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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】軸はり装置用防振ブッシュ
(51)【国際特許分類】
   B61F 5/30 20060101AFI20221207BHJP
   F16F 15/08 20060101ALI20221207BHJP
   F16F 1/387 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
B61F5/30 E
F16F15/08 K
F16F1/387 F
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019041311
(22)【出願日】2019-03-07
(65)【公開番号】P2020142676
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2021-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】517413605
【氏名又は名称】ニッタ化工品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】柏原 広樹
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-043142(JP,A)
【文献】実公昭55-039866(JP,Y2)
【文献】実開昭56-037740(JP,U)
【文献】特開2014-020487(JP,A)
【文献】特開2002-211395(JP,A)
【文献】特開2015-168397(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0367867(US,A1)
【文献】中国実用新案第203727405(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61F 5/30
F16F 15/08
F16F 1/387
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両進行方向に交差する軸心になり得る軸心を有する中心軸と、前記中心軸の径外側に配置される弾性部とを有し、
前記中心軸の径外側に、前記弾性部の径方向厚みより小さい径方向厚みの弾性ストッパが着脱可能に取付けられ、
前記弾性ストッパは、前記中心軸の外周面に円弧面で当接する内周を有する硬質材製のベース部と、前記ベース部の径外側に一体化される弾性材とを備えて構成され、
前記弾性ストッパに、前記弾性ストッパを中心軸に1つのボルトで取付けるための1箇所の取付孔が形成されている軸はり装置用防振ブッシュ。
【請求項2】
前記取付孔は、前記ボルトの軸部分を通すために前記ベース部に形成される小径孔部と、前記ベース部に前記ボルトのボルト頭を当接可能とすべく前記ベース部及び前記弾性材の双方に亘って形成される大径孔部と、からなる請求項1に記載の軸はり装置用防振ブッシュ。
【請求項3】
前記弾性部は、前記中心軸の心棒部の径外側に配置される筒状部と、前記心棒部の軸方向両端に形成される一対の鍔状部に対応して前記筒状部の両端に続く一対の鍔状部分とを備え、
前記弾性ストッパは、前記筒状部の軸心方向の長さとほぼ同等の軸心方向の長さを有している請求項1に記載の軸はり装置用防振ブッシュ。
【請求項4】
前記弾性部は、前記中心軸の心棒部の径外側に配置される筒状部と、前記心棒部の軸方向両端に形成される一対の鍔状部に対応して前記筒状部の両端に続く一対の鍔状部分とを備え、
前記弾性ストッパは、前記筒状部の軸心方向の長さとほぼ同等の軸心方向の長さを有している請求項2に記載の軸はり装置用防振ブッシュ。
【請求項5】
前記ベース部と、前記ベース部の外周面に固定される前記弾性材とを有する前記弾性ストッパが、前記中心軸の外周面に前記ベース部が当接する状態でボルト止めされている請求項1~4の何れか一項に記載の軸はり装置用防振ブッシュ。
【請求項6】
前記弾性ストッパは、前記弾性部が部分的に欠如された箇所に設けられている請求項5に記載の軸はり装置用防振ブッシュ。
【請求項7】
前記弾性部は、その外周面に一体化される硬質板材製の外側部を有している請求項1~6の何れか一項に記載の軸はり装置用防振ブッシュ。
【請求項8】
前記弾性部の径方向厚みと前記弾性ストッパの径方向厚みとの差は、前記弾性部の外径に対して2.5~6%となるように設定されている請求項1~7の何れか一項に記載の軸はり装置用防振ブッシュ。
【請求項9】
前記弾性ストッパが、車体進行方向の前又は後に配置されている鉄道車両用のものである請求項1~8の何れか一項に記載の軸はり装置用防振ブッシュ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両用として好適な軸はり装置用防振ブッシュに関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両などの台車において、軸はり装置(軸梁式)がある。これは、軸箱と一体となった軸はり(スイングアーム)を、台車枠の側はりの近くの1か所でゴムブッシュ、即ち防振ブッシュを介して支持する構造のものである。軸はり装置用防振ブッシュは緩衝用であり、簡素な構造で部品点数が少なく、コストダウンが図れる利点を有している。
【0003】
この種の軸はり装置用防振ブッシュは、車両進行方向に交差する軸心になり得る軸心を有する中心軸と、中心軸の径外側に配置される外側部と、中心軸と外側部材との間に設けられてこれら中心軸と外側部材とを連結する弾性部とを有して構成されている。防振ブッシュを備えた軸はり装置は、軸はりの中心軸回りの回転運動を許容しながら、軸はりと台車枠との連結部位の振動及び衝撃を吸収する防振機能を発揮することができる。このような技術としては、例えば、特許文献1において開示されたものが知られている。
【0004】
上記防振ブッシュには種々の力が作用するが、車両の加減速、とりわけ制動による減速時には大なる荷重が作用する。急制動時には最も荷重条件が厳しくなり、弾性部には相等な負担が掛かる。即ち、弾性材においては、制動作用時に圧縮作用を受ける箇所が最もきつい条件となり、弾性変位が過剰に生じることがある。
【0005】
そこで、その対策として、特許文献1(図4などを参照)において開示されるように、弾性部における制動時に圧縮作用を受ける箇所に、弾性変位量自体を少なくする弾性ストッパを設け、過剰な弾性変位が生じ難いようにされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-168397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
弾性ストッパの特性は、適用される車両の重量や特性などにより種々に変化設定されることがあるので、その場合は、必要とされる緒元に合せられた特性の弾性ストッパが装備された防振ブッシュが作成される。従って、車両の仕様が変わる毎に弾性ストッパ、つまりは防振ブッシュの仕様も変更されることが多いので、いきおい、防振ブッシュの種類が多くなってしまう問題がある。
【0008】
本発明の目的は、構造工夫により、鉄道車両などの適用箇所の緒元の異なりに応じて弾性ストッパの特性を変化させることが可能となるように、改善された軸はり装置用防振ブッシュを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、軸はり装置用防振ブッシュにおいて、
車両進行方向に交差する軸心になり得る軸心Pを有する中心軸2と、前記中心軸2の径外側に配置される弾性部3とを有し、
前記中心軸2の径外側に、前記弾性部3の径方向厚みより小さい径方向厚みの弾性ストッパ5が着脱可能に取付けられ
前記弾性ストッパ5は、前記中心軸2の外周面2aに円弧面で当接する内周を有する硬質材製のベース部6と、前記ベース部6の径外側に一体化される弾性材7とを備えて構成され、
前記弾性ストッパ5に、前記弾性ストッパ5を中心軸2に1つのボルト17で取付けるための1箇所の取付孔18が形成されていることを特徴とする。
【0010】
この場合、前記取付孔18は、前記ボルト17の軸部分を通すために前記ベース部6に形成される小径孔部18aと、前記ベース部6に前記ボルト17のボルト頭を当接可能とすべく前記ベース部6及び前記弾性材7の双方に亘って形成される大径孔部18bと、からなっているとよい。
そして、前記弾性部3は、前記中心軸2の心棒部2Aの径外側に配置される筒状部3aと、前記心棒部2Aの軸方向両端に形成される一対の鍔状部2B,2Bに対応して前記筒状部3aの両端に続く一対の鍔状部分3b,3bとを備え、
前記弾性ストッパ5は、前記筒状部3aの軸心P方向の長さとほぼ同等の軸心P方向の長さを有していると好都合である。
【0011】
例えば、前記弾性ストッパ5は、硬質材製のベース部6と前記ベース部6の径外側の弾性材7とを備えて構成されていると好都合である。そして、前記ベース部6と、前記ベース部6の外周面6aに固定される前記弾性材7とを有する前記弾性ストッパ5が、前記中心軸2の外周面2aに前記ベース部6が当接する状態でボルト止めされているとさらに好都合である。
【0012】
前記弾性ストッパ5は、前記弾性部3が部分的に欠如された箇所に設けられているとよい。そして、前記弾性部3の径方向厚みと前記弾性ストッパ5の径方向厚みとの差は、前記弾性部3の外径に対して2.5~6%となるように設定されていると好都合である。また、前記弾性ストッパ5が、車両進行方向Vの前又は後に配置されている鉄道車両用の防振ブッシュ1であってもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、弾性ストッパが着脱可能に取付けられているから、弾性ストッパの付換えにより、弾性ストッパの弾性の度合い(弾性の強弱、ばね定数など)を可変設定することが可能であり、しかもその可変設定が簡単に行えるようになる。例えば、加速時や制動時(ブレーキ時)など、車両進行方向のストッパ特性を、適用される軸はり装置(鉄道車両)に応じて、事前に合せた仕様にすることが簡単で便利に行えるようになる。
【0014】
その結果、構造工夫により、鉄道車両などの適用箇所の緒元の異なりに応じて弾性ストッパの特性を変化させることが可能となるように、改善された軸はり装置用防振ブッシュを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】防振ブッシュの一部切欠き正面図
図2図1のW-W線の断面図
図3】防振ブッシュの軸はりへの組付け方法を示す作用図
図4】(A)組付状態の防振ブッシュを示す横断断面図、(B)別実施形態による組付状態の防振ブッシュを示す要部の横断断面図
図5】軸はり装置への適用例を示す要部の一部切欠き側面図
図6】防振ブッシュのたわみに対する荷重のグラフを示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明による軸はり装置用防振ブッシュの実施の形態を、弾性部としてゴムを用いた鉄道車両用のもの(鉄道車両軸はり装置用防振ゴムブッシュ)として図面を参照しながら説明する。なお、図面において、左右軸心をZ、上下軸心をy、前後軸心をXとそれぞれ定義する。また、簡単のため、軸はり装置用防振ブッシュは、単に防振ブッシュと呼ぶことを基本とする。
【0017】
〔実施形態1〕
図5に示される鉄道車両の軸はり装置において、11は車軸、12は軸箱部、13は軸はり、14はハウジング部、15は車軸11に取付けられる車輪、1は防振ブッシュ、16は台車フレームである。軸はり13は、車軸11を支持する軸箱部12から車両進行方向(矢印V方向)に向けて延設され、その軸はり13の一端部に形成される筒状のハウジング部14に防振ブッシュ1が嵌装されている。16Aは、防振ブッシュ1の中心軸2を支持する二股状の支持ブラケットであり、台車フレーム16から突出形成されている。
【0018】
図4(A)及び図5に示されるように、ハウジング部14の嵌合孔14H内に防振ブッシュ1の弾性部3が嵌合固定され、防振ブッシュ1における中心軸2の両端部が、支持ブラケット16Aに回転不能に支持されている。このような構造により、軸はり13が中心軸2の軸心P回りに揺動移動可能であるとともに、軸はり13と台車フレーム16との連結部位の振動及び衝撃を吸収できうるように構成されている。
【0019】
ハウジング部14は、図3及び図5に示されるように、車両進行方向V(防振ブッシュ1では前後軸心Xに相当)に2分割された半割形式の構造体である。先端側半割体14Bは、軸はり13と一体で基端側半割体14Aにボルト止めにより取付けられている。ボルトの締付によって先端側半割体14Bを基端側半割体14Aに連結固定させる構造により、締付時において、防振ブッシュ1に所定の締め代による締め付け力を付与し、弾性部3に予備圧縮を加える構成が採用されているが、この限りではない。
【0020】
図1図2図5に示されるように、防振ブッシュ1は、車両進行方向Vに交差する軸心Z(左右軸心)になり得る軸心Pを有する中心軸2と、中心軸2の径外側に配置される弾性部3とを有して構成されている。
中心軸2は、車両進行方向V(前後軸心X)に対して直角な水平姿勢に配置された断面中実の心棒部2Aと、心棒部2Aの軸方向両端に一体形成される一対の鍔状部2B,2Bと、支持ブラケット16Aに支持される一対の被支持部2C、2Cとを有してなる金属製の軸体である。2cは、被支持部2Cに開けられた丸い孔である。
【0021】
図1図2図4(A)に示されるように、弾性部3は、中心軸2の外周(径外側)に配置され、かつ、心棒部2Aを包み込むような筒状部3aと、鍔状部2B,2Bに対応する状態で筒状部3aに一体連設される一対の鍔状部分3b,3bとを備える筒状ゴムにより形成されている。
自由状態(組付け前)の筒状部3aは、図2に示されるように、軸心Pの回りにおいて対向配置される一対の大径部8,8と、これら大径部8,8の間の一方に形成される中径部9と、他方に形成される欠如部10とを備え、側面視でC字形状を呈する状態で中心軸2に一体化されている。筒状部3aと鍔状部分3bとは、大径部8及び中径部9のそれぞれに存在している。
【0022】
図1図2に示されるように、弾性部3は、上下の大径部8,8の外周面に一体化される一対の外側部4,4を有している。外側部4は、側面視で円弧状を呈する金属板製のものであって、筒状部3aに外嵌される筒板部4aと、左右の鍔状部分3bに内接される状態で筒板部4aの左右に続く鍔板部4b、4bとを備えて構成されている。軸はり13に組み付けられる際には、図4(A)に示されるように、これら一対の外側部4,4が嵌合孔14Hに直接に内嵌される。
【0023】
図1図2図4(A)に示されるように、弾性部3の欠如部10における中心軸2に、弾性部3の径方向厚みより小さい径方向厚みを有する弾性ストッパ5が着脱可能に取付けられている。弾性ストッパ5は、金属(硬質材の一例)製のベース部6と、ベース部6の径外側に一体化されている弾性材7とを備えて構成されている。ベース部6は、中心軸2の心棒部2Aの外周と等しい径の内周を有し、側面視で円弧状かつ正面視で矩形を為して厚みを有する円弧状の部材である。弾性材7は、ベース部6の外周面6aに一体化されるゴム製のものであり、ベース部6と同等に、側面視で円弧状かつ正面視で矩形を為して厚みを有する円弧状の部材である。
【0024】
弾性ストッパ5の周方向中央かつ左右中央の1箇所に、弾性ストッパ5を中心軸2に1つのボルト17で取付けるための取付孔18が形成されている。取付孔18は、ベース部6に形成される小径孔部18aと、ベース部6及び弾性材7の双方に亘って形成される大径孔部18bとからなる。小径孔部18aは、ボルト17の軸部分を通す孔部分であり、大径孔部18bは、ボルト頭を回す工具が入る大きさの内径を有する孔部分である。
中心軸2の(心棒部2Aの)外周面2aとベース部6とは、互いに同径の円弧面で当接する構造であるから、1つのボルト17のみで位置固定状態でしっかりと弾性ストッパ5を中心軸2に取付けることができる。
【0025】
弾性ストッパ5は、軸はり13への組付け状態では、車両進行方向Vの前又は後に配置されるように構成されている。そして、組付け状態における弾性ストッパ5の外径は弾性部3の外径よりも小さく、弾性部3の径方向厚みと弾性ストッパ5の径方向厚みとの差、即ち径差dは、弾性部3の外径に対して2.5~6%(2.5%≦d≦6%)となるように設定されている。なお、弾性部3と中心軸2、筒状部3a及び鍔状部分3bと外側部4は、それぞれ加硫接着により一体化されているが、一体化の手段としてはこの限りではない。
【0026】
例として、図4(A)に示されるように、弾性部3の外径91.2mmに対して、径差が3.2mm(3.2÷91.2=約3.2%)に設定されている。そして、弾性ストッパ5の径方向厚みに対する弾性材7の径方向厚みの割合は約45%に設定されているが、この限りではない。また、自由状態における弾性部3(大径部8)の厚みに対する弾性材7の厚みの割合が20~35%(例:30%)に設定されているが、この限りではない。
【0027】
防振ブッシュ1の軸はり13への組付けは、図3に示されるように、先端側半割体14Bと基端側半割体14Aとの間に、一対の大径部8,8が上下に向き、かつ、中径部9が基端側半割体14Aに向く姿勢で防振ブッシュ1を置く。そして、ボルト(図示省略)の締め込みにより、先端側半割体14Bと基端側半割体14Aとを前後方向(車両進行方向)に相対接近させて締付け固定する。すると、図1及び図4(A)に示されるように、防振ブッシュ1は、一対の外側部4,4の内側の大径部8,8が圧縮された状態で嵌合孔14Hに圧入状態で内嵌された組付け状態が齎される。
【0028】
外側部4,4は、金属製の基端側及び先端側の各半割体14A,14Bとゴム製の筒状部3a(及び鍔状部分3b)とが強く擦れることによる不都合を防止しながら、基端側半割体14Aと先端側半割体14Bとの円滑な相対接近移動及び弾性部3の圧縮を行わせる潤滑材的な作用を発揮する。
【0029】
軸はり装置(図5を参照)に組み付けられた状態における防振ブッシュ1の車両進行方向(矢印V)でのたわみに対する荷重のグラフを図6に実線で示す。弾性部3のたわみ(撓み)量が3.2mmまでは比較的緩やかに荷重が増加し、3.2mmを越えると、嵌合孔14Hが、即ちハウジング部14が弾性ストッパ5に接触し始めるので、荷重の増加率が増大するようになる。
【0030】
弾性部3の欠如部10は、軸心Pの周りの角度が約90度の範囲に亘って形成されており、弾性ストッパ5は、軸心Pの周りの角度が約65度の範囲に亘る大きさに設定されている。また、弾性ストッパ5の弾性材7を、高硬度のゴムに置き換えると、図6に示されるように、3.2mm以降はより立上った曲線(一点破線)になる。
【0031】
〔実施形態2〕
実施形態2の防振ブッシュ1は、図4(B)に示されるように、弾性材7の厚みが、実施形態1による弾性材7の厚みよりも少とされたものである。それ以外は実施形態1による防振ブッシュ1と同じである。例えば、弾性ストッパ5の外径は、嵌合孔14H(組付状態の弾性部3)の外径よりも4.5mm小さいもの、即ち径差dが4.5mmに設定されている。
【0032】
実施形態2の防振ブッシュ1のたわみに対する荷重のグラフを図6に実線及び破線で示す。弾性部3のたわみ(撓み)量が4.5mmまでは比較的緩やかに荷重が増加し、4.5mmを越えると、嵌合孔14Hが、即ちハウジング部14が弾性ストッパ5に接触し始めるので、荷重の増加率が増大するようになる。
【0033】
〔別実施形態〕
(1)弾性ストッパ5の大きさや形状は種々に変更設定が可能である。ベース部6と弾性材7との割合を0:10~8:2の間に任意に定めることが可能である。
(2)弾性部3の弾性硬度(ゴム硬度)が十分に高い(硬い)場合など、外側部4を省略することが可能である。
(3)外側部4を周方向に延長するなどして、外側部4の径内側に弾性ストッパ5が着脱可能に取付けられる構成とすることも可能である。この場合、弾性ストッパ5にベース部6を設けるには、その径内側に弾性材7を配置する構成がよい。
【0034】
以上説明したように、弾性ストッパ5を着脱可能に取付けられる構成の防振ブッシュ1としてあるので、弾性ストッパ5の弾性材7の弾性の度合い(ゴム硬度、ばね定数)を可変設定することが可能である。加速時や制動時(ブレーキ時)など、車両進行方向のストッパ特性を、適用される軸はり装置(鉄道車両)に応じて、事前に合せた仕様にすることが、弾性ストッパ5以外の部分は同じとしながら、簡単で便利に行えるようになる。
【0035】
弾性ストッパ5が、金属製のベース部6と弾性材7との積層構造としてあるので、弾性材7の特性(硬度、厚みなど)を可変としながら、中心軸2にしっかりと固定することができる。また。弾性ストッパ5の嵌合孔14H(ハウジング部14)との当接後における特性(図6のグラフの立ち上がり特性、プログレッシブ特性など)を可変設定することも可能となる利点がある。
【符号の説明】
【0036】
1 防振ブッシュ
2 中心軸
2A 心棒部
2B 鍔状部
2a 外周面
3 弾性部
3a 筒状部
3b 鍔状部分
4 外側部
5 弾性ストッパ
6 ベース部
6a 外周面
7 弾性材
17 ボルト
18 取付孔
18a 小径孔部
18b 大径孔部
P 軸心
図1
図2
図3
図4
図5
図6