(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】伝動ベルトのマーク印刷方法
(51)【国際特許分類】
B41F 17/10 20060101AFI20221207BHJP
F16G 1/00 20060101ALI20221207BHJP
B41M 1/40 20060101ALI20221207BHJP
F16G 1/08 20060101ALN20221207BHJP
【FI】
B41F17/10 H
F16G1/00 Z
B41M1/40 Z
B41F17/10 C
F16G1/08 A
(21)【出願番号】P 2019032647
(22)【出願日】2019-02-26
【審査請求日】2021-07-28
(31)【優先権主張番号】P 2018034723
(32)【優先日】2018-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018185475
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006068
【氏名又は名称】三ツ星ベルト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128912
【氏名又は名称】松岡 徹
(74)【代理人】
【識別番号】110000682
【氏名又は名称】弁理士法人ワンディ-IPパ-トナ-ズ
(72)【発明者】
【氏名】菅 隆明
(72)【発明者】
【氏名】阿部 真吾
(72)【発明者】
【氏名】金山 佳浩
【審査官】高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-238992(JP,A)
【文献】特開2000-088061(JP,A)
【文献】特開2016-210057(JP,A)
【文献】特開平02-301479(JP,A)
【文献】特開2005-125682(JP,A)
【文献】特開昭56-169392(JP,A)
【文献】特開平09-314822(JP,A)
【文献】特開2019-151104(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 17/10
F16G 1/00
B41M 1/40
F16G 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の伝動ベルトに対して印刷されるマークを形成する版に対してインクを充填して供給するインク供給工程と、
インクが充填された前記版に対して転写媒体としてのパッドを押し付け、前記パッドに前記マークを転写する第1転写工程と、
ゴム成分が加硫された状態の前記伝動ベルトの表面に対して、前記マークが転写された前記パッドを押し付け、前記マークを前記伝動ベルトの表面に転写する第2転写工程と、
複数の前記伝動ベルトを並べて配置する伝動ベルト配置工程と、
を備え
、
前記伝動ベルト配置工程において、平坦な表面を有する台部に複数の前記伝動ベルトが掛けられた状態で、軸状又は棒状或いは管状の部材として設けられて互いに平行に延びる一対の押圧部を前記台部の表面に近接させて前記台部との間で前記伝動ベルトを押圧する方向、及び、前記伝動ベルトを挟んだ状態で前記台部の表面に沿って一対の前記押圧部を離間させて当該伝動ベルトを張る方向に、一対の前記押圧部を駆動し、複数の前記伝動ベルトが前記台部の表面で張られた状態で、複数の前記伝動ベルトを前記台部の表面に並べて配置し、
前記インク供給工程において、複数の前記伝動ベルトに対して印刷される複数の前記マークが形成される前記版に対して、インクが供給され、
前記第1転写工程において、前記パッドに複数の前記マークが転写され、
前記第2転写工程において、前記伝動ベルト配置工程にて並べて配置された複数の前記伝動ベルトの表面に対して、複数の前記マークを転写することを特徴とする、伝動ベルトのマーク印刷方法。
【請求項2】
請求項1に記載の伝動ベルトのマーク印刷方法であって、
前記インク供給工程において、前記マークがそれぞれ形成される複数の領域を有する前記版に対して、インクが供給され、
前記第1転写工程において、前記版に対して、前記複数の領域のうちの1つの領域において、前記パッドが押し付けられ、前記マークが前記パッドに転写されることを特徴とする、伝動ベルトのマーク印刷方法。
【請求項3】
請求項1
又は請求項
2に記載の伝動ベルトのマーク印刷方法であって、
前記インク供給工程、前記第1転写工程、及び、前記第2転写工程が、マーク印刷システムによって実行され、
前記マーク印刷システムは、
前記伝動ベルトに対して印刷される前記マークを形成する前記版を有し、当該版にインクを充填して供給するインク供給装置と、
前記版において形成された前記マークを前記伝動ベルトに転写する前記パッドを有する転写部、及び当該転写部を前記版と前記伝動ベルトとの間で駆動する転写部駆動機構、を有する転写装置と、を含み、
前記インク供給装置において前記版にインクが供給されることで、前記インク供給工程が実行され、
前記転写装置において、前記転写部駆動機構が前記パッドを前記版に押し付けるように前記転写部を駆動することで、前記第1転写工程が実行され、
前記転写装置において、前記転写部駆動機構が、前記版に押し付けられた前記パッドを移動させるとともに前記伝動ベルトに押し付けるように前記転写部を駆動することで、前記第2転写工程が実行されることを特徴とする、伝動ベルトのマーク印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝動ベルトに対してマークを印刷する方法である、伝動ベルトのマーク印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、動力を伝達するために用いられる環状の伝動ベルトには、製造会社名、製品ブランド名、製造ロット番号、製造年月日、生産国、及びロゴ等の製品に関する情報が表示される。これらを含む文字及び図柄等によって構成されるマークを伝動ベルトに表示する方法としては、例えば、フィルムで構成された基材にマークを印刷し、この基材を介してマークを伝動ベルトに転写することで、伝動ベルトにマークを表示する方法が用いられている。
【0003】
尚、伝動ベルトにマークを表示するその他の方法として、伝動ベルトにインクを吹き付ける方法、インクが充填されたスタンプを伝動ベルトに押圧する方法、或いは、伝動ベルトの表面に凹凸を形成する刻印を設ける方法もある。しかし、伝動ベルトにインクを吹き付ける方法、スタンプを伝動ベルトに押圧する方法、及び、伝動ベルトの表面に凹凸を形成する刻印を設ける方法は、作業者の負担が非常に大きく、作業時間も非常に多く必要となる。このため、多くの伝動ベルトに効率よくマークを表示するため、従来より、マークが印刷された基材を介してマークを伝動ベルトに転写する方法が用いられている。
【0004】
例えば、特許文献1においては、基材として合成樹脂性の透明なフィルムを用い、この基材を介して転写することでマークを印刷する方法について開示されている。この方法においては、あらかじめ、フィルムで構成された基材にマークが印刷される。そして、伝動ベルトの製造工程において、未加硫状態のゴム材料で構成されたゴムベルトに対して、マークが印刷された基材が重ねられ、この状態でゴムベルトが加硫されることで、加硫時の熱溶着によってマークがゴムベルトに転写される。これにより、ゴムベルトが加硫されることで形成された伝動ベルトに対してマークが印刷されて表示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
フィルムで構成されてマークが印刷された基材を未加硫状態のゴムベルトに重ねる作業は、幅の狭いゴムベルトに対して人の手によって行われ、それぞれのゴムベルトに対して、所定の印刷領域に対応させて多数の基材を配置することで行われる。また、転写に使用された基材であるフィルムは、加硫後に人の手によって剥がされる。また、マークの印刷に使用される基材であるフィルムは、使用後には廃棄される。
【0007】
上述のように、マークが印刷された基材を介してマークを伝動ベルトに転写する方法においては、基材としてのフィルムが、人の手によって、幅の狭いゴムベルトに多数配置されるため、作業に時間を多く要するだけでなく、配置方向、配置場所を間違え易いという問題もある。また、ゴムベルトに配置される基材であるフィルムにしわ、折れ、歪み等があった場合に、マークが適切に転写されず、伝動ベルトにおけるマーク表示の不具合が発生してしまうという問題がある。また、基材であるフィルムを使用することが前提となるため、使用後において多量の廃棄物が生じるという問題がある。更に、基材であるフィルムを剥がす作業は手間がかかり、作業時間を多く要するという問題がある。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みることにより、多量の廃棄物を生じさせることなく、作業ミスをなくすとともに作業時間を短縮することができ、更に、マーク表示の不具合が発生することも抑制できる、伝動ベルトのマーク印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記課題を解決するための本発明のある局面に係る伝動ベルトのマーク印刷方法は、環状の伝動ベルトに対して印刷されるマークを形成する版に対してインクを充填して供給するインク供給工程と、インクが充填された前記版に対して転写媒体としてのパッドを押し付け、前記パッドに前記マークを転写する第1転写工程と、ゴム成分が加硫された状態の前記伝動ベルトの表面に対して、前記マークが転写された前記パッドを押し付け、前記マークを前記伝動ベルトの表面に転写する第2転写工程と、を備えていることを特徴とする。
【0010】
この構成によると、インク供給工程において、マークを形成する版にインクが供給される。そして、第1転写工程において、版にパッドが押し付けられることで、マークがパッドに転写され、更に、第2転写工程において、マークが転写されたパッドが、加硫された状態の伝動ベルトに直接に押し付けられ、マークが伝動ベルトに転写される。これにより、伝動ベルトの表面にマークが印刷されて表示される。よって、上記の構成によると、伝動ベルトへのマークの印刷の際、パッドを介して版から加硫後の状態の伝動ベルトへ直接にマークが転写されるため、フィルムで構成されてマークが印刷された基材を用いた転写が行われることがない。このため、伝動ベルトへのマークの印刷後に、フィルムで構成された使用後の基材が大量の廃棄物として生じることがない。
【0011】
また、上記の構成によると、伝動ベルトへのマークの印刷において、フィルムで構成された基材にマークを印刷してその基材を未加硫状態のゴムベルトに重ね、更に、基材を重ねたゴムベルトを加硫することで加硫時の熱溶着によって加硫後の状態の伝動ベルトにマークを転写するという従来のプロセスが、全て不要となる。このため、上記の構成によると、幅の狭いゴムベルトにマークが印刷された基材を多数配置するという作業時間を多く要する従来の作業が不要となり、作業時間を短縮することができる。また、上記の構成によると、ゴムベルトに基材を配置することがないため、ゴムベルトに基材を配置する際に配置方向或いは配置場所を間違えるという作業ミスが生じることもない。そして、そもそも基材が用いられることがないため、基材であるフィルムにしわ、折れ、歪み等があった場合の伝動ベルトにおけるマーク表示の不具合が発生してしまうこともない。更に、上記の構成によると、基材であるフィルムが用いられないため、加硫後の伝動ベルトからフィルムを剥がすという作業時間を多く要する従来の作業が不要となり、作業時間を短縮することができる。そして、上記の構成によると、パッドを介して版から加硫後の状態の伝動ベルトへ直接にマークが転写されるため、確実且つ容易に、更に短時間で、正確に、伝動ベルトの表面にマークを印刷することができる。
【0012】
従って、上記の構成によると、多量の廃棄物を生じさせることなく、作業ミスをなくすとともに作業時間を短縮することができ、更に、マーク表示の不具合が発生することも抑制できる、伝動ベルトのマーク印刷方法を提供することができる。
【0013】
(2)前記インク供給工程において、前記マークがそれぞれ形成される複数の領域を有する前記版に対して、インクが供給され、前記第1転写工程において、前記版に対して、前記複数の領域のうちの1つの領域において、前記パッドが押し付けられ、前記マークが前記パッドに転写されてもよい。
【0014】
この構成によると、パッドが押し付けられる版において、マークがそれぞれ形成される複数の領域が設けられ、複数の領域のうちから選択される1つの領域にパッドが押し付けられてマークがパッドに転写され、伝動ベルトへのマークの印刷が行われる。このため、多数の伝動ベルトにマークを印刷する際に、伝動ベルトに印刷するマークの変更がある場合であっても、版におけるパッドを押し付ける領域を変更することで、版を交換することなく、容易に、マークの変更に対応することが可能となる。従って、多数の伝動ベルトにマークを印刷する際にマークの変更が多く必要となる場合であっても、必要な版の数を削減することができるとともに、版の交換頻度も大幅に削減することができる。
【0015】
尚、伝動ベルトに表示されるマークにおいては、製造会社名、製品ブランド名などの変更の少ない項目に加え、製造ロット番号、製造年月日、ベルトサイズなどの頻繁に変更される項目も含まれる。このため、多数の伝動ベルトにマークを印刷する際には、マークの変更も頻繁に生じることになる。しかし、上記の構成によると、製造ロット番号、製造年月日、ベルトサイズなどが頻繁に変わり、伝動ベルトに表示するマークの変更が頻繁にある場合であっても、必要な版の数を削減することができるとともに、版の交換頻度も大幅に削減することができる。
【0016】
(3)上記の伝動ベルトのマーク印刷方法は、複数の前記伝動ベルトを並べて配置する伝動ベルト配置工程を更に備え、前記インク供給工程において、複数の前記伝動ベルトに対して印刷される複数の前記マークが形成される前記版に対して、インクが供給され、前記第1転写工程において、前記パッドに複数の前記マークが転写され、前記第2転写工程において、前記伝動ベルト配置工程にて並べて配置された複数の前記伝動ベルトの表面に対して、複数の前記マークを転写してもよい。
【0017】
この構成によると、複数の伝動ベルトに対応した複数のマークが版に形成され、パッドに複数のマークが転写され、並べて配置された複数の伝動ベルトに対して複数のマークが同時タイミングで転写される。このため、複数の伝動ベルトのそれぞれにマークを印刷する処理を一括して同時タイミングで実行することができ、伝動ベルト1つ当たりに平均して要する作業時間を更に大幅に短縮でき、マーク印刷作業の作業性の更なる向上を図ることができる。
【0018】
(4)前記インク供給工程、前記第1転写工程、及び、前記第2転写工程が、マーク印刷システムによって実行され、前記マーク印刷システムは、前記伝動ベルトに対して印刷される前記マークを形成する前記版を有し、当該版にインクを充填して供給するインク供給装置と、前記版において形成された前記マークを前記伝動ベルトに転写する前記パッドを有する転写部、及び当該転写部を前記版と前記伝動ベルトとの間で駆動する転写部駆動機構、を有する転写装置と、を含み、前記インク供給装置において前記版にインクが供給されることで、前記インク供給工程が実行され、前記転写装置において、前記転写部駆動機構が前記パッドを前記版に押し付けるように前記転写部を駆動することで、前記第1転写工程が実行され、前記転写装置において、前記転写部駆動機構が、前記版に押し付けられた前記パッドを移動させるとともに前記伝動ベルトに押し付けるように前記転写部を駆動することで、前記第2転写工程が実行されてもよい。
【0019】
この構成によると、インク供給装置と転写装置とを含むマーク印刷システムによって、インク供給工程、第1転写工程、及び、第2転写工程が実行される。即ち、インク供給装置によってインク供給工程が実行され、転写装置によって第1転写工程及び第2転写工程が実行される。そして、転写装置によって、パッドを版に押し付けてパッドにマークを転写し、そのパッドを移動させて加硫後の状態の伝動ベルトに押し付けることでマークを伝動ベルトに転写する処理が実行される。よって、上記の構成によると、マーク印刷システムの作動によって、パッドを介して版から加硫後の状態の伝動ベルトへ直接にマークが転写され、伝動ベルトにマークが印刷される。このため、伝動ベルトへのマークの印刷処理の自動化を図ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、多量の廃棄物を生じさせることなく、作業ミスをなくすとともに作業時間を短縮することができ、更に、マーク表示の不具合が発生することも抑制できる、伝動ベルトのマーク印刷方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る伝動ベルトのマーク印刷方法の工程を説明するためのフローチャートである。
【
図2】伝動ベルトのマーク印刷方法の実施の際に用いられるマーク印刷システムの平面図である。
【
図3】
図2に示すマーク印刷システムにおける伝動ベルト保持装置の平面図である。
【
図4】
図2に示すマーク印刷システムにおけるインク供給装置の斜視図である。
【
図5】
図2に示すマーク印刷システムにおける転写装置の平面図である。
【
図6】伝動ベルトのマーク印刷方法で用いられる版について説明するための図である。
【
図7】伝動ベルトのマーク印刷方法で用いられる版について説明するための図である。
【
図8】伝動ベルトのマーク印刷方法で用いられる版について説明するための図である。
【
図9】伝動ベルトのマーク印刷方法で用いられる版について説明するための図である。
【
図10】伝動ベルトに複数の種類のマークが順番に印刷される形態について説明するための図である。
【
図11】本発明の第2実施形態に係る伝動ベルトのマーク印刷方法の実施の際に用いられるマーク印刷システムの平面図である。
【
図12】伝動ベルトのマーク印刷方法で用いられる版について説明するための図である。
【
図13】伝動ベルトのマーク印刷方法で用いられる版について説明するための図である。
【
図14】伝動ベルトのマーク印刷方法で用いられる版について説明するための図である。
【
図15】伝動ベルトのマーク印刷方法で用いられる版について説明するための図である。
【
図16】伝動ベルトに複数の種類のマークが順番に印刷される形態について説明するための図である。
【
図17】本発明の第3実施形態に係る伝動ベルトのマーク印刷方法の実施の際に用いられるマーク印刷システムの平面図である。
【
図18】伝動ベルトのマーク印刷方法で用いられる版について説明するための図である。
【
図19】伝動ベルトのマーク印刷方法で用いられる版について説明するための図である。
【
図20】伝動ベルトのマーク印刷方法で用いられる版について説明するための図である。
【
図21】伝動ベルトのマーク印刷方法で用いられる版について説明するための図である。
【
図22】伝動ベルトに複数の種類のマークが順番に印刷される形態について説明するための図である。
【
図23】変形例に係る伝動ベルトのマーク印刷方法の実施の際に用いられるマーク印刷システムの平面図である。
【
図24】変形例に係る伝動ベルトのマーク印刷方法の実施の際に用いられるマーク印刷システムの平面図である。
【
図25】
図25(a)及び
図25(b)は、それぞれ、実施例において伝動ベルトにマークを印刷する印刷工程について説明する表である。
【
図26】
図26(a)及び
図26(b)は、それぞれ、実施例において伝動ベルトにマークを印刷する印刷工程について説明する表である。
【
図27】
図27(a)及び
図27(b)は、それぞれ、実施例において伝動ベルトにマークを印刷する印刷工程について説明する表である。
【
図28】実施例で印刷を行った伝動ベルトにおけるマークの印刷状態について評価を行った項目と評価結果について一覧にして示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。尚、本発明は、伝動ベルトに対してマークを印刷する方法である、伝動ベルトのマーク印刷方法として、種々の用途に広く適用することができるものである。
【0023】
(第1実施形態)
[マーク印刷方法の概略]
以下、本発明の第1実施形態に係る伝動ベルトのマーク印刷方法について説明する。
図1は、第1実施形態に係る伝動ベルトのマーク印刷方法の工程を説明するためのフローチャートである。尚、本発明の第1実施形態に係る伝動ベルトのマーク印刷方法(以下、単に、本実施形態のマーク印刷方法と称する)は、伝動ベルトに対してマークを印刷する方法として構成される。
【0024】
本実施形態のマーク印刷方法においてマークが印刷される対象となる伝動ベルトは、動力を伝達するための伝動ベルトであって、可撓性を有して無端状に設けられた環状の伝動ベルトとして構成される。マーク印刷対象の伝動ベルトとしては、動力伝達用の環状の伝動ベルトであればよく、例えば、Vベルト、Vリブドベルト、及び、平ベルト等の摩擦伝動ベルトなどを例示することができる。また、マーク印刷対象の伝動ベルトは、ゴム成分が加硫された状態の伝動ベルトとして構成されており、例えば、加硫されたゴムと心線又は芯体とを含んで構成されている。
【0025】
また、伝動ベルトに対して印刷されるマークとしては、製品としての伝動ベルトに関する情報を表示する文字及び図柄などが印刷される。また、製品としての伝動ベルトに関する情報の項目としては、例えば、製造会社名、製品ブランド名、ロゴ、生産国、製造ロット番号、製造年月日、ベルトサイズなどが例示される。
【0026】
図1に示す本実施形態のマーク印刷方法は、伝動ベルト配置工程S101と、インク供給工程S102と、転写工程S103とを備えて構成されている。
【0027】
伝動ベルト配置工程S101は、複数の伝動ベルトを並べて配置する工程として構成されている。インク供給工程S102は、環状の伝動ベルトに対して印刷されるマークを形成する版に対してインクを充填して供給する工程として構成されている。転写工程S103は、第1転写工程S104、第2転写工程S105、及びインク除去工程S106を含んで構成されている。第1転写工程S104は、インクが充填された版に対して転写媒体としてのパッドを押し付け、パッドにマークを転写する工程として構成されている。第2転写工程S105は、ゴム成分が加硫された状態の伝動ベルトの表面に対して、マークが転写されたパッドを押し付け、マークを伝動ベルトの表面に転写する工程として構成されている。インク除去工程S106は、伝動ベルトに転写されるマークを切り替える際に、パッドに含浸されているインクを吸収して除去する工程として構成されている。
【0028】
また、本実施形態のマーク印刷方法は、
図2に示すマーク印刷システム100によって実行される。
図2は、本実施形態のマーク印刷方法の実施の際に用いられるマーク印刷システム100の平面図である。
図2に示すマーク印刷システム100によって、本実施形態のマーク印刷方法における伝動ベルト配置工程S101、インク供給工程S102、第1転写工程S104及び第2転写工程S105を含む転写工程S103が、実行される。
【0029】
尚、本実施形態では、マーク印刷システム100によって本実施形態のマーク印刷方法が実行される形態を例にとって説明するが、この通りでなくてもよく、マーク印刷システム100が用いられず、作業者の作業に基づいて、本実施形態のマーク印刷方法が実行されてもよい。この場合、作業者による作業に基づいて、伝動ベルト配置工程S101、インク供給工程S102、第1転写工程S104及び第2転写工程S105を含む転写工程S103が実行される。
【0030】
また、以下の説明においては、まず、本実施形態のマーク印刷方法を実行するマーク印刷システム100を説明し、次いで、マーク印刷システム100が作動することで実行されるマーク印刷方法の詳細について説明する。
【0031】
[マーク印刷システムの概略]
図2に示すマーク印刷システム100は、所定のマークを印刷対象である伝動ベルトBに対して転写媒体としてのパッド42を用いて印刷するシステムとして構成されている。そして、マーク印刷システム100は、伝動ベルト保持装置1と、伝動ベルト供給装置2と、インク供給装置3と、転写装置4と、インク除去装置5と、制御装置6と、を備えている。
【0032】
[伝動ベルト保持装置]
図3は、マーク印刷システム100における伝動ベルト保持装置1の平面図である。
図2及び
図3に示す伝動ベルト保持装置1は、環状の伝動ベルトBが掛けられる台部10と、押圧機構11と、を備え、伝動ベルトBを保持する装置として構成されている。
【0033】
台部10は、平坦な表面を有するテーブル状の部分を含んで構成されており、伝動ベルト保持装置1において、片持ち状に延びた状態で設置されている。台部10に対しては、後述する伝動ベルト供給装置2から供給される複数の環状の伝動ベルトBが供給されて掛けられる。
【0034】
また、台部10は、伝動ベルトBが、周方向に延びる方向であるその長手方向が台部10の幅方向D1に沿って伸びた状態で掛けられるように構成されている。そして、伝動ベルトBは、環状に形成された伝動ベルトBの内側を台部10が挿通した状態で、且つ、伝動ベルトBの長手方向が台部10の幅方向D1に沿って伸びた状態で、台部10に掛けられる。尚、
図3において両端矢印D1で示す台部10の幅方向D1は、台部10の表面と平行な方向であって台部10が片持ち状に延びる方向と垂直な方向として構成されている。
【0035】
また、伝動ベルト保持装置1においては、複数の伝動ベルトBが台部10に掛けられた状態で保持される。そして、伝動ベルト保持装置1は、掛けられた複数の伝動ベルトBが、台部10の表面において台部10が片持ち状に延びる方向に連続して並んだ状態で配置されるように、構成されている。
【0036】
押圧機構11は、掛けられた状態の伝動ベルトBを台部10の表面に対して押圧して保持する機構として構成されている。そして、押圧機構11は、伝動ベルトBを押圧する一対の押圧部(12、12)と、一対の押圧部(12、12)を駆動する押圧部駆動機構13と、を備えて構成されている。
【0037】
一対の押圧部(12、12)のそれぞれは、軸状又は棒状或いは管状の部材として設けられている。そして、一対の押圧部(12、12)は、それぞれ片持ち状に延びるとともに互いに平行に延びるように設けられており、それぞれ片持ち状に延びた状態で押圧部駆動機構13に支持されている。また、一対の押圧部(12、12)のそれぞれは、台部10との関係においては、台部10の上方に配置されており、台部10が片持ち状に延びる方向に沿って、台部10の表面に対して略平行に延びている。尚、一対の押圧部(12、12)の一方は、台部10の上方において、台部10の幅方向D1と平行な方向における一方側に配置されている。そして、一対の押圧部(12、12)の他方は、台部10の上方において、台部10の幅方向D1と平行な方向における他方側に配置されている。
【0038】
また、本実施形態では、押圧部12は、丸棒状或いは円管状の部材として設けられ、片持ち状に延びる方向に対して垂直な面における断面の形状が円形の形状に形成されている。そして、円形断面で片持ち状に延びた状態で押圧部駆動機構13に支持されている押圧部12は、その軸心を中心として回転自在な状態で押圧部駆動機構13に支持されている。尚、押圧部12は、軸心を中心として回転しない状態で押圧部駆動機構13に支持されていてもよい。
【0039】
また、一対の押圧部(12、12)は、複数の伝動ベルトBが台部10に配置されている場合、これらの複数の伝動ベルトBを台部10の表面に対して同時に押圧することができるように構成されている。尚、押圧部12は、伝動ベルトBを台部10との間で挟んだ状態で伝動ベルトBを長手方向に張ることができるように構成されていればよく、押圧部12の断面形状は、円形以外の形状の断面形状であってもよい。例えば、押圧部12の断面形状が、多角形の形状の断面形状であってもよい。
【0040】
押圧部駆動機構13は、一対の押圧部(12、12)を台部10の表面に近接させて台部10との間で伝動ベルトBを押圧する方向と、伝動ベルトBを挟んだ状態で台部10の表面に沿って一対の押圧部(12、12)を離間させて伝動ベルトBを張る方向とに、一対の押圧部(12、12)を駆動する機構として構成されている。
【0041】
尚、押圧部駆動機構13が、一対の押圧部(12、12)を台部10の表面に近接させて台部10との間で伝動ベルトBを押圧する方向は、上下方向と平行な方向であり、また、台部10の表面に対して垂直な方向でもある。また、押圧部駆動機構13が、伝動ベルトBを挟んだ状態で台部10の表面に沿って一対の押圧部(12、12)を離間させて伝動ベルトBを張る方向は、台部10の幅方向D1と平行な方向であり、また、台部10に掛けられて台部10の表面に沿って延びる伝動ベルトBの長手方向と平行な方向でもある。
【0042】
また、押圧部駆動機構13は、伝動ベルト保持装置1において、片持ち状に延びるように設置された台部10の基端側に設けられている。そして、押圧部駆動機構13は、台部10が片持ち状に延びる方向と平行に片持ち状に延びるように一対の押圧部(12、12)を回転自在な状態で保持している。
【0043】
また、押圧部駆動機構13は、一対の押圧部(12、12)を上下方向に駆動する機構を有している。一対の押圧部(12、12)を上下方向に駆動する機構として、電動モータを含むラックアンドピニオン機構を含む機構、或いは、リニアモータを含む機構等が設けられている。押圧部駆動機構13は、一対の押圧部(12、12)を上方から下方の台部10の表面に向かって駆動することで、一対の押圧部(12、12)を台部10の表面に近接させて台部10との間で伝動ベルトBを押圧する方向に駆動する。尚、押圧部駆動機構13による一対の押圧部(12、12)の駆動は、後述する制御装置6からの制御指令に基づいて押圧部駆動機構13が作動することで、行われる。
【0044】
また、押圧部駆動機構13は、一対の押圧部(12、12)を台部10の幅方向D1と平行な方向に駆動する機構を有している。一対の押圧部(12、12)を台部10の幅方向D1と平行な方向に駆動する機構として、例えば、電動モータを含むラックアンドピニオン機構を含む機構、或いは、リニアモータを含む機構等が設けられている。押圧部駆動機構13は、一対の押圧部(12、12)を下方に駆動して伝動ベルトBを押圧した状態で、一対の押圧部(12、12)を台部10の幅方向D1と平行な方向に沿って互いに離間する方向に向かって駆動する。これにより、押圧部駆動機構13は、伝動ベルトBを台部10との間で挟んだ状態で台部10の表面に沿って一対の押圧部(12、12)を離間させて伝動ベルトBを張る方向に駆動する。
【0045】
[伝動ベルト供給装置]
図2に示す伝動ベルト供給装置2は、一対の支持部(20、20)と、支持部移動機構21とを備え、伝動ベルトBを伝動ベルト保持装置1に供給する機構として構成されている。
【0046】
一対の支持部(20、20)は、伝動ベルト供給装置2において、それぞれ片持ち状に延びるとともに互いに平行に延びるように設けられている。一対の支持部(20、20)のそれぞれは、丸棒状或いは円管状の部材として設けられ、その片持ち状に延びる方向に対して垂直な断面が略円形の形状に形成されている。
【0047】
また、一対の支持部(20、20)は、伝動ベルト保持装置1の台部10及び一対の押圧部(12、12)が片持ち状に延びる方向と平行な方向であって、台部10及び一対の押圧部(12、12)が片持ち状に延びる方向と逆方向に向かって、片持ち状に延びるように設けられている。また、一対の支持部(20、20)は、それらが片持ち状に延びる方向から視た状態で、台部10に対して台部10の幅方向D1の外側で台部10の側方に位置するように、配置されている。
【0048】
また、一対の支持部(20、20)には、一対の支持部(20、20)が互いに平行に延びる方向に対して垂直な方向において伝動ベルトBの長手方向が沿うように、複数の伝動ベルトBが掛けられる。伝動ベルトBは、環状に形成された伝動ベルトBの内側を一対の支持部(20、20)が挿通した状態で、一対の支持部(20、20)に掛けられる。尚、一対の支持部(20、20)のそれぞれには、複数の伝動ベルトBが連続して並んだ状態で一対の支持部(20、20)が延びる方向に複数の伝動ベルトBを配置できるように、各伝動ベルトBを位置決めするための複数の位置決めピンが設けられていてもよい。
【0049】
支持部移動機構21は、一対の支持部(20、20)を移動させて一対の支持部(20、20)に掛けられた状態の伝動ベルトBを台部10に搬送する機構として設けられている。支持部移動機構21は、一対の支持部(20、20)が延びる方向と平行な方向に沿って走行する台車を備えて構成されており、台車が走行することで、伝動ベルトBが掛けられた一対の支持部(20、20)が移動するように構成されている。
【0050】
支持部移動機構21は、一対の支持部(20、20)が、台部10に対して台部10の幅方向D1の外側で台部10の側方に位置した状態となるまで、一対の支持部(20、20)を移動させる。この状態まで、伝動ベルトBが掛けられた一対の支持部(20、20)が移動すると、伝動ベルトBが、その長手方向が台部10の幅方向D1に沿って延びた状態で台部10と一対の支持部(20、20)とに掛けられた状態となる。これにより、伝動ベルトBが、伝動ベルト保持装置1に搬送されて供給された状態となる。尚、支持部移動機構21による一対の支持部(20、20)の移動は、後述する制御装置6からの制御指令に基づいて支持部移動機構21が作動することで、行われる。
【0051】
伝動ベルト供給装置2は、一対の支持部(20、20)に複数の伝動ベルトBが掛けられた状態で一対の支持部(20、20)を移動させ、複数の伝動ベルトBを伝動ベルト保持装置1に搬送して供給する。そして、伝動ベルト供給装置2によって伝動ベルト保持装置1に搬送されて供給された複数の伝動ベルトBは、伝動ベルト保持装置1の台部10の表面において台部10が片持ち状に延びる方向に沿って連続して並べられて配置された状態となる。
【0052】
[インク供給装置]
図4は、マーク印刷システムにおけるインク供給装置3の斜視図である。
図2及び
図4に示すインク供給装置3は、伝動ベルトBに対して印刷されるマークMを形成する版31を有し、この版31にインクを充填して供給する装置として構成されている。
【0053】
インク供給装置3は、複数のインク供給部30(30a、30b)を備えて構成されている。本実施形態では、複数のインク供給部30として、インク供給部30aとインク供給部30bとが備えられた形態を例示している。尚、
図4では、インク供給部30aの斜視図を示している。
【0054】
複数のインク供給部30(30a、30b)のそれぞれは、版31(31a、31b)、インクボックス32、等を備えて構成されている。尚、インク供給部30aには、版31として版31aが備えられており、インク供給部30bには、版31として版31bが備えられている。版31aと版31bとは、互いに、異なるマークMを形成する版として構成されている。尚、
図4では、マークMについて、二点鎖線で囲んだ領域として模式的に示している。
【0055】
版31は、板状に形成されており、版31には、インクが充填されることでマークMが形成される凹部が刻印されることで設けられている。また、版31は、インクボックス32に対して退避自在及び突出自在に設けられている。版31は、インクボックス32に退避した際に、マークMを形成する凹部に対してインクが充填されるように構成されている。そして、版31は、マークMを形成する凹部に対してインクが充填された状態で、インクボックス32から突出するように構成されている。尚、版31は、マークMを形成する凹部に対してインクが充填されてインクボックス32から突出する際には、インクボックス32内に設けられたワイパーによって、凹部から溢れた余分なインクが掻き取られるように構成されている。尚、本実施形態では、インク供給部30(30a、30b)から、それぞれの版31(31a、31b)に充填されるインクは、同色のものが使用されてもよく、また、複数色のものが使用されてもよい。
【0056】
インク供給部30のインクボックス32には、版31をインクボックス32内に退避させるように駆動し、更に、版31をインクボックス32から
図2及び
図4に示すように突出させるように駆動する機構(図示省略)が設けられている。版31をインクボックス32に対して退避及び突出させるように駆動する機構は、例えば、電動モータを含むラックアンドピニオン機構を含む機構、或いは、リニアモータを含む機構等として構成されている。尚、各インク供給部30において版31をインクボックス32に対して退避及び突出させる動作は、後述する制御装置6からの制御指令に基づいて各インク供給部30が作動することで、行われる。
【0057】
また、インク供給部30のインクボックス32には、版31がインクボックス32内に退避した際に、版31の表面にインクを吐出し、マークMを形成する凹部にインクを充填するインク吐出機構(図示省略)が設けられている。尚、版31の表面に吐出されて版31における凹部から溢れた余分なインクは、版31がインクボックス32から突出する際に、インクボックス32内に設けられたワイパーによって、掻き取られて除去される。
【0058】
[転写装置]
図5は、マーク印刷システム100における転写装置4の平面図である。
図2及び
図5に示す転写装置4は、版31に形成されたマークMを伝動ベルトBに転写するための装置として構成され、転写部40と転写部駆動機構41とを備えて構成されている。そして、転写装置4は、伝動ベルト保持装置1とインク供給装置3とに隣接して配置されている。
【0059】
転写部40は、複数のパッド42(42a、42b、42c)と、回転軸部43と、カメラ44とを備えて構成されている。
【0060】
複数のパッド42(42a、42b、42c)のそれぞれは、伝動ベルト保持装置1に掛けられた伝動ベルトBに対して版31において形成されたマークMを転写する転写媒体として設けられている。各パッド42は、インク供給装置30の版31に対して接触して押し付けられることで、版31に形成されたマークMを構成するインクが含浸され、マークMが転写されるように構成されている。各パッド42は、版31に接触した際にマークMを構成しているインクを吸収することが可能な吸液性を有するとともに、伝動ベルトB及び版31に対して接触する際に確実に密着されるように弾性力を有する材料で構成されており、例えば、シリコンゴムで構成されている。
【0061】
また、複数のパッド42(42a、42b、42c)は、伝動ベルトBにおけるマークMが印刷される領域に応じた、それぞれ大きさの異なるパッド42a、パッド42b、及びパッド42cで構成されている。尚、本実施形態では、パッド(42a、42b、42c)のそれぞれの大きさは、パッド42aが最も大きく、次いでパッド42bが大きく、パッド42cが最も小さく設定されている。
【0062】
回転軸部43は、複数のパッド42(42a、42b、42c)を支持する軸部材として構成されている。そして、複数のパッド42を支持する回転軸部43は、転写部駆動機構41に対して、軸心周りに回転可能な状態で支持されている。尚、回転軸部43に支持される複数のパッド42(42a、42b、42c)は、回転軸部43の先端部に対して片持ち状に延びる軸部材を介して固定されて支持されている。各パッド(42a、42b、42c)を回転軸部43に対して支持する軸部材は、回転軸部43の軸方向に対して垂直な方向に向かって、回転軸部43から片持ち状に延びた状態で、回転軸部43に固定されている。
【0063】
また、各軸部材を介して回転軸部43に固定されたパッド42b及びパッド42cは、回転軸部43を挟み互いに対向する位置に設けられている。即ち、パッド42cは、回転軸部43の軸心を中心に、パッド42bに対して180度周方向にずれた方向に配置されている。また、各軸部材を介して回転軸部43に固定されたパッド42aは、回転軸部43の軸心を中心に、パッド42bに対して90度ずれた位置に配置されており、また、パッド42cに対しても90度ずれた位置に配置されている。
【0064】
カメラ44は、回転軸部43の先端部に取り付けられており、パッド42(42a、42b、42c)から伝動ベルトBに転写されたマークMを撮影するために設けられている。カメラ44で撮影されて生成された画像データは、制御装置6に送信される。制御装置6は、カメラ44で撮影されて生成された画像データに基づいて、印刷されたマークMにおける文字の欠落、或いはマークMで表示された情報の間違い等の有無を、監視するように構成されている。
【0065】
転写部駆動機構41は、転写部40を版31と伝動ベルトBとの間で駆動する機構として設けられ、駆動軸数が4軸又は5軸の垂直多関節ロボットとして構成されている。尚、転写部駆動機構41は、例えば、駆動軸数が6軸又は7軸の垂直多関節ロボットとして構成されてもよい。
【0066】
垂直多関節ロボットとして構成される転写部駆動機構41は、ベース部45と、アーム部46とを有している。ベース部45は、アーム部46を鉛直軸周りに回転自在に支持するとともに、アーム部46を鉛直軸周りの任意の角度位置に回転駆動するように構成されている。アーム部46は、水平方向に延びる複数の駆動軸と、各駆動軸で回転自在に連結された複数のアーム要素とを有している。そして、アーム部46は、水平方向の複数の駆動軸のそれぞれの軸周りにおいて、複数のアーム要素のそれぞれを軸周りの任意の角度位置に回転駆動するように構成されている。また、アーム部46は、その先端部において、回転軸部43を回転自在に支持するとともに、回転軸部43を任意の角度位置に回転駆動するようにも構成されている。
【0067】
上記のように、垂直多関節ロボットとして構成された転写部駆動機構41は、各駆動軸で構成された各関節で回転することで、転写部40を版31と伝動ベルトBとの間で駆動し、マークMを版31から伝動ベルトBに転写するように構成されている。即ち、転写部駆動機構41は、ベース部45及びアーム部46が作動することで、パッド42を版31に押し付けてパッド42にマークMを転写させ、更に、パッド42を移動させて伝動ベルトBに押し付けてマークMを伝動ベルトBに転写させるように、転写部40を駆動するように構成されている。尚、転写部駆動機構41による転写部40の駆動は、後述する制御装置6からの制御指令に基づいて転写部駆動機構41が作動することで、行われる。
【0068】
また、転写部駆動機構41は、パッド42を版31に押し付けてパッド42にマークMを転写させるように転写部40を駆動する際、インク供給部30aの版31a及びインク供給部30bの版31bのうちの一方に対して、パッド42を押し付けるように構成されている。更に、転写部駆動機構41は、パッド42を版31に押し付ける際、複数のパッド42(42a、42b、42c)のうちのいずれか1つのパッド42を版31に押し付けるように構成されている。尚、転写部駆動機構41は、複数のパッド42が支持する回転軸部43を回転駆動することで、版31に対して押し付けるパッド42を切り替えるように構成されている。また、転写部駆動機構41は、版31に対して押し付けるパッド42を切り替えないで、1つのパッド42で連続して使用することも可能である。
【0069】
また、転写部駆動機構41は、パッド42を伝動ベルトBに押し付けてマークMを伝動ベルトBに転写させる際、複数のパッド42(42a、42b、42c)のうちの1つのパッド42であって版31に対して押し付けたパッド42を伝動ベルトBに対して押し付けるように構成されている。更に、転写部駆動機構41は、台部10に並んだ複数の伝動ベルトBに対してパッド42を同時タイミングで押し付けて複数の伝動ベルトBにマークMを転写するように、転写部40を駆動するように構成されている。
【0070】
[インク除去装置]
図2を参照して、本実施形態におけるインク除去装置5は、伝動ベルトBに転写されるマークMを切り替える際に、パッド42に含浸されているインクを吸収して除去する装置として構成されている。インク除去装置5は、インク除去シート50と、インク除去台51と、インク除去シート供給器(図示省略)と、インク除去シート巻取り器(図示省略)と、を備えて構成されている。
【0071】
インク除去シート50は、インクを吸収して保持するシート材料として構成され、例えば、含浸紙として構成されている。伝動ベルトBに転写されるマークMが切り替えられる際、含浸紙で構成されたインク除去シート50にパッド42が押し付けられることで、パッド42に含浸されているインクがインク除去シート50に吸収されてパッド42から除去される。
【0072】
インク除去台51は、インク除去シート50を平らな状態で載置できるよう上側の面が平面状に形成され、インク除去シート50を平らな状態で支持するように構成されている。このため、インク除去台51に載置されたインク除去シート50に対してパッド42が押し付けられた際には、パッド42がインク除去シート50に確実に密着した状態で、押し付けられる。尚、インク除去台51に載置されたインク除去シート50に対してパッド42が押し付けられる動作は、転写装置4において転写部駆動機構41が転写部40を駆動することによって行われる。即ち、上記の動作の際には、転写部駆動機構41が、インク除去台51に載置されたインク除去シート50に対してパッド42を押し付けるように、転写部40を駆動する。
【0073】
インク除去シート供給器(図示省略)は、例えば、ロール状に巻かれたインク除去シート50を保持し、インク除去シート50を払い出しながらインク除去台51上にインク除去シートを供給する機構として構成されている。インク除去シート巻取り器(図示省略)は、インク除去シート供給器から供給されてインク除去台51上でインクを吸収したインク除去シート50を巻き取る機構として構成されている。インク除去台51上でインク除去シート50にパッド42が押し付けられてインクがパッド42からインク除去シート50に吸収されると、インク除去シート供給器及びインク除去シート巻取り器が、制御装置6からの制御指令に基づいて、同時に作動する。この作動により、インク除去シート50におけるインクが吸収されていない部分がインク除去台51上に供給されるとともに、インク除去シート50におけるインクを吸収した部分がインク除去シート巻取り器に巻き取られる。これにより、インク除去台51に載置されるインク除去シート50は、パッド42のインクを吸収できる状態に維持される。尚、本実施形態においては、インク除去シート供給器及びインク除去シート巻取り器を備えるインク除去装置5について例示したが、これらを有するものに限定されない。例えば、単に、インク除去シート50がインク除去台51に載置されたものであってもよい。
【0074】
[制御装置]
図2に示す制御装置6は、マーク印刷システム100において、伝動ベルト保持装置1、伝動ベルト供給装置2、インク供給装置3、転写装置4、インク除去装置5の作動を制御する制御装置として設けられている。前述の通り、伝動ベルト保持装置1、伝動ベルト供給装置2、インク供給装置3、転写装置4、インク除去装置5は、制御装置6からの制御指令に基づいて作動する。
【0075】
制御装置6は、CPU等のプロセッサ、メモリ、ユーザによって操作される操作パネル又は操作盤等の操作部、インターフェース回路、等を備えて構成されている。制御装置6のメモリには、伝動ベルト保持装置1、伝動ベルト供給装置2、インク供給装置3、転写装置4、インク除去装置5の作動を制御する制御指令を作成するためのプログラムが記憶されている。ユーザによって操作部が操作されることで、メモリから上記のプログラムがプロセッサによって読み出されて実行される。これにより、上記の制御指令が作成され、その制御指令に基づいて、伝動ベルト保持装置1、伝動ベルト供給装置2、インク供給装置3、転写装置4、インク除去装置5が作動する。
【0076】
本実施形態のマーク印刷方法は、上述したマーク印刷システム100が作動することによって、実行される。即ち、マーク印刷システム100によって、本実施形態のマーク印刷方法における伝動ベルト配置工程S101、インク供給工程S102、転写工程S103が、実行される。以下、マーク印刷システム100の作動によって実行される本実施形態のマーク印刷方法の各工程について更に詳しく説明する。
【0077】
[伝動ベルト配置工程]
伝動ベルト配置工程S101は、複数の伝動ベルトBを並べて配置する工程として構成されている。伝動ベルト配置工程S101は、伝動ベルト供給装置2及び伝動ベルト保持装置1が、制御装置6からの制御指令に基づいて作動することで、実行される。
【0078】
伝動ベルト配置工程S101においては、まず、伝動ベルト供給装置2において、一対の支持部(20、20)に複数の伝動ベルトBがかけられた状態で、制御装置6からの制御指令に基づいて、支持部移動機構21が作動する。このとき、支持部移動機構21の台車が走行することで、複数の伝動ベルトBが掛けられた一対の支持部(20、20)が移動し、複数の伝動ベルトBが伝動ベルト搬送装置1に搬送されて供給される。これにより、複数の伝動ベルトBは、伝動ベルト保持装置1の台部10の表面において台部10が片持ち状に延びる方向に沿って連続して並べられて配置された状態となる。
【0079】
上記のように伝動ベルト供給装置2によって複数の伝動ベルトBが伝動ベルト保持装置1に供給されると、次いで、制御装置6からの制御指令に基づいて、伝動ベルト保持装置1の押圧機構11が作動する。このとき、押圧機構11は、押圧部駆動機構13が一対の押圧部(12、12)を台部10の表面に近接させ、台部10との間で複数の伝動ベルトBを押圧して挟み込む。更に、押圧機構11は、複数の伝動ベルトBを台部10との間で挟んだ状態で、押圧部駆動機構13が一対の押圧部(12、12)を台部10の幅方向D1と平行な方向に沿って互いに離間する方向に向かって駆動し、複数の伝動ベルトBを張った状態とする。複数の伝動ベルトBが台部10の表面で張られた状態となることで、複数の伝動ベルトBを台部10の表面に並べて配置する伝動ベルト配置工程S101が終了する。
【0080】
[インク供給工程]
インク供給工程S102は、複数の伝動ベルトBに対して印刷されるマークMを形成する版31に対してインクを充填して供給する工程として構成されている。インク供給工程S102は、制御装置6からの制御指令に基づいてインク供給装置3が作動することで実行され、インク供給装置3において版31にインクが供給されることで、実行される。
【0081】
インク供給工程S102においては、複数のインク供給部30(30a、30b)のそれぞれにおいて、版31(31a、31b)にインクが供給される。インク供給部30aにおいては、版31aがインクボックス32に退避した状態で版31aにインクが供給され、インクが供給されると、版31aがインクボックス32から突出した状態となる。そして、インク供給部30bにおいては、版31bがインクボックス32に退避した状態で版31bにインクが供給され、インクが供給されると、版31bがインクボックス32から突出した状態となる。
【0082】
また、インク供給工程S102においては、マークMがそれぞれ形成される複数の領域を有する版31(31a、31b)に対して、インクが供給される。更に、インク供給工程S102においては、複数の伝動ベルトBに対して印刷される複数のマークMが形成される版31(31a、31b)に対して、インクが供給される。
【0083】
図6乃至
図9は、本実施形態のマーク印刷方法で用いられる版31(31a、31b)について説明するための図である。そして、
図6及び
図7は、インク供給部30aの版31aを示しており、
図8及び
図9は、インク供給部30bの版31bを示している。尚、
図6及び
図7は、いずれも版31aを示しているが、
図7では、版31aにおいて形成される複数のマークMのそれぞれの範囲を二点鎖線で示すとともに、マークMがそれぞれ形成される複数の領域(S1~S3)のそれぞれの範囲を破線で示している。また、
図8及び
図9は、いずれも版31bを示しているが、
図9では、版31bにおいて形成される複数のマークMのそれぞれの範囲を二点鎖線で示すとともに、マークMがそれぞれ形成される複数の領域(S4~S13)のそれぞれの範囲を破線で示している。
【0084】
図6及び
図7に示すように、インク供給部30aの版31aは、マークMがそれぞれ形成される複数の領域(S1、S2、S3)を有している。版31aにおける領域S1には、複数の伝動ベルトBに対して印刷される複数のマークMとしての複数のマークM1が形成される。版31aにおける領域S2には、複数の伝動ベルトBに対して印刷される複数のマークMとしての複数のマークM2が形成される。版31aにおける領域S3には、複数の伝動ベルトBに対して印刷される複数のマークMとしての複数のマークM3が形成される。
【0085】
図6及び
図7では、領域S1に形成されるマークM1、領域S2に形成されるマークM2、及び領域S3に形成されるマークM3が、製造会社名及び製品ブランド名を表示するマークMである形態を例示している。そして、マークM1、マークM2、及びマークM3においては、いずれも同じ図柄及び文字で構成された製造会社名(3つの星の図柄と「ABCDE」とを含む文字列で構成された部分)が表示されている。一方、領域S1に形成されるマークM1においては、製品ブランド名として「B-60」が表示され、領域S2に形成されるマークM2においては、製品ブランド名として「B-80」が表示され、領域S3に形成されるマークM3においては、製品ブランド名として「B-120」が表示されている。また、各マーク(M1、M2、M3)においては、製造会社名と製品ブランド名とが、2列で表示されている。
【0086】
また、版31aは、領域S1において複数のマークM1が形成され、領域S2において複数のマークM2が形成され、領域S3において複数のマークM3が形成されるように、構成されている。尚、本実施形態では、領域S1において5つのマークM1が形成され、領域S2において5つのマークM2が形成され、領域S3において5つのマークM3が形成される形態を例示している。
【0087】
また、
図8及び
図9に示すように、インク供給部30bの版31bは、マークMがそれぞれ形成される複数の領域(S4、S5、S6、S7、S8、S9、S10、S11、S12、S13)を有している。版31bにおける領域S4には、複数の伝動ベルトBに対して印刷される複数のマークMとしての複数のマークM4が形成される。版31bにおける領域S5には、複数の伝動ベルトBに対して印刷される複数のマークMとしての複数のマークM5が形成される。版31bにおける領域S6には、複数の伝動ベルトBに対して印刷される複数のマークMとしての複数のマークM6が形成される。版31bにおける領域S7には、複数の伝動ベルトBに対して印刷される複数のマークMとしての複数のマークM7が形成される。版31bにおける領域S8には、複数の伝動ベルトBに対して印刷される複数のマークMとしての複数のマークM8が形成される。版31bにおける領域S9には、複数の伝動ベルトBに対して印刷される複数のマークMとしての複数のマークM9が形成される。版31bにおける領域S10には、複数の伝動ベルトBに対して印刷される複数のマークMとしての複数のマークM10が形成される。版31bにおける領域S11には、複数の伝動ベルトBに対して印刷される複数のマークMとしての複数のマークM11が形成される。版31bにおける領域S12には、複数の伝動ベルトBに対して印刷される複数のマークMとしての複数のマークM12が形成される。版31bにおける領域S13には、複数の伝動ベルトBに対して印刷される複数のマークMとしての複数のマークM13が形成される。
【0088】
図8及び
図9では、領域S4に形成されるマークM4が、生産国を表示するマークMである形態を例示している。そして、領域S5~S13にそれぞれ形成されるマークM5~M13が、製造ロット番号を表示するマークMである形態を例示している。また、各マークM4においては、生産国が2列で表示されている。そして、各マーク(M4~M13)においては、製造ロット番号が、2列で表示されている。
【0089】
また、版31bは、領域S4において複数のマークM4が形成され、領域S5において複数のマークM5が形成され、領域S6において複数のマークM6が形成され、領域S7において複数のマークM7が形成され、領域S8において複数のマークM8が形成され、領域S9において複数のマークM9が形成され、領域S10において複数のマークM10が形成され、領域S11において複数のマークM11が形成され、領域S12において複数のマークM12が形成され、領域S13において複数のマークM13が形成されるように、構成されている。尚、本実施形態では、領域S4において5つのマークM4が形成され、領域S5において5つのマークM5が形成され、領域S6において5つのマークM6が形成され、領域S7において5つのマークM7が形成され、領域S8において5つのマークM8が形成され、領域S9において5つのマークM9が形成され、領域S10において5つのマークM10が形成され、領域S11において5つのマークM11が形成され、領域S12において5つのマークM12が形成され、領域S13において5つのマークM13が形成される形態を例示している。
【0090】
[転写工程]
転写工程S103は、第1転写工程S104、第2転写工程S105、及びインク除去工程S106を含んで構成されている。第1転写工程S104及び第2転写工程S105は、転写装置4が制御装置6からの制御指令に基づいて作動することで、実行される。そして、インク除去工程S106は、転写装置4及びインク除去装置5が、制御装置6からの制御指令に基づいて作動することで、実行される。
【0091】
第1転写工程S104は、転写装置4において、転写部駆動機構41が、インクが充填された版31に対して転写媒体としてのパッド42を押し付けるように、転写部40を駆動することで、実行される。そして、パッド42が版31に押し付けられることで、パッド42にマークMが転写される。また、第1転写工程S104においては、パッド42が版31に押し付けられる際に、パッド42に複数のマークMが転写される。また、第1転写工程S104においては、版31に対して、複数のパッド42(42a、24b、42c)のうちのいずれか1つのパッド42が押し付けられる。
【0092】
また、第1転写工程S104においては、インク供給部30aの版31a及びインク供給部30bの版31bのいずれか一方に対して、パッド42が押し付けられる。
【0093】
第1転写工程S104において、版31aにパッド42が押し付けられる際には、版31aに対して、複数の領域(S1~S3)のうちの1つの領域において、パッド42が押し付けられ、マークMがパッド42に転写される。また、版31aに対してパッド42が押し付けられる際には、複数のパッド42(42a、42b、42c)のうちのパッド42aが版31aに押し付けられる。
【0094】
また、パッド42aが版31aに押し付けられる際には、パッド42aは、複数の領域(S1~S3)のうちの1つの領域において版31aに押し付けられる。即ち、パッド42aは、版31aにおける領域S1、領域S2、及び領域S3のうちのいずれかの領域に対して押し付けられる。パッド42aが領域S1に押し付けられると、パッド42aに複数のマークM1が転写される。パッド42aが領域S2に押し付けられると、パッド42aに複数のマークM2が転写される。パッド42aが領域S3に押し付けられると、パッド42aに複数のマークM3が転写される。尚、
図6及び
図7に示す版31aでは、各領域(S1、S2、S3)において形成される複数のマークM(M1、M2、M3)として、5つのマークMが形成される形態を例示している。
【0095】
また、第1転写工程S104において、版31bにパッド42が押し付けられる際には、版31bに対して、複数の領域(S4~S13)のうちの1つの領域において、パッド42が押し付けられ、マークMがパッド42に転写される。また、版31bに対してパッド42が押し付けられる際には、複数のパッド42(42a、42b、42c)のうちのパッド42b又はパッド42cが版31bに押し付けられる。
【0096】
また、パッド42bが版31bに押し付けられる際には、パッド42bは、複数の領域(S4~S13)のうちの1つの領域S4において版31bに押し付けられる。パッド42bが領域S4に押し付けられると、パッド42bに複数のマークM4が転写される。尚、
図8及び
図9に示す版31bでは、領域S4において形成される複数のマークM4として、5つのマークM4が形成される形態を例示している。
【0097】
また、パッド42cが版31bに押し付けられる際には、パッド42bは、複数の領域(S5~S13)のうちの1つの領域において版31bに押し付けられる。即ち、パッド42cは、版31bにおける領域S5、領域S6、領域S7、領域S8、領域S9、領域S10、領域S11、領域S12、及び領域S13のうちのいずれかの領域に対して押し付けられる。パッド42cが領域S5に押し付けられると、パッド42cに複数のマークM5が転写される。パッド42cが領域S6に押し付けられると、パッド42cに複数のマークM6が転写される。パッド42cが領域S7に押し付けられると、パッド42cに複数のマークM7が転写される。パッド42cが領域S8に押し付けられると、パッド42cに複数のマークM8が転写される。パッド42cが領域S9に押し付けられると、パッド42cに複数のマークM9が転写される。パッド42cが領域S10に押し付けられると、パッド42cに複数のマークM10が転写される。パッド42cが領域S11に押し付けられると、パッド42cに複数のマークM11が転写される。パッド42cが領域S12に押し付けられると、パッド42cに複数のマークM12が転写される。パッド42cが領域S13に押し付けられると、パッド42cに複数のマークM13が転写される。尚、
図8及び
図9に示す版31bでは、各領域(S5~S13)において形成される複数のマークM(M5~M13)として、5つのマークMが形成される形態を例示している。
【0098】
第2転写工程S105は、第1転写工程S104に続いて行われる。そして、第2転写工程S105は、転写装置4において、転写部駆動機構41が、版31に押し付けられたパッド42を移動させるとともに伝動ベルトBに押し付けるように転写部40を駆動することで、実行される。パッド42が伝動ベルトBに押し付けられることで、伝動ベルトBにマークMが転写されて印刷される。また、第2転写工程S105においては、伝動ベルト配置工程S101にて台部10に並べて配置された複数の伝動ベルトBの表面に対して、複数のマークMが転写される。
【0099】
また、第2転写工程S105においては、第1転写工程S104においてパッド42aが版31aの領域(S1~S3)のいずれかに押し付けられた場合であれば、複数の伝動ベルトBに対して、複数のマークM(マークM1~M3のいずれか)が転写される。また、第2転写工程S105においては、第1転写工程S104においてパッド42bが版31bの領域S4に押し付けられた場合であれば、複数の伝動ベルトBに対して、複数のマークM4が転写される。また、第2転写工程S105においては、第1転写工程S104においてパッド42cが版31bの領域(S5~S13)のいずれかに押し付けられた場合であれば、複数の伝動ベルトBに対して、複数のマークM(マークM5~M13のいずれか)が転写される。
【0100】
インク除去工程S106は、伝動ベルトBに転写されるマークMが切り替えられる際に、パッド42に含浸されているインクを吸収して除去する工程として構成されている。そして、インク除去工程S106は、制御装置6からの制御指令に基づいて転写装置4及びインク除去装置5が作動することで、実行される。
【0101】
インク除去工程S106は、伝動ベルトBに転写されるマークMが切り替えられる際に行われる。例えば、インク除去工程S106は、伝動ベルトBに転写されるマークMがマークM1からマーク(M2、M3)に切り替えられる際、或いは、伝動ベルトBに転写されるマークMがマーク(M1~M3)からマーク(M4~M13)に切り替えられる際、などに行われる。
【0102】
インク除去工程S106においては、まず、インク除去装置5において、インク除去シート50におけるインクが吸収されていない部分がインク除去台51上に供給された状態となる。その状態で、転写装置4の転写部駆動機構41が、インク除去台51に載置されたインク除去シート50に対してパッド42を押し付けるように、転写部40を駆動する。これにより、パッド42に含浸されているインクがインク除去シート50に吸収されてパッド42から除去される。パッド42がインク除去シート50に押し付けられてパッド42からインクが除去されると、転写部駆動機構41は、パッド42をインク除去シート50から移動させるように、転写部40を駆動する。そして、インク除去装置5において、インク除去シート供給器及びインク除去シート巻取り器が作動する。これにより、インク除去シート50におけるインクが吸収されていない部分がインク除去台51上に供給されるとともに、インク除去シート50におけるインクを吸収した部分がインク除去シート巻取り器に巻き取られる。
【0103】
転写工程S103においては、第1転写工程S104が行われると、引き続き、第2転写工程S104が行われる。これにより、複数の伝動ベルトBに対してマークMがそれぞれ転写されて印刷される。伝動ベルト配置工程S101にて台部10に並べられた伝動ベルトBの数が、パッド42による一回の転写動作で伝動ベルトBに転写されるマークMの数よりも多い場合は、第1転写工程S104及び第2転写工程S105が、複数回繰り返し行われる。例えば、伝動ベルト配置工程S101にて台部10に並べられた伝動ベルトBの数が20個であり、パッド42による一回の転写動作で伝動ベルトBに転写されるマークMの数が5つである場合、第1転写工程S104及び第2転写工程S105は、4回繰り返されることになる。
【0104】
また、転写工程S103においては、第1転写工程S104及び第2転写工程S105が行われた後、伝動ベルトBに転写されるマークMが切り替えられる際には、インク除去工程S106が行われる。インク除去工程S106が終了すると、切り替えられたマークMを伝動ベルトBに転写するための第1転写工程S104及び第2転写工程S105が行われる。尚、伝動ベルトBに転写されたマークMは、そのまま放置されて自然乾燥される。
【0105】
転写工程S103においては、伝動ベルト配置工程S101にて台部10に配置された伝動ベルトBに対して転写されて印刷されるマークMの種類及び数に応じて、第1転写工程S104及び第2転写工程S105と、インク除去工程S106とが、適宜繰り返し行われる。そして、転写工程S103においては、第1転写工程S104及び第2転写工程S105と、インク除去工程S106とが、適宜繰り返されることで、伝動ベルトBに複数の種類のマークMが順番に印刷される。
【0106】
図10は、伝動ベルトBに複数の種類のマークMが順番に印刷される形態について説明するための図である。尚、
図10では、台部10に並べられた複数の伝動ベルトBの一部を模式的に示している。
図10を参照しつつ、転写工程S103において伝動ベルトBに複数の種類のマークMが順番に印刷される形態の一例について説明する。尚、
図10に示す例においては、伝動ベルトBに対して、マークM1が最初に印刷され、次いで、マークM4が印刷され、最後にマークM13が印刷される形態を例示している。
【0107】
まず、伝動ベルトBにマークMが印刷されていない状態で、最初に伝動ベルトBに転写されるマークMとしてマークM1が選択され、第1転写工程S104及び第2転写工程S105が行われる。このとき、第1転写工程S104では、パッド42aが版31aにおける領域S1に押し付けられ、パッド42aに複数のマークM1が転写される。そして、第1転写工程S104に引き続いて行われる第2転写工程S105では、複数のマークM1が転写されたパッド42aが複数の伝動ベルトBに押し付けられる。これにより、
図10(A)に示すように、複数の伝動ベルトBのそれぞれに対してマークM1が印刷された状態となる。尚、台部10に配置された伝動ベルトBの数が、パッド42aによる一回の転写動作で伝動ベルトBに転写されるマークM1の数よりも多い場合は、上記の第1転写工程S104及び第2転写工程S105が、複数回繰り返し行われる。
【0108】
伝動ベルトBにマークM1を印刷する上記の第1転写工程S104及び第2転写工程S105が終了すると、インク除去工程S106が行われ、パッド42aに含浸されているインクがインク除去シート50に吸収されてパッド42aから除去される。パッド42aからインクが除去されると、伝動ベルトBに転写されるマークMが切り替えられ、次に伝動ベルトBに転写されるマークMとしてマークM4が選択され、第1転写工程S104及び第2転写工程S105が行われる。
【0109】
伝動ベルトBに転写されるマークMとしてマークM4が選択されて行われる第1転写工程S104では、パッド42bが版31bにおける領域S4に押し付けられ、パッド42bに複数のマークM4が転写される。そして、第1転写工程S104に引き続いて行われる第2転写工程S105では、複数のマークM4が転写されたパッド42bが複数の伝動ベルトBに押し付けられる。これにより、
図10(B)に示すように、複数の伝動ベルトBのそれぞれに対してマークM1とともにマークM4が印刷された状態となる。尚、台部10に配置された伝動ベルトBの数が、パッド42bによる一回の転写動作で伝動ベルトBに転写されるマークM4の数よりも多い場合は、上記の第1転写工程S104及び第2転写工程S105が、複数回繰り返し行われる。
【0110】
伝動ベルトBにマークM4を印刷する上記の第1転写工程S104及び第2転写工程S105が終了すると、インク除去工程S106が行われ、パッド42bに含浸されているインクがインク除去シート50に吸収されてパッド42bから除去される。パッド42bからインクが除去されると、伝動ベルトBに転写されるマークMが更に切り替えられ、最後に伝動ベルトBに転写されるマークMとしてマークM13が選択され、第1転写工程S104及び第2転写工程S105が行われる。
【0111】
伝動ベルトBに転写されるマークMとしてマークM13が選択されて行われる第1転写工程S104では、パッド42cが版31bにおける領域S13に押し付けられ、パッド42cに複数のマークM13が転写される。そして、第1転写工程S104に引き続いて行われる第2転写工程S105では、複数のマークM13が転写されたパッド42cが複数の伝動ベルトBに押し付けられる。これにより、
図10(C)に示すように、複数の伝動ベルトBのそれぞれに対してマークM1及びマークM4とともにマークM13が印刷された状態となる。尚、台部10に配置された伝動ベルトBの数が、パッド42cによる一回の転写動作で伝動ベルトBに転写されるマークM13の数よりも多い場合は、上記の第1転写工程S104及び第2転写工程S105が、複数回繰り返し行われる。
【0112】
伝動ベルトBにマークM13を印刷する上記の第1転写工程S104及び第2転写工程S105が終了すると、インク除去工程S106が行われ、パッド42cに含浸されているインクがインク除去シート50に吸収されてパッド42cから除去される。伝動ベルトBに最後に印刷されるマークM13の印刷まで終了すると、転写工程S103が終了する。
【0113】
上記のように、転写工程S103においては、第1転写工程S104及び第2転写工程S105と、インク除去工程S106とが、適宜繰り返されることで、伝動ベルトBに複数の種類のマークMが順番に印刷される。転写工程S103が終了すると、伝動ベルトBへのマークMの印刷が終了し、本実施形態のマーク印刷方法が終了することになる。新たな伝動ベルトBに対してマークMの印刷が行われる場合は、その新たな伝動ベルトBに対して、本実施形態のマーク印刷方法が行われることになる。
【0114】
[本実施形態の作用及び効果]
本実施形態のマーク印刷方法によると、インク供給工程S102において、マークを形成する版31にインクが供給される。そして、第1転写工程S104において、版31にパッド42が押し付けられることで、マークMがパッド42に転写され、更に、第2転写工程S105において、マークMが転写されたパッド42が、加硫された状態の伝動ベルトBに直接に押し付けられ、マークMが伝動ベルトBに転写される。これにより、伝動ベルトBの表面にマークMが印刷されて表示される。よって、本実施形態のマーク印刷方法によると、伝動ベルトBへのマークMの印刷の際、パッド42を介して版31から加硫後の状態の伝動ベルトBへ直接にマークMが転写されるため、フィルムで構成されてマークが印刷された基材を用いた転写が行われることがない。このため、伝動ベルトBへのマークMの印刷後に、フィルムで構成された使用後の基材が大量の廃棄物として生じることがない。
【0115】
また、本実施形態のマーク印刷方法によると、伝動ベルトBへのマークMの印刷において、フィルムで構成された基材にマークを印刷してその基材を未加硫状態のゴムベルトに重ね、更に、基材を重ねたゴムベルトを加硫することで加硫時の熱溶着によって加硫後の状態の伝動ベルトにマークを転写するという従来のプロセスが、全て不要となる。このため、本実施形態のマーク印刷方法によると、幅の狭いゴムベルトにマークが印刷された基材を多数配置するという作業時間を多く要する従来の作業が不要となり、作業時間を短縮することができる。また、本実施形態のマーク印刷方法によると、ゴムベルトに基材を配置することがないため、ゴムベルトに基材を配置する際に配置方向或いは配置場所を間違えるという作業ミスが生じることもない。そして、そもそも基材が用いられることがないため、基材であるフィルムにしわ、折れ、歪み等があった場合の伝動ベルトにおけるマーク表示の不具合が発生してしまうこともない。更に、本実施形態のマーク印刷方法によると、基材であるフィルムが用いられないため、加硫後の伝動ベルトからフィルムを剥がすという作業時間を多く要する従来の作業が不要となり、作業時間を短縮することができる。そして、本実施形態のマーク印刷方法によると、パッド42を介して版31から加硫後の状態の伝動ベルトBへ直接にマークMが転写されるため、確実且つ容易に、更に短時間で、正確に、伝動ベルトBの表面にマークMを印刷することができる。
【0116】
従って、本実施形態によると、多量の廃棄物を生じさせることなく、作業ミスをなくすとともに作業時間を短縮することができ、更に、マーク表示の不具合が発生することも抑制できる、伝動ベルトのマーク印刷方法を提供することができる。
【0117】
また、本実施形態のマーク印刷方法によると、パッド42が押し付けられる版31において、マークMがそれぞれ形成される複数の領域が設けられ、複数の領域のうちから選択される1つの領域にパッド42が押し付けられてマークMがパッド42に転写され、伝動ベルトBへのマークMの印刷が行われる。このため、多数の伝動ベルトBにマークMを印刷する際に、伝動ベルトBに印刷するマークMの変更がある場合であっても、版31におけるパッド42を押し付ける領域を変更することで、版31を交換することなく、容易に、マークMの変更に対応することが可能となる。従って、多数の伝動ベルトBにマークMを印刷する際にマークMの変更が多く必要となる場合であっても、必要な版31の数を削減することができるとともに、版31の交換頻度も大幅に削減することができる。
【0118】
尚、伝動ベルトBに表示されるマークMにおいては、製造会社名、製品ブランド名などの変更の少ない項目に加え、製造ロット番号などの頻繁に変更される項目も含まれる。このため、多数の伝動ベルトBにマークMを印刷する際には、マークMの変更も頻繁に生じることになる。しかし、本実施形態のマーク印刷方法によると、製造ロット番号などが頻繁に変わり、伝動ベルトBに表示するマークMの変更が頻繁にある場合であっても、必要な版31の数を削減することができるとともに、版31の交換頻度も大幅に削減することができる。
【0119】
また、本実施形態のマーク印刷方法によると、複数の伝動ベルトBに対応した複数のマークMが版31に形成され、パッド42に複数のマークMが転写され、並べて配置された複数の伝動ベルトBに対して複数のマークMが同時タイミングで転写される。このため、複数の伝動ベルトBのそれぞれにマークMを印刷する処理を一括して同時タイミングで実行することができ、伝動ベルト1つ当たりに平均して要する作業時間を更に大幅に短縮でき、マーク印刷作業の作業性の更なる向上を図ることができる。
【0120】
また、本実施形態のマーク印刷方法によると、インク供給装置3と転写装置4とを含むマーク印刷システム100によって、インク供給工程S102、第1転写工程S104、及び、第2転写工程S105が実行される。即ち、インク供給装置3によってインク供給工程S102が実行され、転写装置4によって第1転写工程S104及び第2転写工程S105が実行される。そして、転写装置4によって、パッド42を版31に押し付けてパッド42にマークMを転写し、そのパッド42を移動させて加硫後の状態の伝動ベルトBに押し付けることでマークMを伝動ベルトBに転写する処理が実行される。よって、本実施形態のマーク印刷方法によると、マーク印刷システム100の作動によって、パッド42を介して版31から加硫後の状態の伝動ベルトBへ直接にマークMが転写され、伝動ベルトBにマークMが印刷される。このため、伝動ベルトBへのマークMの印刷処理の自動化を図ることができる。
【0121】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る伝動ベルトのマーク印刷方法について説明する。尚、第2実施形態では、第1実施形態と異なる点について主に説明し、第1実施形態と同様の構成及び対応する構成については、図面において同一の符号を付すことで、或いは、同一の符号を引用することで説明を省略する。
【0122】
第2実施形態に係る伝動ベルトのマーク印刷方法(以下、単に、第2実施形態のマーク印刷方法と称する)は、第1実施形態のマーク印刷方法と同様に、伝動ベルト配置工程S101と、インク供給工程S102と、転写工程S103とを備えて構成されている。また、
図11は、本発明の第2実施形態に係る伝動ベルトのマーク印刷方法の実施の際に用いられるマーク印刷システムの平面図である。第2実施形態のマーク印刷方法において用いられるマーク印刷システム100は、第1実施形態のマーク印刷方法で用いられるマーク印刷システム100と同様に構成される。しかし、転写工程S103においては、一部異なる点を有している。また、第2実施形態で用いられるマーク印刷システム100のインク供給装置3は、第1実施形態に用いられるマーク印刷システム100のインク供給装置3に対して、一部異なる構成を有している。
【0123】
第2実施形態におけるインク供給工程S102は、複数の伝動ベルトBに対して印刷されるマークNを形成する版33に対してインクを充填して供給する工程として構成される。インク供給工程S102においては、
図11に示すように、複数のインク供給部32(32a、32b)が、第1実施形態におけるインク供給部30(30a、30b)と同様に構成されている。そして、インク供給部32(32a、32b)のそれぞれにおいて、版33(33a、33b)にインクが供給される。インク供給工程S102においては、複数のインク供給部32(32a、32b)において、異なった色のインクが版33(33a、33b)に供給される。即ち、版33aのインクの色と、版33bのインクの色とは異なっている。
【0124】
第2実施形態においては、例えば、一方のインク供給部32aから版33aに供給されるインクとして、橙色のインクが用いられる。また、他方のインク供給部32bから版33bに供給されるインクとして、赤色のインクが使用される。
【0125】
図12乃至
図15は、伝動ベルトのマーク印刷方法で用いられる版について説明するための図である。
図12及び
図13は、第2実施形態のマーク印刷方法で用いられるインク供給部32aの版33aを示しており、
図14及び
図15は、インク供給部32bの版33bを示している。
図12及び
図13は、いずれも版33aを示している。
【0126】
図12及び
図13に示すように、インク供給部32aの版33aは、マークNがそれぞれ形成される複数の領域(S20、S21)を有している。版33aにおける領域S20及び領域S21には、複数の伝動ベルトBに対して印刷される複数のマークNとしての複数のマークN1が形成される。
【0127】
図12及び
図13では、領域S20及び領域S21に形成されるマークN1が、例えば、製造会社名を表示するマークNのうち、橙色の下地となる部分の形態を例示している。尚、マークNの橙色の下地となる部分は、図面においては、ドットのハッチングで模式的に示している。また、版33aは、領域S20及びS21において複数のマークN1が形成されるように構成されている。尚、本実施形態では、領域S20及びS21においてそれぞれ、2つのマークN1が形成される形態を例示している。
【0128】
また、
図14及び
図15に示すように、インク供給部32bの版33bは、マークNがそれぞれ形成される複数の領域(S22、S23)を有している。版33bにおける領域S22及びS23には、複数の伝動ベルトBに対して印刷される複数のマークNとしての複数のマークN2が形成される。
【0129】
図14及び
図15では、領域S22及び領域S23に形成されるマークN2が、例えば、製造会社名(3つの星の図柄で構成された部分)を表示するマークNのうち、赤色の記号表記となる部分の形態を例示している。また、版33bは、領域S22及びS23において複数のマークN2が形成されるように構成されている。尚、本実施形態では、領域S22及びS23においてそれぞれ、2つのマークN2が形成される形態を例示している
【0130】
第2実施形態においては、転写工程S103が、複数回行われる。例えば、転写工程S103が2回行われる場合には、1回目の転写工程S103として、第1転写工程S104、第2転写S105、インク除去工程S106が行われた後に、2回目の転写工程S103として、第1転写工程S104、第2転写S105、インク除去工程S106が行われる。尚、伝動ベルトBに転写されたマークNは、そのまま放置されて自然乾燥される。1回目の転写工程S103においては、伝動ベルトBに対して版33aのマークN1が転写される。1回目の転写工程S103が終了すると、伝動ベルトBに転写されるマークNが切り替えられ、2回目の転写工程S103において、1回目の転写工程S103でマークN1が転写された伝動ベルトBに対して、版33bのマークN2が転写される。
【0131】
本実施形態の1回目の転写工程S103における第1転写工程S104では、インク供給部32aの版33aに対して、パッド42が押し付けられる。
【0132】
第1転写工程S104において、版33aにパッド42が押し付けられる際には、版33aに対して、複数の領域(S20、S21)のうちの1つの領域において、パッド42が押し付けられ、マークNがパッド42に転写される。また、版33aに対してパッド42が押し付けられる際には、複数のパッド42(42a、42b、42c)のうちのパッド42aが版33aに押し付けられる。
【0133】
また、パッド42aが版33aに押し付けられる際には、版33aにおける領域S20、領域S21のうちいずれかの領域に対して押し付けられる。パッド42aが領域S20及び領域S21に押し付けられると、パッド42aに複数のマークN1が転写される。尚、
図12及び
図13に示す版33aでは、各領域(S20、S21)において形成される複数のマークN(N1)として、2つのマークNが形成される形態を例示している。
【0134】
次に、1回目の第2転写工程S105においては、
図16(A)に示すように、第1転写工程S104においてパッド42aが版33aの領域(S20、S21)のいずれかに押し付けられた後において、複数の伝動ベルトBに対して、複数のマークN(N1)が転写される。そして、第2転写工程S105が行われた後は、パッド42aからインクが除去されるインク除去工程S106が行われ、1回目の転写工程S103が終了する。
【0135】
上述の1回目の転写工程S103が行われた後は、2回目の転写工程S103が行われる。2回目の転写工程S103における第1転写工程S104では、
図14及び
図15を参照して、版33bにパッド42が押し付けられる際、版33bに対して、複数の領域(S22、S23)のうち1つの領域に、パッド42が押し付けられ、マークNがパッド42に転写される。また、版33bに対してパッド42が押し付けられる際には、複数のパッド42(42a、42b、42c)のうちのパッド42b又はパッド42cが版33bに押し付けられる。
【0136】
また、パッド42bが版33bに押し付けられる際には、パッド42bは、複数の領域(S22、S23)のうちの1つの領域S22において版33bに押し付けられる。パッド42bが領域S22に押し付けられると、パッド42bに複数のマークN2が転写される。尚、
図14及び
図15に示す版33bでは、領域S22において形成される複数のマークN2として、2つのマークN2が形成される形態を例示している。上述においては、パッド42a及びパッド42bを使用した第1転写工程S104について例示したが、第1転写工程S104において、パッド42a及びパッド42cを使用してもよく、また、パッド42b及びパッド42cを使用するものであってもよい。
【0137】
次に、2回目の第2転写工程S105においては、第1転写工程S104においてパッド42bが版33bの領域S22に押し付けられた後において、複数の伝動ベルトBに対して、複数のマークN(N2)が転写される。そして、第2転写工程S105が行われた後は、パッド42aからインクが除去されるインク除去工程S106が行われ、2回目の転写工程S103が終了する。
【0138】
図16は、伝動ベルトBに複数の種類のマークNが組み合わされて印刷される形態について説明するための図である。尚、
図16では、台部10に並べられた複数の伝動ベルトBの一部を模式的に示している。
図16を参照しつつ、転写工程S103において伝動ベルトBに複数種類のマークNが順番に印刷される形態の一例について説明する。尚、
図16に示す例においては、伝動ベルトBに対して、下地となるマークN1が最初に印刷され、次いで、下地に重ねて印刷される記号表記のマークN2が印刷される形態を例示している。
【0139】
まず、伝動ベルトBにマークNが印刷されていない状態で、最初に伝動ベルトBに転写されるマークNとしてマークN1が選択され、1回目の第1転写工程S104及び第2転写工程S105が行われる。これにより、
図16(A)に示すように、複数の伝動ベルトBのそれぞれに対してマークN1が印刷された状態となる。
【0140】
伝動ベルトBにマークN1を印刷する上記の第1転写工程S104及び第2転写工程S105が終了すると、インク除去工程S106が行われる。パッド42aからインクが除去されると、伝動ベルトBに転写されるマークNが切り替えられ、次に伝動ベルトBに転写されるマークNとしてマークN2が選択され、2回目の第1転写工程S104及び第2転写工程S105が行われる。
【0141】
伝動ベルトBに転写されるマークNとしてマークN2が選択されて行われる2回目の第1転写工程S104では、パッド42bに複数のマークN2が転写される。そして、第1転写工程S104に引き続いて行われる2回目の第2転写工程S105では、複数のマークN2が複数の伝動ベルトBに転写される。これにより、
図16(B)に示すように、複数の伝動ベルトBのそれぞれに対して下地となるマークN1上にマークN2が重ねて印刷される。
【0142】
伝動ベルトBにマークN2を印刷する2回目の第1転写工程S104及び第2転写工程S105が終了すると、インク除去工程S106が行われる。伝動ベルトBに最後に印刷されるマークN2の印刷まで終了すると、転写工程S103が終了する。
【0143】
上記のように転写工程S103においては、第1転写工程S104及び第2転写工程S105と、インク除去工程S106とが適宜繰り返されることで、
図16(B)に示すように、下地を備える記号表記が形成される。このように転写工程S103が複数回行われることによって、複数の色で構成されるマークNが形成される。
【0144】
(第3実施形態)
次に、以下、マーク印刷方法における第3の実施形態について説明する。尚、以下では、第1実施形態及び第2実施形態と異なる点について主に説明し、第1実施形態及び第2実施形態と同様の構成については、図において同一の符号を付すことで、或いは、同一の符号を参照して説明することで、詳細な説明を省略する。
【0145】
第3実施形態に係る伝動ベルトのマーク印刷方法(以下、単に、第3実施形態のマーク印刷方法と称する)は、第1実施形態及び第2実施形態のマーク印刷方法と同様に、伝動ベルト配置工程S101と、インク供給工程S102と、転写工程S103とを備えて構成されている。また、
図17は、本発明の第3実施形態に係る伝動ベルトのマーク印刷方法の実施の際に用いられるマーク印刷システムの平面図である。第3実施形態のマーク印刷方法において用いられるマーク印刷システム100は、第1実施形態及び第2実施形態のマーク印刷方法で用いられるマーク印刷システム100と同様に構成される。しかし、転写工程S103においては、一部異なる点を有している。また、第3実施形態で用いられるマーク印刷システム100のインク供給装置3は、第1実施形態及び第2実施形態に用いられるマーク印刷システム100のインク供給装置3に対して一部異なる構成を有している。
【0146】
第3実施形態におけるインク供給工程S102は、第2実施形態と同様に複数の伝動ベルトBに対して印刷されるマークPを形成する版35に対してインクを充填する工程として構成される。インク供給工程S102においては、
図17に示すように、複数のインク供給部34(34a、34b)が、第1実施形態におけるインク供給部30(30a、30b)、及び第2実施形態におけるインク供給部32(32a、32b)と同様に構成されている。そして、インク供給部34(34a、34b)のそれぞれにおいて、版35(35a、35b)にインクが供給される。インク供給工程S102においては、複数のインク供給部35(35a、35b)において、異なった色のインクが版35(35a、35b)に供給される。即ち、版33aのインクの色と、版33bのインクの色とは異なっている。
【0147】
第3実施形態においては、例えば、第2実施形態と同様に、一方のインク供給部34aから版35aに供給されるインクとして、橙色のインクが用いられる。また、他方のインク供給部34bから版35bに供給されるインクとして、第2実施形態と同様に、赤色のインクが用いられる。
【0148】
図18乃至
図21は、伝動ベルトのマーク印刷方法で用いられる版について説明するための図である。
図18及び
図19は、第3実施形態のマーク印刷方法で用いられるインク供給部34aの版35aを示しており、
図20及び
図21は、インク供給部34bの版35bを示している。
図18及び
図19は、いずれも版35aを示している。
【0149】
図18及び
図19に示すように、インク供給部34aの版35aは、マークPがそれぞれ形成される複数の領域(S24、S25)を有している。版35aにおける領域S24及び領域S25には、複数の伝動ベルトBに対して印刷される複数のマークPとしての複数のマークP1が形成される。
【0150】
図18及び
図19では、領域S24及び領域S25に形成されるマークP1が、例えば、製造会社名を表示するマークPのうち、橙色の下地となる部分の形態を例示している。尚、マークPの橙色の下地となる部分は、図面においては、ドットのハッチングで模式的に示している。また、マークP1は、後述するマークP2の記号表記に対応するように白抜き状態となっている。版35aは、領域S24及びS25において複数のマークP1が形成されるように構成されている。尚、本実施形態では、領域S24及びS25においてそれぞれ、2つのマークP1が形成される形態を例示している。
【0151】
また、
図20及び
図21に示すように、インク供給部34bの版35bは、マークPがそれぞれ形成される複数の領域(S26、S27)を有している。版35bにおける領域S26及びS27には、複数の伝動ベルトBに対して印刷される複数のマークPとしての複数のマークP2が形成される。
【0152】
図20及び
図21では、領域S26及び領域S27に形成されるマークP2は、例えば、第2実施形態におけるマークN2と同じように、製造会社名(3つの星の図柄で構成された部分)を表示するマークPのうち、赤色の記号表記となる部分の形態を例示している。また、版35bは、領域S26及びS27において複数のマークP2が形成されるように構成されている。尚、本実施形態では、領域S26及びS27においてそれぞれ、2つのマークP2が形成される形態を例示している。
【0153】
第3実施形態においては、転写工程S103が、第2実施形態と同様に複数回行われる。本実施形態おいては、第2実施形態と同様転写工程S103が2回の行われる場合について説明する。1回目の転写工程S103においては、伝動ベルトBに対して版35aのマークP1が転写される。1回目の転写工程S103が終了すると、伝動ベルトBに転写されるマークPが切り替えられ、2回目の転写工程S103において、1回目の転写工程S103でマークP1が転写された伝動ベルトBに対して、版35bのマークP2が転写される。
【0154】
本実施形態の1回目の転写工程S103における第1転写工程S104では、インク供給部34aの版35aに対して、パッド42が押し付けられる。
【0155】
第1転写工程S104において、版35aにパッド42が押し付けられる際には、版35aに対して、複数の領域(S24、S25)のうちの1つの領域において、パッド42が押し付けられ、マークPがパッド42に転写される。また、版35aに対してパッド42が押し付けられる際には、複数のパッド42(42a、42b、42c)のうちのパッド42aが版35aに押し付けられる。
【0156】
また、パッド42aが版35aに押し付けられる際には、版35aにおける領域S24、領域S25のうちいずれかの領域に対して押し付けられる。パッド42aが領域S24及び領域S25に押し付けられると、パッド42aに複数のマークP1が転写される。尚、
図18及び
図19に示す版35aでは、各領域(S24、S25)において形成される複数のマークP(P1)として、2つのマークPが形成される形態を例示している。
【0157】
次に、1回目の第2転写工程S105においては、
図22(A)に示すように、第1転写工程S104においてパッド42aが版35aの領域(S24、S25)のいずれかに押し付けられた後において、複数の伝動ベルトBに対して、複数のマークP(P1)が転写される。そして、第2転写工程S105が行われた後は、パッド42aからインクが除去されるインク除去工程S106が行われ、1回目の転写工程S103が終了する。
【0158】
上述の1回目の転写工程S103が行われた後は、2回目の転写工程S103が行われる。2回目の転写工程S103における第1転写工程S104では、版35bにパッド42が押し付けられる際、版35bに対して、複数の領域(S26、S27)のうち1つの領域に、パッド42が押し付けられ、マークPがパッド42に転写される。また、版35bに対してパッド42が押し付けられる際には、複数のパッド42(42a、42b、42c)のうちのパッド42b又はパッド42cが版35bに押し付けられる。
【0159】
また、パッド42bが版35bに押し付けられる際には、パッド42bは、複数の領域(S26、S27)のうちの1つの領域S26において版35bに押し付けられる。パッド42bが領域S26に押し付けられると、パッド42bに複数のマークP2が転写される。尚、
図20及び
図21に示す版35bでは、領域S26において形成される複数のマークP2として、2つのマークP2が形成される形態を例示している。上述においては、パッド42a及びパッド42bを使用した第1転写工程S104について例示したが、第1転写工程S104において、パッド42a及びパッド42cを使用してもよく、また、パッド42b及びパッド42cを使用するものであってもよい。
【0160】
次に、2回目の第2転写工程S105においては、第1転写工程S104においてパッド42bが版35bの領域S26に押し付けられた後において、複数の伝動ベルトBに対して、複数のマークP(P2)が転写される。そして、第2転写工程S105が行われた後は、パッド42aからインクが除去されるインク除去工程S106が行われ、2回目の転写工程S103が終了する。
【0161】
図22は、伝動ベルトBに複数の種類のマークPが組み合わされて印刷される形態について説明するための図である。尚、
図22では、台部10に並べられた複数の伝動ベルトBの一部を模式的に示している。
図22を参照しつつ、転写工程S103において伝動ベルトBに複数種類のマークPが順番に印刷される形態の一例について説明する。尚、
図22に示す例においては、伝動ベルトBに対して、白抜きの部分を有する下地となるマークP1が最初に印刷され、次いで、下地の白抜き部分に重ねて印刷される記号表記マークP2が印刷される形態を例示している。
【0162】
まず、伝動ベルトBにマークPが印刷されていない状態で、最初に伝動ベルトBに転写されるマークPとしてマークP1が選択され、1回目の第1転写工程S104及び第2転写工程S105が行われる。これにより、
図22(A)に示すように、複数の伝動ベルトBのそれぞれに対してマークP1が印刷された状態となる。
【0163】
伝動ベルトBにマークP1を印刷する上記の第1転写工程S104及び第2転写工程S105が終了すると、インク除去工程S106が行われる。パッド42aからインクが除去されると、伝動ベルトBに転写されるマークPが切り替えられ、次に伝動ベルトBに転写されるマークPとしてマークP2が選択され、2回目の第1転写工程S104及び第2転写工程S105が行われる。
【0164】
伝動ベルトBに転写されるマークPとしてマークP2が選択されて行われる2回目の第1転写工程S104では、パッド42bに複数のマークP2が転写される。そして、第1転写工程S104に引き続いて行われる2回目の第2転写工程S105では、複数のマークP2が複数の伝動ベルトBに転写される。これにより、
図22(B)に示すように、複数の伝動ベルトBのそれぞれに対して下地となるマークP1の白抜き部分上にマークP2が重ねて印刷される。
【0165】
伝動ベルトBにマークP2を印刷する2回目の第1転写工程S104及び第2転写工程S105が終了すると、インク除去工程S106が行われる。伝動ベルトBに最後に印刷されるマークP2の印刷まで終了すると、転写工程S103が終了する。
【0166】
上記のように転写工程S103においては、第1転写工程S104及び第2転写工程S105と、インク除去工程S106とが適宜繰り返されることで、下地を備える記号表記が形成される。このように転写工程S103が複数回行われることによって、複数の色で構成されるマークPが形成される。
【0167】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することができるものである。例えば、次のような変形例が実施されてもよい。
【0168】
(1)前述の実施形態では、転写工程S103における第2転写工程S105の後、パッド42によって伝動ベルトBに印刷されたマークMは、そのまま自然乾燥されていたが、この通りでなくてもよい。例えば、パッド42によって伝動ベルトBに印刷されたマークMを積極的に乾燥させる乾燥工程が実行される形態が実施されてもよい。
【0169】
図23は、変形例に係る伝動ベルトのマーク印刷方法の実施の際に用いられるマーク印刷システム100の平面図である。
図23に示すマーク印刷システム100は、マークMが転写された伝動ベルトBに対して温風又は冷風を吹き付けるように送風して伝動ベルトに印刷されたマークMを乾燥させる送風装置7を備えている。送風装置7には、先端部分において温風又は冷風を送風するための送風口71が設けられている。尚、
図23においては、送風口71から送風される温風又は冷風を破線の矢印で模式的に図示している。
【0170】
図23に示すマーク印刷システム100を用いたマーク印刷方法が実施される際には、パッド42によって伝動ベルトBにマークMが印刷された後に、送風装置7の作動による乾燥工程が実行される。乾燥工程は、転写工程S103における第2転写工程S105の後に行われる。そして、乾燥工程においては、送風口71から送風された温風又は冷風が、伝動ベルトBに吹き付けられ、伝動ベルトBに印刷されたマークMが乾燥させられる。このように、パッド42のインク除去だけでなく伝動ベルトBにおいても、温風又は冷風を吹き付けるように送風して伝動ベルトBに印刷されたマークMを乾燥させる乾燥工程が実行される形態が実施されてもよい。
【0171】
(2)上記の変形例では、マークMが印刷された伝動ベルトBを乾燥させる形態として、伝動ベルトBに温風又は冷風を吹き付けるように送風して伝動ベルトBに印刷されたマークMを乾燥させる形態を例にとって説明した。しかし、伝動ベルトBに印刷されたマークMを乾燥させる乾燥工程として、他の形態が実施されてもよい。
【0172】
図24は、変形例に係る伝動ベルトのマーク印刷方法の実施の際に用いられるマーク印刷システム100の平面図である。
図24に示すマーク印刷システム100は、マークMが転写された伝動ベルトBに対して赤外線を照射して伝動ベルトBに印刷されたマークMを乾燥させる赤外線照射装置8を備えている。赤外線照射装置8には、赤外線を伝動ベルトBに印刷されたマークMに向けて照射する発光素子80が設けられている。尚、
図24においては、発光素子80から照射される赤外線を破線で模式的に図示している。
【0173】
図24に示すマーク印刷システム100を用いたマーク印刷方法が実施される際には、パッド42によって伝動ベルトBにマークMが印刷された後に、赤外線照射装置8の作動による乾燥工程が実行される。乾燥工程は、転写工程S103における第2転写工程S105の後に行われる。そして、乾燥工程においては、伝動ベルトBに対して、発光素子80から赤外線が照射され、伝動ベルトBに印刷されたマークMが乾燥させられる。このように、赤外線を照射して伝動ベルトBに印刷されたマークMを乾燥させる乾燥工程が実行される形態が実施されてもよい。
【0174】
(3)前述の実施形態では、インク供給装置及び転写装置を含むマーク印刷システムによって、インク供給工程、第1転写工程、及び第2転写工程が実行される形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。インク供給工程、第1転写工程、及び第2転写工程が、作業者の作業に基づいて行われる形態が実施されてもよい。
【0175】
(4)前述の実施形態では、インク供給工程において、マークがそれぞれ形成される複数の領域を有する版に対してインクが供給され、第1転写工程において、複数の領域のうちの1つの領域にパッドが押し付けられる形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。インク供給工程において、マークが形成される1つの領域を有する版に対してインクが供給され、第1転写工程において、その1つの領域にパッドが押し付けられる形態が実施されてもよい。
【0176】
(5)前述の実施形態では、複数の伝動ベルトに対して同時タイミングでマークが転写される形態を例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。1つの伝動ベルトに対して1つのマークが転写される形態が実施されてもよい。
【0177】
[実施例]
以下、上述した本発明の各実施形態に係るマーク印刷システム100によって伝動ベルトBにマークQを印刷した実施例について説明する。また、実施例においては、印刷が行われた伝動ベルトBについて、印刷の仕上がり状態についての評価を行った。
【0178】
図25乃至
図27は、実施例において伝動ベルトBにマークQを印刷する転写工程S103について説明する表である。伝動ベルトBへのマークQの印刷の仕上がり状態に関する評価では、JIS規格で定められている種類のうちのB形のラップドVベルトを印刷対象として用いた。具体的には、印刷対象として長さ3048.0mm、厚み11.0mm、奥行き16.5mmの寸法の伝動ベルトBを用いた。尚、伝動ベルトBの長さは、環状の伝動ベルトBの周方向の長さである。伝動ベルトBの厚み寸法は、伝動ベルトBの内周側から外周側、及び、外周側から内周側に向かう方向の寸法である。伝動ベルトBの奥行き寸法は、伝動ベルト保持装置1の台部10に掛けられた状態における環状の伝動ベルトBの軸方向に平行な方向の寸法である。
【0179】
実施例に係る伝動ベルトBの作製においては、マークQとして、例えば、製品ブランド名、生産国、仕様、製品規格等を含む6種類の製品に関する情報を表示するマークQ(Q1、Q2、Q3、Q4、Q5、Q6)を使用した。尚、各マークQ1、Q2、Q3、Q4、Q5、Q6の色として、白色又は赤色を使用したが、6種類の各マークQ1、Q2、Q3、Q4、Q5、Q6全て同じ色を使用してもよいし、6種類全て異なる色を使用してもよい。
【0180】
実施例に係る伝動ベルトBの作製においては、伝動ベルト保持装置1の台部10の表面に配置された25個の伝動ベルトBに対して印刷を行った後に、別の印刷されていない25個の伝動ベルトBに対して印刷を行う手順で合計8回繰り返して印刷を行った。つまり、全てのマークQ1、Q2、Q3、Q4、Q5、Q6の転写を行った伝動ベルトBの全体数は200個である。尚、伝動ベルトBへの各マークQ1、Q2、Q3、Q4、Q5、Q6の印刷は、パッド42による一回の転写動作で5個の伝動ベルトBに対して行った。
【0181】
また、実施例に係る伝動ベルトBの作製は、第1転写工程S104、第2転写工程S105、及びインク除去工程S106を組み合わせた転写工程S103で行った。尚、転写工程S103に先立っては、各マークQ1、Q2、Q3、Q4、Q5、Q6のパッド42への転写の状態を確認するため、試し刷りを行った。試し刷りは、インク供給部30の版31に形成された各マークQ1、Q2、Q3、Q4、Q5、Q6をパッド42に転写した後、パッド42に転写された各マークQ1、Q2、Q3、Q4、Q5、Q6をインク除去シート50に押し付けることによって行った。インク除去シート50に押し付けられて転写された各マークQ1、Q2、Q3、Q4、Q5、Q6については、目視によって印刷状態を確認した。尚、実施例に係る伝動ベルトBの作製では、3つのインク供給部30を用い、それぞれのインク供給部30に備えられる版31に、大きさの異なるパッド42a、42b、42cを押し付けて第1転写工程S104を行った。以下、具体的な転写工程S103について説明する。
【0182】
図25(a)は、例えば、伝動ベルトBの製品ブランド名を表示する白色のマークQ1を伝動ベルトBに印刷する転写工程S103について示している。マークQ1の転写工程S103では、第1転写工程S104として、インク供給装置30の版31に形成されたマークQ1をパッド42aに転写した後、第2転写工程S105として、パッド42aに転写されたマークQ1を伝動ベルト保持装置1の台部10に配置された複数の伝動ベルトBに転写した。第2転写工程S105に際しては、一回の転写の動作ごとに5個の伝動ベルトBに対して転写を行った。即ち、第2転写工程S105では、25個配置された伝動ベルトBの1個目~5個目と、6個目~10個目と、11個目~15個目と、16個目~20個目と、21個目~25個目と、に対してマークQ1の転写を行った。尚、21個目~25個目への第2転写工程S105が終了した後は、パッド42aをインク除去シート50に押し付けてインク除去工程S106を行った。
【0183】
図25(b)は、例えば、伝動ベルトBの仕様を表示する白色のマークQ2を伝動ベルトBに印刷する転写工程S103について示している。マークQ2の転写工程S103では、マークQ1と同様に、第1転写工程104として、版31に形成されたマークQ2をパッド42aに転写した後、第2転写工程S105として、パッド42aに転写されたマークQ2を台部10に配置された複数の伝動ベルトBに転写した。第2転写工程S105に際しては、転写の動作ごとに5個の伝動ベルトBに対して転写を行った。即ち、25個配置された伝動ベルトBの1個目~5個目、6個目~10個目、11個目~15個目、16個目~20個目、21個目~25個目に対してマークQ2の転写を行った。尚、21個目~25個目への第2転写工程S105が終了した後に、インク除去工程S106を行った。
【0184】
図26(a)は、例えば、伝動ベルトBの製品規格を表示する白色のマークQ3を伝動ベルトBに印刷する転写工程S103について示している。マークQ3の転写工程S103では、第1転写工程S104として、版31に形成されたマークQ2をパッド42bに転写した後、第2転写工程S105として、パッド42bに転写されたマークQ3を伝動ベルト保持装置1の台部10に配置された複数の伝動ベルトBに転写した。第2転写工程S105に際しては、転写の動作ごとに5個の伝動ベルトBに対して転写を行った。即ち、25個配置された伝動ベルトBの1個目~5個目、6個目~10個目、11個目~15個目、16個目~20個目、21個目~25個目に対してマークQ3の転写を行った。尚、21個目~25個目への第2転写工程S105が終了した後は、パッド42bをインク除去シート50に押し付けてインク除去工程S10を行った。
【0185】
図26(b)は、例えば、伝動ベルトBとしての製品に関する情報を表示する赤色の英文字のマークQ4を伝動ベルトBに印刷する転写工程S103について示している。マークQ4の転写工程S103では、第1転写工程S104として、版31に形成されたマークQ4をパッド42cに転写した後、第2転写工程S105として、パッド42cに転写されたマークQ4を伝動ベルト保持装置1の台部10に配置された複数の伝動ベルトBに転写した。第2転写工程S105に際しては、転写の動作ごとに5個の伝動ベルトBに対して転写を行った。即ち、25個配置された伝動ベルトBの1個目~5個目、6個目~10個目、11個目~15個目、16個目~20個目、21個目~25個目に対してマークQ4の転写を行った。尚、21個目~25個目への第2転写工程S105が終了した後は、パッド42cをインク除去シート50に押し付けてインク除去工程S106を行った。
【0186】
図27(a)は、例えば、伝動ベルトBの生産国を表示する赤色のマークQ5を伝動ベルトBに印刷する転写工程S103について示している。マークQ5の転写工程S103では、マークQ3と同様に、第1転写工程S104として、版31に形成されたマークQ5をパッド42bに転写した後、第2転写工程S105として、パッド42bに転写されたマークQ5を台部10に配置された複数の伝動ベルトBに転写した。第2転写工程S105に際しては、転写の動作ごとに5個の伝動ベルトBに対して転写を行った。即ち、25個配置された伝動ベルトBの1個目~5個目、6個目~10個目、11個目~15個目、16個目~20個目、21個目~25個目に対してマークQ5の転写が行われた。尚、21個目~25個目への第2転写工程S105が終了した後に、インク除去工程S106を行った。
【0187】
図27(b)は、例えば、伝動ベルトBとしての製品に関する情報を表示する赤色の数字のマークQ6を伝動ベルトBに印刷する転写工程S103について示している。マークQ6の転写工程S103では、マークQ3と同様に、第1転写工程S104として、版31に形成されたマークQ6をパッド42cに転写した後、第2転写工程S105として、パッド42cに転写されたマークQ6を台部10に配置された複数の伝動ベルトBに転写した。第2転写工程S105に際しては、転写の動作ごとに5個の伝動ベルトBに対して転写を行った。即ち、25個配置された伝動ベルトBの1個目~5個目、6個目~10個目、11個目~15個目、16個目~20個目、21個目~25個目に対してマークQ6の転写を行った。尚、21個目~25個目への第2転写工程S105が終了した後に、インク除去工程S106を行った。
【0188】
上述のように各マークQ1、Q2、Q3、Q4、Q5、Q6が、伝動ベルト保持装置1の台部10の表面に配置された25個の伝動ベルトBに印刷した後、更に同じ動作を7回繰り返し、全体数200個の伝動ベルトBに対して各マークQ1、Q2、Q3、Q4、Q5、Q6の印刷を行った。
【0189】
図28は、実施例で印刷を行った伝動ベルトBにおけるマークQの印刷状態について評価を行った項目と評価結果について一覧にして示す表である。伝動ベルトBに印刷された各マークQ1、Q2、Q3、Q4、Q5、Q6については、印刷の仕上がり状態について目視により評価を行った。具体的には、評価項目として、転写されたマークQのズレ、傾き、マークQ同士の間隔のバラツキといった印刷位置に関する不良の発生の有無についての評価を行うとともに、にじみ、かすれ、剥がれといった印刷品質に関する不良の発生の有無についても評価を行った。そして、
図28に示すように、評価結果としてマークQ1、Q2、Q3、Q4、Q5、Q6を印刷した伝動ベルトBの全体数200に対する不良発生個数を示している。
【0190】
上述の200個の伝動ベルトBに対して各マークQ1、Q2、Q3、Q4、Q5、Q6の印刷を行った結果、各マークQ1、Q2、Q3、Q4、Q5、Q6のズレ、及び傾きはなかった。また、マークQ同士の間隔のバラツキもなかった。更に、各マークQ1、Q2、Q3、Q4、Q5、Q6のにじみ、かすれ、剥がれもなかった。即ち、全ての評価項目において、全体数200個に対する不良発生個数は0個であり、200個全ての伝動ベルトBに対して6種類の各マークQ1、Q2、Q3、Q4、Q5、Q6を良好な状態で印刷することができた。従って、印刷工程を自動化した上述の伝動ベルトのマーク印刷システム100によって無人でマークQを不具合なく印刷できることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0191】
本発明は、伝動ベルトに対してマークを印刷する方法である、伝動ベルトのマーク印刷方法に対して、広く適用することができる。
【符号の説明】
【0192】
3 インク供給装置
4 転写装置
31、31a、31b 版
42、42a、42b、42c パッド
100 マーク印刷システム
S102 インク供給工程
S104 第1転写工程
S105 第2転写工程
B 伝動ベルト
M マーク