(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】電池システム及び方法
(51)【国際特許分類】
H01M 8/18 20060101AFI20221207BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20221207BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20221207BHJP
H01M 8/04537 20160101ALI20221207BHJP
【FI】
H01M8/18
H01M8/04 Z
H01M8/04746
H01M8/04537
(21)【出願番号】P 2019558674
(86)(22)【出願日】2018-04-27
(86)【国際出願番号】 US2018030007
(87)【国際公開番号】W WO2018201079
(87)【国際公開日】2018-11-01
【審査請求日】2021-04-22
(32)【優先日】2017-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519297300
【氏名又は名称】イーエスエス テック インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】ESS Tech,Inc.
【住所又は居所原語表記】26440 SW Parkway Avenue,Wilsonville,Oregon 97070 United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】ソン ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ドアマス エヴァン
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2001/076000(WO,A1)
【文献】特表2016-510938(JP,A)
【文献】特表2015-520484(JP,A)
【文献】特開2006-012425(JP,A)
【文献】特開平11-031522(JP,A)
【文献】特開2003-079070(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/18
H01M 8/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レドックスフロー電池システムを、充電モード以外及び放電モード以外での前記レドックスフロー電池システムの作動を含むアイドルモードへ切り替えること、
前記アイドルモードへの切り替えに応じて、
充電閾値流量未満で電解液をポンプするアイドリング閾値流量と、電解液ポンプを非アクティブ化する非アクティブ化閾値流量との間で前記電解液ポンプを繰り返し周期的に作動させること、及び
前記充電モードへの切り替えに応じて、
前記アイドリング閾値流量よりも大きい前記充電閾値流量で前記電解液ポンプの作動を維持すること、
を備える、レドックスフロー電池システムを作動させる方法。
【請求項2】
前記放電モードへの切り替えに応じて、前記アイドリング閾値流量よりも大きい放電閾値流量で前記電解液ポンプの作動を維持することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記非アクティブ化閾値流量での前記電解液ポンプの作動は、第1の閾値期間の間維持され、前記アイドリング閾値流量での前記電解液ポンプの作動は、第2の閾値期間の間維持され、前記
第1の閾値期間は、前記第2の閾値期間よりも長い、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記
第2の閾値期間は、前記第1の閾値期間の20%未満である、請求項
3に記載の方法。
【請求項5】
前記レドックスフロー電池システムの予想される負荷需要がより高いことに応じて、前記アイドリング閾値流量がより高く調整され、前記レドックスフロー電池システムの予想される負荷需要がより低いことに応じて、前記アイドリング閾値流量がより低く調整される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記レドックスフロー電池システムの予想される負荷需要がより高いことに応じて、前記第1の閾値期間がより短く調整され、前記レドックスフロー電池システムの予想される負荷需要がより低いことに応じて、前記第1の閾値期間がより長く調整される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記レドックスフロー電池システムの予想される負荷需要がより高いことに応じて、前記第2の閾値期間は長く調整され、前記レドックスフロー電池システムの予想される負荷需要がより低いことに応じて、前記第2の閾値期間は短く調整される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
レドックスフロー電池システムが充電モード以外及び放電モード以外で作動している状態のときに、アイドルモードで前記レドックスフロー電池システムを作動させること、
前記アイドルモードで作動している際、充電閾値流量未満のアイドリング閾値流量で電解液をポンプすることを備えるアクティブ状態と、電解液ポンプを非アクティブ化することを備える非アクティブ状態との間で前記電解液ポンプを繰り返し周期的に作動させること、
放電モードへの切り替えに応じて、電解液ポンプの作動を放電閾値流量に維持すること、
を備える、レドックスフロー電池システムを作動させる方法。
【請求項9】
前記充電モードへの切り替えに応じて、前記充電閾値流量で前記電解液ポンプの作動を維持することをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記アクティブ状態と前記非アクティブ状態との間で前記電解液ポンプを周期的に作動させることは、
電力モジュールの電圧が第2の閾値電圧を超えて増加することに応じて前記アクティブ状態から前記非アクティブ状態に切り替えること、
電力モジュールの電圧が第1の閾値電圧を下回ることに応じて前記非アクティブ状態から前記アクティブ状態に切り替えること、
を含み、
前記第1の閾値電圧は前記第2の閾値電圧より低い、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の閾値電圧は、
前記第2の閾値電圧よりも低い、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記レドックスフロー電池システムの予想される負荷需要がより高いことに応じて、前記アイドリング閾値流量がより高く調整され、前記レドックスフロー電池システムの予想される負荷需要がより低いことに応じて、前記アイドリング閾値流量がより低く調整される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記レドックスフロー電池システムの予想される負荷需要がより高いことに応じて、前記第1の閾値電圧が高く調整され、前記レドックスフロー電池システムの予想される負荷需要がより低いことに応じて、前記第1の閾値電圧が低く調整される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記レドックスフロー電池システムの予想される負荷需要がより高いことに応じて、前記第2の閾値電圧が高く調整され、前記レドックスフロー電池システムの予想される負荷需要がより低いことに応じて、前記第2の閾値電圧が低く調整される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
レドックスフロー電池セルをそれぞれ含む複数のレドックスフロー電池セルスタックを含む電力モジュール、
電解液タンクから前記電力モジュールへ電解液を送ることができる電解液ポンプ、
レドックスフロー電池システムをアイドルモードに切り替えるための実行可能な命令を含むコントローラを備えた電力制御システム、
を備え、
前記アイドルモードは、充電モード以外及び放電モード以外の前記レドックスフロー電池システムの作動を含み、
前記アイドルモードへの切り替えに応じて、充電閾値流量未満で電解液をポンプするアイドリング閾値流量と、前記電解液ポンプを非アクティブ化する非アクティブ化閾値流量との間で前記電解液ポンプを繰り返し周期的に作動させ、
前記充電モードへの切り替えに応じて、前記電解液ポンプの作動を前記充電閾値流量に維持する、
レドックスフロー電池システム。
【請求項16】
前記電解液に熱的に連結されたヒーターをさらに備え、
前記実行可能な命令は、前記アイドルモードへの切り替えに応じて、電解液の温度をアイドリング閾値温度まで低下させることを含む、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記レドックスフロー電池システムの予想される負荷需要がより高いことに応じて、前記アイドリング閾値温度を上昇させ、前記レドックスフロー電池システムの予想される負荷需要がより低いことに応じて、前記アイドリング閾値温度を低下させる、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
前記アイドルモードへの切り替えに応じて、パワーエレクトロニクスが停止される、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記アイドリング閾値温度は、それ以下で電解液沈殿が生じる温度に相当する、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記アイドリング閾値温度は、前記充電モード及び前記放電モードにおける電解液の温度より低い、請求項19に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、「電池システム及び方法」と題され、2017年4月28日に出願された米国仮出願第62/491,954号に対する優先権を主張する。すべての目的のため、上記出願の全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(政府支援の承認)
本発明は、DOE、ARPA-Eオフィスによって与えられた嘱託番号DEAR0000261の下で政府の支援を受けてなされた。政府は、本発明に所定の権利を有する。
【0003】
本明細書は、一般に、レドックスフロー電池システム及びレドックスフロー電池システムを作動させる方法に関する。
【背景技術】
【0004】
レドックスフロー電池は、電力及び容量を独立してスケーリングする能力、及び最小限の性能損失で数千サイクルにわたって充電及び放電する能力により、グリッドスケールの貯蔵用途に適している。アイドル状態(idle state)であり、アクティブに充電又は放電していない時、レドックスフロー電池システムは、通常、電解液の温度を充電/放電レベルに維持して、充電/放電流量で電解液のポンピングを継続して、充電又は放電コマンドに応じて電力を供給するシステムの準備を維持する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、本明細書の発明者らは、このようなシステムに伴う潜在的な問題を認識している。すなわち、充電状態のフロー電池は、アイドルモードを維持しながら、同じ充電状態の従来の電池よりもはるかに速く蓄電容量を失う可能性がある。特に、フロー電池システムは、導電性電解液を介したシャント電流損失及び膜を通るイオン移動により容量を失う可能性がある。フロー電池のアイドル運転中等に、新しい電解液を電池セルに連続的に循環させると、これらの短絡損失がより高いレベルに維持される。さらに、レドックスフロー電池システムは、ポンピング寄生損失及び加熱寄生損失を含む、アイドル状態のときの充電/放電レベルでの電解液の連続的なポンピング及び加熱による寄生電力損失の影響を受ける場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態では、上記の問題に対して、レドックスフロー電池システムを、充電モード以外及び放電モード以外のレドックスフロー電池システムの作動を含むアイドルモード(idle mode)に切り替えることを含む、レドックスフロー電池システムを作動させる方法によって少なくとも部分的に対処することができる。さらに、当該方法は、アイドルモードへの切り替えに応じて、充電閾値流量未満のアイドリング閾値流量と非アクティブ化閾値流量との間で電解液ポンプを繰り返し周期的に作動させ、充電モードへの切り替えに応じて、充電閾値流量で電解液ポンプを持続可能に作動させる。
【0007】
別の実施形態では、レドックスフロー電池システムを作動させる方法は、レドックスフロー電池システムが充電モード以外及び放電モード以外で作動している状態のときにアイドルモードでレドックスフロー電池システムを作動させることを備えてもよい。さらに、当該方法は、アイドルモードで作動している際、充電閾値流量未満のアイドリング閾値流量で電解液をポンプすることを備えるアクティブ状態と、電解液ポンプを非アクティブ化するとともにヒーター設定点を下げることを備える非アクティブ状態との間で電解液ポンプを繰り返し周期的に作動させることを備えてもよい。さらに、当該方法は、放電モードへの切り替えに応じて、電解液ポンプの作動を放電閾値流量に維持することを備えてもよい。
【0008】
別の実施形態では、レドックスフロー電池システムは、レドックスフロー電池セルをそれぞれ含む複数のレドックスフロー電池セルスタックを含む電力モジュール、電解液タンクから電力モジュールへ電解液を送ることができる電解液ポンプ、及びコントローラを備えた電力制御システムを備えてもよい。コントローラは、レドックスフロー電池システムをアイドルモードに切り替えるための実行可能な命令を含むことができ、アイドルモードは、充電モード以外及び放電モード以外のレドックスフロー電池システムの作動を含み、アイドルモードへの切り替えに応じて、充電閾値流量未満のアイドリング閾値流量と非アクティブ化閾値流量との間で電解液ポンプを繰り返し周期的に作動させ、充電モードへの切り替えに応じて、電解液ポンプの作動を充電閾値流量に維持する。
【0009】
このようにして、アイドル中の充電及び放電コマンドに対するレドックスフロー電池システムの応答性を維持しながら、ポンピング及び加熱による寄生電力損失を減らし、シャント電流損失を減らすという技術的効果を達成することができる。
【0010】
上記の概要が詳細な説明においてさらに説明される概念の選択を簡略化した形式で導入するために提供されることを、理解されたい。それは、クレームされた構成要件の重要な又は本質的な特徴を特定することを意図するものではなく、その範囲は、詳細な説明に続く請求項によって一意に定義される。
さらに、クレームされた構成要件は、上記又は本開示の任意の部分で言及された欠点を解決する実施に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、例示的なレドックスフロー電池システムの概略図を示す。
【
図2】
図2は、
図1に示すレドックスフロー電池システムの例示的なレイアウトの側面図を示す。
【
図3】
図3は、
図1に示すレドックスフロー電池システムの例示的な作動方法のハイレベルフローチャートを示す。
【
図4】
図4は、
図1に示すレドックスフロー電池システムのアイドルモードにおける例示的な作動方法のフローチャートを示す。
【
図5】
図5は、
図1に示すレドックスフロー電池システムのアイドルモードにおける例示的な作動方法のフローチャートを示す。
【
図6】
図6は、
図1に示すレドックスフロー電池システムのアイドルモードでの作動を示すタイムラインプロットを示す。
【
図7】
図7は、
図1に示すレドックスフロー電池システムのアイドルモードでの作動を示すタイムラインプロットを示す。
【
図8】
図8は、
図3~5に示す方法を用いた
図1に示すレドックスフロー電池システムの作動を従来の作動システムと比較するプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の説明は、レドックスフロー電池のためのシステム及び方法に関する。
【0013】
ハイブリッドレドックスフロー電池は、電極上の固体層として1つ又は複数の電気活性材料の蒸着を特徴とするレドックスフロー電池である。ハイブリッドレドックスフロー電池は、例えば、電池充電プロセスの間中電気化学反応を介して基板上に固体としてめっきする化学物質を含んでいてもよい。電池が放電している間、めっき種は、電気化学反応を介してイオン化し、電解液に可溶となることがある。ハイブリッド電池システムでは、レドックス電池の充電容量(例えば蓄電量)は、電池充電中にめっきされた金属の量によって制限されることがあり、したがって、めっきシステムの効率と、めっき可能な体積及び表面積と、に依存することがある。
【0014】
レドックスフロー電池システムでは、負極26は、めっき電極と呼ばれ、正極28は、レドックス電極と呼ばれることがある。電池のめっき側(例えば、負極室20)内の負極電解液は、めっき電解液と呼ばれ、電池のレドックス側(例えば、正極室22)内の正極電解液は、レドックス電解液と呼ばれることがある。
【0015】
陽極は、電気活性材料が電子を失う電極を指し、陰極は、電気活性材料が電子を得る電極を指す。電池充電中、正極電解液は、負極26において電子を得る;それゆえ、負極26は、電気化学反応の陰極である。放電中、正極電解液は、電子を失う;それゆえ、負極26は、反応の陽極である。したがって、充電中、負極電解液及び負極は、それぞれ電気化学反応の陰極液及び陰極と呼ばれ、正極電解液及び正極は、それぞれ電気化学反応の陽極液及び陽極と呼ばれることがある。あるいは、放電中、負極電解液及び負極は、それぞれ電気化学反応の陽極液及び陽極と呼ばれ、正極電解液及び正極は、それぞれ電気化学反応の陰極液及び陰極と呼ばれることがある。簡便のため、正及び負という用語は、本明細書では、レドックスフロー電池システムの電極、電解液、及び電極室を指すために使用される。
【0016】
ハイブリッドレドックスフロー電池の1つの実施例は、すべて鉄(all iron)のレドックスフロー電池(IFB)であり、電解液は、塩化鉄(例えばFeCl2、FeCl3等)の形で鉄イオンを含み、負極は、金属鉄を含む。例えば、負極では、電池充電中に、第一鉄イオンFe2+が、2つの電子を受け取って金属鉄として負極26をめっきし、電池放電中に、金属鉄Fe0が、2つの電子を失ってFe2+として再溶解する。正極では、充電中に、Fe2+が電子を失って第二鉄イオンFe3+を生じ、放電中に、Fe3+が電子を得てFe2+を生じる。電気化学反応は、式(1)及び(2)にまとめられ、正反応(左から右)は、電池充電中の電気化学反応を示し、逆反応(右から左)は、電池放電中の電気化学反応を示す:
Fe2+ + 2e- ⇔ Fe0 -0.44V (負極) (1)
2Fe2+ ⇔ 2Fe3+ + 2e- +0.77V (正極) (2)
【0017】
上記のように、すべて鉄のレドックスフロー電池(IFB)で使用される負極電解液は、充電中に、Fe2+が負極から2つの電子を受け入れてFe0を生じ、基板上をめっきできるように、十分量のFe2+を供給する。放電中、めっきされたFe0は、2つの電子を失い、Fe2+にイオン化し、電解液中に溶解する。上記の反応の平衡電位は、-0.44Vであり、この反応は、所望のシステムに負端子を供給する。IFBの正側では、電解液は、充電時に、電子を失ってFe3+に酸化するFe2+を供給してもよい。放電中、電解液によって供給されるFe3+は、電極によって供給される電子を吸収することによってFe2+になる。この反応の平衡電位は、+0.77Vであり、所望のシステムの正端子を作る。
【0018】
IFBは、非再生電解液を利用する他のタイプの電池と対照的に、その電解液を充電及び再充電する機能を提供する。充電は、端子40及び42を介して電極に電流を印加することによって達成される。負極は、端子40を介して電圧源の負側に結合されてもよく、そのため、電子は、正極を介して(例えば、正極室22において正極電解液中のFe2+がFe3+に酸化される)負極電解液に引き渡されてもよい。負極26(例えばめっき電極)に供給される電子は、負極電解液中のFe2+を還元してめっき基板にFe0を生じ、負極上をめっきすることができる。
【0019】
負極電解液に酸化に利用可能なFe0が残っており、正極電解液に還元に利用可能なFe3+が残っている間、放電を維持することができる。1つの実施例として、Fe3+の有効性は、正極電解液チャンバ52又は外部正極電解液貯蔵タンクのような外部源を介して追加のFe3+を供給するために、セル18の正極室22側に正極電解液の濃度又は体積を増加することによって維持可能である。より一般的には、放電中のFe0の有効性は、IFBシステム内で問題となり得、放電に利用可能なFe0は、めっき効率と同様に、負極基板の表面積及び体積に比例する。充電容量は、負極室20におけるFe2+の有効性に依存していてもよい。1つの実施例として、Fe2+の有効性は、セル18の負極室20側に負極電解液の濃度又は体積を増加するために、負極電解液チャンバ50又は外部負極電解液貯蔵タンクのような外部源を介して追加のFe2+を供給することによって維持可能である。
【0020】
IFBでは、IFBシステムの充電状態に応じて、正極電解液は、第一鉄イオン、第二鉄イオン、第二鉄錯体、又はこれらの任意の組合せを含み、負極電解液は、第一鉄イオン又は第一鉄錯体を含む。前述のように、負極電解液及び正極電解液の両方で鉄イオンを利用すると、電池セルの両側で同じ電解液種を利用することができ、電解液の相互汚染を減らし、IFBシステムの効率を高めることができるため、他のレドックスフロー電池システムに比較して電解液の交換を少なくすることができる。
【0021】
IFBにおける効率の損失は、セパレータ24(例えば、イオン交換膜バリア、微多孔膜等)を通る電解液のクロスオーバーから生じることがある。例えば、正極電解液中の第二鉄イオンは、第二鉄イオンの濃度勾配及びセパレータを横切る電気泳動力によって、負極電解液に向かって動かされることがある。続いて、膜バリアを透過して負極室20にクロスオーバーする第二鉄イオンは、クーロン効率の損失をもたらすことがある。低pHレドックス側(例えば、酸性が強い正極室22)から高pHめっき側(例えば、酸性が弱い負極室20)にクロスオーバーする第二鉄イオンは、Fe(OH)3の沈殿をもたらし得る。Fe(OH)3の沈殿は、セパレータ24を損傷し、永久的な電池の性能及び効率の損失を引き起こす可能性がある。例えば、Fe(OH)3沈殿物は、イオン交換膜の有機官能基を化学的に塞ぎ、又はイオン交換膜の小さな微多孔を物理的に詰まらせることがある。いずれの場合も、Fe(OH)3により、膜のオーム抵抗が時間と共に上昇し、電池の性能が低下することがある。沈殿物は、電池を酸で洗浄することによって除去され得るが、絶えず続くメンテナンス及びダウンタイムは、商用電池の使用に不利であることがある。さらに、洗浄は、電解液の定期的な準備に依存することがあり、プロセスのコスト及び複雑さが増す。電解液のpH変化に応じて特定の有機酸を正極及び負極に添加すると、電池の充電及び放電サイクル中の沈殿物の生成を軽減し得る。
【0022】
追加のクーロン効率の損失は、H+(例えばプロトン)の還元とそれに続くH2(例えば水素ガス)の生成によって引き起こされ得、負極室20におけるプロトンの電子との反応は、めっき金属鉄電極において、水素ガスを生成する。
【0023】
IFB電解液(例えば、FeCl2、FeCl3、FeSO4、Fe2(SO4)3等)は容易に入手可能であり、低コストで製造することができる。IFB電解液は、同じ電解液を負極電解液と正極電解液とに使用できるため再利用の価値が高くなり、その結果、他のシステムと比較してクロスコンタミネーションの問題が低減する。さらに、その電子配置により、鉄は、負極基板上にめっきする際に、通常均一な固体構造に凝固することができる。ハイブリッドレドックス電池で一般的に使用される亜鉛および他の金属では、めっき中に固体樹状構造が形成される場合がある。IFBシステムの安定した電極形態は、他のレドックスフロー電池と比較して電池の効率を向上させることができる。さらに、鉄のレドックスフロー電池は、毒性のある原材料の使用を減らし、他のレドックスフロー電池の電解液と比べて比較的中性のpHで作動可能である。したがって、IFBシステムは、製造中の他のすべての現在の高度なレドックスフロー電池システムと比較して、環境への有害性が低減する。
【0024】
図1は、レドックスフロー電池システム10の概略図を提供する。レドックスフロー電池システム10は、マルチチャンバ電解液貯蔵タンク110に流体接続されたレドックスフロー電池セル18を備えることができる。レドックスフロー電池セル18は、通常、負極室20、セパレータ24及び正極室22を含むことができる。セパレータ24は電気絶縁性のイオン伝導性バリアを備えることができ、それは正極電解液と負極電解液とのバルク混合を防ぎつつ、特定のイオンの伝導を可能にする。例えば、セパレータ24は、イオン交換膜及び/又は微多孔膜を備えることができる。負極室20は、負極26と、電気活性材料を含む負極電解液とを備えることができる。正極室22は、正極28と、電気活性材料を含む正極電解液とを備えることができる。いくつかの実施例では、複数のレドックスフロー電池セル18を直列または並列に組み合わせて、レドックスフロー電池システムでより高い電圧または電流を生成することができる。さらに
図1に示されているのは、フロー電池システム10に電解液を送り込むために用いられる負極電解液ポンプ30及び正極電解液ポンプ32である。電解液は、セルの外部にある1つ又は複数のタンクに貯蔵され、それぞれ電池の負極室20側と正極室22側を通り負極電解液ポンプ30及び正極電解液ポンプ32によって送られる。
【0025】
図1に示すように、レドックスフロー電池セル18は、負極電池端子40及び正極電池端子42をさらに含んでもよい。電池端子40及び42に充電電流が印加されると、正極28で正極電解液が酸化され(1つ又は複数の電子を失う)、負極26で負極電解液が還元される(1つ又は複数の電子を獲得する)。電池放電中、電極上で逆酸化還元反応が起こる。換言すると、正極28で正極電解液が還元され(1つ又は複数の電子を獲得する)、負極26で負極電解液が酸化される(1つ又は複数の電子を失う)。電池の両端の電位差は、正極室22と負極室20における電気化学的酸化還元反応により維持され、反応が持続している間、導体を流れる電流を誘導することが可能である。レドックス電池によって蓄積されるエネルギーの量は、放電用の電解液で利用可能な電気活性材料の量により制限され、電解液の総量と電気活性材料の溶解度に依拠する。
【0026】
フロー電池システム10は、統合マルチチャンバ電解液貯蔵タンク110をさらに備えてもよい。マルチチャンバ貯蔵タンク110は、隔壁98によって分割されてもよい。正極電解液および負極電解液を単一のタンク内に含むことができるように、隔壁98は貯蔵タンク内に複数のチャンバを形成してもよい。負極電解液チャンバ50は、電気活性材料を含む負極電解液を保持し、正極電解液チャンバ52は、電気活性材料を含む正極電解液を保持する。負極電解液チャンバ50と正極電解液チャンバ52との間の所望の体積比をもたらすために、隔壁98は、マルチチャンバ貯蔵タンク110内に配置されてもよい。1つの実施例では、隔壁98は、負極および正極の酸化還元反応の間の化学量論比に従って、負極電解液チャンバ及び正極電解液チャンバの容積比を設定するように配置されてもよい。
図1は、貯蔵タンク110の充填高さ112をさらに示し、各タンク区画内の液位を示すことができる。図はまた、負極電解液チャンバ50の充填高さ112の上方に位置するガスヘッドスペース90と、正極電解液チャンバ52の充填高さ112の上方に位置するガスヘッドスペース92とを示している。ガスヘッドスペース92は、レドックスフロー電池の作動を通して生成され(例えば、プロトン還元および腐食副反応により)、レドックスフロー電池セル18から電解液を戻すとともにマルチチャンバ貯蔵タンク110に運ばれる水素ガスを貯蔵するために利用できる。水素ガスは、マルチチャンバ貯蔵タンク110内の気液界面(例えば、充填高さ112)で自発的に分離することができ、それにより、レドックスフロー電池システムの一部としての追加の気液分離装置を排除することができる。電解液から分離されると、水素ガスがガスヘッドスペース90および92を満たす。そのため、貯蔵された水素ガスは、マルチチャンバ電解液貯蔵タンク110から他のガスをパージすることに役立ち、それにより、電解液種の酸化を低減するための不活性ガスブランケットとして機能し、レドックスフロー電池容量損失の低減に役立つことができる。このように、統合マルチチャンバ電解液貯蔵タンク110を利用することによって、従来のレドックスフロー電池システムに共通の負極および正極電解液貯蔵タンク、水素貯蔵タンク並びに気液分離器を別々に有さなくともよくなり、これにより、システム設計の簡略化、物理的システムの設置面積の削減、並びにシステムコストの削減ができる。
【0027】
図1は、また、ガスヘッドスペース90と92との間の隔壁98に開口部を形成し、2つのチャンバ間のガス圧力を均一化する手段を提供する、溢流孔(spill-over hole)96を示す。溢流孔96は、充填高さ112より上の閾値高さに配置することができる。溢流孔96はさらに、電解液がクロスオーバーする場合に、正極電解液チャンバおよび負極電解液チャンバのそれぞれの電解液が自己平衡する機能を有効にする。すべて鉄(all iron)のレドックスフロー電池システムの場合、同じ電解液(Fe
2+)が負極室20及び正極室22の両方において使用されるため、負極電解液チャンバ50及び正極電解液チャンバ52の間の電解液の溢れはシステム全体の効率を下げ得るが、その一方で、全体的な電解液の構成、電池モジュールの性能および電池モジュール容量は維持される。漏れのない連続的な加圧状態を維持するために、マルチチャンバ貯蔵タンク110への入口および出口からのすべての配管接続部にフランジ継手(flange fittings)を利用することができる。マルチチャンバ貯蔵タンク110は、負極電解液チャンバ及び正極電解液チャンバのそれぞれからの少なくとも1つの出口と、負極電解液チャンバ及び正極電解液チャンバのそれぞれへの少なくとも1つの入口と、を含むことができる。さらに、水素ガスをリバランス反応器80及び82へと導くために、ガスヘッドスペース90及び92から1つ又は複数の出口接続部を備えてもよい。
【0028】
図1には示されていないが、統合マルチチャンバ電解液貯蔵タンク110は、負極電解液チャンバ50および正極電解液チャンバ52のそれぞれに熱的に接続された1つ又は複数のヒーターをさらに含んでもよい。別の実施例では、負極電解液チャンバ及び正極電解液チャンバのうちの1つのみが、1つ又は複数のヒーターを含んでもよい。正極電解液チャンバのみが1つ又は複数のヒーターを含む場合、負極電解液は、電力モジュールの電池セルで発生した熱を負極電解液に伝達することにより加熱することができる。このようにして、電力モジュールの電池セルが加熱され、負極電解液の温度調節が促進される。1つ又は複数のヒーターは、負極電解液チャンバ50及び正極電解液チャンバの温度を、単独で又は共に調整するために、コントローラ88によって作動させることができる。例えば、電解液の温度が閾値温度未満に下がることに応じて、コントローラは、電解液への熱流束が増加するように、1つ又は複数のヒーターに供給される電力を増加させてもよい。電解液の温度は、センサ60及び62を含むマルチチャンバ電解液貯蔵タンク110に取り付けられた1つ又は複数の温度センサによって示されてもよい。1つの実施例として、1つ又は複数のヒーターには、電解液に浸された、コイル型ヒーター若しくは他の浸漬ヒーター、又は、負極電解液チャンバ及び正極電解液チャンバの壁を通して熱を伝達しその中の液体を加熱する表面マントル型ヒーターが含まれ得る。本開示の範囲から逸脱することなく、他の既知のタイプのタンクヒーターを使用することができる。さらに、コントローラ88は、液体レベルが固体充填閾値レベル(solids fill threshold level)未満に低下したことに応じて、負極電解液チャンバ及び正極電解液チャンバ内の1つ又は複数のヒーターの作動を停止させてもよい。換言すると、コントローラ88は、液体レベルが固体充填閾値レベルを超えて増加することに応じてのみ、負極電解液チャンバ及び正極電解液チャンバ内の1つ又は複数のヒーターを作動させることができる。このようにして、正極電解液チャンバ及び/又は負極電解液チャンバ内に十分な液体がない状態での1つ又は複数のヒーターの作動を防ぐことができ、したがってヒーターの過熱又は焼損のリスクが低減される。
【0029】
さらに
図1に示すように、電解液は、マルチチャンバ貯蔵タンク110に一般に貯蔵され、フロー電池システム10全体にわたって負極電解液ポンプ30及び正極電解液ポンプ32によって送り込まれる。負極電解液チャンバ50に貯蔵された電解液は、負極電解液ポンプ30によって電池の負極室20側に送り込まれ、正極電解液チャンバ52に貯蔵された電解液は、正極電解液ポンプ32によって電池の正極室22側に送り込まれる。
【0030】
2つの電解液リバランス反応器80,82は、それぞれ、レドックスフロー電池システム10において、電池の負極側及び正極側で電解液の再循環流路と直列又は並列に接続されてもよい。冗長性のため(例えば、電池及びリバランス操作に支障を与えることなくリバランス反応器を提供するため)、及び、リバランス能力を向上させるため、1つ又は複数のリバランス反応器は、電池の負極側と正極側において電解液の再循環流路と直列に接続されてもよく、他のリバランス反応器は、電池の負極側と正極側において電解液の再循環流路と並列に接続されてもよい。1つの実施例では、電解液リバランス反応器80,82は、それぞれ、負極室20及び正極室22から負極電解液チャンバ50及び正極電解液チャンバ52への戻り流路に配置されてもよい。電解液リバランス反応器80,82は、本明細書に記載されるように、副反応、イオンのクロスオーバー等のために生じるレドックスフロー電池システムにおける電解液の電荷の不均衡をリバランスすることができる。1つの実施例では、電解液リバランス反応器80,82は、電解液リバランス反応を実施するため、パッキングされた床(ベッド)の触媒表面で水素ガスと電解液とが接触するトリクルベッド反応器(trickle bed reactor)を備えてもよい。他の実施例では、リバランス反応器80,82は、水素ガスと電解液とを接触させ、パッキングされた触媒床(catalyst bed)がなくてもリバランス反応を実行することができるフロースルー型反応器(flow-through type reactor)を備えてもよい。
【0031】
レドックスフロー電池システムの作動中、センサ及びプローブは、電解液のpH、濃度、電荷の状態等の電解液の化学的特性を監視し、制御してもよい。例えば、
図1に示すように、センサ62,60は、それぞれ、正極電解液の状態及び負極電解液の状態を監視するために正極電解液チャンバ52及び負極電解液チャンバ50に配置されてもよい。他の実施例として、
図1に示すセンサ72,70は、それぞれ、正極室22及び負極室20において正極電解液の状態及び負極電解液の状態を監視してもよい。センサは、電解液の化学的特性及びその他の特性を監視するために、レドックスフロー電池システム全体のその他の場所に配置されてもよい。例えば、センサは、外部酸タンク(図示せず)の酸の体積又はpHを監視するために、外部酸タンクに配置されてもよく、外部酸タンクからの酸は、電解液中の沈殿物の形成を低減するため、外部ポンプ(図示せず)によってレドックスフロー電池システムに供給される。他の添加剤をレドックスフロー電池システム10に供給するため、追加の外部タンクとセンサを取り付けてもよい。センサ情報は、1つの実施例として、セル18を流れる電解液の流れを制御するため、又は、他の制御機能を実行するために、ポンプ30及び32を順に作動させ得るコントローラ88に送信されてもよい。このように、コントローラ88は、センサ及びプローブの1つ又は組み合わせに対応してもよい。
【0032】
レドックスフロー電池システム10は、水素ガス源をさらに備えてもよい。1つの実施例では、水素ガス源は、別個の専用の水素ガス貯蔵タンクを備えてもよい。
図1に示す実施例では、水素ガスは、統合マルチチャンバ電解液貯蔵タンク110に貯蔵され、当該統合マルチチャンバ電解液貯蔵タンク110から供給されてもよい。統合マルチチャンバ電解液貯蔵タンク110は、正極電解液チャンバ52及び負極電解液チャンバ50に追加の水素ガスを供給してもよい。統合マルチチャンバ電解液貯蔵タンク110は、追加の水素ガスを電解液リバランス反応器80,82の入口に交互に供給してもよい。1つの実施例として、質量流量計又はコントローラ88によって制御可能な他の流量制御装置が統合マルチチャンバ電解液貯蔵タンク110からの水素ガスの流れを調整してもよい。
【0033】
統合マルチチャンバ電解液貯蔵タンク110は、レドックスフロー電池システム10において生成された水素ガスを補ってもよい。例えば、レドックスフロー電池システム10においてガス漏れが検出された場合、又は、低水素分圧における還元反応速度が低すぎる場合、正極電解液中及び負極電解液中の電気活性種の電荷の状態をリバランスするために、統合マルチチャンバ電解液貯蔵タンク110から水素ガスが供給されてもよい。1つの実施例として、コントローラ88は、測定されたpHの変化に応じて、又は電解液又は電気活性種(electro-active species)の測定された電荷の状態の変化に応じて、統合マルチチャンバ電解液貯蔵タンク110から水素ガスを供給してもよい。例えば、負極電解液チャンバ50又は負極室20のpHの上昇は、レドックスフロー電池システム10から水素が漏れていること、及び/又は、利用可能な水素分圧では反応速度が遅すぎることを示している場合がある。pH上昇に応じて、コントローラ88は、統合マルチチャンバ電解液貯蔵タンク110からレドックスフロー電池システム10への水素ガスの供給を増加させてもよい。さらなる実施例として、第1の閾値pHを超えて増加する、又は、第2の閾値pHを超えて減少するというpHの変化に応じて、コントローラ88は、統合マルチチャンバ電解液貯蔵タンク110から水素ガスを供給してもよい。IFBの場合、コントローラ88は、第二鉄イオン(ferric ion)の還元速度及びプロトンの生成速度を増加させるため、追加の水素を供給してもよく、これにより、正極電解液のpHを低下させることができる。さらに、正極電解液から負極電解液にクロスオーバーする第二鉄イオンの水素還元によって、又は、正極側で生成されて、プロトン濃度勾配及び電気泳動力により負極電解液にクロスオーバーするプロトンによって、負極電解液pHは低下する場合がある。このようにして、第二鉄イオン(正極室からクロスオーバーする)がFe(OH)3として沈殿するリスクを低減しながら、負極電解液のpHを安定した領域内に維持することができる。
【0034】
酸素還元電位(ORP)メータまたは光学センサ等の他のセンサによって検出された、電解液のpHの変化又は電解液の電荷の状態の変化に応じて、統合マルチチャンバ電解液貯蔵タンク110からの水素ガスの供給速度を制御するための他の制御スキームが実装されてもよい。さらに、コントローラ88の作動をトリガーするpHの変化又は電荷の状態の変化は、変化率又は一定の期間にわたって測定された変化に基づいてもよい。変化率を算出する期間は、レドックスフロー電池システムの時定数に基づいて事前に決定又は調整されてもよい。例えば、再循環率が高い場合は、当該期間を短縮でき、時定数が小さい場合は、(例えば、副反応やガス漏れによる)濃度の局所的な変化を迅速に測定することができる。
【0035】
図2を参照すると、当該
図2は、レドックスフロー電池システム10の例示的なレドックスフロー電池システムレイアウト200の側面図を示している。レドックスフロー電池システムのレイアウトは、レドックスフロー電池システムの長距離輸送及び配送を促進するハウジング202内に収容されてもよい。いくつかの実施例では、ハウジング202は、鉄道、トラック又は船を介して輸送することができる標準的な鋼鉄貨物コンテナ又は貨物トレーラーを含んでいてもよい。システムレイアウト200は、ハウジング202の第1の側に配置された統合マルチチャンバ電解液貯蔵タンク110、電解液リバランス反応器80、及び、ハウジング202の第2の側に配置された電力モジュール210、電力制御システム(PCS)288を備えていてもよい。支持サドル206等の補助部品、及び、様々な配管204、ポンプ230、バルブ(図示せず)等が、安定化のため、及び、ハウジング202内に配置された様々な部品を流体接続するため、ハウジング202内(
図1を参照してさらに説明される)に備えられてもよい。例えば、1つ又は複数のポンプ230を利用して、統合マルチチャンバ貯蔵タンク110から電力モジュール210内の1つ又は複数の電池セルスタック214に電解液を供給することができる。さらに、追加のポンプ230を利用して、電解液を電力モジュール210から統合マルチチャンバ電解液貯蔵タンク110の負極電解液チャンバ50又は正極電解液チャンバ52に戻すことができる。
【0036】
電力モジュール210は、並列及び/又は直列に電気的に接続された1つ以上のレドックスフロー電池セルスタック214を備えてもよい。レドックスフロー電池スタック214のそれぞれは、並列及び/又は直列に接続された複数のレドックスフロー電池セル18をさらに備えてもよい。このようにして、電力モジュール210は、ある範囲の電流及び/又は電圧を外部負荷に供給することができてもよい。PCS288は、レドックスフロー電池システム10の作動を制御及び監視するためのコントローラ88及び他の電子機器を含む。さらに、PCS288は、外部負荷に供給される電圧とともに、電力モジュール210を充電するための外部電源からの電流及び/又は電圧の供給を調整及び監視してもよい。PCS288は、アイドル状態中にレドックスフロー電池システムの作動をさらに調整及び制御してもよい。アイドル状態にあるレドックスフロー電池システムは、電力モジュール210が充電モード又は放電モードにないときを含んでいてもよい。1つの実施例として、外部電圧又は外部電流が電力モジュール210の1つ又は複数のレドックスフロー電池に供給されると、電力モジュール210は充電モードになり、その結果、電解液が還元され、1つ又は複数のレドックスフロー電池セルの負極において還元電解液がめっきされる。IFBの場合、1つ又は複数のレドックスフロー電池セルのめっき電極において第一鉄イオンが還元され、その結果、電力モジュールの充電中に鉄がめっきされる。別の実施例として、電力モジュール210の1つ又は複数のレドックスフロー電池セルから電圧又は電流が供給されると、電力モジュール210は放電モードになり、その結果、負極のめっき金属が酸化されてめっきが除去され(例えば、損失金属)、酸化金属イオンが可溶化される。IFBの場合、鉄は、1つ以上のレドックスフロー電池セルのめっき電極で酸化され、その結果、電力モジュールの放電中に第一鉄イオンを可溶化する場合がある。レドックスフロー電池システムの充電モード及び放電モードを開始及び終了するための条件に関するさらなる詳細は、以下、
図3~
図5を参照して説明される。
【0037】
図3~
図5を参照すると、それらは、
図1及び
図2に示すレドックスフロー電池システムを作動させる方法300、400、及び500のフローチャートをそれぞれ示している。方法300、400、及び500を実行するための命令は、
図1のコントローラ88等のコントローラに搭載されて実行されてもよい。例えば、実行可能な命令は、コントローラに搭載された非一時的なメモリに格納され、
図1を参照して上述したセンサ等のレドックスフロー電池システムのセンサから受信した信号と併せて実行されてもよい。コントローラは、以下に説明する方法に従って、電池の作動を調整するため、
図1を参照して上述したように、レドックスフロー電池システムのポンプ、バルブ、ヒーター等を含むアクチュエータをさらに使用してもよい。
【0038】
方法300は、レドックスフロー電池システムがいつ充電モード、放電モード、又はアイドルモードになり得るかを判定するための方法を含む。方法300はステップ302において開始されてもよく、当該方法は、現在の電池作動パラメータを決定、推定、及び/又は測定することを含んでもよい。現在の電池作動パラメータには、電池充電状態(SOC)、電力モジュールの電圧、DC電流、ポンプアクティビティ(電解液ポンプのオン/オフ状態、電解液ポンプ流量、ポンプタイマー等)、電解液の温度、電力モジュールに供給される電力(電流と電圧を含む)、電力モジュールによって供給される電力(電流と電圧を含む)、内部電力需要セットポイント、及び外部電力需要セットポイント等の1つ以上が含まれるが、これらに限定されない。
【0039】
ステップ304において、方法300は、レドックスフロー電池システムが現在充電されているか、充電モードにあるかを判定することを含む。充電モードにあるレドックスフロー電池システムは、レドックスフロー電池システムの1つ又は複数の充電モードにあるレドックスフロー電池セルを備えてもよい。充電モードは、1つ以上のレドックスフロー電池の実際のSOCよりも大きい1つ以上のレドックスフロー電池の設定点又は所望のSOCによって示されてもよい。別の実施例において、充電モードは、所望のSOCが実際のSOCよりも充電閾値SOCの差を超えて大きいことによって示されてもよい。追加又は代替の実施例として、電力モジュールからのDC電流が正の場合、レドックスフロー電池システムが充電されていてもよい。1つの実施例では、外部電源から電力モジュールに電流が流れている場合、DC電流は正になってもよい。DC電流の大きさと方向は、電力モジュールに電気的に接続されたシャント抵抗の電圧降下を測定することで決定されてもよい。
【0040】
代替の実施例では、充電モードにあるレドックスフロー電池システムは、電力の充電閾値供給よりも大きい電力モジュールへの電力供給(電流及び/又は電圧の供給を含む)によって示されてもよい。電力の充電閾値供給は、センサ、照明、及び電力モジュールに関連する他の補助装置に電力を供給するために使用される電力モジュールへの付随的又は補助的な電力供給率よりも大きいレドックスフロー電池システムへの電力供給率を意味してもよい。このように、電力の閾値供給よりも大きい電力を供給することは、電流が1つ又は複数のめっき電極に直接供給されていることを示し、めっき電極表面での金属イオンの還元とその還元金属のめっきをもたらす。同様に、充電モードは、充電中にレドックスフロー電池システムに電力を供給する結果として、SOC増加の閾値レートよりも大きいレートで増加する1つ以上のレドックスフロー電池セルのSOCによって示されてもよい。
【0041】
別の実施例では、充電モードにあるレドックスフロー電池システムの決定は、レドックスフロー電池セルの負極電解液チャンバ及び正極電解液チャンバの一方又は両方に供給されている電解液の流量が充電閾値流量より大きいことに基づいてもよい。第1の閾値(負極電解液又は正極電解液)の流量は、アイドルモード中に電解液の再循環に使用されるポンプの流量よりも大きい流量を意味してもよい。充電閾値流量よりも大きい流量で電解液を供給すると、負極電解液及び正極電解液チャンバに供給される電解液の流量を、所望の充電速度を維持するのに十分なように高くすることができる。したがって、電解液の供給速度は、レドックスフロー電池セル電極で生じるレドックス反応の化学量論に関連していてもよい。理想的な簡単な実施例として、IFBの場合、充電中に負極に2つの電子が供給される度に、1つの第一鉄イオンが負極電解液チャンバに供給されてそこで還元され、2つの第二鉄イオンが正極電解液チャンバに供給されて酸化される。このように、充電モードでの作動に対応する正極電解液チャンバ及び負極電解液チャンバのそれぞれへの電解液流量及び充電閾値電解液流量は等しくなくてもよい。さらに、理想的な化学量論的流量を超える電解液流量をレドックスフロー電池に供給して、システム内の理想的でない混合と損失を考慮して、所望の充電速度をサポートしてもよい。
【0042】
さらなる実施例として、充電中、正極室22及び負極室20内のイオン種は、充電モードにあることを特徴とする速度で変化するか、充電モードに関連付けられた定常状態値(電解液ポンプ速度に関連した)を達成してもよい。例えば、充電中、第一鉄イオンのめっきは、負極電解液室内の第一鉄イオン濃度の特徴的な減少(又は特徴的な減少率)をもたらしてもよい。同様に、第二鉄イオン、塩化物イオン、水素プロトン(pH等)、及び他の種等の他のイオン種の濃度(又は濃度の変化率)は、充電モードでのレドックスフロー電池セルの作動の特性であってもよい。さらに、イオン強度、pH等の他の電解液特性は、充電モードにあるレドックスフロー電池システムを示すために使用できる特徴的な定常状態値又は変化率を有していてもよい。言い換えれば、コントローラは、pH及び/又はイオン強度の測定を含む、1つ又は複数の種の濃度(又はその変化率)を推定及び/又は測定し、レドックスフロー電池システムが充電モードにあるかどうかを、充電モードでの作動に特徴的な充電閾値を超えるこれらの測定値の1つ又は組み合わせに基づいて決定してもよい。さらに、コントローラは、上記のように、電力モジュールへの電力供給率、電力モジュールに電気的に接続されたシャント抵抗器の電圧降下による測定DC電流、SOCの増加率、所望のSOCと実際のSOCとの差、及び/又は1つ又は複数のレドックスフロー電池セルへの電解液の流量に基づいて、充電モードを決定してもよい。
【0043】
さらなる実施例では、コントローラは、1つ以上のレドックスフロー電池のSOCが下側閾値SOC未満に放電したときに充電モードに入ってもよい。下側閾値の充電状態には、レドックスフロー電池の充電が完全になくなったときが含まれてもよい。別の実施例では、下側閾値の充電状態は、それより下ではレドックスフロー電池セルの劣化のリスクが増加する可能性があるSOCに相当してもよい。充電モードとなる、又は充電モードを開始するための他の条件には、外部負荷からの所望の電力が、レドックスフロー電池システムからの利用可能な電力よりも閾値電力差を超えて大きい場合が含まれる。したがって、コントローラ88は、また、充電モードとなる又は充電モードを開始するための条件が満たされたときに、レドックスフロー電池システムが充電モードにあることを決定してもよい。
【0044】
レドックスフロー電池システムが充電モードにあると判断すると、方法300はステップ306に進み、コントローラは、レドックスフロー電池システムの充電モードを開始又は再開/継続してもよい。上記のように、レドックスフロー電池システムの充電は、充電時にそれぞれ負極閾値流量及び正極閾値流量で電解液をレドックスフロー電池の負極電解液チャンバ及び正極電解液チャンバに流すために電解液ポンプ(例えば、
図1の1つ以上の負極電解液ポンプ30及び正極電解液ポンプ32)を作動させることを含んでもよい。別の実施例では、コントローラは、1つ以上のレドックスフロー電池の実際のSOCを所望のSOCまで上げるために、充電閾値電力よりも大きい電力を電力モジュールに供給してもよい。1つ以上のレドックスフロー電池セルのSOCを所望のSOCまで上げることは、SOC増加の充電閾値レートよりも大きいSOC増加レートだけSOCを増加させることを含んでもよい。さらに、コントローラは、電解液種濃度、pH、イオン強度、及び他の電解液特性の組み合わせの1つ又は複数を、充電モードのレドックスフロー電池システムに対応する所望の値に維持するために、1つ又は複数のアクチュエータを作動させてもよい。1つの実施例では、所望の値は、充電モードでのレドックスフロー電池システムの作動に特徴的な閾値を超えることを含んでもよい。
【0045】
レドックスフロー電池が充電されていない場合、方法300はステップ304からステップ308に進み、レドックスフロー電池が放電されているかどうかを判定する。放電モードにあるレドックスフロー電池システムは、レドックスフロー電池システムの1つ以上の放電モードにあるレドックスフロー電池セルを含んでもよい。放電モードは、1つ又は複数のレドックスフロー電池セルの実際のSOCよりも小さい1つ又は複数のレドックスフロー電池セルの設定点又は所望のSOCによって示されてもよい。別の実施例では、放電モードは、所望のSOCが実際のSOCよりも閾値の差を超えて小さいことによって示されてもよい。
【0046】
1つの実施例では、放電モードにあるレドックスフロー電池システムは、電力の充電閾値供給よりも大きい外部負荷への電力モジュールからの電力の供給(電流及び/又は電圧の供給を含む)によって示されてもよい。電力の充電閾値供給は、センサ、照明、及び電力モジュールに関連する他の補助装置に電力を供給するために使用される電力モジュールへの付随的又は補助的な電力供給率よりも大きいレドックスフロー電池システムから外部負荷への電力供給率を意味してもよい。このように、電力モジュールから電力の閾値供給よりも大きい電力を供給することは、電流が外部負荷に直接供給されていることを示し、めっき電極表面のめっきされた金属の金属イオンへの酸化と、その金属イオンの負極電解液室内への可溶化をもたらす。同様に、放電モードは、放電中にレドックスフロー電池システムから電力を供給する結果として、SOC減少の閾値レートよりも大きいレートで減少する1つ以上のレドックスフロー電池セルのSOCによって示されてもよい。
【0047】
追加的又は代替的に、電力モジュールからのDC電流が負の場合、レドックスフロー電池システムが放電モードであってもよい。1つの実施例では、電流が電力モジュールから外部負荷に流れている場合、DC電流は負になってもよい。上記のように、DC電流の大きさと方向は、電力モジュールに電気的に接続されたシャント抵抗の電圧降下を測定することで決定されてもよい。
【0048】
別の実施例では、放電モードにあるレドックスフロー電池システムの決定は、レドックスフロー電池セルの負極電解液チャンバ及び正極電解液チャンバの一方又は両方に供給されている電解液の流量が、放電閾値流量より大きいことに基づいてもよい。放電閾値(負極電解液又は正極電解液)流量は、アイドルモード中に電解液の再循環に使用されるポンプの流量よりも大きい流量を意味してもよい。放電閾値流量よりも大きい流量で電解液を供給すると、負極電解液又は正極電解液チャンバに供給される電解液の流量を、所望のレドックスフロー電池システムの放電速度を維持するのに十分なように高くすることができる。したがって、電解液の供給速度は、レドックスフロー電池セル電極で生じるレドックス反応の化学量論に関連していてもよい。理想的な簡単な実施例として、IFBの場合、放電中にレドックスフロー電池システムから負極に2つの電子が供給される度に、1つの第一鉄イオンが酸化され、2つの第一鉄イオンが正極電解液チャンバに供給されて還元される。このように、充電モードでの作動に対応する正極電解液チャンバ及び負極電解液チャンバのそれぞれへの電解液流量及び放電閾値電解液流量は等しくなくてもよい。さらに、理想的な化学量論的流量を超える電解液流量をレドックスフロー電池に供給して、システム内の理想的でない混合と損失を考慮して、望ましい放電速度をサポートしてもよい。
【0049】
さらなる実施例として、放電モード中に、正極室22及び負極室20内のイオン種は、放電モードにあることを特徴とする速度で変化するか、放電モードに関連付けられた定常状態値(電解液ポンプ速度に関連した)を達成してもよい。例えば、放電中、第一鉄イオンのめっきは、負極電解液室内の第一鉄イオン濃度の特徴的な減少(又は特徴的な減少率)をもたらしてもよい。同様に、第二鉄イオン、塩化物イオン、水素プロトン(pH等)、及び他の種等の他のイオン種の濃度(又は濃度の変化率)は、放電モードでのレドックスフロー電池セルの作動の特性であってもよい。さらに、イオン強度、pH等の他の電解液特性は、放電モードにあるレドックスフロー電池システムを示すために使用できる特性値又は変化率を有していてもよい。言い換えれば、コントローラは、pH及び/又はイオン強度の測定を含む、1つ又は複数の種の濃度(又はその変化率)を推定及び/又は測定し、レドックスフロー電池システムが放電モードにあるかどうかを、放電モードでの作動に特徴的な閾値を超えるこれらの測定値の1つ又は組み合わせに基づいて決定してもよい。さらに、コントローラは、上記のように、電力モジュールへの電力供給率、SOCの増加率、所望のSOCと実際のSOCの差、及び/又は1つ以上のレドックスフロー電池セルへの電解液の流量に基づいて、放電モードを決定してもよい。
【0050】
さらなる実施例では、コントローラは、1つ以上のレドックスフロー電池のSOCが上側閾値SOCを超えて充電されたときに放電モードに入ってもよい。上側閾値の充電状態には、レドックスフロー電池セルが容量まで完全に充電されたときを含まれてもよい。別の実施例では、上側閾値の充電状態は、それを超えると、レドックスフロー電池セルの過充電及び劣化のリスクが増加する可能性があるSOCに相当してもよい。放電モードとなる、又は放電モードを開始するための他の条件には、レドックスフロー電池システムから外部負荷に供給される実際の電力が、放電閾値電力差を超えて所望の電力より小さい場合が含まれる。したがって、コントローラ88は、また、放電モードとなる又は放電モードを開始するための条件が満たされたときに、レドックスフロー電池システムが放電モードにあることを決定してもよい。
【0051】
レドックスフロー電池システムが放電モードにあると判断すると、方法300はステップ308からステップ310に進み、コントローラは、レドックスフロー電池システムの放電モードを開始又は再開/継続してもよい。上記のように、レドックスフロー電池システムの放電は、放電時にそれぞれ負極閾値流量及び正極閾値流量で電解液をレドックスフロー電池の負極電解液チャンバ及び正極電解液チャンバに流すために電解液ポンプ(例えば、
図1の1つ以上の負極電解液ポンプ30及び正極電解液ポンプ32)を作動させることを含んでもよい。別の実施例では、コントローラは、1つ以上のレドックスフロー電池セルの実際のSOCを所望のSOCに下げるために、放電閾値電力よりも大きい電力を電力モジュールから外部負荷に供給してもよい。1つ以上のレドックスフロー電池セルのSOCを所望のSOCまで低下させることは、SOC減少の閾値レートよりも大きいSOC増加レートだけSOCを減少させることを含んでもよい。さらに、コントローラは、電解液種濃度、pH、イオン強度、及び他の電解液特性の組み合わせの1つ又は複数を、放電モードのレドックスフロー電池システムに対応する所望の値に維持するために、1つ又は複数のアクチュエータを作動させてもよい。1つの実施例では、所望の値は、放電モードでのレドックスフロー電池システムの作動に特徴的な閾値を超えることを含んでもよい。
【0052】
ステップ304及び308に戻り、レドックスフロー電池システムが充電モード又は放電モードのいずれかで作動していない場合、方法300はステップ312に進み、コントローラはレドックスフロー電池システムをアイドル作動モードにする。1つの実施例では、電力モジュールからのDC電流がアイドリング閾値電流未満又はアイドリング閾値電流に実質的に等しい場合、レドックスフロー電池はアイドルモードであってもよい。1つの実施例では、アイドリング閾値電流はゼロであってもよい。
図4及び
図5の方法400及び方法500は、それぞれ、システム容量損失の低下を支援することができるレドックスフロー電池システムのアイドリングの2つの実施形態を示している。方法400及び方法500の双方で説明されるアイドルモードにおける作動は、レドックスフロー電池がその後の充電中に所望の量の電力を提供する準備ができるように、レドックスフロー電池の電圧及び/又はSOCを閾値電圧及び/又は閾値SOCの範囲内に維持するためのポンプの周期的な作動を含む。このようにして、レドックスフロー電池システムの遅延時間及び/又はウォームアップフェーズを低減することができる。
【0053】
図4を参照すると、システム容量損失の低減を支援することができるレドックスフロー電池システムをアイドリングさせるための第1の方法400が示されている。方法400は、レドックスフロー電池のアイドルモードにおけるポンプのアクティブ化サイクル間の経過時間に基づいてポンプのオン/オフ状態を調整することを含む。方法400は、
図3の方法300においてレドックスフロー電池システムがアイドルモードとなるステップ312に続いて開始されてもよい。
【0054】
方法400はステップ402において開始され、コントローラ88はレドックスフロー電池システムの作動パラメータを推定及び/又は測定してもよい。
図3のステップ302において上述したように、コントローラ88は、電池充電状態(SOC)、電力モジュールの電圧、ポンプアクティビティ(例えば、電解液ポンプのオン/オフ状態、電解液ポンプ流量、ポンプタイマー等)、電解液の温度、電力モジュールに供給される電力(電流及び電圧を含む)、電力モジュールによって供給される電力(電流及び電圧を含む)、内部電力需要設定点、及び外部電力需要設定点等のうちの1つ以上を決定してもよい。様々な作動パラメータは、レドックスフロー電池システムの1つ又は複数のセンサによって示される。
【0055】
ステップ404において、レドックスフロー電池システムがアイドルモードにあることに応じて、方法400は、パワーエレクトロニクスを非アクティブ化することを含む。パワーエレクトロニクスは、DC/DCコンバーター、DC/ACインバーター、及び電力モジュールコンタクターの1つ以上を含んでもよい。パワーエレクトロニクスを非アクティブにすると、アイドルモードにおけるレドックスフロー電池システムの電力消費を削減するのに役立つ。パワーエレクトロニクスの非アクティブ化は、レドックスフロー電池の1つ又は複数のアクチュエータに電源をオフにする信号を送るコントローラを含み、レドックスフロー電池の放電及び/又は充電の能力を阻害してもよい。パワーエレクトロニクスの非アクティブ化には、ユーザーがアイドルモードに設定できる機械式スイッチが含まれてもよい。言い換えると、さらに、パワーエレクトロニクスの非アクティブ化には、レドックスフロー電池が電池のアイドルモードになっている(又は開始している)ことをユーザーに知らせるヒューマンマシンインターフェース(HMI)におけるメッセージの表示が含まれてもよい。さらに、HMIのディスプレイを暗くするか、又はスリープモードにすることができ、それにより、ディスプレイから放射される照明を低減してもよい。
【0056】
次に、ステップ406において、レドックスフロー電池システムがアイドルモードにあることに応じて、コントローラ88は、アイドルモードで作動している間の電力消費をさらに低減するために電解液の温度を低下させてもよい。電解液の温度を下げると、レドックスフロー電池システムと周囲の大気との間の温度勾配が小さくなるため、アイドルモードにおける環境への全体的な熱損失を減らすのに役立つ。1つの実施例では、電解液の温度を下げることは、レドックスフロー電池システムがアイドルモードにあることに基づいてヒーター設定点を調整することを含んでもよい。例えば、コントローラ88は、電解液の温度をアイドリング閾値温度未満に下げるために、1つ以上のヒーターアクチュエータに制御信号を送ってもよい。1つ以上のヒーターは、負極電解液チャンバ50及び正極電解液チャンバ52、及び/又はマルチチャンバ電解液貯蔵タンク110の負極電解液チャンバ及び正極電解液チャンバに熱的に連結されていてもよい。ヒーター設定点を調整することは、電解液の温度をアイドリング閾値温度以下に下げるために、ヒーター出力を下げる出力電力設定値を低減することをさらに含んでもよい。アイドリング閾値温度は、アイドルモードにおける電解液の溶解度又は安定性に基づいてもよい。例えば、アイドリング閾値温度を下回ると、電解液が不安定になるリスクが高まる場合があり、電解液の不安定化には、レドックスフロー電池システムの容量と性能が低下する電解液塩の沈殿が含まれる場合がある。対照的に、上記閾値温度を超えると、電解液の不安定化のリスクが減少し、電解液塩が沈殿せず電解液の安定性を維持できる。電解液の溶解度、アイドリング閾値温度、及びヒーターの制御信号(ヒーター出力電力等)の関係は、特定のレドックスフロー電池システムに対して事前に決定されるか、経験的に決定されてもよい。
【0057】
別の実施例では、電解液の温度を下げることは、電池の充電モード及び放電モードにおける電解液の温度と比較して、アイドルモードにおける電解液の温度を下げるために、ヒーター設定点を下げるための1つ以上のヒーターへの制御信号を調整するコントローラ88を含んでもよい。1つの実施例では、レドックスフロー電池のアイドルモード中にヒーター出力を低下させると、レドックスフロー電池の充電モードと放電モード中にヒーターから電解液に伝達される熱量と比較して、ヒーターからレドックスフロー電池電解液に伝達される熱量を冷却又は低下させることができる。1つの実施例では、電池の充電モード及び放電モードにおけるレドックスフロー電池の温度は、実質的に60℃に等しい場合がある。一方、レドックスフロー電池のアイドルモード中では、ヒーター設定を下げて、25~30℃の周囲温度又は室温に相当するアイドリング閾値温度までレドックスフロー電池を加熱することができる。
【0058】
ステップ408において、レドックスフロー電池システムがアイドルモードにあることに応じて、コントローラ88は、電解液ポンプの非アクティブ化及び第1のタイマーであるタイマー1のカウント開始を含む、電解液ポンプの周期的な作動を開始する。タイマー1は、1つ又は複数の電解液ポンプが非アクティブ化されてからの経過時間を示すために用いられてもよい。電解液ポンプを停止することは、当該ポンプが、レドックスフロー電池システムが電力要求を受信するとすぐに望ましい電力をすぐに提供できる状態(例えば、SOCが閾値SOCよりも大きい状態)に維持される、休止状態となるように、電解液ポンプを停止することを含んでもよい。1つの実施例では、1つ以上の電解液ポンプを停止することは、ポンプ30及び/又はポンプ32を停止することを含んでもよい。他の実施例では、1つ以上の電解液ポンプを停止することは、レドックスフロー電池セルとの間の電解液の循環が停止されるように、十分な数のポンプを停止することを含んでもよい。さらなる実施例では、1つ以上の電解液ポンプを停止することは、レドックスフロー電池セルとの間の電解液の循環が、非アクティブ化閾値流量未満に減少するように、十分な数のポンプを停止することを含んでもよい。このようにして、マルチチャンバ電解液貯蔵タンク110からレドックスフロー電池セル18の負極及び正極電解液チャンバ50及び52への電解液流量及び電解液の供給は、停止又は非アクティブ化閾値流量に維持される。1つの実施例では、非アクティブ化閾値流量は、レドックスフロー電池セルへの新鮮な電解液の供給が減少することによって、シャント損失が実質的に減少する流量に相当してもよい。別の実施例では、非アクティブ化閾値流量はゼロ流量に対応し、電解液ポンプを停止してもよい。場合によっては、非アクティブ化流量がゼロでないと、ポンプが完全に停止しないようにすることで、電解液ポンプの寿命を延ばすことができる。アイドルモード中に電解液の流れを停止し、及び/又は、電解液の流れを非アクティブ化閾値流量まで減らすと、レドックスフロー電池に供給される新鮮な電解液の量が減るため、流れる電解液を通して伝導するシャント損失を減らすのに役立つ。さらに、非アクティブ化閾値流量以下で作動することを含めて、ポンプが非アクティブ化されると、シャント電流損失は電力モジュール内の既存の電解液量に制限される。アイドルモード中にレドックスフロー電池セル内の新鮮な電解液の濃度を低くすると、電解液を通る電流シャント損失の推進力を減らすことができる。さらに、前述のように、ステップ408において電解液ポンプを非アクティブ化することを含む電解液ポンプの周期的な作動は、寄生ポンプ電力損失の削減に役立つ。
【0059】
ステップ409において、コントローラ88は、第1のタイマーを測定することと、1つ以上の電解液ポンプが非アクティブ化された期間を決定することとを含んでもよい。ステップ410において、コントローラ88は、第1のタイマーが第1の閾値期間よりも長いかどうかを決定してもよい。第1の閾値期間は、レドックスフロー電池のアイドルモードにおける電解液ポンプの連続した作動(サイクリングオン)間の目標時間に基づいてもよい。上記のように、電解液ポンプを停止することは、当該ポンプが、レドックスフロー電池システムが電力要求を受信するとすぐに望ましい電力をすぐに提供できる状態(例えば、SOCが閾値SOCよりも大きい状態)に維持される、休止状態となるように、電解液ポンプを停止することを含んでもよい。言い換えれば、第1の閾値期間は、アイドルモードにおけるポンプオフ間隔に相当してもよい。1つの実施例では、第1の閾値期間は、第2の閾値期間に対応するポンプオン間隔に対する固定間隔であってもよい。ある場合には、アイドルモードにおける全体的なポンプオフ期間が全体的なアイドル時間の5/6になるように、ポンプオフ間隔をポンプオン間隔に対して設定してもよい。言い換えれば、ポンプオフ間隔とポンプオン間隔との比は5対1であり、第1の閾値期間と第2の閾値期間との比は5対1であってもよい。例えば、第1の閾値期間は50分で、第2の閾値期間は10分であってもよい。したがって、アイドルモード中、ポンプは1時間毎に50分間オフのままになる。
【0060】
あるいは、第1の閾値期間は、電池のアイドルモードの開始前に測定された電力モジュールの電圧に基づいて調整されてもよい。1つの実施例では、第1の閾値期間は、電池がアイドルモードとなる直前の電力モジュールの電圧に対応して高くなり、第1の閾値期間は、電池がアイドルモードとなる直前の電力モジュールの電圧が低い場合、低くなってもよい。このようにして、第1の閾値期間は、アイドルモードとなる前のより高い初期電圧からより長いサイクル期間を可能にし、アイドルモードとなる前のより低い初期電圧からより短いサイクル期間を可能にしてもよい。第1のタイマーが第1の閾値期間より短い場合、方法400はステップ410からステップ412に進み、第1のタイマーの監視を継続し、電解液ポンプを非アクティブ状態に維持する。
【0061】
第1のタイマーが第1の閾値期間よりも大きい場合、方法400はステップ410からステップ414に進み、制御信号を電解液ポンプのアクチュエータに送信して、電解液ポンプをアイドリング閾値流量で作動させる。アイドリング閾値流量は、外部負荷にオンデマンドで電力を供給するためのレドックスフロー電池システムの応答性が望ましいレベル以下に低下するように、電力モジュール内のアイドリング電解液が十分にリフレッシュされない電解液流量に相当してもよい。換言すれば、電解液流量がアイドリング閾値流量を下回る場合、レドックスフロー電池セルへの電解液の供給は、外部負荷に電力を供給するためのコントローラ88からのコマンドに迅速に応答するのに十分でない場合がある。そのため、命令された需要を満たすのに十分な電流/電力を供給することができるようになる前に、レドックスフロー電池セルに十分な新鮮な電解液を供給することを可能にするため、望ましくない延長された遅延があってもよい。別の言い方をすれば、第1の閾値期間後にポンプが再度アクティブ化されていない場合、命令された外部負荷に即座に電力を供給するためのレドックスフロー電池システムの応答性が低下してもよい。1つの実施例では、アイドリング閾値流量は、上述の第1の閾値流量又は放電閾値流量よりも低くてもよい。例えば、アイドリング閾値流量は、充電閾値流量又は放電閾値流量の10%に相当してもよい。場合によっては、負極電解液室へのアイドリング閾値流量は、正極電解液室へのアイドリング閾値流量と異なる場合がある。いずれにせよ、充電モード及び放電モードにおけるポンプ流量と比較して、レドックスフロー電池のアイドルモードではポンプ流量が減少することが好ましい。第2のタイマーは、電解液ポンプの起動と連動して開始され、第2のタイマーは、方法400のアイドルモードにおけるポンプの周期作動においてポンプがオンである期間を測定する。
【0062】
ステップ416において、当該方法400は、第2のタイマーが第2の閾値期間よりも大きいか否かを判定することを含む。第2の閾値期間は、外部負荷からの予想される電力需要を満たすとともに、レドックスフロー電池が経験する電池容量損失、及びポンプや発熱体の作動による寄生電力損失を減少させるようにレドックスフロー電池の応答性を維持しながら、電池のアイドルモード中にポンプを起動するのに望ましい時間に基づいてもよい。容量損失には、レドックスフロー電池の出力低下が含まれてもよい。1つの実施例では、第2の閾値期間は、第1の閾値期間の20%である。
【0063】
第2のタイマーが第2の閾値期間よりも短い場合、電解液は、予想される外部負荷の命令に対するシステムの所望の応答性が達成されるようには適切にリフレッシュされておらず、方法400は、ステップ416からステップ418に進み、第2のタイマーの監視を継続する。第2のタイマーが第2の閾値期間より短い間は、電解液ポンプはアイドリング閾値流量で作動したままとなる。
【0064】
ステップ416において、第2のタイマーが第2の閾値期間よりも長く、予想される外部負荷の命令に対するシステムの所望の応答性が達成されるのに十分なように電解液がリフレッシュされたことを示す場合、方法400はステップ420に進み、アイドルモード条件が引き続き満たされるかどうかを判定する。アイドルモード条件に適合するには、レドックスフロー電池システムが充電モードでも放電モードでもないかどうかを判断することが含まれてもよい。したがって、方法300のステップ304、ステップ308、及びステップ312について説明したように、アイドルモード条件がまだ満たされているかどうかの判定が実行されてもよい。アイドル条件がまだ満たされている場合、方法400はステップ408に戻ってアイドルモード操作を続行する。このようにして、アイドル状態の間、方法400は、アクティブ状態と非アクティブ状態との間で電解液ポンプを繰り返し周期的に作動させる。アイドル条件が満たされない場合(例えば、レドックスフローシステムが充電又は放電モードに入った場合)、方法400は、
図3の方法300のステップ312の後に戻り終了する。
【0065】
上述のように、アイドリング閾値温度、非アクティブ化閾値流量、アイドリング閾値流量、第1の閾値期間、及び第2の閾値期間のそれぞれは、電池のアイドルモード中に予想される電力需要に従って調整されてもよい。例えば、電池のアイドルモード中に予想される電力需要がより高い場合には、レドックスフロー電池システムの応答性を高めるため、アイドリング閾値温度が高くなり、非アクティブ化閾値流量が多くなり、アイドリング閾値流量が多くなり、第1の閾値期間が短くなり、第2の閾値期間は長くなってもよい。反対に、電池のアイドルモード中に予想される電力需要がより低い場合、ポンプ及び加熱による寄生電力損失を減らし、電解液を通るシャント損失を減らしながら、レドックスフロー電池システムの応答性を低減するため、アイドリング閾値温度が低くなり、非アクティブ化閾値流量が少なくなり、アイドリング閾値流量が少なくなり、第1の閾値期間が長くなり、第2の閾値期間が短くなってもよい。このようにして、寄生損失及びシャント損失を低減しながら、レドックスフロー電池システムの応答性を維持するために、コントローラ88により予想される電力ニーズに応じてアイドルモード作動パラメータを調整してもよい。
【0066】
図5を参照すると、レドックスフロー電池システムのアイドルモード中に測定されたレドックスフロー電池の電圧に基づいてポンプを調整する方法500の代替の実施形態が示されている。したがって、方法500は、
図3の方法300のステップ312に続いて実行されてもよい。方法500は、ステップ502において開始され、方法300及び400のステップ302及びステップ402においてそれぞれ説明したように、当該方法500は、現在の作動パラメータを決定、推定、及び/又は測定することを含む。次に、方法400のステップ404、ステップ406、及びステップ408でそれぞれ説明したように、ステップ504において、パワーエレクトロニクスを非アクティブ化し、ステップ506において、ヒーター設定点を下げるための信号によって電解液の温度を低下させ、及びステップ508において、電解液ポンプを非アクティブ化してもよい。
【0067】
ステップ508における電解液ポンプの非アクティブ化に続いて、方法500は、ステップ509に進み、コントローラ88は、電力モジュールの電圧を決定及び/又は測定する。電力モジュールの電圧は、電力モジュール内のレドックスフロー電池セルスタックの電圧を意味してもよい。1つの実施例では、電池は完全に充電されており、各セルの開回路電圧は約1.2Vである。その結果、電力モジュールの電圧は、すべてのセル電圧の合計からシャント電圧損失(シャント抵抗での電圧降下)を引いたものである。
【0068】
次に、ステップ510において、コントローラ88は、電力モジュールの電圧が第1の閾値電圧よりも低いかどうかを決定してもよい。電力モジュールの第1の閾値電圧は、追加の電解液を供給せずに、アイドルモード中に電力モジュール内の利用可能な電解液で維持できる最小負荷によって決定されてもよい。別の実施例では、第1の閾値電圧は、それ以下ではレドックスフロー電池システムが内部又は外部負荷からの予想される電力需要に応答することができない電圧を意味してもよい。このようにして、予測される電力需要がより高い場合、第1の閾値電圧が高く、予測される電力需要がより低い場合第1の閾値電圧が低くてもよい。電力モジュールの電圧が第1の閾値電圧以上である場合、方法500はステップ510からステップ512に進み、電圧の監視を継続し、電解液ポンプを停止したままにする。
【0069】
電力モジュールの電圧が第1の閾値電圧未満に低下する場合、方法500はステップ510からステップ514に進み、ポンプのアクチュエータに制御信号を送信し、アイドリング閾値流量で電解液を供給するようにポンプをアクティブ状態に切り替える。方法400を参照しながら上述したように、アイドリング閾値流量は、外部負荷にオンデマンドで電力を供給するためのレドックスフロー電池システムの応答性が望ましいレベル以下に低下するように、電力モジュール内のアイドリング電解液が十分にリフレッシュされない電解液流量に相当してもよい。1つの実施例では、アイドリング閾値流量は、方法300を参照しながら上述した、充電閾値流量又は放電閾値流量よりも小さくてもよい。いずれにしても、充電モード及び放電モードにおけるポンプ流量と比較して、レドックスフロー電池のアイドルモードではポンプ流量が減少することが好ましい。このようにして、レドックスフロー電池セルの電解液を十分に補充及びリフレッシュして、寄生電力とシャント損失を低減しながら、電力モジュールの電圧を上げることができる。
【0070】
ステップ516で、方法500は、電力モジュールの電圧が第2の閾値電圧以上であるかどうかを判定することを含む。1つの実施例では、第2の閾値電圧は、第1の閾値電圧よりも大きい電圧を含んでもよい。第2の閾値電圧は、レドックスフロー電池セルに再循環される新鮮な電解液の流量がより多いため、シャント電流損失がかなり増加する電力モジュールの電圧に相当してもよい。第2の閾値電圧は、また、所定の充電状態、又は、電解液が完全に補充されることを示す、電力モジュールの電圧がもはや変化しない場合での電力モジュール開回路電圧に対応してもよい。電力モジュールの電圧が第2の閾値電圧よりも低い場合、方法500はステップ516からステップ518に進み、電圧の監視を継続し、アイドリング閾値流量でポンプをアクティブ(例えばオン)に維持する。
【0071】
電圧が第2の閾値電圧以上である場合、方法500はステップ520に進み、アイドル条件がまだ満たされているかどうかを判定する。アイドル条件がもはや満たされない場合、方法500は
図3に進む。アイドル条件がまだ満たされている場合、方法500はステップ508に戻り、電力モジュールの電圧が第2の閾値電圧より大きいことに応じて、ポンプを非アクティブ状態に切り替える。このようにして、アイドル状態の間、方法500は、アクティブ状態と非アクティブ状態との間で電解液ポンプを繰り返し周期的に作動させる。アイドル条件が満たされない場合(例えば、レドックスフローシステムが充電又は放電モードに入った場合)、方法500は、
図3の方法300のステップ312の後に戻り終了する。
【0072】
したがって、レドックスフロー電池システムを作動させる例示的な方法は、レドックスフロー電池システムをアイドルモードに切り替えることを含むことができ、アイドルモードは、充電モード以外及び放電モード以外でのレドックスフロー電池システムの作動を含む。さらに、アイドルモードへの切り替えに応じて、実施例の方法は、充電閾値流量未満のアイドリング閾値流量と非アクティブ化閾値流量との間で電解液ポンプを繰り返し周期的に作動させること、及び、充電モードへの切り替えに応じて、アイドリング閾値流量よりも大きい充電閾値流量で電解液ポンプの作動を維持することを含む。当該方法の第2の実施例は、オプションとして、第1の実施例を含み、さらに、放電モードへの切り替えに応じて、アイドリング閾値流量よりも大きい放電閾値流量で電解液ポンプの作動を維持することを含んでもよい。当該方法の第3の実施例は、オプションとして、第1及び第2の実施例のうちの1つ又は複数を含み、さらに、非アクティブ化閾値流量での電解液ポンプの作動が第1の閾値期間維持され、アイドリング閾値流量での電解液ポンプの作動が第2の閾値期間維持され、非アクティブ化閾値期間は、第2の閾値期間よりも長いことを含み。当該方法の第4の実施例は、オプションとして、第1から第3の実施例のうちの1つ以上を含み、アイドリング閾値期間が第1の閾値期間の20%未満であることをさらに含む。当該方法の第5の実施例は、オプションとして、第1から第4の実施例のうちの1つ以上を含み、さらに、レドックスフロー電池システムの予想される負荷需要がより高いことに応じてアイドリング閾値流量がより高く調整され、レドックスフロー電池システムの予想される負荷需要がより低いことに応じてアイドリング閾値流量がより低く調整されることをさらに含む。当該方法の第6の実施例は、オプションとして、第1から第5の実施例のうちの1つ又は複数を含み、さらに、レドックスフロー電池システムの予想される負荷需要がより高いことに応じて第1の閾値期間がより短く調整され、レドックスフロー電池システムの予想される負荷需要がより低いことに応じて、第1の閾値期間は長く調整されることをさらに含む。当該方法の第7の実施例は、オプションとして、第1から第6の実施例のうちの1つ以上を含み、レドックスフロー電池システムの予想される負荷需要がより高いことに応じて第2の閾値期間がより長く調整され、レドックスフロー電池システムの予想される負荷需要がより低いことに応じて第2の閾値期間がより短く調整されることをさらに含む。
【0073】
したがって、レドックスフロー電池システムを作動させる例示的な方法は、レドックスフロー電池システムが充電モード以外及び放電モード以外で作動している状態のときにアイドルモードでレドックスフロー電池システムを作動させることを含んでもよく、アイドルモードで作動している際に、充電閾値流量よりも小さいアイドリング閾値流量で電解液をポンプするアクティブ状態と、電解液ポンプの非アクティブ化を含む非アクティブ状態との間で電解液ポンプを繰り返し周期的に作動させ、及び放電モードへの切り替えに応じて、電解液ポンプの作動を放電閾値流量で維持する。当該方法の第2の実施例は、オプションとして、第1の実施例を含むことができ、さらに、充電モードへの切り替えに応じて、電解液ポンプの作動を充電閾値流量で維持することを含む。当該方法の第3の実施例は、オプションとして、第1及び第2の実施例のうちの1つ又は複数を含み、さらに、アクティブ状態と非アクティブ状態との間の電解液ポンプの周期的な作動が、電力モジュールの電圧が第2の閾値電圧を超えて増加することに応じて、アクティブ状態から非アクティブ状態に切り替え、電力モジュールの電圧が第1の閾値電圧を下回って低下することに応じて、非アクティブ状態からアクティブ状態に切り替え、第1の閾値電圧は第2の閾値電圧よりも小さいことを含む。当該方法の第4の実施例は、オプションとして、第1から第3の実施例のうちの1つ以上を含み、さらに、第1の閾値電圧が充電閾値電圧よりも低いことを含む。当該方法の第5の実施例は、オプションとして、第1から第4の実施例のうちの1つ以上を含み、さらに、レドックスフロー電池システムの予想される負荷需要がより高いことに応じてアイドリング閾値流量がより高く調整され、レドックスフロー電池システムの予想される負荷需要がより低いことに応じてアイドリング閾値流量が低く調整されることを含む。当該方法の第6の実施例は、オプションとして、第1から第5の実施例のうちの1つ又は複数を含み、さらに、レドックスフロー電池システムの予想される負荷需要がより高いことに応じて第1の閾値電圧を高く調整し、レドックスフロー電池システムの予想される負荷需要がより低いことに応じて第1の閾値電圧をより低く調整することを含む。当該方法の第7の実施例は、オプションとして第1から第6の実施例のうちの1つ又は複数を含み、さらに、レドックスフロー電池システムの予想される負荷需要がより高いことに応じて第2の閾値電圧が高く調整され、レドックスフロー電池システムの予想される負荷需要がより低いことに応じて第2の閾値電圧がより低く調整されることを含む。
【0074】
上述のように、アイドリング閾値温度、非アクティブ化閾値流量、アイドリング閾値流量、第1の閾値電圧、及び第2の閾値電圧のそれぞれは、電池のアイドルモード中に予想される電力需要に従って調整されてもよい。例えば、電池のアイドルモード中に予想される電力需要が高い場合、レドックスフロー電池システムの応答性を高めるため、アイドリング閾値温度が高くなり、非アクティブ化閾値流量が多くなり、アイドリング閾値流量が多くなり、第1の閾値電圧が高くなり、第2の閾値電圧はより高くなってもよい。反対に、電池のアイドルモード中に予想される電力需要がより低い場合、ポンプ及び加熱による寄生電力損失を減らし、電解液を通るシャント損失を減らしながら、レドックスフロー電池システムの応答性を低減するため、アイドリング閾値温度が低くなり、非アクティブ化閾値流量が少なくなり、アイドリング閾値流量が少なくなり、第1の閾値電圧が低くなり、第2の閾値期間は短くなってもよい。このようにして、寄生損失及びシャント損失を低減しながら、レドックスフロー電池システムの応答性を維持するために、コントローラ88により予想される電力ニーズに応じてアイドルモード作動パラメータを調整してもよい。
【0075】
図8を参照すると、例示的なレドックスフロー電池システムの作動を示す例示的なプロットを示している。傾向線(trend line)810は、アイドリングモードにおける電力モジュールの電圧を表し、充電/放電流量で電解液を連続的に供給する電解液ポンプをオンに維持し、パワーエレクトロニクスをオンに維持し、充電/放電温度に電解液の温度を維持している。より大きなシャント電流損失とより高い寄生ポンピング損失により、アイドリング中の電力モジュールの電圧は約40時間後に急激に低下し始める。対照的に、アイドルモード中に、電解液の温度をアイドリング閾値温度まで下げ、パワーエレクトロニクスをオフにし、電解液ポンプを第2の閾値期間のアイドリング閾値流量と第1の閾値期間の非アクティブ化閾値流量との間で周期的に作動させると(例えば、方法300及び方法400に従ってレドックスフロー電池システムを作動させると)、傾向線820で示されるように、容量損失を軽減することができる。
【0076】
図6を参照すると、電池のアイドルモード中及び電池のアイドルモード以外の電池状態をグラフで示す時間プロット600を示している。時間プロット600は、
図1及び
図2の電池システムによって並行して実行される方法300、400、及び500を示している。このように、方法300、400、及び500のそれぞれは、互いに同時に起こり得る。例えば、方法500で測定された電圧は、第1及び第2の閾値期間とそれぞれ比較される第1及び第2のタイマーと同時に第1の閾値電圧と比較されてもよい。プロット610は電解液ポンプの流量を示し、プロット620はレドックスフロー電池のアイドル条件が満たされているかどうかを示し、プロット630はレドックスフロー電池の温度を示し、プロット640は電池電圧を示し、プロット650はDC電流、例えば、電力モジュールに電気的に連結されたシャント抵抗を流れるDC電流、を示す。破線(破線612)は、電解液の充電/放電閾値流量を示し、破線614は、電解液のアイドリング閾値流量を示す。破線632は、電池の第2の閾値温度を示し、破線634は、電池の第1の閾値温度を示す。示されているように、電池の第2の閾値温度は、電池の第1の閾値温度よりも高い。1つの実施例では、電池の第2の閾値温度はレドックスフロー電池のアイドルモード以外の電池温度に実質的に等しく、電池の第1の閾値温度はレドックスフロー電池のアイドルモードにおける所望の電池温度に実質的に等しい。破線642は第1の閾値電圧を示し、破線644は第2の閾値電圧を示す。第1及び第2の閾値電圧は、
図5に関して上述したものと実質的に同様であってもよい。DC電流は、レドックスフロー電池システムが充電モード又は放電モードにあるかどうかに基づいて方向性を持っていてもよい。例えば、正のDC電流は充電中に電池に電流を流す外部デバイスに対応し、負のDC電流は放電中に外部デバイスに電流を流す電池に対応してもよい。したがって、ニュートラル(neutral)なDC電流(例えば、充電ゼロ(zero charge))は、電池との間で電流が流れないことに相当してもよい。1つの実施例では、正のDC電流は充電モードに対応し、負のDC電流は放電モードに対応し、ニュートラルなDC電流はアイドルモードに対応する。プロット600の横軸は時間を示し、時間は図の左側から右側に向かって増加する。
【0077】
t1の前に、電解液ポンプ流量(プロット610)は比較的高く、電解液の充電/放電閾値流量(破線612)に実質的に等しい。プロット620が「満たさない」に一致している場合、電池のアイドル条件は満たされていない。レドックスフロー電池の温度(プロット630)は、電池の第2の閾値温度(破線632)より高い温度に等しい。電力モジュールの電圧(プロット640)は、比較的高い電池電圧から第2の閾値電圧(破線644)に向かって減少している。DC電流(プロット650)は、負の値と一致し、電流が電池から外部デバイスに流れていることを示している。したがって、レドックスフロー電池は、放電モードで作動していると考えられる。
【0078】
t1において、レドックスフロー電池のアイドル条件が満たされ、レドックスフロー電池は、放電モードからアイドルモードに移行する。実質的に電流がレドックスロー電池に流れない、又はレドックスロー電池から流れ出ないため、DC電流はゼロ及び/又はニュートラルとなっている。
図4、
図5に関して説明したように、レドックスフロー電池がアイドルモードになると、パワーエレクトロニクスが停止される。加えて、ヒーターは、レドックスフロー電池を電池の第1の閾値温度(破線634)より低い温度となるように加熱するため、より低い設定点に調整される。さらに、プロット610が「0」に一致することによって示されるように、電解液ポンプは停止され(例えば、オフに切り替えられ)、電解液ポンプの流量は、電解液のアイドリング閾値流量(破線614)よりも低い流量まで減少する。そのため、レドックスフロー電池に電解液はもはや流れていない。第1のタイマーは、電解液ポンプが停止されている期間に対応する時間のカウントを開始するためにスタートされてもよい。
【0079】
t1の後、t2の前に、レドックスフロー電池はアイドルモードのままである。レドックスフロー電池の温度は、電池の第1の閾値温度に実質的に等しい電池温度まで低下する。電力モジュールの電圧は、レドックスフロー電池がアイドルモードになった後、引き続き減少し、第1の閾値電圧未満の電圧まで減少する。具体的には、電圧は、第1の閾値期間よりも短い時間の経過に伴って、第1の閾値電圧よりも低い電圧まで低下する。両方向矢印602は、第1の閾値期間を示している。それに応じて、電解液ポンプは、充電/放電閾値流量(破線612)よりも少ない電解液のアイドリング閾値流量614で作動する。1つの実施例では、電解液ポンプは、充電/放電閾値流量(破線612)の5~10%に実質的に等しい流量で作動する。電解液ポンプが作動しているにも関わらず、アイドルモードの間、DC電流は実質的にゼロに等しいままである。そのため、ポンプは、レドックスフロー電池のアイドルモード中に外部電源から電力を供給されてもよい。追加又は代替の実施例として、DC電流は、アイドルモード中に、わずかに正及びわずかに負の位置に移動してもよい。わずかに正の位置とわずかに負の位置は、それぞれ、充電モードと放電モードにおける正と負の位置よりもゼロに近い。このようにして、新鮮な電解液がレドックスフロー電池に送られると、電力モジュールの電圧が上昇し始める。
【0080】
t2において、電池のアイドル条件は依然として満たされ、レドックスフロー電池の温度は、電池の第1の閾値温度に実質的に等しい。電力モジュールの電圧は増加し続け、第1の閾値電圧よりも大きく第2の閾値電圧よりも低い電圧まで増加する。したがって、電解液ポンプは、アイドリング閾値流量(破線614)でアクティブのままである。
【0081】
t2の後、t3の前に、電力モジュールの電圧は、第2の閾値電圧に向かって増加し続ける。そのため、電解液ポンプはアクティブのままである。t3では、電力モジュールの電圧が第2の閾値電圧よりも大きくなり、電解液ポンプが停止する。両方向矢印604は、第2の閾値期間を表し、これは、
図4に関して上述した第2の閾値期間に実質的に等しい。このようにして、電解液ポンプは、レドックスフロー電池のアイドルモード中に、第2の閾値期間よりも長い時間、作動した。第1のタイマーは、電解液ポンプの停止後、t3で開始される。
【0082】
したがって、電力モジュールの電圧が監視され、電解液ポンプの周期的な作動が計時される、いくつかの実施形態では、電力モジュールの電圧を補充することは、固定された時間サイクルに取って代わることができる。特に、電解液ポンプの作動は、たとえ第1のタイマーが第1の閾値期間よりも短くても、電力モジュールの電圧が第1の閾値電圧を下回ることに応じて、開始される。加えて、第2のタイマーが第2の閾値期間より大きくても、電力モジュールの電圧が第2の閾値電圧よりも低い場合、電解液ポンプはアクティブに維持されてもよい。
【0083】
t3の後、t4の前に、電力モジュールの電圧は、第2の閾値電圧よりも低く、第1の閾値電圧よりも高い電圧まで低下する。そのため、電解液ポンプは停止したままである。t4では、第1のタイマーは第1の閾値の期間に等しい。したがって、コントローラは、電解液ポンプのアクチュエータに信号を送り、ポンプをアイドリング閾値流量(破線614)で作動させる。したがって、第2のタイマーがアクティブ化される。別の実施例では、コントローラは、電解液ポンプをアイドリング閾値流量よりも少ない流量で作動させるように信号を送ってもよい。これは、電力モジュールの電圧が第1の閾値電圧よりも大きいことに起因してもよい。したがって、電力モジュールの電圧が第1の閾値電圧よりも低い場合よりも少ない充電が望ましい。いくつかの実施例では、第1のタイマーが第1の閾値期間を超えているにもかかわらず、電力モジュールの電圧が第1の閾値電圧よりも大きいため、電解液ポンプはt4において作動しなくてもよい。
【0084】
t4の後、t5の前に、第2のタイマーは第2の閾値期間(両方向矢印604)と比較され、第2のタイマーは第2の閾値期間より短いため、電解液ポンプはアクティブのままである。電力モジュールの電圧は、第2の閾値電圧よりも高い電圧まで上昇する。レドックスフロー電池の温度は、電池の第1の閾値温度と実質的に等しいままである。t5では、第2のタイマーは第2の閾値期間に実質的に等しい。電力モジュールの電圧はもはや増加せず、第2の閾値電圧よりも高い電圧に等しくなる。
【0085】
t5の後、レドックスフロー電池のアイドル条件が一定期間満たされ、その間、電解液ポンプが非アクティブ化され、レドックスフロー電池の温度は電池の第1の閾値温度に実質的に等しくなり、電力モジュールの電圧は第2の閾値電圧に向かって減少する。t6で、レドックスフロー電池のアイドル条件が満たされなくなる。したがって、レドックスフロー電池のヒーターは、レドックスフロー電池を電池の第2の閾値温度以上の温度に加熱するように調整される。電解液ポンプが再度アクティブ化され、充電/放電の閾値流量に実質的に等しい流量に設定される。最後に、電力モジュールの電圧は、第2の閾値電圧よりも高い電圧まで上昇し始める。これは、DC電流が正の位置に移動することでさらに示され、外部電源がレドックスフロー電池に電流を供給する。このようにして、レドックスフロー電池は充電モードになり、アイドルモードを終了する。
【0086】
図7を参照すると、
図1に示すレドックスフロー電池システムを方法300、400、及び500に従って作動させるための時間プロット700が示されている。時間プロット700は、
図1のレドックスフロー電池によって実行される方法300、400、及び500を示す。方法400及び500は、互いに連続して実施されるように示されている。したがって、方法400及び500は、
図7に示す実施形態では同時に実施されない。具体的には、方法500はt1からt3までで示されており、方法400はt3からt5までで示されている。プロット710は電解液ポンプの流量を示し、プロット720はレドックスフロー電池のアイドル条件が満たされているかどうかを示し、プロット730はレドックスフロー電池の温度を示し、プロット740は電力モジュールの電圧を示し、プロット750はDC電流(例えば、電力モジュールに電気的に連結されたシャント抵抗器を流れるDC電流)を示す。破線732は電池の第2の閾値温度を示し、破線734は電池の第1の閾値温度を示す。示されているように、電池の第2の閾値温度は電池の第1の閾値温度よりも高くなっている。1つの実施例では、電池の第2の閾値温度はレドックスフロー電池のアイドルモード以外の電池温度に実質的に等しく、電池の第1の閾値温度はレドックスフロー電池のアイドルモードにおける所望の電池温度に実質的に等しい。破線742は第1の閾値電圧を示し、破線744は第2の閾値電圧を示す。第1及び第2の閾値電圧は、
図5に関して上述したものと実質的に同様であってもよい。DC電流は、その電荷に基づいて方向性を持っていてもよい。例えば、正のDC電流は、電池に電流を流す外部デバイスに対応し、負のDC電流は、外部デバイスに電流を流す電池に対応する。したがって、ニュートラルなDC電流(例えば、充電ゼロ)は、電池との間で電流が流れないことに相当してもよい。1つの実施例では、正のDC電流は充電モードに対応し、負のDC電流は放電モードに対応し、ニュートラルなDC電流はアイドルモードに対応する。プロット700の横軸は時間を示し、時間は図の左側から右側に増加する。
【0087】
t1の前に、電解液ポンプ流量(プロット710)は比較的高く、充電/放電閾値流量(破線712)に実質的に等しい。プロット720が「満たさない」になっていることからわかるように、電池のアイドル条件は満たされていない。レドックスフロー電池の温度(プロット730)は、電池の第2の閾値温度(破線732)より高い温度に等しい。電力モジュールの電圧(プロット740)は、比較的高い電池電圧から第2の閾値電圧(破線744)に向かって減少している。DC電流(プロット750)は負の値と一致し、電池から外部デバイスに電流が流れていることを示す。したがって、レドックスフロー電池は放電モードで作動していると考えられる。
【0088】
t1において、レドックスフロー電池のアイドル条件が満たされ、レドックスフロー電池は放電モードからアイドルモードに移行する。
図4及び
図5に関して説明したように、レドックスフロー電池がアイドルモードになると、パワーエレクトロニクスが停止される。加えて、ヒーターは、レドックスフロー電池を電池の第1の閾値温度(破線734)より低い温度に加熱するように調整される。さらに、プロット710が「0」に一致することによって示されるように、電解液ポンプが停止され(例えば、スイッチが切られる)、電解液ポンプの流量が減少する。そのため、レドックスフロー電池に電解液はもはや流れなくなる。電力モジュールの電圧のみが監視されているため、第1のタイマーは作動しない。
【0089】
t1の後、t2の前に、レドックスフロー電池はアイドルモードのままである。レドックスフロー電池の温度は、電池の第1の閾値温度に実質的に等しい電池温度まで低下する。電力モジュールの電圧は、レドックスフロー電池がアイドルモードになった後、引き続き減少し、第1の閾値電圧未満の電圧まで減少する。具体的には、電圧は、第1の閾値電圧未満の電圧まで低下する。それに応じて、電解液ポンプは、充電/放電閾値流量(破線712)より低い電解液のアイドリング閾値流量(破線714)で作動する。1つの実施例では、アイドリング閾値流量は、充電/放電閾値流量(破線712)の5~10%に実質的に等しくてもよい。電解液ポンプが作動しているにもかかわらず、アイドルモードの間、DC電流は実質的にゼロに等しいままである。そのため、ポンプは、レドックスフロー電池のアイドルモード中に外部電源から電力を供給されてもよい。追加又は代替の実施例として、DC電流は、アイドルモード中に、わずかに正及びわずかに負の位置に移動してもよい。わずかに正の位置とわずかに負の位置は、それぞれ、充電モードと放電モードにおける正と負の位置よりもゼロに近い。このようにして、新鮮な電解液がレドックスフロー電池に送られると、電力モジュールの電圧が上昇し始める。
【0090】
t2において、電池のアイドル条件は依然として満たされ、レドックスフロー電池の温度は、電池の第1の閾値温度に実質的に等しい。電力モジュールの電圧は増加し続け、第1の閾値電圧よりも大きく第2の閾値電圧よりも低い電圧まで増加する。したがって、電解液ポンプは、アイドリング閾値流量でアクティブのままである。
【0091】
t2の後、t3の前に、電力モジュールの電圧は、第2の閾値電圧に向かって増加し続ける。そのため、電解液ポンプはアクティブのままである。t3では、電力モジュールの電圧が第2の閾値電圧よりも大きくなり、電解液ポンプが停止する。第1のタイマーは、電解液ポンプの停止後、t3で開始される。したがって、方法500は終了する。時間t3の後、プロット700は、方法400と併せて方法300の実行によるレドックスフロー電池システムの作動を示している。
【0092】
t3の後、t4の前に、電力モジュールの電圧は、第2の閾値電圧よりも低く、第1の閾値電圧よりも高い電圧まで低下する。そのため、電解液ポンプは停止したままである。t4では、第1のタイマーは第1の閾値期間(両方向矢印702)に等しい。したがって、コントローラは、電解液ポンプのアクチュエータに信号を送り、ポンプをアイドリング閾値流量で作動させる。そのため、第2のタイマーがアクティブ化される。別の実施例では、コントローラは、電解液ポンプをアイドリング閾値流量よりも小さい又は大きい流量で作動させるように信号を送ってもよい。
【0093】
t4の後、t5の前に、第2のタイマーは第2の閾値期間(両方向矢印704)と比較され、第2のタイマーは第2の閾値期間より短いため、電解液ポンプはアクティブのままである。電力モジュールの電圧は、第2の閾値電圧よりも高い電圧まで上昇する。レドックスフロー電池の温度は、電池の第1の閾値温度と実質的に等しいままである。t5では、第2のタイマーは第2の閾値期間に実質的に等しい。電力モジュールの電圧はもはや増加せず、第2の閾値電圧よりも高い電圧に等しくなる。
【0094】
t5の後、レドックスフロー電池のアイドル条件が一定期間満たされ、その間、電解液ポンプが非アクティブ化され、レドックスフロー電池の温度は電池の第1の閾値温度に実質的に等しくなり、電力モジュールの電圧は第2の閾値電圧に向かって減少する。t6で、レドックスフロー電池のアイドル条件が満たされなくなる。したがって、レドックスフロー電池のヒーターは、レドックスフロー電池を電池の第2の閾値温度以上の温度に加熱するように調整される。電解液ポンプが再度アクティブ化され、充電/放電の閾値流量に実質的に等しい流量に設定される。最後に、電力モジュールの電圧は、第2の閾値電圧よりも高い電圧まで上昇し始める。これは、DC電流が正の位置に移動することでさらに示され、外部電源がレドックスフロー電池に電流を供給する。このようにして、レドックスフロー電池は充電モードになり、アイドルモードを終了する。
【0095】
したがって、レドックスフロー電池システムの実施例は、レドックスフロー電池セルをそれぞれ含む複数のレドックスフロー電池セルスタックを含む電力モジュール;電解液タンクから電力モジュールに電解液を送ることができる電解液ポンプ;レドックスフロー電池システムをアイドルモードに切り替えるための実行可能な命令を含むコントローラを備えた電力制御システムを備えていてもよい。アイドルモードは、充電モード以外及び放電モード以外でのレドックスフロー電池システムの作動を含む。アイドルモードへの切り替えに応じて、充電閾値流量未満のアイドリング閾値流量と非アクティブ化閾値流量との間で電解液ポンプを繰り返し周期的に作動させ、充電モードへの切り替えに応じて、充電閾値流量での電解液ポンプの作動を維持する。レドックスフロー電池システムの第2の実施例は、オプションとして、第1の実施例を含むことができ、電解液に熱的に連結されたヒーターをさらに含むことができ、実行可能な命令は、アイドルモードへの切り替えに応じて電解液の温度をアイドリング閾値温度に下げることを含む。レドックスフロー電池システムの第3の実施例は、オプションとして、第1及び第2の実施例のうちの1つ又は複数を含むことができ、さらに、レドックスフロー電池システムの予想される負荷需要がより高いことに応じてアイドリング閾値温度を上昇させ、レドックスフロー電池システムの予想される負荷需要がより低いことに応じてアイドリング閾値温度を低下させることを含む。レドックスフロー電池システムの第4の実施例は、オプションとして、第1から第3の実施例のうちの1つ以上を含むことができ、アイドルモードへの切り替えに応じてパワーエレクトロニクスが非アクティブ化されることをさらに含む。レドックスフロー電池システムの第5の実施例は、任意に第1から第4の実施例のうちの1つ以上を含むことができ、さらにアイドリング閾値温度は電解液沈殿が生じる温度に相当することを含む。レドックスフロー電池システムの第6の実施例は、任意に第1から第5の実施例の1つ以上を含むことができ、アイドリング閾値温度が充電及び放電モードにおける電解液の温度よりも低いことをさらに含む。
【0096】
このように、レドックスフロー電池は、レドックスフロー電池のアイドルモードにおける経過時間及び電力モジュールの電圧の1つ又は複数に基づいて、電解液ポンプをオン位置とオフ位置の間で周期的に作動させるルーチンを含む。1つの実施例において、電解液ポンプは、電力モジュールの電圧が第1の閾値電圧を下回ることに応じて作動する。追加又は代替の実施例として、電解液ポンプは、レドックスフロー電池のアイドルモード中に電解液ポンプが停止する時間を測定する第1のタイマーが第1の閾値期間を超えることに応じて作動する。いずれにしても、電解液ポンプは、レドックスフロー電池のアイドルモード以外の電解液ポンプ流量よりも少ない流量で作動する。低減された流量で電解液ポンプを作動させ、ポンプをオン位置とオフ位置の間で周期的に作動させることの技術的効果は、ポンプによる寄生電力損失を減らし、シャントによるレドックスフロー電池が受ける電力容量損失を減らすことである。
【0097】
本明細書に含まれる例示的な制御及び推定ルーチンは、様々な電池及び/又は車両システム構成で使用できることに留意されたい。本明細書で開示される制御方法及びルーチンは、実行可能な命令として非一時的なメモリに格納され、様々なセンサ、アクチュエータ、及び他の電池ハードウェアと組み合わせたコントローラを含む制御システムによって実施されてもよい。本明細書で説明する特定のルーチンは、イベント駆動型、割り込み駆動型、マルチタスク処理、マルチスレッド処理等の任意の数の処理戦略の1つ又は複数を表してもよい。したがって、例示された様々なアクション、作動、及び/又は機能は、例示された順序で、並行して、又は場合によっては省略されて実行されてもよい。同様に、処理の順序は、本明細書で説明される例示的な実施形態の特徴及び利点を達成するために必ずしも必要ではないが、例示及び説明を容易にするために提供される。例示されたアクション、作動、及び/又は機能の1つ又は複数は、用いられる特定の戦略に応じて繰り返し実行されてもよい。さらに、記載されたアクション、作動、及び/又は機能は、レドックスフロー電池制御システム内のコンピューター読み取り可能な記憶媒体の非一時的メモリにプログラムされるコードをグラフィカルに表してもよく、記載されたアクションは、電子コントローラと組み合わされて、様々な電池ハードウェア部品を含むシステムによって命令が実行されることによって実施される。
【0098】
以下の特許請求の範囲は、新規かつ非自明とみなされる特定の組み合わせ及びサブコンビネーションを特に挙げている。これらの請求項は、「1つの(an)」要素又は「第1の(a first)」要素又はそれらの同等物を意味してもよい。そのようなクレームは、1つ又は複数のそのような要素の組み込みを含むと理解されるべきであり、2つ以上のそのような要素を必要とすることも除外することもないと理解されるべきである。開示された特徴、機能、要素、及び/又は特性の他の組み合わせ及びサブコンビネーションは、本請求項の補正を通じて、又は本出願又は関連出願における新しい請求項の提示を通じて請求されてもよい。そのような請求項は、元の請求項よりも広い、狭い、等しい、又は異なる範囲であっても、本開示の構成要件内に含まれるものとみなされる。