(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】タイヤ用ゴム組成物及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
C08L 21/00 20060101AFI20221207BHJP
C08K 5/25 20060101ALI20221207BHJP
C08K 5/40 20060101ALI20221207BHJP
C08K 5/44 20060101ALI20221207BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20221207BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20221207BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20221207BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
C08L21/00
C08K5/25
C08K5/40
C08K5/44
C08K3/013
C08K3/04
C08K3/36
B60C1/00 Z
(21)【出願番号】P 2019558187
(86)(22)【出願日】2018-11-30
(86)【国際出願番号】 JP2018044215
(87)【国際公開番号】W WO2019111818
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2021-10-11
(31)【優先権主張番号】P 2017234579
(32)【優先日】2017-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 由徳
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-221262(JP,A)
【文献】特開2016-166321(JP,A)
【文献】特開平11-292834(JP,A)
【文献】国際公開第2014/148453(WO,A1)
【文献】特開2002-069236(JP,A)
【文献】特開2007-023070(JP,A)
【文献】特開2009-113794(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
B60C 1/00-19/12
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分(A)と、
下記式(I)で表される化合物及び下記式(II)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1つの化合物(B)と、
チウラム系加硫促進剤を含む少なくとも2種以上の加硫促進剤を含む加硫促進剤(C)と、
充填材(D)と
を含有
し、前記化合物(B)の分子量が、200以下であるタイヤ用ゴム組成物。
【化1】
〔式(I)中、A
1は、少なくとも2つの極性基を有するアリール基であり、該極性基は同じであっても、異なっていてもよい。R
11及びR
12は、それぞれ独立して、水素原子、アシル基、アミド基、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基である。
式(II)中、A
2は、少なくとも2つの極性基を有する炭素数6~15のアリール基であり、該極性基は同じであっても、異なっていてもよい。R
13は、炭素数1~30の2価の飽和若しくは不飽和脂肪族基、炭素数5~10のシクロアルキレン基又は炭素数5~10のアリーレン基である。〕
【請求項2】
前記A
1及び前記A
2が有する極性基の少なくとも1つが、それぞれ独立して、ヒドロキシ基、アミノ基又はニトロ基である請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記A
1及び前記A
2が有する極性基の少なくとも1つが、ヒドロキシ基である請求項1又は2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
前記A
1及び前記A
2が有する極性基の少なくとも2つが、ヒドロキシ基である請求項1~3のいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
前記A
1及び前記A
2が、それぞれ独立して、フェニル基又はナフチル基である請求項1~4のいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項6】
前記R
11及びR
12が、いずれも水素原子である請求項1~5のいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項7】
前記化合物(B)の融点が、80℃以上、250℃未満である請求項1~
6のいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項8】
前記化合物(B)の含有量が、前記ゴム成分(A)100質量部に対して0.1質量部以上2質量部以下である請求項1~
7のいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項9】
前記加硫促進剤(C)がスルフェンアミド系加硫促進剤を含む請求項1~
8のいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項10】
前記充填材(D)が、カーボンブラック及びシリカからなる群より選択される少なくとも1つを含む請求項1~
9のいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項11】
前記チウラム系加硫促進剤の含有量が、前記ゴム成分(A)100質量部に対して2.0質量部以下である請求項1~
10のいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項12】
前記充填材(D)が、シリカを含み、該シリカの含有量が、前記ゴム成分(A)100質量部に対して20質量部以下である請求項1~
11のいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項13】
請求項1~
12のいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物を用いたタイヤ。
【請求項14】
請求項1~
12のいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物を用いたパッドゴムを含む請求項
13に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物及びタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
大型車両用、重荷重用空気入りタイヤには、低燃費性およびタイヤの寿命の観点から、低発熱性を損なうことなく、耐摩耗性を向上させることが要求され、さらには、耐亀裂進展性等の耐破壊性も重要な特性となっている。
このような課題に対して、例えば、特許文献1では、発熱性を悪化させることなく、耐チッピング性を改良した重荷重タイヤトレッド用ゴム組成物を得るために、重荷重タイヤトレッド用ゴム組成物を、(i)天然ゴム/合成ポリイソプレンゴムを主体とした加硫可能なゴム100重量部、(ii)窒素吸着比表面積(N2SA)が90m2/g以上のカーボンブラック及び、必要に応じ、シリカを合計量で40~60重量部、(iii)ガムロジン、変性ガムロジン、C5及びジシクロペンタジエン(DCPD)から選ばれた少なくとも一種の樹脂(a)0.5~5.0重量部、(iv)特定構造の環状ポリスルフィド化合物(b)0.1~10重量部を含み、かつ前記樹脂(a)と環状ポリスルフィド化合物(b)の配合量(ゴム100重量部当りの重量部)が式1(a+b=1.0~10)及び式2(b/a=0.1~10)である構成とすることが提案されている。
【0003】
また、例えば、特許文献2では、高弾性で、引張強度が高く、発熱性及び疲労性の優れたゴム組成物を提供するために、ゴム組成物を、加硫可能なゴム(A)100重量部に対し、融点が100~180℃のポリアミドエラストマー(B)0.1~50重量部と無機補強剤(C)1~100重量部を含有する構成とすることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2005-225909号公報
【文献】特開2014-062259号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
タイヤの耐亀裂性の向上手法としてはタイヤ用ゴム組成物に含まれるカーボンブラックを増量したり、微粒径化したりする方法があるが、低発熱化とは相反する。そのため、特許文献1及び2に記載の手法では、低発熱性と耐亀裂性のバランスに優れるタイヤを得ることができなかった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑み、低発熱性と耐亀裂性のバランスに優れるタイヤを製造することができるタイヤ用ゴム組成物及び低発熱性と耐亀裂性のバランスに優れるタイヤを提供することを目的とし、当該目的を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
<1> ゴム成分(A)と、下記式(I)で表される化合物及び下記式(II)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1つの化合物(B)と、チウラム系加硫促進剤を含む少なくとも2種以上の加硫促進剤を含む加硫促進剤(C)と、充填材(D)とを含有するタイヤ用ゴム組成物である。
【0008】
【0009】
式(I)中、A1は、少なくとも2つの極性基を有するアリール基であり、該極性基は同じであっても、異なっていてもよい。R11及びR12は、それぞれ独立して、水素原子、アシル基、アミド基、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基である。
式(II)中、A2は、少なくとも2つの極性基を有する炭素数6~15のアリール基であり、該極性基は同じであっても、異なっていてもよい。R13は、炭素数1~30の2価の飽和若しくは不飽和脂肪族基、炭素数5~10のシクロアルキレン基又は炭素数5~10のアリーレン基である。
【0010】
<2> 前記A1及び前記A2が有する極性基の少なくとも1つが、それぞれ独立して、ヒドロキシ基、アミノ基又はニトロ基である<1>に記載のタイヤ用ゴム組成物である。
<3> 前記A1及び前記A2が有する極性基の少なくとも1つが、ヒドロキシ基である<1>又は<2>に記載のタイヤ用ゴム組成物である。
<4> 前記A1及び前記A2が有する極性基の少なくとも2つが、ヒドロキシ基である<1>~<3>のいずれか1つに記載のタイヤ用ゴム組成物である。
<5> 前記A1及び前記A2が、それぞれ独立して、フェニル基又はナフチル基である<1>~<4>のいずれか1つに記載のタイヤ用ゴム組成物である。
<6> 前記R11及びR12が、いずれも水素原子である<1>~<5>のいずれか1つに記載のゴム組成物である。
【0011】
<7> 前記化合物(B)の分子量が、200以下である<1>~<6>のいずれか1つに記載のタイヤ用ゴム組成物である。
<8> 前記化合物(B)の融点が、80℃以上、250℃未満である<1>~<7>のいずれか1つに記載のタイヤ用ゴム組成物である。
<9> 前記化合物(B)の含有量が、前記ゴム成分(A)100質量部に対して0.1質量部以上2質量部以下である<1>~<8>のいずれか1つに記載のタイヤ用ゴム組成物である。
【0012】
<10> 前記加硫促進剤(C)がスルフェンアミド系加硫促進剤を含む<1>~<9>のいずれか1つに記載のタイヤ用ゴム組成物である。
<11> 前記充填材(D)が、カーボンブラック及びシリカからなる群より選択される少なくとも1つを含む<1>~<10>のいずれか1つに記載のタイヤ用ゴム組成物である。
<12> 前記チウラム系加硫促進剤の含有量が、前記ゴム成分(A)100質量部に対して2.0質量部以下である<1>~<11>のいずれか1つに記載のタイヤ用ゴム組成物である。
<13> 前記充填材(D)が、シリカを含み、該シリカの含有量が、前記ゴム成分(A)100質量部に対して20質量部以下である<1>~<12>のいずれか1つに記載のタイヤ用ゴム組成物である。
【0013】
<14> <1>~<13>のいずれか1つに記載のタイヤ用ゴム組成物を用いたタイヤである。
<15> <1>~<13>のいずれか1つに記載のタイヤ用ゴム組成物を用いたパッドゴムを含む<14>に記載のタイヤである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、低発熱性と耐亀裂性のバランスに優れるタイヤを製造することができるタイヤ用ゴム組成物及び低発熱性と耐亀裂性のバランスに優れるタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明のタイヤの幅方向断面図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<ゴム組成物>
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ゴム成分(A)と、下記式(I)で表される化合物及び下記式(II)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1つの化合物(B)と、チウラム系加硫促進剤を含む少なくとも2種以上の加硫促進剤を含む加硫促進剤(C)と、充填材(D)とを含有する。
なお、タイヤ用ゴム組成物を単にゴム組成物と称することがある。
【0017】
【0018】
式(I)中、A1は、少なくとも2つの極性基を有するアリール基であり、該極性基は同じであっても、異なっていてもよい。R11及びR12は、それぞれ独立して、水素原子、アシル基、アミド基、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基である。
式(II)中、A2は、少なくとも2つの極性基を有する炭素数6~15のアリール基であり、該極性基は同じであっても、異なっていてもよい。R13は、炭素数1~30の2価の飽和若しくは不飽和脂肪族基、炭素数5~10のシクロアルキレン基又は炭素数5~10のアリーレン基である。
【0019】
本発明のタイヤ用ゴム組成物が上記構成であることで、低発熱性と耐亀裂性のバランスに優れるタイヤを製造することができる理由は定かではないが、次の理由によるものと推察される。
化合物(B)において、A1及びA2で示された2つ以上の極性基を有するアリール基ないし芳香環が充填材(D)と高い親和性を有し、且つ、式(I)においてはヒドラジド骨格を有する部分が、また、式(II)においてはヒドラゾン骨格を有する部分が、ゴム成分(A)と高い親和性を有する。そのため、化合物(B)がゴム組成物中に配合されることで、ゴム成分(A)と充填材(D)との化学的相互作用を大きく向上させることができる。それによって、充填材(D)同士の擦れ合いに起因したヒステリシスを低減できる結果、従来に比べて極めて優れた低発熱性を得ることができると考えられる。加えて、ゴム組成物中の充填材(D)の分散性向上によって、加硫ゴムの補強性を向上することができると考えられる。
更に耐熱性に優れた加硫促進剤であるチウラム系加硫促進剤と、チウラム系加硫促進剤以外の加硫促進剤を用いることで、加硫ゴムのモジュラスを大幅に向上することができるため、耐亀裂性に優れると考えられる。
従って、本発明のタイヤ用ゴム組成物から得られるタイヤは、低発熱性と耐亀裂性のバランスに優れると考えられる。
以下、本発明のタイヤ用ゴム組成物及びタイヤについて、詳細に説明する。
【0020】
〔ゴム成分(A)〕
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ゴム成分(A)を含有する。
ゴム成分(A)としては、天然ゴム(NR)及び合成ジエン系ゴムからなる群より選択される少なくとも1種のジエン系ゴムが挙げられる。ゴム成分は変性されていてもよい。
合成ジエン系ゴムとして、具体的には、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ブタジエン-イソプレン共重合体ゴム(BIR)、スチレン-イソプレン共重合体ゴム(SIR)、スチレン-ブタジエン-イソプレン共重合体ゴム(SBIR)等、及びそれらの変性ゴムが挙げられる。
ジエン系ゴムは、化合物(B)との親和性の観点から、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム、ポリブタジエンゴム、及びイソブチレンイソプレンゴム、並びにそれらの変性ゴムが好ましく、天然ゴム及びポリブタジエンゴムがより好ましく、天然ゴムが更に好ましい。
ジエン系ゴムは、一種単独で用いてもよいし、二種以上をブレンドして用いてもよい。
【0021】
ゴム成分は、化合物(B)との親和性を上げ、得られるタイヤの低発熱性と耐亀裂性を向上する観点から、天然ゴムを55質量%以上含有することが好ましく、65質量%以上含有することがより好ましく、75質量%以上含有することが更に好ましい。ゴム成分中の天然ゴムの割合の上限は100質量%である。
ゴム成分は、本発明の効果を損なわない限度においてを含んでいてもよい。
【0022】
〔化合物(B)〕
本発明のゴム組成物は、式(I)で表される化合物及び式(II)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1つの化合物(B)を含む。
本発明のゴム組成物が化合物(B)を含むことで、高い効率でゴム成分(A)と充填材(D)とのカップリング効果が得られ、ゴム組成物における充填材(D)の分散性を高めることができる。充填材(D)の分散性が高められたゴム組成物から得られたタイヤは、低発熱性に優れ、また、耐亀裂性に優れる。
【0023】
[式(I)で表される化合物]
式(I)で表される化合物は、カルボン酸ヒドラジド化合物であり、下記構造を有する。
【0024】
【0025】
式(I)中、A1は、少なくとも2つの極性基を有するアリール基であり、該極性基は同じであっても、異なっていてもよい。R11及びR12は、それぞれ独立して、水素原子、アシル基、アミド基(-CONH2)、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基である。
【0026】
式(I)で表される化合物は、A1で表されるアリール基が、カーボンブラック等の充填材(D)と高い親和性を有し、且つ、ヒドラジド骨格を有する部分がゴム成分(A)と高い親和性を有するため、ゴム組成物中に配合されることで、ゴム成分(A)と充填材(D)との化学的相互作用を大きく向上させることができる。それによって、充填材(D)同士の擦れ合いに起因したヒステリシスを低減できる結果、従来に比べて極めて優れた低発熱性を得ることができ、低発熱性を得ることができる。加えて、充填材(D)の分散性向上によって、よりすぐれた補強性についても実現することができる。
また、ゴム成分(A)と充填材(D)との化学的相互作用が大きく向上する結果、加硫ゴムの低発熱性を維持しつつ、スコーチ性が高まるため(スコーチ時間が長くなるため)、加工性についても向上することができる。
以下、式(I)について説明する。
【0027】
式(I)のA1は、アリール基である。該アリール基は、任意の位置に少なくとも2つの極性基を有し、該極性基は同じであっても、異なっていてもよく、極性基の位置は、アリール基の芳香環中のどこであってもよい。アリール基が2つ以上の極性基を有することで、カーボンブラック等の充填材(D)と高い親和性を得ることができる。
アリール基は、炭素数が6~20であることが好ましく、6~14であることがより好ましく、6~10であることが更に好ましい。アリール基は、具体的には、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、トリフェニレニル基等が挙げられる。中でも、充填材(D)との親和性をより向上し、得られる加硫ゴムの低発熱性に優れ、芳香環の数を減らすことができ、コスト的にも有利であり、実用性の点でも優れることから、アリール基は、フェニル基又はナフチル基であることが好ましく、フェニル基であることがより好ましい。
【0028】
アリール基が有する極性基の種類は特に限定されず、例えば、アミノ基、ニトリル基、アンモニウム基、アミド基(-CONH2)、ヒドラゾ基(-NH-NH-R;Rはアルキル基又はアリール基)、アゾ基(-N=N-R;Rはアルキル基又はアリール基)、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アシル基(-CO-R;Rはアルキル基又はアリール基)、エポキシ基、オキシカルボニル基(-CO-O-R;Rはアルキル基又はアリール基)、アルコキシシリル基、アルキルアミノ基、ニトロ基等が挙げられる。
ヒドラゾ基、アゾ基、カルボニル基、オキシカルボニル基、アルコキシシリル基、及びアルキルアミノ基が有するアルキル基は、炭素数1~6の直鎖状または分岐状のアルキル基が好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基等が挙げられる。
ヒドラゾ基、アゾ基、カルボニル基、及びオキシカルボニル基が有するアリール基は、炭素数が6~10であることが好ましい。具体的には、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
以上の中でも、充填材(D)との親和性をより向上し、加硫ゴムの低発熱性と耐亀裂性のバランスをより向上することができることから、極性基は、ヒドロキシ基、アミノ基又はニトロ基であることが好ましく、ヒドロキシ基であることがより好ましく、少なくとも1つがヒドロキシ基であることが更に好ましく、少なくとも2つがヒドロキシ基であることが特に好ましい。アリール基が有する極性基は2つであることが好ましい。
【0029】
式(I)のR11及びR12は、それぞれ独立して、水素原子、アシル基(-CO-R;Rはアルキル基又はアリール基)、アミド基(-CONH2)、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基である。
R11及びR12で表されるアルキル基及びアシル基が有するアルキル基は、炭素数が1~6であることが好ましく、直鎖状であっても分岐状であってもよい。具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基等が挙げられる。
シクロアルキル基は、炭素数が5~10であることが好ましく、具体的には、例えば、シクロヘプチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基、シクロデカニル等が挙げられる。
R11及びR12で表されるアリール基及びアシル基が有するアリール基は、炭素数が6~10であることが好ましく、具体的には、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
以上の中でも、ゴム成分(A)との親和性が高く、加工性により優れ、加硫ゴムの低発熱性と耐亀裂性のバランスに優れる点から、R11及びR12は、水素原子又はアルキル基であることが好ましく、R11及びR12がいずれも水素原子であることがより好ましい。
【0030】
ここで、上述した式(I)で表される化合物の例としては、例えば、下記式(I-1)~(I-6)で表される化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
【0032】
また、式(I)で表される化合物の分子量については、200以下であることが好ましく、180以下であることがより好ましい。ゴム成分(A)の各分子との親和性が高くなり、より優れた低発熱性を得ることができ、耐亀裂性についても高めることができるからである。
【0033】
また、式(I)で表される化合物の融点については、80℃以上、250℃未満であることが好ましく、80~200℃であることがより好ましい。式(I)で表される化合物の融点を低くすることで、ゴム成分(A)の各分子との親和性が高くなり、より優れた低発熱性を得ることができ、耐亀裂性についても高めることができるからである。
次に、下記式(II)で表される化合物について説明する。
【0034】
【0035】
式(II)中、A2は、少なくとも2つの極性基を有する炭素数6~15のアリール基であり、該極性基は同じであっても、異なっていてもよい。R13は、炭素数1~30の2価の飽和若しくは不飽和脂肪族基、炭素数5~10のシクロアルキレン基又は炭素数5~10のアリーレン基である。
以下、式(II)について説明する。
【0036】
式(II)で表される化合物は、A2で表される少なくとも2つの極性基を有する炭素数6~15のアリール基がカーボンブラック等の充填材(D)と高い親和性を有し、且つ、ヒドラゾン骨格を有する部分がゴム成分と高い親和性を有するため、ゴム組成物中に配合されることで、ゴム成分(A)とカーボンブラック等の充填材(D)との化学的相互作用を大きく向上させることができる。それによって、充填材(D)同士の擦れ合いに起因したヒステリシスを低減できる結果、従来に比べて極めて優れた低発熱性を得ることができる。加えて、充填材(D)の分散性向上によって、よりすぐれた補強性についても実現できる。
また、ゴム成分(A)と充填材(D)との化学的相互作用が大きく向上する結果、加硫ゴムの低発熱性と耐亀裂性のバランスを保ちつつ、スコーチ性が高まるため(スコーチ時間が長くなるため)、加工性についても向上することができる。
【0037】
式(II)中のA2で表されるアリール基が有する極性基の数は、2つ以上である。芳香環中に2つ以上の極性基を有することで、カーボンブラック等の充填材(D)と高い親和性を得ることができるためであり、2つ未満の場合には、充填材(D)との親和性が十分に得られず、加硫ゴムの低発熱性と耐亀裂性のバランスを低下させるおそれがある。アリール基が有する極性基は2つであることが好ましい。
A2で表されるアリール基が有する極性基は、式(I)のA1で表されるアリール基が有する極性基と同じものが挙げられる。
中でも、充填材(D)との親和性をより向上し、加硫ゴムの低発熱性と耐亀裂性のバランスをより向上することができることから、極性基は、ヒドロキシ基又はアミノ基を含むことが好ましく、ヒドロキシ基を含むことがより好ましい。
【0038】
A2で表されるアリール基は、炭素数6~15のアリール基である。アリール基は、フェニル基のように芳香環1つからなる単環であってもよいし、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等のように、2つ又は3つ以上の芳香環が縮合した縮合環であってもよい。炭素数は6~10であることが好ましく、フェニル基及びナフチル基が好ましい。
R13で表される炭素数1~30の2価の飽和若しくは不飽和脂肪族基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。R13が炭素数1~30の2価の飽和若しくは不飽和脂肪族基で表されるとき、式(II)で表される化合物は、下記式(III)で表されることが好ましい。
【0039】
【0040】
式(III)中、A2は、式(II)のA2と同義であり、好ましい態様も同様である。R14及びR15は、各々独立に、水素原子、又は飽和若しくは不飽和脂肪族基を表し、R14の炭素数とR15の炭素数との合計が0~29である。
R14及びR15で表される飽和若しくは不飽和脂肪族基は、各々独立に、直鎖状であってもよいし、分岐状であってもよい。また、当該脂肪族基は、各々独立に炭素数が1~12(ただし、炭素数の合計数は29以下である)であることが好ましく、炭素数が1~8であることがより好ましく、炭素数が1~5であることが更に好ましい。
【0041】
R13で表される炭素数5~10のシクロアルキレン基は、具体的には、シクロヘプチレン基、シクロヘキシレン基、シクロオクチレン基、シクロオクチレン基、シクロデカニレン基等が挙げられる。
R13で表される炭素数5~10のアリーレン基は、例えば、シクロペンタジエニル基等が挙げられる。
以上の中でも、R13は炭素数1~30の2価の飽和若しくは不飽和脂肪族基であることが好ましい。
式(II)で表される化合物の例としては、例えば、下記式(II-1)~(II-9)で表される化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
【0043】
また、前記式(II)で表される化合物の分子量については、200以下であることが好ましく、180以下であることがより好ましい。ゴム成分(A)の各分子との親和性が高くなり、より優れた低発熱性を得ることができ、耐摩耗性についても高めることができるからである。
【0044】
式(II)で表される化合物の融点については、80℃以上、250℃未満であることが好ましく、80~200℃であることがより好ましい。式(II)で表される化合物の融点を低くすることで、ゴム成分(A)の各分子との親和性が高くなり、より優れた低発熱性を得ることができ、耐亀裂性についても高めることができるからである。
【0045】
ここで、本発明のタイヤ用ゴム組成物中の化合物(B)の含有量は、特に限定はされないが、タイヤの耐亀裂性をより向上し、低発熱性を向上する観点から、前記ゴム成分(A)100質量部に対して、0.1質量部以上2質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上1.5質量部以下であることがより好ましく、0.1質量部以上1質量部以下であることが特に好ましい。ゴム組成物中の化合物(B)の含有量が前記ゴム成分(A)100質量部に対して0.1質量部以上の場合、十分な充填材(D)の分散効果が得られるため、さらに優れた耐亀裂性及び低発熱性を実現することができ、またゴム組成物の加工性にも優れる。一方、ゴム組成物中の化合物(B)の含有量が前記ゴム成分(A)100質量部に対して2質量部以下の場合、ゴム組成物の加工性を損ねにくく、また、タイヤの強度等の他の物性が低下しにくい。
【0046】
〔加硫促進剤(C)〕
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、チウラム系加硫促進剤を含む少なくとも2種以上の加硫促進剤を含む加硫促進剤(C)を含有する。
すなわち、加硫促進剤(C)は、少なくともチウラム系加硫促進剤を含み、チウラム系加硫促進剤を含め2種以上の加硫促進剤を含む。
【0047】
(チウラム系加硫促進剤)
本発明のゴム組成物がチウラム系加硫促進剤を含有することで、加硫するゴム組成物の量が多く、加硫時間が長くなりがちな場合にも、加硫熱により効果が損なわれにくく、耐熱性に優れるため、低発熱性に優れるタイヤを製造し易い。
チウラム系加硫促進剤としては、例えば、テトラメチルチウラムモノスルフィド(TS)、テトラメチルチウラムジスルフィド(TT)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TET)、ジペンタメチレンチウラムヘキサスルフィド(TRA)、テトラブチルチウラムジスルフィド(TBT)、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBZTD)等が挙げられ、中でも、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT)及びテトラベンジルチウラムジスルフィド(TBZTD)が好ましく、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT)がより好ましい。
【0048】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ゴム成分(A)の加硫をより促進するために、チウラム系加硫促進剤以外の1種以上の加硫促進剤を含有する。
具体的には、例えば、グアジニン系、アルデヒド-アミン系、アルデヒド-アンモニア系、チアゾール系、スルフェンアミド系、チオ尿素系、ジチオカルバメート系、ザンテート系等の加硫促進剤が挙げられる。チウラム系加硫促進剤以外の加硫促進剤は1種のみ用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
以上の中でも、タイヤのモジュラスを維持する観点から、スルフェンアミド系加硫促進剤を含有することが好ましい。
【0049】
(スルフェンアミド系加硫促進剤)
スルフェンアミド系加硫促進剤としては、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-メチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-エチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-プロピル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-ペンチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-ヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-ヘプチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オクチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-2-エチルヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-デシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-ドデシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-ステアリル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジメチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジエチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジプロピル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジペンチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジヘプチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジオクチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジ-2-エチルヘキシルベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジデシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジドデシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N-ジステアリル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド等が挙げられる。
これらの中でも、反応性の観点から、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド及びN-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミドが好ましい。
【0050】
また、グアジニン系の加硫促進剤としては、1,3-ジフェニルグアニジン;ジチオカルバメート系の加硫促進剤としては、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛等が挙げられる。
【0051】
ゴム組成物中のチウラム系加硫促進剤の含有量は、タイヤの低発熱性と耐亀裂性を向上する観点から、ゴム成分(A)100質量部に対して、0.05質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましく、また、2.0質量部以下であることが好ましく、1.5質量部以下であることがより好ましく、1.0質量部以下であることが更に好ましい。
ゴム組成物中の加硫促進剤(C)の含有量は、タイヤの低発熱性と耐亀裂性を向上する観点から、ゴム成分(A)100質量部に対して、0.8質量部以上が好ましく、0.9質量部以上がより好ましく、また、2.8質量部以下であることが好ましく、2.5質量部以下であることがより好ましく、2.3質量部以下であることが更に好ましい。
チウラム系加硫促進剤以外の加硫促進剤の含有量は、加硫促進剤(C)の含有量とチウラム系加硫促進剤の含有量の差分である。
【0052】
〔充填材(D)〕
本発明のタイヤ用ゴム組成物は充填材(D)を含有する。
ゴム組成物が充填材(D)を含有することで、本発明のタイヤ用ゴム組成物の補強性を向上することができる。
充填材(D)の種類は、特に制限されず、例えば、ゴム組成物を補強する補強性充填材が用いられる。補強性充填材としては、例えば、シリカ、カーボンブラック等が挙げられる。充填材(D)は、カーボンブラック及びシリカからなる群より選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。すなわち、シリカ及びカーボンブラックのいずれか一方を単独で用いてもよいし、シリカ及びカーボンブラックの両方を用いてもよい。
【0053】
(シリカ)
シリカは特に限定されず、一般グレードのシリカ、シランカップリング剤などで表面処理を施した特殊シリカなど、用途に応じて使用することができる。シリカは、例えば、湿式シリカを用いることが好ましい。
【0054】
(カーボンブラック)
カーボンブラックは、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。カーボンブラックは、例えば、FEF、SRF、HAF、ISAF、SAFグレードのものが好ましく、HAF、ISAF、SAFグレードのものがより好ましい。
【0055】
本発明のタイヤ用ゴム組成物中の充填材(D)の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、10~100質量部であることが好ましく、30~80質量部であることがより好ましい。
ゴム組成物中の充填材(D)の含有量がゴム成分100質量部に対して、10質量部以上であることで、得られるタイヤの強度を損ねず、耐亀裂性に優れ、100質量部以下であることで、充填材(D)同士の擦れ合いに起因したヒステリシスをより低減することができる。
【0056】
化合物(B)は、シリカ及びカーボンブラックのいずれにも親和性があるが、中でもカーボンブラックとの親和性に優れることから、充填材(D)は、少なくともカーボンブラックを含むことが好ましい。
また、シリカを含有することで発熱性が低下することから、ゴム組成物は、シリカを含むこと(即ち、ゴム組成物中のシリカの含有量がゴム成分(A)100質量部に対して0質量部を超えること)もまた好ましい態様である。シリカは、ゴム成分100(A)質量部に対して20質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることが更に好ましい。
【0057】
充填材(D)中のシリカの質量(si)とカーボンブラックの質量(cb)との比(cb/si)は、100/0~40/60であることが好ましく、100/0~50/50であることがより好ましく、100/0~51/49であることが更に好ましく、95/5~60/40であることがより更に好ましい。
【0058】
〔加硫剤〕
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、加硫剤を含むことが好ましい。
加硫剤は、特に制限はなく、通常、硫黄を用い、例えば、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄等を挙げることができる。
本発明のタイヤ用ゴム組成物においては、当該加硫剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.1~10質量部が好ましい。この含有量が0.1質量部以上であることで加硫を充分に進行させることができ、10質量部以下をとすることで、加硫ゴムの耐老化性を抑制することができる。
ゴム組成物中の加硫剤の含有量はゴム成分100質量部に対して、0.5~8質量部であることがより好ましく、0.7~4質量部であることが更に好ましい。
【0059】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ゴム成分(A)、化合物(B)、加硫促進剤(C)、充填材(D)、とともに、必要に応じて、ゴム工業界で通常使用される配合剤、例えば、加硫剤軟化剤、ステアリン酸、老化防止剤、亜鉛華等を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して含有していてもよい。
【0060】
<タイヤ>
本発明のタイヤは、本発明のタイヤ用ゴム組成物を用いてなる。
本発明のタイヤは、本発明のタイヤ用ゴム組成物を用いてなることから、低発熱性と耐亀裂性のバランスに優れる。中でも、乗用車タイヤに比べ、ゴム組成物の量を多く用い、タイヤへの負担が大きいトラック・バス用タイヤ等の重荷重用タイヤの製造に適しており、特に、オフ・ザ・ロード用の重荷重用タイヤの製造に適する。
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、タイヤのトレッド、サイドウォール等のいずれの部位に用いてもよいが、リムフランジからの突き上げによる歪み、発熱などが生じ易い折り返しカーカスプライコード近傍のパッドゴムに用いることが好ましい。
【0061】
以下、本発明のタイヤ用ゴム組成物を用いたパッドゴムを含むタイヤの一例を、
図1を用いて説明する。
図1は、本発明のタイヤの幅方向断面図の一例である。
図1に示す本発明のタイヤ1は、トレッド2と、その両側に連なる一対のサイドウォール3、及び一対のビード4からなるものであり、リム7に組み付けられた状態である。
これらの各部は埋設したビード4と、図示しない他方のビード4との相互間に架装されるカーカス5と、そのカーカス5の外側でサイドウォール3を強化する複数のスチールコードからなるベルト6を備えている。カーカス5は、さらにビード4の周りでタイヤの内側から外側に折り返してタイヤ径方向外側に伸ばした折り返しカーカス(プライコード)5aを有する。そして、カーカス5及びベルト6はスチールコードなどの金属補強部材に被覆ゴムを被覆してなるカーカスプライ層及びベルトプライ層からなっている。パッドゴム9a及びパッドゴム9bは、本発明のタイヤ用ゴム組成物を用いてなり、ビード4を巻き返している折返しカーカス5aの、それぞれ、外部及び内側に隣接して配置されている。パッドゴム9bは、また、カーカス5とカーカス5との間(一方は折り返しカーカス5a)であって、スティフナー8よりも上部に配置されている。パッドゴム9a及びパッドゴム9bは、上端がタイヤ高さの半分以下、下端がビード4上端より上部に渡って配置されている。
【0062】
本発明のタイヤの製造方法は特に限定されず、常法に基づき製造することができる。
本発明のタイヤ用ゴム組成物を用いたパッドゴムを含むタイヤは、例えば、次のようにして製造することができる。
まず、ゴム成分(A)、化合物(B)、加硫促進剤(C)、充填材(D)及び必要に応じて用い得る各種成分を、ロール、インターナルミキサー等の混練り機を用いて混練りすることによってゴム組成物を調製する。次いで、このゴム組成物が未加硫の段階で、パッドゴムに加工され、タイヤ成形機上で通常の方法により貼り付け成形され、生タイヤが成形される。この生タイヤを加硫機中で加熱加圧することにより、本発明のタイヤ用ゴム組成物を用いたパッドゴムを含むタイヤが得られる。
【実施例】
【0063】
<実施例1、3~7、9、12~15、比較例1~10>
〔ゴム組成物の調製〕
表1に示す配合組成で各成分を混練し、ゴム組成物を調製した。なお、表1及び2中の成分の詳細は以下のとおりである。なお、実施例2、8、10、11、16、17は各配合組成で混錬した場合の結果の予測値である。
【0064】
1.ゴム成分(A)
NR:天然ゴム、TSR20
【0065】
2.化合物(B)
式(I)化合物1:2,6-ジヒドロキシベンゾヒドラジド〔式(I-4)で表される化合物〕
式(I)化合物2:4-アミノ-2-ヒドロキシベンゾヒドラジド〔式(I-5)で表される化合物〕
式(I)化合物3:3,5-ジヒドロキシナフタレン-2-カルボヒドラジド〔式(I-6)で表される化合物〕
【0066】
比較用化合物(B)
式(I)極性基1つ:3-ヒドロキシ-2ナフトエ酸ヒドラジド、東京化成工業株式会社製〔下記式(B-101)で表される化合物〕
【0067】
【0068】
3.加硫促進剤(C)
加硫促進剤TOT:テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド〔チウラム系加硫促進剤;大内新興化学工業株式会社製、商品名「ノクセラー TOT-N」〕
加硫促進剤NS:N-(tert-ブチル)-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド〔スルフェンアミド系加硫促進剤;三新化学工業株式会社製、商品名「サンセラー NS-G」〕
加硫促進剤MBTS:ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド〔チアゾール系促進剤;大内新興化学工業株式会社製、商品名「ノクセラー DM-P(DM)」〕
【0069】
4.充填材(D)
カーボンブラック:旭カーボン株式会社製、商品名「ASAHI#105」
シリカ:東ソー・シリカ株式会社製、商品名「ニップシールAQ」
【0070】
5.各種成分
硫黄:鶴見化学株式会社製、商品名「粉末硫黄」
ステアリン酸:ACIDCHEM社製、商品名「PALMAC1600」
ワックス:マイクロクリスタリンワックス、日本精蝋株式会社製、商品名「オゾエース0701」
老化防止剤:N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン、大内新興化学工業株式会社製、商品名「ノクラック 6C」
亜鉛華:酸化亜鉛、ハクスイテック株式会社製、商品名「3号亜鉛華」
ヒドラジド化合物:3-ヒドロキシ,N’-(1,3-ジメチルブチリデン)-2-ナフトエ酸ヒドラジド
【0071】
〔ゴム組成物の評価〕
1.低発熱性評価
各ゴム組成物を加硫して得られたゴム試料片について、粘弾性測定装置(レオメトリックス社製)を使用し、温度50℃、歪3%、周波数15Hzでtanδを測定した。比較例2のtanδを100として下記式にて指数表示した。発熱性指数が小さいほど、低発熱性に優れ、ヒステリシスロスが小さいことを示す。
発熱性指数=(各加硫ゴムのtanδ/比較例2の加硫ゴムのtanδ)×100
【0072】
2.耐亀裂性評価
各ゴム組成物を加硫して得られたゴム試料片をダンベル状に打ち抜き、中心部に1mmの予亀裂を入れたサンプルを疲労試験機にて、80℃、チャック間距離50mmで、一定応力で5Hzのストロークを与え、完全に破断するまでの回数の常用対数を、比較例2の場合を100として指数表示した。
指数値が大きい程、耐亀裂進展性に優れることを示す。
耐亀裂性指数=[(各加硫ゴムの亀裂破断回数の常用対数)/(比較例2の加硫ゴムの亀裂破断回数の常用対数)]×100
【0073】
3.低発熱性と耐亀裂性のバランス評価
発熱性指数と耐亀裂性指数とから下記式にてバランス指数を算出した。
バランス指数=[(100-発熱性指数)+(耐亀裂性指数-100)]/2
バランス指数が大きいほど、試作タイヤは低発熱性と耐亀裂性のバランスに優れる。
【0074】
【0075】
【0076】
表1及び2から、化合物(B)を含まない比較例1~3及び6~9、化合物(B)を含んでいても、チウラム系加硫促進剤を含まない比較例4及び10、並びに、化合物(B)を含み、チウラム系加硫促進剤を含んでいても、加硫促進剤を2種以上用いていない比較例5のゴム組成物から得られるタイヤは、低発熱性と耐亀裂性のバランスに優れないことがわかる。
一方、ゴム成分(A)と、化合物(B)と、チウラム系加硫促進剤を含む少なくとも2種以上の加硫促進剤を含む加硫促進剤(C)と、充填材(D)とを含有する実施例のゴム組成物から得られるタイヤは、いずれも、低発熱性と耐亀裂性のバランスに優れることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、低発熱性と耐亀裂性のバランスに優れるタイヤを製造することができるため、トラック・バス用タイヤ等の重荷重用タイヤの製造に適しており、中でも、オフ・ザ・ロード用の重荷重用タイヤの製造に適する。また、本発明のタイヤ用ゴム組成物は、リムフランジからの突き上げによる歪み、発熱などが生じ易い折り返しカーカスプライコード近傍のパッドゴムに適する。
【符号の説明】
【0078】
1 タイヤ
2 トレッド
3 サイドウォール
4 ビード
5 カーカス(プライコード)
5a 折り返しカーカス
6 ベルト
7 リム
8 スティフナー
9a パッドゴム
9b パッドゴム