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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】制振構造
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/02 20060101AFI20221207BHJP
   G10K 11/16 20060101ALI20221207BHJP
   G10K 11/162 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
F16F15/02 R
G10K11/16 120
G10K11/162
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019191784
(22)【出願日】2019-10-21
(65)【公開番号】P2021067301
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2021-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100157277
【弁理士】
【氏名又は名称】板倉 幸恵
(74)【代理人】
【識別番号】100182718
【弁理士】
【氏名又は名称】木崎 誠司
(72)【発明者】
【氏名】富田 直
(72)【発明者】
【氏名】中野 幸人
(72)【発明者】
【氏名】西垣 英一
(72)【発明者】
【氏名】西村 拓也
(72)【発明者】
【氏名】瀬木 真琴
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】実開昭48-104989(JP,U)
【文献】実開昭63-139052(JP,U)
【文献】特開2010-031136(JP,A)
【文献】特開2002-297147(JP,A)
【文献】特表2013-501658(JP,A)
【文献】特開2016-038053(JP,A)
【文献】特開2019-184798(JP,A)
【文献】特開2020-157795(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/02-15/08
G10K 11/16-11/178
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制振構造であって、
平面または曲面を有する平板状の主部材と、
前記主部材の少なくとも一方の面に固定された追加部材と、
を備え、
前記追加部材は、
前記主部材の密度よりも小さく、
前記主部材に固定されている側の第1の面とは逆側の第2の面に複数の凸部が形成されており、
前記凸部の前記第1の面からの突出長さは、前記主部材の厚さよりも大きく、
前記追加部材の前記第1の面には、前記凸部に対応する位置に、前記主部材と前記追加部材とにより外部から遮蔽された中空の空間が形成され、
前記追加部材の前記複数の凸部は、
それぞれ長方形状を有し、
長軸が矩形状の仮想線または曲線状の仮想線に沿って並んで配列されている、制振構造。
【請求項2】
請求項1に記載の制振構造であって、
前記追加部材は、パルプモウルドによって形成されている、制振構造。
【請求項3】
請求項1に記載の制振構造であって、
前記追加部材は、射出成形された樹脂によって形成されている、制振構造。
【請求項4】
制振構造であって、
平面または曲面を有する平板状の主部材と、
前記主部材の少なくとも一方の面に固定された追加部材と、
を備え、
前記追加部材は、
前記主部材の密度よりも小さく、
前記主部材に固定されている側の第1の面とは逆側の第2の面に複数の凸部が形成されており、
前記凸部の前記第1の面からの突出長さは、前記主部材の厚さよりも大きく、
前記追加部材は、パルプモウルドによって形成され、
前記追加部材の前記複数の凸部は、
それぞれ長方形状を有し、
長軸が矩形状の仮想線または曲線状の仮想線に沿って並んで配列されている、制振構造。
【請求項5】
請求項4に記載の制振構造であって、
前記追加部材の前記第1の面には、前記凸部に対応する位置に凹部が形成されている、制振構造。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の制振構造であって、
前記追加部材の前記複数の凸部は、それぞれ同じ形状を有する、制振構造。
【請求項7】
請求項6に記載の制振構造であって、
前記追加部材の各前記凸部間の距離は、それぞれ同じである、制振構造。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の制振構造であって、
前記追加部材の前記複数の凸部は、周期的に配列されている、制振構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制振構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両などに発生する騒音・振動を低減する手段が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、幅広い範囲の周波数域において、高い遮音性・制振性を実現する構造体の一例が開示されている。この構造体は、媒質の中に大きさが不均等である複数の空隙部と、少なくとも一部の空隙部に形成された形状が異なる共振子とを有している。非特許文献1には、弾性波の伝播を評価するための分散曲線の導出方法について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-45789号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】Y.Fan, M.Collet, M.Ichchou, L. Li, O. Bareille, Z.Dimitrijevic, " Energy flow prediction in built-up structures through a hybrid finite element/wave and finite element approach", Mechanical Systems and Signal Processing, Volumes 66-67, January 2016, Pages 137-158
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された構造物における媒質と共振子との支持部が薄肉に(細く)なっており、当該支持部の疲労強度が小さい。非特許文献1には、圧電素子を周期的に配した場合のバンドギャップの形成について、例示されている。しかし、剛性分布を与える追加部材形状について議論されていないため、構造体として十分な強度を有した上で騒音・振動を低減したいという課題がある。
【0006】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、十分な強度を有し、騒音・振動を低減できる構造体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現できる。制振構造であって、平面または曲面を有する平板状の主部材と、前記主部材の少なくとも一方の面に固定された追加部材と、を備え、前記追加部材は、前記主部材の密度よりも小さく、前記主部材に固定されている側の第1の面とは逆側の第2の面に複数の凸部が形成されており、前記凸部の前記第1の面からの突出長さは、前記主部材の厚さよりも大きく、前記追加部材の前記第1の面には、前記凸部に対応する位置に、前記主部材と前記追加部材とにより外部から遮蔽された中空の空間が形成され、前記追加部材の前記複数の凸部は、それぞれ長方形状を有し、長軸が矩形状の仮想線または曲線状の仮想線に沿って並んで配列されている、制振構造。制振構造であって、平面または曲面を有する平板状の主部材と、前記主部材の少なくとも一方の面に固定された追加部材と、を備え、前記追加部材は、前記主部材の密度よりも小さく、前記主部材に固定されている側の第1の面とは逆側の第2の面に複数の凸部が形成されており、前記凸部の前記第1の面からの突出長さは、前記主部材の厚さよりも大きく、前記追加部材は、パルプモウルドによって形成され、前記追加部材の前記複数の凸部は、それぞれ長方形状を有し、長軸が矩形状の仮想線または曲線状の仮想線に沿って並んで配列されている、制振構造。そのほか、本発明は、以下の形態としても実現可能である。
【0008】
(1)本発明の一形態によれば、制振構造が提供される。この制振構造は、平面または曲面を有する平板状の主部材と、前記主部材の少なくとも一方の面に固定された追加部材と、を備え、前記追加部材は、前記主部材の密度よりも小さく、前記主部材に固定されている側の第1の面とは逆側の第2の面に複数の凸部が形成されており、前記凸部の前記第1の面からの突出長さは、前記主部材の厚さよりも大きい。
【0009】
この構成によれば、制振構造は、主部材と、主部材に固定された追加部材とで構成される。追加部材には、主部材に固定されている逆側の第2の面で凸部が形成されている。そのため、凸部における厚さ方向に沿った制振構造の断面二次モーメントは、追加部材が固定されていない主部材単体の断面二次モーメントよりも大きい。そのため、制振構造体を伝わる弾性波は減衰する。追加部材が固定されることによって、主部材単体よりも、制振構造の強度が向上する。さらに、追加部材の密度は、主部材の密度よりも小さい。この結果、この構成では、制振構造の重量の増加を抑制した上で制振構造の強度を向上させ、剛性分布によって弾性波の伝播が阻止されて振動が低減される。
【0010】
(2)上記形態の制振構造において、前記追加部材の前記第1の面には、前記凸部に対応する位置に凹部が形成されていてもよい。
この構成によれば、凸部の位置に対応する追加部材内の第1面側に凹部が形成される、すなわち、凹部による空洞が形成される。そのため、この構成では、凸部によって断面二次モーメントを増加させた上で、凹部によって追加部材の重量の増加を低減できる。また、この構成では、プレス加工によって簡単に、凸部に対応する位置に凹部が形成された追加部材を作成することができる。
【0011】
(3)上記形態の制振構造において、前記追加部材の前記複数の凸部は、それぞれ同じ形状を有してもよい。
この構成によれば、同じ形状の複数の凸部が追加部材に形成される、すなわち、同じ断面二次モーメントを有する凸部が追加部材に形成されている。これにより、一の凸部に入射する入射波は、他の凸部によって反射される反射波と相殺し合う。その結果、制振構造は、所定の周波数域で共振モードが存在しないバンドギャップを有するため、制振構造の振動が大きく低減する。
【0012】
(4)上記形態の制振構造において、前記追加部材の各前記凸部間の距離は、それぞれ同じであってもよい。
この構成によれば、それぞれ同じ形状を有する複数の凸部間の距離が同じ、即ち凸部が等間隔で周期的に追加部材に形成されている。そのため、この構成では、入射波と、反射波とが効率的に相殺されるため、制振構造の振動がより低減する。
【0013】
(5)上記形態の制振構造において、前記追加部材の前記複数の凸部は、周期的に配列されていてもよい。
この構成によれば、複数の凸部が直線や周方向にそって周期的に配列されることにより、制振構造は、所定の周波数域でバンドギャップを有するため、制振構造の振動が大きく低減する。
【0014】
(6)上記形態の制振構造において、前記追加部材は、パルプモウルドによって形成されていてもよい。
この構成によれば、追加部材がパルプモウルドで形成されているため、主部材の表面に沿って追加部材の形を変化させながら主部材に固定できる。また、パルプモウルドの密度が金属の密度と比較して小さいため、制振構造の重量の増加をより抑制した上で、制振構造を伝わる振動を低減できる。
【0015】
(7)上記形態の制振構造において、前記追加部材は、射出成形された樹脂によって形成されていてもよい。
この構成によれば、主部材の形状に合わせた形状の追加部材を成型しやすい。
【0016】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、制振構造、吸音材、遮音材、これらを用いた構造体、これらの製造方法、制振方法、吸音方法、および遮音方法の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態としての制振構造体の概略斜視図である。
図2】ZX平面に平行な図1のA-A断面の概略図である。
図3】比較例1の構造体の概略断面図である。
図4】比較例2の構造体の概略断面図である。
図5】実施例および比較例1,2の各単位セルの分散曲線についての説明図である。
図6】実施例および比較例1,2の各単位セルの分散曲線についての説明図である。
図7】実施例および比較例1,2の各単位セルの分散曲線についての説明図である。
図8】実施例および比較例1,2の入力点に加重を加える場合の説明図である。
図9】実施例および比較例1,2の入力点に加重を加える場合の説明図である。
図10】実施例および比較例1,2の入力点に加重を加える場合の説明図である。
図11】加重が加わった場合の実施例および比較例1,2の変位についての説明図である。
図12】変形例における制振構造体が備える追加部材の概略上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<実施形態>
図1は、本発明の一実施形態としての制振構造体10の概略斜視図である。図1に示されるように、制振構造体(制振構造)10は、平面を有する平板状の主部材1と、主部材1における一方の面に固定された追加部材2とを備えている。制振構造体10は、主部材1を伝わる振動を減衰させるために、追加部材2が加えられた構造体である。なお、図1には、X軸,Y軸,Z軸で構成される直交座標系が示されている。この直交座標系は、図2以降で説明する図2~4,8~10,12に示される各直交座標系と対応している。この直交座標系では、主部材1の厚さ方向に平行なZ軸と、主部材1の面方向に平行なX軸およびY軸を定義した。
【0019】
本実施形態の主部材1は、金属で形成されている。追加部材2は、主部材1の密度よりも小さい密度のパルプモウルドで形成されている。図1に示されるように、追加部材2には、X軸およびY軸に沿って周期的に形成された複数の凸部21が形成されている。複数の凸部21は、追加部材2が主部材1に固定される第1の面FC1とは逆側の第2の面FC2に形成されている。本実施形態の複数の凸部21のそれぞれは、同じ形状を有している。
【0020】
図2は、ZX平面に平行な図1のA-A断面の概略図である。図2に示されるように、主部材1の厚さは、t1である。追加部材2の厚さは、主部材1の厚さt1よりも小さいt2である。追加部材2の第1の面FC1側には、XY平面において凸部21に対応する位置に凹部22が形成されている。換言すると、凸部21内には、空間SPが形成されている。XY平面において凹部22が形成されていない接触面PLと、主部材1の面とが接着剤によって接着されることにより、主部材1と追加部材2とが固定されている。
【0021】
図2に示されるように、凸部21の第1の面FC1からの高さ(突出長さ)は、h21であり、主部材1の厚さt1よりも大きい。周期的に形成された複数の凸部21間の距離は、L21である。ZX平面における凹部22は、Z軸正方向側を短い上辺とし、Z軸負方向側を長い辺を下辺とする台形状の断面を有する。凹部22の高さは、h22である。凸部21の高さh21と、凹部22の高さh22との差は、追加部材2の厚さt2である。以降では、凸部21を1つ含む制振構造体10の単位セルCE10について各種評価を行う。なお、図2の断面図を用いて、ZX平面における凸部21と凹部22とについて説明したが、本実施形態の制振構造体10では、YZ平面における凸部21と凹部22との形状および位置関係も、ZX平面における形状および位置関係と同じである。
【0022】
以下では、実施例としての制振構造体10および2つの比較例1,2について、振動応答について評価した。図3は、比較例1の構造体11の概略断面図である。図3に示されるように、比較例1の構造体11は、制振構造体10から追加部材2を削除した主部材1のみで構成される構造体である。そのため、構造体11における主部材1の厚さt1およびXY平面に平行な面積は、制振構造体10における主部材1の面積と同じである。構造体11の単位セルCE11のXY平面における大きさは、XY平面において、制振構造体10の単位セルCE10と同じである。
【0023】
図4は、比較例2の構造体11xの概略断面図である。図4に示されるように、比較例2の構造体11xは、制振構造体10の主部材1に、追加部材2xが固定された構造体である。追加部材2xは、制振構造体10の追加部材2に凸部21と凹部22とのいずれもが形成されていない平板状の部材である。追加部材2xは、XY平面において主部材1と同じ面積を有する。追加部材2xは、主部材1に対向する第1の面FC1xを接触面PLxとして、主部材1のXY平面に平行な面の全面に固定されている。追加部材2xは、制振構造体10の追加部材2と同じ厚さt2を有する。構造体11xの単位セルCE11xのXY平面における大きさは、XY平面において、制振構造体10の単位セルCE10と同じである。
【0024】
図5ないし図7は、実施例および比較例1,2の各単位セルCE10,CE11,CE11xの分散曲線C11~C14,C21~C24,C31~C34についての説明図である。図5ないし図7に示される分散曲線C11~C14,C21~C24,C31~C34は、非特許文献1に記載された分散曲線の導出のための定式化を用いて算出された分散曲線である。図5ないし図7に示されるように、分散曲線C11~C14,C21~C24,C31~C34は、周波数(Fequency(Hz))に応じて変化する、各単位セルCE10,CE11,CE11xにおける単位長さ当たりの波数(Wave number(2π・m-1))の変化である。
【0025】
図5には、制振構造体10における単位セルCE10の分散曲線C11~C14が示されている。図5に示される4つの分散曲線C11~C14のうち、実線で示された分散曲線C11では、周波数f1から周波数f2までの間で、ほぼ一定の波数を維持している。そのため、単位セルCE10は、所定の周波数である周波数f1から周波数f2までの間でバンドギャップを形成する。このバンドギャップでは、制振構造体10を伝わる弾性波の伝播が抑制される。
【0026】
図6には、構造体11における単位セルCE11の分散曲線C21~C24が示されている。図7には、構造体11xにおける単位セルCE11xの分散曲線C31~C34が示されている。図6および図7に示されるように、いずれの分散曲線C21~C24,C31~C34も、周波数が増えると、波数が増える略比例関係にある。すなわち、比較例1,2の単位セルCE11,CE11xは、バンドキャップを形成していない。
【0027】
次に、以上で得られた分散曲線からバンドギャップにおける振動低減を確認するための評価を行った。図8ないし図10は、実施例および比較例1,2の入力点P1に加重Fを加える場合の説明図である。図8ないし図10では、各構造体10,11,11xにおけるX軸負方向側のYZ平面が壁WLに固定された状態で、X軸正方向側の入力点P1にZ軸正方向側に加重Fが加えられた概略断面図が示されている。なお、図8ないし図10では、主部材1と、追加部材2,2xとの上下の位置が反転している。
【0028】
図11は、加重Fが加わった場合の実施例および比較例1,2の変位についての説明図である。図11には、図8ないし図10で示された加重Fが加わった場合に、入力点P1と同じ位置を出力点P1として、有限要素法によって算出した、振動数に対する出力点P1の変位(displacement(dB))の変化が示されている。図11では、実施例の出力変位が実線の曲線C1で示され、比較例1の出力変位が破線の曲線C2で示され、比較例2の出力変位が一点鎖線の曲線C3で示されている。
【0029】
図11の曲線C1で示されるように、バンドギャップが形成されている周波数f1から周波数f2までの周波数域では、他の周波数域とは異なり、共振モードが存在していない。一方で、比較例1,2の各曲線C2,C3では、周波数f1から周波数f2を含む全周波数域で、共振モードが発生している。すなわち、実施例の制振構造体10は、比較例1,2の構造体11,11xと比較して、構造体内を伝わる振動をより低減できる。
【0030】
以上説明したように、本実施形態の制振構造体10では、主部材1に固定される追加部材2は、主部材1の密度よりも小さく、第2の面FC2に複数の凸部21が形成されている。凸部21の第1の面FC1からの高さh21は、主部材1の厚さt1よりも大きい。追加部材2には第2の面FC2に形成された凸部21が存在するため、凸部21の高さ方向に沿った制振構造体10の断面二次モーメントは、追加部材2が固定されていない主部材1単体の断面二次モーメントよりも大きい。そのため、制振構造体10を伝わる弾性波が阻止されて、振動が低減する。さらに、追加部材2の密度は、主部材1の密度よりも小さい。この結果、本実施形態では、制振構造体10の重量の増加を抑制した上で、制振構造体10の剛性分布によって振動を低減できる。
【0031】
また、本実施形態の追加部材2の第1の面FC1側には、XY平面において凸部21に対応する位置に凹部22が形成されている。追加部材2内の凹部が形成されることにより、追加部材2内に空間SPが形成される。そのため、凸部21によって制振構造体10の断面二次モーメントを増加させた上で、追加部材2の重量の増加を抑制できる、すなわち、制振構造体10の重量の増加を抑制できる。また、プレス加工によって簡単に、凸部21に対応する位置に凹部22が形成された追加部材2を作成することができる。
【0032】
また、本実施形態の追加部材2の複数の凸部21は、それぞれ同じ形状を有している。同じ断面二次モーメントを有する複数の凸部21が追加部材2に形成されることにより、一の凸部21に入射する入射波は、他の凸部21によって反射される反射波と相殺し合う。その結果、制振構造体10は、所定の周波数域(例えば、周波数f1から周波数f2の周波数域)でバンドギャップを有するため、制振構造体10を伝わる振動が大きく低減する。
【0033】
また、本実施形態の追加部材2の各凸部21間の距離L21は、それぞれ同じである。そのため、制振構造体10に入射する入射波と、反射波とが効率的に相殺されて、制振構造体10を伝わる振動が大きく低減する。
【0034】
また、本実施形態の追加部材2の複数の凸部21は、周期的に配列されている。周期的に配列された複数の凸部21によって、制振構造体10は、所定の周波数域でバンドキャップを有する。そのため、制振構造体10を伝わる振動が大きく低減する。
【0035】
また、本実施形態の追加部材2は、パルプモウルドによって形成されている。そのため、主部材1の表面に沿って追加部材2の形を変化させながら主部材1に固定できる。また、パルプモウルドの密度が金属の密度と比較して小さいため、制振構造体10の重量の増加を抑制した上で、制振構造体10を伝わる振動を低減できる。
【0036】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0037】
上記実施形態では、制振構造体10を構成する主部材1および追加部材2の形状および材質等の一例について説明したが、制振構造体10の構成については種々変形可能である。例えば、主部材1は、金属以外の材質で形成されていてもよく、樹脂などで形成されていてもよい。主部材1の形状は、平面ではなく、曲面を有する平板状であってもよい。例えば、主部材1の形状は、球状であってもよいし、正弦波のように波が形成されている曲面であってもよい。
【0038】
追加部材2は、パルプモウルド以外の材料で形成されていてもよい。他の実施形態の追加部材2として、射出成形された樹脂によって形成されていることが好ましい。この場合に、主部材1の形状に合わせた追加部材2を成形しやすくなる。また、追加部材2は、主部材1よりも密度の小さい金属で形成されていてもよく、主部材1の密度よりも小さい密度の材料から選択可能である。
【0039】
追加部材2の形状についても、種々変形可能である。追加部材2は、複数の凸部21を有しており、複数の凸部21のうち少なくとも1つの高さh21が、主部材1の厚さt1よりも大きければよい。複数の凸部21のそれぞれは、異なる形状を有してもよい。例えば、追加部材2には、2種類の形状の凸部が形成され、一の凸部が周期的に配置され、他の凸部が非周期的に配置されていてもよい。複数の凸部21の少なくとも1つの高さh21が、主部材1の厚さt1よりも大きければよい。また、高さが主部材1よりも小さい凸部が第2の面FC2に形成されていてもよい。また、追加部材2における凸部21間の距離L21は、必ずしも同じである必要はなく、異なる距離であってもよい。
【0040】
図12は、変形例における制振構造体10aが備える追加部材2aの概略上面図である。変形例の制振構造体10aの追加部材2aには、矩形状の中心線OLaに沿って8個の凸部21aが形成され、矩形状の中心線OLbに沿って4個の凸部21bが形成されている。また、変形例の追加部材2aの中心には、凸部21a,22aとは異なる形状の凸部21cが形成されている。図12に示されるように、追加部材2,2aに形成された凸部21,21a,21bは、特定の直線(例えば、X軸に平行な直線)ではなく、矩形状パターンや曲線パターンに沿って周期的に配列されていてもよい。また、追加部材2,2aに形成される凸部21,21a,21bは、矩形形状以外の異なる形状を有していてもよく、凸部21,21a,21bは互いに異なる形状であってもよい。
【0041】
追加部材2には、凸部21の位置に対応している凹部22が形成されていなくてもよい。この場合、凸部21は中実の構成となる。また、複数の凸部21のうちの一部に対応する位置に凹部22が形成され、他の凸部21に対応する位置に、凹部22と異なる形状の凹部が形成されていてもよい。また、凹部22とは別に、凸部21に対応していない位置に、異なる凹部が形成されていてもよい。
【0042】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0043】
1…主部材
2,2a…追加部材
10,10a…制振構造体(制振構造)
11,11x…比較例の構造体
21,21a,21b,21c…凸部
22…凹部
C1~C3…曲線
C11~C14,C21~C24,C31~C34…分散曲線
CE10,CE11,CE11x…単位セル
F…加重
FC1,FC1x…第1の面
FC2…第2の面
h21…凸部の高さ(突出長さ)
h22…凹部の高さ
L21…凸部間の距離
OLa,OLb…中心線
P1…入力点、出力点
PL,PLx…接触面
SP…空間
t1…主部材の厚さ
t2…追加部材の厚さ
WL…壁
f1,f2…周波数
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12