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特許7189851導電部材、及びその製造方法、導電部材を備えた電気化学セルスタック
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  • 特許-導電部材、及びその製造方法、導電部材を備えた電気化学セルスタック 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】導電部材、及びその製造方法、導電部材を備えた電気化学セルスタック
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0247 20160101AFI20221207BHJP
   C25B 9/65 20210101ALI20221207BHJP
   H01M 8/0206 20160101ALI20221207BHJP
   H01M 8/0228 20160101ALI20221207BHJP
   H01M 8/12 20160101ALI20221207BHJP
   H01M 8/243 20160101ALI20221207BHJP
【FI】
H01M8/0247
C25B9/65
H01M8/0206
H01M8/0228
H01M8/12 101
H01M8/12 102B
H01M8/243
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019157822
(22)【出願日】2019-08-30
(65)【公開番号】P2021036504
(43)【公開日】2021-03-04
【審査請求日】2021-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】519322392
【氏名又は名称】森村SOFCテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100123630
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】星子 琢也
(72)【発明者】
【氏名】坪井 文雄
(72)【発明者】
【氏名】田中 修平
(72)【発明者】
【氏名】安藤 茂
(72)【発明者】
【氏名】柿沼 保夫
【審査官】高木 康晴
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-140656(JP,A)
【文献】特開2015-049958(JP,A)
【文献】特開2002-260706(JP,A)
【文献】特開平05-266914(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/02
H01M 8/12
H01M 8/24
C25B 9/65
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体酸化物形電気化学セルの電極とバスバーを電気的に接続する導電部材であって、
バスバーに接合される接合部と、
の接合部から延びる連接部と、を有し、
上記バスバーに接合される記接合部は上記連接部よりも扁平に形成されていることを特徴とする導電部材。
【請求項2】
上記連接部は、基材層と導電層から構成され、上記基材層は上記導電層よりも剛性が高く、上記導電層は上記基材層よりも導電率が高い金属材料から形成されている請求項1に記載の導電部材。
【請求項3】
上記連接部には、所定の方向に容易に曲げ変形可能な応力緩和部が設けられている請求項1又は2に記載の導電部材。
【請求項4】
複数の固体酸化物形電気化学セルが電気的に接続された電気化学セルスタックであって、
複数の固体酸化物形電気化学セルと、
これらの固体酸化物形電気化学セルとバスバーを電気的に接続するための、請求項1乃至3の何れか1項に記載の導電部材と、を有し、
上記バスバーと上記導電部材は、嵌合されることなく、上記接合部と上記バスバーが接着剤により接合されている電気化学セルスタック。
【請求項5】
上記導電部材は、基材層と導電層から構成され、上記基材層は上記導電層よりも剛性が高く、上記導電層は上記基材層よりも導電率が高い金属材料から形成され、上記接着剤は、上記導電層の主成分と同一の主成分を有するペーストである請求項4記載の電気化学セルスタック。
【請求項6】
上記接着剤には、セラミック接着剤が含まれている請求項4又は5に記載の電気化学セルスタック。
【請求項7】
固体酸化物形電気化学セルの電極とバスバーを電気的に接続する導電部材の製造方法であって、
導電性材料製の棒状の部材を準備する準備工程と、
上記棒状の部材を所定の長さに切断する切断工程と、
この切断工程によって切断された棒状の部材の端部を押し潰して、バスバーに接合すべき接合部を形成すると共に、所定の形状に湾曲させるフォーミング工程と、
を有することを特徴とする導電部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電部材に関し、特に、固体酸化物形電気化学セルの電極間を電気的に接続する導電部材、及びその製造方法、導電部材を備えた電気化学セルスタックに関する。
【背景技術】
【0002】
固体酸化物形燃料電池セル(SOFC: Solid Oxide Fuel Cell)や、固体酸化物形電解セル(SOEC: Solid Oxide Electrolyzer Cell)等の固体酸化物形電気化学セルは、通常、多数本のセルの電極を互いに導電部材で接続し、電気化学セルスタックを構成して使用される。特許第5578332号(特許文献1)には、燃料電池セル集合体及び燃料電池が記載されている。この燃料電池セル集合体においても、各燃料電池セルの電極は、導電部材である集電体によって互いに電気的に接続されている。
【0003】
特許文献1記載の燃料電池セル集合体に使用されている集電体は、その中央部が燃料電池セルの空気極(電極)に嵌合され、両端部が隣接する燃料電池セルの燃料極(電極)に取り付けられることにより、2つの燃料電池セルの電極を互いに電気的に接続している。このような集電体は、まず、高温の環境下でも必要な強度及び弾性を有する金属製の薄板を、必要な形状に打ち抜き加工し、さらに、接続すべき燃料電池セルと嵌合するように曲げ加工を施すことにより、形成されている。また、集電体は、電気的に接続された複数の燃料電池セルの集合体から電流を取り出す用途にも使用され、このような集電体は、一端が燃料電池セルの電極に接続され、他端がバスバー等の、電流を外部に取り出すための外部導体に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5578332号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、集電体の電気抵抗を低下させるために、電気導体に十分な断面積を確保しようとすると、集電体(導電部材)を構成する薄板の幅を広く構成する必要がある。このような集電体を取り付けるためには、接続される燃料電池セル同士の間や、燃料電池セルとバスバー等の間に多くのスペースが必要となるため、集積度の高い燃料電池セルスタックを構成することが困難になるという問題がある。
【0006】
従って、本発明は、十分な導体の断面積を確保しながら、固体酸化物形電気化学セルに取り付け、コンパクトに設置することができる導電部材、及びその製造方法、導電部材を備えた電気化学セルスタックを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明は、固体酸化物形電気化学セルの電極とバスバーを電気的に接続する導電部材であって、バスバーに接合される接合部と、この接合部から延びる連接部と、を有し、バスバーに接合される接合部は連接部よりも扁平に形成されていることを特徴としている。
【0008】
このように構成された本発明によれば、バスバーに接合される接合部が、連接部よりも扁平に形成されているので、バスバーとの間の接合面積を広くとることができ、バスバーと接合部の間の電気抵抗を低減することができる。また、連接部が、接合部よりも厚く(扁平でなく)構成されているので、コンパクトな形状で、大きな導体の断面積(導電断面積)を確保することができ、固体酸化物形電気化学セルとバスバー等の外部導体との間に、容易に設置することを可能にしながら、導電部材の電気抵抗を低減することができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、電極接合部は連接部の両端に設けられ、各電極接合部は、2つの固体酸化物形電気化学セルが電気的に接続されるように、異なる固体酸化物形電気化学セルの電極に夫々接合される。
【0010】
このように構成された本発明によれば、導電部材の両端に電極接合部が設けられ、これらが異なる固体酸化物形電気化学セルの電極に夫々接合されるので、固体酸化物形電気化学セル同士をコンパクトに接続することができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、連接部は、基材層と導電層から構成され、基材層は導電層よりも剛性が高く、導電層は基材層よりも導電率が高い金属材料から形成されている。
【0012】
このように構成された本発明によれば、連接部が基材層と導電層から構成されているので、基材層により導電部材に必要な剛性を確保する一方、導電層により導電部材の電気抵抗を低下させることができるので、高い剛性と導電率を兼ね備えた導電部材を構成することができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、連接部には、所定の方向に容易に曲げ変形可能な応力緩和部が設けられている。
このように構成された本発明によれば、連接部に、所定の方向に容易に曲げ変形可能な応力緩和部が設けられているので、導電部材によって接続されている部位同士の相対的な位置が変化した場合でも、応力緩和部が容易に変形される。このため、導電部材と固体酸化物形電気化学セルの電極との間の接合部等に大きな応力が発生するのを回避することができ、接合部の損傷リスクを軽減する。
【0014】
また、本発明は、複数の固体酸化物形電気化学セルが電気的に接続された電気化学セルスタックであって、複数の固体酸化物形電気化学セルと、これらの固体酸化物形電気化学セルとバスバーを電気的に接続するための、本発明の導電部材と、を有し、バスバーと導電部材は、嵌合されることなく、接合部とバスバーが接着剤により接合されている。
【0015】
このように構成された本発明によれば、バスバーと導電部材が接着剤により接合されているので、導電部材とバスバーを嵌合させる場合に比べ、導電部材の形状を単純化することができ、安価に導電部材を製造することができる。
【0016】
本発明において、好ましくは、導電部材は、基材層と導電層から構成され、基材層は導電層よりも剛性が高く、導電層は基材層よりも導電率が高い金属材料から形成され、接着剤は、導電層の主成分と同一の主成分を有するペーストである。
【0017】
このように構成された本発明によれば、導電層の主成分と同一の主成分を有するペーストで、固体酸化物形電気化学セルの電極と導電部材が接着されるので、接合部における電気抵抗を低減することができ、電流の伝送ロスを抑制することができる。
【0018】
本発明において、好ましくは、接着剤には、セラミック接着剤が含まれている。
このように構成された本発明によれば、セラミック接着剤を含む接着剤で固体酸化物形電気化学セルの電極と導電部材が接着されるので、十分な機械的接合強度を確保することができる。
【0019】
また、本発明は、複数の固体酸化物形電気化学セルが電気的に接続された電気化学セルスタックであって、複数の固体酸化物形電気化学セルと、これらの固体酸化物形電気化学セルを電気的に接続するための、本発明の導電部材と、を有し、固体酸化物形電気化学セルは、外周面に電極が設けられた筒形に形成され、導電部材は、接続すべき2つの固体酸化物形電気化学セルの、共通の接平面内に延びるように、固体酸化物形電気化学セルに取り付けられている。
【0020】
このように構成された本発明によれば、導電部材が、接続すべき2つの固体酸化物形電気化学セルの、共通の接平面内に延びるように取り付けられているので、2つの固体酸化物形電気化学セルが固定された後であっても、容易に各固体酸化物形電気化学セルの電極に導電部材を取り付けることができる。
【0021】
また、本発明は、固体酸化物形電気化学セルの電極とバスバーを電気的に接続する導電部材の製造方法であって、導電性材料製の棒状の部材を準備する準備工程と、棒状の部材を所定の長さに切断する切断工程と、この切断工程によって切断された棒状の部材の端部を押し潰して、バスバーに接合すべき接合部を形成すると共に、所定の形状に湾曲させるフォーミング工程と、を有することを特徴としている。
【0022】
このように構成された本発明によれば、導電性材料製の棒状の部材を、切断、フォーミング加工することにより導電部材を形成することができるので、大量の導電部材を安価に製造することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、十分な導体の断面積を確保しながら、固体酸化物形電気化学セルに取り付け、コンパクトに設置することができる導電部材、及びその製造方法、導電部材を備えた電気化学セルスタックを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本実施形態による電気化学セルスタックを示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態による電気化学セルスタックを構成する固体酸化物形燃料電池セルを示す図である。
図3】本発明の実施形態による電気化学セルスタックを構成する固体酸化物形燃料電池セル端部の拡大断面図である。
図4】本発明の実施形態による電気化学セルスタックにおいて、各固体酸化物形燃料電池セルが集電部材により接続されている状態を示す側面図である。
図5】本発明の実施形態による電気化学セルスタックにおいて、集電部材によって接続された2本の固体酸化物形燃料電池セルを上方から見た平面図である。
図6】本発明の実施形態の電気化学セルスタックにおいて、集電部材による接続部分を拡大して示す斜視図である。
図7】本発明の実施形態による集電部材の製造方法の手順を示すフローチャートである。
図8】本発明の実施形態の変形例として、連接部の途中に応力緩和部を設けた集電部材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、添付図面を参照して、本発明の実施形態による電気化学セルスタックを備えた固体酸化物形燃料電池装置を説明する。
図1は、本実施形態による電気化学セルスタックを示す斜視図である。なお、本明細書においては、複数の固体酸化物形燃料電池セルの電極間を導電部材で電気的に接続した電気化学セルスタックを説明するが、複数の固体酸化物形電解セルを導電部材で電気的に接続した電気化学セルスタックにも本発明を適用することができる。
【0026】
図1に示すように、電気化学セルスタック1は、格子状に配列された128本の固体酸化物形電気化学セルである固体酸化物形燃料電池セル2を備え、これらの固体酸化物形燃料電池セル2は、16本ずつ8列に並べて配置されている。
各固体酸化物形燃料電池セル2は、下端側が金属製の長方形の下支持板4により支持されている。この下支持板4は、マニホールド6の天井面を構成し、各固体酸化物形燃料電池セル2の燃料ガス流路8(図3)に燃料ガスを流入させるための貫通穴が形成されている。また、各固体酸化物形燃料電池セル2の下端側のキャップ10と下支持板4の間には、概ね円筒形のセラミック製のスペーサ12が配置されており、キャップ10と下支持板4の間を離間させることで絶縁性を確保している。
【0027】
さらに、各固体酸化物形燃料電池セル2には、1つの固体酸化物形燃料電池セル2を隣接する固体酸化物形燃料電池セル2と電気的に接続する導電部材である集電部材14が取り付けられている。この集電部材14は、燃料極である内側電極層16(図3)と電気的に接続されたキャップ10と、隣接する固体酸化物形燃料電池セル2の空気極である外側電極層18の外周面と、を接続するように配置される。即ち、集電部材14は、固体酸化物形燃料電池セル2の電極であるキャップ10と外側電極層18を電気的に接続する。また、各集電部材14は、各固体酸化物形燃料電池セル2の上端部及び下端部に取り付けられているため、1つの固体酸化物形燃料電池セル2と隣接する固体酸化物形燃料電池セル2は、2つの集電部材14により電気的に接続されることになる(これら2つの集電部材14は並列)。このように、各集電部材14により、電気化学セルスタック1を構成する全ての固体酸化物形燃料電池セル2は、電気的に直列に接続される。なお、各固体酸化物形燃料電池セル2の外側電極層18(空気極)の外表面全体には、空気極側の電極として、銀製の薄膜が形成されている。この薄膜の表面に集電部材14が接合されることにより、集電部材14は空気極全体と電気的に接続される。
【0028】
つぎに、図2及び図3を参照して、固体酸化物形燃料電池セル2について説明する。
図2は、本発明の実施形態による電気化学セルスタックを構成する固体酸化物形燃料電池セルを示す図である。図3は、固体酸化物形燃料電池セル端部の拡大断面図である。
図2に示すように、固体酸化物形燃料電池セル2は、燃料電池セル本体20と、この燃料電池セル本体20の両端部にそれぞれ接続された電極であるキャップ10とを備えている。
【0029】
図3に示すように、支持体として導電支持体を有する場合の燃料電池セル本体20は、上下方向に延びる管状構造体であり、内部にガス通路である燃料ガス流路8を形成する円筒形の燃料極層である内側電極層16と、内側電極層16の外周に設けられた円筒形の固体電解質層である電解質層22と、電解質層22の外周に設けられた円筒形の空気極(電極)である外側電極層18と、を備えている。この内側電極層16は、燃料電池セル本体20を構成する支持体として機能すると共に、内部に燃料ガスが流れるガス通路を構成する多孔質体である。内側電極層16は燃料極であり、(-)極となり、一方、外側電極層18は、空気と接触する空気極であり、(+)極となっている。このように、固体酸化物形燃料電池セル2は、筒形に形成され、その外周面に電極が設けられている。
【0030】
内側電極層16は、例えば、Niと、CaやY、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニアとの混合体、Niと、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリアとの混合体、Niと、Sr、Mg、Co、Fe、Cuから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレートとの混合体、の少なくとも一種から形成される。本実施形態では、内側電極層16は、Ni/YSZからなる。
なお、支持体として多孔質の絶縁性支持体を用いることもでき、この場合においては、絶縁性支持体の外側に、内側電極層として燃料極層を形成する。
【0031】
電解質層22は、内側電極層16の外周面に沿って全周にわたって形成されており、下端は内側電極層16の下端よりも上方で終端し、上端は内側電極層16の上端よりも下方で終端している。電解質層22は、例えば、Y、Sc等の希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたジルコニア、希土類元素から選ばれる少なくとも一種をドープしたセリア、Sr、Mgから選ばれる少なくとも一種をドープしたランタンガレート、の少なくとも一種から形成される。
【0032】
外側電極層18は、電解質層22の外周面に沿って全周にわたって形成されており、下端は電解質層22の下端よりも上方で終端し、上端は電解質層22の上端よりも下方で終端している。外側電極層18は、例えば、Sr、Caから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンマンガナイト、Sr、Co、Ni、Cuから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンフェライト、Sr、Fe、Ni、Cuから選ばれた少なくとも一種をドープしたランタンコバルタイト、銀、などの少なくとも一種から形成される。
【0033】
次に、キャップ10について説明するが、燃料電池セル本体20の上端側と下端側に取り付けられたキャップ10は、同一構造であるため、ここでは、燃料電池セル本体20の下端側に取り付けられたキャップ10について具体的に説明する。
【0034】
キャップ10は、燃料電池セル本体20の上下端部をそれぞれ包囲するように設けられ、燃料電池セル本体20の内側電極層16と電気的に接続され、内側電極層16を外部に引き出す電極として機能する。図3に示すように、燃料電池セル本体20の下端に設けられたキャップ10は、円筒状の第1円筒部10aと、第1円筒部10aの上端かから外方に向かって延びる円環状の円環部10bと、円環部10bの外周から上方に向かって延びる第2円筒部10cとを有する。キャップ10の第1円筒部10aの中心部には、内側電極層16の燃料ガス流路8と連通する燃料ガス流路24が形成されている。燃料ガス流路24は、キャップ10の中心から燃料電池セル本体20の軸線方向に延びるように設けられた細長い管路である。
【0035】
キャップ10は、フェライト系ステンレス又はオーステナイト系ステンレスからなる本体の内周面及び外周面にクロム酸化物(本実施形態では、Cr23)がコーティングされ、さらに、外周面には、MnCo24がコーティングされている。加えて、コーティングされたMnCo24層の外周面にはAg集電膜が設けられている。なお、本実施形態では、Ag集電膜は、キャップ10の外周面全体にわたって設けられているが、一部のみに設けてもよい。
【0036】
キャップ10の第2円筒部10cの内側と、燃料電池セル本体20の内側電極層16の端部外周面との間の空間には銀ペースト26が配置されている。固体酸化物形燃料電池セル2の組み立て後に焼成することにより、銀ペースト26が焼結され、内側電極層16とキャップ10が、電気的、機械的に結合される。また、キャップ10の第2円筒部10cの内周面と、電解質層22の下端部外周面との間には、ガラス材料からなるガラスシール28が設けられている。このガラスシール28により、キャップ10と内側電極層16との間の空間は、固体酸化物形燃料電池セル2の外部の空間に対して気密密封されている。
【0037】
次に、図4及び図5を新たに参照して、集電部材14による電気的な接続構造を説明する。図4は、各固体酸化物形燃料電池セル2が集電部材14により接続されている状態を示す電気化学セルスタック1の側面図である。図5は、集電部材14によって接続された2本の固体酸化物形燃料電池セル2を上方から見た平面図である。
【0038】
図4に示すように、電気化学セルスタック1は、1つの固体酸化物形燃料電池セル2の燃料極であるキャップ10と、隣接する固体酸化物形燃料電池セル2の空気極である外側電極層18を、集電部材14により電気的に接続することにより構成されている。各固体酸化物形燃料電池セル2の上端部に配置された集電部材14は、その一端がキャップ10の第2円筒部10cに取り付けられ、斜め下方に延びて、他端が隣接する固体酸化物形燃料電池セル2の外側電極層18に取り付けられる。一方、各固体酸化物形燃料電池セル2の下端部に配置された集電部材14は、その一端がキャップ10の第2円筒部10cに取り付けられ、斜め上方に延びて、他端が隣接する固体酸化物形燃料電池セル2の外側電極層18に取り付けられる。このように、各固体酸化物形燃料電池セル2は、2本の集電部材14を介して隣接する固体酸化物形燃料電池セル2に電気的に接続される。
【0039】
また、上述したように、電気化学セルスタック1を構成している全ての固体酸化物形燃料電池セル2は、電気的に直列に接続されている。ここで、電気的に直列に接続された固体酸化物形燃料電池セル2のうちの、両端に位置する固体酸化物形燃料電池セル2には、固体酸化物形燃料電池セル2とバスバー15を接続するための集電部材14が取り付けられている(図4には直列接続の一端側のみ図示)。これらの集電部材14は、固体酸化物形燃料電池セル2の電極(図4では外側電極層18)と、外部導体であるバスバー15との間を電気的に接続し、電気化学セルスタック1によって生成された電力は、バスバー15を介して外部に取り出される。
【0040】
さらに、図5に示すように、集電部材14の一端は、1つの固体酸化物形燃料電池セル2のキャップ10の外周面に取り付けられ、集電部材14の他端は、隣接する固体酸化物形燃料電池セル2の外側電極層18の外周面に取り付けられている。これにより、集電部材14は、1つの固体酸化物形燃料電池セル2と、隣接する固体酸化物形燃料電池セル2の共通の接平面P上で、1つの固体酸化物形燃料電池セル2から隣接する固体酸化物形燃料電池セル2まで延びている。このように、集電部材14は、接続すべき2つの固体酸化物形燃料電池セル2の、共通の接平面P内を延びている。即ち、集電部材14は、固体酸化物形燃料電池セル2の各電極(キャップ10及び外側電極層18)に向けられる両端部が、略同一平面上に位置するように構成されている。
【0041】
次に、図6を参照して、本発明の実施形態の導電部材である集電部材14の構造を説明する。
図6は、本発明の実施形態の電気化学セルスタック1において、集電部材14による接続部分を拡大して示す斜視図である。
【0042】
図6に示すように、集電部材14は、円形断面の金属製のワイヤーをクランク状に湾曲させることにより形成された部材である。即ち、集電部材14は、固体酸化物形燃料電池セル2に取り付けられた状態において鉛直方向に向けられる中間部分と、この中間部分の両端から夫々水平方向に延びる水平部分から構成されている。中間部分の上端及び下端から直角に湾曲して延びる各水平部分は、互いに反対方向に向くように折り曲げられている。即ち、集電部材14は、金属製のワイヤーを、クランク状に湾曲させることにより形成されている。
【0043】
また、各水平部分の先端部は、押し潰されて扁平にされ、電極接合部14aを形成している。集電部材14の先端を扁平に押し潰すことにより形成された電極接合部14aから連接部14bが延びており、この連接部14bは集電部材14の他端に形成された電極接合部14aまで延びている。即ち、連接部14bは、集電部材14の両端の各電極接合部14aを接続するように延びており、各電極接合部14aは、連接部14bよりも扁平に形成されている。換言すれば、連接部14bは、電極接合部14aよりも厚く形成されている。なお、固体酸化物形燃料電池セル2からバスバー15等の外部導体に延びる集電部材14は、一方の端部のみに電極接合部14aが設けられていても良い。また、本実施形態においては、連接部14bは、全体に亘って電極接合部14aよりも厚く形成されているが、部分的に電極接合部14aよりも薄い部分が存在しても良い。
【0044】
さらに、各電極接合部14aは、取り付けられる電極(キャップ10及び外側電極層18)の表面に沿う方向に、先端に向けて次第に薄くなるように扁平に押し潰されている。即ち、集電部材14が固体酸化物形燃料電池セル2に取り付けられた状態においては、集電部材14の中間部分が、円筒形の固体酸化物形燃料電池セル2の中心軸線と平行な方向に向けられ、両端の水平部分は、中心軸線に直交する方向に向けられる。各水平部分の先端の電極接合部14aは、夫々、キャップ10の第2円筒部10cの円筒面、及び外側電極層18の円筒面に沿うように、固体酸化物形燃料電池セル2の中心軸線と平行な方向に扁平に押し潰されている。
【0045】
また、本実施形態においては、集電部材14は、ニッケル(Ni)を主成分とする合金により形成されており、極めて温度が高い条件下においても、集電部材14として十分な強度、弾性を確保すると共に、十分な導電率を確保している。或いは、集電部材14を、基材層と、基材層の周囲に設けられた導電層から形成することもできる。この場合には、基材層は導電層よりも剛性が高い材料で形成し、導電層は基材層よりも導電率が高い金属材料で形成するのが良い。例えば、基材層として、鉄(Fe)に、約18%のクロム(Cr)、約3%のアルミニウム(Al)、約0.5%のチタン(Ti)を加えたフェライト系ステンレス鋼を使用することができる。また、導電層として、銀、又は、主成分として銀成分を最も多く含む材料を使用することができる。
【0046】
また、本実施形態においては、集電部材14の電極接合部14aが、固体酸化物形燃料電池セル2の電極(キャップ10又は外側電極層18)に、接着剤により接合されて、電気的に接続されており、集電部材14と固体酸化物形燃料電池セル2は嵌合されていない。本実施形態においては、固体酸化物形燃料電池セル2の電極と集電部材14を接着する接着剤として、銀ペーストが使用されている。また、集電部材14を、基材層と導電層から形成した場合には、接着剤として、導電層の主成分と同一の主成分を有するペーストを使用することが好ましい。これにより、接合部における電気抵抗を低減することができ、電流の伝送ロスを抑制することができる。
【0047】
銀ペーストは、銀の微粉末にバインダー、溶剤、他の添加剤を添加することにより調製される。銀ペーストのバインダーとしては、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等を使用することができる。銀ペーストの溶剤としては、エタノール、ブタノール、テルピネオール、アセトン、キシレン、トルエン、ビヒクル等を使用することができる。銀ペーストに加える添加剤としては、分散剤、可塑剤等を使用することができる。
【0048】
集電部材14を銀ペーストにより接着する場合には、接着すべき固体酸化物形燃料電池セル2が固定された状態で、集電部材14の電極接合部14a及び/又は固体酸化物形燃料電池セル2の電極に銀ペーストを塗布する。次いで、集電部材14を、固体酸化物形燃料電池セル2の接着すべき位置に配置した状態で加熱し、銀ペーストを焼結させる。これにより、銀ペースト中の銀が、溶融・固化され、集電部材14が電極に接着される。
【0049】
また、集電部材14と固体酸化物形燃料電池セル2の接合部には、銀ペーストによる接着とは別に、セラミック接着剤を塗布することが好ましい。このセラミック接着剤は、集電部材14と固体酸化物形燃料電池セル2の接合部の機械的強度を高める目的で使用される。従って、セラミック接着剤は、導電性のないものであっても良い。セラミック接着剤としては、例えば、酸化アルミニウム、石英、アルカリ金属ケイ酸塩、二酸化ケイ素、水等を混合したものを使用することができる。このセラミック接着剤による接着は、銀ペーストにより集電部材14と電極が接着された後で行っても良く、また、銀ペーストによる接着と同時に行うこともできる。
【0050】
次に、図7を参照して、本発明の実施形態による集電部材14の製造方法を説明する。
図7は、集電部材14の製造方法の手順を示すフローチャートである。
【0051】
まず、図7のステップS1においては、準備工程として、集電部材14を形成すべき所定の導電性を有する材料で形成された円形断面の棒状の部材を準備する。
次に、ステップS2においては、切断工程として、ステップS1において準備された棒状の部材を所定の長さに切断する。
次いで、ステップS3においては、フォーミング工程として、ステップS2において切断された棒状の部材が、所定のクランク形状に湾曲される。さらに、フォーミング工程として、クランク形状に湾曲された棒状の部材の両側の先端部を押し潰して、電極接合部14aを形成し、集電部材14を完成させる。なお、フォーミング工程においては、棒状の部材の両側の先端部を押し潰した後、これをクランク形状に湾曲させても良い。
【0052】
本発明の実施形態の集電部材14によれば、固体酸化物形燃料電池セル2の電極(キャップ10、外側電極層18)に接合される電極接合部14aが、連接部14bよりも扁平に形成されているので、電極との間の接合面積を広くとることができ、接合部における電気抵抗を低減することができる。また、連接部14bが、電極接合部14aよりも厚く構成されているので、コンパクトな形状で、大きな導体の断面積を確保することができ、固体酸化物形燃料電池セル2同士の間や、固体酸化物形燃料電池セル2とバスバー15等の外部導体との間に、容易に設置することを可能にしながら、集電部材14の電気抵抗を低減することができる。
【0053】
また、本実施形態の集電部材14によれば、集電部材14の両端に電極接合部14aが設けられ(図6)、これらが異なる固体酸化物形燃料電池セル2の電極(キャップ10、外側電極層18)に夫々接合されるので、固体酸化物形燃料電池セル2同士をコンパクトに接続することができる(図4)。
【0054】
さらに、本発明の実施形態の電気化学セルスタック1によれば、固体酸化物形燃料電池セル2の電極(キャップ10、外側電極層18)と集電部材14が接着剤により接合されているので、集電部材14と固体酸化物形燃料電池セル2を嵌合させる場合に比べ、集電部材14の形状を単純化することができ、安価に集電部材14を製造することができる。
【0055】
また、本実施形態の電気化学セルスタック1によれば、セラミック接着剤を含む接着剤で固体酸化物形燃料電池セル2の電極(キャップ10、外側電極層18)と集電部材14が接着されるので、十分な機械的接合強度を確保することができる。
【0056】
さらに、本実施形態の電気化学セルスタック1によれば、集電部材14が、接続すべき2つの固体酸化物形燃料電池セル2の、共通の接平面P内に延びるように取り付けられている(図5)ので、2つの固体酸化物形燃料電池セル2が固定された後であっても、容易に固体酸化物形燃料電池セル2の電極(キャップ10、外側電極層18)に集電部材14を取り付けることができる。
【0057】
また、本発明の実施形態の集電部材14の製造方法によれば、導電性材料製の棒状の部材を、切断し、フォーミング加工することにより集電部材14を形成することができる(図7)ので、大量の集電部材14を安価に製造することができる。
【0058】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。特に、上述した実施形態においては、電気化学セルスタック1は、固体酸化物形燃料電池セル2の集合体として形成され、生成された電力が集電部材14により取り出されていた。これに対し、電気化学セルスタック1を、固体酸化物形電解セルの集合体として形成することもできる。この場合には、集電部材14は、各電解セルに電流を供給する部材として機能する。
【0059】
また、上述した実施形態においては、固体酸化物形燃料電池セル2は円筒形のセルであったが、楕円筒形、扁平形等、任意形状の固体酸化物形燃料電池セル、又は固体酸化物形電解セルに本発明を適用することができる。さらに、上述した実施形態においては、固体酸化物形燃料電池セル2の燃料極はキャップ10に接続され、燃料電池セルの電極として、キャップ10に集電部材14が接続されていたが、キャップを備えない固体酸化物形燃料電池セル、又は固体酸化物形電解セルに本発明を適用することもできる。
【0060】
さらに、上述した実施形態においては、集電部材14の、各電極接合部14aを接続する連接部14bは、一定の断面形状で構成されていたが、変形例として、連接部14bの途中に応力緩和部を設けることもできる。
【0061】
図8は、連接部の途中に応力緩和部を設けた集電部材を示す斜視図である。本変形例による集電部材114は、両端部に設けられた電極接合部114aと、これらの電極接合部114aを連結する連接部114bと、を有する。各電極接合部114aは、第1実施形態における集電部材14と同様に、先端に向けて薄くなるように、扁平に押し潰されている。また、連接部114bは、円形断面の棒状に形成されているが、その鉛直部分の中央に、応力緩和部114cが設けられている。応力緩和部114cは、連接部114bを扁平に押し潰すことにより、鉛直方向に向けられた平面部分として形成されている。
【0062】
このように構成されることにより、応力緩和部114cは、固体酸化物形燃料電池セル2の配列方向Dに対して垂直な、軸線dを中心に容易に曲げ変形可能にされている。即ち、応力緩和部114cは、連接部114bの、応力緩和部114c以外の部分よりも、小さな力で曲げ変形されるように構成されている。このため、隣接する2つの固体酸化物形燃料電池セル2に夫々接着されている各電極接合部114aの相対位置が変化した場合には、比較的小さな力で応力緩和部114cが変形される。即ち、発電中の各固体酸化物形燃料電池セル2は熱変形を起こす場合があるが、このような場合においても応力緩和部114cが容易に変形されるので、集電部材114と固体酸化物形燃料電池セル2の接着部分に大きな応力が発生することがない。これにより、固体酸化物形燃料電池セル2の変形により接合部が損傷されるリスクを軽減することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 電気化学セルスタック
2 固体酸化物形燃料電池セル(固体酸化物形電気化学セル)
4 下支持板
6 マニホールド
8 燃料ガス流路
10 キャップ(電極)
10a 第1円筒部
10b 円環部
10c 第2円筒部
12 スペーサ
14 集電部材(導電部材)
14a 電極接合部
14b 連接部
15 バスバー(外部導体)
16 内側電極層
18 外側電極層(電極)
20 燃料電池セル本体
22 電解質層
24 燃料ガス流路
26 銀ペースト
28 ガラスシール
114 集電部材
114a 電極接合部
114b 連接部
114c 応力緩和部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8