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特許7189841止水板接続補助具、及び、止水板接続方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】止水板接続補助具、及び、止水板接続方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/68 20060101AFI20221207BHJP
   E02B 7/00 20060101ALI20221207BHJP
   E02D 29/02 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
E04B1/68 A
E02B7/00 Z
E02D29/02 310
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019101379
(22)【出願日】2019-05-30
(65)【公開番号】P2020193536
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】菅井 貴洋
(72)【発明者】
【氏名】福井 直之
(72)【発明者】
【氏名】山村 法男
(72)【発明者】
【氏名】中村 元郎
(72)【発明者】
【氏名】渡部 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】和田 篤
(72)【発明者】
【氏名】尾口 佳丈
(72)【発明者】
【氏名】室野井 敏之
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】実公昭48-9676(JP,Y1)
【文献】特開平4-85431(JP,A)
【文献】特開平2-101243(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/68
E02B 7/00
E02D 29/02
B29C 63/00-65/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に延びる第1の止水板の接続予定位置に、前記第1の方向と交差する方向である第2の方向に延びる第2の止水板の端部を接続する際に用いられる止水板接続補助具であって、
前記第1の止水板に取り付けられる第1の接続補助ユニットと、
前記第2の止水板に取り付けられる第2の接続補助ユニットと、
前記第1の接続補助ユニットと前記第2の接続補助ユニットとに跨るように設けられて、前記第2の接続補助ユニットを前記第1の接続補助ユニット側に引き寄せる引き寄せ機構と、
を備える、止水板接続補助具。
【請求項2】
前記引き寄せ機構による前記引き寄せによって前記第1の止水板側に引き寄せられる前記第2の止水板の端部を前記第1の止水板の接続予定位置に案内可能な案内部を更に備える、請求項1に記載の止水板接続補助具。
【請求項3】
前記第2の接続補助ユニットは前記第2の止水板によって支持され得る、請求項1又は請求項2に記載の止水板接続補助具。
【請求項4】
前記第1の方向は鉛直方向を含み、前記第2の方向は水平方向を含む、請求項1~請求項3のいずれか1つに記載の止水板接続補助具。
【請求項5】
第1の方向に延びる第1の止水板の接続予定位置に、前記第1の方向と交差する方向である第2の方向に延びる第2の止水板の端部を接続する方法であって、
前記第1の止水板の接続予定位置と前記第2の止水板の端部との間に挿入されたヒータにより、前記第1の止水板の接続予定位置と前記第2の止水板の端部とを加熱し、
該加熱された前記第1の止水板の接続予定位置と前記第2の止水板の端部との間から前記ヒータを取り除くと共に、前記第2の止水板を前記第1の止水板側に引き寄せることにより、前記第1の止水板の接続予定位置と前記第2の止水板の端部とを互いに溶着する、
止水板接続方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、止水板同士を接続する際に用いられる止水板接続補助具、及び、止水板同士を接続する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリート構造物の継目からの漏水を防ぐために、当該継目に沿って延びる帯状の止水板がコンクリート構造物に埋設され得る。この止水板は例えば合成樹脂製又はゴム製であり、可撓性を有し得る。
【0003】
止水板の端部同士を接続する技術(換言すれば、止水板を継ぎ足す技術)の例としては、例えば特許文献1に開示のものが挙げられる。特許文献1は、止水板の端部同士を溶着する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実公昭48-009676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、互いに交差する方向に延びる止水板同士の接続には、特許文献1に開示のような止水板溶着技術を用いることができなかった。
【0006】
本発明は、このような実状に鑑み、互いに交差する方向に延びる止水板同士を溶着する際に使用可能な止水板接続補助具を提供すること、及び、当該止水板同士を溶着で接続する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そのため本発明に係る止水板接続補助具は、第1の方向に延びる第1の止水板の接続予定位置に、第1の方向と交差する方向である第2の方向に延びる第2の止水板の端部を接続する際に用いられるものである。本発明に係る止水板接続補助具は、第1の止水板に取り付けられる第1の接続補助ユニットと、第2の止水板に取り付けられる第2の接続補助ユニットと、第1の接続補助ユニットと第2の接続補助ユニットとに跨るように設けられて、第2の接続補助ユニットを第1の接続補助ユニット側に引き寄せる引き寄せ機構と、を備える。
【0008】
本発明に係る止水板接続方法は、第1の方向に延びる第1の止水板の接続予定位置に、第1の方向と交差する方向である第2の方向に延びる第2の止水板の端部を接続する方法である。本発明に係る止水板接続方法は、第1の止水板の接続予定位置と第2の止水板の端部との間に挿入されたヒータにより、第1の止水板の接続予定位置と第2の止水板の端部とを加熱し、加熱された第1の止水板の接続予定位置と第2の止水板の端部との間からヒータを取り除くと共に、第2の止水板を第1の止水板側に引き寄せることにより、第1の止水板の接続予定位置と第2の止水板の端部とを互いに溶着する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る止水板接続補助具によれば、引き寄せ機構によって第2の接続補助ユニットを第1の接続補助ユニット側に引き寄せることができる。それゆえ、例えば、引き寄せ機構を用いて第2の止水板を第1の止水板側に引き寄せながら第1の止水板の接続予定位置と第2の止水板の端部とでヒータを挟み込み、このヒータで第1の止水板の接続予定位置と第2の止水板の端部とを加熱して溶融させ、この溶融の後にヒータを取り除くと共に引き寄せ機構を用いて第2の止水板を第1の止水板側に更に引き寄せることで、第1の止水板の接続予定位置と第2の止水板の端部とを互いに溶着することができる。従って、本発明に係る止水板接続補助具は、互いに交差する方向に延びる第1の止水板と第2の止水板とを溶着する際に使用可能である。
【0010】
本発明に係る止水板接続方法によれば、互いに交差する方向に延びる第1の止水板と第2の止水板とに関して、ヒータで第1の止水板の接続予定位置と第2の止水板の端部とを加熱して溶融させ、この溶融の後にヒータを取り除くと共に第2の止水板を第1の止水板側に引き寄せることで、第1の止水板の接続予定位置と第2の止水板の端部とを互いに溶着することができる。従って、本発明に係る止水板接続方法を用いることで、互いに交差する方向に延びる第1の止水板と第2の止水板とを溶着で接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態における水平止水板の設置方法を示す図
図2】同上実施形態における、引きクランプを右側に倒したときの第1の接続補助ユニットの正面図
図3】同上実施形態における、引きクランプを中立状態にしたときの第1の接続補助ユニットの正面図
図4】同上実施形態における、引きクランプを左側に倒したときの第1の接続補助ユニットの正面図
図5図2のA-A断面図
図6図2のB-B断面図
図7】同上実施形態における第2の接続補助ユニットの正面図
図8】同上実施形態における第2の接続補助ユニットの右側面図
図9】同上実施形態における止水板接続方法を示す図
図10】同上実施形態における止水板接続方法を示す図
図11】同上実施形態における止水板接続方法を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態における水平止水板2の設置方法を示す図である。
【0013】
尚、本実施形態では、本発明に係る止水板接続補助具及び止水板接続方法が適用されるコンクリート構造物の一例としてコンクリート製のダム堤体(コンクリートダムの堤体)を挙げて説明するが、当該構造物はダム堤体に限らない。
また、本実施形態では、説明の便宜上、ダム軸方向を左右方向とし、上下流方向を前後方向として、図1図11に示すように上下・前後・左右をそれぞれ規定している。
【0014】
一般に、コンクリート製のダム堤体を構築する際には、ダム軸方向と高さ方向とにおいて任意の領域ごとにコンクリートの打設作業を行っていく。当該領域のダム軸方向の区切りの単位を「ブロック」と称し、当該領域の高さ方向の区切りの単位を「リフト」と称する。ここで、図1には、1ブロック分のダム軸方向長さWと、1リフト分の高さHとが図示されている。長さWは例えば15m程度である。高さHは例えば1.0~1.5m程度である。
【0015】
ダム堤体の構築では、ダム堤体の壁面に沿ってブロック間に跨るように帯状の鉛直止水板1が設置される。鉛直止水板1は上下方向に延びる。ここで、鉛直止水板1はダム堤体の壁面に沿って延びるので、ダム堤体の壁面が前後方向に傾斜している場合には、鉛直止水板1も前後方向に傾斜し得る。
【0016】
鉛直止水板1は、例えば合成樹脂製又はゴム製であり、可撓性を有し得る。本実施形態では、鉛直止水板1は塩化ビニル製である(換言すれば、ポリ塩化ビニル止水板(JIS K 6773)である)。鉛直止水板1の設置については、例えば特開2012-202064号公報に開示の手法を採用することができる。
【0017】
ここで、鉛直止水板1が本発明の「第1の止水板」に対応し、鉛直止水板1の延在方向が本発明の「第1の方向」に対応する。鉛直止水板1の延在方向(第1の方向)は鉛直方向を含む。
【0018】
本実施形態におけるダム堤体の構築では、リフト間に跨るように帯状の水平止水板2が設置され得る。水平止水板2は左右方向に延びる。水平止水板2は、左右方向に間隔を空けて隣り合う鉛直止水板1同士に跨るように設置される。水平止水板2は、例えば合成樹脂製又はゴム製であり、可撓性を有し得る。本実施形態では、水平止水板2は塩化ビニル製である(換言すれば、ポリ塩化ビニル止水板(JIS K 6773)である)。
【0019】
ここで、水平止水板2が本発明の「第2の止水板」に対応し、水平止水板2の延在方向が本発明の「第2の方向」に対応する。水平止水板2の延在方向(第2の方向)は水平方向を含む。水平止水板2(第2の止水板)の延在方向は、鉛直止水板1の延在方向(第1の方向)と交差する方向である。
【0020】
本実施形態では、図1(ア)に示すように、水平止水板2の設置に先立って、鉛直止水板1が設置されている。ここで、図1(ア)には、リフト上面(コンクリート打設面)3が図示されており、リフト上面3上で露出している鉛直止水板1は、図示しない支持手段によって支持されて上下方向に延びている。
【0021】
水平止水板2の設置方法では、図1(イ)に示すように、まず、リフト上面3上に複数の架台4を設置する。これら架台4は、水平止水板2を懸垂支持するためのものである。次に、これら架台4によって水平止水板2を懸垂支持する。ここで、水平止水板2の長さは、左右方向で隣り合う鉛直止水板1同士の間の間隔に略一致している。また、このときに、水平止水板2の設置高さの調整が適宜実施され得る。
【0022】
次に、水平止水板2の左端部2a及び右端部2bを、各々に隣接する鉛直止水板1の接続予定位置1a,1bに接続する。本実施形態では、水平止水板2の左端部2a及び右端部2bと鉛直止水板1の接続予定位置1a,1bとが互いに溶着されることで接続される。この鉛直止水板1と水平止水板2との接続には止水板接続補助具7が用いられる。止水板接続補助具7の構成と、止水板接続補助具7を用いた止水板接続方法との詳細については、図2図11を用いて後述する。
【0023】
鉛直止水板1と水平止水板2との接続が完了すると、止水板接続補助具7及び架台4を撤去して、コンクリートを1リフト分打設する。この打設完了後には、水平止水板2の略上半分が露出し、残りはコンクリートに埋まる。この後、ある程度の期間が経過した後に、コンクリートを更に1リフト分打設する。このコンクリートの打設により、水平止水板2の略上半分がコンクリートに埋まる。
以上のようにして水平止水板2が設置され得る。
【0024】
次に、止水板接続補助具7の構成について、図2図8を用いて説明する。
図2は、引きクランプ31を右側に倒したときの第1の接続補助ユニット10の正面図である。図3は、引きクランプ31を中立状態にしたときの第1の接続補助ユニット10の正面図である。図4は、引きクランプ31を左側に倒したときの第1の接続補助ユニット10の正面図である。図5は、図2のA-A断面図である。図6は、図2のB-B断面図である。図7は、第2の接続補助ユニット20の正面図である。図8は、第2の接続補助ユニット20の右側面図である。
【0025】
止水板接続補助具7は、第1の接続補助ユニット10と、第2の接続補助ユニット20と、引き寄せ機構30と、案内部40とを備える。第1の接続補助ユニット10は鉛直止水板1に取り付けられるものである。第2の接続補助ユニット20は水平止水板2に取り付けられるものである。引き寄せ機構30は、第1の接続補助ユニット10と第2の接続補助ユニット20とに跨るように設けられて、第2の接続補助ユニット20を第1の接続補助ユニット10側に引き寄せる機能を実現し得る(後述する図9及び図10参照)。案内部40は、引き寄せ機構30による第2の接続補助ユニット20の第1の接続補助ユニット10側への引き寄せによって鉛直止水板1側に引き寄せられる水平止水板2の端部(左端部2a,右端部2b)を鉛直止水板1の接続予定位置1a,1bに案内可能なように構成されている。
【0026】
図2図6に示すように、第1の接続補助ユニット10は、左右一対の板状部材11,11と、上下一対の把持装置12,12と、引きクランプ取付板13と、ブラケット14とを備える。
【0027】
左右一対の板状部材11,11は、左右方向に互いに間隔を空けて、各々が上下方向に延びている。左右一対の板状部材11,11の各々の上端部は、上側の把持装置12の前側部材12aに固定されている。左右一対の板状部材11,11の各々の下端部は、下側の把持装置12の前側部材12aに固定されている。
【0028】
把持装置12は、鉛直止水板1を前後から挟み込むように把持することが可能なように構成されている。把持装置12は、左右方向に延びる前側部材12aと、左右方向に延びる後側部材12bと、前側部材12aの右端部に基端部が固定され、かつ、先端部にて後側部材12bの右端部を揺動自在に支持するアーム部材12cと、把持装置12の閉状態をロックするためのロック機構12dとを備える。ロック機構12dは、把持装置12が閉状態であるときに、前側部材12aの左端部と後側部材12bの左端部とを連結可能なように構成されている。ロック機構12dの操作レバー12eを操作することで、ロック機構12dにおけるロック状態とロック解除状態との切り替えを行うことができる。
【0029】
前側部材12aと後側部材12bとが互いに相対する面(内面)には、それぞれ、任意の個数の突起12fが設けられている。突起12fの個数及び配置は、使用される鉛直止水板1の断面形状によって決定され得る。ここで、鉛直止水板1は、把持装置12の前側部材12aと後側部材12bとによって前後から挟み込まれ得る。
【0030】
把持装置12については、図5及び図6に示す把持装置12の閉状態においてロック機構12dのロック状態を解除し、後側部材12bをその右端部を揺動中心として揺動させることで、把持装置12を開状態とすることができる。
【0031】
左右一対の板状部材11,11の上下方向中央部の前面にはこれらに跨るように引きクランプ取付板13が取り付けられている。引きクランプ取付板13の前面には、引き寄せ機構30を構成する引きクランプ31が揺動自在に取り付けられている。
【0032】
引きクランプ31は、その基端部が引きクランプ取付板13に揺動自在に取り付けられており、先端部にグリップ31aを有している。引きクランプ31におけるグリップ31aの近傍にはロッド取付部31bが設けられている。ロッド取付部31bには、引き寄せ機構30を構成するロッド32(図9及び図10参照)の右端部のフック(図示せず)を引っ掛けることが可能である。
【0033】
左右一対の板状部材11,11の上部の前面にはブラケット14が設けられている。ブラケット14は左右方向に延びている。ブラケット14の左右両端部の下側には、それぞれ、前後方向に延びる管状部材15が取り付けられている。ここで、ブラケット14及び/又は管状部材15は、第1の接続補助ユニット10を支持可能な物体(図示せず)に連結され得る。
【0034】
左右一対の板状部材11,11の前面であって、引きクランプ取付板13の上方及び下方には、それぞれ、案内部40を構成するガイドパイプ41が設けられている。ガイドパイプ41は左右方向に延びており、その両端が開口している。ガイドパイプ41には、案内部40を構成する棒状のガイド部材42(図7参照)が挿入され得る(図9及び図10参照)。
【0035】
図7及び図8に示すように、第2の接続補助ユニット20は把持装置21を備える。把持装置21は、水平止水板2を前後から挟み込むように把持することが可能なように構成されている。把持装置21は、上下方向に延びる前側部材21aと、上下方向に延びる後側部材21bと、前側部材21aの上端部に基端部が固定され、かつ、先端部にて後側部材21bの上端部を揺動自在に支持するアーム部材21cと、把持装置21の閉状態をロックするためのロック機構21dとを備える。ロック機構21dは、把持装置21が閉状態であるときに、前側部材21aの下端部と後側部材21bの下端部とを連結可能なように構成されている。ロック機構21dの操作レバー21eを操作することで、ロック機構21dにおけるロック状態とロック解除状態との切り替えを行うことができる。
【0036】
前側部材21aと後側部材21bとが互いに相対する面(内面)には、それぞれ、任意の個数の突起21fが設けられている。突起21fの個数及び配置は、使用される水平止水板2の断面形状によって決定され得る。ここで、水平止水板2は、把持装置21の前側部材21aと後側部材21bとによって前後から挟み込まれ得る。
【0037】
把持装置21については、図7及び図8に示す把持装置21の閉状態においてロック機構21dのロック状態を解除し、後側部材21bをその上端部を揺動中心として揺動させることで、把持装置21を開状態とすることができる。
【0038】
把持装置21の前側部材21aの上下方向中央部の前面には、引き寄せ機構30を構成するU字状の引っ掛け部33が取り付けられている。引っ掛け部33にはロッド32(図9及び図10参照)の左端部のフック(図示せず)を引っ掛けることが可能である。
【0039】
把持装置21の前側部材21aの前面であって、引っ掛け部33の上方及び下方には、それぞれ、ガイド部材42の基端部42aが固定されている。ガイド部材42は基端部42aから右方に向かって延びており、その先端部42bは先細のテーパー状をなしている。ガイド部材42については、その大部分が、把持装置21より右方に突出している。
【0040】
ここで、第2の接続補助ユニット20は、把持装置21によって水平止水板2を把持した状態で、架台4によって懸垂支持された水平止水板2によって支持され得る。
【0041】
次に、止水板接続補助具7を用いて、水平止水板2の右端部2bと鉛直止水板1の左側縁の接続予定位置1bとを接続する方法、及び、水平止水板2の左端部2aと鉛直止水板1の右側縁の接続予定位置1aとを接続する方法について、前述の図1図8に加えて図9図11を用いて説明する。図9図11は、本実施形態における止水板接続方法を示す。特に、図9及び図10は、水平止水板2の右端部2bと鉛直止水板1の左側縁の接続予定位置1bとを接続する方法を示し、図11は、水平止水板2の左端部2aと鉛直止水板1の右側縁の接続予定位置1aとを接続する方法を示す。
【0042】
本実施形態における止水板接続方法では、まず、鉛直止水板1及び水平止水板2を図1(イ)に示す状態に配置して、水平止水板2の右端部2bと鉛直止水板1の左側縁の接続予定位置1bとを左右方向に若干離した状態で、図9(ア)に示すように、第1の接続補助ユニット10を鉛直止水板1に取り付けると共に、第2の接続補助ユニット20を水平止水板2に取り付ける。このときに、第1の接続補助ユニット10のブラケット14及び/又は管状部材15が、第1の接続補助ユニット10を支持可能な物体(図示せず)に連結され得る。また、第2の接続補助ユニット20が、水平止水板2によって支持され得る。
【0043】
ここで、図9(ア)に示すように、第1の接続補助ユニット10の上側の把持装置12と下側の把持装置12との間に鉛直止水板1の左側縁の接続予定位置1bが位置するように、第1の接続補助ユニット10が鉛直止水板1に取り付けられる。また、図9(ア)に示すように、ガイド部材42の長手方向中央部に水平止水板2の右端部2bが隣接するように、第2の接続補助ユニット20が水平止水板2に取り付けられる。
【0044】
更に、上下一対のガイド部材42,42が上下一対のガイドパイプ41,41に挿入されるとき(図9(イ)~図10(エ)参照)に鉛直止水板1の左側縁の接続予定位置1bと水平止水板2の右端部2bとが同じ高さになるように、第1の接続補助ユニット10が鉛直止水板1に取り付けられると共に、第2の接続補助ユニット20が水平止水板2に取り付けられる。
【0045】
次に、図9(イ)に示すように、ロッド32の右端部のフックを引きクランプ31のロッド取付部31bに引っ掛けると共に、ロッド32の左端部のフックを引っ掛け部33に引っ掛ける。これにより、第2の接続補助ユニット20を第1の接続補助ユニット10側に引き寄せる引き寄せ機構30が、第1の接続補助ユニット10と第2の接続補助ユニット20とに跨るように設けられる。
【0046】
次に、図9(イ)及び図10(ウ)に示すように、引きクランプ31を右側に倒して第2の接続補助ユニット20を第1の接続補助ユニット10側に引き寄せつつ、上下一対のガイド部材42,42を上下一対のガイドパイプ41,41に挿入する。このときに、鉛直止水板1の左側縁の接続予定位置1bと水平止水板2の右端部2bとの間の隙間に後方からヒータ50(熱板51)を挿入して、鉛直止水板1の左側縁の接続予定位置1bと水平止水板2の右端部2bとでヒータ50(熱板51)を挟み込むようにする。
【0047】
ヒータ50は、一般に、止水板用ヒータ、止水板融着器、止水板溶着器などと称される周知のものであり、電熱線を内蔵した金属製の熱板51と、熱板に取り付けられて作業員が把持可能な取手部(図示せず)と、この電熱線に電力を供給するための電線(図示せず)とを含んで構成される。
【0048】
次に、ヒータ50(熱板51)を鉛直止水板1の左側縁の接続予定位置1bと水平止水板2の右端部2bとで挟み込んだ状態で、鉛直止水板1の左側縁の接続予定位置1bと水平止水板2の右端部2bとをヒータ50(熱板51)で加熱して溶融させる。
【0049】
この溶融の後、図10(エ)に示すように、鉛直止水板1の左側縁の接続予定位置1bと水平止水板2の右端部2bとの間からヒータ50(熱板51)を取り除くと共に、引きクランプ31を右側に更に倒して第2の接続補助ユニット20を第1の接続補助ユニット10側に更に引き寄せることで、鉛直止水板1の左側縁の接続予定位置1bと水平止水板2の右端部2bとを互いに溶着する。尚、この引き寄せ時には、案内部40(ガイドパイプ41及びガイド部材42)が、水平止水板2の右端部2bを鉛直止水板1の左側縁の接続予定位置1bに案内する。
【0050】
このようにして、水平止水板2の右端部2bと鉛直止水板1の左側縁の接続予定位置1bとが接続され得る。
【0051】
ここで、図10(エ)は、鉛直止水板1の左側縁の接続予定位置1bと、その右側で隣接する水平止水板2の右端部2bとが接続されて、鉛直止水板1と水平止水板2とがT字状に接続された状態を示している。
【0052】
次に、図10(エ)に示す状態から第2の接続補助ユニット20及びロッド32を撤去する。そして、第2の接続補助ユニット20の上下を反転させると共に、左右を反転させた状態で、図11(オ)に示すように、ガイド部材42の長手方向中央部に水平止水板2の左端部2aが隣接するように、第2の接続補助ユニット20を水平止水板2に取り付ける。この後、前述の図9(ア)~図10(エ)に示した止水板接続方法において左右を入れ替えたものと同様の工程を経ることで、水平止水板2の左端部2aと鉛直止水板1の右側縁の接続予定位置1aとが接続され得る。
【0053】
ここで、図11(カ)は、1つの鉛直止水板1の左右両側縁の接続予定位置1a,1bと、その左右両側で隣接する水平止水板2の右端部2b及び左端部2aとが接続されて、鉛直止水板1と水平止水板2とが十字状に接続された状態を示している。
【0054】
本実施形態によれば、止水板接続補助具7は、第1の方向(例えば鉛直方向)に延びる鉛直止水板1(第1の止水板)の接続予定位置1a,1bに、前記第1の方向と交差する方向である第2の方向(例えば水平方向)に延びる水平止水板2(第2の止水板)の端部2a,2bを接続する際に用いられる。止水板接続補助具7は、鉛直止水板1に取り付けられる第1の接続補助ユニット10と、水平止水板2に取り付けられる第2の接続補助ユニット20と、第1の接続補助ユニット10と第2の接続補助ユニット20とに跨るように設けられて、第2の接続補助ユニット20を第1の接続補助ユニット10側に引き寄せる引き寄せ機構30と、を備える。それゆえ、例えば、引き寄せ機構30を用いて水平止水板2を鉛直止水板1側に引き寄せながら鉛直止水板1の接続予定位置1a,1bと水平止水板2の端部2a,2bとでヒータ50(熱板51)を挟み込み、このヒータ50で鉛直止水板1の接続予定位置1a,1bと水平止水板2の端部2a,2bとを加熱して溶融させ、この溶融の後にヒータ50を取り除くと共に引き寄せ機構30を用いて水平止水板2を鉛直止水板1側に更に引き寄せることで、鉛直止水板1の接続予定位置1a,1bと水平止水板2の端部2a,2bとを互いに溶着することができる。従って、止水板接続補助具7は、互いに交差する方向に延びる鉛直止水板1と水平止水板2とを溶着する際に使用可能である。
【0055】
また本実施形態によれば、止水板接続補助具7は、引き寄せ機構30による第2の接続補助ユニット20の第1の接続補助ユニット10側への引き寄せによって鉛直止水板1側に引き寄せられる水平止水板2の端部2a,2bを鉛直止水板1の接続予定位置1a,1bに案内可能な案内部40を更に備える。これにより、水平止水板2の端部2a,2bを鉛直止水板1の接続予定位置1a,1bに精度良く接続することができる。
【0056】
また本実施形態によれば、第2の接続補助ユニット20は水平止水板2によって支持され得る。ゆえに、第2の接続補助ユニット20を支持するための物体を別途準備する必要がなく、簡素な構成とすることができる。
【0057】
また本実施形態によれば、止水板接続方法は、第1の方向(例えば鉛直方向)に延びる鉛直止水板1(第1の止水板)の接続予定位置1a,1bに、前記第1の方向と交差する方向である第2の方向(例えば水平方向)に延びる水平止水板2(第2の止水板)の端部2a,2bを接続する方法である。この止水板接続方法では、鉛直止水板1の接続予定位置1a,1bと水平止水板2の端部2a,2bとの間に挿入されたヒータ50(熱板51)により、鉛直止水板1の接続予定位置1a,1bと水平止水板2の端部2a,2bとを加熱し、この加熱された鉛直止水板1の接続予定位置1a,1bと水平止水板2の端部2a,2bとの間からヒータ50を取り除くと共に、水平止水板2を鉛直止水板1側に引き寄せることにより、鉛直止水板1の接続予定位置1a,1bと水平止水板2の端部2a,2bとを互いに溶着する。この止水板接続方法を用いることで、互いに交差する方向に延びる鉛直止水板1と水平止水板2とを溶着で接続することができる。
【0058】
本実施形態では、鉛直止水板1と水平止水板2とを溶着で接続する際に止水板接続補助具7を用いているが、この他、例えば、鉛直止水板1と水平止水板2とを接着剤等で接着して接続する際にも止水板接続補助具7を用いることが可能である。
【0059】
本実施形態では、水平止水板2の右端部2bと鉛直止水板1の左側縁の接続予定位置1bとが接続された後に、水平止水板2の左端部2aと鉛直止水板1の右側縁の接続予定位置1aとが接続されるが、これらの接続の順番が逆となってもよいことは言うまでもない。すなわち、水平止水板2の左端部2aと鉛直止水板1の右側縁の接続予定位置1aとが接続された後に、水平止水板2の右端部2bと鉛直止水板1の左側縁の接続予定位置1bとが接続されてもよい。又は、複数の止水板接続補助具7を用いて、水平止水板2の左端部2aと鉛直止水板1の右側縁の接続予定位置1aとの接続と、水平止水板2の右端部2bと鉛直止水板1の左側縁の接続予定位置1bとの接続とを並行して(換言すれば同時に)行ってもよい。
【0060】
本実施形態における止水板接続補助具7は、鉛直止水板1と水平止水板2とをT字状に接続する場合(図10(エ)参照)や十字状に接続する場合(図11(カ)参照)に使用可能である。このT字状の接続部や十字状の接続部については、全断面溶融による溶着が可能となり、溶着部の強度(品質)を確実に確保することができる。
【0061】
本実施形態における止水板接続補助具7を用いることで、熟練技術者でなくても容易に、鉛直止水板1と水平止水板2とをT字状に接続したり十字状に接続したりすることができる。
【0062】
本実施形態では、本発明に係る止水板接続補助具及び止水板接続方法が適用されるコンクリート構造物の一例としてコンクリート製のダム堤体を挙げて説明するが、当該構造物はダム堤体に限らず、例えば擁壁などであってもよい。
【0063】
図示の実施形態はあくまで本発明を例示するものであり、本発明は、説明した実施形態により直接的に示されるものに加え、特許請求の範囲内で当業者によりなされる各種の改良・変更を包含するものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0064】
1…鉛直止水板、1a,1b…接続予定位置、2…水平止水板、2a…左端部、2b…右端部、3…リフト上面、4…架台、7…止水板接続補助具、10…第1の接続補助ユニット、11…板状部材、12…把持装置、12a…前側部材、12b…後側部材、12c…アーム部材、12d…ロック機構、12e…操作レバー、12f…突起、13…引きクランプ取付板、14…ブラケット、15…管状部材、20…第2の接続補助ユニット、21…把持装置、21a…前側部材、21b…後側部材、21c…アーム部材、21d…ロック機構、21e…操作レバー、21f…突起、30…引き寄せ機構、31…引きクランプ、31a…グリップ、31b…ロッド取付部、32…ロッド、33…引っ掛け部、40…案内部、41…ガイドパイプ、42…ガイド部材、42a…基端部、42b…先端部、50…ヒータ、51…熱板
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