(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】細胞の遺伝子修飾のための非組込みDNAベクター
(51)【国際特許分類】
C12N 15/85 20060101AFI20221207BHJP
C12N 15/67 20060101ALI20221207BHJP
C12N 15/867 20060101ALI20221207BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20221207BHJP
【FI】
C12N15/85 Z
C12N15/67 Z ZNA
C12N15/867 Z
C12N15/113 Z
(21)【出願番号】P 2020516915
(86)(22)【出願日】2018-09-19
(86)【国際出願番号】 EP2018075354
(87)【国際公開番号】W WO2019057774
(87)【国際公開日】2019-03-28
【審査請求日】2021-08-16
(32)【優先日】2017-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】PCT/US2018/051381
(32)【優先日】2018-09-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 1.ウェブサイトの掲載日:平成30年8月1日 刊行物名:マチアス ボッザ(Matthias Bozza)の博士論文(題名:The development of a novel S/MAR DNA vector platform for the stable,persistent and safe Genetic Engineering of Dividing Cells) 2.ウェブサイトの掲載日:平成30年9月6日 刊行物名:アリシア ロイグ メリノ(Alicia Roig-Merino)の博士論文(題名:Genetic Modification of Stem Cells Utilizing S/MAR DNA Vectors)
(73)【特許権者】
【識別番号】512113803
【氏名又は名称】ドイチェス クレブスフォルシュンクスツェントルム
(73)【特許権者】
【識別番号】507048765
【氏名又は名称】ネイチャー テクノロジー コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハルボトル,リヒャルト
(72)【発明者】
【氏名】ボッザ,マチアス
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムス,ジェームス,エー.
【審査官】進士 千尋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/077866(WO,A1)
【文献】J Mol Med, 2011, Vol.89, pp.515-529
【文献】Nucleic Acids Research, 2014, Vol.42, e53
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15
CAplus/REGISTRY(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的脊椎動物細胞における自己複製型非組込みエピソームS/MAR発現ベクターの発現及び確立効率を改善する方法であって、以下のステップ:
a.i.細菌複製起点及び選択マーカーを含む細菌複製選択領域、
ii.プロモーター、5'UTR、導入遺伝子、及び3'UTRを含む、脊椎動物細胞における導入遺伝子の発現のための転写単位、
iii.3'UTR内に位置するS/MARインサート
を含む、エピソームS/MAR発現ベクターを用意するステップ、及び
b.前記3'UTR内で5'スプライスドナー部位と3'スプライスアクセプター部位が、S/MARに隣接するようにエピソームS/MAR発現ベクターを修飾するステップであって、それによって得られた自己複製型非組込みエピソームS/MAR発現ベクターは、脊椎動物細胞のトランスフェクション後の発現及び確立効率が改善される、ステップ
を含む方法。
【請求項2】
前記S/MARインサートが、内部AATAAA転写終結モチーフを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
野生型S/MARインサートに存在する内部AATAAA転写終結モチーフが、AATATTモチーフで置換されている、請求項
1に記載の方法。
【請求項4】
前記S/MARが、ヒトインターフェロンベータS/MAR、M18 S/MAR、アポリポタンパク質B S/MARからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
5'スプライスドナー部位と3'スプライスアクセプター部位が隣接する前記SMARが、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、及び配列番号23からなる群から選択される配列と少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記細菌複製起点が、R6Kガンマ複製起点である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記細菌複製起点が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、及び配列番号4からなる群から選択される配列と少なくとも95%の配列同一性を有するR6Kガンマ複製起点である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記選択マーカーが、配列番号5及び配列番号7からなる群から選択される配列と少なくとも95%の配列同一性を有するRNA-IN調節RNA-OUT機能的変異体である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記選択マーカーが、配列番号6と少なくとも95%の配列同一性を有するRNA-IN調節RNA-OUT RNAをコードするRNA-OUT RNA選択マーカーである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
細菌複製起点及び選択マーカーを含む前記細菌複製選択領域が、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、及び配列番号17からなる群から選択される配列と少なくとも95%の配列同一性を有するR6K起点-RNA-OUT RNA選択マーカー細菌複製選択領域である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記5'UTRが、イントロンをさらにコードする、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記転写単位が、プロモーターの上流に位置する発現エンハンサーをさらにコードする、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記発現エンハンサーが、配列番号27及び配列番号28からなる群から選択される配列と少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記スプライスドナー部位が、配列番号25と少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記スプライスアクセプター部位が、配列番号26と少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記自己複製型非組込みエピソームS/MAR発現ベクターが、プラスミドベクター、ナノプラスミドベクター、組込み欠損レンチウイルスベクター、及び非組込みレンチウイルスベクターからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも1つのプロモーター及びS/MAR要素を含むポリヌクレオチドであって、前記S/MAR要素が前記プロモーターの下流に位置し、前記S/MAR要素の核酸配列(S/MAR配列)が、最大200ヌクレオチドのストレッチにわたり、100ヌクレオチドあたり少なくとも3つの配列モチーフATTAを含み、前記S/MAR要素に、スプライスドナーとスプライスアクセプターが隣接し、前記ポリヌクレオチドが、配列番号1、配列番号2、配列番号3及び配列番号4からなる群から選択される配列と少なくとも95%の配列同一性を有するR6Kガンマ複製起点をさらに含むポリヌクレオチド。
【請求項18】
前記プロモーターが、宿主細胞におけるカーゴポリペプチド及び/又は選択マーカーの発現のための転写単位に含まれる、請求項17に記載のポリヌクレオチド。
【請求項19】
前記転写単位が、プロモーター、5'UTR、導入遺伝子、及び3'UTRを含む、請求項18に記載のポリヌクレオチド。
【請求項20】
前記S/MARが前記3'UTR内に位置する、請求項19に記載のポリヌクレオチド。
【請求項21】
前記S/MARに、5'スプライスドナー部位と3'スプライスアクセプター部位が隣接する、請求項17~
20のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項22】
前記ポリヌクレオチドが、配列番号5及び配列番号7からなる群から選択される配列と少なくとも95%の配列同一性を有するRNA-IN調節RNA-OUT機能的変異体を含むRNA-OUT RNA選択マーカーをさらに含む、請求項17~21のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド。
【請求項23】
a.プロモーター、5'UTR、導入遺伝子、及び3'UTRを含む、脊椎動物細胞における導入遺伝子の発現のための転写単位、
b.前記3'UTR内に位置し、5'スプライスドナー部位と3'スプライスアクセプター部位が隣接するS/MAR、
c.配列番号1、配列番号2、配列番号3、及び配列番号4からなる群から選択される配列と少なくとも95%の配列同一性を有するR6Kガンマ複製起点、並びに
d.配列番号5及び配列番号7からなる群から選択される配列と少なくとも95%の配列同一性を有するRNA-IN調節RNA-OUT機能的変異体を含むRNA-OUT RNA選択マーカー
を含む、共有結合閉環状組換えDNA分子。
【請求項24】
前記R6Kガンマ複製起点及び前記RNA-OUT RNA選択マーカーが、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、及び配列番号17からなる群から選択される配列と少なくとも95%の配列同一性を有するR6K起点-RNA-OUT RNA選択マーカー細菌複製選択領域を含む、請求項17~22のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド又は請求項23に記載の組換えDNA分子。
【請求項25】
前記S/MARが、内部AATAAA転写終結モチーフを含有する、請求項17~22及び24のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド又は請求項23に記載の組換えDNA分子。
【請求項26】
前記S/MAR
が、内部AATAAA転写終結モチーフを含有せず、代わりにAATATTモチーフを有する、請求項17~22及び
24のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド又は請求項
23に記載の組換えDNA分子。
【請求項27】
前記S/MARが、ヒトインターフェロンベータS/MAR、M18 S/MAR、アポリポタンパク質B S/MARからなる群から選択される、請求項17~22及び24~26のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド又は請求項23に記載の組換えDNA分子。
【請求項28】
5'スプライスドナー部位と3'スプライスアクセプター部位が隣接する前記SMARが、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、及び配列番号23からなる群から選択される配列と少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項17~22及び24~27のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド又は請求項23に記載の組換えDNA分子。
【請求項29】
前記5'UTRが、イントロンをさらにコードする、請求項17~22及び24~28のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド、又は請求項23に記載の組換えDNA分子。
【請求項30】
前記転写単位が、プロモーターの上流に位置する発現エンハンサーをさらにコードする、請求項17~22及び24~29のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド又は請求項17に記載の組換えDNA分子。
【請求項31】
前記発現エンハンサーが、配列番号27及び配列番号28からなる群から選択される配列と少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項17~22及び24~30のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド又は請求項23に記載の組換えDNA分子。
【請求項32】
前記スプライスドナー部位が、配列番号25と少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項17~22及び24~31のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド又は請求項23に記載の組換えDNA分子。
【請求項33】
前記スプライスアクセプター部位が、配列番号26と少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項17~22及び24~33のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド又は請求項23に記載の組換えDNA分子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子治療、エクスビボ細胞治療、幹細胞治療、より具体的には、ベクターコード抗原又は治療的遺伝子の発現を改善するのに有用な自己複製型非組込みエピソーム脊椎動物発現ベクターの分野に関する。このような組換えDNA分子は、バイオテクノロジー、トランスジェニック生物、遺伝子治療、幹細胞治療、治療的ワクチン接種、農業及びDNAワクチンにおいて有用である。より具体的には、少なくとも1つのプロモーター及びS/MAR要素を含むポリヌクレオチドに関し、上記S/MAR要素は、上記プロモーターの下流に位置し、上記S/MAR要素の核酸配列(S/MAR配列)は、最大200ヌクレオチドのストレッチにわたり、100ヌクレオチドあたり少なくとも3つの配列モチーフATTA(配列番号1)を含む。本発明はさらに、上記ポリヌクレオチドを含む組成物及び宿主細胞、並びに医薬における使用及び遺伝病の治療における使用のためのポリヌクレオチドに関する。本発明はまた、上記ポリヌクレオチドを含むキット及び装置、並びにポリヌクレオチドに関連する方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞の遺伝子修飾は、科学目的のために現代の細胞培養において日常的に使用されている。しかしながら、遺伝子の突然変異によって引き起こされる遺伝病の治療における対応する技術の使用は、非常に望ましいものであるが、依然として、利用可能な方法が、通常、一過性修飾、例えば、一過性トランスフェクションプロトコールを提供するだけであり、一方、細胞の安定な修飾、例えば、ウイルス性レンチウイルスベクター又は非ウイルス性トランスポゾンベクターを提供する方法は、通常、導入遺伝子の宿主細胞のゲノムへの組込みに依存しているという問題によって阻止されている。しかしながら、導入遺伝子の組込みは、たとえ特定の遺伝子座を標的としたとしても、有害な突然変異を誘発する危険性があり、それは、例えば、治療の副作用として癌をもたらす場合がある。
【0003】
足場付着領域(SAR)又はマトリックス関連領域(MAR)としても公知である足場/マトリックス付着領域(S/MAR)は、核マトリックスの付着を媒介する真核生物のゲノム中の配列として公知である。S/MARはATに富んだ配列であり、一部のATに富んだモチーフはさらに濃縮されていることが見出された(Liebeichら、(2002年)、NAR 30巻(15号): 3433頁)。様々なベクターが、例えば、米国特許第6,410,314号及びHaaseら、(2010年)、BMC Biotechnology 10巻:20頁において、S/MARモチーフに基づく細胞内での安定な維持のために提案されている。さらに、このようなベクターの複製に影響を与えるエピジェネティック効果が同定された(Haaseら、(013)、PLOS One 8(11):e79262)。それにもかかわらず、遺伝子治療における使用に十分に安定であるS/MARベースのベクターが必要とされている。
【0004】
次善の発現レベル、遺伝子サイレンシング及び低い確立率は、当該技術分野において記載されているS/MARベースのベクターの主な制限を表す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Liebeichら、(2002年)、NAR 30巻(15号): 3433頁
【文献】Haaseら、(2010年)、BMC Biotechnology 10巻:20頁
【文献】Haaseら、(013)、PLOS One 8(11):e79262
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、特にS/MAR要素を使用し、導入遺伝子の宿主細胞のゲノムへの組込みに伴うリスクを回避する、細胞の安定なトランスフェクションのための改良された手段及び方法が必要とされている。この課題は、本明細書に開示されている手段及び方法によって解決される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、非組込みエピソーム遺伝子治療及び幹細胞治療、より具体的には、自己複製型非組込みエピソームS/MAR発現ベクターの導入遺伝子発現及びベクター確立効率の改善、並びに非ウイルスベクターによる抗生物質耐性マーカー遺伝子移行の排除に有用なベクターに関する。
【0009】
標的脊椎動物細胞における自己複製型非組込みエピソームS/MAR発現ベクターの発現及び確立効率を改善する改善されたベクター法及び組成物が開示される。
【0010】
本発明の1つの目的は、標的脊椎動物細胞における自己複製型非組込みエピソームS/MAR発現ベクターの改善された発現を提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、標的脊椎動物細胞における自己複製型非組込みエピソームS/MAR発現ベクターの改善された確立効率を提供することである。
【0012】
一実施形態では、本技術は、標的脊椎動物細胞における自己複製型非組込みエピソームS/MAR発現ベクターの発現及び確立効率を改善する方法であって、以下のステップ:a)エピソームS/MAR発現ベクターを用意するステップであって、エピソームS/MAR発現ベクターは、i)細菌複製起点及び選択マーカーを含む細菌複製選択領域、ii)プロモーター、5'UTR、導入遺伝子、及び3'UTRを含む、脊椎動物細胞における導入遺伝子の発現のための転写単位、iii)3'UTR内に位置するS/MARインサートを含む、ステップ、及びb)上記3'UTR内で5'スプライスドナー部位と3'スプライスアクセプター部位とがS/MARに隣接するようにエピソームS/MAR発現ベクターを修飾するステップであって、それによって得られた自己複製型非組込みエピソームS/MAR発現ベクターは、脊椎動物細胞のトランスフェクション後の発現及び確立効率が改善される、ステップを含む方法を提供する。さらなる実施形態では、上記S/MARは、内部AATAAA転写終結モチーフを含む。さらなる実施形態では、上記S/MAR中の上記AATAAA転写終結モチーフは、AATATTモチーフで置換されている。さらなる実施形態では、上記S/MARは、ヒトインターフェロンベータS/MAR、M18 S/MAR、ApoL1 S/MARからなる群から選択される。さらなる実施形態では、5'スプライスドナー部位と3'スプライスアクセプター部位が隣接する上記SMARは、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、及び配列番号23からなる群から選択される配列と少なくとも95%の配列同一性を有する。さらなる実施形態では、上記細菌複製起点は、R6Kガンマ複製起点である。さらなる実施形態では、上記細菌複製起点は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、及び配列番号4からなる群から選択される配列と少なくとも95%の配列同一性を有するR6Kガンマ複製起点である。さらなる実施形態では、上記選択マーカーは、配列番号5及び配列番号7からなる群から選択される配列と少なくとも95%の配列同一性を有するRNA-IN調節RNA-OUT機能的変異体である。さらなる実施形態では、上記選択マーカーは、配列番号6と少なくとも95%の配列同一性を有するRNA-IN調節RNA-OUT RNAを
コードするRNA-OUT RNA選択マーカーである。さらなる実施形態では、細菌複製起点及び選択マーカーを含む上記細菌複製選択起点は、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、及び配列番号17からなる群から選択される配列と少なくとも95%の配列同一性を有するR6K起点-RNA-OUT RNA選択マーカー細菌複製選択領域である。さらなる実施形態では、上記5'UTRは、イントロンをさらにコードする。さらなる実施形態では、上記転写単位は、プロモーターの上流に位置する発現エンハンサーをさらにコードする。さらなる実施形態では、上記発現エンハンサーは、配列番号27及び配列番号28からなる群から選択される配列と少なくとも95%の配列同一性を有する。さらなる実施形態では、上記スプライスドナー部位は、配列番号25と少なくとも95%の配列同一性を有する。さらなる実施形態では、上記スプライスアクセプター部位は、配列番号26と少なくとも95%の配列同一性を有する。さらなる実施形態では、上記自己複製型非組込みエピソームS/MAR発現ベクターは、プラスミドベクター、ナノプラスミドベクター、組込み欠損レンチウイルスベクター、及び非組込みレンチウイルスベクターからなる群から選択される。
【0013】
別の実施形態では、本技術は、a)プロモーター、5'UTR、導入遺伝子、及び3'UTRを含む、脊椎動物細胞における導入遺伝子の発現のための抗生物質マーカー不含転写単位、b)上記3'UTR内に位置し、5'スプライスドナー部位と3'スプライスアクセプター部位が隣接するS/MAR、c)配列番号1、配列番号2、配列番号3、及び配列番号4からなる群から選択される配列と少なくとも95%の配列同一性を有するR6Kガンマ複製起点、並びにd)配列番号5及び配列番号7からなる群から選択される配列と少なくとも95%の配列同一性を有するRNA-IN調節RNA-OUT機能的変異体を含むRNA-OUT RNA選択マーカーを含む、抗生物質マーカー不含共有結合閉環状組換えDNA分子を含む。さらなる実施形態では、上記R6Kガンマ複製起点及び上記RNA-OUT RNA選択マーカーは、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、及び配列番号17からなる群から選択される配列と少なくとも95%の配列同一性を有するR6K起点-RNA-OUT RNA選択マーカー細菌複製選択領域を含む。さらなる実施形態では、上記S/MARは、ヒトインターフェロンベータS/MAR、M18 S/MAR、ApoL1 S/MARからなる群から選択される。さらなる実施形態では、上記S/MARは、内部AATAAA転写終結モチーフを含有する。さらなる実施形態では、上記S/MAR中の上記AATAAA転写終結モチーフは、AATATTモチーフで置換されている。さらなる実施形態では、上記S/MARは、ヒトインターフェロンベータS/MAR、M18 S/MAR、ApoL1 S/MARからなる群から選択される。さらなる実施形態では、5'スプライスドナー部位と3'スプライスアクセプター部位が隣接する上記SMARは、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、及び配列番号23からなる群から選択される配列と少なくとも95%の配列同一性を有する。さらなる実施形態では、上記5'UTRは、イントロンをさらにコードする。さらなる実施形態では、上記転写単位は、プロモーターの上流に位置する発現エンハンサーをさらにコードする。さらなる実施形態では、上記発現エンハンサーは、配列番号27及び配列番号28からなる群から選択される配列と少なくとも95%の配列同一性を有する。さらなる実施形態では、上記スプライスドナー部位は、配列番号25と少なくとも95%の配列同一性を有する。さらなる実施形態では、上記スプライスアクセプター部位は、配列番号26と少なくとも95%の配列同一性を有する。
【0014】
別の実施形態では、本技術は、a)プロモーター、5'UTR、導入遺伝子、及び3'UTRを含む、脊椎動物細胞における導入遺伝子の発現のための転写単位、b)上記3'UTR内に位置し、5'スプライスドナー部位と3'スプライスアクセプター部位が隣接するS/MAR、c)配列番号1、配列番号2、配列番号3、及び配列番号4からなる群から選択される配列と少なくとも95%の配列同一性を有するR6Kガンマ複製起点、並びにd)配列番号5及び配列番号7からなる群から選択される配列と少なくとも95%の配列同一性を有するRNA-IN調節RNA-OUT機能的変異体を含むRNA-OUT RNA選択マーカーを含む、共有結合閉環状組換えDNA分子を提供する。さらなる実施形態では、上記R6Kガンマ複製起点及び上記RNA-OUT RNA選択マーカーは、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、及び配列番号17からなる群から選択される配列と少なくとも95%の配列同一性を有する、R6K起点-RNA-OUT RNA選択マーカー細菌複製選択領域を含む。さらなる実施形態では、上記S/MARは、ヒトインターフェロンベータS/MAR、M18 S/MAR、ApoL1 S/MARからなる群から選択される。さらなる実施形態では、上記S/MARは、内部AATAAA転写終結モチーフを含む。さらなる実施形態では、上記S/MAR中の上記AATAAA転写終結モチーフは、AATATTモチーフで置換されている。さらなる実施形態では、上記S/MARは、ヒトインターフェロンベータS/MAR、M18 S/MAR、ApoL1 S/MARからなる群から選択される。さらなる実施形態では、5'スプライスドナー部位と3'スプライスアクセプター部位が隣接する上記SMARは、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、及び配列番号23からなる群から選択される配列と少なくとも95%の配列同一性を有する。さらなる実施形態では、上記5'UTRは、イントロンをさらにコードする。さらなる実施形態では、上記転写単位は、プロモーターの上流に位置する発現エンハンサーをさらにコードする。さらなる実施形態では、上記発現エンハンサーは、配列番号27及び配列番号28からなる群から選択される配列と少なくとも95%の配列同一性を有する。さらなる実施形態では、上記スプライスドナー部位は、配列番号25と少なくとも95%の配列同一性を有する。さらなる実施形態では、上記スプライスアクセプター部位は、配列番号26と少なくとも95%の配列同一性を有する。
【0015】
3'UTR内に5'スプライスドナー部位と3'スプライスアクセプター部位が隣接するS/MARを有する得られたプラスミドは、スプライスドナーとアクセプター部位が隣接しない3'UTR内のS/MARを有するプラスミドよりも、驚くほどに改善された確立及び導入遺伝子発現を有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】スプライスドナー(SD)分岐点及びスプライスアクセプター(SA)領域を有するpCIイントロンを示す図である。
【
図2】インターフェロンベータS/MAR(上段)、及びSDインターフェロンベータS/MAR SA誘導体(中段)、並びに内部AATAAAポリアデニル化シグナルが突然変異したSDインターフェロンベータS/MAR SA誘導体(下段)を示す図である。
【
図3】SD部位とSA部位が隣接するインターフェロンベータS/MAR誘導体M18を示す図である。
【
図4】SD部位とSA部位が隣接する805bp(上段)又は525bp(下段)のapoB S/MARを示す図である。
【
図5】pMAX-UCOE-coGFP P2A-PuroR-NP(pSMARt UCOE)ベクターを示す図である。
【
図6】NTC9385R-UCOE-CMV-coGFP P2A-PuroR-SMAR-SV40 pA(NP-UCOE)ベクター及びNTC9385R-UCOE-CMV-coGFP P2A-PuroR-SD SMAR-SA SV40 pA(NP-UCOE-SP)ベクターを示す図である。
【
図7】NTC9385R-SP-UCOE-CMV-GFP SMARter(NP-SMARter-SP)ベクター及びNTC9385R-SP-UCOE-CMV-GFP CMARter(NP-CMARter-SP)ベクターを示す図である。
【
図8】NTC9385R-UCOE EF1-coGFP SD-SMAR SA SV40 pA(NP-UCOE-EF1-SP)ベクター及びNTC9385R-UCOE EF1-coGFP-SD SMAR R6K-R-OUT-SA pA(UCOE-EF1-SP-NP)ベクターを示す図である。
【
図9】NTC9385R-SP-ELE40-CMV-GFP CMARter(NP-Ele40-CMARter-SP)ベクターを示す図である。
【
図10】SD部位とSA部位が隣接する及び隣接しない確立されたS/MARベクターの改善された発現を示す図である。左パネル:スプライス接合部を有する及び有さないS/MARベクターを用いて確立されたHEK293T細胞のMFI。ベクターは、NP細菌領域、ゲノム遮蔽因子UCOE、CMVプロモーターによって駆動される発現カセットGFP-2A-PuroR、及びSD部位とSA部位が隣接するS/MARを有する(Nano-S/MAR-スプライス=NP-UCOE-SP、NTC9385R-UCOE-CMV-coGFP P2A-PuroR-SD SMAR-SA SV40 pA、
図6)又は有さない(NP-UCOE、NTC9385R-UCOE-CMV-coGFP P2A-PuroR-SMAR-SV40 pA、
図6)3'UTRにおけるインターフェロンベータS/MARを含む。右パネル:改善された転写発現は、リアルタイムPCR分析によって確認される。導入遺伝子GFPの発現をハウスキーピング遺伝子GAPDHに対して正規化した。
【
図11】SD部位とSA部位が隣接する及び隣接しない確立されたS/MARベクターの改善された発現を示す図である。スプライシング接合部を端部に有する異なるS/MARを保有するベクターを用いて確立された細胞(HEK293T及び初代マウス胚性線維芽細胞)のMFI。ベクター名は、
図5、6及び7の通りである。
【
図12】SD部位とSA部位が隣接する及び隣接しないS/MARベクターの改善された確立を示す図である。コロニー形成アッセイは、SD部位とSA部位が隣接する及び隣接しない2つの異なるS/MARを保有するベクターを用いてHEK293Tにおいて行った。pEPIは、3'UTRインターフェロンベータS/MARを有するCMVプロモータープラスミドベクターである。
【
図13】遺伝子修飾された細胞集団の確立及び分析の効率を示す図である。A)ピューロマイシンによる4週間の選択後に形成されたクリスタルバイオレット染色コロニーを有する細胞培養プレート、ベクター確立の効率は約40%であった。b)ピューロマイシン選択細胞におけるGFP蛍光のFACS検出、蛍光は非常に均質であり、非蛍光細胞の数は非常に少ない。
【
図14】確立された細胞集団からのpS/MARtベクターのプラスミド救出の結果を示す図である。プラスミド救出実験で得られた細菌コロニー(番号1から12)からのDNAをBamHIで消化し、アガロースゲル電気泳動により分離した。「p/SMART」で標識されたレーンは、上記と同じように処理された元のプラスミドを有する細菌のコロニー由来のDNAを含む。
【
図15】選択された細胞に維持されたpSMARtベクターのサザンブロットを示す図である。pS/MARTのGFP遺伝子にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドをプローブとして使用して、宿主細胞からの抽出物中のBamHI制限ベクターDNAを検出した(pS/MARt1~3)。トランスフェクトされていないベクターを対照として使用した(「pS/MARt(+)」)。
【
図16】pS/MARTのベクターマップを示す図である。ori:細菌複製起点、P2A:ブタテッショウウイルス-1由来の自己切断2Aペプチドをコードする配列、アポリポB MAR:アポリポタンパク質B遺伝子由来のS/MAR配列。
【発明を実施するための形態】
【0017】
表1:pNTCマルチクローニングサイトが隣接するR6K起点-RNA-OUT選択マーカーベクター。
表2:A549及びHEK293細胞株へのトランスフェクション後のS/MARベクターの一過性発現。
表3:A549及びHEK293細胞株へのトランスフェクション後のS/MARベクターの一過性発現。
表4:A549及びHEK293細胞株へのトランスフェクション後のS/MARベクターの一過性発現。
【0018】
配列番号1:R6Kガンマ起点
配列番号2:1 CpG R6Kガンマ起点
配列番号3:CpG不含R6Kガンマ起点
配列番号4:拡張R6Kガンマ起点
配列番号5:RNA-OUT選択マーカー
配列番号6:RNA-OUTアンチセンスリプレッサーRNA
配列番号7:2CpG RNA-OUT選択マーカー
配列番号8:NheIとKpnI制限部位が隣接するR6Kガンマ起点-RNA-OUT細菌領域
配列番号9:NpeIとKpnI制限部位が隣接する1CpG R6Kガンマ起点-2CpG RNA-OUT細菌領域
配列番号10:pNTC-NP1ポリリンカーtrpA R6K-RNA-OUTポリリンカークローニングカセット:EcoRI/HindIII
配列番号11:pNTC-NP2ポリリンカーtrpA R6K-RNA-OUTポリリンカークローニングカセット:EcoRI/HindIII
配列番号12:pNTC-NP3ポリリンカーtrpA R6K-RNA-OUTポリリンカークローニングカセット:EcoRI/HindIII
配列番号13:pNTC-NP4ポリリンカーtrpA R6K-RNA-OUTポリリンカークローニングカセット:EcoRI/HinndIII
配列番号14:pNTC-NP5ポリリンカーtrpA R6K-RNA-OUTポリリンカークローニングカセット:KasI/HinndIII
配列番号15:pNTC-NP6ポリリンカーtrpA R6K-RNA-OUTポリリンカークローニングカセット:EcoRI/SacI
配列番号16:pNTC-NP7ポリリンカーtrpA R6K-RNA-OUTポリリンカークローニングカセット:BssHII/BssHII
配列番号17:pNTC-3xCpG NP1ポリリンカーR6K-RNA-OUTポリリンカークローニングカセット:HindIII/EcoRI
配列番号18:5'BglII-XhoI部位と3'EcoRI制限酵素部位が隣接するヒトインターフェロンベータS/MAR
配列番号19:5'BglII部位と3'BamHI制限酵素部位が隣接するスプライスドナー-ヒトインターフェロンベータS/MAR-スプライスアクセプター
配列番号20:5'BglII部位と3'BamHI制限酵素部位が隣接するスプライスドナー-ヒトインターフェロンベータS/MAR(-AATAAA)-スプライスアクセプター
配列番号21:5'BglII部位と3'BamHI制限酵素部位が隣接するスプライスドナー-ヒトインターフェロンベータM18 S/MAR-スプライスアクセプター
配列番号22:5'BglII部位と3'BamHI制限酵素部位が隣接するスプライスドナー-805bpヒトアポリポタンパク質B S/MAR-スプライスアクセプター
配列番号23:5'NsiI部位と3'BamHI制限酵素部位が隣接するスプライスドナー-525bpヒトアポリポタンパク質B S/MAR-スプライスアクセプター
配列番号24:pCIイントロン
配列番号25:pCIスプライスドナー
配列番号26:pCIスプライスアクセプター(マウスIgG)
配列番号27:Ele40発現エンハンサー
配列番号28:A2UCOE発現エンハンサー
配列番号29:スプライスアクセプターコンセンサス配列
配列番号30:配列モチーフ
配列番号31:配列モチーフ
配列番号32:配列モチーフ
配列番号33:配列モチーフ
配列番号34:配列モチーフ
配列番号35:配列モチーフ
配列番号36:ピューロマイシンアセチルトランスフェラーゼ、合成構築物
配列番号37:ピューロマイシンアセチルトランスフェラーゼコード配列、合成
配列番号38:抗抑制エレメント40
配列番号39:CMVプロモーター-S/MAR配列
配列番号40:CMVプロモーター-ピューロマイシン-S/MAR配列
配列番号41:エレメント40-GPF-P2A-ピューロマイシン-S/MAR
【0019】
以下で使用されるとき、用語「有する」、「含む(comprise)」若しくは「含む(include)」、又はそれらの任意の文法的変形は、非排他的な形で使用される。したがって、これらの用語は両方とも、これらの用語によって導入される特徴以外に、これに関連して記載された実在物にさらなる特徴が存在しない状況、及び1つ以上のさらなる特徴が存在する状況を指し得る。例として、表現「AはBを有する」、「AはBを含む(comprise)」及び「AはBを含む(include)」は両方とも、B以外に、Aに他の要素が存在しない状況(すなわち、Aが唯一及び排他的にBからなる状況)、及びB以外に、1つ以上のさらなる要素、例えば要素C、要素CとD、又はさらなる要素が存在する状況を指し得る。
【0020】
さらに、以下で使用されるように、用語「好ましくは」、「より好ましくは」、「最も好ましくは」、「特に」、「より特に」、「具体的に」、「より具体的に」又は同様の用語は、さらなる可能性を制限することなしに、任意の用語とともに使用される。したがって、これらの用語によって導入される特徴は、任意選択の特徴であり、決して特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。本発明は、当業者が認識するように、代替の特徴を使用することによって実施される。同様に、「本発明の一実施形態において」又は同様の表現によって導入される特徴は、本発明のさらなる実施形態に関するいずれも制限せず、本発明の範囲に関するいずれも制限せず、及びこのような方法で導入された特徴を本発明の他の任意の又は非任意の特徴と組み合わせる可能性に関するいずれも制限せず、任意の特徴であることが意図される。
【0021】
さらに、他に指示がない限り、「約」という用語は、関連分野において一般的に認められている技術的精度を有する指示値に関し、好ましくは指示値±20%、より好ましくは±10%、最も好ましくは±5%に関する。さらに、「本質的に」という用語は、示された結果又は使用に影響を与える偏差が存在しない、すなわち、潜在的な偏差が、示された結果を±20%超、より好ましくは±10%、最も好ましくは±5%逸脱させないことを示す。したがって、「から本質的になる」とは、特定される成分を含むが、不純物として存在する、材料、その成分を提供するために使用されるプロセスの結果として存在する不可避の材料、及び本発明の技術的効果の到達以外の目的で添加される成分を排除することを意味する。例えば、「から本質的になる」という語句を使用して定義される組成物は、任意の公知の許容される添加剤、賦形剤、希釈剤、担体などを包含する。好ましくは、本質的に一組の成分からなる組成物は、5重量%未満、より好ましくは3重量%未満、さらにより好ましくは1重量%未満、最も好ましくは0.1重量%未満の特定されていない成分(複数可)を含む。核酸配列との関連で、「本質的に同一」という用語は、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも98%、最も好ましくは少なくとも99%の同一性%値を示す。理解されるように、本質的に同一という用語は、100%の同一性を含む。前述のことは、必要な変更を加えて「本質的に相補的」という用語に適用される。
【0022】
本明細書で使用される「ポリヌクレオチド」という用語は、直鎖状又は環状の核酸分子を指す。この用語は、一本鎖並びに部分的又は完全に二本鎖のポリヌクレオチドを包含する。好ましくは、ポリヌクレオチドは、RNAであるか、又はcDNAを含むDNAである。さらに、天然に存在する修飾されたポリヌクレオチド、例えば、グリコシル化若しくはメチル化されたポリヌクレオチド、又は人工的に修飾された誘導体を含む化学的に修飾されたポリヌクレオチド、例えば、ビオチン化されたポリヌクレオチドもまた含まれる。本発明のポリヌクレオチドは、好ましくは単離されたポリヌクレオチドとして(すなわち、その天然の状況から単離された)又は遺伝子修飾された形態のいずれかで提供されるものである。本発明のポリヌクレオチドは、宿主細胞で活性な少なくとも1つのプロモーター及びS/MAR要素を含む。さらに、ポリヌクレオチドは、すべて本明細書で以下において特定されるように、宿主細胞においてエピソーム的に複製する生物学的活性を有する。好ましくは、ポリヌクレオチドは、最大1Mb、より好ましくは最大500kb、さらにより好ましくは最大200kb、最も好ましくは最大100kbの長さを有する。好ましくは、ポリヌクレオチドは、天然に存在しないポリヌクレオチドである。したがって、好ましくは、ヌクレオチドは人工ポリヌクレオチドである。また好ましくは、ポリヌクレオチドは、キメラポリヌクレオチドである。より好ましくは、ポリヌクレオチドは、それが含む残りの核酸配列に対して異種である少なくとも1つの核酸配列を含む。
【0023】
本明細書において使用する場合、ポリヌクレオチドという用語は、好ましくは、具体的に示されたポリヌクレオチドの変異体を含む。より好ましくは、ポリヌクレオチドという用語は、示された特定のポリヌクレオチドに関する。本明細書で使用される「ポリヌクレオチド変異体」という用語は、配列が少なくとも1つのヌクレオチド置換、付加及び/欠失によって前述の特定の核酸配列から誘導され得ることを特徴とする核酸配列を含む、本明細書において関連するポリヌクレオチドの変異体であって、特定のポリヌクレオチドについて特定されているような生物学的活性又は複数の活性を有するものであるポリヌクレオチド変異体に関する。したがって、本発明に従って言及されるポリヌクレオチド変異体は、少なくとも1つのヌクレオチド置換、欠失及び/又は付加のために異なる核酸配列を有するものである。好ましくは、上記ポリヌクレオチド変異体は、特定のポリヌクレオチド又はその機能的部分配列、例えばS/MAR要素、のオルソログ、パラログ又は他のホモログを含む。また好ましくは、上記ポリヌクレオチド変異体は、特定のポリヌクレオチド又はその機能的部分配列の天然に存在する対立遺伝子を含む。ポリヌクレオチド変異体はまた、好ましくはストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、前述の特定のポリヌクレオチド又はその機能的部分配列にハイブリダイズすることができる核酸配列を含むポリヌクレオチドを包含する。これらのストリンジェントな条件は、当業者に公知であり、標準的な教科書に見出すことができる。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の好ましい例は、約45℃の6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(=SSC)中でのハイブリダイゼーション条件、続いて50~65℃の0.2×SSC、0.1%SDS中での1回以上の洗浄ステップである。当業者は、これらのハイブリダイゼーション条件が、核酸の種類によって、例えば、有機溶媒が存在する場合には、緩衝液の温度及び濃度に関して異なることを知っている。例えば、「標準的なハイブリダイゼーション条件」の下では、温度は、濃度が0.1×~5×SSC(pH7.2)である水性緩衝液中で42℃~58℃の間で核酸の種類に応じて異なる。有機溶媒が、前述の緩衝液中に、例えば50%ホルムアミド中に存在する場合、標準条件下での温度は約42℃である。DNA-DNAハイブリッドのハイブリダイゼーション条件は、好ましくは、例えば、0.1×SSC及び20℃~45℃、好ましくは30℃~45℃である。DNA-RNAハイブリッドのハイブリダイゼーション条件は、好ましくは、例えば、0.1×SSC及び30℃~55℃、好ましくは45℃~55℃である。上述のハイブリダイゼーション温度は、例えば、長さが約100bp(=塩基対)であり、ホルムアミドの非存在下で50%のG+C含量を有する核酸について決定される。したがって、原則として当業者に公知である、低G+C DNAにさらに適した他の条件は、当業者によってより適切であることが見出され得る。当業者は、標準的な教科書を参照することによって、必要とされるハイブリダイゼーション条件を決定する方法を知っている。或いは、ポリヌクレオチド変異体は、PCRに基づく技術、例えば、混合オリゴヌクレオチドプライマーに基づくDNAの増幅によって、すなわち、本発明のポリペプチドの保存ドメインに対する縮重プライマーを用いて得ることができる。ポリペプチドの保存ドメインは、ポリヌクレオチドの核酸配列又は本発明のポリペプチドのアミノ酸配列を他の生物の配列と配列比較することによって同定され得る。鋳型として、細菌、真菌、植物由来、又は好ましくは動物由来のDNA又はcDNAを使用し得る。さらに、変異体は、具体的に示された核酸配列、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%又は少なくとも99%同一である核酸配列又はその機能的部分配列を含むポリヌクレオチドを含む。さらに、具体的に示されたアミノ酸配列と、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%又は少なくとも99%同一であるアミノ酸配列をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドもまた包含される。同一性パーセント値は、好ましくは、全アミノ酸又は核酸配列領域にわたって計算される。異なる配列を比較するために、様々なアルゴリズムに基づく一連のプログラムが当業者に利用可能である。これに関連して、Needleman及びWunsch、又はSmith及びWatermanのアルゴリズムが特に信頼できる結果をもたらす。配列アラインメントを実施するために、プログラムPileUp(J. Mol. Evolution.、25巻、351-360頁、1987年、Higginsら、CABIOS、5巻 1989年: 151-153頁)又はプログラムGap及びBestFit(Needleman及びWunsch (J. Mol. Biol. 48巻; 443-453頁 (1970年))、Smith及び Waterman (Adv. Appl. Math. 2巻; 482-489頁 (1981年)))が好ましく使用される。好ましくは、上記プログラムは、それらの標準パラメーターとともに使用される。パーセント(%)である上述した配列同一性の値は、好ましくは、特に明記しない限り、通常、配列アラインメントの標準設定として使用される以下の設定:ギャップ重み:50、長さ重み:3、平均一致:10.000及び平均不一致:0.000を用いて、全配列領域にわたってプログラムGAPを用いて決定されるべきである。
【0024】
具体的に示された核酸配列のいずれかのフラグメントを含むポリヌクレオチドであって、示された1つ又は複数の活性を保持する上記ポリヌクレオチドもまた、本発明の変異体ポリヌクレオチドとして包含される。本明細書において意味するフラグメントは、好ましくは、特定の核酸配列のいずれか1つの少なくとも200個、好ましくは少なくとも300個、より好ましくは少なくとも400個の連続したヌクレオチドを含み、又は特定のアミノ酸配列のいずれか1つの少なくとも100個、好ましくは少なくとも200個、より好ましくは少なくとも300個の連続したアミノ酸を含み、なお示された活性を有するアミノ酸配列をコードする。
【0025】
本発明のポリヌクレオチドは、前述の核酸配列からなるか、本質的にそれからなるか、又はそれを含むかのいずれかである。したがって、それらは、同様にさらなる核酸配列を含み得る。具体的には、本発明のポリヌクレオチドは、例えば、融合タンパク質又は選択マーカーをコードし得る。このような融合タンパク質は、発現をモニターするためのポリペプチド(例えば、緑色、黄色、青色又は赤色の蛍光タンパク質、アルカリホスファターゼなど)、又は検出可能なマーカーとして若しくは精製目的の補助的な手段として役立ち得るいわゆる「タグ」を追加の部分として含み得る。異なる目的のためのタグは、当該技術分野において周知であり、本明細書の他の箇所に記載されている。
【0026】
また好ましくは、ポリヌクレオチドは、少なくとも1つのカーゴ配列を含む。本明細書で使用される「カーゴ配列」という用語は、宿主細胞に導入され、その中で安定に維持される目的の核酸配列に関する。好ましくは、カーゴ配列は、ポリヌクレオチドをコードする核酸配列、例えばRNA、及び/又は目的のポリペプチドである。好ましくは、目的のポリペプチドは、治療用ポリペプチド、より好ましくはT細胞受容体(TCR)、さらに好ましくはヒト若しくはキメラT細胞受容体、キメラ抗原受容体(CAR)、好ましくはMART1 TCR、又は本明細書の他の箇所で特定される遺伝病に罹患した細胞において欠如しているポリペプチドである。したがって、例えば、好ましくは、ポリヌクレオチドは、フェニルケトン尿症の治療のためにフェニルアラニン-ヒドロキシラーゼ活性(EC1.14.16.1)を提供するポリペプチドをコードする少なくとも1つのカーゴ配列を含む。
【0027】
好ましくは、選択マーカーをコードする配列及びカーゴ配列は、1つのmRNAから真核細胞中で2つ(又はそれを超える)のポリペプチドの発現を可能にする配列、例えば、内部リボソーム侵入配列(IRES)、又はより好ましくは自己切断ペプチド配列、例えば、最も好ましくはブタテッショウウイルス-1由来のペプチド2A(P2A)配列によって介在される。適切な配列は、当該技術分野において公知であり、例えば、Kimら (2011年) PLoS ONE 6(4): e18556に記載のものである。
【0028】
好ましくは、ポリヌクレオチドはDNAである。好ましくは、ポリヌクレオチドは、原核生物及び/又は真核生物、好ましくは真核生物宿主細胞又はそれらの単離された画分における遺伝子の発現を可能にするさらなる発現制御配列を含む。上記ポリヌクレオチドの発現は、好ましくは翻訳可能なmRNAへのポリヌクレオチドの転写を含む。真核細胞、好ましくは哺乳動物細胞における発現を確実にする調節要素は、当該技術分野において周知である。それらは、好ましくは、転写の開始を確実にする調節配列、及び場合により転写の終結及び転写物の安定化を確実にするポリAシグナルを含む。追加の調節要素は、転写エンハンサー並びに翻訳エンハンサーを含み得る。真核生物宿主細胞における発現を可能にする調節要素の例は、酵母におけるAOX1若しくはGAL1プロモーター、又はSMVP-、U6-、H1-、7SK-、CMV-、EFS-、SV40-若しくはRSV-プロモーター(ラウス肉腫ウイルス)、CMVエンハンサー、SV40エンハンサー、又は哺乳動物細胞及び他の動物細胞におけるグロビンイントロンである。さらに、誘導性又は細胞型特異的発現制御配列は、本発明のポリヌクレオチドに含まれ得る。誘導性発現制御配列は、tet若しくはlacオペレーター配列、又は熱ショック若しくは他の環境因子によって誘導可能な配列を含み得る。適切な発現制御配列は、当該技術分野において周知である。転写の開始に関与する要素に加えて、このような調節要素はまた、ポリヌクレオチドの下流に転写終結シグナル、例えば、SV40-ポリA部位又はtk-ポリA部位を含み得る。
【0029】
本明細書で使用される「宿主細胞」という用語は、ポリヌクレオチドを受容し、安定に複製することができる任意の細胞に関する。好ましくは、宿主細胞は、真核細胞、好ましくは植物細胞若しくは酵母細胞であり、例えば、パン酵母の株の細胞、又は動物細胞である。より好ましくは、宿主細胞は、昆虫細胞又は哺乳動物細胞、特にマウス細胞又はラット細胞である。さらにより好ましくは、宿主細胞は、哺乳動物細胞であり、最も好ましくはヒト細胞である。好ましくは、宿主細胞は、CD34+前駆細胞;CD61+血小板;CD19+Bリンパ球;CD14+単球;CD15+顆粒球;CD3+細胞傷害性Tリンパ球、好ましくはCD8及びCD45に対しても陽性であるCD3+細胞傷害性Tリンパ球;CD3+ヘルパーTリンパ球、好ましくはCD4及びCD45に対しても陽性であるCD3+ヘルパーTリンパ球;CD3+活性化Tリンパ球、好ましくはCD25及びCD45対しても陽性であるCD3+活性化Tリンパ球、腫瘍浸潤リンパ球、又はナチュラルキラー(NK)細胞である。当業者に理解されるように、ポリヌクレオチドはさらに、細菌細胞中での複製を可能にする配列、特に細菌複製起点を有し得る。好ましくは、細菌細胞は、実験室細菌株の細胞、より好ましくは大腸菌細胞である。
【0030】
「プロモーター」という用語は、原則として、場合によりさらなる調節要素と協調して、所与の遺伝子の転写レベルを指示する遺伝的要素として当業者に公知である。プロモーターは、構成的であり得、すなわち、宿主細胞の状態と本質的に無関係に一定レベルの転写を提供し得、又は調節され得、すなわち、宿主細胞の状態に依存して転写レベルを提供し得る。さらに、プロモーターは、細胞型及び/又は組織特異的であり得、すなわち、数種又は1種のみの細胞型においてのみ検出可能なレベルの転写を提供し得る。好ましくは、本発明によるプロモーターは、本明細書において上記で特定される宿主細胞において活性である。当業者によって理解されるように、プロモーターの選択は、標的化を目的とする宿主細胞のタイプに依存し得る。特定の細胞型に適したプロモーター並びに構成的プロモーターは当該技術分野において公知である。好ましくは、プロモーターは、真核生物プロモーター、より好ましくは構成的真核生物プロモーター、さらにより強い真核生物プロモーターである。好ましくは、プロモーターは、EF1アルファ(伸長因子1アルファ)プロモーター、UbiC(ユビキチンC)プロモーター、ROSA26プロモーター、PGK(ホスホグリセリン酸キナーゼ)プロモーター、及び/又はCAG(チキンアルファ-アクチン)プロモーターであり、より好ましくはEF1アルファプロモーターである。また好ましくは、プロモーターは、細胞及び/又は組織特異的真核生物プロモーターである。本明細書において使用する場合、「プロモーター」という用語は、上記で特定されるプロモーターについて使用され、一方、ポリヌクレオチド上に潜在的にさらに存在する他の任意のプロモーターは、「二次プロモーター」と呼ばれる。したがって、好ましくは、プロモーターは、宿主細胞中のS/MAR配列への転写を指示するプロモーターである。また好ましくは、例えば、原核生物プロモーターであるため、S/MAR配列から転写的に遮蔽されるため、及び/又はS/MAR配列から離れて転写を指示するプロモーターであるための、ポリヌクレオチドのS/MAR配列への転写を指示しないプロモーターは、二次プロモーターである。好ましくは、プロモーターは、アポリポタンパク質Bプロモーターに対応する1000未満、より好ましくは250未満、さらにより好ましくは100未満、最も好ましくは20未満の連続塩基対を含む。したがって、好ましくは、ポリヌクレオチドは、ヒトアポリポタンパク質Bプロモーターを含まず、より好ましくはアポリポタンパク質Bプロモーターを含まない。
【0031】
好ましくは、S/MAR配列は、プロモーター、もし存在するならば、本明細書の下記において特定される選択マーカー遺伝子のすぐ下流に位置される。好ましくは、「すぐ下流」に位置されることは、介在転写終結シグナルを欠くこと、より好ましくは介在遺伝子を欠くことである。したがって、好ましくは、プロモーターで開始され、コードされている場合、検出可能なマーカー配列を含む転写物は、好ましくは転写されたS/MAR配列を含み、より好ましくはポリヌクレオチドに含まれる完全なS/MAR配列を含む。本明細書の他の箇所の記載を考慮して当業者によって理解されるように、ポリヌクレオチドは、一次転写物からのS/MAR配列の切除を媒介するスプライシング部位をさらに含み得る。したがって、より好ましくは、好ましくはプロモーターで開始され、コードされている場合、検出可能なマーカー配列を含む少なくとも一次転写物は、好ましくは転写されたS/MAR配列を含み、より好ましくはポリヌクレオチドに含まれる完全S/MAR配列を含む。また好ましくは、「すぐ下流」という用語は、転写終結シグナルがプロモーター及びS/MARによって介在されないという条件で、プロモーター及びS/MAR配列が伸長核酸配列によって分離されているポリヌクレオチドを含む。好ましくは、プロモーターに介在する配列、又は存在する場合には、選択マーカー遺伝子の終止コドン及びS/MAR配列は、最大2kb、より好ましくは最大0.5kb、さらにより好ましくは最大0.2kb、さらにより好ましくは最大0.1kb、最も好ましくは最大50bpの長さを有する。
【0032】
「足場/マトリックス付着領域」という名称でも公知である「S/MAR要素」という用語は、原則として、真核細胞の核マトリックスのDNAへの付着を媒介する前記DNA配列に関することが当業者に公知である。S/MAR配列は、典型的には、真核染色体のDNA中の配列に由来する。様々なS/MAR配列が利用可能であり、配列は公共のデータベース、例えば、Liebichら (2002年)、Nucleic Acids Res. 30巻、312-374頁に記載されるものから利用可能である。本発明によれば、上記S/MAR要素の核酸配列(これまでS/MAR配列と呼ばれていた)は、最大200ヌクレオチドのストレッチにわたり、100ヌクレオチドあたり少なくとも3つの配列モチーフATTAを含む。したがって、S/MAR配列に含まれるモチーフは、多数の4ヌクレオチドモチーフ5'-ATTA-3'を含む。好ましくは、S/MAR配列は、少なくとも200ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも300ヌクレオチド、さらにより好ましくは少なくとも400ヌクレオチド、最も好ましくは少なくとも500ヌクレオチドの長さを有する。好ましくは、S/MAR配列は、最大3kb、より好ましくは最大2kb、さらにより好ましくは最大1.5kb、さらにより好ましくは最大1kb、最も好ましくは最大0.9kbの長さを有する。したがって、好ましくは、S/MAR配列は、0.2kb~3kb、より好ましくは0.3kb~2kb、さらにより好ましくは0.4kb~1.5kb、最も好ましくは0.5kb~1kbの長さを有する。理解されるように、「100ヌクレオチドあたりn個の配列モチーフを含む」という表示は、100塩基対の配列あたりで計算された上記配列モチーフの平均数に関し、したがって分数であり得る。例えば、配列番号6における100塩基対あたりのATTA配列モチーフの数は、34/525塩基対×100塩基対=6.5である。好ましくは、100塩基対あたりの配列モチーフの数は、S/MAR配列の全長にわたって決定される。疑われる場合、例えば、S/MAR配列の境界を決定することができない場合には、ポリヌクレオチドの100塩基対あたりの配列モチーフの数は、好ましくは、上記ポリヌクレオチド内の200bpの任意のウィンドウについて決定可能な最大数であり、より好ましくは、上記ポリヌクレオチド内の500bpの任意のウィンドウについて決定可能な最大数である。好ましくは、S/MAR配列は、最大200ヌクレオチドのストレッチにわたり、100ヌクレオチドあたり少なくとも4つの配列モチーフATTA、より好ましくは最大200ヌクレオチドのストレッチにわたり、100ヌクレオチドあたり少なくとも5つの配列モチーフATTA、さらにより好ましくは最大200ヌクレオチドのストレッチにわたり、100ヌクレオチドあたり少なくとも6つの配列モチーフATTAを含む。また好ましくは、S/MAR配列は、最大400ヌクレオチドのストレッチにわたり、100ヌクレオチドあたり少なくとも3つの配列モチーフATTA、より好ましくは最大400ヌクレオチドのストレッチにわたり、100ヌクレオチドあたり少なくとも4つの配列モチーフATTA、さらにより好ましくは最大400ヌクレオチドのストレッチにわたり、100ヌクレオチドあたり少なくとも5つの配列モチーフATTA、最も好ましくは最大400ヌクレオチドのストレッチにわたり、100ヌクレオチドあたり少なくとも6つの配列モチーフATTAを含む。また好ましくは、S/MAR配列は、最大500ヌクレオチドのストレッチにわたり、100ヌクレオチドあたり少なくとも3つの配列モチーフATTA、より好ましくは最大500ヌクレオチドのストレッチにわたり、100ヌクレオチドあたり少なくとも4つの配列モチーフATTA、さらにより好ましくは最大500ヌクレオチドのストレッチにわたり、100ヌクレオチドあたり少なくとも5つの配列モチーフATTA、最も好ましくは最大500ヌクレオチドのストレッチにわたり、100ヌクレオチドあたり少なくとも6つの配列モチーフATTAを含む。したがって、好ましくは、S/MAR配列は、500ヌクレオチドの配列にわたって少なくとも10個の配列モチーフATTA、より好ましくは500ヌクレオチドの配列にわたって少なくとも20個の配列モチーフATTA、さらにより好ましくは500ヌクレオチドの配列にわたって少なくとも30個の配列モチーフATTAを含む。好ましくは、S/MAR配列中のATTAモチーフの少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%は、それぞれ、9~13、好ましくは10~12、最も好ましくは11塩基対だけ離れている。
【0033】
好ましくは、S/MAR要素は、好ましくは本明細書中の上記のATTAモチーフを含む配列内に追加の配列モチーフを含む。好ましくは、上記ATTA配列モチーフを含む上記S/MAR要素の配列ストレッチは、少なくとも1つの配列モチーフATTTA、好ましくは少なくとも2つの配列モチーフATTTA、より好ましくは少なくとも4つの配列モチーフATTTA、最も好ましくは少なくとも8つの配列モチーフATTTAをさらに含む。また好ましくは、上記ATTA配列モチーフ、及び任意に上記ATTTAモチーフ(複数可)を含む上記S/MAR要素の配列ストレッチは、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも4つ、最も好ましくは少なくとも6つのパリンドロームモチーフ、好ましくはモチーフTAAATATTTTA(配列番号30)をさらに含む。好ましくは、上記モチーフTAAATATTTTAは、5'末端及び/又は3'末端で少なくとも1つのモチーフATTAと連続している。また好ましくは、上記ATTA配列モチーフを含むS/MAR要素の配列ストレッチは、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは少なくとも3つ、さらにより好ましくは少なくとも4つ、最も好ましくは少なくとも5つの配列モチーフATTATAAATATTTTAATTA(配列番号31)、より好ましくは配列モチーフATTTAATTATAAATATTTTAATTA(配列番号32)を含む。
【0034】
また好ましくは、S/MAR配列は、低いG+C含量を有する。当業者は、配列中の全てのグアニン及びシチジン塩基を計数し、累積結果を配列中のヌクレオチドの数で割ることによって公知の配列のC+G含量を計算する方法を知っている。好ましくは、上記配列モチーフATTAを含むS/MAR要素の配列ストレッチは、最大30%、より好ましくは最大20%、さらにより好ましくは最大15%、さらにより好ましくは最大10%、最も好ましくは最大5%のG+C含有量を有する。好ましくは、S/MAR要素の境界を決定することができない場合には、G+C含有量の計算に使用される配列は、本明細書で上記に特定されるように、100塩基対あたりのATTAモチーフの数の計算に使用されるものと同じである。また好ましくは、S/MAR配列は、少数のCGジヌクレオチドを有する。好ましくは、上記配列モチーフを含む上記S/MAR要素の配列ストレッチは、最大6個、より好ましくは最大4個、さらにより好ましくは最大2個の配列モチーフCGを含み、最も好ましくは配列モチーフCGを含まない。
【0035】
好ましくは、S/MAR配列は、アポリポタンパク質B遺伝子、好ましくはヒトアポリポタンパク質B遺伝子のS/MAR配列、より好ましくはヒトアポリポタンパク質B遺伝子の3'S/MAR配列を含む。より好ましくは、S/MAR配列は、ヒトアポリポタンパク質B遺伝子の変異体、より好ましくはヒトアポリポタンパク質B遺伝子の3'S/MAR配列の変異体を含む。したがって、好ましくは、S/MAR配列は、配列番号33、好ましくは配列番号34又は35の配列と少なくとも70%同一である配列を含む。より好ましくは、S/MAR配列は、配列番号33、好ましくは配列番号34、より好ましくは配列番号35の核酸配列を含む。
【0036】
好ましくは、ポリヌクレオチドは、S/MAR要素の下流にポリAシグナルを含む。より好ましくは、ポリヌクレオチドは、S/MAR要素の下流にポリAシグナル及び転写終結シグナルを含む。また好ましくは、S/MAR要素に、スプライスドナーとスプライスアクセプターが隣接する。したがって、好ましくは、S/MAR配列は、好ましくは転写後に選択マーカーをコードする転写物からスプライスアウトされる。また好ましくは、ポリヌクレオチドは、本明細書において上記で特定される(二次)細菌複製起点及び/又は細菌選択マーカー遺伝子をさらに含む。好ましくは、細菌複製起点及び細菌選択マーカー遺伝子の発現を駆動するプロモーターは原核生物特異的であり、すなわち、より好ましくは宿主細胞中で非機能的である。また好ましくは、細菌複製起点及び/又は細菌選択マーカー遺伝子、好ましくはポリヌクレオチドに含まれる原核細胞において活性なすべての要素は、少なくとも1つの遮蔽要素の存在によって、より好ましくは遮蔽要素が隣接することによって、ポリヌクレオチドに含まれる残りの配列から遮蔽される。好ましくは、細菌複製起点及び/又は細菌選択マーカー遺伝子、好ましくは原核生物細胞で活性なすべての要素は、5'末端に少なくとも1つの遮蔽要素の存在、及び3'末端に少なくとも1つの遮蔽要素の存在によってポリヌクレオチドに含まれる残りの配列から遮蔽される。より好ましくは、細菌複製起点及び/又は細菌選択マーカー遺伝子、好ましくはポリヌクレオチドに含まれる原核細胞において活性なすべての要素は、少なくとも1つの遮蔽要素の存在によって、より好ましくは遮蔽要素が隣接することによってプロモーターから遮蔽される。好ましくは、上記遮蔽要素(複数可)は、抗抑制エレメント40要素(配列番号38)若しくはその変形形態、及び/又はS/MAR要素である。
【0037】
したがって、好ましくは、ポリヌクレオチドは、配列番号34若しくは35の配列、又は配列番号34若しくは35の配列と少なくとも70%同一である配列、好ましくは配列番号39、又は配列番号39の配列と少なくとも70%同一である配列、より好ましくは配列番号40、又は配列番号40の配列と少なくとも70%同一である配列、最も好ましくは配列番号40、又は配列番号41の配列と少なくとも70%同一である配列を含む。好ましくは、ポリヌクレオチドは、GFPをコードする核酸配列が、異なるポリペプチド、好ましくは治療用ポリペプチド、より好ましくはヒトT細胞受容体(TCR)、キメラ抗原受容体(CAR)、好ましくはMART1 TCRをコードする核酸配列によって置き換えられた配列番号41の配列を含む。
【0038】
好ましくは、ポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドのプロモーター及びポリヌクレオチドのS/MAR要素を介在する選択マーカーポリペプチドをコードするコード配列をさらに含み、好ましくは上記プロモーター及び上記選択マーカー配列は一緒に選択マーカー遺伝子を構成する。本明細書で使用するとき、「選択マーカー配列」という用語は、表現「選択マーカーポリペプチドをコードするコード配列」の略記として使用される。「選択マーカー」という用語は、原則として当業者に理解され、宿主細胞中で発現される場合、適用されたときに宿主細胞への選択圧を媒介する少なくとも1つの条件に対する耐性を付与する核酸配列に関する。選択マーカーは、原核細胞及び真核細胞について当該技術分野において公知である。好ましくは、選択マーカーは真核細胞の選択マーカーである。好ましくは、選択マーカーは、選択マーカーポリペプチド、より好ましくは、ホット細胞(hot cell)から選択化合物を除去するか、又はそれを不活性にするように上記選択化合物を修飾するトランスポーター活性及び/又は酵素活性を有する選択マーカーポリペプチドである。好ましくは、選択マーカー遺伝子は、好ましくは選択マーカーポリペプチドをコードする配列の上流に、少なくとも1つのイントロンをさらにコードする。好ましくは、選択マーカーは、ピューロマイシン、ブラスチシジン、ネオマイシン、及び/又はゼオシン、より好ましくはピューロマイシンに対する耐性を媒介するマーカーである。したがって、好ましくは、プロモーター及び選択マーカーは一緒になって、ピューロマイシン耐性遺伝子、ブラスチシジン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、又はゼオシン耐性遺伝子、より好ましくはピューロマイシン耐性遺伝子を構成する。好ましくは、選択マーカー遺伝子は、ポリAシグナル及び転写終結シグナル(複数可)を欠如している。
【0039】
好ましくは、選択マーカーは、ピューロマイシンアセチルトランスフェラーゼ(Genbank Acc番号KX548903.1のヌクレオチド535~1134(配列番号37)によってコードされるGenbank Acc番号KX548903.1(配列番号36))である。したがって、選択マーカー遺伝子は、好ましくは、a)配列番号36の配列を含むピューロマイシン耐性ポリペプチドの発現を引き起こし、b)配列番号36の配列と少なくとも70%同一である配列を含むピューロマイシン耐性ポリペプチドの発現を引き起こし、c)配列番号37の配列を含み、d)配列番号37の配列と少なくとも70%同一である配列を含み、e)配列番号36の配列を含む、好ましくはそれからなるピューロマイシン耐性ポリペプチドをコードする核酸配列を含み、及び/又はf)配列番号36の配列と少なくとも70%同一である配列を含む、好ましくはそれからなるピューロマイシン耐性ポリペプチドをコードする核酸配列を含む、核酸配列を含む。
【0040】
本明細書において使用する場合、「複製する」という用語は、細胞複製周期の間に宿主細胞においてポリヌクレオチドの少なくとも2つの複製の産生を誘導するための上記ポリヌクレオチドの活性に関する。したがって、好ましくは、宿主細胞におけるポリヌクレオチドの複製は、非複製ポリヌクレオチドが希釈されると予想される、一連の細胞分裂後にポリヌクレオチドの存在を決定することによって決定される。好ましくは、複製は安定複製であり、すなわち、ポリヌクレオチドが平均50細胞分裂後、より好ましくは平均100細胞分裂後、最も好ましくは平均250細胞分裂後に依然として宿主細胞集団において検出可能である程度までの複製である。好ましくは、宿主細胞集団中のポリヌクレオチドの検出は、標準的な条件下でPCRにより行われる。
【0041】
「エピソーム」複製という用語は、原則として、細胞ゲノムに組み込まれることのない、すなわち細胞ゲノムに共有結合的に付着するようになることのない、ポリヌクレオチドの複製に関することが当業者に公知である。したがって、好ましくは、ポリヌクレオチドのエピソーム複製は、自律複製単位としての上記ポリヌクレオチドの複製である。好ましくは、エピソーム複製は、閉環した二本鎖DNA分子の形態での宿主細胞におけるポリヌクレオチドの維持である。当業者に理解されるように、上記ポリヌクレオチドの実際の複製は、他の形態、例えば、ローリングサークル複製を含み得る。環状DNAのエピソーム維持は、好ましくは、当業者に公知であるプラスミド救出手順によって、すなわち、好ましくは、宿主細胞の溶解物を調製し、その中に含まれるDNAを適切な細菌細胞、例えば、大腸菌(E.coli)細胞に形質転換することによって検証される。上記方法によって得ることができる適切な数の細菌コロニーが、元の環状DNAと同じ制限パターン及び/又は配列を有するプラスミドとして環状DNAを含む場合、好ましくは、環状DNAはエピソーム的に維持されていると推測される。当業者に公知でもあるエピソーム維持を確認するさらなる方法は、DNA/DNAブロッティング(「サザンブロット」法)である。したがって、好ましくは、宿主細胞の全DNAを調製し、1つ以上の制限酵素(複数可)で消化する。元のプラスミドをプローブとして使用するサザンブロットにおいて、元の環状DNAに対応するバンドのみが視認される場合、好ましくは、プラスミドがエピソーム的に維持されていると結論付けられる。より好ましくは、エピソーム維持は、本明細書の実施例に記載されるように検証される。
【0042】
したがって、本明細書で使用される「エピソーム的に複製する」という用語は、細胞複製サイクル中に宿主細胞内で上記ポリヌクレオチドの少なくとも2つの複製の産生を誘導するポリヌクレオチドの活性に関し、一方、上記ポリヌクレオチドは、自律複製実在物として上記細胞に存在する。安定なエピソーム複製は、少なくとも50細胞分裂後、好ましくは少なくとも100細胞分裂後、より好ましくは少なくとも250細胞分裂後、最も好ましくは少なくとも500細胞分裂後に、ポリヌクレオチドが依然として宿主細胞中で検出可能である程度までのエピソーム複製である。好ましくは、前述の細胞分裂数は、細胞集団に対する細胞分裂の平均数である。
【0043】
本発明のポリヌクレオチドは、好ましくはサルウイルス40(SV40)複製起点、ウシパピローマウイルス(BPV)複製起点、及びエプスタイン-バーウイルス(EBV)複製起点を欠如し、好ましくはポリオーマウイルス複製起点、パピローマウイルス複製起点、及びヘルペスウイルス複製起点を欠如し、より好ましくは真核生物感染ウイルス複製起点を欠如している。より好ましくは、ベクターは、公知の真核生物複製起点を欠如している。しかしながら、好ましくは、ポリヌクレオチドは、原核生物、好ましくは細菌複製起点、特に大腸菌の複製起点をさらに含む。好ましくは、原核生物複製起点は、ポリヌクレオチドに含まれる唯一の複製起点である。
【0044】
有利には、本発明の基礎となる研究において、特定されるS/MAR要素を上記S/MAR要素を読み込むプロモーターと組み合わせることにより、専用の複製起点が存在しない場合でさえ、宿主細胞においてエピソーム形態で非常に安定であるポリヌクレオチドが得られることが見出された。さらに、ポリヌクレオチドの確立の効率は、ピューロマイシン耐性遺伝子を使用すること、耐性遺伝子を介してS/MAR要素への転写を確実にすること、及びポリヌクレオチド中に潜在的に存在する他のプロモーターから転写的にプロモーター-S/MARの組み合わせを遮断することによってさらに改善され得ることが見出された。
【0045】
上記でなされた定義は、必要な変更を加えて以下に適用される。以下でさらになされるさらなる定義及び説明はまた、準用される本明細書中に記載されるすべての実施形態について適用する。
【0046】
本発明はさらに、本発明によるポリヌクレオチドを含む組成物に関する。
【0047】
本明細書で使用される「組成物」という用語は、特定された化合物及び任意選択で1つ以上の許容される担体を含む物質の組成物に関する。好ましくは、組成物は、医薬として許容される組成物である。したがって、好ましくは、担体は、医薬として許容される担体である。本発明の化合物は、好ましくは医薬として許容される塩として製剤化することができる。好ましい塩は、酢酸塩、メチルエステル、HCl、硫酸塩、塩化物などを含む。
【0048】
担体(複数可)は、製剤の他の成分と適合し、そのレシピエントに有害ではないという意味で許容されるものでなければならない。使用される担体は、例えば、固体、ゲル又は液体のいずれかであり得る。固体医薬担体の例は、ラクトース、白土、スクロース、タルク、ゼラチン、寒天、ペクチン、アカシア、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸などである。液体担体の例は、リン酸緩衝食塩水、シロップ、油、例えば、落花生油及びオリーブ油、水、エマルジョン、種々のタイプの湿潤剤、滅菌溶液などである。同様に、担体又は希釈剤は、当該技術分野で周知である時間遅延材料、例えば、モノステアリン酸グリセリン又はジステアリン酸グリセリルを単独で又はワックスとともに含み得る。上記適切な担体は、上記のもの及び当該技術分野において周知である他のものを含む。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences、Mack PublishiNng Company、Easton、Pennsylvaniaを参照されたい。希釈剤(複数可)は、組成物中の化合物の生物学的活性に影響を及ぼさないように選択される。このような希釈剤の例は、蒸留水、生理食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、及びハンクス液である。さらに、医薬組成物又は製剤はまた、他の担体、アジュバント、又は無毒性、非治療的、非免疫原性安定剤などを含み得る。
【0049】
好ましくは、組成物は、ポリヌクレオチドの宿主細胞への侵入を媒介する。したがって、好ましくは、組成物は、少なくとも1つのトランスフェクション剤を含む。適切なトランスフェクション剤の選択は、標的宿主細胞、並びに想定される特定用途に依存し得る。トランスフェクション剤、適切なトランスフェクション条件、並びにその選択基準は、当該技術分野において周知である。また、好ましくは、組成物はウイルス様粒子を含む。したがって、好ましくは、ポリヌクレオチドは、ウイルス様粒子にパッケージングされている、すなわち、好ましくは、ポリヌクレオチドはウイルス様粒子に含まれている。
【0050】
医薬組成物は、好ましくは、局所的又は全身的に投与される。薬物投与に従来使用されている適切な投与経路は、経口投与、静脈内投与、又は非経口投与、並びに吸入である。しかしながら、化合物の性質及び作用様式に応じて、医薬組成物は、同様に他の経路によっても投与され得る。例えば、ポリヌクレオチド化合物は、本明細書において上記で特定されたように、ウイルスベクター又はウイルス若しくはリポソームを用いることによる遺伝子治療アプローチにおいて投与され得る。さらに、化合物は、共通の医薬組成物中で、又は別々の医薬組成物として他の薬物と組み合わせて投与することができ、上記別々の医薬組成物は、キットの部分の形態で提供され得る。化合物は、好ましくは、従来の手順に従って薬物を標準的な薬学的担体と組み合わせることによって調製される従来の剤形で投与される。これらの手順は、所望の調製物に適切なように成分を混合し、造粒及び圧縮し、又は溶解することを含み得る。医薬として許容される担体又は希釈剤の形態及び特徴は、それと組み合わされる活性成分の量、投与経路及び他の周知の変数によって決定されることが理解される。
【0051】
医薬組成物の治療有効量は、本明細書において言及される疾患又は状態に付随する症状を予防、改善又は治療する本発明の医薬組成物において使用される化合物の量を指す。このような化合物の治療効率及び毒性は、細胞培養物又は実験動物における標準的な薬学的手順、例えば、ED50(集団の50%において治療上有効な用量)及びLD50(集団の50%において致死的な用量)によって決定することができる。治療効果と毒性効果の間の用量比が治療指数であり、それは、比LD50/ED50として表すことができる。
【0052】
投薬レジメンは、主治医及び他の臨床的要因によって決定される。好ましくは上記の方法のいずれか1つに従う。医薬の分野において周知であるように、任意の一人の患者に対する投薬量は、患者の大きさ、体表面積、年齢、投与される特定の化合物、性別、投与時間及び投与経路、一般的健康状態、並びに同時に投与されている他の薬などを含む多数の要因に依存する。進行は、定期的な評価によって監視することができる。典型的な用量は、例えば、1~1000μgの範囲であり得る。しかしながら、特に前述の因子を考慮すると、この例示的な範囲より下又は上の用量が想定される。一般的に、医薬組成物の通常の投与としてのレジメンは、1日あたり1μgから10mg単位の範囲内にあるべきである。レジメンが持続注入である場合、それはまた、それぞれ1分あたり体重1キログラムあたり1μgから10mg単位の範囲であるべきである。進行は、定期的な評価によって監視することができる。しかしながら、対象及び投与方法に応じて、物質投与量は、体重1kgあたり約0.01mgから体重1kgあたり約10mgまでを提供するように広い範囲にわたって変化し得る。ウイルスベクター、特にアデノ随伴ウイルスベクターを投与する場合、好ましい用量は、5×1011~2×1013ウイルス粒子又はウイルスゲノム/kg体重である。理解されるように、これらの例示的な用量は、上記の因子に加えて、ウイルスのタイプ、標的臓器などのようなさらなる因子に応じて変更され得る。
【0053】
本明細書において言及される医薬組成物及び製剤は、本明細書に記載される疾患又は状態を治療又は改善又は予防するために少なくとも一度投与される。しかしながら、上記医薬組成物は、2回以上、例えば1日~非限定数の日数に1~4回から投与することができる。
【0054】
特定の医薬組成物は、製薬の技術分野において周知である方法で調製され、本明細書において上記で言及された少なくとも1つの活性化合物を混合して含むか、又はそうでなければ医薬として許容される担体若しくは希釈剤と関連している。これらの特定の医薬組成物を製造するために、活性化合物(複数可)は、通常、担体若しくは希釈剤と混合されるか、或いはカプセル、サシェ、カシェ、紙若しくは他の適切な容器又はビヒクルに封入又はカプセル化される。得られる製剤は、投与方法に、すなわち錠剤、カプセル、坐剤、液剤、懸濁剤などの形態で採用される。投薬量の推奨は、考慮されているレシピエントに応じて用量調整を予測するために、処方者又は使用者の指示に示されるものである。
【0055】
本発明はまた、医薬における使用のための、本発明によるポリヌクレオチド、本発明による組成物、及び/又は本発明による宿主細胞に関する。本発明はさらに、遺伝病の治療に使用するための、本発明によるポリヌクレオチド、本発明による組成物、及び/又は本発明による宿主細胞に関する。
【0056】
本明細書で使用される「遺伝病」という用語は、個体のゲノムにおける1つ以上の修飾、好ましくは突然変異に因果関係がある疾患に関する。したがって、好ましくは、遺伝病は、1つ以上のエピジェネティック変化と因果関係があり、より好ましくは1つ以上の遺伝的突然変異と因果関係がある。理解されるように、遺伝病の症状はしばしば、1つ以上の特定の組織(複数可)及び/又は細胞型(複数可)における、突然変異した遺伝子の発現、及び/又は遺伝子産物の正常な機能を提供する遺伝子の発現の欠如によって引き起こされる。したがって、突然変異が疾患に寄与するそれらの細胞においてのみ遺伝病を治療することが好ましい場合がある。好ましくは、遺伝病は単一遺伝子性疾患であり、すなわち1つの遺伝子における遺伝的変化によって引き起こされる。より好ましくは、遺伝病は単一遺伝子性劣性疾患、すなわち遺伝子の両方の対立遺伝子における遺伝的変化によって引き起こされる。したがって、好ましくは、症状の改善は、影響する遺伝子の少なくとも1つの改変されていないコピーを提供することによって予期される。最も好ましくは、遺伝病は、フェニルケトン尿症、アルカプトン尿症、レバー先天性無力症、脈絡膜血症、又はシュタルガルト病である。
【0057】
本発明はまた、本発明によるポリヌクレオチド及び細胞侵入を媒介する化合物を含むキットに関する。
【0058】
本明細書で使用される「キット」という用語は、一緒に包装されてもよく、又は包装されなくてもよい本発明の前述の化合物、手段又は試薬の集合を指す。キットの構成要素は、別々のバイアルによって(すなわち、キットの別々の部分として)構成され得る、又は単一のバイアルで提供され得る。さらに、本発明のキットは、好ましくは、本明細書の上記で言及した方法を実施するために使用されうることを理解されたい。好ましくは、全ての構成要素は、上記に言及した方法を実施するためにすぐに使用できる方法で提供されることが想定される。さらに、キットは、好ましくは、上記方法を実施するための指示書を含む。指示書は、紙又は電子形式のユーザーマニュアルによって提供することができる。さらに、マニュアルは、本発明のキットを使用して前述の方法を実施するときに得られる結果を解釈するための指示書を含み得る。上記から理解されるように、ポリヌクレオチドを含むキットの説明は、好ましくは、必要な変更を加えて対応するベクターを含むキットに関する。
【0059】
好ましくは、キットは、それが含むポリヌクレオチドに対する細胞侵入を媒介する少なくとも1つの化合物をさらに含み、「細胞侵入を媒介する化合物」という用語は、キットのポリヌクレオチドを宿主細胞の内部に、好ましくは宿主細胞に侵入させるのに適した任意の手段に関する。細胞進入を媒介する適切な化合物(送達手段)は当該技術分野において公知であり、特にトランスフェクション手段、パッケージング組成物などを含む。好ましくは、本発明のポリヌクレオチドは送達手段に、例えば、ウイルス粒子に、より好ましくは複製欠損ウイルス粒子に、最も好ましくはウイルス様粒子(VLP)に予め包装されている。当業者は、所与の標的宿主細胞に適切な送達手段が選択され得るように、細胞受容体に対して異なる特異性を提供する送達手段を知っている。
【0060】
本発明はさらに、本発明によるポリヌクレオチド、本発明による組成物、及び/又は本発明による宿主細胞を含む装置に関する。
【0061】
本明細書で使用される「装置」という用語は、少なくとも、本発明の化合物又は組成物の投与を可能にするように互いに作動可能に連結された手段を含む手段のシステムに関する。ポリヌクレオチド、組成物、宿主細胞を投与するための好ましい手段は、当該技術分野において周知である。手段を作動方法で連結する方法は、装置に含まれる手段のタイプ、及び想定される投与の種類に依存する。好ましくは、手段は、このような場合において、単一の装置によって構成される。したがって、上記装置は、化合物又は組成物を投与するための送達ユニット、及び投与まで上記化合物又は組成物を貯蔵するための貯蔵ユニットを含み得る。しかしながら、本発明の手段は、このような実施形態では別々の装置として現れ得、好ましくはキットとして一緒に包装されていることも意図される。当業者は、さらなる手間をかけずに手段を連結する方法を理解する。好ましい装置は、専門技術者の特別な知識なしに適用することができるものである。好ましい実施形態では、装置は、本発明の化合物又は組成物を含むシリンジ、より好ましくは針付きのシリンジである。別の好ましい実施形態では、装置は化合物又は組成物を含む静脈内注入(IV)機器である。別の好ましい実施形態では、装置は、投与部位を洗い流すための化合物若しくは薬剤を含むか、又はさらに化合物若しくは組成物の、例えば腫瘍への、局所適用のための、針を含む内視鏡装置である。さらに別の好ましい実施形態では、装置は本発明の化合物を含む吸入器であり、より好ましくは、上記化合物は、エアロゾルとして投与するために製剤化されている。
【0062】
本出願はまた、宿主細胞を安定にトランスフェクトする方法であって、
a)上記宿主細胞を本発明によるポリヌクレオチド、本発明による組成物、及び/又は本発明による宿主細胞と接触させるステップ、並びに
b)それにより、宿主細胞を安定にトランスフェクトするステップ
を含む方法に関する。
【0063】
本発明の宿主細胞を安定にトランスフェクトする方法は、好ましくはインビトロ法である。さらに、それは、上記で明示的に述べたものに加えてステップを含み得る。例えば、さらなるステップは、例えば、ステップa)について宿主細胞又はそれを含む試料を用意すること、及び/若しくは接触した宿主細胞に選択的圧力を適用することに関し得る。さらに、上記ステップのうちの1つ以上は自動化装置によって実行され得る。
【0064】
宿主細胞を安定にトランスフェクトするという用語は、ポリヌクレオチド、好ましくは異種ポリヌクレオチドを、ポリヌクレオチドが本明細書において上記で特定された宿主細胞によって安定に複製されるように細胞に導入することに関する。好ましくは、安定なトランスフェクションは、ポリヌクレオチドの安定なエピソーム複製を含む。好ましくは、安定なトランスフェクションは、接触後、宿主細胞に選択圧を適用して、選択マーカーの存在について選択することを含む。選択圧は、場合によりポリヌクレオチドが宿主細胞内で確立することを可能にする最初の時間枠を除外して、接触後に適用される。ポリヌクレオチドが宿主細胞内で確立することを可能にする上記最初の時間枠の持続時間は、接触した宿主細胞のタイプ及び使用される選択マーカーの種類に大部分依存する。好ましくは、ポリヌクレオチドが宿主細胞内で確立することを可能にする上記最初の時間枠の持続期間は、1時間~48時間、より好ましくは2時間~24時間、最も好ましくは3時間~16時間である。しかしながら、ポリヌクレオチドが宿主細胞内で確立することを可能にする上記最初の時間枠の持続時間はまたゼロであり得る。すなわち、選択圧は接触直後又は接触中でさえも適用され得る。より好ましくはポリヌクレオチドを含まない宿主細胞が増殖するのを防ぐために、選択的な圧力を連続的に、すなわち、ポリヌクレオチドを宿主細胞内に確立することを可能にする最初の時間枠の後の実質的にすべての時点で適用することができる。又は、選択圧は、より好ましくはポリヌクレオチドを受容していない細胞を除去するために一過性に適用され得る。好ましくは、上記接触後に細胞が生物に戻し導入される場合には、一過性の選択圧の適用が用いられる。しかしながら、また、特に標的宿主細胞へのポリヌクレオチドの導入効率が十分に高いことが公知である場合、及び/又はトランスジェニック宿主細胞の純粋な集団があまり重要ではない場合、選択圧が適用されないことも考えられる。
【0065】
本発明の方法の文脈において使用される「接触する」という用語は、当業者によって理解される。好ましくは、この用語は、本発明の少なくとも1つのポリヌクレオチド、ベクター、及び/又は宿主細胞を、例えば、宿主細胞と化合物(複数可)の相互作用を可能にするように、例えば、宿主細胞と物理的に接触させるようにすることに関する。好ましくは、接触させることは、好ましくは上記に特定されたような送達手段を介して、少なくとも1つの本発明のポリヌクレオチドを宿主細胞の内部に送達することを含む。
【0066】
本発明はまた、対象における遺伝病を治療する方法であって、
a)上記対象を本発明によるポリヌクレオチド、本発明による組成物、及び/又は本発明による宿主細胞と接触させるステップ、並びに
b)それにより、上記対象における遺伝病を治療するステップ
を含む方法にも関する。
【0067】
本発明の遺伝病を治療する方法は、好ましくはインビボ法である。さらに、それは上記で明示的に述べたものに加えてステップを含み得る。例えば、さらなるステップは、例えば、ステップa)について宿主細胞若しくはそれを含む試料を用意すること、及び/又は上記試料若しくは宿主細胞を対象に再投与することに関する。したがって、遺伝病を治療する方法は、上記で特定された宿主細胞を安定にトランスフェクトする方法のステップを含む。さらに、上記ステップのうちの1つ以上は自動化装置によって実行され得る。
【0068】
さらに、本発明は、宿主細胞を安定に遺伝的に修飾するための本発明のポリヌクレオチドの使用に関する。
【0069】
また、本発明は、医薬を製造するための、本発明によるポリヌクレオチド、本発明による組成物、及び/又は本発明による宿主細胞の使用に関する。並びに、遺伝病、好ましくは単一遺伝子性疾患、より好ましくは単一遺伝子性劣性疾患、最も好ましくはフェニルケトン尿症、アルカプトン尿症、レバー先天性無力症、脈絡膜血症、又はシュタルガルト病を治療するための医薬を製造するための、本発明によるポリヌクレオチド、本発明による組成物、及び/又は本発明による宿主細胞の使用に関する。
【0070】
また、本発明は、初代細胞、好ましくは初代皮膚線維芽細胞の遺伝子修飾のための、誘導多能性幹細胞(IPSC)の生成のための本発明によるポリヌクレオチド、本発明による組成物、及び/又は本発明による宿主細胞の使用に関する。好ましくは、上記初代細胞はマウス又はヒト初代細胞である。
【0071】
「初代細胞」という用語は、培養細胞株の細胞とは対照的に、当業者によって理解される。したがって、好ましくは、初代細胞は、生物由来の細胞であり、最大20継代、より好ましくは最大15継代、さらにより好ましくは最大10継代、さらにより好ましくは最大5継代培養された細胞である。最も好ましくは、初代細胞は、生物の組織、好ましくはマウス又はヒトの組織に直接由来する細胞である。
【0072】
「幹細胞」という用語はまた、少なくとも2つの細胞型、好ましくは少なくとも5つの細胞型、より好ましくは少なくとも1つの完全な細胞系統への分化の可能性を有する未分化又は低分化型細胞に関することも当業者によって理解される。好ましくは、幹細胞は全能性幹細胞、より好ましくは多能性幹細胞である。用語「誘導多能性幹細胞」又は「IPSC」は、分化細胞、好ましくは分化初代細胞に由来する多能性幹細胞に関する。IPSCを作製する方法は当該技術分野において公知であり、好ましくは、細胞における4つの転写因子の発現を含む(例えば、Takahashiら (2006年)、Cell. 126巻 (4号):663頁による)。
【0073】
本発明はまた、胚性幹細胞の遺伝子修飾のための、本発明によるポリヌクレオチド、本発明による組成物、及び/又は本発明による宿主細胞の使用に関する。本発明はまた、遺伝病、好ましくは単一遺伝子性疾患、より好ましくは単一遺伝子性劣性疾患、最も好ましくはフェニルケトン尿症、アルカプトン尿症、レバー先天性無力症、脈絡膜血症、又はシュタルガルト病を治療するための医薬を製造するための、本発明によるポリヌクレオチド、本発明による組成物、及び/又は本発明による宿主細胞の使用に関する。
【0074】
本発明はまた、トランスジェニック動物を作製するための幹細胞の遺伝子修飾のための、本発明によるポリヌクレオチド、本発明による組成物、及び/又は本発明による宿主細胞の使用に関する。本発明はさらに、トランスジェニック動物を作製するための、本発明によるポリヌクレオチド、本発明による組成物、及び/又は本発明による宿主細胞の使用に関する。
【0075】
本明細書で使用される「トランスジェニック動物」という用語は、好ましくは遺伝子工学の方法によって動物に導入された少なくとも1つの異種ポリヌクレオチドを含む上記動物に関する。好ましくは、トランスジェニック動物は、本発明による少なくとも1つのポリヌクレオチドを含む、少なくとも1個、より好ましくは少なくとも10個、なおより好ましくは少なくとも1000個、さらにより好ましくは少なくとも10000個の細胞を含む。
【0076】
また、本発明は、前核注入による単細胞胚の遺伝子修飾のための、本発明によるポリヌクレオチド、本発明による組成物、及び/又は本発明による宿主細胞の使用に関する。
【0077】
当業者によって理解されるように、「前核注入」という用語は、好ましくはトランスジェニック動物を作製するために、受精卵母細胞の核に遺伝物質、好ましくは本発明のポリヌクレオチドを注入することに関する。
【0078】
さらなる定義:
AF:抗生物質不含。
amp:アンピシリン。
ampR:アンピシリン耐性遺伝子。
抗生物質選択マーカー:抗生物質に対する耐性を付与する遺伝子、例えば、アンピシリン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、クロラムフェニコール耐性遺伝子、ピューロマイシン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子。
ApoB:アポリポタンパク質B。
およそ:本明細書で使用するとき、「およそ」又は「約」という用語は、1つ以上の関心のある値に適用される場合、記述された参照値と同じあるかまた類似している値を指す。
細菌領域:細菌宿主における増殖及び選択に必要とされるプラスミドベクターの領域。
bp:塩基対
ccc:共有結合閉環状
cI:ラムダリプレッサー
cITs857:温度感受性を付与するCからTへの(AlaからThrへの)突然変異をさらに組み込んだラムダリプレッサー。cITs857は、28~30℃で機能的なリプレッサーであるが、37~42℃ではほとんど不活性である。cI857とも呼ばれる。
CatR:クロラムフェニコール耐性遺伝子。
cmv:サイトメガロウイルス。
E.coli:大腸菌、グラム陰性菌。
EGFP:増強された緑色蛍光タンパク質。
ELE40:抗リプレッサー要素エレメント40、Kwaksら、2003年、Nat Biotechnol. 21巻:553頁に開示されているSTAR40。
EP:エレクトロポレーション。
確立効率:自己複製型非組込みエピソームS/MAR発現ベクターがトランスフェクション後にエピソームとして安定に保持されている細胞の割合。
真核生物発現ベクター:RNAポリメラーゼI、II又はIIIプロモーターを用いて、標的真核生物細胞又は生物においてmRNA、タンパク質抗原、タンパク質治療薬、shRNA、RNA又はマイクロRNA遺伝子を発現させるためのベクター。
真核生物領域:真核生物配列及び/又は標的生物におけるプラスミド機能に必要とされる配列をコードするプラスミドの領域。これは、RNA Pol IIエンハンサー、プロモーター、導入遺伝子及びポリA配列を含む標的生物における1つ以上の導入遺伝子の発現に必要とされるプラスミドベクターの領域を含む。これはまた、RNA Pol I若しくはRNA Pol IIIプロモーター、RNA Pol I若しくはRNA Pol III発現導入遺伝子又はRNAを用いた標的生物における1つ以上の導入遺伝子の発現に必要とされるプラスミドベクターの領域も含む。真核生物領域は、他の機能的配列、例えば、真核生物転写ターミネーター、スーパーコイル誘導DNA二本鎖不安定化(SIDD)構造、S/MAR、境界要素等を任意に含み得る。
エクソン:転写され、イントロンを除去するためのRNAスプライシングが完了した後に成熟mRNA産物内に存在する遺伝子によってコードされるヌクレオチド配列。
発現エンハンサー:隣接プロモーターの発現を改善するDNA配列。例えば、Saundersら、2015 PloS ONe 10:e0120096に概説されている、Ele40、UCOE、抗リプレッサー要素、又は安定化抗リプレッサー(STAR)要素。
発現ベクター:標的生物におけるmRNA、タンパク質抗原、タンパク質治療薬、shRNA、RNA又はマイクロRNA遺伝子を発現させるためのベクター。
g:グラム、キログラムについてはkg
目的の遺伝子:標的生物において発現される遺伝子。タンパク質又はペプチド抗原をコードするmRNA遺伝子、タンパク質治療薬又はペプチド治療薬、及びRNA治療薬をコードするmRNA、shRNA、RNA又はマイクロRNA、並びにRNAワクチンをコードするmRNA、shRNA、RNA又はマイクロRNAなどが含まれる。
GFP:緑色蛍光タンパク質。
Hr:時間(複数可)。
ID:皮内。
IM:筋肉内。
免疫反応:抗原反応性細胞(例えば、抗原反応性T細胞)又は抗体(例えば、抗原反応性IgG)反応。
イントロン:転写され、続いてRNAスプライシングによって成熟mRNA産物から除去される遺伝子によってコードされるヌクレオチド配列。
ITR:反転ターミナルリピート。
kan:カナマイシン。
kanR:カナマイシン耐性遺伝子。
Kd:キロダルトン。
コザック配列:効率的な翻訳開始を確実にするATG開始コドンのすぐ上流の最適化コンセンサスDNA配列gccRccATG(R=G又はA)。
MFI:中間蛍光強度。
ミニサークル:細菌領域がインビボ若しくはインビトロの部位特異的組換え又はインビトロ制限消化/ライゲーションによって親プラスミドから除去されている共有結合閉環状プラスミド誘導体。ミニサークルベクターは、細菌細胞では複製不能である。
mRNA:メッセンジャーRNA。
mSEAP:マウス分泌アルカリホスファターゼ。
NA:該当なし。
ナノプラスミド(商標)ベクター:RNA選択マーカーとR6K、ColE2又はColE2関連複製起点を組み合わせた細菌領域を有するベクター。例えば、NTC9385C、NTC9685C、NTC9385R、NTC9685Rベクター、及びWilliams、2014年に記載されている修飾。発現が改善されたDNAプラスミド。国際特許出願第WO2014/035457号及びこれは参照により本明細書に含まれる。
非組込みレンチウイルスベクター:突然変異されたインテグラーゼ及びエピソームLTRサークルの維持のためのS/MARを有するレンチウイルスベクター、例えば、Vergheseら、2014年 Nucleic Acids Research 42:e53に記載されているベクター。
NP:ナノプラスミド。
NTC8385:NTC8385、NTC8485及びNTC8685プラスミドは、抗生物質耐性マーカー、例えば、kanRの代わりに短いRNA(RNA-OUT)選択マーカーを含む抗生物質不含pUC起点ベクターである。これらのRNA-OUTに基づく抗生物質不含ベクターの作製及び適用は、参照により本明細書に含まれるWilliams, JA 2008年、国際特許出願第WO2008/153733号に記載されている。
NTC8485:NTC8485は、抗生物質耐性マーカー、例えば、kanRの代わりに短いRNA(RNA-OUT)選択マーカーを含む、抗生物質不含pUC起点ベクターである。NTC8485の作製及び適用は、参照により本明細書に含まれるWilliams, JA 2010年、米国特許出願第2010/0184158号に記載されている。
NTC8685:NTC8685は、抗生物質耐性マーカー、例えば、kanRの代わりに短いRNA(RNA-OUT)選択マーカーを含む、抗生物質不含pUC由来のベクターである。NTC8685の作製及び適用は、参照により本明細書に含まれるWilliams、前掲、2010年に記載されている。
NTC9385R:参照により本明細書に含まれるWilliams、前掲、2014年に記載されたNTC9385Rナノプラスミド(商標)ベクターは、隣接するNheI及びKpNI部位を介して真核生物領域に連結されたスペーサー領域をコードしたNheItrpAターミネーターR6K起点RNA-OUT-KpNI細菌領域 (配列番号8) を有する。
OD600:600nmにおける光学密度。
PBS:リン酸緩衝生理食塩水。
PCR:ポリメラーゼ連鎖反応。
pDNA:プラスミドDNA。
pINT pR pLベクター:pINT pR pL attHK022組込み発現ベクターは、参照により本明細書に含まれるLukeら、2011年 Mol Biotechnol 47巻:43頁に記載されている。発現させる標的遺伝子は、pLプロモーターの下流にクローン化される。ベクターは温度誘導性cI857リプレッサーをコードし、熱誘導性標的遺伝子の発現を可能にする。
PLプロモーター:ラムダプロモーターレフト(left)。PLは、clリプレッサーがOL1、OL2及びOL3リプレッサー結合部位に結合することによって抑制される強力なプロモーターである。温度感受性cI857リプレッサーは、熱誘導による遺伝子発現の制御を可能にし、これは30℃でcI857リプレッサーが機能的であり、遺伝子発現を抑制するが、37~42℃でリプレッサーは不活性化され、そのため遺伝子発現が起こるためである。
PL(OL1 GからT)プロモーター:ラムダプロモーター左。PLは、clリプレッサーがOL1、OL2及びOL3リプレッサー結合部位に結合することによって抑制される強力なプロモーターである。温度感受性cI857リプレッサーは、熱誘導による遺伝子発現の制御を可能にし、これは30℃でcI857リプレッサーが機能的であり、遺伝子発現を抑制するが、37~42℃でリプレッサーは不活性化され、そのため遺伝子の発現が起こるためである。OL1へのcIリプレッサーの結合は、Williams、前掲、2014年に記載されるように、30℃及び37~42℃でプロモーター活性の増加をもたらすOL1 GからTへの突然変異により減少する。
プラスミド:染色体DNAとは独立して複製することができる、染色体DNAと区別される余分な染色体DNA分子。
プラスミドコピー数:細胞あたりのプラスミドのコピー数。プラスミドコピー数の増加はプラスミド生産収率を増加させる。
Pol:ポリメラーゼ。
ポリA:ポリアデニル化シグナル又は部位。ポリアデニル化は、RNA分子へのポリ(A)テールの付加である。ポリアデニル化シグナルは、RNA切断複合体によって認識される配列モチーフを含む。ほとんどのヒトポリアデニル化シグナルは、AAUAAAモチーフとそれに対する5'及び3'の保存配列を含む。一般的に利用されるポリAシグナルは、ウサギβグロビン(RBG)、ウシ成長ホルモン(BGH)、SV40初期、又はSV40後期ポリAシグナルに由来する。
pUC起点:高温でコピー数を増加させるGからAへの転移、及びROP陰性調節因子の欠失を伴うpBR322由来の複製起点。
pUC不含:pUC起点を含有さないプラスミド。pUC起点の非複製フラグメント、例えば、RNAI選択マーカーが含まれ得る。
pUCプラスミド:pUC起点を含むプラスミド。
PuroR:ピューロマイシン耐性遺伝子。
R6Kプラスミド:NTC9385R、NTC9685R、NTC9385R2-O1、NTC9385R2-O2、NTC9385R2a-O1、NTC9385R2a-O2、NTC9385R2b-O1、NTC9385R2b-O2、NTC9385Ra-O1、NTC9385Ra-O2、NTC9385RaF、及びNTC9385RbFベクター、並びに参照により本明細書に含まれるWilliams、前掲、2014年に記載されているR6K複製起点を含む修飾及び代替のベクター。当該技術分野において公知である代替のR6Kベクターには、限定されないが、pCORベクター(Gencell)、pCpGfreeベクター(Invivogen)、及びpGM169を含むCpG不含オックスフォードベクター(Oxford vector)を含む。
R6K複製起点:DNA複製を開始するためにR6K Repタンパク質によって特異的に認識される領域。限定されないが、配列番号1、配列番号2及び配列番号4として開示されているR6Kガンマ複製起点配列、及びDrocourtら、米国特許第7,244,609号に記載され、参照により本明細書に組み込まれるCpG不含バージョン(例えば、配列番号3)を含む。
R6K複製起点-RNA-OUT細菌領域:増殖のためのR6K複製起点及びRNA-OUT選択マーカー(例えば、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17)を含む。
Rep:複製。
複製中間体:プラスミド複製の早発終結から生じる線状DNAフラグメント。
Repタンパク質依存性プラスミド:複製がTransに提供される複製(Rep)タンパク質に依存するプラスミド。例えば、Repタンパク質が宿主株ゲノムから発現されるR6K複製起点、ColE2-P9複製起点及びColE2関連複製起点プラスミド。多数のさらなるRepタンパク質依存性プラスミドは当該技術分野において公知であり、それらの多くは、参照により本明細書に含まれるdel Solarら、前掲、1998年に要約されている。
レトロウイルスベクター:分裂細胞に感染することができる組込みウイルスベクター。トランスファープラスミドとも呼ばれる。プラスミドは、レトロウイルスLTRが隣接する発現単位をコードする。トランスファープラスミドは、ウイルス粒子を作製するのに必要なエンベロープ及びパッケージングプラスミドとともに産生細胞にトランスフェクトされる。
RNA-IN:挿入配列10(IS10)をコードするRNA-IN、RNA-OUTの一部に対して相補的であり、アンチセンスであるRNA。RNA-INがmRNAの非翻訳リーダーにクローニングされている場合、RNA-OUTへのRNA-INのアニーリングは、RNA-INの下流にコードされる遺伝子の翻訳を減少させる。
RNA-IN調節選択マーカー:染色体上に発現されるRNA-IN調節選択マーカー。プラスミド保有のRNA-OUTアンチセンスリプレッサーRNA(配列番号6)の存在下で、RNA-INの下流にコードされるタンパク質の発現が抑制される。RNA-IN調節選択マーカーは、RNA-INが、1)上記細胞それ自体に対して又は毒性物質(例えば、SacB)を生じさせることによって、致死的若しくは毒性であるタンパク質、或いは2)上記細胞の増殖に必須である遺伝子(例えば、RNA-IN tetRリプレッサー遺伝子によって調節されるmurA必須遺伝子)の転写を調節することによって、上記細菌細胞に対して致死的又は毒性であるリプレッサータンパク質、のいずれかを調節するように構成される。例えば、RNA-OUTプラスミド選択/増殖のための染色体上に発現されたRNA-IN-SacB細胞株は、参照により本明細書に含まれるWilliams、前掲、2008年に記載されている。当該技術分野において記載されている代替の選択マーカーは、SacBの代わりに使用され得る。
RNA-OUT:挿入配列10(IS10)をコードするRNA-OUT、RNA-INの下流に発現されるトランスポゾン遺伝子にハイブリダイズし、その翻訳を減少させるアンチセンスRNA。RNA-OUT RNAの配列(配列番号6)及び相補的RNA-IN SacBを染色体上に発現するRNA-IN-SacB細胞株は修飾されて、代替の機能的RNA-IN/RNA-OUT結合対、例えば、Mutalikら、2012年 Nat Chem Biol 8巻:447頁に記載されている対を組み込むことができ、これには、限定されないが、RNA-OUT A08/RNA-IN S49対、RNA-OUT A08/RNA-IN S08対、及びRNA-OUT 5'TTCGC配列中のCGを非CpG配列に修飾するRNA-OUT A08のCpGフリー修飾が含まれる。RNA-OUT RNA中の2つのCpGモチーフ(そのうちの1つはRNA-IN相補的領域中に存在する)が除去されているCpGフリーRNA-OUT選択マーカーの例は、Williams 2015に記載されていた。発現が改善された複製ミニサークルベクター。米国特許出願第2015/0275221号は、参照により本明細書に含まれる。2つのCpGモチーフを除去するための多数の代替置換(各CpGをCpA、CpC、CpT、ApG、GpG、又はTpGのいずれかに突然変異させる)を利用して、CpGフリーRNA-OUTを作製し得る。
RNA-OUT選択マーカー:大腸菌転写プロモーター及びRNA-OUT RNAに隣接するターミネーター配列を含むRNA-OUT選択マーカーDNAフラグメント。DraIIIとKpnI制限酵素部位が隣接する、RNA-OUTプロモーター及びターミネーター配列を利用するRNA-OUT選択マーカー、並びにRNA-OUTプラスミド増殖のためのデザイナー染色体上に発現するRNA-IN-SacB細胞株は、参照により本明細書に含まれるWilliams、前掲、2008年に記載されている。RNA-OUT RNA(配列番号6)に隣接する配列番号5中のRNA-OUTプロモーター及びターミネーター配列は、異種プロモーター及びターミネーター配列で置換され得る。例えば、RNA-OUTプロモーターは、当該技術分野において公知であるCpGフリープロモーター、例えば、I-EC2Kプロモーター、又は参照により本明細書に含まれるWilliams、前掲、2008年に記載されているP5/6 5/6若しくはP5/6 6/6プロモーターに置換され得る。RNA-OUTプロモーター中の2つのCpGモチーフが除去されている2CpG RNA-OUT選択マーカーは、配列番号7として示される。RNA-OUT RNA中の2つのCpGモチーフ(そのうちの1つはRNA-IN相補的領域に存在する)及びRNA-OUTプロモーター中の2つのCpGモチーフが除去されているCpGフリーRNA-OUT転写単位の例は、参照により本明細書に含まれるWilliams、前掲、2015年に記載されている。CpGフリーRNA-OUT選択マーカーを組み込んだベクターは、Williams、前掲、2008年に記載されているRNA-OUTプラスミド増殖のためのRNA-IN-SacB細胞株を用いて、スクロース耐性について選択され得る。或いは、これらの細胞株中のRNA-IN配列は、RNA-INに相補的なCpGフリーRNA-OUT領域と完全に一致するのに必要な1bpの変化を組み込むように修飾することができる。
RNAポリメラーゼIIプロモーター:RNAポリメラーゼIIを動員してmRNA、ほとんどの小核RNA及びマイクロRNAを合成するプロモーター。構成的プロモーター、例えば、ヒト又はマウスのCMVプロモーター、伸長因子1(EF1)プロモーター、ニワトリβ-アクチンプロモーター、他の種由来のβ-アクチンプロモーター、伸長因子-1α(EF1α)プロモーター、ホスホグリセロキナーゼ(PGK)プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、ヒト血清アルブミン(SA)プロモーター、脾臓フォーカス形成ウイルス(SFFV)プロモーター、α-1アンチトリプシン(AAT)プロモーター、チロキシン結合グロブリン(TBG)プロモーター、チトクロームP450 2E1(CYP2E1)プロモーターなど。ベクターはまた、組み合わせプロモーター、例えば、ニワトリβ-アクチン/CMVエンハンサー(CAG)プロモーター、伸長因子1α(EF1α)プロモーターと組み合わせたヒト若しくはマウスCMV由来エンハンサー要素、伸長因子1α(EF1α)プロモーターと組み合わせたヒト若しくはマウスCMV由来のエンハンサー要素のCpGフリーバージョン、α-フェトプロテインMERIIエンハンサーと組み合わせたアルブミンプロモーター等、又は当該技術分野において公知である多様な組織特異的若しくは誘導性プロモーター、例えば、筋肉特異的プロモーター筋肉クレアチンキナーゼ(MCK)、及びC5-12又は肝臓特異的プロモーターApoE-hAAT、アポリポタンパク質A-1(ApoAI)を利用し得る。
RNAポリメラーゼIIIプロモーター:RNAポリメラーゼIIIを動員して、tRNA、5SリボソームRNA、及び他の低分子RNAを合成するプロモーター。例えば、クラスIプロモーター、例えば5s rRNAプロモーター、クラスIIプロモーター、例えばtRNAプロモーター、クラスIIIプロモーター、例えばU6小核RNAプロモーター又はH1核RNase Pプロモーターなど。
RNA選択マーカー:RNA選択マーカーは、染色体上に発現される標的遺伝子を調節して選択を可能にするプラスミド保有の発現非翻訳RNAである。これは、参照により本明細書に含まれるCrouzet J及びSoubrier F 2005年、米国特許第6,977,174号に記載されるナンセンス抑制性選択可能染色体標的を調節するプラスミド保有のナンセンス抑制tRNAであり得る。これはまた、プラスミド保有のアンチセンスリプレッサーRNAであり得、参照により本明細書に含まれる非限定的なリストには、RNA-IN調節標的を抑制するRNA-OUT(Williams、前掲、2008年)、RNAII調節標的を抑制するRNAIをコードするpMB1プラスミド起点(Grabherr R、PfaffeNzeller I. 2006年、米国特許出願公開第2006/0063232号;CraNeNburgh RM. 2009年;米国特許第7,611,883号)、RNAII調節標的を抑制するRNAIをコードするINcBプラスミドpMU720起点(Wilson IW、Siemering KR、Praszkier J、Pittard AJ. 1997年. J Bacteriol 179巻:742-53頁)、Hok調節標的を抑制するプラスミドR1のParB遺伝子座Sok、flmA調節標的を抑制するFプラスミドのFlm遺伝子座FlmB(Morsey MA、1999年、米国特許第5,922,583号)を含む。RNA選択マーカーは、当該技術分野において公知である別の天然アンチセンスリプレッサーRNA、例えば、Wagner EGH、Altuvia S、Romby P. 2002年. Adv Genet 46巻:361-98頁、Franch T及びGerdes K. 2000年. Current Opin Microbiol 3巻:159-64頁に記載されているものであり得る。RNA選択マーカーはまた、操作されたリプレッサーRNA、例えば、Na D、Yoo SM、Chung H、Park H、Park JH、Lee SY. 2013年. Nat Biotechnol 31巻:170-4頁に記載されるSgrS、MicC又はMicF足場を発現する合成低分子RNAであり得る。RNA選択マーカーはまた、調節される標的遺伝子に融合した標的RNAを抑制する選択マーカーの一部としての操作されたリプレッサーRNA、例えば、Williams、前掲、2015年に記載されるSacBであり得る。
ROP:プライマーのリプレッサー。
RSM:RNA選択マーカー。
SA:スプライスアクセプター、コンセンサス配列YYYYYYYYYYAGRWは配列番号29として示される。効率的にスプライスされたSA部位を作製するために、スプライス分岐点(コンセンサス配列YTNAY)がスプライスアクセプター部位の上流に含まれる(
図1参照)。
SacB:枯草菌レバンスクラーゼをコードする構造遺伝子。グラム陰性菌におけるSacBの発現はスクロースの存在下では有毒である。
SD:スプライスドナー、コンセンサス配列AGGTRAGT。
SEAP:分泌型アルカリホスファターゼ。
選択(selectable)マーカー:選択マーカー、例えば、カナマイシン耐性遺伝子又はRNA選択マーカー。
選択(selection)マーカー:選択マーカー、例えば、カナマイシン耐性遺伝子又はRNA選択マーカー。
SIDD:スーパーコイル誘導DNA二本鎖不安定化(SIDD)構造。これらの部位は、ベクターに組み込まれた場合、不安定化されるようにベクター内の他の配列の感受性を変更し得る。これは機能を変更することができる。例えば、発現ベクターへのSIDD部位の付加は、プロモーターのらせん不安定化を減少させ得る。これは、一部のプロモーターがプロモーターのらせん状不安定化により発現が増加し、一方、他のものはプロモーターのらせん状不安定化により発現が減少したため、プロモーターに応じてプロモーター活性を増加又は減少させ得る。
shRNA:短鎖ヘアピンRNA。
S/MAR:本明細書の他の場所で特定される足場/マトリックス付着領域。核マトリックスへのDNAの付着を媒介する真核生物の配列。
スペーサー領域:本明細書で使用するとき、スペーサー領域は、真核生物領域配列の5'及び3'末端を連結する領域である。真核生物領域の5'及び3'末端は、典型的には、プラスミドベクター中の細菌複製起点及び細菌選択マーカーによって分離される。
SR:スペーサー領域。
SV40起点:複製起点を含むシミアンウイルス40ゲノムDNA。
SV40エンハンサー:72bp及び場合により21bpのエンハンサーリピートを含むシミアンウイルス40ゲノムDNA。
標的抗原:これに対して免疫反応を起こすことができる免疫原性タンパク質若しくはペプチドエピトープ、又はタンパク質とエピトープの組み合わせ。標的抗原は、感染症又はアレルギー適用のための病原体に由来し得、又は適用、例えば、癌、アレルギー、若しくは自己免疫疾患のために宿主生物に由来し得る。標的抗原は、当該技術分野において十分に定義されている。いくつかの例は、参照により本明細書に含まれるWilliams、前掲、2008年に記載されている。
TE緩衝液:約10mMのTris(pH8)及び1mMのEDTAを含む溶液。
TetR:テトラサイクリン耐性遺伝子。
転写ターミネーター:細菌: 転写のために遺伝子又はオペロンの末端をマークするDNA配列。これは、内在性転写ターミネーター又はRho依存性転写ターミネーターであり得る。内在性ターミネーター、例えば、trpAターミネーターの場合、mRNA-DNA-RNAポリメラーゼ三元複合体を破壊するヘアピン構造が転写物内に形成される。或いは、Rho依存性転写ターミネーターは、新生mRNA-DNA-RNAポリメラーゼ三元複合体を破壊するためにRho因子、RNAヘリカーゼタンパク質複合体を必要とする。真核生物:PolyAシグナルは「ターミネーター」ではなく、代わりにPolyA部位での内部切断はヌクレアーゼ消化のために3'UTR RNAに、キャップされていない5'末端を残す。ヌクレアーゼは、RNA Pol IIに追いつき、終結を引き起こす。RNA Pol II休止部位(真核生物転写ターミネーター)の導入により、終結はポリA部位の短い領域内で促進することができる。RNA Pol IIの休止は、PolyA切断後に3'UTR mRNAに導入されたヌクレアーゼが休止部位でRNA Pol IIに追いつくことを可能にする。当該技術分野において公知である真核生物転写ターミネーターの非限定的なリストには、C2×4及びガストリンターミネーターが含まれる。真核生物転写ターミネーターは、mRNAの適切な3'末端プロセッシングを増強することによって、mRNAレベルを上昇させ得る。
トランスフェクション:当該技術分野において公知であり、参照により本明細書に含まれる、核酸を細胞内に送達させるための方法[例えば、ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)、ISCOM、リポソーム、ニオソーム、ビロソーム、キトサン、及び他の生分解性ポリマー、ミクロ粒子、ミクロスフェア、ナノ粒子、ナノカプセル、エレクトロポレーション、ヌクレオフェクション、圧電透過処理、ソノポレーション、イオントフォレシス、超音波、SQZ高速細胞変形媒介膜破壊、コロナプラズマ、プラズマ促進送達、組織耐性プラズマ、レーザーマイクロポレーション、衝撃波エネルギー、磁場、非接触透磁性、遺伝子銃、マイクロニードル、マイクロダーマブレーション(microdermabrasion)、流体力学的送達、高圧尾静脈注射など]。
導入遺伝子:標的生物における発現のためにベクターにクローニングされた目的の遺伝子。
ts:温度感受性。
μg:マイクログラム。
μg:マイクロリットル。
UCOE:遍在性クロマチンオープニング要素、例えば、Muller-Kullerら、2015年、Nucleic Acids Research 43巻:1577頁に開示されているA2UCOE又は最小誘導体。
UTR:mRNAの非翻訳領域(5'又は3'からコード領域まで)。
ベクター:ウイルス(例えば、アルファウイルス、ポックスウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノウイルス関連ウイルス、統合欠損レンチウイルスベクターなど)及び非ウイルス(例えば、プラスミド、ナノプラスミド、MIDGE、転写活性PCRフラグメント、ミニサークル、バクテリオファージなど)ベクターを含む遺伝子送達ビヒクル。これらは、当該技術分野において周知であり、参照により本明細書に含まれる。
ベクター骨格:導入遺伝子及び標的抗原コード領域を含まない、ベクターの真核生物領域及び細菌領域。
脊椎動物発現ベクター:RNAポリメラーゼI、II又はIIIプロモーターを用いた標的脊椎動物細胞又は生物におけるmRNA、タンパク質抗原、タンパク質治療薬、shRNA、RNA又はマイクロRNA遺伝子を発現させるためのベクター。
[発明を実施するための形態]
【0079】
本技術は、一般的に、自己複製型非組込みエピソーム脊椎動物発現ベクター法、並びにエピソーム複製及び導入遺伝子発現を改善する組成物に関する。本技術は、ベクター、例えば、非ウイルスベクター及びウイルスベクター(例えば、エピソーム組込み欠損レンチウイルスベクター、非組込みレンチウイルスベクター、エピソームレトロウイルスベクターなど)の発現及びエピソーム複製を改善するために実施することができる。
【0080】
改善されたエピソーム複製は、本技術を組み込んでいないプラスミドと比較して、改善された非組込みエピソームベクターの確立及び/又はインビトロ若しくはインビボでの維持として本明細書において定義される。改善されたプラスミド発現は、本技術を組み込んでいない、導入遺伝子をコードするプラスミドと比較して、改善された導入遺伝子発現レベル及び/又はインビトロ若しくはインビボでの発現期間として本明細書において定義される。本明細書において引用された全ての参考文献は、それらの全体が参照として援用されることを理解されたい。
【0081】
本技術のプラスミド修飾の方法は、驚くべきことに、効率的な確立を有する自己複製非組込みエピソームベクターを提供するための解決を提供することが見出された。
【0082】
本明細書に開示されているベクター法及び組成物は、非SD-SAバージョンと比較して、発現及び/又はエピソーム確立が改善された(性能が改善された)3'UTR SD-SMAR-SA組成物である。性能の改善は、様々なS/MARで観察されるため、改善された性能はS/MARに特異的ではない。改善された性能はまた、性能の改善が様々なプロモーター、5'UTR、導入遺伝子、及びpolyAシグナルに連結されたSD-SMAR-SAで観察されるため、ベクター転写単位に特異的ではない。改善された性能は、上流のイントロンの有無にかかわらず観察される。したがって、本開示の3'UTR SD-SMAR-SAベクターは、自己複製型非組込みエピソーム脊椎動物発現ベクターの性能を改善するために広く適用可能である。
【0083】
非SD-SAバージョンと比較して、開示された3'UTR SD-SMAR-SAの改善された性能は、先行技術に照らして驚くべきことである。例えば、Le Hirら、2003年 Trends in Biochemical Sciences 28巻:215頁は、「Matsumotoら[51]が、これらの翻訳効果はイントロン位置に大きく依存することを見出した。彼らの研究では、5'UTRに配置されたイントロンは非常に刺激性であったが、一方、3'UTRに配置された同じイントロンは、翻訳を、対応するイントロンを含まないmRNAのレベルより下に抑制した。」・・・それにもかかわらず、導入遺伝子の発現を最適化することに興味がある研究者にとって、イントロン位置が重要な変数であることに留意することが重要である。潜在的に翻訳を阻害することに加えて、3'UTRのイントロンは、下記のようにmRNAのナンセンス媒介性崩壊(NMD)を引き起こす可能性があり、その結果、タンパク質発現はさらに低下する。」ことを教示している。Barrettら、2012年 Cell. Mol. Life Sci. 69巻:3613頁は、「5'UTRとは対照的に、3'UTRは比較的にイントロンが少ないことが見出された(5%)[21]。後位の哺乳動物遺伝子のイントロン獲得の稀なケースを調べた研究は、これらの遺伝子の3'UTRにイントロンが存在すると、ナンセンス媒介性崩壊によって遺伝子発現の下方制御をもたらすことを見出した[52]。発現におけるこの負の影響は、3'UTRイントロンの低い存在率についての説明を提供する。」ことを教示している。本発明の適用を限定するものではないが、隣接するスプライスドナー及びスプライスアクセプタースプライス部位を付加することは、3'UTRがS/MAR配列をコードする開示された発明において予想外の利益をもたらし得る。
【0084】
本明細書で使用するとき、用語「配列同一性」とは、任意の所与のクエリー配列間、例えば、配列番号2と対象配列間の同一性の程度を指す。対象配列は、例えば、所与のクエリー配列と、少なくとも90パーセント、少なくとも95パーセント、又は少なくとも99パーセントの配列同一性を有し得る。配列同一性パーセントを決定するために、当該技術分野において周知である任意の適切な配列アラインメントプログラム、例えばコンピュータプログラムClustalW(バージョン1.83、デフォルトパラメーター)を使用して、クエリー配列(例えば、核酸配列)を1つ以上の対象配列にアライメントさせる。これは、核酸配列のアラインメントをそれらの全長にわたって実行することを可能にする(グローバルアラインメント)。Chemaら、2003年 Nucleic Acids Res.、31巻:3497-500頁。好ましい方法では、配列アラインメントプログラム(例えば、ClustalW)は、クエリーと1つ以上の対象配列との間の最良の一致を計算し、同一性、類似性、及び差異が決定され得るようにそれらをアライメントさせる。1つ以上のヌクレオチドのギャップは、配列アラインメントを最大にするために、クエリー配列、対象配列、又はそれらの両方に挿入することができる。核酸配列の高速ペアワイズアラインメントについて、特定のアラインメントプログラムに適した適切なデフォルトパラメーターを選択することができる。出力は、配列間の関係を反映する配列アラインメントである。クエリー配列に対する対象核酸配列の同一性パーセントをさらに決定するために、配列はアライメントプログラムを用いてアライメントされ、アライメントにおける同一の一致数をクエリー配列の長さで割り、結果を100倍する。パーセント同一性値は、最も近い10分の1に四捨五入することができることに留意されたい。例えば、78.11、78.12、78.13、及び78.14は78.1に切り捨てられ、78.15、78.16、78.17、78.18、及び78.19は78.2に切り上げられる。
【0085】
ここで図面を参照すると、
図1は、pCIイントロン(上段)、スプライスドナー(SD)領域(中央)並びに分岐点及びスプライスアクセプター(SA)領域(下段)の注釈付きマップを示す。
図2は、インターフェロンベータS/MAR(上段)、及びSDインターフェロンベータS/MAR SA誘導体(中段)、並びに内部AATAAAポリアデニル化シグナルが突然変異したSDインターフェロンベータS/MAR SA誘導体(下段)の注釈付きマップを示す。
図3は、SD部位とSA部位とが隣接するインターフェロンベータS/MAR誘導体M18の注釈付き地図を示す。
図4は、隣接するSD部位とSA部位を有する805bp(上段)又は525bp(下段)のapoB S/MARの注釈付きマップを示す。
図5は、pMAX-UCOE-coGFP P2A-PuroR-NP(pSMARt UCOE)ベクターの注釈付きマップを示す。
図6は、NTC9385R-UCOE-CMV-coGFP P2A-PuroR-SMAR-SV40 pA(NP-UCOE)及びNTC9385R-UCOE-CMV-coGFP P2A-PuroR-SD SMAR-SA SV40 pA(NP-UCOE-SP)ベクターの注釈付きマップを示す。
図7は、NTC9385R-SP-UCOE-CMV-GFP SMARter(NP-SMARter-SP)及びNTC9385R-SP-UCOE-CMV-GFP CMARter(NP-CMARter-SP)ベクターの注釈付きマップを示す。
図8は、NTC9385R-UCOE EF1-coGFP SD-SMAR SA SV40 pA(NP-UCOE-EF1-SP)及びNTC9385R-UCOE EF1-coGFP-SD SMAR R6K-R-OUT-SA pA(UCOE-EF1-SP-NP)ベクターの注釈付きマップを示す。
図9は、NTC9385R-SP-ELE40-CMV-GFP CMARter(NP-Ele40-CMARter-SP)ベクターの注釈付きマップを示す。
図10は、SD部位とSA部位に隣接する及び隣接しない確立されたS/MARベクターの発現の改善を示す。左パネル:スプライス接合部を有する及び有さないS/MARベクターを用いて確立されたHEK293T細胞のMFI。ベクターは、NP細菌領域、ゲノム遮蔽因子UCOE、CMVプロモーターによって駆動される発現カセットGFP-2A-PuroR、及びSD部位とSA部位に隣接するS/MARを有する(Nano-S/MAR-スプライス=NP-UCOE-SP、NTC9385R-UCOE-CMV-coGFP P2A-PuroR-SD SMAR-SA SV40 pA、
図6)又は有さない(NP-UCOE、NTC9385R-UCOE-CMV-coGFP P2A-PuroR-SMAR-SV40 pA、
図6)3'UTRにおけるインターフェロンベータS/MARを含む。右パネル:改善された転写発現は、リアルタイムPCR分析によって確認される。導入遺伝子GFPの発現をハウスキーピング遺伝子GAPDHに対して正規化した。
図11は、SD部位とSA部位が隣接する及び隣接しない確立されたS/MARベクターの改善された発現を示す。スプライシング接合部が隣接する異なるS/MARを保有するベクターを用いて確立された細胞(HEK293T及び初代マウス胚性線維芽細胞)のMFI。ベクター名は、
図5、6及び7の通りである。
図12は、SD部位とSA部位が隣接する及び隣接しないS/MARベクターの改善された確立を示す。コロニー形成アッセイは、SD部位とSA部位が隣接する及び隣接しない2つの異なるS/MAR(インターフェロンベータS/MAR、ApoB S/MAR、805bp)を保有するベクターを用いてHEK293Tにおいて行われた。pEPIは、3'UTRインターフェロンベータS/MARを有するCMVプロモータープラスミドベクターである。
【実施例】
【0086】
本技術の方法は、以下の実施例によってさらに説明される。これらは例示として提供され、何ら本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【0087】
実施例1:pUC、及びR6K複製起点プラスミド生成
RNA-OUT抗生物質を含まない選択マーカーの背景:抗生物質を含まない選択は、Williams、前掲、2008年に記載されているように、ファージラムダ付着部位を染色体に組み込んだpCAH63-CAT RNA-IN-SacB(P5/6 6/6)を含む大腸菌(E.coli)株において行われる。SacB(枯草菌レバンスクラーゼ)は、スクロースの存在下で大腸菌細胞に対して致死的である対抗選択マーカーである。RNA-IN-SacB転写物からのSacBの翻訳は、プラスミドにコードされたRNA-OUTによって阻害される。これは、SacB媒介致死性の阻害により、スクロースの存在下でのプラスミド選択を促進する。
【0088】
R6K起点ベクター複製及び生成の背景:R6Kガンマプラスミド複製起点は、複製開始モノマーとして複数の反復「イテロン」に結合する単一のプラスミド複製タンパク質πを必要とする。増殖に特殊な細胞株を必要とする条件付き複製起点、例えば、R6Kガンマの使用は、ベクターが患者の内因性フローラに移された場合には複製されないため、安全マージンを向上させる。
【0089】
複製に必要とされるコア配列を含む、高度に最小化されたR6Kガンマ由来の複製起点(配列番号1)は、参照により本明細書に含まれるWilliams、前掲、2014年に記載されている。この最小化されたR6K起点及びスペーサー領域にRNA-OUT AF選択マーカーを含むNTC9385R ナノプラスミド(商標)骨格は、参照により本明細書に含まれるWilliams、前掲、2014年に記載されている。Williams、前掲、2014年は、R6K起点ナノプラスミド(商標)ベクターの選択及び増殖のためのファージHK022付着部位統合pLプロモーター熱誘導性πP42L、P106L及びF107S高コピー突然変異複製(Rep)タンパク質を発現する宿主株を記載している。これは、R6K起点ベクターが遺伝子操作されたRepタンパク質を発現する大腸菌宿主株内でのみ複製することができるため、追加のナノプラスミド(商標)安全因子である。
【0090】
振とうフラスコ生成:pUC起点プラスミド生成は、大腸菌株DH5α[F-Φ80lacZΔM15Δ(lacZYA-argF)U169 recA1 emd1 hsdR17(rK-、mK+)]phoA supE44λ- thi-1 gyrA96 relA1](Invitrogen、Carlsbad、CA)中で行われた。R6K起点-RNA-OUTスクロース選択ナノプラスミド(商標)ベクターは、宿主株NTC940211 DH5α attλ::P5/6 6/6-RNA-IN-SacB、catR;attHK022::pL(OL1-GからT)P42L-P106I-F107S又はNTC1050811 DH5α attλ::P5/6 6/6-RNA-IN-SacB、cat R;attHK022::pL(OL1-GからT)P42L-P106I-F107S P113S(P3-)、SpecR StrepR;attφ80::pARA-CI857ts、tetRにおいて行われた。振とうフラスコの生成は、所有のPlasmid+振とう培養培地を用いて行われた。種培養をグリセロールストック又はコロニーから開始し、50μg/mL抗生物質(ampR若しくはkanR選択プラスミド用)又は6%スクロース(RNA-OUT選択プラスミド用)を含むLB培地寒天プレート上に画線した。プレートを30~32℃で増殖させた。細胞を培地に再懸濁及び使用して、amp-R又はkanR選択プラスミド用の50μg/mL抗生物質又は0.5%スクロースを含む500mLプラスミド+振とうフラスコに対して約2.5のOD600接種材料を提供し、RNA-OUTプラスミドを選択した。フラスコを飽和するまで振とうしながら増殖させた。
【0091】
実施例2:S/MARベクター構築
pNTC-NP1、pNTC-NP2、pNTC-NP3、pNTC-NP4、pNTC-NP5、pNTC-NP6、pNTC-NP7ベクターは、pUC57ベースのベクターのポリリンカー領域にクローニングされたR6Kガンマ起点-RNA-OUT細菌複製選択領域(配列番号8)をコードする。pNTC-3xCpG NP1ベクターは、pUC57ベースのベクターのポリリンカー領域にクローニングされた1CpG R6Kガンマ起点-2CpG RNA-OUT細菌複製選択領域(配列番号9)をコードする。各ベクターは、R6K複製-RNA-OUT選択に対して標的ベクターを追加導入するために使用することができる様々な隣接制限部位を有する。pNTC-NP1-7ベクター及びpNTC-3xCpG NP1中のR6K-RNA-OUTインサートに隣接する5'及び3'ポリリンカー配列を表1に示す。
【0092】
【0093】
一部の場合において、R6K起点及びRNA-OUT単位は、非パリンドロームDraIIIリンカー部位を使用して、別々の制限フラグメントからマルチフラグメントライゲーションにおいて組み立てられた(表1参照)。
【0094】
元のpUC起点-抗生物質選択マーカーベクター(例えば、pSMARt UCOE、
図5)及び改造されたR6K起点-RNA-OUT抗生物質フリー選択マーカーベクター(例えば、NP-UCOE:
図6)のベクターマップ及びベクター特性の例を示す。
【0095】
SD-S/MAR-SA 3'UTRは、次のように合成遺伝子として作製された。5'BglII及びNsiIクローニング部位と3'XhoIクローニング部位(
図1)を有するスプライスドナー部位(配列番号25)(
図1)をS/MARの5'に組み込み、一方、5'EcoRI及び3'BamHIクローニング部位(
図1)を有するスプライスアクセプター部位(配列番号26)をS/MARの3'に組み込んだ。遺伝子をGenscript(Piscataway、NJ)で合成し、標準的な制限フラグメントライゲーション媒介クローニングを用いて、既存のSMAR-NPベクター中にS/MARの代わりにクローニングした。例えば、インターフェロンベータS/MAR(配列番号18)(例えば、NP-UCOEベクター、
図6)をスプライスドナー-インターフェロンベータS/MAR-スプライスアクセプター(配列番号19)(例えば、NP-UCOE-SPベクター、
図6;NP-UCOE-EF1-SP、
図8)又はスプライスドナー-インターフェロンベータS/MAR(-AATAAA)-スプライスアクセプター(配列番号20)若しくはスプライスドナー-インターフェロンベータM18 S/MAR-スプライスアクセプター(配列番号21)で置換した。スプライスドナー-インターフェロンベータS/MAR(-AATAAA)は、AATATT(T)MARモチーフを有するS/MARをコードするAATAAA(N)転写終結シグナルを除去するように設計された(
図2)。805bpのApoB S/MARは、スプライスドナー-805bpのApoB S/MAR-スプライスアクセプターバージョン(配列番号22)(例えば、NP-SMARter-SP、
図7)で置換され、一方、525bpのApoB S/MARは、スプライスドナー-525bpのApoB S/MAR-スプライスアクセプターバージョン(配列番号23)(例えば、NP-CMARter-SP、
図7;NP-Ele40-CMARter-SP、
図9)で置換された。代替の導入遺伝子、プロモーター、5'UTRイントロン、又はELE40若しくはUCOE要素を有する追加のNP構築物は、標準的な制限フラグメントライゲーション媒介クローニングによって作製された。すべての構築物は、制限消化及び配列決定によって正しいことが検証された。
【0096】
実施例3:一過性トランスフェクション後のS/MARベクター発現
付着性HEK293(ヒト胎児腎臓)及びA549(ヒト肺癌腫)細胞株は、アメリカタイプカルチャーコレクション(Manassas、VA、USA)から入手された。細胞株を、10%ウシ胎児血清を含むダルベッコ変法イーグル培地/F12中で増殖させ、Invitrogen (Carlsbad、CA、USA)試薬及び従来の方法論を用いて分割(0.25%トリプシン-EDTA)した。トランスフェクションのために、細胞を24ウェル組織培養皿に播種した。製造者(Invitrogen)の指示書に従って、Lipofectamine 2000を用いてプラスミドを細胞株にトランスフェクトした。
【0097】
EGFP測定用の全細胞ライセートは、細胞溶解緩衝液(CelLytic M、Sigma、St Louis、MO、USA)に細胞を再懸濁し、30分間、37℃でインキュベートすることによって細胞を溶解し、続いて、-80℃で凍結融解サイクルを行うことによって調製された。溶解した細胞を遠心分離により清澄化し、上清をFLX800マイクロプレート蛍光リーダー(Bio-Tek、Winooski、VT、USA)によりEGFPについてアッセイした。結果を表2~4に要約する。
【0098】
【0099】
【0100】
表2及び3に示された結果は、UCOE-EF1プロモーター、イントロンなしのcoGFP導入遺伝子転写単位を用いて、SD/SAが隣接するヒトIFNB SMARは、SD/SA部位を含まないヒトIFNB SMARと比較して、HEK293とA549細胞株の両方における発現を改善することを実証する。2つのSD/SA構成(隣接SMAR、又は隣接SMAR+R6K-RNA-OUT NP細菌領域)において発現の改善が観察された。SD/SAが隣接するM18 SMAR(ヒトIFNB SMAR由来)は、SD/SAが隣接する同等のヒトIFNB SMARよりも高い発現を有する。
【0101】
さらに、表3の結果は、UCOE-CMVプロモーター、pCIイントロンcoGFP導入遺伝子転写単位における発現の改善(すなわち、5'UTRをコードするイントロンの有無にかかわらず、2つの異なるプロモーターを用いた発現の改善)を示す。発現の改善はまた、異なるポリアデニル化シグナル(SV40又はRBG由来)で観察される。
【0102】
【0103】
表4に示される結果は、SD/SAが隣接するヒトIFNB SMARが、UCOE-EF1プロモーター、イントロンなしのcoGFP導入遺伝子転写単位及びUCOE-CMVプロモーター、pCIイントロンcoGFP導入遺伝子単位を有し、SD/SA部位を有さないヒトIFNB SMARと比較して、HEK293とA549細胞株の両方における発現を改善することをさらに実証する(すなわち、5'UTRをコードするイントロンの有無にかかわらず、2つの異なるプロモーターを用いた発現の改善)。さらに、SD/SAが隣接するCMARter SMARは、SD/SAが隣接するヒトIFNB SMARよりも高い発現を示す。さらに、AATATT(T)MARモチーフによるS/MAR AATAAA(N)転写終結シグナルの置換は、機能的S/MARをもたらし、このアプローチが、当該技術分野において記載されているS/MAR要素から転写終結シグナルを除去するために使用できることを実証する。AATATT(T)、例えば、Liebeichら、前掲、2002年に記載されているS/MAR中に豊富なATリッチモチーフの代わりに、代替モチーフを使用することができる。このAATAAAモチーフ置換法は、AATAAAモチーフ媒介早発転写終結を介して発現を減少させることなしに、当該技術分野におけるS/MARの適応が本発明の3'UTRにおいて利用されることを可能にする。
【0104】
まとめると、結果は、本発明のベクターが、当該技術分野において記載されているS/MARベースのベクターの最適以下の発現レベル制限を解決することを実証している。
【0105】
実施例4:エピソーム確立後のS/MARベクター発現
NP-UCOE(
図6)及びNP-UCOE-SP(
図6)からの発現は、細胞株HEK293におけるエピソーム確立後に決定された。少なくとも30日間増殖させる前に1週間、ピューロマイシン(0.5μg/ml)の適用を必要とする標準的なプロトコールを用いて細胞を確立した(Wong及びHarbottle、2013年 Mol Ther Nucleic Acids 2:e115)。確立された集団をFACSによりレポーター遺伝子GFPの発現について分析し、GFP RNAレベルをqPCRにより評価した。結果(
図10)は、SD/SAが隣接するヒトIFNB SMARが、HEK293細胞株におけるエピソーム確立後のSD/SA部位を含まないヒトIFNB SMARと比較して、mRNA転写及びGFP導入遺伝子発現を改善することを実証する。第2の実験は、SD-S/MAR-SAベクター、NP-UCOE-SP(
図6)、NP-SMARter-SP(
図7)及びNP-CMARter-SP(
図7)のGFP導入遺伝子発現が、HEK293細胞株及び初代マウス胚性線維芽細胞におけるエピソーム確立後、非SD-SAベクターNP-UCOE(
図6)と比較して改善されたことを実証した。
【0106】
確立された細胞株を用いたこれらの結果は、本発明のベクターが、当該技術分野において記載されているS/MARベースのベクターの遺伝子サイレンシング制限を解決することを実証している。
【0107】
実施例5:エピソーム確立後のS/MARベクター発現
細胞確立の効率はまた、SD部位とSA部位が隣接する及び隣接しない2つの異なるS/MAR(インターフェロンベータS/MAR、ApoB S/MAR、805bp)を保有するベクターを用いたコロニー形成アッセイ(Wong及びHarbottle、前掲、2013年)によりHEK293Tにおいて試験された。結果は、SD部位とSA部位が隣接するインターフェロンベータS/MARとApoB S/MARの両方を用いて、確立細胞の生成(すなわち、最大数のコロニーの生成)における効率が劇的に改善されることを実証した(
図12)。これらの結果は、本発明のベクターが、当該技術分野において記載されているS/MARベースのベクターの低い確立速度制限を解決することを実証している。
【0108】
実施例6:遺伝子的に修飾された細胞集団の確立の効率及び分析(
図1)
安定に発現する細胞の生成おける効率は、pS/MARt(
図4、配列番号41)を用いたコロニー形成アッセイにおいて評価された。DNA送達時に、GFP導入遺伝子発現に陽性である細胞をFACS選別(FACS Aria II)を介して単離し、100個の細胞を6cm細胞培養皿に播種した。次に、それらを0.5μg/mlピューロマイシンの存在下で4週間培養した。4週間後、細胞をPFAで固定し、コロニーをクリスタルバイオレットで染色した。コロニー数は、ベクター確立の効率、すなわち播種されたFACS選別した細胞数あたりのコロニー形成数と見なされる。安定な細胞株の生成は非常に効果的であり、トランスフェクトされた細胞の40%超が確立されるようになる(
図1A))。導入遺伝子(GFP)発現細胞の数をフローサイトメトリーによって推定した。
図1b)に示されるように、pS/MARtは、導入遺伝子の発現が有意な数の陰性細胞なしで均質である修飾された集団を生成する。
【0109】
実施例7:確立された細胞集団からのpS/MARtベクターのプラスミド救出(
図2)
DNAベクターが修飾された細胞内で完全性を伴ってエピソーム的に維持されているかどうかを決定するための効果的な方法は、それらがナイーブな細菌に無傷で救出され得るかを検証することである。そうするために、プラスミドpS/MARtで修飾された持続的に確立された細胞株は、抗生物質ピューロマイシン(0.5μg/ml)の存在下で1週間培養され、抗生物質なしで少なくとも30日間増殖させてベクターの完全性を評価した。Blood&Tissue DNAeasyキット(Qiagen)を用いて細胞から総DNAを調製し、DH10B大腸菌細胞に形質転換した。細菌をカナマイシン(50μg/ml)を含むLB寒天プレート上で増殖させた。12コロニーをカナマイシン(50μg/ml)を含む液体LB培地中で一晩増殖させ、プラスミドDNAをMiniprepキット(キアゲン)を用いて抽出した。分析のために、DNAミニ調製物を制限酵素BamHI(Thermo Fisher)を用いて10分間、37℃で消化し、制限パターンを1%アガロースゲル上で処理した。対照として、確立手順の始めに細胞をトランスフェクトするために使用したDNAを同じ酵素で消化し、参照として泳動した。これらのゲルは、無傷のpS/MARt DNAが安定な修飾された細胞株から単離され得、全ての場合においてDNAが元々トランスフェクトされたベクターと同一であったことを例証する。
【0110】
実施例8:pS/MARtベクターは修飾細胞においてエピソーム的に維持される(
図3)。
pS/MARtベクターがエピソームとして哺乳動物細胞を修飾していたことをさらに実証するために、サザンブロット分析によって構造を物理的に決定した。DNAトランスフェクション後の少なくとも30日間培養したHek293T細胞集団を分析した。ゲノムDNAをBlood&Tissue DNAeasyキット(Qiagen)で抽出し、制限酵素BamHI(NEB)を用いて37℃で一晩消化した。次に、全細胞DNAを1%アガロースゲル上で分離し、ナイロン膜に転写した。ベクターのGFP遺伝子に対応するオリゴヌクレオチドを使用して、細胞DNA内のpS/MARt DNAを検出するために使用される放射性プローブを作製した。同じサイズの対照ベクターを有する単一バンドの試料中の存在は、確立された哺乳動物細胞集団におけるpS/MARtのエピソーム状態を実証する。汚れ及び/又は別のバンドが存在しないことは、ベクターが細胞ゲノムに再配置及び統合されなかったことを実証する。
【0111】
本明細書に開示されているベクター法及び組成物並びに上記に示される評価は、非SD-SAバージョンと比較して、3'UTR SD-SMAR-SA組成物が発現及び/又はエピソーム確立を改善したことを実証する。性能の改善は様々なS/MARで観察されるため、性能の改善はS/MARに固有のものではない。性能の改善は、様々なプロモーター、5'UTR、導入遺伝子、及びpolyAシグナルに連結されたSD-SMAR-SAで観察されるため、性能の改善はまたベクター転写単位に特異的ではない。改善された性能は、上流のイントロンの有無にかかわらず観察される。したがって、本開示の3'UTR SD-SMAR-SAベクターは、自己複製型非組込みエピソーム脊椎動物発現ベクターの性能を改善するために広く適用可能である。
【0112】
本技術のベクター、当該技術分野において記載されている任意のイントロンスプライスドナー部位は、pCIイントロン由来のスプライスドナーの代わりになり得る。同様に、当該技術分野において記載されている任意のイントロンスプライスアクセプター部位は、pCIイントロン由来のスプライスアクセプターの代わりになり得る。例えば、スプライスドナー及びアクセプターは、HTLV-IR-ウサギβグロビンハイブリッドイントロン、HTLV-IR CMVハイブリッドイントロン、CMVイントロン、CpGフリーイントロンI 140、ヒトβグロビンマウスIgGキメライントロン、アデノウイルスリーダー-マウスIgGキメライントロン、ウサギβグロビンイントロン、切断型CMVイントロン、CAG(ニワトリβアクチン-ウサギβグロビン)イントロン、Williams、前掲、2014年に開示されたCMV-ウサギβグロビンハイブリッドイントロン、又は当該技術分野において記載されている他のイントロンに由来し得る。
【0113】
当該技術分野において記載されている様々な代替S/MARはまた、本技術のベクターにおいて使用され得る。必要に応じて、内部ポリA部位は、本明細書に記載されているモチーフ置換によって除去され得る。
【0114】
ベクターは、本明細書において提供される例とは異なる多様な導入遺伝子、例えば、様々な病原体の抗原遺伝子、又は治療遺伝子、例えば、低酸素誘導因子、ケラチノサイト増殖因子、第IX因子、第VIII因子、ファンコニア貧血相補群Aタンパク質、ホモゲンチシン酸ジオキシゲナーゼなど、又はポリタンパク質、例えば初期化因子ポリタンパク質をコードし得る。
【0115】
同様に、ベクターは、本明細書において提供されるCMV及び伸長因子1(EF1)プロモーターの例とは異なる多様なRNA Pol IIプロモーター、例えば、ニワトリβ-アクチンプロモーター、他の種由来のβ-アクチンプロモーター、ホスホグリセロキナーゼ(PGK)プロモーター、脾臓フォーカス形成ウイルス(SFFV)プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、ヒト血清アルブミン(SA)プロモーター、チロキシン結合グロブリン(TBG)プロモーター、チトクロームP450 2E1(CYP2E1)プロモーターなどの構成的プロモーターを利用し得る。ベクターはまた、組み合わせプロモーター、例えば、ニワトリβ-アクチン/CMVエンハンサー(CAG)プロモーター、伸長因子1α(EF1α)プロモーターと組み合わされたヒト若しくはマウスCMV由来エンハンサー要素、伸長因子1α(EF1α)プロモーターと組み合わされたヒト若しくはマウスCMV由来エンハンサー要素のCpGフリーバージョン、α-フェトプロテインMERIIエンハンサーと組み合わされたアルブミンプロモーターなど、又は当該技術分野において公知である多様な組織特異的若しくは誘導性プロモーター、例えば、筋肉特異的プロモーター筋肉クレアチンキナーゼ(MCK)、及びC5-12又は肝臓特異的プロモーターアポリポタンパク質AI(ApoAI)、α-1アンチトリプシン(AAT)プロモーター、AAT-TTRプロモーター、SERP-TTRプロモーター、及びApoE-hAAT、又はT細胞プロモーター、例えば、hTCR8.1、CD4、WASpを利用し得る。
【0116】
さらに、ナノプラスミド骨格において、R6K複製起点の様々な配向、及びRNA選択マーカーを利用し得る。例えば、R6K複製起点、及び本技術のベクター中のRNA選択マーカーの8配向のいずれかを使用し得る(すなわち、←PolIII複製起点RSM→;←PolIII複製起点←RSM;PolIII複製起点→RSM→;PolIII複製起点→←RSM;←RSM PolIII複製起点→;←RSM←PolIII複製起点;RSM→PolIII複製起点→;RSM→←PolIII複製起点)。さらに、当該技術分野において公知である様々なRNA選択マーカーがRNA-OUTを代替し得る。したがって、読者は、本技術の改良された自己複製型非組込みエピソーム脊椎動物発現ベクターが、非組込みエピソーム複製プラスミドにコードされた導入遺伝子発現を改良するためのアプローチを提供することを理解する。
【0117】
したがって、本開示の範囲は、例示された実施形態によってではなく、添付の特許請求の範囲によって決定されるべきである。
本開示は以下の実施形態を包含する。
[1] 標的脊椎動物細胞における自己複製型非組込みエピソームS/MAR発現ベクターの発現及び確立効率を改善する方法であって、以下のステップ:
a.i.細菌複製起点及び選択マーカーを含む細菌複製選択領域、
ii.プロモーター、5'UTR、導入遺伝子、及び3'UTRを含む、脊椎動物細胞における導入遺伝子の発現のための転写単位、
iii.3'UTR内に位置するS/MARインサート
を含む、エピソームS/MAR発現ベクターを用意するステップ、及び
b.前記3'UTR内で5'スプライスドナー部位と3'スプライスアクセプター部位が、S/MARに隣接するようにエピソームS/MAR発現ベクターを修飾するステップであって、それによって得られた自己複製型非組込みエピソームS/MAR発現ベクターは、脊椎動物細胞のトランスフェクション後の発現及び確立効率が改善される、ステップ
を含む方法。
[2] 前記S/MARインサートが、内部AATAAA転写終結モチーフを含む、実施形態1に記載の方法。
[3] 前記S/MAR中の前記AATAAA転写終結モチーフが、AATATTモチーフで置換されている、実施形態1に記載の方法。
[4] 前記S/MARが、ヒトインターフェロンベータS/MAR、M18 S/MAR、アポリポタンパク質B S/MARからなる群から選択される、実施形態1に記載の方法。
[5] 5'スプライスドナー部位と3'スプライスアクセプター部位が隣接する前記SMARが、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、及び配列番号23からなる群から選択される配列と少なくとも95%の配列同一性を有する、実施形態1に記載の方法。
[6] 前記細菌複製起点が、R6Kガンマ複製起点である、実施形態1に記載の方法。
[7] 前記細菌複製起点が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、及び配列番号4からなる群から選択される配列と少なくとも95%の配列同一性を有するR6Kガンマ複製起点である、実施形態1に記載の方法。
[8] 前記選択マーカーが、配列番号5及び配列番号7からなる群から選択される配列と少なくとも95%の配列同一性を有するRNA-IN調節RNA-OUT機能的変異体である、実施形態1に記載の方法。
[9] 前記選択マーカーが、配列番号6と少なくとも95%の配列同一性を有するRNA-IN調節RNA-OUT RNAをコードするRNA-OUT RNA選択マーカーである、実施形態1に記載の方法。 [10] 細菌複製起点及び選択マーカーを含む前記細菌複製選択領域が、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、及び配列番号17からなる群から選択される配列と少なくとも95%の配列同一性を有するR6K起点-RNA-OUT RNA選択マーカー細菌複製選択領域である、実施形態1に記載の方法。
[11] 前記5'UTRが、イントロンをさらにコードする、実施形態1に記載の方法。
[12] 前記転写単位が、プロモーターの上流に位置する発現エンハンサーをさらにコードする、実施形態1に記載の方法。
[13] 前記発現エンハンサーが、配列番号27及び配列番号28からなる群から選択される配列と少なくとも95%の配列同一性を有する、実施形態12に記載の方法。
[14] 前記スプライスドナー部位が、配列番号25と少なくとも95%の配列同一性を有する、実施形態1に記載の方法。
[15] 前記スプライスアクセプター部位が、配列番号26と少なくとも95%の配列同一性を有する、実施形態1に記載の方法。
[16] 前記自己複製型非組込みエピソームS/MAR発現ベクターが、プラスミドベクター、ナノプラスミドベクター、組込み欠損レンチウイルスベクター、及び非組込みレンチウイルスベクターからなる群から選択される、実施形態1に記載の方法。
[17] 少なくとも1つのプロモーター及びS/MAR要素を含むポリヌクレオチドであって、前記S/MAR要素が前記プロモーターの下流に位置し、前記S/MAR要素の核酸配列(S/MAR配列)が、最大200ヌクレオチドのストレッチにわたり、100ヌクレオチドあたり少なくとも3つの配列モチーフATTAを含み、前記S/MAR要素に、スプライスドナーとスプライスアクセプターが隣接し、前記ポリヌクレオチドが、配列番号1、配列番号2、配列番号3及び配列番号4からなる群から選択される配列と少なくとも95%の配列同一性を有するR6Kガンマ複製起点をさらに含むポリヌクレオチド。
[18] 前記プロモーターが、宿主細胞におけるカーゴポリペプチド及び/又は選択マーカーの発現のための転写単位に含まれる、実施形態17に記載のポリヌクレオチド。
[19] 前記転写単位が、プロモーター、5'UTR、導入遺伝子、及び3'UTRを含む、実施形態18に記載のポリヌクレオチド。
[20] 前記S/MARが前記3'UTR内に位置する、実施形態19に記載のポリヌクレオチド。
[21] 前記S/MARに、5'スプライスドナー部位と3'スプライスアクセプター部位が隣接する、実施形態17~21のいずれかに記載のポリヌクレオチド。
[22] 前記ポリヌクレオチドが、配列番号5及び配列番号7からなる群から選択される配列と少なくとも95%の配列同一性を有するRNA-IN調節RNA-OUT機能的変異体を含むRNA-OUT RNA選択マーカーをさらに含む、実施形態17~21のいずれかに記載のポリヌクレオチド。 [23] a.プロモーター、5'UTR、導入遺伝子、及び3'UTRを含む、脊椎動物細胞における導入遺伝子の発現のための転写単位、
b.前記3'UTR内に位置し、5'スプライスドナー部位と3'スプライスアクセプター部位が隣接するS/MAR、
c.配列番号1、配列番号2、配列番号3、及び配列番号4からなる群から選択される配列と少なくとも95%の配列同一性を有するR6Kガンマ複製起点、並びに
d.配列番号5及び配列番号7からなる群から選択される配列と少なくとも95%の配列同一性を有するRNA-IN調節RNA-OUT機能的変異体を含むRNA-OUT RNA選択マーカー
を含む、共有結合閉環状組換えDNA分子。
[24] 前記R6Kガンマ複製起点及び前記RNA-OUT RNA選択マーカーが、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、及び配列番号17からなる群から選択される配列と少なくとも95%の配列同一性を有するR6K起点-RNA-OUT RNA選択マーカー細菌複製選択領域を含む、実施形態17~22のいずれかに記載のポリヌクレオチド又は実施形態23に記載の組換えDNA分子。
[25] 前記S/MARが、内部AATAAA転写終結モチーフを含有する、実施形態17~22及び24のいずれかに記載のポリヌクレオチド又は実施形態23に記載の組換えDNA分子。
[26] 前記S/MAR中の前記AATAAA転写終結モチーフが、AATATTモチーフで置換されている、実施形態17~22及び24~25のいずれかに記載のポリヌクレオチド又は実施形態25に記載の組換えDNA分子。
[27] 前記S/MARが、ヒトインターフェロンベータS/MAR、M18 S/MAR、アポリポタンパク質B S/MARからなる群から選択される、実施形態17~22及び24~26のいずれかに記載のポリヌクレオチド又は実施形態23に記載の組換えDNA分子。
[28] 5'スプライスドナー部位と3'スプライスアクセプター部位が隣接する前記SMARが、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、及び配列番号23からなる群から選択される配列と少なくとも95%の配列同一性を有する、実施形態17~22及び24~27のいずれかに記載のポリヌクレオチド又は実施形態23に記載の組換えDNA分子。
[29] 前記5'UTRが、イントロンをさらにコードする、実施形態17~22及び24~28のいずれかに記載のポリヌクレオチド、又は実施形態23に記載の組換えDNA分子。
[30] 前記転写単位が、プロモーターの上流に位置する発現エンハンサーをさらにコードする、実施形態17~22及び24~29のいずれかに記載のポリヌクレオチド又は実施形態17に記載の組換えDNA分子。
[31] 前記発現エンハンサーが、配列番号27及び配列番号28からなる群から選択される配列と少なくとも95%の配列同一性を有する、実施形態17~22及び24~30のいずれかに記載のポリヌクレオチド又は実施形態17に記載の組換えDNA分子。
[32] 前記スプライスドナー部位が、配列番号25と少なくとも95%の配列同一性を有する、実施形態17~22及び24~31のいずれかに記載のポリヌクレオチド又は実施形態17に記載の組換えDNA分子。
[33] 前記スプライスアクセプター部位が、配列番号26と少なくとも95%の配列同一性を有する、実施形態17~22及び24~33のいずれかに記載のポリヌクレオチド又は実施形態17に記載の組換えDNA分子。
【配列表】