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7189947ジェットエンジンのボアスコープ検査のための装置、及びジェットエンジンのタービンブレードを検査するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】ジェットエンジンのボアスコープ検査のための装置、及びジェットエンジンのタービンブレードを検査するための方法
(51)【国際特許分類】
   F01D 21/00 20060101AFI20221207BHJP
   F01D 25/28 20060101ALI20221207BHJP
   F02C 7/00 20060101ALI20221207BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20221207BHJP
   G01M 15/14 20060101ALI20221207BHJP
   G01N 21/84 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
F01D21/00 W
F01D25/28 E
F02C7/00 A
F01D25/00 X
G01M15/14
G01N21/84 A
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020520732
(86)(22)【出願日】2018-10-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-17
(86)【国際出願番号】 EP2018078205
(87)【国際公開番号】W WO2019076876
(87)【国際公開日】2019-04-25
【審査請求日】2021-04-30
(31)【優先権主張番号】102017218426.4
(32)【優先日】2017-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】503371373
【氏名又は名称】ルフトハンザ・テッヒニク・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】LUFTHANSA TECHNIK AG
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・オケ・ペータース
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・ザスマンスハウゼン
(72)【発明者】
【氏名】ティム・フレデリク・ツィッペル
(72)【発明者】
【氏名】トリスタン・リーツ
(72)【発明者】
【氏名】オイゲン・ロッペルト
【審査官】北村 一
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-162510(JP,A)
【文献】特表2015-513026(JP,A)
【文献】特表2015-513630(JP,A)
【文献】特開2004-339944(JP,A)
【文献】米国特許第04298312(US,A)
【文献】特開2007-009909(JP,A)
【文献】特開平11-247616(JP,A)
【文献】米国特許第05066122(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 21/00;25/28;25/00
F02C 7/00
G02B 23/24
G01M 15/14
G01N 21/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柔軟なボアスコープ(70)を導入するための屈曲部の無いガイドパイプ(2)を備える、ジェットエンジン(80)の第1高圧タービン段(81)のタービンブレード(82)のボアスコープ検査のための装置(1)であって、
前記装置(1)は、前記ガイドパイプ(2)の明確で再現可能な位置決めと方向付けのための前記ガイドパイプ(2)のガイド(10)と、前記ガイド(10)を前記ジェットエンジン(80)の外側に着脱可能に固定するための固定用装置(20)とを備え、前記固定用装置(20)は方向付けユニット(30)を有し、前記方向付けユニット(30)によって前記ガイド(10)が、前記ジェットエンジン(80)の外側に対して予め決められた方向付けに調節されることが可能であり、前記ガイドパイプ(2)は剛であり、前記ガイドパイプ(2)は、前記ガイド(10)が正しく方向付けられたときに前記ジェットエンジン(80)へ導入された前記ガイドパイプ(2)の端部(3)が、予め決められた2つの案内翼(83)の間に向くように方向付けられ得るように、形成されていることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記ガイド(10)が、前記ガイドパイプ(2)の移動性を1つの自由度に制限するように構成され、単一の自由度に沿った移動によって、前記ジェットエンジン(80)に導入されている前記ガイドパイプ(2)の前記端部(3)が、前記ジェットエンジン(80)の軸に対して半径方向に直線状に移動されるように、前記自由度が構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記固定用装置(20)が、固定手段として、前記ガイドパイプ(2)のための開口部のねじ切りに係合するためのねじ部を備え、前記ねじ部は円錐状頭部(22)を有する中空ねじ(21)の部分であることを特徴とする、請求項1又は2のいずれかに記載の装置。
【請求項4】
前記方向付けユニット(30)が、前記ジェットエンジン(80)に当接するように構成されている1つ以上のストップ面(31)を備え、前記ストップ面(31)の少なくとも一部が調節され得ることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1つに記載の装置。
【請求項5】
前記装置(1)がガイドメカニズム(40)を備え、前記ガイドメカニズム(40)によって、前記ガイドパイプ(2)が前記ガイド(10)に沿って移動されることが可能で、前記ガイドメカニズム(40)が、前記ジェットエンジン(80)に導入されている前記ガイドパイプ(2)の前記端部(3)を前記ジェットエンジン(80)の軸に対して半径方向に直線状に動かすように構成されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1つに記載の装置。
【請求項6】
前記ガイドメカニズム(40)が、前記ガイドパイプ(2)を前記ガイド(10)に沿って動かすためのクランクドライブ(41)を有し、前記クランクドライブ(41)のクランク(42)が長手方向に調節可能であることを特徴とする、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記ガイドメカニズム(40)が、前記ガイドパイプ(2)を前記ガイド(10)に沿って動かすために、制御可能な駆動部を有することを特徴とする、請求項5又は6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
前記装置(1)が半組立品に分解され得ることを特徴とする、請求項1から7のいずれか1つに記載の装置。
【請求項9】
前記案内翼の先端が正しく固定されている場合に、前記ジェットエンジン(80)に導入されることが意図されている前記ガイドパイプ(2)と前記ガイドパイプ(2)の前記端部(3)とが、間隔が空いていることを特徴とする、請求項1から8のいずれか1つに記載の装置。
【請求項10】
前記装置(1)が正しく用いられている場合に、前記タービンブレード(82)を検出するための前記ボアスコープ(70)が、前記ガイドパイプ(2)から最大150mmまで突き出るように、前記ガイドパイプ(2)が構成されていることを特徴とする、請求項1から9のいずれか1つに記載の装置。
【請求項11】
ジェットエンジン(80)の第1高圧タービン段(81)のタービンブレード(82)を検査するための方法であって、
a)請求項1から10のいずれか1つに記載の装置(1)を、前記ジェットエンジン(80)の予め決められた側面のボアスコープ用開口(85)に予め決められた方向付けで導入及び固定するステップと、
b)柔軟な第1ボアスコープ(70)を、前記ガイドパイプ(2)を通して導入するステップと、
c)前記第1高圧タービン段(81)と、回り止め状態で前記第1高圧タービン段(81)に接続されている前記ジェットエンジン(80)の追加要素(88)とを、前記追加要素(88)の明確な識別特徴が予め決められた位置に来るまで、観察しながら回転させるステップと、
d)前記第1ボアスコープ(70)を通して見られ得る前記タービンブレード(82)を、第1タービンブレードと識別するステップと、
を備える方法。
【請求項12】
第2ボアスコープ(72)を用いることで、前記第1高圧タービン段(81)の前記タービンブレード(82)のシャフトに配置されているコンプレッサー段(88)のブレードが検出され得るように、前記第2ボアスコープ(72)が、追加のボアスコープ用開口(87)を通り前記ジェットエンジン(80)へ導入されることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第2ボアスコープ(72)が剛であり、かつ/又は前記ジェットエンジン(80)に接続され得ることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記コンプレッサー段(88)の前記識別特徴がブレードロックであることを特徴とする、請求項12又は13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記コンプレッサー段(88)の前記識別特徴が、複数のブレードロックの識別特徴であり、予め決められた回転方向と逆の周方向における、前記複数のブレードロックのブレードロックと隣のブレードロックとの間隔が最小であることを特徴とする、請求項12から14のいずれか1つに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジェットエンジンのボアスコープ検査のための装置と方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高圧タービンのタービンブレードは、高温高圧を受けるため、ジェットエンジンのガスタービンの最も負荷が掛かった要素に属する。同時に、高圧タービンブレードのそれぞれの原形からのわずかな損傷やずれでさえ、エンジンの効率の程度に少なくない影響を与え、最終的に燃料消費に影響を与える。より著しいエンジン損傷が稼働中に起きる前の平常時に、該当する場合にタービンブレードを修理又は取り換えるために、タービンブレードは定期的に損傷も調べられなくてはならない。
【0003】
法律上の認証のために、ジェットエンジンのタービンブレードは、固有のシリアル番号を必ず有する。この場合に、シリアル番号はタービンブレードの基部に配置され、シリアル番号が熱ガス流に直接接触すること及びその接触により識別不可になることを防ぐために、ブレードは基部によってブレードキャリアに固定されている。
【0004】
シリアル番号をタービンブレードの基部に配置することの不利な点は、タービンブレードが差し込まれた後にシリアル番号を見ることができないことである。従って、完全に据え付けられたガスタービン、又は完全に据え付けられたジェットエンジンにおいては、個々のエンジンブレードのシリアル番号を直接調べることは不可能である。代わりに、シリアル番号を確認するために、エンジンは分解されなくてはならない。
【0005】
完全に据え付けられたジェットエンジンであっても、一般的に航空機(翼)に固定されているときでも、タービンブレードのシリアル番号を明確に及び確実に識別できることは重要である。そのような明確な関連付けによってのみ、2つの検査の間のタービンブレードの損傷の進展又は他の変化を実証することができ、かつ/又は確認が必要なエンジン全体の複雑で費用を要する分解を行わずに、製造会社又は修理会社からのタービンブレードの状態を確認することができる。
【0006】
先行技術において、ボアスコープを用いた、タービンブレードを検査するための様々な方法が知られている。従って、タービンブレードを視覚的に検査するために、ボアスコープは、側面の開口を通り、完全に組み立てられたジェットエンジンに導入され得る。しかしこの場合、シリアル番号と個々のタービンブレードの明確な関連付けが不可能な状態で、段の全てのタービンブレードの一般的な調査のみが行われ得る。第1段の高圧タービンブレードの場合、追加の困難は、ボアスコープ検査が柔軟なボアスコープによってのみ行われ得ることであり、柔軟なボアスコープは、燃焼室ハウジングの開口部を通って(例えばスパークプラグ孔(spark plug hole)を通って)燃焼室に導かれているが、信頼できる検査のための十分に正確で確実な方法ではジェットエンジン内部に配置されることはできない。
【0007】
米国特許出願2015/0036130 A1は、特にエンジンのタービンブレードを検査するための、内視鏡検査用の内視鏡を固定するための固定用装置を開示する。当該固定用装置は、外部アクセスを介して内視鏡がエンジンに導入され得るように組み立てられており、導入方向は、内視鏡が内部アクセスを介してタービンブレードの領域に直接導かれ得るように構成されている。
【0008】
内視鏡のための保持装置は、米国特許4,784,463 Bで開示されている。当該保持装置は固定用装置と、内視鏡が差し込まれかつ方向を合わせられ得る補助の導入用要素とを備える。
【0009】
両方の刊行物は、タービンブレードを通常点検する可能性のみを開示している。シリアル番号と個々のタービンブレードとの明確な関連付けは、2つの既知の刊行物では不可能である。
【0010】
ガイドパイプを備える撮像用の内視鏡装置が、ドイツ特許出願10 2005 030 647 B3から既知である。当該ガイドパイプにおいて、撮像によって識別され得る少なくとも1つの印が提供され、その印によって、撮像用内視鏡の撮像部分の正確な位置が確定され得る。当該特許出願によって、シリアル番号と個々のタービンブレードの明確な関連付けも可能である。
【発明の概要】
【0011】
本発明の目的は、シリアル番号と、据え付けられたジェットエンジンの高圧タービンの第1段のタービンブレードとの明確な関連付けが可能である装置と方法を提供することである。
【0012】
この目的は、独立請求項に係る装置、及び従属請求項11に係る方法によって達成される。
【0013】
従って、本発明は、柔軟なボアスコープを導入するための屈曲部の無いガイドパイプを備える、ジェットエンジンの第1高圧タービン段のタービンブレードのボアスコープ検査のための装置に関し、当該装置は、前記ガイドパイプの明確で再現可能な位置決めと方向付けのための前記ガイドパイプ用のガイドと、前記ガイドをジェットエンジンの外側に着脱自在に固定するための固定用装置とを備え、前記固定用装置は方向付けユニットを有し、前記方向付けユニットによって前記ガイドが、ジェットエンジンの外側に対して予め決められた方向付けに調節されることが可能であり、前記ガイドパイプは剛であり、前記ガイドパイプは、前記ガイドが正しく方向付けられたときに前記ジェットエンジンに導入された前記ガイドパイプの前記端部が、予め決められた2つの案内翼の間に向くように方向付けられ得るように形成されている。
【0014】
本発明は、さらにジェットエンジンの第1高圧タービン段のタービンブレードを検査するための方法に関し、本方法は、
a)本発明に係る、前述の装置を、前記ジェットエンジンの予め決められた側面のボアスコープ用開口に予め決められた方向付けで導入及び固定するステップと、
b)柔軟なボアスコープを、前記ガイドパイプを通して導入するステップと、
c)前記高圧タービン段と、回り止め状態で前記高圧タービン段に接続されている前記ジェットエンジンの追加要素とを、前記追加要素の明確な識別特徴が予め決められた位置に来るまで、観察しながら回転させるステップと、
d)前記第1ボアスコープを通して見られ得る前記タービンブレードを、第1タービンブレードと識別するステップと、
を有する。
【0015】
ボアスコープ検査という状況下で、シリアル番号と、据え付けられたジェットエンジンの第1高圧タービン段のタービンブレードとの関連付けによって、エンジンに導入されたボアスコープの対物レンズの正確な位置が分かること、又は特に(部分的に)自動化された検査の場合に、予め決められた位置に正確に適合されることが必須であるということを、本発明は認識している。この方法のみで、本発明に係る方法として提供されている、回り止め状態で第1高圧タービン段に接続されているジェットエンジンの他の要素の識別特徴を介して、第1タービンブレードを明確に識別することができ、そしてこのことに基づき、シリアル番号と、第1及び追加のタービンブレードとを関連付けることが可能である。
【0016】
第1高圧タービン段のタービンブレードを検査するために、ボアスコープの対物レンズは、燃焼室を通り、燃焼室と第1高圧タービン段との間に配置されている案内翼の間に導かれなくてはならず、又はボアスコープの対物レンズの映像領域の少なくとも一部が、案内翼の間を通りタービンブレードを検出するように、少なくとも方向付けられなくてはならない。対応する運用は、例えばファイバースコープ、フレキソスコープ(flexoscope)などの柔軟なボアスコープを用いることでのみ可能である。あるいは、柔軟なボアスコープは、ビデオスコープ(videoscope)として組み立てられていてもよく、ビデオスコープでは、ボアスコープに沿った光回線の代わりに、センサー(例えば対応する光学ユニットを有するCCD又はCMOSチップであって、例えばチップに粘着結合されているレンズの形式である)が、ボアスコープの一端でボアスコープの対物レンズとして配置され、データラインを介して記録された映像をディスプレイに送る。
【0017】
ジェットエンジンに導入した後、確定できる又は予め確定できる位置にボアスコープが配置されることを保証するために、本発明に係る装置は、柔軟なボアスコープを導入するための屈曲部の無いガイドパイプをまず有する。本明細書においては、「屈曲部の無い」とは、ガイドパイプは屈曲部を有さず、その代わりに柔軟なボアスコープを押し通すことが容易に可能である湾曲部のみを有すると意味することを意図する。
【0018】
本発明に係る装置におけるボアスコープの対物レンズの最終的な位置は、ジェットエンジンに差し込まれたガイドパイプの端部によって実質的に決定され、ボアスコープの対物レンズの位置と方向付けは、ガイドパイプの位置と方向付けに直接的に依存する。この場合、ガイドパイプは、タービンブレードの最終検査のために導入されているボアスコープが、ボアスコープの柔軟さによるボアスコープの対物レンズの位置と方向付けにおける予測できないずれは想定され得ない長さの最大値までしか、ガイドパイプから突き出ないように、構成されているのが望ましい。言い換えると、柔軟なボアスコープは、ガイドパイプから突き出ている柔軟なボアスコープの一部が、意図しない曲げ又は同様のものを全く受けないような長さにわたってガイドパイプ内を導かれるべきである。ボアスコープがガイドパイプから突き出ないことも可能であり、従ってボアスコープの対物レンズが、ガイドパイプの正に端部に配置されることが可能である。
【0019】
ガイドパイプの位置と方向付けを、タービンブレード又は高圧タービンの案内翼に対して明確に決める又は再現可能に調節することを可能にするため、ガイドパイプが、固定用装置内のガイドを通って導かれるように剛の態様に構成されていることが、本発明に係る条件である。ガイドに対してガイドパイプの位置を決定することによって、ジェットエンジンに導入されることが意図されているガイドパイプの端部の相対的な位置と方向付けが、決定され得る。この相対的な位置の調節の結果、当該ガイドパイプの端部も、明確で再現可能な方法でガイドに対して位置決め及び方向付けがされ得る。
【0020】
ガイドが、ガイドパイプの明確で再現可能な位置決めと方向付けを可能にするために、ガイドパイプ及び/又はガイドはある方法を有し、その方法を介して、互いに対する相対的な動きをガイドにおけるガイドパイプの所定の位置で決定し得るための手段、及び/又はガイドにおけるガイドパイプの自由度数を制限するための手段を有するのが好ましい。両方の場合で、最大限可能な限り動くことなく、導くことが実施される。
【0021】
例えば、固定要素及び/又は固定用ねじが設けられてよく、固定要素及び/又は固定用ねじによってガイドパイプは、固定要素及び/又は固定用ねじによってガイドに対して予め決められた位置に選択的に調節され得る。この場合に、固定要素及び/又は固定用ねじは、ガイド又はガイドパイプに配置されてよく、その場合、例えば、それぞれの他の要素が、固定要素及び/又は固定用ねじの係合のための対応する刻み目又は凹みを有する。
【0022】
ガイドにおけるガイドパイプの自由度数を制限するために、例えば、ガイドに対するガイドパイプの相対的な動作の自由度を、溝及び/又はレールによって予め決められている方向に制限する溝、レール、又はリニアガイドが設けられてよい。従って、ガイドにおけるガイドパイプの可動性は、例えば、回転の自由度が存在しない個々の直線動作に制限され得る。
【0023】
ガイドに対するガイドパイプの可動性を1つの自由度に制限するように、ガイドが組み立てられることが好ましい。この場合では、自由度は、回転動作、直線動作、及び/又はそれらの部分的な任意の組み合わせを示してよい。動作が制限された単一の自由度は、直線的な移動の自由度であることが好ましい。装置が組み立てられた状態で、単一の自由度に沿って動くことで、ガイドパイプの自由端が、ジェットエンジンの回転部の軸に対して半径方向に、好ましくは直線状に動かされるように、単一の自由度が構成されることが好ましい。対応する移動の可能性によって、例えば、検査されることが意図されているタービンブレードが、仮にボアスコープによって完全に検出されたというわけではないなら、タービンブレードの全長にわたってタービンブレードを検査することが可能となるように、タービンブレードの長さに沿って移動されることが可能である。
【0024】
導入後のボアスコープが、タービンブレードに対するボアスコープ検査の実際に望まれている方向付けと位置を有するためには、ガイドパイプの位置と方向付けによって確立され得る、ガイドに対するボアスコープの対物レンズの相対的な位置を知る又は調節することが必要であるだけでなく、ジェットエンジン自体に対するガイドの位置と方向付けも必要である。この場合に、ガイドの位置は、ジェットエンジンにおけるガイドパイプのための開口部によって、実質的に予め決められている。
【0025】
さらなる調節の可能性がなく、ジェットエンジンの外側で開口部領域にガイドを直接固定し、ガイドパイプの位置と方向付けの明確な決定又は調節をすることは、しばしば確実に保障され得ないことを本発明は認識した。例えば、特に開口部領域におけるジェットエンジンの個々の要素の意図された公差や変形の結果、方向付けのずれが生じるかもしれず、そのずれは、ジェットエンジンに導入されたガイドパイプの端部の位置と方向付けのずれに反映される。従って例えば、ジェットエンジンの外側で開口部を囲むフランジが、ジェットエンジンの軸に平行に延在する平面から外れた方向付けを有し、それにより、平行面に対して構成されフランジに直接接続されているガイドによって、ガイドパイプの自由端が、期待又は望まれている位置及び方向付けに一致しない。
【0026】
このことを補うために、本発明に係る装置は、方向付けユニットを有する固定用装置を備え、方向付けユニットによってガイドの方向付けは調節され得る。ガイドの方向付けが、ガイドが固定されているジェットエンジンの外側の領域によって予め決められるのではなく、代わりに方向付けユニットによって適合され得るので、固定用装置の方向付けユニットによって、方向付けの誤りは避けられ得る。
【0027】
前記固定用装置は、固定手段として、ジェットエンジンの外側に着脱自在に固定するために、ガイドパイプ用及び/又はねじ用の開口部のねじ切りに係合するためのねじ部を有してよい。特にねじ部は、円錐形頭部を有する中空ねじの一部であってよい。ガイドパイプは中空ねじ内を導かれてよく、中空ねじは開口部の内側のねじ切りで係合されてよい。円錐形頭部の結果、固定用装置の対応する相手部品(counter-piece)を適切に形成することで、ガイドの望ましい方向付けのための適切な位置で開口部にその相手部品を固定すること、及びこの位置でガイドを固定することが可能である。
【0028】
前記固定用装置は、固定手段又はジェットエンジンに対して固定式に取り付けられている固定用装置の一部(例えば固定手段)と、ガイドを囲む固定用装置の一部との間に、ガイドの方向付けを可能にする移動可能な及び/又は変形可能な部分を有する。方向付け装置は、例えば、前記装置の2つの固定部の位置がこの方向付け装置を介して互いに対して変更及び/又は固定されることが可能であることによって、この部分に直接的に作用してよい。
【0029】
ジェットエンジンの定義された要素に当接するように構成され、ガイドを囲む固定用装置の一部に接続されている1つ以上のストップ面(stop face)を、方向付けユニットは好ましくは備える。この場合に、好ましくは、ストップ面の少なくとも一部が調節されることが可能で、例えば、調節ねじ又はねじスピンドル(threaded spindle)を用いて移動させられ得る。調節ねじの自由端が、調節可能なストップ面を直接形成することも可能である。ストップ面によって、ジェットエンジンの外側に関するガイドの方向付けは固定され、ストップ面の調節機能によって、ガイドの方向付けが調節可能になる。
【0030】
本発明に係る、ジェットエンジンの第1タービン段の一つのタービンブレードのボアスコープ検査のための装置では、提供される本発明に係るガイドの方向付け機能、及びガイドに対するガイドパイプの再現可能な位置決めの結果として、ガイドパイプの出口の開口の位置と方向付けを、確実に仕様に合わせることができ、その結果として、ガイドパイプを通り導かれる柔軟なボアスコープの対物レンズの位置も確実に仕様に合わせることができる。このことのために必要とされるガイドの正しい方向付けは、エンジン要素に対してガイドを方向付けることによって達成される。これらエンジン要素の位置は、例えばこれらの要素に当接しているストップ面によって、信頼できる基準として用いられる。あるいは又は加えて、ガイドの正しい方向付けが、測定によって、例えばレーザーによって、又はガイドに配置された補助の方向付け部品によって、見いだされることが可能である。
【0031】
当該装置がガイドメカニズムを備えることが好ましく、ガイドメカニズムによってガイドパイプは、ガイドに沿って移動され得る。この場合に、ジェットエンジンに導入されるガイドパイプの端部を、ジェットエンジンの回転軸に対して半径方向に、好ましくは直線状に動かすように、ガイドメカニズムが好ましくは構成されている。例えば動作は、ガイドパイプの移動性を対応する個々の自由度に制限することで達成される。この場合、ガイドがそれぞれの条件に従って方向付けられる場合、ガイドパイプの望ましい動作性が適当に生じることになることは自明である。ガイドパイプを通り導かれるボアスコープの映像範囲が、タービンブレードを完全ではなく部分的に検出するとき、ガイドパイプの対応する移動の可能性は有利である。説明された動作によって、検査されることが意図されているタービンブレードの全長に沿って「移動」し、従って、そのタービンブレードを完全に検査することが可能である。
【0032】
ガイドメカニズムは、動作を導入するためのクランクドライブ(crank drive)を、ガイドに沿って有してよい。この場合、装置の移動範囲を、検査されることが意図されているタービンブレードの長さに適合するために、クランクは長手方向に調節可能であってよい。
【0033】
あるいはガイドメカニズムが、はすば歯車を備えることが可能である。はすば歯車のねじスピンドルを回転することで、ガイドパイプがガイドに対して移動され得る。リニアアクチュエーターモーターの使用も可能である。
【0034】
ガイドメカニズムは、例えば手動のクランクによって、手動で駆動されてよい。しかしガイドメカニズムが、ガイドに沿ってガイドパイプを動かすための制御可能な駆動部、好ましくはステップモーターを備えることが好ましい。クランクドライブが設けられているなら、原動力がクランクドライブに作用することができ、はすば歯車の場合、原動力はねじスピンドルに作用する。対応する駆動部によって、タービンブレードの自動化された映像検出が、タービンブレードの全長にわたって可能である。この目的のために、ボアスコープの対物レンズは、タービンブレードを過ぎたところまでボアスコープを長手方向に導くガイドパイプに作用するガイドメカニズムを介して導かれ、この場合に検出された映像情報は、複数の映像の張り合わせのよって作成されるパノラマ写真と同等の方法で、タービンブレード全体の連続的な映像を形成するように結合される。
【0035】
装置が異なるエンジンモデルのための様々な方法で用いられ得るように、好ましくは、ガイドパイプは置換可能に構成されている。ガイドパイプの置換によって、装置は異なるエンジン形状に適合され得る。
【0036】
より容易な扱いのために、好ましくは、装置は半組立品に分解され得る。それによって、この装置は、単一ステップで、かつ、全体として、ジェットエンジンに固定される必要はない。単一ステップで、かつ、全体として固定することは、ジェットエンジンの開口へガイドパイプを導入することが必要であることによって、難しいかもしれないが、代わりに、装置の半組立品を形成するように結合された要素を順に組み立てることは可能である。例えばガイドパイプは、半組立品を形成してよく、一方でガイドは他の半組立品に関連する。装置の分解の能力の結果、保管及び輸送のための、装置の容積も改善され得る。
【0037】
装置が据え付けられた状態でジェットエンジンに導入されているガイドパイプの端部が、第1タービン段のタービンブレードの前側に位置している2つの案内翼の間に配置されるように、ガイドパイプは構成されてよい。しかしガイドパイプと関連する端部が、案内翼の先端から間隔を空けられていることが好ましい。言い換えると、ガイドパイプは案内翼の間に導入されるべきではない。このことにより、装置の誤った使用によって、案内翼に損傷を与える危険性が低減され得るという利点が生じる。この場合、撓まないガイドパイプを通り導入された柔軟なボアスコープが、2つの案内翼の間の領域に突き出ることは除外されない。
【0038】
タービンブレードを検出するためのボアスコープが、最大150mmまで、好ましくは最大50mmまで、ガイドパイプから突き出るようにガイドパイプが構成されているときが好ましい。従ってこの場合に、ガイドパイプは適切に、ボアスコープの対物レンズのために提供されている位置に接近する。ボアスコープがガイドパイプから特定の程度のみ突き出ていることによって、ボアスコープの柔軟性による重力に関連する位置のずれが最小化され得る。仮にボアスコープの対物レンズを方向付けるために用いられているボアスコープが、ガイドパイプを通り導かれた後に角度を付けられるなら(例えば、ボアスコープの対物レンズ、及び/又はボアスコープの対物レンズとして設けられているCCD又はCMOSチップが、ボアスコープの側面に配置されているので)、定められた最大距離は、ガイドパイプの端部とボアスコープの曲げの位置との間の距離に関連する。ボアスコープの対物レンズが、予め決められたガイドパイプからの最大距離のみ突き出ていることを保証するため、装置は、ガイドパイプへの導入の間に望ましい位置にボアスコープが達するときに、ボアスコープが接触することになる止め部を有してよい。本発明に係る装置で用いられるときに、ガイドパイプの自由端からボアスコープが突き出している長さが、ジェットエンジンの外側から読み取られ得る適切な印を、ボアスコープは設けられてもよい。ガイドパイプに一体的に形成されている、又は固定的に接続されているボアスコープを、装置が備えることも可能である。この場合に、ガイドパイプがジェットエンジンに導入された後に、ボアスコープはガイドパイプに押し通されないが、代わりにガイドパイプの一体的な要素として直接ジェットエンジンに導入される。
【0039】
本発明に係る装置によって、高圧タービンの第1段のタービンブレードに対するボアスコープの位置と方向付けが明確に確立又は調節され得るので、ジェットエンジンの高圧タービンの第1段のタービンブレードも、ジェットエンジンが組み立てられている、及び/又は航空機に据え付けられている状態で、明確に識別され得る。なぜなら、本発明に係る装置の結果、ボアスコープが、第1高圧タービン段のタービンブレードに対して既知の位置と方向付けで方向付けられているなら、タービン段が回り止め状態で固定されている軸の角度位置により、個々のタービンブレードの明確な関連付けが行われ得る。従って、これが本発明に係る方法の内容である。
【0040】
従って、本発明に係る装置の導入と固定の後、柔軟なボアスコープが、第1高圧タービン段のタービンブレードが原理的にボアスコープを通して見られ得るように、ガイドパイプに押し通される。実質的に、回り止め状態で接続されている他の要素が監視されることによって、高圧タービン段は、追加要素の明確な識別特徴が予め決められた位置に来るまで既知の角度位置に回転させられる。例えば他の要素は、第1高圧タービン段と同じシャフトにあるコンプレッサー段であってよい。ジェットエンジンのコンプレッサー段は、タービン段ほど(特に温度に関して)高負荷が掛かっていないので、コンプレッサー段は、例えばジェットエンジンの第2側面開口を通り導入された第2ボアスコープを用いることで航空機のエンジンの完全に組み立てられた状態でも見られ得る識別特徴を有することが多い。高圧タービン段が、回り止め状態で接続されている他の要素によって明確に決められ得る角度位置に移動されているなら、高圧タービン段のタービンブレードが装置のガイドパイプを通り導かれているボアスコープの視界領域に位置していることは、ボアスコープの位置と方向付けにより確立され、それによって、例えば、セットカードを用いるシリアル番号の関連付けも可能である。追加のタービンブレードは、柔軟なタービンブレードによって監視されながら高圧タービン段が回転させられること、及びボアスコープのすぐ前を導かれるタービンブレードを数えることで、識別され得る。次いで、追加のタービンブレードのシリアル番号は、高圧タービン段のセットカードから直接得られる。
【0041】
航空機のエンジンにおいて、「セットカード」は慣習的なものである。セットカードには、ジェットエンジンの段の全てのブレードが、それらのシリアル番号に関連して一覧表にされている。さらに周方向の個々のブレードの順序が、セットカードから確立され得る。言い換えると、ジェットエンジンの段のそれぞれのブレードのためのセットカードを用いることで、どの2つのブレードが、それぞれの場合に隣接して配置されているかが確立され得る。
【0042】
この場合、先行技術に係るセットカードは、ジェットエンジンの段のタービン又はコンプレッサーの個々のブレードの相対位置のみを原理的に示すので、先行技術に係るセットカードを用いる第1タービン段の説明された体系は、可能でない又はわずかに可能であることが多い。しかしその全体が参照されているDE 10 2016 216 895 A1において、それ自体が既知であるセットカードが、第1タービンブレードの望ましい識別を可能にする情報によってどのようにして展開され得るかについて、方法が説明されている。それによって、引用されたDE 10 2016 216 895 A1の開示を制限することなく、又は参照を制限することなく、この文献には、要約すると、ジェットエンジンの組み立て中に、高圧タービンの予め決められた角度位置で、据え付けられた状態で以前に定義されたボアスコープの視野に位置するタービンブレードをセットカードに印付けることが提案されている。
【0043】
本発明に係る、第1高圧タービン段のタービンブレードを検査するのに有効である柔軟なボアスコープの正確な位置と方向付けの決定又は調節の結果、対応して印を付けられたセットカードを用いることで、第1タービンブレードは明確に決定される。本発明に係る装置を有する柔軟なボアスコープが、ボアスコープの視野がセットカードの印の基準を形成した1つに一致するように位置決め及び方向付けされるか、又は確立され得るボアスコープの位置と方向付けを用いることで、視野に位置するタービンブレードが、セットカードに印を付けられたタービンブレードに基づく幾何学上の計算によって確立されるかのどちらかである。
【0044】
追加要素の識別特徴が第2ボアスコープによって目標に定められたなら、第2ボアスコープが撓まないようにされ、かつ/又はジェットエンジンに固定されることが好ましい。撓まない組み立て及び/又はジェットエンジンへの固定によって、高圧タービンブレードが、十分に正確な方法で、第1タービンブレードを特定するのに必要な角度位置まで回転されることが保証され得る。
【0045】
好ましくは、追加要素の識別特徴は、コンプレッサー段のブレードロックでよい。仮に追加要素として設けられているコンプレッサー段が、複数のブレードロックを有するなら、好ましくは、識別特徴は、予め決められた回転方向と逆の周方向における、ブレードロックと隣のブレードロックとの間の間隔が最小であるブレードロックである。該当するブレードロックは、観察しながらコンプレッサー段を回転することによって、容易に見分けられ得る。このことは適宜、DE 10 2016 216 895 A1により詳細に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0046】
ここで本発明は、有利な実施形態と添付図とへの言及の例によって説明される。
図1】本発明に係る装置の本発明に係る方法の実施の概略図。
図2】本発明に係る装置の実施形態の詳細図。
図3a図2の装置の使用の概略図。
図3b図2の装置の使用の概略図。
図3c図2の装置の使用の概略図。
図4a図2及び3に係る装置内に導かれたボアスコープの自由端の概略図。
図4b図2及び3に係る装置内に導かれたボアスコープの自由端の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0047】
図1は、ジェットエンジン80の第1高圧タービン段81の第1タービンブレード82の明確な識別のための、本発明に係る方法の実施の概略図である。
【0048】
図1は、ほぼ完全に組み立てられた状態のジェットエンジン80を示す。コアエンジンへアクセスするために、タービンカバーのみが部分的に取り除かれている。
【0049】
第1ステップでは、本発明に係る装置1が導入され、固定されていた。装置1の正確な構成及び最終的な導入は、図2及び3への言及を用いて後に説明される。方法の説明としては、装置1のガイドパイプ2が、側面のボアスコープ用の開口85を通り、燃焼室84を通り、高圧タービンの案内翼83の間に来るように導入され、そしてジェットエンジン80すなわちコアエンジンの外側86でガイド10を介して固定されるということでまずは十分である。後により詳細に説明されるように、本発明に係る装置1の結果、ジェットエンジン80に導入されているガイドパイプ2の端部3は、予め決められた又は少なくとも明確に確定できる、タービンブレード82に対する位置及び方向付けで設置されているということが保証されている。特にガイドパイプ2は、端部3が案内翼83の間を通って向けられるように、方向付けられている。従って、ガイドパイプ2に押し通された柔軟なボアスコープ70の対物レンズ71も、ボアスコープ70の視野に位置するタービンブレード82のちょうど前に明確に定められた位置及び方向付けで方向付けられている。
【0050】
ジェットエンジン80の追加のボアスコープ用の開口87によって、第2硬視鏡(second rigid borescope)72が導入及び固定される。このボアスコープ72を介して、第1高圧コンプレッサー段88のブレードが観察され得る。第1高圧コンプレッサー段88のブレードロックもこの第2ボアスコープ72を通して見られ得る。
【0051】
本発明によると、このコンプレッサー段88のブレードロックが予め決められた位置にあることを、第2ボアスコープ72を介して確定するまで、高圧コンプレッサー段88が回転させられるという条件がある。第1高圧タービン段81が回り止め状態で高圧コンプレッサー段88に接続されているので、高圧タービン段81のセットカードと、第2ボアスコープ72によって確認された角度位置とを用いることで、ガイドパイプ2すなわちガイドパイプ2に導入されているボアスコープ70の既知の位置と方向付けの結果、ボアスコープ70を通して見られ得るタービンブレードが識別され得る。この目的を達成するために、当該セットカードが、タービンブレードを識別するための方法が第1高圧タービン段の次の高圧タービン段への参照によって説明されているDE 10 2016 216 895 A1に係る、少なくとも1つのタービンブレードの適切な印を有することのみが必要である。
【0052】
しかし本発明に係る装置1は、ボアスコープ70の対物レンズ71の正確な位置と方向付けを保証するので、ジェットエンジン80の第1高圧タービン段81の第1タービンブレード82の明確な識別のみが可能である。ここで本発明に係る適切な装置1の実施形態は、図2及び3への言及によって説明される。
【0053】
図2では、ジェットエンジン80の第1高圧タービン段81のタービンブレード82のボアスコープ検査のための本発明に係る装置1の第1実施形態が、図示されている。装置1はガイドパイプ2を備え、ガイドパイプ2は側面の開口85を通りジェットエンジン80に導入され得る(図1参照)。ガイドパイプ2の一端3が、ジェットエンジン80への導入のために設けられている。他端4では、ボアスコープ70の映像範囲がガイドパイプ2によって遮られないように、ボアスコープの対物レンズ71がガイドパイプ2の他端3からわずかに突き出るまで、柔軟なボアスコープ70が導入され得る。ボアスコープ70が、ガイドパイプ2からの予め決められた長さのみ突き出ることを保証するために、ボアスコープ70は、ガイドパイプ2の他端4に調整されている印73を有する。ボアスコープ70の印73がガイドパイプ2の他端4に位置する場合、ボアスコープ70は、一端3の対物レンズ71と共に、ガイドパイプ2から予め決められた長さまで突き出る。ボアスコープ2は固定要素89によってこの位置に固定されてよい。
【0054】
ガイドパイプ2は、ガイド10で直線状に導かれている。この目的のために、ガイドパイプ2は、リニアガイド11上を遊びが無い状態で導かれている移動部5に固定的に接続されており、その結果、ガイドパイプ2は矢印90で示されている方向にのみ動かされ得る。それ故、ガイドパイプ2は、ガイド10で導かれるなら、単に並進の自由度のみを有し、それによってガイドパイプ2は、ガイド10に対して明確で再現性のあるように、つまりガイド10に沿った対応する移動によって、配置され得る。
【0055】
装置1は、相手部品23と共に固定用装置20を形成する、円錐形頭部22を有する中空ねじ21をさらに備え、固定用装置20を介して装置1がジェットエンジン80の外側に固定され得る。さらに後に図3a~cへの言及によって説明されるように、移動可能な部分が、固定用装置20の要素としての中空ねじ21と、固定用装置20の追加の要素としての相手部品23との間で設けられているので、中空ねじ21の円錐状に形成された頭部22によって、ガイド10の望ましい方向付けで装置1を固定することが可能である。
【0056】
さらに装置1に対して、他の方向付けユニット30が、固定用装置20の一部として設けられている。方向付けユニット30は、固定用装置20の相手部品23に固定的に接続されており、調節ねじ33の自由端32の形で複数のストップ面31を有する。さらに調節ねじ33は、リニアガイド34に沿って移動され得る移動台35にさらに配置され、移動台35はリニアガイド34に沿って任意の位置で固定され得る。
【0057】
装置1は、ガイドメカニズム40も備え、ガイドメカニズム40によってガイドパイプ2をガイド10に沿って移動することができ、それによって最終的に、ガイドパイプ2の一端3と、その結果、ガイドパイプ2へ導入されているボアスコープ70の対物レンズ71も、方向90と平行に直線状に移動され得る。
【0058】
ガイドメカニズム40はクランクドライブ41を備え、クランクドライブ41の接続ロッド(connection rod)42は、接続ロッド42の一端で移動台5に対して回転自在に固定されている。接続ロッド42の他端では、クランク軸から離れて配置されているクランクピン(crankpin)によって、接続ロッド42がクランク43へ回転可能に接続されており、クランク43はクランク軸を軸として回転可能に支持されている。調節ねじ44を介して、クランクピンとクランク軸の間の間隔が変えられ、それによって移動台5によって行われる移動が、クランクピンとクランク軸の間の間隔の距離の点から調節され得る。クランクドライブ41を作動させるために、ハンドクランク45が設けられる。しかし、ハンドクランク45の代わりに制御可能な駆動部を設けることも可能である。
【0059】
あるいは、移動台5のためのスピンドルドライブとして、ガイドメカニズムを構成することも可能である。
【0060】
図3a~cの説明から以下に見られ得るように、図1に係る装置1が、個々の半組立品に分解されることが可能で、それにより、装置1の使用が容易になる。第1半組立品は、方向付けユニット30と共に固定用装置20を備え、第2半組立品は移動台5を含むガイドパイプ2を備える。第3半組立品はガイド10を備え、一方でガイドメカニズム40は第4半組立品を形成する。
【0061】
図3a~cは、ジェットエンジン80における、図2の装置1の典型的な組立品を模式的に図示しており、その結果、本発明に係る方法は図1のように行われ得る。
【0062】
図3aから始めると、第1ステップにおいて、固定用装置20を備える第1半組立品は、ガイドパイプ2を導入するために、本実施形態ではスパークプラグ保持部品のために設けられているジェットエンジン80の側面の開口85にまず配置されるが、まだ固定的には接続されていない。続いてガイドパイプ2が、第2半組立品として、固定用装置20の中空ねじ21を通り、次いでジェットエンジン80の開口85を通って導かれ、その結果、ガイドパイプ2の一端3は、第1高圧タービン段71のタービンブレード82の前に原理的には既に配置されており、これらのブレードが検査される予定である。
【0063】
その後、固定用装置20は方向付けられ、ガイド10は固定用装置に固定的に接続され、その結果、ガイド10の方向付けは、固定用装置20の方向付けによって明確に定義される。図3bでは、より詳細に以下で説明されているステップの結果が図示されている。
【0064】
初めに中空ねじ21が、ジェットエンジン80の開口85のねじ切りにねじ留められているが、きつくは閉められておらず、その結果、ジェットエンジン80及び特に開口85に対する固定用装置20の位置が、実質的には固定されているが、固定用装置20の位置は間違いなくまだ変わり得る。
【0065】
続いて方向付けユニット30の移動台35が、予め決められた位置に移動され、その場所で固定される。この移動台35の位置では、ストップ面31によってねじ33の自由端32がジェットエンジン80の要素、この例ではハウジングのフランジに隣接する。この当接点は固定用装置20の正しい方向付けを保証し、続けて固定用装置20は、中空ねじ21をジェットエンジン80にきつく締めることによって、最終的に固定される。
【0066】
その後、ガイド10は固定用装置20に固定され、クリーニングランス(cleaning lance)2の移動台5が、リニアガイド11に導入される。固定用装置20が、方向付けユニット30を介して方向付けられており、ガイドユニット10が1つの予め決められた位置のみで固定用装置20に接続され得るので、固定用装置20に固定的に接続されたガイドユニット10も方向付けられていると考えられる。
【0067】
最後に装置1は、図3cに示されているように、(部分的にのみ図示された)ガイドメカニズム40をガイド10に備え付けることによって、さらに仕上げられる。ガイドメカニズム40によって、移動台5はガイドレール11に沿って直線状に動かされ、それによりガイドパイプ2の端部3も対応する動きをする。ガイド10又は固定用装置20の対応する方向付けによるガイドパイプ2の適切な方向付け、及びクランクドライブ41の調節ねじ44を介した移動距離の適切な調整の結果、タービンブレード82は、ガイドパイプ2内にボアスコープ70を導くことによって、タービンブレード82の全長にわたって巡回及び検査され得る。
【0068】
ガイドパイプ2内に導かれる予定のボアスコープ70は、図2及び3で示されている装置の直接的な要素ではない。その代わりに、装置1は、異なるボアスコープ70によって自由に用いられ得る。図4a,bで示されているように、当該装置は、柔軟なボアスコープ70の異なる構造型であっても用いられ得る。
【0069】
図4aで示されているように、ボアスコープ70は、同軸上に配置されているボアスコープの対物レンズ71を有する。それ自体が柔軟であるボアスコープ70が、ガイドパイプ2から外へある程度までしか突き出ていないので、ボアスコープ70の突き出ている部分が、ガイドパイプ2によって予め決められた方向付けから、重力によってそれることもない。
【0070】
図4bでは、ボアスコープ70の別の実施形態が示されている。このボアスコープ70では、粘着接合しているレンズを有するCCDチップ又はCMOSチップが、ボアスコープの対物レンズ71として設けられている。さらに、ボアスコープの対物レンズ71の画像の範囲を照らすための他のLED72が、設けられている。対物レンズ71とLED72との両方が、ボアスコープ70の側面に配置されているので、ボアスコープの対物レンズ71を第1高圧タービン段82のタービンブレード82に向けて方向付けることができるように、ボアスコープ70の先端は曲げられ得る。
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図4a
図4b