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特許7189967冗長ブレーキ装置を有する車両の冗長モーション制御
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-12-06
(45)【発行日】2022-12-14
(54)【発明の名称】冗長ブレーキ装置を有する車両の冗長モーション制御
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/88 20060101AFI20221207BHJP
   B60T 7/12 20060101ALI20221207BHJP
   B60T 17/18 20060101ALI20221207BHJP
   B60T 8/1755 20060101ALI20221207BHJP
   B60T 13/38 20060101ALI20221207BHJP
   B60T 8/17 20060101ALI20221207BHJP
【FI】
B60T8/88
B60T7/12 F
B60T7/12 Z
B60T7/12 B
B60T17/18
B60T8/1755 Z
B60T13/38
B60T8/17 A
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020561684
(86)(22)【出願日】2018-05-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-28
(86)【国際出願番号】 EP2018061412
(87)【国際公開番号】W WO2019210964
(87)【国際公開日】2019-11-07
【審査請求日】2021-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】512272672
【氏名又は名称】ボルボトラックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(74)【代理人】
【識別番号】100218604
【弁理士】
【氏名又は名称】池本 理絵
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】レイン,レオ
(72)【発明者】
【氏名】ファレス,リオネル
(72)【発明者】
【氏名】オスカーション,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ヘンダーソン,レオン
(72)【発明者】
【氏名】マイクヴィスト,ヨハンナ
(72)【発明者】
【氏名】ヴィルカ,ヨーセ
(72)【発明者】
【氏名】タゲソン,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイディヤナサン,カールティク・ラマナン
(72)【発明者】
【氏名】スーリエ,ニコラス
【審査官】前原 義明
(56)【参考文献】
【文献】特表2006-525172(JP,A)
【文献】国際公開第2017/036569(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/221836(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12 - 8/1769
8/32 - 8/96
13/00 - 17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキ機能を含む車両モーションシステムの制御装置であって、
前記ブレーキ機能に関する少なくとも1つ以上のブレーキアクチュエータ(BA)を有し、前記ブレーキアクチュエータが加圧空気で作動するモーションアクチュエータと、
前記ブレーキ機能を制御するために冗長アセンブリを形成する、少なくとも第1の車両モーション管理コントローラ(VMM1)及び第2の車両モーション管理コントローラ(VMM2)と、
前記第1の車両モーション管理コントローラ(VMM1)によって制御される主ブレーキ空気圧回路(MBC)と、
前記第2の車両モーション管理コントローラ(VMM2)によって制御されるバックアップブレーキ空気圧回路(BKC)と、
を備え、
走行状態において、前記第1の車両モーション管理コントローラが、ブレーキ空気圧(PREF)のブレーキ設定値によって定義された現在のブレーキ性能で前記ブレーキアクチュエータを制御する一方、前記第2の車両モーション管理コントローラ(VMM2)が、前記ブレーキ性能に影響がない作動待機モードにあり、
前記バックアップブレーキ空気圧回路(BKC)は、前記作動待機モードにおいて、前記主ブレーキ空気圧回路(MBC)に適用された圧力(PREF)より低い作動待機圧力(PBK)でプリチャージされ、
前記作動待機圧力(PBK)は、085PREF<PBK<0.95PREFという条件によって定義される作動待機範囲内にあり、
前記第2の車両モーション管理コントローラ(VMM2)が、0.5秒未満の時間間隔(SWT)内に、前記現在の同じブレーキ性能をもって、前記第1の車両モーション管理コントローラから前記ブレーキアクチュエータの制御を引き継ぐように構成されたホットスワップ機能を備えた、
制御装置。
【請求項2】
前記作動待機モードにおいて、前記作動待機圧力(PBK)が、前記制御された圧力(PREF)に追従間隔で追従させる、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
各車両のアクスル又は各ブレーキ付きホイールに1つ以上のブレーキ制御装置を備え、当該ブレーキ制御装置が、制御された圧力(PREF(t))を1つ以上の関連するブレーキアクチュエータに供給するように構成された、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
1つ以上のローカルブレーキ装置を備え、
各ローカルブレーキ装置は、サービスブレーキチャンバ(C2)を有するブレーキアクチュエータ(BA)と、前記ブレーキアクチュエータ(BA)の前記サービスブレーキチャンバ(C2)に接続された出口(26)、前記主ブレーキ空気圧回路(MBC)に接続された第1の入口(21)、及び前記バックアップブレーキ空気圧回路(BKC)に接続された第2の入口(22)を有するダブルチェックバルブ(2FL,2FR,2RL,2RR)と、を備えた、
請求項1~3のいずれか1つに記載の制御装置。
【請求項5】
アンチロック機能(ABS機能)を実行する圧力制御バルブ(PCV)を備え、
前記圧力制御バルブが、前記ダブルチェックバルブと前記ブレーキアクチュエータ(BA)の前記サービスブレーキチャンバ(C2)との間に配置された、
請求項4に記載の制御装置。
【請求項6】
アンチロック機能(ABS機能)を実行する圧力制御バルブ(PCV)を備え、
前記圧力制御バルブが、前記バックアップブレーキ空気圧回路(BKC)の前記ダブルチェックバルブの上流に配置された、
請求項4に記載の制御装置。
【請求項7】
前記第1の車両モーション管理コントローラ(VMM1)と前記第2の車両モーション管理コントローラ(VMM2)との間に相互通信リンク(28)が設けられた、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項8】
前記作動待機モードにおいて、前記第2の車両モーション管理コントローラ(VMM2)が、前記第1の車両モーション管理コントローラ(VMM1)から現在の設定値をリアルタイムに受信する、
請求項7に記載の制御装置。
【請求項9】
前記バックアップブレーキ空気圧回路(BKC)が、パーキングブレーキ回路によって形成され、
この場合、前記プリチャージは、通常の走行状態で、通常のパーキングブレーキ圧力(PBref)より低い圧力である、
請求項2に記載の制御装置。
【請求項10】
ブレーキ機能を含む車両モーションシステムを制御する方法であって、
前記車両モーションシステムは、前記ブレーキ機能に関する少なくとも1つ以上のブレーキアクチュエータを有し、前記ブレーキアクチュエータが加圧空気で作動するモーションアクチュエータと、前記ブレーキ機能を制御するために冗長アセンブリを形成する、少なくとも第1の車両モーション管理コントローラ(VMM1)及び第2の車両モーション管理コントローラ(VMM2)と、前記第1の車両モーション管理コントローラ(VMM1)によって制御される主ブレーキ空気圧回路(MBC)と、前記第2の車両モーション管理コントローラ(VMM2)によって制御されるバックアップブレーキ空気圧回路(BKC)と、を備え、
走行状態において、前記第1の車両モーション管理コントローラが、前記第1の車両モーション管理コントローラ(VMM1)によって制御された前記主ブレーキ空気圧回路に供給された、ブレーキ空気圧(PREF)のブレーキ設定値によって定義された現在のブレーキ能力で前記ブレーキアクチュエータを制御する一方、前記第2の車両モーション管理コントローラ(VMM2)が、前記ブレーキ能力に影響がない作動待機モードにあり、
前記バックアップブレーキ空気圧回路(BKC)は、前記作動待機モードにおいて、前記主ブレーキ空気圧回路(MBC)に適用された圧力(PREF)より低い作動待機圧力(PBK)でプリチャージされ、
前記作動待機圧力(PBK)は、085PREF<PBK<0.95PREFという条件によって定義される作動待機範囲内にあり、
VMM1が非公称状態、即ち、VMM1の機能の一部又はすべてが利用できない状態にあれば、前記第2の車両モーション管理コントローラ(VMM2)が、前記現在の同じブレーキ性能をもって、0.5秒未満という時間間隔(SWT)内に、前記第1の車両モーション管理コントローラから前記ブレーキアクチュエータの制御を引き継ぐように構成された、
方法。
【請求項11】
前記作動待機モードにおいて、前記第2の車両モーション管理コントローラ(VMM2)が、前記第1の車両モーション管理コントローラ(VMM1)から現在の設定値をリアルタイムに受信する、
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の車両モーション管理コントローラ(VMM2)が、前記第1の車両モーション管理コントローラ(VMM1)から受信した前記第1の車両モーション管理コントローラ(VMM1)の設定値をそれ自体でリアルタイムに算出する、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
第1のローカル車両モーション管理コントローラ(VMM1)と第2のローカル車両モーション管理コントローラ(VMM2)との間に、「アライブ」信号及び「ヘルス」信号を相互交換する、相互通信リンク(28)が設けられた、
請求項10~12のいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
請求項13に記載のシステムを備えた車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、自動運転車両、及び/又は基本的若しくは精巧な自律走行機能を有する車両の車両モーション制御に関する。ここでは、1つの制御装置が利用できなくなる可能性がある状況に対処するために冗長性が必要である。特に、トラック、中型車両又は大型車両などの自動運転車両は、ある程度の冗長性を示す電子制御ブレーキシステムが必要である。
【背景技術】
【0002】
自動車の分野では、信頼性の高い経路制御は、道路の円滑かつ安全な交通を確保するために必要な重要な安全機能の1つである。より詳細には、ドライブトレインのトルク制御はもちろんのこと、ステアリング機能及びブレーキ機能が最も重要である。
【0003】
自動運転車両は、ドライバによって以前実行されたアクションを代わりに行うことができる、1つ以上の車両モーション管理コントローラを備えている。冗長性の基準は、通常、高レベルの自律走行機能に必要な安全性レベル及び完全性レベル(SIL)を満足させるため、車両モーション管理コントローラを二重化させる。
【0004】
自動運転車両は、信頼性が高く強力なブレーキ機能が必要である。ブレーキ機能は、特にトラック、より一般的には大型車両に関し、作動流体として加圧空気を使用する空電システム(an electro-pneumatic system)に依存している。
【0005】
1つの回路が故障した場合にブレーキ能力を維持するための冗長装置として、2つの独立した空気圧回路を備えることが長年義務付けられていた。その後、基本的な空気圧システム上の電気制御を使用するソリューションが導入され、アクスルの圧力変化が迅速になって、ブレーキアクチュエータの効果的な制御がドライバの制御によりリアルタイムに反映できるようになった。
【0006】
最近では、ブレーキバイワイヤソリューションに向かう傾向により、EP2794368で説明されているように、ドラックの設計者が、フットペダルユニットからすべての空気圧コンポーネントを取り外すことによって、フットペダルブレーキユニットを簡略化している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特に電子制御及び空気圧制御の分野では、故障に対する信頼性と耐性を依然として確保する必要がある。空気圧システムの他にも、本開示の範囲において、電気機械式ブレーキ及び油圧式ブレーキも考慮する。
【0008】
ここで、自律車両及び車両自動化の見地により、発明者らは、冗長な空電ブレーキシステム、より一般的には車両モーションの冗長制御を提供するための新しいソリューションを見つけることに努力してきた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、ブレーキ機能を含む車両モーションシステムの制御装置が開示される。この制御装置は、ブレーキ機能に関する少なくとも1つ以上のブレーキアクチュエータを有するモーションアクチュエータと、ブレーキ機能を制御するために冗長アッセンブリを形成する、少なくとも第1の車両モーション管理コントローラ(VMM1)及び第2の車両モーション管理コントローラ(VMM2)と、を備えている。走行状態において、第1の車両モーション管理コントローラが、現在の公称期待ブレーキ性能(a current nominal expected braking performance)でブレーキアクチュエータを制御する一方、第2の車両モーション管理コントローラ(VMM2)が、ブレーキ性能に実質的に影響がない作動待機モードにある。制御装置は、第2の車両モーション管理コントローラ(VMM2)が、1秒未満、好ましくは0.5秒未満、より好ましくは0.3秒未満の時間間隔(SWT)内に、現在の公称期待ブレーキ性能でもって、第1の車両モーション管理コントローラからブレーキアクチュエータの制御を引き継ぐように構成されたホットスワップ機能を備えている。
【0010】
この装置のおかげで、VMM1からVMM2へ切り替えて100%のフルエンベロープ性能に到達するまで時間が非常に短くなり、ホットテイクオーバが提案される。これによって、任意のブレーキ条件、衝突回避機能(道路上に検知された物体又は障害物)、又は極端な運転やハンドリング条件の場合には緊急条件下でのブレーキングを含んだ、車両モーションをシームレスに制御することができる。
【0011】
有利なことに、作動待機モードは、ブレーキアクチュエータのオンライン制御によって使用される設定レベルよりやや低い設定レベルを有する、すぐ使用できるモード(a ready-to-be-used mode)である。
【0012】
第1の車両モーション管理コントローラ(又はこれに関連したアクチュエータや必須のセンサ)に問題が発生したときはいつでも、これに関連したアクチュエータやセンサと共に、第2の車両モーション管理コントローラ(VMM2)が非常に短時間でこれを引き継ぐことができる。
【0013】
本明細書において、「車両」という用語は、動力付きの車両だけでなく、牽引ユニットに取り付けられるように構成されたトレーラも含んでいる。牽引ユニット及びトレーラの両方は、ここで奨励されるように、制御ユニットを備えることができる。
【0014】
ステアリング機能についても、同様なプロセスを実行できることに留意されたい。
【0015】
「VMM1の非公称状態(non nominal condition)」は、第1の車両モーションコントローラVMM1自体若しくはその電源に影響する問題、VMM1によって制御されるブレーキアクチュエータに影響する重大な問題、又は適切な制御を実行するのに不可欠なセンサに影響する問題のいずれかによると理解すべきである。
【0016】
いくつかのブレーキアクチュエータは、推進及びブレーキングの両方を担う1つ以上のホイールモータ(ホイール領域に一体化されたトラクションモータ)によって形成できることに留意すべきである。
【0017】
本発明の様々な実施形態では、以下の装置の1つ及び/又は他のものに加えて、単独で又は組み合わせて、おそらく頼みとすることができる。
【0018】
一態様によれば、ブレーキアクチュエータは、加圧空気で作動する。これは、特に、トラック、バス、中型車両又は大型車両について適切かつ関連したソリューションでもある。これはまた、特に、トレーラについて適切かつ関連したソリューションでもある。
【0019】
他の態様によれば、ブレーキアクチュエータは、電気機械式のブレーキタイプである。これは、空気圧ソリューションの代替手段であり、例えば、電気モータ、ブレーキ作動のカムベース若しくはウェッジベースの運動、又は作動待機モードにおいてプリチャージされたカムベース若しくはウェッジベースの運動などを使用する。
【0020】
一態様によれば、ブレーキアクチュエータは、油圧式のブレーキタイプである。これは、空気圧ソリューションの代替手段であり、作動流体としての空気に代えてオイルを使用する。
【0021】
一態様によれば、現在の公称期待ブレーキ性能を担う第1の車両モーション管理コントローラ(VMM1)によって制御される主ブレーキ空気圧回路(MBC)と、第2の車両モーション管理コントローラ(VMM2)によって制御されるバックアップブレーキ空気圧回路(BKC)と、が提供される。バックアップブレーキ空気圧回路(BKC)は、主ブレーキ空気圧回路(MBC)に適用された空気圧より低い作動待機圧力で、作動待機モードにおいてプリチャージされる。有利なことに、作動待機モードは、バックアップブレーキ空気圧回路が、主ブレーキ空気圧回路(MBC)によって提供され、ブレーキアクチュエータのオンライン制御によって使用されるブレーキ圧力よりやや低いブレーキ圧力を供給する。
【0022】
一態様によれば、システムは、制御された圧力(PREF(t))を1つ以上の関連したブレーキアクチュエータに供給するように構成された、各車両のアクスル又は各ブレーキ付きホイールの1つ以上のブレーキ制御装置を備えることができる。主ブレーキ空気圧回路(MBC)及び/又はバックアップブレーキ空気圧回路(BKC)から各ブレーキアクチュエータに制御された圧力を供給するために、いくつかの可能な構成が想定される。
【0023】
一態様によれば、システムは、1つ以上のローカルブレーキ装置を備えることができる。そのようなブレーキ装置はそれぞれ、サービスブレーキチャンバ(C2)を有するブレーキアクチュエータ(BA)と、ブレーキアクチュエータ(BA)のサービスブレーキチャンバ(C2)に接続された出口(26)、主ブレーキ空気圧回路(MBC)に接続された第1の入口(21)、及びバックアップブレーキ空気圧回路(BKC)に接続された第2の入口(22)を有するダブルチェックバルブ(2FL,2FR,2RL,2RR)と、を備えている。バックアップブレーキ空気圧回路(BKC)における圧力(PBK)は、主ブレーキ空気圧回路(MBC)における圧力(PREF)に対して、作動待機範囲内にある。作動待機範囲は、0.5PREF<PBK<0.99PREFという条件によって定義されている。これによって、100%のPREFに到達するまでの時間は、バックアップブレーキ空気圧回路(BKC)が短く、ブレーキ空気圧回路が圧力0から起動した場合よりはるかに短くなる。
【0024】
一態様によれば、作動待機範囲は、0.85PREF<PBK<0.95PREFであると見做される。これによって、100%のPREFに到達するまでの時間は、バックアックブレーキ空気圧回路(BKC)がより短くなる。実際には、VMM1からVMM2に切り替えて100%のフルエンベロープ性能にまで到達するまでの時間は、0.5秒より短く、さらに0.3秒より短く、さらに0.2秒より短くすることができる。これによって、任意のブレーキ条件、さらには極端な緊急ブレーキの下でのブレーキを含む、車両モーション管理の移行にシームレスに対応することができる。
【0025】
一態様によれば、アンチロック機能(ABS機能)を実行する圧力制御弁(PCV)が提供される。圧力制御バルブは、ダブルチェックバルブとブレーキアクチュエータ(BA)のサービスブレーキチャンバ(C2)との間に配置される。これによって、ABS機能は、VMM1が制御されているときの公称動作と、VMM2が制御を引き継いだときのバックアップ状態と、の両方で提供される。この構成において、圧力制御バルブは、VMM1及びVMM2によって並列に制御することができる。
【0026】
代替態様によれば、アンチロック機能(ABS機能)を実行する圧力制御バルブ(PCV)が提供される。圧力制御バルブは、バックアップブレーキ空気圧回路(BKC)のダブルチェックバルブの上流に配置される。これによって、ABS機能は、VMM2が制御を引き継いだバックアップ状態であっても提供される。
【0027】
一態様によれば、第1の車両モーション管理コントローラ(VMM1)と第2の車両モーション管理コントローラ(VMM2)との間に相互通信リンク(28)が提供される。これによって、第1及び第2の車両モーション管理コントローラは、“アライブ(alive)”信号及び“ヘルス(healthy)”信号を相互交換することにより相互監視することができ、一方のコントローラがいつ停止しようとも故障を検知することができる。
【0028】
一態様によれば、作動待機モードにおいて、第2の車両モーション管理コントローラ(VMM2)が、第1の車両モーション管理コントローラ(VMM1)から現在の設定値をリアルタイムに受信する。これによって、第2の車両モーション管理コントローラ(VMM2)は、リアルタイムにオンライン設定値に追従することができ、第2の車両モーション管理コントローラ(VMM2)がこれから作動待機圧力設定値を算出することができる。
【0029】
一態様によれば、バックアップブレーキ空気圧回路(BKC)は、パーキングブレーキ回路によって形成することができる。この場合、プリチャージは、通常の走行状態において、通常のパーキングブレーキ圧力(PBref)より低い圧力である。従って、所望のバックアップブレーキ空気圧回路を利用可能にするのに必要な追加コンポーネントはほとんどなく、これによって費用効果の高いソリューションを形成することができる。これは特に、パーキングブレーキ機能がそれ自体でアンチロック機能を特徴付けるときに関連する。しかしながら、ここでの圧力ロジックは逆であることに留意されたい。8~9バールの圧力が供給されて、ブレーキアクチュエータ(BA)のチャンバ(C1)のパーキングブレーキが解除され、反対に圧力を低下させて、ブレーキ力を作用させなければならない。従って、プリチャージに代えて、チャンバC1のパーキングブレーキに供給される圧力は、[5~6バール]の範囲の閾値までデチャージされる。よって、この圧力がさらに低下すると、即座にブレーキが作動する。
【0030】
本開示の他の態様によれば、ブレーキ機能を含む車両モーションシステムを制御する方法が提案される。車両モーションシステムは、ブレーキ機能に関する少なくとも1つ以上のブレーキアクチュエータを有するモーションアクチュエータと、ブレーキ機能を制御するための冗長アセンブリを形成する、少なくとも第1の車両モーション管理コントローラ(VMM1)及び第2の車両モーション管理コントローラ(VMM2)と、を備えている。この方法は、(a)走行状態において、第1の車両モーション管理コントローラが、現在の公称期待ブレーキ性能でブレーキアクチュエータを制御する一方、第2の車両モーション管理コントローラ(VMM2)が、ブレーキ性能に実質的に影響がない作動待機モードにあり、(b)VMM1の非公称状態、即ち、VMM1の一部又はすべての機能が利用できなくなると、第2の車両モーション管理コントローラ(VMM2)が、現在の公称期待ブレーキ性能でもって、第1の車両モーション管理コントローラからブレーキアクチュエータの制御を引き継ぐように構成されている。制御の引継ぎは、1秒未満、好ましくは0.5秒未満、より好ましくは0.3秒未満の時間間隔(SWT)内に行われる。
【0031】
この方法のおかげで、高速のホットテイクオーバが行われる。VMM1からVMM2に切り替えて100%のフルエンベロープ性能に到達するまでの時間は非常に短くなり、これによって、任意のブレーキ条件、極端な走行状態及びハンドリング状態の下でのブレーキを含む、車両モーション管理VMM1からVMM2への移行にシームレスに対応することができる。
【0032】
有利なことには、作動待機モードは、ブレーキアクチュエータのオンライン制御によって使用される設定値レベルよりやや低い設定値レベルでもって、ほぼすぐに使用できるモードである。
【0033】
第1の車両モーション管理コントローラ(又はこれに関連するアクチュエータ若しくはこれに関連する不可欠なセンサ)にいつ問題が発生しても、第2の車両モーション管理コントローラ(VMM2)が、第1の車両モーション管理コントローラに関連するアクチュエータ又はこれに関連するセンサと共に、短時間でこれを引き継ぐことができる。
【0034】
「VMM1の非公称状態」は、第1の車両モーション管理コントローラVMM自体若しくはその電源に影響する問題、VMM1によって制御されるブレーキアクチュエータに影響する重大な問題、又は適切な制御を実行するのに不可欠なセンサに影響する問題のいずれかであると理解すべきである。
【0035】
ステアリング機能についても同様なプロセスが実行できることに留意されたい。
【0036】
一態様によれば、この方法は、作動待機モードにおいて、第2の車両モーション管理コントローラ(VMM2)が、第1の車両モーション管理コントローラ(VMM1)から現在の設定値をリアルタイムに受信する。これによって、第2の車両モーション管理コントローラ(VMM2)は、リアルタイムにオンライン設定値に追従することができ、第2の車両モーション管理コントローラ(VMM2)は、これらから作動待機圧力設定値を算出することができる。
【0037】
一態様によれば、第2の車両モーション管理コントローラ(VMM2)は、第1の車両モーション管理コントローラ(VMM1)から受信した現在の設定値をそれ自体でリアルタイムに算出する。
【0038】
一態様によれば、第1の車両モーション管理コントローラ(VMM1)と第2の車両モーション管理コントローラ(VMM2)との間に、「アライブ」信号及び「ヘルス」信号を相互交換する相互通信リンク(28)が提供される。これによって、第1及び第2の車両モーション管理コントローラは、「アライブ」信号及び「ヘルス」信号を相互交換することによって、相互監視することができ、従って、一方のコントローラがいつ停止しても、故障を検知することができる。
【0039】
他の態様によれば、本開示はまた、上述した制御装置及び/又はシステムを備えた車両を対象とする。
【図面の簡単な説明】
【0040】
本発明の他の特徴及び利点は、非限定的な例として添付図面を参照して説明された、2つの実施形態の以下の詳細な説明から明らかであろう。
【0041】
図1】車両の自律走行システムの一般的なレイアウトを示す。
図2】車両の冗長自律走行システムの回路レイアウトを示す。
図3】本発明によるトラックの電空ブレーキシステムの回路レイアウトを示す。
図4図3と同様な変形実施形態を示す。
図5A】空気生成モジュールの特定部分の詳細図を示す。
図5B図2Aと同様な変形例を示す。
図6】第1の車両モーション管理コントローラから第2の車両モーション管理コントローラへのホットスワップを示すタイムチャートである。
図6B図6のタイムチャートの詳細図である。
図7】電気的及び機能的な図を示す。
図8】ブレーキ空気圧アクチュエータを示す。
図9】車両モーション管理コントローラの機能ブロック図である。
図10図3と同様な変形実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図において、同一の参照符号は同一又は類似の要素を示している。特に明記しない限り、空気圧ラインは電気ラインより太く示されている。
【0043】
[システムの概要]
図1は、車両の自律走行システムの一般的なレイアウトを示している。提案構成は、バス及びコーチを含む任意の種類の中型車両又は大型車両に有効である。しかしながら、軽車両及びオフロード車両もまた、本開示に含むことができる。トレーラもまた、本開示の範囲内で考慮される。
【0044】
ここで検討するトラックは、トラクタ/トレーラ構成の牽引ユニット、又はユーティリティ「キャリア」トラックである。
【0045】
少なくとも1つのフロントアクスルはステアリングアクスルであり、リアアクスルを含むステアリング機能を有する他のアクスルを除外しない。
【0046】
ここで検討するトラックは、1つ以上のレベルの自律走行機能を持つことができ、ブレーキシステムにおいて冗長性に対するニーズが強化されている。
【0047】
自律走行機能は、いくつかのレイヤに分解することができる。ベースレイヤL0には、推進トルク機能、ブレーキ機能及びステアリング機能などの経路制御エンティティが設けられている。
【0048】
ドライブトレイントルク機能は、アセンブリ(エンジン、ギアボックス及びトランスミッション)を備えている。トルクは、スロットル装置によって制御される。スロットル装置は、この場合は電動スロットル装置であり、ドライバがいればアクセルペダルから、又は1つ以上の電子制御ユニットによって従来通り制御することができる。
【0049】
ブレーキ機能の詳細については後述する。ドライブトレイントルク機能及びブレーキ機能は、車両の縦方向のモーション制御に貢献する。
【0050】
ここで、推進及びブレーキの両方を担う1つ以上のホイールモータ(即ち、ホイール領域に一体化されたトラクションモータ)を提供することができることに留意されたい。
【0051】
ステアリング機能は、少なくともフロントアクスルのステアリング角を能動的に制御するように構成された、1つ以上のアクチュエータを必要とする。
【0052】
ステアリング機能は、車両のヨー及び横方向のモーション制御に主に貢献する。しかしながら、選択的なブレーキはまた、ESP機能が関係する限り、車両のヨー及び横方向のモーション制御に貢献することができる。
【0053】
ステアリング機能は、ブレーキ機能と一緒になって、ロールオーバ防止機能にも貢献する。
【0054】
レイヤL1は、「車両モーション及び出力管理」とも呼ばれ、1つ以上の電子制御ユニット又は同等のコンピュータ資源を備え、縦方向のモーション制御機能、ヨー及び横方向のモーション制御機能、並びにロールオーバ防止機能を管理する。
【0055】
1つ以上の電子制御ユニットは、レイヤL0に向けてリクエストを作成して送信する。各機能(ドライブトレイントルク機能、ブレーキ機能、ステアリング機能)は、それらのアクチュエータのステータス及び能力を返送する。レイヤL1では、車両の実際の挙動に関するリアルタイム信号を伝達する、慣性センサ76を提供することができる。
【0056】
レイヤL2は、「交通状況管理」と呼ばれ、1つ以上の電子制御ユニット又は同等のコンピュータ資源を備え、車両の短時間の経路に関して決定する。レイヤL2では、GPS、Glonass(登録商標)、Galileo(登録商標)及び同様なソリューションなどの正確な位置情報測定手段、並びに/又は車線(ビーコンなど)に対する相対位置測定手段を提供することができる。レイヤL2では、車両の隣接環境に関するイメージの流れを伝達するカメラを提供することができる。車両の短時間の経路に関する決定は、リクエストとして下層のレイヤL1に伝達される。下層のレイヤL1は、車両の実際の挙動、及び車両モーションシステムの高レベルなステータスをレイヤL2に返送する。
【0057】
レイヤL3は、「ルート管理」と呼ばれ、1つ以上の電子制御ユニット又は同等なコンピュータ資源を備え、車両の中期/長期の経路に関して決定する。レイヤL3は、ナビゲーション計算、交通渋滞回避などを含んでいてもよい。
【0058】
図2は、上述したように、主にレイヤL0,L1に含まれる冗長自律走行システムの回路レイアウトを示している。ここでは、空気圧ブレーキシステムの場合を検討するが、他の技術的ソリューションも上述したように検討する。
【0059】
システム全体では、2つの車両モーション電子制御ユニットVMM1,VMM2が提供される。これは、同様に、自律走行ECU VMM1,VMM2又は車両モーションコントローラとも呼ばれる。
【0060】
2つの車両モーション制御ユニットのそれぞれは、レイヤL0のエンティティにリクエストを送信し、その応答として様々なアクチュエータに関するステータス及び能力を受信する。
【0061】
ここで、ブレーキ機能にさらに注意を向けると、2つの車両モーション制御ユニットのそれぞれは、後述する様々な空気圧回路及び空気圧制御装置にリクエストを送信する。ここで、図示の例では、主ブレーキ空気圧回路MBC(第1のブレーキチャネル)、及びバックアップブレーキ空気圧回路BKC(第2のブレーキチャネル)が提供される。
【0062】
本開示は、2つのチャネル、例えば、チャネルA及びチャネルBを有する2つの冗長ブレーキアセンブリが提供される場合も含んでいる。2つのチャネルは、完全に対称(バックアップは主ブレーキ空気圧回路の完全な複製)であり、VMM1及びVMM2の役割を交換できる。
【0063】
上記の空気圧ブレーキシステムは、どんな車速であっても、通常動作中に車両を減速及び停止させるために使用される、車両の主サービスブレーキシステムを構成している。そのうえ、パーキングブレーキシステムは、車両を使用しないときに、車両を停止状態に保つために主に使用される。パーキングブレーキシステムは、サービスブレーキシステムと少なくとも部分的に組み合わせることができるが、それにもかかわらず、パーキングブレーキシステムは、サービスブレーキシステムから独立することができ、例えば、車両のトランスミッションを遮断するシステムを備えることができる。
【0064】
トラックやバスなどの大型車両にはまた、多くの場合、減速システム(同様に「リターダ」と呼ばれる)が搭載されている。減速システムは、車両を減速することのみが可能であるが、多くの場合、車両を妥当な距離で完全に効果的に停止させることができない。流体力学的なブレーキ又は電気力学的なブレーキなどのそのような減速システムは、車両が特定速度を超えて走行しているときに最も効果的である。そのような減速システムは、上述した空気圧ブレーキシステムとは本質的に異なっている。
【0065】
図3は、トラックの電空ブレーキシステムの回路レイアウトを示している。
【0066】
明確にするために、すべてのホイールについて同一のブレーキアクチュエータを示すが、もちろん、ホイールの位置(フロント、リア、トレーラなど)に応じて変更及び異ならせてもよい。
【0067】
当然知られているように、サービスブレーキアクチュエータ及びパーキングブレーキアクチュエータを組み合わせることができる、ブレーキアクチュエータ(RW-L,RW-R,FW-L,FW-R)が提供される。
【0068】
図8に示すように、各ブレーキアクチュエータ(一般的にBAと呼ばれる)は、第1の方向D1に第1の進行力E1を作用させる第1のスプリング82によって付勢される第1のピストン81を含んでいる。ブレーキアクチュエータBAはまた、第1の方向D1とは反対側の第2の方向D2に第2の進行力E2を作用させる第2のスプリング84によって付勢される第2のピストン83を含んでいる。第2のピストン83は、関連するブレーキ機構(図示しないブレーキパッド、ブレーキディスクなど)を駆動するブレーキアクチュエータの出力ロッド88を有する剛体である。固定壁86は、ブレーキアクチュエータのハウジング87内に取り付けられている。固定壁86は、第1のピストン81及び第2のピストン83をそれぞれ収容する、可変容積の2つのチャンバC1,C2を区画する。出力ロッド88は第2のピストン83に連結され、気密状態で固定壁86を貫通して、第1のピストンに結合されている。第1のスプリング82及び第2のスプリング84は、第1の進行力E1が第2の進行力E2より大きくなるように選定されている。従って、チャンバC1及びC2に空気圧がない場合、第1の進行力E1が第1のピストン81を第1の方向D1に押す。この進行力は、第2のピストン83によって出力ロッド88に伝達されて、関連するブレーキ機構を第1の方向に作動させる。そのような状況では、ブレーキ機構が、関連する左後ホイールのブレーキディスク又はブレーキドラムに係合する。これは、トラックのパーキングブレーキ動作に該当する。換言すると、加圧空気がブレーキアクチュエータBAに供給されない場合、トラックのパーキングブレーキが作動する。ピストンの代わりに、フレキシブル部材又はダイアフラムを使用することができる。
【0069】
入力PBR(パーキングブレーキ解除、フロント及びリアのそれぞれに対するPBR2又はPBR1)によってチャンバC1に加圧空気が供給されると、このチャンバ内の空気圧力が第2のスプリング82に抗して第1のピストン81を押し、第2のスプリング84が第2のピストン83を第2の方向D2に押す。これは、空気圧力によるトラックのパーキングブレーキの解除に該当する。
【0070】
パーキングブレーキが解除され、加圧空気が入力BC(ブレーキ制御)によってチャンバC2に供給されると、チャンバC2内の空気圧力が、ブレーキ機構を徐々に作動させて関連するホイールにブレーキをかける、第2のピストン83を第1の方向D1に押す。アクチュエータによってブレーキ機構に伝達される機械的な進行力は、チャンバC2に供給される空気圧力とともに増加する。これは、トラックのサービスブレーキの作動に該当する。サービスブレーキアクチュエータは、空気圧力を機械的な力に変換する装置である。
【0071】
トラックに連結されたトレーラもまた、同様なホイールブレーキ制御装置を備えることができる。
【0072】
2つのフロントアクスル、及び/又は2つ以上のリアアクスルがある場合、4つ以上のブレーキアクチュエータを提供することができる。ブレーキアクチュエータの個数は、2,4,6,8又はそれ以上にすることができる。いくつかのブレーキアクチュエータがパーキングブレーキ機能を失うことには何の価値もない。ブレーキアクチュエータの個数は、アクスルの個数の2倍とすることができる。
【0073】
図示の例では、各アクスル又はアクスルのグループには、ブレーキモジュール、例えば、フロントアクスルブレーキモジュールFBM、及び1つ以上のリアアクスルブレーキモジュールRBMが設けられている。また、フロントアクスルモジュールFBMに関連付けられたバックアップリレーバルブBKRV-Fが提供される。さらに、各リアアクスルブレーキモジュールRBMに関連付けられた1つ以上のバックアップリレーバルブBKRV-Rが提供される。
【0074】
しかしながら、図10に示す異なる構成では、ホイールごとにバック機能と一体化された1つの分散型ブレーキモジュールWBCU、又は2つのホイールごとにバックアップ機能と一体化された1つのそのような分散型ブレーキモジュールWBCUを提供することができる。
【0075】
フロントアクスルブレーキモジュールFBMは、一般的に、圧力制御バルブ(要するにPCV)を介して、左右のフロント空気圧ブレーキアクチュエータ(FW-L,FW-R)に空気圧制御圧力を供給する。各圧力制御バルブPCVは、アンチロック機能(ABS機能)を実行する。例えば、各圧力制御バルブPCVは、ブレーキチャンバへの通路又はこれに至る空気を遮断することができる直列配置の第1のバルブと、ブレーキチャンバ回路から空気を取り出して大気中に放出する第2のバルブと、を有している。これらのバルブは、各ホイールの速度のリアルタイム分析に従って制御されている。
【0076】
このレイアウトに関してより詳細には、右ホイールチャネルのフロントアクスルブレーキモジュールFBMの下流に、圧力制御バルブ3Rが配置され、左ホイールチャネルのフロントアクスルブレーキモジュールFBMの下流に、圧力制御バルブ3Lが配置されている。
【0077】
同様に、右ホイールチャネルのバックアップリレーバルブBKRV-Rの下流に、圧力制御バルブ4Rが配置され、左ホイールチャネルのバックアップリレーバルブBKRV-Lの下流に、圧力制御バルブ4Lが配置されている。
【0078】
有利なことには、本開示によれば、ダブルチェックバルブ(2FL,2FR,2RL,2RR)が提供される。そのようなダブルチェックバルブは、2つの入力のうち高圧の空気を出力するため、「セレクトハイ」としても知られている。
【0079】
ダブルチェックバルブ2FRは、右ホイールチャネルの圧力制御バルブの下流に配置され、ダブルチェックバルブ2FRの出力は、関連するブレーキアクチュエータFW-RのチャンバC2に接続されている。ダブルチェックバルブ2FLは、左ホイールチャネルの圧力制御バルブの下流に配置され、ダブルチェックバルブ2FLの出力は、関連するブレーキアクチュエータFW-LのチャンバC2に接続されている。
【0080】
リアアクスルブレーキモジュールRBMは、一般的に、フロントアクスルの1つと同様な配置をとり、左右のリア空気圧ブレーキアクチュエータ(RW-L,RW-R)に空気圧制御圧力を供給する。
【0081】
圧力制御バルブ4R,4Lは、左右のホイールチャネルのそれぞれについて、リアアクスルブレーキモジュールRBMの下流に配置されている。圧力制御バルブ5R,5Lは、左右のホイールチャネルのそれぞれについて、バックアップリレーバルブBKRV-Rの下流に配置されている。ダブルチェックバルブ2RRは、右ホイールチャネルの圧力制御バルブの下流に配置され、ダブルチェックバルブ2RRの出力は、関連するブレーキアクチュエータRW-RのチャンバC2に接続されている。ダブルチェックバルブ2RLは、左ホイールチャネルの圧力制御バルブの下流に配置され、ダブルチェックバルブ2RLの出力は、関連するブレーキアクチュエータRW-LのチャンバC2に接続されている。
【0082】
この配置のおかげで、2つの独立した空気圧回路は、主ブレーキ空気圧回路MBC、及びバックアップブレーキ空気圧回路BKCを提供する。バックアップブレーキ空気圧回路BKCは、「セカンダリ」又は「補助」ブレーキ空気圧回路とも呼ばれる。
【0083】
図5Aでより詳細に示すように、各ダブルチェックバルブ(参照符号2によって参照される)は、ブレーキアクチュエータBAのサービスブレーキチャンバC2に接続された出口26、主ブレーキ空気圧回路MBCに接続された第1の入口21、及びバックアップブレーキ空気圧回路BKCに接続された第2の入口22を有している。
【0084】
主ブレーキ空気圧回路MBCとバックアップブレーキ空気圧回路BKCとの間の唯一の共通部分が、ブレーキアクチュエータBAのチャンバC2につながる「最後の」パイプ30であることに留意されたい。
【0085】
第1のPCV(3i,5i)は、ダブルチェックバルブ2の上流の主ブレーキ空気圧回路MBCに配置されている(iはR又はLを夫々示す)。第2のPCV(4i,6i)は、ダブルチェックバルブ2の上流のバックアップブレーキ空気圧回路BKCに配置されている。第1のPCVは、第1の車両モーション電子制御ユニットから伝達された電気信号ES1によって制御され、第2のPCVは、第2の車両モーション電子制御ユニットから伝達された電気信号ES2によって制御される。
【0086】
フロントアクスルブレーキモジュール(FBM)及びリアアクスルブレーキモジュール(RBM)はそれぞれ、それ自体知られている空電装置であって、空気圧リレー機能を提供するとともに、主ブレーキ空気圧回路MBCに関連している。要するに、制御信号(電気信号及び/又は空気圧信号)に正確に従いながら、加圧空気源から選択的に空気を取り出し、空気を選択的に大気中に放出する。その出力は、上述した圧力制御バルブ及びダブルチェックバルブを介して、関連するブレーキアクチュエータBAのチャンバC2に接続されている。
【0087】
フロントバックアップリレーバルブBKRV-F及びリアバックアップリレーバルブBKRV-Fはそれぞれ、空電又は純粋な空気圧の何れかとして知られている、空気圧リレーバルブである。その出力は、バックアップ源として、上述した圧力制御バルブ及びダブルチェックバルブを介して、関連するブレーキアクチュエータBAのチャンバC2に接続されている。
【0088】
図3及び図4に示すように、第1の空気供給回路AC1及び第2の空気供給回路AC2が提供される。また、図示の第1実施形態では、ホイールブレーキ制御装置への冗長空気供給源を形成する、第3の空気供給回路AC3が提供される。
【0089】
第1の空気供給回路AC1に接続された第1の空気リザーバR1が提供される。
【0090】
第2の空気供給回路AC2に接続された第2の空気リザーバR2が提供される。
【0091】
第3の空気供給回路AC3に接続された第3の空気リザーバR3を提供してもよい。
【0092】
別の言い方をすれば、相互に独立するように設計された第1、第2及び第3の空気供給回路(AC1,AC2,AC3)に夫々接続された、3つの空気リザーバ(R1,R2,R3、「容器」とも呼ばれる)が提供される。第1及び第2の空気供給回路AC1,AC2は、通常、約12バールのサービス圧力に設定されている。実際問題として、第1及び第2の空気供給回路AC1,AC2は、[5バール~15バール]の範囲内に含まれるサービス圧力、好ましくは[7バール~12バール]の範囲内に含まれるサービス圧力を有していてもよい。冗長な第3の空気供給回路AC3は、同じ約12バールのサービス圧力に設定してもよい。
【0093】
第1の空気供給回路AC1は、リアアクスルブレーキモジュールRBMに加圧空気を供給する。第2の空気供給回路AC2は、フロントアクスルブレーキモジュールFBMに加圧空気を供給する。AC1は、時々「プライマリ」回路と呼ばれ、AC2は、通常、リアブレーキがフロントブレーキより強力であるため、時々「セカンダリ」回路と呼ばれる。
【0094】
周囲から取り込んだ空気を圧縮する空気コンプレッサ60が提供される。コンプレッサの出力は、フィルタ/ドライヤ62を通過する。これらのコンポーネントは、それ自体知られているので、ここでは詳細に説明しない。
【0095】
好ましくは保護容器内にコンポーネントを収容した、空気生成モジュール6(略して「APM」)が提供され、これによって、機械的アタック及び流体的アタックに対する保護が提供される。空気生成モジュール6は、キャビンの後方に配置され、キャリアタイプトラックについてはトラックの一側面からアクセス可能、又はキャビンがチルト又はロックする場合には上面からアクセス可能である。空気生成モジュール6は、様々なバルブ、ソレノイド、リレーバルブ、圧力センサ及び制御ユニット61を備えている。
【0096】
空気生成モジュール6は、パーキングブレーキ機能のコアを収容し、トラックPBRリレーバルブ8を備えている。それ自体知られているように、APM6の制御ユニット61に伝達される電気信号S18を出力する、パーキングブレーキ電気入力装置18が提供される。米国規格に関して、トレーラブレーキ制御に関連して追加のブレーキハンドル19(「赤いノブ」)が提供されてもよい。関連する電気信号S19は、APM6の制御ユニット61に伝達される。
【0097】
コンプレッサ及びフィルタから供給される加圧空気のために、トランク部AC0が提供される。トランク部AC0は、オーバーフローバルブ(図示せず)を介して、第1及び第2の空気供給回路AC1,AC2、並びに第3の空気供給回路AC3に空気を分配する。また、トランク部AC0は、オーバーフローバルブを介して、トラックPBRリレーバルブ8及びトレーラリレーバルブ1に空気を供給する、AC4で示す他の空気供給回路に空気を分配する。
【0098】
図示の例では、2つの自律走行ECU71,72が提供される。
【0099】
参照符号71,72はそれぞれ、VMM1,VMM2を指しているが、その逆も可能であることを既に説明した。
【0100】
一例によれば、第1の自律走行制御ユニット71によって伝達される電気制御信号はES1で示され、第2の自律走行制御ユニット72によって伝達される電気制御信号はES2で示され、これらは従来の電気制御信号又はこれと同等なデータバスメッセージとして形成される。
【0101】
ブレーキシステムは、第1の入力電気信号S16を伝達するサービスブレーキ電子入力装置16(一般的にフットブレーキペダルとして形成される)を備えている。ブレーキシステムは、第1の入力電気信号S16を処理するとともに、電気制御信号(ES1,ES2)をフロントアクスルブレーキ制御ユニット及びリアアクスルブレーキ制御ユニットに伝達するように構成された、2つ(又はそれ以上)の電子ブレーキ制御ユニット71,72を備えている。第1及び第2の自律走行制御ユニット71,72は、少なくとも、自律走行制御ユニット71,72で分析される、イメージS75の流れを提供するカメラ75に依存している。レーダ、ライダーなどの慣性センサ76などの他のタイプのセンサ、及び様々な交通認識エンティティ(固定エンティティ又はモバイルエンティティ)から受信した通信データも提供することができる。
【0102】
主ブレーキ空気圧回路MBCに含まれるコンポーネントは、第1の自律走行制御ユニット71からの電気信号ES1によって主に制御されている。
【0103】
第1のPCV3R,3L,5L,5Rは、第1の自律走行制御ユニット71から伝達された電気信号ES1によって制御される一方、第2のPCV4R,4L,6L,6Rは、第2の自律走行制御ユニット72から伝達される電気信号ES2によって制御される。
【0104】
バックアップブレーキ空気圧回路BKCに含まれるコンポーネントは、第2の自律走行制御ユニット72からの電気信号ES2によって主に制御されている。
【0105】
第1及び第2の自律走行ECU71,72は、一体となってブレーキ機能を制御する冗長アセンブリを形成する。しかしながら、冗長性は、制御ユニットレベルだけでなく、ブレークアクチュエータに至るまでの中間の制御装置でも得られる。
【0106】
第1及び第2の自律走行ECU71,72は、それぞれ独立した電源PS1,PS2によって給電されることに留意されたい。
【0107】
加圧空気の供給のために冗長性が提供されていることも留意されたい。
【0108】
従って、2つの完全に独立したブレーキチャネルが提供され、高評価の冗長性が得られる。
【0109】
図4及び図5Bは、ダブルチェックバルブ(2FL,2FR,2RL,2RR)及び圧力制御バルブについて、異なる装置を有する変形実施形態を示している。
【0110】
圧力制御バルブは、主ブレーキ空気圧回路MBC及びバックアップブレーキ空気圧回路BKCの両方に関する共通部分のダブルチェックバルブの下流に配置されている。別の言い方をすれば、ブレーキ付きホイールのそれぞれに対して1つの圧力制御バルブのみがある。図示の例では、圧力制御バルブ34Lは左のフロントホイール専用であり、圧力制御バルブ34Rは右のフロントホイール専用であり、圧力制御バルブ56Lは左のリアホイール専用であり、圧力制御バルブ56Rは右のリアホイール専用である。
【0111】
この場合、各圧力制御バルブ34i,56i(iは左右のそれぞれを示す)は、第1及び第2の車両モーション管理コントローラVMM1,VMM2の両方から来る電気信号ES1及びES2によってデュアルモードで制御される。
【0112】
各ダブルチェックバルブについて、一方の入力21は、主ブレーキ空気圧回路MBC(導管33)から供給され、他方の入力22は、バックアップブレーキ空気圧回路BKC(導管32)から供給される。その出力は、関連する圧力制御バルブPCVに(導管31を介して)供給され、関連する圧力制御バルブPCVは、導管30を介して、関連するブレーキアクチュエータBAのチャンバC2に接続される。
【0113】
図3及び図4に示す例では、バックアップリレーバルブBKRV-F,BKRV-Rは純粋な空気圧式であって、空気生成モジュール6によって制御及び出力される、バックアップ空気圧ラインBBKCによって制御される。BBKCは、比例制御ラインである。
【0114】
また、各空気圧回路の様々な部分30,31,32,33,34における圧力を測定する圧力センサ(図示せず)を提供してもよい。
【0115】
[ホットスイッチオーバ/VMM2のVMM1からの引き継ぎ]
このシステムは、上記の奨励された制御装置のおかげで、有利には、ここで説明するホットスワップ機能を備えている。
【0116】
この特徴によれば、所定の条件で、第2の車両モーション管理コントローラVMM2は、第1の車両モーション管理コントローラVMM1からブレーキアクチュエータの制御を迅速に引き継ぐように構成されている。実際には、図6及び図6Bに示すように、この移行は、特に車両がブレーキをかけているときを含む、車両走行中に実行される。
【0117】
このホットテイクオーバ移行が不必要な走行条件があってもよい。例えば、車速が40km/h未満の場合、又はブレーキ要求がないか下限閾値を下回っている場合、ホットテイクオーバ移行は不必要であってもよい。
【0118】
時間T1の前に、第1の車両モーション管理コントローラVMM1は、現在の公称期待ブレーキ性能でブレーキアクチュエータを制御する。VMM1は、ブレーキを「オンライン」制御し、ブレーキ空気圧PREFによって定義されるブレーキ設定値を有している。
【0119】
実際には、図6のタイミングチャート最初の部分に示すように、PREFが時間とともに増加する。PREF(t)に特に言及し、これを「基準」圧力と呼ぶこともできる。同時に、第2の車両モーション管理コントローラVMM2によって制御される第2のバックアップチャネルも制御を実行するが、圧力はPREF(t)より少し低くなる。別の言い方をすれば、図示のバックアップ圧力PBKは、このバックアップ圧力がブレーキ性能に実質的な影響がないように間隔を保持しつつ、制御された基準圧力(PREF(t))に追従する。ここで、ダブルチェックバルブ(2FL,2FR,2RL,2RR)は、「セレクトハイ」コネクタとして作動することに留意されたい。従って、バックアップ圧力PBKが基準圧力より低くなることから、ブレーキチャンバC2は基準圧力PREFのみによって制御される。
【0120】
本発明の説明では、バックアップ空気圧回路は、プリチャージモードにある。一般的に、それは、アイドルモードとは異なる、「作動待機」モードと呼ばれるモードである。
【0121】
ここで、時間T1の前に、ホットテイクオーバ移行を保証する決定につながる、1つの問題が発生することを想定する。
【0122】
この問題は、第1のコントローラVMM1それ自体若しくはその電源に影響する問題、VMM1によって制御されるブレーキアクチュエータに影響する重要な問題、又は適切な制御を実行するのに不可欠なセンサに影響する問題のいずれかである。VMM1が重要な問題を認識し、VMM2にリーダシップを与える決定をすることが起こり得る。VMM1は、フィードバック、即ち、その関連するアクチュエータから受信したステータス及び能力に応じて、第1のブレーキチャネルがもはや現在の公称期待ブレーキ性能を発揮できないと決定することができる。
【0123】
VMM1は、一般的に、非公称状態又は想定される十分なブレーキ性能が発揮できない場合、VMM2にリーダシップを与えると決定することができる。
【0124】
一方、VMM1が作動していない(もはや停止又は提供されなくなった)と決定された後、VMM2がそれ自体でこれを引き継ぐことが起こるかも知れない。この目的のため、第1及び第2の車両モーション管理コントローラVMM1,VMM2の間に相互通信リンク28(好ましくは直接リンク)が提供される。これによって、第1及び第2の車両モーション管理コントローラは、「アライブ」信号及び「ヘルス」信号を相互交換することで、相互に監視し合うことができる。従って、一方のコントローラが作動しなくなったときにはいつでも、故障を検知することができる。
【0125】
有利なことに、本提案によれば、ホットテイクオーバ移行は、実行するのに短時間しか必要としない。図6及び図6Bに示すように、スワップ時間SWT(SWT=T2-T1)は、1秒未満である。非常に多くの場合、スワップ時間SWTは、0.5秒未満であることが分かった。本発明者らは、0.3秒、さらには0.2秒という短いホットテイクオーバ移行のスワップ時間SWTをどうにか実現することができた。
【0126】
時間T2は、主ブレーキ空気圧回路に代わって、バックアップブレーキ空気圧回路BKCが目標期待圧力PREFを適用する瞬間である。ブレーキ性能のわずかな損失は、時間T1と時間T2との間でのみ発生する。
【0127】
PREFとPBKとの間の追従間隔を小さくすることができ、これは、例えば、1バールである。これは、PREFの割合とすることもできる。
【0128】
一例によれば、制御装置及びシステムロジックは、0.5PREF<PBK<0.99PREFという式を満足するように設計することができる。
【0129】
他の例によれば、制御装置及びシステムロジックは、0.85PREF<PBK<0.95PREFという式を満足するように設計することができる。
【0130】
そのように間隔が狭い場合、圧力がPBKからPREFに上昇するのに必要な時間が大幅に短縮し、ホットテイクオーバ移行を非常に短い時間で行うことができる。
【0131】
作動待機モードにおいて、第2の車両モーション管理コントローラVMM2が、第1の車両モーション管理コントローラVMM1から現在の設定値(PREFなど)をリアルタイムで受信する。VMM2は、PBK(時間とともに変化するためにPBK(t))からそれらを算出することができる。
【0132】
第2の車両モーション管理コントローラVMM2は、第1の車両モーション管理コントローラVMM1から受信した第1の車両モーション管理コントローラVMM1の設定値から、現在の設定値をそれ自体でリアルタイムに算出することができる。
【0133】
その代わりに、第1の車両モーション管理コントローラVMM1は、バックアップ設定値を算出して、第2の車両モーション管理コントローラVMM2に送信することもできる。
【0134】
図9に示すように、第1及び第2の車両モーション管理コントローラVMM1,VMM2はそれぞれ、監視対象のアクチュエータの故障ハンドラ64と、VMMリソース及びマイクロコントローラ自体の適切な動作を監視する故障ハンドラ65と、を示している(この監視は、ウォッチドッグ回路、好ましくはマイクロコントローラのコアから独立しているものでなされるべきである)。監視対象のアクチュエータの故障ハンドラは、専用アクチュエータ又は共用アクチュエータに関連することができる。また、妥当性テスト(plausibility test)及び他のセンサとの整合性チェックを通して、センサが監視されている。
【0135】
アクチュエータの故障ハンドラ64に関して、この故障ハンドラでは、各アクチュエータから受信したステータス及び能力情報が監視されている。アクチュエータとの「通信が途絶えた」ことも、ここでは監視されている。そして、アクチュエータの故障ハンドラは、この情報を集約して、検出された故障が重大であるか否かを決定する。
【0136】
コアVMMの故障ハンドラ65に関して、この故障ハンドラは、実際の「VMM制御」のアルゴリズム自体の故障を検知することを目的としている。これは2つのことをチェックすることを目的としている。最初に、それは、VMM制御ブロックの入力(交通状況管理レイヤからの入力)をVMM制御ブロック66から生成されたアクチュエータのリクエストと比較し、これらが妥当であるか/整合しているか(即ち、生成されたリクエスト信号が特定範囲内にあるか)をチェックする。次に、それは、交通状況管理から送信されたリクエストがあれば、測定された車両のモーション(慣性センサ76からの信号S76)が期待通りであるかをチェックする。期待値からの大幅な逸脱が検知されると、これはVMMの故障として報告される。
【0137】
故障ハンドラからのデータは、VMM1からVMM2へと通信される、ヘルスシグナル67,68に集約される。
【0138】
上記の故障ハンドラに加えて、VMM1はまた、それ自体の電源PS1並びにそれに接続されたセンサを監視してもよい(例えば、センサ信号が範囲内にあることをチェック)。監視のステータスは、一般的なVMM1のヘルスステータス63にも反映される。
【0139】
ヘルスステータスに加えて、VMM1はまた、フリーランニングカウンタ信号69をVMM2に通信する。
【0140】
VMM2は、それ自体のアクチュエータの故障ハンドラ64及びVMMの故障ハンドラ65を有し、これらはそれ自体のアクチュエータ及びVMMコントローラの故障を検出するために使用される。VMM2の主要コンポーネントは、上述したように、VMM1のコンポーネントと同様に機能及び動作する。
【0141】
起動プロセス中、VMM1は、VMM2が故障していないと報告されている場合にのみ、「アクティブ」になる。
【0142】
VMM2は、VMM1のヘルスステータスが「異常/重大な故障検知」になるか、VMM1から受信したカウンタがフリーズするか、VMM1とVMM2との間の通信が途絶えると、アクティブモードに「切り替わる」。
【0143】
VMM1が異常状態(かつVMM2がアクティブ)になると、VMM1へと戻る切り替えは、車両が停止し、車両静止状態で初期起動プロセスが再実行された場合にのみ行うことができる。
【0144】
監視プロセスの他の実施形態によれば、上記のものに加えて、VMM1とVMM2との間の完全なクロスチェックを提供することができる。より詳細には、それ自体の入力/出力のほかにも、VMM1の入力及び出力の監視を追加して実行し、逆もまた同様に、それ自体の入力/出力のほかにも、VMM2の入力及び出力の監視を追加して実行する。
【0145】
図10に示すように、各ホイールブレーキ制御ユニットWBCUは、電気回路及び空気圧回路の両方の冗長回路を備えている。チャネルAはVMM1によって制御される一方、チャネルBはVMM2によって制御さてる。使用構成では、完全な二重並列構成であることが好ましい。
【0146】
[その他]
上記の作動原理及び装置は、電気機械式のブレーキタイプにも適用することができる。
【0147】
上記の作動原理及び装置は、油圧式のブレーキタイプにも適用することができる。
【0148】
パーキングブレーキ機能に関して、一般的に、第3のブレーキチャネルと見做すことができ、主回路及びバックアップ回路が適切なバックアップ動作ができない重大な故障が発生している緊急事態に使用することができる。
【0149】
他のオプションでは、パーキングブレーキ機能をバックアップブレーキ空気圧回路に使用することで、追加コンポーネントをほとんど使用せずに、バックアップブレーキ空気圧回路を利用可能にし、費用効果の高いソリューションを形成することができる。
【0150】
この場合、プリチャージは、通常の走行状態において、通常のパーキングブレーキ圧力PBrefより低い圧力である。これは、特に、パーキングブレーキ機能がそれ自体によってアンチロック機能を特徴付ける場合にも関連している。しかしながら、ここでの圧力ロジックは逆であることに留意されたい。8~9バールの圧力を作用させてブレーキアクチュエータBAのチャンバC1のパーキングブレーキを解除し、反対に圧力を低下させてブレーキ力を作用させなければならない。従って、プレチャージの代わりに、チャンバC1のパーキングブレーキに作用された圧力は、[5~6バール]の範囲の閾値までデチャージされる。よって、この圧力がさらに低下すると、即座にブレーキが作動する。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図6B
図7
図8
図9
図10