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特許7189927低速押出コーティング操作のための低密度エチレン系ポリマー
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  • 特許-低速押出コーティング操作のための低密度エチレン系ポリマー 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】低速押出コーティング操作のための低密度エチレン系ポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08F 110/02 20060101AFI20221207BHJP
   C08L 23/06 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
C08F110/02
C08L23/06
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020503038
(86)(22)【出願日】2018-07-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-10-01
(86)【国際出願番号】 US2018042137
(87)【国際公開番号】W WO2019022974
(87)【国際公開日】2019-01-31
【審査請求日】2021-06-30
(31)【優先権主張番号】62/538,453
(32)【優先日】2017-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】デンドエルダー、コーネリス エフ、ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ダン、ニィー ティー.ワイ.
(72)【発明者】
【氏名】クプシュ、エヴァ-マリア
(72)【発明者】
【氏名】リー、エドワード エル.
【審査官】堀内 建吾
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-535035(JP,A)
【文献】特表2017-502131(JP,A)
【文献】国際公開第2013/078018(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 110/02
C08L 23/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンホモポリマーであって、以下の特性:
a)ASTM D1238(条件:190℃/2.16kg)に従って測定される、1.0~3.5dg/分のメルトインデックス(I )、
b)Mw(abs)対I の関係:Mw(abs)≧A+B(I )(式中、A=3.20×10g/モルであり、B=-8.00×10(g/モル)/(dg/分)である)、
c)Mw(abs)対I の関係:Mw(abs)≦C+D(I )(式中、C=3.90×10g/モルであり、D=-8.00×10(g/モル)/(dg/分)である)、を含む、ポリエチレンホモポリマー。
【請求項2】
前記ホモポリマーが、d)「ポリマーの総重量に基づき、かつGPC(abs)により判定される際、10g/モルよりも大きい分子量の重量分率(w)」をさらに含み、それが、以下の関係:w≧I+J(I )(式中、I=0.065であり、J=-2.00×10-3分/dgである)を満たす、請求項1に記載のポリエチレンホモポリマー。
【請求項3】
前記ホモポリマーが、以下の関係:G’>K+L*log(I)(式中、K=155Paであり、L=-20Pa/log(dg/分)である)を満たすG’値を有する、請求項1または2に記載のポリエチレンホモポリマー。
【請求項4】
前記ホモポリマーが、150Pa以上のG’値を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリエチレンホモポリマー。
【請求項5】
前記ホモポリマーが、前記ホモポリマーの重量に基づいて、3.0重量%以下のヘキサン抽出可能レベルを有する、請求項1~4のいずれか1項に記載のポリエチレンホモポリマー。
【請求項6】
前記ポリマーが、0.916~0.921g/ccの密度を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載のポリエチレンポリマー。
【請求項7】
前記ホモポリマーが、管状反応器を備える反応器構成において調製される、請求項1~6のいずれか1項に記載のポリエチレンホモポリマー。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のポリエチレンホモポリマーを含む組成物。
【請求項9】
前記組成物が、290℃~320℃の温度、8~15g/mのコーティング重量、および60~200m/分のライン速度で、140mm以下の「ネックイン」値(ここで、「ネックイン」値はウェブの最終幅とダイ幅との差である)を有する、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
請求項8~9のいずれか1項に記載の組成物から形成された少なくとも1つの構成要素を含む、物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への参照
本出願は、2017年7月28日に出願された米国仮特許出願第62/538453号の利益を主張する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
紙、板、アルミニウムなどの押出コーティング用の樹脂は、通常、高温条件、例えば、270℃~350℃、および高速(例えば、300~800m/分)で処理される。より低い押出速度(例えば、60~300m/分)、低~中コーティング重量(例えば、8~15g/m)で使用することができ、かつ良好なネックイン値のコーティングが依然として得られる、LDPE樹脂の必要性が存在する。
【0003】
管状樹脂生成物は、以下の参考文献に記載されている:US9228036、US9334348、US9394389、US2016/0304638、およびWO2013/083285。しかしながら、押出コーティング用途に好適な新しいポリエチレンホモポリマーの必要性が依然として存在しており、それは、より低い押出速度(例えば、60~300m/分)、低~中コーティング重量(例えば、8~15g/m)で処理することができ、かつ良好なネックイン値が依然として得られる。高温条件、例えば、270℃~350℃で処理することができるそのようなホモポリマーの必要性がさらに存在する。良好なウェブエッジ安定性(コーティングウェブの各側で最大幅1~2mmの低い幅変動を有する安定したコーティング幅)、低ヘキサン抽出物、および良好な剪断減粘性を提供するホモポリマーの必要性がさらに存在する。いずれの化学修飾も伴わずに、例えば、反応器、分離器、押出機などで架橋剤を使用せずに、またはブレンド操作を使用せずに調製することができる、そのようなホモポリマーの必要性がさらに存在する。これらの必要性は、以下の発明によって満たされた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
ポリエチレンホモポリマーであって、以下の特性:
a)1.0~3.5dg/分のメルトインデックス(I2)、
b)Mw(abs)対I2の関係:Mw(abs)≧A+B(I2)(式中、A=3.20×10g/モルであり、B=-8.00×10(g/モル)/(dg/分)である)、
c)Mw(abs)対I2の関係:Mw(abs)≦C+D(I2)(式中、C=3.90×10g/モルであり、D=-8.00×10(g/モル)/(dg/分)である)、を含む、ポリエチレンホモポリマー。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1図1は、本発明および比較エチレンホモポリマーのGPC(LS)プロファイルを描写する。
【発明を実施するための形態】
【0006】
ポリエチレンホモポリマー、例えば、LDPEであって、以下の
特性:
a)1.0~3.5dg/分のメルトインデックス(I2)、
b)Mw(abs)対I2の関係:Mw(abs)≧A+B(I2)(式中、A=3.20×10g/モルであり、B=-8.00×10(g/モル)/(dg/分)である)、
c)Mw(abs)対I2の関係:Mw(abs)≦C+D(I2)(式中、C=3.90×10g/モルであり、D=-8.00×10(g/モル)/(dg/分)である)、を含む、ポリエチレンホモポリマー。
【0007】
ポリエチレンホモポリマーは、本明細書に記載される2つ以上の実施形態の組み合わせを含み得る。
【0008】
一実施形態では、ホモポリマーは、d)「ポリマーの総重量に基づき、かつGPC(abs)により判定される際、10g/モルよりも大きい分子量の重量分率(w)」をさらに含み、それが、以下の関係:w≧I+J(I2)(式中、I=0.065であり、J=-2.00×10-3分/dgである)の関係を満たす。
【0009】
一実施形態では、ポリエチレンホモポリマーは、1.0~3.2、または1.0~3.0、または1.0~2.8、または1.0~2.6のメルトインデックス(I2)を有する。一実施形態では、ポリエチレンホモポリマーは、1.2~3.5、1.2~3.2、または1.2~3.0、または1.2~2.8、または1.2~2.6のメルトインデックス(I2)を有する。一実施形態では、ポリエチレンホモポリマーは、1.5~3.5、1.5~3.2、または1.5~3.0、または1.5~2.8、または1.5~2.6のメルトインデックス(I2)を有する。
【0010】
一実施形態では、ポリエチレンホモポリマーは、G’>K+L*log(I)(式中、K=155Paであり、L=-20Pa/log(dg/分)である)の関係を満たすG’値を有する。
【0011】
一実施形態では、ポリエチレンホモポリマーは、150Pa以上のG’値を有する。
【0012】
一実施形態では、ポリエチレンホモポリマーは、ホモポリマーの重量に基づいて、3.0重量%、または2.8重量%、または2.6重量%、または2.4重量%、または2.2重量%、または2.0重量%以下(≦)のn-ヘキサン抽出可能レベルを有する。
【0013】
一実施形態では、ポリエチレンホモポリマーは、16.0~23.0、または17.0~22.0、または18.0~21.0のMw(abs)/Mn(abs)を有する。
【0014】
一実施形態では、ポリエチレンホモポリマーは、280~370kg/モル、または300~350kg/モル、または310~340kg/モルのMw(abs)を有する。
【0015】
一実施形態では、ポリエチレンホモポリマーは、0.916~0.921g/cc、または0.916~0.920g/cc、または0.916~0.919g/cc(1cc=1cm)の密度を有する。
【0016】
一実施形態では、ポリエチレンホモポリマーは、0.916~0.921g/cc、または0.917~0.920g/cc、または0.918~0.919g/cc(1cc=1cm)の密度を有する。
【0017】
一実施形態では、ポリエチレンホモポリマーは、管状反応器を備える反応器構成で調製される。さらなる実施形態では、管状反応器は、4以上または5以上の反応ゾーンを備える。
【0018】
一実施形態では、ポリエチレンホモポリマーは、LDPEである。
【0019】
一実施形態では、ポリエチレンホモポリマーは、高圧重合プロセスで調製される。
【0020】
一実施形態では、ポリエチレンホモポリマーは、4つの反応ゾーンを備える管状反応器を備える反応器構成で調製される。
【0021】
一実施形態では、プロピオンアルデヒド(PA)およびプロピレンは、ポリエチレンホモポリマーの重合における連鎖移動剤として使用される。さらなる実施形態では、プロピオンアルデヒド(PA)およびプロピレンは、ポリエチレンホモポリマーを重合するために使用する反応器構成の各反応ゾーン内に存在する。
【0022】
一実施形態では、ポリエチレンホモポリマーは、少なくとも2つのエチレンに富む供給流を含む管状反応器を備える反応器構成で調製される。
【0023】
一実施形態では、ポリエチレンホモポリマーは、フリーラジカル高圧重合によって調製される。
【0024】
本明細書の1つ以上の実施形態のポリエチレンホモポリマーを含む組成物。
【0025】
一実施形態では、組成物は、さらに別のエチレン系ポリマー、さらにエチレン系インターポリマー、さらにエチレン系コポリマーを含む。一実施形態では、他のエチレン系ポリマーは、エチレン系インターポリマーである。
【0026】
一実施形態では、組成物は、290℃~320℃の温度、8~15g/mまたは10~12g/mのコーティング重量、および60~200m/分、または60~150m/分、または60~100m/分のライン速度で、140mm以下、または130mm以下、または125mm以下の「ネックイン」値を有する。
【0027】
一実施形態では、組成物は、290℃~320℃の温度、5~10g/mまたは5~8g/mのコーティング重量、および60~200m/分、または60~150m/分、または60~100m/分のライン速度で、140mm以下、または130mm以下、または125mm以下の「ネックイン」値を有する。
【0028】
一実施形態では、組成物は、320℃の温度、12g/mのコーティング重量、および100m/分のライン速度で、130mm以下、または120mm以下、または110mm以下、または100mm以下の「ネックイン」値を有する。
【0029】
本明細書の1つ以上の実施形態の組成物から形成された少なくとも1つの構成要素を含む物品。
【0030】
一実施形態では、物品は、コーティング、フィルム、または発泡体である。
【0031】
本発明のポリエチレンホモポリマーは、本明細書に記載される2つ以上の実施形態の組み合わせを含み得る。
【0032】
本発明の組成物は、本明細書に記載の2つ以上の実施形態の組み合わせを含み得る。
【0033】
本発明の物品は、本明細書に記載の2つ以上の実施形態の組み合わせを含み得る。
【0034】
重合
高圧フリーラジカル開始重合プロセスでは、2つの基本的な種類の反応器が知られている。第1の種類は、1つ以上の反応ゾーンを有する攪拌式オートクレーブ容器(オートクレーブ反応器)である。第2の種類は、1つ以上の反応ゾーンを有するジャケット付き管(管状反応器)である。
【0035】
プロセスの各オートクレーブおよび管状反応器ゾーンの圧力は、典型的には100~400メガパスカル(MPa)、より典型的には120~360MPa、さらにより典型的には150~320MPaである。プロセスの各管状反応器ゾーン内の重合温度は、典型的には100℃~400℃、より典型的には130℃~360℃、さらにより典型的には140℃~340℃である。
【0036】
プロセスの各オートクレーブ反応器ゾーン内の重合温度は、典型的には150~300℃、より典型的には160~290℃、さらに典型的には170~280℃である。当業者は、オートクレーブ内の温度が、管状反応器の温度よりもかなり低く、差異が少なく、これにより、より好ましい抽出可能レベルが、典型的には、オートクレーブ系反応器システム内で生成されたポリマー内で観察されることを理解している。
【0037】
開始剤
本発明のプロセスは、フリーラジカル重合プロセスである。本プロセスで使用されるフリーラジカル開始剤のタイプは重要ではないが、好ましくは、適用される開始剤のうちの1つは、300℃~350℃の範囲の高温操作を可能にするべきである。一般的に使用されているフリーラジカル開始剤としては、ペルエステル、ペルケタール、ペルオキシケトン、ペルカーボネート、および環状多官能性過酸化物などの有機過酸化物が挙げられる。
【0038】
これらの有機過酸化物開始剤は、重合性モノマーの重量に基づいて、典型的には0.005~0.2重量%の量で使用される。過酸化物は、典型的には、適切な溶媒中、例えば炭化水素溶媒中の希釈溶液として注入される。
【0039】
他の好適な開始剤としては、アゾジカルボン酸エステル、アゾジカルボン酸ジニトリルおよび1,1,2,2-テトラメチルエタン誘導体、ならびに所望の操作温度範囲でフリーラジカルを形成可能な他の成分が挙げられる。
【0040】
一実施形態では、開始剤は、重合の少なくとも1つの反応ゾーンに添加され、開始剤は、255℃よりも大きい、好ましくは260℃よりも大きい1秒間半減期温度を有する。さらなる実施形態では、かかる開始剤は、320℃~350℃のピーク重合温度で使用される。別の実施形態では、開始剤は、環状構造中に組み込まれた少なくとも1つのペルオキシド基を含む。
【0041】
このような開始剤の例としては、TRIGONOX301(3,6,9-トリエチル-3,6,9-トリメチル-1,4,7-トリペルオキソナン)およびTRIGONOX311(3,3,5,7,7-ペンタメチル-1,2,4-トリオキセパン)(これらの両方がAkzo Nobelより入手可能である)、ならびにHMCH-4-AL(3,3,6,6,9,9-ヘキサメチル-1,2,4,5-テトロキソナン)(United Initiatorsより入手可能である)が挙げられるが、これらに限定されない。WO02/14379およびWO01/68723も参照されたい。
【0042】
連鎖移動剤(CTA)
連鎖移動剤またはテロゲンは、重合プロセスにおいてメルトインデックス(MIまたはI)を制御するために使用される。連鎖移動は、ポリマー鎖の成長の停止に関連し、したがって、ポリマー材料の最終的な分子量を制限する。連鎖移動剤は、典型的には、成長中のポリマー鎖と反応し、鎖の重合反応を停止させ、新しいポリマー分子の成長を開始させる水素原子ドナーである。これらの剤は、多くの異なるタイプであり得、これらの剤としては、飽和炭化水素類または不飽和炭化水素類、アルデヒド類、ケトン類、およびアルコール類が挙げられる。選択された連鎖移動剤の濃度を制御することにより、ポリマー鎖の長さ、したがって分子量、例えば数平均分子量Mnを制御することができる。Mnに関連するポリマーのメルトインデックスも同様に制御される。
【0043】
本発明のプロセスに使用される連鎖移動剤としては、脂肪族炭化水素類(例えば、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、プロペン、ペンテン、またはヘキサンなど)、ケトン類(アセトン、ジエチルケトン、またはジアミルケトンなど)、アルデヒド類(ホルムアルデヒドまたはアセトアルデヒドなど)、ならびに飽和脂肪族アルデヒドアルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、またはブタノールなど)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
メルトインデックスに影響を及ぼすさらなる方法は、エチレン再循環流において、入ってくる、メタンおよびエタンなどのエチレン不純物、t-ブタノール、アセトンなどの過酸化物解離生成物、ならびにまたは開始剤を希釈するために使用される溶媒成分の蓄積および制御を含む。これらのエチレン不純物、過酸化物解離生成物および/または希釈溶媒成分は、連鎖移動剤として作用することがある。一実施形態では、プロピオンアルデヒド(PA)およびプロピレンは、ポリエチレンホモポリマーの重合における連鎖移動剤として使用される。さらなる実施形態では、プロピオンアルデヒド(PA)およびプロピレンは、ポリエチレンホモポリマーを重合するために使用する反応器構成の各反応ゾーン内に存在する。
【0045】
反応ゾーン上および反応ゾーン内の連鎖移動剤の分布は、他の全てのプロセス条件を一定に保ちながら、分子量分布(MWD)を広げ、溶融強度を増大させるための重要なパラメータである。新鮮なエチレンおよび/またはCTA供給物の分布を使用して、反応ゾーン上および反応ゾーン内の連鎖移動剤の分布に影響を及ぼす方法の説明については、国際公開番号WO2013/059042を参照されたい。
【0046】
ブレンド
本発明のポリエチレンホモポリマーは、1つ以上の他のポリマー(直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を含むが、これらに限定されない)、1つ以上のα-オレフィン(プロピレン、ブテン-1、ペンテン-1、4-メチルペンテン-1、ペンテン-1、ヘキセン-1、およびオクテン-1を含むが、これらに限定されない)とエチレンとのコポリマー、ならびに高密度ポリエチレン(HDPE)とブレンドすることができる。ブレンド中の本発明のホモポリマーの量は、大きく異なり得るが、典型的には、ブレンド中のポリマーの重量に基づいて、10~90、または15~85、または20~80重量パーセント(重量%)である。このブレンドは、積層の調製に有用であり、ならびに/またはフィルム、押出コーティング、発泡体、ならびにワイヤおよびケーブルなどの用途に有用である。
【0047】
密度、メルトインデックス、Mw(abs)、Mw(abs)/Mn(abs)、G’値、および/またはn-ヘキサン抽出物などの1つ以上の特性がポリエチレンホモポリマーと異なるエチレン系ポリマーと本発明のポリエチレンホモポリマーとのブレンドを含む組成物も提供される。
【0048】
添加剤および用途
1つ以上の添加剤は、ポリエチレンホモポリマーを含む組成物に添加され得る。好適な添加剤としては、安定剤;充填剤、例えば、有機もしくは無機粒子(粘土、タルク、二酸化チタン、ゼオライト、粉末状金属を含む)、有機もしくは無機繊維(炭素繊維、窒化ケイ素繊維、鋼線もしくはメッシュ、およびナイロンまたはポリエステルコード化を含む)、ナノ粒子、粘土など);粘着付与剤、およびエクステンダ油(パラフィン系またはナフテン系油を含む)が挙げられる。
【0049】
本発明の組成物は、押出コーティング、フィルム、成形品(ブロー成形品、射出成形品、回転成形品など)、発泡体、ワイヤおよびケーブル、繊維、ならびに織布または不織布を含む有用な物品を製造するために、様々な従来の熱可塑性成形プロセスで利用され得る。
【0050】
いくつかの実施形態は、以下の通りである。
【0051】
1.ポリエチレンホモポリマーであって、以下の特性:
a)1.0~3.5dg/分のメルトインデックス(I2)、
b)Mw(abs)対I2の関係:Mw(abs)≧A+B(I2)(式中、A=3.20×10g/モルであり、B=-8.00×10(g/モル)/(dg/分)である)、
c)Mw(abs)対I2の関係:Mw(abs)≦C+D(I2)(式中、C=3.90×10g/モルであり、D=-8.00×10(g/モル)/(dg/分)である)、を含む、ポリエチレンホモポリマー。
【0052】
2.ホモポリマーが、d)「ポリマーの総重量に基づき、かつGPC(abs)により判定される際、10g/モルよりも大きい分子量の重量分率(w)」をさらに含み、それが、以下の関係:w≧I+J(I2)(式中、I=0.065であり、J=-2.00×10-3分/dgである)を満たす、上記1に記載のポリエチレンホモポリマー。
【0053】
3.ホモポリマーが、以下の関係:G’>K+L*log(I)(式中、K=155Paであり、L=-20Pa/log(dg/分)である)を満たすG’値を有する、上記1または2に記載のポリエチレンホモポリマー。
【0054】
4.ホモポリマーが、150Pa以上のG’値を有する、上記1~3のいずれか1つに記載のポリエチレンホモポリマー。
【0055】
5.ホモポリマーが、ホモポリマーの重量に基づいて、3.0重量%、または2.8重量%、または2.6重量%、または2.4重量%、または2.2重量%、または2.0重量%以下(≦)のヘキサン抽出可能レベルを有する、上記1~4のいずれか1つに記載のポリエチレンホモポリマー。
【0056】
6.ホモポリマーが、16.0~22.0のMw(abs)/Mn(abs)を有する、上記1~5のいずれか1つに記載のポリエチレンホモポリマー。
【0057】
7.ホモポリマーが、0.916~0.921g/cc、または0.916~0.920g/cc、または0.916~0.919g/ccの密度を有する、上記1~6のいずれか1つに記載のポリエチレンホモポリマー。
【0058】
8.ホモポリマーが、0.916~0.921g/cc、または0.917~0.920g/cc、または0.918~0.919g/ccの密度を有する、上記1~7のいずれか1つに記載のポリエチレンホモポリマー。
【0059】
9.ホモポリマーが、管状反応器を備える反応器構成で調製される、上記1~8のいずれか1つに記載のポリエチレンホモポリマー。さらなる実施形態では、管状反応器は、4以上または5以上の反応ゾーンを備える。
【0060】
10.ホモポリマーが、1.0~3.2、または1.0~3.0、または1.0~2.8、または1.0~2.6のメルトインデックス(I2)を有する、上記1~9のいずれか1つに記載のポリエチレンホモポリマー。
【0061】
11.ホモポリマーが、1.2~3.5、または1.2~3.2、または1.2~3.0、または1.2~2.8、または1.2~2.6のメルトインデックス(I2)を有する、上記1~10のいずれか1つに記載のポリエチレンホモポリマー。
【0062】
12.ホモポリマーが、1.5~3.5、または1.5~3.2、または1.5~3.0、または1.5~2.8、または1.5~2.6のメルトインデックス(I2)を有する、上記1~11のいずれか1つに記載のポリエチレンホモポリマー。
【0063】
13.ホモポリマーが、16.0~23.0、または17.0~22.0、または18.0~21.0のMw(abs)/Mn(abs)を有する、上記1~12のいずれか1つに記載のポリエチレンホモポリマー。
【0064】
14.ポリエチレンホモポリマーが、280~370kg/モル、または300~350kg/モル、または310~340kg/モルのMw(abs)を有する、上記1~13のいずれか1つに記載のポリエチレンホモポリマー。
【0065】
15.ホモポリマーがLDPEである、上記1~14のいずれか1つに記載のポリエチレンホモポリマー。
【0066】
16.ホモポリマーが、フリーラジカル高圧重合プロセスで調製される、上記1~15のいずれか1つに記載のポリエチレンホモポリマー。
【0067】
17.プロピオンアルデヒド(PA)およびプロピレンが、ポリエチレンホモポリマーの重合における連鎖移動剤として使用される、上記16に記載のポリエチレンホモポリマー。さらなる実施形態では、プロピオンアルデヒド(PA)およびプロピレンは、ポリエチレンホモポリマーを重合するために使用する反応器構成の各反応ゾーン内に存在する。
【0068】
18.ポリエチレンホモポリマーが、少なくとも2つのエチレンに富む供給流を含む管状反応器を備える反応器構成で調製される、上記1~17のいずれか1つに記載のポリエチレンホモポリマー。
【0069】
19.上記1~18のいずれか1つに記載のポリエチレンホモポリマーを含む組成物。
【0070】
20.組成物が、290℃~320℃の温度、8~15g/mまたは10~12g/mのコーティング重量、および60~200m/分、または60~150m/分、または60~100m/分のライン速度で、140mm以下、または130mm以下、または125mm以下の「ネックイン」値を有する、上記19に記載の組成物。
【0071】
21.組成物が、290℃~320℃の温度、5~10g/mまたは5~8g/mのコーティング重量、および60~200m/分、または60~150m/分、または60~100m/分のライン速度で、140mm以下、または130mm以下、または125mm以下の「ネックイン」値を有する、上記19または20に記載の組成物。
【0072】
22.組成物が、320℃の温度、12g/mのコーティング重量、および100m/分のライン速度で、130mm以下、または120mm以下、または110mm以下、または100mm以下の「ネックイン」値を有する、上記19~21のいずれか1つに記載の組成物。
【0073】
23.さらに別のエチレン系ポリマー、さらにエチレン系インターポリマー、さらにエチレン系コポリマーを含む、上記19~22のいずれか1つに記載の組成物。
【0074】
24.上記19~23のいずれか1つに記載の組成物から形成された少なくとも1つの構成要素を含む、物品。
【0075】
25.物品が、コーティング、フィルム、または発泡体である、上記24に記載の物品。
【0076】
定義
矛盾する記載、文脈から暗示的、または本技術分野において慣習的でない限り、全ての部およびパーセントは重量に基づき、全ての試験方法は本開示の出願日の時点で現行のものである。
【0077】
本明細書で使用される場合、「組成物」という用語は、組成物を含む材料の混合物、ならびに組成物の材料から形成された反応生成物および分解生成物を指す。
【0078】
「ブレンド」または「ポリマーブレンド」という用語は、使用される場合、2つ以上のポリマーの密接な物理的混合物(すなわち、反応なし)を意味する。ブレンドは、混和性であってもなくてもよい(分子レベルで相分離していない)。ブレンドは、相分離していてもよく、またはしていなくてもよい。ブレンドは、透過電子分光法、光散乱、X線散乱、および当該技術分野で既知の他の方法から判定されたときに、1つ以上のドメイン構成を含有してもよく、または含有しなくてもよい。ブレンドは、マクロレベル(例えば、溶融ブレンド樹脂もしくは配合)またはミクロレベル(例えば、同じ反応器内での同時成形)で2つ以上のポリマーを物理的に混合することによって達成され得る。
【0079】
「ポリマー」という用語は、同じ種類であるか異なる種類であるかにかかわらず、モノマーを重合することによって調製される化合物を指す。したがって、ポリマーという一般的な用語は、ホモポリマーという用語(微量の不純物をポリマー構造に組み込む場合があるという理解のもとで、唯一のタイプのモノマーから調製されたポリマーを指す)、および以下に定義される「インターポリマー」という用語を包含する。微量の不純物が、ポリマー内に、および/またはポリマー内部に組み込まれてもよい。
【0080】
「インターポリマー」という用語は、少なくとも2つの異なる種類のモノマーの重合によって調製されるポリマーを指す。インターポリマーという一般名称は、コポリマー(2つの異なるモノマーから調製されるポリマーを指す)と、2つを超える異なる種類のモノマーとから調製されるポリマーを含む。
【0081】
「ホモポリマー」という用語は、微量の不純物がポリマー構造に取り込まれ得るという理解のもとで、エチレンのみから調製されたポリマーを指す。例えば、極微量のアセチレン成分(ポリマー中20モルppm未満)は、エチレンの典型的な基準値(例えば、エチレン供給物における最大5モルppmのアセチレン)に従って、エチレン供給物中に存在し得る。
【0082】
「エチレン系ポリマー」という用語は、ポリマーの重量に基づいて、50重量%または過半量の重合エチレンを含み、任意選択的に少なくとも1つのコモノマーを含み得るポリマーを指す。
【0083】
「エチレン系インターポリマー」という用語は、インターポリマーの重量に基づいて、50重量%または過半量の重合エチレンを含み、少なくとも1つのコモノマーを含むインターポリマーを指す。
【0084】
「エチレン系コポリマー」という用語は、コポリマーおよび唯一のコモノマー(したがって、2つのみのモノマータイプ)の重量に基づいて、50重量%または過半量の重合エチレンを含むコポリマーを指す。
【0085】
「高圧管状重合プロセス」という用語は、本明細書で使用される場合、少なくとも1000バール(100MPa)の高圧で実行されるフリーラジカル重合プロセスを指す。
【0086】
「エチレンに富む供給流」という用語は、本明細書で使用される場合、反応器システムへの供給流を指し、供給流中の全ての構成成分のモル量に基づいて、過半量のエチレンを含有する。任意選択的に、より多くの連鎖移動剤、コモノマー、他のプロセス構成成分(例えば潤滑油、溶媒など)、および/または不純物(例えば、開始剤分解生成物)のうちの1つが供給流中に存在し得る。
【0087】
「反応器構成」という用語は、本明細書で使用される場合、ポリマーを重合するために使用される、1つ以上の反応器と、任意選択的に、1つ以上の反応器予熱器および1つ以上のエチレン供給冷却デバイスとを指す。かかる反応器としては、オートクレーブ反応器(複数可)、管状反応器(複数可)、およびオートクレーブと管状反応器との組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0088】
「反応ゾーン」という用語は、ラジカル、またはラジカルに解離する、および/またはラジカルを生成する成分の添加により重合反応が開始される容器、例えば反応器、または容器の区分を指す。例示的な容器または反応器としては、オートクレーブおよび管状反応器が挙げられるが、これらに限定されない。反応媒体は、反応ゾーンの周りのジャケットを通って流れる熱伝達媒体によって加熱および/または冷却され得る。
【0089】
「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」という用語、およびそれらの派生語は、任意の追加の構成要素、工程、または手順の存在を、それらが具体的に開示されているか否かにかかわらず、除外することを意図するものではない。曖昧さを避けるために、「含む(comprising)」という用語を使用して請求される全ての組成物は、別途記載がない限り、任意の追加の添加剤、アジュバント、またはポリマー化合物であるか否かにかかわらず化合物を含んでもよい。対照的に、「本質的に~からなる」という用語は、操作性に必須ではないものを除いて、あらゆる後続の引用範囲から、いかなる他の構成要素、工程、または手順も除外する。「からなる」という用語は、具体的に規定または列挙されていない任意の構成要素、工程、または手順を除外する。
【0090】
試験方法
密度:密度測定のための試料を、ASTM D1928に従って調製する。ポリマー試料を、190℃および30,000psiで3分間、次いで21℃および207MPaで1分間押圧する。測定を、ASTM D792、方法Bを使用して、試料の押圧から1時間以内に行う。
【0091】
メルトインデックス:メルトインデックス、またはI、(g/10分またはdg/分)は、ASTM D1238、条件190℃/2.16kgに従って測定される。I10は、ASTM D1238、条件190℃/10kgで測定される。
【0092】
光散乱ゲル浸透クロマトグラフィ(LS-GPC、GPC(abs)):
トリプル検出器ゲル浸透クロマトグラフィ(TD-GPC):145℃で設定されたALLIANCE GPCV2000機器(Waters Corp.)で高温TD-GPC分析を実行する。GPCの流量は、1ミリリットル/分(mL/分)である。注入量は218.5マイクリットル(μL)である。カラムセットは、4つの混合Aカラム(20ミクロン(μm)粒子、7.5×300mm、Polymer Laboratories Ltd)からなる。
【0093】
CHセンサを備えたPolymerChARからのIR4検出器、λ=488nmで動作する、30メガワット(mW)のアルゴンイオンレーザを備えた、Wyatt Technology Dawn DSP Multi-Angle Light Scattering(MALS)検出器(Wyatt Technology Corp.,Santa Barbara,CA,USA)、およびWatersの3細管粘度検出器を使用して、検出が達成される。MALS検出器は、1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB)溶媒の散乱強度を測定することにより較正される。フォトダイオードの正規化は、32,100の重量平均分子量(Mw)および1.11の多分散性(分子量分布)を有する高密度ポリエチレン(HDPE)であるSRM1483を注入することにより行われる。TCBのポリエチレンには、0.104mL/mgの比屈折率増分(dn/dc)が使用される。
【0094】
従来のGPC較正は、分子量580~7,500,000g/モルの20の狭ポリスチレン(PS)標準(Polymer Laboratories Ltd.)を用いて行われる。以下の等式:Mポリエチレン=A*(Mポリスチレン(式中、A=0.39であり、B=1である)を使用して、ポリスチレン標準ピーク分子量をポリエチレン分子量に変換する。Aの値は、115,000g/モルのMwを有する線形高密度ポリエチレンホモポリマー(HDPE)を使用して判定される。このHDPE基準物質はまた、100%の質量回収率と1.873dL/gの固有粘度を想定して、IR検出器とおよび粘度計を較正するために使用される。
【0095】
200ppmの2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール(Merck,Hohenbrunn,Germany)を含有する蒸留「ベーカー分析済み」グレードTCB(J.T.Baker,Deventer,The Netherlands)を、試料調製用の溶媒、ならびに3Det-GPC実験用の溶媒として使用する。HDPE SRM1483は、米国国立標準技術研究所(Gaithersburg,MD,USA)から得られる。
【0096】
LDPE溶液は、160℃で3時間、穏やかに攪拌しながら試料を溶解することにより調製される。PS標準は、同じ条件下で30分間溶解される。試料濃度は1.5mg/mLであり、ポリスチレン濃度は0.2mg/mLである。MALS検出器は、異なる散乱角度(θ)で試料中のポリマーまたは粒子からの散乱信号を判定する。基本的な光散乱方程式(M.Anderson,B.Wittgren,K.-G.Wahlund,Anal.Chem.75,4279(2003)から)は次のように記述できる。
【数1】
式中、Rθは過剰レイリー比であり、Kは光学定数であり、これは、とりわけ、特定の屈折率増分(dn/dc)に依存し、cは溶質の濃度、Mは分子量、Rgは回転半径、λは入射光の波長である。光散乱データから分子量および回転半径を計算するには、ゼロ角度への外挿が必要である(P.J.Wyatt,Anal.Chim.Acta272,1(1993)も参照されたい)。これは、いわゆるデバイプロットでsin2(θ/2)の関数として(Kc/Rθ)1/2をプロットすることにより行われる。分子量は、縦軸の切片と、曲線の初期勾配からの回転半径とから計算できる。第2のビリアル係数は、無視できると想定される。固有粘度数は、粘度および濃度検出器信号の両方から、各溶出スライスにおける特定の粘度と濃度との比を取ることによって計算される。
【0097】
ASTRA4.72(Wyatt Technology Corp.)ソフトウェアを使用して、IR検出器、粘度計、MALS検出器から信号を収集し、計算を実行する。
【0098】
計算された分子量(例えば、絶対重量平均分子量Mw(abs)および絶対分子量分布(例えば、Mw(abs)/Mn(abs)))は、記載のポリエチレン標準物質のうちの1つ以上から誘導された光散乱定数、および0.104の屈折率濃度係数(dn/dc)を使用して得られる。概して、質量検出器応答および光散乱定数は、約50,000ダルトンを超える分子量を有する線形標準から判定されるべきである。粘度計の較正は、製造業者によって説明される方法を使用して、または代替的に標準基準材料(SRM)1475a、1482a、1483、または1484aなどの好適な線形標準の公表された値を使用して達成され得る。クロマトグラフィ濃度は、第2のビリアル係数効果(分子量に対する濃度効果)を扱うことを排除するのに十分に低いと想定される。
【0099】
TD-GPCからの得られたMWD(abs)曲線は、絶対重量平均分子量Mw(abs)、絶対数平均分子量Mn(abs)、およびwの3つの特徴的なパラメータで要約され、wは、ポリマーの総重量に基づいて、かつGPC(abs)により判定される際、1×10g/モルよりも大きい分子量の重量分率として定義される。
【0100】
方程式の形式では、パラメータは、次のように判定される。「logM」および「dw/dlogM」の表からの数値積分は、典型的には、台形公式で行われる。
【数2】
【0101】
レオロジーG’
G’測定において使用した試料は、圧縮成形プラークから調製した。アルミニウム箔片をバックプレート上に置き、鋳型または型をバックプレートの上部に置く。およそ12グラムの樹脂を型に入れ、第2のアルミニウム箔片を樹脂および型の上に置く。次いで、第2のバックプレートをアルミニウム箔の上部に置く。1セット全体を圧縮成型プレスに入れ、以下の条件:150℃、10バールの圧力で3分、続いて150℃、150バールで1分間、続いて150バールで「1.5分」急冷して室温まで冷却する。25mmのディスクを圧縮成型されたプラークから打ち抜く。このディスクの厚さは、およそ2.0mmである。
【0102】
G’を判定するためのレオロジー測定は、170℃、および10%のひずみの窒素環境において行う。打ち抜いたディスクを、少なくとも30分間、170℃で予熱されたARES-1(Rheometrics SC)レオメータオーブン内に位置する2つの「25mm」平行プレートの間に置き、「25mm」の平行プレートの間隙を、1.65mmまでゆっくりと低減する。次いでこれらの条件で、試料を正確に5分間維持する。次いで、オーブンを開き、余分な試料をプレートの縁の周りで注意深く切り取って、オーブンを閉じる。試料の貯蔵弾性率および損失弾性率を、100~0.1rad/秒(0.1rad/秒で500Pa未満のG’’値を得ることができる場合)、または100~0.01rad/秒の減少する周波数掃引に従って、小振幅の振動剪断によって測定する。各周波数掃引に対して、周波数ディケード当たり10ポイント(対数的に間隔を置いた)を使用する。
【0103】
データを、両対数スケールでプロットした(G’(Y軸)対G”(X軸))。Y軸スケールは、10~1000Paの範囲を網羅し、一方でX軸スケールは、100~1000Paの範囲を網羅する。Orchestratorソフトウェアを使用して、(または少なくとも4つのデータポイントを使用して)G’’が200~800 Paである領域のデータを選択する。データを、近似経験式(fit equation)Y=C1+C2ln(x)を使用して、対数多項式モデルに近似させる。Orchestratorソフトウェアを使用して、500Paに等しいG’’におけるG’を補間によって判定する。
【0104】
ヘキサン抽出物のための標準方法
ポリマーペレット(約2.2gのペレットがフィルムに押圧される、さらなる修飾を伴わない重合、ペレット化プロセスから)を、3.0~4.0ミルの厚さで、カーバープレス内で押圧する。ペレットを190℃で、3分間、3,000重量ポンドで、その後190℃で、3分間、40,000重量ポンドで押圧する。作業者の手からの残渣油でフィルムを汚染しないように、非残渣手袋(PIP*CleanTeam*Cotton Lisle Inspection Gloves、部品番号:97-501)を着用する。フィルムを「1インチ×1インチ」の正方形に切断し、秤量する。「2.5g」のフィルム試料を各々の抽出に使用するように、十分なフィルム試料を使用する。フィルムを、次いで、加熱した水浴中に「49.5±0.5℃」で、約1000mlのヘキサンを含有するヘキサン容器中で、2時間抽出する。
【0105】
ヘキサンは、異性体ヘキサン混合物(例えば、Hexanes(Optima)、Fisher Chemical、HPLC用の高純度移動相、および/またはGC用途用の抽出溶媒、GCによる99.9%分)である。2時間後、フィルムを取り出し、清浄なヘキサン中ですすぎ、最初に窒素で乾燥させ、次いで、真空オーブン(80±5℃)中で、完全真空(ISOTEMP Vacuum Oven、Model 281A、約30インチHg)で2時間乾燥させる。次いで、フィルムをデシケータに入れ、室温まで最低1時間冷却させる。次いで、フィルムの重量を再秤量し、ヘキサンにおける抽出による質量損失の量を計算する。
【0106】
実験
本発明の実施例(IE1)
重合は、4つの反応ゾーンおよび2つのエチレン系供給流を有する管状反応器で実施された。各反応ゾーン内では、この水を反応器のジャケットを通して向流で循環させることにより、反応媒体を冷却および/または加熱するために、加圧水が使用された。入口圧力は、2250バールであった。エチレンの押出量は、約45t/時間であった。各反応ゾーンは、1つの入口および1つの出口を有した。各入口流は、前の反応ゾーンからの出口流、および/または添加されたエチレンに富む供給流からなった。エチレンは、エチレン中の微量(最大5モルppm)のアセチレンを許容した基準値に従って供給された。したがって、ポリマー内に組み込まれるアセチレンの最大の潜在的な量は、エチレン系ポリマーのモノマー単位の総モルに基づいて、16モルppm以下である。未転化エチレン、および反応器出口中の他のガス成分は、高圧および低圧リサイクルによりリサイクルされ、ブースター、一次およびハイパー(二次)圧縮器により圧縮された。有機過酸化物(表1を参照)が各反応ゾーンに供給された。各重合について、プロピオンアルデヒド(PA)およびプロピレンの両方が連鎖移動剤として使用され、各反応ゾーン内に存在していた。エチレンに富む反応器の供給流には、均一の濃度の適用された連鎖移動剤を含有する。
【0107】
反応ゾーン1内で第1のピーク温度(最高温度)に達した後、反応媒体を加圧水を用いて冷却した。反応ゾーン1の出口で、反応媒体は、再開始のための有機過酸化物を含有する、新鮮で冷たい、エチレンに富む供給流を注入することにより、さらに冷却した。第2の反応ゾーンの終わりに、第3の反応ゾーンにおけるさらなる重合を可能にするために、有機過酸化物が供給された。有機過酸化物は、最低温度開始剤クラス(最低半減期温度)によって温度発現を開始および/または加速するために、多くの場合、低温および高温開始剤システムの混合物において適用される一方で、制御温度、それぞれ、オートクレーブ反応ゾーンのための最大ゾーン温度、および管状反応器ゾーンのための最大ピーク温度は、表1に示されるように、最高温度開始剤クラス(最高半減期温度)によって制御および判定される。このプロセスを第3の反応ゾーンの終わりで繰り返して、第4の反応ゾーンにおけるさらなる重合を可能にした。溶融温度が約230~250℃の単軸スクリュー押出機設計を使用して、ポリマーを押し出してペレット化した(1グラムあたり約30ペレット)。エチレンに富む供給流と4つの反応ゾーンとの重量比は、X:(1.00-X):0.00:0.00であった。式中、Xは、エチレンに富む供給流全体の重量分率で、Xは、「前部へのエチレン/重量%」として表3に指定される。内部プロセス速度は、それぞれ第1、第2、第3、第4の反応ゾーンで、約16.5、12、12、12m/秒であった。追加情報は、表2および表3に見出すことができる。
【表1】
【表2】
【表3】
【0108】
ポリマー特性を表4および表5に示す。
【表4】
【表5】
【0109】
本発明の実施例は、ポリマー特性の優れた均衡を有する。低い抽出物および高い弾性G’は、ほとんどの管状グレードよりも高いが、オートクレーブLDPEよりも低い高分子量で得られる。
【0110】
比較例PT7007は、オートクレーブLDPEである。本発明の試料と比較して、それは、少ない抽出物を有するが、著しくより高い分子量およびより低いG’レベルを有する。
【0111】
比較例のLDPE450Eは、より低いG’値を有する管状樹脂である。それは、より高い溶融強度用途に使用されるが、低いネックイン押出コーティング用途には好適ではない、比較的広い管状LDPE材料である。
【0112】
比較例のAGILITY EC7000は、高いG’値を有する管状樹脂であるが、本発明の材料と比較すると、より高分子量の部分の一部が欠けているため、これにより、本発明の実施例と比較して、低いコーティング速度で何らかのより高いネックインを示している。
【0113】
図1は、比較例と本発明の実施例のMWDを示している。
【0114】
本発明のポリマーの高いG’は、押出コーティング、ならびに吹き込みおよび流延フィルムおよび発泡などの他の強い流動用途に良好である。広いMWDは、押出コーティングおよび関連用途に必要とされる。本発明のポリマーの低抽出物は、高品質の加工、例えば、押出操作における煙の形成を低下させるのに良好であり、食品接触用途に関連している。
【0115】
押出コーティング
単層押出コーティングは、以下の温度設定1(押出機:200℃/250℃/280℃/320℃/320℃/320℃、フランジ/アダプタ/配管:320℃(6つのゾーン)、およびダイ:320℃×10ゾーン)、ならびに以下の温度設定2(押出機:200℃/250℃/280℃/290℃/290℃/290℃、フランジ/アダプタ/配管:290℃(6つのゾーン)、およびダイ:290℃×10ゾーン)で表される設定温度プロファイルで実行された。
【0116】
LDPE樹脂は、8g/m、10g/m、12g/m、15g/m、および25g/mの量(コーティング重量)で、70g/mのクラフト紙上に、長さと直径との(L/D)比が32で、「3.5インチ」直径スクリュー上に押し出され、溶融圧力および溶融温度は、アダプタ内に配置された熱電対で記録された。溶融物は、公称0.7mmのダイ間隙に設定した、Davis Standard/Er-We-Paフレックスリップエッジビーズ低減ダイ、シリーズ510Aを通して送達された。溶融延伸および適用(移動する溶融基材上への溶融物の垂直方向の)は、圧力ロールに向かって250mmの空隙および15mmのニップオフセットで実行された。艶消し表面仕上げを有する「水冷」冷却ロールに接触する、ゴム表面層を有する圧力ロールとの接触点である、ラミネータニップ内の移動基材上に溶融物を適用し、15℃~20℃の温度で維持した。空隙は、ダイリップとラミネータニップとの間の垂直距離として定義される。ニップオフセットは、ラミネータニップに対するダイリップ位置の水平オフセットとして定義される。
【0117】
60m/分、80m/分、100m/分、150m/分、および250m/分の異なるライン速度を使用して、8g/m、10g/m、12g/m、および15g/mのコーティング重量における「ネックイン」を判定した。「ドローダウン」の判定には、15g/m開始コーティング重量および100m/分の開始ライン速度で、変化する(徐々に増加する)ライン速度を使用した。「ドローダウン」は、ウェブの破損が起こる前に達成可能な最大ライン速度として定義される。「ネックイン」は、ウェブの最終幅とダイ幅と(固定ライン速度(60m/分、80m/分、100m/分、150m/分、および250m/分)における)の差である。より低い「ネックイン」およびより高い「ドローダウン」は、両方とも非常に望ましい。より低い「ネックイン」は、ウェブのより良い寸法安定性を指示し、これにより、基材上へのコーティングのより良い制御を提供する。「ドローダウン」が高いほど、ライン速度が高いことを指示し、これはより高い生産性を意味する。結果を表6および7に示す。
【表6】
【表7】
【0118】
表6は、LDPE樹脂の様々なコーティング重量およびライン速度条件における「ネックイン」値を示し、これは、押出コーティングプロセスのための重要なパラメータである。オートクレーブ系DOW LDPE PT7007(EC A)は、低い「ネックイン」を有し、押出コーティング用途に商業的に適用される。AGILITY EC7000(EC B)は、押出コーティング用途向けに設計された管状系樹脂であり、押出コーティングに商業的に適用される。典型的には、管状LDPEで低い「ネックイン」を達成することは困難である。フィルム用途向けに設計された管状LDPEであるDOW LDPE450E(EC C)の比較例を考慮すると、表6は、オートクレーブ系比較試料EC A、および比較試料EC B(管状系押出コーティング樹脂)よりも高い「ネックイン」を示している。試料EC B、AGILITY EC7000は、オートクレーブ系DOW LDPE PT 7007の試料EC Aと比較して、より高い「ネックイン」を示している。この差は、60m/分~250m/分のより低いコーティングライン速度で、かつ10g/m~15g/mの低いコーティング重量でより大きい。対照的に、管状系押出コーティング樹脂である本発明のEC1(IE1)は、60m/分~250m/分の低ライン速度、および8g/m、10g/m、12g/m、および15g/mのコーティング重量で 有意な改善の(より低い)「ネックイン」を示す。表7に示すように、100および300m/分のライン速度で25g/mのコーティング重量について、本発明の試料EC1で同じ観察が行われた。最終的な「ネックイン」結果は、オートクレーブ系ベンチマークDOW LDPE PT7007(EC A)と同等である。本発明の実施例は、オートクレーブ系実施例と比較して、より低いMw(abs)でさえ良好な押出コーティングを提供する。また、本発明の実施例は、EC B、管状系AGILITY EC7000と比較して、オートクレーブ系基準である「DOW LDPE PT 7007」EC A試料と同様に、有意に良好なウェブエッジ安定性を有することが観察された。本発明の実施例は、オートクレーブプロセスと比較して、改善された変換レベル、およびより低いエネルギー入力で、管状反応器トレイン上で作製することができる。さらにまた、本発明のポリマーは、1つの管状反応器トレイン上に高透明度フィルムおよび押出コーティングを生成することを可能にする。高透明度フィルム用途の場合、ゲルレベルは非常に低くしなければならない。低ゲルレベルを達成するために、架橋能力を有する架橋剤および/またはコモノマーは、典型的には、ポリマーの形成において望ましくない。本発明のエチレン系ポリマーは、高分子量画分が過剰に存在することなく、改善された弾性およびコーティング性能を有することが発見された。I2、Mw(abs)およびG’の組み合わせは、中程度のMw(abs)で高い弾性を提供する。
【0119】
本発明を前述の実施例でかなり詳細に説明してきたが、この詳細は例示の目的のためであり、以下の特許請求の範囲に記載されるような本発明に対する限定として解釈されるべきではない。

図1