-198902(JP,A)
【文献】国際公開第2018/096742(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0097188(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体にインクを吐出するインクヘッドと、
インクを貯留するインクカートリッジに着脱可能に接続される上流側端部と、前記インクヘッドに接続された下流側端部と、前記上流側端部と前記下流側端部との間に位置する中途部と、を有するインク経路と、
前記中途部に配置され、前記中途部を開放または閉鎖するバルブと、
前記バルブと前記インクヘッドとの間に位置するように前記中途部に配置され、前記インクカートリッジから前記インクヘッドに向けてインクを供給するインク供給装置と、
前記バルブおよび前記インク供給装置を制御する制御装置と、を備え、
前記インク供給装置は、
内部にインクが流通しかつ弾性変形可能なチューブと、
第1の方向に回転することによって前記チューブを押圧して前記チューブを閉鎖する閉鎖位置に移動し、かつ、前記第1の方向とは逆方向である第2の方向に回転することによって前記チューブから離反して前記チューブを開放する開放位置に移動するように構成された押圧体と、
前記押圧体が設けられ、前記第1の方向および前記第2の方向に回転する回転体と、を備え、
前記押圧体は、前記閉鎖位置から前記チューブを押圧しながら前記第1の方向にさらに回転することによって前記チューブ内のインクを前記インクヘッドに向けて供給し、かつ、前記閉鎖位置から前記第2の方向に所定の時間だけ回転して前記チューブから離反するまでは前記チューブを押圧して前記チューブ内のインクを前記インクカートリッジに向けて供給するように構成され、
前記制御装置は、
前記回転体の前記第1の方向の回転および前記第2の方向の回転を制御して前記押圧体を回転させる押圧体制御部と、
前記回転体を前記第2の方向に回転させることによって前記押圧体を前記閉鎖位置から前記開放位置に移動させる場合において、前記押圧体が前記閉鎖位置に位置するときに前記バルブを開放した後、前記回転体が第1の時間だけ前記第2の方向に回転した後に、前記バルブを閉鎖するバルブ制御部と、を備えている、インクジェットプリンタ。
【請求項2】
前記押圧体は、前記押圧体が前記閉鎖位置に位置する状態から前記回転体が前記第1の時間より長い第2の時間だけ前記第2の方向に回転したときには、前記開放位置に位置するように構成され、
前記第1の時間は、前記第2の時間の半分より長い、請求項1に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項3】
前記上流側端部に前記インクカートリッジが取り付けられているとき、前記インクカートリッジは、前記インクヘッドより上方に位置する、請求項1または2に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項4】
前記押圧体は、第1押圧体と第2押圧体とを含み、
前記第1押圧体および前記第2押圧体がそれぞれ前記閉鎖位置に位置する状態から前記回転体が前記第1の時間だけ前記第2の方向に回転したときには、前記第1押圧体および前記第2押圧体の少なくとも一方は前記開放位置に位置する、請求項1から3のいずれか一項に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項5】
インクが一時的に貯留される貯留室を有し、前記インク供給装置と前記インクヘッドとの間に位置するように前記中途部に配置されたダンパーを備えている、請求項1から4のいずれか一項に記載のインクジェットプリンタ。
【請求項6】
記録媒体にインクを吐出するインクヘッドと、
インクを貯留するインクカートリッジに着脱可能に接続される上流側端部と、前記インクヘッドに接続された下流側端部と、前記上流側端部と前記下流側端部との間に位置する中途部と、を有するインク経路と、
前記中途部に配置され、前記中途部を開放または閉鎖するバルブと、
前記バルブと前記インクヘッドとの間に位置するように前記中途部に配置され、前記インクカートリッジから前記インクヘッドに向けてインクを供給するインク供給装置と、を備えたインクジェットプリンタにおいて、前記インク供給装置を開放する方法であって、
前記インク供給装置は、
内部にインクが流通しかつ弾性変形可能なチューブと、
第1の方向に回転することによって前記チューブを押圧して前記チューブを閉鎖する閉鎖位置に移動し、かつ、前記第1の方向とは逆方向である第2の方向に回転することによって前記チューブから離反して前記チューブを開放する開放位置に移動するように構成された押圧体と、
前記押圧体が設けられ、前記第1の方向および前記第2の方向に回転する回転体と、を備え、
前記押圧体は、前記閉鎖位置から前記チューブを押圧しながら前記第1の方向にさらに回転することによって前記チューブ内のインクを前記インクヘッドに向けて供給し、かつ、前記閉鎖位置から前記第2の方向に所定の時間だけ回転して前記チューブから離反するまでは前記チューブを押圧して前記チューブ内のインクを前記インクカートリッジに向けて供給するように構成され、
前記押圧体が前記閉鎖位置に位置するときに前記バルブを開放した後、前記回転体が第1の時間だけ前記第2の方向に回転した後に、前記バルブを閉鎖することを、含む、開放方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタおよびインク供給装置の開放方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、インクを貯留するインクカートリッジとインクヘッドとを接続するインク経路と、インク経路に配置されかつインクヘッドに向けてインクを供給するインク供給装置と、を備えたインクジェットプリンタが開示されている。特許文献1のインク供給装置は、内部にインクが流通するチューブと、チューブを押圧してインクを移動させる押圧体とを備えている。ここでのインク供給装置は、いわゆるチューブポンプである。押圧体がチューブを押圧してチューブを閉鎖した状態で、さらに押圧体が移動することによってチューブ内のインクがインクヘッドに向けて供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、インク経路のうちインク供給装置の上流側(即ちインクカートリッジ側)には、インク経路を開放および閉鎖するバルブが設けられることがある。かかるバルブは、例えば、インクカートリッジからインクヘッドに向けてインクが供給されるときには、インク経路を開放し、インクカートリッジを交換するときや印刷を行わないとき等にインク経路を閉鎖する。
【0005】
また、いわゆるチューブポンプでは、印刷を行わないときには押圧体によるチューブの押圧を解除して、チューブを開放状態にする。即ちインク供給装置を開放状態にする。これにより、例えば、押圧体がチューブの同じ部分を長時間押圧することが抑制され、チューブの塑性変形を抑制することができる。
【0006】
ここで、従来は、インク供給装置を開放する方法として、バルブによってインク経路を閉鎖した状態で押圧体のチューブへの押圧を解除する場合と、バルブによってインク経路を開放した状態で押圧体のチューブへの押圧を解除する場合とがあった。本願発明者は、バルブによってインク経路を閉鎖した状態で押圧体のチューブへの押圧を解除する場合には、押圧体をチューブから離反させるときに、チューブ内のインクがバルブに向かって流れることがあるため、インク供給装置とバルブとの間のインク経路に大きな圧力が加わり、不具合が発生し得ることを発見した。また、インクカートリッジがインクヘッドより上方に位置しかつバルブによってインク経路を開放した状態で押圧体のチューブへの押圧を解除する場合(即ちインクカートリッジの水頭値がインクヘッドの水頭値よりも高い場合)には、押圧体によるチューブへの押圧が解除された後にインクカートリッジからインクヘッドに向けてインクが供給され続けてしまい、インクヘッドからインクが漏れ出し得ることを発見した。さらに、インクカートリッジがインクヘッドより下方に位置しかつバルブによってインク経路を開放した状態で押圧体のチューブへの押圧を解除する場合(即ちインクヘッドの水頭値がインクカートリッジの水頭値よりも高い場合)には、押圧体によるチューブへの押圧が解除された後にインクヘッドからインクカートリッジに向けてインクが供給され続けてしまい、インクヘッドから空気が流入し得ることを発見した。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、インク供給装置を開放するときにインク経路に過剰に圧力が加わることを抑制すると共に、インクヘッドからインクが漏れ出したりインクヘッドに空気が流入したりすることを抑制することができるインクジェットプリンタおよびインク供給装置の開放方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るインクジェットプリンタは、記録媒体にインクを吐出するインクヘッドと、インクを貯留するインクカートリッジに着脱可能に接続される上流側端部と、前記インクヘッドに接続された下流側端部と、前記上流側端部と前記下流側端部との間に位置する中途部と、を有するインク経路と、前記中途部に配置され、前記中途部を開放または閉鎖するバルブと、前記バルブと前記インクヘッドとの間に位置するように前記中途部に配置され、前記インクカートリッジから前記インクヘッドに向けてインクを供給するインク供給装置と、前記バルブおよび前記インク供給装置を制御する制御装置と、を備えている。前記インク供給装置は、内部にインクが流通しかつ弾性変形可能なチューブと、第1の方向に回転することによって前記チューブを押圧して前記チューブを閉鎖する閉鎖位置に移動し、かつ、前記第1の方向とは逆方向である第2の方向に回転することによって前記チューブから離反して前記チューブを開放する開放位置に移動するように構成された押圧体と、前記押圧体が設けられ、前記第1の方向および前記第2の方向に回転する回転体と、を備えている。前記押圧体は、前記閉鎖位置から前記チューブを押圧しながら前記第1の方向にさらに回転することによって前記チューブ内のインクを前記インクヘッドに向けて供給し、かつ、前記閉鎖位置から前記第2の方向に所定の時間だけ回転して前記チューブから離反するまでは前記チューブを押圧して前記チューブ内のインクを前記インクカートリッジに向けて供給するように構成されている。前記制御装置は、前記回転体の前記第1の方向の回転および前記第2の方向の回転を制御して前記押圧体を回転させる押圧体制御部と、前記回転体を前記第2の方向に回転させることによって前記押圧体を前記閉鎖位置から前記開放位置に移動させる場合において、前記押圧体が前記閉鎖位置に位置するときに前記バルブを開放した後、前記回転体が第1の時間だけ前記第2の方向に回転した後に、前記バルブを閉鎖するバルブ制御部と、を備えている。
【0009】
本発明のインクジェットプリンタによると、バルブ制御部は、押圧体が閉鎖位置に位置するときにバルブを開放する。これにより、その後に回転体が第2の方向に回転しても、チューブ内のインクをインクカートリッジへと戻すことができる。即ち、インク供給装置とバルブとの間のインク経路に高い圧力は加わらない。そして、バルブ制御部は、バルブを開放した後、回転体が第1の時間だけ第2の方向に回転した後に、バルブを閉鎖する。バルブを閉鎖することによって、インク供給装置からインクカートリッジへとインクは流れなくなるが、回転体が第1の時間だけ回転させるまではバルブが開放されているため、その分のインクはインクカートリッジに向けて流れている。このように、初めからバルブを閉鎖しているときと比べてインク供給装置からバルブへと流れるインクが減少しているため、バルブを閉鎖した後にインク供給装置とバルブとの間のインク経路に加わる圧力は比較的小さい。このため、インク経路に不具合が発生することが抑制される。さらに、バルブを閉鎖することによって、インク供給装置が開放されてもインクカートリッジからインクヘッドにはインクが流れないため、インクヘッドからインクが漏れ出すことが抑制される。あるいは、バルブを閉鎖することによって、インク供給装置が開放されてもインクヘッドからインクカートリッジにはインクが流れないため、インクヘッドから空気が流入することが抑制される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、インク供給装置を開放するときにインク経路に過剰に圧力が加わることを抑制すると共に、インクヘッドからインクが漏れ出したりインクヘッドに空気が流入したりすることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】一実施形態に係るプリンタの主要部の正面図である。
【
図3】一実施形態に係るインク供給システムを示す模式図である。
【
図4】一実施形態に係る供給ポンプの構成を示す模式図であり、押圧体が閉鎖位置に位置する状態を示す。
【
図5】一実施形態に係る供給ポンプの構成を示す模式図であり、押圧体が開放位置に位置する状態を示す。
【
図6A】第1押圧体および第2押圧体が開放位置に位置する状態を示す模式図である。
【
図6B】第1押圧体および第2押圧体が開放位置に位置する状態から回転体が900°回転したときの第1押圧体および第2押圧体の位置を示す模式図である。
【
図6C】第1押圧体および第2押圧体が開放位置に位置する状態から回転体が180°回転したときの第1押圧体および第2押圧体の位置を示す模式図である。
【
図6D】第1押圧体および第2押圧体が開放位置に位置する状態から回転体が270°回転したときの第1押圧体および第2押圧体の位置を示す模式図である。
【
図6E】第1押圧体および第2押圧体が開放位置に位置する状態から回転体が360°回転したときの第1押圧体および第2押圧体の位置を示す模式図である。
【
図7A】第1押圧体および第2押圧体が閉鎖位置に位置する状態を示す模式図である。
【
図7B】第1押圧体および第2押圧体が閉鎖位置に位置する状態から回転体が900°回転したときの第1押圧体および第2押圧体の位置を示す模式図である。
【
図7C】第1押圧体および第2押圧体が閉鎖位置に位置する状態から回転体が180°回転したときの第1押圧体および第2押圧体の位置を示す模式図である。
【
図7D】第1押圧体および第2押圧体が閉鎖位置に位置する状態から回転体が270°回転したときの第1押圧体および第2押圧体の位置を示す模式図である。
【
図8】他の例における第1押圧体および第2押圧体が閉鎖位置に位置する状態を示す模式図である。
【
図9】一実施形態に係るダンパーおよび検出装置の平面断面図であり、貯留室内の圧力が所定の圧力以下である状態を示す図である。
【
図10】一実施形態に係るダンパーおよび検出装置の平面断面図であり、貯留室内の圧力が所定の圧力より大きい状態を示す図である。
【
図11】一実施形態に係るプリンタの制御系のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、一実施形態に係るインクジェットプリンタ10(以下、プリンタ10とする。)について説明する。ここで説明される実施形態は、当然ながら本発明を特に限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0013】
以下の説明では、左、右、上、下とは、プリンタ10の正面にいるユーザから見た左、右、上、下をそれぞれ意味することとする。また、プリンタ10から上記ユーザに近づく方を前方、遠ざかる方を後方とする。図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を表す。図面中の符号Yは主走査方向を表す。本実施形態では、主走査方向Yは、左右方向である。図面中の符号Xは副走査方向を表す。副走査方向Xは主走査方向Yと交差する方向(例えば、平面視で垂直に交差する方向)である。本実施形態では、副走査方向Xは前後方向である。ただし、上記方向は便宜的に定めたものに過ぎず、限定的に解釈すべきものではない。
【0014】
図1に示すように、プリンタ10は、記録媒体12に印刷を行う。記録媒体12は、例えば、長尺に形成され、ロール状に巻かれて用いられる。なお、記録媒体12は、ロール状に巻かれたものが所定の長さに切断されたシート状のものであってもよい。記録媒体12は、例えば、記録紙である。ただし、記録媒体12は、記録紙に限定されない。例えば、記録媒体12には、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエステルなどの樹脂材料から形成されたシート、台紙と台紙上に積層されかつ接着剤が塗布された剥離紙とからなるシール材等が含まれる。
【0015】
図1に示すように、プリンタ10は、ベース部材40と、本体ケース50と、右脚部16Rと、左脚部16Lと、インクヘッドユニット20(
図2参照)と、制御装置30(
図2参照)とを備えている。ベース部材40は、主走査方向Yに延びる。ベース部材40は、プラテン15を備えている。プラテン15は、主走査方向Yに延びる。右脚部16Rおよび左脚部16Lは、ベース部材40の下部に取り付けられている。右脚部16Rおよび左脚部16Lは、ベース部材40を支持する。
【0016】
図2に示すように、インクヘッドユニット20は、ベース部材40に設けられている。インクヘッドユニット20は、本体ケース50の内方に配置されている。インクヘッドユニット20は、プラテン15より上方に配置されている。インクヘッドユニット20は、キャリッジ22、後述するインクヘッド21およびダンパー80を備えている。
【0017】
図2に示すように、プリンタ10は、ベース部材40に設けられたガイドレール13を備えている。ガイドレール13は、主走査方向Yに延びている。ガイドレール13には、インクヘッドユニット20のキャリッジ22が係合している。キャリッジ22は、キャリッジ移動機構8によって、ガイドレール13に沿って主走査方向Yに往復移動する。キャリッジ移動機構8は、ガイドレール13の左端側に配置された左側のプーリ19aと、ガイドレール13の右端側に配置されたプーリ19bとを有している。プーリ19bには、キャリッジモータ8aが連結されている。なお、キャリッジモータ8aはプーリ19aに連結されていてもよい。プーリ19bは、キャリッジモータ8aによって駆動される。プーリ19aおよびプーリ19bには、それぞれ無端状のベルト16が巻き掛けられている。キャリッジ22はベルト16に固定されている。プーリ19aおよびプーリ19bが回転してベルト16が走行すると、キャリッジ22が主走査方向Yに移動する。このように、キャリッジ22はガイドレール13に沿って主走査方向Yに移動可能に構成されている。
【0018】
図2に示すように、プラテン15は、ベース部材40の中央部に設けられている。プラテン15は、本体ケース50の左前カバー54Lと右前カバー54Rとの間に配置されている。プラテン15には、記録媒体12が載置される。プラテン15は、主走査方向Yに延びる。プラテン15には、複数のグリットローラ17が設けられている。グリットローラ17は、ベース部材40に設けられた図示しないピンチローラと対向する位置に配置されている。グリットローラ17はフィードモータ17aに連結されている。グリットローラ17はフィードモータ17aによって回転駆動される。記録媒体12がグリットローラ17とピンチローラとの間に挟まれた状態でグリットローラ17が回転すると、記録媒体12は副走査方向X(
図1参照)に搬送される。
【0019】
図2に示すように、本体ケース50には、複数のインクカートリッジ25が収容される。インクカートリッジ25はインクを貯留する容器である。本実施形態では、8個のインクカートリッジ25が本体ケース50に収容されるが、インクカートリッジ25の数は、8個に限定されない。インクカートリッジ25は、後述するインク経路60(
図3参照)の上流側端部62(
図3参照)に着脱自在に接続されている。
図3に示すように、上流側端部62にインクカートリッジ25が取り付けられているとき、インクカートリッジ25は、後述するインクヘッド21より上方に位置する。インクカートリッジ25には、例えば、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ライトシアンインク、ライトマゼンタインク、および、ブラックインクなどのプロセスカラーインクや、ホワイトインク、メタリックインク、および、クリアインクなどの特色インクのうち何れかのインクが貯留されている。
【0020】
図2に示すように、プリンタ10は、インクカートリッジ25ごとにインク供給システム55を備えている。
図3は、インクカートリッジ25からインクヘッド21へインクを供給するインク供給システム55を示す模式図である。
図3に示すように、インク供給システム55は、インクカートリッジ25に加えて、インクヘッド21、インク経路60、バルブ64、供給ポンプ68、ダンパー80および検出装置90を備えている。供給ポンプ68は、インク供給装置の一例である。
図2に示すように、インクヘッド21およびダンパー80はキャリッジ22に搭載され、主走査方向Yに往復移動する。一方、インクカートリッジ25は、キャリッジ22に搭載されておらず、主走査方向Yに往復移動しない。そのため、キャリッジ22が主走査方向Yに移動してもインク経路60が破損しないように、インク経路60の大部分(少なくとも全長の半分以上)は、主走査方向Yに延びた状態で配置されている。本実施形態では、合計4つインク経路60が設けられている。インク経路60は、ケーブル類保護案内装置46で覆われている。
【0021】
インクヘッドは、プラテン15に載置された記録媒体12にインクを吐出する複数のノズル(図示せず)を備えている。ノズルは、キャリッジ22(
図2参照)の底面から外部に露出している。
【0022】
図3に示すように、インクカートリッジ25とインクヘッド21とは、インク経路60を介して連通している。インク経路60は、上流側端部62と、下流側端部63と、中途部65と、を有する。上流側端部62は、インクカートリッジ25のインク取り出し口に着脱可能に接続されている。下流側端部63は、インクヘッド21に接続されている。中途部65は、上流側端部62と下流側端部63との間に位置する。インク経路60は、インクカートリッジ25からインクヘッド21にインクを導く流路を形成している。インク経路60は、柔軟性や可撓性を有し、弾性変形可能なように構成されている。インク経路60の構成は特に限定されないが、本実施形態では樹脂製の変形容易なチューブである。ただし、チューブ以外の材料で構成されていてもよい。インク経路60の一部がチューブによって構成されていてもよい。
【0023】
図3に示すように、中途部65は、チューブ65A、チューブ65B、チューブ65Cおよびチューブ65Dを備えている。チューブ65Aは、インクカートリッジ25とバルブ64とを連通する。チューブ65Bは、バルブ64と供給ポンプ68とを連通する。チューブ65Cは、供給ポンプ68とダンパー80とを連通する。チューブ65Dは、ダンパー80とインクヘッド21とを連通する。上流側端部62は、チューブ65Aに設けられている。下流側端部63は、チューブ65Dに設けられている。
【0024】
図3に示すように、バルブ64は、中途部65に配置されている。バルブ64は、インクカートリッジ25と供給ポンプ68との間に配置されている。バルブ64は、本体ケース50内に配置されている。バルブ64は、中途部65を開放または閉鎖可能に構成されている。なお、バルブ64が中途部65を開放または閉鎖するとは、バルブ64が中途部65を完全に開放または閉鎖する場合と、中途部65を部分的に開放または閉鎖する場合とを含む。バルブ64が中途部65を開放することで、インクカートリッジ25に貯留されたインクをインクヘッド21に供給することができる。一方、バルブ64が中途部65を閉鎖することで、インクカートリッジ25に貯留されたインクをインクヘッド21に供給することができなくなる。バルブ64は、制御装置30に制御される。なお、本実施形態のプリンタ10は、中途部65に圧力制御弁を備えていない。
【0025】
図3に示すように、供給ポンプ68は、中途部65に配置されている。供給ポンプ68は、バルブ64とダンパー80との間に配置されている。供給ポンプ68は、インクカートリッジ25からインクヘッド21に向けてインクを供給する。即ち、バルブ64が開放されているときには、供給ポンプ68は、インクカートリッジ25からインクヘッド21に向けてインクを供給する。供給ポンプ68は、検出装置90において、貯留室81内の圧力が所定の圧力以下であると検出されたときに駆動される。供給ポンプ68によって貯留室81にインクが所定の量だけ供給されると、貯留室81内の圧力が所定の圧力より大きくなる。
図3では、供給ポンプ68は開放されている。なお、
図4および5を除き、供給ポンプ68を簡略化して図示している。
【0026】
図4は、供給ポンプ68の構成を示す模式図である。
図4に示すように、供給ポンプ68は、チューブポンプである。供給ポンプ68は、円弧状に形成された内壁71Aを有する本体ケース71と、本体ケース71内に配置されたチューブ73と、チューブ73の一部を押圧可能な一対の押圧体74と、押圧体74を支持しかつ押圧体74を本体ケース71内で移動させるための回転体75と、回転体75を回転駆動させるためのモータ76(
図11参照)と、押圧体74に接触する第1板部材77Aおよび第2板部材77Bと、を備えている。なお、
図4および
図5において、回転体75は、二点鎖線で表されている。
【0027】
チューブ73は、内部にインクが流通しかつ弾性変形可能に形成されている。
図4に示すように、チューブ73の一端73Aは、連結管73Xを介してチューブ65B(
図3参照)に接続されている。チューブ73の他端73Bは、連結管73Xを介してチューブ65C(
図3参照)に接続されている。チューブ73は、押圧体に押圧されることによって閉鎖される。
【0028】
図4に示すように、回転体75は、本体ケース71に回転自在に設けられている。回転体75は、第1回転体75Aと第2回転体75Bとを備えている。第1回転体75Aと第2回転体75Bとの間には、押圧体74が設けられている。即ち、第1回転体75Aおよび第2回転体75Bは、押圧体74を支持する。第1回転体75Aおよび第2回転体75Bは一体となって回転可能に設けられている。第2回転体75Bには、押圧体74の移動を案内するガイド孔78が形成されている。第1回転体75Aの外縁形状はガイド孔78に沿った形状になっている。ガイド孔78の第1端部78Aと回転体75の中心75Cとの距離は、ガイド孔78の第2端部78Bと中心75Cとの距離より長い。即ち、押圧体74が第1端部78Aに位置するときの押圧体74と中心75Cとの距離は、押圧体74が第2端部78Bに位置するときの押圧体74と中心75Cとの距離より長い。回転体75は、本体ケース71に対して第1の方向(
図4の矢印D1の方向)および第2の方向(
図4の矢印D2の方向)に回転する。回転体75は、例えば、22.5°ずつ回転することができる。回転体75は、一定の速度で回転する。モータ76(
図11参照)は、制御装置30によって制御される。
【0029】
図4に示すように、押圧体74は、回転体75の回転に連動して回転可能に構成されている。押圧体74は、回転体75が第1の方向(
図4の矢印D1の方向。ここでは時計回り。)に回転することによって、第1の方向に回転する。押圧体74は、回転体75が第2の方向(
図4の矢印D2の方向。ここでは反時計回り。第1の方向とは逆方向。)に回転することによって、第2の方向に回転する。押圧体74は、回転体75に沿って移動可能に構成されている。押圧体74は、ガイド孔78に案内されて回転体75に沿って移動可能に構成されている。押圧体74は、閉鎖位置CP(
図4参照)と開放位置OP(
図5参照)との間で移動可能に構成されている。押圧体74は、第1の方向に回転することによってチューブ73を押圧してチューブ73を閉鎖可能な閉鎖位置CPに移動する。押圧体74が閉鎖位置CPに位置するときには、押圧体74はガイド孔78の第1端部78Aに位置する。押圧体74は、閉鎖位置CPからチューブ73を押圧しながら第1の方向(
図4の矢印D1の方向)にさらに回転することによってチューブ73内のインクをインクヘッド21に向けて供給するように構成されている。このとき、一対の押圧体74は、回転体75の中心75Cを通る直線L上に位置する。押圧体74は、第2の方向に回転することによってチューブ73から離反してチューブ73を開放する開放位置OPに移動する。押圧体74は、閉鎖位置CPから第2の方向に所定の時間(例えば0.3秒~1.8秒程度。押圧体74の初期位置によって異なる。)だけ回転してチューブ73から離反するまではチューブ73を押圧してチューブ73内のインクをインクカートリッジ25に向けて供給する。押圧体74が閉鎖位置CPから第2の方向に所定の時間だけ回転するときに、回転体75は第2の方向に22.5°ずつ第1角度(例えば45°~225°程度。押圧体74の初期位置によって異なる。)だけ回転する。なお、押圧体74がチューブ73から離反するとは、押圧体74がチューブ73と接触していない状態と、押圧体74がチューブ73と接触しているがチューブ73を押圧していない状態とを含む。押圧体74は開放位置OPに位置するときには、押圧体74はガイド孔78の第2端部78Bに位置する。このとき、一対の押圧体74は、回転体75の中心75Cを通る直線L上に位置する。押圧体74は、開放位置OPに位置する状態から回転体75が第1の方向に180°~360°回転するまでに閉鎖位置CPに位置するように構成されている。押圧体74は、閉鎖位置CPに位置する状態から回転体75が第2の方向に90°~360°回転するまでに開放位置OPに位置するように構成されている。
【0030】
図4に示すように、第1板部材77Aおよび第2板部材77Bは、本体ケース71に固定されている。第1板部材77Aおよび第2板部材77Bは、押圧体74の移動軌跡上に配置されている。第1板部材77Aおよび第2板部材77Bは、押圧体74の回転体75に対する位置を変更させる部材である。例えば、
図4の状態から回転体75が第2の方向(
図4の矢印D2の方向)に回転すると、第1板部材77Aは、押圧体74と接触する。そして、押圧体74はガイド孔78に沿って第1端部78Aから第2端部78Bへと移動する(
図5参照)。ここで、第1板部材77Aは、弾性変形可能に形成されているため、回転体75がさらに第2の方向に回転すると、押圧体74は第1板部材77Aを弾性変形させながら通過する。なお、例えば、押圧体74が第1板部材77Aと第2板部材77Bとの間に位置する状態から回転体75が第2の方向(
図4の矢印D2の方向)に回転すると、第2板部材77Bは、押圧体74と接触する。そして、押圧体74はガイド孔78に沿って第1端部78Aから第2端部78Bへと移動する(
図5参照)。ここで、第2板部材77Bは、弾性変形可能に形成されているため、回転体75がさらに第2の方向に回転すると、押圧体74は第2板部材77Bを弾性変形させながら通過する。一方、例えば、
図5の状態から回転体75が第1の方向(
図5の矢印D1の方向)に回転すると、第1板部材77Aおよび第2板部材77Bは、押圧体74と接触する。そして、押圧体74はガイド孔78に沿って第2端部78Bから第1端部78Aへと移動する(
図4参照)。ここで、第1板部材77Aおよび第2板部材77Bは、弾性変形可能に形成されているため、回転体75がさらに第1の方向に回転すると、押圧体74は第1板部材77Aを弾性変形させながら通過する。第1板部材77Aおよび第2板部材77Bは、例えば、ゴム材料から形成されている。なお、
図4の状態から回転体75が第1の方向(
図4の矢印D1の方向)に回転すると、第1板部材77Aおよび第2板部材77Bは、押圧体74と接触するが、押圧体74はガイド孔78の第1端部78Aから移動しない。また、
図5の状態から回転体75が第2の方向(
図4の矢印D2の方向)に回転すると、第1板部材77Aおよび第2板部材77Bは、押圧体74と接触するが、押圧体74はガイド孔78の第2端部78Bから移動しない。
【0031】
次に
図6A~
図6Eを参照しながら、押圧体74が開放位置OPから閉鎖位置CPに移動するときの動きについて説明する。ここでは、押圧体74として、第1押圧体74Aと第2押圧体74Bとを備えている例を説明する。
図6Aに示すように、第1押圧体74Aおよび第2押圧体74Bがガイド孔78の第2端部78Bに位置するとき、第1押圧体74Aおよび第2押圧体74Bはチューブ73と接触しない。即ち、
図6Aでは、第1押圧体74Aおよび第2押圧体74Bは開放位置OPに位置する。次に、
図6Bに示すように、回転体75が矢印D1の方向に90°回転すると、第2押圧体74Bが第1板部材77Aに接触し、第2押圧体74Bはガイド孔78に沿って第2端部78Bから第1端部78Aに向けて移動する。このとき、第1押圧体74Aはガイド孔78の第2端部78Bに位置する。次に、
図6Cに示すように、回転体75が矢印D1の方向にさらに90°回転すると(
図6Aの状態からは矢印D1の方向に180°回転)、第2押圧体74Bはガイド孔78の第1端部78Aに移動し、その後第1板部材77Aを通過する。このとき、第1押圧体74Aはガイド孔78の第2端部78Bに位置する。次に、
図6Dに示すように、回転体75が矢印D1の方向にさらに90°回転すると(
図6Aの状態からは矢印D1の方向に270°回転)、第2押圧体74Bは第2板部材77Bを通過してチューブ73を押圧する位置に移動する。そして、第1押圧体74Aが第1板部材77Aに接触し、第1押圧体74Aはガイド孔78に沿って第2端部78Bから第1端部78Aに向けて移動する。
図6Dでは、第2押圧体74Bは閉鎖位置CPに位置する。次に、
図6Eに示すように、回転体75が矢印D1の方向にさらに90°回転すると(
図6Aの状態からは矢印D1の方向に360°回転)、第2押圧体74Bはチューブ73を押圧しながら移動する。そして、第1押圧体74Aはガイド孔78の第1端部78Aに移動し、その後第1板部材77Aを通過する。上述の例では、第2押圧体74Bは、開放位置OPに位置する状態から回転体75が270°回転したときに閉鎖位置CPに位置するように構成されている。また、回転体75が360°回転したとき、第1押圧体74Aおよび第2押圧体74Bは270°回転している。
【0032】
次に
図7A~
図7Dを参照しながら、押圧体74が閉鎖位置CPから開放位置OPに移動するときの動きについて説明する。
図7Aに示すように、第1押圧体74Aおよび第2押圧体74Bがガイド孔78の第1端部78Aに位置するとき、第1押圧体74Aおよび第2押圧体74Bはチューブ73と接触し得る。
図7Aでは、第1押圧体74Aはチューブ73と接触し、かつ、第2押圧体74Bはチューブ73と接触していない。次に、
図7Bに示すように、回転体75が矢印D2の方向に90°回転すると、第2押圧体74Bが第1板部材77Aに接触し、第2押圧体74Bはガイド孔78に沿って第1端部78Aから第2端部78Bに向けて移動する。このとき、第1押圧体74Aはガイド孔78の第1端部78Aに位置する。このため、回転体75が矢印D2の方向に90°回転しているときには、第1押圧体74Aによってチューブ73が押圧されて、チューブ73内のインクがインクカートリッジ25に向けて(
図7Bの矢印Fの方向)供給される。次に、
図7Cに示すように、回転体75が矢印D2の方向にさらに90°回転すると(
図7Aの状態からは矢印D2の方向に180°回転)、第2押圧体74Bはガイド孔78の第2端部78Bに移動し、その後第1板部材77Aを通過する。このとき、第1押圧体74Aが第2板部材77Bに接触し、第1押圧体74Aはガイド孔78に沿って第1端部78Aから第2端部78Bに向けて移動し、第1押圧体74Aおよび第2押圧体74Bは、開放位置OPに位置する。次に、
図7Dに示すように、回転体75が矢印D2の方向にさらに90°回転すると(
図7Aの状態からは矢印D2の方向に270°回転)、第1押圧体74Aはガイド孔78の第2端部78Bに移動し、その後第2板部材77Bを通過する。上述の例では、第1押圧体74Aは、閉鎖位置CPに位置する状態から回転体75が凡そ135°回転するまでは、チューブ73を押圧してチューブ73内のインクをインクカートリッジ25に向けて供給する。供給ポンプ68において、第1押圧体74Aおよび第2押圧体74Bがそれぞれ閉鎖位置CPに位置する状態から回転体75が第1の時間(例えば0.5秒~1.5秒程度)だけ矢印D2の方向に回転したときには、第1押圧体74Aおよび第2押圧体74Bの少なくとも一方は開放位置OPに位置するように構成されている。上述した所定の時間は、第1の時間より短い場合、第1の時間と同じ場合および第1の時間より長い場合があり得る。
【0033】
なお、本実施形態のプリンタ10では、押圧体74の位置を検出するセンサは備えていないが、回転体75を
図5の矢印D1の方向に少なくとも360°回転(即ち少なくとも第2の時間だけ回転。第1の時間は第2の時間の半分より長い。第2の時間は、例えば2秒~3秒程度。第2の時間は上述した所定の時間より長い。例えば、第2の時間が2.8秒であり、第1の時間が1.5秒であり、所定の時間が1.4秒である。)させることによって、押圧体74を閉鎖位置CPに位置させることができる。そして、押圧体74が閉鎖位置CPに位置する状態から回転体75を
図4の矢印D2の方向に180°~360°回転させることによって、押圧体74を開放位置OPに位置させることができる。なお、押圧体74が閉鎖位置CPに位置するときの押圧体74の本体ケース71に対する位置に関わらず、回転体75を
図4の矢印D2の方向に360°回転(即ち第2の時間だけ回転)させることによって、押圧体74は必ず開放位置OPに位置するように構成されている。押圧体74が開放位置OPに位置するまでに必要な回転体75の回転角度は、押圧体74が閉鎖位置CPに位置するときの押圧体74の本体ケース71に対する位置によって異なる。例えば、
図8に示すように、第1押圧体74Aおよび第2押圧体74Bがチューブ73を押圧するときには、回転体75が矢印D2の方向に225°回転することによって、第1押圧体74Aおよび第2押圧体74Bは開放位置OPに移動する(
図7D参照)。上述の例では、第1押圧体74Aは、閉鎖位置CPに位置する状態から回転体75が凡そ225°回転するまでは、チューブ73を押圧してチューブ73内のインクをインクカートリッジ25に向けて供給し、第2押圧体74Bは、閉鎖位置CPに位置する状態から回転体75が凡そ45°回転するまでは、チューブ73を押圧してチューブ73内のインクをインクカートリッジ25に向けて供給する。このように、押圧体74が閉鎖位置CPに位置するときの押圧体74の本体ケース71に対する位置によって、インクカートリッジ25へ供給されるインクの量が異なる。また、押圧体74が閉鎖位置CPに位置するときの押圧体74の本体ケース71に対する位置によって、開放位置OPに移動するまでに必要な第2の方向への回転角度は異なる。
【0034】
図3に示すように、ダンパー80は、中途部65に配置されている。ダンパー80は、供給ポンプ68とインクヘッド21との間に配置されている。ダンパー80は、インクが一時的に貯留される貯留室81を有している。貯留室81には、インクカートリッジ25から供給されたインクが一時的に貯留される。ダンパー80は、インクヘッド21と連通している。ダンパー80は、例えばインクヘッド21の上部に設けられる。
【0035】
図3に示すように、検出装置90は、ダンパー80の側方に配置されている。検出装置90は、ダンパー80の貯留室81内の圧力(言い換えると、貯留室81に流入するインクの量。)を検出する。貯留室81内の圧力に基づいて供給ポンプ68が制御される。
【0036】
図9は、ダンパー80および検出装置90の構成を示す断面図である。ダンパー80は、インクの圧力変動を緩和して、インクヘッド21からのインクの吐出動作を安定させるものである。本実施形態では、
図9に示すように、ダンパー80は、ケース本体82と、感圧膜83とを備えている。
【0037】
図9に示すように、ケース本体82は一面(
図9の右側の面)に開口82Aが形成された中空構造である。ケース本体82は、典型的には樹脂材料から形成されている。感圧膜83は開口82Aを覆うようにケース本体82の外壁面に取り付けられている。貯留室81は、ケース本体82と感圧膜83とに囲まれた空間である。感圧膜83は、例えば可撓性を有する樹脂製のフィルムによって構成されている。
図9および
図10に示すように、感圧膜83は、貯留室81内のインクの貯留量や、貯留室81内の圧力に応じて、撓み変形可能なように構成されている。感圧膜83は、貯留室81の内側および外側に撓み変形可能である。感圧膜83は、貯留室81の内側および外側にそれぞれ撓むことができる程度の張力で、ケース本体82に取り付けられている。
【0038】
図9に示すように、貯留室81には、バネ85が設けられている。バネ85は、圧縮された状態で貯留室81に配置されており、感圧膜83に向かって弾性力を付与する。ここでは、バネ85は、感圧膜83の貯留室81側の面に接触している。なお、バネ85の種類は特に限定されない。本実施形態では、バネ85はコイルバネである。感圧膜83には、押圧体86が設けられている。押圧体86は、バネ85に支持されている。押圧体86は、感圧膜83の撓み変形に追従して貯留室81の内側および外側に移動可能である。
【0039】
図9に示すように、検出装置90は、レバー84を備えている。レバー84は、押圧体86と接触可能にケース本体82に設けられている。本実施形態では、ケース本体82には、支持バネ87が設けられおり、レバー84は、支持バネ87に支持されている。レバー84の形状は特に限定されない。ここでは、レバー84は、略U字状に形成されている。詳しくは、レバー84は、押圧体86の右方において、前後方向に延びた接触部84Aと、接触部84Aの後端から左方に延びた支持部84Bと、接触部84Aの前端から左方に延びた被検出部84Cとを有している。接触部84Aには、押圧体86が接触可能である。支持部84Bは、支持バネ87に支持されている。被検出部84Cは、後述する検出部95によって検出される部位である。
図9に示すように、レバー84は、感圧膜83が貯留室81の内側に撓むとき(即ち貯留室81内のインクが減少して圧力が低下するとき)に貯留室81に近づく方向に移動する。
図10に示すように、レバー84は、感圧膜83が貯留室81の外側に撓むとき(即ち貯留室81内のインクが増加して圧力が増大するとき)に貯留室81から離れる方向に移動する。
【0040】
図9に示すように、検出装置90は、検出部95を備えている。検出部95は、例えば、赤外線などの光を発する発光素子を有する発光部91と、発光部91から発せられた光を感知する受光素子を有する受光部92とを備えている。発光部91と受光部92は、互いに対向するように配置されている。発光部91と受光部92との間に検出領域93が設けられている。検出部95は、レバー84の位置変化に基づいて、貯留室81内の圧力が所定の圧力以下であるかを検出することができる。
図10に示すように、貯留室81の圧力が大きくなるにしたがって、感圧膜83が貯留室81の外側に撓む。このとき、押圧体86によって、レバー84が貯留室81の外側に押されることで、レバー84は、支持バネ87を軸に回転する。そして、貯留室81の圧力が所定の圧力より大きくなったとき、レバー84の被検出部84Cが検出装置90の検出領域93から外れた位置に移動する。検出部95は、発光部91と受光部92との間(即ち検出領域93)に、レバー84の被検出部84Cが位置していないとき、貯留室81の圧力が所定の圧力よりも大きいことを検出する。
【0041】
図1に示すように、本体ケース50のうち右前カバー54Rの後方には、操作パネル18が設けられている。操作パネル18は、プリンタの状態を表示する表示部(図示せず)と、ユーザによって操作される入力キー(図示せず)が設けられている。操作パネル18は、プリンタ10の各種の動作を制御する制御装置30(
図2参照)に接続されている。
【0042】
図11に示すように、プリンタ10の全体の動作は、制御装置30によって制御されている。制御装置30の構成は特に限定されない。制御装置30は、例えばマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータのハードウェアの構成は特に限定されないが、例えば、ホストコンピュータなどの外部機器から印刷データなどを受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、プログラムや各種データを格納するメモリなどの記憶装置と、を備えている。
図2に示すように、制御装置30は、本体ケース50の内部に設けられている。ただし、制御装置30は本体ケース50の内部に設けられていなくてもよい。例えば、制御装置30は、プリンタ10の外部に設置されたコンピュータなどであってもよい。この場合、制御装置30は、有線または無線を介してプリンタ10と通信可能に接続されている。
【0043】
図11に示すように、制御装置30は、インクヘッド21、キャリッジモータ8a、フィードモータ17a、バルブ64、供給ポンプ68のモータ76、検出装置90および操作パネル18と通信可能に接続している。制御装置30は、インクヘッド21、キャリッジモータ8a、フィードモータ17a、バルブ64、モータ76を制御する。
【0044】
図11に示すように、制御装置30は、記憶部31と、押圧体制御部32と、バルブ制御部33と、印刷制御部34と、第1判定部35と、第2判定部36と、第3判定部37とを備えている。制御装置30の各部の機能は、プログラムによって実現されている。このプログラムは、例えばCDやDVDなどの記録媒体から読み込まれる。なお、このプログラムは、インターネットを通じてダウンロードされるものであってもよい。また、制御装置30の各部の機能は、プロセッサおよび/または回路などによって実現可能なものであってもよい。なお、これら各部の具体的な機能については後述する。
【0045】
記憶部31は、記録媒体12に印刷される所定の画像の画像データを記憶する。画像データは、例えば、ラスター形式のデータである。画像データは、例えば、プリンタ10とは別体に設けられたコンピュータにインストールされたソフトウェアを用いて作成される。
【0046】
印刷制御部34は、記憶部31に記憶された画像データに基づいて、記録媒体12への所定の画像の印刷を開始する。印刷制御部34は、画像データに基づいて、インクヘッド21から記録媒体12に向けてインクを吐出させて印刷を行う。印刷制御部34は、キャリッジモータ8aを駆動させてキャリッジ22を主走査方向Yに移動させる。印刷制御部34は、フィードモータ17aを駆動させて記録媒体12を副走査方向Xに移動させる。
【0047】
押圧体制御部32は、供給ポンプ68の回転体75の第1の方向(
図4の矢印D1の方向)の回転および第2の方向(
図4の矢印D2の方向)の回転を制御して押圧体74を回転させる。即ち、押圧体制御部32は、モータ76(
図11参照)を駆動して回転体75を第1の方向に回転させることによって、押圧体74を第1の方向に回転させる。また、押圧体制御部32は、モータ76を駆動して回転体75を第2の方向に回転させることによって、押圧体74を第2の方向に回転させる。押圧体制御部32は、第1判定部35によって貯留室81内の圧力が所定の圧力以下と判定されたときに、押圧体74を閉鎖位置CP(
図4参照)から第1の方向に22.5°ずつ第2の角度(典型的には45°~90°。例えば67.5°)だけ回転させる。即ち、押圧体制御部32は、押圧体74を閉鎖位置CP(
図4参照)から第3の時間(例えば0.35秒~0.7秒程度。例えば0.5秒程度)だけ回転させる。これにより、インクカートリッジ25からダンパー80の貯留室81に所定の量のインクが供給され、貯留室81内の圧力が所定の圧力より大きくなる。押圧体制御部32は、供給ポンプ68を開放するとき、即ち、押圧体74によるチューブ73への押圧を解除するとき、回転体75を第2の方向に第2の時間だけ回転させる。即ち、例えば、回転体75を360°回転させる。これにより、回転体75を回転させるときの押圧体74の位置に関わらず、押圧体74は確実にチューブ73から離反する。
【0048】
バルブ制御部33は、バルブ64を開放および閉鎖する。バルブ制御部33は、回転体75を第2の方向(
図4の矢印D2の方向)に回転させることによって押圧体74を閉鎖位置CP(
図4参照)から開放位置OP(
図5参照)に移動させる場合において、押圧体74が閉鎖位置CPに位置するときにバルブ64を開放した後、回転体75が第1の時間だけ第2の方向に回転した後(即ち第1の角度だけ回転した後)に、バルブ64を閉鎖する。すなわち、バルブ制御部33は、第1押圧体74Aおよび第2押圧体74Bの少なくとも一方が開放位置OPに位置した後に、バルブ64を閉鎖するように構成されている。
【0049】
第1判定部35は、インクヘッド21からインクが吐出されているとき(例えば印刷時やクリーニング時)に、検出装置90によって検出された貯留室81内の圧力が所定の圧力以下であるかを判定する。本実施形態では、第1判定部35は、検出装置90のレバー84が検出領域93を遮ったとき(
図9参照)、貯留室81内の圧力が所定の圧力以下であることを判定する。貯留室81内の圧力が所定の圧力以下のときには、貯留室81内のインクの量が無くなりかかっているため、貯留室81内の圧力が所定の圧力以下であるかを判定することによって、貯留室81にインクの供給が必要であるかを判定することができる。
【0050】
第2判定部36は、押圧体74を閉鎖位置CP(
図4参照)から第1の方向(
図4の矢印D1の方向)に22.5°ずつ第2の角度(例えば67.5°)だけ回転させた後(即ち第1の方向に第3の時間だけ回転させた後)、検出装置90によって検出された貯留室81内の圧力が所定の圧力以下であるかを判定する。第2判定部36は、検出装置90のレバー84が検出領域93を遮ったとき、貯留室81内の圧力が所定の圧力以下であることを判定する。
【0051】
第3判定部37は、第2判定部36によって貯留室81内の圧力が所定の圧力以下と判定された場合、インクカートリッジ25内のインクが無くなったと判定する。ここで、インクカートリッジ25からインクが供給されるとき、インク供給中のインクカートリッジ25内にインクが存在する場合には、供給ポンプ68を駆動させることでインクヘッド21に向けてインクが供給されるため貯留室81内の圧力が所定の圧力より大きくなる。しかしながら、インク供給中のインクカートリッジ25内のインクが無くなると、供給ポンプ68を駆動させてもインクヘッド21に向けてインクが供給されず貯留室81内の圧力が所定の圧力以下のままである。このように、第3判定部37は、貯留室81内の圧力に基づいて、供給中のインクカートリッジ25内のインクが無くなったか否かを判定する。
【0052】
以上のように、本実施形態のプリンタ10によると、バルブ制御部33は、押圧体74が閉鎖位置CPに位置するときにバルブ64を開放する。これにより、その後に回転体75が第2の方向(
図4の矢印D2の方向)に回転しても、チューブ73内のインクをインクカートリッジ25へと戻すことができる。即ち、供給ポンプ68とバルブ64との間のインク経路60に高い圧力は加わらない。そして、バルブ制御部33は、バルブ64を開放した後、回転体75が第1の時間だけ第2の方向に回転した後に、バルブ64を閉鎖する。バルブ64を閉鎖することによって、供給ポンプ68からインクカートリッジ25へとインクは流れなくなるが、回転体75が第1の時間だけ回転させるまではバルブ64が開放されているため、その分のインクはインクカートリッジ25に向けて流れている。このように、初めからバルブ64を閉鎖しているときと比べて供給ポンプ68からバルブ64へと流れるインクが減少しているため、バルブ64を閉鎖した後に供給ポンプ68とバルブ64との間のインク経路60に加わる圧力は比較的小さい。このため、インク経路60に不具合が発生することが抑制される。さらに、バルブ64を閉鎖することによって、供給ポンプ68が開放されてもインクカートリッジ25からインクヘッド21にはインクが流れないため、インクヘッド21からインクが漏れ出すことが抑制される。
【0053】
本実施形態のプリンタ10によると、押圧体74は、閉鎖位置CPに位置する状態から回転体75が第1の時間より長い第2の時間だけ第2の方向(
図4の矢印D2の方向)に回転したときには開放位置OPに位置するように構成されている。ここで、第1の時間は、第2の時間の半分より長い。これにより、バルブ64を閉鎖した後に供給ポンプ68からバルブ64へと流れるインクがより減少するため、バルブ64を閉鎖した後に供給ポンプ68とバルブ64との間のインク経路60に加わる圧力をより低減することができる。
【0054】
本実施形態のプリンタ10によると、上流側端部62にインクカートリッジ25が取り付けられているとき、インクカートリッジ25は、インクヘッド21より上方に位置する。インクカートリッジ25がインクヘッド21より上方に位置するため、押圧体74が開放位置OPに位置しかつバルブ64が開放されていると、インクの自重によってインクカートリッジ25からインクヘッド21に向けてインクが流れ得る。しかし、バルブ64を閉鎖するタイミングを上述のように適切にすることによって、インクの自重によってインクヘッド21に流れるインクの量を低減することができる。
【0055】
本実施形態のプリンタ10によると、回転体75が第1の時間だけ第2の方向(
図4の矢印D2の方向)に回転したときには、第1押圧体74Aおよび第2押圧体74Bの少なくとも一方が開放位置OPに位置する。これにより、バルブ64を閉鎖した後に供給ポンプ68からバルブ64へと流れるインクが減少するため、バルブ64を閉鎖した後に供給ポンプ68とバルブ64との間のインク経路60に加わる圧力を低減することができる。
【0056】
本実施形態のプリンタ10は、インクが一時的に貯留される貯留室を有し、インク供給装置とインクヘッドとの間に位置するように中途部に配置されたダンパーを備えている。押圧体が第2の方向に回転することによって、ダンパー内のインクはインク経路を介してインクカートリッジに戻される。これにより、貯留室が減圧される。この結果、インクヘッドからインクが漏れることがより確実に抑制される。
【0057】
以上、本発明の好適な実施形態について説明した。しかし、上述の実施形態は例示に過ぎず、本発明は他の種々の形態で実施することができる。
【0058】
上述した実施形態では、検出装置90は、レバー84、発光部91および受光部92を備えていたが、これに限定されない。検出装置90は、貯留室81内の圧力を検出できるセンサであればその構造は特に限定されない。
【0059】
上述した実施形態では、押圧体74を閉鎖位置CPから開放位置OPに移動させるときに回転体75の回転角度と押圧体74の回転角度とは同じではなかったが(例えば
図7A~
図7Dに示す例では回転体75が270°回転したときに押圧体74は180°しか回転していない)、同じとなるように構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0060】
10 プリンタ
21 インクヘッド
25 インクカートリッジ
30 制御装置
32 押圧体制御部
33 バルブ制御部
60 インク経路
64 バルブ
68 供給ポンプ
73 チューブ
74 押圧体
75 回転体