(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】演奏装置
(51)【国際特許分類】
G10H 1/18 20060101AFI20221207BHJP
G10H 1/12 20060101ALI20221207BHJP
G10H 7/08 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
G10H1/18 B
G10H1/12
G10H7/08
(21)【出願番号】P 2020547550
(86)(22)【出願日】2018-09-20
(86)【国際出願番号】 JP2018034855
(87)【国際公開番号】W WO2020059085
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-03-12
(73)【特許権者】
【識別番号】315017409
【氏名又は名称】AlphaTheta株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 四郎
【審査官】堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-046793(JP,A)
【文献】特開平08-321745(JP,A)
【文献】特開平04-161994(JP,A)
【文献】国際公開第2009/004718(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10H 1/00-7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作者
によるMIDIキーボードの打鍵位置に応じた音階の音響信号を出力する演奏装置であって、
前記操作者の打鍵操作に応じて前記MIDIキーボードから入力する信号に応じた周波数の搬送波を生成し、生成された搬送波を所定の周波数比の変調波によって変調して音響信号を生成するFMシンセサイザー部と、
前記操作者の
打鍵操作に応じ
て前記MIDIキーボードから入力する信号
に応じた周波数
に前記所定の周波数比を乗じた周波数である基本周波数の基音以外の成分で、かつ、前記基音の倍音以外の成分をノイズ成分として検出するノイズ信号検出部と、
前記FMシンセサイザー部によって生成された音響信号から、前記ノイズ信号検出部により検出されたノイズ
成分を減衰または消去するノイズ信号削減部と、を備える演奏装置。
【請求項2】
請求項1に記載の演奏装置において、
前記
基本周波
数とは異なる周波
数を設定する異種音階設定部を備え、
前記ノイズ信号検出部は、前記異種音階設定部により設定され
た周波数
を前記ノイズ成分の検出対象から除外する演奏装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の演奏装置において、
前記所定の周波数比は、前記操作者によって操作される調整つまみによって調整される演奏装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の演奏装置において、
前記FMシンセサイザー部は、前記搬送波を生成するオシレータを有する演奏装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、演奏装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子楽器としてFMシンセサイザー等の演奏装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
FMシンセサイザーは、第1のオシレータから発振された搬送波を、第2のオシレータから発振された変調波により変調して様々な音響信号を生成する。そして、FMシンセサイザーに接続された電子鍵盤等により入力されたキーノートに基づいて、音階のある音響信号を出力することができる。
【0003】
しかしながら、FMシンセサイザーでは、搬送波および変調波の組み合わせが無限にあり、オシレータの調整の組み合わせによっては電子鍵盤の打鍵位置によらず、音高が定まらずノイズに埋もれてしまい、楽器としての機能を呈さない場合がある。
従来、特許文献2では、スピーチ成分およびノイズ成分を含む音響信号から特定の周波数帯域について、フィルター処理を行うことによって、出力される音響信号のスピーチ成分の明瞭化を図る技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平4-161994号公報
【文献】特開2010-521704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献2に開示の技術では、環境ノイズ等のある程度周波数帯域が判るノイズ成分を除去することしかできない。これに対して、FMシンセサイザーの場合、搬送波および変調波の周波数を自由に設定できるため、ノイズ成分の発生分布が一様ではなく、フィルター処理では対応できないという課題がある。
【0006】
本発明の目的は、ノイズ成分の発生分布によらずノイズを除去して、操作者の操作に応じた周波数の音響信号を出力することのできる演奏装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の演奏装置は、操作者の操作に応じた周波数の音響信号を出力する演奏装置であって、前記操作者の操作に応じた音響信号の周波数以外のノイズ信号の信号強度を検出するノイズ信号検出部と、前記ノイズ信号検出部により検出されたノイズ信号の信号強度を、減衰または消去するノイズ信号削減部と、を備える。
本発明のノイズ削減プログラムは、コンピュータを前述の演奏装置として機能させる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態に係る音響装置を示すブロック図。
【
図2】前記実施の形態における調整つまみの構造を示す平面図。
【
図3】前記実施の形態における調整つまみの構造を示す断面図。
【
図4】前記実施の形態における音響信号生成部および音響信号合成部の構造を示すブロック図。
【
図5】前記実施の形態における変調波の波形に応じて生成される音響信号の信号強度を示すグラフ。
【
図6】前記実施の形態における合成音響信号の信号強度を示すグラフ。
【
図7】前記実施の形態における音響信号生成部、音響信号合成部、信号強度推定部、および限界量報知部を示すブロック図。
【
図8】前記実施の形態における信号強度推定部および限界量報知部を示すブロック図。
【
図9】前記実施の形態におけるノイズリダクション部を示すブロック図。
【
図10】前記実施の形態におけるノイズ成分分析部による分析結果を示すグラフ。
【
図11】前記実施の形態におけるノイズリダクション部によるノイズの減衰を示すグラフ。
【
図12】前記実施の形態における作用を説明するためのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の一形態を図面に基づいて説明する。
図1には、本発明の実施の形態に係るFM(Frequency Modulation)シンセサイザー1が示されている。
演奏装置としてのFMシンセサイザー1は、シンセサイザー本体2および調整操作ユニット3を備え、MIDIキーボード4から出力されたキーノートに応じた音程の音響信号を生成して、外部に音声出力する。調整操作ユニット3は、シンセサイザー本体2が有する複数のオシレータのゲイン、周波数比を調整する調整つまみ32を複数備え、操作者がそれぞれの調整つまみ32を操作することにより、出音用FMシンセサイザー部6に異なる音色の音響信号を生成させる。
【0010】
調整操作ユニット3は、ボックス状のケース31と、複数の調整つまみ32とを備える。本実施の形態では、シンセサイザー本体2の調整可能な音響信号生成部OP1から音響信号生成部OP4に応じて、4×4=16個の調整つまみ32が設けられている。
調整操作部としての調整つまみ32は、ケース31の上面に回転可能に設けられ、
図2および
図3に示すように、操作つまみ本体321、調整位置表示マーカー322、およびつまみ基部323を備える。
【0011】
操作つまみ本体321は、黒色のゴム等の不透光性材料から構成され、ケース31上に回転自在に保持される。
調整位置表示マーカー322およびつまみ基部323は、レンズ材料等の導光性材料から構成される。つまり、調整位置表示マーカー322およびつまみ基部323は、後述するLED発光部327が発光することにより、発光色に応じて、操作つまみ本体321の周囲や、調整位置表示マーカー322を発光させる導光体として機能する。
【0012】
調整位置表示マーカー322は、操作つまみ本体321に形成された切欠部に挿入され、操作つまみ本体321を回転させた際の調整量を操作者に視認させる。
つまみ基部323は、操作つまみ本体321の底部に設けられ、操作つまみ本体321の回転に応じて回転するように支持されている。また、つまみ基部323は、径方向外周端部が操作つまみ本体321の外側に突出している。
【0013】
つまみ基部323の回転中心には、回転軸324が設けられ、回転軸324の先端は、回路基板325上に設けられた回転抵抗器326に接続される。回転抵抗器326には、複数色に発光するLED発光部327が隣接して設けられている。
視覚的手段としてのLED発光部327は、シンセサイザー本体2からの制御信号により駆動し、制御信号に応じて、赤色、緑色、青色を単独または組み合わせて発光することにより、さまざまな色に発光する。
【0014】
そして、調整つまみ32、回転軸324、回転抵抗器326、およびLED発光部327が本発明の特徴量調整部として機能する。
なお、本実施の形態では、調整操作ユニット3をハードウェアとして構成しているが、これに限られない。たとえば、コンピュータの画面上に表示される画像として構成される特徴量調整部としてもよい。
【0015】
シンセサイザー本体2は、
図1に示すように、入力されたキーノートKNOTEに応じた音階の音響信号を生成して、音声出力する。シンセサイザー本体2は、パラメータ選択部5、出音用FMシンセサイザー部6、分析用FMシンセサイザー部7、ノイズ成分分析部8、およびノイズリダクション部9を備える。
パラメータ選択部5は、シンセサイザー本体2により生成および出力する音響信号の波形を選択する部分であり、選択可能な波形としては、たとえば、サイン波W1、三角波W2、ノコギリ波W3、矩形波W4を例示できる(
図5参照)。選択された波形、周波数比、入力側増幅器64Aの増幅率および出力側増幅器63Aの増幅率は、出音用FMシンセサイザー部6および分析用FMシンセサイザー部7に出力される。
【0016】
出音用FMシンセサイザー部6は、
図4に示すように、DSP(Digital Signal Processor)から構成され、音響信号生成部OP1から音響信号生成部OP4までを複数備える。
音響信号生成部OP1から音響信号生成部OP4は、出音用FMシンセサイザー部6で使用する搬送波および変調波に基づいて出力する音響信号を生成する。
音響信号生成部OP1は、オシレータ61、増幅器62、信号出力部63、出力側増幅器63A、および変調波入力部64を備える。音響信号生成部OP2から音響信号生成部OP4も同様の構成である。
【0017】
オシレータ61は、パラメータ選択部5で選択された波形から所定の周波数比の搬送波を生成し、入力された変調波により、搬送波を変調する。具体的には、オシレータ61は、MIDIキーボード4から入力されたキーノートKNOTEに応じた周波数の搬送波を生成して、変調波により変調する。
たとえば、
図5に示すように、変調波がサイン波W1である場合、キーノートKNOTEとして入力された周波数の搬送波に対して、オシレータ61は、調整操作ユニット3の調整つまみ32で設定された周波数比のサイン波W1で変調する。変調後に出力される音響信号の信号強度は、キーノートKNOTEに応じた周波数f_inをピークとするパターンPT1のようになる。
【0018】
同様に、変調波が三角波W2である場合、変調後の出力される音響信号の信号強度は、パターンPT2のようになり、変調波がノコギリ波W3である場合、変調後に出力される音響信号の信号強度は、パターンPT3のようになり、変調波が矩形波W4である場合、変調後に出力される音響信号の信号強度は、パターンPT4のようになる。
すなわち、搬送波が変調波により変調されると、変調波の波形によっては、キーノートKNOTEに応じた周波数f_in以外の周波数の信号強度のピークを有する音響信号が生成される。
【0019】
増幅器62は、オシレータ61から出力された音響信号を増幅する。増幅率は、キーノートKNOTEに含まれるMIDIキーボード4の打鍵の強さに応じて設定される。
信号出力部63は、オシレータ61で生成された音響信号を音響信号合成部65に出力する。また、信号出力部63から出力された音響信号は、音響信号生成部OP1の変調波入力部64にフィードバックされるとともに、他の音響信号生成部OP2、音響信号生成部OP3、および音響信号生成部OP4の変調波入力部64に出力される。
【0020】
同様に音響信号生成部OP2、音響信号生成部OP3、および音響信号生成部OP4のそれぞれの信号出力部63から出力された音響信号も、自己の変調波入力部64にフィードバックされるとともに、他の音響信号生成部の変調波入力部64に出力される。
変調波入力部64は、複数の入力側増幅器64Aおよび入力側加算器64Bを備える。
入力側増幅器64Aは、入力される音響信号に応じて複数設けられ、音響信号生成部OP1であれば、自己が出力したフィードバックされた音響信号、および他の音響信号生成部OP2から音響信号生成部OP4で生成され、入力された音響信号を増幅する。増幅率は、調整操作ユニット3の調整つまみ32を調整することにより調整することができる。
入力側加算器64Bは、入力側増幅器64Aから入力された複数の音響信号を加算して、オシレータ61に変調波として出力する。
【0021】
本実施の形態では、4つの音響信号生成部OP1から音響信号生成部OP4を備えているので、それぞれの4つのオシレータ61の前段に設けられている4つの入力側増幅器64Aによって増幅される音響信号の強度を調整して、最終的な音響信号を出力する。つまり、本実施の形態では、16カ所の調整が可能となり、調整操作ユニット3の調整操作つまみ32の数に対応する。
本実施の形態では、FMシンセサイザー1が多入力1出力の音響信号生成部OP1から音響信号生成部OP4を備えているため、音色が多岐に亘った音響信号を生成できる。しかし、その反面、調整操作ユニット3をどのように操作すれば、所望の音色の音響信号を生成することができるのか予測がつかず、操作者による調整操作が困難を極めるシンセサイザーとなっている。
【0022】
信号出力部63は、音響信号生成部OP1から音響信号生成部OP4で生成された音響信号を出力する。
出力側増幅器63Aは、音響信号生成部OP1から音響信号生成部OP4で生成された音響信号を所定の増幅率で増幅する。増幅率は、調整操作ユニット3の調整つまみ32を調整することにより調整することができる。
【0023】
音響信号合成部65は、音響信号生成部OP1から音響信号生成部OP4のそれぞれから出力された音響信号を加算または乗算し、FMシンセサイザー1の音響信号として出力する。音響信号合成部65は、加算器66、フィルター部67、および増幅器70を備える。
加算器66は、音響信号生成部OP1から音響信号生成部OP4のそれぞれから出力された音響信号を加算して、音声出力用の合成音響信号を生成する。
【0024】
フィルター部67は、第1加算器66で加算された合成音響信号に対してフィルター処理を行う。フィルター部67のフィルターは、所望の音色の音響信号に加工するために所望のフィルター特性に設定される。
増幅器70は、出力する合成音響信号を増幅する。増幅された合成音響信号は、スピーカー等によって音声出力される。
【0025】
出力される合成音響信号は、音響信号生成部OP1から音響信号生成部OP4のオシレータ61の波形、周波数比、出力側増幅器63Aの増幅率、および入力側増幅器64Aの増幅率によって種々変化する。たとえば、合成音響信号としては、入力されたキーノートKNOTEに応じた周波数f_inに対して、異なる周波数の合成音響信号が出力される。たとえば、
図6に示すように、サイン波W1で変調している場合であれば、出力強度パターンPO1のように、周波数f_inが最大値をとり、周波数の信号強度は、周波数が高くなるにしたがって減衰していく。したがって、聴取者は、出力された合成音響信号の音階を識別することができる。
【0026】
しかし、三角波W2で変調した出力強度パターンPO2から矩形波W4で変調した出力強度パターンPO4のように、徐々にキーノートKNOTEに応じた周波数f_inの信号強度が他の周波数の信号強度に埋もれてしまい、キーノートKNOTEに応じた音程の出力ができない。つまり、操作者がMIDIキーボード4のどの鍵盤を打鍵しても、高周波ノイズ音しか出力されなくなり、楽器として破綻してしまう。
そこで、本実施の形態のFMシンセサイザー1では、出力される合成音響信号が、高周波ノイズ音のみとなり、楽器として破綻する、ということがないように操作することができるナビゲーション機能を持たせている。
【0027】
分析用FMシンセサイザー部7は、
図7に示すように、出音用FMシンセサイザー部6と同様にDSPから構成された複数の音響信号生成部OP1’から音響信号生成部OP4’と、出力側増幅器72Aと、加算器74と、信号強度推定部75と、限界量報知部76とを備える。
音響信号生成部OP1’から音響信号生成部OP4’のそれぞれは、オシレータ71、信号出力部72、および搬送信号入力部73を備える。搬送信号入力部73は、入力側増幅器73Aおよび入力側加算器73Bを備える。
【0028】
これらの構成は、出音用FMシンセサイザー部6の音響信号生成部OP1から音響信号生成部OP4と同様の構成である。なお、それぞれのオシレータ71には、シンセサイザー本体2内で生成されるテスト用キーノートTNOTEが入力され、オシレータ71は、テスト用キーノートTNOTEの周波数に応じた搬送波を、複数の調整つまみ32の調整状態に応じて生成した変調波により変調する。
加算器74は、音響信号生成部OP1’から音響信号生成部OP4’のそれぞれで生成された音響信号を加算または乗算し、合成音響信号として信号強度推定部75に出力する。
【0029】
信号強度推定部75および限界量報知部76は、図示しないコンピュータの演算処理装置上で実行されるプログラムまたは記憶装置上確保された記憶領域として構成される。
信号強度推定部75は、
図8に示すように、テスト用キーノート出力部751、合成音響信号検出部752、操作量変更部753、限界量判定部754、および調整つまみ選択部755を備える。また、信号強度推定部75には、調整操作ユニット3のそれぞれの調整つまみ32の番号と、その調整つまみ32の調整操作量が出力され、後述する限界量判定部754による限界量判定に供される。
【0030】
テスト用キーノート出力部751は、音響信号生成部OP1’から音響信号生成部OP4’に対して、テスト用キーノートTNOTEを出力する。音響信号生成部OP1’から音響信号生成部OP4’は、テスト用キーノートTNOTEに基づいて、音響信号を生成する。
また、テスト用キーノート出力部751は、出力したテスト用キーノートTNOTEに応じた周波数を限界量判定部754に出力する。
【0031】
調整つまみ選択部755は、音響信号生成部OP1’から音響信号生成部OP4’のうち、オシレータ71の調整を行う調整つまみ32を選択する。具体的には、調整つまみ選択部755は、調整対象となるオシレータ71、そのオシレータ71の変調波形、出力される音響信号の強度、周波数比、およびそのオシレータ71あるいは他のオシレータ71に入力される音響信号の強度を調整する調整つまみ32を選択する。調整つまみ選択部755は、選択された調整つまみ32を限界量判定部754に出力する。
【0032】
合成音響信号検出部752は、加算器74により加算された音響信号生成部OP1’から音響信号生成部OP4’で生成された音響信号を合成した合成音響信号を検出する。
合成音響信号検出部752は、検出した合成音響信号を、FFT(Fast Fourier Transform)等により、周波数に応じた信号強度に変換して信号強度の分布を取得し、限界量判定部754に出力する。
【0033】
操作量変更部753は、調整操作ユニット3の調整つまみ32の調整操作と同様に、音響信号生成部OP1’から音響信号生成部OP4’にそれぞれのオシレータ71の変調波の波形、周波数比、増幅率、および入力側増幅器73Aの増幅率の調整操作量を出力する。具体的には、操作量変更部753は、調整操作ユニット3のそれぞれの調整つまみ32の調整量に応じて、すべての調整つまみ32の調整操作量の組み合わせを調整操作量として出力する。
また、操作量変更部753は、音響信号生成部OP1’から音響信号生成部OP4’に出力した調整操作量を限界量判定部754に出力する。
【0034】
限界量判定部754は、操作量変更部753から出力された調整操作量に基づいて設定された、変調波の波形、周波数比、出力側増幅器72Aの増幅率、および入力側増幅器73Aの増幅率により変調された合成音響信号が、音声出力したときに破綻しているか否かを判定する。具体的には、限界量判定部754は、テスト用キーノートTNOTEに応じた周波数を基本周波数として、基音、第2倍音、および第3倍音の信号強度と、合成音響信号中に含まれる他の周波数成分の信号強度とのS/N比により、出力される合成音響信号の破綻の有無を判定する。テスト用キーノートTNOTEに応じた周波数を基本周波数として、基音と倍音の信号強度と、合成音響信号中に含まれる他の周波数成分の信号強度とのS/N比が所定の閾値よりも小さい場合には、調整操作量が限界量を超え、破綻していると判定する。
【0035】
ここで、音響信号生成部OP1’から音響信号生成部OP4’で生成する合成音響信号は、出音用FMシンセサイザー部6の設定と同じ設定により生成される音響信号とは異なり、出音用FMシンセサイザー部6の設定と同じ設定に、さらに調整つまみ32を1箇所操作したときの設定により生成される。
このとき、調整操作ユニット3は、4つのオシレータ61およびオシレータ71の前段に設けられている4つの入力側増幅器64Aおよび入力側増幅器73Aを操作する状態になっている。これらの16箇所のパラメータを、調整操作ユニット3の16個の調整操作つまみ32により調整することができる。
【0036】
操作者がある1つの調整つまみ32を操作すると、その操作に加えて、さらに、調整つまみ32のうちの1つを所定の位置に操作したときに、音響信号生成部OP1’から音響信号生成部OP4’は、調整つまみ32の操作位置に応じた合成音響信号を生成する。
限界量判定部754は、この合成音響信号を分析し、限界量に達しているか否かを判定する。
限界量判定部754により判定されたそれぞれの調整つまみ32の調整操作量の限界量は、限界量報知部76に出力される。
【0037】
限界量報知部76は、制御信号出力部761および報知状態記憶部762を備える。
制御信号出力部761は、限界量判定部754から出力された調整操作量の限界量に基づいて、点灯制御信号を生成して、調整操作ユニット3のそれぞれの調整つまみ32のLED発光部327に出力する。具体的には、制御信号出力部761は、調整つまみ32の調整操作量が、限界量以下である場合には、LED発光部327に緑色で発光させる制御信号を出力する。
【0038】
また、制御信号出力部761は、調整つまみ32の調整操作量が、限界量を超えている場合には、LED発光部327に赤色で発光させる制御信号を出力する。
なお、LED発光部327の発光色は2色に限られず、限界量よりも十分に調整操作量が少ない場合は緑色、限界量に近くなった場合は黄色、限界量を超えたら赤色のように多段階で表示するように構成してもよい。
【0039】
報知状態記憶部762は、メモリ等の記録媒体の記憶領域の一部として構成される。報知状態記憶部762には、限界量判定部754によって判定された調整つまみ32の調整操作量の限界量が記憶される。限界量判定部754は、それぞれの調整つまみ32の調整操作量の限界量が演算されたら、前回の限界量を新たな調整操作量の限界量に書き換える。
【0040】
ノイズ成分分析部8は、分析用FMシンセサイザー部7から出力された合成音響信号に基づいて、合成音響信号に含まれるノイズ成分を分析する。ノイズ成分分析部8は、
図9に示すように、テスト用キーノート取得部81、ノイズ信号検出部82、ノイズ成分蓄積部83、および異種音階設定部84を備える。
テスト用キーノート取得部81は、信号強度推定部75のテスト用キーノート出力部751から出力されたテスト用キーノートTNOTEを取得する。
【0041】
ノイズ信号検出部82は、合成音響信号検出部752から検出された合成音響信号の周波数に応じた信号強度の分布を検出する。ノイズ信号検出部82は、取得されたテスト用キーノートTNOTEに応じた周波数を基本周波数とした基音と倍音(整数以外の周波数比の設定の場合にはテスト用キーノートTNOTEに応じた周波数に周波数比を乗じた周波数を基本周波数とした基音と倍音)以外の周波数に生じた信号強度のピークをノイズ成分として検出する。たとえば、
図10に示すように、ノイズ信号検出部82は、テスト用キーノートTNOTEに応じた周波数f_in’を基本周波数として、基音、第2倍音、第3倍音以外の信号強度のピークN1からピークN4をノイズ成分として検出する。
ノイズ成分蓄積部83は、ノイズ信号検出部82により検出されたノイズ成分を、テスト用キーノートTNOTEに応じたノイズ成分としてメモリ等の記憶領域に蓄積する。
【0042】
異種音階設定部84は、操作者の操作に応じた基本周波数の音響信号とは異なる周波数の音響信号を設定する。異種音階設定部84により設定された異なる周波数の信号強度のピークは、前述したノイズ信号検出部82における検出対象となるノイズ成分とは見なされず、テスト用キーノートTNOTEに応じた周波数f_in’を基本周波数とした基音と倍音(整数以外の周波数比の設定の場合にはテスト用キーノートTNOTEに応じた周波数finに周波数比を乗じた周波数を基本周波数とした基音と倍音)と同様に扱われる。具体的には、異種音階設定部84により異種音階としてコード”C”が設定された場合、操作者がMIDIキーボード4の”ド”を打鍵したときに、同様に”ミ”、”ソ”がノイズ成分として見なされなくなり、ノイズ信号検出部82の検出対象から除外される。
これにより、操作者がMIDIキーボード4の1音を打鍵しても、出力される音響信号は和音とすることができるため、聴き触りがよい和音を演奏できる。
【0043】
ノイズリダクション部9は、出音用FMシンセサイザー部6から出力された合成音響信号中に含まれるノイズ成分を減衰または消去して、MIDIキーボード4から入力されたキーノートKNOTEに応じた周波数を基本周波数とした基音と倍音(整数以外の周波数比の設定の場合にはテスト用キーノートTNOTEに応じた周波数に周波数比を乗じた周波数を基本周波数とした基音と倍音)の合成音響信号を出力する。ノイズリダクション部9は、入力キーノート判定部91およびノイズ信号削減部92を備える。
入力キーノート判定部91は、操作者がMIDIキーボード4を操作して入力されたキーノートKNOTEを判定し、ノイズ成分蓄積部83に蓄積されたテスト用キーノートと照合し、テスト用キーノートに応じた周波数を基本周波数として、基音、第2倍音、および第3倍音以外の信号強度のピークN1からピークN4のノイズ成分を読み出す。入力キーノート判定部91は、読み出されたノイズ成分をノイズ信号削減部92に出力する。
【0044】
ノイズ信号削減部92は、出音用FMシンセサイザー部6で生成された合成音響信号からノイズ成分を減衰または消去する。具体的には、
図11に示すように、入力キーノート判定部91で照合されたキーノートKNOTEに応じたノイズ帯域における信号強度のピークN1からピークN4を減衰する。ノイズ帯域の信号強度のピークの減衰には、たとえば、ノッチフィルタによるフィルター処理を採用することができる。
【0045】
次に、本実施の形態の作用を
図12に示すフローチャートに基づいて説明する。
信号強度推定部75の操作量変更部753は、調整操作ユニット3のそれぞれの調整つまみ32の調整操作量を読み込む(手順S1)。
信号強度推定部75のテスト用キーノート出力部751は、テスト用キーノートTNOTEを音響信号生成部OP1’から音響信号生成部OP4’に出力し(手順S2)、合成音響信号を生成する(手順S3)。
テスト用キーノート取得部81は、テスト用キーノート出力部751から出力されたテスト用キーノートTNOTEを取得する(手順S4)。
【0046】
合成音響信号検出部752は、入力側加算器73Bによって加算された合成音響信号を、テスト用キーノートTNOTEに応じた周波数を基本周波数として、合成音響信号の信号強度を検出する(手順S5)。
ノイズ信号検出部82は、合成音響信号検出部752により検出された合成音響信号に含まれる、テスト用キーノートTNOTEに応じた周波数を基本周波数とした基音と倍音の周波数(整数以外の周波数比の設定の場合にはテスト用キーノートTNOTEに応じた周波数に周波数比を乗じた周波数を基本周波数とした基音と倍音の周波数)、および異種音階設定部84により設定された音階の周波数以外の合成音響信号中のノイズ信号を検出する(手順S6)。
【0047】
ノイズ信号検出部82は、すべてのテスト用キーノートTNOTEについてノイズ信号の検出が終了したか否かを判定する(手順S7)。
終了していない場合、テスト用キーノートTNOTEを変更して、手順S2以下を繰り返す。
終了した場合、ノイズ成分蓄積部83は、それぞれのテスト用キーノートTNOTEについてノイズ成分を記憶領域に蓄積する(手順S8)。
【0048】
入力キーノート判定部91は、操作者がMIDIキーボード4を打鍵して出力された入力されたキーノートKNOTEと、ノイズ成分蓄積部83により蓄積されたテスト用キーノートTNOTEとの照合を行う(手順S9)。次に、入力キーノート判定部91は、入力されたキーノートKNOTEに応じたノイズ成分の信号強度のピークN1からピークN4を読み出す(手順S10)。
ノイズ信号削減部92は、出音用FMシンセサイザー部6から出力された合成音響信号のノイズ帯域における信号強度のピークN1からピークN4を減衰または消去する(手順S11)。
FMシンセサイザー1は、入力されたキーノートKNOTEに応じた周波数を基本周波数とした基音と倍音(整数以外の周波数比の設定の場合にはテスト用キーノートTNOTEに応じた周波数に周波数比を乗じた周波数を基本周波数とした基音と倍音)、および異種音階設定部84で設定された音階の合成音響信号を出力して、音声を出力する(手順S12)。
【0049】
このような本実施の形態によれば、以下のような効果がある。
本実施の形態では、ノイズ信号検出部82は操作者のMIDIキーボード4の操作によるキーノートKNOTEに応じた周波数を基本周波数とした基音と倍音(整数以外の周波数比の設定の場合にはテスト用キーノートTNOTEに応じた周波数に周波数比を乗じた周波数を基本周波数とした基音と倍音)以外のノイズ信号の信号強度のピークN1からピークN4を検出している。そして、ノイズ信号削減部92は、検出されたノイズ信号の信号強度のピークN1からピークN4を減衰または消去している。したがって、FMシンセサイザー1は、操作者によるMIDIキーボード4の打鍵位置に応じた音階の音響信号を出力することができるため、設定の難しいFMシンセサイザー1から出力される音響信号に破綻を生じさせることなく、打鍵したキーノートKNOTEに応じた音声を出力することができる。
【0050】
本実施の形態では、FMシンセサイザー1にノイズ信号検出部82、ノイズ成分蓄積部83、入力キーノート判定部91、およびノイズ信号削減部92を採用している。FMシンセサイザー1の場合、オシレータ61で生成した搬送波を入力される変調波で変調しているため、ノイズ成分がある特定の周波数帯域に生じるものではなく、任意の周波数でノイズ信号の信号強度のピークが生じ得る。したがって、本実施の形態のノイズリダクション部9であれば、任意の周波数におけるノイズ成分であってもノイズ成分の減衰または消去を行うことができるため、FMシンセサイザー1に好適である。
【0051】
本発明は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、以下に示すような変形をも含む。
前述した実施の形態では、FMシンセサイザー1に本発明を適用していたが、本発明はこれに限られない。すなわち、電子ピアノや電子オルガン、エレキギター、電子木管楽器等の電子楽器に前述したノイズリダクション部9を適用して、ノイズ成分の減衰、消去を行ってもよい。
【0052】
前述の実施の形態では、音響信号生成部OP1から音響信号生成部OP4、および音響信号生成部OP1’から音響信号生成部OP4’をDSPで構成していたが、本発明はこれに限られない。すべての構成をコンピュータ読み取り可能なノイズ削減プログラムとして構成してもよい。
その他、本発明は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造および構成に適用してもよい。
【符号の説明】
【0053】
1…多入力、1…FMシンセサイザー、2…シンセサイザー本体、3…調整操作ユニット、4…MIDIキーボード、5…パラメータ選択部、6…出音用FMシンセサイザー部、7…分析用FMシンセサイザー部、8…ノイズ成分分析部、9…ノイズリダクション部、31…ケース、61…オシレータ、62…増幅器、62A…出力側増幅器、63…信号出力部、63A…出力側増幅器、64…変調波入力部、64A…入力側増幅器、64B…入力側加算器、65…音響信号合成部、66…加算器、67…フィルター部、70…増幅器、71…オシレータ、72…信号出力部、72A…出力側増幅器、73…搬送信号入力部、73A…入力側増幅器、73B…入力側加算器、74…加算器、75…信号強度推定部、76…限界量報知部、81…テスト用キーノート取得部、82…ノイズ信号検出部、83…ノイズ成分蓄積部、84…異種音階設定部、91…入力キーノート判定部、92…ノイズ信号削減部、321…本体、322…調整位置表示マーカー、323…基部、324…回転軸、325…回路基板、326…回転抵抗器、327…LED発光部、751…テスト用キーノート出力部、752…合成音響信号検出部、753…操作量変更部、754…限界量判定部、755…選択部、761…制御信号出力部、762…報知状態記憶部、KNOTE…キーノート、N1…ピーク、N4…ピーク、OP1…音響信号生成部、OP2…音響信号生成部、OP3…音響信号生成部、OP4…音響信号生成部、OP1’…音響信号生成部、OP2’…音響信号生成部、OP3’…音響信号生成部、OP4’…音響信号生成部、PO1…出力強度パターン、PO2…出力強度パターン、PO4…出力強度パターン、PT1…パターン、PT2…パターン、PT3…パターン、PT4…パターン、TNOTE…テスト用キーノート、W1…サイン波、W2…三角波、W3…ノコギリ波、W4…矩形波、f_in…基本周波数、f_in’…基本周波数。