(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】改善された口側端くぼみを有するエアロゾル発生物品
(51)【国際特許分類】
A24D 3/04 20060101AFI20221207BHJP
【FI】
A24D3/04
(21)【出願番号】P 2020522810
(86)(22)【出願日】2018-11-28
(86)【国際出願番号】 EP2018082885
(87)【国際公開番号】W WO2019106038
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2021-11-19
(32)【優先日】2017-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100167911
【氏名又は名称】豊島 匠二
(72)【発明者】
【氏名】ナッピ レオナルド
【審査官】河内 誠
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第4022222(US,A)
【文献】特表2010-533482(JP,A)
【文献】特開昭58-155073(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24D 3/04、3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル発生物品であって、
エアロゾル発生基体と、前記エアロゾル発生基体の下流に配置されたマウスピースとを備え、前記マウスピースが、
その下流端に、口側端くぼみを画定する中空管状セグメントを備え、前記中空管状セグメントが、
捲縮した繊維状材料の中空管と、
前記中空管の内表面に沿って延び、かつ前記中空管の内表面に貼り付けられた複数の捲縮していない繊維とを備える、エアロゾル発生物品。
【請求項2】
前記捲縮していない繊維のそれぞれが、捲縮した繊維材料の前記中空管を形成する捲縮した繊維の色とは異なる色を有する、請求項1に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項3】
前記捲縮していない繊維がフィラメント当たり少なくとも6のデニールを有する、請求項1または請求項2に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項4】
前記捲縮していない繊維が、約6,000~約20,000の総デニールを有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項5】
前記捲縮していない繊維が、捲縮した繊維状材料の前記中空管の前記内表面を覆う実質的に連続的な層を形成する、請求項1~4のいずれか一項に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項6】
前記実質的に連続的な層が、捲縮した繊維状材料の前記中空管の前記内表面全体を覆う、請求項5に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項7】
前記実質的に連続的な層が約300ミクロン~約500ミクロンの厚さを有する、請求項5または請求項6に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項8】
前記捲縮していない繊維がセルロースの酢酸エステルを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項9】
前記複数の捲縮していない繊維と前記中空管の前記内表面との間に配置された結合剤をさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項10】
前記結合剤がグリセロールのエステルを含む、請求項9に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項11】
約600~約800の捲縮していない繊維が前記中空管の前記内表面に貼り付けられている、請求項1~10のいずれか一項に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項12】
前記複数の捲縮していない繊維のそれぞれが、前記エアロゾル発生物品の実質的に長軸方向に延びる、請求項1~11のいずれか一項に記載のエアロゾル発生物品。
【請求項13】
エアロゾル発生物品のマウスピースのための中空管状セグメントであって、前記セグメントが、
捲縮した繊維状材料の中空管と、前記中空管の内表面に沿って延び、かつ前記中空管の内表面に貼り付けられた複数の捲縮していない繊維とを備える、中空管状セグメント。
【請求項14】
エアロゾル発生物品のマウスピースのための中空管状セグメントを形成する方法であって、前記方法が、
捲縮した繊維の第一の連続的な帯を運ぶ工程と、
捲縮していない繊維の第二の連続的な帯を運ぶ工程と、
前記第一の連続的な帯の一部分を、外表面および内表面を有する実質的に環状の形状に成形する工程と、
前記第二の連続的な帯を運んで、前記第一の連続的な帯の前記実質的に環状の形状の部分の前記内表面と接触させる工程と、
前記接触させた部分を一緒に貼り付けて、前記連続的な帯から前記貼り付けられた部分のセグメントを切断して、エアロゾル発生物品のマウスピースのための中空管状セグメントを形成する工程とを含む、方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、
前記接触させた部分を一緒に貼り付ける前に、少なくとも一部の結合剤が前記環状の形状の部分の前記内表面上に存在するように、結合剤を前記環状の形状の部分上に吹き付ける工程をさらに含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口側端くぼみを有するエアロゾル発生物品に関する。本発明は、口側端くぼみを有するフィルター紙巻たばこに特に適用可能である。
【背景技術】
【0002】
フィルター紙巻たばこはエアロゾル発生物品の一例である。フィルター紙巻たばこは典型的に、紙ラッパーで包囲されたたばこカットフィラーのロッドと、包まれたたばこロッドと端と端を接した関係で整列され、チッピングペーパーによってたばこロッドに取り付けられた円筒状フィルターとを備える。従来のフィルター紙巻たばこにおいて、フィルターは、多孔性のプラグラップ内に包まれた酢酸セルローストウのプラグから成る場合がある。主流煙の粒子状構成成分およびガス状構成成分を除去するために濾過材料の二つ以上のセグメントを備える複数構成要素フィルターを有するフィルター紙巻たばこも周知である。口側端にくぼみを有するエアロゾル発生物品も提案されてきた。
【0003】
たばこなどのエアロゾル形成基体が燃焼するのではなく加熱される多くのエアロゾル発生物品も、当業界で提案されてきた。加熱式エアロゾル発生物品では、エアロゾル形成基体を加熱することによってエアロゾルが発生される。周知の加熱式エアロゾル発生物品には、例えばエアロゾルが電気的加熱によるか、または可燃性燃料要素もしくは熱源からエアロゾル形成基体への熱の伝達によって発生されるエアロゾル発生物品が含まれる。使用中、揮発性化合物は、熱源からの熱伝達によってエアロゾル形成基体から放出され、エアロゾル発生物品を通して引き出された空気中に同伴される。放出された化合物は冷めるにつれて凝結してエアロゾルを形成し、これが消費者によって吸い込まれる。また、ニコチン含有エアロゾルが、燃焼を用いずに、また一部の場合には加熱を用いずに、例えば化学反応によって、たばこ材料、たばこ抽出物、またはその他のニコチン供与源から発生されるエアロゾル発生物品も周知である。
【0004】
上述の通り、一部の場合において、エアロゾル発生物品はその口側端にくぼみを有しうる。こうした口側端くぼみは典型的に、フィルターのプラグラップ、またはチッピングペーパー、またはプラグラップとチッピングペーパーの両方を濾過材料の最も下流のフィルターセグメントを越えて延ばすことによって形成される。口側端くぼみは別の方法として、または追加的に、エアロゾル発生物品の口側端にある中空管状セグメントによって形成されうる。
【0005】
口側端くぼみの内表面に特徴的な色またはしるしなどの特徴的な外観を提供するための幾つかの解決策が提案されてきた。例えば、EP 2 583 570 B1は、フィルターのプラグラップおよびチッピングペーパーを最も下流のフィルターセグメントを越えて延ばすことによって形成された口側端くぼみを有し、プラグラップの内表面上にしるしが印刷されたフィルター紙巻たばこを記載している。しかし、この解決策は必ずしも有効ではない場合がある。例えば、こうした繊維状材料上には簡単に印刷することができないため、この解決策は、口側端くぼみが繊維状材料の中空管などの個別の中空管状セグメントによって形成されている時は、有効ではない場合がある。
【発明の概要】
【0006】
従って、特徴的な色またはしるしなどの特徴的な外観を有する口側端くぼみを有するエアロゾル発生物品を提供することが望ましい。口側端くぼみが繊維状材料の中空管などの個別の中空管状セグメントによって形成されている場合、特徴的な外観を有する口側端くぼみを有するエアロゾル発生物品を提供することがさらに望ましい。
【0007】
本発明の第一の態様によると、エアロゾル発生基体と、エアロゾル発生基体の下流端に配置されたマウスピースとを備えるエアロゾル発生物品が提供されている。マウスピースは、その下流端に、口側端くぼみを画定する中空管状セグメントを備える。中空管状セグメントは、捲縮した繊維状材料の中空管と、中空管の内表面に沿って延び、かつ中空管の内表面に貼り付けられた複数の捲縮していない繊維とを備える。
【0008】
本発明の第二の態様によると、エアロゾル発生物品のマウスピースのための中空管状セグメントが提供されていて、中空管状セグメントは、捲縮した繊維状材料の中空管と、中空管の内表面に沿って延び、かつ中空管の内表面に貼り付けられた複数の捲縮していない繊維とを備える。
【0009】
中空管状セグメントを捲縮した繊維状材料の中空管から形成することによって、および中空管の内表面に沿って延び、かつ中空管の内表面に貼り付けられた複数の捲縮していない繊維によって、中空上セグメントの内面は先行技術の物品のくぼみよりも特徴的な外観を有することができる。特に、内表面は、捲縮した繊維状材料の中空管のみによって画定されているくぼみよりも特徴的な外観を有することができる。これは、複数の捲縮していない繊維が、口側端くぼみに対して光沢のある外観を提供できるためであり、これは従来の圧着繊維によって達成することはできないであろう。特に、本発明者らは、繊維がいったん捲縮されると、繊維が有していた、いかなる光沢のある外観も概して失うことを認識していた。結果として、こうした捲縮した繊維で形成された中空管は、それらの内表面上に、いかなる程度の光沢の外観も有する傾向がない。
【0010】
対照的に、中空管の内表面に沿って延び、かつ中空管の内表面に貼り付けられた複数の捲縮していない繊維で本発明の中空管状セグメントを形成することによって、光沢のある外観を中空管状セグメントの内表面に提供することができる。さらに、中空管状セグメントを捲縮した繊維状材料の中空管から形成することによって、中空管状セグメントは依然として望ましい構造的特性および機能的特性を有することができる。
【0011】
本明細書で使用される「上流」および「下流」という用語は、本発明によるエアロゾル発生物品の特徴の、使用中にマウスピースを通してエアロゾル発生基体から引き出されたエアロゾルの方向に対する相対的な位置を説明するために使用される。例えば、くぼみが口側端セグメントの上流にあるマウスピースにおいて、エアロゾルはまず、くぼみを通して、次に口側端セグメントを通して引き出される。
【0012】
「内表面」という用語は本明細書全体を通して、エアロゾル発生物品の内部の方を向いているエアロゾル発生物品の構成要素の表面を指すために使用される。一方で「外表面」という用語は本明細書全体を通して、物品の外部の方を向いている物品の構成要素の表面を指すために使用される。例えば、マウスピースセグメントを囲むラッパーは、エアロゾル発生物品の外部に向いている外表面と、マウスピースセグメントの方を向いている内表面を備える。
【0013】
捲縮していない繊維のそれぞれは、捲縮した繊維状材料の中空管を形成する捲縮した繊維の色とは異なる基色を有しうる。基色は、捲縮していない繊維に染料を含めることによって提供されてもよく、または捲縮していない繊維の材料に内在していてもよい。例えば、中空管の捲縮した繊維が実質的にまたは完全に白色に見える場合、捲縮していない繊維には、実質的にまたは完全に非白色の基色が提供されうる。これは、口側端くぼみにて捲縮されていない繊維によって提供される特徴的な外観をさらに改善するのに役立ちうる。
【0014】
しるしは、複数の捲縮していない繊維によって形成された中空管状セグメントの内表面上に印刷されうる。別の方法としてまたは追加的に、しるしは、複数の捲縮していない繊維の異なる繊維に異なる基色を提供することによって、中空管状セグメントの内表面上に形成されうる。例えば、複数の捲縮していない繊維のセクションに赤色の基色が提供されうる一方で、複数の捲縮していない繊維の一つ以上の他のセクションには、青または緑などの一つ以上の他の色が提供されてもよい。次に、複数の捲縮していない繊維のそれぞれのセクションを中空管の内表面上に配設してしるしを提供することができる。
【0015】
「しるし」という用語は、個々の印刷された要素、または審美的に心地よい表象を提供する反復的な印刷された要素またはパターンを意味するために使用される。しるしは、テキスト、画像、文字、語句、ロゴ、パターンまたはその組み合わせの形態としうる。例えば、本発明による口側端くぼみの内表面上のしるしは、消費者がエアロゾル発生物品の種類や出所を識別することを可能にする、ブランドまたは製造元のロゴを含みうる。別の方法として、しるしは、ラッパー材料の内表面に、反復的な印刷された要素またはパターンを備えうる。しるしは概して、エアロゾル発生物品の軸と概して直角を成すエアロゾル発生物品の軸と整列してもよく、またはエアロゾル発生物品と平行または直角を成す以外の角度であってもよい。加えて、一緒に販売される幾つかのエアロゾル発生物品上に異なるしるしを提供することができる。例えば、一つのパッケージ内に、エアロゾル発生物品は二つ以上の異なる種類のしるしを含みうる。加えて、しるしは、例えばパッケージを開いた時に見える、パッケージ内の隣接したエアロゾル発生物品上のしるしによってメッセージを提示し、目に見えるしるしが単語を綴るものであるか、またはそうでなければ総合的にメッセージを伝達する方法で提示することができる。
【0016】
捲縮していない繊維は、フィラメント当たり約6以上のデニールを有しうる。捲縮していない繊維は、フィラメント当たり約7以上のデニールを有しうる。捲縮していない繊維は、フィラメント当たり約12以下のデニールを有しうる。一部の実施形態において、捲縮していない繊維は、フィラメント当たり約6~約12のデニールを有する。一部の実施形態において、捲縮していない繊維は、フィラメント当たり約6~約10のデニールを有する。一部の実施形態において、捲縮していない繊維は、フィラメント当たり約7~約9のデニールを有する。一部の実施形態において、捲縮していない繊維は、フィラメント当たり約8のデニールを有する。捲縮していない繊維のフィラメント当たりのこうした比較的高いデニールは、繊維の機械加工性を改善するのに役立ちうる。捲縮していない繊維のフィラメント当たりのこうした比較的高いデニールは、繊維の強度を改善するのに役立ちうる。これは、内表面上に、こうした捲縮していない繊維を有する中空管状セグメントを製造することの容易さおよび信頼性の一つ以上を改善するのに役立ちうる。
【0017】
捲縮していない繊維は、約6,000以上の総デニールを有しうる。捲縮していない繊維は、約10,000以上の総デニールを有しうる。捲縮していない繊維は、約20,000以下の総デニールを有しうる。一部の実施形態において、捲縮していない繊維は、約6,000~約20,000の総デニールを有する。一部の実施形態において、捲縮していない繊維は、約8,000~約15,000の総デニールを有する。一部の実施形態において、捲縮していない繊維は、約10,000~約12,000の総デニールを有する。一部の実施形態において、捲縮していない繊維は、約11,000の総デニールを有する。
【0018】
捲縮していない繊維は、捲縮した繊維状材料の中空管の内表面全体を覆ってもよい。すなわち、捲縮していない繊維は、捲縮した繊維状材料の中空管の内表面を覆う実質的に連続的な層を形成することが好ましい。実質的に連続的な層は、捲縮した繊維状材料の中空管の内表面全体を覆うことが好ましい。これは、エアロゾル発生物品内の中空管状セグメントの向きに関係なく、捲縮していない繊維の少なくとも一部分がエアロゾル発生物品の口側端で常に見えることを確実にするのに役立ちうる。これは製造の観点からも、より容易でありうる。
【0019】
捲縮していない繊維は別の方法として、捲縮した繊維状材料の中空管の内表面の一部分のみを覆ってもよい。こうした実施形態において、捲縮した繊維によって覆われた内表面の部分は、中空管状セグメントの下流端にあることが好ましい。これは、捲縮していない繊維の少なくとも一部分がエアロゾル発生物品の口側端で見えることを確実にするのに役立ちうる。
【0020】
捲縮していない繊維が実質的に連続的な層を形成する場合、実質的に連続的な層は、約300ミクロン~約500ミクロンの厚さを有することが好ましい。実質的に連続的な層は、300ミクロン以上の厚さを有しうる。実質的に連続的な層は、500ミクロン以下の厚さを有しうる。実質的に連続的な層のために、こうした厚さを使用することは、層を通して見える捲縮した繊維の中空管の部分のリスクを低減するのに役立ちうる。
【0021】
捲縮していない繊維は、ポリ乳酸(PLA)またはセルロースの酢酸エステルを含みうる。セルロースの酢酸エステルは、酢酸セルロース、二酢酸セルロースおよび三酢酸セルロースから成る群から選択されうる。セルロースの酢酸エステルは二酢酸セルロースであってもよい。こうした繊維は、捲縮していない状態にある時に、特に光沢のある外観を提供することができる。
【0022】
結合剤は、複数の捲縮していない繊維と中空管の内表面との間に配置されうる。結合剤はグリセロールのエステルとしうる。グリセロールのエステルは、トリアセチン(グリセロールトリアセテートとしても知られる)としうる。グリセロールのエステルは、トリアセチンの代わりに、またはそれに加えてクエン酸トリエチルでもよい。
【0023】
結合剤は、中空管の捲縮した繊維を一緒に結合させるために、および複数の捲縮していない繊維を中空管の内表面に結合させるために適していてもよい。これは、複数の捲縮していない繊維と中空管の間の取り付けの改善に役立ちうる。こうした結合剤の使用は、中空管の捲縮した繊維がポリマーの第一のタイプで形成された繊維を含み、かつ複数の捲縮していない繊維がポリマーの第一のタイプの少なくとも20重量パーセントを含む時に、特に有益である。これは、結合剤が繊維および高分子フィルム内のポリマーの第一のタイプと相互作用して、中空管の内表面にある繊維を高分子フィルムに固定できるためである。これは、結合剤がポリマーの第一のタイプの繊維のための溶媒である時に、特に有利である。捲縮した繊維および捲縮していない繊維は、ポリマーの第一のタイプのみから成りうる。ポリマーの第一のタイプは、セルロースの酢酸エステルであってもよい。ポリマーの第一のタイプは、ポリ乳酸(PLA)であってもよい。
【0024】
セルロースの酢酸エステルの形態のポリマーの第一のタイプと、グリセロールのエステルの形態の結合剤との組み合わせは、特に有利でありうる。これは、従来の接着剤とは異なり、グリセロールのエステルは、中空管の捲縮した繊維および複数の捲縮していない繊維のセルロースの酢酸エステルと相互作用し、複数の捲縮していない繊維を中空管の内表面上の捲縮した繊維に結合またはそうでなければ溶着するためである。例えば、グリセロールのエステルのアセチル基は、双極子相互作用および水素結合を通してセルロースの酢酸エステルと相互作用することができる。これは、複数の捲縮していない繊維と中空管の内表面との間のしっかりとした取り付けを形成し、中空管状セグメントの内表面を望ましい外観にすることができる。さらに、グリセロールのエステルの形態の結合剤は、繊維性材料の中空管を製造する時によく使用されて、管のための可塑剤として働くため、複数の捲縮していない繊維は有利なことに、中空管を製造するプロセス中に、中空管に固定されうる。これは、本発明の中空管状セグメントを既存のプロセスおよび技法を使用する既存の(ほとんどまたは全く修正のない)機械で製造することを可能にしうる。
【0025】
中空管状セグメントは、複数の捲縮していない繊維を中空管の内表面に固定するための接着剤を含みうる。接着剤は、ポリビニルアルコール(PVA)またはホットメルト接着剤であってもよい。接着剤はポリプロピレンを含みうる。接着剤は、エチレン酢酸ビニルまたはエチレンエチルアクリレートを含みうる。接着剤はポリエチレンを含みうる。
【0026】
中空管の内表面に貼り付けられた捲縮していない繊維の数は、約400以上であってもよく、約600以上がより好ましい。中空管の内表面に貼り付けられた捲縮していない繊維の数は、約1000以下であってもよく、約800以下がより好ましい。中空管の内表面に貼り付けられた捲縮していない繊維の数は、約600~約800であってもよい。
複数の捲縮していない繊維のそれぞれは、エアロゾル発生物品の長軸方向に実質的に延びてもよい。これは、口側端くぼみにて特に望ましい外観を提供しうる。これはまた、中空管状セグメントの製造を簡単にするために役立つ場合がある。
【0027】
本発明のエアロゾル発生物品はエアロゾル形成基体を含む。本明細書で使用される「エアロゾル形成基体」という用語は、エアロゾルを形成することができる揮発性化合物を放出する能力を有する基体に関する。こうした揮発性化合物は、エアロゾル形成基体を加熱することによって放出されてもよい。エアロゾル形成基体は、担体または支持体の上に吸着、被覆、含浸またはその他の方法で装填されてもよい。エアロゾル形成基体は好都合なことに、エアロゾル発生物品または喫煙物品の一部であってもよい。
【0028】
本発明のエアロゾル発生物品は、エアロゾル発生装置で使用するために構成されてもよい。本明細書で使用される「エアロゾル発生装置」は、エアロゾル形成基体と相互作用してエアロゾルを発生する装置に関する。本発明のエアロゾル発生物品はそれ自体、熱源と、熱源から物品のエアロゾル形成基体に熱を伝達するための少なくとも一つの熱伝導性要素とを備えうる。
【0029】
本発明のエアロゾル発生物品は、喫煙物品(フィルター付き紙巻たばこまたは他の喫煙物品など)であってもよく、その中でエアロゾル発生基体は、燃焼されて煙を形成するたばこ材料を含む。従って、上述の実施形態のうちのいずれかにおいて、エアロゾル発生基体はたばこロッドを備えてもよい。さらに、上述の実施形態のうちのいずれかにおいて、マウスピースはフィルターであってもよい。こうした実施形態において、フィルターはチッピングペーパーによってたばこロッドに固定されてもよい。
【0030】
マウスピースは、中空管状セグメントの上流に配置された一つ以上のセグメントを備えうる。中空管状セグメントは、エアロゾル形成基体に直接隣接していてもよい。中空管の繊維状材料は、酢酸セルロース繊維などのセルロース系繊維を含んでもよい。
【0031】
マウスピースは、エアロゾル形成基体の少なくとも下流部分に固定されうる。例えば、チッピングラッパーなどのラッパーは、マウスピース、およびエアロゾル形成基体の少なくとも下流端部分を囲み、マウスピースとエアロゾル形成基体をひとまとめにしうる。
【0032】
中空管状セグメントは、実質的に環状の断面を有しうる。すなわち、中空管セグメントは、酢酸セルロースなどの濾過材料の環状の形状のセグメントである中空管から形成されうる。環状の形状の中空管は、環状の形状のセグメントの上流端から環状の形状のセグメントの下流端に延びる中空コアを有する。こうしたセグメントは、中空アセテート管と呼ばれることがある。中空コアは、エアロゾルが通って流れるための実質的に一定の断面積を有しうる。これは、複数の捲縮していない繊維が固定されるための実質的に円筒状の表面を提供する。
【0033】
本発明の第二の態様によると、 エアロゾル発生物品のマウスピースのための中空管状セグメントを形成する方法が提供されている。方法は、捲縮した繊維の第一の連続的な帯を運ぶ工程と、捲縮していない繊維の第二の連続的な帯を運ぶ工程と、第一の連続的な帯の一部分を、外表面および内表面を有する実質的に環状の形状に成形する工程と、第二の連続的な帯を運んで、第一の連続的な帯の実質的に環状の形状の部分の内表面と接触させる工程と、接触させた部分を一緒に貼り付けて、連続的な帯から貼り付けた部分のセグメントを切断して、エアロゾル発生物品のマウスピースのための中空管状セグメントを形成する工程とを含む。
【0034】
方法は、接触させた部分を一緒に貼り付ける前に、少なくとも一部の結合剤が環状の形状の部分の内表面上に存在するように、結合剤を環状の形状の部分上に吹き付ける工程をさらに含みうる。
【0035】
本発明の第三の態様の方法は有利なことに、本発明の第一および第二の態様の中空管状セグメントを、既存のプロセスおよび技法を使用する既存の(ほとんどまたは全く修正のない)機械で製造することを可能にしうる。
【0036】
当然のことながら、本発明の一態様に関して上述した好ましい特徴はまた、本発明の他の態様に適用されてもよい。
ここで、例証としてのみであるが、以下の添付図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】
図1は、本発明の第一の実施形態によるエアロゾル発生物品を示す。
【
図2】
図2は、ラッパーを外したマウスピースを有する、
図1のエアロゾル発生物品の図を示す。
【
図3】
図3は、エアロゾル発生物品の長軸方向軸に対して直角に切り取った
図2の中空管状セグメントの断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1および
図2は、本発明の第一の実施形態によるエアロゾル発生物品10を図示する。物品は喫煙物品の形態である。喫煙物品10は、たばこカットフィラーの包まれたロッド12の形態のエアロゾル形成基体を備える。ロッド12は、軸方向に整列したフィルター14の形態で、一方の端にてマウスピースに取り付けられている。チッピングペーパーの帯16は、フィルター14と、たばこの包まれたロッド12の一部分120とを囲んで、喫煙物品10の二つの部分をひとまとめにする。
【0039】
図2に示す通り、フィルター14は中空管状セグメント24を備える。中空管状セグメント24は、酢酸セルローストウの形態の捲縮した繊維性材料の中空管31を備える。中空管状セグメント24はフィルター14の下流端にあり、物品10の口側端くぼみ40を画定する。中空管状セグメント24の上流はフィルターセグメント30であり、これも酢酸セルローストウなどの繊維質性材料で形成されている。フィルターセグメント30は中空管状セグメント24に隣接している。フィルターセグメント30および中空管状セグメント24は、周囲を囲む組み合わせプラグラップ17によって互いに固定されている。
【0040】
図3で最もよく分かる通り、捲縮した繊維状材料31の中空管を含むことに加えて、中空管状セグメント24はまた、複数の捲縮していない繊維35を備える。複数の捲縮していない繊維35は、中空管31の内表面に沿って延び、かつ中空管31の内表面に貼り付けられている。複数の捲縮していない繊維35は、中空管31の全長に沿って延び、捲縮した繊維状材料の中空管31の内表面を覆う実質的に連続的な層を形成する。これは、中空管状セグメント24の内表面が、捲縮していない繊維35の実質的に連続的な層の内表面351によって形成されていることを意味する。中空管31の厚さに対する捲縮していない繊維35の連続層の厚さは、
図3では実寸に比例して示されていない。捲縮していない繊維35の連続層は、結合剤によって、または接着剤によって、または結合剤と接着剤の両方によって、中空管31に固定されうる。捲縮していない繊維35の連続層は、中空管31の色とは異なる色を有しうる。