(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】ポリウレタン樹脂組成物、硬化物、成形品、繊維強化プラスチックおよび繊維強化プラスチックの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 18/08 20060101AFI20221207BHJP
C08G 18/22 20060101ALI20221207BHJP
C08G 18/72 20060101ALI20221207BHJP
C08G 18/76 20060101ALI20221207BHJP
C08J 5/04 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
C08G18/08 090
C08G18/22
C08G18/72 040
C08G18/76 057
C08J5/04 CFF
(21)【出願番号】P 2019552833
(86)(22)【出願日】2018-11-07
(86)【国際出願番号】 JP2018041294
(87)【国際公開番号】W WO2019093358
(87)【国際公開日】2019-05-16
【審査請求日】2020-04-17
(31)【優先権主張番号】P 2017218125
(32)【優先日】2017-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018107380
(32)【優先日】2018-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】田中 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】金山 宏
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 実
(72)【発明者】
【氏名】井上 泰希
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 純治
【審査官】前田 孝泰
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-145617(JP,A)
【文献】特開平05-105661(JP,A)
【文献】特開昭48-030748(JP,A)
【文献】特開平05-059307(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00- 18/87
C08L 1/00-101/16
C08K 3/00- 13/08
C08J 3/00- 7/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリフェニルメタンポリイソシアネートを含有するポリイソシアネート成分と、
ポリオール成分と、
有機金属触媒と、
下記一般式(1)、下記一般式(2)、下記式(3)、下記式(4)または下記式(5)に示す反応遅延剤と、を含有し、
前記有機金属触媒1molに対する前記反応遅延剤のmol比が、0.50以上2.50以下であることを特徴とする、ポリウレタン樹脂組成物。
【化1】
(一般式(1)中、Aは、脂肪族環または芳香族環を示す。R
1は、環Aを構成する炭素数1の炭化水素基を示す。R
2は、炭素数1の脂肪族炭化水素基を示す。R
3は、環Aが脂肪族環である場合に環Aに含まれる窒素原子に結合する水素原子またはアルキル基を示し、環Aが芳香族環である場合に水素原子を示す。R
4は、環Aに結合する水素原子またはカルボキシル基を示す。mは、1であり、nは、0または1であり、nおよびmの総和は、2以下である。必要によりR
2を介してR
1に結合する-COOHは、nが1である場合、環Aのα位のR
1に結合するR
2を介して、環Aに結合し、nが0である場合、環Aのα位のR
1に直接結合する。)。
【化2】
(一般式(2)中、AおよびR
2は、上記一般式(1)のAおよびR
2と同意義を示し、R
3は、環Aが脂肪族環である場合に環Aに含まれる窒素原子に結合する水素原子またはアルキル基を示し、環Aが芳香族環である場合には存在せず、nは0を示し、-COOHは、環Aに直接結合する。)。
【化3】
【化4】
【化5】
【請求項2】
前記反応遅延剤が、ピコリン酸であることを特徴とする、請求項
1に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項3】
前記反応遅延剤の含有割合は、前記ポリオール成分100質量部に対して、0.05質量部以上1.4質量部以下であることを特徴とする、請求項1に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項4】
前記有機金属触媒が、カリウム塩を含むことを特徴とする、請求項1に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項5】
前記有機金属触媒の含有割合は、前記ポリオール成分100質量部に対して、0.001質量部以上10質量部以下であることを特徴とする、請求項1に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項6】
前記ポリイソシアネート成分は、脂環族ポリイソシアネートをさらに含有し、
前記ポリイソシアネート成分において、前記ポリフェニルメタンポリイソシアネート由来のイソシアネート基と、前記脂環族ポリイソシアネート由来のイソシアネート基との総量に対する、前記脂環族ポリイソシアネート由来のイソシアネート基の割合が、10mol%以上70mol%以下であることを特徴とする、請求項1に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項7】
前記ポリオール成分の水酸基の総和に対する、前記ポリイソシアネート成分のイソシアネート基の総和の割合
(イソシアネートインデックス、(NCO/OH)×100)は、前記ポリオール成分の水酸基の総和を100として、75以上400以下であることを特徴とする、請求項1に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1に記載のポリウレタン樹脂組成物の硬化物を含むことを特徴とする、
硬化物。
【請求項9】
請求項8に記載の
硬化物を含むことを特徴とする、成形品。
【請求項10】
繊維と、
前記繊維に含浸されている、請求項1に記載のポリウレタン樹脂組成物の硬化物と、を備えることを特徴とする、繊維強化プラスチック。
【請求項11】
前記繊維が、炭素繊維、ガラス繊維およびアラミド繊維からなる群から選択される少なくとも1種以上からなることを特徴とする、請求項10に記載の繊維強化プラスチック。
【請求項12】
請求項10に記載の繊維強化プラスチックの製造方法であって、RTM法、HP-RTM法、WCM法およびRIM法からなる群から選択されるいずれか1つの成形方法により製造することを特徴とする、繊維強化プラスチックの製造方法。
【請求項13】
前記成形方法における成形温度は、25℃以上250℃以下であることを特徴とする、請求項12に記載の繊維強化プラスチックの製造方法。
【請求項14】
前記成形方法における成形時間は、10秒以上5分以下であることを特徴とする、請求項12に記載の繊維強化プラスチックの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン樹脂組成物、ポリウレタン樹脂、成形品、繊維強化プラスチックおよび繊維強化プラスチックの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリイソシアネート成分およびポリオール成分を含むポリウレタン樹脂組成物を、予め加熱した金型内に注入して硬化させ、所望の形状を有するポリウレタン成形品を製造することが知られている。このようなポリウレタン樹脂組成物は、金型内において十分に流動できるポットライフ(ゲルタイム)を確保することが要求される。
【0003】
そのようなポリウレタン樹脂組成物として、例えば、ポリフェニルメタンポリイソシアネートおよび脂環族ポリイソシアネートを含有するポリイソシアネート成分と、ポリオール成分とを含み、ポリイソシアネート成分において、ポリフェニルメタンポリイソシアネート由来のイソシアネート基と、脂環族ポリイソシアネート由来のイソシアネート基との総量に対する、脂環族ポリイソシアネート由来のイソシアネート基の割合が、10~70モル%である硬質ポリウレタン樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に記載の硬質ポリウレタン樹脂組成物では、金型の予備加熱温度などの成形条件によって、金型内において流動性を十分に確保できず、成形不良が生じる場合がある。そこで、硬質ポリウレタン樹脂組成物に反応遅延剤を添加して、硬質ポリウレタン樹脂組成物のポットライフの向上を図ることが検討される。
【0006】
しかし、硬質ポリウレタン樹脂組成物に反応遅延剤を添加すると、ポリイソシアネート成分とポリオール成分との反応性が低下するために、硬質ポリウレタン樹脂組成物の硬化に要する時間(硬化時間)が長くなるという不具合がある。その結果、ポリウレタン成形品の製造に要する時間が増加し、ポリウレタン成形品の製造効率が低下するという不具合がある。
【0007】
そこで、本発明は、ポットライフの向上を図ることができながら、硬化時間の低減を図ることができるポリウレタン樹脂組成物、ポリウレタン樹脂、成形品、繊維強化プラスチックおよび繊維強化プラスチックの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明[1]は、ポリフェニルメタンポリイソシアネートを含有するポリイソシアネート成分と、ポリオール成分と、有機金属触媒と、下記一般式(1)に示す反応遅延剤と、を含有し、前記有機金属触媒1molに対する前記反応遅延剤のmol比が、0.50以上2.50以下である、ポリウレタン樹脂組成物を含む。
【0009】
【0010】
(一般式(1)中、Aは、脂肪族環または芳香族環を示す。R1は、環Aを構成する炭化水素基を示す。R2は、環Aに結合する脂肪族炭化水素基を示す。R3は、環Aに含まれる窒素原子に結合する水素原子またはアルキル基を示す。R4は、環Aに結合する水素原子またはカルボキシル基を示す。mは、1または2であり、nは、0または1であり、nおよびmの総和は、2以下である。)
本発明[2]は、前記反応遅延剤が、下記一般式(2)で示される、上記[1]に記載のポリウレタン樹脂組成物を含む。
【0011】
【0012】
(一般式(2)中、A、R2、R3およびnは、上記一般式(1)A、R2、R3およびnと同意義を示す。)
本発明[3]は、前記反応遅延剤が、ピコリン酸である、上記[2]に記載のポリウレタン樹脂組成物を含む。
【0013】
本発明[4]は、前記反応遅延剤の含有割合が、前記ポリオール成分100質量部に対して、0.05質量部以上1.4質量部以下である、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載のポリウレタン樹脂組成物を含む。
【0014】
本発明[5]は、前記有機金属触媒が、カリウム塩を含む、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載のポリウレタン樹脂組成物を含む。
【0015】
本発明[6]は、前記有機金属触媒の含有割合が、前記ポリオール成分100質量部に対して、0.001質量部以上10質量部以下である、上記[1]~[5]のいずれか一項に記載のポリウレタン樹脂組成物を含む。
【0016】
本発明[7]は、前記ポリイソシアネート成分は、脂環族ポリイソシアネートをさらに含有し、前記ポリイソシアネート成分において、前記ポリフェニルメタンポリイソシアネート由来のイソシアネート基と、前記脂環族ポリイソシアネート由来のイソシアネート基との総量に対する、前記脂環族ポリイソシアネート由来のイソシアネート基の割合が、10mol%以上70mol%以下である、上記[1]~[6]のいずれか一項に記載のポリウレタン樹脂組成物を含む。
【0017】
本発明[8]は、前記ポリオール成分の水酸基の総和に対する、前記ポリイソシアネート成分のイソシアネート基の総和の割合が、前記ポリオール成分の水酸基の総和を100として、75以上400以下である、上記[1]~[7]に記載のポリウレタン樹脂組成物を含む。
【0018】
本発明[9]は、上記[1]~[8]のいずれか一項に記載のポリウレタン樹脂組成物の硬化物を含む、ポリウレタン樹脂を含む。
【0019】
本発明[10]は、上記[9]に記載のポリウレタン樹脂を含む、成形品を含む。
【0020】
本発明[11]は、繊維と、前記繊維に含浸されている、上記[1]~[8]のいずれか一項に記載のポリウレタン樹脂組成物の硬化物と、を備える、繊維強化プラスチックを含む。
【0021】
本発明[12]は、前記繊維が、炭素繊維、ガラス繊維およびアラミド繊維からなる群から選択される少なくとも1種以上からなる、上記[11]に記載の繊維強化プラスチックを含む。
【0022】
本発明[13]は、上記[11]または[12]に記載の繊維強化プラスチックの製造方法であって、RTM法、HP-RTM法、WCM法およびRIM法からなる群から選択されるいずれか1つの成形方法により製造する、繊維強化プラスチックの製造方法を含む。
【0023】
本発明[14]は、前記成形方法における成形温度は、25℃以上250℃以下である、上記[13]に記載の繊維強化プラスチックの製造方法を含む。
【0024】
本発明[15]は、前記成形方法における成形時間は、10秒以上5分以下であることを特徴とする、上記[13]または[14]に記載の繊維強化プラスチックの製造方法を含む。
【発明の効果】
【0025】
本発明のポリウレタン樹脂組成物では、有機金属触媒1molに対する反応遅延剤のmol比が上記下限以上であるので、ポリフェニルメタンポリイソシアネートを含有するポリイソシアネート成分と、ポリオール成分との初期の反応を抑制でき、ポリウレタン樹脂組成物のポットライフの向上を図ることができる。
【0026】
また、反応遅延剤が後述する特定の化合物であり、有機金属触媒1molに対する反応遅延剤のmol比が上記上限以下であるので、ポットライフの経過後(つまり、ポリウレタン樹脂組成物の流動性が低下し始めた後)において、ポリイソシアネート成分とポリオール成分との反応を円滑に進行させることができ、ポリウレタン樹脂組成物の硬化時間の低減を図ることができる。
【0027】
そのため、ポリウレタン樹脂組成物は、ポットライフと硬化時間とをバランスよく有することができ、ポリウレタン樹脂および成形品の製造に好適に用いることができる。
【0028】
本発明のポリウレタン樹脂は、上記のポリウレタン樹脂組成物の硬化物を含むので、効率よく製造されることができる。
【0029】
本発明の成形品は、上記のポリウレタン樹脂を含むので、効率よく製造されることができる。
【0030】
本発明の繊維強化プラスチックは、繊維と、繊維に含浸されている上記のポリウレタン樹脂組成物の硬化物とを備えるので、機械強度の向上を図ることができながら、効率よく製造されることができる。
【0031】
本発明の繊維強化プラスチックの製造方法では、RTM法、HP-RTM法、WCM法、および/または、RIM法により、繊維強化プラスチックを製造する。
【0032】
つまり、予め成形された繊維を金型内に配置した後、上記のポリウレタン樹脂組成物を、例えば、金型内に注入するなどして、金型内の繊維に供給する。
【0033】
このとき、上記のポリウレタン樹脂組成物は、ポットライフが向上しているので、金型内において、十分に流動でき、繊維に円滑に含浸される。
【0034】
そして、上記のポリウレタン樹脂組成物は、硬化時間が低減されているので、金型内において比較的短い時間で硬化し、その後、繊維およびポリウレタン樹脂組成物の硬化物を備える繊維強化プラスチックは、脱型される。つまり、繊維強化プラスチックは、比較的短い時間で脱型できるので、脱型性に優れている。
【0035】
そのため、ポリウレタン樹脂組成物を繊維に円滑に含浸できながら、ポリウレタン樹脂組成物の硬化時間を低減でき、繊維強化プラスチックの製造に要する時間の低減を図ることができる。その結果、繊維強化プラスチックの製造効率の向上を図ることができる。
【0036】
また、ポリウレタン樹脂組成物を繊維に円滑に含浸できることから、ポリウレタン樹脂が元来有する優れた衝撃強度や表面光沢度、良好な表面粗度を有する繊維強化プラスチック成形品を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
<ポリウレタン樹脂組成物>
本発明のポリウレタン樹脂組成物は、ポリイソシアネート成分と、ポリオール成分と、有機金属触媒と、後述の反応遅延剤とを含有する。
【0038】
ポリイソシアネート成分は、少なくともポリフェニルメタンポリイソシアネート(p-MDI)を含有し、好ましくは、ポリフェニルメタンポリイソシアネートのカルボジイミド誘導体をさらに含有する。
【0039】
ポリフェニルメタンポリイソシアネートは、公知の方法で製造され、具体的には、例えば、アニリンとホルマリンとの縮合反応により得られるポリメリックメチレンジアニリンを、ホスゲン化することによって製造される。なお、ポリフェニルメタンポリイソシアネートは、一般に、ポリメリックMDI、クルードMDI、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートなどとも表記される。
【0040】
ポリフェニルメタンポリイソシアネートは、通常、ジフェニルメタンジイソシアネート(モノマー)と、ジフェニルメタンジイソシアネートの縮合体(オリゴマー、ポリマー)とを含有する。つまり、ポリフェニルメタンポリイソシアネートは、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)と、ジフェニルメタンジイソシアネートの縮合体とを含む組成物である。
【0041】
ジフェニルメタンジイソシアネートとして、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0042】
ポリフェニルメタンポリイソシアネートのイソシアネート基含有率(イソシアネート基濃度)は、例えば、10質量%以上、好ましくは、20質量%以上、例えば、50質量%以下、好ましくは、40質量%以下である。なお、イソシアネート基含有率は、電位差滴定装置を用いて、JIS K-1603(2007年)に準拠したn-ブチルアミン法により測定できる(以下同様)。
【0043】
ポリイソシアネート成分が、ポリフェニルメタンポリイソシアネートに加えて他のポリイソシアネート(例えば、ポリフェニルメタンポリイソシアネートのカルボジイミド誘導体など)を含む場合、ポリフェニルメタンポリイソシアネートの含有割合は、ポリイソシアネート成分の総量に対して、例えば、10質量%以上、好ましくは、30質量%以上、例えば、90質量%以下、好ましくは、70質量%以下である。
【0044】
ポリフェニルメタンポリイソシアネートのカルボジイミド誘導体は、例えば、上記したポリフェニルメタンポリイソシアネートを、公知の方法で脱炭酸縮合させることにより製造される。
【0045】
ポリフェニルメタンポリイソシアネートのカルボジイミド誘導体は、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネートのカルボジイミド誘導体、および/または、ジフェニルメタンジイソシアネートの縮合体のカルボジイミド誘導体を含有する。つまり、ポリフェニルメタンポリイソシアネートのカルボジイミド誘導体は、ジフェニルメタンジイソシアネートのカルボジイミド誘導体、または、ジフェニルメタンジイソシアネートの縮合体のカルボジイミド誘導体からなってもよく、ジフェニルメタンジイソシアネートのカルボジイミド誘導体と、ジフェニルメタンジイソシアネートの縮合体のカルボジイミド誘導体とを含む組成物であってもよい。
【0046】
ポリフェニルメタンポリイソシアネートのカルボジイミド誘導体のイソシアネート基含有率は、例えば、5質量%以上、好ましくは、15質量%以上、例えば、45質量%以下、好ましくは、35質量%以下である。
【0047】
ポリフェニルメタンポリイソシアネートのカルボジイミド誘導体のカルボジイミド基含有率は、例えば、10質量%以上、好ましくは、20質量%以上、例えば、50質量%以下、好ましくは、40質量%以下である。なお、カルボジイミド基含有率は、13C-NMRにより測定できる。
【0048】
ポリフェニルメタンポリイソシアネートのカルボジイミド誘導体の含有割合は、ポリイソシアネート成分の総量に対して、例えば、5質量%以上、好ましくは、20質量%以上、例えば、70質量%以下、好ましくは、60質量%以下、さらに好ましくは、50質量%以下である。
【0049】
ポリイソシアネート成分は、任意成分として、脂環族ポリイソシアネートをさらに含有することができる。
【0050】
つまり、ポリイソシアネート成分は、ポリフェニルメタンポリイソシアネートのみからなってもよく、ポリフェニルメタンポリイソシアネートおよびポリフェニルメタンポリイソシアネートのカルボジイミド誘導体からなってもよく、ポリフェニルメタンポリイソシアネートおよび脂環族ポリイソシアネートからなってもよく、ポリフェニルメタンポリイソシアネート、ポリフェニルメタンポリイソシアネートのカルボジイミド誘導体および脂環族ポリイソシアネートからなってもよい。
【0051】
脂環族ジイソシアネートとして、例えば、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート(1,3-または1,4-シクロヘキサンジイソシアネートもしくはその混合物)、1,3-または1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンもしくはその混合物(H6XDI)、2,5-または2,6-ジ(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタンもしくはその混合物(ビス(イソシアナトメチル)ノルボルナン、NBDI)、3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート)(IPDI)、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(4,4’-、2,4’-または2,2’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート、これらのTrans,Trans-体、Trans,Cis-体、Cis,Cis-体、もしくはその混合物))(H12MDI)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート(メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート)などが挙げられる。脂環族ポリイソシアネートは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0052】
脂環族ポリイソシアネートのなかでは、好ましくは、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、2,5-ジ(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,6-ジ(イソシアナトメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、イソホロンジイソシアネートが挙げられ、より好ましくは、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(1,4-H6XDI)が挙げられる。
【0053】
脂環族ポリイソシアネートのイソシアネート基含有率は、例えば、20質量%以上、好ましくは、30質量%以上、例えば、60質量%以下、好ましくは、50質量%以下である。
【0054】
脂環族ポリイソシアネートの含有割合は、ポリイソシアネート成分の総量に対して、例えば、1質量%以上、好ましくは、5質量%以上、例えば、40質量%以下、好ましくは、25質量%以下である。
【0055】
また、ポリイソシアネート成分において、ポリフェニルメタンポリイソシアネート由来のイソシアネート基と、脂環族ポリイソシアネート由来のイソシアネート基との総量に対する、脂環族ポリイソシアネート由来のイソシアネート基の割合は、例えば、10mol%以上、好ましくは、15mol%以上、より好ましくは、20mol%以上、例えば、70mol%以下、好ましくは、60mol%以下、より好ましくは、50mol%以下である。
【0056】
脂環族ポリイソシアネート由来のイソシアネート基の割合が上記範囲であれば、適度なポットライフを有するとともに、ポリイソシアネート成分とポリオール成分との相溶性に優れ、かつ、機械物性および耐熱性に優れ、さらには、耐熱性にも優れるポリウレタン樹脂および成形品を製造することができる。
【0057】
また、ポリイソシアネート成分のイソシアネート基の総量に対する、脂環族ポリイソシアネート由来のイソシアネート基の割合は、例えば、5mol%以上、好ましくは、10mol%以上、例えば、60mol%以下、好ましくは、40mol%以下である。
【0058】
なお、脂環族ポリイソシアネートの反応速度は、ポリフェニルメタンポリイソシアネートの反応速度、および、ポリフェニルメタンポリイソシアネートのカルボジイミド誘導体の反応速度と比較して遅い。
【0059】
そのため、ポリウレタン樹脂組成物が脂環族ポリイソシアネートを含有する場合、ポリウレタン樹脂組成物において、ポットライフと硬化時間とをバランスよく安定して確保するために、好ましくは、ポリオール成分の水酸基の総量に対する、脂環族ポリイソシアネート由来のイソシアネート基の割合を所定の範囲に調整する。
【0060】
ポリオール成分の水酸基の総量に対する、脂環族ポリイソシアネート由来のイソシアネート基の割合(NCO/OH)は、例えば、0.28以上、好ましくは、0.30以上、より好ましくは、0.35以上、例えば、0.5以下、好ましくは、0.45以下である。
【0061】
ポリオール成分の水酸基の総和に対する脂環族ポリイソシアネート由来のイソシアネート基の割合が上記下限以上であれば、ポリウレタン樹脂組成物の硬化時間の低減を確実に図ることができる。ポリオール成分の水酸基の総和に対する脂環族ポリイソシアネート由来のイソシアネート基の割合が上記上限以下であれば、ポリウレタン樹脂組成物のポットライフの向上を確実に図ることができながら、ポリウレタン樹脂組成物の硬化時間の低減を確実に図ることができる。
【0062】
また、ポリオール成分の水酸基の総和に対する、ポリイソシアネート成分のイソシアネート基の総和の割合(イソシアネートインデックス、(NCO/OH)×100)は、ポリオール成分の水酸基の総和を100として、例えば、75以上、好ましくは、90以上、より好ましくは、100以上、例えば、400以下、好ましくは、300以下、より好ましくは、250以下である。
【0063】
ポリオール成分として、例えば、高分子量ポリオールおよび低分子量ポリオールが挙げられる。ポリオール成分は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0064】
高分子量ポリオールは、水酸基を2つ以上有する数平均分子量500以上10000以下の化合物であって、例えば、国際公開第2017/014178号の[0052]段落~[0067]段落に記載の高分子量ポリオールなどが挙げられる。高分子量ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0065】
低分子量ポリオールは、水酸基を2つ以上有する数平均分子量60以上500未満の化合物であって、例えば、国際公開第2017/014178号の[0068]段落~[0070]段落に記載の低分子量ポリオールなどが挙げられる。低分子量ポリオールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0066】
このようなポリオール成分のなかでは、好ましくは、低分子量ポリオールが挙げられ、より好ましくは、低分子量ポリエーテルポリオールが挙げられる。つまり、ポリオール成分は、好ましくは、低分子量ポリエーテルポリオールを含み、より好ましくは、低分子量ポリエーテルポリオールからなる。
【0067】
具体的には、低分子量ポリエーテルポリオールとして、ポリオキシアルキレン(炭素数(C)2~3)ポリオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどが挙げられる。
低分子量ポリエーテルポリオールは、単独使用または2種以上併用することができる。
【0068】
ポリオキシアルキレン(C2~3)ポリオールは、アルキレンオキサイドの炭素数が2~3のポリオキシアルキレンポリオールであって、例えば、上記の低分子量ポリオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ビスフェノールAなど)や公知の低分子量アミンを開始剤とする、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドの付加重合物(2種以上のアルキレンオキサイドのランダムおよび/またはブロック共重合体を含む。)などが挙げられる。
【0069】
具体的には、ポリオキシアルキレン(C2~3)ポリオールとして、ポリオキシエチレンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオール、ポリオキシエチレンおよびポリオキシプロピレンのランダムおよび/またはブロック共重合体、ポリオキシプロピレンビスフェノールAエーテルなどが挙げられる。なお、ポリオキシアルキレン(C2~3)ポリオールの官能基数は、開始剤の官能基数に応じて決定される。
【0070】
ポリテトラメチレンエーテルグリコールとして、例えば、テトラヒドロフランのカチオン重合により得られる開環重合物や、テトラヒドロフランの重合単位に後述する2価アルコールを共重合した非晶性ポリテトラメチレンエーテルグリコールなどが挙げられる。
【0071】
このような低分子量ポリエーテルポリオールのなかでは、好ましくは、ポリオキシアルキレン(C2~3)ポリオールが挙げられる。
【0072】
低分子量ポリエーテルポリオールの数平均分子量は、例えば、60以上、好ましくは、100以上、例えば、500未満、好ましくは、400以下である。
【0073】
また、ポリオール成分の平均官能基数は、例えば、2.0以上、例えば、5.0以下、好ましくは、4.0以下である。ポリオール成分の平均水酸基価は、例えば、300mgKOH/g以上、好ましくは、350mgKOH/g以上、例えば、1200mgKOH/g以下、好ましくは、1000mgKOH/g以下、より好ましくは、600mgKOH/g以下である。なお、ポリオール成分の平均官能基数は、仕込み成分から算出することができ、また、平均水酸基価は、公知の滴定法から求めることができる。
【0074】
有機金属触媒は、公知のウレタン化触媒であって、例えば、有機錫化合物、有機鉛化合物、有機ニッケル化合物、有機銅化合物、有機ビスマス化合物、カリウム塩などが挙げられる。有機金属触媒は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0075】
有機錫化合物として、例えば、酢酸錫、オクチル酸錫、オレイン酸錫、ラウリル酸錫、モノブチル錫トリオクテート、ジブチル錫ジアセテート、ジメチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジメルカプチド、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫ジネオデカノエート、ジオクチル錫ジメルカプチド、ジオクチル錫ジラウリレート、ジブチル錫ジクロリドなどが挙げられる。
【0076】
有機鉛化合物として、例えば、オクタン酸鉛、ナフテン酸鉛などが挙げられる。有機ニッケル化合物として、例えば、ナフテン酸ニッケルなどが挙げられる。有機コバルト化合物として、例えば、ナフテン酸コバルトなどが挙げられる。有機銅化合物として、例えば、オクテン酸銅などが挙げられる。有機ビスマス化合物として、例えば、オクチル酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマスなどが挙げられる。
【0077】
カリウム塩として、例えば、炭酸カリウム、酢酸カリウム、オクチル酸カリウムなどが挙げられる。
【0078】
このような有機金属触媒のなかでは、好ましくは、有機錫化合物およびカリウム塩が挙げられ、より好ましくは、有機錫化合物およびカリウム塩の併用が挙げられ、さらに好ましくは、モノブチル錫トリオクテートおよびオクチル酸カリウムの併用が挙げられる。つまり、有機金属触媒は、好ましくは、カリウム塩を含む。
【0079】
有機錫化合物およびカリウム塩が併用される場合、カリウム塩の含有割合は、有機錫化合物1質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、5質量部以上、例えば、30質量部以下、好ましくは、20質量部以下である。
【0080】
有機金属触媒(有効成分量100%換算)の含有割合は、ポリオール成分100質量部に対して、例えば、0.001質量部以上、好ましくは、0.01質量部以上、より好ましくは、0.1質量部以上、例えば、10質量部以下、好ましくは、5質量部以下、より好ましくは、3質量部以下である。
【0081】
反応遅延剤は、下記一般式(1)に示される複素環化合物である。
【0082】
【0083】
(一般式(1)中、Aは、脂肪族環または芳香族環を示す。R1は、環Aを構成する炭化水素基を示す。R2は、環Aに結合する脂肪族炭化水素基を示す。R3は、環Aに含まれる窒素原子に結合する水素原子またはアルキル基を示す。R4は、環Aに結合する水素原子またはカルボキシル基を示す。mは、1または2であり、nは、0または1であり、nおよびmの総和は、2以下である。)
一般式(1)において、R1は、環Aを構成する炭素数1の炭化水素基を示し、具体的には、メチレン基(-CH2-)またはメチン基(-CH=)を示す。また、一般式(1)中において、mは、1または2である。
【0084】
そのため、一般式(1)において、Aは、mが1である場合、5員複素脂肪族環(ピロリジン環)または5員複素芳香族環(ピロール環)であり、mが2である場合、6員複素脂肪族環(ピペリジン環)または6員複素芳香族環(ピリジン環)である。
【0085】
一般式(1)において、R2は、環Aに結合する炭素数1の脂肪族炭化水素基を示し、具体的には、メチレン基(-CH2-)を示す。一般式(1)において、R2は、R1に結合しており、R2の結合箇所は、環Aのα位(2位)またはβ位(3位)である。また、一般式(1)において、nは、0または1であり、nおよびmの総和は、2以下である。
【0086】
そのため、一般式(1)において、カルボキシル基(-COOH)は、nが1である場合、環Aのα位の炭素原子(R1)に結合するメチレン基(R2)を介して、環Aに結合し、nが0である場合、環Aのα位またはβ位の炭素原子(R1)に直接結合する。
【0087】
一般式(1)において、R3は、環Aに含まれる窒素原子に結合する水素原子またはアルキル基を示す。一般式(1)において、R3として示されるアルキル基は、例えば、炭素数1~12のアルキル基が挙げられ、好ましくは、炭素数1~4のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基など)が挙げられる。一般式(1)において、R3は、好ましくは、水素原子である。
【0088】
一般式(1)において、R4は、環Aに結合する水素原子またはカルボキシル基を示し、好ましくは、水素原子を示す。
【0089】
反応遅延剤は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0090】
また、反応遅延剤としては、下記一般式(2)に示される反応遅延剤が挙げられる。
【0091】
【0092】
(一般式(2)中、A、R2、R3およびnは、上記一般式(1)A、R2、R3およびnと同意義を示す。)
反応遅延剤として、具体的には、ニコチン酸、2,6-ピリジンジカルボン酸、プロリン、ピコリン酸、2-ピリジニル酢酸、2-ピペリジンカルボン酸などが挙げられる。このような反応遅延剤は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0093】
このような一般式(2)に示される反応遅延剤のなかでは、好ましくは、ピコリン酸が挙げられる。つまり、反応遅延剤は、好ましくは、ピコリン酸を含み、より好ましくは、ピコリン酸からなる。
【0094】
有機金属触媒1molに対する反応遅延剤のmol比は、0.50以上、好ましくは、0.80以上、より好ましくは、1.0以上、2.5以下、好ましくは、2.0以下である。
【0095】
また、有機金属触媒がカリウム塩を含む場合、カリウム塩1molに対する反応遅延剤のmol比は、例えば、0.52以上、好ましくは、0.9以上、より好ましくは、1.1以上、例えば、2.6以下、好ましくは、2.1以下である。
【0096】
反応遅延剤のmol比が上記下限以上であれば、ポリウレタン樹脂組成物のポットライフの向上を図ることができる。反応遅延剤のmol比が上記上限以下であれば、ポリウレタン樹脂組成物の硬化時間の低減を図ることができる。
【0097】
また、ポリイソシアネート成分のイソシアネート基1molに対する、反応遅延剤のmol比は、例えば、0.1×10-3以上、好ましくは、1.0×10-3以上、より好ましくは、2.5×10-3以上、例えば、7.0×10-3以下、好ましくは、5.0×10-3以下、より好ましくは、4.0×10-3以下である。
【0098】
また、反応遅延剤の含有割合は、ポリオール成分100質量部に対して、例えば、0.05質量部以上、好ましくは、0.20質量部以上、より好ましくは、0.50質量部以上、例えば、1.4質量部以下、好ましくは、1.3質量部以下、より好ましくは、1.0質量部以下、さらに好ましくは、0.8質量部以下である。
【0099】
また、ポリウレタン樹脂組成物は、任意成分として、さらに、公知の添加剤を、適宜の割合で含有することができる。
【0100】
公知の添加剤として、例えば、国際公開第2017/014178号の[0090]段落~[0138]段落および[0142]段落に記載の添加剤が挙げられ、具体的には、安定剤、離型剤、フィラー、衝撃吸収性微粒子、加水分解防止剤、脱水剤、難燃剤、消泡剤、顔料、染料、滑剤、可塑剤、ブロッキング剤などが挙げられる。
【0101】
このようなポリウレタン樹脂組成物は、例えば、ポリイソシアネート成分を含むA剤と、ポリオール成分を含むB剤とを有する二液型樹脂材料として構成される。有機金属触媒、反応遅延剤および公知の添加剤のそれぞれは、A剤およびB剤のいずれに含有されてもよいが、好ましくは、B剤に含有される。
【0102】
このようなポリウレタン樹脂組成物では、有機金属触媒1molに対する反応遅延剤のmol比が上記下限以上である。そのため、ポリフェニルメタンポリイソシアネートを含有するポリイソシアネート成分と、ポリオール成分との初期の反応を抑制でき、ポリウレタン樹脂組成物のポットライフの向上を図ることができる。
【0103】
また、反応遅延剤が上記一般式(1)に示す化合物であり、有機金属触媒1molに対する反応遅延剤のmol比が上記上限以下であるので、ポットライフの経過後(つまり、ポリウレタン樹脂組成物の流動性が低下し始めた後)において、ポリイソシアネート成分とポリオール成分との反応を円滑に進行させることができ、ポリウレタン樹脂組成物の硬化時間の低減を図ることができる。
【0104】
そのため、ポリウレタン樹脂組成物は、ポットライフと硬化時間とをバランスよく有することができ、ポリウレタン樹脂および成形品の製造に好適に用いることができる。
【0105】
<ポリウレタン樹脂>
ポリウレタン樹脂を製造するには、ポリイソシアネート成分とポリオール成分とを反応(ウレタン化反応)させて、ポリウレタン樹脂組成物を硬化させる。つまり、ポリウレタン樹脂は、ポリウレタン樹脂組成物の硬化物を含み、好ましくは、ポリウレタン樹脂組成物の硬化物からなる。
【0106】
ポリウレタン樹脂の製造方法として、例えば、ワンショット法、プレポリマー法などの公知の方法が挙げられる。
【0107】
ワンショット法では、例えば、ポリイソシアネート成分とポリオール成分とを一度に反応させる。
【0108】
ワンショット法における反応温度は、例えば、25℃(室温)以上、好ましくは、35℃以上、例えば、250℃以下、好ましくは、200℃以下である。また、ワンショット法における反応時間は、例えば、5分以上、好ましくは、4時間以上、例えば、72時間以下、好ましくは、24時間以下である。
【0109】
プレポリマー法では、例えば、まず、ポリイソシアネート成分とポリオール成分の一部とを反応させて、分子末端にイソシアネート基を有するイソシアネート基末端プレポリマーを合成する。次いで、得られたイソシアネート基末端プレポリマーと、ポリオール成分の残部とを反応させる。
【0110】
イソシアネート基末端プレポリマーの合成における反応温度は、例えば、25℃(室温)以上、好ましくは、50℃以上、例えば、150℃以下、好ましくは、120℃以下である。また、イソシアネート基末端プレポリマーの合成における反応時間は、例えば、0.5時間以上、好ましくは、2時間以上、例えば、18時間以下、好ましくは、10時間以下である。
【0111】
また、イソシアネート基末端プレポリマーとポリオール成分との反応温度の範囲は、例えば、ワンショット法における反応温度の範囲と同じであり、イソシアネート基末端プレポリマーとポリオール成分との反応時間の範囲は、例えば、ワンショット法における反応時間の範囲と同じである。
【0112】
なお、ポリウレタン樹脂の製造方法は、例えば、バルク重合や溶液重合などを用いることができる。
【0113】
このように製造されるポリウレタン樹脂は、高い剛性を有するとともに、ガラス転移温度が比較的高く、耐熱性に優れる。具体的には、ポリウレタン樹脂のガラス転移温度は、例えば、70℃以上、好ましくは、90℃以上、より好ましくは、110℃以上、さらに好ましくは、120℃以上、例えば、220℃以下である。なお、ガラス転移温度は、公知のDSC測定装置により測定できる。
【0114】
また、成形品は、ポリウレタン樹脂組成物を硬化させるとともに成形する公知の方法(例えば、後述するRIM法など)により、製造される。そのため、成形品は、ポリウレタン樹脂を含む。
【0115】
具体的には、ポリウレタン樹脂組成物をワンショット法により硬化させる場合、ポリイソシアネート成分(A剤)、および/または、ポリオール成分(B剤)を、好ましくは、加温して低粘度化させてから混合し、その後、必要に応じて脱泡した後、予備加熱した成形型(金型)に注入する。
【0116】
また、ポリウレタン樹脂組成物をプレポリマー法により硬化させる場合、イソシアネート基末端プレポリマー、および/または、ポリオール成分(B剤)を、好ましくは、加温して低粘度化させてから混合し、その後、必要に応じて脱泡した後、予備加熱した成形型に注入する。
【0117】
ポリウレタン樹脂組成物の各成分(A剤、B剤、イソシアネート基末端プレポリマー)の加温温度は、例えば、25℃以上、好ましくは、35℃以上、例えば、150℃以下、好ましくは、120℃以下である。
【0118】
また、成形型の予備加熱温度は、例えば、50℃以上、好ましくは、60℃以上、例えば、200℃以下、好ましくは、180℃以下、さらに好ましくは、100℃以下である。
【0119】
その後、ポリウレタン樹脂組成物を上記の反応条件にて反応させた後、脱型する。
【0120】
これによって、所望形状に成形された成形品が製造される。なお、脱型後、成形品を、必要に応じて、室温にて、7日間以内程度で熱成させてもよい。
【0121】
このように、ポリウレタン樹脂および成形品は、上記のポリウレタン樹脂組成物を硬化することにより製造される。そのため、上記の反応温度にポリウレタン樹脂組成物を加熱しても、ポリウレタン樹脂組成物が有するポットライフが経過するまで、ポリウレタン樹脂組成物の流動性を確保することができる。そして、ポットライフの経過後、ポリウレタン樹脂組成物を円滑に硬化させることができる。
【0122】
そのため、ポリウレタン樹脂および成形品は、効率よく製造されることができる。
【0123】
<繊維強化プラスチック>
上記のポリウレタン樹脂および成形品の用途は、特に制限されないが、例えば、繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics)、構造材用プラスチック、構造材芯材用プラスチックなどが挙げられる。
【0124】
このような用途のなかでは、好ましくは、繊維強化プラスチックが挙げられる。
【0125】
繊維強化プラスチックは、繊維をポリウレタン樹脂中に入れて強化したプラスチックであり、繊維と、繊維に含浸されているポリウレタン樹脂(ポリウレタン樹脂組成物の硬化物)とを備え、好ましくは、繊維とポリウレタン樹脂とからなる。
【0126】
繊維として、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、金属繊維、セルロースナノファイバー、人工の蜘蛛の糸などが挙げられる。繊維は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0127】
繊維として、好ましくは、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維が挙げられる。言い換えれば、繊維は、好ましくは、炭素繊維、ガラス繊維およびアラミド繊維からなる群から選択される少なくとも1種以上からなる。
【0128】
繊維として、とりわけ好ましくは、炭素繊維が挙げられる。
【0129】
炭素繊維は、特に制限されないが、例えば、ピッチ系炭素繊維、PAN(ポリアクリロニトリル)系炭素繊維、レーヨン系炭素繊維などが挙げられる。炭素繊維は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0130】
炭素繊維として、好ましくは、PAN(ポリアクリロニトリル)系炭素繊維が挙げられる。
【0131】
繊維束の形態は、特に制限されず、例えば、ラージトウ、レギュラートウなどが挙げられる。また、繊維の形態は、特に制限されず、例えば、紐状、織物状(平織物、一軸織物、多軸織物、ノンクリンプ織物など)、不織布状などが挙げられ、好ましくは、織物状が挙げられる。また、織物状の繊維を、複数枚(例えば、2~20枚)重ねて用いることもできる。
【0132】
繊維強化プラスチックにおいて、繊維含有率は、体積基準で、例えば、20体積%以上、好ましくは、30体積%以上、例えば、80体積%以下、好ましくは、70体積%以下である。
【0133】
<繊維強化プラスチックの製造方法>
このような繊維強化プラスチックは、例えば、上記の繊維に、上記したポリウレタン樹脂組成物を含浸させ、硬化させることにより製造される。
【0134】
繊維強化プラスチックの製造方法として、例えば、RTM(Resin Transfer Molding)法、HP-RTM(High-Pressure Resin Transfer Molding)法、WCM(Wet Compression Molding)法、RIM(Reaction Injection Molding)法、プリプレグ法、ハンドレイアップ法、フィラメントワインディング法、プルトルージョン法などが挙げられる。
【0135】
繊維強化プラスチックの製造方法のなかでは、好ましくは、RTM法、HP-RTM法、WCM法、および/または、RIM法が採用される。つまり、繊維強化プラスチックは、好ましくは、RTM法、HP-RTM法、WCM法、および/または、RIM法により製造される。言い換えれば、繊維強化プラスチックは、好ましくは、RTM法、HP-RTM法、WCM法およびRIM法からなる群から選択されるいずれか1つの成形方法により製造される。
【0136】
すなわち、繊維強化プラスチックの製造方法は、好ましくは、金型内に繊維を配置する工程と、上記したポリウレタン樹脂組成物を、繊維に含浸させるように、金型内の繊維に供給する工程と、繊維に含浸したポリウレタン樹脂組成物を硬化させる工程と、を含む。
【0137】
RTM法およびRIM法では、金型の内寸に合わせて予め裁断および成型した繊維を、金型内に配置し、金型を上記の予備加熱温度に加熱する。そして、ポリイソシアネート成分(A剤)およびポリオール成分(B剤)を混合した後、予備加熱された金型に注入し、繊維に含浸させて上記条件で硬化させる。
【0138】
また、HP-RTM法では、上記RTM法において、金型内を減圧し、加圧したポリウレタン樹脂組成物(A剤およびB剤)を高速で型内に注入し、繊維に含浸させ、上記条件で硬化させる。具体的には、特表2015-533352号公報に記載されている製造方法となる。
【0139】
WCM法では、上記HP-RTM法において、金型を上記の予備加熱温度に加熱した後、金型の内寸に合わせて予め裁断および成型した繊維を、金型内に配置し、その後、混合したポリウレタン樹脂組成物(A剤およびB剤)を、金型内を減圧することなく、金型に配置した繊維上に塗布(または滴下)して含浸させ、上記条件で硬化させる。
【0140】
これら成形方法(RTM法、HP-RTM法、WCM法およびRIM法)における成形温度は、繊維に含浸したポリウレタン樹脂組成物を硬化させるときの温度であって、例えば、25℃(室温)以上、好ましくは、35℃以上、例えば、250℃以下、好ましくは、200℃以下、さらに好ましくは、150℃以下である。
【0141】
また、上記の成形方法における成形時間は、繊維に含浸したポリウレタン樹脂組成物の硬化に要する時間であって、例えば、10秒以上、好ましくは、20秒以上、例えば、5分以下、好ましくは、3分以下である。
【0142】
以上によって、繊維強化プラスチックが製造される。
【0143】
このような繊維強化プラスチックは、繊維と、繊維に含浸されている上記のポリウレタン樹脂組成物の硬化物とを備えるので、機械強度の向上を図ることができながら、効率よく製造されることができる。
【0144】
具体的には、予め成形された繊維を金型内に配置した後、上記のポリウレタン樹脂組成物を、上記の予備加熱温度に加熱された金型内に注入する。このとき、ポリウレタン樹脂組成物は、ポットライフが向上しているので、予備加熱温度が上記の範囲であっても、金型内において、十分に流動でき、繊維に円滑に含浸される。
【0145】
そして、ポリウレタン樹脂組成物は、硬化時間が低減されているので、金型内において比較液短い時間で硬化し、その後、繊維およびポリウレタン樹脂を備える繊維強化プラスチックは、脱型される。つまり、繊維強化プラスチックは、比較的短い時間で脱型できるので、脱型性に優れている。
【0146】
そのため、ポリウレタン樹脂組成物を繊維に円滑に含浸できながら、繊維強化プラスチックの製造に要する時間の低減を図ることができる。その結果、繊維強化プラスチックの製造効率の向上を図ることができる。
【0147】
また、ポリウレタン樹脂組成物を繊維に円滑に含浸できることから、ポリウレタン樹脂が元来有する優れた衝撃強度や表面光沢度、良好な表面粗度を有する繊維強化プラスチック成形品を製造することができる。
【0148】
このような繊維強化プラスチックは、例えば、乗物(自動車、航空機、自動二輪車、自転車)の部材(例えば、構造部材、内装材、外装材、ホイール、スポーク、座席シートテーブルなど)として、好適に用いられる。
【0149】
また、繊維強化プラスチックは、上記の他、例えば、ヘルメットの外殻材、ロボット部材、船舶部材、ヨット部材、ロケット部材、事務用いす、ヘルスケア部材(介護用義足、介護用いす、ベッド、アイウェアフレームなど)、ウェアラブル部材の構造材、スポーツ用品(ゴルフクラブのシャフト、テニスラケットのフレーム、スキー板、スノーボードなど)、アミューズメント部材(ジェットコースターなど)、ビル・住宅などの建築資材、製紙用ロール、電子部品(スマートフォン、タブレットなど)の筐体、発電装置(火力発電、水力発電、風力発電、原子力発電)の構造体、タンクローリーなどの構造体などとして、好適に用いられる。
【実施例】
【0150】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、それらに限定されない。以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。
【0151】
<原料の準備>
<<ポリイソシアネート成分の準備>>
準備例1(イソシアネート(1))
商品名コスモネートM-200(三井化学SKCポリウレタン社製、ポリフェニルメタンポリイソシアネート、イソシアネート基含有率=31.2質量%)を、イソシアネート(1)として準備した。
【0152】
準備例2(イソシアネート(2))
商品名コスモネートLK(三井化学SKCポリウレタン社製、ポリフェニルメタンポリイソシアネートのカルボジイミド誘導体、イソシアネート基含有率=28.3質量%、カルボジイミド基含有率=30質量%)を、イソシアネート(2)として準備した。
【0153】
準備例3(イソシアネート(3))
国際公開第2009/051114号公報の製造例3に記載の方法で得られた1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを、イソシアネート(3)として準備した。
【0154】
イソシアネート(3)のイソシアネート基含有率は43.3質量%であった。
【0155】
<<ポリオール成分の準備>>
準備例4(ポリオール(1))
商品名アクトコールDiol-280(三井化学SKCポリウレタン社製、ポリオキシプロピレンポリオール、数平均分子量=281、水酸基価400mgKOH/g、平均官能基数=2、25℃、粘度=63mPa・s)を、ポリオール(1)として準備した。
【0156】
準備例5(ポリオール(2))
商品名ユニオールDB-400(日油社製、ポリオキシプロピレンビスフェノールAエーテル)を、ポリオール(2)として準備した。
【0157】
<<有機金属触媒の準備>>
準備例6(有機金属触媒(1))
商品名SCAT-24(日東化成社製、モノブチル錫トリオクテート、分子量=605.43、錫含有量=1.65mmol/g)を、有機金属触媒(1)として準備した。
【0158】
準備例7(有機金属触媒(2))
商品名ヘキソエートカリウム13%(東栄化工社製、オクチル酸カリウム、カリウム含有量=3.3mmol/g)を、有機金属触媒(2)として準備した。
【0159】
<<反応遅延剤の準備>>
準備例8(反応遅延剤(1))
ピコリン酸(本発明の反応遅延剤)を、反応遅延剤(1)として準備した。
【0160】
準備例9(反応遅延剤(2))
ニコチン酸(本発明の反応遅延剤)を、反応遅延剤(2)として準備した。
【0161】
準備例10(反応遅延剤(3))
2,6-ピリジンジカルボン酸(本発明の反応遅延剤)を、反応遅延剤(3)として準備した。
【0162】
準備例11(反応遅延剤(4))
2-ピリジニル酢酸(本発明の反応遅延剤)を、反応遅延剤(4)として準備した。
【0163】
準備例12(反応遅延剤(5))
2-ピペリジンカルボン酸(本発明の反応遅延剤)を、反応遅延剤(5)として準備した。
【0164】
準備例13(反応遅延剤(6))
プロリン(本発明の反応遅延剤)を、反応遅延剤(6)として準備した。
【0165】
準備例14(反応遅延剤(7))
商品名DP-4(大八化学工業社製、酸性リン酸ブチルエステル、他の反応遅延剤)を、反応遅延剤(7)として準備した。
【0166】
準備例15(反応遅延剤(8))
イソニコチン酸(他の反応遅延剤)を、反応遅延剤(8)として準備した。
【0167】
準備例16(反応遅延剤(9))
2-ピリジンプロピオン酸(他の反応遅延剤)を、反応遅延剤(9)として準備した。
【0168】
準備例17(反応遅延剤(10))
4-ピペリジンカルボン酸(他の反応遅延剤)を、反応遅延剤(10)として準備した。
【0169】
準備例18(エポキシ成分)
商品名エピコート807(三菱化学社製、ビスフェノールF型エポキシ樹脂)を、エポキシ成分として準備した。
【0170】
準備例19(エポキシ樹脂硬化剤)
商品名ジェファーミンT-403(ハンツマン社製、ポリエーテルアミン)を、エポキシ樹脂硬化剤として準備した。
【0171】
準備例20(炭素繊維(1))
SIGRATEX C B300-45/ST(SGLカーボン社製、ノンクリンプ織物)を、炭素繊維(1)として準備した。
【0172】
準備例21(炭素繊維(2))
商品名ベスファイト W-7161(東邦テナックス社製、PAN系炭素繊維、12K綾織)を、炭素繊維(2)として準備した。
【0173】
<ポリウレタン樹脂および繊維強化プラスチックの製造>
実施例1~33および比較例1~8、12~17
以下の方法により、ポリウレタン樹脂組成物を調製した。各成分の量は、表1~7に記載の通りである。
【0174】
すなわち、表1~7に示した成分(原料)中、ポリイソシアネート成分および炭素繊維以外の各成分を秤量し、それらを、表1~7の配合処方に従って配合し、均一になるように攪拌混合することにより、B剤を調製した。なお、B剤の温度を40℃に調整した。
【0175】
別途用意したポリイソシアネート成分を、表1~7の配合処方に従って秤量し、それらを均一になるように攪拌混合することにより、A剤を調製した。なお、A剤の温度を40℃に調整した。
【0176】
その後、B剤にA剤を加えて、それらを真空減圧により脱気しながら高速撹拌機(回転数5000rpm)によって5秒間攪拌して、ポリウレタン樹脂組成物を調製した。
【0177】
そして、ポリウレタン樹脂組成物を、予め90℃に加熱(予熱)した一面開放金型(厚み2mm、深さ100mm、幅300mm)に手早く注入し、90℃において180秒で硬化させ、ポリウレタン樹脂(成形品、厚み2mm、縦100mm、横300mm)を製造した。
【0178】
なお、実施例7、17、18、20、21では、一面開放金型内に、表1および表4に示す炭素繊維を設置し、繊維強化プラスチックを製造した。表中において、Vf(%)は、繊維体積含有率を示す。繊維体積含有率は、繊維の、繊維強化プラスチックに対する、体積についての百分率を示す。
【0179】
比較例9~11
A剤をエポキシ樹脂硬化剤に変更し、B剤をエポキシ成分に変更し、表4に記載の配合量でエポキシ樹脂組成物を調製したこと、および、金型の予熱温度および成形温度を表4に示す値に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、エポキシ樹脂を製造した。
【0180】
なお、比較例11では、一面開放金型内に、表4に示す炭素繊維を設置し、繊維強化プラスチックを製造した。表中において、Vf(%)は、繊維体積含有率を示す。繊維体積含有率は、繊維の、繊維強化プラスチックに対する、体積についての百分率を示す。
【0181】
<評価>
実施例1~33および比較例1~17について、以下の通り評価を実施した。
【0182】
<<ポットライフ(秒)>>
上記したポリウレタン樹脂組成物およびエポキシ樹脂組成物のポットライフを測定した。その結果を表1~7に示す。
【0183】
ポリウレタン樹脂組成物またはエポキシ樹脂組成物を、100mLのポリカップに挿入し、ポリウレタン組成物またはエポキシ成分の粘度をB型粘度計で計測した。
【0184】
なお、ポットライフの測定開始は、A剤(ポリイソシアネート成分またはエポキシ樹脂硬化剤)と、B剤(ポリオール成分またはエポキシ成分)との混合を開始した瞬間とした。
【0185】
また、ポットライフの測定終了は、ポリオール成分とイソシアネート成分の反応によりポリウレタン樹脂組成物(または、エポキシ樹脂硬化剤とエポキシ成分の反応によりエポキシ樹脂組成物)の粘度増加が始まり、流動性が低下し始める時間(B型粘度計で500mPa・sを超えた時間)とした。なお、各成分の配合量は、表1~表7に記載の通りである。
【0186】
<<180秒脱型性>>
以下の方法により、上記したポリウレタン樹脂およびエポキシ樹脂の180秒脱型性を評価した。その結果を表1~7に示す。
【0187】
上記の一面開放金型にポリウレタン樹脂組成物またはエポキシ樹脂組成物を注入後、90℃(比較例10および11では140℃)において180秒で硬化させ、次いで、金型から硬化物(ポリウレタン樹脂またはエポキシ樹脂)を取り出し、このときの硬化物の状態を目視により観察した。
○:完全に硬化しており、未硬化部分がなかった。
△:未硬化部分は観測されないが、硬化が不十分であり、反りや折れ曲がりが起こった。
×:未硬化の液状樹脂部分、もしくは、金型内面に付着樹脂が観測された。
<<曲げ物性>>
繊維強化プラスチックの曲げ強さおよび曲げ弾性率を、JIS K 7074に基づいて測定した。その結果を表4に示す。
<<パンクチャー試験>>
繊維強化プラスチックの衝撃強度を示すパンクチャー試験を、JIS K 7211-2に基づいて実施し、最大衝撃力時エネルギー、パンクチャーエネルギーを測定した。その結果を表4に示す。
<<表面光沢度>>
繊維強化プラスチックの鏡面光沢度を、JIS Z 8741に基づいて測定した。その結果を表4に示す。
<<表面粗度>>
触針式表面粗さ測定機(東京精密社製、製品名SURFCOM 1400D)を用いてJIS B 0601に定義されたRaおよびRzを求め、表面粗度(Ra/Rz)を算出した。その結果を表4に示す。
【0188】
【0189】
【0190】
【0191】
【0192】
【0193】
【0194】
【0195】
なお、上記発明は、本発明の例示の実施形態として提供したが、これは単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。当該当技術分野の当業者によって明らかな本発明の変形例は、後記請求の範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0196】
本発明のポリウレタン樹脂組成物は、例えば、ポリウレタン樹脂の原料などの各種産業の工業材料として好適に用いられる。本発明のポリウレタン樹脂および成形品は、例えば、繊維強化プラスチック、構造材用プラスチック、構造材芯材用プラスチックなどに好適に用いられる。本発明の繊維強化プラスチックは、例えば、乗物の部材などの各種産業製品として好適に用いられる。本発明の繊維強化プラスチックの製造方法は、各種産業製品の製造に好適に用いられる。