(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】ブレイクフィルタの製造方法
(51)【国際特許分類】
B01D 39/20 20060101AFI20221207BHJP
C04B 38/00 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
B01D39/20 D
C04B38/00 303Z
(21)【出願番号】P 2019224976
(22)【出願日】2019-12-13
【審査請求日】2021-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】507182807
【氏名又は名称】クアーズテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【氏名又は名称】木下 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100187506
【氏名又は名称】澤田 優子
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 裕樹
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-156685(JP,A)
【文献】特開平08-337876(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 39/20-41/04
C04B 38/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のセラミックス多孔体と、
前記セラミックス多孔体の一端を封止する蓋部と、
前記蓋部の中心から前記セラミックス多孔体の径内を通って他端方向に延びる、円筒状かつ周側面に貫通孔が設けられた芯棒と、
前記セラミックス多孔体の前記他端を固定する板材と、
前記板材を貫通する前記芯棒に前記板材の裏面側で接続する継手と、
前記継手内に流入する気体の流量を規制するオリフィスと、を備え、
前記オリフィスを介して前記継手内に流入する気体は、前記芯棒に設けられた前記貫通孔を経由し、前記セラミックス多孔体を透過して外部へ流出する
ブレイクフィルタの製造方法において、
前記セラミックス多孔体のガス流量を予め測定し、該測定値に応じて前記継手内に設けるオリフィスの内径を選択することを特徴とするブレイクフィルタの製造方法。
【請求項2】
前記セラミックス多孔体は、炭化ケイ素を主成分とする焼結体であることを特徴とする請求項1に記載のブレイクフィルタ
の製造方法。
【請求項3】
前記セラミックス多孔体と前記蓋部との間、および、前記セラミックス多孔体と前記板材との間には、ポリテトラフルオロエチレンを主成分とするガスケットが設けられ、
前記蓋部、前記芯棒、前記継手はそれぞれ螺子部を有し、前記芯棒が前記蓋部及び前記継手と螺合することにより、または、芯棒が板材裏面で溶接されることにより、蓋部、セラミックス多孔体、板材、継手が一体化されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のブレイクフィルタ
の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレイクフィルタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程では、プロセス装置内部を減圧した状態でプロセスが行われる。例えば、半導体ウエハをプロセス装置の内部に搬送する前に、ロードロック室(予備真空室)と呼ばれる減圧装置で減圧が行われる。このロードロック室は、大気中のパーティクルや水分等を除去し、半導体ウエハの搬入時にプロセス装置内部にパーティクルや水分等が混入することを防ぐ役割を担っている。
【0003】
このロードロック室の動作について説明すると、ロードロック室に半導体ウエハがセットされ、ロードロック室内部が減圧状態になされる。その後、ロードロック室の半導体ウエハがプロセス装置内部に搬入され、半導体ウエハのプロセス処理が行われる。そして、このプロセス処理の後、半導体ウエハはプロセス装置内部からロードロック室に搬出される。その後、ロードロック室は減圧状態から大気圧に戻され、半導体ウエハはロードロック室から搬出される。
このように、半導体ウエハのプロセス処理のため、ロードロック室は、内部の減圧と大気開放が繰り返される。
【0004】
ところで、半導体ウエハの製造コスト削減のため、半導体ウエハのプロセス処理のトータル時間の短縮が求められている。ロードロック室の気圧を大気圧に戻すまでの時間を短縮することは、前記トータル時間の短縮に繋がるため、望ましい。
しかしながら、ロードロック室を減圧状態から一気に大気開放を行うと、ロードロック室に気流の変化が生じ、ロードロック室のパーティクルが舞い上がり、半導体ウエハを汚染する。
そのため、ロードロック室の大気開放では、時間を短縮させながらも気圧および気流の急激な変化を緩和する必要がある。この目的達成のため、本出願人は、既に、ロードロック室のガス導入口に設置される、ブレイクフィルタを提案している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示されたブレイクフィルタは、ブレイクフィルタとして機能する円筒状のセラミックス多孔体を有している。このセラミックス多孔体は焼結等の製造工程を経て製造されるが、製造されるセラミックス多孔体ごとに、気孔径の大きさ、気孔率等にばらつきが生じ、同一のセラミックス多孔体を複数製造することは困難であった。
更に言えば、このセラミックス多孔体ごとに、気孔径の大きさ、気孔率等にばらつきが生じるため、ブレイクフィルタの個体差によって気流の急激な変化を緩和する効果にバラツキが生じ、またロードロック室の気圧を大気圧に戻すまでの時間にバラツキが生じるという技術的課題があった。
【0007】
本発明者は、セラミックス多孔体の製造工程を見直し、同一のセラミックス多孔体を複数製造するのではなく、気孔径の大きさ、気孔率等にばらつきがあるセラミックス多孔体を用いることを前提に、上記技術的課題を解決することを検討し、研究した。
その結果、セラミックス多孔体の気孔径や、気孔率等にばらつきがあっても、流量のバラツキを抑制でき、ロードロック室の気圧を大気圧に戻すまでの時間が略同一となるブレイクフィルタを想到し、本発明を完成した。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、フィルタエレメントの気孔の個体差に起因する流量のバラツキを抑制することができるブレイクフィルタの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するためになされた本発明に係るブレイクフィルタの製造方法は、円筒状のセラミックス多孔体と、前記セラミックス多孔体の一端を封止する蓋部と、前記蓋部の中心から前記セラミックス多孔体の径内を通って他端方向に延びる、円筒状かつ周側面に貫通孔が設けられた芯棒と、前記セラミックス多孔体の前記他端を固定する板材と、前記板材を貫通する前記芯棒に前記板材の裏面側で接続する継手と、前記継手内に流入する気体の流量を規制するオリフィスと、を備え、前記オリフィスを介して前記継手内に流入する気体は、前記芯棒に設けられた前記貫通孔を経由し、前記セラミックス多孔体を透過して外部へ流出するブレイクフィルタの製造方法において、前記セラミックス多孔体のガス流量を予め測定し、該測定値に応じて前記継手内に設けるオリフィスの内径を選択することを特徴としている。
【0010】
上記の構成のブレイクフィルタでは、オリフィスが継手内に流入する気体の流量を制御することにより、フィルタエレメントの気孔の個体差に起因する流量のバラツキを抑制することができる
即ち、本発明に係るブレイクフィルタは、チャンバーの大気開放における時間を短縮させながらも気圧および気流の急激な変化を緩和することができるだけでなく、フィルタエレメントの気孔の個体差に起因する流量のバラツキを抑制することができる。その結果、チャンバー内のパーティクル抑制効果のバラツキも少なく、所定のパーティクル抑制効果を得ることができる。
【0011】
ここで、前記セラミックス多孔体は、炭化ケイ素を主成分とする焼結体であることが好ましい。炭化ケイ素の焼結体は、適度な気孔率を有する三次元網目構造を有しているため、セラミックス多孔体として好適である。
【0012】
また、前記セラミックス多孔体と前記蓋部との間、および、前記セラミックス多孔体と前記板材との間には、ポリテトラフルオロエチレンを主成分とするガスケットが設けられ、前記蓋部、前記芯棒、前記継手はそれぞれ螺子部を有し、前記芯棒が前記蓋部及び前記継手と螺合すること等により、蓋部、セラミックス多孔体、板材、継手が一体化されることが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、フィルタエレメントの気孔の個体差に起因する流量のバラツキを抑制することができるブレイクフィルタの製造方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るブレイクフィルタが用いられる減圧装置の概略構成を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係るブレイクフィルタの概略構成を示す部分断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態に係るブレイクフィルタの変形例を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係るブレイクフィルタについて、
図1乃至
図4に基づいて説明する。尚、以下に説明する実施形態は、一つの実施の形態を示すものであり、本発明は以下に説明する実施形態に限定されるものではない。また、添付の図面は模式的なものであり、具体的な寸法精度で記載されたものではない。
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係るブレイクフィルタが用いられる減圧装置の概略構成を示す図であり、減圧装置1としては、例えば半導体製造装置に付随して設けられたロードロック室を例に挙げることができる。
この減圧装置(ロードロック室)1は、チャンバー2の内部に半導体ウエハ3を収容し、半導体製造装置(図示せず)に半導体ウエハ3を搬出入するために、チャンバー2の内部を予備減圧するための装置である。
尚、前記ロードロック室は、上記したように、本発明のブレイクフィルタが用いられる減圧装置の一例であり、例えば、ロードロック室以外にも測長SEMなどにおいても本発明のブレイクフィルタを用いることができる。
【0018】
図1に示されるように、減圧装置1のチャンバー2には、排気口4と導入口5が設けられている。排気口4は、チャンバー2の内部を減圧するためのものであり、外部の真空ポンプ6に接続されている。
一方、導入口5は、チャンバー2の内部に設けられたブレイクフィルタ10に接続されている。導入口5からチャンバー2の内部に導入されるガスは、ブレイクフィルタ10を介してチャンバー2の内部に導入されることになる。
そして、このブレイクフィルタ10は、後述する構成を有することにより、チャンバー2の大気開放における時間を短縮させながらも気圧および気流の急激な変化を緩和する。
【0019】
前記ブレイクフィルタ10は、
図2に示されるように、フィルタエレメント11と、蓋部12と、芯棒13と、板材14と、継手15と、オリフィス16と、を備えている。
また、フィルタエレメント11と蓋部12との間、および、フィルタエレメント11と板材14との間には、ガスケット17a,17bが挿入されている。
【0020】
ブレイクフィルタ10の外形は特に限定されるものではないが、例えば、
図2に示されるように、フィルタエレメント11を円筒形状とし、ほぼ円板形状の蓋部12と板材14とによってフィルタエレメント11を挟持する構成が好ましい。
このような構成にあっては、ガスケット17a,17bを、フィルタエレメント11とほぼ同一径のリング形状とすることできる。
【0021】
フィルタエレメント11は、いわゆるセラミックス多孔体であり、例えば炭化ケイ素(SiC)を主成分とする焼結体とすることが好ましい。
また、炭化ケイ素以外にも、例えば、アルミナ(Al2O3)やシリカ(SiO2)を用いることができる。
これら材料を用いたセラミックス多孔体は、適度な気孔率を有する三次元網目構造を有しており、フィルタエレメント11に用いれば、大気開放時に気圧および気流の急激な変化を緩和することが可能である。
尚、フィルタエレメント11として好適なセラミックス多孔体の特性および製造方法は後に例示する。
【0022】
図2に示されるように、蓋部12は、フィルタエレメント11の一端を封止するように構成されている。一方、芯棒13は、蓋部12の中心からフィルタエレメント11の径内を通って、フィルタエレメント11の他端方向に延びるように設けられている。
また、板材14は、フィルタエレメント11の他端を固定するように配置されている。そして、継手15は、板材14を貫通する芯棒13を板材14の裏側から固定している。
尚、板材14は、チャンバー2の壁面にOリング18を介して、ネジ19により固定される。
【0023】
蓋部12、芯棒13、板材14および継手15は金属で形成されている。例えば、蓋部12、芯棒13、板材14および継手15には、ステンレス鋼(SUS;Steel Use Stainless)やニッケル(Ni)を用いることができる。
【0024】
また、蓋部12には螺子部12aが形成され、芯棒13には螺子部13aが形成され、両者が螺合するように構成されている。また、芯棒13の他端部には、螺子部13bが形成され、継手15と螺合するように構成されている。
この継手15は、雄ナット15Aと雌ナット15Bで構成され、前記したように雄ナット15Aの内周面には、芯棒13の螺子部13bと螺合する螺子部15aが形成されている。雄ナット15Aの外周面には、雌ナット15Bの螺子部15cと螺合する螺子部15bが形成されている。
したがって、蓋部12の螺子部12aに、芯棒13の螺子部13aが螺合し、継手15の螺子部15aに、芯棒13の螺子部13bが螺合することによって、蓋部12と継手15の間に挟まれて、板材14及びフィルタエレメント11が固定される。
【0025】
更に、導入管20の先端面と芯棒13の先端面の間に、オリフィス16を挟み、雄ナット15Aの外周面の螺子部15bに、雌ナット15Bの螺子部15cと螺合させることにより、継手15内にオリフィス16が装着される。
そして、フィルタエレメント11、蓋部12、芯棒13、板材14、継手15は一体化される。この時、雄ナット15Aと板材14との間には、図示しないガスケットや座金を使用することにより、気密性を高めることが好ましい。
【0026】
なお、蓋部12、板材14、フィルタエレメント11の固定は、継手15bのネジ構造によらず、
図4のように芯棒13を板材14に溶接して(溶接部Xを形成して)固定しても良い。
また、
図4に示すように、導入管20の先端部に径方向に突出した突起部20aを形成し、芯棒13の先端部に径方向に突出した突起部13cを形成し、導入管20の先端面と芯棒13の先端面の間に、オリフィス16を挟む。
そして、雄ナット15Aの外周面の螺子部15bに、雌ナット15Bの螺子部15cを螺合させ、雄ナット15Aの先端部で突起部13cを押圧し、雌ナット15Bの先端部で突起部20a押圧することにより、継手15内にオリフィス16が装着するようにしても良い。
尚、
図4において、
図2に示された部材と同一部材は、同一符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0027】
また、ブレイクフィルタ10の内部には、フィルタエレメント11と蓋部12と板材14とによって内部空間Sが形成されている。
また、芯棒13は円筒状であり、かつ周側面に貫通孔(図示せず)が設けられおり、継手内15に流入する気体は、芯棒13に設けられた貫通孔(図示せず)を経由し、フィルタエレメント11と蓋部12と板材13とによって形成された内部空間Sに流入する。
その後、継手内15に流入する気体は、フィルタエレメント11を透過してブレイクフィルタ10の外部へ流出する。
【0028】
前記ガスケット17a,17bは、前記したように、フィルタエレメント11と蓋部12と板材14とによって形成された内部空間Sの気密性を高めるために、フィルタエレメント11と蓋部12との間、および、フィルタエレメント11と板材14との間に設けられている。
これにより、継手内15に流入する気体がセラミックス多孔体を透過して外部へ流出することを確実にする。
【0029】
このガスケット17a,17bは、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)とすることが好ましい。PTFEは耐薬品性や非汚染性に優れおり半導体産業でも一般に用いられているものを用いることができる。
尚、ガスケット17a,17bは、PTFEに対しカーボンブラックやカーボンナノチューブを添加することによって導電性を持たせることも可能である。ガスケット17a,17bが、導電性を有することにより、フィルタエレメント11が帯電することを抑制することができる。フィルタエレメント11の帯電は、パーティクルの付着の原因となるので、導電性を有するガスケット17a,17bを用いることで、フィルタエレメント11に付着したパーティクルの混入を抑制することができる。
【0030】
ここで、フィルタエレメント11として好適なセラミックス多孔体としては、例えば、本出願人が特開2019-156685で提案した、炭化ケイ素(SiC)を主成分とする焼結体を用いることができる。
この炭化ケイ素の焼結体は、複数の炭化ケイ素の粒子が結合されて骨格をなし、それらの間に多数の気孔が形成されている。フィルタエレメント11として好適なセラミックス多孔体(炭化ケイ素の焼結体)の平均気孔径は、3μmを超えて9μm以下(好ましくは3μmを超えて6μm以下)であり、気孔率は35%以上55%以下である。
平均気孔径の測定は、水銀圧入法を用いることができる。また、炭化珪素粒子の平均粒子径の測定には、SEM画像解析法を用いることができる。
【0031】
前記フィルタエレメント11の平均気孔径が3μm以下の場合、圧力損失が大きくガス供給量が少なくなる。そのため、大気開放時に大気圧に到達するまでの時間が大幅に長くなる。一方、平均気孔径が9μmを超えると、パーティクル捕集性能、および気流の急激な変化を緩和する機能が低下する。
【0032】
また、気孔率が35%未満の場合、ガス供給量が小さくなり、大気圧に達するまでの時間が大幅に長くなる。一方、気孔率が55%を超えると、気流の急激な変化を緩和する性能が低下する。
【0033】
上記のようなフィルタエレメント11は、平均粒子径0.5μm~5μmの炭化ケイ素の原料に有機バインダーを添加、混合し、成形後に非酸化性雰囲気下で焼結することで製造することができる。
例えば、焼結は、2200℃~2400℃で2時間行うとすることができる。炭化ケイ素の原料の平均粒子径0.5μm~5μmの根拠は、0.5μm未満の場合、気孔率が小さくなりガス供給量が小さくなって、大気圧に達するまでの時間が大幅に長くなる。5μmを超えると、気孔径が大きくなりパーティクル捕集性能、および気流の急激な変化を緩和する機能が低下する。
【0034】
炭化ケイ素の焼結体を得るためには、2200℃より低い温度での加熱でも可能であるが、粒子成長が不十分となって炭化ケイ素の微粉が残存し、パーティクルの発生源となるとともに、気孔径が小さくなり、大気圧に達するまでの時間が大幅に長くなる。また、粒子成長が不十分となって、強度も不十分になる。
一方、焼結温度が2400℃より高い場合は、粒子成長が進み気孔径が大きくなりパーティクル捕集性能、および気流の急激な変化を緩和する機能が低下する。
焼結温度が2200℃~2400℃の場合、炭化ケイ素の微粉が気化ないし凝集するのでパーティクルの発生源が少なく、また、強度も十分になる。
【0035】
炭化ケイ素の原料粒子は、平均粒子径1μm未満の炭化ケイ素の微粒子と平均粒子径1μm以上の炭化ケイ素の粒子を混合したものとし、平均粒子径1μm未満の炭化珪素微粒子を、炭化珪素粒子全体の10wt%以上20wt%以下とすることが好ましい。
このように準備した炭化ケイ素の原料粒子は、平均粒子径0.5μm以上5μm以下でありつつ、粒子全体の大きさの割合が適切に制御され、目的とする気孔や骨格構造が作りやすくなる。
【0036】
更に、このブレイクフィルタ10には、前記したように、オリフィス16が設けられている。
図3に示されるように、オリフィス16は、継手15の内径を横断するように配置した板材であり、板材の一部に開口16aを有している。オリフィス16は、継手15内に流入する気体の流量を規制する役割を果たしている。
このオリフィスには、例えば、SUSやNi等の材質を用いることが好ましい。
【0037】
図3に示されるオリフィス16は、継手15を導入管20に接続する際のガスケットと共通化している。
このようにガスケットと機能が共通化したオリフィス16は、オリフィスガスケットと呼ばれることもある。ここで、このオリフィス16と一般的なガスケットとの違いについて留意する。
【0038】
ガスケットの機能は、継手15を導入管20に接続する際の気密性を高めることにある。したがって、ガスケットも、継手15の内径を横断するように配置した板材であり、板材の一部に開口16aを有しているが、開口16aの径は、継手15の径と実質的に同一である。すなわち、ガスケットの開口16aの径dと継手15の径Dの関係は、d=Dとなる。
【0039】
一方、オリフィス16は、継手15内に流入する気体の流量を規制する役割を果たすために、オリフィス16の開口16aの径dが継手15の径Dよりも小さい。すなわち、オリフィス16の開口16aの径dと継手15の径Dの関係は、d<Dとなる。
【0040】
上記のような関係から、本発明の実施形態に係るブレイクフィルタ10は、開口16aの径dと継手15の径Dの関係がd<Dを満たしていることをもって、オリフィスとガスケットと機能が共通化したオリフィスガスケットが用いられていても、継手15内に流入する気体の流量を規制するオリフィス16が用いられているとみなされる。
一方、本発明の実施形態に係るブレイクフィルタ10は、
図3に示されるようなオリフィスとガスケットと機能が共通化したオリフィスガスケットではなく、別個独立したオリフィス16を備えるとしてもよい。
【0041】
(実施例)
ここで、上記説明した本発明の実施形態に係るブレイクフィルタ10の効果の検証について説明する。効果の検証に用いたフィルタエレメント11に用いる炭化ケイ素の焼結体は、以下のように作成した。
【0042】
まず、平均粒子径0.7μmの炭化ケイ素を用意する。この炭化ケイ素の100重量部に対し、バインダーとしてポリビニルアルコール(PVA)を1重量部加え、水とともに混合した。その後、乾燥させたものを解砕し、CIP(Cold Isostatic Pressing)成形によって、円筒形状に成形した。この成形体を摂氏2300度で2時間加熱し、焼結した。得られた焼結体を外径19mm、内径15mm、長さ37mmに加工し、フィルタエレメントに用いた。
【0043】
このフィルタエレメントを用いて、
図2に示したようなブレイクフィルタを構成した。そしてまた、継手に、継手内に流入する気体の流量を規制するオリフィスを設けた。
【0044】
ここで、本発明の実施形態に係るブレイクフィルタの効果の検証に用いたオリフィスは、開口の径dが2.8~5.5mmのものを用いた。
一方、比較例では、同様のブレイクフィルタにおいて、オリフィスの代わりに5.5mmのガスケットを用いた。
このように構成した実施例および比較例において、ブレイクフィルタを透過する気体の流量を測定した。
実験の条件は、大気開放に相当する標準気圧(0.1MPa)の気体を継手に導入した場合のフィルタエレメントを透過して流出する気体の流量を測定したものである。
【0045】
【0046】
上記検証結果から解るように、本発明の実施に係る実施例1~10では、流量の変動が35~37の間に収まっている。この結果を統計指標で表すと、標準偏差が0.70であり、変動係数が0.019である。
一方、従来通りガスケットを用いた比較例1~10では、流量の変動が36~49まで大きくばらついている。この結果を統計指標で表すと、標準偏差が4.50であり、変動係数が0.107である。
【0047】
このように、本発明の実施形態に係るブレイクフィルタは、フィルタエレメントの気孔の個体差に起因する流量のバラツキを抑制することができる。
また、上記検証結果に従えば、ブレイクフィルタを製造する際に、フィルタエレメントのガス流量を予め測定し、該測定値に応じて継手内に設けるオリフィスの内径を選択することが好ましい。
【0048】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上記の実施形態よって限定されるものではない。
【符号の説明】
【0049】
1 減圧装置
2 チャンバー
3 半導体ウエハ
4 排気口
5 導入口
6 真空ポンプ
10 ブレイクフィルタ
11 フィルタエレメント
12 蓋部
13 芯棒
14 板材
15 継手
15A 雄ナット15A
15B 雌ナット
16 オリフィス
17a,17b ガスケット
20 導入管