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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】屋外用シート構造物
(51)【国際特許分類】
   E04H 15/54 20060101AFI20221207BHJP
   E04B 1/343 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
E04H15/54
E04B1/343 U
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019058679
(22)【出願日】2019-03-26
(65)【公開番号】P2020159030
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-11-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000005175
【氏名又は名称】藤倉コンポジット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(74)【代理人】
【識別番号】100132403
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 儀雄
(72)【発明者】
【氏名】北村 琢磨
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】実公昭49-037609(JP,Y1)
【文献】特開平10-227133(JP,A)
【文献】実開昭48-107506(JP,U)
【文献】特開2007-314990(JP,A)
【文献】特開平05-306583(JP,A)
【文献】特開2018-178373(JP,A)
【文献】実開昭49-126308(JP,U)
【文献】特開平01-029587(JP,A)
【文献】特開2008-057198(JP,A)
【文献】特開2001-227200(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0066591(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/343
E04H 9/14
E04H 15/00-15/64
E04G 21/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート部材本体と、
前記シート部材本体の外縁部に、接着層を介して固定された固定用部材と、を備え、
前記固定用部材は、複数の、少なくとも一の係合部を有する補強部材と、両端部をずらして折り畳まれて、折り畳まれた部分に挟まれるように前記補強部材を内包し、折り畳まれて重なり合った部分が互いに接着されたシート体からなる固定用部材本体と、を有し、
前記固定用部材本体は、前記シート体が折り畳まれて重なり合った部分に対して反対側の端縁に前記接着層が配置され、前記接着層が配置された部分と、前記シート体が折り畳まれて重なり合った部分との間に緩衝領域を有する、屋外用シート構造物。
【請求項2】
前記接着層の引張せん断強度が、100~800N/cmである、請求項1に記載の屋外用シート構造物。
【請求項3】
前記接着層の幅は、10~45mmである、請求項1または2に記載の屋外用シート構造物。
【請求項4】
前記補強部材は、板状の部材であり、前記補強部材のそれぞれには、前記係合部として複数の貫通孔が形成され、
前記固定用部材本体には、前記補強部材の前記係合部が形成された位置に貫通孔が形成されている、請求項1~のいずれか一項に記載の屋外用シート構造物。
【請求項5】
前記係合部を介して外部に固定された状態で前記シート部材本体が竜巻の風圧を受けると、当該シート部材本体の全部が前記固定用部材から剥がれ、前記固定用部材は前記係合部を介して外部に固定された状態が維持される、請求項1~のいずれか一項に記載の屋外用シート構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外用シート構造物に関する。更に詳しくは、突風や強風などのような大きな風圧を受けた際にも安全性が十分に確保された屋外用シート構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、テントの天幕、ビニールハウスの骨組みに展張されるシート、トンネルなどのコンクリート構造物からのコンクリート片の剥落を防止するためのシート(「防護ネット」などとも呼ばれる)などのように屋外で様々なシート(「屋外用シート構造物」という)が使用される。
【0003】
このような屋外用シート構造物は、屋外で使用されるものであるため、風による影響が問題となることがある。例えば、テントの場合、突風や強風などによって天幕が大きな風圧を受けると、テントが転倒したり、金属製などの骨組みと共にテント全体が吹き飛ばされたりすることがある。このように転倒したり、吹き飛ばされたりしたテント(特に、テントの骨組み)が人や物に接触すると、人が負傷したり、物が破損したりするという問題が報告されている。
【0004】
このような問題に対して、例えば、天幕が突風や強風などによる大きな風圧を受けると、この天幕がテントの骨組みから外れて、骨組みは飛ばされない構造としたテント(特許文献1参照)や、天幕が突風や強風などの大きな風圧を受けた場合に、天幕の一部が開口し、この開口から突風や強風などによる風圧を逃がすことでテントが吹き飛ばされることを防止したもの(特許文献2参照)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-180701号公報
【文献】特開2004-143809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の組立式テントは、突風や強風などによって天幕が吹き飛ばされると、この天幕と一緒にテントの骨組みに嵌合されていたフックも吹き飛ばされることになる。そして、このように天幕と一緒にフックも飛ばされた場合、このフックが人や物に当たって人が負傷したり、物が破損したりするおそれがある。特に、天幕が吹き飛ばされるような突風や強風の場合には、その力は非常に強く、小さなフックであっても大きな被害を生じさせるおそれがある。
【0007】
特許文献2に記載の野外テントは、強風などの風圧によってシート状の蓋が自動的に開口するものである。この野外テントでは、シート状の蓋が自動的に開口することによって天幕やテント全体が吹き飛ばされることを防止したものである。一方で、この野外テントは、シート状の蓋が開口することによって天幕が吹き飛ばないようにした構造であるが、この野外テントは、シート状の蓋が天幕に固着されているため、当該蓋が舟の帆のような働きをして、風圧によってテントが転倒したり、テント全体が吹き飛ばされたりするという問題がある。
【0008】
このように、特許文献1、2に記載のテントでは、突風や強風などの風圧の大きな風を受けた際の安全性が未だ十分に確保されていなかった。そして、このような問題は、テントに限らず、ビニールハウスなどのように屋外で使用され、シートを備える様々なものにおいて共通している。
【0009】
このようなことから、突風や強風などの風圧の大きな風を受けた際における安全性が十分に確保された屋外用シート構造物の開発が求められていた。
【0010】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものである。本発明の屋外用シート構造物は、突風や強風などの風圧の大きな風を受けた際における安全性が十分に確保され、人を負傷させたり物を破損したりすることが生じ難いものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、以下に示す屋外用シート構造物が提供される。
【0012】
[1] シート部材本体と、
前記シート部材本体の外縁部に、接着層を介して固定された固定用部材と、を備え、
前記固定用部材は、複数の、少なくとも一の係合部を有する補強部材と、両端部をずらして折り畳まれて、折り畳まれた部分に挟まれるように前記補強部材を内包し、折り畳まれて重なり合った部分が互いに接着されたシート体からなる固定用部材本体と、を有し、
前記固定用部材本体は、前記シート体が折り畳まれて重なり合った部分に対して反対側の端縁に前記接着層が配置され、前記接着層が配置された部分と、前記シート体が折り畳まれて重なり合った部分との間に緩衝領域を有する、屋外用シート構造物。
【0014】
] 前記接着層の引張せん断強度が、100~800N/cmである、前記[1]に記載の屋外用シート構造物。
【0015】
] 前記接着層の幅は、10~45mmである、前記[1]または[2]に記載の屋外用シート構造物。
【0016】
] 前記補強部材は、板状の部材であり、前記補強部材のそれぞれには、前記係合部として複数の貫通孔が形成され、
前記固定用部材本体には、前記補強部材の前記係合部が形成された位置に貫通孔が形成されている、前記[1]~[]のいずれかに記載の屋外用シート構造物。
【0017】
] 前記係合部を介して外部に固定された状態で前記シート部材本体が竜巻の風圧を受けると、当該シート部材本体の全部が前記固定用部材から剥がれ、前記固定用部材は前記係合部を介して外部に固定された状態が維持される、前記[1]~[]のいずれかに記載の屋外用シート構造物。
【発明の効果】
【0018】
本発明の屋外用シート構造物は、シート部材本体と、このシート部材本体の外縁部に、接着層を介して固定された固定用部材と、を備えており、係合部を介して外部(支持物)に固定された状態で突風や強風などのような大きな風圧を受けると、シート部材本体の全部が固定用部材から剥がれて飛ばされ、固定用部材は飛ばされずに残る。そのため、突風や強風などのような大きな風圧を受けた際に、当該屋外用シート構造物が固定されている支持物ごと倒れたり支持物ごと吹き飛ばされたりすることが防止される。そして、倒れたり吹き飛ばされたりした支持物が人や物に接触することにより、人が負傷したり物が破損したりすることが防止される。従って、安全性が十分に確保される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の屋外用シート構造物の一実施形態を模式的に示す平面図である。
図2】本発明の屋外用シート構造物の一実施形態における一部を拡大して模式的に示す部分拡大図である。
図3図2に示すA-A’断面を模式的に示す断面図である。
図4図2に示すB-B’断面を模式的に示す断面図である。
図5】本発明の屋外用シート構造物の一実施形態における使用状態を模式的に示し側方から見た説明図である。
図6】本発明の屋外用シート構造物の一実施形態における使用状態を模式的に示し上方から見た説明図である。
図7】本発明の屋外用シート構造物の一実施形態の使用状態における支持物を模式的に示し上方から見た説明図である。
図8】本発明の屋外用シート構造物の他の実施形態における図4に対応する断面図である。
図9】本発明の屋外用シート構造物の更に他の実施形態における図4に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。即ち、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に属することが理解されるべきである。
【0021】
(1)屋外用シート構造物:
本発明の屋外用シート構造物は、シート部材本体と、このシート部材本体の外縁部に、接着層を介して固定された固定用部材と、を備え、固定用部材は、複数の、少なくとも一の係合部を有する補強部材と、折り畳まれて、折り畳まれた部分に挟まれるように補強部材を内包し、折り畳まれて重なり合った部分が互いに接着されたシート体からなる固定用部材本体と、を有するものである。
【0022】
この屋外用シート構造物は、上記構成を有することにより、係合部を介して外部に固定された状態でシート部材本体が突風や強風などのような大きな風圧を受けると、当該シート部材本体の全部が固定用部材から剥がれ、固定用部材は係合部を介して外部に固定された状態が維持されることになる。
【0023】
より具体的には、本発明の屋外用シート構造物は、シート部材本体と、このシート部材本体の外縁部に、接着層を介して固定された固定用部材と、を備えており、係合部を介して外部(支持物)に固定された状態で突風や強風などのような大きな風圧を受けると、シート部材本体の全部が固定用部材から剥がれて飛ばされ、固定用部材は飛ばされずに残る。そのため、当該屋外用シート構造物が固定されている支持物ごと倒れたり支持物ごと吹き飛ばされたりすることが防止される。そして、倒れたり吹き飛ばされたりした支持物が人や物に接触することにより、人が負傷したり物が破損したりすることが防止される。従って、安全性が十分に確保される。
【0024】
本発明の屋外用シート構造物は、具体的には、防護シート、テントの天幕、ビニールハウスの骨組みを展張するシートなどとして用いることができる。以下、各使用態様について具体的に説明する。
【0025】
(1-1)防護シート:
本発明の屋外用シート構造物の一の実施形態としては、図1に示す防護シート100がある。
【0026】
従来、石、砂、火山灰などの飛来物などから、屋外に設置された設備などを防護する防護シート(または「防護ネット」とも呼ばれる)が知られている。例えば、原子力発電所などでは、その設備(被保護物)を防護するために防護ネットが使用されている。なお、原子力発電所に設置されている防護ネットは、「竜巻防護ネット」と呼ばれることがある。
【0027】
そして、この防護シート(または防護ネット)は、具体的には、被保護物の周囲に設置された枠体の上方に形成された開口を覆うよう設置され、飛来物から被保護物を防護している。
【0028】
しかしながら、例えば、原子力発電所の竜巻防護ネットは、被保護物の上方に張られた金網などであり、これにより石などの飛来物が被保護物に当たることが阻止されるが、例えば火山灰や雪等は通過してしまい、被保護物の上に火山灰や雪等が堆積してしまうという問題がある。そこで、このような問題を解決するために、火山灰や雪等を受けるためのシート(防護シート)を、更に、上述した枠体の上方に形成された開口に設置することが考えられる。しかし、この防護シートは、竜巻のような非常に大きな風圧を受けた際に枠体との連結部分(固定手段(例えば金属製の構造物))が破損するおそれがある。そして、その場合、防護シートが竜巻に煽られて、被保護物や人などに被害を与えるおそれがあった。また、竜巻のような非常に大きな風圧を受けた場合に、防護シートと枠体を固定する固定手段(例えば金属製の構造物)が破損し、防護シートが固定手段を伴って竜巻に吹き飛ばされ、人や物に衝突し、その結果、人が負傷したり物が破損したりするおそれがあった。特に原子力発電所などでは、安全性が非常に重要とされるため、このような問題のない防護シートの開発が切望されていた。なお、本発明の防護シートは、原子力発電所に限らず、屋外に設置された設備などを防護する防護シートとして用いることができる。
【0029】
そこで、本発明の屋外用シート構造物を防護シートとして用いると、このような問題を解消することができる。
【0030】
防護シート100は、シート部材本体10と、このシート部材本体10の外縁部に、接着層20を介して固定された固定用部材11と、を備えている。固定用部材11は、複数の、少なくとも一の係合部15を有する補強部材13と、折り畳まれて、折り畳まれた部分に挟まれるように補強部材13を内包し、折り畳まれて重なり合った部分が互いに接着されたシート体からなる固定用部材本体17と、を有している(図2図4参照)。
【0031】
この防護シート100は、係合部15を介して外部(支持物25(図5参照))に固定された状態でシート部材本体10が竜巻のような大きな風圧を受けると、当該シート部材本体10の全部が固定用部材11から剥がれ、固定用部材11は係合部15を介して外部(支持物25(図5参照))に固定された状態が維持される(固定用部材11が破壊されずに支持物25に残る)ことになる。
【0032】
より具体的には、防護シート100は、竜巻のような大きな風圧を受けた際に、当該防護シート100が固定されている支持物25(図5参照)ごと倒れたり支持物25ごと吹き飛ばされたりすることが防止される。そして、倒れたり吹き飛ばされた支持物25が人や物に接触して人が負傷したり物が破損したりすることを、防止することができる。従って、竜巻が発生するような緊急時の使用であっても安全性が十分に確保されるものである。
【0033】
防護シート100は、例えば、屋外に設置された設備(被保護物27(図5参照))を、石、砂、火山灰などの飛来物などから防護するためのシートとして用いることができる。屋外に設置された設備としては、例えば、電気設備、気体が貯留されたタンク、薬剤などの液体が貯留されたタンク、復水器の復水タンクなどを挙げることができる。なお、原子力発電設備に用いられている復水器の復水タンクなどを防護する防護シートには、非常に高い安全性が求められる。そのため、竜巻が発生するような緊急時であっても、安全性が十分に確保されることを重要となる。
【0034】
防護シート100は、火山灰など飛来物以外に、雪や雹などから被保護物27を防護することができる。なお、雪は、被保護物に降り積もるとその重さによって被保護物27が変形などすることがあり、防護シート100で防護することも好ましい使用態様である。
【0035】
なお、突風や強風などのような大きな風圧の風には、台風や竜巻が含まれる。ここで、本明細書において「竜巻」は、風速100m/秒程度である風の流れを意味し、「竜巻の風圧」は、このような風速100m/秒程度である風の流れによって生じる圧力のことをいう。
【0036】
また、本発明の屋外用シート構造物である防護シートは、竜巻の風圧によってシート部材本体の全部が固定用部材から剥がれるが、台風による風圧では、シート部材本体が固定用部材から剥がれることはない。「台風」は、風速40~50m/秒程度である風の流れを意味する。
【0037】
なお、防護シート100のシート部材本体10は、接着層20によって固定用部材11に固定されており、硬い構造物(例えばフックなど)を有していない。
【0038】
(1-1a)シート部材本体:
シート部材本体10は、石、砂、火山灰などの飛来物、雪や雹を受け止めるための部材である。飛来物などは、このシート部材本体10に当たり被保護物27と衝突することがない。また、火山灰、雪、雹などは、シート部材本体10上に堆積することになり、被保護物に堆積物の重さが直接伝わることがない。
【0039】
シート部材本体10は、飛来物、雪、雹などから被保護物を防護することができるものである限りその材質に特に制限はないが、例えば、基布と、この基布の少なくとも一方の表面を被覆する樹脂層とを有する構造などのシート(即ち、樹脂被覆シート)を挙げることができる。また、樹脂層を有さないシート(基布のみからなるシート)であってもよい。基布としては、特に制限はなく、例えば、経糸及び緯糸などからなり複数の開口を有する織物シート、肉眼で視認できる程の開口を有さない経糸及び緯糸などからなる織物シート(即ち、開口率が非常に小さく、開口は肉眼での視認が困難である布など)、織られていない合成樹脂シートなどを適宜選択して採用することができる。
【0040】
具体的には、樹脂被覆シートとしては、基布である織物シートとこの織物シートの表面を被覆する樹脂層と、を有し、複数の貫通孔が形成されたもの(メッシュシート)などを挙げることができる。このようなメッシュシートを用いると、飛来物、雪、雹などから被保護物を防護することができるとともに、複数の開口(「メッシュ開口」と記す場合がある)が形成されているため、シート部材本体10上に積もった雪や雹が解けて水になった場合に、この開口(メッシュ開口)から排出されることになる。そのため、雪や雹が解けた後に、シート部材本体10に水の重さが掛かり続けることを防止でき、水の重さによってシート部材本体10と固定用部材11との接着層20が壊れてしまうこと(即ち、シート部材本体10が固定用部材11から剥がれること)などの不具合を防止できる。
【0041】
なお、メッシュシートの開口率は、飛来することが想定されるものの大きさなどによって適宜設定することができる。例えば、火山灰のように粒子径が細かいものを飛来物として想定している場合には、メッシュシートの開口率を小さくし、石や砂のように火山灰よりも大きな粒子径のものを飛来物として想定している場合には、メッシュシートの開口率を大きくすることができる。メッシュシートの開口率を大きくすることで、雪や雹が解けた後の水が開口から良好に排出される。
【0042】
織物シートとしては、例えば、ポリエステル、ナイロン、ビニロン、ポリプロピレンなどのポリマーからなる合成繊維、または天然繊維を縦糸及び緯糸とするメッシュ状の織物シート(複数のメッシュ開口を有するシート)などを挙げることができる。なお、織物シートとしては、上述の通り、開口(メッシュ開口)を形成しないように織られたもの(布など)も挙げることができる。
【0043】
樹脂層としては、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン、ゴム、シリコーンなどからなる樹脂からなる層を挙げることができる。
【0044】
シート部材本体10は、引張強度を、200~1200N/cmとすることができ、300~1000N/cmとすることが好ましい。このような引張強度の範囲とすることにより、飛来物、雪、雹などから被保護物を良好に防護することができる。シート部材本体10の引張強度は、JIS K 6404-2に準拠して測定することができる。
【0045】
シート部材本体10の形状は、特に制限はなく被保護物の形状によって適宜設定することができ、例えば、三角形状、四角形状(例えば、正方形状、長方形状、台形、平行四辺形、ひし形など)、円形状、楕円形状、六角形状なとどすることができる。
【0046】
シート部材本体10の大きさは、被保護物の大きさによって適宜設定することができ、例えば、上述した復水器の復水タンクを防護する場合には、四角形状のシート部材本体を用いることができ、その1辺の長さを3~10mとすることができる。
【0047】
シート部材本体10の厚さは、特に制限はないが、例えば、0.1~10mmとすることができ、0.3~5mmとすることが好ましい。シート部材本体10の厚さが下限値未満であると、飛来物、雪、雹などの衝撃や重さによって破損するおそれがある。上記厚さが上限値超であると、シート部材本体10を折り畳み難くなって嵩張るため、保管時のスペースが大きくなってしまうおそれがある。
【0048】
(1-1b)固定用部材:
固定用部材11は、シート部材本体10の外縁部に、接着層20を介して固定された部材である。即ち、固定用部材11は、シート部材本体10の外縁部に、接着剤によって接着されている。この固定用部材11は、シート部材本体10の外縁部の全部に固定されてもよいし、一部に固定されてもよい。図1は、環状の固定用部材11が、シート部材本体10の外縁部の全部に固定されている例を示している。図1では、シート部材本体10の外縁部(外周縁側にある領域)と環状の固定用部材11の内縁部(内周縁側にある領域)とが接着剤によって互いに接着されている。なお、図1では、環状の固定用部材11を示しているが、シート部材本体10の各辺に対応する4つの棒状の部材(固定用部材)を用いても良い。
【0049】
固定用部材11の幅W1(図3参照)は、特に制限はないが、固定用部材11の幅W1が狭すぎると、緩衝領域24の幅を十分に確保することができないという不具合が生じるおそれがある。固定用部材11の幅W1が広すぎると、シート部材本体10の面積が小さくなることになり、シート部材本体10が竜巻の風圧を受けたときに、シート部材本体10の全部が固定用部材11から剥がれ難くなるという不具合が生じるおそれがある。「固定用部材の幅W1」は、接着層20の延びる方向と直交する方向における固定用部材11の長さをいう。
【0050】
固定用部材11の幅W1は、具体的には、50~500mmとすることができ、100~300mmとすることが好ましい。
【0051】
固定用部材11は、複数の、少なくとも一の係合部15を有する補強部材13と、折り畳まれて、折り畳まれた部分29に挟まれるように補強部材13を内包し、折り畳まれて重なり合った部分23が互いに接着されたシート体からなる固定用部材本体17と、を有している。
【0052】
この固定用部材11は、図5図6に示すように、補強部材13の係合部15に固定具31(固定手段)が係合され、支持物25に連結される。ここで、固定具31は、シート部材本体10が竜巻のような非常に強い風圧を受けたとしても、破損することがなく、固定力(固定用部材11と支持物25とを連結する力)が維持されるものである。従って、シート部材本体10が竜巻の風圧を受けたときに、シート部材本体10の全部が固定用部材11から剥がれ、補強部材13のように硬いものを含む固定用部材11は破損せずに支持物25に残る(連結状態が維持される)ことになる。そのため、竜巻が発生するような緊急時の使用であっても安全性が十分に確保されることになる。
【0053】
固定用部材11とシート部材本体10は、接着層20を介して互いに固定されている。即ち、固定用部材11とシート部材本体10は、接着剤によって接着されているということもできる。ここで、例えば、固定用部材11とシート部材本体10の接着部分では、固定用部材11の上に接着層20があり、この接着層20の上にシート部材本体10が配置された構造とすることができる。また、固定用部材11とシート部材本体10の接着部分では、シート部材本体10の上に接着層20があり、この接着層20の上に固定用部材11が配置された構造とすることでもよい。但し、シート部材本体10を、補強部材13のように固定用部材11で挟む構造は、引張強度が強くなり過ぎて竜巻の風圧によってシート部材本体10の全部が剥がれ難くなる場合があるため好ましくない。
【0054】
そして、この接着層20は、係合部15を介して防護シート100が外部(支持物25)に固定された状態でシート部材本体10が竜巻の風圧を受けたときに、接着力の限界(引張せん断強度の上限)を超えるものである。その結果、シート部材本体10の全部は、固定用部材11から剥がれることになる。接着層の引張せん断強度は、100~800N/cmとすることができる。なお、接着層の引張せん断強度は、JIS K 6404-2に準拠して測定した値である。
【0055】
接着層20を形成する接着剤としては、特に制限されるものではなく、シート部材本体10の表面の材質(具体的には、基布(布、織物シートなど)や樹脂層の材質)によって適宜選択することができる。接着層20を形成する接着剤としては、例えば、ウレタン樹脂系接着剤、エポキシ樹脂系接着剤、シリコーン樹脂系接着剤、変性シリコーン樹脂系接着剤、エポキシ・変性シリコーン樹脂系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、酢酸ビニル樹脂系接着剤、塩化ビニル系接着剤、クロロプレンゴム系接着剤、ニトリルゴム系接着剤などの溶剤型接着剤又はエマルジョン型接着剤、ホットメルト型接着剤、シアノアクリレート系接着剤などの瞬間接着剤などを挙げることができる。
【0056】
接着層20の幅W3(図2図3参照)は、シート部材本体10が竜巻の風圧を受けたときに、当該シート部材本体10の全部が固定用部材11から剥がれる限り特に制限はないが、10~45mmとすることができ、15~40mmとすることが好ましく、20~35mmとすることがより好ましい。「接着層の幅W3」は、シート部材本体10から固定用部材11に向かう方向の長さである。なお、接着層20の厚さは、特に制限はない。
【0057】
(a)補強部材:
補強部材13は、固定用部材11の強度を補強するための部材であり、この補強部材13によって、シート部材本体10が竜巻の風圧を受けたときに、シート部材本体10はその全部が固定用部材11から剥がれるが、固定用部材11は係合状態が維持されて支持物25に残ることになる。そのため、竜巻が発生するような緊急時の使用であっても安全性が十分に確保される。ここで、シート部材本体10が竜巻の風圧を受けたときに、固定用部材11も支持物25から離れる方向の力が掛かるが、補強部材13が無い場合、固定用部材11が破損してしまう不具合がある。また、補強部材13に代えて「鳩目(環状の金具)」を使用した場合、シート部材本体10が台風の風圧を受けたときに、その荷重によって鳩目が固定用部材本体17から外れてしまう(固定用部材11が破損する)という不具合がある。なお、鳩目が固定用部材本体17から外れてしまうという不具合の対策として、鳩目の数を増やすことが考えられるが、この場合、作業工数が増えたり、コストが高くなってしまったりする等の不具合が生じる。
【0058】
補強部材13の材質は、所定の硬さを有し、また、錆び難いものであることがよい。具体的には、金属、硬質樹脂などを挙げることができる。金属としては、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼などを挙げることができ、硬質樹脂としては、例えば、メラミン系樹脂、塩化ビニル、フェノール系樹脂などを挙げることができる。防護シート100の軽量化を図るためには、アルミニウムを用いることがよく、屋外で使用されるため錆び難いという点では、ステンレス鋼を用いることがよい。
【0059】
補強部材13の形状は、板状、棒状などを挙げることができる。
【0060】
補強部材13の大きさ(長さL1(図1参照))は、シート部材本体10の一辺の長さと同じ程度とすることができる。即ち、この場合、例えば四角形状のシート部材本体10であれば、その各辺に対応して1つの補強部材13が配置され、その1つの補強部材13の長さがシート部材本体10の一辺の長さと同じ程度となる。また、補強部材13の長さは、シート部材本体10の一辺を分割して得られた長さとしてもよい。即ち、別言すれば、図1に示すように、シート部材本体10の一辺に複数の補強部材13が配置されるようにしてもよい。このようにすると、防護シート100の保管や運搬の際に折り畳むことができ、保管スペースを小さくしたり、運搬し易くすることができる。シート部材本体10の一辺に対応して複数の補強部材13が配置される場合、隣り合う補強部材13は、間隔を開けて配置されることがよい。
【0061】
補強部材13は、少なくとも一の係合部15を有する(即ち、複数の補強部材13はそれぞれが、少なくとも一の係合部15を有している)。この係合部15には、固定具31(図5図6参照)などの固定手段が係合される。即ち、防護シート100は、係合部15に係合された固定具31などの固定手段を介して支持物25に連結されて固定される。固定具31としては、例えば、カラビナ、ワイヤ、ロープ、シャックル、ボルト、針金などを挙げることができる。
【0062】
係合部15は、固定手段と係合して防護シート100を支持物に固定できる構造である限り特に制限はないが、例えば、貫通孔(係合孔)、凹部(貫通していない穴)、凸部などを挙げることができる。
【0063】
各補強部材13に形成される係合部15は、具体的には、複数個とすることができる。このように、複数の係合部15が形成されていると、シート部材本体10が竜巻の風圧を受けたときに、固定用部材11が支持物25から離れる方向の外力が掛かった場合、この外力が各係合部15を介して補強部材13全体にバランスよく伝わるため、固定用部材11が破損してしまうことが防止される。ここで、各補強部材13に一つの係合部15が形成されているだけである場合、上述した鳩目を使用した場合のように、固定用部材11が破損してしまうおそれがある。
【0064】
補強部材13は、板状の部材であることが好ましく、この補強部材13のそれぞれには、係合部15として複数の貫通孔が形成されていることが好ましい。このように係合部15として貫通孔を設けると、凹部である場合に比べて、固定具31などの固定手段を係合した際に当該固定手段が係合部15からずれることを防止できる。なお、係合部15として貫通孔が形成されている場合、固定用部材本体17には、補強部材13の係合部15が形成された位置に貫通孔33(図3参照)が形成されていることが好ましい。このようにすると、貫通孔33が形成されていない場合に比べて、固定具31などの固定手段を係合部15に係合する作業が簡単になる。
【0065】
板状の補強部材13は、その厚みについて特に制限はないが、3~50mmとすることができ、5~25mmとすることが好ましい。強度を確保しつつ屋外用シート構造物(防護シート)の厚みが厚くなり過ぎることを防止できる。また、板状の補強部材13の幅W2についても特に制限はないが、25~75mmとすることができ、30~70mmとすることが好ましく、35~65mmとすることが更に好ましい。上記幅W2が下限値未満であると、補強部材13の強度が低下してしまうおそれがある。上記幅W2が上限値超であると、屋外用シート構造物(防護シート)を保管や運搬する際に折り畳み難くなるおそれがある。また、屋外用シート構造物(防護シート)が重くなり過ぎるおそれがある。
【0066】
複数の補強部材13の、固定用部材11の幅W1(図3参照)の方向の位置は、特に制限はないが、折り畳まれたシート体の稜線R(図2参照)に沿って配置されることが好ましい。別言すれば、固定用部材本体17を構成するシート体を補強部材13に巻き付けるようにして内包することが好ましい。補強部材13が、折り畳まれたシート体の稜線から離れた位置に配置された場合、固定用部材11が支持物25から離れる方向の外力が掛かった際に、補強部材13が固定用部材11内を移動することになり、その際に固定用部材本体17が破損するおそれがある。
【0067】
更に、固定用部材11の長さ方向(固定用部材の幅方向と直交する方向)に隣り合う補強部材13は、上述の通り間隔を設けて配置されることがよい。この間隔は特に制限はない。即ち、補強部材13が板状や棒状である場合、上記隣り合う補強部材13の間隔は、補強部材13の長さと同じとしてもよいし、異なる長さとすることができる(即ち、短くしたり長くしたりすることができる)。このように隣り合う補強部材13について間隔を開けて配置すると、上述の通り、その間隔が開いた部分で防護シート100を容易に折り曲げることができるため、防護シート100を小さく畳むことができ、保管時のスペースが小さくなり、また、輸送が容易になる。
【0068】
(b)固定用部材本体:
固定用部材本体17は、折り畳まれたシート体からなる。具体的には、固定用部材本体17は、折り畳まれて、折り畳まれた部分に挟まれるように補強部材13を内包し、折り畳まれて重なり合った部分が互いに接着されたシート体からなる。この固定用部材本体17は、両端部(端部19、19)を揃えて折り畳んでも良いし(図8参照)、図3図4に示すように両端部(端部19、19)をずらして折り畳んでもよいが、本発明では、両端部(端部19、19)をずらして折り畳むものである
【0069】
シート体は、シート部材本体10と同じものを採用することができる。
【0070】
図2図4には、両端部(端部19、19)をずらして折り畳んだシート体からなる固定用部材本体17を示している。このように両端部(端部19、19)をずらして折り畳んだ場合、固定用部材本体17は、図2図4に示すように、シート体が折り畳まれて重なり合った部分23に対して反対側の端縁に接着層20が配置され、接着層20が配置された部分21と、シート体が折り畳まれて重なり合った部分23との間に緩衝領域24を有する態様とすることができる。この緩衝領域24を有することによって、保管時や輸送時などに防護シート100を折り畳んだ際に固定用部材11に皺が発生し、この皺によって接着層20が破損して固定用部材11からシート部材本体10が剥がれることを防止することができる。つまり、防護シート100を折り畳むと、固定用部材11に皺が発生することがある。そして、この皺によって接着層20の一部に接着層20を壊すような力が生じ、これによって接着層20が破損されることがあるが、緩衝領域24を有することによって、このような皺の発生を防止することができる。
【0071】
なお、両端部(端部19、19)をずらして折り畳んだ場合、図9に示すように、緩衝領域24を有しない態様としてもよい。この場合は、緩衝領域24を有しない態様である図8と比べて接着層20の部分の厚さが薄くなるため、防護シート100における接着層20の部分の柔軟性が高くなり、接着層20が破損し難くなる。
【0072】
緩衝領域24を有する場合、その幅W4(図3参照)は、25~75mmとすることができ、30~70mmとすることが好ましく、35~65mmとすることが更に好ましい。このような範囲とすることにより、防護シート100を折り畳んだ際に固定用部材11に皺が発生し難くなり、また、仮に皺が発生したとしても接着層20を破損するようなものではなくなる。「緩衝領域の幅」は、シート体が重なり合った部分から接着層に向かう方向における緩衝領域の長さをいう。
【0073】
(1-2)防護シートの使用方法:
図5図6には、本発明の屋外用シート構造物を防護シート100として使用した場合の使用方法を示す。
【0074】
使用者は、四角形状の防護シート100における固定用部材11の係合部15のそれぞれに固定具31(固定手段)を係合させ、その後、固定具31を、更に防護シート100を固定するための支持物25に設置された固定材35(例えば、図5図6のようにワイヤなど)に係合させ、防護シート100と支持物25とを連結させる。このように、被保護物27(例えば、屋外に設置された電気設備や気体が貯留されたタンク、薬剤などの液体が貯留されたタンク)の上方に配置して、飛来物などから被保護物27を保護することができる。
【0075】
具体的には、図5図6では、被保護物27の周囲に設けられた支持物25(以下、「枠体25」と記す場合がある)の上面(被保護物27の上方)に防護シート100を配置し、飛来物などから被保護物27を保護している。支持物25としては、例えば、図5図6に示すように、金属製の骨組みからなるものがある。
【0076】
枠体25は、4本の支柱37と、これらの支柱37の端部において、隣り合う支柱37を繋ぐ4本の連結柱39と、から構成されており、上方に開口(上方開口41)(図7参照)が形成されている。そして、枠体25には、上方開口41を覆うように金網43が配置されている(図7参照)。この金網43は、必要に応じて設置されるものであり、設置しなくてもよいが、金網43が設置されることによって、この金網43の更に上方に防護シート100を配置した場合、防護シート100に雪や火山灰が降り積もりその重さによって防護シート100が撓んだ際にも、金網43によって防護シート100が支持されることになる。そのため、雪や火山灰の重さによって防護シート100が破損してしまうことを防止することができる。
【0077】
なお、図5図7では、枠体25には、1つの上方開口41が示されているが、複数の上方開口41が形成されていてもよい。このように複数の上方開口41が形成されている場合、1枚の防護シート100によって全ての上方開口41を覆っても良いが、上方開口41ごとに防護シート100を配置して上方開口41を覆うようにしてもよい。
【0078】
また、図5図7では、防護シート100によって上方に形成された上方開口41を覆っているが、枠体25の側方の開口(即ち、隣り合う2つの支柱37の間の空間)の一部または全部を防護シート100によって覆うことでも良い。このようにすることで、被保護物27の側方からの飛来物などが被保護物27に衝突することを防止できる。
【0079】
図5図6に示すように支持物25に固定された状態の防護シート100は、そのシート部材本体10が竜巻の風圧を受けると、当該シート部材本体10の全部が固定用部材11から剥がれる。即ち、シート部材本体10の一部が固定用部材11から剥がれずに残ることがない。一方で、固定用部材11は、竜巻の風圧によって破壊されずに支持物25に残る。そして、シート部材本体10は、固定用部材11から剥がれて吹き飛ばされた場合、シート部材本体10には、固定用部材11との固定具などの硬いものが取り付けられていないため、シート部材本体10が人や物に接触しても、人を負傷させたり物を破損させたりするという事態が生じ難く安全である。ここで、シート部材本体10の一部が固定用部材11から剥がれずに残ると、竜巻などの大きな風に煽られたシート部材本体10が人や物に接触し、人を負傷させたり物を破損させたりするという不具合が生じるおそれがある。
【0080】
固定具31は、防護シート100とワイヤなどの固定材35とを連結し、防護シート100を固定材35(即ち、支持物25ということもできる)に固定することができる限り特に制限はないが、例えば、カラビナ、ワイヤ、ロープ、シャックル、ボルト、針金などを挙げることができる。
【0081】
固定手段としては、防護シート100と支持物25と固定することができる限り、上記固定具31以外にも採用することができ、図6に示す固定具31は支持物25や固定材35と別体であるが、支持物25や固定材35と一体に形成されたものであってもよい。
【0082】
(1-3)テント:
本発明の屋外用シート構造物の他の実施形態としては、テントの天幕がある。この天幕は、上述した防護シート100と同様の構成を有しているものである。
【0083】
この天幕を用いると、突風や強風などのような大きな風圧を受けた際に、テントごと倒れたり、天幕と共にテントが吹き飛ばされたりして、人が負傷したり物が破損したりすることを防止できる。また、天幕のみが吹き飛ばされて、この天幕に取り付けられた硬い構造物(例えばフックなど)などによって、人が負傷したり物が破損したりすることを防止できる。このように、その使用に際して安全性が十分に確保されたものである。
【0084】
より具体的には、運動会で使用されるテントは、突風や強風などによってテントが転倒したり、天幕の一部がテントの骨組みから外れない状態で天幕が竜巻などに煽られたりして、煽られた天幕が人や物に接触し、人を負傷させたり物を破損させたりするという問題が生じることがある。このような問題に対しても、本実施形態の屋外用シート構造物(即ち、天幕)は、突風や強風の風圧によってシート部材本体の全部が固定用部材から剥がれ、一方で、固定用部材は、竜巻の風圧によって破壊されずに支持物に残る。このようなことから、テントが転倒したり、天幕の一部がテントの骨組みから外れずに突風や強風に煽られたりするという危険性が少ない。そのため、本実施形態の屋外用シート構造物(即ち、天幕)は、その使用に際して安全性が十分に確保されたものである。
【0085】
次に、本発明の屋外用シート構造物をテントの天幕(テント用天幕)として使用した場合の使用方法を示す。
【0086】
使用者は、四角形状のテント用天幕における固定用部材の係合部のそれぞれに固定具を係合させ、その後、固定具をテント用天幕の支持物(具体的には骨組み)に係合させ、テント用天幕と支持物とを連結させる。このようにして、テントを形成することができ、このテントは、例えば、運動会などで使用する従来のテントと同様に利用することができる。
【0087】
なお、支持物に固定された状態のテント用天幕は、そのシート部材本体が突風や強風などの風圧を受けると、当該シート部材本体の全部が固定用部材から剥がれる。即ち、シート部材本体の一部が固定用部材から剥がれずに残るということはない。そして、シート部材本体は、固定用部材から剥がれて吹き飛ばされた場合、シート部材本体には、固定用部材との固定具などの硬いものが取り付けられていないため、シート部材本体が人や物に接触しても、人を負傷させたり物を破損させたりするという事態が生じ難く安全である。
【0088】
(1-4)ビニールハウス:
本発明の屋外用シート構造物の更に他の実施形態としては、ビニールハウスの骨組み(躯体)に展張されるシート(展張シート)がある。この展張シートは、上述した防護シート100と同様の構成を有しているものである。
【0089】
このビニールハウスの展張シートは、突風や強風などのような大きな風圧を受けた際に、ビニールハウスごと倒れたり、ビニールハウスが吹き飛ばされたりして、人が負傷したり物が破損したりすることを防止できる。また、この展張シートのみが吹き飛ばされて、この展張シートに取り付けられた硬い構造物(例えばフックなど)などによって、人が負傷したり物が破損したりすることを防止できる。このように、その使用に際して安全性が十分に確保されたものである。
【0090】
次に、本発明の屋外用シート構造物をビニールハウスの展張シート(展張シート)として使用した場合の使用方法を示す。
【0091】
使用者は、四角形状の展張シートにおける固定用部材の係合部のそれぞれに固定具を係合させ、その後、固定具を展張シートの支持物に係合させ、展張シートと支持物とを連結させる。このようにして、ビニールハウスを形成することができ、このビニールハウスは、農業用などの従来のビニールハウスと同様に利用することができる。
【0092】
ここで、支持物に固定された状態の展張シートは、そのシート部材本体が突風や強風などの風圧を受けると、当該シート部材本体の全部が固定用部材から剥がれる。即ち、シート部材本体の一部が固定用部材から剥がれずに残るということはない。そして、シート部材本体は、固定用部材から剥がれて吹き飛ばされた場合、シート部材本体には、固定用部材との固定具などの硬いものが取り付けられていないため、シート部材本体が人や物に接触しても、人を負傷させたり物を破損させたりするという事態が生じ難く安全である。
【0093】
なお、シート部材本体の一部が固定用部材から剥がれずに残ると、突風や強風などの大きな風に煽られたシート部材本体が人や物に接触し、人を負傷させたり物を破損させたりするという不具合が生じるおそれがある。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の屋外用シート構造物は、屋外に設置された様々な設備を防護する防護シート、テントの天幕、ビニールハウスの骨組みを展張するシートなどとして利用することができる。
【符号の説明】
【0095】
10:シート部材本体、11:固定用部材、13:補強部材、15:係合部、17:固定用部材本体、19:端部、20:接着層、21:接着層が配置された部分、23:シート体が折り畳まれて重なり合った部分、24:緩衝領域、25:支持物(枠体)、27:被保護物、29:折り畳まれた部分、31:固定具、33:貫通孔、35:固定材、37:支柱、39:連結柱、41:上方開口、43:金網、100:防護シート、L1:補強部材の長さ、R:稜線、W1:固定用部材の幅、W2:板状の補強部材の幅、W3:接着層の幅、W4:緩衝領域の幅。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9