(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】不均一触媒の調製方法
(51)【国際特許分類】
B01J 37/02 20060101AFI20221207BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20221207BHJP
B01J 27/045 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
B01J37/02 101C
B01J37/08
B01J27/045 Z
(21)【出願番号】P 2020504331
(86)(22)【出願日】2018-06-25
(86)【国際出願番号】 US2018039230
(87)【国際公開番号】W WO2019022885
(87)【国際公開日】2019-01-31
【審査請求日】2021-06-15
(32)【優先日】2017-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】サスマン、ヴィクター ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】リー、ウェンシェン
(72)【発明者】
【氏名】ヘロン、ジェフェリー
(72)【発明者】
【氏名】ブレイロック、ディー. ウェイン
(72)【発明者】
【氏名】アリオラ、ダニエル ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ヘイシュ、アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】キリリン、アレクセイ
(72)【発明者】
【氏名】クレメンツ、ハイヂ
(72)【発明者】
【氏名】シュマッカー、エイブリン エル.
(72)【発明者】
【氏名】ヒックマン、ダニエル エー.
【審査官】若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開昭53-068691(JP,A)
【文献】米国特許第03367888(US,A)
【文献】特公昭48-006385(JP,B2)
【文献】米国特許第04786625(US,A)
【文献】特開平11-267525(JP,A)
【文献】特開昭50-146587(JP,A)
【文献】特開昭52-147584(JP,A)
【文献】国際公開第2017/084969(WO,A1)
【文献】特開平02-153991(JP,A)
【文献】国際公開第2009/054462(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00-38/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタクロレインおよびメタノールからメタクリル酸メチルを調製するために使用される不均一触媒を調製するための方法であって、(a)(i)担体と、(ii)貴金属化合物の溶液と、(iii)少なくとも1個のヒドロキシルまたはカルボン酸置換基を含むC
2~C
18チオールと、を混ぜ合わせて、湿潤粒子を形成する工程と、(b)乾燥し、続いて焼成することによって、前記湿潤粒子から水を除去して、触媒を生成する工程と、を含む、方法。
【請求項2】
少なくとも1個のヒドロキシルまたはカルボン酸置換基を含む前記C
2~C
18チオールが、カルボン酸およびヒドロキシルからなる群から選択される1~3個の置換基を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記貴金属が金である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記担体が、γ-、δ-、またはθ-アルミナ、シリカ、マグネシア、チタニア、バナジア、酸化ランタン、セリア、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記担体が、3:1以下のアスペクト比を有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1個のヒドロキシルまたはカルボン酸置換基を含む前記C
2~C
18チオールが、2~8個の炭素原子を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
貴金属および前記担体の百分率としての貴金属の量が、0.2~5重量%である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記湿潤粒子を真空下で20~150℃の温度で乾燥させて、乾燥粒子を形成し、前記乾燥粒子を250~550℃の温度で焼成する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記触媒粒子の平均直径が、60ミクロン~10mmである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1個のヒドロキシルまたはカルボン酸置換基を含む前記C
2~C
18チオールが、チオリンゴ酸、3-メルカプトプロピオン酸、チオグリコール酸、2-メルカプトエタノール、1-チオグリセロール、それらの共役塩基、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不均一触媒を調製するための方法に関する。触媒は、メタクロレインおよびメタノールからメタクリル酸メチルを調製するためのプロセスで特に有用である。
【背景技術】
【0002】
チオ酸の存在下での金属の析出によって作製された不均一触媒が知られている(例えば、米国特許第3,972,829号を参照されたい)。しかしながら、改善された収率および/または選択性を提供する触媒に対する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0003】
本発明は、不均一触媒を調製するための方法であって、(a)(i)担体と、(ii)貴金属化合物の水溶液と、(iii)少なくとも1個のヒドロキシルまたはカルボン酸置換基を含むC2~C18チオールと、を混ぜ合わせて、湿潤粒子を形成する工程と、(b)乾燥し、続いて焼成することによって、湿潤粒子から水を除去して、触媒を生成する工程と、を含む、方法を対象とする。
【発明を実施するための形態】
【0004】
別途記載のない限り、すべての百分率組成物は重量百分率(重量%)であり、すべての温度は℃である。貴金属は、金、プラチナ、イリジウム、オスミウム、銀、パラジウム、ロジウム、およびルテニウムのいずれかである。2つ以上の貴金属が触媒に存在し得、その場合、制限がすべての貴金属の合計に適用される。「触媒中心」は、触媒粒子の重心、つまり、すべての座標方向のすべての点の平均位置である。直径は、触媒の中心を通過する任意の直線寸法であり、平均直径は、すべての可能な直径の算術平均である。アスペクト比は、最長の直径と最短の直径との比率である。
【0005】
好ましくは、担体は、耐火性酸化物の粒子であり、好ましくは、γ-、δ-、もしくはθ-アルミナ、シリカ、マグネシア、チタニア、ジルコニア、ハフニア、バナジア、酸化ニオブ、酸化タンタル、セリア、イットリア、酸化ランタン、またはこれらの組み合わせ、好ましくは、γ-、δ-、またはθ-アルミナである。好ましくは、貴金属を含む触媒の部分に、担体は、10m2/g超、好ましくは30m2/g超、好ましくは50m2/g超、好ましくは100m2/g超、好ましくは120m2/g超の表面積を有する。貴金属をほとんどまたはまったく含まない触媒の部分において、担体は、50m2/g未満、好ましくは20m2/g未満の表面積を有し得る。
【0006】
好ましくは、触媒粒子のアスペクト比は、10:1以下、好ましくは5:1以下、好ましくは3:1以下、好ましくは2:1以下、好ましくは1.5:1以下、好ましくは1.1:1以下である。粒子の好ましい形状としては、球、円柱、直方体、輪、多葉形状(例えば、クローバー断面)、複数の穴および「ワゴンホイール」を有する形状、好ましくは球が挙げられる。不規則な形状も使用され得る。
【0007】
好ましくは、貴金属(複数可)の少なくとも90重量%は、触媒体積の外側40%、好ましくは外側35%、好ましくは外側30%、好ましくは外側25%である。好ましくは、任意の粒子形状の外部体積は、外部表面に垂直な線に沿って測定された、その内部表面から外部表面(粒子の表面)まで一定の距離を有する体積に対して計算される。例えば、球形粒子の場合、体積の外側x%は球形シェルであり、その外部表面は粒子の表面であり、その体積は球全体の体積のx%である。好ましくは、貴金属の少なくとも95重量%、好ましくは少なくとも97重量%、好ましくは少なくとも99重量%は、触媒の外部体積にある。好ましくは、貴金属(複数可)の少なくとも90重量%(好ましくは少なくとも95重量%、好ましくは少なくとも97重量%、好ましくは少なくとも99重量%)は、触媒直径の15%以下、好ましくは10%以下、好ましくは8%以下、好ましくは6%以下の表面からの距離内にある。表面からの距離は、表面に垂直な線に沿って測定される。
【0008】
好ましくは、貴金属は、金またはパラジウム、好ましくは金である。
【0009】
好ましくは、触媒粒子の平均直径は、少なくとも60ミクロン、好ましくは少なくとも80ミクロン、好ましくは少なくとも100ミクロン、好ましくは少なくとも200ミクロン、好ましくは少なくとも300ミクロン、好ましくは少なくとも400ミクロン、好ましくは少なくとも500ミクロン、好ましくは少なくとも600ミクロン、好ましくは少なくとも700ミクロン、好ましくは少なくとも800ミクロン、好ましくは30mm以下、好ましくは20mm以下、好ましくは10mm以下、好ましくは5mm以下、好ましくは4mm以下、好ましくは3mm以下である。担体の平均直径および最終触媒粒子の平均直径は、有意に異なっていない。
【0010】
好ましくは、少なくとも1個のヒドロキシルまたはカルボン酸置換基を含むC2~C18チオールは、2~12個、好ましくは2~8個、好ましくは3~6個の炭素原子を有する。好ましくは、チオール化合物は、合計で4個以下、好ましくは3個以下、好ましくは2個以下のヒドロキシル基およびカルボン酸基を含む。好ましくは、チオール化合物は、2個以下、好ましくは1個以下のチオール基を有する。チオール化合物がカルボン酸置換基を含む場合、それらは酸形態、共役塩基形態、またはこれらの混合物で存在し得る。チオール成分はまた、そのチオール(酸)形態またはその共役塩基(チオレート)形態のいずれかで存在し得る。特に好ましいチオール化合物としては、チオリンゴ酸、3-メルカプトプロピオン酸、チオグリコール酸、2-メルカプトエタノール、および1-チオグリセロール(それらの共役塩基も含まれる)が挙げられる。
【0011】
好ましくは、触媒は、担体の存在下で貴金属塩の水溶液から貴金属を沈殿させることにより製造される。好ましい一実施形態では、触媒は、好適な貴金属前駆体塩の水溶液を多孔性無機酸化物に添加して細孔を溶液で充填し、次いで水を乾燥により除去する初期湿潤技法によって製造される。好ましい貴金属塩としては、テトラクロロ金酸、金チオ硫酸ナトリウム、金チオリンゴ酸ナトリウム、水酸化金、硝酸パラジウム、塩化パラジウム、および酢酸パラジウムが挙げられる。好ましくは、湿潤粒子は、大気圧または真空下で20~150℃の温度で、好ましくは少なくとも1時間乾燥される。次いで、得られた材料(乾燥粒子)は、貴金属塩を金属または金属酸化物に分解するための当業者に知られている、焼成、還元、または他の処理によって完成触媒に転化される。好ましくは、焼成は、200~700℃、好ましくは少なくとも250℃、好ましくは少なくとも280℃、好ましくは600℃以下、好ましくは550℃以下、好ましくは500℃以下の温度で実施される。好ましくは、焼成時間は1~24時間である。
【0012】
別の好ましい実施形態では、触媒は、好適な貴金属前駆体塩を含有する水溶液に多孔性無機酸化物を浸漬し、次いで、溶液のpHを調整することにより、塩を無機酸化物の表面と相互作用させる析出沈殿により生成される。次いで、得られた処理済み固体を(例えば濾過により)回収し、次いで、貴金属塩を金属または金属酸化物に分解するための当業者に知られている、焼成、還元、または他の処理によって完成触媒に転化される。
【0013】
貴金属塩および水の量は、触媒中の担体の量および貴金属の所望のレベルによって測定され、当業者によって容易に算出され得る。好ましくは、貴金属および担体の百分率としての貴金属の量は、0.2~5重量%、好ましくは少なくとも0.5重量%、好ましくは少なくとも0.8重量%、好ましくは少なくとも1重量%、好ましくは1.2重量%、好ましくは4重量%以下、好ましくは3重量%以下、好ましくは2.5重量%以下である。好ましくは、少なくとも1つのヒドロキシルまたはカルボン酸基を含むC2~C18チオールと貴金属との比は、50:1~10:1、より好ましくは5:1~2:1である。
【0014】
本発明の触媒は、触媒床を含有する酸化的エステル化反応器(OER)内でメタクロレインをメタノールで処理することを含むメタクリル酸メチル(MMA)を製造するためのプロセスに有用である。触媒床は、触媒粒子を含み、OER内に位置し、液体の流れが触媒床を通過し得る。触媒床内の触媒粒子は、典型的には、固体壁およびスクリーンによって適所に保持される。いくつかの構成では、スクリーンは、触媒床の両端にあり、固体壁は、側面(複数可)にあるが、いくつかの構成では、触媒床は、完全にスクリーンで囲まれ得る。触媒床の好ましい形状は、円柱、直方体、および円柱シェル、好ましくは円柱を含む。OERは、メタクロレイン、メタノール、およびMMAを含む液相と、酸素を含む気相と、をさらに含む。液相は、副生成物、例えば、メタクロレインジメチルアセタール(MDA)およびイソ酪酸メチル(MIB)をさらに含み得る。好ましくは、液相は、40~120℃、好ましくは少なくとも50℃、好ましくは少なくとも60℃、好ましくは110℃以下、好ましくは100℃以下の温度である。好ましくは、触媒床は、0~2000psig(101kPa~14MPa)、好ましくは2000kPa以下、好ましくは1500kPa以下の圧力である。好ましくは、触媒床のpHは、4~10、好ましくは少なくとも4.5、好ましくは少なくとも5、好ましくは9以下、好ましくは8以下、好ましくは7.5以下、好ましくは7以下、好ましくは6.5以下である。好ましくは、触媒床は、管状連続反応器または連続撹拌槽反応器、好ましくは管状連続反応器内にある。
【実施例】
【0015】
A.金チオ硫酸ナトリウム初期湿潤触媒-粉末型
【表1】
【0016】
A.2-触媒の調製-1.5重量%Auの標的装荷
1.100gのPuralox 5/90 アルミナを量る。
2.86gの蒸留脱イオン水に3.73gの金チオ硫酸ナトリウム水和物を溶解して、透明かつ無色の溶液を形成する。
3.#2で調製した溶液を使用して初期湿潤によってPuralox 5/90 アルミナを含浸する。
4.含浸した材料を真空オーブンに入れ、80℃で1時間乾燥する。
5.乾燥した触媒物質を、5°/分のランプ率を使用して400℃まで焼成し、400℃で4時間保持する。
【0017】
C.金チオリンゴ酸ナトリウム初期湿潤触媒-粉末型
【表2】
【0018】
C.2-触媒の調製-1.5重量%Auの標的装荷
1.100gのPuralox 5/90 アルミナを量る。
2.86gの蒸留脱イオン水に3.1gの金チオリンゴ酸ナトリウムを溶解して、透明かつ無色の溶液を形成する。
3.#2で調製した溶液を使用して初期湿潤によってPuralox 5/90 アルミナを含浸する。
4.含浸した材料を真空オーブンに入れ、80℃で1時間乾燥する。
5.乾燥した触媒物質を、5°/分のランプ率を使用して300℃まで焼成し、300℃で4時間保持する。
【0019】
E.-テトラクロロ金酸析出沈殿触媒調製-粉末のみ
【表3】
【0020】
E.2-触媒の調製-1.5重量%Auの標的装荷
1.Teflon撹拌棒を備えた好適な容器に600mLのDI水を添加する。
2.100gのPuralox 5/90を水中に懸濁し、450RPMで撹拌する。
3.7.54gのチオ硫酸ナトリウム五水和物を混合物に添加し、60℃で1時間撹拌する。初期pHに注目されたい。
4.混合物のpHが9.95に到達するまで、2M炭酸ナトリウム水溶液を滴下することによって、混合物のpHを調整する。
5.4.64gのテトラクロロ金酸水素塩を混合物に添加し、60℃でさらに1.5時間撹拌する。溶液の最終pHに注目されたい。
6.加熱および攪拌を中止し、材料が容器の底部に沈殿することを可能にする。液体をデカントし、固体を約1LのDI水に再懸濁する。
7.工程6をさらに2回繰り返し、濾過を介して固体を回収する。周囲温度で一晩空気乾燥する(すなわち、時計皿または他の好適な容器上に広げる)。
8.結果として得られる薄茶色の固体を、5℃/分のランプを使用して400℃まで炉内で焼成し、400℃で4時間保持する。
9.結果として得られる紫色の固体を収集し、琥珀色のガラス容器中に保管する。使用または輸送の準備ができるまで、材料を低温に保つ。
【0021】
高表面積γ-アルミナ上のチオ硫酸ナトリウム添加物を有する析出沈殿調製触媒の性能データ:
【表4】
【表5】
【表6】
【0022】
動作の詳細
A.連続固定床反応器の典型的な動作
代表的な実施例は、ここに提供され、実施例5の触媒に使用した試験条件に対応する。反応器は、19gの200μm炭化ケイ素微粒子中に分散させた0.38gの触媒で装荷した2フィート(61cm)×0.25インチ(6.4mm)ステンレス鋼チューブからなっていた。反応器は、温度を維持するために再循環ヒーターによって供給されるジャケットを介して加熱された。この実験では、最も典型的な反応温度は60℃であった。合成空気およびヘリウムは、ガス供給物の酸素含有量が調整される(典型的には、不活性物中の6%のO2)ことを可能にする別個の質量流量制御装置を介して反応器に連続的に供給された。液体は、ポンプを介して同時に供給され、メタノール中の10重量%のメタクロレインからなる溶液を送出した。反応器は、動作中に液体および気体の両方が供給され、かつ反応器を通って流下する、トリクルフローモードで動作した。反応器は、典型的には、160psig(1200kPa)の圧力で動作し、それは、背圧調整器で維持された。次いで、反応器からの溶出液は、3mmのガラスビーズが詰められ、かつ110℃の温度、10psig(170kPa)の圧力に維持された、直径1/2インチ(12.7mm)のステンレス鋼管からなるフラッシュ塔を通過した。オンラインガスクロマトグラフにより、フラッシュからの反応器溶出液の分析が容易になった。
【0023】
B.「バッチリサイクル」固定床反応器の典型的な動作
典型的な実験では、20重量%のメタクロレイン、200ppmの抑制剤(4-HT)、および残りのメタノールを含む溶液を調製した。次いで、0.3重量%のメタクリル酸を添加し、続いて水中の10重量%のNaOHを使用してpH7に滴定することによって、溶液を緩衝した。150gの液体供給物は、ガス分離容器として機能する300mLの反応器中にポンプで送り込んだ。容器内の温度を約15~20℃に維持する外部冷却コイルで容器を冷却した。液体供給物は、ガス分離容器から、垂直に向けられた固定床反応器の底部中に、7mL/分でポンプで送られた。固定床反応器に入る前に、空気/N2ガス供給物を液体供給物と混合した。固定床反応器は、1/2インチ(12.7mm)管ジャケット内の1/4インチステンレス鋼管(長さ約36インチ)であった。反応器の内径は0.18インチ(4.6mm)であった。外部ヒーターを使用して60℃に維持された水を反応器のジャケットを通して循環させて、等温動作を維持した。反応器自体は、2mmのガラスビーズが詰められて、管の長さの半分(約18インチ(46cm))、次いで2gの触媒を充填した。反応器の上部の残りの空隙は、3mmのガラスビーズで充填した。反応器の上部から出る液体および気体は、凝縮器に送られた。非凝縮性ガスが通気される一方、液体は、ガス分離容器に戻されてリサイクルされた。結果を次の表に記載する。MIBは、100%MMA生成物に基づいて、ppmで報告される。
【0024】
C.「半バッチ」スラリー反応器の典型的な動作
半バッチ反応器システムは、撹拌槽反応器として動作した300mLのParr反応器からなっている。実験作業の開始時に反応器内の液体が反応器に充填されている間、ガス供給物は連続的である。典型的な実験では、適切な量の触媒(0.5~2g)を反応器に充填し、その後、反応物溶液(典型的には、メタノール中の150gの10重量%メタクロレイン)をポンプによって反応器内に計量供給した。一旦反応器に完全に装荷されると、反応器を100psig(790kPa)に加圧し、この圧力を維持した。窒素および空気を送出し、かつ典型的には窒素中の8%の酸素を供給できる、較正された質量流量制御装置によって、ガスを反応器内に連続的に導入した。ガスは、1150RPMで回転するガス分散インペラによって反応混合物全体に分散された。ガス状溶出液は、凝縮器を通過して、凝縮性成分の大部分が反応器から出ることを防止した。一部の有機物および非凝縮性ガスは、凝縮器から出て、ガスクロマトグラフによってオンラインで分析された。外部試料ループを使用して、反応器から液体試料を定期的に収集し、次いで、液体試料を分析して、別個のオフラインガスクロマトグラフを使用して反応の進行を監視した。
【0025】
1.エッグシェル触媒の製法例:アルミナ上の金チオリンゴ酸ナトリウム(実施例5(触媒481)-注:実施例7および8は、類似しているが、異なるサイズの担体上にあり、よってここで明示的に説明されない):
含浸溶液は、0.3108gの金チオリンゴ酸ナトリウム二水和物を10.7812gの脱イオン水に溶解することによって調製した。次に、直径1/16インチのアルミナ円柱(Norpro、H.G.08408、H.S.A.アルミナ、表面積=226m2/g、細孔直径=122Å、細孔体積=0.72cc/g)の10.0617gの試料を、オーブン中で120℃で少なくとも1時間以上乾燥させて、乾燥試料を提供した。材料の初期湿潤点に到達するまで、金チオリンゴ酸ナトリウムの溶液をこの乾燥固体に適用した。次いで、結果として得られる材料を静的乾燥オーブン内に80℃で1時間入れ、次いで、空気パージを有する箱型炉に入れた。温度を5℃/分のランプ率で300℃に増加させ、次いで、この温度で4時間保持した。
【0026】
2.非エッグシェル触媒の製法例:アルミナ上の金チオ硫酸ナトリウム(実施例6(触媒547)-注:実施例9は、類似しているが、異なるサイズの担体上にあり、よってここで明示的に説明されない。)
金チオ硫酸ナトリウムの水溶液は、0.3837gのこの材料を9.3746gの脱イオン水に溶解することによって調製した。結果として得られる材料を、初期湿潤点に到達するまで、実施例1で使用したものと同一のH.S.A.1/16インチ(1.6mm)の10.1179gの円柱アルミナペレットに適用した。結果として得られる材料を周囲圧力および温度120℃で乾燥した後、箱型炉内に入れ、5℃/分のランプ率で350℃に加熱し、次いで、この温度で4時間焼成し、その後、触媒材料を使用できる状態にした。
【0027】
3.エッグシェル触媒の製法例:金チオ硫酸ナトリウム+チオリンゴ酸アルミナ(実施例10(触媒797))
Norpro H.S.A.アルミナの初期湿潤点は、蒸留水(Norpro SA6275、3.2mm球、ロット番号2016910048、表面積=238m
2/g、細孔直径=118Å、細孔体積=0.73cc/g)を使用して測定した。溶液は、金チオ硫酸ナトリウムおよびメルカプトコハク酸を脱イオン水に溶解することによって調製した。この溶液を30~45分間撹拌し、次いで、初期湿潤点に到達するまでアルミナ担体に適用した。使用される量は、表2に指定される。触媒を、50Lphで設定された空気パージを有する箱型炉に入れ、2℃/分で80℃に加熱し、この温度で2時間保持し、5℃/分で400℃に加熱し、次いで、この温度で4時間保持した。
【表7】
【0028】
4.エッグシェル触媒の製法例:金チオ硫酸ナトリウム+チオリンゴ酸(アルミナ上)(実施例11~13(触媒823、826))
Norpro H.S.A.アルミナの初期湿潤点は、蒸留水(Norpro SA6275、3.2mm球、ロット番号2016910048、表面積=238m2/g、細孔直径=118Å、細孔体積=0.73cc/g)を使用して測定した。50gのこの材料の試料を1Lのビーカーに添加し、次いで、400gの脱イオン水および40gの濃縮水酸化アンモニウム溶液(Fisher Scientific、ACS、28~30%重量%)からなる溶液中で10分間浸漬した。溶液をデカントし、同じ組成の新鮮な水酸化アンモニウム溶液と置換し、2度目の浸漬を行った。これもデカントし、試料を500mLの脱イオン水で洗浄した。上澄みのpHをメルカプトコハク酸で5.5に調整し、この洗浄液をデカントした。材料を500mLの脱イオン水で2度洗浄し、洗浄液をデカントし、材料を周囲温度および圧力で一晩乾燥した。次いで、この試料の一部分を、5℃/分のランプ率でこの温度に加熱した後、400℃で5時間、流動窒素(20~40Lph)下で処理した。
【0029】
含浸溶液は、適切な量の金チオ硫酸ナトリウムおよびメルカプトコハク酸を適切な量の脱イオン水に溶解することによって調製した。この溶液を周囲温度および圧力で30分間撹拌し、次いで、初期湿潤点に到達するまで上記のアルミナの試料に適用した。次いで、材料を乾燥し、2℃/分で80℃まで昇温し、80℃で2時間保持し、次いで、5℃/分のランプ率で400℃まで温度を増加させ、この温度で4時間焼成することによって、空気パージを50Lphで設定した箱型炉内で熱処理した。使用される試薬の特定の量が表2に提供される。
【表8】
【0030】
5.エッグシェル触媒の製法例:金チオ硫酸ナトリウム+他のチオール促進剤添加剤(実施例14~19、触媒690、847~877)
実施例14についてのみ、水溶液は、金チオ硫酸ナトリウム二水和物およびメルカプトコハク酸を脱イオン水に溶解することによって調製した。量は表3に指定される。この溶液をアルミナ担体に適用した(Norpro、H.G.08408、H.S.A.アルミナ、表面積=226m2/g、細孔直径=122Å、細孔体積=0.72cc/g)。結果として得られる材料を箱型炉内に入れ、5℃/分で400℃まで昇温し、この温度で4時間保持することによって、流動空気(50Lph)中で焼成し、その後、材料を使用できる状態にした。
【0031】
実施例15~19の場合、水溶液は、金チオ硫酸ナトリウム二水和物およびメルカプト含有種を脱イオン水に溶解し、結果として得られる溶液をアルミナ担体に適用することによって調製した。(Norpro SA6275、3.2mm球、ロット番号2016910048、表面積=238m
2/g、細孔直径=118Å、細孔体積=0.73cc/g)量は表3に指定される。材料を大気温度および大気圧で乾燥し、次いで、5℃/分で400℃に加熱し、この温度で4時間保持することによって、50Lphの流動空気中で焼成した。
【表9】
【0032】
6.エッグシェル触媒の製法例:テトラクロロ金酸+チオリンゴ酸(アルミナ上)(実施例20(触媒829))
溶液は、1.15gのテトラクロロ金酸および2.9のメルカプトコハク酸を36gの水に溶解することによって調製した。溶液を室温および圧力で60分間撹拌し、次いで、実施例1~4に記載のように35gの3.2mmのNorpro H.S.A.アルミナ球に適用した。材料を換気フード内に入れ、周囲条件下で乾燥させた後、空気パージを有する箱型オーブン内に入れ、80℃で10時間乾燥した。
【0033】
上記で調製した材料の一部分10gを、5℃/分で300℃に加熱し、箱型炉を使用してこの温度で2.5時間保持することによって焼成した。次いで、結果として得られる材料を、150mLの5重量%の水酸化ナトリウム水溶液に15分間浸漬した。この後、水酸化物溶液をデカントし、150mLの脱イオン水で置換し、15分間浸漬した。これらの2つの工程を順序どおりさらに4回繰り返し、その後、材料を箱型炉内で80℃で2時間空気乾燥し、5℃/分で300℃に加熱し、この温度で2.5時間保持することによって2度目の焼成を行い、その後材料を使用できる状態にした。
【表10-1】
【表10-2】