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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】発電機能付きエンジンユニット
(51)【国際特許分類】
   F01P 3/12 20060101AFI20221207BHJP
   H02K 9/19 20060101ALI20221207BHJP
   F02B 67/00 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
F01P3/12
H02K9/19 A
F02B67/00 J
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019096561
(22)【出願日】2019-05-23
(65)【公開番号】P2020190235
(43)【公開日】2020-11-26
【審査請求日】2021-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】521431099
【氏名又は名称】カワサキモータース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 義基
【審査官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-218789(JP,A)
【文献】特開2014-094620(JP,A)
【文献】特開2016-001025(JP,A)
【文献】特開2004-156774(JP,A)
【文献】特開2011-178181(JP,A)
【文献】特開2007-077882(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01P 3/12
H02K 9/19
F02B 67/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、前記エンジンの回転動力により駆動されて発電するジェネレータとを備える発電機能付きエンジンユニットであって、
前記エンジンを潤滑する循環液が循環するエンジン潤滑経路と、
前記ジェネレータを冷却する循環液が循環するジェネレータ冷却経路と、
前記エンジン潤滑経路及び前記ジェネレータ冷却経路に循環液を循環させる少なくとも1つの循環ポンプと、
前記エンジン潤滑経路を流れる前記循環液を冷却するエンジン用クーラと、
前記ジェネレータ冷却経路を流れる前記循環液を冷却するジェネレータ用クーラと、を備え、
前記ジェネレータ冷却経路を流れる前記循環液の温度が前記エンジン潤滑経路を流れる前記循環液の温度よりも低く設定されるように構成されている、発電機能付きエンジンユニット。
【請求項2】
前記ジェネレータ用クーラは、空気との熱交換で冷却する空冷式である、請求項1に記載の発電機能付きエンジンユニット。
【請求項3】
前記少なくとも1つの循環ポンプは、前記エンジン潤滑経路に設けられたエンジン用循環ポンプと、前記ジェネレータ冷却経路に設けられたジェネレータ用循環ポンプとを含む、請求項1又は2に記載の発電機能付きエンジンユニット。
【請求項4】
前記ジェネレータ用循環ポンプは、前記エンジンの回転動力により駆動される、請求項3に記載の発電機能付きエンジンユニット。
【請求項5】
エンジンと、前記エンジンの回転動力により駆動されて発電するジェネレータとを備える発電機能付きエンジンユニットであって、
前記エンジンを潤滑する循環液が循環するエンジン潤滑経路と、
前記ジェネレータを冷却する循環液が循環するジェネレータ冷却経路と、
前記エンジン潤滑経路及び前記ジェネレータ冷却経路に循環液を循環させる少なくとも1つの循環ポンプと、を備え、
前記ジェネレータ冷却経路を流れる前記循環液の温度が前記エンジン潤滑経路を流れる前記循環液の温度よりも低く設定されるように構成され、
前記少なくとも1つの循環ポンプは、前記エンジン潤滑経路に設けられたエンジン用循環ポンプと、前記ジェネレータ冷却経路に設けられたジェネレータ用循環ポンプとを含み、
前記ジェネレータ用循環ポンプは、前記エンジンの回転動力により駆動され、
前記ジェネレータは、前記エンジンのクランク軸の一端部に接続されており、
前記ジェネレータ用循環ポンプは、前記クランク軸の一端部寄りに配置されている発電機能付きエンジンユニット。
【請求項6】
エンジンと、前記エンジンの回転動力により駆動されて発電するジェネレータとを備える発電機能付きエンジンユニットであって、
前記エンジンを潤滑する循環液が循環するエンジン潤滑経路と、
前記ジェネレータを冷却する循環液が循環するジェネレータ冷却経路と、
前記エンジン潤滑経路及び前記ジェネレータ冷却経路に循環液を循環させる少なくとも1つの循環ポンプと、を備え、
前記ジェネレータ冷却経路を流れる前記循環液の温度が前記エンジン潤滑経路を流れる前記循環液の温度よりも低く設定されるように構成され、
前記少なくとも1つの循環ポンプは、前記エンジン潤滑経路に設けられたエンジン用循環ポンプと、前記ジェネレータ冷却経路に設けられたジェネレータ用循環ポンプとを含み、
前記エンジン用循環ポンプと前記ジェネレータ用循環ポンプとは、共通の被駆動軸によって動作され、前記被駆動軸の同軸上に配置されている、発電機能付きエンジンユニット。
【請求項7】
前記エンジン潤滑経路と前記ジェネレータ冷却経路とは、互いに独立している、請求項3乃至6のいずれか1項に記載の発電機能付きエンジンユニット。
【請求項8】
前記循環ポンプに吸引される循環液が貯留されるタンクを更に備え、
前記タンクは、前記エンジン潤滑経路及び前記ジェネレータ冷却経路に共用されるように構成されている、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の発電機能付きエンジンユニット。
【請求項9】
エンジンと、前記エンジンの回転動力により駆動されて発電するジェネレータとを備える発電機能付きエンジンユニットであって、
前記エンジンを潤滑する循環液が循環するエンジン潤滑経路と、
前記ジェネレータを冷却する循環液が循環するジェネレータ冷却経路と、
前記エンジン潤滑経路及び前記ジェネレータ冷却経路にオイルを循環させる少なくとも1つの循環ポンプと、
前記エンジン潤滑経路を流れる前記循環液を冷却するエンジン用クーラと、
前記ジェネレータ冷却経路内の循環液を冷却するジェネレータ用クーラと、を備え、
前記ジェネレータ冷却経路における前記ジェネレータ用クーラから前記ジェネレータまでの区間は、非分岐であり、前記ジェネレータ用クーラと前記ジェネレータとを直列的に接続している、発電機能付きエンジンユニット。
【請求項10】
エンジンと、前記エンジンの回転動力により駆動されて発電するジェネレータとを備える発電機能付きエンジンユニットであって、
前記エンジンを潤滑する循環液が循環するエンジン潤滑経路と、
前記ジェネレータを冷却する循環液が循環するジェネレータ冷却経路と、
前記エンジン潤滑経路及び前記ジェネレータ冷却経路に循環液を循環させる少なくとも1つの循環ポンプと、
前記エンジンに吸気を供給する吸気通路と、
前記ジェネレータの内部空間を前記吸気通路に連通させる連通路と、を備え、
前記ジェネレータ冷却経路を流れる前記循環液の温度が前記エンジン潤滑経路を流れる前記循環液の温度よりも低く設定されるように構成されている、発電機能付きエンジンユニット。
【請求項11】
走行動力源として電動モータを備える車両に搭載される発電機能付きエンジンユニットであって、
前記ジェネレータは、前記電動モータに供給する電力を発生する、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の発電機能付きエンジンユニット。
【請求項12】
前記ジェネレータ冷却経路は、前記エンジン潤滑経路のうち前記エンジン用クーラと前記エンジンとの間の部分から分岐しており、
前記エンジン用クーラから流出したオイルの流れが、前記エンジンに向かう流れと、前記ジェネレータ用クーラに向かう流れとに分れるように構成されている、請求項に記載の発電機能付きエンジンユニット。
【請求項13】
エンジンと、前記エンジンの回転動力により駆動されて発電するジェネレータとを備える発電機能付きエンジンユニットであって、
前記エンジンを潤滑する循環液が循環するエンジン潤滑経路と、
前記ジェネレータを冷却する循環液が循環するジェネレータ冷却経路と、
前記エンジン潤滑経路及び前記ジェネレータ冷却経路に循環液を循環させる少なくとも1つの循環ポンプと、を備え、
前記ジェネレータ冷却経路を流れる前記循環液の温度が前記エンジン潤滑経路を流れる前記循環液の温度よりも低く設定されるように構成され、
前記少なくとも1つのクーラは、熱交換用のファンを備え、
前記ファンの回転軸線は、前記エンジンのクランク軸と前記循環ポンプの被駆動軸と平行に配置されている、発電機能付きエンジンユニット。
【請求項14】
エンジンと、前記エンジンの回転動力により駆動されて発電するジェネレータとを備える発電機能付きエンジンユニットであって、
前記エンジンを潤滑する循環液が循環するエンジン潤滑経路と、
前記ジェネレータを冷却する循環液が循環するジェネレータ冷却経路と、
前記エンジン潤滑経路及び前記ジェネレータ冷却経路に循環液を循環させる少なくとも1つの循環ポンプと、
液圧アクチュエータの液圧源として前記潤滑液を圧縮するポンプと、を備え、
前記ジェネレータ冷却経路を流れる前記循環液の温度が前記エンジン潤滑経路を流れる前記循環液の温度よりも低く設定されるように構成されている、発電機能付きエンジンユニット。
【請求項15】
前記エンジン用クーラ及び前記ジェネレータ用クーラは、前記エンジンに固定されている、請求項に記載の発電機能付きエンジンユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンと、前記エンジンの回転動力により駆動されて発電するジェネレータとを備える発電機能付きエンジンユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エンジンに接続されたジェネレータをエンジン潤滑用オイルで冷却する構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-077882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、エンジン潤滑オイルは、エンジン発熱部分から熱を奪うことで温度が比較的高く、ジェネレータへの冷却効果が低い場合がある。たとえばジェネレータの発電能力を高めた場合には、発電時におけるジェネレータの温度上昇が大きくなり、発電効率が低下してしまう。
【0005】
そこで本発明は、エンジンに接続されたジェネレータの発電効率を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る発電機能付きエンジンユニットは、エンジンと、前記エンジンの回転動力により駆動されて発電するジェネレータとを備える発電機能付きエンジンユニットであって、前記エンジンを潤滑する循環液が循環するエンジン潤滑経路と、前記ジェネレータを冷却する循環液が循環するジェネレータ冷却経路と、前記エンジン潤滑経路及び前記ジェネレータ冷却経路にオイルを循環させる少なくとも1つの循環ポンプと、を備え、前記ジェネレータ冷却経路を流れる前記循環液の温度が前記エンジン潤滑経路を流れる前記循環液の温度よりも低く設定されるように構成されている。
【0007】
前記構成によれば、エンジン潤滑経路を流れる循環液に比べて温度の低い循環液をジェネレータ冷却経路に流すことによって、ジェネレータの発電効率を高めることができる。
【0008】
一例として、前記エンジン潤滑経路内の循環液を冷却するエンジン用クーラと、前記ジェネレータ冷却経路内の循環液を冷却するジェネレータ用クーラと、を更に備える構成としてもよい。
【0009】
前記構成によれば、エンジン用クーラとは別にジェネレータ用クーラが設けられることで、ジェネレータに向かう潤滑液の温度上昇を抑えることができ、ジェネレータを好適に冷却できる。よって、ジェネレータの発電効率を高めることができる。
【0010】
一例として、前記少なくとも1つの循環ポンプは、前記エンジン潤滑経路に設けられたエンジン用循環ポンプと、前記ジェネレータ冷却経路に設けられたジェネレータ用循環ポンプとを含む構成としてもよい。
【0011】
前記構成によれば、第1オイルポンプと第2オイルポンプとを個別に適切な出力に設定でき、エンジン潤滑とジェネレータ冷却との夫々においてオイルの流量や圧力の設定自由度を向上できる。
【0012】
一例として、前記ジェネレータ用循環ポンプは、前記エンジンの回転動力により駆動される構成としてもよい。
【0013】
前記構成によれば、オイルポンプを電動式にする場合に比べ、部品点数を低減できる。
【0014】
一例として、前記ジェネレータは、前記エンジンのクランク軸の一端部に接続されており、前記ジェネレータ用循環ポンプは、前記クランク軸の一端部寄りに配置されている構成としてもよい。
【0015】
前記構成によれば、ジェネレータと同じ側にジェネレータ用循環ポンプを配置することで、ジェネレータとジェネレータ用循環ポンプとの間の経路を短くできる。
【0016】
一例として、前記エンジン用循環ポンプと前記ジェネレータ用循環ポンプとは、共通の被駆動軸によって動作され、前記被駆動軸の同軸上に配置されている構成としてもよい。
【0017】
前記構成によれば、ユニット全体をコンパクトにできる。
【0018】
一例として、前記エンジン潤滑経路と前記ジェネレータ冷却経路とは、互いに独立している構成としてもよい。
【0019】
前記構成によれば、エンジンを潤滑するためのエンジン用循環液と、ジェネレータを冷却するためのジェネレータ用循環液とを異ならせることができる。これによってエンジン用循環液の温度にかかわらずジェネレータを効果的に冷却して、ジェネレータの発電効率を更に高めることができる。
【0020】
一例として、前記循環ポンプに吸引される循環液が貯留されるタンクを更に備え、前記タンクは、前記エンジン潤滑経路及び前記ジェネレータ冷却経路に共用されるように構成されている構成としてもよい。
【0021】
前記構成によれば、ユニットの構造を簡素化できる。
【0022】
本発明の別態様に係る発電機能付きエンジンユニットは、エンジンと、前記エンジンの回転動力により駆動されて発電するジェネレータとを備える発電機能付きエンジンユニットであって、前記エンジンを潤滑する循環液が循環するエンジン潤滑経路と、前記ジェネレータを冷却する循環液が循環するジェネレータ冷却経路と、前記エンジン潤滑経路及び前記ジェネレータ冷却経路にオイルを循環させる少なくとも1つの循環ポンプと、前記ジェネレータ冷却経路内の循環液を冷却するジェネレータ用クーラと、を備え、前記ジェネレータ冷却経路における前記ジェネレータ用クーラから前記ジェネレータまでの区間は、非分岐であり、前記ジェネレータ用クーラと前記ジェネレータとを直列的に接続している。
【0023】
前記構成によれば、ジェネレータ用クーラからジェネレータに向かう循環液は、経路内で分岐することなくジェネレータへ導かれる。これによってジェネレータ用クーラからジェネレータに向かう循環液がエンジン熱を奪うことが防がれ、エンジン潤滑経路を流れる循環液よりも温度の低い状態でジェネレータに導くことができる。このようにジェネレータ用クーラは、ジェネレータ冷却専用クーラとして機能することで、ジェネレータに向かう循環液の温度上昇を抑えることができ、ジェネレータを好適に冷却できる。よって、ジェネレータの発電効率を高めることができる。
【0024】
一例として、前記エンジンに吸気を供給する吸気通路と、前記ジェネレータの内部空間を前記吸気通路に連通させる連通路と、を更に備える構成としてもよい。
【0025】
前記構成によれば、ジェネレータの温度上昇に伴うジェネレータの内部空間の圧力上昇を抑止できる。
【0026】
走行動力源として電動モータを備える車両に搭載される発電機能付きエンジンユニットであって、前記ジェネレータは、前記電動モータに供給する電力を発生する構成としてもよい。
【0027】
前記構成によれば、発電効率の向上により車両の航続距離や出力を向上できる。
【0028】
一例として、少なくとも1つのクーラは、熱交換用のファンを備える構成としてもよい。
【0029】
前記ファンの回転軸線は、前記エンジンのクランク軸と前記循環ポンプの被駆動軸と平行に配置されている構成としてもよい。
【0030】
前記構成によれば、ファンの駆動機構を簡素に設けることができる。
【0031】
前記構成によれば、ファンによって熱交換の促進を図ることができ、ジェネレータ冷却経路を通過する循環液の温度低下を図りやすくすることができる。
【0032】
一例として、液圧アクチュエータの圧源として前記潤滑液を圧縮するポンプを更に備える構成としてもよい。
【0033】
前記構成によれば、潤滑液を圧源として液圧アクチュエータを駆動させることができ、動力取出し形態を多様化することができる。
【0034】
前記エンジン用クーラ及び前記ジェネレータ用クーラは、前記エンジンに固定されている構成としてもよい。
【0035】
前記構成によれば、エンジン用クーラだけでなくジェネレータ用クーラもエンジンに固定されるので、全体としてコンパクト化を図ることができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、エンジンに接続されたジェネレータの発電効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】実施形態に係る自動二輪車の主系統のブロック図である。
図2図1に示す発電機能付きエンジンユニットの後方から見た模式図である。
図3図2に示す発電機能付きエンジンユニットの側方から見た模式図である。
図4図2及び3に示す発電機能付きエンジンユニットの潤滑及び冷却の経路図である。
図5】第1変形例の図4相当の図面である。
図6】第2変形例の図4相当の図面である。
図7】第3変形例の図4相当の図面である。
図8】第4変形例の図4相当の図面である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
【0039】
図1は、実施形態に係る自動二輪車1の主系統のブロック図である。自動二輪車1は、発電機能付きエンジンユニット10を備える。発電機能付きエンジンユニット10は、エンジンEと、エンジンEの回転動力により駆動されて発電するジェネレータGとを備える。エンジンEは、内燃機関を備える原動機であって燃料の爆発によるエネルギーを動力として取り出して回転駆動力を出力する。エンジンEは、レシプロエンジンに限られず、ロータリーエンジン等でもよい。図1では、エンジンの気筒が1つのみ図示されているが、気筒数は1つに限らず複数でもよい。ジェネレータGは、例えばISG(インテグレーテッド・スタータ・ジェネレータ)であるが、ジェネレータモータであってもよい。
【0040】
ジェネレータGで発電された交流の電力は、蓄電用インバータ2で直流に変換されてバッテリ3に蓄電される。バッテリ3に蓄電された電力は、駆動用インバータ4,5で交流に変換され、走行駆動源である電動モータM1,M2を動作させる。即ち、ジェネレータGは、電動モータM1,M2に供給する電力を発生する。電動モータM1の回転動力は前輪6を駆動し、電動モータM2の回転動力は後輪7を駆動する。なお、電動モータM1,M2がそれぞれ左輪及び右輪を駆動する構成としてもよい。
【0041】
エンジンEの回転数は、バッテリ3の残量やドライバーのアクセル操作量に基づいて制御される。なお、図1では、車輪と同数の電動モータを設ける構成を示したが、単なる例示に過ぎず、共通の電動モータで複数の車輪を駆動してもよい。また、従動輪及び駆動輪を含む複数の車輪のうち駆動輪を電動モータで駆動してもよい。自動二輪車の場合には、前輪を従動輪とし、後輪のみを駆動輪として電動モータで駆動してもよい。発電機能付きエンジンユニット10は、自動二輪車1への適用に限られず、四輪車等の他の車両に適用されてもよい。また、バッテリ3はキャパシタでもよい。
【0042】
図2は、図1に示す発電機能付きエンジンユニット10の後方から見た模式図である。図3は、図2に示す発電機能付きエンジンユニット10の側方から見た模式図である。図2及び3に示すように、本実施形態では、エンジンEは、ピストン14が収容される気筒11と、ピストン14に連結されたクランク軸12と、クランク軸12が収容されるクランクケース13とを備える。クランクケース13の内部空間をクランク室Sと称する。本実施形態では、クランク軸12の一端部(例えば、左端部)には、ジェネレータGが接続されている。ジェネレータGは、クランクケース13に収容されている。ジェネレータGは、ロータ21、ステータ22及びカバー23を備える。なお、カバー23は、ステータ22の一部としてもよい。
【0043】
ロータ21は、クランク軸12と共回転するようにクランク軸12に接続されている。ステータ22は、クランクケース13に支持され、周方向に並んだ複数のコイル22aを有する。カバー23は、クランクケース13に取り付けられ、ロータ21及びステータ22を外部に露出させないように覆う。カバー23は、バッファ室23a及び複数の噴射口23bを有する。バッファ室23aは、後述のジェネレータ用クーラC2から供給されるオイル(循環液)が一時貯留される。複数の噴射口23bは、コイル22aに対向しており、バッファ室23aのオイルをコイル22aに向けて噴射するように周方向に並んで設けられている。これにより、ジェネレータGのコイル22aを均一に冷却可能となる。
【0044】
クランク軸12には、動力伝達機構16(例えば、ギヤ、ベルト、チェーン等)を介して被駆動軸15が接続されている。即ち、クランク軸12の回転に機械的に連動して被駆動軸15が回転する。被駆動軸15は、クランク軸12と平行に配置されている。クランク軸12から被駆動軸15へ動力伝達する動力伝達機構16は、本実施形態では、クランク軸12の他端部(例えば、右端部)に設けられる。言い換えると、動力伝達機構16は、ジェネレータGと反対側のクランク軸12の端部に配置される。
【0045】
なお、クランク軸12には、クランク軸12と平行に配置されたバランサ軸(図示せず)が動力伝達可能に接続されている。バランサ軸に設けられるウエイトがバランサ軸とともに回転することで、エンジン振動を低減させる。バランサ軸は、側面視において被駆動軸15とは異なる位置に配置される。本実施形態では、被駆動軸15は、クランク軸12に対して下方となる位置に配置される。これにより、自重によって下方に溜まったオイルを被駆動軸15で駆動されるポンプにより吸い込みやすくすることができる。また、バランサ軸は、クランク軸12に対して被駆動軸15とは反対側に配置され、より具体的にはクランク軸12の前方に配置される。
【0046】
被駆動軸15には、スカベンジングポンプP0、エンジン用循環ポンプP1、ジェネレータ用循環ポンプP2及びウォータポンプP3が設けられている。これらのポンプP0~P3は、共通の被駆動軸15が回転することで駆動される。即ち、各ポンプP0~P3は、エンジンEの回転動力により駆動される。本実施形態では、各ポンプP0~P3は、被駆動軸15に対して同軸に形成される。各ポンプP0~P3は、エンジンEの回転数の変化に伴って、ポンプP0~P3の回転数も変化する。なお、被駆動軸15は、エンジン用のポンプP0,P1,P3とジェネレータ用のポンプP2とで共通としたが、それぞれ個別に設けられてもよい。また、各ポンプP0~P3は、同軸上に配置されていなくてもよい。
【0047】
エンジン用となるポンプP0,P1は、クランク軸12から被駆動軸15に動力を伝達する動力伝達機構16寄りに配置される。これに対して、ジェネレータ用循環ポンプP2は、動力伝達機構16から離れた側の端部に設けられる。このようにして、クランク軸12に平行に配置される被駆動軸15を介してジェネレータG付近に設けられるジェネレータ用循環ポンプP2に動力が伝達されることで、クランク軸12から動力を取り出すための部品を減らすことができ、構造を簡単化することができる。なお、被駆動軸15の回転動力を駆動輪へ伝達させて、エンジン動力を走行駆動力としても用いてもよい。また、ジェネレータ用循環ポンプP2は、電動ポンプとしてもよい。
【0048】
スカベンジングポンプP0及びエンジン用循環ポンプP1は、エンジン潤滑経路31のオイル循環に用いられる。ジェネレータ用循環ポンプP2は、ジェネレータ冷却経路32のオイル循環に用いられる。ウォータポンプP3は、エンジンEの水冷ジャケット(図示せず)への冷却水の供給に用いられる。ジェネレータ用循環ポンプP2は、クランク軸12の一端部寄りに配置されている。即ち、ジェネレータ用循環ポンプP2は、被駆動軸15のうちジェネレータGに近い側の端部に設けられている。ジェネレータGと同じ側にジェネレータ用循環ポンプP2が配置されることで、ジェネレータGとジェネレータ用循環ポンプP2との間の経路が短くなり、レイアウトが効率的になる。
【0049】
図4は、図2及び3に示す発電機能付きエンジンユニット10の潤滑及び冷却の経路図である。図2乃至4に示すように、発電機能付きエンジンユニット10には、エンジンEを潤滑するオイルが循環するエンジン潤滑経路31と、ジェネレータGを冷却するオイルが循環するジェネレータ冷却経路32とが設けられている。
【0050】
図4に示す例では、ジェネレータ用とエンジン用とで異なる潤滑経路31,32が設けられる。即ち、ポンプ、タンク、クーラがそれぞれジェネレータ用とエンジン用とで互いに独立して設けられる。エンジン潤滑経路31には、エンジン用循環ポンプP1、エンジン用タンクT1、及び、エンジン用クーラC1が介在する。ジェネレータ潤滑経路には、ジェネレータ用循環ポンプP2、ジェネレータ用タンクT2、及び、ジェネレータ用クーラC2が介在する。なお、エンジン用クーラC1及びジェネレータ用クーラC2は、エンジンEに固定されている。
【0051】
エンジン潤滑経路31には、スカベンジングポンプP0、エンジン用タンクT1、エンジン用循環ポンプP1、フィルタF1、レギュレータR1及びエンジン用クーラC1が設けられている。エンジン用タンクT1は、クランクケース13に水平方向に隣接して配置されている。例えば、エンジン用タンクT1は、クランクケース13の背面側に設けられている。これにより、クランクケース13の下側にタンクを配置しなくて済み、発電機能付きエンジンユニット10が鉛直方向にコンパクト化される。このように、スカベンジングポンプP0が設けられることで、タンクT1のレイアウトの設計の自由度を高めることができる。
【0052】
クランクケース13内のクランク室Sに溜まったオイルは、スカベンジングポンプP0によって吸引され、エンジン用タンクT1に導かれる。なお、エンジン用タンクT1をクランク室Sの下方に配置してクランク室Sのオイルが自重でエンジン用タンクT1に集まる構成とした場合には、スカベンジングポンプP0は廃止してもよい。これによって、ポンプの数を減らすことができ、部品点数を削減することができる。
【0053】
エンジン用タンクT1に溜まったオイルは、エンジン用循環ポンプP1によって吸引されてフィルタF1に導かれる。フィルタF1の上流側での循環経路内の液圧が所定値を超えた場合には、レギュレータR1を介してエンジン用タンク1に戻される。言い換えると、エンジン用循環ポンプP1とフィルタF1との間のオイルのうちフィルタF1を通過しないオイルは、レギュレータR1を介してエンジン用タンクT1に戻される。フィルタF1を通過して浄化されたオイルは、エンジン用クーラC1に導かれる。
【0054】
エンジン用クーラC1は、エンジン冷却用の冷却水と熱交換してオイルを冷却する構成であるが、その他の構成でもよい。エンジン用クーラC1で冷却されたオイルは、エンジンEの冷却対象部位(例えば、ピストン、シリンダヘッド等)又は潤滑対象部位(例えば、ギヤ、軸受等)に供給され、自重によって落下してクランク室Sに溜まる。また、エンジン潤滑経路31と同様に、ジェネレータ用クーラC2の上流側での循環経路内の液圧が所定値を超えた場合に、ジェネレータ用タンクT2にオイルを戻すためのジェネレータ用レギュレータを設けてもよい。
【0055】
ジェネレータ冷却経路32には、ジェネレータ用タンクT2、ジェネレータ用循環ポンプP2及びジェネレータ用クーラC2が設けられている。ジェネレータ用タンクT2は、エンジン用タンクT1に水平方向に隣接して配置されている。例えば、ジェネレータ用タンクT2は、被駆動軸15の軸線方向においてエンジン用タンクT1に隣接している。ジェネレータ用タンクT2は、エンジン用タンクT1に対して、ジェネレータG及びジェネレータ用循環ポンプP2に近い側に配置されている。ジェネレータ用タンクT2は、ジェネレータGのコイル22aを潤滑してジェネレータGから自由落下するオイルを受け止めて貯留する。
【0056】
ジェネレータ用循環ポンプP2は、タンクT2に溜まったオイルを吸引し、ジェネレータ用クーラC2に導く。ジェネレータ用クーラC2は、冷却水との熱交換で冷却する構成でもよいし空冷する構成でもよい。ジェネレータ用クーラC2は、冷却性能向上のために、強制空冷用のファンが設けられてもよい。そのファンの回転軸線は、クランク軸12と被駆動軸15と平行に配置されていてもよく、その場合にはクランク軸12の回転動力がファンに伝達される構成としてもよい。
【0057】
ジェネレータ用クーラC2で冷却されたオイルは、ジェネレータGに導かれる。具体的には、ジェネレータ用クーラC2で冷却されたオイルは、ジェネレータGのカバー23のバッファ室23aに導かれ、複数の噴射口23bからそれぞれ各コイル22aに向けて噴射されることで、コイル22aが冷却される。
【0058】
このように、エンジン用クーラC1とは別に、ジェネレータGの冷却専用のジェネレータ用クーラC2が設けられているので、ジェネレータGに向かうオイルの温度上昇が抑えられ、ジェネレータGを好適に冷却できる。よって、ジェネレータGの発電効率を高めることができる。また、エンジン潤滑経路31及びジェネレータ冷却経路32は、ジェネレータ用クーラC2からジェネレータGに向かうオイルの温度がエンジン用クーラC1からエンジンEに向かうオイルの温度よりも低くなるようにジェネレータ用クーラC2がオイルを冷却するように構成されている。
【0059】
具体的には、エンジン潤滑経路31とジェネレータ冷却経路32とは、互いに独立している。これにより、エンジンEを潤滑するためのオイルと、ジェネレータGを冷却するためのオイルとが互いに共有されず、ジェネレータ冷却経路32のオイルがエンジンEの熱で昇温することが抑止される。そのため、エンジン潤滑用のオイルの温度にかかわらずジェネレータGを効果的に冷却でき、ジェネレータGの発電効率が向上する。
【0060】
また、ジェネレータ用クーラC2が独立して設けられるので、エンジンEに要求される冷却性能と、ジェネレータGに要求される冷却性能とをそれぞれ個別に満たすようにクーラC1,C2を設けることができる。よって、エンジンE及びジェネレータGを効果的に冷却することができる。例えば、使用されるオイルクーラの性能をエンジン用とジェネレータ用とで異ならせてもよい。例えば、ジェネレータGの発電効率向上のために、ジェネレータ用の冷却性能をエンジン用の冷却性能に比べて高めるよう設定してもよい。
【0061】
同様に、ジェネレータ用ポンプP2が独立して設けられるので、エンジンEに要求される冷却性能と、ジェネレータGに要求される冷却性能とをそれぞれ個別に満たすようにオイルクーラP1,P2を設けることができる。よって、エンジンE及びジェネレータGを効果的に冷却することができる。例えば、ジェネレータ用ポンプP2の性能(又は駆動回転数)を、エンジン用ポンプP1の性能(又は駆動回転数)と異ならせてもよい。例えば、エンジンEの方がオイルを作用させる対象部位が多いことから、ジェネレータ用ポンプP2の吐出量・吐出圧の性能をエンジン用ポンプP1に比べて低くなるよう設定して、ポンプの駆動力を抑制して効率を向上させてもよい。
【0062】
また本実施形態では、ジェネレータ用ポンプP2は、エンジン回転数の増加に伴って回転数が増加する。このために、エンジン回転数の増加に応じてジェネレータGの発電量が増加して昇温しても、冷却性能を維持させやすい。また本実施形態では、ジェネレータ冷却経路32は、エンジンEのクランク軸12の端部付近に配置され、エンジンEの燃焼室から比較的離れた位置に配置される。これによってジェネレータGに供給されるオイルの温度上昇を更に抑えることができる。
【0063】
エンジン用タンクT1には、気体連通路43(クランク室S)を介してブリーザ室Bが接続されている。ブリーザ室Bは、気体連通路41を介してエンジンEに供給する吸気を貯留する吸気ボックス40(吸気通路)に接続されている。即ち、ブリーザ室Bは、エンジン用タンクT1内で高くなった圧力を解放すべく、タンクT1内の空気をブローバイガスと共に吸気ボックス40に送る。ブリーザ室Bによって気液分離が促進されることで、ブローバイガスに含まれる液体成分が除去されて、気体成分が吸気ボックスに導かれる。気体連通路43と、気体連通路41とは、互いに独立して形成される。それら気体連通路41,43がそれぞれ独立して形成されることで、クランク室S内の気体がジェネレータGの内部へ逆流することを防ぐことができる。また、クランク室Sから熱気がジェネレータGに達することを防ぐために、クランク室SとジェネレータGとは、気体の流通を防ぐための仕切りが形成されてもよい。
【0064】
ジェネレータGは、気体連通路42を介して吸気ボックス40に接続されている。気体連通路42は、ジェネレータGの内部空間を吸気ボックス40の内部空間に連通させる。これにより、ジェネレータGの内部圧力が吸気ボックス40に向けて解放される。よって、ジェネレータGの温度上昇に伴ってジェネレータGの内部空間の圧力が上昇することを抑止できる。ジェネレータGと吸気ボックス40とを接続する気体連通路42についても、気液分離するためのブリーザ室が設けられてもよい。これによってジェネレータGの内部のオイルが吸気に含まれることを抑えることができる。なお、気体連通路41と気体連通路43とは、互いに独立しているが、一部を共通化してもよい。
【0065】
また、ジェネレータGの内部空間をブリーザ室Bに連通して気体連通路41を共用してもよい。例えば、ジェネレータGの内部とクランクケース13の内部との間に気体連通路が形成されてもよい。これによって、ジェネレータGの内部空間で膨張した熱気が、前記気体連通路を介してクランクケース13に導かれることで、ジェネレータGの内部の圧力上昇を防ぐことができる。この場合、ジェネレータGの内部で膨張した熱気は、クランク室Sに充満するブローバイガスとともに、ブリーザ室Bを介して吸気ボックス40に導かれる。例えば、前記気体連通路には、ジェネレータGからクランクケース13へ熱気が流れるよう逆止弁が設けられてもよい。
【0066】
図5は、第1変形例の図4相当の図面である。なお、図5中において、前記実施形態と共通する構成については同一符号を付して説明を省略する。図5に示すように、第1変形例の発電機能付きエンジンユニット110では、エンジン・ジェネレータ用タンクT1が、エンジン潤滑経路31とジェネレータ冷却経路132とに共用されるように構成されている。これにより、発電機能付きエンジンユニット110の構造が簡素化される。ジェネレータ冷却経路132では、ジェネレータ用循環ポンプP2は、エンジン・ジェネレータ用タンクT1に溜まったオイルを吸引し、ジェネレータ用クーラC2に導く。ジェネレータ用クーラC2で冷却されたオイルは、ジェネレータGに導かれる。ジェネレータGを冷却したオイルは、エンジン・ジェネレータ用タンクT1に導かれる。このようにタンクT1を共通化することで、タンク室形状の簡単化を図るとともに、循環用のオイルの総量を抑えることができ、軽量化を図り易い。
【0067】
エンジン・ジェネレータ用タンクT1には、エンジンEを潤滑したオイルが戻るため、エンジン・ジェネレータ用タンクT1のオイルは高温になり得るが、そのエンジン・ジェネレータ用タンクT1からジェネレータGに導かれるオイルは、ジェネレータ用クーラC2で冷却されるので、ジェネレータGは適切に冷却される。ジェネレータ用クーラC2の冷却性能は、ジェネレータ用クーラC2からジェネレータGに向かうオイルの温度がエンジン用クーラC1からエンジンEに向かうオイルの温度よりも低くなるように設定されていると好ましい。
【0068】
図5では、エンジン・ジェネレータ用タンクT1からオイル吸い出す経路が2系統に構成されて、エンジン用とジェネレータ用とに分かれているが、これに限らず他の部分から分岐して流路が設定されてもよい。例えば、レギュレータR1からタンクT1に導かれるオイルを、ジェネレータポンプP2によってジェネレータ用クーラC2に供給してもよい。その他、クランク室Sに溜まったオイル、スカベンジポンプP0用で吸い出されたオイル、ジェネレータGからタンクT1に戻されるオイルの一部などのタンクT1に導かれるオイルをジェネレータ用循環ポンプP2によって、ジェネレータ用クーラC2に導いてもよい。例えば、レギュレータR1又はスカベンジポンプP0によって昇圧されたオイルをジェネレータ用循環ポンプP2によってジェネレータ用クーラC2に導くことで、ジェネレータ用循環ポンプP2に要求される能力を低下させることができる。
【0069】
図6は、第2変形例の図4相当の図面である。なお、図6中において、前記実施形態と共通する構成については同一符号を付して説明を省略する。図6に示すように、第2変形例の発電機能付きエンジンユニット210では、タンクT1及び循環ポンプP1が、エンジン潤滑経路31とジェネレータ冷却経路232とに共用されるように構成されている。即ち、ジェネレータ冷却経路232は、エンジン潤滑経路31の一部を共有している。これにより、発電機能付きエンジンユニット110の構造が簡素化される。ジェネレータ冷却経路232は、エンジン潤滑経路31のうちフィルタF1とエンジン用クーラC1との間の部分から分岐している。
【0070】
フィルタF1から流出したオイルの流れは、エンジン潤滑経路31のエンジン用クーラC1に向かう流れと、ジェネレータ冷却経路232のジェネレータ用クーラC2に向かう流れとに分れる。ジェネレータ用クーラC2で冷却されたオイルは、ジェネレータGに導かれる。ジェネレータGを冷却したオイルは、タンクT1に導かれる。このようにタンクT1のほかポンプP1を共通化することで、部品点数の削減を図ることができ、構造の単純化および軽量化を図り易い。
【0071】
タンクT1には、エンジンEを潤滑したオイルが戻るため、タンクT1のオイルは高温になり得るが、そのタンクT1からジェネレータGに導かれるオイルは、ジェネレータ用クーラC2で冷却されるので、ジェネレータGは適切に冷却される。ジェネレータ用クーラC2の冷却性能は、ジェネレータ用クーラC2からジェネレータGに向かうオイルの温度がエンジン用クーラC1からエンジンEに向かうオイルの温度よりも低くなるように設定されていると好ましい。
【0072】
図6では、フィルタF1の下流の流路が2系統に分岐して、エンジン用とジェネレータ用とに分かれている。これに限らず他の部分から分岐して流路が設定されてもよい。例えば、エンジン用クーラC1の下流の流路が分岐して、エンジン用とジェネレータ用に分かれてもよい。これによって、エンジン用クーラC1の通過後の冷やされたオイルをジェネレータ用クーラC2で冷却することで、ジェネレータ用クーラC2に要求される能力を低下させることができる。
【0073】
図7は、第3変形例の図4相当の図面である。なお、図7中において、前記実施形態と共通する構成については同一符号を付して説明を省略する。図7に示すように、第3変形例の発電機能付きエンジンユニット310では、タンクT1、循環ポンプP1及びフィルタF1が、エンジン潤滑経路31とジェネレータ冷却経路332とに共用されるように構成されている。そして、ジェネレータ冷却経路332は、エンジン潤滑経路31のうちエンジン用クーラC1とエンジンEとの間の部分から分岐している。エンジン用クーラC1から流出したオイルの流れは、エンジンEに向かう流れと、ジェネレータ冷却経路332のジェネレータ用クーラC2に向かう流れとに分れる。
【0074】
ジェネレータ用クーラC2で冷却されたオイルは、ジェネレータGに導かれる。即ち、ジェネレータGに供給されるオイルは、エンジン用クーラC1とジェネレータ用クーラC2との両方により直列的に冷却される。そのため、ジェネレータ用クーラC2からジェネレータGに向かうオイルの温度がエンジン用クーラC1からエンジンEに向かうオイルの温度よりも低くなる。よって、ジェネレータGには十分に冷却されたオイルが供給され、ジェネレータの発電効率を高めることができる。
【0075】
図8は、第4変形例の図4相当の図面である。なお、図8中において、前記実施形態と共通する構成については同一符号を付して説明を省略する。図8に示すように、第4変形例の発電機能付きエンジンユニット410は、油圧アクチュエータHAを備える。具体的には、エンジンEで駆動される油圧ポンプP4によりタンクT1からオイルが吸い出され、油圧ポンプP4がオイルを吐出することによりオイルコントロールバルブCVを介して油圧アクチュエータHAに圧油が付与される。油圧ポンプP4は、油圧アクチュエータHAの油圧源としてオイルを圧縮する。油圧ポンプP4とオイルコントロールバルブCVとの間の流路は、タンクT1に向かう戻り流路444に連通しており、戻り流路444にリリーフ弁RVが介設されている。戻り流路444におけるリリーフ弁RVの下流部分からは、ジェネレータ冷却経路432が分岐している。ジェネレータ冷却経路432は、ジェネレータ用クーラC2を介してジェネレータGに接続されている。
【0076】
この構成によれば、油圧源としての油圧ポンプP4から吐出されてリリーフ弁RVからリリースされたオイルが、ジェネレータ用クーラC2及びジェネレータGに流される。油圧アクチュエータHAは、圧力が必要であって流量は必要でないので、油圧ポンプP4から吐出される殆どのオイルがタンクT1に戻されるので、そのオイルを利用してジェネレータGを冷却できる。しかも、油圧用のポンプP4がジェネレータ冷却用のポンプを兼ねるので、ポンプ数の増加も防止できる。
【0077】
なお、本発明は前述した実施形態又は変形例に限定されるものではなく、その構成を変更、追加、又は削除することができる。例えば、前記実施形態では、発電機能付きエンジンユニットを自動二輪車に適用した例を提示したが、自動二輪車以外の乗物に適用してもよい。また、エンジン動力を駆動力として用いるパラレルハイブリッド車両の他に、エンジン動力を発電のみに用いるシリーズハイブリッド車両に用いてもよい。また、本発明のユニットは、乗物の駆動動力に用いられる以外に、エンジン、ジェネレータ、蓄電用インバータ、駆動用インバータ、バッテリを含み、乗物以外の電動装置への電力供給用の汎用的な発電装置として用いられてもよい。この場合、エンジンに近接した位置に、ジェネレータ、インバータおよびバッテリが配置されて、一体的なユニットとして構成される。
【0078】
例えば、発電機能付きエンジンユニットは、電力を必要とする他の装置(例えば、ロボット等)に適用されてもよい。ロボットアームなどを油圧アクチュエータによって油圧駆動させる場合には、上述したように、発電ユニットには潤滑液を圧源として利用するためのポンプを備えていてもよい。これによって、動力取り出し形態を多様化することができると共に、適切な動力でアクチュエータを駆動させることができる。
【0079】
また本実施形態では、クランク軸の一端部にジェネレータが接続されるとしたが、クランク軸の回転動力がジェネレータに伝達されれば他の構成でもよい。例えば、ギヤ、チェーンなどの動力伝達機構によってクランク軸の回転動力がジェネレータに伝達されてもよい。このように、ジェネレータがクランク軸の端部から離れた位置に配置される場合も本発明に含まれる。エンジン用クーラC1又はジェネレータ用クーラC2を設けない構成としてもよい。潤滑又は冷却に用いる循環液は、オイルに限られず他の液体でもよい。
【0080】
前述した各構成に限らずに、ジェネレータ冷却通路を流れるオイルの温度を、エンジン潤滑経路を流れるオイルの温度よりも低くなるように他の構造で達成した場合も本発明に含まれる。例えば、エンジンの潤滑対象部位や高温部位を通過する以前に流路が分岐されて、ジェネレータへオイルが導かれるように構成した場合も本発明に含まれる。たとえばポンプ直後で分岐してジェネレータに連通するオイル通路が、クランクケース外に設けられてもよい。これによってクランクケースからの熱を奪うことなく比較的温度の低いオイルをジェネレータへ導くことができる。またクランクケースまたはシリンダの高温となる部位を避けて、ポンプからジェネレータへ連通するオイル通路が形成されてもよい。
【符号の説明】
【0081】
1 自動二輪車(車両)
10,110,210,310,410 発電機能付きエンジンユニット
12 クランク軸
15 被駆動軸
31 エンジン潤滑経路
32,132,232,332,432 ジェネレータ冷却経路
40 吸気ボックス(吸気通路)
42 連通路
C1 エンジン用クーラ
C2 ジェネレータ用クーラ
E エンジン
G ジェネレータ
M1,M2 電動モータ
P1 エンジン用循環ポンプ
P2 ジェネレータ用循環ポンプ
P4 油圧ポンプ
T1,T2 タンク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8