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特許7189878ヒトCD160を結合する結合物及びその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】ヒトCD160を結合する結合物及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20221207BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20221207BHJP
   C07K 16/22 20060101ALI20221207BHJP
   C07K 16/24 20060101ALI20221207BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20221207BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20221207BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20221207BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20221207BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20221207BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20221207BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20221207BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20221207BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20221207BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20221207BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20221207BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20221207BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
C07K16/28
C07K16/46
C07K16/22
C07K16/24
C07K16/18
C12N15/13
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61P27/02
A61P29/00 101
A61P35/00
A61P35/02
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2019536858
(86)(22)【出願日】2018-01-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-02-20
(86)【国際出願番号】 EP2018050354
(87)【国際公開番号】W WO2018127586
(87)【国際公開日】2018-07-12
【審査請求日】2020-12-22
(31)【優先権主張番号】17/50152
(32)【優先日】2017-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】517361236
【氏名又は名称】エルサリー バイオテック
【氏名又は名称原語表記】ELSALYSBIOTECH
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カルセイ アレクサンドル
(72)【発明者】
【氏名】アエゲル エレーヌ
(72)【発明者】
【氏名】マンギー ティエリー
(72)【発明者】
【氏名】ロザン カロリーヌ
【審査官】小田 浩代
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-528607(JP,A)
【文献】特表2008-517873(JP,A)
【文献】国際公開第2006/033386(WO,A1)
【文献】特表2012-515746(JP,A)
【文献】Farren, T. W. et al.,Differential and tumor-specific expression of CD160 in B-cell malignancies,Blood,2011年,Vol. 118(8),pp. 2174-2183
【文献】de Jong, R. N. et al.,A Novel Platform for the Potentiation of Therapeutic Antibodies Based on Antigen-Dependent Formation of IgG Hexamers at the Cell Surface,PLoS Biol.,2016年,Vol. 14(1):e1002344,pp. 1-24
【文献】Overdijk, M. B. et al.,Epidermal growth factor receptor (EGFR) antibody-induced antibody-dependent cellular cytotoxicity plays a prominent role in inhibiting tumorigenesis, even of tumor cells insensitive to EGFR signaling inhibition,J Immunol.,2011年,Vol. 187(6),pp. 3383-3390
【文献】Andersen, J. T. et al.,Anti-carcinoembryonic Antigen Single-chain Variable Fragment Antibody Variants Bind Mouse and Human Neonatal Fc Receptor with Different Affinities That Reveal Distinct Cross-species Differences in Serum Half-life,J Biol Chem.,2012年,Vol. 287(27),pp. 22927-22937
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトCD160に特異的に結合し、
配列番号14で定義される軽鎖の可変ドメイン(VL)と、
配列番号11、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29及び配列番号30から選択される重鎖の可変ドメイン(VH)と
を有する結合物。
【請求項2】
請求項1に記載の結合物において、
前記結合物は、定常領域として、IgG1又はIgG4の定常領域を有するモノクローナル抗体であることを特徴とする結合物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の結合物において、
重鎖定常ドメインとして、配列番号15,配列番号16,配列番号31~配列番号35,配列番号43及び配列番号44及びそれらの非グリコシル化変異体から選択される配列と、
軽鎖定常ドメインとして、配列番号22~24から選択される配列と
を有するモノクローナル抗体であることを特徴とする結合物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の結合物において、
配列番号57で定義される配列を含む軽鎖と、
配列番号45~51,9,10,12,58~64から選択される重鎖と
を有することを特徴とする結合物。
【請求項5】
請求項1に記載の結合物において、
前記結合物はFab、Fab’、F(ab’)2から選択されるフラグメントであって、
配列番号57で定義される軽鎖と、
配列番号36~38から選択される配列を含む重鎖と
を有することを特徴とする結合物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の結合物において、
多重特異性又は少なくとも二重特異性の誘導体であり、CD160結合部位及び他の抗原との結合部位を少なくとも1つ含む結合物である、又は、配列番号52によって定義される結合物である
ことを特徴とする結合物。
【請求項7】
請求項に記載の結合物において、
前記他の抗原は以下の抗原から選択されることを特徴とする結合物:
VEGF-A、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D、PlGF、VEGF-R2、アンジオポエチン2、アンジオポエチン様(angiopoietin like)4、CD200R、PDGF-AA、PDGF-AB、PDGF-BB、PDGF-CC、PDGF-DD、PDGF-R、FGF2又はFGFβなどのFGF、βアミロイド、スフィンゴシン-1-リン酸(S1P)、C’5、IL6、MER TK、CD115、TNFα、IL8、HGF、TGFβ、IGF1、IL1、IL2、EGF、KGF、G-CSF、GM-CSF、α-v、β-3又はα-v,β-5インテグリン、膜貫通型又は可溶性CD146、MMP1、MMP2、MMP9、MT1-MMP、TIMP-2、アンギオゲニン、PD-ECGF、血小板活性化因子、プロスタグランジンE、プレイオトロピン、クラスII MHC、t HP59、CM101、CD3、CD25、CD28、PD1、CTLA4、4-1BB、LAG-3、ICOS、CD16、CD3、CD47、CD20、CD19、CD5、CD180、CD200、CD40、CD20、CD37、CD38、CD148及びCD180。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載の結合物を少なくとも1種含む組成物。
【請求項9】
請求項に記載の組成物において、
以下の抗原の少なくとも1種を対象とする少なくとも1種の他の抗体、又は、リツキシマブ、オファツムマブ、オビヌツズマブ、オカラツズマブ若しくはベルツズマブから選択される抗体、を更に含むことを特徴とする組成物
VEGF-A、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D、PlGF、VEGF-R2、アンジオポエチン2、アンジオポエチン様4、CD200、CD200R、PDGF-AA、PDGF-AB、PDGF-BB、PDGF-CC、PDGF-DD、PDGF-R、FGF2又はFGFβなどのFGF、βアミロイド、スフィンゴシン-1-リン酸(S1P)、C’5、IL6、MER TK、CD115、TNFα、IL8、HGF、TGFβ、IGF1、IL1、IL2、EGF、KGF、G-CSF、GM-CSF、α-v,β-3又はα-v,β-5インテグリン、膜貫通又は可溶性CD146、MMP1、MMP2、MMP9、MT1-MMP、TIMP-2、アンギオゲニン、PD-ECGF、血小板活性化因子、プロスタグランジンE、プレイオトロピン、クラスII MHC、HP59、CM101、CD37、CD38、CD25、CD28、CD40、PD1、CTLA4、4-1BB、LAG-3、ICOS、CD16、CD3、CD47、CD20、CD19、CD5、CD180、CD200、CD40、CD20、CD37、CD38、CD148、CD180。
【請求項10】
薬剤として使用される、請求項1~のいずれか1項に記載の結合物、又は請求項若しくはに記載の組成物。
【請求項11】
請求項1~のいずれか1項に記載の結合物及び請求項に記載の抗原の1種を対象とする少なくとも1つの抗体を含む製品であって、
新生血管性の眼病、糖尿病、糖尿病性失明、原発性糖尿病性網膜症又は加齢黄斑変性症、関節リウマチ、子癇前症、子癇又は癌から選択される、又は、血管新生を引き起こす病理学的状態の治療及び/又は予防における同時、個別又は逐次使用のための製品。
【請求項12】
抗血管新生剤、免疫調節剤及び/又は細胞毒性薬剤として使用される請求項10に記載の結合物又は組成物。
【請求項13】
請求項10又は12に記載の結合物であって、
血管新生性の眼の病理学的状態、糖尿病、糖尿病性失明、原発性糖尿病性網膜症又は加齢黄斑変性症、関節リウマチ、子癇前症、子癇又は癌から選択される、又は、病理学的状態の予防及び/又は治療のために使用する結合物。
【請求項14】
以下の癌の治療のために使用される、請求項1~のいずれか1項に記載の結合物、又は、請求項若しくはに記載の組成物
乳癌、大腸癌、非小細胞肺癌、非ホジキンリンパ腫、腎臓癌(kidney cancer)、前立腺癌、膀胱癌又は腎細胞癌(renal carcinoma)などの泌尿生殖器腫瘍、結腸癌、ホジキンリンパ腫、肝臓癌、子宮頸癌、悪性黒色腫、卵巣癌、中皮腫及び膠芽腫、血液癌、AML、MM、リンパ腫、慢性リンパ性白血病若しくは有毛細胞白血病、又は固形腫瘍、黒色腫、RCC、肺がん、類表皮肺がん、神経芽細胞腫、卵巣がん、乳がん、又は、胃がん。
【請求項15】
レツキシマブ、オファツムマブ、オビヌツズマブ、オカラツズマブ又はベルツズマブ、抗CD37抗体、抗CD38抗体又は抗CD40抗体から選択される少なくとも1種の他の抗CD20抗体
と組み合わせて血液癌の治療に使用する、
請求項1~のいずれか1項に記載の結合物、又は、請求項若しくはに記載の組成物。
【請求項16】
請求項1~のいずれか1項に記載の結合物の1種をコードする単離された核酸。
【請求項17】
請求項16に記載の核酸を含むベクター。
【請求項18】
請求項17に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項19】
請求項18に記載の宿主細胞培養することを含む、請求項1~のいずれか1項に記載の結合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽鎖の可変領域(VL)として配列番号14又は配列番号13で定義される配列を有し、そして重鎖の可変領域(VH)として配列番号11、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29及び配列番号30から選択される配列、それらのフラグメント又はそれらの誘導体を有する、ヒトCD160に特異的に結合する結合物に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、モノクローナル抗体は、癌、自己免疫疾患、慢性炎症性疾患、移植拒絶反応、感染症、心血管疾患及び目に関するある種の病理学的状態を含む様々な病理学的状態を治療するための療法として使用されている。モノクローナル抗体の約20種以上又はそのフラグメントのうちいくつかが市販されており、400種を超える種類が臨床開発中である。
【0003】
それ故、治療において、考えられる候補としての抗体の選択は、戦略的関心が高い。特に、選択された抗体は、可能な限り非免疫原性である一方、同時に、その標的に対する良好な親和性及び良好な特異性を有し、その考えられる毒性に関して最適な効能があることが必要である。
【0004】
CL1-R2抗体は、CD160受容体に特異的に結合する既存の抗体の1つである。これは、欧州特許第1776387号に記載されているヒトCD160受容体に対するマウスのモノクローナル(the murine monoclonal)抗体である。このCL1-R2抗体は、重鎖の可変領域(VH)として配列番号1を有し、軽鎖の可変領域(VL)として配列番号2を有する。それは抗血管新生作用(anti-angiogenic properties)及び免疫調節作用も有する。しかしながら、ヒトへの投与は、ヒト抗マウス抗体(human anti-murine (mouse) antibodies (HAMA))の開発に関する「HAMA応答」によるその過剰な免疫原性のために制限されている。HAMAの開発は、(i)最終的に抗体を中和(又は抗体除去の促進)し、それゆえその治療効果を誘導し、及び(ii)毒性の潜在的なリスク(アナフィラキシー又は血清疾患などの有害な免疫反応)をも誘導する可能性があった。
【0005】
血管内皮増殖因子(VEGF)の阻害剤などの利用可能な現在の抗VEGF治療に加えて、血管新生(neovascularization)を含む病理学的状態の治療に有効な結合物、特に抗体を提供する必要がある。
【0006】
実際は、既存の脈管構造からの新しい血管の形成である血管新生は生理学的に起こる。しかし、それはまた、主として虚血性網膜症(IR)を伴う角膜―網膜血管新生疾患又は滲出型若しくは「ウェット型」加齢黄斑変性症(wAMD)などの脈絡膜の疾患としての、様々な病理学において役割を果たす。それらは、先進国における中度及び重度の視力喪失の第1の要因である。
【0007】
wAMD及びIRにおける血管新生及びその病因に関する知見が増えたことによって、VEGF経路を標的とする薬物の開発がもたらされた。抗VEGF治療薬の硝子体(IVT)注射は、過去10年間にわたって、wAMD、網膜静脈閉塞症(RVO)及び黄斑浮腫(DME)における治療の最初の選択肢として出現した。
【0008】
抗VEGF療法は一般に安全であるように思われるが、その効能及び安全性に関するいくつか制限があることが明らかとなっている。完全な効能を得るためには頻繁なIVT注射がしばしば必要とされる。抗VEGFを長期使用すると、タキフィラキシー又は寛容現象に関連して、長期効能が低下する。wAMD患者の30%以上が依然として反応が乏しく、したがって抗VEGFに耐性がある。さらに、抗VEGFの反復投与後の血圧上昇、脳卒中、及び心筋梗塞のリスク増加などの局所的及び全身的な有害作用が、wAMD患者において報告されている。
【0009】
これらの制限は、許容回数又は安全性の問題の割合を増加させることなく、並びに注射の回数を減らすことなく、抗VEGFについての持続送達アプローチを改善する必要性を強調する。反応がよくないか又は全く反応しない多くの患者の反応を増大させることが必要である。したがって、正常な成熟組織脈管構造にはほとんど又は全く影響を及ぼさずに病的な血管新生を阻害する、VEGF非依存の相補的かつ相乗的な治療法を開発することが差し迫って必要とされている。
【0010】
これらの結合物は、ヒトにおいては耐性が高く、そして特に非免疫原性である一方、良好な生物学的活性があり且つその標的に対する特異的親和性を有する必要がある。
【0011】
また、特にNK細胞などのエフェクター免疫細胞を刺激し及び/又は細胞傷害性T細胞のアネルギー(the anergy)を引き上げる、現在の治療法と組み合わせることができる新しい薬剤もまた必要とされている。
【発明の概要】
【0012】
本発明はこれらの問題を解決することを可能にする。本発明は、ヒトCD160に特異的に結合し、配列番号14又は配列番号13によって定義される軽鎖の可変領域(VL)として選択された配列並びに重鎖可変ドメイン(VH)として配列番号11、配列番号25、配列番号26、配列番号27、配列番号28、配列番号29及び配列番号30から選択される配列を有する結合物、並びにそれらのフラグメント又はそれらの結合物の誘導体である。本発明に係る結合物は、ヒトにおいては耐性が高くまた免疫原性でなく、ヒトへの投与に特に適している。
【0013】
本発明に係る結合物は、抗体、より具体的にはモノクローナル抗体、フラグメント又は誘導体の形態であってもよく、そして非常に高い親和性でヒトCD160に結合することができる。
【0014】
本発明に係る結合物は、同じ可変領域及びヒトの定常領域を有する親のCL1-R2抗体又はその組換えキメラバージョンよりも、組換えCD160タンパク質及びCD160陽性細胞に対してはるかに優れた親和性を示すことが発見された。このことは、ヒトにおける投与に適合し得るキメラバージョンは依然としてある程度の潜在的免疫原性を示すことから、非常に有利である。さらに、そのような抗体並びにそのフラグメント及び誘導体は優れた活性を有する。
【0015】
これは、以下の実施例、特に実施例1で示される。実施例1では、親和性の測定によって、予想に反して、IgG1及びIgG4フォーマットのH7が、マウスCL1-R2並びにそれぞれのキメラヒトIgG1及びIgG4の形態よりも、ヒトCD160に良好な親和性を有することを明らかに示される。親のCL1-R2抗CD160のKDと比較したKDの増加(ゲイン)(実施例1、表1、8列目、K増加を参照のこと)は、ヒトIgG1及びIgG4フォーマットにおけるH7についてそれぞれ約3.75及び3.34である。同一濃度の50nMの抗体では、H7 IgG4及びCL1-R2よりもH7 IgG1に対してより良好な応答、並びにキメラフォーマットの2つの抗CD160に対してより悪い応答も得られた(実施例1、表1参照、9列目)。
【0016】
さらに、実施例8で示されるように、本発明に係る結合物はすべて、CL1-R2及び代表的なヒトIgG1であるベバシズマブと比較して血流中で非常に異なる消失プロファイルを有し、ウサギにおける全身の薬物動態学的パラメータによって測定される血清のクリアランスが速い。
【0017】
「ヒトCD160」とは、ヒトCD160受容体を意味する。それは、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)モチーフにより細胞膜に固定され、免疫グロブリンスーパーファミリー(免疫グロブリン様ドメインの存在)に属する従来型のHLA分子(HLA A及びC)及び非従来型のHLA分子(HLA G)及びHVEM(ヘルペスウイルス侵入媒体)を認識する27kDaの受容体である。このタンパク質はさらにCD160 GPIと命名されている。このタンパク質は、以下の免疫細胞によって生理学的に発現される:NK CD56dim CD16bright、T CD8サブセット、Tガンマ―デルタ及びT CD4細胞サブセット。CD160はまた、血液癌におけるB細胞上又は新血管性眼病理における活性化内皮細胞上では、B-CLLとして、病的状態で上方制御される。ヒトCD160のcDNAは、国際公開第98/21240号パンフレットに記載の配列番号1の配列に対応する。ヒトCD160のmRNAは、ジェンバンク(Genbank)からアクセッション番号AF060981で入手可能である。ヒトCD160のタンパク質配列は、WO98/21240に記載されている配列番号2の配列に対応し、Genbankからアクセッション番号AAC72302で入手可能である。
【0018】
CD160タンパク質は、膜貫通(TM)ドメインを有する別のアイソフォームでも存在することに留意すべきである(以下、CD160 TMという。)。CD160 GPIアイソフォームタンパク質のタンパク質配列は、CD160 TMアイソフォームタンパク質配列の最初のN末端部分76.5%と100%相同である。ヒトCD160 TMアイソフォームのcDNAは、WO2008/155363に記載されている。ヒトCD160のmRNAは、アクセッション番号EU016100.1でGenbankから入手可能である。ヒトCD160 TMのタンパク質配列は、Genbankにおいてアクセッション番号ABV89736.1から入手可能である。
【0019】
BY55の抗CD160 IgM及びCL1-R2はCD160 GPIフォームに特異的であり、それぞれ文献(Giustinianiら、2009年、及び、El-Farら、2014年)に記載されているようにCD160 TMアイソフォームを認識することはできない。従来技術では、CD160の両方のアイソフォームを認識するとされる抗CD160 mAbはない。
【0020】
本発明に係る結合物の他の有利な特徴は、CD160の両方のアイソフォームを認識することができるが、親のCL1―R2抗体はそうではないこと、及び、これら2つのアイソフォームが同じ細胞上(例えば、まさにT及びNKリンパ腫のように)に存在する場合の適応を広げることである。
【0021】
本発明の文脈において、結合物の「可変領域(variable region)」又は「可変ドメイン」という用語は、抗体の重鎖又は軽鎖のアミノ末端ドメインに関連する領域又はドメインを意味する。重鎖可変ドメインは「VH」という。軽鎖可変ドメインは「VL」という。これらのドメインは一般に抗体の最も可変的な部分であり、そして抗原結合部位を含む。この結合物は抗体、特にモノクローナル抗体の形をとることができる。
【0022】
軽鎖又は重鎖の可変領域(VL又はVH)は、「相補性決定領域」又は「CDRs」と呼ばれる3つの超可変領域によって割り込まれた「フレームワーク領域」を含む。
【0023】
6つのCDR全てによって、抗体のその標的抗原への結合が可能となる。例えば、CL1-R2抗体は、CDRとして、AbMのCDR用語(より広く、抗体親和性成熟技術に適合されている)に従って配列番号3~8の配列を有する。これらのCDRsは本発明の結合物H7中に存在する。
【0024】
本発明に係る結合物は、それらの標的であるヒトCD160に対して優れた親和性を有し、それはCL1-R2のそれよりも大きいか、又はこのCL1-R2のキメラ形態よりも大きい(実施例1参照)。
【0025】
好ましくは、本発明に係る結合物は、重鎖可変ドメイン(VH)としての配列番号11の配列、及び軽鎖可変ドメイン(VL)としての配列番号14の配列を有する。そのような抗体は、特に、実施例1の「H7」抗体に対応する。
【0026】
実施例2に記載するように、H7抗体のバリアントが得られた。
【0027】
本発明の他の実施態様では、結合物は、重鎖可変ドメイン(VH)としての配列番号25の配列、及び軽鎖可変ドメイン(VL)としての配列番号14の配列を有する。そのような結合物は、特に、「F04」抗体に対応する。
【0028】
本発明の他の実施態様において、結合物は、重鎖可変ドメイン(VH)としての配列番号26の配列、及び軽鎖可変ドメイン(VL)としての配列番号14の配列を有する。そのような結合物は、特に、「D09」抗体に対応する。
【0029】
本発明の他の実施態様において、結合物は、重鎖可変ドメイン(VH)としての配列番号27の配列、及び軽鎖可変ドメイン(VL)としての配列番号14の配列を有する。そのような結合物は、特に、「A12」抗体に対応する。
【0030】
本発明の他の実施態様において、結合物は、重鎖可変ドメイン(VH)としての配列番号28の配列、及び軽鎖可変ドメイン(VL)としての配列番号14の配列を有する。そのような結合物は、特に、「G05」抗体に対応する。
【0031】
本発明の他の実施態様において、結合物は、重鎖可変ドメイン(VH)としての配列番号29の配列、及び軽鎖可変ドメイン(VL)としての配列番号14の配列を有する。そのような結合物は、特に、「D12」抗体に対応する。
【0032】
本発明の他の実施態様において、結合物は、重鎖可変ドメイン(VH)としての配列番号30の配列、及び軽鎖可変ドメイン(VL)としての配列番号14の配列を有する。そのような結合物は特に「A09」抗体に対応する。
【0033】
本発明の一実施態様において、結合物はヒトCD160を標的とするモノクローナル抗体であり、これは好ましくは、定常領域として、免疫グロブリン(IgG)、好ましくはIgG1又はIgG4の定常領域を有する。
【0034】
本願で定義する「定常ドメイン」又は「定常領域」という用語は、重鎖又は軽鎖免疫グロブリン定常領域遺伝子の1つによってコードされる抗体に由来する定常領域を意味する。
【0035】
本発明の文脈において使用される「定常軽鎖」又は「軽鎖定常領域」という用語は、カッパ(Cκ)又はラムダ(Cλ)軽鎖によってコードされる抗体の領域を意味する。定常軽鎖は、一般的に固有のドメインを含み、本願で定義されるところによると、Cκ又はCλの位置108~214を指す。ここで、番号はEUインデックス(Kabatら、1991)に従う。
【0036】
「定常重鎖」又は「重鎖定常領域」という用語は、本願において、抗体のアイソタイプとしてIgM、IgD、IgG、IgA又はIgEを定義するために、μ、δ、γ、α又はε遺伝子によってコードされる抗体の領域を意味する。全長IgG抗体については、本願で定義されるように、定常重鎖は、CH1ドメインのN末端からCH3ドメインのC末端までを指し、従って118~447の位置を含む。ここで番号付けはEUインデックスに従う。
【0037】
好ましくは、本発明に係るヒトCD160を標的とする結合物の定常領域は、IgGの定常領域であり、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4の定常領域から選択できる。
【0038】
好ましくは、本発明に係るヒトCD160を標的とする結合物の定常領域は、腫瘍学のための、IgG1(配列番号16)、IgG1 E345K(配列番号43)若しくはE430G(配列番号44)の定常領域、又は眼科学のためのIgG4 S228P/R409K(配列番号15)、IgG4-(S228P/R409K)+L235E(配列番号31)、IgG1 N297Q若しくは他のバリアントIgG4-(S228P/R409K)+H310A/H435Q(配列番号32)、IgG4-(S228P/R409K)+I253A(配列番号33)、IgG1-(N297Q)+H310A/H435Q(配列番号34)、IgG1-(N297Q)+I253A(配列番号35)及びそれらの非グリコシル化(aglycosylated)変異体の定常領域である。
【0039】
IgG4サブクラス及びその変異体は、補体カスケード及びFcガンマ受容体(又はFcgRIIa、FcgRIIIa及びFcgRIを含むFcR)に関与するエフェクターに対して非常に低い親和性を有し、CDC(補体依存性細胞傷害)効果及び/又はADCC(抗体依存性細胞媒介性細胞傷害)効果及び/又はADCP(抗体依存性細胞食作用)が望ましくなく、得られる抗体における考えられる毒性リスクを制限することが望ましい場合には利点がある。
【0040】
逆に、IgG1サブクラス及びそのバリアントは、強いADCC及び/又はCDC活性及び/又はADCPの原因となり、そして、それらを標的細胞の細胞溶解を増加させるために有利であるが、毒性リスクが高くなる。
【0041】
本発明の一実施態様に係る結合物は、ヒトCD160を対象とするモノクローナル抗体であって、軽鎖定常ドメインとして配列番号22(Ala153/Val191に対応するKm3多型)、配列番号23(Val153/Leu191に対応するKm1多型)、配列番号24(Val153/Leu191に対応するKm1,2多型)、並びに、重鎖定常ドメインとして配列番号15、配列番号16、配列番号31、配列番号32、配列番号33、配列番号34、配列番号35及びそれらの非グリコシル化変異体から選択される配列を有する。
【0042】
ヒトCD160を対象とする本発明に係る結合物は、より好ましくは、重鎖定常ドメインとして配列番号15、配列番号16、配列番号31、配列番号32、配列番号32、及びそれらの非グリコシル化変異体、並びに、軽鎖定常ドメインとして配列番号22の配列を有する。
【0043】
本発明に係る結合物は、一価(ヒトCD160の場合は単一の抗原結合部位)又は多価(ヒトCD160への結合のために少なくとも2つの結合部位)であるが、その一方で、CD160に対して単一特異性又は単一機能性(monofunctional)であってもよい。
【0044】
本発明に係る結合物は、多重特異性結合物、例えば二重特異性抗体(bsab)又は類似の分子でもあってもよい。多重特異性結合物は、少なくとも2つの異なるエピトープに対して結合特異性を有する結合物であり、それらは典型的には重複しない。これらのエピトープは、同一又は異なる標的上にあってもよい。エピトープが異なる標的上にある場合、これらの標的は同じ細胞上又は異なる細胞上又は異なる細胞型上にあってもよい。特定の実施形態では、これらの結合特異性のうちの一方はCD160、特にヒトCD160の細胞外ドメインに対するものであり、他方は他の抗原に対するものである。
【0045】
本発明に係る多重特異性結合物は、IgGフォーマット(例えば、bsab、直交Fab、鎖交換操作ドメイン(strand exchange engineered domain)SEED又はシードボディ(Seed-body))、Fab又はScFvフラグメントを付加したIgG(例えば、DVD lgs、二重ドメインダブルヘッド抗体(Dual domain double head antibodies)、ジ‐ダイアボディ(Di diabodies)、アフィボディ(Affibodies)、ビオニューネクス(Biomunex)、フィノマブ(Fynomab))、抗体フラグメント(二重特異性抗体フラグメント、Fv二量体、BITE、ImmTACS、DART、BIKE)に基づくbsab、三重特異性抗体、融合タンパク質に基づくbsab(例えば、scFV融合体BsAb)、凝集抗体などの二重特異性抗体の形態をとることができる。
【0046】
多重特異性結合物(すなわち、CD160及びCD160以外の少なくとも1つの抗原に特異的に結合することができる結合物)によって標的化されたエピトープ又は本発明に係る結合物とは異なる抗体によって標的化され本発明による組成物中に存在するエピトープは、活性化又は中和が血管形成又はこの血管形成過程に関連する炎症の阻害において重要な役割を果たし得る標的である以下の抗原に存在する:VEGF(VEGF-A、VEGF-B、VEGF-C又はVEGF-D)、そしてPlGF(胎盤増殖因子)、VEGF-R2、アンジオポエチン2;アンジオポエチン様4、CD200、CD200R、PDGF(PDGF-AA、PDGF-B、PDGF-BB、PDGF-CC又はPDGF-DD)、PDGF-R、FGF2又はFGFベータなどのFGF、βアミロイド、スフィンゴシン-1-リン酸(S1P)、C’5、IL6、MER TK、CD115、TNFα、IL8、HGF、TGFβ、IGF1、IL1、IL2、EGF、KGF、G-CSF、GM-CSF、α-v、β-3 α-v、β-5インテグリン、膜貫通型及び可溶性CD146;メタロプロテアーゼ(MMP1、2及び9並びにMT1-MMPなど);TIMP-2;アンギオゲニン;内皮細胞増殖因子(PD-ECGF);血小板活性化因子;プロスタグランジンE;プレイオトロピン又はクラスII MHC、HP59又はCM101;Tリンパ球(T細胞)の再活性化において活性化又は中和が重要な役割を果たす可能性のある標的、その免疫抑制が予後不良及び癌の進行と相関する例えばCD3、CD25、CD28、CD40、PD1、CTLA4、4-1BB、LAG-3若しくはICOSなどの分子、又はその対象がCD160陽性細胞の免疫系における重要な役割を果たすことを可能にする例えばCD16、CD3、CD47などの分子、又はその対象がB型リンパ腫に対するbsab抗体の特異性を強化する、例えばCD20、CD19、CD5、CLLに対するCD200、辺縁帯リンパ腫(MZL)に対するCD180及びマントル細胞リンパ腫に対するCD148分子、又はscFv、Fab若しくは他の誘導体の安定性及び薬物動態を増加させることを可能にする、例えばヒト血清アルブミン(HSA)、CD180、CD200、CD40、CD37、CD38、CD148、CD180及びB型リンパ腫に特異的な他の抗原、などの抗原が挙げられる。
【0047】
本発明に係るヒトCD160を標的とする結合物の「フラグメント」及び「誘導体」という用語は、ヒトCD160に対する前記結合物の結合親和性及び特異性を保持しているフラグメント及び誘導体をそれぞれ意味する。そのようなフラグメント及び誘導体は前記結合物の機能的等価物である。それらは前記結合物と実質的に同じエピトープに結合し、及び/又はヒトCD160への結合について前記結合物と競合することができ、CD160以外のHLA受容体に結合しないヒトCD160に対する十分な結合特異性を保持する。
【0048】
本発明に係る「フラグメント」及び「誘導体」は、CD160に対して本発明に係る結合物と同様の親和性を有する。
【0049】
本発明に係るヒトCD160を標的とする結合物の「フラグメント」という用語は、好ましくは、Fab、Fab’(例えば、β-メルカプトエタノールによるF(ab’)2の還元)、F(ab’)2又は重鎖若しくは軽鎖フラグメントなどのフォーマットを意味する。本発明に係るヒトCD160を標的とするフラグメントは、上記で定義したように少なくとも1つの重鎖可変ドメイン(VH)及び/又は1つの軽鎖可変ドメイン(VL)を有する。
【0050】
本発明の特定の一実施態様に係る結合物は、配列番号57によって定義される軽鎖(VL)と、配列番号36、配列番号37及び配列番号38から選択される配列を有する重鎖とを含むフラグメントである。
【0051】
本発明に係るヒトCD160を標的とする結合物の「誘導体」という用語は、少なくとも1つの重鎖可変ドメイン(VH)及び/又は1つの軽鎖可変ドメイン(VL)を含む、(例えば、配列番号39又は他のタンパク質配列などのリンカー、特に受容体又はそのフラグメントなど)天然の配列とは異なる少なくとも1つの配列に融合した、この結合物のフォーマットを意味する。前記誘導体は、本発明に係る結合物全体のそれに匹敵するヒトCD160に対する結合親和性、及びまた前記結合物のそれに匹敵するヒトCD160に対する結合特異性を有する。本発明では、「匹敵する」とは、結合親和性又は結合特異性が25%の限度内で変動し得ることを意味する。誘導体は、酵素反応、合成及び/又は遺伝子操作によって、当業者の一般的な知識に従って得ることができる。
【0052】
本発明の特定の一実施態様に係る結合物は、配列番号57によって定義される軽鎖(VL)と、配列番号40又は配列番号41から選択される配列を含む重鎖とを含むフラグメントである。
【0053】
本発明に係る誘導体は、一価(例えばヒトCD160などの抗原に結合するための単一部位)又は多価(ヒトCD160を含む1つ又はいくつかの抗原に結合するための少なくとも2つの部位)であってもよい。好ましい多価誘導体としては、二価、三価及び四価の誘導体が挙げられる。
【0054】
本発明の一実施形態に係る誘導体は、多重特異性又は多機能性結合物、例えば二重特異性抗体(bsab)又は類似の分子であり、そのエピトープは同一の又は異なる標的上にあり得る。一実施形態では、二重特異性抗体はCD160の2つの異なるエピトープに結合することができる。他の実施形態では、二重特異性抗体はCD160のエピトープ及びCD160以外の抗原のエピトープに結合することができる。対象とするエピトープは、本明細書中上記に記載されている。
【0055】
「一本鎖Fv」又は「scFv」抗体誘導体は、抗体のVH及びVLドメインを含み、これらのドメインは単一のポリペプチド鎖に存在する。
【0056】
本発明に係る他の誘導体は、単一特異性の多価scFvであり、これは少なくとも2つの一価誘導体を互いに結合させることによって得ることができる。その結合は、共有結合でも非共有結合でもよい。いくつかのCD160結合部位の存在は、この抗原に対する結合能を高める。
【0057】
本発明に係る他の誘導体は、多重特異性多価scFvである。
【0058】
他の誘導体の中で、2つの抗原結合部位を有する小さな抗体誘導体を表す「ダイアボディ(diaboies)」を挙げることができ、前記フラグメントは、同じポリペプチド中の軽鎖可変ドメイン(VL)に連結した重鎖可変ドメイン(VH)を有する。多価scFvは、好ましくは、ダイアボディ(二価であり、そして2個のscFvからなる)、トリアボディ(これは、三価でありそして3個のscFvからなる)及び四量体scFvから選択される。
【0059】
本発明に係る他の多価誘導体は二量体であり、各単量体は重鎖フラグメント、例えばCH3フラグメントに結合したscFvを含む。これはミニボディ(minibody)に対応する。ミニボディ中に存在する2つのscFvは、同一(ヒトCD160にのみ結合するのでミニボディは単一特異性である)又は異なる(一方でヒトCD160に結合し、他方で他の抗原に結合するので、ミニボディは二重特異性である)。
【0060】
本発明に係る他の多価誘導体は二量体であってもよく、各単量体は重鎖フラグメント、例えばCH2及びCH3フラグメント、に結合したscFvを含む。存在する2つのscFvは、同一であっても異なっていてもよい。異なる場合、それらは二重特異性抗体と呼ばれる。
【0061】
本発明に係る他の多価誘導体は、単一の単量体重鎖可変ドメインからなる抗体フラグメントである。これは単一ドメイン抗体(AblynxよりナノボディとよばれるVHH又はsdAb)
に相当する。
【0062】
四価で単一特異性の抗CD160誘導体の例として、重鎖の各可変領域の上流で、VH及びCH1領域が実施例3における配列番号42で示すように重複している抗CD160分子もまた挙げることができる。次いで、四価で機能的単一特異性の抗CD160の機能的なバージョンを得るために、哺乳動物細胞において、配列番号42及び配列番号57によって定義される抗CD160軽鎖をコードする遺伝子を共発現させることが可能である。
【0063】
本発明に係る他の誘導体は、本発明に係るヒトCD160対に結合するキメラマウス軽鎖/重鎖結合の1つを用いて、IgMを組換えて生成することによって得られる。
【0064】
他の実施形態では、本発明は、本発明に係る結合物の少なくとも1つを含有する組成物である。特定の一実施形態に係る組成物は、本発明に係る少なくとも1つの結合物と、本発明に係る結合物以外の少なくとも1つの抗体とを含有する。
【0065】
本発明の一実施態様では、前記結合物又は組成物は医薬として使用される。
【0066】
本発明に係るヒトCD160を標的とする結合物、そのフラグメント及び/又はその誘導体は、医薬組成物又は医薬品中に存在してもよい。この医薬組成物は、好ましくは薬学的に許容される担体を含む。「薬学的に許容される」とは、細胞、細胞培養物、組織又は有機体などの生物学的システムと適合性があり、かつその組成物中の活性物質における生物学的活性の効能を妨害しない非毒性の物質を指す。前記の担体の特徴は、投与方法に依存する。
【0067】
医薬組成物又は医薬は、患者に投与することができる任意の形態であってよく、特に溶液、懸濁液、凍結乾燥粉末、カプセル及び錠剤であってもよい。
【0068】
医薬組成物又は医薬は、注射、すなわち局所注射、すなわち硝子体内注射、粘膜を介した投与、吸入、経口投与及び目的に合うより一般的な任意の形態であってもよい。
【0069】
本発明はまた、本明細書に記載の結合物と、CD160と同一又は異なる少なくとも1つの他の抗原(特に前述した抗原のエピトープのうちの1つ)に特異的に結合する抗体とを含む製品であって、特に、新生血管性の眼病、原発性糖尿病性網膜症若しくは加齢黄斑変性症(ARMD)、糖尿病、糖尿病性失明、慢性関節リウマチ、子癇前症、子癇又は癌から選択される、血管新生を引き起こす病的状態の治療及び/又は予防における同時、個別又は逐次使用のための製品である。
【0070】
「病的状態の予防」とは、疾患がまだ現れていない対象(特にヒト)におけるこの疾患の発生の予防を意味する。
【0071】
「病的状態の治療」とは、この疾患の抑制、すなわちその発症の停止、その後退、又は疾患の症状及び結果の消失、あるいは疾患の原因の消失を意味する。
【0072】
より好ましくは、本発明に係る結合物又は本発明に係る組成物は、抗血管新生剤、免疫調節剤及び/又は細胞毒性薬剤(細胞傷害剤)として使用される。
【0073】
本発明は、より具体的には、抗血管新生剤としての使用のための本発明の結合物である。
【0074】
本発明において、「抗血管新生剤」又は「血管新生阻害剤」は、直接的又は間接的に、血管新生、脈管形成、又は望ましくない血管透過性を阻害する結合物を意味する。
【0075】
好ましくは、本発明に係る結合物は、血管新生病態、好ましくは新生血管性の眼病、糖尿病、糖尿病性網膜症若しくは加齢黄斑変性症、慢性関節リウマチ、子癇前症、子癇又は癌の予防及び/又は治療に使用することができる。
【0076】
「新生血管性の眼病」とは、すべての新生血管性の眼病又は障害を意味する。いくつかの眼の障害は、病的血管形成と関連している。例えば、ARMDの発症は、脈絡膜血管新生(CNV)と呼ばれるプロセスに関連している。糖尿病性黄斑浮腫(DME)は、血管新生に関する他の眼の障害である。DMEは、糖尿病を患っている患者における中等度の視力喪失の最も広範な原因であり、網膜の血球に影響を与える糖尿病性網膜症の一般的な合併症である。
【0077】
異常な新生血管性に関連する他の眼病は、網膜中心静脈閉塞症(CRVO)である。CRVOは網膜の中心静脈の閉塞によって引き起こされ、その結果、網膜に血液と体液が蓄積する。網膜は虚血性になり、不適切な新しい血管が成長し、視力がさらに失われ、より深刻な合併症を引き起こす可能性がある。
【0078】
網羅的ではないが、特にノーリー病から選択される他の新生血管性の眼病について言及すると、以下のようになる;すべての形態の脈絡膜血管新生、ポリープ状網膜脈絡膜血管障害、近視及びソルビーのジストロフィ(Sorsby’s dystrophia)に関連する後葉脈絡膜脈絡膜血管;ブドウ膜黒色腫;虹彩ルベオーシス及び血管新生緑内障、網膜血管腫状増殖(RAP)、角膜移植合併症及び/又は角膜感染及び/又は環境による角膜発作の後に起こる血管新生、病原性感染及び化学火傷から選択されるもの;又は糖尿病性及び浮腫性虚血、早発性糖尿病性網膜症、増殖性及び非増殖性の網膜症、嚢胞性黄斑浮腫、すべての形態の加齢黄斑変性(ARMD)、特に湿性型のもの、ベスト病など、すべての卵黄様黄斑変性を含むすべての型の網膜症;フォン・ヒッペル・リンドウ病などの眼の血管腫;イールズ病;コーツ病。
【0079】
「糖尿病」とは、あらゆる種類の糖尿病、特にインスリンに関連した糖尿病及び抗利尿ホルモンに関連した尿崩症を意味するものとする。糖尿病の形態においては、1型糖尿病(インスリン依存性)、2型糖尿病(インスリン感受性の低下)、妊娠性糖尿病又は新生児糖尿病が挙げられる。尿崩症の形態の中で、下垂体による抗利尿ホルモンの生成が低いことによる中枢糖尿病、又は抗利尿ホルモンに対する腎臓の感受性が低いことによる末梢糖尿病が挙げられる。
【0080】
「癌」とは、細胞のあらゆる異常な増殖を意味するものとする。癌は、特に、乳癌、結腸直腸癌、膀胱癌、肺癌、及び前立腺癌から選択される。
【0081】
本発明に係る抗血管新生の結合物は、特に、血管新生成分が疾患の伝播の重要なベクターである癌の治療に使用することができる。例えば、特に、乳癌、結腸直腸癌、非小細胞肺癌、非ホジキンリンパ腫、腎癌、前立腺癌、膀胱癌又は腎細胞癌(renal carcinoma)などの泌尿生殖器腫瘍、結腸癌、ホジキンリンパ腫、肝臓癌、子宮頸癌、黒色腫、卵巣癌、中皮腫、膠芽腫が挙げられる。
【0082】
特定の一実施形態では、本発明に係る結合物は細胞傷害剤として使用することができる。
【0083】
「細胞傷害性抗体」、「細胞傷害性薬剤」又は「抗腫瘍剤」とは、抗体依存性エフェクター細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)、補体依存性細胞障害(complement-dependent cytotoxicity)、又は抗体依存性細胞介在性食作用(ADCP)及び腫瘍細胞のアポトーシスの直接誘導を誘発する、治療用モノクローナル抗体(mAb)又はそのフラグメント若しくは誘導体を意味する。
【0084】
本発明に係る他の誘導体は、細胞傷害活性が改善された結合物である。細胞傷害活性が改善された結合物は、抗CD160の可変鎖を、Fc領域が最適なグリコシル化(例えば、脱フコシル化)を受けた、IgGフォーマットにグラフトするか、又は、対象とする抗体におけるFc領域のアミノ酸配列を操作することにより改変して得られる。例えば、DLE三重突然変異体(S293D/A330L/I332E)を導入する。このような結合物は、ヘキサボディフォーマット(the Hexabody format)、又はBITE若しくはBiKEフォーマット(CD160に対する1の価数及びCD16に対する2価数)又はTriKEフォーマットによる結合物のフォーマットを生成することによっても得ることができる。これらの改良の例は、本発明の実施例3に示す。抗体の1つ以上の残基がシステイン残基で置換され、その遊離チオール基が免疫毒素、放射性免疫複合体(radioimmunoconjugate)又は抗体薬物複合体(ADC)などの治療薬を作成するために使用され得る発明に係る結合物を作成することも可能である。
【0085】
本発明に係る、他の二価の二重特異性結合物では、一方でNK細胞に関係し、他方で非CD160価の腫瘍抗原に関係する抗体の価数として、CD16の代替としてCD160を使用することも可能である。これは、CD160もまた、NK細胞で発現される活性化物質受容体であるためである(本発明の実施例15及び16を参照)。この結合物とNK細胞のCD160との相互作用により、NK細胞が活性化され、これらのエフェクター細胞が腫瘍標的に近づく。
【0086】
本発明による他の誘導体は、その細胞毒性活性を改善するために、全身半減期(systemic half-life)が改善された結合物である。
【0087】
本発明に係る結合物又は組成物は、血液癌又は固形腫瘍の治療に使用することができる。本発明に係る細胞毒性結合物の例は、実施例3及び4に示されている。
【0088】
CD160は特定の腫瘍細胞、特にB細胞慢性リンパ性白血病(B-CLL及び有毛細胞白血病(HCL))の大部分における特定の腫瘍細胞に対し抗原特異的で、且つ、辺縁帯リンパ腫及びマントル細胞リンパ腫の患者の機能としてのより異種の発現を伴う抗原であると知られている。しかし、CD160は正常な循環B細胞ではまったく発現しない抗原である。したがって、抗CD160抗体を使用して、これらのBリンパ腫の腫瘍増殖を特異的に殺すか、阻害することができる。
【0089】
したがって、本発明に係る結合物は、血液癌、特に慢性リンパ性白血病(CLL)、有毛細胞白血病、急性骨髄性白血病(AML)、多発性骨髄腫(MM)の治療、又は固形腫瘍、特に黒色腫、腎細胞癌、肺癌、そして、特に類表肺癌、神経芽細胞腫、卵巣癌、乳癌、胃癌の治療に使用することができる。
【0090】
本発明に係る結合物は、例えば、抗CD20抗体、特にリツキシマブ、オファツムマブ、オビヌツズマブ、オカラツズマブ、又はベルツズマブ、抗CD37抗体、抗CD38抗体又は抗CD40抗体など、少なくとも1種の他の抗体と組み合わせて血液癌の治療に使用することができる。
【0091】
本発明に係る抗CD160結合物は、免疫チェックポイント阻害剤、特に黒色腫、非小細胞肺癌、膀胱がんや腎がんなどのなどの泌尿生殖器腫瘍、結腸がん、ホジキンリンパ腫、又は乳がんに有利に応答する癌の治療において、免疫のNK及びT細胞におけるCD160免疫調節活性を調節するために使用することができる。
【0092】
「CD160免疫調節活性」とは、CD160に関連する1つ以上の免疫調節活性を意味する。
【0093】
「調節」及び「免疫調節剤」及びそれらに関連する用語は、抗CD160抗体との相互作用によるTリンパ球又はNK細胞応答のアップレギュレーションに関連するCD160の活性の減少又は増加を指す。ここで、増加とは、同じ抗体の非存在下でのCD160の活性と相対的なものである。活性の減少又は増加は、好ましくは少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又はそれ以上である。CD160の活性が低下するときは、「調節剤」及び「調節」という用語は、「阻害剤」及び「阻害」という用語と交換可能である。CD160の活性が上昇すると、「調節剤」及び「調節」という用語は、「活性剤」及び「活性」という用語と交換可能である。
【0094】
CD160の活性は、実施例14及び15にそれぞれ示すように、NK活性(CD69などのマーカーをアッセイすることによる)又はIFN-γなどのサイトカインの分泌の測定によって定量的に決定できる。CD160の活性は、また、実施例19に示すように、サイトカイン分泌又はCD69としての活性化マーカーの上昇の測定によるT細胞活性を評価することで決定できる。
【0095】
免疫調節剤の組み合わせは、免疫チェックポイント阻害剤に対する臨床反応を改善するための鍵である。
【0096】
したがって、特定の一実施形態では、本発明に係る結合物は、これらの免疫調節剤の1種、好ましくは抗PD1、抗CTLA-4又は抗PD-L1と、組成物で組み合わせられ、前記組成物は免疫調節剤として使用される。
【0097】
本発明の他の特定の実施形態に係る抗CD160結合物は、CD160を発現する上皮内生来リンパ系細胞の活性化によって、腸(特に、大腸菌、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile))又は肺(特に、肺炎レンサ球菌)に感染する病原性細菌に対する防御を促す、細菌感染治療のための免疫調節剤として使用される。
【0098】
本発明はまた、本発明に係る結合物又はそのフラグメント若しくはその誘導体をコードする核酸である。「核酸」とは、DNA、cDNA、又はRNA配列を意味するものとする。
【0099】
本発明はまた、前記核酸を含む発現ベクター、又は前記核酸を含む発現カセットである。本発明によれば、適切な発現ベクターは、核酸に機能的に連結された少なくとも1つの発現制御要素を含むことができる。発現制御要素はベクターに挿入され、核酸の発現を調節することを可能にする。
【0100】
本発明はまた、前記の発現ベクター、又は前記の1つ以上の核酸を含む組換え細胞である。本発明によれば、使用できる細胞は、例えば、動物、植物、昆虫及び酵母細胞などの真核細胞並びに大腸菌などの原核細胞である。遺伝子を運ぶベクターを細胞に導入できる手段は、特に、マイクロインジェクション、電気穿孔法、形質導入、トランスフェクション又はDEAE-デキストラン、リポフェクション若しくはリン酸カルシウムを使用したトランスフェクション、又は当業者に知られている他の方法を含む。好ましい一実施形態では、真核細胞で機能する真核発現ベクターが使用される。
【0101】
そのようなベクター及び核酸は、目的のタンパク質を(本発明に係る結合物の場合は宿主生物によって)生成させるために、遺伝子治療又は細胞治療で使用することができる。
【0102】
本発明はまた、対象(好ましくはヒト)を治療する方法でもあり、本発明に係る結合物の治療有効量が前記対象に投与される。したがって、本発明に係る結合物は、治療有効量が投与される。治療的有効量とは、標的の血管新生の病的状態を予防及び/又は治療するのに十分な量に対応する。この量は、対象の年齢、性別、及び疾患の段階によって異なり得るものであり、当業者によって決定されるであろう。治療有効量は、1日以上の期間、1回又は毎日の投与で、0.01~50mg/kg、好ましくは0.1~20mg/kg、より好ましくは0.1~2mg/kgで変化し得る。
【0103】
投与方法は、注射でも、少しずつ点滴してもよい。注射は、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、経皮、結膜、眼内又は硝子体内に行ってもよい。結膜下又は硝子体内注射の場合、本発明に係る結合物の治療有効量は0.1~10mgであり得る。
【0104】
非経口投与用の製剤には、無菌の水性若しくは非水性溶液、懸濁液又はエマルションが含まれる。非水性溶媒としては、例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、又はオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルなどが挙げられる。水性担体としては、水、アルコール/水の溶液、エマルジョン又は懸濁液が挙げられる。非経口投与用の製剤には、糖及び/又は塩も含まれ得る。
【0105】
本発明に係る結合物は標識することができる。標識の例には、毒素、酵素、放射性同位体、蛍光結合物、コロイド材料、化学発光結合物、及び生物発光結合物が挙げられる。標識を抗体に結合する方法は、当業者に周知である。
【0106】
他の標識技術として、抗体を低分子量ハプテンに結合するものがある。これらのハプテンは、第2の反応によって特異的に修飾できる場合がある。ハプテンの例として、アビジンと反応するビオチン、又は抗ハプテン特異的抗体と反応できるジニトロフェノール、ピリドキサール又はフルオレセインなどが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0107】
図1A】実施例5に係る蛍光強度中央値の測定結果を示す。
図1B】実施例5に係る蛍光強度中央値の測定結果を示す。
図1C】実施例5に係る蛍光強度中央値の測定結果を示す。
図2】実施例6に係る血管新生の割合の評価結果を示す。
図3A】実施例8に係るH7及びH7バリアントの平均血清濃度の時間変化を示す。
図3B】実施例8に係るH7及びH7バリアントの平均血清濃度の時間変化を示す。
図4】実施例9に係るレーザー誘発性脈絡膜血管新生についてのサルのモデルでの臨床的関連病変の総数を示す。
図5】実施例9に係るレーザー誘発性病変の瘢痕について、治癒された又は未治癒の開口状のスポットの割合を示す。
図6A】実施例10に係るスポットの総数に対する臨床関連病変(グレード3及び4)の割合を示す。
図6B】実施例10に係る漏出の重症度の経時変化に対するELB01103の影響を示す。
図6C】実施例10に係る臨床関連病変のChNV面積の平均的な変化に対する、ELB01103の用量増加(0.3~3mg)の影響を示す。
図6D】実施例10に係るいくつかの種類の病変における網膜厚さの平均的な変化に対する、ELB01103(1mg)の影響を示す。
図7A】実施例10に係る臨床関連病変(グレード3及び4)の割合を示す。
図7B】実施例10に係る経時的な漏出の重症度の変化を示す
図7C】実施例10に係る臨床関連病変のChNV面積の変化を示す。
図7D】実施例10に係る網膜厚さの変化を示す。
図8】実施例11に係るPBMCの蛍光強度中央値の測定結果を示す。
図9】実施例12に係るフローサイトメトリー分析の結果を示す。
図10A】実施例13に係る蛍光プロファイルのヒストグラムを示す。
図10B】実施例13に係るIFN-γのELISAによる分析の結果を示す。
図10C】実施例13に係るフローサイトメトリー分析の結果を示す。
図11】実施例13に係るCD69陽性のNK細胞の割合を示す。
図12A】実施例13に係るIFN-γのELISAによる分析の結果を示す。
図12B】実施例13に係るCD69陽性のNK細胞の割合を示す。
図13A】実施例15に係る陽性細胞の割合を示す。
図13B】実施例15に係る陽性細胞の割合を示す。
図14】実施例18に係るH7バリアントの結合能力の測定結果を示す。
図15】実施例19に係るH7 A09バリアントによるHVEM-CD160相互作用の遮断によるT CD4の再活性化の割合を示す。
【0108】
本発明を、以下の実施例及び図面を用いて説明する。
【0109】
まず、図面について説明する。
図1Aは、H7候補並びにIgG1フォーマット及びIgG1 E345KにおけるそのバリアントのCHO WTと比較したCHO-hCD160への結合を示す。
図1Bは、H7候補並びにIgG4フォーマット及びIgG4 H310A-H435QにおけるそのバリアントのCHO WTと比較したCHO-hCD160への結合を示す。
図1Cは、H7候補IgG4(ELB01101)並びにIgG4フォーマットにおけるH7 D12バリアント(ELB01103)、FcRnヌル変異(ELB01104)、Fabバリアント(ELB01122)及びFab-リンカー-Fabバリアント(ELB01132)のYT2C2(NK細胞株)への結合を示す。図1Cでは、各曲線は、以下のものに対応する:黒い円:ヒトIgG4、黒い三角形:ELB01101(H7 IgG4)、黒い逆三角形:ELB01103、黒い正方形:ELB01104、黒いひし形:ELB01122、黒い星:ELB01132。
図2は、ラットの角膜血管新生モデルにおけるAflibercept(Eylea(登録商標))と比較した、IgG4フォーマットにおける抗CD160抗体(ELB01101)の経時的有効性の評価を示す。このバーグラフには、平均と標準誤差が示されている。図2では、2種類のバーのうち、白いバー(%)は8日目の血管新生を示し、黒いバー(%)は12日目の血管新生を示す。
図3Aは、親CL1-R2、ベバシズマブ、ラニビズマブと比較した、ウサギの硝子体内ルートの投与に続く、異なるIgGフォーマットにおけるH7及びH7バリアントの平均血清濃度の時間変化を示す。
図3Bは、親CL1-R2、ベバシズマブ、ラニビズマブと比較した、ウサギの静脈内ルートの投与に続く、異なるIgGフォーマットにおけるH7及びH7バリアントの平均血清濃度の時間変化を示す。
図4は、レーザー誘発性脈絡膜血管新生についてのサルのモデル(108のレーザー照射部位についてグレード3及び4の合計スコア)での臨床的関連病変の総数(グレード3及び4)に対する抗CD160 H7 IgG4(ELB01101)の影響。レーザー誘発病変の総数は、抗CD160(H7 IgG4 ELB 01101)で治療された動物又は担体対照について108個(9回のレーザー照射を行った12個の目に相当)であった。
図5は、サルのモデルにおける脈絡膜血管新生のレーザー誘発性病変の瘢痕の治癒に対する抗CD160 H7(ELB01101)の影響を示す。治癒の状態と病変の開口部は、フォンヴィレブランド因子に対する抗体で標識した後、免疫組織化学分析により個別に推定された。治癒中(つまり、RPE膜で覆われているということ)のスポットの割合(%)を、治癒された又は未治癒の開口状のスポットの割合(%)と比較したものを、棒グラフで表す。中央の脈絡膜瘢痕がある開口状のスポットの割合は、グラフ上、プレーンな黒いバーとして表され、中央の脈絡膜瘢痕のない開口状スポットの割合は黒い斜線入りのバーとして表され、治癒中のスポットの割合(RPE瘢痕で覆われたスポット)は白色のバーとして表される。
【0110】
図6は、サルのレーザー誘発性ChNVモデルにおけるIgG4フォーマットのH7 D12(ELB01103)の用量効能についてのデータを示す。
【0111】
図6Aは、スポットの総数に対する臨床関連病変(グレード3及び4)の割合の、ELB01103の経時的な影響/発生率(0~14日目及び0~28日目)を示す。14日目と28日目の効能データを、それぞれ、黒いバーと斜線入り(グレー)バーで表す。このモデルの文献で報告されている抗VEGFの平均効能レベルを、黒い矢印で示す。
【0112】
図6Bは、漏出の重症度の経時変化に対するELB01103の影響を示す。漏出の重症度の変化は、臨床関連の個々のChNV病変におけるグレードスコアの経時変化(14~28日目)に見られる。
【0113】
図6Cは、14~28日目における臨床関連病変のChNV面積の平均的な変化に対する、ELB01103の用量増加(0.3~3mg)の影響を示す。
【0114】
図6Dは、14~28日目におけるいくつかの種類の病変における網膜厚さの平均的な変化に対する、ELB01103(1mg)の影響を示す。グレーのバーは、すべての病変(グレード1、2、3及び4)への影響を示し、斜線入りバーは、臨床関連病変(グレード3及び4)への影響を示し、黒色のバーは、グレード4の病変のみを考慮したときの影響を示す。
【0115】
図7は、サルのレーザー誘発性ChNVモデルにおけるFabリンカーFabフォーマット(ELB01132)のH7 D12の用量効能データを示す。
【0116】
図7Aは、スポット総数に対する臨床関連病変(グレード3及び4)の割合への、ELB01132の経時的な影響/発生率(0~14日目及び0~28日目)を示す。14日目及び28日目における効能データを、それぞれ、黒いバーと斜線入りバーとして表す。このモデルの文献で報告されている抗VEGFの平均効能レベルを、黒い矢印で示す。
【0117】
図7Bは、経時的な漏出の重症度の変化に対するELB01132の影響を示す。漏出の重症度の変化は、臨床関連の個々のChNV病変のグレードスコアの経時変化(14日目から28日目)からわかる。
【0118】
図7Cは、14日目から28日目までの臨床関連病変のChNV面積の平均的な変化に対するELB01132の用量増加(0.25~2mg)の影響を示す。
【0119】
図7Dは、14日目から28日目までの数種類の病変における網膜厚さの平均的な変化に対するELB01132(0.6 mg)の影響を示す。グレーのバーはすべての病変への影響(グレード1、2、3及び4)を示し、斜線入りバーは臨床関連病変(グレード3及び4)への影響を示し、黒いバーはグレード4の病変のみを考慮した場合の影響を示す。
【0120】
図8は、IgG1フォーマットにおける抗CD160 H7抗体は、CLL患者のCD160陽性腫瘍細胞を認識する。
【0121】
7人のCLL患者から単離されたPBMCは、抗体CL1-R2(マウス抗CD160 IgG1)、IgG1フォーマットにおける本発明に係る抗CD160 H7、BY55(マウス抗CD160 IgM)(CD19/CD5/CD3/CD56パネル)で標識された。CD160標識の蛍光強度を測定するために、CD5+CD19+腫瘍細胞を分析した。CD160発現は、すべてのCLLサンプルで様々な強度で検出される。H7 IgG1抗体は、CLLサンプルの6/7の腫瘍細胞に効果的に結合する。
【0122】
図8では、auto=細胞の自己蛍光、アイソタイプ=IgG1、IgM、マウス、無関係、陰性対照、を意味する。
【0123】
図9は、IgG1フォーマットにおける抗CD160 H7抗体は、ADCCメカニズムによってCD160を発現している細胞を殺す。
【0124】
健康なドナーの血液から精製したNK細胞を、抗CD160 H7 IgG1抗体のADCC活性を測定する試験のエフェクターとして使用した。E300-CD160標的細胞(CD160を発現するトランスフェクションされたプレBヒト細胞株)を、CFSEで標識し、示唆されたエフェクター/標的比率(1/1、1/5及び1/10)でH7 IgG1抗体又はヒトIgG1アイソタイプ対照の存在下でエフェクターNK細胞でインキュベートした。殺した標的細胞の割合は、7AADでの標識とフローサイトメトリー分析により測定した。二重標識7AAD+CFSE+死細胞の割合は、表示されたドットプロットの右上の象限に示されている。
【0125】
図10は、IgG1フォーマットにおける抗CD160 H7抗体はNK細胞を活性化する。
【0126】
図10Aは、H7 IgG1抗体は、ヒトNK細胞に結合する。NK細胞は、Miltenyiキット(参照130-092-657)及びautoMACSTM(商標)(Miltenyi 参照130-092-545)を使用して、健康なドナーの血液から精製した。細胞表面Fc受容体をヒトIgG Fcフラグメント(Rockland 参照009-0103)で15分間飽和させた後、5×10個のNK細胞を0.25μgのH7 IgG1抗体又はヒトIgG1(アイソタイプ対照)とともに4℃で20分間インキュベートし、抗体結合キット(Lynx 参照PE LNK021RPE)及びCD56-APC抗体を使用してフィコエリトリンに結合させた。ヒストグラムは、CD56陽性集団で分析された、H7 IgG1(黒色)又はhIgG1対照(グレー)で得られた蛍光プロファイルを示す。
【0127】
図10Bは、H7 IgG1は、NK細胞によるインターフェロンガンマ(IFN-γ)の産生を誘発する。健康なドナーの血液から精製したNK細胞を、96ウェルプレートのウェル(ウェルあたり1×10の細胞)単独又はH7 IgG1抗体若しくはヒトIgG1アイソタイプ対照の存在下(濃度は1μg/ml又は10μg/ml)で24時間培養した。IFN-γを、培養上清でELISAによって分析した。表示結果は、3回の平均と+/-標準誤差である。
【0128】
図10Cは、H7 IgG1は、NK細胞で活性化マーカーCD69の発現を誘導する。同じ実験で、NK細胞を培養24時間後に回収し、蛍光色素APCに結合した抗CD69抗体で標識した。CD69陽性細胞の割合をフローサイトメトリーで分析した。3つの値の平均値(及び+/-標準誤差)を計算した。
【0129】
図11において、IgG4ではなくIgG1フォーマットにおける抗CD160 H7抗体がNK細胞を活性化する。
【0130】
健康なドナーの血液から精製したNK細胞を単独で、又は5μg/mlに濃縮された以下の抗体の存在下で培養した:H7 IgG1、H7 IgG4、それぞれのヒトIgG1若しくはIgG4アイソタイプ対照、又は、IgG4フォーマットのH7抗体に由来するバリアントである抗体ELB01103、ELB01104及びELB01106。抗CD16抗体(Ebioscience cat#16 0166)を陽性対照として使用する。NK細胞(ウェルあたり5×10)を培養の24時間後に収集し、蛍光色素APCに結合した抗CD69抗体で標識した。CD69陽性細胞の割合をフローサイトメトリーで分析した(3つの値の平均値と+/-標準偏差)。IgG1フォーマットにおける抗CD160 H7は、NK細胞上で活性化マーカーCD69の発現を誘導するが、IgG4フォーマットにおける同じ抗体は効果がない。H7バリアントIgG4(ELB01103、ELB01104及びELB01106)も、NK細胞に対する活性化効果を示さない。
【0131】
図12において、IgG1及びE345K/IgG1フォーマットにおける抗CD160 H7抗体由来のバリアントは、NK細胞を活性化する能力が高くなっている。
【0132】
健康なドナーの血液から精製されたNK細胞を、単独又は抗CD160 H7 IgG1抗体の存在下で、又は、ElsaLysによって0.001~10μg/mlの用量で製造されたバリアントELB02102、ELB02103、若しくはELB02104(3つのうちいずれもIgG1フォーマットで)、ELB02112、ELB02113若しくはELB02114(3つのうちいずれもE345K/IgG1フォーマットで)の存在化で96ウェルプレートのウェル(1ウェルあたり1×10細胞)で24時間培養した。10μg/mlのヒトIgG1を陰性アイソタイプ対照として使用し、抗CD16(Ebioscience cat#16-0166)を陽性アイソタイプ対照として使用した。
【0133】
図12Aは、IFN-γを培養上清中のELISAで分析した。表示結果は、3つの値の平均値と+/-標準誤差である。
【0134】
図12Bでは、NK細胞を回収し、蛍光色素APCに結合した抗CD69抗体で標識した。CD69陽性細胞の割合をフローサイトメトリーで分析した。平均値(及び+/-標準誤差)は3つの値から計算した。
【0135】
これらの結果はすべて、NK細胞の活性化に関して、IgG1フォーマットにおける3つのH7バリアント(ELB02102、ELB02103、ELB02104)が元のH7 IgG1抗体よりもはるかに強力であり、EC50値が2logから3log改善されていることを示している。
【0136】
E345K/IgG1フォーマットにおける3つのH7バリアントは、IFN-γ産生を誘導する能力がさらに向上し、EC50値で2logのさらなる改善があることを示している。(元のH4 IgG1抗体と比較して4log)。
【0137】
図13において、IgG1及びE345K/IgG1フォーマットにおける抗CD160 H7抗体由来のバリアントは、NK(図13A)細胞及びCD8+T(図13B)細胞を効率的に標識する。
【0138】
2人の健康なドナーからのPBMC(末梢血単核細胞)を、抗CD45、CD3、CD4、CD8及びCD19抗体及び示された抗CD160抗体(PBMC5×10個について0.25μg)で免疫標識した後、フローサイトメトリーで分析した。無関係なヒトIgG1(hIgG1)を陰性対照として使用した。斜線のないバーはドナー1の結果を、ハッチングされたバーはドナー2の結果を示す。
【0139】
図14は、CHO-CD160 TM(膜貫通)、CHO-CD160 GPI(グリコシルホスファチジルイノシトール)及びCL1R2のCHO、ELB02101(H7 IgG1)候補及びバリアントELB02104、ELB02114及びELB01103の結合を示す。
【0140】
ヒト化ELB02101(H7 IgG1)及びそのELB02104、ELB02114及びELB01103は、CHO-S細胞によって組換えられ発現されたヒトCD160-TMに予想に反して結合するが、親CL1R2 mAbは結合しない。黒いバーはCHO、ハッチングされたバーはCHO-CD160-GPI(グリコシルホスファチジルイノシトール)、チェッカーボードバーはCHO-CD160TM(膜貫通)の結果を示す。
【0141】
図15は、IgG1フォーマット(ELB02104)におけるH7 A09バリアントによるHVEM-CD160相互作用の遮断によるT CD4の再活性化を示す。
【0142】
健康なドナーの血液から精製したT CD4リンパ球細胞を、抗CD160 mAb(ELB02104又は適切な対照アイソタイプ10μg/ml及びプレートにコーティングした抗CD3(クローンUTCH1)、mAb+/-抗CD28(クローンCD28.2)mAb+/-HVEMタンパク質(10334-H08H、Sino bio))の存在下、96ウェルプレート(1ウェルあたり1×10細胞)で16時間培養した。T CD4リンパ球を収集し、生存マーカー(ゾンビNIR、ナイーブ/メモリー細胞を標的とする蛍光色素BB515に結合した抗CD45RA抗体、CD160発現細胞を標的とする蛍光色素Alexa fluor 647に結合した抗CD160(クローンBY55)抗体細胞、活性化細胞を標的とする蛍光色素PEに結合した抗CD69抗体)で標識する。ゾンビNIR-/CD45RAhigh+/CD160+/CD69+陽性細胞の割合をフローサイトメトリーで分析した。平均値(+/-標準誤差)は2つの値から計算した。ELB02104は、HVEM-CD160相互作用を遮断し、T CD4 CD45RAHigh CD160+細胞によって発現される活性化マーカーであるCD69のアップレギュレーションによって示されるように、HVEMタンパク質によって誘導されるTCD4細胞の阻害を取り除く。図15では、白いバーはヒトIgG1対照アイソタイプ、黒いバーはELB02104の結果を示す。
【実施例
【0143】
[実施例1:本発明に係る抗体の結合の研究]
実験に応じて様々なタイプの光ファイバーバイオセンサーを実装したOctet K2機器(Pall ForteBio)を使用し、バイオレイヤー干渉法の原理を利用して、マウス抗hCD160 CL1-R2若しくはその誘導体(キメラIgG1及びキメラIgG4)又は本発明に係る結合物(H7 IgG1、H7 IgG4)の、表1に記載の親和性の決定及び比較を実施した。本発明に係る抗体がそれらの標的に結合する能力は、ヒトCD160タンパク質/抗体相互作用を測定することにより研究された。
【0144】
このために、高純度の単量体抗ヒトCD160抗体(プロテインAで精製し、その後ゲルろ過により精製した)を当業者に周知の技術により調製した。6つのヒスチジン残基のC末端タグを有する組換えヒトCD160タンパク質の可溶型に対応するタンパク質領域(R&D SYSTEMSから)は、その市販の製剤に使用されている。
【0145】
試験する様々な抗CD160候補、すなわち本発明に係る結合物の親和性を、キメラ抗体及びCL1-R2の親和性と比較した。
【0146】
すべての実験は、Fortebioが推奨するランニングバッファー(0.1%(p/v)のウシ血清アルブミン(BSA)及び0.02%(v/v)のTween-20を含むPBS)で30°Cで行った。このバッファーは、様々なリガンドや検体の希釈にも使用した。96ウェルマイクロプレート(cat#738 0026、Dutscher)に入れたサンプルを、毎分1000回転で揺り動かした。
【0147】
ビオチン化された6つのヒスチジン残基タグを含むCD160タンパク質は、ストレプトアビジンバイオセンサーのリガンドとして使用され、本発明に係る結合物、抗hCD160(IgG1及びIgG4フォーマット)及び抗CD160及びキメラ結合物は分析物として使用される。
【0148】
このhCD160-hisタンパク質は、サプライヤーの推奨に従ってEZ-LinkスルホNHS-LC-ビオチン法(Thermo Fisher Scientific)を使用してビオチン化され、その均一性、凝集体の不在、及び抗CD160s及び非ビオチン化タンパク質によって認識される能力について検証された。様々なタンパク質濃度での固定化試験により、10nMの濃度が最適であることが示された。したがって、ビオチン化CD160タンパク質は、ストレプトアビジンバイオセンサー上で10分間0.3μg/ml(すなわち10nM)の濃度で固定化された。典型的な固定化では、2+/-0.3nmのシグナルという結果となる。
【0149】
6種の濃度の抗体(3.125、6.25、12.5、25、50及び100nM)を添加することにより、各精製抗体(分子量150kDa)の動力学定数(KD、kon、koff、またKdisともいう)を決定した。測定の間に、バイオセンサーの表面を、10mMグリシンにpH2で5秒間、続いてランニングバッファーに5秒間、3サイクルでさらすことにより再生した。結合及び解離フェーズは300秒間測定された。すべての測定値は、ランニングバッファーのみに曝したリガンドにより参照ウェルを差し引くことにより、基本的なずれを補正された。
【0150】
各抗体の解離定数と結合(kon)及び解離(kdis)速度定数を、1:1相互作用モデルを適用し、ForteBio 9.0のデータ解析ソフトウェアでの曲線(フィット)(Rmaxがセンサーに束縛されている)の数学的モデルを全体的に使用して計算した。ソフトウェアを使用して確実にモデル化できなかった曲線(ほとんどの場合、全R2<0.925)(一般に異種モード(a heterogeneous mode)による結合によって引き起こされる)は、解析から除外した。
【0151】
各抗CD160について、濃度50nMにおける抗CD160抗体について、解離定数(KD)、結合(kon)及び解離(kdis)速度定数、及び結合応答を比較し、表1に示す。
【0152】
表1は、マウスCL1-R2抗体、CL1-R2から発生したキメラ抗体(ヒトIgG1(chIgG1)又はIgG4(chIgG4)フォーマット)、及び本発明に係るH7抗体(ヒトIgG1(H7 IgG1)又はIgG4(H7 IgG4)フォーマット)に対する組換えヒトCD160/抗hCD160相互作用の親和性についてのバイオレイヤー干渉法(BLI)による測定結果を示す。
【0153】
【表1】
【0154】
この親和性測定によれば、予想に反して、IgG1及びIgG4フォーマットのH7が、マウスCL1-R2及びそのそれぞれのキメラヒトIgG1及びIgG4フォーマットよりも、ヒトCD160に対してはるかに大きな親和性を有することを明確に示している。親CL1-R2からの抗CD160 KDの増加(KD増加、表1、8列目を参照)は、ヒトIgG1及びIgG4フォーマットのH7でそれぞれ約3.75及び3.34である。同一濃度50nMの抗体について、H7 IgG4及びCL1-R2と比較して、H7 IgG1の応答がよりよく、キメラフォーマットの2つの抗CD160の応答がより悪かった(表1、9列目)。
【0155】
また、ヒトCD160を過剰発現している組換えE300-hCD160細胞のフローサイトメトリー(FACS)法と、ヒトCD160配列のペプチドスキャンにより同定されたCD160タンパク質及び抗hCD160抗体の結合に必要十分なタンパク質配列のペプチドにおけるELISA法とによって、H7が標的によく結合することも確認された。
【0156】
H7候補は、残りの実験、特に親和性成熟され、標的とされる様々な臨床的適応に適した様々なフォーマットのIgG又はIgGフラグメントに誘導されるために選択された候補である。
【0157】
[実施例2:H7抗体のバリアント(細菌のペリプラズム抽出物で生成されたファージ及び可溶性Fabの形態のH7バリアントのパネルのELISA法、FACS法及びSPR法による結合プロファイル)]
ヒト化抗CD160候補H7に由来するバリアントを得るために、H7抗体の重鎖及び軽鎖可変ドメイン(それぞれVH及びVL)の特定の相補性決定領域(CDR)における残基の部位特異的変異導入を、Fabフォーマットのバリアントのファージディスプレイにより、タンパク質及びhCD160を過剰発現するCHO細胞での選択と組み合わせた。
【0158】
このようにして、ファージクローンが生成され、未精製の可溶性Fabを含む細菌のペリプラズム抽出物を生成することも可能となる。個々のクローンは、ELISA法によるヒトCD160タンパク質及びFACS法によるヒトCD160発現細胞への結合する能力で選択された。これは、i)繊維状ファージの表面で発現される遺伝子III-Fab融合タンパク質の形態で又はii)未精製の可溶性Fabのフラグメントを含むペリプラズム抽出物の形態であった。ファージELISA及びファージFACSと呼ばれる実験の結果を表2に示す。個々のクローン(可溶性Fabのフラグメントを含むペリプラズム抽出物の形で)も、その解離速度定数(kdis)に従って分類した。
【0159】
6種のH7バリアントについて得られたデータの要約を、未精製の可溶性Fabのフラグメントを含むペリプラズム抽出物の形(PE ELISA及びPE FACS)で、表2に示す。
【0160】
実用的な観点から、抗M13 HRPコンジュゲート抗体を使用して、ファージのヒトCD160への結合が検出された。CD160を発現している細胞へのファージの結合は、ストレプトアビジン-PEに結合されたマウス抗M13ビオチン抗体を使用して検出された。
【0161】
ファージELISAで、ほとんどのファージは、450 nmにおける高い光学密度(OD)値(OD 450:1.0-6.0)で、且つ、83%の結合成功度(450nmでのOD≧10のバックグラウンドノイズの平均)でヒトCD160タンパク質に結合することができた。H7 WT Fabファージの場合、得られたOD 450値が0.06-0.07と低いことに注意することが重要である。
【0162】
ファージFACSの評価より、成功率91%の同様の結果が得られた(CD160を発現する細胞への結合が5%を超え、バージンMFI値の3倍、及び、CHO-S WT細胞へ結合しなかったクローンはポジティブとはみなされなかった)。ファージELISAの場合と同様に、Fab H7 WTファージFACSで得られた結合値は、他のクローンと比較してはるかに低かった。
【0163】
可溶性Fabとして選択されたクローンの結合(CD160タンパク質及びCHO-CD160細胞での選択のラウンドから)も、ペリプラズム抽出物(P.E)を使用したELISA及びFACSによって調べられた。ELISAを用いたヒトCD160タンパク質への可溶性Fabの結合は、抗マウスHRPコンジュゲート抗体に結合された抗c-myc抗体を使用して検出された。ヒトCD160を過剰発現しているCHO細胞への可溶性Fabの結合は、ヤギ抗マウスAPCコンジュゲート抗体に結合された抗c-myc抗体を使用して検出された。ファージの表面において又はペリプラズム抽出物において発現したFabを使用したELISA及びFACS実験の結果によって、親和性成熟H7クローンのそれぞれのヒトCD160への結合能力が確認された。
【0164】
表2は、細菌のペリプラズム抽出物で産生されるファージ及び可溶性Fabの形態の親和性成熟重鎖H7バリアントの分類、クローン同定、並びに、ELISA、FACS及びSPRによる結合プロファイルを示す。
【0165】
【表2】
【0166】
CLC Main Workbenchソフトウェアを使用して、異なるラウンドの選択(FJ1516MP02及びFJ1516MP03)に由来する様々なクローンのアミノ酸配列を抽出した。変異体VK及びVH配列は、参照H7 VH及びVK配列の観点から別々に整列された。選択されたすべてのクローンには、H7 WTのVK配列に対応するVK配列が含まれている。156の有効な配列から始まる重鎖の場合、6つはH7 WTのVH配列にも対応していた。他のすべてのVH配列は、WTと比較して(ライブラリーで設計された)2から6の変異を含み、6つの異なるクラス(VHバリアントの配列1から6)にグループ化された(表2の第2列目、VHファミリーを参照)。
【0167】
残りの特性評価実験では、ペリプラズム抽出物(P.E)におけるファージ及び可溶性Fabの産生のために、それぞれ異なるVHバリアントを代表するクローンを含むパネルを選択した。選択された代表のリストは表2の1列目に示し、対応するVHファミリーは2列目に示す。クラス5のクローン代表はD12、クラス1のクローン代表はF04、クラス6のクローン代表はA09である。抗CD160 H7のバリアントの様々なクラス1~6を表すクローンのVHアミノ酸配列を表2に示す。
【0168】
これらの6つのクラスのH7バリアントのVH領域のタンパク質配列のアラインメントは、バリアント残基の位置及び導入されたバリアントの性質に関して、様々なクラスのバリアント間で共通の定数を示した。
【0169】
<細菌のペリプラズム抽出物で産生された可溶性Fabを用いたH7の6つのバリアントFabのヒトCD160との相互作用のSPR測定>
H7バリアントの結合能力を、表面プラズモン共鳴(SPR)によって試験した。このために、Biacore 3000(GE Healthcare)を使用した。pH 4.5の酢酸緩衝液中のヒトCD160(R&D Systems)50μg/mlを、CM5チップ(GE Healthcare)に1250-2000レゾナンスユニット(RU)で固定した。固定したヒトCD160の完全性は、抗huCD160 H7 IgG1抗体を使用して確認した。動態測定のために、2倍ずつ希釈(0.15μM-10μM)して得られた段階的濃度のヒトECD160を、25℃、流速30μl/minのBiacoreP20緩衝液でもって、PBSに2回注入した。
【0170】
再生条件を試験し、10mM NaOH/1M NaClをサンプル注入間の再生のために注入した。クローンのヒトCD160への結合を分析するために、可溶性Fabを含むペリプラズム抽出物をBIACORE P20の緩衝液(10 mM HEPES、150 mM NaCl、3 mM EDTA、0.005%Tween-20)中で、結合のために120秒間30μl/minの速度で、1:5に希釈した。解離は300秒間測定された。
【0171】
表3は、親和性成熟H7バリアントの様々なクラスを代表する可溶性Fabを含むペリプラズム抽出物の結合の絶対応答を示す。
【0172】
【表3】
【0173】
これらの各バリアントの結合の最大絶対応答(抗体の注入後120秒での任意の応答単位の測定値として表される)は、CD160タンパク質でコーティングされた表面で評価した。これらのデータを表3に示す。
【0174】
次に、各バリアントの結合の、対照として産生されたH7 Fab又はスクリーニング中にファージ上で単離されたH7 Fabの結合に対する比を計算することができた(表3、列4及び5を参照)。
【0175】
表3は、可溶性FabがELISA及びFACSによって前に観察された結果と一致してヒトCD160に結合できることを示している。
【0176】
クローンF04、D12及びA09(それぞれクラス1、5、及び6のバリアントVH)は、最大の結合値(RU)及び高いRU比(列4、バリアントRU/WT RU表3を参照)、すなわち、それぞれ8.3、7.2倍及び2.7倍を示した。
【0177】
[実施例3:腫瘍学及び眼科学の適応症のためのバリアントについての様々な単一特異性抗体フォーマットの設計及び生成]
クローンFJ1516MP02F04又はF04及びFJ1516MP02D12又はD12は、存在するバリアントによりH7抗体よりも高い親和性でCD160に結合できるかどうかを調べるために、IgGでフォーマットした。FJ1516MP02A09又はA09バリアントは、他とは大きく異なる結合/解離プロファイルも持つ唯一の代表であり、この点で、IgGフォーマットでもさらに調べる。
【0178】
3.1)H7及びそのバリアントを使用した眼科学で試験される抗CD160コンストラクトのタンパク質配列
眼科学の場合、F04及びD12バリアントは、抗体の全身半減期を短縮するバリアントを産生することにより、又は、Fc領域のない抗体フラグメントのフォーマットを提案することにより、硝子体内半減期を減少させすぎることなく、治療用抗CD160抗体又はフラグメントの全身半減期を短縮するために、Fc受容体(FcR)及び/若しくはその他のものと相互作用しないか又は最小限の相互作用を行うように選択されたフォーマット(たとえば、IgG4又はIgG1 N297Q)で生成された。
<H7候補とそのバリアントをIgG4又はIgG1 N297Q+/-FcRnヌル突然変異でフォーマットすることによる全身半減期並びにFcR及びFcRnの関与の低減>
眼科学の場合、治療用抗CD160抗体の全身半減期を短縮する最初の可能性は、Fc受容体(FcR)と相互作用しないように又は最小限で相互作用するように選択されたIgG4 S228P-R409K又はIgG1 N297Q構造上の可変領域をクローニングすることにより、F04及びD12バリアントをフォーマットすることである。このバックボーンでは、MabのFc領域にS228P/R409K/H310A/H435Q又はI253Aの変異体を挿入して、ヒト新生児Fc受容体(FcRn及び「FcRnヌル変異体」(Olafsen、2012))との相互作用を減らすことも可能である。これは、表4で示すような、重鎖と軽鎖の様々な組み合わせによって実現できる。
【0179】
表4は、結合物の名前並びにVH及びVL配列を示す。
【0180】
【表4】
【0181】
配列番号57は、配列番号14によって定義される可変領域と、配列番号22によって定義される定常領域との融合によって生じる。
【0182】
<H7候補とそのバリアントを抗体フラグメントでフォーマットすることによる全身半減期並びにFcR及びFcRnsの関与の低減>
全身半減期を低減し、硝子体(IVT)に注射された治療用抗体のFcRとFcRnsの関与を減らす他の方法は、H7抗体とそのバリアントを抗体フラグメント(Fab、Fab’2など)でフォーマットすることである。したがって、H7とそのバリアントは、対応するフォーマット(表4を参照)を生成するために、H7の軽鎖(配列番号57)を次の重鎖の1つと組み合わせることにより、Fabフォーマット(遺伝子操作によって合成され、細菌又はCHO細胞で産生される以下のFab定常鎖を含む)でフォーマットされる。
【0183】
-Fab CH1 IgG1 ELB01121(配列番号36)
-Fab CH1 IgG1 D12 ELB01122(配列番号37)
Fab’2フォーマットは、D12バリアント(配列番号38)(組換え又は酵素切断(enzymatic cleavage)(Ides Fabricator、GeNovis))に対して、1つではなく2つのジスルフィド架橋を使用して、又はロイシンジッパーを使用して若しくは使用せずに生成される。
【0184】
リンカータンパク質配列(配列番号39)により、重鎖の2つの配列が第1のFabのC末端と第2のFabのN末端との間で結合する、FabリンカーFabが生成された。これは、配列番号40により定義されるFab-リンカー-Fab分子ELB01131及び配列番号41により定義されるELB01132の重鎖を与える。
【0185】
4価の重鎖としてIgG1 N297Q H310A-H435Q D12(配列番号42;ELB012001)を使用して、4つの抗CD160 D12 Fabを有する4価フォーマットを作成した。
【0186】
これらの重鎖の配列はすべて成熟重鎖の配列であり、配列番号18又は19などのシグナルペプチドの配列をN末端に追加する必要がある。
【0187】
3.2)H7及びそのバリアントを使用して腫瘍学で試験される抗CD160コンストラクトのタンパク質配列
腫瘍学で比較された様々なフォーマットは、H7及びIgG1フォーマットの3つのバリアントD12、F04、A09、そしてGenmabのHexabodyフォーマット及びD12についてのBiteフォーマットである。
【0188】
ヘキサボディフォーマット(Diebolderら、2014; de Jongら、2016)は、CD160陽性腫瘍細胞のCDC及びADCCによって、補体を活性化し、抗体が溶解を誘導する能力を向上させるために、抗CD160の細胞毒性を最適化するために生成された。Wangら(Wangら、2016)は、エフェクター機能(CDC及びADCC)を保持しながら同時に同等の薬物動態及び医薬品開発可能性を保持する単量体ヘキサボディの生産を可能にする変異E345K(配列番号43)又はE430G(配列番号44)を同定した。このように変異したIgG1は、標的細胞によって発現された抗原への抗体の結合後に六量体化し、この六量体化は抗体のエフェクター機能(CDC及びADCC)を改善する。前臨床ツールとして、IgG2a/マウスのκフォーマットのD12及びF04バリアントの分子構築も実施された。
【0189】
表5は、結合物及びVH及びVL配列の名前とElsaLysコード(ELB)を示す。
【0190】
【表5】
【0191】
さらに、BITEフォーマットのD12バリアントのタンパク質配列ELB02122は、配列番号52で規定される。
【0192】
[実施例4:IgG4、IgG1及びIgG1 E345KフォーマットのH7バリアントの生物物理学的特性評価]
4.1)抗CD160の熱安定性に対するH7バリアントの変異の影響の評価
タンパク質の安定性の研究では、熱安定性を評価する。熱安定性は、i)その一次配列に由来する3次元構造にリンクしたタンパク質の固有の安定性(凝集体を形成する性質)、並びにii)サンプルの保存及び製剤条件(pH、塩、及びサンプルの成分)によるものである。Sypro Orange(Thermofischer Scientific、S 6650、バッチ1608495)のもとの形態又は変性形態のタンパク質の疎水性領域に結合する能力に基づく方法によって、様々なIgGフォーマットにおける抗hCD160 H7候補のバリアントの熱安定性が評価された。
【0193】
サンプルは、96ウェルPCRプレートにおいて4連で、1 x PBS、5 x Sypro Orangeの最終濃度0.1mg/ml、最終容量30μlで試験する。Sypro Orangeのストック溶液(100%DMSOで5000 xストック)は、1x PBSで10xの最終濃度で調製する。次に、AppliedBiosystems(登録商標)7500 Real-Time PCRシステムデバイスで、プレートを22~99℃の温度勾配(約1時間30分)にかける。データ解析(生データと各抗体ドメインのTmを示す一次微分)は、ソフトウェアThermal Shift(Thermofischer Scientific)を使用して実行した。結果を表6に示す。
【0194】
表6は、H4及びIgG4、IgG1、IgG1 E345KフォーマットのH7バリアントのTm結果を示す。
【0195】
【表6】
【0196】
表6の結果の分析から、IgG1フォーマット(H7 IgG1 WT)のH7の平均Tmは、IgG4フォーマット(H7 IgG4 WT)のH7と比較して3.5°C高いことがわかる。H7バリアントに関して、抗体のTmはH7に非常に近い。
【0197】
4.2)組換えヒトCD160、H7、及びその異なるバリアントの異なるIgGフォーマットにおける親和性を比較するためのBLI測定
親和性は、ビオチン化CD160タンパク質がストレプトアビジンバイオセンサー上で10 nMで捕捉され、分析物が抗CD160である設計で、実施例2に記載のように測定された。試験した抗CD160の濃度は3.13、6.25、12.5、25、50及び100nMであり、グリシン濃度(pH2)は各再生について10mMであった。
【0198】
抗CD160 H7抗体及びそのバリアントについての、CD160タンパク質に対しての、測定されたセンサーグラムと親和性を表7に示す。
【0199】
表7は、IgG4 S228P-R409Qフォーマットでの抗CD160 H7抗体及びそのD12バリアントの、CD160タンパク質に対する親和性の測定結果を示す。
【0200】
【表7】
【0201】
表8は、IgG4 S228P-R409Q-H310A-H435Qフォーマットの抗CD160 H7抗体及びそのバリアントの、CD160タンパク質に対する親和性の測定結果を示す。
【0202】
【表8】
【0203】
表9は、IgG1フォーマットでの抗CD160 H7抗体及びそのバリアントの、CD160タンパク質に対する親和性の測定結果を示す。
【0204】
【表9】
【0205】
表10は、IgG1 E345Kフォーマットでの抗CD160 H7抗体及びそのバリアントの、CD160タンパク質に対する親和性の測定結果を示す。
【0206】
【表10】
【0207】
バリアントやアイソタイプの性質(IgG4、IgG4 H310A-H435Q、IgG1及びIgG1 E345K)に関係なく、バリアントは常に、対応するH7と比較して、組換えCD160に対する親和性が少なくとも2倍向上している。バイオレイヤーは、より大きなkon及び親H7よりも2倍低い解離定数を反映して、2倍の厚さである。
【0208】
H7バリアントは、バリアントやアイソタイプの性質(IgG4、IgG4 H310A-H435Q、IgG1及びIgG1 E345K)に関係なく、H7及びその異なるバリアントの組換えヒトCD160に対する親和性の比較のための、H7.4.3-ビアコア(Biacore)(SPR)測定結果よりも速度特性が優れている。これは異なるIgGフォーマットによる。
【0209】
H7及びその異なるバリアントの、組換えヒトCD160に対する親和性を比較するために、実施例2に記載されているものに近い設計のビアコア(SPR)測定も実施した。
【0210】
表11は、ビアコア(SPR)及びバイオレイヤー干渉法(BLI)によって測定された、H7抗体と異なるフォーマットにおけるそのバリアントの組換えヒトCD160/抗hCD160相互作用の親和性を示す。
【0211】
【表11】
【0212】
表11によれば、第2の方法(SPR)による抗CD160/CD160相互作用の測定で得られた結果は、BLIによる同じ抗体についての親和性の測定結果と同様に、H7バリアントで得られた増加値が、アイソタイプの性質(IgG4、IgG4 H310A-H435Q、IgG1及びIgG1 E345K)に拘わらず、対応するH7と比較して、組換えCD160に対する親和性がいずれも少なくとも2倍向上していることを示している。そして、対応する親H7よりもと比較してKonの増大を反映してRmaxが2倍高くなっており、解離定数が1/2に低くなっている。
【0213】
[実施例5:CHO CD160細胞及びトランスフェクションされていないCHO細胞及びNK細胞株YT2C2 CD160細胞上のIgG4及びIgG1フォーマット及びIgG1 E345Kフォーマットにおける抗hCD160 H7及びそのH7バリアントの結合]
抗CD160 H7抗体並びにIgG4及びIgG1フォーマット及びIgG1 E345Kフォーマットにおけるそのバリアント(D12及びA09)の結合能力は、蛍光強度中央値(the median fluorescence index)(MFI)を測定することにより、非トランスフェクト(トランスフェクションされていない)CHO-S細胞と比較して、組換えCHO-S-hCD160株(クローン2G10)で発現される表面CD160の標識中に評価された(図1を参照)。このために、5×10 2G10(CHO-S-CD160)及び非トランスフェクトCHO-S細胞を、これらの各抗体2μg及び適切な対照アイソタイプで標識した。図1によると、試験されたすべての抗CD160(アイソタイプ、IgGフォーマット、又はバリアントに関係なく)は、CHO-S細胞によって組換え的に発現されたヒトCD160を特異的に認識する。
【0214】
図1Aによれば、IgG1バリアントはH7 IgG1よりもCHO-hCD160トランスフェクタントに効率よく結合する(H7 IgG1と比較して蛍光中央値が3倍増加する)。これは、IgG1又はIgG E345Kフォーマットの場合に当てはまる。バリアントのFcにE345Kバリアントが存在しても、これらの細胞への結合は改善されない。
【0215】
図1Bによれば、IgG4バリアントはH7よりもCHO hCD160トランスフェクタントに効率よく結合し(H7 IgG4 ELB01101又はH7 IgG4 H310A-H435Q ELB01102と比較して、蛍光中央値が2倍増加する)、これはH310A-H435Qバリアントが存在していても当てはまる。実際、ELB01101とELB01102との間で結合を比較するとわかるように、抗CD160のFcsにH310A-H435Qバリアントが存在しても、標的への結合を妨げない。
【0216】
NK細胞株(YT2C2)のクローンに自然に発現するCD160表面の標識中に、抗CD160 H7抗体とIgG4、Fab、FabリンカーFabフォーマットのH7 D12バリアントの結合能力を、標識された細胞の割合(=結合の割合)を測定することにより評価した(図1Cを参照)。このために、2×10のYT2C2細胞を、抗体の濃度を増加させて(50nMから0.39nMまで)適切なコントロールアイソタイプで標識した。これらの結果は、GraphPad Prismソフトウェアを使用して解析し、非線形回帰曲線(Log(作動薬)に対する応答、3パラメータ方程式)を生成し、有効濃度の中央値(EC50)を計算した。図1Cによれば、IgG4バリアントELB01103及びELB01104は、H7 IgG4 ELB01101よりも効率よくYT2C2細胞に結合する(その結果、EC50はH7 IgG4と比較して10倍増加する)。これは、Fab-リンカー-FabフォーマットELB01132にも当てはまる。対照的に、FabフォーマットELB01122は、H7 IgG4 ELB01101と比較して、YT2C2細胞と効率よく結合ない(その結果、EC50は、H7 IgG4と比較して2倍少ない)。これは、Fabフォーマットの一価性によるものである。
【0217】
[実施例6:HUVEC血管形成の阻害に対する本発明に係る抗CD160抗体の効果及びHUVEC上のCD160発現の誘導の特定]
Cell Player GFP-AngioKitアッセイ(Essen Biosciences)で、VEGF又はFGFによって誘発される血管形成に対する効果について、10個の抗体を評価した。このサンプルセットは、Avastin抗VEGF抗体とLucentis抗体フラグメントで構成されている。レンチウイルス発現システムを使用して蛍光タンパク質(Green Fluorescent Protein又はGFP)で事前標識された凍結ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を解凍し、6枚の96ウェルアッセイプレートで2日間、ヒト皮膚線維芽細胞と共培養した。抗体及び参照物質(VEGF、FGF-2、対照培地)を、様々な濃度で様々なウェルに加え、そのアッセイプレートをIncuCyte生細胞イメージングシステムに入れた。蛍光及び位相差(10×)画像を10日間12時間ごとに撮影し、管の長さと分岐点の数を解析しました。培養培地(必要に応じて抗体とともに)及びアッセイの上澄みを2~3日ごとに交換した。
【0218】
[実施例7:ラットの角膜血管新生モデルにおけるAflibercept(Eylea(登録商標))と比較したIgG4フォーマットにおける抗CD160 H7候補(ELB01101)の結膜下注射の有効性の評価]
角膜血管新生モデルをラットで開発した。このモデルは、特に、角膜内の新生血管の出現をモニターする容易な観察を可能にし、これにより、本発明に係る抗体を含む、抗血管新生特性を有する分子の評価が可能となる。
【0219】
抗体バッチは、硝子体内及び結膜下注射用のバッチを調製するプロセスに従って生成、製造、精製、及び特定した。
【0220】
6週齢のオスのルイスラット(Lewis rats)のグループを使用した。
【0221】
<ラットの角膜血管新生の誘導>
:麻酔後、各ラットの片目に手術用顕微鏡下での外科的介入を行った。このため、70°Cでエタノールを塗布して角膜を完全に上皮除去し、角膜輪部を切開すると、D4の角膜新血管が出現する。
【0222】
右目のみを使用する。この動物は、右大腿筋にケタミン(Imalgene 500)をラットあたり100μl、及びキシラジン(Rompun 2%)をラットあたり100μl注射することにより麻酔される。一滴のテトラカインが右目に点滴される。操作は手術用顕微鏡下で行われる。血管新生は、70%アルコールに浸した「マイクロスポンジ」を角膜の表面に作用させることにより、角膜の上皮を破壊することによって誘導する。並行して、マイクロハサミで角膜周囲の結膜の厚さ約1.5mmを取り除く。抗生物質の軟膏(フシジン)を目に塗布する。縫合(5-0の絹糸)後5日間、瞳を閉じる。4日後、抜糸して瞳を開く。角膜の新血管の変化を、麻酔後のD4、D8、及びD12の手術用顕微鏡下で調べる。
【0223】
<処置>
グループあたり10匹のラット(IgG4対照アイソタイプの3匹を除く)を次のように使用する。
【0224】
:上記のように、片目に手術を行う。
【0225】
:写真を撮り、これらの動物をそれぞれ10匹のラットからなる8つのグループに分け、手術を行った目の治療を行う。
【0226】
D4及びD8に29 1/2Gの針(Myjector)を装着したシリンジを使用して、動物に結膜下注射を行う。
【0227】
-グループ1:PBS50μlの結膜下注射(陰性対照)
-グループ2:50μlで、Aflibercept(登録商標)(Eylea)250μgの結膜下注射
-グループ3:50μlで、IgG4対照アイソタイプ500μlの結膜下注射
-グループ4:50μlで、本発明に係るH7 IgG4抗体500μgの結膜下注射
D8及びD12について:角膜の血管新生に対する治療の効果を評価するために、手術を行った目の写真を手術用顕微鏡で観察した後に撮影する。血清及び硝子体液のサンプルを、D+12の解剖時に採取する。
【0228】
ラットの目の写真(.JPEG)を、ソフトウェア(Calopix、TRIBVN)を使用して解析した。解析は、グループや写真撮影のタイミングについて知らない状態で、盲検(ブラインド)で行った。血管新生の評価は、定量化ソフトウェアを使用して決定する。血管新生は、解析された目の全表面積(すなわち、上皮除去された領域)に対する血管の表面積で評価した。図2に、全表面積に対する血管新生の割合(%)を示す。
【0229】
<結果>
手術が行われた目の写真は、D0と2つの異なる日:D7とD12に撮影された。撮影された写真は、D12までの、角膜血管新生の変化、特にアイソタイプ対照における血管密度と血管の長さの発達を示している。
【0230】
図2に示される結果は、陰生対照(この場合はIgG4対照アイソタイプ)を注射された動物と比較した、本発明に係るH7モノクローナル抗体で処置された動物の血管密度の減少を示す。
【0231】
H7 IgG4(ELB01101)の投与は、ラットCD160に対して交差反応性が弱いにも拘わらず(データは示さず)、VEGFに対する高親和性可溶性受容体である融合タンパク質(Aflibercept(登録商標))(加齢黄斑変性(ARMD)の治療に使用される抗血管新生薬)250μgの用量に匹敵して、このラットモデルの角膜血管新生を減少させることもわかる。これは、IgG1 N297QフォーマットのH7抗体でも得られた。
【0232】
したがって、本発明に係るIgG4及びIgG1 N297QフォーマットのH7抗体は、抗血管新生活性を有する。
【0233】
[実施例8:硝子体内及び静脈内投与後のウサギにおける抗hCD160 ELB候補の様々なフォーマットの全身及び眼の薬物動態(PK)プロファイルの、親CL1-R2、ベバシズマブ及びラニビズマブとの比較]
本実施例の目的は、抗hCD160 ELB候補(ELB011候補を含む)の様々なフォーマットの全身及び眼の薬物動態(PK)プロファイルを、マウスIgG1抗CD160 CL1-R2及びベバシズマブのプロファイルと比較することである。眼での滞在時間が長く、全身半減期が最も短い最適化された抗CD160候補をスクリーニングするために、54匹の有色ウサギ(HY79b株)を使用したPK実験を行った。ウサギに硝子体内(IVT)又は静脈内(IV)注射で同量(0.5mg)の試験物質を投与し、ELB011リード(並びにELB021プログラムからのELB02104及びELB02114抗CD160 mAbs)に対するLC-MS/MSにより、又はCL1-R2及びIgG及びFabコンパレーター用の市販のELISAを使用して(ここではそれぞれ市販の製剤のベバシズマブ(Avastin)及びラニビズマブ(Lucentis)を使用)、血清抗体濃度を決定した。これにより、各候補の静脈内ボーラス投与後の薬物動態パラメータをモデル化することができ、したがって各薬物の出力動態パラメータを計算することができた。
【0234】
<硝子体内注射の方法(試験されたグループ及びPK血液サンプル)>
様々な抗CD160の薬物動態(PK)及び硝子体内(IVT)注射による500μgの1回の投与後のそれらの対照の実験は、ニュージーランド白ウサギを用いて行う。
【0235】
健康なウサギ(動物における細菌及びウイルスの状態が既知、性別同じ)(KBL Charles River)(体重2750-3000g、治療開始時の年齢:14-18週間)で実験を行った。ウサギは、ランダム化の1週間前と実験中の4連続週間、コンベンショナルケアユニットのケージに入れられた(1つのケージに1~2匹入れられて飼育された)。実験プロトコルは、開始前にプロバイダーの倫理委員会に従った。
【0236】
実験の設計を、表12に示す。この実験には、エンドトキシンレベルが0.5EU/mlであり、濃度5mg/mlの6種類の抗CD160フォーマット(表12を参照)並びに2つのコントロール(ベバシズマブ(Avastin)及びラニビズマブ(Lucentis))を有する8グループ(1グループあたり3匹のウサギ)が含まれる。
【0237】
薬物の投与(片方の目あたり50μl)は、全身麻酔下で、各薬物250μgを最終容量50μlで両側に注射して行った。
【0238】
ウサギは、臨床的兆候及び体重を週ごとにモニターし、眼刺激の巨視的兆候(最小限であっても)、並びに、視神経頭、(網膜及び脈絡膜の)血管網、及びRPEとブルッフの色素沈着膜/着色の特徴の完全性について眼の後部を広範に調べる(スリットランプ及び間接検眼鏡を使用)ための眼の耐性についての検査を行った。
【0239】
動物の死後、両眼は摘出され、すぐに-80℃で凍結した。分析の前に、凍結した眼は、硝子体、房水、網膜/脈絡膜の3つの部分に分けられた。房水サンプルと硝子体サンプル(均質化及び遠心分離後)の体積を測定する。凍結した網膜/脈絡膜の重量を測定した。
【0240】
ウサギの耳の中心動脈からの約0.5mlの総血液サンプルを、投与前(投与前T0)、並びに、投与後2時間、6時間、12時間、24時間、48時間(D2)、96時間(D4)、168時間(D7)及び336時間(D14)のものについて、抗凝固剤なしのチューブに採取した。分析するまで、血清を凍結保存した。血清サンプルを分析して、抗CD160濃度を決定した。
【0241】
<静脈内注射の方法(試験されたグループ及びPK血液サンプル)>
実験の設計を表12に示す。この実験には、エンドトキシンレベルが0.5EU/mlであり、濃度5mg/mlの8種類の抗CD160フォーマット(表12を参照)並びに2つのコントロール、ベバシズマブ(Avastin)及びラニビズマブ(Lucentis)を有する、10グループ(1グループあたり3匹のウサギ)が含まれる。
【0242】
薬物の投与は、全身麻酔下で、最大50~200μlで500μgの単回ボーラス静脈注射によって行った(IgG全体又はmAbフラグメントのモル当量)。
【0243】
約0.5mlの総血液サンプルを、投与前(投与前T0)、並びに、投与後5分、15分、30分、60分、2時間、6時間、12時間、24時間、48時間(D2)、96時間(D4)、168時間(D7)及び336時間(D14)のものについて、抗凝固剤なしのチューブに採取した。分析するまで、血清を凍結保存した。血清サンプルを分析して、抗CD160濃度を決定した。
【0244】
表12は、0.5mg(0.19mg/Kg)の静脈内及び硝子体内投与後のウサギにおける薬物動態実験のグループを示す。
【0245】
【表12】
【0246】
<ウサギ血清サンプルにおける経時的なELB011及びELB021 H7由来の抗CD160 mAbs及びフラグメントの所定濃度での生物分析>
2つの注射ルート(静脈内(IV)対硝子体内(IVT))でのウサギ血清サンプルにおける異なるELB011抗ヒトCD160候補(インタクト(intact)IgG及びIgGフラグメントとして)の定量化は、高速液体クロマトグラフィータンデム質量分析(LC-MS/MS)法により行った。方法開発の戦略は、ウサギ血清中のすべてのELB011(及びELB021)薬物の濃度の測定に適した1つの汎用LC-MS/MS法を得ることを目的とした。サンプルは、磁気ビーズでのプロテインLアフィニティー精製による対象薬物の濃縮、その後のDTT及びヨードアセトアミドを使用した還元及びアルキル化、先のトリプシン消化によって調製した。最終抽出物は、陽イオンエレクトロスプレーを使用したMS/MS検出を備えたHPLCで分析した。H7ヒト化候補に基づくすべての抗CD160(ELB011及びELB021プログラムから)に共通する1つのトリプシンペプチド(VL軽鎖の1つのCDRを含むASQSISNHLHWYQQKPGQAPR)を、多重反応モニタリング(MRM)法によりモニターした。選択されたペプチドは軽鎖のCDR領域にマップされ、他の前臨床マトリックスへのアッセイの直接転送が可能になり、ヒトマトリックスでの分析が可能になる。この方法は、最初に適格性が確認され、次にウサギ血清中の各結合物の定量に適用された。
【0247】
注射時の静脈内のルートのみが試験された
2つの他の抗CD160 mAb(それぞれIgG1及び六量体IgG1E345KフォーマットとしてのELB02104及びELB02114、H7-A09抗CD160)も同じ方法に従って定量化した。
【0248】
<ウサギ血清サンプルにおける経時的なCL1-R2、ベバシズマブ及びラニビズマブの濃度の生物分析>
H7及びH7バリアントの薬物動態パラメータを、親のマウス抗ヒトCD160 CL1-R2の薬物動態パラメータと比較するために、ウサギ血清中のマウスIgG1濃度を、市販のマウスIgG1 ELISA定量セットを使用し、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)を利用して、製造元の推奨に従って測定した(Cat.No. E90-105、Lot No. E90-105-39、Bethyl Laboratoriesから)。
【0249】
ラニビズマブとベバシズマブは、それらの分子フォーマット(IgG1及びFabそれぞれ)から、比較用に選択した。これらの結合物について、ラニビズマブ(Lucentis)の投与にはBiovisionのE4312-100を、ベバシズマブ(AVASTIN)の投与にはBiovisionのK4254-100をそれぞれ、ウサギ血清に投与した。
【0250】
<薬物動態パラメータ解析の方法>
両方の注射ルートについて、ノンコンパートメント解析を使用し、測定された血清濃度より、すべての血清濃度時間曲線について次の薬物動態パラメータを観察し及び計算した。
【0251】
- C Max(μg / ml)(プロファイルで発生する血清ピーク濃度)、
- TMax(H)(血清ピーク濃度の時間)、
- TLag(H)(薬物投与と最初に観察された血清濃度と間の遅延(十分なデータがある場合))、
- AUC0-t obs(H μg/ml)(対数台形規則を使用した、0からCラストまでの血清濃度時間曲線下の面積)、
- AUC0-inf obs(H μg/ml)(0から無限大まで推定された血清濃度時間曲線下の面積(AUC0-t + Cラスト/Ke))、
- Cラスト(最後に観察された濃度)、
- 除去Ke(H-1)(対数線形回帰で得られた血清濃度の時間曲線の末端部分の勾配(十分なデータがある場合))、
- 末端T1/2(H)(観察された半減期又は末端半減期、T1/2=-ln2/Keによって計算)、
- Vd(静脈内ボーラス投与後の分布量(L)、Vd=投与量/(Ke×AUC0-inf)(静脈内ボーラス投与のみ))
-CL(クリアランス(L/H)CL=Ke×Vd(静脈内ボーラスのみ))。
【0252】
硝子体内より注射されたのみの場合、追加のパラメータを次のように評価した。
【0253】
F%(AUC0-t)(参照の静脈ボーラスへの絶対生物利用能(Absolute bioavailability)=AUC0-t試験×参照用量/AUC0-t参照×試験用量)及び
F%(AUC0-inf)(参照フォームへの絶対生物利用能=AUC0-inf試験×参照用量/AUC0-inf参照×試験用量(AUC0-infが測定可能な場合))。
【0254】
そして、静脈内ボーラス薬物動態2段階モデル化を行って、薬物動態学のパラメータと速度定数を計算し、コンパートメントモデルと薬物固有の動態(分布と消失)に関する情報を得た(Wagner、JG 1975)。各候補の動態モデルと静脈内ボーラス投与量のモデル依存薬物動態パラメータは、デコンボリューション法による硝子体内投与後の硝子体についての出力の計算に役立つ。このモデル化を実施して、各試験項目について、各ウサギの血清における薬物動態モデルを決定した。
【0255】
この段階で、血清中における目の薬物消失の速度定数と硝子体内投与後における血清中の薬物消失の割合を、その薬物について計算された静脈内ボーラス動態モデルを使用したコンパートメントデコンボリューション法によって計算する。2つ以上のコンパートメントが観察される場合、Loo-Riegelmanの方法(Loo JC、Riegelman S.、1968)が適用され、1つのコンパートメントが観察される場合、Wagner Nelsonの方法(Wagner JG、Nelson E.1968)が適用される。その結果は、時間に対する、血清に入る薬物の累積量(薬物投与量)及びその速度(薬物投入速度)である。薬物の硝子体内投与後、累積血清投与量プロファイルは目の出力プロファイルであり、その速度は出力速度である。その間に、以下の他のパラメータも決定できる。
【0256】
- Tlag(H):ラグタイム(十分なデータがある場合)
- 目の出力(mg):血清中に放出された薬物の総不変量
- 出力(%量):血清中に放出された薬物の%量(これは硝子体投与後の目についての薬物量の絶対生物利用能である)
- 50%の出力時間(±):血清に入った注入量の50%を観察するまでの時間(グラフから推定)
- 最大時間%(H):累積薬物出力動態が平坦になるまでの時間(=薬物の眼内滞留時間)
- 出力速度(mg/H):血清中の薬物投与速度
- 最大出力速度(mg/H):出力速度曲線のピーク
- 最大出力速度の時間(H):ピークの時間
表13は、静脈内に0.5mg(0.19mg/Kg)投与した後の、主に観察された薬物動態パラメータを示す。
【0257】
【表13】
【0258】
【表14】
【0259】
表14は、硝子体内に0.5mg(0.19mg/Kg)投与した後の、血清で主に観察された薬物動態パラメータを示す。
【0260】
表13(IVルート)及び表14(IVTルート)に示すように、0.5mg(0.19mg/Kg)の静脈内投与(IV)又は硝子体内投与(IVT)後のELB011及びELB021候補についての予想される血清PKプロファイル(すなわち、観察される主な血清薬物動態パラメータ)並びにそれらの血清中半減期(T1/2とも表記)の順位は、対応するフォーマットにより予想される差異に従っている(Gadkarら、2015、によって説明されている)。
【0261】
<静脈内ボーラスの観察とモデル化>
図3Aからわかるように、静脈内ボーラス後、ELB01101、ELB01103、ELB01104、ELB01122、ELB01132、ELB02104、及びELB02114の血清濃度は、注射後急速に減少し(分布期)、そして、ELB01122及びELB01132(1,9及び4,6H)を除いて古典的な緩やかな消失期である第2段階(T1/2の範囲:52から188時間)が続く。表13に示すように、CMax(3.360~4.297μg/ml)は、ELB01122、ELB01132、ELB02104及びELB02114の最初のサンプリング時間である0.083時間(2分)で観察されるが、ELB01101、ELB01103及びELB01104については最長時間の後(0.139~0.444時間)で観察される。平均分布容積とクリアランスは、それぞれ0.05~0.35L及び0.005~0.1051L/Hである。
【0262】
予想通り、抗CD160フラグメントは、IgG型フォーマットと比較してIV注射後の血清PKパラメータを低下させた。特に、ELB01132の血清半減期は、ELB01122の血清半減期よりわずかに長い。
【0263】
ベバシズマブのIV投与後の薬物動態パラメータに関して、観察されたデータを文献データと比較すると、ウサギ血清中のベバシズマブの観察された血清T1/2は、文献と比較して低い(3日対5.32日、ベバシズマブのEMEAファイル(AVASTIN))。
【0264】
IgGフォーマットのELB011及びELB021候補に関して、ELB01101の血清半減期は最も長く、CL1-R2又はベバシズマブ(Avastin)の1つよりも長い。ELB01103及びELB02104は、血清半減期がベバシズマブとほぼ同じであり、ELB01104、ELB02114及びCL1-R2は、ベバシズマブ、ELB01103及びELB02104よりも血清半減期が短い。しかし、AuC、Cmax及びTmaxパラメータをベバシズマブ及びCL1-R2のパラメータと比較すると、これらはすべてのELB011候補(及びELB021候補)で大幅に減少している。実際、CL1-R2及びベバシズマブの血清濃度は、ELB011及びELB021候補とは異なり、CMaxは最も高い:CL1-R2については0.389時間で、ベバシズマブについては24.7時間で、6.980μg/ml及び6.091μg/ml(ベバシズマブのゆっくりした注入との対応からは予想外のTMax)。T1/2、Vd、及びCLは、CL1-R2及びベバシズマブについて、それぞれ54.5時間及び74時間、0.05L及び0.09L、0,0010 L/H及び0,0009L/Hである。これは、おそらくベバシズマブ及びCL1-R2の異化が最も低いためと考えられる。
【0265】
ELB01101(非親和性成熟バリアント)の薬物動態パラメータと他の親和性成熟ELB011及びELB021候補のパラメータとを比較すると、抗CD160mAbの親和性成熟によってウサギのこれらの抗体の血清半減期が短くなっている。実際、すべての親和性成熟候補の血清中のクリアランスは増加している。これは、特に、ELB01101及びベバシズマブの半減期に比べて、血清中の半減期が著しく減少しているELB01103、ELB01104、ELB02104及びELB02114で示されている。このより速いクリアランスは、例えば血液中のCD160陽性細胞での抗CD160mAbのインターナリゼーション増加のような、CD160駆動の特定の生物学的プロセスによる可能性がある。これは、CD160についての高い親和性のため、抗CD160のクリアランスに対する影響を明確にするために、他の種で確認する必要がある。
【0266】
ELB01103及びELB02104の血清半減期T1/2は、非親和性成熟ネイティブELB01101の1つとは異なり、ELB01104(新生児FcRn受容体を介したIgGリサイクルを防ぐための追加のFcRnヌル変異を有する親和性成熟バリアント)の1つと同等である。ELB01104については、(予想されるように、そして(Olafsen、2012)で説明されたように)FcRn変異はELB01103の血清半減期と比較してELB01104の血清半減期をわずかに短くしている。しかし、同じFcRnヌル変異を有するELB01101の薬物動態パラメータがわからないため、FcRn変異単独の影響を評価することは困難である。しかし、ELB01103及びELB01104対ELB01101のPKプロファイルの違いは、ELB01103及びELB01104の違いよりも重要である。ELB01103のPKパラメータにおける親和性成熟の結果は、低減されたIgGリサイクルの結果よりも影響が大きい。
【0267】
<硝子体内注射についての観察>
図3Bからわかるように、血清濃度は注射後の眼からの薬物のゆっくりとした放出に従ってゆっくりと増加し、最高プロファイルレベルはベバシズマブの硝子体内投与後に観察され、最低プロファイルレベルはELB01122及びELB01132の硝子体内投与後に観察される。
【0268】
表14に示すように、平均CMaxはCL1-R2、ELB01103、ELB01104、及びELB01101について0.567~0.787μg/mlの範囲にあるが、ELB01122及びELB01132については最低(0.041μg/ml及び0.114μg/ml)、ベバシズマブでは最高(1.736μg/ml)である。TMaxは48~168時間の間に観察され、T1/2はすべてのウサギで決定できない(目の出力の終了後について、血清消失勾配を観察するためのデータは、全く無いか又は不十分である)。
【0269】
硝子体内投与した場合、すべてのELB011候補は、親CL1-R2と同様に、ベバシズマブと比較して全身Cmaxが低く、Tmaxが低く、平均AuCが低い。予想されるように、ELB011抗CD160フラグメント(ELB01132及びELB01122)は、硝子体内に注射されたすべてのIgGフォーマットと比較して、観察された血清PKパラメータを減少させた。これらのフラグメントは、すべてのIgGベースの分子よりも迅速に血流から消失する(ELB01101と比較して血清T1/2が少なくとも30倍小さい)。硝子体内注射後、ELB01132の血清半減期は、静脈内注射後の場合からわかるように、ELB01122の血清半減期よりもわずかに長い。
【0270】
硝子体内注射後、ELB011 IgG候補(ELB01101、ELB01103、ELB01104)については、CL1-R2に近い血清PKパラメータが観察されており、それは硝子体内投与IgGフォーマットについて予想されていたものである(例えば、(Gadkarら、2015)に記載されている)。Tmaxは、ELB01103を除き、各フォーマットで予想される値である。ELB01103は、IgG4(ELB01101)とFcRn(ELB01104)を介したリサイクルのないIgGとの中間の挙動(PKパラメーターで示される)を示す。文献と比較すると、静脈内注射後の場合においても観察されたように、Gadkarら2015年のデータによれば、ELB01104のCmax、Cmax比(ELB01101に対して)、血清のAuC o-t及び血清のAUC比(ELB01101に対して)に対するFcRn変異の影響はそれほど顕著ではない。
【0271】
<硝子体出力速度の決定>
表15は、各項目の両投与ルートに従う平均血清濃度のデコンボリューション解析後のELB011候補のウサギにおける薬物動態パラメータを示す。
【0272】
【表15】
【0273】
硝子体内注射後の血清中のCmax及びウサギの平均血液量125mLに基づいて、Tmaxでの物質の最大濃度を計算し、Cmax及びTmaxにおける血清中の初期の硝子体内投与量の最大割合として表すこともできる(IVT初期投与の最大%)。これは、両ルートで注入された抗CD160候補各々について、そして、CL1-R2及びベバシズマブについても計算した。
【0274】
表15にまとめた計算された薬物動態パラメータに関して、0.5mgのIVT注射後、ELB01101、ELB01103、ELB01104、CL1-R2及びベバシズマブの計算された血清入力に対応する目の出力は、それぞれ硝子体投与量の68%、55%、69%、35%及び84%対応して、0.341mg、0.184mg、0.346mg、0.176mg及び0.420mgであった。目の出力の平均持続時間(最大%の時間)は、それぞれ168、96、88、104、及び168時間である。
【0275】
第一に、ELB011 IgG(及びフラグメント)候補は、その全身暴露が、ベバシズマブと比較してすべてのELB011候補(ELB01101で最大19%、ELB01103で16.75%)でより低い(ベバシズマブ43%)。これは、ELB011候補では、全身に行き渡ったIVT注射物質の総量が、ベバシズマブよりも少ないことを意味する。実際、ベバシズマブは、目の出力、出力量及びIVT初期投与量の最大割合が、すべてのELB011候補と比較して、非常に高くなっている。
【0276】
第二に、ELB011のIgG候補をCL1-R2と比較すると、ELB01101及びELB01104の目の総出力及び初期投与量の出力%は、ELB01103及びCL1-R2と比較してわずかに高い。FcRnヌル変異も親和性成熟も、目の出力と出力量に大きな影響を与えないことがわかる。ELB01103については、血清に入った製品の量が、ELB01101及びELB01104(68%及び69%)と比較してより少ない(初期IVT総量の50%未満)。ELB01103は、血清半減期がELB01101よりも短いIgG候補であるため、一部の製品が血清に入った場合でも、ELB01103の全身の製品はELB01101の全身の製品よりも2倍速く除去される。
【0277】
出力速度は、0.004~0.009mg/hの範囲である。ELB01104の出力速度が最も大きく、そしてELB01103とELB01132の出力速度が同じで、ELB01101とELB01122の出力速度が最も小さい。
【0278】
ELB011フラグメント候補を、他のELB011 IgG候補と比較すると、硝子体内投与後のELB01132及びELB01122の除去が、IgGフォーマットの抗CD160の除去とは明らかに異なる。両フラグメントは、目からの除去のPKプロファイルが似ている(目について総出力が同じで、出力量がほぼ同じ)。さらに、ELB01132及びELB01122はすべてのIgGベース分子よりも、血流から迅速に除去されるため、これら2つの製品のいずれかの全身のコンパートメントにおける含有量は非常に低い(Tmaxにおいて初期IVT投与量2.85%の最大%未満)。これは、同じ条件で500μgのIVT注射を行った後、ウサギの血清のいずれにおいても製品が検出されなかったLucentisの場合と同じである。
【0279】
ELB01132とELB01122を比較すると、ELB01132の除去はELB01122とは異なる。IVT後の除去に関しては、ELB01122は血流から除去されるのが最も速い。実際、血流に流入する初期IVT量が最低%で、目における出力が最低である。目から除去されるELB01132製品が少し多い(目の出力はELB01122の出力の2倍である)。ELB01132は、ELB01122よりも少し速く血流に入る。ELB01132の除去のT1/2(血清半減期)はより長く、これは他のPKパラメータに影響する。ELB01122については、初期IVT注射量の75%が目に残留するようであるが、これに対してELB01122は60%が目に残留する。しかし、ELB01132の平均残留時間は、ELB01122の平均残留時間よりもわずかに長いようである。したがって、両フラグメント候補は、IgG候補の場合よりも、目のT1/2と全身のT1/2との比が非常に好ましいが、IgGフォーマットの候補よりも目における残留時間は短い。
【0280】
なお、ELB01132及びELB01122のデコンボリューションからの薬物血清入力は、血清濃度が検出可能な時点がより少ないこと、血清半減期が非常に短いこと、そして目からの製品流出の初期の遅延のせいで、他のELB011 IgG候補よりも精度が低いことに注意すべきである。
【0281】
<まとめ - ELB011及びELB021候補のIV及びIVT投与後のすべてのPKパラメータに関する結論>
静脈内(IV)又は硝子体内(IVT)に0.5mg(0.19mg/Kg)を投与した後のELB011及びELB021の候補の予想される血清PKプロファイル(すなわち、観察される主な血清薬物動態パラメータ)及び血清半減期の順位(T1/2とも表記)は、対応するフォーマットにより予想される差異に従っている(Gadkarら、2015)によって説明されている。
【0282】
目のPKパラメータに対するFcRnヌル変異又は親和性成熟の影響はない。
【0283】
ELB011及びELB021候補は、CL1-R2及びベバシズマブよりも血清でのクリアランスが速く、CL1-R2及びベバシズマブとは異なる血清PKパラメータを持っている。しかし、これは他の種(専用的な研究では、マウス及び非ヒト霊長類)で確認する必要がある。
【0284】
血清のT1/2の順位は、目の残留時間(Gadkarら、2015に記載されている)の順位とよく似ている:ELB01101>>ELB01103~ELB01104>ELB01132~ELB01122。驚くべきことは、ELB01103についてである。ELB01103は、IgG4よりも、FcRn結合のないIgG4に近い挙動を示す。様々な抗CD160フォーマットにより、全身に到達する硝子体内注射抗体の割合及び血清T1/2が大幅に減少し、ELB011候補のIVT後の全身暴露はCL1-R2の1つと同等であり、ベバシズマブよりも低い。
【0285】
IgG型の抗CD160 ELB01101及びELB01104の目における総出力及び初期量の出力%は、ELB01103よりも高い。
【0286】
目に残留した割合については、ELB01122がより優れており、ELB01122>ELB01132>ELB01103>ELB01104>ELB01101である。目における出力速度については、0.004~0.009mg/hである。ELB01104の出力速度が最も大きく、次にELB01103とELB01132の出力速度が同じで、最後にELB01101とELB01122の出力速度が最も小さい。
【0287】
目における残留時間については(表15において「最大%の時間」の列を参照)、ELB011の候補間のランキングは、ELB01101>>ELB01103~ELB01104>>ELB01132~ELB01122である。
【0288】
<インビボ(In vivo)前臨床モデルでさらに試験する候補の選択>
可能性のあるELB011候補の中から、適切なNHPモデルにおける用量効果試験で比較する2つの候補、1つのIgGフラグメントと1つの全IgGを最終的に選択した。
【0289】
良好な残留時間と最も低い全身半減期をもつ最適な抗CD160候補のスクリーニングに関しては、IgG型mAbについての目における滞留時間とT1/2血清との比率は、ELB01104、ELB01103、ELB01101の順に大きい(ELB01104>ELB01103>>ELB01101)。しかし、一方で、ELB01104については、初期の量の70%が全身に行き渡る(ELB01103の場合は50%のみ)。つまり、ELB01103よりもELB01104の方が、目に残る製品は少なくなる。したがって、IgGフォーマットとしてのELB011候補間の最終的な順位は、ELB01103>ELB01104>ELB01101である。
【0290】
Mabフラグメントの選択では、両フラグメントの目からの除去についてのPKプロファイルは似ている(目における総出力は同じで、出力量はほぼ同じ)。両フラグメント候補は、IgGの候補よりも目のT1/2と全身のT1/2との比率が非常に好ましい。ELB01132の目における平均残留時間は、ELB01122の平均残留時間よりも少し長い。最後に、PKパラメータ及び他の開発可能性パラメータ(理想的なCD160結合、生産性及び生産されたフラグメントの品質の要件)を考慮して、さらなる効果試験のためにELB01132(FabリンカーFab)を選択することが推奨された。
【0291】
[実施例9:非ヒト霊長類(NHP)(カニクイザル)におけるレーザー誘発性脈絡膜新生血管のモデルにおける抗hCD160 H7(IgG4(ELB01101))及びH7(IgG1 N297Q(ELB01111))の硝子体内注射の効果/耐性のパイロットスタディ]
この研究の目的は、(1)抗hCD160の2つのフォーマット(H7 IgG4(ELB01101)及び非グリコシル化H7 IgG1(ELB01111))を単回硝子体内注射によりカニクイザルに投与した場合において、これらに関する目の耐性を決定すること、並びに、(2)カニクイザル(macaca fascicularis)モデルにおけるレーザー誘発性脈絡膜新生血管に対するこれらのアイソフォームの1つの可能性のある予防効果を評価することである。
【0292】
<モデル選択、試験システムの暴露経路及び動物数の正当性>
有効性(予防効果)の安全性及び用量の評価は、最も関連性の高いNHPレーザー誘発性chNVモデルで開始した。実際、この動物モデルは、新生血管型(すなわちウェット型)の加齢性黄斑変性を有するヒトにおける抗血管新生薬の薬理学的効能の予測因子としての確立された実績がある。
【0293】
目への暴露経路は、ヒトの暴露経路を考慮して選択した。
【0294】
カニクイザルがこの研究の動物モデルとして選択されたのは、規制機関による目の前臨床毒性試験で認められている非げっ歯類であるためである。この研究で使用する動物の総数は、試験抗体の効果を正確に特定するために必要な最小数であると考えられる。この研究は、目的を達成するために不必要な数の動物を必要としないように設計している。
【0295】
ELB01101 IgG4 mAb、ELB01111(耐性のみ)又はレーザー誘発性ChNVモデルの対照(control vehicle)について、片目あたり1mgの硝子体内注射したときの目の耐性、臨床パラメータ及び予防効果を、Charles River(Senneville、カナダ)で評価した。このNHPモデル研究におけるすべての手順は、Charles Riverの標準的な手順であり、以下で簡単に説明する。1982年にRyan SJによって最初に開発された初期のサルモデルプロトコルと比較すると、いくつかのマイナーチェンジがなされた。
【0296】
<研究/実験計画>
(動物及び動物飼育条件)
合計17匹のオスのカニクイザル(2~3歳)を使用した。これらは、投与開始時には2.7~3.2kgの体重があった。動物を実験室環境に慣れさせるために、動物を受け入れてから治療を開始するまでの間に、最低4週間の順応期間を設けた。動物は、自動散水弁を備えたステンレス鋼ケージに社会的に収容した(1ケージ1グループあたり最大3匹)。相対湿度30%~70%、温度20°C~26°Cを通常維持した。12時間の光/12時間の暗闇のサイクルを維持した。食物は、動物のサイズと年齢に適した量を提供した(PMI Nutrition International Certified Primate Chow No.5048を1日2回提供した)。逆浸透及び紫外線放射によって処理された水は、各動物が自動給水システムから自由に利用できた。サルは、眼科研究における動物の使用に関するARVO宣言に従って使用した。
【0297】
<実験設計>
表16に記載されているように、第1段階では、2つのIgGフォーマット(IgG4及びIgG1 N297Q)におけるH7バリアント1mgの硝子体内投与の耐性(全体及び眼の耐性)を、レーザー誘発されていない3つのサルの目で比較した。
【0298】
第2段階では、レーザー誘発されたChNVモデルにおける、毒性の低いアイソフォーム(又は耐性が同等であれば、IgG4フォーマットのH7(ELB01101))の効能が評価された。
【0299】
表16は、実験計画の第1段階(耐性)と第2段階(有効性/拡張された耐性)の概要を示す。
【0300】
【表16】
【0301】
<試験物質の準備>
試験物質(凝集物がなく、エンドトキシン含有量が非常に低い(0.025EU/mg未満)もの(表17を参照))を、使用日に、用量要件を満たすのに適切な濃度の参照製品(PBS)で希釈して20mg/mLに調製した。
【0302】
表17は、試験する物質と対照の識別を示す。
【0303】
【表17】
【0304】
<モニターするパラメータ>
この研究では、以下のパラメータについて評価した:死亡率と臨床徴候、体重、体重の変化、食欲、眼科検査、フルオレセイン血管造影、肉眼的病理学検査及び免疫組織化学検査。
【0305】
<実施、観察及び測定の手順>
死亡/死亡寸前のコントロールを、研究の期間全体において、通常、1日2回(午前中に1回及び午後中に1回)実施した。投与期間と観察期間について、詳細な検査を毎週実施した。個々の体重を毎週測定した。飼料の個々の評価は、食欲を目視検査して毎日評価して行った。
【0306】
眼科検査は、第1段階では、試験前に1回及び試験2日目、5日目、7日目、第2段階では、レーザーによるCNV誘発後、試験前に1回及び試験1日目、9日目、そして28日目に行った。
【0307】
検眼鏡検査及び生体顕微鏡検査(スリットランプ)は、認定された獣医眼科医が行った。散瞳薬にはトロピカミド1%を使用した。適切な絶食期間の後、鎮静剤であるケタミン(登録商標)注射用塩酸(米国薬局方(USP))を筋肉内注射により投与した。
【0308】
<イメージング手順>
活性のあるChNV病変の発生は、フルオレセイン血管造影法(FA)により評価した。これは、レーザー照射の前に一度行い、レーザー傷害後の14日目と29日目に行った。14日目と29日目の静止画像上の個々のレーザースポットによって定義されたChNV病変は、漏出ついて半定量的に評価した。
【0309】
<蛍光血管造影>
効能評価の第2段階で、イメージングデータ(フルオレセイン血管造影又は蛍光血管造影)を1日目(レーザー後、投与前)に取得し、次のように光凝固後14日目及び29日目に再び取得した。
【0310】
手順は以下のように行った。試験の少なくとも25分前に、散瞳薬(1%トロピカミド)を各目に使用した。目の水分は、生理食塩水で頻繁に洗浄することにより維持した。動物に、ケタミン(5mg/kg)、グリコピロレート(0.01mg/kg)及びデクスメデトミジン(0.01mg/kg)の鎮静混合物の筋肉内注射をして、イソフルラン/酸素混合物を投与するために気管内チューブを挿管した。血管造影が終了すると、動物は必要に応じて、デクスメデトミジンの拮抗薬であるアチパメゾール0.1mg/kgの筋肉内注射を受ける。フリー赤外線及び/又は赤色モードでのシンプル及び/又はリアルタイムの網膜画像を、血管造影の参照画像のために取得した。10%の注射用フルオレセインナトリウム(USP)1.0mlを急速静脈内注射(橈側皮静脈又は伏在静脈(cephalic or saphenous vein))で投与し、続いて生理食塩水0.5mlで洗い流した。フルオレセイン注射の少なくとも2分後及び遅くとも5分後に、両眼の固定画像を記録した。さらに、フルオレセイン注射の少なくとも8分後及び遅くとも11分後に、両眼の固定画像を記録した。蛍光血管造影画像は、データを確実にマスクするために、ランダム化された動物の番号ではなく、動物の到着番号によって識別した。病変の重症度のレベル(個々のレーザー病変に対応する度合い)は、固定画像において、フルオレセインの漏出の程度によって、マスクされ経験豊富な2人の判定人が0-4スケールで評価した。そして、判定人は、次のスケールによってコンセンサススコアを決定した:グレード0:漏れなし、グレード1:最小漏れ、グレード2:わずかな漏れ、グレード3:中程度の漏れ(半固体から固体のハイパーフルオレッセンス(hyper-fluorescence)が通常レーザー誘発性欠陥領域内に残る)、グレード4:実質的な漏れ(レーザー誘発性欠陥領域を越えて広がる固体のハイパーフルオレッセンス領域)。
【0311】
関連する臨床病変(グレード3及び4)の総数と%を計測した。1日目の画像は、手順とレーザースポット形成の確認に使用した。
【0312】
臨床関連病変の数は、グレード3と4の病変の組み合わせによって定義した。
【0313】
臨床関連病変の発生率を、文献(Krzystolikら、2002)で定義されている発生率と発生率との比によって表現することもできる。発生率は、臨床的に関連する病変の数(特定の期間中に発生した病変)をレーザー誘発性病変/スポットの総数で割ったものとして定義した。発生率はパーセンテージで表すこともできる。そして、予防眼における臨床関連病変の発生率と対照眼における発生率との比を指す発生率比(IRR)を計算した。IRRが1の場合、発生率に差がないことを意味する。IRR数が1よりはるかに小さいことは、予防グループにおける臨床関連病変の発生率が、対照グループに対して減少したことを意味する。
【0314】
<von Willebrand(vwf)標識による免疫組織化学>
安楽死させた後、眼球を摘出し、硝子体液を収集し、ドライアイス上に置いた後、冷凍庫で-80℃に保管した。第2段階におけるすべての動物の左目の残りの組織は、免疫組織化学分析に使用した。特定された左目の脈絡膜を準備し、「フラットマウント」としてマウントし、IHC研究によりフォンヴィレブランド因子(vWF)で染色した。簡単に説明すると、フラットマウントをPBS+1%Tritonバッファーによって各ステップ間で少なくとも5分間3回洗浄し、PBS+1%Triton+0.1%アジ化ナトリウム中の1%BSAで30分間ブロックし、ウサギポリクローナル、フォンヴィレブランド因子(ab6994の1/200、Abcam)に送り、又は陰性対照(1/350 X0936 Dako/NRbIgG)ターゲットに4°Cで48時間さらし、最後にAlexaFluor 488結合ヤギ抗ウサギIgG(A11008/Life テクノロジー)に4°Cで一晩さらした。抗CD160で治療され又は治療されていないレーザースポット病変は、陽性vWF染色について半定量的に個別に評価され、20倍の対物倍率での視野と比較して、病変のサイズ及び性質に基づいて1、2又は3のスコアが与えられた。共焦点顕微鏡を使用したさらなる分析を行い、必要に応じて病変の性質を確認した。
【0315】
レーザーによる病変は、vWFの陽性染色について半定量的に個別に評価され、レーザー病変のサイズと性質についてスコアが与えられた。病変は、スポット病変が開いていて中心脈絡膜瘢痕があるか又はRPE瘢痕で完全に覆われているかによって特徴付けた。最小の(1)は、スポット蛍光が存在する場合、軽度(2)は、vWF陽性血管/毛細血管が存在する場合、そして中程度(3)は、血管の量が対象領域中心部及びスポット周辺において平均より多い場合、に相当する。vWF陽性血管の存在は、レーザースポットの中心とその周辺で別々に評価した。
【0316】
<検査のための血液サンプル>
サルの血液は大腿静脈穿刺によって採取した。
【0317】
- 第1段階(耐性):治療開始前及び1日目、2日目、3日目、6日目、7日目。
【0318】
- 第2段階(効能):治療開始前及び1日目、2日目、3日目、6日目、12日目、28日目。
【0319】
サンプルをゆっくり混合し、遠心分離するまで周辺条件下で維持し、遠心分離はできるだけ早く実行した。サンプルを標準手順に従って遠心分離した。得られた血清を分離し、一意にマークされた透明ポリプロピレンチューブに移し、すぐにドライアイスで凍結し、-80℃の冷凍庫に移した。その後の考えられる検査には、IVT注射後における全身にコンパートメントでの抗CD160抗体濃度の測定が含まれる。
【0320】
<終了手順>
予定された安楽死まで生き残った動物は、予定された剖検(解剖)の前に一晩絶食させた。動物室から剖検エリアに移す前に、鎮静剤(注射用ケタミンHCl(USP))を筋肉内注射で投与した。動物は、ペントバルビタールナトリウムの静脈内注射による麻酔後の脇下又は大腿動脈の切開による放血させる。
【0321】
<カニクイザルの目での2つのフォーマット(H7 IgG4(ELB01101)及びH7 IgG1 N297Q(ELB01111))における抗hCD160のIVT注射に対する耐性>
局所抗生物質(トブラマイシン0.3%)を、治療の前日、注射後、注射の翌日に2回、2つの目に使用した。
【0322】
投薬治療の前に、耐性評価のための第1段階動物は、ケタミン(5mg/kg)及びデクスメデトミジン(0.01mg/kg)の鎮静混合物の筋肉内注射を受け、その後、マスクを通してイソフルラン/酸素混合物が投与され、麻酔を維持することが必要か判断された。投与の完了後(必要であると判断された場合)、動物は、必要に応じてデクスメデトミジンの拮抗薬であるアチパメゾールの0.1mg/kgの筋肉内注射を受けた。
【0323】
第1段階では、3匹のサルの目に、抗hCD160 H7 IgG4及びH7 IgG1 N297Qそれぞれ1 mgを硝子体内(IVT)注射(H7 IgG4を右目、H7 IgG1 N297Qを左目)して、耐性を確認した。
【0324】
抗CD160 H7 IgG4抗体及び参照担体対照は、獣医眼科医により1日目に両側硝子体内注射により適切な動物に投与された。各動物の投与量は各目に対して50μlであった。
【0325】
第1段階の用量は、1mlの注射器と30×1/2インチの針を使用して投与した。第1段階では、H7 IgG4を右目に投与し、非グリコシル化H7 IgG1 N297Qを左目に投与した。
【0326】
<担体(PBS)と比較したH7 IgG4のIVT注射のレーザー誘発性脈絡膜血管新生に対する予防効果の実証>
6匹のオスのカニクイザル(Macaca fascicularis)(1.5~3.5歳、体重1.5~6kg)の2つのグループで、脈絡膜血管新生(CNVを次のようにして誘発した。目の洗浄前に、散瞳薬(塩化ベンザルコニウム(Zephiran(商標)))を処置前に各目にさした。
【0327】
第2段階(有効性)における動物は、第1段階(耐性)の動物と同じように麻酔した(前述の記載を参照)。
【0328】
抗CD160 H7 IgG4抗体及び参照対照担体を、1日目に適切な動物に投与した。それらは1日目に、獣医眼科医によって、各目に対してH7 IgG4(第1段階の後に選択されたアイソフォーム)20mg/mlの50μl又は担体の50μlが両側硝子体内(IVT)注射された。各動物の目標投与量は、1mgの結合物で各目に50μlであった。第2段階での投与には、29×1/2インチの針を備えたExelint U-100 0.5 ccインスリンシリンジを使用した。投与量の投与後、局所的抗生物質を各目に点滴した。
【0329】
<脈絡膜血管新生(ChNV)のレーザー誘初の手順-第2段階>
第2段階の1日目、ChNV処置の前に、散瞳薬を両目にさした。病変のレーザー誘発段階又は硝子体内(IVT)注射の前に、動物に鎮静剤ケタミン(5mg/kg)、グリコピロレート(0.01mg/kg)及びデクスメデトミジン(0.01mg/kg)の混合物を筋肉内注射した。そして、適切な麻酔を維持するためにイソフルラン/酸素混合物を投与するための気管内チューブを挿管し、ケタミン(5mg/kg)の混合物で動物を麻酔した。投与(必要と考えられる場合のみ)の手順終了後、動物に、必要に応じて、デクスメデトミジンの拮抗薬であるアチパメゾール0.1mg/kgの筋肉内注射をした。動物はまた、治療グループに分け、体重でランダム化した。
【0330】
麻酔中、1日目に、レーザー処置は、中心窩に対して同心円状に1つの目につき9つの病変を生成することにより行われ、1つの病変は黄斑部にあり、8つの病変は網膜の主要血管の間の周辺部にある。初期病変サイズ80μmのレーザー病変は、初期出力300mW、持続時間0.1秒の810nmダイオードレーザーを使用して生成した。そのため、各処置について各グループで合計108のレーザー部位を評価した(1グループあたり動物6匹、各動物2つの目、各目で9の部位が試験対象物質ごとにある)。レーザー処置は再現性よく行われ、ブルッフ膜の破裂の特徴である網膜内の小さな蒸気の泡の出現を確認した。中心窩に直接病変は生じなかった。ブルッフの膜の破裂(気泡の形成と相関)を確実に起させるために、必要に応じてレーザーパラメータを調整し、研究データとして記録した。網膜出血などの、各レーザー病変についてのすべての注目すべき事実を記録した。必要に応じて、処置中、目を生理食塩水及び/又は1.0%カルボキシメチルセルロースナトリウム溶液によって潤った状態に保たれた。投与の位置と外観を確認し、投与手順に起因する異常を記録するために、各治療が終了した後、両目についてスリットランプ生体顕微鏡検査及び/又は間接検眼鏡による検査を行った。
【0331】
<結果の分析>
<耐性についての結果、まとめ>
<死亡率と臨床徴候>
臨床検査及び眼科検査では、出血、体重の変化又は肉眼的所見に対する治療の影響は、偶発的な又は処置関連の及び実験室で飼育される霊長類に典型とされるもの以外のものはないことが示された。治療の体重の増加などの体重に関連する影響はなかった。体重に対する治療に関連した影響はなく、肉眼で見える影響もなかった。H7 IgG1 N297Qを投与された動物に28日目で、非常にわずかな硝子体の混濁が観察された。それらは臨床的に重要であるとは考えられず、そのような変化は硝子体内投与ルートを使用した場合に一般的に観察される。
【0332】
<目の耐性-眼科的観察>
前処理でいくつかのマイナーな二次観察が記録された。しかし、すべての動物は研究に利用できると判断した。第1段階では、投与後にわずかな変化のみが観察された。3/6目の硝子体及び前房に少数の細胞が認められた(No.1002及びNo.1003)。
【0333】
第2段階では、レーザー照射により、処置したすべての眼に、網膜瘢痕、出血、及び中心窩出血などの処置に関連した同様の目の変化が生じていた。脈絡網膜の出血(the chorioretinal hemorrhages)は、時間の経過とともに改善し、28日までにほとんどの目で消失した。D-PBSを投与した対照動物No.2004も、9日目と28日目にこれらの細胞が両側に認められた。
【0334】
<レーザー誘発性脈絡膜血管新生に対する予防効果により評価されたH7 IgG4のIVT注射の効能>
<蛍光血管造影の結果の分析>
1日目に、すべての動物の眼は、脈絡膜血管新生(CNV)を評価するための、9つのレーザー病変についての計画/設計通りに処置された。一部の動物では9つ以上の病変が認められたが、9つの病変のみについて評価した。
【0335】
図4及び表18にまとめられた結果からわかるように、臨床関連の病変の数を考慮すると(グレード3:中程度の漏出、グレード4:実質的な漏出;組み合わせ)、14日目及び29日目のグループでこれらの病変の数が多くなっていた。14日目では、対照と比較してChNVの減少においてIgG4 H7(ELB01101)のわずかな効果があった。29日目の病変の評価後、抗CD160 H7 IgG4で処置した動物において、差がより顕著になった。
【0336】
実際、29日目に、ELB01101が投与された投与動物は、PBSグループ(ビヒクル群)と比較して、臨床関連の病変(グレード3:中程度の漏出、グレード4:重大な漏出、組み合わせ)の数が少なかった(ELB01101:13、PBSグループ:15)。レーザーによる病変の総数に対する臨床的に関連する病変の発生率は、H7 IgG4を投与した目では12%であったが、ビヒクル群では23.1%であった。臨床関連の病変の数を考慮すると、14日目と29日目にPBS群でこれらの病変の数が多くなった。
【0337】
表18に示すように、ELB01101の場合、14日目にグレード0の病変が多く、29日目にグレード1及び2の数が多いことにも注意すべきである。ELB01101は、大きな病変についての予防効果に加えて、他の小さな病変については病変の進行を遅らせたようである。
【0338】
表18は、サルの目で観察されたChNVレーザー誘発性病変のグレードに対する対照又はH7 IgG4による治療の影響を示す。
【0339】
【表18】
【0340】
文献(Krzystolik et al.、2002)で定義されているように、この研究について発生率と発生率比を計算すると、29日目で、レーザースポットの総数に対する臨床関連病変の発生率(IR)は、ビヒクル群では0.231(108のうち25)すなわち23.1%(割合)であったのに対し、ELB01101投与の目では0.12(108のうち13)すなわち12%(割合)であった。これは、発生率比(IRR)0.519に対応する。
【0341】
<NHP組織の免疫組織化学によるフォンヴィレブランド因子(vWF)によるレーザー病変の評価>
レーザー病変をvWFの陽性染色について半定量的に個別に評価し、レーザー病変のサイズと性質にスコアが与えた。
【0342】
最小限の分類を使用した:
(1)蛍光標識の存在、少量の場合
(2)vWF陽性の血管/毛細血管の存在、中程度の場合
(3)血管の量が、関心領域(病変の中心及び周辺)の平均よりも大きかった場合。
【0343】
vWF陽性染色の平均スコアは、レーザー病変の中心においては、H7 IgG4を投与したグループでわずかに高かった(約10%)が、病変の周辺においては、処置単独と比較して対照群のスコアがわずかに高かった。
【0344】
<点状病変スコア>
20倍の倍率で、レーザー病変の点は、視野に対する病変のサイズに応じて1、2又は3のスコアを与え、その病変は、点状病変が開いているか、中心脈絡膜を有するか、又はRPE瘢痕で完全に覆われているかによって特徴付けた。
【0345】
開いた病変とは、ブルッフ膜及びRPE膜による病変の被覆がないことを意味する。脈絡膜瘢痕は、しばしば線維のように見えてバックグラウンド蛍光が高い部位の中心にある、密な組織凝集体の存在によって特徴付けられる。同様に、RPE瘢痕とは、RPE細胞又は中心部の微細繊維構造のバックグラウンド蛍光が大きい凝集体の、変化した結合を指す。vWF蛍光の結果と同様に、H7 IgG4で処理したグループの病変サイズスコアは、対照とそれほど違いはなかった。
【0346】
しかし、RPEによる病変点の被覆状態、その開口状態及び脈絡膜瘢痕の有無を評価することにより、病変の外観を考慮すると、H7 IgG4で処理されたグループのレーザー病変は、RPE膜による完全に治癒覆された病変の総数はより多かった(32~16個の病変)。その一方で、対照群では中心瘢痕を伴う又は伴わない多数の開口状の病変があった(26~19個の病変)(表19を参照)。これは、レーザー病変の初期誘発中に差がなかったという条件で、H7 IgG4で治療されたグループの治癒ポイントの数が多いことを示唆している。網膜及び付着RPE膜の除去中に、病変被覆の完全性が影響を受けたため、No.2101の動物については記録しなかった。
【0347】
表19は、存在するレーザー病変の特徴を示す。
【0348】
【表19】
【0349】
<まとめ>
図4及び図5並びに表18及び表19に見られるように、担体(PBS)と比較したH7 IgG4のIVT注射のレーザー誘発性脈絡膜血管新生に対する効能と予防効果は次のように示された。
【0350】
14日目に、PBS対照と比較した脈絡膜血管新生を減少させるIgG4 H7の効果が明らかとなった。29日目に、H7 IgG4で処置した動物の場合、差はさらに顕著であった。29日目に、レーザー病変の総数に対する臨床的に重要な病変の発生率は、PBS群の23.1%であるのに対し、H7 IgG4を投与した目では12%であった。臨床関連病変の総数(グレード3:中程度の漏出、グレード4:著しい漏出)を考慮した場合、図4に示すように、14日目と29日目にPBSグループでこれらの病変の数が多くなった。
【0351】
図5に見られるように、vWF IHCを使用して各斑点病変の網膜色素上皮(RPE)被覆状態を評価すると(図5を参照)、斑点サイズのコアはELB01101処理された動物と対照動物とで違いがなかった。H7 IgG4の投与は、レーザー病変点の中心でわずかに高い血管新生スコアと関連していたが、vWF陽性染色で示されるように、対照治療よりも周辺部でわずかに低く、これは臨床関連病変に対するH7 IgG4の影響と相関している。さらに、中央の脈絡膜瘢痕を伴う又は伴わない「開口状」レーザー病変の発生率が増加した対照動物と比較して、RPE瘢痕で完全に覆われたレーザー病変の発生率が高かった。これらの結果は、レーザーによって発生した初期病変が対照動物と治療動物とで同様という条件で、H7 IgG4を投与された動物の病変の治癒が加速するプロセスを示唆している。ポイントサイズのスコアは、IgG4で処理した動物と対照動物とで違いはない。
【0352】
結論として、各目1mgの単回両側硝子体内注射によるH7 IgG4(ELB01101)の投与は、カニクイザルにおいて臨床的に十分に許容できるものだった。これは、IgG1 N297Qフォーマット(ELB01111)の抗CD160 H7の場合にも当てはまる。誘発された病変の中心部での血管新生が周辺部よりも発生率わずかに多い担体対照(PBS)と比較して、H7 IgG4は、脈絡膜血管新生の減少に関わっており、RPE膜の治癒を伴う病変の発生率が高かった。これは、抗CD160 H7 IgG4(ELB01101)で処置された目の回復が加速されるプロセスを示唆している。
【0353】
[実施例10:NHPのレーザー誘導性(ChNV)モデルにおける2つの最適化された抗CD160 mAbフォーマット(IgG4(ELB01103)及びFab-リンカーFabフォーマット(ELB01132)としてのH7バリアントD12)の硝子体内注射の耐性及び有効性評価]
実施例9で示したように、最適化されていない抗CD160 IgG4(ELB01101)の各目あたり1mgの単回硝子体内注射は、眼の主要な毒性の兆候がなく臨床関連病変の発生をレーザースポットの総数に対して50%防止した。
【0354】
次に、この第1世代の抗CD160抗体を実施例2に記載の親和性成熟によって最適化し、実施例3に記載のように異なるmAbsフォーマットを設計した。実施例8では、眼科学的目的で設計された抗CD160の異なるフォーマットをウサギを用いた薬物動態研究で比較し、そのうちの2つ、ELB01103(IgG4として親和性が最適化された抗CD160)とELB01132(Fab-linker-Fabとしての親和性成熟)が選択された。
【0355】
ELB01101と比較して、ELB01103の全身半減期は短いが、それでも硝子体内半減期(ウサギでは4日)は良好である。親和性成熟のため、ELB01101と同等又はそれ以上の有効性がある。この親和性最適化抗CD160は、ELB01103と比較して硝子体内半減期がわずかに短く、全身半減期が非常に短い、目の浸透性を高めるFab-リンカーFabフォーマットとしても生成された。試験するELB01132用量は、ELB01103と等モルを基礎として計算した。実際、抗CD160の分子量は、IgG ELB01103では約150 KDaであり、ELB01132では90 KDaに減る。
【0356】
この研究の目的は次のとおりである:(1)両側硝子体内の単回注射でカニクイザルに投与された場合、3用量(ELB01103の場合は片目あたり0.35mg、1mg及び3mg、ELB01132の場合は0.25mg、0.6mg及び2mg)で2つの抗CD160フォーマットの耐性を決定すること、並びに、(2)レーザー誘発ChNVサルモデルにおける脈絡膜血管新生に対する可能性のある予防効果を評価すること。
【0357】
動物の追跡調査及び試験項目(ELB011の候補)の耐性と有効性の評価のために、この研究でのプロトコルは、以下の変更点を除き、実施例9と同じである。各抗CD160アイソフォームの効能に関する安全性及び用量評価の実験の設計(1グループあたり5匹の7グループ、オスのみ)を表20に示す。
【0358】
表20は、NHP実験における用量評価実験の設計を示す。
【0359】
【表20】
【0360】
表21に示す試験及び参照項目は、0日目に両側硝子体内注射によって投与した。各動物の目標投与量は、各目あたり試験対象投与量で50μlであった。投与には、1mLシリンジと29ゲージ×1/2インチの針を備えたExelint U-100インスリン0.5 ccシリンジを使用した。
【0361】
試験項目のバッチの詳細を、表21に示す。
【0362】
表21は、用量有効性試験で注射される物質を示す。
【0363】
【表21】
【0364】
<レーザー誘発性脈絡膜血管新生(ChNV)手順と活性ChNVの評価>
レーザー誘発性ChNV手順は、実施例9の手順と同じである。1日目に、ChNVを評価するために、グループあたり5匹の動物の目を、初期出力300mW、80μmの初期スポットサイズ、0.1秒の持続時間で810nmダイオードレーザーを使用して、各目の黄斑の領域の周りにある網膜の主要血管の間に9つのスポットレーザー創傷パターンを生成させた。各処置で、1グループあたり合計90のレーザーサイト(試験項目ごとに、1グループあたり5匹の動物、1匹あたり2つの目、各目あたり9つのサイト)を評価した。
【0365】
活性ChNV病変の進行は、フルオレセイン血管造影法(FA)によって評価した。1回は損傷前の事前評価、レーザー損傷後14日目及び28日目に、静止画像上の個々のレーザースポットについても、実施例9と同じ手順で、2人の独立した判定人によって漏出を0-4のスケールで半定量的に評価した。
【0366】
<スペクトル領域-光干渉断層法(SD-OCT)>
病変レベル部位での網膜の厚さに対する抗CD160候補の影響を評価するために、網膜及び異なる病変部位のスペクトル領域光干渉断層法(SD-OCT)分析による追加のステップを実施した。SD-OCT分析は、中間用量群(ELB01103について1mg、ELB01132について0.6mg)並びに14日目及び28日目におけるビヒクル群でのみ実施した。そのため、散瞳薬(トロピカミド1%及び/又は2.5%フェニレフリン)によって瞳孔を広げる。実施例9に示したように、フルオレセイン血管造影を行うために動物を麻酔する。両目における5つのレーザー病変部位の連続画像を取得した。線維血管膜面積を各部位で測定し、各スポットの総体積を計算した。各病変の外側の(通常の網膜の厚さとしての)3つの網膜厚さの測定値と比較した、各病変部位の網膜厚さの測定を行った。必要に応じて、追加のスキャン又は画像を取得した。
【0367】
臨床関連の各病変についての個々の網膜の厚さの経時変化は、個々の網膜の厚さの経時的な(14日目~28日目の)平均の変化として追跡できる。ELB011候補の有効性は、臨床関連の各病変(グレード3及び4)又は各グレード4病変の網膜厚さ、及び病変部位における網膜厚さの経時変化(14日目~28日目)から確認した。
【0368】
<最終手順と生物分析(TK)>
動物の最終手順は、実施例9に示した手順と同じであった。動物には、限定的な剖検検査を行い、採取した組織の評価をする。
【0369】
強膜-脈絡膜-RPE複合体、硝子体液及び房水を個別に採取し、分析を行うまで-80°Cで凍結保存した。
【0370】
すべての動物についていくつかの血清サンプル(0.75mL)を、経時的に(1回の事前採取、投与後2時間、6時間、12時間、24時間及び48時間、4日目、7日目、14日目及び28日目)大腿静脈から採取した。これらの血清サンプルは、抗CD160候補濃度を評価するための生物分析及び/又は抗CD160候補に対する最終的な抗薬物抗体の調査及び定量化を行うまで、-80℃で維持した。
【0371】
<候補についての予防及び治療効能の評価>
この研究では、実施例9と比較して、これら2つの抗CD160候補の効能を評価するための分析をさらに行う。実際、各抗CD160アイソフォームの効能を評価するために、まず、14日目と28日目にそれぞれの予防効果を評価した(以下の内容について)。
【0372】
- 個々の臨床関連のレーザー誘発性病変の数及びグレードスコア
- 臨床関連の個々の病変のChNV面積と網膜の厚さ
- そして、第二に、それらのそれぞれの治療効果を、14日目に確立したアクティブな病変に対する経時的影響(14~28日目)を調べることによって評価した。
【0373】
- 臨床関連の病変の平均グレード
- 臨床関連病変の個々の平均ChNV面積(ピクセル単位)
- 病変の種類(すべてのグレード、臨床関連病変(グレード3及び4)並びにグレード4のみ)に応じた、2つの中間用量(ELB01103について1mg及びELB0113について0.6mg)についての個々及び平均の網膜厚さ。
【0374】
<結果>
NHP ChNVモデルで得て、ELB01103及びELB01132の効能と耐性に関するプロファイリングの結果を以下に示す。
【0375】
(ELB01103及びELB01132の安全性評価)
ELB01101について、使用されたELB01103又はELB01132の硝子体内の用量が何であれ、臨床検査及び眼科検査では、出血、体重の変化又は肉眼的所見に対する治療の影響は、偶発的な又は処置関連の及び実験室で飼育される霊長類の典型的とされるもの以外のものはないことが示された。レーザー曝露により、処置がされたすべての目で同様の手順関連の目の変化が生じ、例えば網膜瘢痕、出血、中心窩出血が生じた。脈絡網膜の出血は時間とともに改善し、28日目までにほとんどの目で消失した。
【0376】
<NHP ChNVモデルでのELB01103とビヒクル対照及びELB01101(H7 IgG4)の用量有効性>
図6Aに示すように、有意なフルオレセイン漏出の時間経過(0~14日目及び0~28日目)に伴う高グレードの臨床関連病変(グレード3及び4)の発生率を調べることによって、IgG4(ELB01103)としてのH7バリアントD12の阻害セッティングにおける有効性を最初に評価した。フルオレセイン血管造影図の半定量的評価によって有効性データを示す可能性がいくつかある。
【0377】
まず、図6Aに示すように、効能に関するデータは、レーザー誘発性病変の総数に対する臨床関連病変の割合への、試験物質の影響によって表すことができる。この割合は、臨床関連病変の数を潜在的病変の総数(ここでは90(レーザーによって誘発されたサルの目の数は10))で割って100を掛けた数値である。ELB01103の2つの用量(1mg及び3mg)で明らかな用量依存の有効性がある。0.3mg及び1mgのグループでは、病変に対する影響は14日目よりも28日目でより大きいことがわかる。14日目では、3mgの用量で最大の効果が得られた。28日目では、1mgのELB01103(親和性成熟mAb)は、同じ用量のELB01101(非親和性成熟H7 IgG4候補)よりも大きな有効性がある。
【0378】
グレード4の病変が少なくとも1つある目の割合に対する影響、又は、臨床関連病変(グレード3及び4)が少なくとも1つある目の割合への影響に着目した有効性データを提示することもできる。ELB01103の用量有効性は、臨床関連の漏出(グレード3又は4)をグループ間で比較し及び縦断的に比較した値(少なくとも1つのグレード4病変のある目の数又は目の割合、データは示していない)を調べることによっても観察できる。
【0379】
次に、経時的な漏出の重症度の変化に対するELB01103の影響を評価し、これを図6Bに示す。漏出の重症度の変化は、臨床関連の個々のChNV病変のグレードスコアの経時変化(14~28日目)かわらかる。図6Bによれば、ELB01103を硝子体内に注射すると、14日目から28日目で、特に中程度用量(1mg/目)及び低用量(0.3mg/目)で、漏出が平均的に減少する。実際、14日目と28日目の間のグレードスコアの平均変化は、これらの用量で明らかに減少している。3mg用量については、経時的な漏出の重症度の制御が小さいようにみえるが、3mg用量では14日目での抗体の効能がより良好であることにより、分析は14日目と28日目の間で変化した9つの病変のみで行われる。しかし、3mg用量の漏出重症度の制御は、対照群よりも優れている。
【0380】
さらに、14日目から28日目までの臨床関連病変のChNV面積の平均的な変化に対するELB01103の用量増加(0.3~3mg)の影響を、図6Cに示す。病変の面積の測定により、ELB01103で処理した目は14日目に対照に匹敵し、28日目までを対照と比較した場合、すべての用量レベルで漏出がより低かったことが示された。実際、CHNV面積はビヒクル対照群では経時的に進行したが、14日目に予防されなかった臨床関連病変の進行は、ELB01103が与えられると14~28日目の間に止まった。これには用量反応効果があった。ELB01103の用量が何であれ、14日目と28日目の間に及び平均ChNV面積及びその変化が顕著に減少し(個々のデータは示していない)、これには用量反応効果がある。
【0381】
ELB01103(1mg)の投与が14日目と28日目との間での病変のグレードに応じた網膜厚さの平均変化に与える影響を、図6Dに示す。ビヒクル対照群の網膜厚さは経時的に増加した一方、ELB01103を投与した場合では、14~28日目において臨床関連病変の進行及びそれに続く網膜の厚さの増大が止まった。14~28日目の間におけるELB01103によってもたらされる平均の網膜厚さのこの減少は、分析された病変のグレードとは無関係に見られる。
【0382】
<NHP ChNVモデルにおけるELB01132とビヒクル対照及びELB01101(H7 IgG4)の用量効果>
図7Aに示すように、有意なフルオレセイン漏出の時間経過に伴う高グレードの臨床関連病変(グレード3及び4)の発生率を調べることによって、F7リンカーFab(ELB01132)としてのH7バリアントD12の予防における効能を最初に評価した。2つの低用量(0.23mg及び0.6mg)で効能がある。しかし、最高用量(2mg)ではChNV病変の予防はまったくない。一貫して、ELB01132の中程度の用量(0.6 mg)は、観察された効能の読み取り値(データは示していない)が何であれ、14日目までにChNV病変の出現を防ぐことに非常に効果的である。このことは、臨床関連の漏出(グレード3又は4)をグループ間で、及び縦断的に(少なくとも1つのグレード4の病変の目の数又は目の割合で(データは示していない)、比較した場合に当てはまる。ELB01132の0.6mgの用量の効能は、ELB01101の効能よりも優れている。
【0383】
次に、漏出の重症度の経時変化に対するELB01132の影響を評価し、これを図7Bに示す。漏出の重症度の変化は、臨床関連の個々のChNV病変におけるグレードスコアの経時変化(14日目から28日目)からわかる。図7Bによれば、ELB01132を硝子体内に注射すると、ChNV病変の変化は低用量での注射のみで制御された。対照的に、中用量及び高用量では、漏出が増加した。中用量については、2mg用量の経時的な漏出重症度の制御を示しているが、その分析は14日目の抗体効能から、5つの病変のみで行われている。最高用量(2mg)についてのデータに関して、この用量でのELB01132は、漏出を全く制御しない。
【0384】
さらに、14日目から28日目までの間の臨床関連病変のChNV面積の平均変化に対するELB01132の用量増加(0.25から2mg)の影響を、図7Cに示す。
【0385】
ELB01132が投与された目では、中用量の投与(0.6mg/目)によって、14日目と28日目における病変面積が対照の目と比較してより小さかった。14日目から28日目までの間で、漏出の発生は、対照の目よりもわずかに減少した。2つの高用量のみが、14日目から28日目の間に平均ChNV面積の増加をわずかに減少させる傾向がある。
【0386】
いくつかのタイプの病変の網膜厚さの平均的な経時変化に対する、0.6mgのELB01132投与の影響を、図7Dに示す。14日目から28日目までの間でビヒクル対照群の網膜厚さは大きくなったが、その一方で、病変の平均的な網膜厚さの経時変化に対する0.6mg用量ELB01132の制御は、ELB01103と比較して病変のグレードによる変動がかなり大きい。実際、グレード3及び4の臨床関連病変に関しては、網膜厚さの平均変化は0.6mgELB01132によって大きく減少するが、これは、すべてのグレードの病変又はグレード4のみの病変を独立して考慮した場合はもはや当てはまらない(図14を参照)。しかし、グレード4の病変の分析の場合、分析は14日目の抗体の効能のため、5つのグレード4の病変に対してのみ行っている。
【0387】
<結論>
単回の両側硝子体内注射によるH7バリアントD12抗CD160の2つのアイソフォームの投与は、カニクイザルで最大3mgのELB01103/目及び2mgのELB01132/目で臨床的に十分に許容できる。対照と比較した場合、両方の試験項目は、臨床関連病変の面積及び/又は厚さの変化によって測定されるように、ChNV進行の減少と関連していた。一般に、ELB01103の効能は、ELB01132で観察されたものよりも高かった。実際、ELB011032の効能は用量の関数及び読み取られた効能の関数として大きく変動するが、ELB01103は、分析された効能の読み取り値が何であれ、明確な用量効果がある。しかし、一貫して、ELB01132の中間用量(0.6mg)はChNV病変の出現を防ぐために非常に効果的である。
【0388】
[実施例11:CLL患者の腫瘍細胞へのH7 IgG1抗体の結合]
7人のCLL患者から単離されたPBMCは、抗体CL1-R2(ネズミ抗CD160 IgG1)、IgG1フォーマットの抗CD160 H7、又はBY55(ネズミ抗CD160 IgM)(CD19/CD5/CD3/CD56パネル)で標識した(図8を参照)。CD160標識の蛍光強度を測定するために、CD5+CD19+腫瘍細胞を分析した。CD160発現は、すべてのCLLサンプルにおいて様々な強度検出できる。図8によれば、H7 IgG1抗体は、CLLサンプル6/7の腫瘍細胞に効率的に結合し、これはCL1-R2又は市販のBY55抗CD160 mAbよりも優れている。
【0389】
このように、IgG1フォーマットのH7抗体はCLLの腫瘍細胞に結合することができ、したがって、特にADCC又はCDCなどの細胞毒性メカニズムによってこれらの悪性細胞を標的として殺すために使用できる。
【0390】
[実施例12:CD160陽性細胞へのIgG1フォーマットのH7抗体により誘起されるADCCのin vitro評価]
IgG1フォーマットの抗CD160抗体H7は、ADCCのメカニズムによりCD160を発現している細胞を殺す(図9を参照)。
【0391】
健康なドナーの血液から精製したNK細胞を、抗CD160 H7 IgG1抗体のADCC活性を測定する試験のエフェクターとして使用した。E300-CD160標的細胞(CD160を発現するトランスフェクションされたプレBヒト細胞株)をCFSEで標識し、示唆されたエフェクター/標的比率(1/1、1/5及び1/10)でH7 IgG1抗体又はヒトIgG1アイソタイプ対照の存在下でエフェクターNK細胞でインキュベートした。殺した標的細胞の割合は、7AADでの標識とフローサイトメトリー分析により測定した。二重標識7AAD+CFSE+死細胞の割合は、表示されたドットプロットの右上の象限に示されている。
【0392】
これらの結果と図8(実施例11)に示されている結果は、ADCCのメカニズムにより、IgG1フォーマットのH7抗体を使用して、表面にCD160を発現している細胞を標的化し、殺すことができることを示している。
【0393】
[実施例13:IgG1フォーマットにおけるH7抗体によるNK細胞の活性化及びインターフェロンγの産生]
図10図11及び図12が示すように、IgG1フォーマットにおける抗CD160 H7抗体はNK細胞を活性化する。
【0394】
図10Aに示すように、H7 IgG1抗体は、末梢血から精製されたヒトNK細胞の表面に結合できる。
【0395】
図10Bは、H7 IgG1がNK細胞によるインターフェロンガンマ(IFN-γ)の産生を誘発することを示している。健康なドナーの血液から精製したNK細胞を、96ウェルプレートのウェル(1ウェルあたり1×10細胞)単独又はH7 IgG1抗体若しくはヒトIgG1アイソタイプ対照の存在下で、1又は10μg/mlに濃縮し、24時間培養した。IFN-γは、培養上清でELISAによって分析した。示される結果は、3回の平均と+/-標準誤差(sem)である。
【0396】
図10Cは、H7 IgG1がNK細胞上のCD69活性化マーカーの発現を誘導することを示している。図10Bと同じ実験で、NK細胞を培養24時間後に収集し、蛍光色素APCに結合した抗CD69抗体で標識した。CD69陽性細胞の割合をフローサイトメトリーで分析した。平均値(+/-標準誤差)を3つの値から計算した。
【0397】
IgG4フォーマットではなくIgG1フォーマットにおける抗CD160 H7抗体は、図11に示すように、NK細胞を活性化する。健康なドナーの血液から精製したNK細胞は、単独で、又は以下の抗体の存在下(濃度5μg/ml)で培養した:H7 IgG1、H7 IgG4、それぞれのヒトIgG1若しくはIgG4アイソタイプコントロール、又はIgG4フォーマットにおけるH7抗体に由来するバリアントである抗体ELB01103、ELB01104及びELB01106。すべての抗体を制御して、エンドトキシンによる汚染がないことを確実にした。抗CD16抗体(ebioscience cat#16-0166)を陽性対照として使用する。NK細胞(1ウェルあたり5×10細胞)を培養の24時間後に収集し、蛍光色素APCに結合した抗CD69抗体で標識した。CD69陽性細胞の割合をフローサイトメトリーで分析した(3つの値の平均+/-標準偏差(SD))。IgG1フォーマットにおける抗CD160 H7は、NK細胞上でCD69活性化マーカーの発現を誘導するが、IgG4フォーマットにおける同じ抗体は効果がない。ヒトIgG4フォーマットにおけるH7のバリアント(ELB01103、ELB01104及びELB01106)も、NK細胞に対する活性化効果を示さない。
【0398】
[実施例14:IgG1及びE345K/IgG1フォーマットにおけるH7の異なるバリアントによるNK細胞刺激活性の増加]
図12が示すように、IgG1及びE345K/IgG1フォーマットにおける抗CD160 H7抗体に由来するバリアントは、NK細胞を活性化する能力が高くなっている。健康なドナーの血液から精製されたNK細胞を、単独又は抗CD160 H7 IgG1抗体の存在下で、又は、ElsaLysによって0.001~10μg/mlの用量で作成されたバリアントELB02102、ELB02103、若しくはELB02104(3つのうちいずれもIgG1フォーマットで)、ELB02112、ELB02113若しくはELB02114(3つのうちいずれもE345K/IgG1フォーマットで)の存在化で96ウェルプレートのウェル(1ウェルあたり1×10細胞)で24時間培養した。10μg/mlのヒトIgG1を陰性アイソタイプ対照として使用し、抗CD16(ebioscience cat#16-0166)を陽性アイソタイプ対照として使用した。
【0399】
IFN-γを培養上清中のELISAで分析した。表示結果は、3つの値の平均値+/-標準誤差である。
【0400】
NK細胞を収集し、蛍光色素APCに結合した抗CD69抗体で標識した。CD69陽性細胞の割合をフローサイトメトリーで分析した。平均値(+/-標準誤差)は3つの値から計算した。
【0401】
これらの結果を、GraphPad Prismソフトウェアを使用して解析し、非線形回帰曲線(Log(作動薬)に対する応答、3パラメータ方程式)を生成し、有効濃度の中央値(EC50)を計算した。CD69の誘導のEC50は、3つのバリアントELB02112、ELB02113又はELB02114については計算しなかった。これは、0.1μg/ml以上の濃度で細胞死が観察されたためである。これらのE345K/IgG1フォーマットによって刺激されたNKの死は、おそらく細胞の強力な活性化に続いて誘導される。
【0402】
これらの結果はすべて、IgG1フォーマットにおけるH7の3つのバリアント(ELB02102、ELB02103、ELB02104)がNK細胞の活性化に関して元のH7 IgG1抗体(ELB02101)よりもはるかに強力であり、EC50を2~3log改善している。
【0403】
E345K/IgG1フォーマットにおけるH7の3つのバリアント(つまり、ELB02112、ELB02113、ELB02114)は、IFN-γ産生を誘導する能力がさらに向上し、EC50が更に2log(元のH7 IgG1抗体(ELB02101)に対して4log)改善している。
【0404】
実施例13及び14の結果は、H7抗体及びそのIgG1及びE345K/IgG1フォーマットにおけるバリアントがNK細胞を活性化し、それらのIFN-γ産生を誘導できることを示している。これらの特性により、がん患者の免疫応答を、NK細胞を介して、並びに、IFN-γ(Th1型応答を活性化することが知られているサイトカイン)によって活性化されたTリンパ球及び抗原提示細胞を介して間接的に、刺激することができる。
【0405】
さらに、これらの特性により、IgG1及びE345K/IgG1フォーマットにおけるH7に由来する抗体は、この作用モードを有する、共投与される他の抗体によって誘導されるADCC細胞傷害活性を潜在的に増加させることができ、したがって、それらの治療効果の改善を可能にする。
【0406】
[実施例15:IgG1及びE345K/IgG1フォーマットにおけるH7抗体のバリアントによるNK及びCD8+T細胞の標識]
IgG1及びE345K/IgG1フォーマットにおける抗CD160 H7抗体に由来するバリアントは、NK及びCD8+T細胞をより効果的に標識する(図13を参照)。
【0407】
2人の健康なドナーのPBMC(末梢血単核細胞)を、抗CD45、CD3、CD4、CD8及びCD19抗体及びPEに結合した抗CD160抗体(Lynx Rapid RPE抗体結合キット 参照LNK022RPE)(PBMCの5×10について0.25μg)で免疫標識した後、フローサイトメトリーで分析した。無関係なヒトIgG1(hIgG1)を陰性対照として使用し、Fc受容体を15分ATでヒトFc(Rockland)で飽和させた。
【0408】
図13Aは、IgG1フォーマット(ELB02102、ELB02103、ELB02104)又はE345K/IgG1フォーマット(ELB02112、ELB02113、ELB02114)におけるH7のバリアントは、元のH7 IgG1抗体よりも効率よくNK細胞に結合すること(陽性標識されたNK細胞の60%~80%)を示している。図13Bは、2人のドナーで明確に検出されたCD8+T細胞の集団も、H7バリアントでより効率的に標識されたことを示している。
【0409】
これらの結果は、IgG1及びE345K/IgG1フォーマットにおける抗CD160 H7抗体に由来するバリアントが、元のH7 IgG1抗体よりも効率的にNK及びCD8+T細胞に結合することを示している。
【0410】
これらの結果と前の実施例で示した結果は、H7 IgG1抗体並びにIgG1及びE345K/IgG1フォーマットにおけるそのバリアントが、NK細胞に結合してその活性を刺激するだけでなく、CD8+CD160+Tリンパ球の集団にも結合でき、その活動を変調することもできることを示している。
【0411】
[実施例16:眼科及び腫瘍学向けに最適化された抗CD160候補の二重特異性抗体(bsab)の設計及び生成]
<眼科適応症に対する抗CD160との可能な二重特異性(bsab):抗CD160 H7又は親和性成熟と組み合わせられる潜在的な第2結合価>
文献(Labrijnら、2014)に記載されている手順を、親抗体である抗hCD160 IgG1 F405L(クローンH7)又はその誘導体由来の二重特異性IgGの開発と、実証実験として抗hアンジオポエチン2からなるIgG1 K409Rに適用した。
【0412】
抗体の1つは、表22(眼科学適用)又は表23(腫瘍学適用)から選択される。第1抗体は、眼科学ではIgG1 N297Q H310A-H435Q K409Rフォーマット、腫瘍学ではIgG1 K409Rフォーマットである。第2抗体は、抗CD160 H7(又はそのバリアント)である。第2抗体は、眼科学適応症では、IgG1 N297Q H310A-H435Q F405Lフォーマット、腫瘍学ではIgG1 F405Lフォーマットである。
【0413】
表22は、抗CD160 bsabを産生するための潜在的な第2結合価として眼科学で使用できる、又は、抗CD160 H7若しくはそのバリアントとの併用療法で使用できる抗原標的抗体を示す。
【0414】
【表22】
【0415】
表23は、抗CD160 bsabを産生するための潜在的な第2結合価として腫瘍学で使用できる、又は抗CD160 H7又はそのバリアントとの併用療法で使用できる抗原標的抗体を示す。
【0416】
【表23】
【0417】
この技術を使用して、対象とする眼科学、腫瘍学又は免疫療法における適応に従い、抗CD160 bsab候補を生成できる。
【0418】
[実施例17:抗hCD160/抗ヒトアンジオポエチン2又は抗hCD160/抗ヒトCD200Rの併用療法及び二重特異性の評価]
抗CD160及びその抗Xパートナー抗体(特にXがアンジオポエチン2又はCD200Rの場合)や抗CD160/抗-X二重特異性の併用療法は、水酸化ナトリウム(NaOH)バッファーで誘導された角膜血管新生のウサギモデルにおける各抗体(100μg及び500μg)又はbsabの100μg及び500μgでの効能や、効能の相加性及び/又は相乗効果について評価される(文献(Campos-Molloら、2011)に記載されているように)。
【0419】
[実施例18:CL1-R2抗体はCD160 GPIのみを認識するが、本発明に係る抗体はCD160 GPI及びCD160 TMに結合することができる。]
抗CD160 CL1-R2、ELB02101(H7 IgG1)抗体、及びELB02104、ELB02114及びELB01103フォーマットにおけるH7バリアントの結合能力を、標識された細胞の割合(=結合の割合)を測定することにより(図14を参照)、組換え細胞株CHO-S-hCD160-GPI(クローン2G10)で発現した表面ヒトCD160-GPI(グリコシルホスファチジルイノシトール)の標識中に、及び、トランスフェションされていないCHO-S細胞と比較して組換え細胞株CHO-S-hCD160-TMで発現した表面ヒトCD160-TM(膜貫通)の標識中に評価した。このために、2×10個のCHO-S-hCD160-GPI、CHO-S-hCD160-TM及び非トランスフェクトCHO-S細胞を、これらの抗体それぞれ1μg及び適切な対照アイソタイプで標識した。
【0420】
図14では、試験したすべての抗CD160(アイソタイプ、IgGフォーマット、又はバリアントに関係なく)は、CHO-S細胞によって組換えられ発現されたヒトCD160-GPIを特異的に認識する。ヒト化ELB02101(H7 IgG1)及びフォーマットの異なるH7バリアントELB02104、ELB02114及びELB01103は、親CL1-R2よりもCHO-hCD160-GPIトランスフェクタントにより効率的に結合する。予想に反して、ヒト化ELB02101(H7 IgG1)及びそのバリアントELB02104、ELB02114及びELB01103は、CHO-S細胞によって組換えられ発現されたヒトCD160-TMにも結合するが、親CL1-R2 mAbは試験用量に関係なく結合できない。
【0421】
[実施例19:H7バリアント(ELB02104)によるHVEM-CD160相互作用の遮断を通じてのT CD4の再活性化]
図15に示すように、IgG1フォーマット(ELB02104)の抗CD160 H7抗体に由来するA09バリアントは、対照アイソタイプと比較してT CD4 CD45High CD160+リンパ球を再活性化できる。ELB02104は、HVEM-CD160の相互作用を遮断することにより、HVEMタンパク質によって誘導されるTCD4細胞の阻害を取り除く。
【0422】
健康なドナーの血液から精製したT CD4リンパ球細胞を、抗CD160 mAb(ELB02104又は適切な対照アイソタイプ10μg/ml及びプレートにコーティングした抗CD3(クローンUTCH1)、mAb+/-抗CD28(クローンCD28.2)mAb+/-HVEMタンパク質(10334-H08H、Sino bio))の存在下、6ウェルプレート(1ウェルあたり1×10細胞)で16時間培養した。
【0423】
T CD4リンパ球を回収し、適切な生存マーカー(ゾンビNIR、ナイーブ/メモリー細胞を標的とする蛍光色素BB515に結合した抗CD45RA抗体、CD160発現細胞を標的とする蛍光色素Alexa fluor 647に結合した抗CD160(クローンBY55)抗体細胞、活性化細胞を標的とする蛍光色素PEに結合した抗CD69抗体)で標識した。ゾンビNIR-/CD45RAhigh+/CD160+/CD69+陽性細胞の割合をフローサイトメトリーで分析した。平均値(+/-標準誤差)は2つの値から計算した。その結果によれば、IgG1フォーマットのH7 A09バリアント(ELB02104)は、HVEM-CD160相互作用を遮断し、T CD4 CD45RAHigh CD160+細胞によって発現される活性化マーカーであるCD69のアップレギュレーションによって示されるように、HVEMタンパク質によって誘導されるTCD4細胞の阻害を取り除く。
【0424】
HVEMは、いくつかの癌によって発現され、腫瘍の進行と免疫回避の役割を果たす。T CD4細胞のHVEM-CD160相互作用を遮断すると、T CD8細胞傷害性生成による抗腫瘍応答が回復する場合がある。
【0425】
[実施例20:H7 IgG1(ELB02101)並びにIgG1(ELB02104)及びE345K/IgG1(ELB02114)フォーマットにおけるH7 A09のNK細胞刺激活性によるDC(樹状細胞)成熟]
IgG1(ELB02104)及びE345K/IgG1(ELB02114)フォーマットにおけるH7 A09バリアント抗体は、H7 IgG1(ELB02101)及び親CL1-R2 mAbと比較して、NK細胞刺激活性によりDC成熟細胞を誘導する能力が向上している。
【0426】
健康なドナーの血液から精製された単球細胞は、GM-CSF(100ng/mL)及びIL-4(20ng/mL)で6日間未熟な樹状細胞に分化した。健康なドナーの血液から精製したNK細胞を、96ウェルプレート(1ウェルあたり1×10細胞)を用いて、単独で、又は抗CD160 mAbs(CL1-R2、H7 IgG1(ELB02101)、若しくはバリアントELB02104(IgG1フォーマット)、ELB02114(E345K/IgG1フォーマット)、ELB01103(IgG4フォーマット))の10μg/ml及び適切なコントロールアイソタイプの存在化で、16時間培養した。未成熟DC(1×10の細胞/ウェル)は、事前に抗CD160 mAbsと24時間インキュベートしたNKと共培養した。
【0427】
DC/NK共培養細胞を収集し、生存マーカー(ゾンビNIR、DC細胞を標的とする蛍光色素PE-Cy7に結合した抗CD11c抗体、NKを標的とする蛍光色素Viobright 515に結合した抗CD56抗体、成熟DC細胞を標的とする蛍光色素BV421に結合した抗CD86抗体)で標識した。ゾンビNIR-/CD11c+/CD86+陽性細胞の割合をフローサイトメトリーで分析した。2つの値から平均(+/-標準誤差)を計算した。
【0428】
結果は、IgG1(ELB02104)及びE345K/IgG1(ELB02114)フォーマットにおけるH7 A09バリアントは、H7 IgG1(ELB02101)と比較して、NK細胞刺激活性を介したDC成熟細胞(CD86アップレギュレーションによって示される)を誘導する能力が高いことを示す。驚くべきことに、親のCL1R2 mAbにはDC成熟を誘発する特性がない。
【0429】
実施例13及び実施例14に示される結果は、H7抗体並びにIgG1及びE345K/IgG1フォーマットのそのバリアントがNK細胞を活性化し、それらのIFN-γ産生を誘導できることを示している。これらの特性により、DC成熟が刺激され、成熟したDCとTリンパ球との間のクロストークを介して、間接的に癌患者において抗腫瘍特性を持つ細胞傷害性Tリンパ球の生成を促進される。
【0430】
参考文献
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図1A
図1B
図1C
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図11
図12A
図12B
図13A
図13B
図14
図15
【配列表】
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