(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】光カプラおよび導波路システム
(51)【国際特許分類】
G02B 6/124 20060101AFI20221207BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20221207BHJP
G02B 6/125 20060101ALI20221207BHJP
G02B 6/13 20060101ALI20221207BHJP
G02B 6/12 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
G02B6/124
G01N21/64 G
G01N21/64 F
G02B6/125 301
G02B6/13
G02B6/12 371
G02B6/12 301
(21)【出願番号】P 2019532023
(86)(22)【出願日】2017-12-15
(86)【国際出願番号】 US2017066717
(87)【国際公開番号】W WO2018112367
(87)【国際公開日】2018-06-21
【審査請求日】2020-12-15
(32)【優先日】2016-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516144164
【氏名又は名称】クアンタム-エスアイ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】QUANTUM-SI INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ロスバーグ、ジョナサン エム.
(72)【発明者】
【氏名】カビリ、アリ
(72)【発明者】
【氏名】シュミッド、ジェラード
(72)【発明者】
【氏名】シックラー、ジェイソン ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】グレン、ポール イー.
(72)【発明者】
【氏名】ウエスト、ローレンス シー.
(72)【発明者】
【氏名】プレストン、カイル
(72)【発明者】
【氏名】ゴンダレンコ、アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】チプリアニー、ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】ビーチ、ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】ファイフ、キース ジー.
(72)【発明者】
【氏名】ガセミ、ファーシッド
【審査官】百瀬 正之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0084761(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0273034(US,A1)
【文献】国際公開第2015/111458(WO,A1)
【文献】特開平08-271744(JP,A)
【文献】特開2016-065878(JP,A)
【文献】特表2003-532123(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12-6/14
G01N 21/62-21/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集積デバイスであって、
第1のグループの導波路と第2のグループの導波路とを含む複数の導波路
であって、
前記第1のグループの導波路の数は、前記第2のグループの導波路よりも少ない、前記複数の導波路と、
格子領域を有する格子カプラと、
前記格子領域の側面に配置されるとともに異なる幅を有す
る複数の出力導波路
であって、
前記第1のグループの導波路に光学的に結合された第1の出力導波路と、前記第2のグループの導波路に光学的に結合された第2の出力導波路とを含み、前記第1の出力導波路は、前記第2の出力導波路よりも前記格子領域の前記側面の縁に近接して位置しており、かつ前記第2の出力導波路よりも小さな幅を有している、前記複数の出力導波路と、
前記第1の出力導波路と前記第1のグループの導波路との間および前記第2の出力導波路と前記第2のグループの導波路との間に位置している複数の光スプリッタと、を備
える、集積デバイス。
【請求項2】
前記格子領域は、前記集積デバイスの表面に対して実質的に平面方向に配向された複数の格子を含む、請求項
1に記載の集積デバイス。
【請求項3】
前記第2の出力導波路と前記複数の導波路のうちの1つとの間に光学的に結合される光スプリッタの数は、前記第1の出力導波路と前記複数の導波路のうちの別の1つとの間に光学的に結合される光スプリッタの数よりも多い、請求項
1に記載の集積デバイス。
【請求項4】
前記複数の出力導波路および前記複数の光スプリッタは前記格子領域から放射状に分布している、請求項1または2に記載の集積デバイス。
【請求項5】
前記複数の導波路の各々は、前記格子領域内の格子に対して実質的に垂直に配置されている、請求項1または2に記載の集積デバイス。
【請求項6】
前記複数の光スプリッタのうちの少なくとも1つは、前記格子カプラから1mm未満の位置に配置されている、請求項1または2に記載の集積デバイス。
【請求項7】
前記複数の導波路の各々は、前記複数の導波路のうちの1つに沿った光伝播方向に対して垂直な方向に、遠位位置よりも前記格子カプラに近接した位置でより小さくなるテーパ寸法を有している、請求項1または2に記載の集積デバイス。
【請求項8】
前記複数の導波路の各々は、複数の試料ウェルと光学的に結合するように配置されている、請求項1または2に記載の集積デバイス。
【請求項9】
前記複数の導波路のうちの少なくとも1つは、前記複数の試料ウェルのうちの少なくとも1つの試料ウェルと重なる位置において第1の厚さを有するとともに、前記少なくとも1つの試料ウェルと重ならない位置において第2の厚さを有し、前記第1の厚さは前記第2の厚さよりも大きい、請求項
8に記載の集積デバイス。
【請求項10】
前記複数の試料ウェルのうちの少なくとも1つの試料ウェルの表面は、前記複数の導波路のうちの第1の導波路の表面と接している、請求項
8または
9に記載の集積デバイス。
【請求項11】
前記複数の導波路のうちの少なくとも1つはマルチモード導波路であり、前記マルチモード導波路は、当該マルチモード導波路に沿った複数の光モードの伝播をサポートするように構成されている、請求項
8または
9に記載の集積デバイス。
【請求項12】
前記複数の試料ウェルのうちの少なくとも1つと重なる第1の領域では、当該第1の領域とは別の第2の領域よりも前記マルチモード導波路に沿ったパワー分布が広い、請求項
11に記載の集積デバイス。
【請求項13】
前記複数の導波路の各々は、前記複数の試料ウェルのうちの少なくとも1つの試料ウェルと光学的に結合する前記複数の導波路のうちの1つから延びるエバネッセント場を有する励起エネルギーの伝播をサポートするように構成されている、請求項
8または
9に記載の集積デバイス。
【請求項14】
前記複数の試料ウェルのうちの少なくとも1つの試料ウェルは、当該少なくとも1つの試料ウェルの側壁の少なくとも一部に形成された側壁スペーサを含む、請求項
8または
9に記載の集積デバイス。
【請求項15】
前記集積デバイスは少なくとも1つの金属層をさらに含み、前記複数の試料ウェルのうちの少なくとも1つの表面は前記少なくとも1つの金属層から凹んでいる、請求項
8または
9に記載の集積デバイス。
【請求項16】
前記集積デバイスは、前記複数の試料ウェルのうちの1つから光を受け取るように構成されたセンサをさらに備えている、請求項
8または
9に記載の集積デバイス。
【請求項17】
1つの試料ウェルと前記センサとの間の距離は10μm未満である、請求項
16に記載の集積デバイス。
【請求項18】
前記集積デバイスは、前記集積デバイスの表面上に形成された金属層をさらに備えており、前記金属層は、前記複数の試料ウェルのうちの1つのアパーチャと重なる開口部を有している、請求項
8または
9に記載の集積デバイス。
【請求項19】
前記複数の導波路のうちの第1の導波路は、前記複数の試料ウェルのうちの第1の試料ウェルのセットの一部と光学的に結合するように構成されており、
前記複数の導波路のうちの第2の導波路は、前記複数の試料ウェルのうちの第2の試料ウェルのセットの一部と光学的に結合するように構成されており、
前記複数の光スプリッタのうちの1つが前記第1の試料ウェルのセットと前記第2の試料ウェルのセットとの間に配置されるとともに、前記第1および第2の導波路のうちの少なくとも1つに光学的に結合するように構成されている、請求項
8または
9に記載の集積デバイス。
【請求項20】
前記集積デバイスは、前記格子カプラを通過する励起エネルギーを受け取るように配置された1つまたは複数の光検出器をさらに備えている、請求項1または2に記載の集積デバイス。
【請求項21】
前記集積デバイスは、前記格子カプラに近接した領域を通過する励起エネルギーを受け取るように配置された1つまたは複数の光検出器をさらに備えている、請求項1または2に記載の集積デバイス。
【請求項22】
集積デバイスを形成する方法であって、
第1のグループの導波路と第2のグループの導波路とを含む複数の導波路
であって、前記第1のグループの導波路の数は、前記第2のグループの導波路よりも少ない、前記複数の導波路を形成すること、
格子領域を有する格子カプラを形成すること、
前記格子領域の側面に配置されるとともに異なる幅を有す
る複数の出力導波路
であって、
前記第1のグループの導波路に光学的に結合された第1の出力導波路と、前記第2のグループの導波路に光学的に結合された第2の出力導波路とを含み、前記第1の出力導波路は、前記第2の出力導波路よりも前記格子領域の前記側面の縁に近接して位置しており、かつ前記第2の出力導波路よりも小さな幅を有している、前記複数の出力導波路を形成すること、
前記第1の出力導波路と前記第1のグループの導波路との間および前記第2の出力導波路と前記第2のグループの導波路との間に位置している複数の光スプリッタを形成すること、を備
える、方法。
【請求項23】
前記複数の光スプリッタを形成することは、前記第2の出力導波路と前記複数の導波路のうちの1つとの間に、前記第1の出力導波路と前記複数の導波路のうちの別の1つとの間の光スプリッタの数よりも多い数の光スプリッタを形成することをさらに含む、請求項
22に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、概して、光エネルギーを装置に結合し、光エネルギーを装置の多くの領域に分配するための装置、方法、および技術に関する。生物学的試料および/または化学的試料の並行した定量分析を実行するために光学デバイスが使用され得る。
【背景技術】
【0002】
生物学的試料の検出および分析は、生物学的検定(「バイオアッセイ」)を用いて行われ得る。バイオアッセイは通常、装置を操作しバイオアッセイを実施するために訓練された研究科学者を必要とする大型の高価な実験装置を含む。さらに、バイオアッセイは、検出および定量化に大量の特定種類の試料が必要とされるように、典型的には大量に行われる。
【0003】
いくつかのバイオアッセイは、特定の波長の光を放出する発光マーカーで試料をタグ付けすることによって行われる。マーカーを光源で照射して発光させ、ルミネッセンス光を光検出器で検出してマーカーによって放出されたルミネッセンス光の量を計る。発光マーカーを使用するバイオアッセイは、典型的には、試料を照射するための高価なレーザ光源と、照射された試料からの発光を集めるための複雑な発光検出光学系および電子機器とを必要とする。
【発明の概要】
【0004】
いくつかの実施形態は、複数の導波路と、格子領域を有する格子カプラと、異なる幅を有し前記格子カプラと光学的に結合するように構成された複数の出力導波路と、複数の光スプリッタとを備える集積デバイスに関する。前記複数の光スプリッタのうちの少なくとも1つは、前記複数の出力導波路のうちの1つと前記複数の導波路のうちの少なくとも2つとの間に配置されている。
【0005】
いくつかの実施形態において、前記格子領域は、前記集積デバイスの表面に対して実質的に平面方向に配向された複数の格子を含む。いくつかの実施形態において、前記複数の出力導波路の各々は、前記格子領域の側面に配置されている。いくつかの実施形態において、前記複数の出力導波路は、第1の出力導波路および第2の出力導波路を含み、前記第1の出力導波路は、前記第2の出力導波路よりも前記格子領域の側面の中心に近接しており、前記第2の出力導波路よりも小さな幅を有している。いくつかの実施形態において、前記複数の出力導波路は、第1の出力導波路および第2の出力導波路を含み、前記第1の出力導波路は、前記第2の出力導波路よりも前記格子領域の側面の縁に近接しており、前記第2の出力導波路よりも小さな幅を有している。いくつかの実施形態において、前記第2の出力導波路と前記複数の導波路のうちの1つとの間の光スプリッタの数は、前記第1の出力導波路と前記複数の導波路のうちの別の1つとの間の光スプリッタの数よりも多い。いくつかの実施形態において、前記複数の出力導波路および前記複数の光スプリッタは前記格子領域から放射状に分布している。いくつかの実施形態において、前記複数の導波路の各々は、前記格子領域内の格子に対して実質的に垂直に配置されている。いくつかの実施形態において、前記複数の光スプリッタのうちの少なくとも1つは、前記格子カプラから1mm未満の位置に配置されている。
【0006】
いくつかの実施形態において、前記複数の導波路の各々は、前記複数の導波路のうちの1つに沿った光伝播方向に対して垂直な方向に、遠位位置よりも前記格子カプラに近接した位置でより小さくなるテーパ寸法を有している。いくつかの実施形態において、前記複数の導波路の各々は、複数の試料ウェルと光学的に結合するように配置されている。いくつかの実施形態において、前記複数の導波路のうちの少なくとも1つは、前記複数の試料ウェルのうちの少なくとも1つの試料ウェルと重なる位置において第1の厚さを有するとともに、前記少なくとも1つの試料ウェルと重ならない位置において第2の厚さを有し、前記第1の厚さは前記第2の厚さよりも大きい。いくつかの実施形態において、前記複数の試料ウェルのうちの少なくとも1つの試料ウェルの表面は、前記複数の導波路のうちの第1の導波路の表面と接している。いくつかの実施形態において、前記複数の導波路のうちの少なくとも1つはマルチモード導波路であり、前記マルチモード導波路は、当該マルチモード導波路に沿った複数の光モードの伝播をサポートするように構成されている。いくつかの実施形態において、前記複数の試料ウェルのうちの少なくとも1つと重なる第1の領域では、当該第1の領域とは別の第2の領域よりも前記マルチモード導波路に沿ったパワー分布が広い。いくつかの実施形態において、前記複数の導波路の各々は、前記複数の試料ウェルのうちの少なくとも1つの試料ウェルと光学的に結合する前記複数の導波路のうちの1つから延びるエバネッセント場を有する励起エネルギーの伝播をサポートするように構成されている。いくつかの実施形態において、前記複数の試料ウェルのうちの少なくとも1つの試料ウェルは、当該少なくとも1つの試料ウェルの側壁の少なくとも一部に形成された側壁スペーサを含む。いくつかの実施形態において、前記集積デバイスは少なくとも1つの金属層をさらに含み、前記複数の試料ウェルのうちの少なくとも1つの表面は前記少なくとも1つの金属層から凹んでいる。いくつかの実施形態において、前記集積デバイスは、前記複数の試料ウェルのうちの1つから光を受け取るように構成されたセンサをさらに備えている。いくつかの実施形態において、1つの試料ウェルとセンサとの間の距離は10μm未満である。いくつかの実施形態において、前記集積デバイスは、前記集積デバイスの表面上に形成された金属層をさらに備えており、前記金属層は、前記複数の試料ウェルのうちの1つのアパーチャと重なる開口部を有している。いくつかの実施形態において、前記複数の導波路のうちの第1の導波路は、前記複数の試料ウェルのうちの第1の試料ウェルのセットの一部と光学的に結合するように構成されており、前記複数の導波路のうちの第2の導波路は、前記複数の試料ウェルのうちの第2の試料ウェルのセットの一部と光学的に結合するように構成されており、前記複数の光スプリッタのうちの1つが前記第1の試料ウェルのセットと前記第2の試料ウェルのセットとの間に配置されるとともに、前記第1および第2の導波路のうちの少なくとも1つに光学的に結合するように構成されている。
【0007】
いくつかの実施形態において、前記集積デバイスは、前記格子カプラを通過する励起エネルギーを受け取るように配置された1つまたは複数の光検出器をさらに備えている。いくつかの実施形態において、前記集積デバイスは、前記格子カプラに近接した領域を通過する励起エネルギーを受け取るように配置された1つまたは複数の光検出器をさらに備えている。
【0008】
いくつかの実施形態は、集積デバイスを形成する方法に関し、当該方法は、複数の導波路を形成すること、格子領域を有する格子カプラを形成すること、異なる幅を有し前記格子カプラと光学的に結合するように構成された複数の出力導波路を形成すること、複数の光スプリッタを形成することを備えている。前記光スプリッタのうちの少なくとも1つは、前記複数の出力導波路のうちの1つと前記複数の導波路のうちの少なくとも2つとの間に配置されている。
【0009】
いくつかの実施形態において、前記格子カプラを形成することは、前記集積デバイスの表面に対して実質的に平面方向に配向された複数の格子を前記格子領域に形成することをさらに含む。いくつかの実施形態において、前記複数の出力導波路を形成することは、前記複数の出力導波路のうち前記格子領域の側面に配置される出力導波路を形成することをさらに含む。いくつかの実施形態において、前記複数の出力導波路を形成することは、第1の出力導波路および第2の出力導波路を形成することをさらに含む。前記第1の出力導波路は、前記第2の出力導波路よりも前記格子領域の側面の中心に近接しており、前記第2の出力導波路よりも小さな幅を有している。いくつかの実施形態において、前記複数の出力導波路を形成することは、第1の出力導波路および第2の出力導波路を形成することをさらに含む。前記第1の出力導波路は、前記第2の出力導波路よりも前記格子領域の側面の縁に近接しており、前記第2の出力導波路よりも小さな幅を有している。いくつかの実施形態において、前記複数の光スプリッタを形成することは、前記第2の出力導波路と前記複数の導波路のうちの1つとの間に、前記第1の出力導波路と前記複数の光導波路のうちの別の1つの間の光スプリッタの数よりも多い数の光スプリッタを形成することをさらに含む。いくつかの実施形態において、前記複数の出力導波路を形成することは、前記格子領域から放射状に分布するように前記複数の出力導波路を形成することをさらに含む。いくつかの実施形態において、前記複数の導波路を形成することは、前記複数の導波路のうち、前記格子領域内の格子に対して実質的に垂直に配置される導波路を形成することをさらに含む。いくつかの実施形態において、前記複数の導波路を形成することは、前記複数の導波路のうちの1つに沿った前記光伝播方向に対して垂直な方向に、遠位位置よりも前記格子カプラに近接した位置でより小さくなるテーパ寸法を有するように前記複数の導波路を形成することをさらに含む。
【0010】
いくつかの実施形態において、前記方法は、複数の試料ウェルを形成することをさらに備えており、前記複数の導波路はそれぞれ前記複数の試料ウェルと光学的に結合するように配置されている。いくつかの実施形態において、前記複数の導波路を形成することは、前記複数の試料ウェルのうちの少なくとも1つの試料ウェルと重なる位置において第1の厚さを有するとともに、前記少なくとも1つの試料ウェルと重ならない位置において第2の厚さを有するように前記複数の導波路のうちの少なくとも1つを形成することをさらに含む。前記第1の厚さは前記第2の厚さよりも大きい。いくつかの実施形態において、前記複数の試料ウェルを形成することは、前記複数の導波路のうちの第1の導波路の表面と接触するように前記複数の試料ウェルのうちの少なくとも1つの試料ウェルの表面を形成することをさらに含む。いくつかの実施形態において、前記複数の導波路を形成することは、マルチモード導波路を形成することをさらに含み、前記マルチモード導波路は、当該マルチモード導波路に沿った複数の光モードの伝播をサポートするように構成される。いくつかの実施形態において、前記複数の導波路の各々は、前記複数の試料ウェルのうちの少なくとも1つの試料ウェルと光学的に結合する前記複数の導波路のうちの1つから延びるエバネッセント場を有する励起エネルギーの伝播をサポートするように構成されている。いくつかの実施形態において、前記複数の試料ウェルを形成することは、複数の試料ウェルのうちの少なくとも1つの試料ウェルの側壁の少なくとも一部に側壁スペーサを形成することをさらに含む。いくつかの実施形態において、前記複数の試料ウェルを形成することは、前記少なくとも1つの金属層を形成すること、および前記複数の試料ウェルのうちの少なくとも1つの表面を前記少なくとも1つの金属層から凹ませて形成することをさらに含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、前記複数の試料ウェルのうちの1つから光を受け取るように構成されたセンサを形成することをさらに備えている。いくつかの実施形態において、1つの試料ウェルとセンサとの間の距離は10μm未満である。いくつかの実施形態において、前記複数の導波路のうちの第1の導波路は、前記複数の試料ウェルのうちの第1の試料ウェルのセットの一部と光学的に結合するように構成されており、前記複数の導波路のうちの第2の導波路は、前記複数の試料ウェルのうちの第2の試料ウェルのセットの一部と光学的に結合するように構成されており、前記複数の光スプリッタのうちの1つが前記第1の試料ウェルのセットと前記第2の試料ウェルのセットとの間に配置されるとともに、前記第1および第2の導波路のうちの少なくとも1つに光学的に結合するように構成されている。
【0011】
いくつかの実施形態は、集積デバイスに関し、当該集積デバイスは、複数の第1の導波路と、格子領域を有する格子カプラと、異なる幅を有し前記格子カプラと光学的に結合するように構成された複数の出力導波路と、複数の光スプリッタとを備えている。前記複数の光スプリッタのうちの少なくとも1つは、前記複数の出力導波路のうちの1つと前記複数の第1の導波路のうちの少なくとも2つとの間に配置されている。
【0012】
いくつかの実施形態は、集積デバイスに関し、当該集積デバイスは、第1の試料ウェルのセットの一部と光学的に結合するように構成された第1の導波路と、第2の試料ウェルのセットの一部と光学的に結合するように構成された第2の導波路と、第1の試料ウェルのセットと第2の試料ウェルのセットとの間に配置され、前記第1および第2の導波路のうちの少なくとも一方に光学的に結合するように構成された光スプリッタとを備えている。
【0013】
いくつかの実施形態において、前記集積デバイスは、前記光スプリッタと光学的に結合するように構成された少なくとも1つの入力導波路をさらに備えている。いくつかの実施形態において、前記集積デバイスは、前記少なくとも1つの入力導波路と光学的に結合するように構成された格子カプラをさらに備えている。いくつかの実施形態において、前記格子カプラの格子は、前記少なくとも1つの入力導波路に対して実質的に平行である。
【0014】
いくつかの実施形態は、集積デバイスに関し、当該集積デバイスは、少なくとも1つの試料ウェルと、前記少なくとも1つの試料ウェルに励起エネルギーを結合するように構成された導波路とを備え、前記導波路は、前記少なくとも1つの試料ウェルと重なる位置において第1の厚さを有するとともに、前記少なくとも1つの試料ウェルと重ならない位置において第2の厚さを有し、前記第1の厚さは前記第2の厚さよりも大きい。
【0015】
いくつかの実施形態において、前記導波路は、当該導波路から延びるエバネッセント場を有する励起エネルギーの伝播をサポートするように構成されている。いくつかの実施形態において、前記導波路は、前記導波路に沿った前記光伝播方向に対して垂直な方向に、遠位位置よりも前記格子カプラに近接した位置でより小さくなるテーパ寸法を有している。いくつかの実施形態において、前記少なくとも1つの試料ウェルの表面は前記導波路の表面と接触している。いくつかの実施形態において、前記少なくとも1つの試料ウェルは、アレイ内に複数の試料ウェルを含む。いくつかの実施形態において、前記少なくとも1つの試料ウェルは前記集積デバイスの金属層から凹んでいる。いくつかの実施形態において、前記導波路はマルチモード導波路であり、前記マルチモード導波路は、当該マルチモード導波路に沿った複数の光モードの伝播をサポートするように構成されている。いくつかの実施形態において、前記少なくとも1つの試料ウェルと重なる第1の領域では、当該第1の領域とは別の第2の領域よりもマルチモード導波路に沿ったパワー分布が広い。いくつかの実施形態において、前記第1の厚さは200nm~400nmの間である。いくつかの実施形態において、前記第2の厚さは100nm~250nmの間である。いくつかの実施形態において、前記導波路は、少なくとも部分的に、窒化シリコンの層から形成されている。いくつかの実施形態において、前記集積デバイスは、前記少なくとも1つの試料ウェルに配置された試料によって放出された放出エネルギーを受け取るように構成されたセンサをさらに備えている。いくつかの実施形態において、前記少なくとも1つの試料ウェルと前記センサとの間の距離は10μm未満である。いくつかの実施形態において、前記少なくとも1つの試料ウェルと前記センサとの間の距離は7μm未満である。いくつかの実施形態において、前記少なくとも1つの試料ウェルと前記センサとの間の距離は3μm未満である。いくつかの実施形態において、前記集積デバイスは、当該集積デバイスの表面上に形成された金属層をさらに備えており、前記金属層は、前記少なくとも1つの試料ウェルのアパーチャと重なる開口部を有している。いくつかの実施形態において、前記金属層は、アルミニウムを有する第1の層と窒化チタンを有する第2の層とを含み、前記第1の層は前記導波路に近接している。
【0016】
いくつかの実施形態は、集積デバイスであって、当該集積デバイスの表面上に配置され不連続部を有する金属層と、当該金属層の不連続部に対応した上部アパーチャを有する少なくとも1つの試料ウェルとを備える集積デバイスに関する。前記少なくとも1つの試料ウェルの表面は、前記集積デバイスの表面に対して実質的に垂直な方向に沿って前記金属層を超えて延びている。
【0017】
いくつかの実施形態において、前記少なくとも1つの試料ウェルの表面は、前記金属層から100nm~350nmの距離に位置している。いくつかの実施形態において、前記少なくとも1つの試料ウェルは、当該試料ウェルの側壁の少なくとも一部に形成された側壁スペーサを含む。いくつかの実施形態において、前記集積デバイスは、前記少なくとも1つの試料ウェルの表面の遠位にある導波路をさらに備えている。いくつかの実施形態において、前記導波路はスラブと隆起領域とを含む。いくつかの実施形態において、前記導波路はテーパ状である。いくつかの実施形態において、前記金属層は、アルミニウムを有する第1の層と、窒化チタンを有する第2の層とを含み、前記第1の層は前記導波路に近接している。いくつかの実施形態において、前記導波路から前記少なくとも1つの試料ウェルの表面までの距離は200nm未満である。いくつかの実施形態において、前記金属層の開口部は前記導波路の格子カプラに対応している。いくつかの実施形態において、前記導波路は、少なくとも部分的に、窒化シリコンの層から形成されている。いくつかの実施形態において、前記集積デバイスは、前記少なくとも1つの試料ウェル内に位置する試料によって放出された放出エネルギーを受け取るように構成されたセンサをさらに備えている。いくつかの実施形態において、前記少なくとも1つの試料ウェルと前記センサとの間の距離は10μm未満である。いくつかの実施形態において、前記少なくとも1つの試料ウェルと前記センサとの間の距離は7μm未満である。いくつかの実施形態において、前記少なくとも1つの試料ウェルと前記センサとの間の距離は3μm未満である。
【0018】
いくつかの実施形態は、集積デバイスを形成する方法に関し、当該方法は、半導体基板を準備することであって、当該半導体基板上に誘電体膜が配置された半導体基板を準備すること、前記誘電体膜の一部を部分的にエッチングすることによってスラブおよび隆起領域を有する導波路を形成すること、前記導波路と接触するように上部クラッドを形成すること、前記上部クラッドの表面に金属層を形成すること、および前記金属層と前記上部クラッドの一部とをエッチングすることによって前記導波路上に試料ウェルを形成することを備えている。
【0019】
いくつかの実施形態において、前記導波路を形成することは、時限エッチング処理を行うことを含む。いくつかの実施形態において、前記導波路を形成することは、エッチストップ層を用いたエッチング処理を行うことを含む。いくつかの実施形態において、前記試料ウェルを形成することは、前記導波路の少なくとも一部が露出されるまで前記上部クラッドをエッチングすることを含む。いくつかの実施形態において、前記試料ウェルの底面と前記導波路との間の距離は10nm~200nmの間である。いくつかの実施形態において、前記方法は、前記試料ウェルの側壁の少なくとも一部にスペーサを形成することをさらに備えている。いくつかの実施形態において、前記方法は、前記金属層を形成することをさらに備えており、前記金属層を形成することは、複数の金属副層を形成することを含む。いくつかの実施形態において、前記方法は、前記スラブの一部をエッチングしてリッジ導波路を形成することをさらに備えている。いくつかの実施形態において、前記方法は、前記スラブの一部をエッチングしてリブ導波路を形成することをさらに備えている。いくつかの実施形態において、前記導波路を形成することは、可変幅を有するテーパを形成することをさらに備えている。
【0020】
いくつかの実施形態は、集積デバイスに関し、当該集積デバイスは、複数の試料ウェルと、前記複数の試料ウェルの第1の部分に励起エネルギーを結合するように構成された第1の光導波路と、前記複数の試料ウェルの第2の部分に前記励起エネルギーを結合するように構成された第2の光導波路と、前記集積デバイスの外側に位置する光源から前記励起エネルギーを受け取り、前記第1の光導波路と前記第2の光導波路とに前記励起エネルギーを結合するように構成された格子カプラとを備えている。
【0021】
いくつかの実施形態において、前記集積デバイスは、前記格子カプラを通過する励起エネルギーを受け取るように配置された1つまたは複数の光検出器をさらに備えている。いくつかの実施形態において、前記集積デバイスは、前記格子カプラに近接した領域を通過する励起エネルギーを受け取るように配置された1つまたは複数の光検出器をさらに備えている。いくつかの実施形態において、前記格子カプラは第1の光格子カプラであり、前記集積デバイスはさらに、前記第1の導波路に光学的に結合され、前記第1の導波路から前記励起エネルギーを受け取り、前記集積デバイス内に位置する光検出器に前記励起エネルギーを結合するように構成された第2の光カプラを備えている。いくつかの実施形態において、前記第1の光導波路は、エバネッセント結合を介して前記複数の試料ウェルの前記第1の部分に前記励起エネルギーを結合するように構成されている。いくつかの実施形態において、前記集積デバイスは、当該集積デバイスの表面上に配置された金属層をさらに備えており、前記複数の試料ウェルは前記金属層を貫通して形成されている。いくつかの実施形態において、前記複数の試料ウェルのうちの少なくとも1つは、前記第1の導波路に近接し、前記金属層内に凹んだ底面を含む。いくつかの実施形態において、前記底面は前記金属層から100nm~350nmの距離に位置している。いくつかの実施形態において、前記底面は前記第1の光導波路から10nm~200nmの距離に位置している。いくつかの実施形態において、前記金属層はアルミニウム層および窒化チタン層を含み、前記アルミニウム層は前記第1および第2の導波路に近接している。いくつかの実施形態において、前記光格子は窒化シリコン層に形成されたエッチング領域を含む。いくつかの実施形態において、前記複数の試料ウェルのうちの少なくとも1つの試料ウェルは、当該少なくとも1つの試料ウェルの側壁の少なくとも一部に形成された側壁スペーサを含む。
【0022】
本出願の種々の態様および実施形態は、図面を参照して説明される。なお、図は必ずしも縮尺どおりに描かれていない。複数の図に現れる項目はそれらが現れる全ての図において同じ参照番号によって示されている。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1-1】いくつかの実施形態による集積デバイスおよび機器のブロック図。
【
図1-2A】いくつかの実施形態による、画素の行内の試料ウェルに結合する励起エネルギーおよび各試料ウェルからのセンサへの放出エネルギーの概略図。
【
図1-2B】いくつかの実施形態による機器を示すブロック図。
【
図1-2C】いくつかの実施形態による光パルス列を示す図。
【
図1-3】いくつかの実施形態による、1つまたは複数の導波路を介してパルスレーザによって光学的に励起し得る平行試料ウェルおよび各試料ウェルの対応する検出器を示す概略図。
【
図1-4】いくつかの実施形態による導波路からの試料ウェルの光励起を示す光パワーの図。
【
図1-5】いくつかの実施形態による、試料ウェル、光導波路、および時間ビニング光検出器を有する画素の概略図。
【
図1-6】いくつかの実施形態による、試料ウェル内で起こり得る例示的な生物学的反応の概略図。
【
図1-7】異なる減衰特性を有する2つの異なる蛍光色素分子の発光確率曲線を示す図。
【
図1-8】いくつかの実施形態による蛍光発光の時間ビニング検出を示す図。
【
図1-9】いくつかの実施形態による時間ビニング光検出器を示す図。
【
図1-10A】いくつかの実施形態によるパルス励起および試料からの蛍光発光の時間ビニング検出を示す図。
【
図1-10B】いくつかの実施形態による、試料のパルス励起が繰り返された後の種々の時間ビンにおける累積蛍光光子カウントのヒストグラムを示す図。
【
図1-11A】いくつかの実施形態による、4つのヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体のうちの1つ(T)に対応し得るヒストグラムを示す図。
【
図1-11B】いくつかの実施形態による、4つのヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体のうちの1つ(A)に対応し得るヒストグラムを示す図。
【
図1-11C】いくつかの実施形態による、4つのヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体のうちの1つ(C)に対応し得るヒストグラムを示す図。
【
図1-11D】いくつかの実施形態による、4つのヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体のうちの1つ(G)に対応し得るヒストグラムを示す図。
【
図2-0】3つの異なる光パワーにおける導波路内の時間依存伝送損失を示すグラフ。
【
図2-1A】いくつかの実施形態による複数の導波路への長尺状ビームの結合を示す概略図。
【
図2-1B】いくつかの実施形態による複数の導波路への長尺状回転ビームの結合を示す概略図。
【
図2-1C】いくつかの実施形態によるビーム幅を変化させるスライス格子カプラの許容値を示す図。
【
図2-1D】いくつかの実施形態による格子カプラの強度プロファイルを示す図。
【
図2-2A】いくつかの実施形態による例示的なスライス格子カプラを示す図。
【
図2-2B】いくつかの実施形態によるスライス格子カプラおよび光スプリッタの例示的な光学系を示す図。
【
図3-1】いくつかの実施形態による集積デバイスの例示的な光ルーティングレイアウトを示す図。
【
図3-2】いくつかの実施形態による集積デバイスの例示的な光ルーティングレイアウトを示す図。
【
図4-3A】導波路を試料ウェルから分離した構造を示す断面図。
【
図4-3B】導波路が試料ウェルに接触している構造を示す断面図。
【
図4-3C】試料ウェルが導波路内に部分的に配置された構造を示す断面図。
【
図4-5】リッジ導波路における光モードを示す断面図。
【
図4-6】テーパと複数の試料ウェルを示す平面図。
【
図4-7】リブ導波路の隆起領域の幅に応じた光モードの電場を示す図。
【
図4-8】矩形断面を有する導波路に関連する光モードプロファイルとリブ導波路に関連する光モードプロファイルとの比較を示す図。
【
図5-1B】マルチモード導波路に沿ったパワー分布を示すヒートマップ図。
【
図6-1A】いくつかの実施形態による、時間エッチング処理を使用してリブ導波路を製造する方法を示す図。
【
図6-1B】いくつかの実施形態による、時間エッチング処理を使用してリブ導波路を製造する方法を示す図。
【
図6-1C】いくつかの実施形態による、時間エッチング処理を使用してリブ導波路を製造する方法を示す図。
【
図6-1D】いくつかの実施形態による、時間エッチング処理を使用してリブ導波路を製造する方法を示す図。
【
図6-2A】いくつかの実施形態による、エッチストップを使用してリブ導波路を製造する方法を示す図。
【
図6-2B】いくつかの実施形態による、エッチストップを使用してリブ導波路を製造する方法を示す図。
【
図6-2C】いくつかの実施形態による、エッチストップを使用してリブ導波路を製造する方法を示す図。
【
図6-2D】いくつかの実施形態による、エッチストップを使用してリブ導波路を製造する方法を示す図。
【
図6-3A】いくつかの実施形態による、終点層を使用してリブ導波路を製造する方法を示す図。
【
図6-3B】いくつかの実施形態による、終点層を使用してリブ導波路を製造する方法を示す図。
【
図6-3C】いくつかの実施形態による、終点層を使用してリブ導波路を製造する方法を示す図。
【
図6-3D】いくつかの実施形態による、終点層を使用してリブ導波路を製造する方法を示す図。
【
図6-4A】いくつかの実施形態による、リッジ導波路を製造する方法を示す図。
【
図6-4B】いくつかの実施形態による、リッジ導波路を製造する方法を示す図。
【
図6-4C】いくつかの実施形態による、リッジ導波路を製造する方法を示す図。
【
図6-4D】いくつかの実施形態による、リッジ導波路を製造する方法を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[I.序論]
本発明者らは、単一分子または粒子の検出および定量化を行うための小型で且つ高速な装置が、生物学的および/または化学的試料の複雑な定量測定を実施するコストを削減するとともに、生化学的な技術的発見の速度を急速に向上させ得ることを認識および評価するに至った。さらに、輸送が容易な費用効果の高い装置は、先進国でバイオアッセイが行われる方法を変えるだけでなく、発展途上地域の人々に健康と生活状態を劇的に改善することができる不可欠な診断検査の利用を初めて提供することが可能となる。
【0025】
また、本発明者らは、生物学的試料から放出されるルミネッセンス光を測定可能な単一の集積デバイスに試料ウェルとセンサを集積化することにより、こうした装置を製造するコストを削減して、使い捨て可能な生物分析集積デバイスを形成できることを認識および評価するに至った。ベース機器とインターフェースする使い捨て可能な(使い捨て型の)集積デバイスは、試料分析用の高コストの生物学的研究室を必要とする制約なしに世界中のあらゆる場所で使用することが可能となる。したがって、生物学的試料の定量分析をこれまで実行することができなかった世界の地域に、自動化された生物分析がもたらされ得る。
【0026】
多数の画素(例えば、数百、数千、数百万以上)を有する画素センサデバイスは、複数の個々の分子または粒子を並行して検出可能である。分子は、限定ではなく例として、タンパク質、DNA、および/またはRNAであり得る。さらに、毎秒100フレームを超える速度でデータを取得できる高速装置は、試料が分析されている時間にわたって生じる動的処理または変化の検出および分析が可能である。
【0027】
また、本発明者らは、複数の異なる種類の発光マーカーで試料がタグ付けされている場合、それらの発光マーカーの適切な特性を使用して、集積デバイスの特定の画素に存在するマーカーの種類を識別できることを認識および評価するに至った。例えば、マーカーによって放出される発光の特性および/または励起吸収の特性は、マーカーを識別するために使用され得る。いくつかの実施形態において、第1の種類のマーカーを第2の種類のマーカーと区別するために、発光の放出エネルギー(光の波長に直接関連する)が使用され得る。追加的または代替的に、特定の画素に存在するマーカーの種類を識別するために発光寿命測定が使用され得る。いくつかの実施形態において、発光寿命測定は、パルス励起源とともに、寿命情報を得るのに十分な分解能で光子が検出される時間を識別可能なセンサを使用して行われ得る。追加的または代替的に、特定の画素に存在するマーカーの種類を識別するために、異なる種類のマーカーによって吸収された励起光のエネルギーが使用され得る。例えば、第1のマーカーは第1の波長の光を吸収するが第2の波長の光を等しく吸収しない場合や、第2のマーカーは第2の波長の光を吸収するが第1の波長の光を等しく吸収しない場合がある。このように、それぞれ異なる励起エネルギーを有する2つ以上の励起光源を用いて試料を交互に照射することが可能である場合、どの種類のマーカーが試料に存在するかをマーカーの吸収エネルギーを使用して識別することができる。また、異なるマーカーは異なる発光強度を有し得る。したがって、特定の画素に存在するマーカーの種類を識別するために、検出された発光強度が使用される場合もある。
【0028】
本発明者らによって検討される装置の1つの非限定的な用途の例は、核酸配列(例えば、DNA、RNA)や複数のアミノ酸を有するポリペプチド(例えば、タンパク質)などの生体分子の配列を決定することができる装置である。このような装置を使用して行われ得る診断試験には、対象の生物学的試料中の無細胞デオキシリボ核酸分子または発現産物の配列を決定することなど、対象の生物学的試料中の核酸分子の配列を決定することが含まれる。
【0029】
本出願は、核酸分子などの生体分子またはそのサブユニットを検出するための装置、システム、および方法を提供する。配列の決定は、鋳型に相補的なまたは類似の別の生体分子を合成することによって、例えば、鋳型核酸分子に相補的な核酸分子を合成して経時的にヌクレオチドの取り込みを同定すること(例えば、合成による配列決定)などによって、鋳型生体分子(例えば、核酸分子)の個々のサブユニットを決定することを含み得る。代替として、配列の決定は、生体分子の個々のサブユニットの直接同定を含み得る。
【0030】
配列を決定する処理では、生体分子の個々のサブユニットを示す信号をメモリに集め、それらの信号をリアルタイムでまたは後の時点で処理して生体分子の配列を決定することができる。このような処理は、それらの信号と個々のサブユニットの同定を可能とする参照信号との比較を含み得るが、場合によっては読み込みによって行われる。読み込みは、より大きな配列または領域を同定するために使用することが可能な、例えば、染色体またはゲノム領域または遺伝子上の位置に整列され得る、十分な長さの配列(例えば、少なくとも約30、50、100塩基対(bp)以上)であり得る。
【0031】
生体分子の個々のサブユニットはマーカーを用いて同定され得る。いくつかの例では、発光マーカーは生体分子の個々のサブユニットを同定するために使用される。発光マーカー(本明細書では「マーカー」とも呼ばれる)は、外因性または内因性のマーカーであり得る。外因性マーカーは、発光標識のためのレポーターおよび/またはタグにおいて使用される外部発光マーカーであり得る。外因性マーカーの例としては、これらに限定されないが、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)に関与する蛍光分子、蛍光色素分子、蛍光染料、蛍光染色、有機染料、蛍光タンパク質、酵素、種や、酵素や、および/または量子ドットなどが挙げられる。このような外因性マーカーは、特定の標的または成分に特異的に結合するプローブまたは官能基(例えば、分子、イオン、および/またはリガンド)に結合され得る。プローブに外因性マーカーを付着させることにより、外因性マーカーの存在の検出を通じて標的を同定することが可能となる。プローブの例としては、タンパク質、核酸(例えば、DNA、RNA)分子、脂質、抗体プローブなどが挙げられる。外因性マーカーと官能基とを組み合わせることにより、検出に使用される任意の適切なプローブ、タグ、および/または標識を形成することができ、これらには、分子プローブ、標識プローブ、ハイブリダイゼーションプローブ、抗体プローブ、タンパク質プローブ(例えば、ビオチン結合プローブ)、酵素標識、蛍光プローブ、蛍光タグ、および/または酵素レポーターが含まれる。
【0032】
外因性マーカーが試料に添加され得る一方、内因性マーカーはすでに試料の一部であり得る。内因性マーカーは、励起エネルギーの存在下で発光または「自己蛍光」し得る、存在する任意の発光マーカーを含み得る。内因性の蛍光色素分子の自己蛍光は、外因性の蛍光色素分子の導入を必要とせずに無標識および非侵襲的標識を提供し得る。そのような内因性の蛍光色素分子の例は、限定ではなく例として、ヘモグロビン、オキシヘモグロビン、脂質、コラーゲンおよびエラスチン架橋、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)、酸化フラビン(FADおよびFMN)、リポフスチン、ケラチン、および/またはプロフィリンを含み得る。
【0033】
いくつかの実施形態は検体中の単一分子を検出することによる診断試験を対象とし得るが、本発明者らは、いくつかの実施形態が、例えば遺伝子またはポリペプチドなどの1つまたは複数の核酸セグメントの核酸(例えば、DNA、RNA)配列を決定するのに単一分子検出機能を使用し得ることを認識した。核酸配列を決定することにより、標的核酸分子中のヌクレオチドの順序および位置を決定することが可能となる。核酸配列を決定する技術は、核酸配列を決定するために使用される方法、ならびに配列決定プロセスにおける速度、読み取り長、およびエラーの発生率において異なり得る。例えば、いくつかの核酸配列決定方法は、合成による配列決定に基づいており、この場合には、標的核酸分子に相補的である新たに合成された核酸鎖にヌクレオチドが組み込まれる際にヌクレオチドの同一性が決定される。合成法によるいくつかの配列決定は、標的核酸分子の集団(例えば、標的核酸のコピー)の存在、または標的核酸の集団を達成するための標的核酸の増幅工程を必要とする。
【0034】
本発明者らは、単一分子検出および/または核酸配列決定を行うための単純でより複雑でない装置の必要性を認識し、光学的(例えば、発光)マーカーなどのマーカーのセットを用いて単一分子を検出することにより異なる分子を標識化するための技術を考え出した。タグは、ヌクレオチドまたはアミノ酸および適切なマーカーを含み得る。マーカーは、単一分子に結合されている時、単一分子からの放出時、またはそれらの双方の時に検出され得る。いくつかの例では、マーカーは発光タグである。選択されたセット内の各発光マーカーはそれぞれの分子に関連付けられている。例えば、DNAに存在する核酸塩基を「標識化」するために4つのマーカーによるセットが使用され得る。このセットの各マーカーは異なる核酸塩基に関連付けられてタグを形成し、例えば、第1のマーカーはアデニン(A)に関連付けられ、第2のマーカーはシトシン(C)に関連付けられ、第3のマーカーはグアニン(G)に関連付けられ、第4のマーカーはチミン(T)に関連付けられる。さらに、このマーカーセット内の各発光マーカーは、そのセットの最初のマーカーをそのセット内の他のマーカーと区別するために使用され得る異なる特性を有する。これにより、これらの識別特性のうちの1つ以上を使用して各マーカーを一意に識別することができる。限定ではなく例として、1つのマーカーを他のマーカーと区別するために使用され得るマーカーの特性は、励起に反応してマーカーによって放出される光の放出波長または放出波長帯、特定のマーカーを励起する励起エネルギーの波長または波長帯、マーカーによって放出される光の時間的特性(例えば、放出減衰時間)、および/または放出エネルギーに対するマーカーの反応の時間的特性(例えば、励起光子を吸収する確率)を含み得る。したがって、発光マーカーは、これらの特性を検出することに基づいて他の発光マーカーから識別または区別され得る。このように識別または区別する技術は単独でまたは任意の適切な組み合わせで使用され得る。核酸配列を決定することに関して、1つまたは複数のマーカーの発光特性に基づいて4つのマーカーによるセットの中からあるマーカーを区別することにより、そのマーカーに関連付けられた核酸塩基を一意に同定することができる。
【0035】
[II.システム概要]
システムは、集積デバイスと、その集積デバイスとインターフェースするように構成された機器とを含み得る。集積デバイスは画素のアレイを含み得る。画素は、試料ウェルと少なくとも1つのセンサとを含む。集積デバイスの表面は複数の試料ウェルを有し得る。試料ウェルは、集積デバイスの表面に置かれた検体から試料を受け取るように構成される。検体は複数の試料を含み得る。いくつかの実施形態において、検体は、異なる種類の試料を含み得る。複数の試料ウェルは、それら試料ウェルの少なくとも一部が検体から1つの試料を受け取り得るように適切なサイズおよび形状を有し得る。いくつかの実施形態では、ある試料ウェルには1つの試料が含まれ、他の試料ウェルでは試料の数が0または2つ以上となるように、複数の試料ウェルの間で試料ウェル内の試料の数が分配され得る。
【0036】
いくつかの実施形態において、検体は多数の一本鎖DNA鋳型を含み得る。この場合、集積デバイスの表面上の個々の試料ウェルは一本鎖DNA鋳型を受容するようにサイズおよび形状が決められ得る。集積デバイスの複数の試料ウェルの少なくとも一部が一本鎖DNA鋳型を含むように、集積デバイスの複数の試料ウェルの間で一本鎖DNA鋳型が分配され得る。また、検体はタグ付きdNTPを含み得る。タグ付きdNTPが試料ウェルに入り、その試料ウェル内の一本鎖DNA鋳型に相補的なDNA鎖に組み込まれることでヌクレオチドを同定することが可能となり得る。このような例では、「試料」は、一本鎖DNAと現在ポリメラーゼによって組み込まれているタグ付きdNTPとの両方を指すことがある。いくつかの実施形態において、検体は一本鎖DNA鋳型を含み得る。この場合、タグ付きdNTPは、試料ウェル内のDNAの相補鎖にヌクレオチドが組み込まれるときに試料ウェルに順次導入され得る。このように、ヌクレオチドの取り込みのタイミングは、タグ付きdNTPが集積デバイスの試料ウェルに導入されるタイミングによって制御され得る。
【0037】
励起エネルギーは、集積デバイスの画素アレイとは別に配置された励起源から供給される。励起エネルギーは、少なくとも部分的に集積デバイスの要素によって1つまたは複数の画素に向けられて試料ウェル内の照射領域を照射する。そして、マーカーまたはタグは、照射領域内に位置するとき、励起エネルギーが照射されることに反応して放出エネルギーを放出し得る。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の励起源はシステムの機器の一部であり、機器の構成要素および集積デバイスは、励起エネルギーを1つまたは複数の画素に向けるように構成されている。
【0038】
試料によって放出された放出エネルギーは、集積デバイスの画素内の1つまたは複数のセンサによって検出され得る。検出された放出エネルギーの特性は、その放出エネルギーに関連付けられたマークを識別するための指標を提示し得る。このような特性は、センサによって検出された光子の到着時間、センサによって時間とともに蓄積された光子の量、および/または2つ以上のセンサにわたる光子の分布などの、任意の適切な種類の特性を含み得る。いくつかの実施形態において、センサは、試料の放出エネルギー(例えば、蛍光寿命)に関連付けられた1つまたは複数のタイミング特性の検出を可能にする構成を有し得る。センサは、励起エネルギーのパルスが集積デバイスを伝播した後の光子到着時間の分布を検出し得る。この到着時間の分布は、試料の放出エネルギーのタイミング特性の指標を(例えば、蛍光寿命の代わりとして)提供し得る。いくつかの実施形態において、1つまたは複数のセンサは、マーカーまたはタグによって放出された放出エネルギーの確率(例えば、蛍光強度)の指標を提供する。いくつかの実施形態において、複数のセンサは、放出エネルギーの空間分布を捉えるようにサイズ設定および配置され得る。そして、検体内の試料を識別し得る複数のマーカーの中からあるマーカーを区別するために、1つまたは複数のセンサからの出力信号が使用され得る。いくつかの実施形態において、試料は複数の励起エネルギーによって励起されてもよく、それら複数の励起エネルギーに反応して試料によって放出される放出エネルギーおよび/またはそれら放出エネルギーのタイミング特性により複数のマーカーの中からあるマーカーが区別されてもよい。
【0039】
システム1-100の概略図を
図1-1に示す。このシステムは、機器1-104と、機器1-104とのインターフェースをとる集積デバイス1-102の両方を含む。いくつかの実施形態において、機器1-104は、機器1-104の一部として集積化される1つまたは複数の励起源1-106を含み得る。いくつかの実施形態において、励起源は機器1-104と集積デバイス2-102の両方の外部にあってもよく、機器1-104は励起源から励起エネルギーを受け取り、励起エネルギーを集積デバイスに向けるように構成され得る。集積デバイスは、集積デバイスを収容するとともにその集積デバイスを励起源と正確に光学的に位置合わせして保持するための任意の適切なソケットを使用して機器とのインターフェースを取り得る。励起源1-106は、集積デバイス1-102に励起エネルギーを供給するように構成され得る。
図1-1に概略的に示されるように、集積デバイス1-102は複数の画素1-112を有する。それら画素の少なくとも一部は試料の独立した分析を実行し得る。このような画素1-112は、1つの画素がその画素から分離した光源1-106からの励起エネルギーを受け取るので「受動源画素」(passive source pixel)と呼ばれ得る。なお、光源からの励起エネルギーは、画素1-112の一部または全部を励起する。励起源1-106は、任意の適切な光源であり得る。適切な励起源の例は、2015年8月7日に出願された「分子をプローブし、検出し、分析するための集積デバイス(INTEGRATED DEVICE FOR PROBING, DETECTING AND ANALYZING MOLECULES)」を名称とする米国特許出願第14/821,688号に記載されており、その全体が参照によって組み込まれる。いくつかの実施形態において、励起源1-106は、集積デバイス1-102に励起エネルギーを送達するように組み合わせられる複数の励起源を含む。これら複数の励起源は、複数の励起エネルギーまたは波長を生成するように構成され得る。
【0040】
画素1-112は、試料を受け取るように構成された試料ウェル1-108と、励起源1-106によって提供される励起エネルギーで試料を照射することに反応して試料によって放出された放出エネルギーを検出するためのセンサ1-110とを有する。いくつかの実施形態において、試料ウェル1-108は、集積デバイス1-102の表面に近接して試料を保持し得る。これにより、試料への励起エネルギーの送達および試料からの放出エネルギーの検出を容易にすることができる。
【0041】
励起エネルギー源1-106からの励起エネルギーを集積デバイス1-102に結合して励起エネルギーを試料ウェル1-108に導くための光学要素が集積デバイス1-102と機器1-104の両方に配置されている。光源とウェルとを結合する光学要素は、集積デバイス1-102上に位置してその集積デバイスに励起エネルギーを結合するための1つまたは複数の格子カプラと、機器1-104から画素1-112内の試料ウェルに励起エネルギーを送達するための導波路とを含み得る。格子カプラと導波路との間には1つまたは複数の光スプリッタ要素が位置し得る。光スプリッタは、格子カプラからの励起エネルギーを結合して導波路の少なくとも1つに励起エネルギーを送達し得る。いくつかの実施形態において、光スプリッタは、各導波路が実質的に同様な量の励起エネルギーを受け取るように励起エネルギーの送達をすべての導波路にわたって実質的に均一にすることを可能にする構成を有し得る。このような実施形態により、集積デバイスの試料ウェルによって受け取られる励起エネルギーの均一性を高めて集積デバイスの性能を改善することができる。
【0042】
試料ウェル1-108、励起源とウェルとを結合する光学系の一部、および試料ウェルとセンサとを結合する光学系は、集積デバイス1-102上に位置している。励起源1-106、および励起源とウェルとを結合する構成要素の一部は機器1-104内に位置している。いくつかの実施形態では、単一の構成要素が、励起エネルギーを試料ウェル1-108に結合すること、および試料ウェル1-108からセンサ1-110に放出エネルギーを送達することの両方の役割を果たし得る。励起エネルギーを試料ウェルに結合するため、および/または放出エネルギーをセンサに導くための、集積デバイス内に含まれる適切な構成要素の例は、「分子をプローブし、検出し、分析するための集積デバイス(INTEGRATED DEVICE FOR PROBING, DETECTING AND ANALYZING MOLECULES)」を名称とする米国特許出願第14/821,688号、および「分子をプローブし、検出し、分析するための、外部光源を備えた集積デバイス(INTEGRATED DEVICE WITH EXTERNAL LIGHT SOURCE FOR PROBING, DETECTING, AND ANALYZING MOLECULES)」を名称とする米国特許出願第14/543,865号に記載されており、その両方の全体が参照によって組み込まれる。
【0043】
画素1-112は、その画素自身の個々の試料ウェル1-108と少なくとも1つのセンサ1-110とに関連付けられている。集積デバイス1-102の複数の画素は、任意の適切な形状、サイズ、および/または寸法を有するように配置され得る。集積デバイス1-102は任意の適切な画素数を有し得る。集積デバイス2-102内の画素の数は、約10,000画素~1,000,000画素の範囲内であるか、またはその範囲内の任意の値もしくは値の範囲であり得る。いくつかの実施形態において、画素は、512画素×512画素のアレイで配置され得る。集積デバイス1-102は、任意の適切な方法で機器1-104とインターフェースを取り得る。いくつかの実施形態において、機器1-104は、ユーザが集積デバイス1-102を使用して試料を分析するために集積デバイス1-102を機器1-104に取り付けるとともに、別の集積デバイスを取り付け可能とするために集積デバイス1-102を機器1-104から取り外すことができるように、集積デバイス1-104に取り外し可能に結合するインターフェースを有し得る。機器1-104のインターフェースは、機器1-104の回路と結合するために集積デバイス1-102を位置決めして機器1-104への1つまたは複数のセンサからの読み出し信号の送信を可能にし得る。集積デバイス1-102および機器1-104は、大画素アレイ(例えば、10,000画素を越えるアレイ)に関連するデータを処理するためのマルチチャネル高速通信リンクを含み得る。
【0044】
機器1-104は、機器1-104および/または集積デバイス1-102の動作を制御するためのユーザインターフェースを含み得る。このユーザインターフェースは、機器の機能を制御するために使用されるコマンドおよび/または設定などの情報をユーザが機器に入力できるように構成され得る。いくつかの実施形態において、ユーザインターフェースは、ボタン、スイッチ、ダイヤル、および音声コマンド用のマイクロフォンを含み得る。ユーザインターフェースは、適切な位置合わせおよび/または集積デバイス上のセンサからの読み出し信号によって得られる情報など、機器および/または集積デバイスの性能に関するフィードバックをユーザが受け取ることを可能にし得る。いくつかの実施形態において、ユーザインターフェースは、可聴フィードバックを提供するためにスピーカを使用してフィードバックを提供してもよい。いくつかの実施形態において、ユーザインターフェースは、ユーザに視覚的なフィードバックを提供するための表示ライトおよび/または表示画面を含み得る。
【0045】
いくつかの実施形態において、機器2-104は、コンピューティングデバイスと接続するように構成されたコンピュータインターフェースを含み得る。コンピュータインターフェースは、USBインターフェース、FireWireインターフェース、または任意の他の適切なコンピュータインターフェースであり得る。コンピューティングデバイスは、ラップトップコンピュータまたはデスクトップコンピュータなどの任意の汎用コンピュータであり得る。いくつかの実施形態において、コンピューティングデバイスは、適切なコンピュータインターフェースにより無線ネットワークを介してアクセス可能なサーバ(例えば、クラウドベースのサーバ)であり得る。コンピュータインターフェースは、機器1-104とコンピューティングデバイスとの間の情報の通信を容易にし得る。機器1-104を制御および/または構成するための入力情報は、コンピューティングデバイスに提供されそのコンピュータインターフェースを介して機器1-104に送信され得る。機器1-104によって生成された出力情報は、コンピュータインターフェースを介してコンピューティングデバイスによって受信され得る。出力情報は、機器1-104の性能、集積デバイス2-112の性能、および/またはセンサ1-110の読み出し信号から生成されたデータに関するフィードバックを含み得る。
【0046】
いくつかの実施形態において、機器1-104は、集積デバイス1-102の1つまたは複数のセンサから受信したデータを分析し、および/または制御信号を励起源2-106に送信するように構成された処理装置を含み得る。いくつかの実施形態において、この処理装置は、汎用プロセッサや、特別に適合化されたプロセッサ(例えば、1つまたは複数のマイクロプロセッサやマイクロコントローラコアなどの中央処理装置(CPU)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)、カスタム集積回路、デジタル信号プロセッサ(DSP)、またはそれらの組み合わせ)を含み得る。いくつかの実施形態において、1つまたは複数のセンサからのデータの処理は、機器1-104の処理装置と外部コンピューティングデバイスの両方によって実行され得る。他の実施形態では、外部コンピューティングデバイスは省略されてもよく、1つまたは複数のセンサからのデータの処理が集積デバイス1-104の処理装置のみによって実行され得る。
【0047】
1行の画素1-112を示す集積デバイス1-102の概略断面図を
図1-2Aに示す。集積デバイス1-102は、結合領域1-201、ルーティング領域1-202、画素領域1-203、および光ダンプ(dump)領域1-204を含み得る。画素領域1-203は複数の画素1-112を含み得る。これら複数の画素1-112は、励起源1-106からの光励起エネルギーが集積デバイス1-102に結合する結合領域1-201から分離した位置にて表面1-200上に位置する試料ウェル1-108を有している。点線の矩形で示された1つの画素1-112は、試料ウェル1-108と少なくとも1つのセンサ1-110とを含む集積デバイス1-102の領域である。
図1-2Aに示されるように、画素1-108は集積デバイスの表面1-200上に形成されている。
図1-2Aに示された試料ウェル1-108の行は、導波路1-220と光学的に結合するように配置されている。
【0048】
図1-2Aは、励起源1-106を集積デバイス1-102の結合領域1-201および試料ウェル1-108に結合することによる励起エネルギーの経路(破線で示される)を示している。励起エネルギーは、試料ウェル内に位置する試料を照射し得る。試料は、励起エネルギーにより照射されたことに反応して励起状態に達し得る。試料は、励起状態にあるときに放出エネルギーを放出し得る。この放出エネルギーは、試料ウェルに関連付けられた1つまたは複数のセンサによって検出され得る。
図1-2Aは、試料ウェル1-108から画素1-112の1つまたは複数のセンサ1-110までの放出エネルギーの経路(実線で示される)を概略的に示している。画素1-112の1つまたは複数のセンサ1-110は、試料ウェル1-108からの放出エネルギーを検出するように構成および配置され得る。センサ1-110は、光エネルギーを電子に変換するように構成された適切な光検出器を指し得る。画素内の試料ウェル1-108とセンサ1-110との間の距離(例えば、試料ウェルの底面とセンサの光検出領域との間の距離)は、10ナノメートル~200ナノメートルの範囲内であるか、またはその範囲内の任意の値もしくは値の範囲であり得る。いくつかの実施形態において、画素内の試料ウェルとセンサとの間の距離は、約10μm未満であり得る。いくつかの実施形態において、画素内の試料ウェルとセンサとの間の距離は、約7μm未満であり得る。いくつかの実施形態において、画素内の試料ウェルとセンサとの間の距離は、約3μm未満であり得る。適切なセンサの例は、「受光した光子の時間ビニングのための集積デバイス(INTEGRATED DEVICE FOR TEMPORAL BINNING OF RECEIVED PHOTONS)」を名称とする米国特許出願第14/821,656号に記載されており、その全体が参照によって組み込まれる。
図1-2Aは、一行の画素における各試料ウェルへの励起エネルギーの結合を示しているが、いくつかの実施形態では、励起エネルギーが一列の全ての画素に結合しない場合がある。いくつかの実施形態において、励起エネルギーは、集積デバイスの一行の画素内における画素の一部または試料ウェルの一部に結合し得る。
【0049】
結合領域1-201は、外部励起源1-106からの励起エネルギーを結合するように構成された1つまたは複数の光学部品を含み得る。結合領域1-201は、励起源1-106からの励起エネルギーのビームの一部または全部を受け取るように配置された格子カプラ1-216を含み得る。励起エネルギーのビームは、任意の適切な形状および/またはサイズを有し得る。いくつかの実施形態において、励起エネルギービームの断面は楕円形を有し得る。他の実施形態では、励起エネルギービームの断面は円形を有し得る。
【0050】
格子カプラ1-216は、励起源1-106からの励起エネルギーを受け取るように位置決めされ得る。格子カプラ1-216は1つまたは複数の材料から形成され得る。いくつかの実施形態において、格子カプラ1-216は、導波路内の光の伝播に平行な方向に沿って交互に並ぶ異なる材料の領域を含み得る。格子カプラ1-216は、より大きな屈折率を有する材料によって囲まれた1つの材料から形成された構造を含み得る。一例として、格子カプラは、窒化シリコンで形成され二酸化シリコンで囲まれた構造を含み得る。なお、任意の適切な寸法および/または格子間の間隔を使用して格子カプラ1-216を形成することができる。導波路1-220内の光伝播に平行な方向に沿った格子カプラ1-216の構造間の間隔、例えば
図1-2Aに示されるようなz方向に沿った格子カプラ1-216の構造間の間隔は、任意の適切な距離を有し得る。格子間の間隔は、約300nm~約500nmの範囲内であるかまたはその範囲内の任意の値もしくは値の範囲であり得る。いくつかの実施形態において、格子間の間隔は格子カプラ内で可変であり得る。格子カプラ1-216は、外部励起源1-106との結合に適した領域を提供する集積デバイス1-102の結合領域1-201内の表面1-215と実質的に平行な1つ以上の寸法を有し得る。格子カプラ1-216の面積は、励起源1-214からの励起エネルギーのビームが格子カプラ1-216と重なるように、そのビームの断面積の1つ以上の寸法と一致し得る。
【0051】
格子カプラ1-216は、励起源1-214から受け取った励起エネルギーを導波路1-220に結合し得る。導波路1-220は、1つまたは複数の試料ウェル1-108の近傍に励起エネルギーを伝播するように構成されている。いくつかの実施形態において、格子カプラ1-216と導波路1-220は、集積デバイス1-102の実質的に同じ平面に形成されている。いくつかの実施形態において、格子カプラ1-216と導波路1-220は、集積デバイス4-200の同じ層から形成されて同じ材料を含み得る。いくつかの実施形態では、格子カプラ1-216の上方に配置されたミラーにより、励起源からの励起エネルギーを格子カプラ1-216に導いてもよい。このミラーは、試料ウェルを有する集積デバイスの表面の上方に位置して試料のための流体封じ込めを提供し得るハウジングの一部に集積化されてもよい。1つまたは複数のセンサ1-230は、格子カプラ1-216を通過する励起エネルギー、および/または格子カプラ1-216の外側における格子カプラ1-216の平面内の領域など格子カプラ1-216に近接した領域を通過する励起エネルギーを受け取るように配置され得る。
【0052】
いくつかの実施形態では、導波路1-220とセンサ1-110との間に1つまたは複数のフィルタが配置されてもよい。この1つまたは複数のフィルタは、励起エネルギーがセンサ1-110に向けて通過してセンサ1-110の信号ノイズとなり得ることを低減または防止するように構成され得る。
【0053】
結合領域は、格子カプラ1-216を通過し得る励起エネルギー(
図1-2Aに破線で示される)を受け取るように配置された反射層1-226を含み得る。反射層は、励起源1-106からの励起エネルギーの入射ビームとは反対側の格子カプラ1-216の側面に近接して配置されている。反射層1-226は、格子カプラに向けて励起エネルギーを(
図1-2Aに破線で示されるように)反射することによって、格子カプラ1-216および/または導波路1-220への励起エネルギーの結合効率を改善することができる。反射層1-226は、Al、AlCu、TiN、または1つ以上の励起エネルギーを反射する他の任意の適切な材料を含み得る。いくつかの実施形態において、反射層1-226は、励起エネルギーを通過させて1つまたは複数のセンサ1-230まで到達可能とする1つまたは複数の開口部を含み得る。反射層1-226の1つまたは複数の開口部を通過した励起エネルギーを受け取るように配置された1つまたは複数のセンサ1-230は、励起源1-106から集積デバイス1-102への励起エネルギーのビームを位置合わせするために使用される信号を生成し得る。特に、結合領域1-201の1つまたは複数のセンサ1-230からの信号は、格子カプラ1-216への励起エネルギービームの位置合わせの指標を提供し得る。この位置合わせの指標は、集積デバイス1-102の外側に位置する1つまたは複数の構成要素を制御して、集積デバイス1-102に対して励起エネルギーのビームを位置決めおよび/または位置合わせするために使用され得る。
【0054】
なお、集積デバイスの外側に位置する構成要素を使用して励起源1-106を集積デバイスに対して位置決めおよび位置合わせしてもよい。このような構成要素は、レンズ、ミラー、プリズム、アパーチャ、減衰器、および/または光ファイバを含む光学部品を含み得る。1つまたは複数の位置合わせ部品の制御を可能にする追加の機械的部品が機器に含まれてもよい。このような機械的部品は、アクチュエータ、ステッピングモータ、および/またはノブを含み得る。適切な励起源およびアラインメント機構の例は、「パルスレーザおよびシステム(PULSED LASER AND SYSTEM)」を名称とする米国特許出願第62/310,398号に記載されており、その全体が参照によって組み込まれる。ビームステアリングモジュールの他の例は、「コンパクトなビーム成形およびステアリングアセンブリ(COMPACT BEAM SHAPING AND STEERING ASSEMBLY)」を名称とする米国特許出願第62/435,679号に記載されており、その全体が参照によって組み込まれる。
【0055】
集積デバイス1-102の光ダンプ領域1-204は、結合領域1-201とは反対側の導波路1-220の端部に1つまたは複数の構成要素1-240を含み得る。構成要素1-240は、試料ウェル1-110と結合した後に導波路1-220を伝播する残りの励起エネルギーを導波路1-220の外に導くように作用し得る。構成要素1-240は、集積デバイス1-102の画素領域1-203から離れるように残りの励起エネルギーを導くことによって集積デバイスの性能を向上させることができる。構成要素1-240は、格子カプラ、光カプラ、テーパ、ヘアピン、アンジュレータ、または任意の他の適切な光学部品を含み得る。いくつかの実施形態において、光ダンプ領域1-204は、導波路1-220の外に結合された励起エネルギーを受け取るように配置された1つまたは複数のセンサ1-242を含む。1つまたは複数のセンサ1-242からの信号は、導波路1-220を伝播する励起エネルギーの光パワーの指標を提供し得る。いくつかの実施形態では、この信号は、励起源1によって生成された励起エネルギービームの光パワーを制御するために使用され得る。このように、1つまたは複数のセンサ1-242は監視センサとして機能し得る。いくつかの実施形態において、光バンプ領域1-204は、集積デバイス1-102の導波路毎に構成要素1-240とセンサ1-242とを含み得る。
【0056】
画素1-112の試料ウェル1-108には分析対象の試料が導入され得る。試料は生物学的試料または化学試料などの任意の他の適切な試料であり得る。試料は多数の分子を含み得る。試料ウェルは単一の分子を単離するように構成され得る。いくつかの例では、試料ウェルの寸法は、その試料ウェル内に単一分子を閉じ込めるように作用して単一分子に対する測定の実施を可能にし得る。励起源1-106は、試料またはその試料に付着されるかもしくはその試料に関連付けられた少なくとも1つの発光マーカーをそれが試料ウェル内1-108内の照射領域内にある間に励起するように励起エネルギーを試料ウェル1-108内に送達するように構成され得る。
【0057】
励起源により励起エネルギーが試料ウェルに送達されると、そのウェル内の少なくとも1つの試料が発光し得る。そして、その発光による放出がセンサによって検出され得る。本明細書で使用される「試料が発光し得る」、「試料が放射線を放出し得る」、または「試料からの放出」という表現は、発光タグ、マーカー、レポーター、試料自体、または試料に関連する反応生成物が、放出される放射線を生成し得ることを意味する。
【0058】
集積デバイスの1つまたは複数の構成要素により放出エネルギーをセンサに向けることができる。1つまたは複数の放出エネルギーがセンサによって検出され少なくとも1つの電気信号に変換され得る。電気信号は、集積デバイスのインターフェースを介して機器に接続された集積デバイスの回路内の導電線に沿って伝送され得る。この電気信号はその後、処理および/または分析され得る。電気信号の処理または分析は、機器上または機器外に位置する適切なコンピューティングデバイス上で行われ得る。
【0059】
動作中、励起源を使用して試料ウェル内の試料の一部または全部を励起し、試料放出による信号をセンサで検出することによって、試料ウェル内の試料の並行分析が行われる。試料からの放出エネルギーは、対応するセンサによって検出され少なくとも1つの電気信号に変換され得る。それによって得られる1つまたは複数の信号は、いくつかの実施形態では集積デバイス上で処理され得るか、あるいは処理デバイスおよび/またはコンピューティングデバイスによる処理のために機器に送信され得る。試料ウェルからの信号は、他の画素に関連する信号とは独立して受信および処理され得る。
【0060】
いくつかの実施形態において、試料は1つまたは複数のマーカーで標識化され得る。これにより、マーカーに関連する放出が機器によって識別可能となる。例えば、センサは、放出エネルギーからの光子を電子に変換して特定のマーカーからの放出エネルギーに依存する寿命の違いを識別するために使用可能な電気信号を形成するように構成され得る。寿命の異なるマーカーを使用して試料を標識化することによって、その結果得られセンサによって検出される電気信号に基づいて特定の試料を識別することができる。
【0061】
試料は複数種類の分子を含み得る。また、異なる発光マーカーはある種類の分子と一意に関連し得る。励起中または励起後に発光マーカーは放出エネルギーを放出し得る。放出エネルギーの1つまたは複数の特性を使用して、試料中の1つまたは複数の種類の分子を識別することができる。分子の種類を区別するために使用される放出エネルギーの特性は、蛍光寿命値、強度、および/または放出波長を含み得る。センサは、光子(放出エネルギーの光子を含む)を検出してこれらの特性のうちの1つ以上を示す電気信号を提供し得る。いくつかの実施形態において、センサからの電気信号は、1つまたは複数の時間間隔にわたる光子到着時間の分布に関する情報を提供し得る。光子到着時間の分布は、励起エネルギーのパルスが励起源によって放出された後に光子が検出されるときに対応し得る。時間間隔の値は、その時間間隔中に検出された光子の数に対応し得る。複数の時間間隔にわたる相対値は、放出エネルギー(例えば、寿命)の時間的特徴の指標を提供し得る。試料を分析することは、分布内の2つ以上の異なる時間間隔についての値を比較することによってマーカーを区別することを含み得る。いくつかの実施形態において、強度の指標は、分布内のすべての時間ビンにわたる光子の数を決定することによって提供され得る。
【0062】
例示的な機器1-104は、
図1-2Bに示されるように、機器内に交換可能なモジュールとして取り付けられているか、または機器に結合されている1つまたは複数のモードロックレーザモジュール1-258を備え得る。機器1-100は、光学系1-115および分析システム1-160を含み得る。光学系1-255は、光学部品のいくつかの組み合わせを含み得る(例えば、レンズ、ミラー、光学フィルタ、減衰器、ビームステアリング部品、ビーム成形部品の各々を全く含まないか、1つ以上を含み得る)。また、光学系1-255は、モードロックレーザモジュール1-258からの出力光パルス1-252に対して動作し、および/またはこの出力光パルス1-252を分析システム1-260へ送達するように構成され得る。分析システムは、光パルスを分析対象の少なくとも1つの試料へと方向付け、少なくとも1つの試料から1つまたは複数の光信号(例えば、蛍光発光、後方散乱放射)を受信し、その受信した光信号を表す1つまたは複数の電気信号を生成するように構成されている複数の構成要素を含み得る。いくつかの実施形態において、分析システム1-260は、1つまたは複数の光検出器と、光検出器からの電気信号を処理するように構成された信号処理電子装置(例えば、1つまたは複数のマイクロコントローラ、1つまたは複数のフィールドプログラマブルゲートアレイ、1つまたは複数のマイクロプロセッサ、1つまたは複数のデジタル信号プロセッサ、論理ゲートなど)とを含み得る。また、分析システム1-260は、1つまたは複数のデータ通信リンクを介して外部デバイスとの間でデータを送受信するように構成されたデータ伝送ハードウェアを含み得る。いくつかの実施形態において、分析システム1-260は、分析対象の1つまたは複数の試料を受け入れることが可能な集積デバイス1-102を受け入れるように構成され得る。
【0063】
図1-2Cは、出力パルス1-252の時間的強度プロファイルを示す。いくつかの実施形態において、放出されるパルスのピーク強度値は、ほぼ等しくなり得る。このプロファイルはガウス時間プロファイルを有してもよいが、sech
2プロファイルのような他のプロファイルが可能であり得る。いくつかの事例において、パルスは、対称的な時間プロファイルを有していなくてもよく、他の時間的形状を有していてもよい。各パルスの持続時間は、
図1-2に示すような、半値全幅(FWHM)値によって特性化することができる。モードロックレーザのいくつかの実施形態によれば、超短光パルスは、100ピコ秒(ps)未満のFWHM値を有し得る。いくつかの事例において、FWHM値は約5ps~約30psとすることができる。
【0064】
出力パルス1-252は、周期的な間隔Tによって分離され得る。例えば、Tは、出力カプラとレーザモジュール1-258のキャビティ端部ミラーとの間の往復進行時間によって決定され得る。いくつかの実施形態によれば、パルス分離間隔Tは、約1ns~約30nsの範囲内であるか、またはその範囲内の任意の値もしくは値の範囲であり得る。いくつかの事例において、パルス分離間隔Tは、約0.7メートルと約3メートルとの間のレーザキャビティ長(レーザモジュール1-258のレーザキャビティ内の光軸のおおよその長さ)に対応する、約5ns~約20nsの範囲内であり得る。
【0065】
いくつかの実施形態によれば、集積デバイス1-102上の試料ウェルの数と、蛍光発光特性と、集積デバイス1-102からデータを読み出すためのデータ処理回路の速度との組み合わせによって、所望のパルス分離間隔Tおよびレーザキャビティ長を決定することができる。本発明者らは、異なる蛍光色素分子を、それらの異なる蛍光減衰率または特性寿命によって識別できることを認識および評価するに至った。したがって、選択される蛍光色素分子について十分な統計値を収集してそれらの異なる減衰率を識別するためには十分なパルス分離間隔Tが必要である。加えて、パルス分離間隔Tが短すぎる場合、データ処理回路は、大量のデータが多数の試料ウェルによって収集されるのに追従することができない。本発明者らは、約5nsと約20nsとの間のパルス分離間隔Tが、最大約2nsの減衰率を有する蛍光色素分子に適しており、また、約60,000~600,000個の試料ウェルからのデータを処理するのに適していることを認識および評価するに至った。
【0066】
いくつかの実施態様によれば、ビームステアリングモジュールは、モードロックレーザモジュール1-125から出力パルスを受信し、集積デバイス1-102の光カプラ上で光パルスの少なくとも位置と入射角を調整するように構成され得る。いくつかの事例において、モードロックレーザモジュールからの出力パルスは、集積デバイス1-102上の光カプラにおいてビーム形状および/またはビーム回転を追加的または代替的に変更するようにビームステアリングモジュールによって操作され得る。いくつかの実施態様において、ビームステアリングモジュールは、光カプラ上への出力パルスのビームの集束おおよび/または偏光の調整をさらに可能とし得る。ビームステアリングモジュールの一例は、2016年5月20日に出願された「パルスレーザおよび生物分析システム(PULSED LASER AND BIOANALYTIC SYSTEM)」を名称とする米国特許出願番号第15/161,088号に記載されており、参照によって本明細書に組み込まれる。ビームステアリングモジュールの他の例は、「コンパクトなビーム成形およびステアリングアセンブリ(COMPACT BEAM SHAPING AND STEERING ASSEMBLY)」を名称とする米国特許出願第62/435,679号に記載されており、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0067】
図1-3を参照すると、モードロックレーザモジュールからの出力パルス1-522は集積デバイス上の1つまたは複数の光導波路1-312に結合され得る。いくつかの実施形態において、光パルスは格子カプラ1-310を介して1つまたは複数の導波路に結合され得るが、いくつかの実施形態では、集積デバイス上の1つまたは複数の光導波路の端部への結合が使用され得る。いくつかの実施形態によれば、格子カプラ1-310への光パルス1-122のビームの位置合わせを補助するために半導体基板1-305(例えば、シリコン基板)上にクワッド検出器1-320が配置され得る。1つまたは複数の導波路1-312と試料ウェル1-330が、基板、導波路、試料ウェル、および光検出器1-322の間に誘電体層(例えば、二酸化シリコン層)を介在して、同じ半導体基板上に集積され得る。
【0068】
各導波路1-312は、導波路に沿って試料ウェルに結合される光パワーを均質化するために、試料ウェル1-330の下方にテーパ部分1-315を含み得る。縮小するテーパによって、より多くの光エネルギーを導波路のコアの外側に押しやることができ、試料ウェルへの結合を増大させて、導波路に沿った光学的損失(試料ウェルへの光結合の損失を含む)を補償することができる。光エネルギーを集積フォトダイオード1-324に方向付けるために、各導波路の端部には第2の格子カプラ1-317が位置し得る。集積フォトダイオードは、導波路を下って結合されるパワーの量を検出して、ビームステアリングモジュールを制御するフィードバック回路に検出信号を与えることができる。
【0069】
試料ウェル1-330は、導波路のテーパ部分1-315と位置合わせされ、タブ1-340において陥凹され得る。各試料ウェル1-330に対して半導体基板1-305上には時間ビニング光検出器1-322が位置し得る。試料ウェル内にない蛍光色素分子(例えば、試料ウェルの上方で溶液中に分散している)の光励起を防止するために、試料ウェルの周囲および導波路の上方には、金属コーティングおよび/または多層コーティング1-350が形成され得る。金属コーティングおよび/または多層コーティング1-350は、導波路1-312内の光エネルギーの吸収損失を各導波路の入力端および出力端において低減するためにタブ1-340の縁部を越えて隆起され得る。
【0070】
集積デバイス上に、複数列の導波路、試料ウェル、および時間ビニング光検出器があってもよい。例えば、いくつかの実施態様では、128行の各々に512個の試料ウェルが存在し、合計で65,536個の試料ウェルが存在し得る。他の実施態様は、より少ないまたはより多い試料ウェルを含んでもよく、他のレイアウト構成を含んでもよい。モードロックレーザからの光パワーは、1つまたは複数のスターカプラおよび/またはマルチモード干渉カプラを介して、あるいは集積デバイスの光カプラと複数の導波路との間に配置された任意の他の手段によって、複数の導波路に分配され得る。
【0071】
図1-4は、導波路1-315内の光パルス1-122から試料ウェル1-330への光エネルギー結合を示している。導波路1-315はチャネル導波路と見なすことができる。図面は、導波路寸法、試料ウェル寸法、種々の材料の光学特性、および試料ウェル1-330からの導波路1-315の距離を考慮した、光波の電磁場シミュレーションから生成されている。導波路は、例えば、周囲にある二酸化シリコンの媒体1-410内の窒化シリコンから形成され得る。導波路、周囲の媒体、および試料ウェルは、2015年8月7日に出願された「分子をプローブし、検出し、分析するための集積デバイス(INTEGRATED DEVICE FOR PROBING, DETECTING AND ANALYZING MOLECULES)」を名称とする米国特許出願第14/821,688号に記載されている微細加工工程によって形成され得る。いくつかの実施形態によれば、エバネッセント光場1-420が、導波路によって運ばれる光エネルギーを試料ウェル1-330に結合する。
【0072】
試料ウェル1-330内で行われる生物学的反応の非限定例が
図1-5に示されている。この例において、標的核酸に対して相補的である伸長鎖へのヌクレオチドおよび/またはヌクレオチド類似体の連続的な取り込みが試料ウェル内で行われている。一連の核酸(例えば、DNA、RNA)を配列決定するために連続的な取り込みが検出され得る。試料ウェルは、約150nm~約250nmの範囲内かまたはその範囲内の任意の値もしくは値の範囲の深さと、約80nm~約160nmの範囲内の直径とを有し得る。隣接する試料ウェルおよび他の望ましくない光源からの迷光をブロックするアパーチャを設けるために、金属化層1-540(例えば、基準電位のための金属化)が光検出器の上方にパターニングされ得る。いくつかの実施形態によれば、ポリメラーゼ1-520が、試料ウェル1-330内に位置し得る(例えば、試料ウェルの基部に付着され得る)。ポリメラーゼは、標的核酸1-510(例えば、DNAから導出される核酸の一部分)に作用し、相補的な核酸の伸長鎖の配列を決定してDNA1-512の伸長鎖を生成し得る。異なる蛍光色素分子を用いて標識化されたヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体は、試料ウェルの上方または内部の溶液中に分散され得る。
【0073】
図1-6に示されるように、標識化されたヌクレオチドおよび/またはヌクレオチド類似体1-610が相補的な核酸の伸長鎖に取り込まれると、1つまたは複数の付着された蛍光色素分子1-630が、導波路1-315から試料ウェル1-330に結合されている光エネルギーのパルスによって繰り返し励起され得る。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の蛍光色素分子1-630は、任意の適切なリンカ1-620を用いて1つまたは複数のヌクレオチドおよび/またはヌクレオチド類似体1-610に付着され得る。取り込み事象は、最大約100msの期間にわたって継続し得る。この時間の間に、蛍光色素分子(1つまたは複数)の励起からもたらされる蛍光発光のパルスが時間ビニング光検出器1-322を用いて検出され得る。異なる発光特性(例えば、蛍光減衰率、強度、蛍光波長)を有する蛍光色素分子を異なるヌクレオチド(A、C、G、T)に付着させ、DNA1-512のストランドが核酸を取り込んでいる間に異なる発光特性を検出および識別することによって、DNAの伸長鎖のヌクレオチド配列を決定することが可能である。
【0074】
いくつかの実施形態によれば、蛍光発光特性に基づいて試料を分析するように構成されている機器1-100は、異なる蛍光分子間の蛍光寿命の差および/または強度の差、ならびに/あるいは異なる環境における同じ蛍光分子の寿命の差および/または強度の差を検出し得る。説明として、
図1-7は、例えば、2つの異なる蛍光分子からの蛍光発光を表し得る、2つの異なる蛍光発光確率曲線(AおよびB)をプロットしている。曲線A(破線)を参照すると、短パルスまたは超短光パルスによって励起された後、第1の分子からの蛍光発光の確率p
A(t)は、図示されているように時間とともに減衰し得る。いくつかの事例において、光子が経時的に放出される確率の低減は、指数減衰関数p
A(t)=P
A0e
-t/τAによって表すことができる。
【0075】
ここで、式中、PA0は初期発光確率であり、τAは、発光減衰確率を特性化する、第1の蛍光分子と関連付けられる時間パラメータである。τAは、第1の蛍光分子の「蛍光寿命」、「発光寿命」、または「寿命」と称され得る。いくつかの事例において、τAの値は、蛍光分子の局所的環境によって変更され得る。他の蛍光分子は、曲線Aに示されたものとは異なる発光特性を有し得る。例えば、別の蛍光分子は、単一の指数関数的減衰とは異なる減衰プロファイルを有する場合があり、その寿命は、半減期値または何らかの他の測定基準によって特性化され得る。
【0076】
第2の蛍光分子は、
図1-7の曲線Bで示されるように、指数関数的ではあるが、測定可能な異なる寿命τ
Bを有する減衰プロファイルを有し得る。図示されている例において、曲線Bの第2の蛍光分子の寿命は曲線Aの寿命よりも短く、発光の確率は、第2の分子の励起直後では、曲線Aの場合よりも高い。いくつかの実施形態において、異なる蛍光分子は、約0.1ns~約20nsに及ぶ範囲の寿命または半減期値を有し得る。
【0077】
本発明者らは、異なる蛍光分子の存否を判別し、および/または、蛍光分子が晒される異なる環境または条件を判別するために、蛍光発光寿命の差を使用できることを認識および評価するに至った。いくつかの事例では、寿命(例えば、発光波長ではなく)に基づいて蛍光分子を判別することによって、機器1-104の態様を単純化することができる。一例として、寿命に基づいて蛍光分子を判別する場合、波長弁別光学素子(波長フィルタ、波長毎の専用検出器、異なる波長における専用パルス光源、および/または回折光学素子)の数を低減することができるか、またはなくすことができる。いくつかの事例では、光学スペクトルの同じ波長領域内で発光するものの、測定可能な異なる寿命を有する異なる蛍光分子を励起するために、単一の固有波長において動作する単一のパルス光源を使用することができる。同じ波長領域内で発光する異なる蛍光分子を励起および判別するために、異なる波長において動作する複数の光源ではなく、単一のパルス光源を使用する分析システムは、動作および保守管理の複雑さを低減することができ、よりコンパクトにすることができ、より低いコストで製造することができる。
【0078】
蛍光寿命分析に基づく分析システムは一定の利点を有し得るが、追加の検出技法を可能にすることによって、分析システムによって得られる情報の量および/または検出精度を増大することができる。例えば、いくつかの分析システム2-160は、蛍光波長および/または蛍光強度に基づいて試料の1つまたは複数の特性を判別するようにさらに構成され得る。
【0079】
再び
図1-7を参照すると、いくつかの実施形態によれば、蛍光分子の励起後の蛍光発光事象を時間ビニングするように構成されている光検出器を用いて、異なる蛍光寿命を区別することができる。時間ビニングは、光検出器の単一の電荷蓄積サイクルの間に行われ得る。電荷蓄積サイクルは、読み出し事象間の間隔であり、その間に光発生キャリアが時間ビニング光検出器のビン内に蓄積される。発光事象の時間ビニングによって蛍光寿命を決定する概念が
図1-8にグラフで紹介されている。t
1の直前の時刻t
eにおいて、蛍光分子または同じタイプ(例えば、
図1-7の曲線Bに対応するタイプ)の蛍光分子の集合が、短パルスまたは超短光パルスによって励起される。分子の大きい集合について、発光の強度は、
図1-8に示されるように、曲線Bと同様の時間プロファイルを有し得る。
【0080】
一方、単一の分子または少数の分子について、蛍光光子の放出は、この例については、
図1-7の曲線Bの統計値に従って生じる。時間ビニング光検出器1-322は、発光事象から発生するキャリアを、蛍光分子(1つまたは複数)の励起時間に関して時間分解されている個別の時間ビン(
図1-8には3つが示されている)に蓄積し得る。多数の発光事象が合計される場合、時間ビンにおいて蓄積されたキャリアは、
図1-8に示す減衰強度曲線を近似することができ、ビニングされた信号を使用して、異なる蛍光分子または蛍光分子が位置している異なる環境を区別することができる。
【0081】
時間ビニング光検出器1-322の例は、2015年8月7日に出願された「受光した光子の時間ビニングのための集積デバイス(INTEGRATED DEVICE FOR TEMPORAL BINNING OF RECEIVED PHOTONS)」を名称とする米国特許出願第14/821,656号に記載されており、参照によって本明細書に組み込まれる。説明を目的として、時間ビニング光検出器の非限定的な実施形態が
図1-9に示されている。単一の時間ビニング光検出器1-900は、光子吸収/キャリア発生領域1-902、キャリア移動領域1-906、および複数のキャリア貯蔵ビン1-908a,1-908b,1-908cを備え得る。これらはすべて半導体基板上に形成されている。キャリア移動領域は、キャリア輸送チャネル1-907によって複数のキャリア貯蔵ビンに接続され得る。3つのキャリア貯蔵ビンのみが図示されているが、より多くのビンがあってもよい。いくつかの実施形態において、単一の時間ビニング光検出器1-900は少なくとも2つのキャリア貯蔵ビンを含む。キャリア貯蔵ビンに接続されている読み出しチャネル1-910があり得る。光子吸収/キャリア発生領域1-902、キャリア移動領域1-906、キャリア貯蔵ビン1-908a,1-908b,1-908c、および読み出しチャネル1-910は、半導体を局所的にドーピングし、および/または隣接する絶縁領域を形成して、光検出機能をもたらしキャリアを閉じ込めることによって形成することができる。また、時間ビニング光検出器1-900は、基板上に形成された複数の電極1-920,1-922,1-932,1-934,1-936,1-940を含み得る。これらの電極は、デバイスを通じてキャリアを輸送するための電場をデバイス内に発生させるように構成されている。
【0082】
動作時、蛍光光子が、異なる複数の時点で光子吸収/キャリア発生領域1-902において受け取られ、キャリアを発生させ得る。例えば、ほぼ時刻t1において、3つの蛍光光子が光子吸収/キャリア発生領域1-902の空乏領域において3つのキャリア電子を発生させ得る。デバイス内の電場(電極1-920,1-922に対する、および任意選択的にまたは代替的に電極1-932,1-934,1-936に対するドーピングおよび/または外部印加バイアスに起因する)により、キャリアがキャリア移動領域1-906に移動し得る。このキャリア移動領域において、移動距離が、蛍光分子の励起後の時間に変換される。その後の時刻t5において、別の蛍光光子が光子吸収/キャリア発生領域1-902において受け取られ、追加のキャリアを発生させ得る。この時点において、最初の3つのキャリアは、第2の貯蔵ビン1-908bに隣接するキャリア移動領域1-906内の位置に移動している。その後の時刻t7において、電気的バイアスが電極1-932,1-934,1-936と電極1-940との間に印加されて、キャリア移動領域1-906から貯蔵ビンへとキャリアが横方向に輸送され得る。そして、最初の3つのキャリアは第1のビン1-908aに輸送されて保持され、その後に発生したキャリアは第3のビン1-908cに輸送されて保持され得る。いくつかの実施態様において、各貯蔵ビンに対応する時間間隔は、ナノ秒未満の時間スケールであるが、いくつかの実施形態(例えば、蛍光色素分子がより長い減衰時間を有する実施形態)では、より長い時間スケールが使用されてもよい。
【0083】
励起事象(例えば、パルス光源からの励起パルス)後にキャリアを発生および時間ビニングする処理は、単一の励起パルスの後に1度行われてもよく、または、光検出器1-900の単一の電荷蓄積サイクルの間における複数の励起パルスの後に複数回繰り返されてもよい。電荷蓄積が完了した後、キャリアは、読み出しチャネル1-910を介して貯蔵ビンから読み出され得る。例えば、適切なバイアスシーケンスを少なくとも電極1-940および下流の電極(図示せず)に印加して貯蔵ビン1-908a,1-908b,1-908cからキャリアを除去することができる。
【0084】
複数の励起事象の後、各電子貯蔵ビン内の蓄積された信号を読み出すことで、例えば、蛍光発光減衰率を表す対応するビンを有するヒストグラムをもたらすことができる。このような工程は、
図1-10Aおよび
図1-10Bに示されている。ヒストグラムのビンは、試料ウェル内の蛍光色素分子(1つまたは複数)の励起後の各時間間隔中に検出される光子の数を示し得る。いくつかの実施形態において、ビンの信号は、
図1-10Aに示されるように多数の励起パルス後に蓄積され得る。これらの励起パルスは、パルス間隔時間Tによって分離されている時刻t
e1,t
e2,t
e3,…,t
eNにおいて生じ得る。電子貯蔵ビン内の信号の蓄積の間に試料ウェルに10
5~10
7個の励起パルスが印加され得る。いくつかの実施形態において、1つのビン(ビン0)は、各光パルスによって送達される励起エネルギーの大きさを検出するように構成されて(例えばデータを正規化するための)基準信号として使用され得る。
【0085】
いくつかの実施態様において、
図1-10Aに示されるように、平均して単一の光子のみが励起事象後に蛍光色素分子から放出され得る。時刻t
e1における最初の励起事象の後、時刻t
f1において放出される光子が第1の時間間隔内に生じ得ることにより、その結果得られる電子信号が第1の電子貯蔵ビンに蓄積される(ビン1にもたらされる)。時刻t
e2における後続の励起事象において、時刻t
f2において放出される光子が第2の時間間隔内に生じ得ることにより、その結果得られる電子信号がビン2にもたらされる。
【0086】
多数の励起事象および信号蓄積の後、時間ビニング光検出器1-322の電子貯蔵ビンが読み出されて、試料ウェルに関する多値信号(例えば、2つ以上の値のヒストグラム、N次元ベクトルなど)が提供され得る。各ビンの信号値は、蛍光色素分子の減衰率に依存し得る。例えば、再び
図1-8を参照すると、減衰曲線Bを有する蛍光色素分子は、減衰曲線Aを有する蛍光色素分子よりも、ビン2に対するビン1の信号の比が高くなる。ビンからの値が較正値に対しておよび/または互いに分析および比較されることで、特定の蛍光色素分子を決定することができ、この蛍光色素分子が、試料ウェル内にあるときにその蛍光色素分子に結合されているヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体(または対象とする任意の他の分子もしくは検体)を同定する。
【0087】
信号分析の理解をさらに補助するために、蓄積されたマルチビン値が、例えば
図1-10Bに示されるようにヒストグラムとしてプロットされ得るか、または、N次元空間内のベクトルもしくは位置として記録され得る。較正ランを別個に実施して、4つのヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体に結合されている4つの異なる蛍光色素分子の多値信号(例えば、較正ヒストグラム)の較正値を取得することができる。一例として、較正ヒストグラムは、
図1-11A(Tヌクレオチドに関連付けられた蛍光標識)、
図1-11B(Aヌクレオチドに関連付けられた蛍光標識)、
図1-11C(Cヌクレオチドに関連付けられた蛍光標識)、および
図1-11D(Gヌクレオチドに関連付けられた蛍光標識)に示されるものとして現れ得る。測定された多値信号(
図1-10Bのヒストグラムに対応する)を較正多値信号と比較することによって、DNAの伸長鎖に取り込まれているヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体のアイデンティティ「T」(
図1-11A)を決定することができる。
【0088】
いくつかの実施態様において、異なる蛍光色素分子を区別するために、蛍光強度が追加的にまたは代替的に使用され得る。例えば、いくつかの蛍光色素分子は、たとえそれらの減衰率が類似し得る場合でも、大きく異なる強度で発光することやまたはそれらの励起確率に大きな差(例えば、少なくとも約35%の差)が生じることがある。ビニングされている信号(ビン1~3)を、測定された励起エネルギービン0に対して参照することによって、強度レベルに基づいて異なる蛍光色素分子を区別することが可能となり得る。
【0089】
いくつかの実施形態において、同じタイプの異なる数の蛍光色素分子が、異なるヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体に結合され得ることにより、蛍光強度に基づいてヌクレオチドを同定することができる。例えば、2つの蛍光色素分子が第1のヌクレオチド(例えば、「C」)またはヌクレオチド類似体に結合され、4つ以上の蛍光色素分子が第2のヌクレオチド(例えば、「T」)またはヌクレオチド類似体に結合され得る。蛍光色素分子の数が異なるため、異なるヌクレオチドに関連付けられた異なる励起および蛍光色素分子の発光確率があり得る。例えば、信号蓄積間隔中に「T」ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体についてより多くの発光事象があり得ることで、これらのビンの見かけの強度が「C」ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体よりも大幅に高くなる。
【0090】
本発明者らは、蛍光色素分子の減衰率および/または蛍光色素分子の強度に基づいてヌクレオチドまたは任意の他の生物検体もしくは化学検体を区別することにより、機器1-104内の光励起および検出システムを単純化することが可能になることを認識および評価するに至った。例えば、光励起は、単一波長源(例えば、複数の光源または複数の異なる固有波長で動作する光源ではなく、1つの固有波長を生成する光源)を用いて実施することができる。加えて、波長弁別光学素子およびフィルタが、検出システムにおいて必要ない場合がある。また、単一の光検出器を各試料ウェルに使用して、異なる蛍光色素分子からの発光を検出することができる。
【0091】
「固有波長」または「波長」という語句は、限定された放射帯域幅内の中心波長または主波長(例えば、パルス光源によって出力される20nm帯域幅内の中心波長またはピーク波長)を指すために使用される。いくつかの事例では、「固有波長」または「波長」は、光源によって出力される放射の全帯域幅内のピーク波長を指すために使用され得る。
【0092】
本発明者らは、約560nm~約900nmの間の範囲の発光波長を有する蛍光色素分子が、時間ビニング光検出器(CMOSプロセスを使用してシリコンウェハ上に作製可能)によって検出されるのに十分な量の蛍光発光を与え得ることを認識および評価するに至った。これらの蛍光色素分子は、ヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体などの対象とする生体分子に結合され得る。この波長範囲の蛍光発光は、シリコンベースの光検出器で、より長い波長の蛍光発光よりも高い応答性で検出され得る。加えて、この波長範囲における蛍光色素分子および関連するリンカは、DNAの伸長鎖へのヌクレオチドまたはヌクレオチド類似体の取り込みに干渉しないものとなり得る。また、本発明者らは、約560nm~約660nmの範囲内の発光波長を有する蛍光色素分子が単一波長源を用いて光励起され得ることを認識および評価するに至った。この範囲内の例示的な蛍光色素分子は、マサチューセッツ州ウォルサム(Waltham)所在のサーモフィッシャーサイエンティフィックインコーポレイテッド社(Thermo Fisher Scientific Inc.)から入手可能なAlexa Fluor 647である。また、本発明者らは、より短い波長(例えば、約500nm~約650nmの間)の励起エネルギーが、約560nm~約900nmの間の波長で発光する蛍光色素分子を励起するために必要となり得ることを認識および評価するに至った。いくつかの実施形態において、時間ビニング光検出器は、例えば、Geなどの他の材料を光検出器活性領域に組み込むことによって、試料からのより長い波長の発光を効率的に検出することができる。
【0093】
単一の特徴的な波長を放射する励起源を使用してDNAの配列を決定する可能性は、光学系のいくつかを単純化することができるが、上述のように技術的に困難な要求を励起源に課すこととなる。例えば、本発明者らは、励起エネルギーが後続で検出される蛍光信号を圧倒しないようにまたはそれと干渉しないように、励起源からの光パルスが上述した検出方式のために迅速に消滅すべきであることを認識および評価するに至った。いくつかの実施形態において、再び
図1-5を参照すると、導波路1-315と時間ビニング光検出器1-322との間に波長フィルタはなくてもよい。後続の信号収集との励起エネルギーの干渉を避けるために、励起パルスの強度は、励起パルスのピークから約100ps以内に少なくとも50dBだけ低減される必要があり得る。いくつかの実施形態において、励起パルスの強度は、励起パルスのピークから約100ps以内に少なくとも80dBだけ低減される必要があり得る。本発明者らは、モードロックレーザがそのような急速なターンオフ特性をもたらし得ることを認識および評価するに至った。しかしながら、モードロックレーザは長期間にわたって安定したモードロック状態で動作することが困難であり得る。また、データ取得のためにパルス繰り返し周波数を100MHzより低くする必要があるので、モードロックレーザキャビティの長さは非常に長くなる可能性がある。このような長い長さは、携帯型のデスクトップ機器に組み込むことができるコンパクトな光源とは対照的である。さらに、数千または数百万の試料ウェルに対して集積されたフォトダイオードにより並列に蛍光発光を検出可能となるように、モードロックレーザは、660nm未満の波長で蛍光色素分子を励起するのに十分なパルス当たりのエネルギー(または高い平均出力)を供給しなければならない。本発明者らはさらに、例えば集積デバイス1-102の光カプラおよび導波路への効率的な結合を達成できるように、モードロックレーザのビーム品質を高くすべき(例えば、1.5未満のM2値)であることを認識および評価するに至った。現時点では、携帯型のデスクトップ機器に組み込むことができ、かつ長期間にわたって安定した状態を維持することができるコンパクトなモジュール(例えば、0.0028m
3(0.1ft
3)未満の体積を占める)において、250mW~1Wの平均出力、500nm~650nmの波長、50MHz~200MHzの繰り返し周波数でパルスを供給する市販の入手可能なモードロックレーザ発振システムは存在しない。
【0094】
[III.集積デバイス]
試料分析における集積デバイスの性能は、集積デバイスの光カプラ(例えば、光子カプラ)の結合効率や、励起エネルギーを個々の導波路に分割する際の光損失や、試料ウェルへの個々の導波路の結合効率などを含む、集積デバイスの光学系に関連する様々な要因に依存し得る。これらの要因は、励起エネルギーを試料ウェルに送達するためにより多くの試料ウェルおよび光学部品が集積デバイスに含まれるほど増大し得る。本出願の態様は、光カプラ、光スプリッタ、導波路、および、光損失を低減および/または結合効率を改善するべくこれらの光学部品を集積デバイス内に配置するための技術に関する。さらに、本明細書に記載される技術により、集積デバイスの試料ウェルへの励起エネルギーの送達における均一性を向上させることができる。
【0095】
また、試料分析における集積デバイスの性能は、個々の試料ウェルに送達される励起エネルギー(例えば、光パワー)の量に依存し得る。励起エネルギーが励起源から試料ウェルに伝播する際に、試料ウェルに結合する励起エネルギーの量を低減する可能性があり且つ試料を検出するにあたって試料ウェルに関連する画素の性能に影響を与え得る光損失が発生し得る。試料ウェルのアレイに関して、このような光損失は、試料検出を可能とする画素の数を制限し得る。また、このような光損失は、アレイ内の個々の試料ウェルに励起エネルギーを送達する際の均一性を低下させ得るものとなり、これも集積デバイスの性能に影響を及ぼし得る。集積デバイスの導波路は、導波路に近接して位置する多数の試料ウェル(例えば、512個の試料ウェル)に励起エネルギーを結合し得る。励起エネルギーが導波路に沿って伝播する際、光損失の総量が増加し得ることで、導波路に沿って遠くに位置する試料ウェルに結合する励起エネルギーの量が減少する。このように、導波路に沿った光損失は、導波路に沿って位置する個々の試料ウェルに結合される励起エネルギーの量の均一性に影響を及ぼし得る。本出願の態様は、励起エネルギーが導波路に沿って伝播する際の光損失を低減することによって試料ウェルのアレイ内の励起エネルギーの均一性を改善する集積デバイス、および集積デバイスの形成方法に関する。
【0096】
いくつかの事例では、光源からのパワーを多数の集積光導波路に効率的に結合しようとする際に問題が生じる可能性がある。多数の試料ウェルに対して各導波路および試料ウェルに十分なパワーを供給するために、入力ビームの平均パワーは試料ウェルの数の増加に比例して上昇する。いくつかの集積光導波路(例えば、窒化シリコン導波路コア/二酸化シリコンクラッド)に関して、高いパワーは、導波路の伝送損失に一時的な変化を引き起こして、時間とともに試料ウェル内において相当量のパワー不安定性を引き起こす可能性がある。高いパワーでの集積光導波路における時間依存性の伝送損失が本発明者らによって測定されており、例示的な結果が
図2-0にプロットされている。
【0097】
窒化シリコンコアを有する3つの同じ長さのシングルモード導波路について、挿入損失を時間の関数として測定した。3つの導波路に結合された初期平均パワーレベルは、0.5mW、1mW、および2mWであった。
図2-0のグラフは、3つのパワーレベルについて、導波路の各長さについて測定された挿入損失の変化を時間の関数として示している。このグラフは、高いパワーレベルでは、損失が10分以内に3dB変化し得ることを示している。反応が数十分または数時間実行され得る単一分子核酸配列決定などのいくつかの用途では、そのようなパワー不安定性が許容できない場合がある。
【0098】
試料ウェルからの発光強度が低い場合、または試料の特徴付けが試料ウェルからの強度の値に依存する場合、試料ウェルに送達されるパワーが経時的に安定した状態のままであることが有益である。例えば、導波路内での時間依存性の伝送損失のために試料ウェルに送達されるパワーが3dB減少すると(
図2-0参照)、蛍光発光事象の数が機器のノイズフロア未満のレベルにまで低下し得る。いくつかの事例では、光子信号をノイズと区別できないことは、蛍光色素分子の寿命を区別するために使用される光子統計に悪影響を及ぼし得る。その結果、重要な分析情報が失われる可能性や、分析におけるエラー(例えば、核酸配列検出におけるエラー)が生じる可能性や、または配列決定の実行が失敗する可能性がある。
【0099】
時間依存性の導波路伝送損失の影響を低減するための1つのアプローチは、集積デバイスに使用される集積導波路の長さを短くすることである。いくつかの事例では、励起エネルギーを試料ウェルに送るのに相当量の長さの導波路が必要となり得る。代替的または追加的に、導波路に結合された放射の強度が減少する場合があり、および/または金属層から生じる導波路に沿った光損失が増加する場合がある。発明者らは、励起源からのビームが最初に集積光回路の単一の導波路に結合され、次いで多くの導波路に(例えば、1つの入力と2つの出力とを有するマルチモード干渉スプリッタの二分木を使用することによって)再分配される場合に、時間依存性の導波路伝送損失が最も問題になり得ることを認識および評価するに至った。このような場合、結合領域において、強度が非常に高くなり導波路伝送損失に急激な変化を引き起こす可能性がある。
【0100】
本出願のいくつかの実施形態は、導波路構造、および導波路から延びる所望のエバネッセント場を有する光モードを提供する導波路構造を形成する方法に関する。導波路に沿った伝播方向に対して垂直に延びるエバネッセント場は、導波路から減少する光パワーの分布を有し得る。エバネッセント場は、光パワーが導波路から減少する特性減衰を有し得る。光モードの伝播をサポートするように構成された導波路は、エバネッセント場が導波路から急速に減衰するときに「閉じ込められた」光モードであると見なすことができる。
【0101】
導波路の1つ以上の寸法は、減衰率や、導波路材料と周囲材料(例えば、クラッド)との間の界面からのエバネッセント場の距離や、導波路伝播方向からの垂直な方向におけるエバネッセント場の光パワープロファイルなどを含むエバネッセント場の特性に影響を及ぼし得る。導波路に沿った伝播方向に対して垂直な導波路の寸法は、エバネッセント場の1つまたは複数の特性に影響を及ぼし得る。いくつかの実施形態において、導波路の厚さは、エバネッセント場の1つまたは複数の特性に影響を及ぼし得る。導波路の厚さは、導波路に沿って伝播する励起エネルギーのエバネッセント場の減衰に影響を及ぼし得る。いくつかの実施形態において、導波路の厚さを増加させると、エバネッセント場の減衰が増加し得る。
【0102】
いくつかの実施形態は、集積デバイスの1つまたは複数の試料ウェルに結合するための所望のエバネッセント場を提供するために可変の厚さを有する導波路構造に関する。いくつかの実施形態において、1つまたは複数の試料ウェルと重なる領域では、1つまたは複数の試料ウェルと重ならない領域よりも導波路の厚さが大きくされ得る。このような実施形態では、導波路は、金属層の存在からの光損失を低減しつつ、試料ウェルへの励起エネルギーの所望の量の結合を提供するエバネッセント場を有する光モードを提供することができる。
【0103】
集積デバイスの光損失を低減し光特性を改善するための別の技術は、集積デバイスの導波路の長さに沿って励起エネルギーのパワー分布を変化させることを含み得る。このパワー分布は、試料ウェルと重なる導波路に沿った位置で増加および/または拡大し、試料ウェルと重ならない導波路に沿った位置で減少および/または狭くなり得る。いくつかの実施形態において、集積デバイスの導波路は複数の光モードを伝播し得る。このような導波路は「マルチモード導波路」と見なすことができる。複数の光モードは、導波路に沿った光伝播方向に対して垂直な方向に励起エネルギーのパワー分布を変えるように干渉し得る。マルチモード導波路のパワー分布は、試料ウェルと重なる1つまたは複数の導波路に沿った位置でそのパワー分布が広がるように変化し得る。
【0104】
[A.格子カプラ]
結合領域1-201における時間依存性の導波路損失を減少させるためにスライス格子カプラ2-100が実装され得る。
図2-1Aには、このスライス格子カプラ2-100の概略図が示されている。このスライス格子カプラは、格子カプラ1-216(例えば、
図1-2A)とすることができ、出力導波路と見なすことができる複数の導波路2-120に隣接して形成された長さLの格子2-110を含む。導波路は、格子2-110によって回折された光を受け取るテーパ端部2-122を有し得る。これらのテーパ端部は、異なる幅(例えば、図示されるように格子の対向する端部に向かってより広くなる幅)を有し得る。これらのテーパ端部が及ぶ全幅は、格子の長さL未満であるか、またはほぼ等しい長さであり得る。
【0105】
いくつかの実施形態において、励起源1-106からのビームは、格子の長さLに本質的に一致するY方向に延びるように拡張(または励起源によって生成)され得る。例えば、拡張されたビーム2-112は、
図2-1Aにおいて破線の楕円によって示されるような形状を有し得る。ここで、破線の楕円は、所望の閾値(例えば、80%、90%)を超える光強度を有するビームの一部に対応する。入射ビームは、
図2-1Aに示される破線の楕円を超えて延びる低い光強度のテール領域を有し得る。スライス格子カプラ2-100は、75%~99%の範囲内かまたはその範囲内の任意の割合もしくは割合の範囲の入射ビームの一部を捕捉するように構成され得る。このようなビームが格子に入射する(例えば、主に+Z方向に進む)と、格子はビームを導波路2-120のテーパ端部2-122に向けてX方向に回折させる。いくつかの実施形態において、ビームは、格子2-110に対する法線(+Z方向)から数度(例えば、1~6度)の角度で格子に入射し得る。出力導波路2-120に向けて入射ビームをある角度で位置決めすることにより、ビームが格子カプラの法線方向とされた場合よりも格子カプラ内での回折量を減少させて格子カプラへの励起エネルギーの結合効率を向上させることができる。ビームは、その中心で最も強く、ビームの縁に向かうにつれて強度が減少する(±Y方向に減少する)Y方向に沿った横断強度プロファイルを有し得る。このようなビームの場合、導波路のテーパ端部2-122は、格子2-110の対向する端部でより広くなるとともに、格子の中心部でより狭くなり、その結果、同様の量のパワーが複数の導波路2-120の各々に結合される。なお、10本の導波路が図示されているが、スライス格子カプラはさらに多くの導波路を有していてもよい。いくつかの実施形態において、スライス格子カプラは、20~200個の範囲内かまたはその範囲内の任意の値もしくは値の範囲で、多数の出力導波路を有し得る。多くの導波路にわたってパワーの結合を分配することによって、最初にすべてのパワーを単一の導波路に結合することによる時間依存性の伝送損失に関連する悪影響を低減または排除することができる。また、拡張されたビームは、格子カプラでの強度を減少させて、格子2-110、反射層1-226、集積デバイス内の他の構造、および光学系内の他の構造を損傷させる虞を低減する。
【0106】
いくつかの事例において、
図2-1Aに示されるスライス格子カプラ2-100およびビーム配置を用いた複数の導波路2-120へのパワーの結合の均一性を調整可能とすることが望ましい。ビームの横断強度プロファイルがガウス分布とされ得るかまたは十分に特徴付けられ得ることで理論的に等しい量のパワーを捕捉するようにテーパ端部2-122の異なる幅が事前に計算されるが、結合の均一性は、ビームの横断強度プロファイルの変化やY方向のビーム変位の影響を大きく受け得る。
【0107】
図2-1Bは、広いビームを複数の導波路に結合する方法を示している。この方法は、導波路に結合されたパワーレベルの均一性を改善してビームの横断強度プロファイルやビーム変位によって受ける結合の感受性を低下させるための調整をもたらす。いくつかの実施形態によれば、励起源(例えば、レーザ)からの円形ビームは、格子2-110の長さLおよびテーパ端部2-122のアレイを超える楕円ビーム2-122に再成形され得る。この楕円ビーム2-122は、その楕円の長軸が格子2-110の歯またはラインに対して角度αを有するように回転されている。いくつかの実施形態において、角度αは1度~10度の間であり得る。ビーム2-122の部分は、±X方向に格子2-110の縁を越えて延在し得る。
図2-1Aに示される結合配置は、ビーム面積の95%を超える部分からのパワーがテーパ端部2-122に結合することを可能にし得る一方、
図2-1Bに示される結合配置は、ビーム面積の80%~95%の部分からのパワーがテーパ端部に結合することを可能にし得る。本発明者らは、全体の結合効率の低下が結合安定性の改善や導波路への結合パワーの均一性の改善のみによって補償されないことを認識および評価するに至った。
図2-1Cは、集積デバイスの所望の性能を維持しつつ異なるビームサイズを許容する格子カプラの能力を実証するために、異なるビーム幅のスライス格子カプラを使用することによって集積デバイスにわたり除去される割合を示す。いくつかの実施形態において、スライス格子カプラは、約±10%のビームサイズ公差、約45%の格子カプラ効率、および約±25%の試料ウェルのアレイにわたる照射の均一性の変動を許容し得る。
【0108】
動作中、複数の導波路2-120にわたるパワーの均一な結合を取得し維持するために、X方向およびY方向における角度αおよびビーム変位が調整され得る。ビーム2-122がY方向に非対称の強度プロファイルを有する場合、その非対称性を補償するためにビームの位置がX方向に調整され得る。例えば、+Y方向におけるビームの強度が-Y方向のビームの強度よりも大きい場合、ビームが-X方向に移動されることにより(図示された角度の場合)、+Y方向のビームの位置が格子2-110から離れ、+Y方向においてテーパ端部2-122に結合されるパワー量が減少する。そして、-Y方向のビームの一部が格子2-110上に移動して、-Y方向のテーパ端部2-122に結合されるパワー量が増加する。ビーム2-122がY方向に対称的な強度プロファイルを有する場合、導波路に結合されるパワーの均一性を改善するために±Y方向および/または±α方向の調整が行われ得る。楕円ビームをスライス格子カプラに位置合わせするために使用されるビームステアリングモジュールの一例は、「コンパクトなビーム成形およびステアリングアセンブリ(COMPACT BEAM SHAPING AND STEERING ASSEMBLY)」を名称とする米国特許出願第62/435,679号に記載されており、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0109】
スライス格子カプラのテーパ端部の1つ以上の寸法は、スライス格子カプラに結合された光強度の変動を補償するために変更され得る。いくつかの実施形態において、テーパ端部の幅(
図2-1Aに示されるy軸に沿った幅)は、スライス格子カプラの側面において変更され得る。いくつかの実施形態において、テーパ端部の高さ(
図2-1Aに示すz軸に沿った高さ)は、格子カプラの側面において変更され得る。テーパ端部の寸法は、格子カプラに対するテーパ端部の位置に依存し得る。格子カプラ内の強度分布プロファイルは、特定の格子カプラについての強度プロファイルが与えられた場合に、テーパ端部の各々が実質的に同様な量の光パワーを受け取ることを可能にするテーパ領域の位置決めおよび/またはサイズの指標を与え得る。
図2-1Dは、中心点の位置に応じた相対強度(x軸に沿ってゼロ)をプロットしたものである。
図2-1Dに示される強度プロファイルは、長さ240ミクロン(
図2-1Aに示す寸法L)の格子を有するスライス格子カプラの強度プロファイルである。強度は格子カプラの格子の中心点でピークとなり、格子の長さに沿って減少するので、テーパ端部は、そのテーパ端部に結合される光パワーの量の均一性を向上させるように格子の中心点から外縁に向かって幅が増加し得る。いくつかの実施形態において、テーパ端部の各々は、そのテーパ端部が各々実質的に等しい量のパワーを捉えるように適切に位置決めされ得るとともにサイズが決定され得る。
図2-1Dは、強度プロファイルに関してこの概念を表すためにテーパ端部2-122a,2-122b,2-122cの取り得る位置と幅を示している。テーパ端部の追加の幅は、
図2-1Dに四角の点で表されている。テーパ端部2-122aは、強度が低い格子カプラの位置で捕捉を行うため、最も外側のテーパ端部に位置して最大幅を有している。テーパ端部2-122b,2-122cはより中心点の近くに位置し、徐々に幅が小さくなる。
【0110】
いくつかの実施形態において、スライス格子カプラのテーパ端部の1つ以上の寸法は、集積デバイスの光学系における光学部品(例えば、光スプリッタ)を考慮して変更され得る。集積デバイス内の多くの導波路にわたって励起エネルギーを分配するために、スライス格子カプラからの出力導波路は、励起エネルギーを伝播する導波路の数を増やすべく光スプリッタと結合し得る。出力導波路のうちのいくつかは、1つのみの光スプリッタを有する光路に沿って励起エネルギーを結合してもよいし、出力導波路は、2つ以上の光スプリッタを有する光路に沿って励起エネルギーを結合してもよい。テーパ端部の寸法は、格子内の強度分布を考慮することに加えて、各出力導波路が結合する光路内の光スプリッタの数に応じて変更され得る。いくつかの実施形態において、スライス格子カプラは、格子の縁に近接したテーパ端部と、格子の側面の中心に近接したテーパ端部との両方よりも大きな寸法を有する1つのテーパ端部を有し得る。
【0111】
図2-2Aは、格子2-210を有する格子カプラ2-200の概略図を示している。テーパ端部2-222a,2-222b,2-222cは、側面2-230で格子2-210に結合するとともに出力導波路2-220に結合する。この例では、テーパ端部2-222bは、側面2-230の縁に近接して位置するテーパ端部2-222aと、側面2-230の中心に近接して位置するテーパ端部2-222cとの両方よりも大きい幅(y軸に沿った寸法)を有する。このようなテーパ端部の変更は、格子2-210内の励起エネルギーの強度プロファイルに加えて、出力導波路2-220が結合する光スプリッタの数を補償し得る。上述したように、強度は格子の中心で最も高く、格子の縁に向かって減少し得る。テーパ端部2-222aに関する出力導波路は、格子の下流で使用される光スプリッタの数を減らすことによって、縁に近接したより低い強度のものとなり得る。いくつかの実施形態において、テーパ端部2-222aからの励起エネルギーの経路は、1つのみの光スプリッタを含み得る一方、テーパ端部2-222b,2-222cの経路は、2つ以上の光スプリッタを含み得る。
【0112】
[B.光スプリッタ]
1つまたは複数の光スプリッタ(例えば、マルチモード干渉スプリッタ)は、格子カプラ1-216と導波路1-220との間に配置され得るとともに、いくつかの実施形態において、ルーティング領域1-202の一部として含まれ得る。光スプリッタは、光スプリッタへの入力として格子カプラの出力導波路に結合し得るとともに、光スプリッタの出力として2つ以上の導波路を有し得る。いくつかの実施形態において、複数の光スプリッタを使用することで、格子カプラ1-216によって受信された光パワーを、集積デバイスの画素領域1-203内の試料ウェル1-108に励起エネルギーを伝播する複数の導波路1-220に分割することができる。いくつかの実施形態において、格子カプラと励起エネルギーを試料ウェルに結合する導波路との間の光スプリッタの数は、格子カプラからの出力導波路がどのように配置決めおよび/またはサイズ決めされるかによって変更され得る。
【0113】
図2-2Bは、
図2-2Aに示される光スプリッタおよびスライス格子カプラを実装する例示的な光ルーティング配置を示している。格子2-110、格子の側面2-230のテーパ端部、および出力導波路2-220に加えて、マルチモード干渉(MMI)スプリッタ2-240a,2-240b,2-242を使用することで、出力導波路内を伝播する光パワーを、集積デバイスの画素領域内の試料ウェルに励起エネルギーを伝播する複数の導波路1-220にさらに分割することができる。MMIスプリッタ2-240a,2-240bは、MMIスプリッタの第1のグループの一部であり、各々入力として1つの出力導波路2-220を受け入れるとともに、2つの出力を有している。第1のグループ内のMMIスプリッタは、格子カプラ2-110から1mm未満の位置に存在し得る。MMIスプリッタ2-242は、MMIスプリッタの第2のグループの一部であり、各々、MMIスプリッタ2-240bなどの1つのMMIスプリッタからの出力を受け取るとともに、導波路1-220を形成する2つの出力を有している。なお、
図2-2Aに示されたMMIスプリッタは2つの出力を有しているが、本明細書に記載される技術は光スプリッタの出力の数に限定されないものであり、より多くの出力を使用することができる。
【0114】
図2-2Bに示されるように、第1グループ内のMMIスプリッタ2-240からのすべての出力が第2グループ内のMMIスプリッタ2-242への入力を形成しているわけではない。
図2-2Aに示されるように、MMIスプリッタ2-240bからの出力は2つのMMIスプリッタ2-242に結合する一方、MMIスプリッタ2-240aはどのMMIスプリッタ2-242にも結合していない。
図2-2Aを再び参照すると、テーパ端部2-222aなどの外側テーパ端部は、テーパ端部2-222bなどの他のテーパ端部よりも幅が狭く、格子2-110内の強度プロファイルのために、より少ない光パワーを伝播する。導波路1-220間の光パワーの均一性を改善するために、外側テーパ端部は、より少ないMMIスプリッタを有する経路に光パワーを提供し得る。このように、テーパ端部の1つ以上の寸法、および格子2-110の出力から導波路1-220を形成するために使用されるMMIスプリッタの数により、格子2-110内の強度プロファイルをバランスさせることができる。
【0115】
[C.アレイレイアウト]
本出願のいくつかの実施形態は、上述したように、例えば導波路長を短くするなどによって、デバイス性能を改善し、および/または時間依存性の導波路損失を低減するための、集積デバイスにおける導波路および光学部品のルーティング技術に関する。導波路および光学部品のルーティングにおける他の考慮事項は、追加の試料ウェルに対してより大きな表面積を利用可能とするために、光ルーティングに充てる集積デバイスの実装面積を減らすことを含み得る。
【0116】
いくつかの実施形態において、導波路は格子カプラから動径分布で経路指定され得る。
図2-2Bに示されるように、出力導波路2-220、MMIスプリッタ2-240,2-242、導波路1-220は、格子2-110から放射状に配置されている。集積デバイスの画素領域1-203内の試料ウェルに励起エネルギーを向けるために、複数の導波路1-220が列をなして配置され得ることにより、
図1-2Aに示される試料ウェル1-108の行などのように、個々の導波路1-220が集積デバイスの試料ウェルの行と結合するように配置される。
図2-2Bの平面図に関して、導波路1-220は、集積デバイスの画素領域内でx軸に沿って直線的に延在することができる。
【0117】
いくつかの実施形態において、集積デバイスの画素領域内の導波路は、格子カプラの格子に対して実質的に平行に配置されてもよい。光伝播領域は、格子カプラを導波路に光学的に結合し得る。このような導波路のレイアウトはより短い導波路を可能にし、これにより、時間依存性の導波路損失などの光損失を低減することができる。
図3-1は、格子カプラの格子3-110と、伝播領域3-120と、導波路3-130a,3-130bとを有する例示的な光ルーティング配置の概略図を示している。伝播領域3-120は、2つの出力導波路3-130a,3-130bのセットの間に配置され得る。伝播領域3-120は複数の導波路3-130に励起エネルギーを供給するように構成されているため光スプリッタと見なすことができる。導波路3-130a,3-130bは、集積デバイスの画素領域内の試料ウェルに励起エネルギーを結合するように配置され得る。
図3-1に示されるように、導波路3-130a,3-130bは、格子カプラの格子3-110に対して実質的に平行な方向(y軸)に沿って伝播領域3-120から延びている。導波路レイアウトの中央部分に沿って伝播領域3-120を配置することにより、導波路が格子カプラの格子に対して実質的に垂直に配置される(
図2-2Bに示されるような)導波路レイアウトに比べて、導波路3-130をより短い長さとすることができる。
【0118】
いくつかの実施形態において、1つまたは複数の光スプリッタ(例えば、MMIスプリッタ)は、集積デバイスの画素領域に配置され得るとともに、試料ウェルの行または列と光学的に結合するように構成された2つ以上の導波路と結合するように構成され得る。1つまたは複数の光スプリッタは、2つの試料ウェルのセットの間に配置され得る。2つの試料ウェルのセットの間には、光スプリッタへの1つまたは複数の入力導波路が配置され得る。入力導波路は、
図3-1に示される伝播領域3-120から延びる導波路3-130a,3-130bのような、伝播領域に結合する導波路であり得る。
図3-2は、それぞれ光スプリッタ3-214a,3-214bへの入力として機能するように構成された入力導波路3-210a,3-210bを含む例示的な導波路レイアウトの概略図を示している。
図3-2に示されるように、入力導波路3-210a,3-210bは、試料ウェル3-212aを含む第1の試料ウェルのセットと、試料ウェル3-212bを含む第2の試料ウェルのセットとの間に配置されている。また、第1の試料ウェルのセットと第2の試料ウェルのセットとの間には光スプリッタ3-214a,3-214bが配置されている。光スプリッタ3-214aからの出力導波路3-216a,3-216bは各々、第1の試料ウェルのセット内の試料ウェルの一つの行と結合するように配置されている。光スプリッタ3-214bからの出力導波路3-218a,3-218bは各々、第2の試料ウェルのセット内の試料ウェルの一つの行と結合するように配置されている。
【0119】
[D.試料ウェル]
本明細書に記載された種類の集積デバイスは、内部に試料を受け入れるように構成された1つまたは複数の試料ウェルを含み得る。集積デバイスは、試料ウェル(例えば、512個の試料ウェル)が列に配置された画素を含み得る。各試料ウェルは、試料ウェルの表面(底面など)に配置され得る試料を受け入れることができる。試料が配置される表面は、所望のレベルの励起エネルギーで試料を励起するように構成されている導波路から或る距離を有し得る。いくつかの実施形態では、導波路に沿って伝播する光モードのエバネッセント場が試料と重なるように、導波路に対して試料ウェルが位置決めされ得る。
【0120】
試料ウェルは、1つまたは複数の試料を試料ウェルに投入可能とする上部アパーチャを有し得る。上部アパーチャのサイズは種々の要因に依存し得る。このような要因の1つは、1つまたは複数の試料が試料ウェル内に配置され得ることに関連する。したがって、上部アパーチャは、試料を試料ウェル内に配置可能とする十分な大きさであり得る。他の要因は、迷光などのバックグラウンド信号に関連する。1つまたは複数の試料が試料ウェル内に配置されて励起エネルギーで励起されると、バックグラウンド信号が放出エネルギーに望ましくない変動を引き起こし、それによって測定ノイズが生じ得る。このような変動を制限するために、上部アパーチャのサイズが、バックグラウンド信号の少なくとも一部を遮断するように設定され得る。同様に、この上部アパーチャは、そのアパーチャ下方の試料の部分のみが実質的に励起エネルギーを受け取るように試料の露出を阻止する。別の要因は、励起エネルギーの受け取りに反応して試料によって放出される放出エネルギーの指向性に関する。いくつかの実施形態において、上部アパーチャのサイズは、所望のレベルの指向性をもたらすように設定され得る。
【0121】
集積デバイスのいくつかの実施形態は、集積デバイスの表面上の金属層内に形成された試料ウェルを含む。この金属層は、試料ウェルからの放出エネルギーを1つまたは複数のセンサにより検出することにおいて利点をもたらし得る。この金属層は、バックグラウンド信号を減少させて、1つまたは複数のセンサにより検出される放出エネルギーの量を向上させるように機能することができる。このような金属層は、バックグラウンド信号(例えば、迷光、バックグラウンド光または直接励起エネルギー)から生じ得るノイズアーチファクトを低減することによってセンサの信号対ノイズ比を改善することができる。いくつかの実施形態において、集積デバイスは、電気信号を送信および/または受信するための配線として機能するように構成された金属層を含み得る。このような配線は、センサに結合し、センサを制御する信号を送信し、および/またはセンサによって検出された放射エネルギーを示す信号を受信し得る。
【0122】
試料ウェルの深さは、試料の位置と金属層との間の所望の間隔を維持するように設定され得る。このような間隔により、金属層によって引き起こされる光損失を制限しつつ、所望のレベルの励起エネルギーを確実に試料ウェルに提供することが可能となる。いくつかの実施形態において、試料ウェルの深さは、導波路に沿って伝播する光モードのエバネッセント場が金属層と相互作用する程度を制限しつつ、このエバネッセント場が試料と重なるように設定され得る。いくつかの実施形態において、試料ウェルの深さは、試料に関連するマーカーの光子放出事象のタイミング(例えば、寿命)に影響を及ぼし得る。したがって、この深さは、異なるマーカーの個々の寿命に関連するタイミング特性に基づいて試料ウェル内の異なるマーカーを区別可能とし得る。
【0123】
試料ウェルの形状やサイズおよび/または金属層の組成は、放出エネルギーをセンサに向けるように作用し得る。いくつかの実施形態において、放出エネルギーの形態で試料によって放出されたエネルギーの一部は、集積デバイスの層を介して下方に伝播し得る。この放出エネルギーの一部は、試料ウェルと関連付けられた画素内の集積デバイス上に位置する1つまたは複数のセンサによって受け取られ得る。
【0124】
図4-1は、本出願のいくつかの非限定的な実施形態による、試料ウェル4-108を含む集積デバイスの断面図である。試料ウェル4-108は、試料ウェル4-108の表面に保持され得る試料4-191を受け入れるように構成され得る。例えば、試料ウェル4-108の表面4-112は、試料に付着する組成物を少なくともある時間にわたり一時的に有し得る。試料ウェル4-108の表面4-112は、
図4-1に示されるように、試料ウェル4-108の側壁ではなくその表面に試料4-191が付着するための選択性をもたらす1つまたは複数の材料を有し得る。いくつかの実施形態において、試料ウェル4-108の表面4-112は、試料ウェル4-108への試料4-191の光活性化結合を可能にし得る。いくつかの実施形態において、試料ウェル4-108の表面4-112は酸化シリコンで形成することができ、1つまたは複数のシラノール基(Si-OH)で終端し得る。シラノール基は、他の材料(例えば、1つまたは複数のシラン基を有した構造を有する化学物質)と相互作用して、表面に対して特定の種類の界面化学特性を生じさせ得る。試料4-191は、試料ウェル4-108の上部アパーチャを通じて試料ウェル4-108内に配置され得る。上部アパーチャは、照射している試料4-191からの周囲光または迷光を低減するように構成され得る。試料ウェル4-108内のバルク溶液を励起し得る迷光が集積デバイスの導波路および/または試料ウェルから生じる場合、試料ウェル4-108内の試料は、「暗」条件と呼ばれ得る条件下で分析され得る。上部アパーチャは、試料ウェル4-108上のバルク溶液を励起することによる試料ウェル4-108内の迷光を低減するように構成され得る。いくつかの実施形態において、試料ウェル4-108はサブ波長断面寸法を有し得ることで、集積デバイスに入射する光の伝播を低減または抑制することができる。試料ウェル4-108の上部アパーチャは、50nm~300nmの範囲内かまたはその範囲内の任意の値もしくは値の範囲の幅W
Aを有し得る。
【0125】
試料4-191は、導波路4-102が試料ウェル4-108と光学的に結合することなどによって、導波路4-102を介して提供される励起エネルギーで励起され得る。導波路4-102は、
図4-1では矩形断面を有するように示されているが、本明細書に記載される導波路を含む、他の任意の適切な断面形状を使用することができる。導波路4-102は、導波路からエバネッセント減衰する光モードを提供するように構成され得る。いくつかの実施形態において、この光モードのエバネッセント場は少なくとも部分的に試料ウェル4-108と重なり得る。このようにして、試料4-191は光モードのエバネッセント場を通じて励起エネルギーを受け取ることができる。
【0126】
試料ウェル4-108は、試料ウェル4-108の表面4-112と、クラッド4-118と金属層4-122との界面4-127との間において深さdwを有し得る。深さdwは、表面4-112に位置する試料と金属層4-122との間に適切な距離をもたらし得る。深さdwは、試料4-191に関連するマーカーの光子放出事象のタイミング(例えば、蛍光色素分子の蛍光寿命)に影響を与え得る。したがって、深さdwは、異なるマーカーの個々の光子放出タイミング特性(例えば、蛍光寿命)に関連するタイミング特性に基づいて、試料ウェル4-108内の異なるマーカーを区別することを可能にし得る。いくつかの実施形態において、試料ウェル4-108の深さdwは、受け取った励起エネルギーの量に影響を及ぼし得る。試料ウェル4-108の深さdwは、試料4-191からの放出エネルギーの指向性を改善するように設定され得る。深さdwは、50nm~400nmの範囲内かまたはその範囲内の任意の値もしくは値の範囲であり得る。いくつかの実施形態において、深さdwは95nm~150nmの間である。いくつかの実施形態において、深さdwは250nm~350nmの間である。
【0127】
集積デバイスは、上部クラッド4-118の上に金属層4-122を含み得る。金属層4-122は、試料ウェル内の試料によって放出された放出エネルギーの反射体として機能し得るものであり、集積デバイスのセンサに向かって放出エネルギーを反射することによって放出エネルギーの検出を改善し得る。金属層4-122は、試料ウェル内で発生しない光子によるバックグラウンド信号を減少させるように作用し得る。金属層4-122は1つ以上の副層を含み得る。金属層の層として使用される適切な材料の例としては、アルミニウム、銅、アルミニウム銅合金、チタン、窒化チタン、タンタル、および窒化タンタルを挙げることができる。
図4-1に示されるように、金属層4-122は2つ以上の副層を含み得る。いくつかの実施形態において、クラッド4-118と接合するように配置された第1の副層4-124は、アルミニウム、タンタル、またはチタンを含み得る。第1の副層4-124がアルミニウムを含む実施形態では、第1の副層4-124は、アルミニウムと、シリコンおよび/または銅との合金を含み得る。第1の副層がアルミニウムを有することによって、導波路に沿って伝播する励起エネルギーの光損失を減らすことができる。第1の副層4-124の厚さは、30nm~165nmの範囲内かまたはその範囲内の任意の値もしくは値の範囲であり得る。
【0128】
金属層4-122は、第1の副層4-124の上に配置された第2の副層4-126をさらに含み得る。いくつかの実施形態において、第2の副層4-126はチタンを含み得る。チタンは、金属層4-122内で生じる腐食の量を低減することができる。第2の副層4-126の厚さは、1nm~100nmの範囲内かまたはその範囲内の任意の値もしくは値の範囲であり得る。いくつかの実施形態において、第2の副層の厚さは約10nmであり得る。
【0129】
金属層4-122は、第2の副層4-126の上および/または第1の副層4-124の上に配置された第3の副層4-128をさらに含み得る。第3の副層4-128は、窒化チタンおよび/または窒化タンタルを含み得る。第3の副層4-128は、5nm~100nmの範囲内かまたはその範囲内の任意の値もしくは値の範囲の厚さを有し得る。いくつかの実施形態において、第3の副層4-128は約50nmの厚さを有し得る。
【0130】
試料ウェル4-108は、少なくとも部分的に側壁スペーサ4-190で覆われた1つまたは複数の側壁を有し得る。側壁スペーサ4-190の組成は、試料4-191との特定の種類の相互作用を可能にするように構成され得る。いくつかの実施形態において、側壁スペーサ4-190は、試料ウェル4-108の側壁を不動態化して試料ウェル4-108の側壁に付着する試料の量を減らすように構成される組成を有し得る。スペーサ材料で側壁のみが被覆された試料ウェルを提供することによって、試料4-191との異なる種類の相互作用が表面4-112よりも側壁4-190において起こり得る。いくつかの実施形態において、試料ウェル4-108の表面4-112は、表面への試料4-191の接着性を向上させるために官能化シランで被覆され得る。スペーサ4-190で側壁を被覆することにより、試料ウェル4-108の表面4-112を官能化シランで選択的に被覆することができる。側壁スペーサ4-190の組成は、導波路に対して実質的に平行である試料ウェル4-108の表面4-112(試料ウェルの「底面」とみなし得る)に対して側壁スペーサ4-190の選択的被覆をもたらすように選択され得る。側壁スペーサ4-190は、3nm~30nmの範囲内かまたはその範囲内の任意の値もしくは値の範囲の厚さを有し得る。いくつかの実施形態において、側壁スペーサ4-190は約10nmの厚さを有し得る。側壁スペーサ4-190を形成するのに使用される適切な材料の例としては、Al2O3,TiO2,TiN,TiON,TaN,Ta2O5,Zr2O5,Nb2O5,HfO2を挙げることができる。いくつかの実施形態において、側壁スペーサ4-190はTiNを含み、TiNの屈折率に起因してセンサに向けて所望のレベルの放出エネルギーの指向性をもたらすことができる。いくつかの実施形態において、側壁スペーサ4-190は散乱光を阻止するように構成され得ることで、試料4-191を照射し得る散乱光の量を減少させることができる。
【0131】
いくつかの実施形態において、試料ウェル構造は、側壁にスペーサ材料を欠いた、導波路4-102に近接した部分を有し得る。
図4-1に示される表面4-112などの底面と側壁スペーサ4-190との間の距離は、10nm~50nmの範囲内かまたはその範囲内の任意の値もしくは値の範囲であり得る。このような構成は、試料ウェルの表面4-112を導波路4-102のより近くに配置可能とし、これにより導波路4-102から試料ウェル4-108への励起エネルギーの結合を向上させるとともに、導波路4-102に沿って伝播する励起エネルギーの光損失に対する金属層の影響を減らすことができる。
【0132】
[E.導波路]
所望の波長(例えば、532nm)で励起エネルギーを発生させるために励起源が使用され得る。励起エネルギーは、1つまたは複数の導波路を使用して個々の試料に提供され得る。導波路は、例えばエバネッセント結合を介して個々の試料に励起エネルギーの一部を結合するように構成され得る。いくつかの実施形態において、試料ウェルは行および列に配置され得るとともに、個々の導波路は対応する行または列の試料ウェルに励起エネルギーを送達するように構成され得る。いくつかの実施形態において、導波路は、行または列の試料ウェルに励起エネルギーを実質的に均一に(例えば、10%未満の強度の変動で)提供するように構成され得る。試料ウェルのこのような均一な照射を提供するために、導波路は、試料ウェルに関して、行または列の長さに沿って変化する結合係数を有するように構成され得る。したがって、導波路に対して位置決めされた個々の試料ウェルは、導波路に沿って伝播する励起エネルギーの一部を受け取り得る。導波路に沿って伝播する励起エネルギーは試料ウェルとの連続的な結合によって枯渇するため、結合係数は導波路と結合する試料ウェルに実質的に均一な量の励起エネルギーを提供するように徐々に増加し得る。このような空間依存性の結合係数を提供するために、導波路のテーパが使用され得る。「テーパ」とは、その長さに沿って寸法(例えば、幅)が変化する導波路を指し得る。テーパは、サポートされている光モードを周囲領域(例えば、クラッド)に向かって徐々に拡大するように構成され得る。導波路をこのようにテーパ状にすることによって、結合係数は導波路の伝播軸に沿って増加し得る。
【0133】
導波路はさらに、光損失を低減しつつ励起エネルギーを試料ウェルに効果的に結合するように構成され得る。試料ウェルは金属層に近接して配置され得るので、導波路内に導かれる励起エネルギーは、金属散乱および/または金属吸収に起因して光損失を受け得る。金属層に起因する光損失を低減するために、導波路は、金属層に対するモードの空間的重なりが低減されるように、モード閉じ込めを提供するように構成され得る。モード閉じ込めは、金属層との相互作用を低減しつつ、試料ウェルとの所望の重なりを提供するように選択され得る。
【0134】
導波路は、励起エネルギーの波長で透過性を有する(例えば、2dB/cm未満の伝播損失を有する)材料から製造され得る。例えば、励起エネルギーを導くための材料として窒化シリコンを使用することができる。
【0135】
いくつかの実施形態では、集積デバイスの試料ウェルに励起エネルギーを提供するためにチャネル導波路が使用され得る。適切なチャネル導波路の一例が
図1-4に示されている。集積デバイスのチャネル導波路は、行または列に沿って1つまたは複数の試料ウェルへの励起エネルギーの結合を可能にするために、試料ウェルの行または列に対して配置され得る。
【0136】
いくつかの実施形態において、試料ウェルに励起エネルギーを供給するためにリブ導波路および/またはリッジ導波路が使用され得る。リブ導波路またはリッジ導波路は、「スラブ」と呼ばれる第1の層と、「隆起領域」と呼ばれる第2の層とを含み得る。スラブに対する隆起領域の位置は、光モードの位置を決定し得る。スラブおよび隆起領域の厚さは、所望の光プロファイルを提供するように構成され得る。例えば、エバネッセント場が試料と重なり合う一方で金属層との相互作用を減少させるような光モードプロファイルを有することが望ましい場合がある。
図4-2Aは、いくつかの非限定的な実施形態による例示的な導波路の断面図である。本明細書において「リブ導波路」とも呼ばれる導波路4-200は、スラブ4-202と隆起領域4-204とを含み得る。導波路4-200は、所望の波長で少なくとも1つの光モードをサポートするように構成され得る。いくつかの実施形態において、導波路4-200は単一の光モード、例えば、TE
0モードをサポートし得る。隆起領域は、いくつかの実施形態において100nm~4μmの間の幅W
RRと、いくつかの実施形態において50nm~500nmの間の厚さT
RRとを有し得る。いくつかの実施形態において、T
RRは、100nm~200nmの間である。スラブ4-202は、50nm~500nmの間の厚さT
Sを有し得る。いくつかの実施形態において、T
Sは、150nm~250nmの間である。いくつかの実施形態において、スラブ4-202は、複数の隆起領域4-204がスラブ4-202上に配置されるように、複数の導波路4-200の間で共有され得る。このような隆起領域は、スラブ間の相互の光結合を低減するのに十分に大きい、y軸に沿った距離だけ分離され得る。例えば、スラブ4-202は複数の試料ウェル間で重なるように延在し得るとともに、隆起領域4-204は試料ウェルの個々の行または列と重なり得る。あるいは、個々の導波路は別々のスラブを含み得る。
図4-2Bは、いくつかの非限定的な実施形態による別の例示的な導波路の断面図である。本明細書において「リッジ導波路」とも呼ばれる導波路4-250は、スラブ4-252と隆起領域4-254とを含み得る。隆起領域4-254は、いくつかの実施形態において100nm~4μmの間の幅W
RRと、いくつかの実施形態において50nm~500nmの間の厚さT
RRとを有し得る。いくつかの実施形態において、T
RRは、100nm~200nmの間である。スラブ4-202は、50nm~500nmの間の厚さT
Sを有し得る。いくつかの実施形態において、T
Sは、150nm~250nmの間である。スラブ4-208は、いくつかの実施形態において500nm~5μmの間の幅W
Sを有し得る。
【0137】
導波路4-200,4-250は、下部クラッド4-208と上部クラッド4-206とを含み得る。下部および上部クラッドは、隆起領域4-204,4-254の屈折率より低い屈折率を有する材料から形成され得る。いくつかの実施形態において、下部および上部クラッドは酸化シリコンを含み得る。比TRR/TSは、所望のレベルの光閉じ込めを得るように選択され得る。例えば、このような比は、導波路の光モードが金属層からの光損失を低減しつつ試料ウェルへの所望のレベルの結合を提供するように選択され得る。導波路4-250と比べて製造工程が少なくて済むため、いくつかの実施形態では、導波路4-200が好ましい場合がある。他の実施形態では、導波路4-200と比べて他の導波路への結合度が低いので、導波路4-250が好ましい場合がある。
【0138】
いくつかの実施形態において、導波路のスラブおよび/または導波路の隆起領域は、2つ以上の層を含み得る。
図4-2Cは、層4-282,4-283を含むスラブを有するリブ導波路を示している。層4-282,4-283は異なる材料から形成することができる。スラブの厚さに対する層4-282の厚さの比率は、5%~95%の間であり得る。いくつかの実施形態において、層4-282は窒化シリコンを含み、層4-283はエッチストップ材料またはエッチ終点材料を含み得ることで、導波路の隆起領域の製造を補助し得る。代替的または追加的に、導波路の隆起領域は、層4-284,4-285などの複数の層を含み得る。層4-284,4-285は異なる材料から形成することができる。スラブの厚さに対する層4-284の厚さの比率は、5%~95%の間であり得る。いくつかの実施形態において、層4-284,4-285は各々異なる誘電体材料(例えば、窒化シリコン、酸化アルミニウム)を含み得る。
【0139】
本明細書に記載される種類の導波路は、
図4-1に示されるように試料ウェルに対応して配置され得る。例えば、導波路は、導波路に沿って伝播する光モードが試料ウェルにエバネッセント結合できるように配置され得る。いくつかの実施形態において、試料が配置される試料ウェルの表面は、導波路の表面と接触して配置され得る。他の実施形態では、これらの表面は分離され得る。さらに他の実施形態では、試料が配置される試料ウェルの表面は、導波路の内側に配置され得る。
【0140】
図4-3A-Cは、3つの異なる結合構成を示す断面図である。結合構成4-300Aによれば、導波路4-301は試料4-312の底面から距離h
Wで離間され得る。導波路4-301は、導波路4-200か、導波路4-250か、または導波路4-280を用いて実現され得る。なお、導波路4-301は隆起部を有するように示されているが、これらの結合構成は任意の適切な種類の導波路を用いて実現することができる。いくつかの実施形態において、導波路4-301は、
図1-4に示されるチャネル導波路などのチャネル導波路であり得る。導波路4-301は、距離h
Wよりも大きい距離h
Mで金属層4-310から離間され得る。金属層4-310は
図4-1の金属層4-122として含まれ得るとともに、試料ウェル4-312は
図4-1の試料ウェル4-108として機能し得る。距離h
Wは、所望の程度の光結合を提供するように設定され得る。例えば、h
Wは、いくつかの実施形態において50nm~500nmの間であり得るが、いくつかの実施形態においては100nm~200nmの間であり得る。距離h
Mは、金属層4-310に起因する光損失を制限するように設定され得る。例えば、h
Mは、いくつかの実施形態において200nm~2μmの間であり得るが、いくつかの実施形態においては350nm~650nmの間であり得る。
【0141】
結合構成4-300Bによれば、試料ウェル4-312の底面は導波路4-301内に配置され得る。この構成は、
図4-3Aに示された構成と比較すると、試料ウェルへのより大きな結合係数をもたらすことができる。しかしながら、金属層4-310への近接に起因して、または導波路内への試料ウェルの侵入によって引き起こされる散乱損失に起因して、この構成では光損失が大きくなる可能性がある。
【0142】
結合構成4-300Cによれば、試料ウェル4-312の底面は導波路4-301の表面と接触して配置され得る。この構成は、例えば、導波路4-301の表面をエッチストップとして使用して試料ウェル4-312を形成することによって得ることができる。この構成は、
図4-3Aに示された構成と比較すると、試料ウェルへのより大きな結合係数をもたらし得る。しかしながら、この構成では導波路への金属層4-310の近接によって引き起こされる光損失が大きくなる可能性がある。
【0143】
図4-4A~
図4-4Cは、それぞれ結合構成4-300A,4-300B,4-300Cを示す破断等角図である。図示されるように、集積デバイスは複数の試料ウェル4-312を含み得る。導波路4-301は、個々の試料ウェルに励起エネルギーを供給するように構成され得る。
【0144】
上述したように、本明細書に記載される種類の導波路は、少なくとも1つの光モードをサポートするように構成され得る。本明細書で定義される「光モード」または単に「モード」とは、特定の導波路に関連する電磁場のプロファイルを指す。光モードは、導波路に沿って励起エネルギーを伝播させることができる。光モードは、試料ウェルにエバネッセント結合して試料ウェル内に配置された試料を励起するように構成され得る。これにより試料が放出エネルギーを放出し得る。同時に、光モードは、デバイスの表面に形成された金属層に関連した光損失を制限するように構成され得る。
図4-5は、いくつかの非限定的な実施形態による例示的な光モードを示す断面図である。具体的に、
図4-5は、導波路に沿って伝播する光モードの断面図を示すヒートマップ(カラーヒートマップの白黒変換)を示している。図示されるように、光モードは導波路4-301の領域に対応して最大4-508を示し、導波路を囲む領域、例えば上部クラッドと下部クラッドにエバネッセント的に延在し得る。いくつかの実施形態において、光モードは、試料ウェル4-312に結合可能なエバネッセント場4-510を含み得る。上部クラッドと金属層との界面におけるモードの強度は、最大4-508に対して実質的に小さくて(例えば、5%未満で)よい。
【0145】
いくつかの実施形態において、集積デバイスは、実質的に均一な強度で(例えば、10%未満の変動で)個々の試料を励起するように構成され得る。試料を横切って実質的に均一な励起を有することにより、試料によって放出される放出エネルギーがセンサのダイナミックレンジ内にある可能性を改善することができる。本明細書に記載される技術によるものを含む光導波路は、試料ウェル内に配置された試料にわたって実質的に均一な励起を提供するようにその長さに沿って変化する試料ウェルへの光結合を提供するように構成され得る。いくつかの非限定的な実施形態によれば、導波路の幅は導波路の長さに沿って変化し得ることにより、位置依存性のモードプロファイルを提供する。いくつかの実施形態において、導波路の長さに沿って変化する1つ以上の寸法を有する導波路が実装され得る。例えば、いくつかの実施形態によるデバイスは、導波路の長さに沿って変化するテーパ幅を有する導波路を含み得る。
図4-6は、テーパ導波路と複数の試料ウェルとを示す平面図である。テーパ導波路は、スラブ4-602と隆起領域4-604とを有し得る。導波路のテーパはx軸に沿って延在し得るとともに、試料ウェル4-312
A,4-312
B,4-312
C,4-312
D,4-312
Eの各々にエバネッセント結合するように構成され得る。
図4-6は5つの試料ウェルを有する集積デバイスを示しているが、他の適切な数のウェルを使用することができる。隆起領域の幅は、指数関数的、対数的、線形的、二次的、三次的、またはそれらの任意の適切な組み合わせなどの任意の適切な関数に応じて変化し得る。
図4-6に示される導波路のテーパは、導波路に光学的に結合された格子カプラに入射する励起エネルギーなどによって左側から励起エネルギーを受け取り、左から右への1つ以上の光モードの伝播をサポートするように構成され得る。隆起領域は、x=x
1において第1の幅W
RRINを有し、x=x
2において第2の幅W
RROUTを有し得る。いくつかの実施形態において、W
RROUTはW
RRINより大きなものであり得る。このようにして、試料ウェル4-312
Aに対するテーパの結合係数は、試料ウェル4-312
Bに対するテーパの結合係数よりも小さく、試料ウェル4-312
Bに対するテーパの結合係数は、試料ウェル4-312
Cに対するテーパの結合係数よりも小さいなどとなる。導波路に沿って伝播する励起エネルギーが、試料ウェルとの結合および/または光損失のために減少するため、導波路の長さに沿って結合係数が増加することにより、試料は実質的に均一な励起エネルギーを受け取ることができる。
【0146】
チャネル導波路の場合、導波路幅が狭くなると結合係数が増加し得る。したがって、結合係数を増加して光損失を補償するために、テーパチャネル導波路は伝播方向に沿って幅が狭くされ得る。いくつかの実施形態において、チャネル導波路はテーパを有し得る。このテーパは、テーパ始端において、600nm~1500nmの範囲内かまたはその範囲内の任意の値もしくは値の範囲の寸法を有し、テーパ終端において、200nm~500nmの範囲内かまたはその範囲内の任意の値もしくは値の範囲の寸法を有する。
【0147】
リブ導波路およびリッジ導波路の場合、結合係数は、隆起領域の幅W
RRの増大とともに増大し得る。したがって、結合係数を増加して光損失を補償するために、テーパ付きリブ/リッジ導波路は伝播方向に沿ってW
RRが増加され得る。いくつかの実施形態において、W
RRINは、150nm~500nmの範囲内かまたはその範囲内の任意の値もしくは値の範囲であり得る。いくつかの実施形態において、W
RROUTは、100nm~200nmの範囲内かまたはその範囲内の任意の値もしくは値の範囲であり得る。
図4-7は、試料に対応する位置で測定された、隆起領域4-604の幅に応じた電場を示すグラフである。図示されているように、隆起領域の幅が増加するにつれて、光モードが周囲領域内にさらに広がることに起因して、試料に対応する位置における電場が増加する。
【0148】
本明細書に記載される種類の導波路は、金属層への近接に関連する光損失を制限するように構成され得る。いくつかの実施形態において、導波路は、例えばエバネッセント場の減衰率を高めるための構成を有し得る。矩形断面を有するチャネル導波路と比べて、リッジ導波路またはリブ導波路は、より大きな減衰率のエバネッセント場を示し得る。
図4-8は、矩形断面を有するチャネル導波路に関連する光モードプロファイルと、リブ導波路に関連する光モードプロファイルとの間の比較を示すグラフである。グラフ4-800は、z軸(伝播軸)に沿った位置に応じたモード強度を示している。図示される例では、試料は、ライン4-809とライン4-810との間に位置する。ここで、ライン4-809は、試料ウェルの底部に対応するz軸に沿った位置であり、ライン4-810は、クラッド4-118と金属層4-122との間の界面4-127に対応するz軸に沿った位置である。モード強度4-801は、リブ導波路4-200などのリブ導波路に関連するモードプロファイルを表し、モード強度4-802は、矩形チャネル導波路に関連するモードプロファイルを表している。2つの導波路は試料の位置で実質的に同様のモード強度を示すように構成され得るが、リブ導波路はエバネッセント部分においてより大きな減衰率を示し、したがって界面4-127でより低い強度を提供し得る。このようにして、金属層4-122によって引き起こされる光損失を制限することができる。
【0149】
いくつかの実施形態は、複数のモードをサポートするように構成された1つまたは複数の導波路を有する集積デバイスに関する。このようなマルチモード導波路の2つ以上のモードは、マルチモード導波路に沿った光伝播方向に対して垂直な方向に励起エネルギーのパワー分布が変化するようにそれらモードの干渉によって結合し得る。パワー分布の変動は、パワー分布が他の領域よりも光伝播方向に垂直な1つ以上の方向において広くなる、光伝播方向に沿った領域を含み得る。いくつかの実施形態において、試料ウェルに最も近いマルチモード導波路の領域では試料ウェルに向かう方向にパワー分布が広がり得る。励起エネルギーのパワー分布が広がることにより、試料ウェルに対する励起エネルギーの結合を向上させることができる。いくつかの実施形態において、試料ウェルと重ならないマルチモード導波路の領域では、パワー分布が上記方向に沿って減少し得る。パワー分布が減少することにより、導波路の外側に広がる励起エネルギーの量を減らして励起エネルギーの光損失を減らすことができる。いくつかの実施形態では、2つ以上のモードが、特徴的なビート長でビートすることを妨げ得る。特徴的なビート長は、マルチモード導波路によって結合されているモードの種類に依存し得る。いくつかの実施形態において、特徴的なビート長は、集積デバイスの隣接する試料ウェル間の距離と実質的に同様であり得る。マルチモード導波路は、任意の適切なモード数(例えば、2つ、3つ、4つ)、モードの種類(例えば、TE、TM)、および/またはモードの次数(例えば、一次、三次)をサポートするように構成され得る。いくつかの実施形態において、マルチモード導波路は、励起エネルギーの一次TEモードと三次TEモードとを結合する。
【0150】
図5-1Aは、複数のモードをサポートするように構成された例示的な導波路構造の平面図を示している。導波路構造は、シングルモード領域5-110、マルチモード領域5-136、およびモードカプラ5-120を含む。シングルモード領域5-110は、シングルモードを有する光の伝播をサポートして光をモードカプラ5-120に結合するように構成されている。モードカプラ5-120は、シングルモードを有する光を受け取り、2つ以上のモードの光をサポートするように構成されているマルチモード領域5-136に光を結合するように構成されている。試料ウェル5-108a,5-108b,5-108cは、それらがマルチモード領域5-136と重なるように、導波路構造に平行なx-y平面内に存在する。試料ウェル5-108a,5-108b,5-108cは、導波路構造の光伝播方向(
図5-1Aに示されるようなx方向)に沿って寸法D
Sだけ分離されている。寸法D
Sは、マルチモード領域5-136によってサポートされるマルチモード干渉のほぼ特徴的なビート長であり得る。
図5-1Bは、マルチモード領域5-136に沿ったパワー分布のヒートマップ(カラーヒートマップの白黒変換)であって、
図5-1Bに示されるもの(上側のプロット)に平行なx-y平面内と、
図5-1Bに示されるもの(下側のプロット)に垂直なz-x平面内との両方におけるヒートマップである。試料ウェル5-108a,5-108b,5-108cの位置は二重平行線で示されており、一次および三次TEモードの組み合わせに対するほぼ特徴的なビート長である寸法D
sによって分離されている。
図5-1Bに示されるように、パワー分布は、下側のプロットに示されるように試料ウェルに向かう方向において(z方向に沿って)試料ウェルの各々と重なるマルチモード領域5-136の領域内で広がり、隣接する試料ウェル間のマルチモード領域5-136の領域内でこの方向に沿って減少する。上側のプロットに示されるように、x-y平面では反対の傾向が生じ、このx-y平面ではパワー分布は試料ウェルと重なる領域で狭くなり、隣接する試料ウェル間の領域で広くなる。
【0151】
[IV.製造技術]
本明細書に記載される種類の集積デバイスの形成は、種々の製造技術を使用して行うことができ、そのうちのいくつかは標準的な半導体製造工場内で実施され得る。いくつかの実施形態では、一般的な相補型金属酸化膜半導体(CMOS)製造技術を使用することができる。例えば、フォトリソグラフィ、ウェットエッチング、ドライエッチング、平坦化、金属堆積、化学気相成長、原子層堆積、酸化、アニーリング、エピタキシャル成長、イオン注入、拡散、ワイヤボンディング、フリップチップボンディングなどの製造技術のうちの少なくともいくつかを使用することができる。
【0152】
集積デバイスの形成は、複数のフォトリソグラフィ処理工程を含み得る。各フォトリソグラフィ処理工程は、フォトマスクを通じた紫外線(UV)光への露光、フォトレジストにレリーフ像を形成するための現像処理、およびフォトレジストレリーフ像を少なくとも1つの下層に転写するためのエッチング処理を含み得る。フォトマスクは、ポジ型でもネガ型でもよく、所望の構成に応じてパターニングされ得る。例えば、1つまたは複数のフォトリソグラフィ処理工程を使用して、本明細書に記載される種類の導波路を形成することができる。また、1つまたは複数のフォトリソグラフィ処理工程を使用して、本明細書に記載される種類の試料ウェルを形成することができる。
【0153】
導波路4-200などのリブ導波路の製造は、種々の異なるプロセスを使用して行うことができる。利用される特定のプロセスに関係なく、製造は隆起領域を形成するためのフォトリソグラフィ処理工程を含み得る。したがって、UV光への露光およびそれに続くレリーフ画像の現像に続いて、スラブの少なくとも一部を保ちつつ隆起領域を形成するために部分エッチング処理が実行され得る。
【0154】
いくつかの実施形態において、集積デバイスの形成は時限エッチング処理を含み得る。時限エッチング処理を使用することで、リブ導波路を形成することができる。エッチング処理の時間は、スラブから所望の量の誘電体材料を除去するように選択され得る。したがって、時限エッチング処理の継続時間に基づいて、所望の比T
RR/T
Sを定義することができる。時限エッチング処理に基づくリブ導波路の形成には、フォトリソグラフィ製造工程を利用することができる。
図6-1A~
図6-1Dは、いくつかの非限定的な実施形態による、時限エッチングを使用したリブ導波路の製造方法を示している。
図6-1Aに示される製造工程では、シリコン基板などの基板が準備され得る。基板は、酸化シリコン層などの底部誘電体層6-101を含み得る。誘電体層6-101は、化学的機械的平坦化(CMP)処理を用いて平坦化され得る。基板はさらに、誘電体膜6-102を含み得る。いくつかの実施形態において、誘電体膜6-102は窒化シリコンを含み得る。いくつかの実施形態において、誘電体膜の厚さは90nm~500nmの間であり得る。
【0155】
図6-1Bに示される製造工程では、フォトレジスト層6-103が誘電体膜上に堆積され得る。フォトリソグラフィ処理工程を使用してフォトレジストの層をパターニングすることで所望の形状を形成することができる。フォトレジストは、ポジ型でもネガ型でもよい。
【0156】
図6-1Cに示される製造工程では、時限エッチング処理を行うことで、隆起領域6-104を形成することができる。このような処理により、フォトレジストによって覆われていない誘電体膜の表面の領域をエッチングすることができる。エッチング処理の継続時間は、スラブの厚さと隆起領域の厚さとの間に所望の比が得られるように選択され得る。例えば、持続時間は、5%~95%の間で誘電体膜の一部分をエッチングするように選択され得る。エッチング処理はドライ式でもウェット式でもよい。隆起領域の形成後、フォトレジスト層が剥離され得る。
【0157】
図6-1Dに示される製造工程では、時限エッチング処理によって得られた隆起領域6-104上に、上部誘電体層6-105が成長または堆積され得る。上部誘電体層は酸化シリコンを含み得る。上部誘電体層はCMPプロセスを使用して平坦化され得る。
図6-1Dに示される導波路は、
図4-2Aの導波路4-200として機能し得る。
【0158】
いくつかの実施形態は、本明細書に記載される種類のリブ導波路を製造するための別の技術に関する。
図6-1A~
図6-1Dに示された製造プロセスとは異なり、このような技術は、隆起領域の厚さを画定するためにエッチストップ層を利用し得る。時限エッチング処理と比較して、エッチストップの使用は厚さのより正確な制御を可能にし得るとともに、光モードプロファイルのより正確な制御をもたらし得る。欠点として、このような技術は、導波路が隆起領域とスラブとの間にエッチストップ材料の層を有することをもたらし得る。このようなエッチストップ材料は、誘電体膜の吸収係数よりも大きい吸収係数を有することがあり、その結果、光モードに光損失を生じさせることがある。このような製造技術も、隆起領域を形成するためにフォトリソグラフィ製造工程を利用し得る。
【0159】
図6-2A~
図6-2Dは、いくつかの非限定的な実施形態による、リブ導波路の製造方法を示している。
図6-2Aに示される製造工程では、シリコン基板などの基板が準備され得る。基板は、酸化シリコン層などの下部誘電体層6-101を含み得る。誘電体層6-201は、化学的機械的平坦化(CMP)処理を用いて平坦化することができる。基板は、いくつかの実施形態では窒化シリコンを含み得る第1の誘電体膜6-202をさらに含み得る。基板は、第1の誘電体膜上に配置されたエッチストップ層6-203をさらに含み得る。基板は、エッチストップ層上に配置された第2の誘電体膜6-204をさらに含み得る。第2の誘電体膜は、第1の誘電体膜と同じ材料から形成されてもよいし、あるいは異なる材料から形成されてもよい。第1および第2の誘電体膜の厚さは、所望の比T
RR/T
Sをもたらすように設定され得る。いくつかの実施形態において、第1の誘電体膜の厚さは100nm~300nmの間である。いくつかの実施形態において、第2の誘電体膜の厚さは100nm~250nmの間である。
【0160】
図6-2Bに示される製造工程では、第2の誘電体膜上にフォトレジスト層6-205が堆積され得る。フォトリソグラフィ処理工程を使用してフォトレジストの層をパターニングすることで所望の形状を形成することができる。フォトレジストは、ポジ型でもネガ型でもよい。
【0161】
図6-2Cに示される製造工程では、エッチング処理を行うことで隆起領域6-206を形成することができる。このような処理により、フォトレジストによって覆われていない誘電体膜の表面の領域をエッチングすることができる。エッチング処理は、エッチストップ層の少なくとも一部が露出されるまで継続され得る。エッチング処理はドライ式でもウェット式でもよい。隆起領域の形成後、フォトレジスト層が剥離され得る。
【0162】
図6-2Dに示される製造工程では、上部誘電体層6-105が隆起領域6-104上に成長または堆積され得る。上部誘電体層は酸化シリコンを含み得る。上部誘電体層はCMP処理を使用して平坦化され得る。
図6-2Dに示される導波路は、
図4-2Aの導波路4-200として機能し得る。
【0163】
いくつかの実施形態は、本明細書に記載される種類のリブ導波路を製造するための別の技術に関する。このような製造技術は終点層を利用し得る。このような技術によれば、エッチング処理の時間全体を通じて基板の表面に向けて光を照射することができる。エッチング処理の間、反射光が検出され得る。終点層が少なくとも部分的に覆われていない場合、反射光が、偏光パターンおよび/または干渉パターンなどの認識可能パターン、および/または所定の閾値を上回るまたは下回る光強度を示し得る。認識可能パターンが検知されると、エッチング処理が停止され得る。このようにして、エッチング領域の厚さを細かく制御することができる。
図6-2A~
図6-2Dに示される製造技術と同様に、このような技術は、フォトリソグラフィ処理工程を利用してリブ導波路の隆起領域を形成することができる。別の種類の終点層によれば、エッチング中にエッチングプラズマの発光スペクトルが監視され得る。この発光スペクトルは、プラズマの組成を表す強度ピークを表し、ひいてはエッチングされている材料を表す。このようにして、終点材料層が最初にプラズマに曝されるとき、または終点材料層がエッチング除去されたときを決定することが可能となり得る。
【0164】
図6-3A~
図6-3Dは、いくつかの非限定的な実施形態による、リブ導波路の製造方法を示している。
図6-3Aに示される製造工程では、シリコン基板などの基板が準備され得る。基板は、酸化シリコン層などの下部誘電体層6-301を含み得る。誘電体層6-301は、化学的機械的平坦化(CMP)処理を用いて平坦化することができる。基板は、いくつかの実施形態では窒化シリコンを含み得る第1の誘電体膜6-302をさらに含み得る。基板は、第1の誘電体膜上に配置されたエッチストップ層6-303をさらに含み得る。終点層は、特定の光特性を示し得る。例えば、終点層は、誘電体膜の反射率よりも大きな反射率を示し得る。あるいは、終点層は、特徴的な発光スペクトルを示し得る。基板は、終点層上に配置された第2の誘電体膜6-304をさらに含み得る。第2の誘電体膜は、第1の誘電体膜と同じ材料から形成されてもよいし、あるいは異なる材料から形成されてもよい。第1および第2の誘電体膜の厚さは、所望の比T
RR/T
Sをもたらすように設定され得る。いくつかの実施形態において、第1の誘電体膜の厚さは100nm~300nmの間である。いくつかの実施形態において、第2の誘電体膜の厚さは80nm~200nmの間である。
【0165】
図6-3Bに示される製造工程では、第2の誘電体膜上にフォトレジスト層6-305が堆積され得る。フォトリソグラフィ処理工程を使用してフォトレジストの層をパターニングすることで所望の形状を形成することができる。フォトレジストは、ポジ型でもネガ型でもよい。
【0166】
図6-3Cに示される製造工程では、エッチング処理を行うことで隆起領域6-306を形成して、基板の表面上に光を照射することができる。このような処理により、フォトレジストによって覆われていない誘電体膜の表面の領域をエッチングすることができる。エッチング処理は、終点層の少なくとも一部が露出されるまで継続され得る。終点層が露出されると、終点層6-303によって反射された光の受光によって、エッチングプロセスを停止するように構成された回路がトリガされ得る。隆起領域の形成後、フォトレジスト層が剥離され得る。
【0167】
図6-3Dに示される製造工程では、上部誘電体層6-307が隆起領域6-306上に成長または堆積され得る。上部誘電体層は酸化シリコンを含み得る。上部誘電体層はCMP処理を使用して平坦化され得る。
図6-3Dに示される導波路は、
図4-2Aの導波路4-200として機能し得る。
【0168】
本出願のいくつかの実施形態は、
図4-2Bの導波路4-250などのようなリッジ導波路を形成するための技術に関する。リッジ導波路の製造は、リブ導波路を形成するために利用される製造工程のいくつかを含み得る。このような製造は、
図6-1A~
図6-1Dに関連して説明した技術か、
図6-2A~
図6-2Dに関連して説明した技術か、または
図6-3A~
図6-3Dに関連して説明した技術を利用することができる。また、所望のスラブの外側の領域内の誘電体膜を完全にエッチングしてリッジ導波路を形成するために、さらなるエッチング処理を利用することができる。
【0169】
図6-4A~
図6-4Dは、いくつかの非限定的な実施形態による、リブ導波路の製造方法を示している。
図6-4Aに示される製造工程では、リブ導波路が設けられ得る。リブ導波路は、上述の製造技術のうちの任意の1つを用いて得ることができる。リブ導波路は、誘電体層6-401とスラブ6-402と隆起領域6-403とを含み得る。
【0170】
図6-4Bに示される製造工程では、誘電体膜上にフォトレジスト層6-404が配置され得る。フォトリソグラフィ処理工程を使用してフォトレジストの層をパターニングすることで所望の形状を形成することができる。フォトレジストは、ポジ型でもネガ型でもよい。
【0171】
図6-4Cに示される製造工程では、エッチング処理を行うことでエッチングスラブ6-405を形成することができる。エッチング処理は、誘電体層6-401の少なくとも一部が露出されるまで継続され得る。
【0172】
図6-4Dに示される製造工程では、上部誘電体層6-406が隆起領域6-403上に成長または堆積され得る。上部誘電体層は酸化シリコンを含み得る。上部誘電体層はCMP処理を使用して平坦化され得る。
図6-4Dに示される導波路は、
図4-2Bの導波路4-250として機能し得る。
【0173】
[V.結論]
以上、本出願の技術のいくつかの実施形態および態様を説明したが、種々の変更、修正、および改善が当業者には容易に想到されることが理解され得る。このような変更、修正、及び改善は、本出願に記載される技術の思想および範囲内にあることが意図されている。それゆえ、上記の実施形態は例としてのみ提示されていること、ならびに、請求項およびその均等物の範囲内で、発明の実施形態は、具体的に説明および特許請求されているのとは他の様態で実践されてもよいことが理解されるべきである。また、本明細書に記載される2つ以上の特徴、システム、システム、物品、材料、キット、および/または方法の任意の組み合わせが、そのような特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法が相互に矛盾しない限り本開示の発明の範囲内に含まれる。
【0174】
また、上記したように、いくつかの態様は1つまたは複数の方法として具現化することができる。方法の一部として実施される動作は、任意の適切な方法で順序付けられ得る。したがって、動作が示されているものとは異なる順序で実施され、たとえ例示的な実施形態においては順次の動作として示されていたとしても、いくつかの動作を同時に実施することを含んでもよい実施形態が構築されてもよい。
【0175】
定義および使用されているものとしてのすべての定義は、辞書の定義、参照によって組み込まれている文書における定義、および/または、定義されている用語の通常の意味に優先するものとして理解されるべきである。
【0176】
本明細書および特許請求の範囲において使用されている「1つ」は、明確に異なる旨が指示されていない限り、「少なくとも1つ」を意味するように理解されるべきである。
本明細書および特許請求の範囲において使用されている「および/または」という語句は、そのように結合されている要素、すなわち、いくつかの事例では結合して存在し、他の事例では分離して存在する要素の「いずれかまたは両方」を意味するものとして理解されるべきである。
【0177】
本明細書および特許請求の範囲において使用されるものとして、1つまたは複数の要素のリストを参照する「少なくとも1つ」という語句は、要素のリスト内の要素のうちのいずれか1つまたは複数から選択される少なくとも1つの要素を意味するものとして理解されるべきであるが、必ずしも、要素のリスト内に具体的にリストされているあらゆる要素のうちの少なくとも1つを含むとは限らず、要素のリスト内の要素の任意の組み合わせを排除するものではない。また、この定義は、「少なくとも1つ」という語句が参照する要素のリスト内で具体的に識別されている要素以外の要素が、具体的に識別されているそれらの要素に関連するか、関連しないかにかかわらず、任意選択的に存在し得ることも可能にする。
【0178】
特許請求の範囲において、および本明細書において、「備える」、「含む」、「担持する」、「有する」、「含有する」、「包含する」、「保持する」、「から構成される」などのようなすべての移行句は、オープンエンド句、すなわち、含むがそれに限定されないことを意味するものとして理解されるべきである。「からなる」および「から本質的になる」という移行句のみが、それぞれ限定的なまたは半限定的な移行句であり得る。