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特許7189902付加製造のための材料を粉砕するための方法
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  • 特許-付加製造のための材料を粉砕するための方法 図1
  • 特許-付加製造のための材料を粉砕するための方法 図2A
  • 特許-付加製造のための材料を粉砕するための方法 図2B
  • 特許-付加製造のための材料を粉砕するための方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】付加製造のための材料を粉砕するための方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/12 20060101AFI20221207BHJP
   C08J 9/36 20060101ALI20221207BHJP
   B29C 64/153 20170101ALI20221207BHJP
   B29C 64/268 20170101ALI20221207BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20221207BHJP
【FI】
C08J3/12 A CEZ
C08J9/36
B29C64/153
B29C64/268
B33Y10/00
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020017949
(22)【出願日】2020-02-05
(65)【公開番号】P2020125476
(43)【公開日】2020-08-20
【審査請求日】2020-05-14
(31)【優先権主張番号】16/267,826
(32)【優先日】2019-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518143602
【氏名又は名称】ヘクセル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】スコット デフェリース
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー デカーマイン
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-039631(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0134419(US,A1)
【文献】特開2017-025337(JP,A)
【文献】特開平11-320692(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0322441(US,A1)
【文献】特表2008-524356(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0148665(US,A1)
【文献】特開2019-001976(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J9/00-9/42
C08J3/00-3/28
C08J99/00
B29C64/00-64/40
B29C67/00-67/08
B29C67/24-69/02
B29C73/00-73/34
B29D1/00-29/10
B29D33/00
B29D99/00
B33Y10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元物体をプリンティングするためのレーザ焼結に使用するのに適した粉末マトリックスの調製に使用される粉砕が難しい材料を、該粉砕が難しい材料の破壊靭性を低減することによって粉々にする方法であって、
発泡可能な固体ポリアリールエーテルケトン(PAEK)マトリックスを準備する段階と、
前記PAEKマトリックスを発泡させて、複数の空隙を有するPAEK発泡体を形成する段階と、
前記PAEK発泡体を粉砕して、10ミクロン~200ミクロンの平均直径を有する複数のPAEK粒子を含むPAEK粉末を形成する段階と、を含み、
前記マトリックス材を発泡させてPAEK発泡体を形成する段階は、前記PAEKマトリックスの押し出しの間に発泡剤をPAEKマトリックス内に注入して、前記PAEK発泡体内に前記複数の空隙を形成する段階を含む、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記マトリックス材を発泡させてPAEK発泡体を形成する段階は、前記PAEKマトリックスの押し出しの後で発泡剤をPAEKマトリックス内に注入して、前記PAEK発泡体内に前記複数の空隙を形成する段階を含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記発泡剤は、CO2及び「フレオン(登録商標)」のうちの1又は2以上を含む、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記粉砕する段階は、摩滅粉砕の1又は2以上を含む、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記粉砕する段階は、極低温条件下で前駆体PAEK発泡体を摩滅破砕する段階を含む、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記PAEK発泡体の平均壁サイズは、10ミクロン~200ミクロンの厚さである、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記発泡させる段階は、所望の平均粒径に対応する平均壁サイズを生成するように行われる、
請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記PAEKマトリックスは、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)マトリックスを含む、
請求項4に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリエーテルケトンケトン(PEKK)マトリックスは、炭素繊維を含む、
請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記PAEKマトリックスの押し出しの間に発泡剤をPAEKマトリックス内に注入して、前記PAEK発泡体内に前記複数の空隙を形成する段階は、
回転可能なスクリューを有する押出機のポリマー処理空間の中に前記PAEKマトリックスを導入して、前記ポリマー処理空間の中のPAEKを下流方向の前記ポリマー処理空間の中の前記押出機の出口に運ぶ段階と、
発泡剤が前記PAEKマトリックスの中に導入されるように前記発泡剤を前記ポリマー処理空間の中に導入する段階と、
前記PAEKマトリックス内に導入された前記発泡剤が発泡して前記複数の空隙を形成するよう、前記ポリマー処理空間の押出し出口を通じて前記PAEKマトリックスからペレットを押し出す段階と、を含む、
請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般的に、付加製造技術及び手法に関し、より具体的には、選択的レーザ焼結(「SLS」又は「LS」)に使用するためのマトリックスとして用いるポリアリールエーテルケトン(「PAEK」)などの付加製造のための材料を粉砕するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微細ポリマー粉末と共に付加製造技術及び手法を用いて、種々の産業(例えば、航空宇宙、産業、医療、その他)での用途を有する高性能製品を製造することは公知である。
【0003】
SLSは、レーザからの電磁放射線を用いて、典型的には、25~150μmの平均直径を有する粉末材料を所望の3-D物体に融合させる付加製造技術である。レーザは、所望の物体の3-Dデジタル記述から生成された断面層を走査することによって、粉末材料を粉末材料ベッドの最上層上に選択的に融合させる。断面層が走査された後、粉末ベッドは、z軸方向に1層分の厚さだけ下げられ、粉末材料の新しい最部層が粉末ベッドに施工され、粉末ベッドが再走査される。このプロセスは、物体が完成するまで繰り返される。完成時、物体は、非融合粉末材料の「ケーキ」の中に形成される。形成された物体は、ケーキから取り出される。ケーキからの粉末材料は、回収して篩にかけて、後続のSLSプロセスで使用することができる。
【0004】
ポリアリールエーテルケトン(「PAEK」)は、PAEK粉末又はPAEK顆粒から製造された部品が低燃焼性、良好な生体適合性、並びに加水分解及び放射線に対する高抵抗性によって特徴付けられるので、SLSプロセスにおいて関心がもたれている。高温耐熱性並びに耐薬品性は、PAEK粉末を通常のプラスチック粉末と区別する。PAEKポリマー粉末は、ポリエーテルエーテルケトン(「PEEK」)、ポリエーテルケトンケトン(「PEKK」)、ポリエーテルケトン(「PEK」)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(「PEEKK」)又はポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(「PEKEKK」)から成るグループからの粉末とすることができる。
【0005】
PEKK粉末は、SLSによってPEKK粉末から製造される物体が上記特性に加えて他のPAEK材料に対して優れた強度を示すので、SLSプロセスにおいて特に関心がもたれている。更に、未使用のPEKK粉末はリフレッシュ材料の追加により後続のSLSプロセスで再利用することができ、結果として得られた部品がバージン粉末で作られた類似の部品に比べて高い強度を示すので、PEKK粉末はSLS技術で類のないものである。
【0006】
SLS機械で用いるPAEKを調製するために、ポリマーは、例えば10μm~200μmの範囲でポリマー粉末を形成するように破砕される。様々な破砕技術を用いて粉末を粉砕することができる。当業者及び本開示に精通した人は、粒径範囲が破砕されるポリマーの種類及び破砕プロセスの特定のパラメータに基づいて様々なであることを理解できるであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
PAEKポリマーで用いる公知の破砕技術の欠点は、材料が他の材料と比べて比較的硬い点である。結果として、粉砕プロセスは時間がかかり厄介である。場合によっては、この欠点は、相当の時間及び電気を費やしかつ破砕機械の相当の摩耗を引き起こすので、SLS粉末コストを調製する費用を桁違いに費用がかかるものにする。結果として、粉砕されたPAEK粉末の1ポンド当たりの費用が高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の1つの実施形態によるLS機械を示す。
図2A】PEKKフレークの拡大図を示す画像である。
図2B】複数のPEKK粒子の拡大図を示す画像である。
図3】本発明の1つの実施形態による方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示は、図面に示す例示的な実施形態を参照して本発明の態様を説明するが、本発明の態様は、図面に示す例示的な実施形態に限定されない。本発明の態様は、更に多くの実施形態を含むことは当業者には明らかであろう。従って、本発明の態様は、図面に示す例示的な実施形態に照らして制限されるものではない。当業者には、変形形態及び修正は、本開示の真の範囲から逸脱することなく行うことができることが明らかであろう。例えば、一部の例では、1つの実施形態に関連して開示された1又は2以上の特徴は、単独で又は1又は2以上の他の実施形態の1又は2以上の特徴と組合せて用いることができる。
【0010】
本発明は、レーザ焼結のためにポリマー粉末を調製するのに特に有用である。ポリマー粉末の1つのこのような種類は、ポリアリールエーテルケトン(「PAEK」)ポリマーである。PAEKは、PAEK粉末又はPAEK顆粒から製造された部品が、低燃焼性、良好な生体適合性、並びに加水分解及び放射線に対する高抵抗性によって特徴付けられるので、SLSプロセスにおいて関心がもたれている。高温耐熱性並びに耐薬品性は、PAEK粉末を通常のプラスチック粉末と区別する。PAEKポリマー粉末は、ポリエーテルエーテルケトン(「PEEK」)、ポリエーテルケトンケトン(「PEKK」)、ポリエーテルケトン(「PEK」)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(「PEEKK」)又はポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(「PEKEKK」)から成るグループからの粉末とすることができる。
【0011】
PEKKは、本技術分野では公知であり、以下の特許、米国特許第3,065,205号明細書、米国特許第3,441,538号明細書、米国特許第3,442,857号明細書、米国特許第3,516,966号明細書、米国特許第4,704,448号明細書、米国特許第4,816,556号明細書、及び米国特許第6,177,518号明細書に記載された方法を含むあらゆる好適な重合技術を用いて調製することができ、各々は、全ての目的のために引用によりその開示全体が本明細書に組み込まれている。PEKKポリマーは、多くの場合、繰り返し単位としてケトンケトンの2つの異なる異性体を含む点で、PAEKポリマーの一般的種類とは異なる。これらの繰り返し単位は、以下の化学式I及びIIで表すことができる。
【0012】
-A-C(=O)-B-C(=O)- (I)
【0013】
-A-C(=O)-D-C(=O)- (II)
【0014】
式中Aはp,p’-Ph-O-Phグループであり、Phはフェニレンラジカルであり、Bはp-フェニレンであり、Dはm-フェニレンである。式I:式II異性体比は、一般にT:I比と呼ばれ、PEKKでは、ポリマーの総結晶化度を変化させるように選択される。T:I比は、一般に50:50から90:10で、一部の実施形態では60:40~80:20で変化する。80:20などのより高いT:I比は、60:40などのより低いT:I比と比較してより高い結晶化度をもたらす。
【0015】
PEKKのホモポリマーの結晶構造、多形及び形態は、例えば、Cheng,Z.D.他の「ポリ(アリールエーテルケトンケトン)における多形及び結晶構造識別」、Macromol.Chem.Phys.197,185-213(1996)において研究されて報告されており、その開示内容全体は引用により本明細書に組み込まれている。この論文は、全てのパラフェニレン結合[PEKK(T)]、1つのメタフェニレン結合[PEKK(I)]、又は交互するT及びI異性体[PEKK(T/I)]を有するPEKKホモポリマーを研究したものである。PEKK(T)及びPEKK(T/I)は、結晶化条件及び方法に応じて結晶多形を示す。
【0016】
PEKK(T)では、2つの結晶形、フォームI及びIIが観察される。フォームIは、サンプルが低過冷却で溶融から結晶化されるとき生成することができるが、フォームIIは、典型的には、溶剤誘起結晶化によって又は比較的高過冷却でのガラス状態からの低温結晶化によって見出される。PEKK(I)は、PEKK(T)のフォームI構造と同じカテゴリに属する1つの結晶単位セルのみを持つ。単位セルのc軸寸法は、ジグザグ立体構造を有する3つのフェニレンとして特定されており、メタフェニレンはバックボーン平面上に位置する。PEKK(T/I)は、(PEKK(T)の場合のような)結晶フォームI及びIIを示し、特定の条件下ではフォームIIIも示す。
【0017】
好適なPEKKは、いくつかの商業的供給源から種々の商標名で入手可能である。例えば、ポリエーテルケトンケトンは、米国コネチカット州のサウスウィンザー所在のオックスフォードパフォーマンスマテリアルズによって商標名OXPEKK(登録商標)ポリマーで販売されている。また、ポリエーテルケトンケトンポリマーは、アルケマによって製造されて供給される。特定のT:I比を有するポリマーの使用に加えて、ポリエーテルケトンケトンの混合物を使用することができる。
【0018】
図1を参照すると、本発明によるLSシステム10が示されている。システム10は、内部に配置された作動可能ピストン24を有する第1のチャンバ20を含む。ベッド22はピストン24の端部に配置される。用語「ベッド」は、ピストンで支持された物理的構造体又はその上に配置された粉末の最上層を指す場合があることを理解されたい。
【0019】
ベッド22の温度は、ベッド22内又はその周囲の加熱要素(図示せず)と通信するコントローラ60によって可変的に制御することができる。更に、本発明によるLSシステム10は、ベッド22の上に加熱デバイスを含むことができ、これは、新たに施工された粉末層を粉末材料の凝固が起こる温度を下回る作業温度まで予熱する。加熱デバイスは、電磁放射線を放出することによって新たに施工された粉末層の中に熱エネルギーを導入することができる放射加熱デバイス(例えば、1又は2以上の放射加熱器)とすることができる。
【0020】
第2のチャンバ30は、第1のチャンバ20に隣接する。第2のチャンバ30は、内部に配置されたピストン34の端部上に配置されたテーブル面32を含む。LSシステム10に用いる粉末36は、焼結ステップに先だって第2のチャンバ30に貯蔵される。当業者及び本開示に精通した人であれば、LSシステムの具体的な実施形態が開示されているが、本発明は限定されず、本発明の実施に際して様々な公知のLSシステムを採用できることを理解できるはずである。
【0021】
LSシステム10の作動時、スプレッダ40は、第1のチャンバ20の上面を横切って平行移動し、ベッド22の上面又は事前にベッド22上に配置された材料のいずれかにわたって粉末36の層を均等に分散配置する。LSシステム10は、ベッド22上に配置された粉末材料36を粉末の融点に近い温度まで予熱する。典型的には、粉末の層は、125μmの厚さを有するように広がるが、粉末の層の厚さは、特定のLSプロセスに応じて及びLSシステムの制限内で増減する可能性がある。
【0022】
レーザ50及び走査デバイス54は、ベッド22の上に配置される。レーザ50は、ビーム52をスキャナ54に伝送し、その後、スキャナは、構造データに応じて、ベッド22上に配置された粉末36の層を横切ってレーザビーム56を分布させる。レーザは、その上に配置された粉末材料の層を有するベッドの表面上の部分の三次元デジタル記述から生成された断面を走査することによって粉末材料を選択的に融合させる。レーザ50及びスキャナ54は、コントローラ60と通信状態にある。断面の走査後、ベッド22は、1層分の厚さだけ下げられ(下向き矢印によって示す)、粉末材料の新しい層がスプレッダ40によってベッド22上に配置され、ベッド22はレーザによって再走査される。このプロセスは、構造体28が完成するまで繰り返される。このプロセス中に、第2のチャンバのピストン34は、粉末36の十分な供給量があることを保証するように徐々に上昇する(上向き矢印によって示す)。
【0023】
図3を参照して、本発明による方法は、材料を粉砕し難い微破砕に対して示されている。本発明者は、PAEK材料が切り欠き脆性になる傾向にあり、材料に欠陥を導入することによってこのような材料の破壊靭性を低減することが可能であることを発見した。発明者は、この挙動が、そうでなければ固体の材料の中に多数の欠陥を導入することで破砕性を高めることによって、粉砕の必要性を低減するための良い結果に利用することができることを更に発見した。欠陥は、材料を弱くして粉砕力での割れ目の伝播を助ける傾向があり、これにより、多数の小体の形成を助ける。
【0024】
本発明の第1の実施形態において、複数の空隙が固体PAEKマトリックスの中に導入される。本方法は、内部に埋め込まれた気泡又は空隙の制御されたサイズ範囲を作り出すように、PAEKマトリックス材を発泡させる段階を伴う。粉砕前に、未加工PAEKマトリックス材を押し出してペレットを形成することは公知である。このような押出技術は、例えば、マトリックスに炭素繊維などの充填剤を加えるのに使用される。例えば、第1の量の熱可塑性ポリマー樹脂は、押出機中で炭素繊維などの補強用微粒子と混ぜ合わせて、第1の押出物を生成することができる。押出機は、本技術分野で公知のように、例えば、単軸又は2軸式押出機とすることができる。材料は、CO2又は「フレオン」などの加圧発泡剤に曝されるが、材料は押出機チャンバ内にある。発泡剤は、圧力上昇の下で押出機チャンバ内の材料を膨張させる。材料がダイス孔を通して押し出されると、外圧は大気圧まで低下し、加圧発泡剤は、押出材内で複数の気泡を形成する。本発明の1つの実施形態において、押出材はペレットの形態にある。次いで、発泡ペレットは、典型的には、摩滅破砕によって粉砕され、SLSに適した複数の粒子を形成する。本発明の1つの実施形態において、PEKKのSLSに関連して、粒子は、直径約10~200ミクロンであり、50~70ミクロンの平均直径を有する。当業者及び本開示に精通した人であれば、粒径が、他の要因の中でもマトリックス材、充填剤、及び指定された付加技術の種類に基づいて様々とすることができることを理解できるはずである。
【0025】
発泡ペレットは、粉砕に有用であることが本技術分野で知られている何らかの粉砕技術を用いて粉砕される。例えば、粉砕は、ブランチハンマー(branch hammer)、摩滅粉砕機、又はピン付きディスク粉砕機で行うことができる。本発明の一部の実施形態において、ペレットは、極低温破砕プロセスで粉砕され、ペレットは、LN2などの極低温材料を用いて冷却され、材料は脆弱になって割れ目を生じる。本発明者は、PAEKペレットを発泡させることによって、粉砕時間が実質的に短縮されることを見出した。結果として、電力需要、時間、及び機械摩耗の低減により全体的な費用効率がもたらされ、これにより、より競争力のある製品が生み出される。
【0026】
図3では、本発明の1つの実施形態が示されている(300)。最初に、発泡可能なPAEKマトリックス材は、典型的にはPAEK材料の供給業者から供給される(302)。次いで、PAEKマトリックス材に押出プロセスを施し、PAEKマトリックスからペレットが形成される。PAEKマトリックス材をホッパーの中に装填する(306)。押出プロセス時、PAEK材料には炭素繊維及び又は別の添加剤を加えることが可能である。押出プロセスは、ダイを通して材料を押し出す前に繊維をPAEKマトリックスと混合してペレットを形成する。本発明によれば、加圧ガスは、PAEKマトリックス材が押出機チャンバに存在する間にこれに導入される(308)。PAEKマトリックス材が押出機のダイから押し出される際に、押し出されたPAEKに複数の空隙が形成され、PAEK発泡体が形成される(309)。PAEK発泡体ペレットが形成された後、PAEK発泡体には粉砕プロセスが施され、PAEK粒子が形成される(310)。PAEK発泡体中の複数の空隙は、破壊靭性を低下させて多数の小体の形成を助けることが分かっており、発泡されていないPAEKペレットに比べて、粉砕が著しく少なくなる。非発泡PEKKペレットから始まり極低温破砕を用いる1つの試験において、本出願人は、約400ミクロンの平均直径を有する複数のPEKK粒子を得ることができるに過ぎなかった。発泡ペレットの使用により、SLSに必要な50~70ミクロンの所要の平均直径を有するPEKK粒子を得ることが可能である。
【0027】
未処理のPAEKは、PAEKフレークの形態のトラーから供給することができる。本発明の他の実施形態において、未処理のPEKKは、取り扱い及び出荷を可能にするように事前に押し出されたペレットの形態で供給される。このような場合、本発明によれば、未処理PAEKペレットは、PAEK発泡ペレットを形成するように再度、押し出される。
【0028】
本発明の1つの実施形態において、PAEKマトリックスを発泡させるための方法は、埋め込まれた気泡の制御されたサイズ範囲を作り出す方法を用いるマトリックス材の発泡を伴う。押出中にCO2注入を用いてこれを管理する公知の方法がある。オープンセル又はクローズドセルは様々な形で用いられる。このような方法は、部品の重量を低減する、材料消費を低減する、又はより良好な断熱材を作るために工業的に用いられる。本発明に従って単軸又は2軸押式出機を用いることができる。
【0029】
PAEKマトリックスに加えて、本発明に従って他の好適な材料を用いることができる。好適な材料は、非晶質、半結晶、又は結晶性の材料とすることができる熱可塑性ポリマーを含む。ポリマー材料の典型的な例は、スチレンポリマー(例えば、ポリスチレン、ABS)、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン及びポリプロピレン)、フルオロポリマー、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル(PPE)、熱可塑性エラストマー、ビニルハロゲン化物(例えば、PVC)、アクリル(例えば、PMMA)、アセタール、他の高温プラスチック(例えば、PEEK、PEKK、PES、PPS、PEKK、PEI、PPA)及び同様のものを含む。また、物品は、補強剤、潤滑剤、可塑剤、着色剤、充填剤、安定剤及び同様のものなどの本技術分野で公知の多くの他の添加剤を含むことができる。随意的に、物品は、タルク又は炭酸カルシウムなどの核生成剤を含むことができる。多くの実施形態において、物品は核生成剤を含まない。物品は、一般的に、残留化学発泡剤又は化学発泡剤の反応副産物を含まない。また、物品は、一般的に、例えば、超臨界流体添加剤が大気ガス(例えば、窒素、二酸化炭素)である場合に非大気発泡剤を含まない。このような押出機及びその動作方法は、本技術分野において公知である。例えば、Trexel,Inc.の米国特許第7,318,713号は、ポリマーマトリックスを発泡させるための押出システムを示す。その開示内容は、引用により本明細書に組み込まれている。
【0030】
当業者であれば、発泡材料中の空隙の構造が材料系によって及び発泡方法に基づいて異なることになることを認識できるであろう。当業者であれば、形成された空隙が欠陥と呼ばれる場合があることも理解できるであろう。
【0031】
欠陥構造は、材料系によって及び発泡方法によって異なることになる。しかしながら、一般的に、特徴(空隙サイズ及び空隙間壁厚)は、最終生成物から望まれる所望のPSDとの関係を有するはずである。割れ目によって、デブリは、この特徴によって剥がされることになり、バルク材料は開裂する傾向があることになる。このようなプロセスによって作られた欠陥は、(典型的には、亀裂発生に準最適な)球状になる傾向があるが、これらの球形は非常に小さく、局所的な応力集中に大きく寄与することになる。
【0032】
当業者及び本開示に精通した人であれば、所望の一貫したパターンの複数の空隙を提供するように加圧押出機を作動させる方法を理解できるであろう。本発明の1つの実施形態において、ペレット形の60/40PEKKが供給されて押出機の中に導入される。押出機では、PEKKマトリックス材は、加圧ガスに曝されてダイから押し出され、押出PEKK内に複数の空隙が形成される。1つの実施形態において、空隙は、60~70ミクロンの平均直径を有する。空隙の間の壁厚は、平均して60~70ミクロンである。発泡ペレットは、摩滅ミルで粉砕されて60~70ミクロンの平均粒度を有する粉末が形成される。当業者であれば、具体的な実施例が提示されるが、本発明はこれに限定されず、目的材料の硬さを低下させるために様々な構成を使用できることを理解できるはずである。
【0033】
欠陥構造は、材料系によって及び発泡方法によって様々とすることができる。しかしながら、一般的に、特徴(空隙サイズ及び空隙間壁厚)は、最終生成物から望まれる所望のPSDとの関係を有するはずである。割れ目によって、デブリは、この特徴によって剥がされることになり、バルク材料は開裂する傾向があることになる。このようなプロセスによって作られた欠陥は、(典型的には、亀裂発生に準最適な)球状になる傾向があるが、これらの球形は非常に小さくて、局所的応力集中に大きく寄与することになる。また、結果として得られた粉末の幾何学形状は、凹形半球特徴部の表面トポグラフィーの何らかの破片を網状にする球の補体によっても決定される。
【0034】
本発明の一部の実施形態において、意図的包含物(すなわち、充填剤)は、亀裂発生のために追加の場所をもたらすこともでき、添加剤及び発泡剤の組合せは、相乗効果をもたらすことができる。意図的排除(すなわち、選択的浸出)は、従来の発泡プロセスには小さ過ぎる分子間空隙を生成することによって同様に相乗効果をもたらすことができる。
【0035】
本発明の別の実施形態において、ポリマー押出物中の複数の空隙は、ペレット内の核生成剤などの化学剤の包含物によって形成することができる。核生成剤は、例えば、押出プロセス中にマトリックスと組合せることができる。その後、核生成剤は、熱又はマイクロ波或いは何らかの他のプロセスによって活性化され、それによってマトリックス中にガスを放出してその中に複数の空隙を形成することができる。当業者及び本開示に精通した人であれば、様々な核生成剤が利用可能であり、本発明に従って使用して、押し出し後で微粉化の前にマトリックス化材料内に空隙を形成することができることを理解できる。
【0036】
本発明の別の実施形態において、マトリックスは、押出プロセスの後に発泡することができる。例えば、押出ペレットは、臨界又は亜臨界下で二酸化炭素又は「フレオン」などのガスと衝突することができる。圧力が制御速度で低下すると、泡又は複数の空隙がマトリックス材内に形成され、これにより、微粉化の前にペレットが発泡する。当業者及び本開示に精通した人であれば、押出後の様々な方法を用いて微粉化の前にマトリックス材を発泡することができることを理解できるはずである。
図1
図2A
図2B
図3